説明

ATM運用管理システム

【課題】ATMの運用委託業者側でもリアルタイムに各ATM内の現金残高の変動を把握できるATM運用管理システムを提供する。
【解決手段】本発明に係るATM運用管理システムは、ATM端末と、金融機関のホストコンピュータと、ATM運用管理装置と、GWサーバとを含むATM運用管理システムであって、GWサーバは、ATM端末及びホストコンピュータ間において入出金に関する取引情報を含む通信を中継する中継手段と、中継された通信に含まれる取引情報を記憶する取引情報記憶手段とを有し、ATM運用管理装置は、所定期間毎の情報整合性が確保されたATM端末内の現金残高情報を記憶する現金残高記憶手段と、取引情報記憶手段に記憶された取引情報に基づいて、ATM端末内の現金残高の増減額を算出し、当該現金残高の増減額と現金残高情報とを突き合せ現時点の現金残高情報を算出する算出手段と有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ATM運用管理システムの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、金融機関は、ATM(Automated Teller Machine:現金自動預払機)の運用・保守業務を警備会社等の委託業者に外部委託するようになってきた。金融機関から委託を受けた警備会社は、ATMの障害対応を行うとともに、ATM内の現金の管理を行い、ATMを停止させぬよう適宜ATM内の現金の補充又は回収作業などを行っている。これに関する技術として、特許文献1には、ATMの現金カセットの交換スケジュールに関する発明、つまりATM内の現金補充回収作業を効率的にスケジューリング可能な警送業務処理システムの発明が記載されている。
【0003】
運用・保守業務の外部委託にあたっては、金融機関は警備会社に対し予め一定額の預託金(現金)を貸し付けておき、警備会社はこの預託金を各ATM内の現金の補充又は回収に充当している。また預託金を一定額に維持するため、適宜、警備会社はその減少分を金融機関に請求し、警備会社はその増加分を金融機関に入金している。この預託金(警備会社保管額+ATM内残高)は、例えば警備会社側の預託金DBで管理される。
【0004】
ここで、ATMと金融機関(ホストセンター)とはネットワークで接続され、利用者がATMを利用したとき、次のような決済処理がリアルタイムで行われる。
(1)ATMからの取引要求(入出金、振込み等の取引)が金融機関ホストコンピュータに送信される。
(2)金融機関ホストコンピュータにて認証や口座確認等が行われ、金融機関ホストコンピュータからATMに取引可否の判定が送信される。
(3)ATMは、可否の判定に基づき利用者との取引を行う。
(4)ATMは、取引が終了すると取引完了した旨の信号を金融機関ホストコンピュータに送信する。
(5)金融機関ホストコンピュータは、取引完了した旨の信号を受けて、最終的な決済処理(口座残高に対して入出金処理等)を行う。
【0005】
このように決済処理はあくまでATMと金融機関側とで行われるものであるので、ATM内のリアルタイムな現金現高の情報は当然ながら金融機関ホストコンピュータで管理されていることになる。なおまたこれに関する技術として、特許文献2には、自動取引装置と(複数の)金融機関と通信回線を介して決済処理を行い、多数の銀行取引データを一括して管理することができる決済管理システムが記載されている。
【0006】
さて現状、警備会社はATM内現金残高の更新、確認を行なうため、1日1回の間隔で金融機関側とその突合せ作業(金額集計作業)を行っている。金融機関ホストコンピュータはATMとリアルタイムに決済処理を行っており、またATMは金融機関により運営されているものであるので、金融機関ホストコンピュータ側のATM内現金残高の情報と警備会社側の預託金DBと突合せを行うことにより、ATM内現金残高情報の更新、確認を行なっている。
【0007】
図1は、従来のATM、金融機関ホストセンター、及び警備会社間のシステム構成図である。上述のように、ATMと金融機関(ホストセンター)とはネットワークを介し決済処理が行われるとともに、警備会社と金融機関においては、1日1回の間隔で突合せ作業が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−357204号
【特許文献2】特開2000−285314号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来より警備会社は、警備会社側の預託金DB等で管理されるATM内現金残高を参照しながら、ATMを停止させぬよう各ATM内の現金補充又は回収作業をスケジューリングしていた。しかしながら、例えば給料日のように他の日と比較して多額の取引が行われるような日については、1日のATM取引額を予測するのは困難である。この場合、現金切れとならないよう余裕を見込んで相当の現金を補充しておかなければならず、ときに必要以上の準備資金の増大を招くことになる。また、ATM近隣でのイベントの開催などにより、1日の取引額が短時間に突発的に増えた場合、警備会社側は現金切れ直前となるまでそのことを把握できず(現金切れ寸前及び現金切れの場合、所定信号がATMから警備会社に送信される)、緊急に要員を出動させ現金の補充作業などを行わなければならない。この場合、スケジュール効率の悪化、コストの増大を招くことになる。
【0010】
警備会社側でも各ATM内現金残高を預託金DBにより把握してはいるものの、ATM内現金残高の増減の情報が預託金DBに反映されるのは、1日1回の金融機関側との突合せ作業時点であるため、上記のようなある1日において突発的にATM内現金残高が大きく変動する事態が発生した場合、警備会社側で把握している情報は最長24H前の情報であるため、余裕をもってこれを把握することは困難である。このため、突発的なATM内現金残高に大きな変動が発生すると、警備会社側は現金切れ直前、緊急に要員を出動させるなどの対応を取らざるを得なかった。
【0011】
本発明では上記の点に鑑みて、ATMの運用委託業者側でもリアルタイムに各ATM内の現金残高の変動を把握できるATM運用管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明に係るATM運用管理システムは、利用者に対し入出金を行うATM端末と、前記ATM端末からの取引要求を受け入出金の可否をコントロールする金融機関のホストコンピュータと、前記ATM端末内の現金残高を管理するATM運用管理装置と、GWサーバとを含み構成されるATM運用管理システムであって、前記GWサーバは、前記ATM端末及び前記ホストコンピュータ間において入出金に関する取引情報を含む通信を中継する中継手段と、前記中継手段により中継された通信に含まれる取引情報を記憶する取引情報記憶手段と、を有し、前記ATM運用管理装置は、前記金融機関との取決めに基づく所定期間毎の、前記ホストコンピュータで管理されている前記ATM端末内の現金残高情報との突き合せ作業により、所定期間毎の情報整合性が確保された前記ATM端末内の現金残高情報を記憶する現金残高記憶手段と、前記取引情報記憶手段に記憶された取引情報に基づいて、前記ATM端末内の現金残高の増減額を算出し、当該現金残高の増減額と前記現金残高情報とを突き合せることにより、現時点の現金残高情報を算出する算出手段とを有する。
【0013】
また上記課題を解決するため、前記ATM運用管理システムにおいて、前記ATM運用管理装置は、単位時間当りの前記現金残高の増減額が所定額以上である場合、運用管理者に対し、前記ATM端末内の現金残高の補充又は回収を促す通知を行う通知手段を有する。
【0014】
また上記課題を解決するため、前記ATM運用管理システムにおいて、前記ATM運用管理装置は、単位時間当りの前記現金残高の増減額の変動率が所定率以上である場合、運用管理者に対し、前記ATM端末内の現金残高の補充又は回収を促す通知を行う通知手段を有する。
【0015】
なお、本発明の構成要素、表現または構成要素の任意の組合せを、方法、装置、システム、コンピュータプログラム、記録媒体、などに適用したものも本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ATMの運用委託業者側でもリアルタイムに各ATM内の現金残高の変動を把握できるATM運用管理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】従来のATM、金融機関ホストセンター、及び警備会社間のシステム構成図である。
【図2】本実施形態に係るシステム構成図である。
【図3】GWサーバ10の一実施形態の主要構成を示すハードウェア構成図である。
【図4】GWサーバ10及びATM運用管理サーバ20の一実施形態の主要機能を示す機能ブロック図である。
【図5】取引情報DB11の取引情報例を示す。
【図6】預託金DB21の現金残高情報例を示す。
【図7】GWサーバ10の取引情報取得処理を示すフローチャートである。
【図8】ATM運用管理サーバ20の残金残高算出処理を示すフローチャートである。
【図9】預託金DB21からの取得情報例を示す。
【図10】取引情報DB11から取得情報例を示す。
【図11】ATM運用管理サーバ20による通知処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態を各実施形態において図面を用いて説明する。
【0019】
[システム構成]
(全体構成)
はじめに、具体的な発明の内容を説明する前に、本発明を実施するにあたっての全体構成について説明する。図2は、本実施形態に係るシステム構成図である。図に示されるように、本実施形態に係るATM運用管理システムは、GW(Gateway)サーバ10、ATM運用管理サーバ20、ATM端末30、金融機関ホストコンピュータ(以下単にホストコンピュータという)40を含み構成される。図に示されるように、例えばGWサーバ10及びATM運用管理サーバ20は金融機関から業務委託を受けた警備会社に設置され、ATM端末30はATM設置店舗に設置され、ホストコンピュータ40は金融機関ホストセンターに設置され、相互にネットワークを介して接続されている。
【0020】
GWサーバ10は、ATM端末30及びホストコンピュータ40間の通信を中継するサーバである。本実施形態においては、ATM端末30は、ホストコンピュータ40と決済処理を行う場合、直接ホストコンピュータ40と通信するのではなく、一旦GWサーバ10にアクセスし、GWサーバ10を介してホストコンピュータ40との通信を行う。同様に、ホストコンピュータ40は、直接ATM端末30と通信するのではなく、一旦GWサーバ10にアクセスし、GWサーバ10を介してATM端末30との通信を行う。
【0021】
またGWサーバ10は、取引情報DB11を備えており、ATM端末30及びホストコンピュータ40間でやり取りされた取引情報(取引データ)を保存しておく。取引情報には、利用者がATM端末30を利用する為に必要とされる情報を全て含む。例えば、ATM識別子、取引日時、カード情報(口座番号)、暗証番号、取引種別、取引金額、取引成否のデータ等を含む。但しその時点でのATM端末30の現金残高の情報までは取引情報には現状含まれていない。
【0022】
ATM運用管理サーバ20は、警備会社がATMの運用・保守業務を遂行するにあたって必要とされる情報を統括的に管理するサーバである。ATM運用管理サーバ20は、預託金D21を備えており、各ATM端末30内の現金残高を管理している。
【0023】
ATM端末30は、いわゆる現金自動預払機であり、利用者が現金の入出金や振込みなどの金融取引を行う端末装置である。例えば、金融機関店舗、コンビニエンスストア、駅、専用ATMスタンド等のATM設置場所に設置される。なお図中ATM端末30は1台のみ示されているが、いうまでもなく実際には相当数のATM端末30が存在している。
【0024】
ホストコンピュータ40は、金融機関のホストセンターなどに設置され、一切の金融に関する取引を統括的に管理する。複数の金融機関DB41を備え、利用者(顧客)の金融口座を管理し、ATM端末30の取引要求に応じて様々な金融取引を統括している。
【0025】
また、警備会社はATM内現金残高の確認を行なうため、1日1回の間隔で金融機関側とその突合せ作業を行う。ホストコンピュータ40はATM端末30とリアルタイムに決済処理を行っているので、ホストコンピュータ40側のATM内現金残高の情報と警備会社側の預託金DB21内のATM内現金残高の情報と突合せを行うことにより、各ATM内現金残高情報の更新やその確認を行なっている。
【0026】
また、本実施形態においては、警備会社はATM内現金残高の確認を行なうため、適宜、必要に応じて、GWサーバ10の取引情報DB11と、ATM運用管理サーバ20の預託金DB21との間で情報の突合せを行うことにより、最新の各ATM端末30内現金残高情報の確認を行うことができる。この点、再度後述する。
【0027】
(ハードウェア)
ここで、本実施形態に係るGWサーバ10のハードウェア構成について簡単に説明しておく。図3は、GWサーバ10の一実施形態の主要構成を示すハードウェア構成図である。GWサーバ10は、主要な構成として、CPU101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、補助記憶装置104、記憶媒体読取装置105、入力装置106、表示装置107、及び通信装置108を含む構成である。
【0028】
CPU101は、マイクロプロセッサ及びその周辺回路から構成され、装置全体を制御する回路である。また、ROM102は、CPU101で実行される所定の制御プログラム(ソフトウェア部品)を格納するメモリであり、RAM103は、CPU101がROM102に格納された所定の制御プログラム(ソフトウェア部品)を実行して各種の制御を行うときの作業エリア(ワーク領域)として使用するメモリである。
【0029】
補助記憶装置104は、汎用のOS(Operating System)、プログラムを含む各種情報を格納する装置であり、不揮発性の記憶装置であるHDD(Hard Disk Drive)などが用いられる。
【0030】
なお、上記各種情報は、補助記憶装置104以外にも、CD−ROM(Compact Disk - ROM)やDVD(Digital Versatile Disk)、USBメモリ等の携帯型メディアなどの各種記憶媒体やその他のメディアに記憶されてもよく、これらの記憶媒体に格納された各種情報は、記憶媒体読取装置105などのドライブ装置を介して読み取ることが可能である。
【0031】
入力装置106は、ユーザが各種入力操作を行うための装置である。入力装置106は、マウス、キーボード、表示装置107の表示画面上に重畳するように設けられたタッチパネルスイッチなどを含む。表示装置107は、各種データを表示画面に表示する装置である。例えば、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)などから構成される。
【0032】
通信装置108は、ネットワークを介して他の機器との通信を行う装置である。有線ネットワークや無線ネットワークなど含む各種ネットワーク形態に応じた通信をサポートする。
【0033】
なおATM運用管理サーバ20のハードウェア構成についてその説明は省略する。例えば、図3のハードウェア構成と同様のものを適用することができるからである。またATM端末30及びホストコンピュータ40については公知のものをそのまま適用することができる。
【0034】
(機能)
次に、GWサーバ10及びATM運用管理サーバ20の機能構成について簡単に説明する。図4は、GWサーバ10及びATM運用管理サーバ20の一実施形態の主要機能を示す機能ブロック図である。GWサーバ10は、主要な機能として、中継部12、取引情報記憶部13を含み、ATM運用管理サーバ20は、現金残高情報記憶部22、算出部23、通知部24を含む構成である。
【0035】
GWサーバ10の中継部12は、ATM端末30及びホストコンピュータ40間において入出金に関する取引情報を含む通信を中継する機能を有している。ATM端末30は、ホストコンピュータ40と決済処理を行う場合、GWサーバ10にアクセスし、GWサーバ10を介してホストコンピュータ40との通信を行う。同様に、ホストコンピュータ40は、GWサーバ10にアクセスし、GWサーバ10を介してATM端末30との通信を行う。
【0036】
取引情報記憶部13は、中継された通信に含まれる取引情報を記憶する機能を有している。取引情報(取引データ)には、利用者がATM端末30を利用する為に必要とされる情報を全て含むことができる。取引情報は、例えば、ATM識別子、取引日時、カード情報(口座番号)、暗証番号、取引種別、取引金額、取引成否のデータ等を含むが、取引情報記憶部13で記憶する情報として、この取引情報の中から、利用者の個人情報(例えばカード情報、暗証番号)を除外し、そのATM端末の現金残高の算出に要する情報(例えばATM識別子、取引日時、取引種別、取引金額、取引成否のデータ等)のみを選別して記憶してもよい。なお、本実施形態において取引情報記憶部13は、取引情報DB11により具現化される。
【0037】
ATM運用管理サーバ20の現金残高情報記憶部22は、ATM端末30内の第一の現金残高情報を記憶する機能を有している。具体的に現金残高情報記憶部22は、預託金DB21により具現化される。預託金DB21上でATM端末30毎の現金残高情報が記憶管理され、また現状1日1回の間隔で金融機関側のホストコンピュータ40とその突合せ作業が行われる。上述のように、ホストコンピュータ40は常にATM端末30毎の最新の正確な(正式な、といってもよい)現金残高情報を把握しているので、突合せ作業により、預託金DB21のATM端末30毎の現金残高情報のアップデートが行われている。
【0038】
算出部23は、現金残高情報記憶部22に記憶された取引情報に基づいて、ATM端末30内の現金残高の増減額を算出する機能を有している。現金残高情報記憶部22、つまり取引情報DB11には、ATM端末30とホストコンピュータ40間のリアルタイムに行われた取引情報が記憶されているので、現金の入出金を計算することにより、少なくともATM端末30内の現金残高の増減額を算出可能である。そして算出部23は、この現金残高の増減額と、現金残高情報記憶部22(預託金DB21)の現金残高情報とを突き合せることにより、現時点の現金残高情報を算出する。例えば、現金残高が増加している場合、預託金DB21上の現金残高情報に対しその増加額を加算する。一方現金残高が減少している場合、預託金DB21上の現金残高情報に対しその減少額を減算する。ここで算出された現金残高情報は、まさに現時点におけるリアルタイムなATM端末30内の現金残高情報であり、運用管理者の操作に応じて、ATM運用管理サーバ20の監視モニタ(表示装置107)上に表示されうる。この点フローチャートを用いて再度説明する。
【0039】
通知部24は、ATM端末30内の現金残高が急激に不足しすぎたり増加しすぎたりした場合、運用管理者に対し、ATM端末30内の現金残高の補充又は回収を促す通知を行う。具体的に例えば、現金残高の増減額が所定額以上である場合や、単位時間当りの前記現金残高の増減額の変動率が所定率以上である場合である。通知方法は色々ありえるが例えば、ATM運用管理サーバ20の監視モニタに警告画面を表示したり、アラート(音声)により、ATM端末30内の現金残高異常をATM運用管理者(ATM監視者)に伝達できる。
【0040】
以上説明したこれらの機能は、実際にはCPU101が実行するプログラムにより実現される。
【0041】
(DB)
図5は、取引情報DB11の取引情報例を示す。上述したように取引情報は、ATM端末30とホストコンピュータ40との間の通信に含まれるものであるので、例えば、ATM識別子、カード情報(口座情報)、暗証番号、残高情報、入出金額等を含む。しかし本実施形態においては、取引情報DB11で記憶される情報として、この取引情報の中から、利用者の個人情報(例えばカード情報、暗証番号、残高情報、)を除外し、そのATM端末の現金残高の算出に要する情報(例えばATM識別子、入出金額等)のみを選別して記憶する。
【0042】
図に示されるように、取引情報DB11には、「取引ID」、「取引日時」、「ATM端末識別子」、「取引種別」、「取引金額」、「取引成否」等の情報が格納されている。「取引ID」は、取引を特定するための固有のID値である。「取引日時」は、取引された日時分を示す。「ATM端末識別子」は、取引されたATM端末を特定するための固有の識別子を示す。「取引種別」は、例えば入金、出金、振込等の取引の種別を示す。「取引金額」は、取引された金額を示す。「取引成否」は、最終的にその取引の成否を示す。
【0043】
なお、取引情報DB11の取引情報は、ATM端末30とホストコンピュータ40との間の通信に含まれるものを取得、保存したものである。1回の取引でも複数の取引データがシーケンス形式で行われるので、取引情報の実際は、通信ログのような情報が取得されうる。しかし、図5では説明の便宜上、複数の取引データシーケンスからなる取引情報であっても、これらの情報を集約、整理し、1回の取引単位毎の取引情報として示したものである。
【0044】
図6は、預託金DB21の現金残高情報例を示す。預託金DB21には、ATM端末毎の現金残高の情報が格納されている。また1日1回の間隔で金融機関側のホストコンピュータ40とその突合せ作業が行われる。上述のように、ホストコンピュータ40は常にATM端末30毎の最新の正確な(正式な)現金残高情報を把握しているので、突合せ作業により、預託金DB21のATM端末30毎の現金残高情報のアップデートが行われる。
【0045】
図に示されるように、預託金DB21には、「ATM端末識別子」、「現金残高」、「最終突合確認日時」、「前回現金残高」等の情報が格納されている。「ATM端末識別子」は、取引されたATM端末を特定するための固有の識別子を示す。「現金残高」は、最終突合確認日時時点におけるATM内に存在する現金の残高を示す。「最終突合確認日時」は、金融機関側のホストコンピュータ40とその突合せ作業により、「現金残高」の情報がアップデートされた日時を示す。「前回現金残高」は、前回の突合確認日時にATM内に存在した現金の残高を示す。
【0046】
なお取引情報DB11、預託金DB21に格納される上記情報はあくまで一例であり、必要に応じて他の情報も含まれうることはいうまでもない。
【0047】
[情報処理]
次に本実施形態に係るATM運用管理システムにおける情報処理についてフローチャートを参照しながら説明する。
【0048】
(取引情報取得処理)
図7は、GWサーバ10の取引情報取得処理を示すフローチャートである。上述したように、GWサーバ10の中継部12は、ATM端末30及び前記ホストコンピュータ40間において入出金に関する取引情報を含む通信受信すると(S11)、送信元から送信先へその通信を中継、転送する(S12)。また取引情報記憶部13は、中継された通信に含まれる取引情報を取引情報DB11に保存する処理を行う(S13)。その結果、ATM端末30から金融取引が行われる度にその取引情報を取引情報DB11に蓄積し続けている。
【0049】
(残金残高算出処理)
図8は、ATM運用管理サーバ20の残金残高算出処理を示すフローチャートである。このフローチャート開始のタイミングとしては、例えば警備会社の運用管理者が、あるATM端末30内の、現時点におけるリアルタイムな現金残高情報を確認したい場合、ATM運用管理サーバ20を操作することにより開始される。
【0050】
運用管理者により現時点における現金残高情報を確認したいATM端末30内のATM端末識別子(例えば101-00002とする)が入力されると、算出部23は、預託金DB21からATM識別子をキーに該当するATM端末30の「現金残高」、「最終突合確認日時」を取得する(S21)。これを図9に示す。
【0051】
また、取引情報DB11からATM識別子(101-00002)をキーに「最終突合確認日時」以降の該当するATM端末の取引情報を取得する(S22)。これを図10に示す。
【0052】
次に算出部23は、「取引金額」に基づき現金残高の増減額を算出する(S23)。図10の場合、増減額は\-155,000となる。なお「取引成否」がNGの取引は現金の入出金は行われていないので、現金残高の増減額にカウントされないことに留意する。
【0053】
また、増減額と、預託金DB21からの「現金残高」とに基づき、現時点での現金残高を算出する(S24)。預託金DB21からの「現金残高」は、\1,050,000であり、増減額\-155,000であるから、ATM端末識別子101-00002のATM端末30内の現時点での現金残高は、\895,000となる。そして、この算出された現金残高の増減額、現時点での現金残高\895,000は、運用管理者に提示される(S25)。
【0054】
以上のように、ATM運用管理サーバ20は上述の現金残高算出処理を行うので、警備会社の運用管理者は、ATM端末30内の、現時点におけるリアルタイムな現金残高情報を確認できる。
【0055】
(通知処理)
図11は、ATM運用管理サーバ20による通知処理を示すフローチャートである。ATM運用管理サーバ20は、予め定められた定時(例えば1H毎)になると、自動的にATM端末内の現金残高の増減額や増減率を算出し、これらが所定閾値を越える場合、急激な現金残高の入出金変動があったものとして、運用管理者にその旨を通知することにより、当該ATM端末内の現金残高の補充又は回収を促す。以下説明する。
【0056】
まずATM運用管理サーバ20は定時確認を行なう(S31)。定時とは運用管理者が任意に設定可能な値であり、例えば1H毎、10時、12時、15時などのように設定できるようになっている。また予め監視対象のATM端末識別子(複数登録可)が登録されているので、定時になると、当該ATM端末識別子により特定されるATM端末に対して、現金残高の増減額や増減率の算出を行う。
【0057】
算出部23は、取引情報DB11からATM識別子をキーに前回の定時時刻以降の該当するATM端末の取引情報を取得する(S32)。また預託金DB21からATM識別子をキーに該当するATM端末の「現金残高」を取得する(S33)。
【0058】
そして算出部23は、「取引金額」に基づき単位時間あたりの現金残高の増減額を算出する(S34)。ここで仮に、ATM端末の取引情報が図9に示されるものであるとすると、単位時間(1H:10〜11時)あたりの現金残高の増減額は、\-155,000と算出される。これは単位時間1Hあたり\155,000の現金残高が減少(出金)したことを示し、急激な現金残高の変動といえる。
【0059】
また算出部23は、預託金DB21からの「現金残高」と、上記算出の増減額とに基づき、単位時間あたりの増減率を算出する(S35)。ここで仮に、預託金DB21からのATM端末の「現金残高」が図10に示されるものであるとすると、\-155,000/\1050000*100≒-14.7%と算出される。これは単位時間1Hあたり約14%の現金残高が減少(出金)したことを示し、急激な現金残高の変動といえる。
【0060】
増減額>閾値a(S36)、増減率>閾値b(S37)のいずれかを満たす場合、通知部24は、運用管理者に、ATM端末識別子とともに、そのATM端末において急激な現金残高の入出金変動があった旨の通知を行う(S38)。なおこの閾値a、閾値bは、過去の実績(ATM端末毎の平均的な取引額等)に基づき運用管理者により適切に決定されATM運用管理サーバ20上に設定されればよい。
【0061】
以上のように、ATM運用管理サーバ20は上述の通知処理を行うので、警備会社の運用管理者は、突発的なATM端末内の現金残高の変動があった場合、そのATM端末を容易且つ迅速に認知できる。
【0062】
なお、ATM端末には券種(1万円札、5千円札、2千円札、千円札)ごとに紙幣が収納されるので、前記現金残高の情報に加えて紙幣ごとの枚数に関する情報も管理するようにし、さらには、いずれかの券種毎の紙幣の枚数が急激に変動した場合に通知するようにしてもよい。
【0063】
[総括]
従来より、警備会社側でも各ATM内現金残高を把握してはいるものの、ATM内現金残高の増減の情報が預託金DBに反映されるのは、1日1回の金融機関側との突合せ作業時点であるため、正確な各ATM端末内の現金残高を把握するには、突合せ作業まで待たなくてはならず、突発的にATM内現金残高が大きく変動する事態が発生した場合、警備会社側で把握している情報は最長24H前の情報であるため、余裕をもってこれを把握することは困難であった。
【0064】
しかしながら以上のように、本実施形態に係るATM運用管理システムにおいては、各ATM端末内の現時点におけるリアルタイムな現金残高情報を確認でき、また突発的なATM端末内の現金残高の変動があった場合、運用管理者に対してその旨の通知が行われるので、余裕をもって緊急を要するような事態に対しても迅速且つ適切な対応を行うことができる。またこれにより、現金の補充回収業務のスケジュールをより正確に行うことができ、作業効率の向上、コストの低減等もまた期待できる。
【0065】
例えば、郊外に設置されているATM端末の場合、日頃利用者は多くないので、ATM端末内に保管維持されている現金残高は小額である。仮に郊外ATM端末で単位時間当たりに日頃見られない急激な現金残高の入出金変動があった場合、警備会社は迅速にこれを認知することができる。この郊外ATM端末は、既にある程度現金残高は不足しつつある上、引き続き現金の引き出しが継続すると最悪の場合現金残高不足によるATM端末使用停止の事態に陥る可能性がある。警備会社の現金補充作業までには、現地までの移動時間を考えれば、警備会社や運用・保守業者としては、リアルタイムにATM端末内の現金残高の情報を把握することにより適切且つ迅速な対処が可能となる。
【0066】
以上本発明によれば、ATMの運用委託業者側でもリアルタイムに各ATM内の現金残高の変動を把握できるATM運用管理システムを提供することが可能となる。なお、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0067】
なお、既存のシステムから、ATM端末、ホストコンピュータ間の取引情報を取得するためには、次のような方法も考えられる。ホストコンピュータを改修し、警備会社のATM運用管理サーバはホストコンピュータから取引の都度、リアルタイムで取引情報を受信する。またもしくは、ATM端末を改修し、ATM端末がホストコンピュータに取引に関する情報を送信する際、並行して警備会社のATM運用管理サーバに取引情報を送信する。しかしながら、前者は、既存のホストコンピューの改修は非常に多額のコストが必要となり、後者は、相当数設置された全てのATM端末のプログラム入れ替えや、送信先の設定変更作業を行わなければならず非常に大きな手間を必要とする。
【0068】
なおまた、上述のATM運用管理システムにおいて、現金残高情報記憶部22上の現金残高情報を、算出部23により算出されたATM端末の現時点での現金残高情報に更新するように構成することできる。しかし、金融機関とのと1日1回の突合せにより、現金残高情報記憶部22上の現金残高情報は確実に反映されるべきであることから、上記実施形態では、あくまで算出された現時点での現金残高情報は、運用管理者により参照されるもので更新処理までは行わない構成とした。
【符号の説明】
【0069】
10 GWサーバ
11 取引情報DB
12 中継部
13 取引情報記憶部
20 ATM運用管理サーバ
21 預託金DB
22 現金残高情報記憶部
23 算出部
24 通知部
30 ATM端末
40 金融機関ホストコンピュータ
41 金融機関DB
101 CPU
102 ROM
103 RAM
104 補助記憶装置
105 記憶媒体読取装置
106 入力装置
107 表示装置
108 通信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者に対し入出金を行うATM端末と、前記ATM端末からの取引要求を受け入出金の可否をコントロールする金融機関のホストコンピュータと、前記ATM端末内の現金残高を管理するATM運用管理装置と、GWサーバとを含み構成されるATM運用管理システムであって、
前記GWサーバは、
前記ATM端末及び前記ホストコンピュータ間において入出金に関する取引情報を含む通信を中継する中継手段と、
前記中継手段により中継された通信に含まれる取引情報を記憶する取引情報記憶手段と、
を有し、
前記ATM運用管理装置は、
前記金融機関との取決めに基づく所定期間毎の、前記ホストコンピュータで管理されている前記ATM端末内の現金残高情報との突き合せ作業により、所定期間毎の情報整合性が確保された前記ATM端末内の現金残高情報を記憶する現金残高記憶手段と、
前記取引情報記憶手段に記憶された取引情報に基づいて、前記ATM端末内の現金残高の増減額を算出し、当該現金残高の増減額と前記現金残高情報とを突き合せることにより、現時点の現金残高情報を算出する算出手段と、
を有することを特徴とするATM運用管理システム。
【請求項2】
前記ATM運用管理装置は、
単位時間当りの前記現金残高の増減額が所定額以上である場合、運用管理者に対し、前記ATM端末内の現金残高の補充又は回収を促す通知を行う通知手段と、
を有することを特徴とする請求項1記載のATM運用管理システム。
【請求項3】
前記ATM運用管理装置は、
単位時間当りの前記現金残高の増減額の変動率が所定率以上である場合、運用管理者に対し、前記ATM端末内の現金残高の補充又は回収を促す通知を行う通知手段と、
を有することを特徴とする請求項1記載のATM運用管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−215789(P2011−215789A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82184(P2010−82184)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000202361)綜合警備保障株式会社 (266)