説明

5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オンの製造方法

式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩の製造方法であって、
キシレン溶媒中、式(V)の化合物と式(IV)の化合物を反応させて式(III)の化合物を得る工程、その後のP1脱保護工程およびP2脱保護工程を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オンおよびその薬学的に許容される塩の改善された製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オン(化合物(I))ならびにその製造方法は、WO 2006122788 A1に記載されている。
【0003】
5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オンのナパジシル酸塩ならびにその製造方法は、WO 2008095720 A1に記載されている。
【0004】
本発明者らは、WO 2006122788 A1およびWO 2008095720 A1に記載の合成方法を改変することにより、(a)化合物(I)およびその塩の収率を増し、(b)最終生成物中の不純物の量を最小化し、そして/または、(c)反応時間を少なくすることが可能であることを予想外に見いだした。
【0005】
これらの目的は、特定の溶媒を選択し、そして/または、いくつかの精製工程を改変または除去し、そうして反応時間を短くし、一方で、最終生成物の全収量を増加することにより達成され得る。さらに、本発明の方法は、大規模製造により好適である。
【0006】
WO 2006122788 A1は、5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オンの製造方法の3工程を記載する。
【化1】

【0007】
WO 2008095720 A1は、式(Ia)の化合物のナパジシル酸塩の製造方法を開示する。
【化2】

【0008】
結果として、先行技術に従って中間体(V)および(IV)から式(Ia)の化合物のナパジシル酸塩を製造するためには4工程が行われなければならず、そこでそれぞれ一旦得られた中間体は、単離および精製された後に次工程で出発物質として用いられた。先行技術の精製工程は、例えば、溶媒抽出またはクロマトグラフィー技術のような当技術分野で既に公知常套の精製法を用いて行われた。ナパジシル酸塩化合物(Ia)を製造するための全収率は、約9.5%と計算され、さらに、HPLC分析により測定された不純物濃度は、約5−6%であった。
【発明の概要】
【0009】
驚くことに、5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オンおよびその塩の製造方法は、反応条件の変更、特に、数工程の精製方法の変更あるいは省略、それによる多くの反応工程の簡素化、さらに反応の全収量の向上により大幅に改善され得ることが見いだされた。さらに、溶媒の適当な選択により、所望の生成物を高収率で、かつ以前の方法と比較してより純粋な形態で得ることができることが見いだされた。
【0010】
従って、本発明は、式(I)
【化3】


の5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オン化合物、またはその薬学的に許容される塩の製造方法であって、
以下:
a) キシレン溶媒中、式(V)
【化4】


の化合物(式中、P1およびP2は、ヒドロキシ保護基であり、そしてLは脱離基である。)と、式(IV)
【化5】


の6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキサン−1−アミンを反応させて、式(III)
【化6】


の化合物を得る工程、
b) P1脱保護工程およびP2脱保護工程を行い、保護基P1およびP2を除去して式(I)の化合物を得る工程を含む、製造方法を提供する。
【0011】
一般的に、
(i) P2脱保護工程は、30−60℃の範囲の温度で最大8時間かけて行われ、そして/または
(ii) P1脱保護工程は、酢酸または酢酸とアルコールまたはエステルの混合物である溶媒の存在下で行われる。
【0012】
工程(a)は、キシレン溶媒中で行われる。対照的に、WO 2006/122788に記載される対応する反応工程は、DMSO中で行われる。驚くことに、特にキシレン溶媒の使用が、式(III)の化合物の純度を顕著に改善し得ることが、本発明で見いだされている。
【0013】
好ましい態様において、上記の工程(b)は、以下:
−式(III)の化合物上のP2脱保護工程を行い、式(II)
【化7】


の化合物(式中、P1は上記に定義の通りである。)を得て;そして
−式(II)の化合物上のP1脱保護工程を行い、式(I)
【化8】


の化合物を得ることを含む。
【0014】
故に、この態様において、本発明は、式(I)
【化9】


の5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オン化合物、またはその薬学的に許容される塩の製造方法であって、
以下:
a) キシレン溶媒中、式(V)
【化10】


の化合物(式中、P1およびP2は、ヒドロキシ保護基であり、そしてLは脱離基である。)と、式(IV)
【化11】


の6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキサン−1−アミンを反応させて、式(III)
【化12】


の化合物を得て、
【0015】
(b) 式(III)の化合物を脱保護して、式(II)
【化13】


の化合物(式中、P1は上記に定義の通りである。)を得て;そして
(c) 式(II)の化合物を脱保護して、式(I)
【化14】


の化合物を得ることを含む。
【0016】
一般的に、この態様において:
(i) 工程b)は、30−60℃の範囲の温度で最大8時間かけて行われ、そして/または
(ii) 工程c)は、酢酸または酢酸とアルコールまたはエステルの混合物である溶媒の存在下で行われる。
【0017】
さらなる態様において、本発明の方法は、以下:
a) キシレン溶媒中、式(V)
【化15】


の化合物(式中、P1およびP2は、ヒドロキシ保護基であり、そしてLは脱離基である。)と、式(IV)
【化16】


の6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキサン−1−アミンを反応させて、式(III)
【化17】


の化合物を得る工程、
【0018】
b) 式(III)の化合物を脱保護して、式(II')
【化18】


の化合物(式中、P2は上記に定義の通りである。)を得て;そして
c) 式(II')の化合物を脱保護して、式(I)
【化19】


の化合物を得る工程を含む。
【0019】
一般的に、この態様において、
(i) 工程b)は、酢酸または酢酸とアルコールまたはエステルの混合物である溶媒の存在下で行われ、そして/または
(ii) 工程c)は、30−60℃の範囲の温度で最大8時間かけて行われる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、反応方法の一態様を示す。
【0021】
P1およびP2は、ヒドロキシ保護基である。P1およびP2は、同一または異なっていてよい。好ましくは、それらは異なる。当業者は、P1およびP2部位に好適なヒドロキシ保護基を容易に選択できる。例えば、適当な保護基は、T. W. GreeneおよびG. M. Wuts、Protective Groups in Organic Chemistry、第3版、ワイリー、ニューヨーク(1999)に記載され、その内容を参照により本明細書に包含させる。
【0022】
好適なヒドロキシ保護基の例には、メチル、エチル、およびtert−ブチルのようなアルキル基;アシル基、例えば、アセチルのようなアルカノイル基;ベンジル(Bn)、p−メトキシベンジル(PMB)、9−フルオレニルメチル(Fm)、およびジフェニルメチル(ベンズヒドリル,DPM)のようなアリールメチル基;トリメチルシリル(TMS)およびtert−ブチルジメチルシリル(TBS)のようなシリル基などが含まれる。
【0023】
一般的に、P1は、ベンジル基である。この態様において、P1脱保護工程は、一般的に、好ましくは、水酸化パラジウム(II) (Pd(OH)2)またはパラジウム(O)(Pd(O))のような触媒の存在下での水素化により行われる。好ましくは、触媒は、パラジウム(O)炭素である。
【0024】
一般的に、この態様において、P1脱保護工程の水素化反応は、用いる反応物質の量の10重量%未満、好ましくは5重量%未満、最も好ましくは、約4重量%の量の触媒の存在下で行われる。これらの量の触媒の使用は、一般的に、生じる不純物濃度を低下させ、特に、デスフルオロ不純物、すなわち、5−(2−{[6−(2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オンの形成を減少し得る。また、ジヒドロキノリン不純物の形成を低減させ得る。
【0025】
一般的に、P2は、tert−ブチルジメチルシリル基である。この態様において、P2脱保護工程は、一般的に、好ましくはテトラヒドロフラン(THF)のような溶媒中、フッ化テトラ−n−ブチルアンモニウム三水和物(TBAF)と、またはエーテル、エステルおよびアルコールから選択される溶媒中、塩化水素と反応させて行われる。好ましくは、この態様において、P2脱保護工程は、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル(TBME)、エタノールおよび酢酸イソプロピルから選択される溶媒中、塩化水素を用いて行われる。
【0026】
あるいは、この態様において、P2脱保護工程は、好ましくは、テトラヒドロフラン(THF)または2−メチルテトラヒドロフラン中、好ましくはTHF中、TBAFを用いて行われる。
あるいは、この態様において、P2脱保護工程は、好ましくは、テトラヒドロフラン(THF)中、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸を用いて行われる。
【0027】
Lは脱離基である。当業者は、L部位に好適な脱離基を容易に選択可能である。好適な脱離基の例には、ハロゲン原子、メシレート基(−O−S(O)2−CH3)およびトリフラート基(−OS(O)2−CF3)が挙げられる。
好ましくは、Lはハロゲン原子である、より好ましくは、Lは臭素原子である。
【0028】
一般的に、工程(a)で用いる溶媒は、実質的にDMSO不含有である。より好ましくは、それは、実質的に、DMSOおよびジオキサン不含有である。
【0029】
上記の工程(a)で詳述したキシレン溶媒の使用は、同工程(a)がDMSOのような溶媒中で行われる場合と比較して、純度および/または収率の総合的な改善を可能とする。
【0030】
本発明の別の態様において、P2脱保護工程は、40−50℃の範囲の温度で6時間以下、好ましくは4時間未満、より好ましくは2時間未満、最も好ましくは1時間以内で行われる。P2脱保護工程の反応時間の短縮は、驚くことに、望まれない副生成物の形成を低減し得る。
【0031】
さらに別の態様において、P2脱保護工程の水素化は、所望により、反応物質1g当たり約0.3−0.9gのフッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)の存在下で行われる。一般的に、反応物質は、式(II)の化合物である。
【0032】
本発明の別の態様において、P2脱保護工程から得られる化合物は、結晶化により精製される。一般的に、結晶化は、アルコール、好ましくはエタノール中、1,5−ナフタレンスルホン酸を用いて行われる。クロマトグラフィーよりもむしろ、結晶化によりP2脱保護工程から得られた化合物の精製は、純度および/または収率の改善を可能とする。好ましくは、この態様において、P2脱保護工程は、P1脱保護工程前に行われ、故に、P2脱保護工程から得られた化合物は、式(II)の化合物である。
【0033】
本発明の好ましい態様において、P1脱保護工程は、酢酸または酢酸とアルコールまたはエステルの混合物である溶媒の存在下で行われる。好ましくは、この態様において、溶媒は、酢酸のみ、または酢酸/メタノール混合物(1:1)であり、より好ましくは、酢酸/メタノール(1:1)である。
【0034】
一般的に、該溶媒は、5%(v/v)未満、好ましくは3%未満、より好ましくは1%未満の、酢酸、アルコールおよびエステル以外の液体、好ましくは、酢酸およびメタノール以外の何らかの液体を含む。
本発明の好ましい態様において、式(I)の化合物の薬学的に許容される塩が製造される。好ましくは、該塩は、ナパジシル酸塩またはメシル酸塩である。
【0035】
ナパジシル酸塩は、一般的に、WO 2008/095720に記載のものである。好ましくは、ナパジシル酸塩は、ヘミナパジシル酸塩またはモノナパジシル酸塩である。モノナパジシル酸塩は、一般的に、1モル当量の遊離塩基当たり、約0.8ないし1.2モル当量のナフタレン−1,5−ジスルホン酸、より一般的には、1モル当量の遊離塩基当たり、約1.0モル当量のナフタレン−1,5−ジスルホン酸を含む。ヘミナパジシル酸塩は、一般的に、1モル当量の遊離塩基当たり、約0.35ないし0.65モル当量のナフタレン−1,5−ジスルホン酸、より一般的には、1モル当量の遊離塩基当たり、約0.5モル当量のナフタレン−1,5−ジスルホン酸を含む。
【0036】
本発明はまた、本発明の方法によって得られ得る、5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オン、またはその薬学的に許容される塩に関する。好ましくは、本発明は、本発明の方法によって得られ得る、5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オンのナパジシル酸塩またはメシル酸塩に関する。より好ましくは、該塩は、ナパジシル酸塩である。
【0037】
上記のモル比は、標準技術、例えば1H NMR、元素分析およびHPLC法により決定され得る。
【0038】
式(I)の化合物のナパジシル酸塩が製造されるとき、一般的に、次工程(b)で、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸が、式(I)の5−[2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オンを単離することなく添加される。遊離塩基を単離することなくこの方法でワンポット反応で最終生成物を製造することは、純度および/または収率を改善する。さらに、かかるワンポット反応はまた、より効率のよい方法であるため有利である。
【0039】
本発明の好ましい態様において、工程(b)および、必要であれば、その後の造塩(salification)工程は、それぞれ、上記の反応工程から得られる中間体を精製することなく行われる。
【0040】
式(V)の化合物は、公知の方法により、または公知の方法と同様の方法により得られ得る。例えば、P1がベンジルであり、P2がTBSである化合物は、US2004059116 (実施例9C)、WO2004/011416 (実施例2)およびWO2004/016578 (実施例1ii)に記載の合成方法により得られ得る。
【0041】
6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキサン−1−アミン(IV)は、WO 2006122788 A1に記載の合成方法により得られる(中間体9)。
【0042】
本発明で用いる反応材および溶媒は、例えば、Aldrich Chemical Company, Inc. またはFluka Chemie GmbHから市販されている。
【0043】
工程(a)の方法に好ましい条件は、以下である:
15−25mlのキシレン溶媒中、10.30−11.30g(40−44mmol)の6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキサン−1−アミン(IV)の溶液に、19.9g(40mmol)の(R)−8−(ベンジルオキシ)−5−(2−ブロモ−1−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)エチル)キノリン−2(1H)−オン(V)および9−12gの重炭酸ナトリウムまたは15−20gの炭酸カリウムを添加する。反応混合物を、4−6時間加熱還流する。室温まで冷却後、沈殿した無機塩を濾去し、80−120mlのキシレンで洗浄する。溶媒を除去し、こうして得られた油状残渣を、さらなる精製なしに次工程に用いる。
【0044】
P2脱保護工程に好ましい条件は、以下である:
上記の工程から得られた油状残渣を、300−350mlのTHFに溶解する。次いで、20−25gのTBAFを反応媒体に添加する。反応混合物を40−50℃で1−2時間撹拌する。室温まで冷却後、溶媒を真空下で除去する。全250−300mlの水/有機溶媒 (1:1)を残渣に添加する。有機層を分離し、水層を有機溶媒で2回抽出する(2×20−30ml)。有機層を合わせ、真空下で濃縮して、溶媒を除去する。抽出操作に用いる好ましい有機溶媒は、トルエン、ジクロロメタン、酢酸イソプロピルまたはメチル−イソブチル−ケトン(MIK)であり、より好ましくは、トルエン、酢酸イソプロピルまたはジクロロメタンであり、最も好ましくは、酢酸イソプロピル、またはジクロロメタンである。別の方法において、一旦、反応溶媒(THF)を除去されて得られた残渣は、水性抽出操作を行うことなく次の結晶化精製に直接用いられ得る。
【0045】
残渣を、300−400mlのエタノール中、8−9gのナフタレン−1,5−ジスルホン酸テトラ水和物を用いて結晶化して精製する。得られた生成物を濾過し、50−70mlのエタノールで洗浄する。得られた湿式ケーキを、250−260mlのメタノール/ジクロロメタン(1:2)、メタノール/酢酸イソプロピル(1:2)またはメタノール/トルエン(1:2)で処理する。この懸濁液に、170−190mlの水中、3.5−4gのNaOHの溶液を添加する。反応混合物を、20−30℃で40−50分間撹拌する。有機層を分離し、溶媒を真空下で除去する。
【0046】
P1脱保護工程の好ましい条件は、以下である:
中間体(II)を、全量160−170mlの酢酸/アルコール(1:1)、好ましくは、酢酸/メタノールに溶解する。1−1.5gの10%Pd/C、50%水を溶液に添加する。次いで、約5−15gのTBAFを、所望により該溶液に添加する。数回の窒素置換操作の後、反応混合物を、20−30℃にて、4バール未満、好ましくは1−2バールで、6−8時間、水素化する。その後、触媒を濾去し、190−200mlのメタノールで洗浄する。約200−250mlの酢酸を濾液に添加し、50−70mlのメタノール/酢酸(1:1)中、6−6.5gのナフタレン−1,5−ジスルホン酸テトラ水和物の溶液を、この濾液に添加する。混合物を30分間加熱還流する。室温まで冷却後、生成物を濾過し、25−30mlのメタノールで洗浄する。得られた生成物を、所望により、メタノールの沸騰温度のような高温条件で、メタノールを用いてスラリーにして精製する。最終生成物(Ia)を、50℃で真空下で乾燥させる。
【0047】
本発明に記載の合成方法は、以下の実施例によりさらに説明され得る。実施例は、説明のみを目的として提供され、限定を意図するものと解されるべきではない。
【0048】
製造した化合物の構造を、1H−NMRおよびMSにより確認した。NMRは、200または300MHzの周波数で操作するVarian Gemini−200 NMR 分光計を用いて記録された。テトラメチルシランを参照物質として用い、そしてサンプルを、重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO−d6)または重水素化クロロホルム(CDCl3)中に溶解した。
【0049】
それらの純度を、ダイオードアレイ検出器(DAD)およびZMDまたはZQ質量検出器(エレクトロスプレーイオン化)を備えるAlliance 2795 Waters装置にて、HPLCにより決定した。Symmetry C18 カラム(3.5μm、21×100mm)および移動相を用いるHPLC法は、相A:緩衝(ギ酸/アンモニア)水溶液、pH:3;相B:アセトニトリル/メタノールとギ酸アンモニアの50:50混合物、の2相で構成された。勾配は、0%ないし95%の相Bで10分間であった。
【0050】
分取HPLC−MS実験を、バイナリポンプ(Gilson piston pump 321);真空脱ガス装置(Gilson 864);インジェクター−フラクションコレクター(Gilson liquid handler 215);2個のインジェクションモジュール、分析および分取装置(Gilson 819);バルブ(Gilson Valvemate 7000); 1/1000スプリッター(Acurate by LC Packings);メークアップポンプ(Gilson 307);ダイオードアレイ検出器(Gilson 170)およびMS検出器(Thermoquest Finnigan aQa、ESおよびAPCIイオン化モードを有する四重極質量分光計)を備えるGilson装置で行った。該HPLC−MS装置をIBM PCにより制御した。
【実施例】
【0051】
実施例
比較例I(WO 2006122788およびWO 2008095720を参照):
中間体III。8−(ベンジルオキシ)−5−((1R)−1−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}エチル)キノリン−2(1H)−オン
ジメチルスルホキシド(13.5mL)中、(8−(ベンジルオキシ)−5−((1R)−2−ブロモ−1−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}エチル)キノリン−2(1H)−オン(V)(4.80g、9.83mmol)および6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミン(IV)(3.04g、11.8 mmol)の溶液に、重炭酸ナトリウム(2.49g、29.4mmol)およびヨウ化ナトリウム(2.22g、14.8mmol)を添加した。混合物を、140℃で2時間加熱した。冷却後、反応物を水(40mL)で希釈し、ジエチルエーテルで抽出した(2×20mL)。合わせた有機抽出物を水(2×10mL)および塩水(20mL)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、そして溶媒を減圧下で除去した。表題化合物を油状物として得た(6.40g、98%)。
【0052】
中間体(II)。8−(ベンジルオキシ)−5−((1R)−2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシエチル)キノリン−2(1H)−オン
テトラヒドロフラン(60mL)中、中間体(III)(6.4g、9.63mmol)の溶液に、TBAF(5.02g、19.26mmol)を添加した。混合物を室温で一晩撹拌した。溶媒を減圧下で除去した。溶離剤として塩化メチレン/メタノール(95:5ないし85:15)を用いるカラムクロマトグラフィーによる精製により、8−(ベンジルオキシ)−5−((1R)−2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシエチル)キノリン−2(1H)−オン(II)(1.1g、20%)を油状物として得た。
【0053】
5−((1R)−2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オン(I)
メタノール(50mL)中、中間体(II)(1.10g、2.0mmol)に、20%パラジウム炭素(300mg)を添加した。混合物を、2バールで3時間、水素化した。触媒をセライトを通して濾過し、溶媒を濃縮した。得られる油状物を、塩化メチレン/メタノール(95:5)を用いて溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、表題化合物を油状物として得た(0.50g、54%)。
【0054】
5−((1R)−2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オン ナパジシル酸塩(Ia)
5−((1R)−2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オン(6.63g、14.4mmol)を、134mlのメタノール中に溶解し、1.075M溶液を形成し、それを約50℃に加熱した。次いで、7.74mmolのナフタレン−1,5−ジスルホン酸テトラ水和物を、該加熱した溶液に添加した。次いで、混合物を還流温度で30分間撹拌し、次いで20/25℃まで冷却し、そしてこの温度でさらに1時間撹拌した。形成した沈殿を濾過により単離し、メタノールで洗浄し、真空下で50℃にて乾燥させた(15.67g、90%)。
【0055】
実施例II(本発明方法による)
中間体III。8−(ベンジルオキシ)−5−((1R)−1−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}エチル)キノリン−2(1H)−オン
キシレン(20mL)中、[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミン(IV)(11.0g、42.8mmol)の溶液に、(8−(ベンジルオキシ)−5−((1R)−2−ブロモ−1−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}エチル)キノリン−2(1H)−オン(V)(19.9g、40.7mmol)および重炭酸ナトリウム(10.4g、123mmol)を添加した。混合物を、6時間、加熱還流した。室温まで冷却後、さらにキシレン(176ml)を反応混合物に添加し、沈殿した無機塩を濾去し、キシレン(100ml)で洗浄した。得られた濾液を真空下で濃縮して溶媒を除去し、こうして得られた油状物残渣(中間体(III))を、精製なしに次工程に用いた。
【0056】
中間体(II)。8−(ベンジルオキシ)−5−((1R)−2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル] アミノ}−1−ヒドロキシエチル)キノリン−2(1H)−オン
中間体(III)を、テトラヒドロフラン(330mL)中に溶解した。次いで、TBAF(23.3g、73mmol)をこの溶液に添加した。混合物を45℃で1時間撹拌した。室温まで冷却後、溶媒を真空下で除去し、得られた残渣を、所望により、266mlの水/ジクロロメタン混合物(1:1)で抽出した。有機層を回収し、次いで溶媒を真空下で除去した。次いで、352mlの96%エタノールを添加し、混合物を50−60℃に加熱した。この温度で、35mlの96%エタノール中、8.5gの1,5−ナフタレンジスルホン酸テトラ水和物の溶液を、1時間かけて添加する。添加装置を、29mlの96%エタノールで洗浄し、それを反応混合物に加えた。反応混合物を、還流温度で30分間撹拌し、次いで室温まで冷却した。生成物を濾過し、60mlのエタノールで洗浄した。湿式ケーキ生成物を、252mlのメタノール/ジクロロメタン(1:2)で処理する。次いで、3.6gのNaOHの水溶液(116ml)を添加し、反応混合物を、20−25℃で45分間撹拌する。水層を分け、ジクロロメタンで抽出する(3×42ml)。有機層を回収し、4.2gのNaClの水溶液(168ml)と共に撹拌する。有機層を分け、そして溶媒を真空下で除去して、油状物として8−(ベンジルオキシ)−5−((1R)−2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシエチル)キノリン−2(1H)−オン(II)を得る(16.8g、75%)。
【0057】
5−((1R)−2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オンナパジシル酸塩(Ia)
メタノール(69mL)および酢酸(77ml)の混合物中、中間体(II)(16.8g、30.5mmol)の溶液に、メタノール(15ml)および酢酸(7ml)の混合物中、10%パラジウム炭素、50%水(1.33g)の懸濁液を添加した。混合物を、1−2バールで8時間、水素化した。触媒をセライトを通して濾去し、メタノール(193ml)で洗浄した。酢酸(220ml)をこの濾液に添加した。次いで、メタノール(54ml)および酢酸(27ml)の混合物中、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸テトラ水和物(6.33g)の溶液を、濾液にゆっくり添加した。反応混合物を、30分間、加熱還流し、次いで、室温まで冷却した。沈殿を濾取し、メタノール(27ml)で洗浄した。湿式粗生成物をメタノール(800ml)中に溶解し、30分間、加熱還流した。生成物を濾取し、さらなるメタノール(34ml)で洗浄した。こうして得られた固体を、真空下で50℃にて乾燥させて、5−((1R)−2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オンナパジシル酸塩を得た(14.9g、81%)。
【0058】
5−((1R)−2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オンナパジシル酸塩(Ia)の全収率は、約60.7%(75%×81%)と計算され、そしてその純度は、HPLC imp=1.5%、e.e.>98%である。
【表1】

【0059】
表1から明らかである通り、工程(a)でのキシレン溶媒の使用は、式(III)の中間体中の不純物の量を顕著に低下させた。さらに、5−((1R)−2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)−ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オンナパジシル酸塩の全収率は、比較実施例と比較したとき、大幅に増加し、一方、不純物はより低濃度に減少した。このことは、いくつかの精製技術の改善により達成され、それ故に、反応工程を簡素化し、必要な反応材の量を減らす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】


の5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オン化合物、またはその薬学的に許容される塩の製造方法であって、
以下:
a) キシレン溶媒中、式(V)
【化2】


の化合物(式中、P1およびP2は、ヒドロキシ保護基であり、そしてLは脱離基である。)と、式(IV)
【化3】


の6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキサン−1−アミンを反応させて、式(III)
【化4】


の化合物を得る工程、および
b) P1脱保護工程およびP2脱保護工程を行い、保護基P1およびP2を除去して式(I)の化合物を得る工程を含む、製造方法。
【請求項2】
(i) P2脱保護工程が、30−60℃の範囲の温度で最大8時間かけて行われること、および/または
(ii) P1脱保護工程が、溶媒の存在下で行われ、それが、酢酸または酢酸とアルコールまたはエステルを含む混合物である、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程(b)が、
−式(III)の化合物上の該P2脱保護工程を行い、式(II)
【化5】


の化合物(式中、P1は上記に定義の通りである。)を得て;そして
−式(II)の化合物上の該P1脱保護工程を行い、式(I)
【化6】


の化合物を得ることを含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
(a) P1が、ベンジル基であり、そしてP1脱保護工程が水素化により行われ、そして/または、(b) P2が、tert−ブチルジメチルシリル基であり、そしてP2脱保護工程が、フッ化テトラ−n−ブチルアンモニウム三水和物または塩化水素と反応させて行われる、請求項1ないし3の何れか一項記載の方法。
【請求項5】
Lが臭素である、請求項1ないし4の何れか一項記載の方法。
【請求項6】
P2脱保護工程が、テトラヒドロフラン中、フッ化テトラ−n−ブチルアンモニウム三水和物を用いて行われる、請求項1ないし5の何れか一項記載の方法。
【請求項7】
P2脱保護工程が、40−50℃の温度で6時間を超えない時間で行われる、請求項1ないし6の何れか一項記載の方法。
【請求項8】
該時間が4時間以下である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
式(I)の化合物のヘミナパジシル酸塩またはメシル酸塩を製造するための、請求項1ないし8の何れか一項記載の方法。
【請求項10】
式(I)の化合物のヘミナパジシル酸塩を製造するための方法であって、工程(b)の後、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸を、式(I)の5−[2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オンを単離することなく添加する、請求項9記載の方法。
【請求項11】
P2脱保護工程から得られた式(II)の中間体を、エタノール中、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸テトラ水和物で結晶化して精製する、請求項3記載の方法。
【請求項12】
P1がベンジルであり、そしてP1脱保護工程が、式(II)の化合物の量に対して10%(w/w)未満の量のパラジウム炭素触媒の存在下、水素化により行われる、請求項1ないし11の何れか一項記載の方法。
【請求項13】
用いる触媒の量が5%未満である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
P1脱保護工程が、酢酸または酢酸とアルコールまたはエステルを含む混合物である溶媒の存在下で行われ、好ましくは、溶媒が、酢酸またはメタノール/酢酸混合物(1:1)である、請求項1ないし13の何れか一項記載の方法。
【請求項15】
溶媒がメタノール/酢酸(1:1)である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
(i) P2脱保護工程が、30−60℃の範囲の温度で8時間までの時間で行われ、そして
(ii) P1脱保護工程が、酢酸または酢酸とアルコールまたはエステルを含む混合物である溶媒の存在下で行われる、
請求項1ないし15の何れか一項記載の方法。
【請求項17】
請求項1ないし16の何れか一項記載の方法により得られる、5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オン、またはその薬学的に許容される塩。

【図1】
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【公表番号】特表2012−520253(P2012−520253A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553364(P2011−553364)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【国際出願番号】PCT/EP2010/001582
【国際公開番号】WO2010/102831
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(598032139)アルミラル・ソシエダッド・アノニマ (69)
【氏名又は名称原語表記】Almirall, S.A.
【Fターム(参考)】