説明

4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドの精製方法

【課題】4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドを、高収率、高純度で得る製造方法を提供する。
【解決手段】4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドを含む粗体を、アミド溶媒を含む溶媒に溶解させた後、得られた溶液から4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドを晶析させる方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた消化管運動促進作用効果を示す治療剤として有用な4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドクエン酸塩2水和物の原料となる4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドの新規な精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドクエン酸塩2水和物(以下、単に「クエン酸塩2水和物」とする場合もある)は、メトクロプラミドのようなドーパミンD2受容体遮断作用を有することがない。そのため、該クエン酸塩2水和物は、中枢神経系、および内分泌系の副作用を発現することがなく、優れた消化管運動促進作用の効果を示す治療薬として有用である(特許文献1参照)。
【0003】
従来、このクエン酸塩2水和物は、
下記式(4)
【0004】
【化1】

【0005】
で示される2−(アミノメチル)−4−(4−フルオロベンジル)モルホリン(以下、モルホリン化合物とする場合もある)と、
下記式(5)
【0006】
【化2】

【0007】
で示される4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ安息香酸(以下、安息香酸化合物とする場合もある)とを反応させて得られる
下記式(1)
【0008】
【化3】

で示される4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミド(以下、アミド化合物とする場合もある)を原料とし、該原料とクエン酸水溶液とを反応させて製造されている。この原料となるアミド化合物を高純度にすることができれば、最終的に得られるクエン酸塩2水和物も高純度にすることができる。そのため、アミド化合物の製造方法、および精製方法が、高純度の原薬(クエン酸2水和物)を製造する上で重要となる。
【0009】
上記アミド化合物の製造方法をより具体的に説明すると、上記モルホリン化合物と上記安息香酸化合物とを、塩化メチレンのようなハロゲン化炭化水素溶媒中、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩により反応させて、アミド化合物を製造する方法が知られている(特許文献1参照)。また、この方法においては、得られたアミド化合物をエタノールにより晶析して精製することが記載されている。
【0010】
さらに、別の方法として、モルホリン化合物と安息香酸化合物とを、ケトン溶媒中、クロロ炭酸アルキルにより反応させて、さらにそのまま晶析して、アミド化合物を製造する方法が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特公平3−54937号公報
【特許文献2】特開2008−247753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記の通り、特許文献1、2に記載の方法に従えば、アミド化合物を効率よく製造することができる。
【0013】
しかしながら、本発明者の検討によると、何れの方法においても、出発物質となるモルホリン化合物が、例えば、ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー、33(5)、1406−1413(1990)やケミカル・パーマシューティカル・ブレティン、44(8)、1484−1492(1996)のような公知の方法で製造された場合には、以下の点で問題があることが判明した。
【0014】
先ず、このモルホリン化合物の製造方法について詳細に説明する。モルホリン化合物を得るためには、先ず、下記式(2)で示されるN−(2,3−エポキシプロピル)フタルイミドと、下記式(3)で示される2−(4−フルオロベンジルアミノ)エタノールとを、溶媒を使用せず、80℃、3時間反応させる。次いで、反応液に徐々に濃硫酸を加えた後、150℃で2時間加熱する。得られた溶液を冷却し、水酸化ナトリウム水溶液で中和後、クロロホルムで抽出操作を行い、有機層を水および飽和食塩水で洗浄した後に、無水硫酸マグネシウムで乾燥する。ここでモルホリン化合物を製造できるが、より純度の高いものとするために、次に、アセチル化の反応を行う。そのため、得られた上記有機層に無水酢酸を加え、室温で2時間反応させた後、氷水、水酸化ナトリウム水溶液を順次加え、室温でしばらく撹拌する。次いで、有機層を分離した後、洗浄、乾燥後、溶媒留去し、残渣をトルエンにより晶析することにより、2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンを合成することができる。その後、得られた2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンを1mol/L塩酸水溶液で加水分解することにより、精製されたモルホリン化合物を製造することができる。
【0015】
【化4】

【0016】
本発明者らの検討によれば、上記方法で得られたモルホリン化合物は、構造が類似した不純物(以下、このモルホリン化合物に含まれる不純物を第一特定不純物とする場合もある)を含むことが分かった。この第一特定不純物は、上記式(2)で示されるN−(2,3−エポキシプロピル)フタルイミドと、上記式(3)で示される2−(4−フルオロベンジルアミノ)エタノールを反応させた際に生じているものと考えられた。そのため、第一特定不純物は、アミノ基を有するものと推定され、モルホリン化合物と同様に、アセチル化され、さらに、塩酸により加水分解されるものと考えられた。そして、モルホリン化合物と同様に、安息香酸化合物と反応し、該不純物由来の不純物(以下、この第一特定不純物由来の不純物を第二特定不純物とする場合もある)を生成するものと考えられた。
【0017】
その結果、得られるアミド化合物に、該アミド化合物と構造が類似した不純物(第二特定不純物)が含まれることが分かった。更には、最終的に得られるクエン酸塩2水和物にも、それに準じた不純物が含まれることが分かった。
【0018】
なお、アミド化合物とクエン酸水溶液との反応は、化学的な結合を生じる反応ではない。そのため、下記に詳述する高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による分析では、アミド化合物とクエン酸塩2水和物に含まれる不純物は、同じ構造のもの(第二特定不純物)であった。
【0019】
この第二特定不純物を低減するためにクエン酸塩2水和物を精製すると、その収率が低下するおそれがあるため、原料であるアミド化合物を高純度に生成できる方法の開発が望まれていた。
【0020】
したがって、本発明の目的は、アミド化合物を高純度化できる精製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者は、上記課題を解決するため、鋭意研究を行った。その結果、4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミド(アミド化合物)を晶析により精製する方法において、晶析溶媒として、特定の溶媒、つまりアミド溶媒を含む溶媒を使用することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0022】
即ち、本発明は、下記式(1)
下記式(1)
【0023】
【化5】

【0024】
で示される4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミド(アミド化合物)を、アミド溶媒を含む溶媒で晶析することを特徴とする4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミド(アミド化合物)の精製方法である。該アミド溶媒は、N−メチルホルムアミド、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドンからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒であることが好ましい。
【0025】
また、本発明においては、前記アミド溶媒を含む溶媒が、水、アルコール溶媒、エステル溶媒、脂肪族炭化水素溶媒、およびエーテル溶媒から選ばれるアミド溶媒以外の溶媒を含んでなり、アミド溶媒100容量部に対して、前記アミド溶媒以外の溶媒を400容量部以下含むことが好ましい。上記アミド溶媒以外の溶媒を含むことにより、収率を向上することができる。
【0026】
この混合溶媒を使用する場合には、先ず、4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミド(アミド化合物)をアミド溶媒に溶解させ、次いで、得られた溶液と前記アミド溶媒以外の溶媒を混合した後、該アミド化合物を結晶化させ、該結晶を取り出すことが好ましい。こうすることにより、溶媒の使用量を低減することができ、かつ該アミド化合物の純度も高くすることができる。
【0027】
また、前記アミド溶媒以外の溶媒の中では、水を使用することが好ましく、前記アミド溶媒を含む溶媒が、アミド溶媒100容量部に対して、水を10容量部以上100容量部以下含む場合に、特に優れた効果を発揮する。
【0028】
さらに、晶析する4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミド(アミド化合物)が、
下記式(2)
【0029】
【化6】

【0030】
で示されるN−(2,3−エポキシプロピル)フタルイミドと、
下記式(3)
【0031】
【化7】

【0032】
で示される2−(4−フルオロベンジルアミノ)エタノールとを反応させて得られる
下記式(4)
【0033】
【化8】

【0034】
で示される2−(アミノメチル)−4−(4−フルオロベンジル)モルホリン(モルホリン化合物)と、
下記式(5)
【0035】
【化9】

【0036】
で示される4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ安息香酸(安息香酸化合物)とを反応させて得られるものである場合に、本発明の精製方法は、特に優れた効果を発揮する。
【0037】
以上の方法により精製されたアミド化合物は、特定の不純物が効率よく低減されているため、該アミド化合物は、クエン酸水溶液とを反応させることにより、
下記式(6)
【0038】
【化10】

【0039】

で示される高純度の4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドクエン酸塩2水和物(クエン酸塩2水和物)を製造することができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドクエン酸塩2水和物(クエン酸塩2水和物)の原料として有用な4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミド(アミド化合物)を効率よく、高収率、かつ高純度で得ることができる。
【0041】
さらに、本発明によれば、モルホリン残基を有する不純物(第二特定不純物)を特に低減できるものと考えられる。その結果、本発明によって精製されたアミド化合物は、クエン酸水溶液と反応させてクエン酸塩2水和物とした場合に、第二特定不純物の含有量が少ない、純度の高い4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドクエン酸塩2水和物とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明は、4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミド(アミド化合物)を、特定の有機溶媒、即ち、アミド溶媒を含む溶媒で晶析するものである。以下、順を追って説明する。
【0043】
(4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミド(アミド化合物))
本発明において、晶析の対象となるアミド化合物は、公知の方法で製造することができる。具体的には、例えば、ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー、33(5)、1406−1413(1990)やケミカル・パーマシューティカル・ブレティン、44(8)、1484−1492(1996)に記載された方法で製造する2−(アミノメチル)−4−(4−フルオロベンジル)モルホリン(モルホリン化合物)と、例えば、ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー、34(2)、616−624(1991)に記載された方法で製造する4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ安息香酸(安息香酸化合物)とを、上記特許文献1、または特許文献2に記載の方法で反応させることにより製造できる。先ず、アミド化合物の原料であるモルホリン化合物と安息香酸化合物について説明する。
【0044】
(アミド化合物の原料:モルホリン化合物)
このモルホリン化合物は、上記の方法に従い、2−(4−フルオロベンジルアミノ)エタノールとN−(2,3−エポキシプロピル)フタルイミドとを反応させることにより得ることができる。
【0045】
この反応で得られるモルホリン化合物中には、該モルホリン化合物と構造が類似した、特に、アミノ基を有する第一特定不純物が存在することが、その後の反応、HPLCの分析結果から推定された。この反応は、モルホリン環を形成するものである。そのため、アミノメチル基の結合位置、およびフルオロ基の結合位置が異なる複数の第一特定不純物が生成するものと考えられた。実際に、下記の脱アセチル化後のモルホリン化合物をHPLC分析すると、構造の類似した不純物(第一特定不純物)が複数存在することが確認された。
【0046】
上記のような第一特定不純物を含むモルホリン化合物は、そのまま、安息香酸化合物と反応させることもできるが、精製するため、一旦、アミノ基をアセチル化して2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンとすることが好ましい。この際、第一特定不純物も、同様にアセチル化されるものと考えられる。この2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンは、トルエン等の芳香族炭化水素溶媒で晶析することにより、純度を高めることができる。また、炭素数2〜5の酢酸エステルのようなエステル溶媒を主成分とする有機溶媒(エステル溶媒を50容量%以上含む有機溶媒)で晶析することにより、第一特定不純物がアセチル化された不純物をより低減することもできる。
【0047】
この第一特定不純物がアセチル化された不純物を含む2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンは、上記の通り、晶析等の公知の方法で精製した後、塩酸等の酸により脱アセチル化を行う。この際、モルホリン化合物と同様に、アセチル化された第一特定不純物が、再度、第一特定不純物になるものと考えられる。本発明者等の検討によれば、脱アセチル化したモルホルン化合物において、下記の実施例で詳述するHPLCの分析条件によると、少なくとも3つの第一特定不純物が検出された。これは、上記の通り、モルホリン化合物の製造時に、既に、複数の第一特定不純物が存在していたことを示す。具体的には、下記のHPLCの分析条件によると、モルホリン化合物が16分付近に現れ、その前、12分付近(以下、第一特定不純物(1)とする場合もある。)、その後、19分付近(以下、第一特定不純物(2)とする場合もある。)、38分付近(以下、第一特定不純物(3)とする場合もある)に不純物が確認された。
【0048】
本発明の方法は、このような第一特定不純物(第一特定不純物(1)〜(3))を含むモルホリン化合物を原料として得られるアミド化合物の精製に、特に効果を発揮する。ただし、当然のことながら、本発明の方法は、このような不純物を含まないモルホリン化合物を原料として得られるアミド化合物の精製にも適用することができる。
【0049】
次に、アミド化合物のもう一方の原料である4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ安息香酸(安息香酸化合物)について説明する。
【0050】
(アミド化合物の原料:安息香酸化合物)
4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ安息香酸(安息香酸化合物)は、上記の通り、公知の方法で合成できる。具体的には、4−(アセチルアミノ)−5−クロロ−2−エトキシ安息香酸メチルを水酸化ナトリウム水溶液とエタノールの混合溶媒中、加熱還流下、反応させ、メタノールで晶析することにより得ることができる。
【0051】
(アミド化合物の製造:モルホリン化合物と安息香酸化合物との反応)
上記の方法により得られた2−(アミノメチル)−4−(4−フルオロベンジル)モルホリン(モルホリン化合物)と4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ安息香酸(安息香酸化合物)とを、公知の方法、例えば、特許文献1、または2の方法で反応させることにより、アミド化合物を合成することができる。
【0052】
具体的な製造方法としては、モルホリン化合物と安息香酸化合物とを、塩化メチレンやクロロホルムなどのハロゲン化炭化水素溶媒、或いはアセトンやメチルエチルケトンのようなケトン系溶媒中、縮合剤、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N,N’−カルボニルジイミダゾール、N,N’−カルボニルジコハク酸イミド、1−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジヒドロキノンなどのような縮合剤を用いて反応させればよい。
【0053】
また、安息香酸化合物を低級アルキルエステル、活性化エステル、酸無水物、または酸ハライドの化合物に変換し、モルホリン化合物と反応させることもできる。該安息香酸化合物を酸無水物とする場合には、対称酸無水物、または混合酸無水物としてやればよい。混合酸無水物とする場合には、4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ安息香酸と、クロロ炭酸エチル、クロロ炭酸イソブチルなどのクロロ炭酸アルキル、クロロ炭酸ベンジルのようなクロロ炭酸アラルキル、クロロ炭酸フェニルのようなクロロ炭酸アリールなどからなる混合酸無水物としてやればよい。
【0054】
以上のような反応を行うことにより、アミド化合物を製造することができる。上記反応において、上記第一特定不純物を含むモルホリン化合物を原料とした場合には、第一特定不純物に由来する不純物(第二特定不純物)を含むアミド化合物が生成する。つまり、第一特定不純物(1)、(2)、および(3)は、モルホリン化合物と同じく、アミノ基を有するものと考えられるため、上記反応を行うことにより、これら不純物に由来する第二特定不純物が副生するものと考えられた。以下、第一特定不純物(1)由来の不純物を第二特定不純物(1)、第一特定不純物(2)由来の不純物を第二特定不純物(2)、第一特定不純物(3)由来の不純物を第二特定不純物(3)とする場合もある。
【0055】
本発明の精製方法は、上記のような第二特定不純物を含むアミド化合物の精製に特に効果を発揮する。本発明者等の検討によれば、下記に詳述するHPLCによる分析において、アミド化合物が23分付近に確認され、第二特定不純物(1)が17分付近、第二特定不純物(2)が30分付近、第二特定不純物(3)が40分付近に確認された。これら第二特定不純物は、下記に詳述するクエン酸水溶液との反応においても、同様に反応するものと考えられる。そのため、これら第二特定不純物を十分に低減しておかないと、最終生成物であるクエン酸塩2水和物から第二特定不純物由来の不純物を低減する必要があり、クエン酸塩2水和物の収率が低下するおそれがある。本発明の方法は、特に、このような第二特定不純物を含むアミド化合物の粗体の精製に好適に適用できる。
【0056】
本発明の精製方法は、該アミド化合物の粗体(以下、単に粗体とする場合もある)を対象とする場合、特に制限されるものではないが、HPLCによる該粗体の純度(ピーク面積%換算による純度)が90〜99%のものに特に適している。中でも、上記方法によれば、純度が93〜99%であり、上記第二特定不純物の合計(第二特定不純物(1)〜(3)の合計)が0.05〜0.15%含まれる粗体を得ることができるが、本発明の方法は、このような粗体の精製に特に適している。
【0057】
ただし、本発明の方法は、アミド化合物を高純度化することができるため、上記のような粗体以外の粗体を精製する場合にも、十分にその効果を発揮する。
【0058】
次に、これらアミド化合物(粗体)を、アミド溶媒を含む溶媒で晶析する方法について、具体的に説明する。
【0059】
(アミド溶媒を含む溶媒)
本発明においては、上記アミド化合物を、先ず、アミド溶媒を含む溶媒に溶解させてアミド化合物を晶析させる。
【0060】
本発明で使用するアミド溶媒とは、分子内に−C(=O)−N=で示される結合部分を有する溶媒であり、試薬或いは工業原料が何ら制限無く使用できる。アミド溶媒を具体的に例示すると、N−メチルホルムアミド、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。これらの中でも、毒性の低い点、比較的沸点が低く、除去が容易である点、および得られるアミド化合物の高純度化といった点から、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンを使用することが好ましい。
【0061】
本発明において、アミド化合物を溶解させる溶媒は、上記アミド溶媒を有意な量含む溶媒であれば、十分にアミド化合物を精製できる。中でも、アミド化合物が上記方法で製造された粗体である場合には、晶析溶媒に使用する溶媒中、上記アミド溶媒を20容量%以上100容量%以下含む溶媒を使用することが好ましい。アミド溶媒を上記範囲で使用することにより、アミド化合物をより高純度化することができ、特に、第二特定不純物をより低減することができる。中でも、アミド溶媒のみを使用することにより、アミド化合物の純度を高めることができる。
【0062】
本発明においては、上記アミド溶媒の他に、アミド溶媒以外の溶媒を使用することができる。これら、アミド溶媒以外の溶媒を使用する場合、この溶媒は、アミド溶媒と相分離することなく、混合可能なものであることが好ましい。このようなアミド溶媒以外の溶媒を使用することにより、アミド化合物の収率を高めることができる。
【0063】
上記アミド溶媒以外の溶媒を例示すれば、水、アルコール溶媒、ケトン溶媒、エステル溶媒、エーテル溶媒、脂肪族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒などの有機溶媒、およびこれら有機溶媒の混合溶媒を挙げることができる。中でも、高純度化、高収率化の観点から、水、アルコール溶媒、エステル溶媒、脂肪族炭化水素溶媒、およびエーテル溶媒からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミド溶媒以外の溶媒を使用することが好ましい。これら好ましいアミド溶媒以外の溶媒を具体的に例示すると、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールなどの炭素数1〜4のアルコール溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタンなどの炭素数2〜6のエーテル溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭素数5〜8の脂肪族炭化水素溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピルなど炭素数2〜8のエステル溶媒が挙げられる。これら溶媒の中でも、アミド化合物の純度、収率を考慮すると、水を使用することが最も好ましい。これら溶媒は、試薬或いは工業原料が何ら制限無く使用できる。
【0064】
本発明において、アミド溶媒とアミド溶媒以外の溶媒とを併用する場合には、使用するアミド溶媒以外の溶媒の量は、アミド溶媒の種類、使用するアミド溶媒以外の溶媒の種類等に応じて適宜決定すればよい。中でも、アミド化合物の純度、および特に収率等を考慮すると、アミド溶媒100容量部に対して、好ましくはアミド溶媒以外の溶媒が400容量部以下であり、より好ましくはアミド溶媒以外の溶媒が1容量部以上400容量部以下であり、さらに好ましくはアミド溶媒以外の溶媒が10容量部以上400容量部以下であり、特に好ましくはアミド溶媒以外の溶媒が20容量部以上400容量部以下である。この範囲でアミド溶媒以外の溶媒を使用することが好ましい。次に、溶媒の違いによる最適な使用量について説明する。
【0065】
本発明において、アミド溶媒以外の溶媒を使用する場合、アミド化合物の収率、純度を考慮すると、最も好ましいのは、水である。アミド溶媒と水とを含む溶媒を使用する場合には、特に、以下の配合量とすることが好ましい。すなわち、アミド溶媒100容量部に対して、水を10容量部以上100容量部以下とすることが好ましく、さらには、水を20容量部以上50容量部以下とすることが好ましい。
【0066】
なお、アミド溶媒以外の溶媒としてアルコール溶媒を使用する場合には、アミド溶媒100容量部に対して、アルコール溶媒を10容量部以上200容量部以下とすることが好ましく、さらに、アルコール溶媒を20容量部以上100容量部とすることが好ましい。
【0067】
また、エーテル溶媒を使用する場合には、アミド溶媒100容量部に対して、エーテル溶媒を100容量部以上400容量部以下とすることが好ましく、さらにはエーテル溶媒を200容量以上300容量部以下とすることが好ましい。
【0068】
さらに、脂肪族炭化水素溶媒を使用する場合には、エステル溶媒と併用することが好ましい。この場合、脂肪族炭化水素溶媒100容量部に対して、エステル溶媒を70容量部以上120容量部以下含む混合溶媒を使用することが好ましい。そして、アミド溶媒100容量部に対して、混合溶媒を200容量部以上400容量部以下とすることが好ましく、さらに、混合溶媒を300容量部以上400容量部以下とすることが好ましい。
【0069】
本発明において、アミド化合物の晶析に使用する溶媒の使用量(アミド化合物を溶解させる溶媒の使用量)は、使用するアミド溶媒の種類、アミド溶媒以外の溶媒との組み合わせ、その比率、および晶析条件等に応じて適宜決定してやればよい。中でも、得られるアミド化合物の純度、収率、および操作性等を考慮すると、以下の使用量を満足することが好ましい。具体的には、アミド溶媒を含む溶媒の使用量は、アミド化合物(粗体の場合は粗体)1gに対して、好ましくは0.5ml〜30ml、さらに好ましくは1ml〜25mlである。本発明によれば、この使用量でも、十分に精製されたアミド化合物を得ることができる。なお、アミド溶媒、およびアミド溶媒以外の溶媒を含む溶媒を使用する場合にも、全溶媒の使用量は、上記範囲を満足する量であることが好ましい。
【0070】
本発明においては、アミド化合物、例えば、粗体を、上記アミド溶媒を含む溶媒に溶解させ、得られた溶液からアミド化合物を結晶化させることにより、アミド化合物を晶析することができる。具体的な方法としては、アミド化合物、例えば、上記粗体にアミド溶媒を含む上記溶媒を加え、加温することにより該粗体を溶解させた後、得られた溶液を冷却することにより、高純度化されたアミド化合物を結晶化させる方法を採用することができる。
【0071】
また、アミド溶媒を含む溶媒として、アミド溶媒、およびアミド溶媒以外の溶媒を使用する場合には、アミド溶媒とそれ以外の溶媒の混合溶媒を使用して、アミド化合物を溶解させ、得られた溶液を冷却することもできる。また、一旦、アミド化合物をアミド溶媒に溶解させた後、次いで、アミド溶媒以外の溶媒を混合し、得られた溶液を冷却することもできる。
【0072】
上記方法において、アミド化合物を、アミド溶媒を含む溶媒で溶解させる際の温度は、特に制限されるものではないが、5℃以上、使用した溶媒の還流温度以下であることが好ましい。アミド化合物の分解を抑制し、溶媒の使用量を低減するためには、10℃以上60℃の温度範囲が好ましく、さらに15℃以上55℃以下の温度範囲が好ましく、特に20℃以上40℃以下の温度範囲が好ましい。
【0073】
なお、アミド化合物をアミド溶媒に溶解させ、次いで、得られた溶液とアミド溶媒以外の溶媒を混合する方法を採用することにより、アミド化合物を溶解させる際の温度を低くすることができる。その結果、アミド化合物の分解をより抑制でき、溶媒の使用量をより低減することができる。この場合には、以下の温度範囲でアミド化合物を溶解させることが好ましい。具体的には、先ず、アミド化合物とアミド溶媒とを混合し、好ましくは10℃以上60℃以下の温度範囲、より好ましくは15℃以上55℃以下の温度範囲、さらに好ましくは20℃以上40℃以下の温度範囲でアミド化合物を溶解させる。次いで、アミド溶媒以外の溶媒を混合することが好ましい。アミド溶媒以外の溶媒を混合した場合の溶液の温度は、10℃以上60℃以下の温度範囲とすることが好ましく、さらには15℃以上55℃以下の温度範囲とすることが好ましく、特に20℃以上40℃以下の温度範囲とすることが好ましい。
【0074】
アミド化合物を溶解させた溶液を冷却する際の冷却速度は、あまり速いと純度が低下する傾向にあり、あまり遅いと効率的ではない。そのため、冷却速度は、1℃/時間〜100℃/時間とすることが好ましく、さらには5℃/時間〜50℃/時間の範囲とすることが好ましい。
【0075】
また、冷却時の到達温度は、あまり高いと収率が低下し、あまり低いと純度が低下する傾向にある。そのため、該到達温度は、0℃以上、使用した溶媒の還流温度未満とすることが好ましく、さらに、0℃以上、アミド化合物を溶解させた温度以下であって、30℃以下の範囲とすることが好ましく、特に、0℃以上10℃以下の範囲とすることが好ましい。
【0076】
以上のような方法でアミド化合物、例えば、粗体を晶析させることにより、特に高純度のアミド化合物を得ることができる。
【0077】
また、アミド化合物を晶析させるその他の方法としては、例えば、上記粗体を、アミド溶媒を含む溶媒に溶解させ、得られた溶液から溶媒を留去して濃度を調節し、アミド化合物を結晶化させる方法を採用することもできる。
【0078】
さらに、前記冷却して結晶化させる際や濃縮して結晶化させる際に、過飽和溶液を調整後、任意の温度で種結晶などを投入して結晶化させることもできる。
【0079】
以上のようにして得られた、高純度化されたアミド化合物の結晶は、ろ過や遠心分離などにより固液分離し、自然乾燥、送風乾燥、真空乾燥などにより乾燥することにより単離される。
【0080】
このように単離されたアミド化合物の結晶は、第二特定不純物が非常に低減されたものとなる。そのため、得られたアミド化合物とクエン酸水溶液とを反応させて、上記式(5)で示される4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドクエン酸塩2水和物としても、非常に高純度のクエン酸塩2水和物を得ることができる。特に、上記の第二特定不純物がクエン酸塩2水和物となったものを殆ど含むことがないため、上記式(5)で示されるクエン酸塩2水和物の精製が容易となる。
【0081】
(クエン酸塩2水和物の製造方法)
上記式(5)で示されるクエン酸塩2水和物は、公知の方法で製造することができる。具体的には、得られたアミド化合物を、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコールと3〜20倍のクエン酸水和物を含む水溶液に溶解させ、得られた水溶液を冷却することにより、上記式(5)で示される4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドクエン酸塩2水和物を結晶として取り出すことができる。
【実施例】
【0082】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何等制限されることはない。
【0083】
まず、各化合物におけるHLPCの測定条件について説明する。
【0084】
(1)2−(アミノメチル)−4−(4−フルオロベンジル)モルホリン(モルホリン化合物)の分析条件
(HPLCの測定条件)
装置:WATERS社製 型式2695−2489
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:220nm)
カラム:株式会社ワイエムシィ社製 商品名 YMC−Pack ODS−A、内径4.6mm、長さ15cm(粒子径5μm、細孔径12nm)
カラム温度:40℃ 一定温度
サンプル温度:25℃ 一定温度
移動相A:りん酸二水素カリウム5.44gを水200mlに溶かし、りん酸を加えてpH4.2に調整する。
移動相B:りん酸二水素カリウム2.72gを水1000mlに溶かし、アセトニトリル1000mlを加え、りん酸を加えてpH4.2に調整する。
移動相の送液:移動相A、および移動相Bの混合比を表1に示すように変化させて濃度勾配制御し、サンプルを分析した。移動相A、移動相Bの合計流量は1.0ml/分とした。
【0085】
【表1】

【0086】
(上記HPLC分析による結果)
2−(アミノメチル)−4−(4−フルオロベンジル)モルホリン 16分
第一特定不純物(1):12分
第一特定不純物(2):19分
第一特定不純物(3):38分
に確認された。
【0087】
(2)4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミド(アミド化合物)、および4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドクエン酸塩2水和物(クエン酸塩2水和物)の分析条件
(HPLC分析条件)
装置:WATERS社製 型式2695−2489
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:274nm)
カラム:株式会社ワイエムシィ社製 商品名 YMC−Pack ODS−A、内径4.6mm、長さ15cm(粒子径5μm、細孔径12nm)
カラム温度:40℃ 一定温度
サンプル温度:25℃ 一定温度
移動相A:りん酸二水素カリウム4.9gを水1800mlに溶かし、10質量%りん酸を加えてpH3.8に調整する。
移動相B:りん酸二水素カリウム2.2gを水800mlに溶かし、アセトニトリル1200mlを加え、10質量%りん酸を加えてpH3.8に調整する。
移動相の送液:移動相A及び移動相Bの混合比を表2に示すように変化させて濃度勾配制御し、サンプルを分析した。移動相A、移動相Bの合計流量は1.2ml/分とした。
【0088】
【表2】

【0089】
(上記HPLC分析による結果)
アミド化合物、およびクエン酸塩2水和物:23分
第二特定不純物(1):17分
第二特定不純物(2):30分
第二特定不純物(3):40分
に確認された。
【0090】
製造例
(モルホリン化合物の製造)
2−(4−フルオロベンジルアミノ)エタノール33.8g(0.20mol)とN−(2,3−エポキシプロピル)フタルイミド41.4g(0.20mol)を混合し、80℃で3時間撹拌した。その後、濃硫酸107.8g(1.1mol)を少しずつ滴下し、滴下終了後、150℃で2時間加熱した。反応終了後、室温に冷却し、反応液を氷水にあけ48質量%水酸化ナトリウム水溶液で中和後、クロロホルムで3回抽出した。有機層を集め、水で洗浄した後、乾燥した。次いで、無水酢酸20.4g(0.20mol)を加え、室温で2時間撹拌した。反応液を水で洗浄した後、20質量%水酸化ナトリウム水溶液で中和し、さらに水で洗浄した。溶媒留去後、濃縮物を酢酸エチル/イソプロピルアルコール(66.7容量%/33.3倍容量%)で晶析し、2−(アセチルアミノ)メチル)−4−(4−フルオロベンゾイル)モルホリン30.8gを得た。この結晶30.0g(0.113mol)に10質量%塩酸水溶液180mlを添加し、還流下2時間撹拌した。反応終了後、5℃まで冷却し、20質量%水酸化ナトリウム水溶液で中和し、クロロホルムで抽出し、洗浄、乾燥を行った後、溶媒留去し、2−(アミノメチル)−4−(4−フルオロベンジル)モルホリン(モルホリン化合物)25.0g(収率98.7%)を得た。このモルホリン化合物には、第一特定不純物(1)0.123%、第一特定不純物(2)0.151%、第一特定不純物(3)0.098%を含んでいた。
【0091】
(アミド化合物の製造)
4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ安息香酸(安息香酸化合物)19.4g(0.09mol)とトリエチルアミン9.55g(0.095mol)をクロロホルム388mlに溶解し、−5℃に冷却した。0℃を越えないようにクロロ炭酸ベンジル16.1g(0.095mol)のクロロホルム溶液を滴下し、滴下後0℃以下で1時間撹拌した。
【0092】
この溶液に、−5℃に冷却した、上記モルホリン化合物20g(0.09mol)を含むクロロホルム溶液214mlを、0℃を越えないように滴下した。滴下後、0℃以下で1時間撹拌後、室温に昇温し、23質量%水酸化ナトリウム水溶液を添加した。有機層を分液し、水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒留去を行い、4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミド(アミド化合物)の粗体37.3g(収率98.2%)を得た。上記HPLCのピーク面積%の純度は、98.4%であり、第二特定不純物(1) 0.073%、第二特定不純物(2) 0.081%、第二特定不純物(3) 0.051%であった。
実施例1
製造例で得た4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミド(アミド化合物)の粗体20gをジムロート還流管と温度計を備えた3つ口フラスコに仕込み、N,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)を235mL加え、25℃で溶解させ、次いで25℃で水55ml(DMF100容量部に対して23容量部)を加え、系内を15℃/時間で5℃まで冷却し、結晶化させた。
【0093】
得られた結晶をろ過し、真空で12時間乾燥させ、4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミド(アミド化合物)の白色結晶14.4g(収率72.1%)を得た。HPLCにより純度を確認したところ、純度は99.96%、第二特定不純物(1) 0.007%、第二特定不純物(2) 0.015%、第二特定不純物(3) 0.003%であった。なお、純度、第二特定不純物の%は、上記HPLCの測定結果より求めたピーク面積の値である。結果を表3に示した。
【0094】
実施例2〜10
実施例1の晶析溶媒と溶媒比率を代えた以外は実施例1と同様の方法で行った。なお実施例2以降は、実施例1と同様にアミド溶媒で溶解させた後、アミド溶媒以外の溶媒を添加した。その結果を表3に示した。
【0095】
【表3】

【0096】
実施例11
DMF/水=11.75ml/2.75mlの混合溶媒をあらかじめ調整し、製造例で得られた粗体1gを該混合溶媒に55℃で溶解させ、15℃/時間で5℃まで冷却し、結晶化させた以外は実施例1と同様の方法で行った。その結果、白色結晶0.67g(収率67.0%)を得た。HPLCにより純度を確認したところ、純度は99.88%、第二特定不純物(1) 0.025%、第二特定不純物(2) 0.030%、第二特定不純物(3) 0.011%であった。
【0097】
実施例12
実施例1で得た4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミド12gにエタノール120ml、水120ml、クエン酸一水和物17.9g加え、加熱溶解した後に、冷却し、結晶を析出させ、結晶をろ過した。結晶を十分に水洗後、乾燥し、4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドクエン酸塩2水和物16.8gを得た。HPLCにより純度を確認したところ、純度は99.96%、第二特定不純物(1) 0.007%、第二特定不純物(2) 0.014%、第二特定不純物(3) 0.004%であった。
【0098】
比較例1〜5
実施例1の結晶化溶媒と溶媒比率を代えた以外は実施例1と同様の方法で行った。なお比較例2、5は、実施例1と同様に溶媒1で溶解させた後、溶媒2を添加した。その結果を表4に示した。
【0099】
【表4】

【0100】
比較例6
比較例1で得た4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミド1.2gにエタノール12ml、水12ml、クエン酸一水和物1.79g加え、加熱溶解した後に、冷却し、結晶を析出させ、結晶をろ過した。結晶を十分に水洗後、乾燥し、4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドクエン酸塩2水和物1.7gを得た。HPLCにより純度を確認したところ、純度は99.73%、第二特定不純物(1) 0.067%、第二特定不純物(2) 0.082%、第二特定不純物(3) 0.050%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

で示される4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドを、アミド溶媒を含む溶媒で晶析することを特徴とする4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドの精製方法。
【請求項2】
前記アミド溶媒が、N−メチルホルムアミド、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドンからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒であることを特徴とする請求項1に記載の4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドの精製方法。
【請求項3】
前記アミド溶媒を含む溶媒が、水、アルコール溶媒、エステル溶媒、脂肪族炭化水素溶媒、およびエーテル溶媒からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミド溶媒以外の溶媒を含んでなり、アミド溶媒100容量部に対して、前記アミド溶媒以外の溶媒を400容量部以下含むことを特徴とする請求項1または2に記載の4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドの精製方法。
【請求項4】
4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドをアミド溶媒に溶解させ、次いで、得られた溶液と前記アミド溶媒以外の溶媒を混合した後、4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドの結晶を取り出すことを特徴とする請求項3に記載の4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドの精製方法。
【請求項5】
前記アミド溶媒以外の溶媒が水であり、前記アミド溶媒を含む溶媒が、アミド溶媒100容量部に対して、水を10容量部以上100容量部以下含むことを特徴とする請求項3または4に記載の4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドの精製方法。
【請求項6】
晶析する4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドが、
下記式(2)
【化2】

で示されるN−(2,3−エポキシプロピル)フタルイミドと、
下記式(3)
【化3】

で示される2−(4−フルオロベンジルアミノ)エタノールとを反応させて得られる
下記式(4)
【化4】

で示される2−(アミノメチル)−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンと、
下記式(5)
【化5】

で示される4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ安息香酸とを反応させて得られるものであることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドの精製方法。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の精製方法によって4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドを精製する工程を含むことを特徴とする4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6の何れかに記載の精製方法によって4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドを精製した後、得られた4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドとクエン酸水溶液とを反応させて、
下記式(6)
【化6】


で示される4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドクエン酸塩2水和物を製造する方法。

【公開番号】特開2011−68611(P2011−68611A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222051(P2009−222051)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【Fターム(参考)】