説明

5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールの製造方法

【課題】5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールの新規な製造方法を提供すること。
【解決手段】式(2)


で表される化合物と、鉱酸と、亜硝酸塩とを混合する工程を含む5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールの製造方法。式(2)で表される化合物は、例えば、式(1)


(式中、Rは、1〜6個の炭素原子を有する鎖状のアルキル基又は3〜6個の炭素原子を有する環状のアルキル基を表す。前記鎖状のアルキル基及び前記環状のアルキル基は、それぞれ置換基を有していてもよい。)で表される化合物を加水分解することにより得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールの製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールは、医薬品、農薬品等の合成中間体として用いられている。その製造方法として、イソチオシアン酸アリル誘導体に塩素化剤を反応させた後、液体アンモニア又はヘキサメチレンテトラミンを反応させる方法が、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−234864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールの新規な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような状況下、本発明者は、5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールの製造方法について鋭意検討し、本発明に至った。
【0006】
即ち本発明は、以下の通りである。
〔1〕 式(2)
【0007】
【化1】

で表される化合物と、鉱酸と、亜硝酸塩と
を混合する工程を含む5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールの製造方法。
〔2〕 鉱酸が、塩酸、硫酸及びリン酸からなる群より選択される少なくとも一種である前記〔1〕記載の方法。
〔3〕 式(1)
【0008】
【化2】

(式中、Rは、1〜6個の炭素原子を有する鎖状のアルキル基又は3〜6個の炭素原子を有する環状のアルキル基を表す。前記鎖状のアルキル基及び前記環状のアルキル基は、それぞれ置換基を有していてもよい。)
で表される化合物を加水分解する工程を含む式(2)
【0009】
【化3】

で表される化合物の製造方法。
〔4〕 式(1)
【0010】
【化4】

(式中、Rは、1〜6個の炭素原子を有する鎖状のアルキル基又は3〜6個の炭素原子を有する環状のアルキル基を表す。前記鎖状のアルキル基及び前記環状のアルキル基は、それぞれ置換基を有していてもよい。)
で表される化合物を加水分解する工程と、
前記工程により得られた式(2)
【0011】
【化5】

で表される化合物と、鉱酸と、亜硝酸塩とを混合する工程と
を含む5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールの製造方法。
〔5〕 鉱酸が、塩酸、硫酸及びリン酸からなる群より選択される少なくとも一種である前記〔4〕記載の方法。
〔6〕 式(1)で表される化合物が、5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールと式(3)
【0012】
【化6】

(式中、Rは、前記〔4〕記載の定義と同じ。)
で表される化合物とを溶媒の存在下で混合する工程(1)と、
前記工程(1)により得られた、式(4)
【0013】
【化7】

(式中、Rは前記と同じ意味を表わす。)
で表される化合物及び式(1)で表される化合物を含む固液混合物を、固液分離する工程(2)と
を経て得られる溶液に含まれる化合物である前記〔4〕又は〔5〕記載の方法。
〔7〕 前記溶媒が、水又は水と有機溶媒との混合溶媒である前記〔6〕記載の方法。
〔8〕 前記〔4〕〜〔7〕のいずれかに記載の方法により得られる5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールと式(3)
【0014】
【化8】

(式中、Rは、請求項4記載の定義と同じ。)
で表される化合物とを混合する工程を含む式(4)
【0015】
【化9】

(式中、Rは前記と同じ意味を表わす。)
で表される化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールの新規な製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0018】
本発明の5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールの製造方法は、式(2)
【0019】
【化10】

で表される化合物(以下、この化合物を化合物(2)と記すことがある。)と、鉱酸と、亜硝酸塩とを混合する工程(以下、本工程を、脱カルバモイル工程と記すことがある。)を含む。
【0020】
上記鉱酸としては、塩酸、硫酸、リン酸等を挙げることができ、好ましくは硫酸である。
上記鉱酸は、水で希釈して用いてもよい。水で希釈する場合、鉱酸の濃度は、好ましくは5〜35重量%の範囲である。
鉱酸の量は、化合物(2)1モルに対して、好ましくは2〜8モルの範囲、より好ましくは4〜6モルの範囲である。
【0021】
上記亜硝酸塩としては、例えば、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム等の亜硝酸のアルカリ金属塩、亜硝酸カルシウム等の亜硝酸のアルカリ土類金属塩が挙げられ、好ましくは亜硝酸のアルカリ金属塩、より好ましくは亜硝酸ナトリウムが挙げられる。
上記亜硝酸塩の量は、化合物(2)1モルに対して、好ましくは1〜3モル、より好ましくは1.1〜1.5モルの範囲である。
【0022】
化合物(2)と鉱酸と亜硝酸塩との混合順序は特に限定されず、化合物(2)に鉱酸および亜硝酸塩を混合してもよいし、鉱酸および化合物(2)に亜硝酸塩を混合してもよいし、亜硝酸塩および化合物(2)に鉱酸を混合してもよいが、好ましくは鉱酸および化合物(2)を混合し、得られた混合物に亜硝酸塩を混合する。
上記混合は溶媒中で行ってもよい。かかる溶媒としては、特に限定されないが水が好ましい。
【0023】
脱カルバモイル工程における温度は、例えば0〜100℃、好ましくは20〜60℃の範囲である。
脱カルバモイル工程の時間は、例えば10分〜48時間、好ましくは30分〜6時間の範囲である。
【0024】
脱カルバモイル工程で得られた反応混合物(反応溶液等)において、5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールは、例えば、鉱酸塩の形態となっている。この場合、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基で該反応混合物を中和することが好ましい。該中和における塩基の量は、5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールの鉱酸塩1モルに対し、好ましくは1モル〜5モルである。該中和は、該反応混合物と塩基とを混合することにより行われる。
【0025】
該反応混合物の中和により5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールを含む混合物(水溶液等)が得られる。該混合物は、さらに、抽出、水洗等の後処理を行ってもよいし、結晶化、抽出、蒸留、活性炭、シリカ、アルミナ等の吸着法、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等のクロマトグラフィー法等の精製を行ってもよい。該混合物は、上述の鉱酸を加えることにより、5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールの鉱酸塩として再結晶化してもよい。
【0026】
化合物(2)は、例えば、式(1)
【0027】
【化11】

(式中、Rは、1〜6個の炭素原子を有する鎖状のアルキル基又は3〜6個の炭素原子を有する環状のアルキル基を表す。前記鎖状のアルキル基及び前記環状のアルキル基は、それぞれ置換基を有していてもよい。)
で表される化合物(以下、化合物(1)と記すことがある。)を加水分解することにより得ることができる。化合物(1)を加水分解する工程を含む化合物(2)の製造方法もまた、本発明の1つである。
【0028】
式(1)におけるRとしては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、イソプロピル基、t−ブチル基等の1〜6個の炭素原子を有する鎖状のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の3〜6個の炭素原子を有する環状アルキル基等を挙げることができる。
前記鎖状のアルキル基及び前記環状のアルキル基は、それぞれ置換基を有していてもよい。該置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルコキシ基等が挙げられる。
【0029】
置換基を有するアルキル基としては、フルオロメチル基、クロロメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基等のハロアルキル基;メトキシメチル基、エトキシエチル基等の(C1〜C4アルコキシ)C1〜C4アルキル基;フルオロシクロペンチル基、クロロシクロペンチル基等のハロアルキル基;メトキシシクロペンチル基、エトキシシクロペンチル基等の(C1〜C4アルコキシ)C3〜C6シクロアルキル基;等が挙げられる。ここで、C1〜C4とは炭素原子数1〜4であることを、C3〜C6とは炭素原子数3〜6であることを表す。
【0030】
Rとしては、好ましくは1〜6個の炭素原子を有する鎖状のアルキル基であり、より好ましくは1〜4個の炭素原子を有する鎖状のアルキル基であり、更に好ましくはメチル基およびエチル基である。
【0031】
化合物(1)の具体例として、N−[2−クロロチアゾール−5−イルメチル]−O−メチル−イソ尿素、N−[2−クロロチアゾール−5−イルメチル]−O−エチル−イソ尿素、N−[2−クロロチアゾール−5−イルメチル]−O−プロピル−イソ尿素、N−[2−クロロチアゾール−5−イルメチル]−O−ブチル−イソ尿素等が挙げられる。
【0032】
化合物(1)の加水分解は、例えば酸又は塩基の存在下、好ましくは塩基の存在下で化合物(1)と水とを接触させることにより行われる。
【0033】
加水分解に用いる酸としては、塩酸、硫酸、硝酸等が挙げられる。酸の量は、化合物(1)1モルに対し、好ましくは1〜10モル、より好ましくは2〜6モルの範囲である。
加水分解に用いる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物等が挙げられる。塩基の量は、化合物(1)1モルに対し、好ましくは1〜10モル、より好ましくは2〜6モルの範囲である。
水の量は、化合物(1)1重量部に対し、好ましくは5〜100重量部、より好ましくは10〜80重量部である。
【0034】
化合物(1)と水との接触は、例えば、化合物(1)と水とを混合することにより行われる。
上記加水分解は、例えば5〜100℃、好ましくは20〜90℃、より好ましくは40〜90℃の温度下で行うことができる。上記加水分解の時間は、特に限定されないが、例えば1〜24時間でよい。
【0035】
上記加水分解により得られる化合物(2)は、例えば、結晶として回収することができる。化合物(2)の結晶は、上記加水分解により得られる反応液を−10〜40℃の温度下にすることにより効率よく析出させることができる。該結晶の回収は、ろ過、乾燥などの公知の方法により行うことができる。
【0036】
上記加水分解の後、化合物(2)の結晶を析出させる前に、副生された不溶成分を除去することが好ましい。不溶成分の除去は、ろ過、有機溶媒での抽出等の方法で行うことができる。不溶成分の除去をろ過により行う場合、珪藻土等のろ過助剤を用いることが好ましい。なお、ろ過助剤は、加水分解を行う際に加えていてもよい。
【0037】
化合物(1)は、5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールと式(3)
【0038】
【化12】

(式中、Rは前記と同じ意味を表わす。)
で表される化合物(以下、化合物(3)と記すことがある)とを混合することにより、殺虫剤の製造用中間体等として有用な式(4)
【0039】
【化13】

(式中、Rは前記と同じ意味を表す。)
で表される化合物(以下、化合物(4)と記すことがある)を得る操作において、副生物として得られうる。
【0040】
上記化合物(4)を得る操作において、化合物(1)は、5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールと化合物(3)とを溶媒の存在下で混合する工程(以下、工程(1)と記すことがある。)と、前記工程(1)により得られた、化合物(4)及び化合物(1)を含む固液混合物を、固液分離する工程(以下、工程(2)と記すことがある。)とを経て、溶液として回収することができる。該操作において、5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールは、本発明の製造方法により得られた5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールであってもよい。
【0041】
上記化合物(4)を得る操作は、特開平10−120666号公報等に詳細に説明されている。5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールと化合物(3)との混合は、好ましくは、水中又は水と有機溶媒との混合溶媒中で行われ、より好ましくは水中で行われる。該有機溶媒としては、ベンゼン,トルエン,キシレン等の芳香族炭化水素;ジクロロメタン,クロロホルム,1,2−ジクロロエタン,四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素;ヘキサン,ヘプタン,シクロヘキサン等の飽和炭化水素;ジエチルエーテル,テトラヒドロフラン,ジオキサン等のエーテル;アセトン,メチルエチルケトン等のケトン;アセトニトリル,プロピオニトリル等のニトリル;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド;N,N’−ジメチルホルムアミド,N,N’−ジメチルアセトアミド等の酸アミド;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル;メタノール,エタノール,プロパノール,イソプロパノール等のアルコール;等が挙げられる。5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールと化合物(3)との混合は、化合物(3)を水で溶解させた後に行うことが好ましい。該操作において、化合物(4)は、結晶として得られる。
【0042】
化合物(4)を効率よく得る点で、該混合は、好ましくはpH5〜8、より好ましくはpH6〜7.5の条件下で行う。該混合中、例えば、pHをpH5〜8の範囲内で、連続的又は段階的に変化させてもよい。該混合は、好ましくは−10℃〜50℃、より好ましくは10℃〜35℃程度の温度で行う。該混合中、例えば、温度を−10℃〜50℃の範囲内で、連続的又は段階的に変化させてもよい。
【0043】
工程(1)は、より一層好ましくは、5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールと化合物(3)とを、水中又は水と有機溶媒との混合溶媒中、pH5〜8の条件下で混合する工程である。
【0044】
固液分離は、ろ過、沈降分離、デカンテーション等の公知の手法により行うことができ、特に限定されない。沈降分離は、重力式、遠心式等により行なうことができる。ろ過の手法としては、重力式、真空式、圧力式、遠心式等が挙げられる。ろ過は、回分式で行なってもよいし、連続式で行なってもよい。固液分離における温度及びpHは、特に限定されず、例えば−10℃〜50℃、pH5〜8で行うことができる。
ろ過により固液分離を行った場合、ろ液だけでなく、ろ過物として得られた化合物(4)の結晶を洗浄する際に得られる液も、化合物(1)を含む溶液として回収することができる。回収された化合物(1)を使用する場合、回収された化合物(1)を含む溶液をそのまま用いることもできるし、該溶液を濃縮及び/又は精製して用いることもできる。
【0045】
上記化合物(4)を得る操作の一例として、化合物(3)を水に溶解させた後、10℃〜35℃程度の温度で5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールを混合して、化合物(4)及び化合物(1)を含む混合物を得、固液分離して、結晶として化合物(4)を取り出す方法等が挙げられる。化合物(4)を取り出した液は、化合物(1)を含む溶液として得ることができる。化合物(1)を含む溶液としては、例えば、ろ液や、沈降分離又はデカンテーションにより得られる上澄液等が挙げられる。
【0046】
化合物(1)を加水分解する工程と、前記工程により得られる化合物(2)と、鉱酸と、亜硝酸塩とを混合する工程とを含む5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールの製造方法により、化合物(1)を有効に利用することができる。
【0047】
かかる5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールの製造方法において、化合物(1)が、5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールと化合物(3)とを溶媒の存在下で混合する工程(1)と、前記工程(1)により得られた、化合物(4)及び化合物(1)を含む固液混合物を、固液分離する工程(2)とを経て得られる溶液に含まれる化合物である態様も、好ましい態様として挙げられる。
【0048】
化合物(3)は、例えば、炭素数1〜6のアルキル基を有するO−アルキルイソ尿素をニトロ化することにより得られる。上記ニトロ化は、例えば、濃硫酸や発煙硫酸の存在下で上記O−アルキルイソ尿素と硝酸とを接触させる等の方法により行うことができる。5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールと化合物(3)との混合において、化合物(3)の量は、限定されないが、5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾール1モルに対し、例えば0.2〜5モル、好ましくは0.7〜1.5モルである。上記混合は、無溶媒で行ってもよいが、好ましくは、水、有機溶媒等の溶媒中で行われる。上記混合は、例えば0〜80℃、好ましくは5〜50℃の温度下で行うことができる。上記混合は、好ましくはpH5〜9、より好ましくはpH6〜8で行うことができる。
【0049】
化合物(1)は、化合物(4)を脱ニトロアミド化させることにより得ることもできる。脱ニトロアミド化は、化合物(4)とアンモニアとを接触させる等により行うことができる。
【0050】
脱ニトロアミド化は、有機溶媒中で行うことが好ましい。該有機溶媒としては、アセトニトリル等のニトリル溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル溶媒等が挙げられる。化合物(4)とアンモニアとの接触は、化合物(4)を上記有機溶媒中に溶解させた後、アンモニア水を滴下することにより行うことが好ましい。
【0051】
脱ニトロアミド化において、アンモニアの量は、化合物(4)1モルに対して2〜10モルであることが好ましい。脱ニトロアミド化において、好ましい温度は0〜40℃であり、好ましい圧力は90kPa〜大気圧である。
【実施例】
【0052】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0053】
参考例1<化合物(1)の製造例>
N−(2−クロロチアゾール−5−イルメチル)−O−メチル−N’−ニトロイソ尿素50gをアセトニトリル400mL中で攪拌しながら28%アンモニウム水58.6gを25〜30℃で滴下した。得られた混合液を、該温度で1時間保温した後、減圧下アセトニトリルを留去した。
得られた残渣を酢酸エチル120mLで希釈し、無水硫酸マグネシウム5gで脱水した後、得られた混合物より不溶成分を濾過して、得られた液を減圧濃縮した。得られた油状物質にトルエン50mLおよびn−ヘキサン30mLを加えて溶解し、更にn−ヘキサンを徐々に加えていくことにより結晶を析出させた。
該結晶を濾取した後、上記と同様にトルエンとn−ヘキサンとを加えることにより再結晶を行い、得られた結晶を濾取し、該結晶を減圧乾燥することにより、N−(2−クロロチアゾール−5−イルメチル)−O−メチルイソ尿素の白色結晶18gを得た。
高速液体クロマトグラフィー面積百分率による純度:98.3%
融点:71〜72℃
H−NMR:3.7(s,3H)、4.4(s,2H)、4.9(s,2H)、7.4(s,1H)
【0054】
参考例2<化合物(3)の製造例>
O−メチルイソ尿素1/2硫酸塩65g(含量98重量%、0.5mol)を発煙硫酸(三酸化イオウ濃度10重量%)100gに溶解し、得られた混合物に10℃で98重量%硝酸82g(1.3mol)を1時間で滴下した。滴下後の混合物を上記温度下で6時間撹拌することにより、O−メチル−N−ニトロイソ尿素を含む溶液236gを得た。
高速液体クロマトグラフィーにて分析した結果、該反応液はO−メチル−N−ニトロイソ尿素を23重量%含有していた。
【0055】
参考例3<化合物(4)の製造例>
O−メチル−N−ニトロイソ尿素を含む溶液236gを水170gへ攪拌しながら10℃以下で滴下し、次いで27重量%水酸化ナトリウム水溶液490gを20℃以下で加えてpH7〜8まで中和した。
中和した混合物に5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾール塩酸塩水溶液(含量34.6重量%)211gを加え、5%水酸化ナトリウム水溶液を加えることにより、得られた混合物をpH6.5〜7に調整した。得られた溶液を20℃で14時間、攪拌した後、30℃に昇温してさらに12時間攪拌することにより、結晶を含む混合液を得た。上記攪拌の間、5重量%水酸化ナトリウム水溶液でpH6.5〜7に維持させた。
該混合液を濾過し、得られた結晶を温水で洗浄して、濾液および洗液を併せて1500g回収した。回収された液は、N−(2−クロロチアゾール−5−イルメチル)−O−メチルイソ尿素を1.4重量%の濃度で含んでいた。
一方、得られた結晶を減圧乾燥することにより、N−(2−クロロチアゾール−5−イルメチル)−O−メチル−N’−ニトロイソ尿素を71g得た。
【0056】
実施例1−1
参考例3と同様の方法で得られたN−(2−クロロチアゾール−5−イルメチル)−O−メチル−イソ尿素を1.5重量%含む溶液3000gに、27重量%水酸化ナトリウム水溶液150gを加え、80℃に加熱して3時間保温した。その後、得られた混合物を室温(約20℃)まで冷却してN−(2−クロロチアゾール−5−イルメチル)−尿素を含む結晶を得、該結晶を濾過、水洗、減圧乾燥して36gの結晶を得た。
該結晶におけるN−(2−クロロチアゾール−5−イルメチル)−尿素の含有量は93重量%、N−(2−クロロチアゾール−5−イルメチル)−O−メチル−N’−イソ尿素からの収率は75%であった。
【0057】
実施例1−2
実施例1−1と同様にして得られたN−(2−クロロチアゾール−5−イルメチル)−O−メチル−N’−イソ尿素150g(含有量93重量%)を30%硫酸1330gに40℃で溶解した。
得られた硫酸溶液に、30重量%亜硝酸ナトリウム水溶液245gを同温度で2時間かけて滴下した。得られた混合液を同温度でさらに1時間かけて攪拌した後、得られた反応液を室温まで冷却し、27重量%水酸化ナトリウム水溶液1290gを加えてpH13に調整し、続いてトルエン750gで2回抽出した。
合一したトルエン層に水140gと35重量%濃塩酸67gを加え、トルエン層を分離すると、5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾール塩酸塩の水溶液315gが得られた。
該水溶液を高速液体クロマトグラフィーにて分析した結果、5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールの含有量は36.5重量%、N−(2−クロロチアゾール−5−イルメチル)−尿素からの収率は85%であった。
【0058】
実施例2
参考例3と同様の方法により、N−(2−クロロチアゾール−5−イルメチル)−O−メチルイソ尿素を1.5重量%含む溶液を得た。該溶液1000gに27重量%水酸化ナトリウム水溶液50gと珪藻土(ラヂオライト#700)とを5g加え、得られた80℃に加熱して3時間保温した後、同温度で不溶成分を濾過した。
濾液を室温まで冷却してN−(2−クロロチアゾール−5−イルメチル)−尿素を含む結晶を得、該結晶を濾過、水洗、減圧乾燥して36gの結晶を得た。
該結晶におけるN−(2−クロロチアゾール−5−イルメチル)−尿素の含有量は93重量%、N−(2−クロロチアゾール−5−イルメチル)−O−メチル−N’−イソ尿素からの収率は69%であった。
【0059】
実施例3
参考例3と同様の方法により、N−(2−クロロチアゾール−5−イルメチル)−O−メチル−イソ尿素を1.5重量%含む溶液を得た。該溶液800gに、27重量%水酸化ナトリウム水溶液40gを加え、80℃に加熱して3時間保温した。
同温度でトルエン80gを加え攪拌した。次に、トルエン層と水層とに分離し、得られた水層を室温(約20℃)まで冷却してN−(2−クロロチアゾール−5−イルメチル)−尿素を含む結晶を得、該結晶を濾過、水洗、減圧乾燥して9.1gの結晶を得た。
該結晶におけるN−(2−クロロチアゾール−5−イルメチル)−尿素の含有量は97重量%、N−(2−クロロチアゾール−5−イルメチル)−O−メチル−N’−イソ尿素からの収率は72%であった。
【産業上の利用可能性】
【0060】
5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールは、医薬品、農薬品等の合成中間体として用いられている。本発明は、5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールの製造方法として産業上利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(2)
【化1】

で表される化合物と、鉱酸と、亜硝酸塩と
を混合する工程を含む5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールの製造方法。
【請求項2】
鉱酸が、塩酸、硫酸及びリン酸からなる群より選択される少なくとも一種である請求項1記載の方法。
【請求項3】
式(1)
【化2】

(式中、Rは、1〜6個の炭素原子を有する鎖状のアルキル基又は3〜6個の炭素原子を有する環状のアルキル基を表す。前記鎖状のアルキル基及び前記環状のアルキル基は、それぞれ置換基を有していてもよい。)
で表される化合物を加水分解する工程を含む式(2)
【化3】

で表される化合物の製造方法。
【請求項4】
式(1)
【化4】

(式中、Rは、1〜6個の炭素原子を有する鎖状のアルキル基又は3〜6個の炭素原子を有する環状のアルキル基を表す。前記鎖状のアルキル基及び前記環状のアルキル基は、それぞれ置換基を有していてもよい。)
で表される化合物を加水分解する工程と、
前記工程により得られた式(2)
【化5】

で表される化合物と、鉱酸と、亜硝酸塩とを混合する工程と
を含む5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールの製造方法。
【請求項5】
鉱酸が、塩酸、硫酸及びリン酸からなる群より選択される少なくとも一種である請求項4記載の方法。
【請求項6】
式(1)で表される化合物が、5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールと式(3)
【化6】

(式中、Rは、請求項4記載の定義と同じ。)
で表される化合物とを溶媒の存在下で混合する工程(1)と、
前記工程(1)により得られた、式(4)
【化7】

(式中、Rは前記と同じ意味を表わす。)
で表される化合物及び式(1)で表される化合物を含む固液混合物を、固液分離する工程(2)と
を経て得られる溶液に含まれる化合物である請求項4又は5記載の方法。
【請求項7】
前記溶媒が、水又は水と有機溶媒との混合溶媒である請求項6記載の方法。
【請求項8】
請求項4〜7のいずれかに記載の方法により得られる5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールと式(3)
【化8】

(式中、Rは、請求項4記載の定義と同じ。)
で表される化合物とを混合する工程を含む式(4)
【化9】

(式中、Rは前記と同じ意味を表わす。)
で表される化合物の製造方法。

【公開番号】特開2011−132224(P2011−132224A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263264(P2010−263264)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】