説明

9,10−ジヒドロ−9,10−エタノアントラセン−9,10−ジオール化合物及びその製造方法

【課題】9位、10位の両方に水酸基が結合した9,10−ジヒドロ−9,10−エタノアントラセン−9,10−ジオール化合物を提供する。
【解決手段】以下の一般式(1)で示される、9,10−ジヒドロ−9,10−エタノアントラセン−9,10−ジオール化合物。
【化1】


(一般式(1)において、Zは酸素原子又はアミノ基を示し、Y及びYは同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示し、X及びXは同一であっても異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、9,10−ジヒドロ−9,10−エタノアントラセン−9,10−ジオール化合物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エタノアントラセン骨格は、多環式炭化水素と二つのベンゼン環よりなる特異な立体構造を示す化合物である。エタノアントラセン化合物は、通常、アントラセン化合物とジエノフィルとのディールス・アルダー反応により合成される(特許文献1〜3)。しかしながら、9位又は10位に水酸基の置換したエタノアントラセン化合物を得ることは困難であり、唯一アントロンと無水マレイン酸の反応による9,10−ジヒドロ−9−ヒドロキシ−9,10−エタノアントラセンの合成例が知られているのみであり(特許文献4及び5))、9位、10位の両方に水酸基が結合したジオール構造を有する9,10−ジヒドロ−9,10−エタノアントラセン−9,10−ジオール化合物は、知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭56−6414号公報
【特許文献2】特開昭57−190022号公報
【特許文献3】特開平3−115269号公報
【特許文献4】特表2002−531664号公報
【特許文献5】英国特許出願公開第1144935号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、9位、10位の両方に水酸基が結合した9,10−ジヒドロ−9,10−エタノアントラセン−9,10−ジオール化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物と無水マレイン酸化合物又はマレイミド化合物とのディールス・アルダー反応により、9,10−ジヒドロ−9,10−エタノアントラセン−9,10−ジオール化合物が安定に得られることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明の第1の要旨は、以下の一般式(1)で示される9,10−ジヒドロ−9,10−エタノアントラセン−9,10−ジオール化合物に存する。
【0007】
【化1】

(一般式(1)において、Zは酸素原子又はアミノ基を示し、Y及びYは同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示し、X及びXは同一であっても異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を示す。)
【0008】
また、本発明の第2の要旨は、以下の一般式(2)に示される9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物と以下の一般式(3)に示される無水マレイン酸化合物又はマレイミド化合物をディールス・アルダー反応させることを特徴とする、前記の一般式(1)で示される9,10−ジヒドロ−9,10−エタノアントラセン−9,10−ジオール化合物の製造方法に存する。
【0009】
【化2】

(一般式(2)において、X及びXは同一であっても異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を示す。)
【0010】
【化3】

(一般式(3)において、Zは酸素原子又はアミノ基を示し、Y及びYは同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示す。)
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る9,10−ジヒドロー9,10−エタノアントラセン−9,10−ジオール化合物は、農薬、ポリマー等の合成原料として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0013】
先ず、本発明に係る一般式(1)で示される9,10−ジヒドロ−9,10−エタノアントラセン−9,10−ジオール化合物について説明する。
【0014】
一般式(1)のX及びXにおけるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピメル基、t−ブチル基などが挙げられる。ハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子などが挙げられる。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。アリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフトキシ基などが挙げられる。
【0015】
一般式(1)において、Z=酸素原子の場合は、以下の一般式(4)に示す9,10−ジヒドロ−9,10−エタノアントラセン−9,10−ジオール化合物となり、また、Z=アミノ基の場合は、以下の一般式(5)に示す9,10−ジヒドロ−9,10−エタノアントラセン−9,10−ジオール化合物となる。
【0016】
【化4】

(一般式(4)において、Y及びYは同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示し、X及びXは同一であっても異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を示す。)
【0017】
【化5】

(一般式(5)において、Rは水素原子、アルキル基又はアリール基を示し、Y及びYは同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示し、X及びXは同一であっても異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を示す。)
【0018】
<アントラセン環が非置換の化合物:X及びXが水素原子の化合物>
【0019】
一般式(4)で表される、9,10−ジヒドロ−9,10−エタノアントラセン−9,10−ジオール化合物(無水物)としては、例えば、9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジカルボン酸無水物、9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11−メチル−11,12−ジカルボン酸無水物、9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジメチル−11,12−ジカルボン酸無水物などが挙げられる。
【0020】
一般式(5)で表される、9,10−ジヒドロ−9,10−エタノアントラセン−9,10−ジオール化合物(マレイミド)としては、例えば、9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジカルボン酸−N−メチルイミド、9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジカルボン酸−N−エチルイミド、9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジカルボン酸−N−フェニルイミド、9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11−メチル−11,12−ジカルボン酸−N−メチルイミド、9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11−メチル−11,12−ジカルボン酸−N−エチルイミド、9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11−メチル−11,12−ジカルボン酸−N−フェニルイミド、9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジメチル−11,12−ジカルボン酸−N−メチルイミド等が挙げられる。
【0021】
<アントラセン環がアルキル基で置換された化合物>
【0022】
酸無水物としては、2−メチル−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジカルボン酸無水物、2−メチル−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11−メチル−11,12−ジカルボン酸無水物、2−メチル−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジメチル−11,12−ジカルボン酸無水物、2−エチル−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジカルボン酸無水物、2−エチル−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11−メチル−11,12−ジカルボン酸無水物、2−エチル−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジメチル−11,12−ジカルボン酸無水物などが挙げられる。
【0023】
マレイミドとしては、2−メチル−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジカルボン酸−N−メチルイミド、2−メチル−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジカルボン酸−N−エチルイミド、2−メチル−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジカルボン酸−N−フェニルイミド、2−メチル−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11−メチル−11,12−ジカルボン酸−N−メチルイミド、2−メチル−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11−メチル−11,12−ジカルボン酸−N−エチルイミド、2−メチル−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11−メチル−11,12−ジカルボン酸−N−フェニルイミド、2−エチル−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11−メチル−11,12−ジカルボン酸−N−エチルイミド、2−エチル−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11−メチル−11,12−ジカルボン酸−N−フェニルイミド、2−エチル−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジメチル−11,12−ジカルボン酸−N−メチルイミド等が挙げられる。
【0024】
<アントラセン環がハロゲン原子で置換された化合物>
【0025】
酸無水物としては、2−クロル−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジカルボン酸無水物、2−クロル−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11−メチル−11,12−ジカルボン酸無水物、2−クロル−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジメチル−11,12−ジカルボン酸無水物、2−ブロモ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジカルボン酸無水物、2−ブロモ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11−メチル−11,12−ジカルボン酸無水物、2−ブロモ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジメチル−11,12−ジカルボン酸無水物などが挙げられる。
【0026】
マレイミドとしては、2−クロル−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジカルボン酸−N−メチルイミド、2−クロル−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジカルボン酸−N−エチルイミド、2−クロル−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジカルボン酸−N−フェニルイミド、2−クロル−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11−メチル−11,12−ジカルボン酸−N−メチルイミド、2−クロル−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11−メチル−11,12−ジカルボン酸−N−エチルイミド、2−クロル−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11−メチル−11,12−ジカルボン酸−N−フェニルイミド、2−クロル−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジメチル−11,12−ジカルボン酸−N−メチルイミド、2−ブロモ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジカルボン酸−N−メチルイミド、2−ブロモ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジカルボン酸−N−エチルイミド、2−ブロモ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジカルボン酸−N−フェニルイミド、2−ブロモ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11−メチル−11,12−ジカルボン酸−N−メチルイミド、2−ブロモ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11−メチル−11,12−ジカルボン酸−N−エチルイミド、2−ブロモ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11−メチル−11,12−ジカルボン酸−N−フェニルイミド、2−ブロモ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジメチル−11,12−ジカルボン酸−N−メチルイミド等である。
【0027】
<アントラセン環が水酸基で置換された化合物>
【0028】
酸無水物としては、2−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジカルボン酸無水物、2−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11−メチル−11,12−ジカルボン酸無水物、2−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジメチル−11,12−ジカルボン酸無水物、1−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジカルボン酸無水物、1−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11−メチル−11,12−ジカルボン酸無水物、1−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジメチル−11,12−ジカルボン酸無水物などが挙げられる。
【0029】
マレイミドとしては、2−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジカルボン酸−N−メチルイミド、2−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジカルボン酸−N−エチルイミド、2−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジカルボン酸−N−フェニルイミド、2−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11−メチル−11,12−ジカルボン酸−N−メチルイミド、2−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11−メチル−11,12−ジカルボン酸−N−エチルイミド、2−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11−メチル−11,12−ジカルボン酸−N−フェニルイミド、1−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11−メチル−11,12−ジカルボン酸−N−エチルイミド、1−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11−メチル−11,12−ジカルボン酸−N−フェニルイミド、1−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジメチル−11,12−ジカルボン酸−N−メチルイミド等が挙げられる。
【0030】
<アントラセン環がアルコキシ基で置換された化合物>
【0031】
酸無水物としては、2−メトキシ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジカルボン酸無水物、2−メトキシ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11−メチル−11,12−ジカルボン酸無水物、2−メトキシ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジメチル−11,12−ジカルボン酸無水物、2−エトキシ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジカルボン酸無水物、2−エトキシ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11−メチル−11,12−ジカルボン酸無水物、2−エトキシ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジメチル−11,12−ジカルボン酸無水物などが挙げられる。
【0032】
マレイミドとしては、2−メトキシ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジカルボン酸−N−メチルイミド、2−メトキシ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジカルボン酸−N−エチルイミド、2−メトキシ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジカルボン酸−N−フェニルイミド、2−メトキシ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11−メチル−11,12−ジカルボン酸−N−メチルイミド、2−メトキシ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11−メチル−11,12−ジカルボン酸−N−エチルイミド、2−メトキシ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11−メチル−11,12−ジカルボン酸−N−フェニルイミド、2−メトキシ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジメチル−11,12−ジカルボン酸−N−メチルイミド、2−エトキシ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジカルボン酸−N−メチルイミド、2−エトキシ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジカルボン酸−N−エチルイミド、2−エトキシ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジカルボン酸−N−フェニルイミド、2−エトキシ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11−メチル−11,12−ジカルボン酸−N−メチルイミド、2−エトキシ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11−メチル−11,12−ジカルボン酸−N−エチルイミド、2−エトキシ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11−メチル−11,12−ジカルボン酸−N−フェニルイミド、2−エトキシ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジメチル−11,12−ジカルボン酸−N−メチルイミド等が挙げられる。
【0033】
<アントラセン環がアリールオキシ基で置換された化合物>
【0034】
酸無水物としては、2−フェノキシ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジカルボン酸無水物、2−フェノキシ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11−メチル−11,12−ジカルボン酸無水物、2−フェノキシ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジメチル−11,12−ジカルボン酸無水物などが挙げられる。
【0035】
マレイミドとしては、2−フェノキシ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジカルボン酸−N−メチルイミド、2−フェノキシ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジカルボン酸−N−エチルイミド、2−フェノキシ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジカルボン酸−N−フェニルイミド、2−フェノキシ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11−メチル−11,12−ジカルボン酸−N−メチルイミド、2−フェノキシ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11−メチル−11,12−ジカルボン酸−N−エチルイミド、2−フェノキシ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11−メチル−11,12−ジカルボン酸−N−フェニルイミド、2−フェノキシ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジメチル−11,12−ジカルボン酸−N−メチルイミド等である。
【0036】
上記の化合物の中では、合成の有利さ等から特に好ましい化合物は、9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジカルボン酸無水物、9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11−メチル−11,12−ジカルボン酸無水物、9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジカルボン酸−N−メチルイミド無水物、9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジカルボン酸−N−フェニルイミド無水物である。以下に代表的化合物を示す。
【0037】
【化6】

【0038】
次に、本発明の9,10−ジヒドロ−9,10−エタノアントラセン−9,10−ジオール化合物の製造方法について説明する。
【0039】
本発明の製造方法は、以下の一般式(2)に示される9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物と以下の一般式(3)に示される無水マレイン酸化合物又はマレイミド化合物をディールス・アルダー反応させることを特徴とする。なお、一般式(2)及び(3)における各符号の意義は、前述の一般式(1)におけるのと同義である。
【0040】
【化7】

(一般式(2)において、X及びXは同一であっても異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を示す。)
【0041】
【化8】

(一般式(3)において、Zは酸素原子又はアミノ基を示し、Y及びYは同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示す。)
【0042】
一般式(2)に示す9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物は対応する9,10−アントラキノン化合物を還元することにより容易に得ることが出来る。
【0043】
使用できるアントラキノン化合物としては、9,10−アントラキノン、2−メチル−9,10−アントラキノン、2−t−ブチル−9,10−アントラキノン、2−アミル−9,10−アントラキノン、2−クロロ−9,10−アントラキノン、2−メトキシ−9,10−アントラキノン、2−フェノキシ−9,10−アントラキノン、2−ヒドロキシ−9,10−アントラキノン、1−メチル−9,10−アントラキノン、1−t−ブチル−9,10−アントラキノン、1−アミル−9,10−アントラキノン、2−メチルペンチル−9,10−アントラキノン、1−クロロ−9,10−アントラキノン、1−メトキシ−9,10−アントラキノン、1−フェノキシ−9,10−アントラキノン、1−ヒドロキシ−9,10−アントラキノン等が挙げられる。
【0044】
9,10−アントラキノン化合物の還元反応に使用する還元剤としては、ハイドロサルファイト、過酸化チオ尿素、水素化ホウ素ナトリウム、パラジウム/カーボンを触媒とする水素還元などが挙げられる。
【0045】
9,10−ジヒドロキシアントラセンを製造する場合は、1,4−ナフトキノンとブタジエンのディールス・アルダーによって得られる1,4,9a,10a−テトラヒドロアントラキノンのアルカリ塩を還元剤として9,10−アントラキノンを還元すれば、9,10−ジヒドロキシアントラセン以外の副生成物が生じないので精製が簡単になり、工業的には有利である。
【0046】
本発明で使用される9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物としては、例えば、9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−メチル−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−t−ブチル−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−アミル−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−クロロ−9、10−ジヒドロキシアントラセン、2−メトキシ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−フェノキシ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2,9,10−トリヒドロキシアントラセン、1−メチル−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−t−ブチル−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−アミル−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−メチルペンチル−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−クロロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−メトキシ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−フェノキシ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1,9,10−トリヒドロキシアントラセン等が挙げられる。
【0047】
一般式(3)で示される無水マレイン酸化合物またはマレイミド化合物としては、次の化合物が挙げられる。
【0048】
すなわち、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、1,2−ジメチル無水マレイン酸、マレイン酸−N−メチルイミド、マレイン酸−N−エチルイミド、マレイン酸−N−フェニルルイミド、マレイン酸−N−トリルイミド等である。
【0049】
一般式(2)で示される9,10−ジヒドロキシアントセン化合物と一般式(3)で示される無水マレイン酸化合物又はマレイミド化合物のディールス・アルダー反応は、溶媒の存在下もしくは非存在下、加熱することによって行うことが出来る。
【0050】
9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物1モルに対するジエノフィルの使用量は、通常1.0〜3モル、好ましくは1.2〜2モルである。3モル倍を超えると、未反応のジエノフィルを除去することが困難であり、製品純度に悪影響を及ぼすので好ましくない。
【0051】
使用可能な溶剤としては、例えば、トルエン、エチルベンゼン、t−ブチルベンゼン、o−キシレン、クロルベンゼン、1−クロルナフタレン等の芳香族系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、クロロエタン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール,i−プロピルアルコール,n−プロピルアルコール,n−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒が挙げられる。溶媒の使用量は、適宜選択できるが、9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物とジエノフィルの合計重量に対する割合(重量比)として、通常1〜2重量倍である。
【0052】
触媒としてはルイス酸触媒を使用することも出来る。ルイス酸としては、三フッ化ホウ素、三塩化アルミニウム、4塩化スズ等が挙げられるが、反応性の観点からは三フッ化ホウ素が好ましい。ルイス酸触媒の添加量は、9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物に対し、通常0.1〜5重量%である。
【0053】
反応温度は、通常50〜150℃、好ましくは80〜120℃である。50℃未満では反応速度が低く反応に時間がかかりすぎ、また、150℃を超えるとアントラセン化合物が分解して生成物の純度が低下する可能性がある。反応終了後、反応混合物をアルコール、例えばメタノール中に投入し、次いで、得られたスラリーを吸引ろ過・乾燥し、白色結晶のディールス・アルダー付加物を得ることが出来る。
【0054】
上記のようにして得られた9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物と無水マレイン酸化合物又はマレイミド化合物とのディールス・アルダー反応からから合成された、本発明に係る9,10−ジヒドロ−9,10−エタノアントラセン−9,10−ジオール化合物は、ポリマー等の合成原料として有用であることが期待される。
【0055】
すなわち、本発明に係る9,10−ジヒドロ−9,10−エタノアントラセン−9,10−ジオール化合物と種々のジカルボン酸とを酸触媒存在下、加熱することにより、高い芳香属性を持つポリエステルが得られることが期待される。ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、o−フタル酸などの芳香族ジカルボン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸などの脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。更に、上記と同様、トリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートとの反応により、高い芳香属性を有するウレタン化合物を得ることも可能である。
【0056】
本発明の化合物のUVスペクトルは可視光領域から260nmまでほとんど吸収を示さない。すなわち、本発明の化合物は無色透明である。このことから、ディールス・アルダー付加物として得られた本発明の化合物を原料として得られるポリエステルやウレタンは光学材料として有用であると考えられる。
【実施例】
【0057】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、以下の記載例に限定されるものではない。なお、生成物の確認および物性は以下の機器による測定により行った。
【0058】
(1)融点:
融点測定装置(ゲレンキャンプ社製、型式:MFB−595)を使用し、JIS K0064に準拠して測定した。
【0059】
(2)スペクトル:
赤外線(IR)分光光度計(日本分光社製、型式:IR−810)を使用して測定した。
【0060】
(3)H−NMR分析:
核磁気共鳴装置(NMR)(日本電子社製、型式:GSX FT NMR Spectorometer、270MHz)を使用して測定した。
【0061】
実施例1(9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジカルボン酸無水物の合成):
【0062】
温度計(測温管)及び撹拌機を備えた200mlの4つ口フラスコに窒素雰囲気下で20wt%の9,10−ジヒドロキシアントラセンのナトリウム塩水溶液30g(9,10−アントラキノンとして6g)、メチルイソブチルケトン(MIBK 和光純薬社製 試薬特級)60gを仕込み、撹拌下、酸析剤として濃硫酸(和光純薬 試薬特級)7gを溶かしたイオン交換水15gを室温で滴下し、酸析させた。
【0063】
フラスコをオイルバス(バス温105℃)に浸し、加熱・撹拌操作により酸析した9,10−ジヒドロキシアントラセン(アントラハイドロキノン)を有機相に溶解・抽出させた後、撹拌を停止し、シリンジを使用して水相を取り除いた。無水マレイン酸(和光純薬社製 試薬特級)6gをメチルイソブチルケトン15gに溶解したものを10分掛けて滴下し、105℃で1時間加熱・撹拌した。140℃のオイルバスで加熱し、メチルイソブチルケトンを約55g溜去させたのち、トルエン20gを加え、室温まで放冷し晶析させた。
【0064】
得られた結晶を吸引濾過し、トルエン10mlでケーキ洗浄を2回行った。結晶をエバポレーターにて減圧乾燥(60℃・10Torr)し、白色結晶の9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジカルボン酸無水物7.8gが得られた(収率86mol%)。物性測定の結果を以下に示す。IR、H−NMRの測定結果より、生成物は9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジカルボン酸無水物であることが明らかとなった。
【0065】
(1)融点:
189℃ 分解
(2)IR(KBr、cm−1):
3540,3510,2970,1830,1777,1462,1258,1240,1224,1200,1081,1004,943,918,900,778,762,733,545
(3)H−NMR(270MHz、CDCl):
δ3.57(s,2H),3.99(s,2H),7.28−7.37(m,4H),7.50−7.55(m,2H),7.64−7.69(m,2H)
【0066】
実施例2(9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11−メチル−11,12−ジカルボン酸無水物の合成):
【0067】
100mlの耐圧ガラス管に9,10−ジヒドロキシアントラセン4.2g(20.0mmol)、無水シトラコン酸4.48g(40.0mmol)、トルエン40gを仕込み、窒素雰囲気に置換した後、105℃のオイルバスに浸漬した。浸漬20分後大部分の9,10−ジヒドロキシアントラセンが溶解し均一溶液となった。更に30分加熱すると白い沈殿が生成してきた。
【0068】
加熱を停止し、反応混合物を冷却し、該スラリーを吸引ろ過・乾燥し、4.40gn白い粉末を得た。生成物の、9,10−ジヒドロキシアントラセンに対する収率は68モル%であった。物性測定の結果を以下に示す。IR、H−NMRの測定結果より、生成物は9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11−メチル−11,12−ジカルボン酸無水物であることが明らかとなった。
【0069】
(1) 融点:
205℃ 昇華
(2)IR(KBr、cm−1):
3510,1842,1778,1462,1292,1242,1180,1021,940,762,752
(3)H−NMR(270MHz、CDCl):δ1.33(s,3H),3.04(s,1H),3.64(s,1H),3.95(s,1H),7.26−7.35(m,4H),7.44−7.51(m,2H),7.62−7.69(m,2H)
【0070】
実施例3(9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジカルボン酸−N−メチルイミドの合成):
【0071】
100mlの耐圧ガラス管に9,10−ジヒドロキシアントラセン4.2g(20.0mmol)、N−メイルマレイミド2.80g(25.0mmol)、トルエン50gを仕込み、窒素雰囲気に置換した後、105℃のオイルバスに浸漬した。浸漬20分後、黄緑色のスラリーが真っ白なスラリーになった。
【0072】
加熱を停止し、反応混合物を冷却し、該スラリーを吸引ろ過・乾燥し、4.50gn白い粉末を得た。生成物の、9,10−ジヒドロキシアントラセンに対する収率は70モル%であった。物性測定の結果を以下に示す。IR、H−NMRの測定結果より、生成物は9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジカルボン酸−N−メチルイミドであることが明らかとなった。
【0073】
(1)融点:
266−267℃
(2)IR(KBr、cm−1):
3430,3080,3050,1692,1462,1441,1390,1291,1260,1242,1206,1130,1018,971,910,770,756,720,550
(3)H−NMR(270MHz、CDCl):
δ2.51(s,3H),3.24(s,2H),4.35(s,2H),7.20−7.31(m,4H),7.41−7.47(m,2H),7.62−7.70(m,2H)
【0074】
実施例4(9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジカルボン酸−N−フェニルイミドの合成):
【0075】
100mlの耐圧ガラス管に9,10−ジヒドロキシアントラセン8.40g(40.0mmol)、N−フェニルマレイミド10.30g(60.0mmol)、トルエン80gを仕込み、窒素雰囲気に置換した後、105℃のオイルバスに浸漬した。浸漬30分後、黄緑色のスラリーが真っ白なスラリーになった。
【0076】
加熱を停止し、反応混合物を冷却し、該スラリーを吸引ろ過・乾燥し、13.3gの白い粉末を得た。生成物の、9,10−ジヒドロキシアントラセンに対する収率は87モル%であった。物性測定の結果を以下に示す。IR、H−NMRの測定結果より、生成物9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジカルボン酸−N−フェニルイミドであることが明らかとなった。
【0077】
(1)融点:
269−270℃
(2)IR(KBr、cm−1):
3450,1695,1502,1462,1401,1282,1254,1180,1060,931,778,763,744,692,570
(3)H−NMR(270MHz、CDCl):
δ3.40(s,2H),4.44(s,2H),6.42−6.71(m,2H),7.27(s,1H),7.29−7.38(m,6H),7.50−7.58(m,2H),7.68−7.75(m,2H)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般式(1)で示される、9,10−ジヒドロ−9,10−エタノアントラセン−9,10−ジオール化合物。
【化1】

(一般式(1)において、Zは酸素原子又はアミノ基を示し、Y及びYは同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示し、X及びXは同一であっても異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を示す。)
【請求項2】
以下の一般式(2)に示される9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物と以下の一般式(3)に示される無水マレイン酸化合物又はマレイミド化合物をディールス・アルダー反応させることを特徴とする、請求項1に記載の9,10−ジヒドロ−9,10−エタノアントラセン−9,10−ジオール化合物の製造方法。
【化2】

(一般式(2)において、X及びXは同一であっても異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を示す。)
【化3】

(一般式(3)において、Zは酸素原子又はアミノ基を示し、Y及びYは同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示す。)

【公開番号】特開2011−231032(P2011−231032A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101275(P2010−101275)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000199795)川崎化成工業株式会社 (133)
【Fターム(参考)】