説明

4−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ピロール−3−カルボニトリルを含む相乗性防汚組成物

【課題】 本発明は防汚組成物そして特に汚染生物に対して向上した保護効果を与えることができる組成物に関する。
【解決手段】 組成物の乾燥塊の合計重量に基づいて少なくとも3.5重量%の量の4−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ピロール−3−カルボニトリル又はその塩をトリルフルアニド又はジクロフルアニドから選ばれる他の殺生物剤と一緒に含んでなる汚染生物に対する材料の保護のための相乗性防汚組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防汚組成物に、そして特に汚染生物に対して向上した保護効果を与えることができる組成物に関する。さらに特定的に本発明は、汚染生物に対して材料を保護するための、ベトキサジン(bethoxazin)、トリルフルアニド(tolylfluanide)、ジクロフルアニド(dichlofluanide)又はDCOITから選ばれる別の殺生物剤と一緒に組成物の乾燥塊(dry mass)の合計重量に基づいて少なくとも3.5重量%の量の4−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ピロール−3−カルボニトリル又はその塩を含む相乗性防汚組成物に関する。かくして本発明は水中物体のような材料の保護、木材、木材製品、生分解性材料及びコーティングの保護の分野に関する。
【発明の概要】
【0002】
今回、当該技術分野における熟練者により容易に決定され得る組成物のある広い限度内で(すなわち活性成分のそれぞれのある割合又は量において)、4−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ピロール−3−カルボニトリル(下記で成分Iと呼ばれる)及びベトキサジン、トリルフルアニド、ジクロフルアニド又はDCOITから選ばれる別の殺生物剤(下記で成分IIと呼ばれる)の組み合わせが汚染生物の抑制への相乗効果、すなわち汚染生物、特に藻類(algae)に対する相乗的保護効果を与えることができることが見出された。本明細書で用いられる場合、「抑制(control)」は阻害及び除去の両方を含むと定義される。本発明の防汚組成物中の4−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ピロール−3−カルボニトリルの量は、組成物の乾燥塊の合計重量に基づいて少なくとも3.5重量%である。
【0003】
4−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ピロール−3−カルボニトリル(成分Iと呼ばれる)は、軟体動物(molluscs)の抑制のために欧州特許出願第0,312,723号明細書において開示されている。該化合物は式:
【0004】
【化1】

【0005】
により示されることができる。
【0006】
成分(II)は以下である:
・ベトキサジン(成分II−a)は、木材−保護において有用な殺バクテリア性及び殺菌・殺カビ性化合物として国際公開第95/06043号パンフレットに開示されており、且つ抗バクテリア、抗−酵母、抗菌・カビ、殺藻、抗−甲殻類及び殺軟体動物性を有するとして国際公開第95/05739号パンフレットにも開示されている。それは化合物3−(ベンゾ[b]チエン−2−イル)−5,6−ジヒドロ−1,4,2−オキサチアジン−4−オキシドの一般的名称であり、その化合物は式
【0007】
【化2】

【0008】
により示されることができる。
・トリルフルアニド(成分II−b)はジクロフルアニドと類似の活性を有するが、有機溶媒中により可溶性であり、従ってコーティング調製物及び含浸剤中への導入がより容易である。それは化合物1,1−ジクロロ−N−[(ジメチルアミノ)スルホニル]−1−フルオロ−N−(4−メチルフェニル)−メタンスルフェンアミドの一般的名称であり、それは式
【0009】
【化3】

【0010】
により示されることができる。
・ジクロフルアニド(成分II−c)は広範囲の抗微生物活性を有し、木材コーティング及びプライマー中で木材−汚染性菌・カビ(fungi)に対して用いられる。それは化合物1,1−ジクロロ−N−[(ジメチルアミノ)スルホニル]−1−フルオロ−N−フェニル−メタンスルフェンアミドの一般的名称であり、それは式
【0011】
【化4】

【0012】
により示されることができる。
・DCOIT(成分II−d)は広範囲の制生物剤(biostat)であり、防汚コーティング及び木材防腐剤中で用いられる。それは化合物4,5−ジクロロ−2−(n−オクチル)−3(2H)−イソチアゾロンの一般的名称であり、その化合物は式
【0013】
【化5】

【0014】
により示されることができる。
【0015】
殺藻剤と組み合わされた殺蔓脚類剤としての成分(I)を含む組成物は、国際公開第98/12269号パンフレットに開示されている。
【0016】
「4−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ピロール−3−カルボニトリル」又は成分(I)、成分(II)の1つ、成分(II−a)、成分(II−b)、成分(II−c)又は成分(II−d)という用語が用いられる場合は常に、塩基又は塩の形態の両方における該化合物を含むものとし、後者は塩基の形態の適した酸との反応により得られる。適した酸は例えば無機酸、例えばハロゲン化水素酸、すなわちフッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸及びヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホスフィン酸など;あるいは有機酸、例えば酢酸、プロパン酸、ヒドロキシ酢酸、2−ヒドロキシプロパン酸、2−オキソプロパン酸、エタン二酸、プロパン二酸、ブタン二酸、(Z)−2−ブテン二酸、(E)−2−ブテン二酸、2−ヒドロキシブタン二酸、2,3−ジヒドロキシブタン二酸、2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−メチル−ベンゼンスルホン酸、シクロヘキサンスルファミン酸、2−ヒドロキシ安息香酸、4−アミノ−2−ヒドロキシ安息香酸などの酸を含む。該成分(I)及び成分(II)は水和物のような溶媒和物の形態で存在することもできる。
【0017】
湿潤もしくは水性環境に暴露される表面又は物体には、藻類、菌・カビ、バクテリア、微生物のような水生生物及び例えば尾索類(tunicates)、ヒドロイド類(hydroids)、双殻類(bivalves)、苔虫類(bryozoans)、多毛虫(polychaete worms)、海綿動物(sponges)、蔓脚類(barnacles)、軟体動物及び甲殻類(crustacea)のような水生動物が容易に群体を形成する。これらの生物が該表面上に定住するか又はそれに付着すると共に、暴露された物体の価値は低下する。該生物の付着又は定住は構造の「汚染」としても知られている。物体の外部、しかしおそらく内部も、劣化し得、表面は例えば滑らか、清浄且つ流線型から粗く、汚染され且つ乱れた表面に変化し、物体の重量は生物及びそれらの遺物の付着により増加し、物体の近傍はふさがれるか又は邪魔され得る。物体及び含まれるシステムの機能は低下し、水性環境の質は悪化する。汚染生物の付着を抑制する通常の方法は、防汚剤を含むコーティングを用いて保護されるべき構造を処理することによる方法である。
【0018】
湿潤又は水性環境に暴露される表面又は物体の汚染は多くの場合、藻類の付着又は定住で始まる。これは滑らかな表面を粗くし、それにより他の汚染生物、例えば尾索類、蔓脚類、甲殻類、軟体動物などの定住を容易にする。従って表面を汚染から保護する防汚組成物の殺藻性は主に興味深いことである。
【0019】
本発明の組成物は、水と常に又は頻繁に接触している表面又は物体を、組成物の乾燥塊の合計重量に基づいて少なくとも3.5重量%の量における成分(I)及び成分(II)の1つを、汚染生物に対して相乗効果を与えるようなそれぞれの割合において含む相乗性
防汚組成物を該表面又は物体に適用することにより、汚染又は藻類の付着もしくは定住から保護するのに特に適している。該表面又は物体の例は、例えば船体、港の設備、桟橋及びくい、乾ドック、水門、泊渠、係留マスト、ブイ、沖の油掘り井装置、ドリリングプラットフォーム(drilling platforms)、橋、パイプライン、漁網、ケーブル、バラスト水タンク、荒れた水域から水をくみ上げる船の貯水槽(ship reservoirs that draw water from infested bodies of water)、レクリエーション装置、例えばサーフボード、ジェットスキー及び水上スキーならびに水と常にもしくは頻繁に接触している他の物体である。
【0020】
本発明は材料、特に水と頻繁にもしくは常に接触している表面又は物体を、組成物の乾燥塊の合計重量に基づいて少なくとも3.5重量%の有効防汚量の成分(I)を、汚染生物に対する相乗効果を与えるようなそれぞれの割合において成分(II)の1つと組み合わせて含む防汚組成物を該物体に適用することにより、汚染生物に対して保護する方法も提供する。
【0021】
本発明はさらに、本発明に従う防汚組成物を表面に適用することを含む、表面の保護の方法を提供する。本発明の方法の特に重要な使用は船体の汚染の抑制のための方法を含み、それは本発明に従う防汚組成物を船体に適用することを含む。船体上の汚染は例えば摩擦的障害物を増加させ、対応して速度及び機動性を低下させ、且つ燃料消費を増加させ、汚染の除去に伴うメンテナンスコストを増加させる。
【0022】
さらに、その機能が汚染生物の存在及び/又は増殖により損なわれ得る構造物、例えばプール、浴槽、冷却水循環回路及び種々の装置における、例えば製造プラント又は空調設備における工業的水槽の保護のために、本発明に従う防汚組成物を用いることができる。さらに別の例は建築物及び建築物の一部、例えば床、外壁及び内壁又は天井あるいは湿気に苦しみ且つ汚染のための温床である場所、例えば地下室、浴室、キッチン、洗濯室(washing houses)などである。汚染は衛生及び美感の観点から問題が多いのみでなく、該建築物及び/又は装飾材料が望ましいより急速に劣化する故に経済的損失も引き起こす。
【0023】
本発明の相乗性防汚組成物を多様な用途において用いることもできる:
−工業的水性プロセス流体、例えば冷却水、パルプ及びペーパーミルプロセス水及び懸濁液、二次油回収システム、紡糸用流体、金属工作流体など
−例えばポリマーエマルション、水に基づく塗料及び接着剤、グルー、デンプンスラリ、増粘剤溶液、ゼラチン、ワックスエマルション、インキ、磨き剤、顔料及び鉱物スラリ、ゴムラテックス、コンクリート添加剤、ドリリングマッド(drilling mud’s)、洗面用品、水性化粧用調製物、製薬学的調剤などの水性機能性流体の、槽内/缶内保護。
【0024】
「汚染生物」という用語は、特に湿潤もしくは水性環境、例えば海水、淡水、塩水、雨水ならびにまた冷却水、排水、廃水及び下水中において種々の表面上に付着、定住、そこで成長するかあるいはそこに粘着する生物を含むものとする。汚染生物は藻類、例えばミクロアルガエ(Microalgae)、例えばアンフォラ(Amphora)、アクナンテス(Achnanthes)、ナビクラ(Navicula)、アンフィプロラ(Amphiprora)、メロシラ(Melosira)、ココネイス(Cocconeis)、クラミドモナス(Chlamydomonas)、クロレラ(Chlorella)、ウロツリクス(Ulothrix)、アナバエナ(Anabaena)、ファエオダクチルム(Phaeodactylum)、ポルフィリジウム(Porphyridium);マクロアルガエ(Macroalgae)、例えばエンテロモルファ(Enteromorpha)、クラドフォラ(Cladophora)、エクトカルプス(Ecto
carpus)、アクロカエチウム(Acrochaetium)、セラミウム(Ceramium)、ポリシフォニア(Polysiphonia)及びホルミジウム種(Hormidium sp.);菌・カビ(fungi);微生物;ホヤ類(Ascidiacea)の綱のメンバー、例えばシオナ・インテスチナリス(Ciona intestinalis)、ジプロソマ・リステリアニウム(Diplosoma listerianium)及びボツリルス・スクロセリ(Botryllus schlosseri)を含む尾索類;クラバ・スクアマタ(Clava squamata)、ヒドラクチニア・エキナタ(Hydractinia echinata)、オベリア・ゲニクラタ(Obelia geniculata)及びツブラリア・ラリンクス(Tubularia larynx)を含むヒドロ虫類(Hydrozoa)の綱のメンバー;ミチルス・エズリス(Mytilus edulis)、クラソストレア・ビルギニカ(Crassostrea virginica)、オストレア・エズリス(Ostrea edulis)、オストレア・キレンシア(Ostrea chilensia)、ドレイセナ・ポリモルファ(Dreissena polymorpha)(ゼブラ・ムセルス(zebra mussels))及びラサエア・ルブラ(Lasaea rubra)を含む双殻類;エレクトラ・ピロサ(Electra pilosa)、ブグラ・ネリチナ(Bugula neritina)及びボウェルバンキア・グラシリス(Bowerbankia gracilis)を含む苔虫類;ヒドロイデス・ノルベジカ(Hydroides norvegica)を含む多毛虫;海綿動物;ならびにアルテミア(Artemia)及び蔓脚類(Cirripedia)(蔓脚類(Barnacles))、例えばバラヌス・アンフィツリテ(Balanus amphitrite)、レパス・アナチフェラ(Lepas anatifera)、バラヌス・バラヌス(Balanus balanus)、バラヌス・バラノイデス(Balanus balanoides)、バラヌス・ハメリ(Balanus hameri)、バラヌス・クレナツス(Balanus crenatus)、バラヌス・インプロビスス(Balanus improvisus)、バラヌス・ガレアツス(Balanus galeatus)及びバラヌス・エブルネウス(Balanus eburneus)を含む甲殻類の綱のメンバー;ならびにエルミニウス・モデスツス(Elminius modestus)及びハナカゴ(Verruca)である。
【0025】
具体化される組成物中の成分(I)及び(II)の相対的割合は、活性成分として成分(I)のみ又は成分(II)のみを含む組成物と比較して、汚染生物、特に藻類に対して予想され得ない相乗的有効性を生ずる割合である。当該技術分野における熟練者により容易に理解されるであろう通り、有効性が測定される汚染生物の種類及び処理されるべき基材に依存して、組成物中の成分(I)及び(II)の種々の割合内において該相乗的有効性を得ることができる。本出願の記載に基づき、そのような組成物の相乗的又はおそらく(possibly)(特定の汚染生物に適用される成分(I)及び(II)のいくつかの割合の場合)非−相乗的有効性の決定は、十分に当該技術分野における熟練者の日常的作業の範囲内である。しかしながら一般的に、ほとんどの汚染生物の場合、活性組成物中の成分(I)対成分(II)の量の重量による適した比率は10:1〜1:10の範囲内にあるべきであると言うことができる。好ましくは、この範囲は3:1〜1:2、より好ましくは2:1〜1:1である。本発明の防汚組成物に関する特別な比率は、成分(I)対成分(II)の1つの間で1:1の比率である。
【0026】
本発明の特別な組成物は、組成物の乾燥塊の合計重量に基づいて少なくとも3.5重量%の量の成分(I)及び成分(II−a)(すなわちベトキサジン)又は成分(II−b)(すなわちトリルフルアニド)から選ばれる成分(II)の、汚染生物に対して相乗効果を与えるようなそれぞれの割合における組み合わせを含む組成物である。
【0027】
本発明の他の特別な組成物は、組成物の乾燥塊の合計重量に基づいて少なくとも3.5
重量%の量の成分(I)及び成分(II−c)(すなわちジクロフルアニド)又は成分(II−d)(すなわちDCOIT)から選ばれる成分(II)の、汚染生物に対して相乗効果を与えるようなそれぞれの割合における組み合わせを含む組成物である。
【0028】
本発明の非常に特別な組成物は、組成物の乾燥塊の合計重量に基づいて少なくとも3.5重量%の量の成分(I)及び成分(II−a)(すなわちベトキサジン)の、汚染生物に対して相乗効果を与えるようなそれぞれの割合における組み合わせを含む組成物である。
【0029】
本発明に従う組成物中で用いるための成分(I)及び(II)の活性成分は、それらが意図されている汚染生物処理プログラムを安全に管理するために、好ましくは実質的に純粋な形態で、すなわちそれらの製造及び/又は取り扱いの過程から生ずる化学的不純物(例えば副産物又は残留溶媒)を含まない形態で存在するべきである。本発明に従う組成物中で用いるための成分(I)及び(II)の活性成分は、それらが少なくとも1個の不斉炭素原子を有している場合、ラセミ混合物として又は擬移動床法(simulated moving bed technology)を含む標準的分別法によりラセミ混合物から得られる該化合物の実質的に純粋な立体異性体もしくはエナンチオマーの形態で存在することができる。前記で用いられた「実質的に純粋な」という用語は、高性能液体クロマトグラフィー又は光学的方法のような当該技術分野において通例の方法により決定される少なくとも約96%、好ましくは少なくとも98%そしてより好ましくは少なくとも99%の純度(化学的もしくは光学的)を意味する。
【0030】
本発明に従う組成物中のそれぞれの活性成分の量は、相乗的防汚効果が得られるようなものであろう。特定的に本発明の調製済み組成物は、組成物の乾燥塊の合計重量に基づいて少なくとも3.5重量%の量で成分(I)を含むことが意図されている。さらに特定的にそのような調製済み組成物は、組成物の乾燥塊の合計重量に基づいて4重量%〜6重量%の量で成分(I)を含む。該調製済み組成物中の成分(II)の量は、相乗的防汚効果が得られるようなものであろう。特定的に成分(II)の量は、組成物の乾燥塊の合計重量に基づいて1重量%〜20重量%、さらに特定的に3.5重量%〜6重量%の範囲であることができる。多くの場合濃厚液、例えば乳化可能な濃厚液、懸濁濃厚液(suspension concentrates)又は可溶性濃厚液から、水性もしくは有機媒体で希釈すると、直接使用されるべき防汚組成物を得ることができ、そのような濃厚液は本発明の定義において用いられる組成物という用語により包含されることが意図されている。そのような濃厚液を使用の直前にスプレータンク中で調製済み混合物に希釈することができる。
【0031】
かくして成分(I)及び(II)の組み合わせは、担体ならびに湿潤剤、分散剤、粘着剤、接着剤、乳化剤及び調製の技術分野で通常用いられるもののような類似物を含む添加剤と一緒に適切に用いられる。本発明の防汚組成物はいずれの既知の方法においても、例えば活性成分の組み合わせ(すなわち成分(I)及び成分(II)の1つ)を1−段階又は多−段階法で、選ばれる担体材料及び適宜界面活性剤のような他の添加剤と均一に混合する、コーティングする及び/又は磨砕することにより調製され得る。
【0032】
本発明における固体担体として用いるために、例えば濃厚微粉及び顆粒状調製物のために適した不活性担体材料の例には天然及び合成無機充填剤、例えばタルクのようなケイ酸マグネシウム;珪藻土のようなシリカ;カオリン、モントモリロナイト又は雲母のようなケイ酸アルミニウム;アタパルジャイト及びひる石のようなケイ酸アルミニウムマグネシウム;炭酸カルシウム及び硫酸カルシウム;木炭のような炭素;硫黄;及び高度に分散されたケイ酸ポリマーが含まれる。適した顆粒化吸収剤担体材料は多孔性の、例えば軽石、破砕れんが、海泡石、又はベントナイトであることができる。さらに多数の予備−顆粒化
材料あるいは無機又は有機の種類、例えば特にドロマイト又は微粉砕された植物残留物を用いることができる。有機固体担体としての使用に適した他の不活性担体材料には、天然及び合成樹脂(粗又は調製された)、例えばポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリレート、例えばポリメチルメタクリレート、ポリスチレン及びそれらの混合重合体のような有機廃ポリマー産物が含まれる。
【0033】
本発明の防汚組成物中で用いられるのに適した界面活性剤は、良好な乳化、分散及び/又は湿潤性を有する非−イオン性、カチオン性及び/又はアニオン性材料である。適したアニオン性界面活性剤には水溶性せっけん及び水溶性合成界面活性剤の両方が含まれる。適したせっけんは高級脂肪酸(C10−C22)あるいはココナツ油又は牛脂から得られ得る天然脂肪酸混合物のアルカリもしくはアルカリ−土類金属塩、非置換もしくは置換アンモニウム塩、例えばオレイン酸又はステアリン酸のナトリウムもしくはカリウム塩である。合成界面活性剤にはポリアクリル酸のナトリウムもしくはカルシウム塩;脂肪スルホネート及びサルフェート;スルホン化ベンズイミダゾール誘導体及びアルキルアリールスルホネートが含まれる。脂肪スルホネート又はサルフェートは通常アルカリもしくはアルカリ−土類金属塩、非置換アンモニウム塩又は8〜22個の炭素原子を有するアルキルもしくはアシル基で置換されたアンモニウム塩、例えばリグノスルホン酸又はドデシルスルホン酸あるいは天然脂肪酸から得られる脂肪アルコールサルフェートの混合物のナトリウムもしくはカルシウム塩、硫酸もしくはスルホン酸エステルのアルカリもしくはアルカリ−土類金属塩(例えばラウリル硫酸ナトリウム)ならびに脂肪アルコール/エチレンオキシド付加物のスルホン酸の形態にある。適したスルホン化ベンズイミダゾール誘導体は好ましくは8〜22個の炭素原子を含有する。アルキルアリールスルホネートの例はドデシルベンゼンスルホン酸又はジブチル−ナフタレンスルホン酸又はナフタレン−スルホン酸/ホルムアルデヒド縮合産物のナトリウム、カルシウム又はアルカノールアミン塩である。対応するホスフェート、例えばリン酸エステル及びp−ノニルフェノールとエチレン及び/又はプロピレンオキシドの付加物の塩あるいはリン脂質も適している。この目的に適したリン脂質はセファリン又はレシチン型の天然(動物もしくは植物細胞に由来する)又は合成リン脂質、例えばホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセリン、リゾレシチン、カルジオリピン、ジオクタニルホスファチジル−コリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン及びそれらの混合物である。
【0034】
適した非−イオン性界面活性剤には、分子中に少なくとも12個の炭素原子を含有するアルキルフェノール、脂肪アルコール、脂肪酸、脂肪族アミン又はアミドのポリエトキシル化及びポリプロポキシル化誘導体、アルキルアレンスルホネート及びジアルキルスルホスクシネート、例えば脂肪族及び環状脂肪族アルコール、飽和及び不飽和脂肪酸ならびにアルキルフェノールのポリグリコールエーテル誘導体が含まれ、該誘導体は好ましくは3〜10個のグリコールエーテル基及び(脂肪族)炭化水素部分中に8〜20個の炭素原子及びアルキルフェノールのアルキル部分中に6〜18個の炭素原子を含有する。さらに別の適した非−イオン性界面活性剤は、アルキル鎖中に1〜10個の炭素原子を含有するポリエチレンオキシドとポリプロピレングリコール、エチレンジアミノポリプロピレングリコールの水溶性付加物であり、その付加物は20〜250個のエチレングリコールエーテル基及び/又は10〜100個のプロピレングリコールエーテル基を含有する。そのような化合物は通常プロピレングリコール単位当たりに1〜5個のエチレングリコール単位を含有する。非−イオン性界面活性剤の代表的例はノニルフェノールポリエトキシエタノール、ひまし油ポリグリコールエーテル、ポリプロピレン/ポリエチレンオキシド付加物、トリブチルフェノキシポリエトキシエタノール、ポリエチレングリコール及びオクチルフェノキシポリエトキシエタノールである。ポリエチレンソルビタン(例えばポリオキシエチレンソルビタントリオレート)、グリセロール、ソルビタン、スクロース及びペンタエリトリトールの脂肪酸エステルも適した非−イオン性界面活性剤である。
【0035】
適したカチオン性界面活性剤には、場合によりハロ、フェニル、置換フェニル又はヒドロキシで置換されていることができる4個の炭化水素基を有する第4級アンモニウム塩、好ましくはハライド;例えばN−置換基として少なくとも1個のC−C22アルキル基(例えばセチル、ラウリル、パルミチル、ミリスチル、オレイルなど)ならびにさらなる置換基として非置換のもしくはハロゲン化された低級アルキル、ベンジル及び/又はヒドロキシ−低級アルキル基を含有する第4級アンモニウム塩が含まれる。
【0036】
通例であり且つ本目的に適した界面活性剤のさらに詳細な記述は例えば以下の公開文献に見出され得る:“McCutcheon’s Detergents and Emulsifiers Annual”(MC Publishing Crop.,Ridgewood,New Jersey,1981);“Tensid−Taschenbuch”,2nd ed.(Hanser Verlag,Vienna,1981)及び“Encyclopedia of Surfactants(Chemical Publishing Co.,New York,1980−1981)。
【0037】
あるいはまた、成分(I)及び(II)の組み合わせを少なくとも1種の適した有機溶媒(すなわち液体担体)で希釈し、続いて少なくとも1種の溶媒−可溶性乳化剤を添加すると、本発明に従う組成物の乳化可能な濃厚調製物を得ることもできる。この型の調製物に適した溶媒は通常、水−非混和性であり、炭化水素、塩素化炭化水素、ケトン、エステル、アルコール及びアミドの種類の溶媒に属し、それらはそれぞれ成分(I)及び(II)の溶解性に基づいて当該技術分野における熟練者により適切に選ばれることができる。乳化可能な濃厚液は通常、単数種もしくは複数種の有機溶媒の他に約10〜50重量%の活性成分の組み合わせ、約2〜20%の単数種もしくは複数種の乳化剤及び最高で20%の他の添加剤、例えば安定剤、腐蝕防止剤などを含有する。成分(I)及び(II)の組み合わせを懸濁濃厚液として調製することもでき、それは使用前に水で希釈されることが意図された(好ましくは有機)液体中の活性成分の安定な懸濁液である。そのような非−沈殿性フロアブル製品を得るために、最高で約10重量%の既知の保護コロイド及びチキソトロープ剤から選ばれる少なくとも1種の懸濁化剤をその中に導入することが通常必要である。例えば水和性粉末又は濃厚液(前記のような)を水で希釈することにより得られ、油中水型又は水中油型のものであることができる水性分散液及びエマルションのような他の液体調製物も本発明の範囲内に含まれる。
【0038】
本発明は、該成分(I)及び(II)の組み合わせをそれらの調製に適した1種もしくはそれより多い添加剤と一緒に含んでなる、例えば塗料、コーティング又はワニスの形態における保護組成物も提供する。そのような保護組成物中の成分(I)及び(II)の組み合わせの合計量は2〜10%(w/v)の範囲であることができる。該保護組成物中における使用に適した添加剤は当該技術分野において全く通例であり、例えば少なくとも1種の有機結合剤(好ましくは水性形態における)、例えばアクリル又はビニルに基づくエマルションもしくはロジン化合物;無機担体、例えば炭酸カルシウム;農耕用組成物(agronomic compositions)の調製に関して前に記載したような界面活性剤;粘度調節剤;腐蝕防止剤;顔料、例えば二酸化チタン;安定剤、例えば安息香酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム及び亜硝酸ナトリウム;無機もしくは有機着色剤などが含まれる。そのような添加剤を本発明のもののような活性殺生物性成分と一緒に調製する方法も、十分に当該技術分野における熟練者の知識の範囲内である。汚染生物の損傷効果を回復及び/又は制限するためだけでなく、有害な環境及び汚染生物の影響に供され得る材料に劣化が起こるのを予防するためにもそのような保護組成物を用いることができる。
【0039】
本発明の防汚組成物中における使用のための他の適した添加剤は固体又は液体であることができ、さらなる保護効果、すなわち保存及び取り扱い目的のための保護効果を与えな
がら、湿潤もしくは水性環境に暴露される表面又は物体を処理するための調製物の調製に適した当該技術分野で既知の物質である。そのような添加剤は例えばポリマーもしくはコポリマー、樹脂及び他の場合による添加剤、例えば撥水剤;表面滑り剤;希釈剤;有機結合剤;殺虫剤(insecticides);殺菌・殺カビ剤(fungicides);殺バクテリア剤(bactericides);補助溶媒;加工剤;定着剤;増粘剤;可塑剤;UV−安定剤;熱又は光に対する安定剤;染料;着色顔料;ドライヤー;腐蝕防止剤;沈降防止剤;皮張り防止剤;及び消泡剤などを含むことができる。
【0040】
本発明に従う防汚組成物は複数の通常の方法、例えば液圧スプレー、エア−ブラストスプレー、空気スプレー(aerial spray)、噴霧、散布、散乱又は注液(pouring)により適用することができる。目的とされる物体及び支配的な状況、すなわち抑制されるべき汚染生物の種類、利用できる装置の型及び保護されるべき材料の型に従って、当該技術分野における熟練者が最も適した方法を選ぶことができるであろう。
【0041】
前に示した通り成分(I)及び(II)の組み合わせは、保護されるべき材料への同時の投与を保証するために、該成分の両方が緊密に混合されている組成物の形態で好適に適用される。成分(I)及び(II)の両方の投与又は適用は、「連続−組合せ」投与又は適用であることもでき、すなわち成分(I)及び成分(II)を、それらが必然的に処理されるべき場所で一緒に混合されることになるであろうやり方で、同じ場所において交互にもしくは連続的に投与もしくは適用することもできる。これはすなわち連続投与もしくは適用が短時間内に、例えば24時間未満、好ましくは12時間未満内に行なわれれば達成されるであろう。この変法は、例えば活性成分(I)を含む調製物で満たされた少なくとも1個の容器及び活性成分(II)を含む調製物で満たされた少なくとも1個の容器を含んでなる適した単一の包装品を用いることにより行なわれ得る。従って本発明は:
−(a)活性成分(I)として組成物の乾燥塊の合計重量に基づいて少なくとも3.5重量%の量の4−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ピロール−3−カルボニトリルを含んでなる組成物及び
−(b)ベトキサジン、トリルフルアニド、ジクロフルアニド又はDCOITから選ばれる活性成分(II)を含んでなる組成物
を同時もしくは連続的使用のための組み合わせとして含有し、ここで該(a)及び(b)が汚染生物、特に藻類に対する相乗効果を与えるようなそれぞれの割合にある製品も包含する。
【0042】
以下の実施例は本発明の範囲を例示することを目的とする。
【実施例】
【0043】
1.96マルチ−ウェルプレートにおける毒プレートアッセイ(poison plate assay)
毒プレートアッセイを用いて藻類の生育に対する活性を決定した。計算された量の原液(4−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ピロール−3−カルボニトリル、ベトキサジン、DCOIT、ジクロフルアニド又はトリルフルアニドをDMSO中に含有する)をマルチウェルプレート中にピペットで入れ、0.05〜100ppmの範囲の最終的試験濃度を得、温培地と混合した。培地に300μlの藻類懸濁液を接種した。マルチ−ウェルプレートを21℃、65%の相対湿度及び1日16時間の明−暗サイクル(1000ルクス明期)に保った。
【0044】
可視の生育の阻止に十分なそれぞれの試験化合物又は試験化合物の混合物の最低濃度を最小阻止濃度(MIC)として採用した。MICを活性の最終点と理解した。次いで成分(I)と成分(II)の1つの組み合わせに関する最終点を、個別に用いられる時の純粋な活性試験化合物に関する最終点と比較した。
【0045】
Kull F.C.et al.によりApplied Microbiology,,538−541(1961)に記載されている通常用いられ且つ受け入れられている方法により、相乗性指数(Synergy Index)を用いて成分(I)及び成分(II)の1つの間の相乗作用を決定し、相乗性指数は2つの化合物A及びBに関して以下の通りに計算され:
【数1】

式中:
・Qは単独で作用する時の化合物Aの最終点を与えるppmでの濃度(例えばMIC)であり、
・Qは混合物における化合物Aの最終点を与えるppmでの濃度(例えばMIC)であり、
・Qは単独で作用する時の化合物Bの最終点を与えるppmでの濃度(例えばMIC)であり、
・Qは混合物における化合物Bの最終点を与えるppmでの濃度(例えばMIC)である。
【0046】
相乗性指数が1.0より大きい場合、拮抗作用が示される。SIが1.0に等しい場合、加成性が示される。SIが1.0より小さい場合、相乗作用が示される。
【0047】
表1:種々の活性成分及びそれらの組み合わせのクロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)(CCAP 211/12)に対するMIC−値(ppmにおける最小阻止濃度)及び相乗性指数(インキュベーション時間:18日)。
【0048】
【表1】

【0049】
*この生物に関する成分(I)のMIC−値は100ppmより高いが、この値をSIの計算に用いた。
【0050】
表2:種々の活性成分及びそれらの組み合わせのスチココックス・バシラリス(Stichococcus bacillaris))(CCAP 379/1A)に対するMIC−値(ppmにおける最小阻止濃度)及び相乗性指数(インキュベーション時間:18日)。
【0051】
【表2】

【0052】
*この生物に関する成分(I)のMIC−値は100ppmより高いが、この値をSIの計算に用いた。
【0053】
2.防汚塗料実施例
実施例1〜4は、通常のロジンに基づく防汚塗料組成物を示す。
【0054】
ロジンは、例えば松の木のオレオ樹脂中に天然に存在する固体材料であり、典型的には生きた木のオレオ樹脂性滲出液から、年数を経た切り株から及びクラフト紙製造の副産物として生産されるタル油から誘導される。ロジンは典型的にはゴムロジン、木材ロジン又はタル油ロジンとして分類され、それはその源を示す。
【0055】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(I)としての組成物の乾燥塊の合計重量に基づいて少なくとも3.5重量%の量の4−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ピロール−3−カルボニトリル(I)、及びトリルフルアニド(II−b)又はジクロフルアニド(II−c)から選ばれる成分(II)、ならびに担体を含んでなり、成分(I)対成分(II)の重量比が3:1〜1:3であり、汚染生物に対して相乗的防汚効果を与える組成物。
【請求項2】
成分(II)がジクロフルアニド(II−c)から選ばれる請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
成分(II)がトリルフルアニド(II−b)から選ばれる請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
成分(I)対成分(II)の1種の重量比が3:1〜1:2である請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
成分(I)の量が組成物の乾燥塊の合計重量に基づいて4重量%〜6重量%の範囲である請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
成分(II)の量が組成物の乾燥塊の合計重量に基づいて3.5重量%〜6重量%の範囲である請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
汚染生物の抑制のための請求項1〜6のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の組成物の投与又は適用を含んでなる汚染生物に対する材料の保護方法。

【公開番号】特開2011−63617(P2011−63617A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263743(P2010−263743)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【分割の表示】特願2003−541362(P2003−541362)の分割
【原出願日】平成14年11月5日(2002.11.5)
【出願人】(390033008)ジヤンセン・フアーマシユーチカ・ナームローゼ・フエンノートシヤツプ (616)
【氏名又は名称原語表記】JANSSEN PHARMACEUTICA NAAMLOZE VENNOOTSCHAP
【Fターム(参考)】