説明

C型肝炎感染の治療及び予防のための3−エーテル及び3−チオエーテル置換シクロスポリン誘導体

【課題】シクロスポリン誘導体、又は医薬として許容し得るその塩若しくは溶媒和物の提供。
【解決手段】アルキル基、ヒドロキシアルキル基等の置換基を有するアミノ酸を含有するシクロスポリン誘導体。該シクロスポリン誘導体は型肝炎ウイルス感染、およびヒト免疫不全ウイルス感染の治療又は予防に有効であり、またシクロスポリンの長期間投与で、生ずる不可逆的な腎機能障害、縞状線維化から房の虚血性虚脱、糸球体硬化、及び尿細管萎縮等の毒性に対して良好な毒性プロファイルを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(1.発明の分野)
本発明は、それを必要とする対象においてC型肝炎ウイルス感染の治療又は予防で使用
するためのシクロスポリン誘導体、及びそれから調製される医薬組成物を提供する。いく
つかの態様では、本発明は、感染を治療又は予防するのに有効な量の本発明の3−エーテ
ル又は3−チオエーテルシクロスポリンを、それを必要とする対象に投与することによっ
てC型肝炎感染を治療する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
(2.背景)
1989年、非A非B型輸血後肝炎の主な原因ウイルスが判明し、C型肝炎ウイルス(
HCV)と命名された。それ以降、A型、B型、及びC型に加えて、複数のタイプの肝炎
ウイルスが判明し、HCVによって引き起こされる肝炎がC型肝炎と呼ばれる。HCVに
感染している対象は、世界人口の数パーセントを含むと見なされ、HCV感染は、特徴と
して慢性になる。
【0003】
HCVは、ゲノムが一本鎖プラス鎖RNAであるエンベロープRNAウイルスであり、
フラビウイルス(Flavivirus)のヘパシウイルス属(Hepacivirus)に属する(国際ウイ
ルス分類委員会、国際微生物学会連合)。同じ肝炎ウイルスのうち、例えばDNAウイル
スであるB型肝炎ウイルス(HBV)は免疫系によって排除され、まだ未成熟な免疫能を
有する新生児及び乳児を除いて、このウイルス感染は急性感染になる。一方、HCVは、
未知の機構により宿主の免疫系を幾分回避する。このウイルスに一旦感染すると、成熟し
た免疫系を有する成人にさえ、持続的感染が頻繁に現れる。
【0004】
慢性肝炎が持続的HCV感染を伴う場合、高率で肝硬変又は肝癌に進行する。手術によ
る腫瘍の摘出はあまり役に立たない。というのは、非癌部における続発炎症により、対象
に再発性肝癌が現れることが多いからである。
【0005】
したがって、C型肝炎感染を治療する有効な治療方法が望まれている。炎症を抗炎症剤
で抑制するための対症療法は別として、HCVを炎症のない低レベルに低減し、HCVを
根絶する治療剤の開発が強く求められている。最適の治療剤であれば、「持続性ウイルス
学的著効」に分類されるウイルス学的著効を提供するはずである。これは、C型肝炎療法
を終了して6か月以上後の血中ウイルスが検出不可能なレベルであると定義される。
【0006】
現在では、インターフェロン単剤又はリバビリンとの組合せでの処置は、HCVの根絶
で知られている唯一の有効な方法である。しかし、インターフェロンは、対象集団の約3
3〜46%においてしか、ウイルスを根絶することができない。残りの対象の場合には、
効果がなく、或いは一時的効果しかもたらさない。したがって、インターフェロンの代わ
りに又はそれと同時に使用する抗HCV薬が大いに期待して待たれる。
【0007】
シクロスポリンAは、その免疫抑制活性;抗真菌性、抗寄生虫性、及び抗炎症性を含め
て、ある範囲の治療的用途;並びに抗HIV活性でよく知られている。シクロスポリンA
及びある種の誘導体は、抗HCV活性を有していると報告されている。Watashiら、2003,
Hepatology 38:1282-1288、Nakagawa ら、2004, Biochem. Biophys. Res. Commun. 313:
42-7、並びにShimotohno及びWatashi、2004, American Transplant Congress, Abstract
No. 648(American Journal of Transplantation、2004, 4(s8): 1-653)を参照のこと。
【0008】
しかし、周知のシクロスポリンの問題はその腎毒性である。例えば、シクロスポリンA
(シクロスポリン)は、腎毒性及び肝毒性を引き起こす恐れがある。シクロスポリン療法
の重篤な合併症である腎毒性は、強い腎臓血管収縮を特徴とし、腎臓の構造的な不可逆的
障害を伴う慢性傷害に進行することが多い(Busauschinaら、2004;Myersら、1988)。移
植対象の25〜38%において、シクロスポリンと関連がある腎毒性が認められている。
腎機能障害はいつでも生じる恐れがあり、早期可逆的障害から不可逆的慢性腎不全への遅
延進行に及ぶ。乏尿、糸球体濾過量及び腎血漿流量の急性減少を伴う急性腎毒性は、移植
の直後、又は何週間か若しくは何か月後に現れる恐れがある(Kahan, 1989)。
【0009】
シクロスポリンの長期間投与では、慢性腎毒性は、進行性でほとんど不可逆的な腎機能
障害を特徴とし、縞状線維化から房の虚血性虚脱、糸球体硬化、及び尿細管萎縮に及ぶ組
織学的病変によって支持される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
世界中のウイルスに対処するために、C型肝炎感染の治療又は予防のための有効な方法
及び組成物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(3.発明の要旨)
驚くべきことに、いくつかの3−置換シクロスポリン誘導体は、HCVに対する活性を
有することが判明した。また、前記3−置換シクロスポリン誘導体のいくつかは、予想外
に良好な毒性プロファイルを有することが判明した。
【0012】
一態様では、本発明は、HCVに対する活性を有するシクロスポリン誘導体を提供する
。いくつかの実施形態では、本発明は、それを必要とする対象において、有効量の本発明
の3−置換シクロスポリン誘導体を対象に投与することによってC型肝炎感染を治療又は
予防する方法を提供する。いくつかの実施形態では、3−置換シクロスポリン誘導体は、
3−エーテルシクロスポリン;3−エーテル、4−γ−ヒドロキシメチルロイシンシクロ
スポリン;3−チオエーテルシクロスポリン;及び3−チオエーテル、4−γ−ヒドロキ
シメチルロイシンシクロスポリンからなる群から選択される。
【0013】
別の態様では、本発明は、安全域が改善された、HCVに対する活性を有するシクロス
ポリン誘導体を提供する(すなわち、有効なHCV制御をもたらすのに必要とされた化合
物の用量レベルと毒性を産生する用量レベルの差異)。
別の態様では、本発明は、周知の化合物と比べて改善された腎毒性及び/又は肝毒性を
有するシクロスポリン誘導体を提供する。
【0014】
別の態様では、本発明は、対象におけるC型肝炎ウイルス感染の治療又は予防方法を提
供する。いくつかの態様では、本発明の方法は、それを必要とする対象に、C型肝炎ウイ
ルスに対する治療係数が高いシクロスポリン化合物の有効量を投与することを含む。治療
係数、すなわち細胞毒性濃度とウイルス抑制濃度の比を下記に詳述する。
【0015】
別の態様では、本発明は、治療有効量の一般式(I)のシクロスポリン誘導体、又は医
薬として許容し得るその塩を投与することを含む方法を提供する:
【化1】

(式中、
Aは、式(IIa)又は(IIb)の残基であり、
【化2】

Bは、エチル、1−ヒドロキシエチル、イソプロピル、又はn−プロピルであり、
は、同じでも異なってもよい1個又は複数のR基によって場合によっては置換さ
れていてもよい、1〜6個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖のアルキル;
ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、モノアルキルアミノ、及びジアルキルアミノからなる
群から選択された同じでも異なってもよい1個又は複数の基によって場合によっては置換
されていてもよい、2〜6個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖のアルケニル;
ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、モノアルキルアミノ、及びジアルキルアミノからなる
群から選択された同じでも異なってもよい1個又は1個若しくは複数の基によって場合に
よっては置換されていてもよい、2〜6個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖のアルキニル

ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、モノアルキルアミノ、及びジアルキルアミノからなる
群から選択された同じでも異なってもよい1個又は複数の基によって場合によっては置換
されていてもよい、3〜6個の炭素原子を含むシクロアルキル;
1〜6個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖のアルコキシカルボニルを表し、
は、イソブチル又は2−ヒドロキシイソブチルを表し、
Xは、−S(O)−又は酸素を表し、
は、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、−NR
、及び−NR(CHNRからなる群から選択され、
及びRは、同じでも異なってもよく、
水素;
同じでも異なってもよい1個又は複数のR基によって場合によっては置換されていて
もよい1〜6個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖のアルキル;
2〜4個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖のアルケニル又はアルキニル;
1〜6個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖のアルキルによって場合によっては置換され
ていてもよい3〜6個の炭素原子を含むシクロアルキル;
ハロゲン、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノ、及びジアル
キルアミノからなる群から選択された同じでも異なってもよい1〜5個の基によって場合
によっては置換されていてもよいフェニル;
5又は6個の環原子、並びに窒素、硫黄、及び酸素から選択された同じでも異なっても
よい1〜3個のヘテロ原子を含む飽和でも不飽和でもよい複素環を表し;
或いはRとRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、4〜6個の環原
子を含む飽和又は不飽和の複素環を形成し、この環は、窒素、酸素、及び硫黄からなる群
から選択された別のヘテロ原子を場合によっては含んでもよく、アルキル、フェニル、及
びベンジルからなる群から選択された同じでも異なってもよい1〜4個の基によって場合
によっては置換されていてもよく;
は、水素、又は1〜6個の炭素原子を含む直鎖若しくは分枝鎖のアルキルを表し、
は、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、及び−NR
からなる群から選択され、
及びRは、同じでも異なってもよく、それぞれ、水素、又は1〜6個の炭素原子
を含む直鎖若しくは分枝鎖のアルキルを表し、
nは0、1、又は2であり、
mは2〜4の整数であり、
ハロゲンは、フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨードを表す。)。
【0016】
いくつかの実施形態では、XはOである。他の実施形態では、XはSである。
いくつかの場合には、置換基A、B、R、及びRは、光学及び/又は立体異性に寄
与することができる。このような形はすべて、本発明によって包含される。
【0017】
医薬として許容し得る塩の例としては、アルカリ金属、例えばナトリウム、カリウム若
しくはリチウム、又はアルカリ土類金属、例えばマグネシウム若しくはカルシウムとの塩
、アンモニウム塩、或いは窒素塩基、例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、ト
リメチルアミン、トリエチルアミン、メチルアミン、プロピルアミン、ジイソプロピルア
ミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、ベンジルアミン、ジシクロヘキシルアミン、
N−ベンジルフェネチルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジフェニレン
ジアミン、ベンズヒドリルアミン、キニン、コリン、アルギニン、リシン、ロイシン、又
はジベンジルアミンとの塩を挙げることができる。
【0018】
医薬として許容し得る酸との付加塩の例としては、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、
硫酸、硝酸、若しくはリン酸、又は有機酸、例えばコハク酸、フマル酸、酒石酸、酢酸、
プロピオン酸、マレイン酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トル
エンスルホン酸、イセチオン酸、若しくはエンボン酸或いはこれらの化合物の置換誘導体
で形成される塩を挙げることができる。好ましい塩は、コハク酸塩、リン酸塩、クエン酸
塩、酢酸塩、塩酸塩、メタンスルホン酸塩、及びプロピオン酸塩である。これらの塩のい
くつかは新規であり、したがって、本発明の更なる特徴を構成する。
【0019】
したがって、いくつかの態様では、本発明は、本明細書に記載する化合物の新規塩を提
供する。いくつかの実施形態では、本発明は、式Iの化合物の塩酸塩、臭化水素酸塩、硫
酸塩、硝酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩
、マレイン酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、p−トルエン
スルホン酸塩、イセチオン酸塩、及びエンボン酸塩からなる群から選択された塩を提供す
る。いくつかの実施形態では、塩は、コハク酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、塩酸
塩、メタンスルホン酸塩、及びプロピオン酸塩からなる群から選択される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(4.好ましい実施態様の説明)
本発明は、それを必要とする対象においてC型肝炎感染を治療又は予防する方法、並び
にこのような方法に有用な医薬組成物及び剤形を提供する。方法及び組成物を下記のセク
ションで詳述する。
【0021】
4.1 定義
本発明の化合物及び複合体を述べる場合、下記の用語は、別段の指示のない限り下記の
意味を有する。
「シクロスポリン」は、当業者に周知の任意のシクロスポリン化合物、又はその誘導体
を指す。例えば、Rueggerら、1976, Helv. Chim. Acta. 59:1075-92; Borelら、1977, Im
munology 32:1017-25を参照のこと。その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込
まれる。本発明の例示的化合物は、シクロスポリン誘導体である。別段の注記のない限り
、本明細書に記載するシクロスポリンはシクロスポリンAであり、本明細書に記載するシ
クロスポリン誘導体はシクロスポリンAの誘導体である。
【0022】
「アシル」は、−C(O)R基(式中、Rは、本明細書に定義する水素、アルキル、シ
クロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、
ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルである)を指す。代表例としては、ホルミル、
アセチル、シクロヘキシルカルボニル、シクロヘキシルメチルカルボニル、ベンゾイル、
ベンジルカルボニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
「アルキル」は、具体的には約11個までの炭素原子、より具体的には低級アルキルと
して1〜8個の炭素原子、さらにより具体的には1〜6個の炭素原子を有する1価の飽和
脂肪族ヒドロカルビル基を指す。炭化水素鎖は、直鎖状でも分枝状でもよい。この用語は
、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、iso−ブチル、ter
t−ブチル、n−ヘキシル、n−オクチル、tert−オクチルなどの基によって例示さ
れる。用語「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を指す。
【0024】
「アルキレン」は、具体的には約11個までの炭素原子、より具体的には1〜6個の炭
素原子を有する、2価飽和脂肪族ヒドロカルビル基を指し、これらは直鎖状でも分枝状で
もよい。この用語は、メチレン(−CH−)、エチレン(−CHCH−)、プロピ
レン異性体(例えば、−CHCHCH−及び−CH(CH)CH−)などの基
によって例示される。
【0025】
「アルケニル」は、好ましくは約11個までの炭素原子、具体的には2〜8個の炭素原
子、さらにより具体的には2〜6個の炭素原子を有する1価オレフィン性不飽和ヒドロカ
ルビル基を指し、これらは直鎖状でも分枝状でもよく、少なくとも1個、具体的には1〜
2個のオレフィン性不飽和部位を有する。特定のアルケニル基には、エテニル(−CH=
CH)、n−プロペニル(−CHCH=CH)、イソプロペニル(−C(CH
=CH)、ビニル、及び置換ビニルなどが含まれる。
【0026】
「アルケニレン」は、具体的には約11個までの炭素原子、より具体的には2〜6個の
炭素原子を有する2価のオレフィン性不飽和ヒドロカルビル基を指し、これらは直鎖状で
も分枝状でもよく、少なくとも1個、具体的には1〜2個のオレフィン性不飽和部位を有
する。この用語は、エテニレン(−CH=CH−)、プロペニレン異性体(例えば、−C
H=CHCH−、及び−C(CH)=CH−、及び−CH=C(CH)−)などの
基によって例示される。
【0027】
「アルキニル」は、具体的には約11個までの炭素原子、より具体的には2〜6個の炭
素原子を有するアセチレン性不飽和ヒドロカルビル基を指し、これらは直鎖状でも分枝状
でもよく、少なくとも1個、具体的には1〜2個のアルキニル不飽和部位を有する。アル
キニル基の特定の非限定的な例としては、アセチレニック、エチニル(−C≡CH)、プ
ロパルギル(−CHC≡CH)などが挙げられる。
【0028】
「アルコキシ」は、−OR基(式中、Rは、アルキルである)を指す。特定のアルコキ
シ基には、例としてメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキ
シ、tert−ブトキシ、sec−ブトキシ、n−ペントキシ、n−ヘキソキシ、1,2
−ジメチルブトキシなどが含まれる。
「アルキルアミノ」は、アルキル−NR’−基(式中、R’は水素及びアルキルから選
択される)を指す。
【0029】
「アリールアミノ」は、アリール−NR’−基(式中、R’は水素、アリール、及びヘ
テロアリールから選択される)を指す。
「アルコキシカルボニル」は、−C(O)−アルコキシ基(式中、アルコキシは本明細
書に定義する通りである)を指す。
「アミノ」は、−NH2基を指す。
「カルボキシ」は、−C(O)OH基を指す。
【0030】
「ジアルキルアミノ」は、−NRR’基(式中、R及びR’は独立に、本明細書に定義
するアルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロア
ルキル、シクロヘテロアルキル、置換シクロヘテロアルキル、ヘテロアリール、又は置換
ヘテロアリール基を表す)を意味する。
【0031】
「ハロゲン」又は「ハロ」は、クロロ、ブロモ、フルオロ、又はヨードを指す。
「ヒドロキシ」は、−OH基を指す。
「ニトロ」は、−NO基を指す。
「チオアルコキシ」は、−SR基(式中、Rはアルキルである)を指す。
【0032】
「スルファニル」は、HS−基を指す。「置換スルファニル」は、RS−などの基(式
中、Rは本明細書に記載する任意の置換基である)を指す。いくつかの実施形態では、「
置換スルファニル」は、−SR基(式中、Rは、本明細書に定義するように場合によって
は置換されていてもよい本明細書に定義するアルキル又はシクロアルキル基である)を指
す。代表例としては、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオなどが挙げら
れるが、これらに限定されない。
【0033】
「スルフィニル」は−S(O)H基を指す。「置換スルフィニル」はS(O)−Rなど
の基(式中、Rは本明細書に記載する任意の置換基である)を指す。
「スルホニル」は、2価の−S(O)−基を指す。「置換スルホニル」は、−S(O
)−Rなどの基(式中、Rは本明細書に記載する任意の置換基である)を指す。特定の
実施形態では、Rは、H、低級アルキル、アルキル、アリール、及びヘテロアリールから
選択される。
【0034】
「医薬として許容し得る塩」は、その生物学的特性を保持し、毒性ではない、又はその
逆に薬剤用途に望ましくない本発明の化合物の任意の塩を指す。このような塩は、当技術
分野で周知の様々な有機及び無機の対イオンに由来することができ、これらを含む。この
ような塩には、(1)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、スルファミン酸、酢酸、
トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンチルプロピ
オン酸、グリコール酸、グルタル酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、ソルビン
酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、
3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ピクリン酸、ケイ皮酸、マンデル酸、フタ
ル酸、ラウリン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタン−二スルホン
酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホ
ン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、ショウノウ酸、カンファー
スルホン酸、4−メチルビシクロ[2.2.2]−オクト−2−エン−1−カルボン酸、
グルコヘプトン酸、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、tert−ブチル酢酸
、ラウリル硫酸、グルコン酸、安息香酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチ
ル酸、ステアリン酸、シクロヘキシルスルファミン酸、キナ酸、ムコン酸、及び同様な酸
など、有機酸又は無機酸で形成された酸付加塩;或いは(2)親化合物に存在する酸性プ
ロトンが、(a)金属イオン、例えばアルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、若しく
はアルミニウムイオン、又は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水
酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化リチウム、水酸化亜鉛、及び水酸化バリ
ウムなどアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニアで置換され、又
は(b)アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ピコリン、エタ
ノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、リシン
、アルギニン、オルニチン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレン−ジアミン、クロロ
プロカイン、ジエタノールアミン、プロカイン、N−ベンジルフェネチルアミン、N−メ
チルグルカミンピペラジン、トリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン、水酸化テトラ
メチルアンモニウムなど、脂肪族、脂環式、若しくは芳香族の有機アミンなどの有機塩基
と配位結合する場合に形成された塩が含まれる。
【0035】
塩には、例にすぎないが、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモ
ニウム、テトラアルキルアンモニウムなどがさらに含まれ、化合物が塩基性官能基を含む
場合は、ヒドロハリド塩、例えば塩酸塩及び臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、スルファ
ミン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、トリクロロ酢酸塩、プロピオン酸塩、
ヘキサン酸塩、シクロペンチルプロピオン酸塩、グリコール酸塩、グルタール酸塩、ピル
ビン酸塩、乳酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩、アスコルビン酸塩、リンゴ
酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、3−(4−ヒド
ロキシベンゾイル)安息香酸塩、ピクリン酸塩、ケイ皮酸塩、マンデル酸塩、フタル酸塩
、ラウリン酸塩、メタンスルホン酸塩(メシル酸塩)、エタンスルホン酸塩、1,2−エ
タン−二スルホン酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベ
シル酸塩)、4−クロロベンゼンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、4−トル
エンスルホン酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、4−メチルビシクロ[2
.2.2]−オクト−2−エン−1−カルボン酸塩、グルコヘプトン酸塩、3−フェニル
プロピオン酸塩、トリメチル酢酸塩、tert−ブチル酢酸塩、ラウリル硫酸塩、グルコ
ン酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、サリチル酸塩、ステア
リン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩、キナ酸塩、ムコン酸塩など、非毒性の有機
酸又は無機酸の塩が含まれる。
【0036】
用語「生理的に許容し得るカチオン」は、酸性官能基の非毒性の生理的に許容し得るカ
チオン性対イオンを指す。このようなカチオンは、ナトリウム、カリウム、カルシウム、
マグネシウム、アンモニウム、及びテトラアルキルアンモニウムカチオンなどによって例
示される。
【0037】
「溶媒和物」は、非共有結合性分子間力で結合した化学量論量又は非化学量論量の溶媒
をさらに含む本発明の化合物又はその塩を指す。溶媒が水である場合、溶媒和物は水和物
である。
同じ分子式を有するが、その原子の結合の性質若しくは配列、又はその原子の空間的な
配置が異なる化合物は、「異性体」と名付けられていることを理解されたい。その原子の
空間的な配置が異なる異性体は、「立体異性体」と名付けられている。
【0038】
互いの鏡像でない立体異性体は、「ジアステレオマー」と名付けられ、互いの重ねるこ
とができない鏡像であるものは、「エナンチオマー」と名付けられている。化合物が不斉
中心を有する場合、例えば4個の異なる基に結合している場合、一対のエナンチオマーが
あり得る。エナンチオマーは、その不斉中心の絶対配置を特徴とすることができ、Cah
n及びPrelogの規則に従って(R)又は(S)が指定され(Cahnら、1966, Angew.
Chem. 78:413-447, Angew. Chem., Int. Ed. Engl. 5:385- 414(訂正: Angew. Chem., I
nt. Ed. Engl. 5:511); Prelog及びHelmchen, 1982, Angew. Chem. 94:614-631, Angew.
Chem. Internat. Ed. Eng. 21:567-583; Mata及びLobo, 1993, Tetrahedron: Asymmetry
4:657-668)、或いは分子が偏光面を回転させる方式を特徴とすることができ、右旋性又
は左旋性(すなわち、それぞれ(+)−又は(−)−異性体)が指定される。キラル化合
物は、個々のエナンチオマー又はその混合物として存在することができる。等しい比率の
エナンチオマーを含む混合物は、「ラセミ混合物」と呼ばれる。
【0039】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、1つ又は複数の不斉中心を有することが
できる。このような化合物は、したがって個々の(R)−若しくは(S)−エナンチオマ
ー、又はその混合物として生成され得る。例えば式の任意の位置における立体化学の表示
によって別段の指示のない限り、明細書及び特許請求の範囲の特定の化合物の説明又は呼
称は、個々のエナンチオマーと、そのラセミ又はその他の混合物とを包含するものである
。立体化学の決定方法及び立体異性体の分離方法は、当技術分野で周知である。特定の実
施形態では、本発明は、塩基での処置時に本明細書に示す化合物の立体異性体を提供する

【0040】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、「立体化学的に純度が高い」。立体化学
的に純度が高い化合物は、当業者によって「純度が高い」と認識されるはずの立体化学的
純度レベルを有する。言うまでもなく、この純度レベルは、100%未満である。いくつ
かの実施形態では、「立体化学的に純度が高い」は、代替となる異性体を実質的に含まな
い化合物を表す。特定の実施形態では、化合物は、他の異性体を85%、90%、91%
、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又
は99.9%含まない。
「サルコシン」又は「Sar」は、−N(Me)CHC(O)−の構造を有する当業
者に周知のアミノ酸残基を指す。当業者なら、サルコシンをN−メチルグリシンと認識す
ることができる。
【0041】
本明細書では、用語「対象」及び「患者」を本明細書では同義に使用する。用語「対象
」及び「複数の対象」は、動物、好ましくは非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ
、イヌ、ラット、及びマウス)及び霊長類(例えば、カニクイザル、チンパンジー、及び
ヒトなどのサル)を含めて、哺乳類、より好ましくはヒトを指す。一実施形態では、対象
は、C型肝炎感染の現治療方法に対して不応性又は非応答性である。別の実施形態では、
対象は、家畜(例えば、ウマ、ウシ、ブタなど)又はペット(例えば、イヌ又はネコ)で
ある。好ましい実施形態では、対象はヒトである。
【0042】
本明細書では、用語「治療剤」及び「複数の治療剤」は、障害又は1つ若しくは複数の
その症状の治療、管理、又は改善で使用することができる任意の作用剤を指す。いくつか
の実施形態では、用語「治療剤」は本発明の化合物を指す。いくつかの他の実施形態では
、用語「治療剤」は本発明の化合物を意味しない。好ましくは、治療剤は、障害又は1つ
若しくは複数のその症状の治療、管理、予防、又は改善に有用であることが知られており
、或いはそのために使用されたことがあり、又は現在使用されている作用剤である。
【0043】
「治療有効量」は、対象に疾患を治療するために投与する場合、疾患に対してこのよう
な治療をもたらすのに十分な量の化合物又は複合物又は組成物を意味する。「治療有効量
」は、とりわけ化合物、疾患及びその重症度、並びに治療される対象の年齢、体重などに
応じて異なり得る。
【0044】
任意の疾患又は障害の「治療している」又は「治療」は、一実施形態では、対象に存在
する疾患又は障害を改善することを指す。別の実施形態では、「治療する」又は「治療」
は、対象によっては識別不可能である可能性がある少なくとも1つの物理的パラメータを
改善することを指す。さらに別の実施形態では、「治療する」又は「治療」は、疾患又は
障害を身体的に(例えば、識別可能な症状の安定化)又は生理的に(例えば、物理的パラ
メータの安定化)又は両方で調節することを指す。さらに別の実施形態では、「治療する
」又は「治療」は、疾患又は障害の発症を遅延させることを指す。
【0045】
本明細書では、使用されている用語「予防剤」及び「複数の予防剤」は、障害又は1つ
若しくは複数のその症状の予防で使用することができる任意の作用剤を指す。いくつかの
実施形態では、用語「予防剤」は本発明の化合物を指す。いくつかの他の実施形態では、
用語「予防剤」は本発明の化合物を意味しない。好ましくは、予防剤は、障害の発症、発
現、進行、及び/又は重症度の予防若しくは妨害に有用であることが知られており、或い
はその予防若しくは妨害のために使用されたことがあり、又は現在使用されている作用剤
である。
【0046】
本明細書では、用語「予防する」、「予防している」、及び「予防」は、対象における
障害の1つ又は複数の症状の再発、発症、又は発現の、治療剤(例えば、予防剤又は治療
剤)の投与、又は治療剤の組合せ(例えば、予防剤又は治療剤の組合せ)の投与に起因す
る予防を指す。
【0047】
本明細書では、語句「予防有効量」は、障害を伴う1つ又は複数の症状の発現、再発、
又は発症の予防をもたらす(或いは、別の治療剤(例えば、別の予防剤)の予防効果を向
上又は改善する))のに十分である治療剤(例えば、予防剤)の量を指す。
用語「ラベル」は、物品の直接容器上の記載物、印刷物、又は図示物の表示物、例えば
活性薬剤を含有するバイアルに表示された記載物を指す。
【0048】
用語「ラベリング」は、任意の物品、又は任意のその容器若しくは包装物上の、或いは
このような物品に添付されたすべてのラベル及び他の記載物、印刷物、若しくは図示物、
例えば活性薬剤の容器に添付された又は付随した添付文書又は指示ビデオテープ若しくは
DVDを指す。
【0049】
4.2 本発明の実施形態
本発明は、それを必要とする対象におけるC型肝炎感染の治療及び予防に、本発明の化
合物が有効であるという発見に幾分基づいている。したがって、本発明は、それを必要と
する対象におけるC型肝炎感染の治療方法を提供する。本発明は、それを必要とする対象
におけるC型肝炎感染の予防方法をさらに提供する。一般に、本発明の方法は、それを必
要とする対象にC型肝炎感染の治療又は予防に有効な量の本発明の化合物を投与するステ
ップを含む。治療方法を下記のセクションで詳述する。化合物は、下記のセクションで詳
述するような本発明の任意の化合物とすることができる。いくつかの実施形態では、化合
物は、下記のセクションで詳述するような医薬組成物の形又は剤形である。
【0050】
任意の特定の作動理論に拘泥するものではないが、本発明の化合物は、現在のHCV療
法の機構とは異なる機構によってC型肝炎ウイルス(HCV)複製を阻害すると考えられ
る。HCVの現療法は、前述のように、インターフェロンとリバビリンの同時投与である
。現療法は、対象の免疫系を調節して、HCVによる感染を治療又は予防することによっ
て作用すると考えられる。本発明の化合物は、宿主におけるHCV複製でクリティカルな
細胞過程を調節又は阻害することによって作用すると考えられる。このような機構を下記
の実施例で述べる。本発明の化合物、組成物、及び方法は、新規機構で作用して、HCV
感染の治療又は予防のための新規療法をもたらす。したがって、これらは、HCVに感染
しているか、又はHCV感染のリスクがある任意の対象、具体的には、現療法に応答した
ことのない対象に有利である。
【0051】
本発明の実施形態では、対象は、HCVに感染しているか、又はHCV感染のリスクが
ある任意の対象とすることができる。感染、又は感染のリスクは、当業者によって適切で
あると思われる任意の技法に従って決定することができる。特に好ましい対象は、HCV
に感染しているヒトである。
【0052】
HCVは、当業者に周知の任意のHCVとすることができる。現在、HCVは、少なく
とも6個のゲノタイプ、及び少なくとも50個のサブタイプが当業者に周知である。HC
Vは、当業者に周知の任意のゲノタイプ又はサブタイプとすることができる。いくつかの
実施形態では、HCVは、まだ特性付けられていないゲノタイプ又はサブタイプを有する
ものである。いくつかの実施形態では、対象は単一ゲノタイプのHCVに感染している。
いくつかの実施形態では、対象は、複数のサブタイプ又は複数のゲノタイプのHCVに感
染している。
【0053】
いくつかの実施形態では、HCVはゲノタイプ1であり、任意のサブタイプを有するも
のとすることができる。例えば、いくつかの実施形態では、HCVは、サブタイプ1a、
1b、又は1cである。ゲノタイプ1のHCV感染は、現在のインターフェロン療法にほ
とんど応答しないと考えられる。本発明の方法は、ゲノタイプ1のHCV感染の療法に有
利であり得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、HCVはゲノタイプ1以外のものである。いくつかの実施形
態では、HCVはゲノタイプ2であり、任意のサブタイプを有するものとすることができ
る。例えば、いくつかの実施形態では、HCVはサブタイプ2a、2b、又は2cである
。いくつかの実施形態では、HCVはゲノタイプ3であり、任意のサブタイプを有するも
のとすることができる。例えば、いくつかの実施形態では、HCVは、サブタイプ3a、
3b、又は10aである。いくつかの実施形態では、HCVはゲノタイプ4であり、任意
のサブタイプを有するものとすることができる。例えば、いくつかの実施形態では、HC
Vはサブタイプ4aである。いくつかの実施形態では、HCVはゲノタイプ5であり、任
意のサブタイプを有するものとすることができる。例えば、いくつかの実施形態では、H
CVは、サブタイプ5aである。いくつかの実施形態では、HCVはゲノタイプ6であり
、任意のサブタイプを有するものとすることができる。例えば、いくつかの実施形態では
、HCVは、サブタイプ6a、6b、7b、8b、9a、又は11aである。例えば、Si
mmonds、2004, J.Gen Virol. 85:3173-88; Simmonds、2001, J.Gen. Virol, 82, 693-712
を参照のこと。その内容は参照によりその全体が組み込まれる。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態では、対象は、HCV感染の療法又は予防を受けたことが
ない。本発明の別の実施形態では、対象は、HCV感染の療法又は予防を以前に受けたこ
とがある。例えば、いくつかの実施形態では、対象は、HCV療法に応答していなかった
。実際に、現在のインターフェロン療法では、最高50%又はそれ以上のHCV対象は療
法に応答しない。いくつかの実施形態では、対象は、療法を受けたが、ウイルス感染又は
1つ若しくは複数のその症状を患い続けた対象とすることができる。いくつかの実施形態
では、対象は、療法を受けたが、持続性ウイルス学的著効を実現することができなかった
対象とすることができる。いくつかの実施形態では、対象は、HCV感染の療法を受けた
ことがあるが、12週間の療法の後、HCV RNAレベルの2 log10の低下を示
すことができなかった。12週間の療法の後、血清HCV RNAの2 log10超の
低下を示さなかった対象は、応答しない確率が97〜100%であると考えられる。本発
明の化合物は、現在のHCV療法以外の機構によって働くので、本発明の化合物は、この
ような非応答者を治療する上で有効であるはずであると考えられる。
【0056】
いくつかの実施形態では、対象は、療法に付随した1つ又は複数の有害事象のためHC
V療法を中断した対象である。いくつかの実施形態では、対象は、現療法の適応とならな
い対象である。例えば、いくつかのHCV療法は、神経精神事象を伴う。インターフェロ
ン(IFN)−αにリバビリンを加えたものは、高率のうつ病を伴う。うつ症状は、いく
つかの医学的障害におけるより悪い結果に関連している。自殺、自殺及び他殺念慮、うつ
病、薬物嗜癖/過量の再発、並びに攻撃行動を含めて、生命にかかわる又は致命的な神経
精神事象は、HCV療法中に、精神障害を以前にもつ対象及びもたない対象に起こる。イ
ンターフェロン誘導性うつ病は、C型慢性肝炎の治療、特に精神障害をもつ対象の場合に
制約となる。精神医学的副作用は、インターフェロン療法には共通であり、HCV感染の
現療法の中断の約10%〜20%の原因となる。
【0057】
したがって、本発明は、うつ病などの神経精神事象のリスクが現在のHCV療法での処
置に禁忌を示す対象におけるHCV感染の治療又は予防方法を提供する。本発明は、うつ
病などの神経精神事象又はこのようなリスクが、進行中のHCV療法での治療の中断が必
要であることを示す対象におけるHCV感染の治療又は予防方法も提供する。本発明は、
うつ病などの神経精神事象又はこのようなリスクが、進行中のHCV療法の用量低減が必
要であることを示す対象におけるHCV感染の治療又は予防方法をさらに提供する。
【0058】
現療法は、インターフェロン若しくはリバビリン、又はその両方、或いはインターフェ
ロン若しくはリバビリンの投与用の薬剤製品の他の何らかの成分に過敏性である対象にも
禁忌である。血色素障害(例えば、重症型サラセミア、鎌状赤血球貧血)の対象、及び現
療法の血液学的副作用のリスクにある他の対象の場合には、現療法の適応とならない。一
般的な血液学的副作用には、骨髄抑制、好中球減少、及び血小板減少が含まれる。さらに
、リバビリンは、赤血球への毒性があり、溶血を伴う。したがって、本発明は、インター
フェロン若しくはリバビリン、又は両方に過敏性である対象、血色素障害の対象、例えば
重症型サラセミア対象及び鎌状赤血球貧血対象、並びに現療法の血液学的副作用のリスク
がある他の対象においてHCV感染を治療又は予防する方法も提供する。
【0059】
いくつかの実施形態では、対象は、HCV療法を受け、本発明の方法を投与する前にそ
の療法を中断している。別の実施形態では、対象は療法を受け、本発明の方法の投与と共
にその療法を受けることを継続している。当業者の判定に従って、本発明の方法を他のH
CV療法と同時投与することができる。有利な実施形態では、他のHCV療法の用量を低
減させて、本発明の方法又は組成物を同時投与することができる。
【0060】
いくつかの実施形態では、本発明は、インターフェロンでの処置に対して不応性である
対象の治療方法を提供する。例えば、いくつかの実施形態では、対象は、インターフェロ
ン、インターフェロンα、ペグ化されたインターフェロンα、インターフェロンにリバビ
リンを加えたもの、インターフェロンαにリバビリンを加えたもの、及びペグ化されたイ
ンターフェロンαにリバビリンを加えたものからなる群から選択された1つ又は複数の作
用剤での処置に応答しなかった対象とすることができる。いくつかの実施形態では、対象
は、インターフェロン、インターフェロンα、ペグ化されたインターフェロンα、インタ
ーフェロンにリバビリンを加えたもの、インターフェロンαにリバビリンを加えたもの、
及びペグ化されたインターフェロンαにリバビリンを加えたものからなる群から選択され
た1つ又は複数の作用剤での処置にほとんど応答しない対象とすることができる。
【0061】
別の実施形態では、本発明は、現療法が妊婦にも禁忌であるので、妊娠しているか、又
は妊娠するかもしれない対象におけるHCV感染の治療方法を提供する。
【0062】
いくつかの実施形態では、対象は、HCVとHIVに同時感染し、又はそのリスクがあ
る。例えば、米国では、HIV対象の30%は、HCVに同時感染しており、証拠が示す
ところによると、HIVに感染している人は、そのC型肝炎感染がはるかに急速な経過を
たどる。Maier及びWu、2002, World J Gastroenterol 8:577-57。本発明の方法を使用し
て、このような対象においてHCV感染を治療又は予防することができる。これらの対象
のHCVをなくすと、末期肝疾患による死亡率を低下させると考えられる。実際には、進
行性肝疾患のリスクが、重度エイズ指標免疫不全の対象の場合、そうでない対象の場合よ
り高い。例えば、Lesensら、1999, J Infect Dis 179:1254-1258を参照のこと。有利には
、本発明の化合物がHIV対象のHIVを抑制することを示した。例えば、米国特許第5
,977,067号;第5,994,299号、第5,948,884号、及び第6,5
83,265号、並びにPCTの国際公開第99/32512号、国際公開第99/67
280号を参照のこと。その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。した
がって、いくつかの実施形態では、本発明は、それを必要とする対象におけるHIV感染
及びHCV感染の治療又は予防方法を提供する。
【0063】
いくつかの実施形態では、肝移植の後に、本発明の方法又は組成物を対象に投与する。
C型肝炎は、米国では肝移植の主要原因であり、肝移植を受ける多数の対象は、移植した
後もHCV陽性のままである。本発明は、このような再発性HCV対象を本発明の化合物
又は組成物で処置する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、再発性HC
V感染を予防するのに肝移植の前、その最中、又はその後に対象を治療する方法を提供す
る。
【0064】
4.2.1 本発明の化合物
いくつかの実施形態では、本発明は、対象に有効量の本発明の化合物を投与することに
よって、それを必要とする対象においてC型肝炎感染を治療又は予防する方法を提供する
。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、それを必要とする対象におけるC型肝炎
感染の治療又は予防に有効なシクロスポリン誘導体である。別段の注記のない限り、本明
細書では、用語「シクロスポリン」は、当業者に周知の化合物シクロスポリンAを指す。
例えば、Rueggerら、1976, Helv. Chim. Acta. 59:1075-92; Borelら、1977, Immunology
32:1017-25を参照のこと。その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
用語「シクロスポリン誘導体」は、天然、合成、又は半合成であろうと、C型肝炎感染に
対抗する活性を有する任意のシクロスポリン誘導体を指す。
【0065】
特定の実施形態では、シクロスポリン誘導体は、当業者に周知の通り、シクロスポリン
Aと3位、すなわち、N−メチルグリシン位において異なる。いくつかの実施形態では、
シクロスポリン誘導体は3−エーテルシクロスポリンである。別の実施形態では、シクロ
スポリン誘導体は3−チオエーテルシクロスポリンである。シクロスポリン誘導体は、当
業者に周知の他のシクロスポリン改変物をさらに含むことができる。有利な実施形態では
、シクロスポリンは、さらに4−γ−ヒドロキシメチルロイシン残基を含む。したがって
、いくつかの実施形態では、シクロスポリン誘導体は、3−エーテル、4−γ−ヒドロキ
シメチルロイシンである。別の実施形態では、シクロスポリン誘導体は、3−チオエーテ
ル、4−γ−ヒドロキシメチルロイシンである。
【0066】
いくつかの実施形態では、本発明は、対象においてC型肝炎感染を治療又は予防する方
法であって、対象に治療上又は予防有効量の一般式(I)のシクロスポリン誘導体、又は
医薬として許容し得るその塩若しくは溶媒和物を投与することを含む方法を提供する。
【化3】

式(I)において、A、B、X、R、及びRは、上記に定義する通りである。
【0067】
いくつかの実施形態では、Aは式(IIa)によるものである。別の実施形態では、A
は式(IIb)によるものである。好ましい実施形態では、Aは上記の式(IIa)の残
基である。
好ましい実施形態では、Bはエチルである。
【0068】
好ましくは、Rは、2−アミノエチル、2−アミノプロピル、2−モノアルキルアミ
ノエチル、2−モノアルキルアミノプロピル、2−ジアルキルアミノエチル、2−ジアル
キルアミノプロピル、2−モノシクロアルキルアミノエチル、2−モノシクロアルキルア
ミノプロピル、2−ジシクロアルキルアミノエチル、又は2−ジアルキルアミノプロピル
である。ただし、アルキルは、1〜4個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖であり、シクロ
アルキルは、3〜6個の炭素原子を含む。
【0069】
別の好ましい実施形態では、Rは、1つのR基で場合によっては置換されていても
よい、1〜4個の炭素原子(より好ましくは、1又は2個の炭素原子)を含む直鎖又は分
枝鎖のアルキルである。
いくつかの実施形態では、Rはイソブチルである。他の実施形態では、Rは2−ヒ
ドロキシイソブチルである。
好ましくは、Xは酸素又は硫黄である。いくつかの実施形態では、Xは酸素である。別
の実施形態では、Xは硫黄である。
【0070】
は、好ましくはヒドロキシ又は−NR(式中、R及びRは、同じでも異
なってもよく、それぞれ、水素、又は1〜6個の炭素原子(より好ましくは、1〜4個の
炭素原子)を含む直鎖若しくは分枝鎖のアルキルを表す)。別の好ましい実施形態では、
は−NRである。
【0071】
いくつかの実施形態では、Xが硫黄である場合、好ましくはRは、N,N−ジメチル
アミノエチル、N,N−ジエチルアミノエチル、N−メチル−N−tert−ブチルアミ
ノエチル、及びN−エチル−N−tert−ブチルアミノエチルからなる群から選択され
る。
【0072】
いくつかの実施形態では、Xは硫黄であり、Rはイソブチルであり、Rは、N,N
−ジメチルアミノエチル、N,N−ジエチルアミノエチル、N−メチル−N−tert−
ブチルアミノエチル、及びN−エチル−N−tert−ブチルアミノエチルからなる群か
ら選択される。
【0073】
いくつかの実施形態では、Xは硫黄であり、Rは2−ヒドロキシイソブチルであり、
は、N,N−ジメチルアミノエチル、N,N−ジエチルアミノエチル、N−メチル−
N−tert−ブチルアミノエチル、及びN−エチル−N−tert−ブチルアミノエチ
ルからなる群から選択される。
【0074】
式(I)の別の好ましい化合物は、Rが、R基によって場合によっては置換されて
いてもよい、2〜6個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖のアルキル;又は2〜4個の炭素
原子を含む直鎖又は分枝鎖のアルケニルであり、Rがヒドロキシ、−NR、又は
メトキシであるものである。
【0075】
式(I)の別の好ましい化合物は、R及びRがそれぞれ、同じでも異なってもよく
、水素;1〜4個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖のアルキルであり、或いはR及びR
が、それらが結合している窒素原子と一緒になって、6個の環原子を含む飽和環を形成
し、窒素原子以外の環原子が独立に、炭素及び酸素から選択されるものである。
【0076】
別の好ましい実施形態では、Rは、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシル、アルコキ
シカルボニル、−NR、及び−NR(CHNRからなる群から選択
される。
好ましくは、ハロゲンは、フルオロ、クロロ、又はブロモ、より好ましくはフルオロ又
はクロロである。
【0077】
式(I)の化合物(式中、Xは酸素であり、Rは2−メトキシエチルである)、又は
医薬として許容し得るその塩も好ましい。
式(I)の化合物(式中、Xは酸素又は硫黄であり、Rは−NR又はメトキシ
で置換されているプロピルである)、又は医薬として許容し得るその塩も好ましい。
【0078】
本発明の方法で使用するこれらのより好ましい化合物には、下記に列挙するシクロスポ
リン誘導体、及び医薬として許容し得るその塩がある:
3−メトキシシクロスポリン;
3−エトキシシクロスポリン;
3−プロポキシシクロスポリン;
3−イソプロポキシシクロスポリン;
3−(2−アミノエトキシ)シクロスポリン;
3−(2−N−メチルアミノエトキシ)シクロスポリン;
3−(2−N−エチルアミノエトキシ)シクロスポリン;
3−(2−ジメチルアミノエトキシ)シクロスポリン;
3−(2−ジエチルアミノエトキシ)シクロスポリン;
3−(2−tert−ブチル−メチルアミノエトキシ)シクロスポリン;
3−(2−tert−ブチル−エチルアミノエトキシ)シクロスポリン;
3−[(R)−2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルチオ−Sar]−4−[4’−
ヒドロキシ−MeLeu]−シクロスポリン;
3−[(R)−2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルチオ−Sar]−シクロスポリ
ン;
3−[(R)−2−(ヒドロキシ)エチルチオ−Sar]−4−[4’−ヒドロキシ−
MeLeu]−シクロスポリン;
3−[(R)−2−(ヒドロキシ)エチルチオ−Sar]−シクロスポリン;
3−[(R)−2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルチオ−Sar]−4−[4’−
ヒドロキシ−MeLeu]−シクロスポリン;
3−[(R)−2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルチオ−Sar]−シクロスポリ
ン;
3−(sec−ブトキシ)シクロスポリン;
3−[2−(1,4−ジヒドロピリド−1−イル)エトキシ)シクロスポリン。
【0079】
本発明の方法に有用な特に好ましい化合物には、下記が含まれる。
化合物 名称
A 3−メトキシシクロスポリン
B 3−(2−アミノエトキシ)シクロスポリン
C 3−(2−N,N−ジメチルアミノエトキシ)シクロスポリン
D 3−(イソプロポキシ)シクロスポリン
E 3−(2−エチルブトキシ)シクロスポリン
F 3−(2,2−ジメチルプロポキシ)シクロスポリン
G 3−(2−ヒドロキシエトキシ)シクロスポリン
H 3−(3−ヒドロキシプロポキシ)シクロスポリン
I 3−[2−(N−メチルアミノ)エトキシ]シクロスポリン
J 3−[2−(N−メチル−N−イソプロピルアミノ)エトキシ]シクロスポリ

K 3−[2−(ピペリジン−1−イル)エトキシ]シクロスポリン
L 3−[2−(N−モルホリン)エトキシ)シクロスポリン
M 3−エトキシシクロスポリン
N 3−(2−メトキシエチルチオ)−4−(γ−ヒドロキシメチルロイシン)シ
クロスポリン
O 3−[(R)−2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルチオ−Sar]−4−
(γ−ヒドロキシメチルロイシン)シクロスポリン
P 3−エチルチオシクロスポリン
Q 3−プロペニルチオシクロスポリン
R 3−[(2−メトキシ)エチルチオ]シクロスポリン
S 3−(メチルチオ)−4−(γ−ヒドロキシメチルロイシン)シクロスポリン
T 3−(メトキシ)−4−(γ−ヒドロキシメチルロイシン)シクロスポリン
U 3−(プロプ−2−エン−1−オキシ)−4−(γ−ヒドロキシメチルロイシ
ン)シクロスポリン
V 3−(イソプロポキシ)−4−(γ−ヒドロキシメチルロイシン)シクロスポ
リン
W 3−(エトキシ)−4−(γ−ヒドロキシメチルロイシン)シクロスポリン
X 3−[2−(メトキシ)エトキシ]−4−(γ−ヒドロキシメチルロイシン)
シクロスポリン
Y 3−[3−(メトキシ)プロポキシ]−4−(γ−ヒドロキシメチルロイシン
)シクロスポリン
【0080】
これ以降、化合物の文字A〜Yを使用する。
特定の実施形態では、本発明は、それを必要とする対象に、有効量の化合物A〜Yから
なる群から選択された本発明の化合物、又は医薬として許容し得るその塩を投与すること
によって、対象においてC型肝炎ウイルス感染を治療又は予防する方法を提供する。
化合物O、又は医薬として許容し得るその塩は、下記の実施例で記載するように、その
高いレベルの活性及びその毒性プロファイルのため特に好ましい。
【0081】
いくつかの実施形態では、本発明によるシクロスポリン誘導体(式中、Rは、1個又
は複数のR基で置換されているアルキルであり、Rは、−NR又は−NR
CHNRであり、R、R、及びRは上記に定義する通りである)を、
周知の方法で酸付加塩に変換することができる。これらの塩も、本発明の範囲内に入るこ
とが理解される。本発明の例示的な塩及びその調製方法を、下記のセクションに記載する

【0082】
本発明の有用な実施形態では、化合物は純度の高い形である。純度は、絶対純度、立体
化学的純度、又は両方など、当業者に周知の任意の純度とすることができる。いくつかの
実施形態では、本発明の化合物の純度は、少なくとも80%、85%、90%、91%、
92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%である。いくつ
かの実施形態では、本発明の化合物の純度は、少なくとも90%である。本発明の別の実
施形態では、化合物の純度は、少なくとも98%である。本発明の化合物の精製方法を下
記に記載する。
【0083】
4.2.2 本発明の化合物の調製
本発明の化合物を、当業者に自明の任意の方法で調製、単離、又は得ることができる。
例示的な調製方法を下記の実施例で詳述する。
さらに、米国特許第5,977,067号;第5,994,299号、第5,948,
884号、及び第6,583,265号、並びにPCTの国際公開第99/32512号
、国際公開第99/67280号に記載されている方法に従って、3位がチオエーテル又
はエーテル基によって置換されているシクロスポリンを調製することができる。これらの
参考文献の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0084】
合成した後、シクロスポリン誘導体を精製するための当業者に自明の任意の技法によっ
て、化合物を精製することができる。いくつかの実施形態では、本発明の化合物をクロマ
トグラフィーで精製する。例えば、本発明の化合物は、高速液体クロマトグラフィー(H
PLC)を使用して精製することができる。HPLC精製の有用な例は以下の通りである
:5−μmの逆相固定相(オクタデシル−シラン又はオクタ−シラン)を含む10mm(
d)×50mm(l)の寸法のHPLCカラムを、0.1%のギ酸、50〜90%の水、
及び50〜10%のアセトニトリルを含む移動相で平衡化する。重要なことに、カラムを
、少なくとも65℃に、又は潜在的に85℃までに加熱する。移動相を10〜16mL/
分で流し、60℃に加熱する。約5〜25mgのシクロスポリン誘導体を、0.1〜0.
8mLの溶媒、好ましくはジメチルスルホキシドでカラムに装填する。移動相の流れを維
持し、その組成物を、20〜60分間かけて最高90%又は100%のアセトニトリルの
直線グラジエントで調整する。蒸発光散乱検出及び/又は可変紫外検出を使用して波長設
定205〜215nmにおいて、化合物ピークを検出する。化合物ピークを移動相中に回
収し、移動相を真空中で除去する。試料を真空中で十分に乾燥し、NMR、IR、及びH
PLC−MSで分析して、アイデンティティー及び純度を決定する。
【0085】
4.2.3. 本発明の化合物の薬剤塩
上記に述べる通り、本発明のシクロスポリン誘導体は、中性の形又は塩の形とすること
ができる。塩の形は、当業者に周知の任意の塩の形とすることができる。特に有用な塩の
形は、ホスファート、シトラート、アセタート、クロリド、メタンスルホナート、又はプ
ロピオナートと配位結合するものである。
【0086】
本発明の化合物、例えば本発明の化合物が塩基性部分で置換されている場合、酸付加塩
を形成することができる。酸付加塩を調製するのに使用することができる酸には、好まし
くは遊離塩基と組み合わせた場合、医薬として許容し得る塩、すなわち塩の薬剤用量にお
いてそのアニオンが対象に非毒性である塩を生成するものが含まれる。本発明の範囲内の
医薬として許容し得る塩は、下記の酸に由来するものである:塩酸、臭化水素酸、硫酸、
リン酸、スルファミン酸、及び硝酸などの鉱酸;並びに酢酸、トリフルオロ酢酸、トリク
ロロ酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンチルプロピオン酸、グリコール酸、グ
ルタル酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、ソルビン酸、アスコルビン酸、リン
ゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベン
ゾイル)安息香酸、ピクリン酸、ケイ皮酸、マンデル酸、フタル酸、ラウリン酸、メタン
スルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタン−二スルホン酸、2−ヒドロキシエタン
スルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスル
ホン酸、4−トルエンスルホン酸、ショウノウ酸、カンファースルホン酸、4−メチルビ
シクロ[2.2.2]−オクト−2−エン−1−カルボン酸、グルコヘプトン酸、3−フ
ェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、tert−ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン
酸、安息香酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、シク
ロヘキシルスルファミン酸、キナ酸、ムコン酸、及び同様な酸などの有機酸。
【0087】
対応する酸付加塩には、ヒドロハリド塩、例えば塩酸塩及び臭化水素酸塩、硫酸塩、リ
ン酸塩、スルファミン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、トリクロロ酢酸塩、
プロピオン酸塩、ヘキサン酸塩、シクロペンチルプロピオン酸塩、グリコール酸塩、グル
タール酸塩、ピルビン酸塩、乳酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩、アスコル
ビン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩
、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸塩、ピクリン酸塩、ケイ皮酸塩、マンデル
酸塩、フタル酸塩、ラウリン酸塩、メタンスルホン酸塩(メシル酸塩)、エタンスルホン
酸塩、1,2−エタン−二スルホン酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ベンゼン
スルホン酸塩(ベシル酸塩)、4−クロロベンゼンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホ
ン酸塩、4−トルエンスルホン酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、4−メ
チルビシクロ[2.2.2]−オクト−2−エン−1−カルボン酸塩、グルコヘプトン酸
塩、3−フェニルプロピオン酸塩、トリメチル酢酸塩、tert−ブチル酢酸塩、ラウリ
ル硫酸塩、グルコン酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、サリ
チル酸塩、ステアリン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩、キナ酸塩、ムコン酸塩な
どが含まれる。
【0088】
本発明の別の特徴によれば、本発明の化合物の酸付加塩は、周知の方法の応用又は適用
により遊離塩基と適切な酸との反応によって調製することができる。例えば、本発明の化
合物の酸付加塩は、水性若しくは水性アルコール溶液、又は適切な酸を含有する他の適切
な溶媒に、遊離塩基を溶解し、溶液を蒸発させることによって塩を単離することによって
、或いは遊離の塩基及び酸を有機溶媒中で反応させ、その場合に塩が直接分離し、又は溶
液の濃縮によって得られることによって、調製することができる。
【0089】
本発明の化合物の酸付加塩、例えば本発明の化合物は、周知の方法の応用又は適用によ
り、塩から再生することができる。例えば、本発明の親化合物は、その酸付加塩からアル
カリ、例えば重炭酸ナトリウム水溶液又はアンモニア水溶液での処置によって再生するこ
とができる。
【0090】
本発明の化合物、例えば本発明の化合物が酸部分で置換されている場合、塩基付加塩を
形成することができる。例えばアルカリ及びアルカリ土類金属塩を含めて、本発明の範囲
内の医薬として許容し得る塩は、下記の塩基に由来するものである:水素化ナトリウム、
水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化ア
ルミニウム、水酸化リチウム、水酸化亜鉛、水酸化バリウム、及びアンモニア、メチルア
ミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールア
ミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、リシン、アルギニン、オルニチン、コ
リン、N,N’−ジベンジルエチレン−ジアミン、クロロプロカイン、ジエタノールアミ
ン、プロカイン、N−ベンジルフェネチルアミン、N−メチルグルカミンピペラジン、ト
リス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン、水酸化テトラメチルアンモニウムなど、脂肪
族、脂環式、又は芳香族の有機アミンなどの有機アミン。
【0091】
本発明の化合物の金属塩、例えば本発明の化合物は、選択された金属の水素化物、水酸
化物、炭酸塩、又は同様な反応性化合物を、水性又は有機溶媒中で遊離酸の形の化合物と
接触させることによって得ることができる。使用する水性溶媒は、水とすることができ、
或いは水と有機溶媒、好ましくはメタノール又はエタノールなどのアルコール、アセトン
などのケトン、テトラヒドロフランなどの脂肪族エーテル、又は酢酸エチルなどのエステ
ルとの混合物とすることができる。通常は、このような反応を周囲温度で実施するが、望
むなら加熱して実施することができる。
【0092】
本発明の化合物のアミン塩、例えば本発明の化合物は、アミンを、水性又は有機溶媒中
で遊離酸の形の化合物と接触させることによって得ることができる。適切な水性溶媒には
、水、及び水とメタノールやエタノールなどのアルコール、テトラヒドロフランなどのエ
ーテル、アセトニトリルなどのニトリル、又はアセトンなどのケトンとの混合物が含まれ
る。アミノ酸塩を同様に調製することができる。
本発明の化合物の塩基付加塩、例えば本発明の化合物は、周知の方法の応用又は適用に
より塩から再生することができる。例えば、本発明の親化合物は、その塩基付加塩から酸
、例えば塩酸での処置により再生することができる。
【0093】
4.2.4 医薬組成物及び投与方法
本発明の方法で使用するシクロスポリン誘導体は、少なくとも1つの一般式(I)の化
合物を、適切な場合には塩の形で、単独、或いは希釈剤又はアジュバントなど、1つ若し
くは複数の相溶性で医薬として許容し得る担体との、又は別の抗HCV剤との組合せの形
態で含有する医薬組成物を使用して提供されることが好ましい。診療では、本発明のシク
ロスポリン誘導体を、任意の通常の経路、具体的には経口、非経口、直腸、又は吸入(例
えば、エアゾールの形)で投与することができる。本発明のシクロスポリン誘導体は、経
口投与することが好ましい。
【0094】
経口投与用の固体組成物として、錠剤、丸剤、硬質ゼラチンカプセル剤、散剤、又は顆
粒剤を使用することができる。これらの組成物では、本発明による活性製品をスクロース
、ラクトース、又はデンプンなど、1つ又は複数の不活性希釈剤又はアジュバントと混合
する。
これらの組成物は、希釈剤以外の物質、例えばステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤
、又は制御放出のためのコーティングを含むことができる。
【0095】
経口投与用の液体組成物として、水や流動パラフィンなどの不活性な希釈剤を含有する
医薬として許容し得る液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、及びエリキシル剤を使用するこ
とができる。これらの組成物は、希釈剤以外の物質、例えば湿潤、甘味、又は矯味製品も
含むことができる。
【0096】
非経口投与用の組成物は、乳剤又は無菌溶液とすることができる。溶媒又はビヒクルと
して、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、具体的にはオリーブ油
、又は注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルを使用することができる。これ
らの組成物は、アジュバント、具体的には湿潤剤、等張化剤、乳化剤、分散剤、及び安定
化剤も含有することができる。滅菌は、いくつかの方式、例えば細菌フィルターを使用し
て、放射線又は加熱によって実施することができる。これらは、無菌の固体組成物の形で
調製することもでき、使用時に無菌水又は他の何らかの注射可能な無菌の媒体で溶解する
ことができる。
【0097】
直腸投与用の組成物は、活性成分に加えて、カカオ脂、半合成グリセリド、又はポリエ
チレングリコールなどの賦形剤を含有する坐剤又は直腸カプセル剤である。
組成物は、エアゾール剤とすることもできる。液体エアゾール剤の形で使用する場合、
組成物は、安定な無菌溶液又は固体組成物とすることができ、使用時に非発熱性の無菌水
、生理食塩水又は他の何らかの医薬として許容し得るビヒクルで溶解する。直接吸入する
ことを意図したドライエアゾール剤の形で使用する場合、活性成分を微細化し、水溶性の
固体希釈剤又はビヒクル、例えばデキストラン、マンニトール、若しくはラクトースと組
み合わせる。
【0098】
好ましい一実施形態では、本発明の組成物は、医薬組成物又は単回投与剤形である。本
発明の医薬組成物及び単回投与剤形は、予防上又は治療有効量の1つ又は複数の予防剤又
は治療剤(例えば、本発明の化合物、又は他の予防剤若しくは治療剤)、及び通常は1つ
又は複数の医薬として許容し得る担体又は賦形剤を含む。特有の実施形態及びこの文脈で
は、用語「医薬として許容し得る」は、動物、さらに具体的にはヒトにおいて使用するた
めに、連邦又は州政府の規制官庁によって承認され、或いは米国薬局方又は他の一般に認
められている薬局方に列挙されていることを意味している。用語「担体」は、治療薬と共
に投与する希釈剤、アジュバント(例えば、フロイントのアジュバント(完全及び不完全
))、賦形剤、又はビヒクルを指す。このような薬剤担体は、落花生油、大豆油、鉱物油
、ゴマ油など、石油、動物、植物、又は合成由来のものを含めて、水及び油などの無菌の
液体とすることができる。医薬組成物を静脈内投与する場合、水は好ましい担体である。
生理食塩水溶液、並びにデキストロース及びグリセロール水溶液を、液体担体、具体的に
は注射可能な溶剤として使用することもできる。適切な薬剤担体の例は、E. W. Martinの
「レミントンの製薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」に記載されている

【0099】
典型的な医薬組成物及び剤形は、1つ又は複数の賦形剤を含む。適切な賦形剤は、調剤
技術分野の技術者に周知であり、適切な賦形剤の非限定的な例としては、デンプン、グル
コース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉(flour)、チョ
ーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、
塩化ナトリウム、ドライスキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エ
タノールなどが挙げられる。特定の賦形剤が医薬組成物又は剤形への組込みに適している
かどうかは、当技術分野で周知の様々な要因に依存する。この要因には、剤形が対象に投
与される方式、及び剤形の特異的活性材料が含まれるが、これらに限定されない。組成物
又は単回投与剤形は、望むなら少量の湿潤剤若しくは乳化剤、又はpH緩衝剤を含有する
こともできる。
【0100】
本発明のラクトース不含組成物は、当技術分野で周知であり、例えば米国薬局方(US
P)SP(XXI)/NF(XVI)に列挙されている賦形剤を含むことができる。一般
に、ラクトース不含組成物は、薬剤として相溶でき、医薬として許容し得る量の活性材料
、結合剤/充填剤、及び滑沢剤を含む。例示的なラクトース不含剤形は、活性材料、微結
晶セルロース、プレアルファ化デンプン、及びステアリン酸マグネシウムを含む。
【0101】
本発明は、水が一部の化合物の崩壊を促進する恐れがあるので、活性材料を含む無水医
薬組成物及び剤形をさらに包含する。例えば、水の添加(例えば、5%)が、経時的な製
剤の貯蔵寿命又は安定性などの諸特性を決定するために長期貯蔵をシミュレートする手段
として、薬剤技術分野で広く受け入れられている。例えば、Jens T. Carstensen、「薬物
安定性:原理&慣例(Drug Stability: Principles & Practice)」、第2版, Marcel Dek
ker, NY, NY, 1995, pp. 379 80を参照のこと。実際には、水と熱が一部の化合物の分解
を促進する。したがって、一般的に製剤の製造、取扱い、包装、貯蔵、輸送、及び使用中
に水分及び/又は湿気に遭遇するので、水が製剤に及ぼす影響は、極めて重大となる可能
性がある。
【0102】
本発明の無水医薬組成物及び剤形は、無水材料又は低水分含有材料、及び低水分又は低
湿度の条件を用いて調製することができる。ラクトースと、第一級又は第二級アミンを含
む少なくとも1つの活性材料とを含む医薬組成物及び剤形は、製造、包蔵、及び/又は貯
蔵中に、水分及び/又は湿気との実質的な接触が予想される場合、無水であることが好ま
しい。
【0103】
無水医薬組成物を、その無水性が維持されるように調製し貯蔵すべきである。したがっ
て、無水組成物は、適切な処方キットに含むことができるように水への曝露を防止するこ
とが知られている材料を使用して包装することが好ましい。適切な包装の例としては、密
封箔、プラスチック、単位用量容器(例えば、バイアル)、ブリスター包装、及びストリ
ップ包装が挙げられるが、これらに限定されない。
【0104】
本発明は、活性材料の分解速度を下げる1つ又は複数の化合物を含む医薬組成物及び剤
形をさらに含む。本明細書では「安定剤」と呼ばれるこのような化合物には、アスコルビ
ン酸などの酸化防止剤、pH緩衝剤、又は塩緩衝剤が含まれるが、これらに限定されない

【0105】
医薬組成物及び単回投与剤形は、溶剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤
、徐放性製剤などの形をとることができる。経口製剤には、薬剤グレードのマンニトール
、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロー
ス、炭酸マグネシウムなどの標準的担体が含まれ得る。対象に適切に投与するための形を
提供するために、このような組成物及び剤形は、予防上又は治療有効量の予防剤又は治療
剤を好ましくは精製した形で、適切な量の担体と共に含有する。製剤は投与モードに適す
るべきである。好ましい実施形態では、医薬組成物又は単回投与剤形は、無菌で、対象、
好ましくは動物対象、より好ましくは哺乳類の対象、最も好ましくはヒト対象に投与する
ための適切な形である。
【0106】
本発明の医薬組成物は、その意図された投与経路に適合できるように調剤される。投与
経路の例としては、非経口、例えば静脈内、皮内、皮下、筋肉内、皮下、経口、口腔内、
舌下、吸入、鼻腔内、経皮、局所、経粘膜、腫瘍内、滑膜内、及び直腸投与が挙げられる
が、これらに限定されない。特有の実施形態では、ルーチンの手順に従って、ヒトへの静
脈内、皮下、筋肉内、経口、鼻腔内、又は局所投与に適合している医薬組成物として、組
成物を調剤する。一実施形態では、ルーチンの手順に従って、ヒトへの皮下投与用に医薬
組成物を調剤する。通常は、静脈内投与用の組成物は、無菌の等張緩衝水溶液である。必
要な場合には、組成物は、可溶化剤、及びリグノカムネなど注射部位における痛みを軽減
するための局所麻酔薬も含むことができる。
【0107】
剤形の例としては、錠剤;カプレット剤;軟質弾性ゼラチンカプセル剤などのカプセル
剤;カシェ剤;トローチ剤;ロゼンジ;分散剤;坐剤;軟膏;パップ剤(湿布剤);ペー
スト剤;散剤;包帯剤;クリーム;貼付剤;液剤;貼付剤;エアゾール剤(例えば、スプ
レー式点鼻薬又は吸入剤);ゲル;懸濁剤(例えば、水性若しくは非水性液体懸濁剤、水
中油型乳剤、又は油中水型液体乳剤)、液剤、及びエリキシル剤を含めて、対象への経口
又は粘膜投与に適した液体剤形;対象への非経口投与に適した液体剤形;並びに対象への
非経口投与に適した液体剤形をもたらすように再構成ことができる無菌の固体(例えば、
結晶質又は非晶質の固体)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0108】
本発明の剤形の組成物、形状、及びタイプは、通常はその使用に応じて異なる。例えば
、ウイルス感染の初期治療で使用する剤形では、含まれている活性材料のうちの1つ又は
複数を、同じ感染の維持治療で使用される剤形より多量に含有することができる。同様に
、非経口剤形では、含まれている活性材料の1つ又は複数を、同じ疾患又は障害を治療す
るために使用される経口剤形より少量含有することができる。本発明によって包含される
特有の剤形が互いに異なる上記及びその他の方式は、当業者に容易に明らかであろう。例
えば、「レミントンの製薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」、第18版、
Mack Publishing, ペンシルバニア州Easton(1990)を参照のこと。
【0109】
一般に、本発明の組成物の材料を別々に供給し、或いは単位投与剤形で例えば活性剤の
量を指示するアンプル又はサシェットなどの密封容器中の凍結乾燥散剤又は水不含濃縮物
として一緒に混合する。組成物を注入投与しなければならない場合、無菌の薬剤グレード
の水又は生理食塩水が入っている注入ボトルを用いて分注することができる。組成物を注
射投与する場合、投与する前に材料を混合することができるように、注射用の無菌水又は
生理食塩水を含むアンプルを提供することができる。
【0110】
本発明の典型的な剤形は、本発明の化合物、又は医薬として許容し得るその塩、溶媒和
物、若しくは水和物を約0.1mg〜約1000mg/日の範囲内で含み、午前中に1日
1回の単回投与として与えられるが、好ましくは1日を通して分割投与として与えられ、
食物と共に服用される。本発明の特定の剤形は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0
.5、1.0、2.0、2.5、5.0、10.0、15.0、20.0、25.0、5
0.0、100、200、250、500、又は1000mgの活性シクロスポリンを有
する。
【0111】
4.2.4.1 経口剤形
経口投与に適した本発明の医薬組成物は、錠剤(例えば、咀嚼錠)、カプレット剤、カ
プセル剤、及び液剤(例えば、フレーバー付きのシロップ剤)などであるがこれらに限定
されない個別の剤形として与えることができる。このような剤形は、所定量の活性材料を
含有し、当業者に周知の調剤方法で調製することができる。一般には、「レミントンの製
薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」、第18版、 Mack Publishing, ペン
シルバニア州Easton(1990)を参照のこと。
好ましい実施形態では、経口剤形は固体であり、上記のセクションで詳述するように、
無水条件下で無水材料を用いて調製する。しかし、本発明の範囲は、無水の固体経口剤形
を超えて拡大する。したがって、別の形を本明細書に記載する。
【0112】
よく混じった混合物中の活性材料を、通常の薬剤コンパウンディング技法に従って少な
くとも1つの賦形剤と組み合わせることによって、本発明の典型的な経口剤形を調製する
。賦形剤は、投与に望まれた調製の形に応じて広範囲の形をとることができる。例えば、
経口液体又はエアゾール剤形での使用に適した賦形剤には、水、グリコール、オイル、ア
ルコール、矯味剤、防腐剤、及び着色剤が含まれるが、これらに限定されない。固体経口
剤形(例えば、散剤、錠剤、カプセル剤、及びカプレット剤)での使用に適した賦形剤の
例としては、デンプン、砂糖、微結晶性セルロース、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤、
及び崩壊剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0113】
錠剤及びカプセル剤は、その投与が容易であるので、最も有利な経口投与単位形態を表
し、この場合、固体賦形剤を使用する。望むなら、錠剤を標準的な水性又は非水性技法で
被覆することができる。このような剤形は、調剤方法のいずれかによって調製することが
できる。一般に、活性材料を液体担体、微細化固体担体、又は両方と均一にかつ緊密に混
和し、次いで必要なら、生成物を所望のプレゼンテーションに造形することによって、医
薬組成物及び剤形を調製する。
【0114】
例えば、圧縮又は成形によって、錠剤を調製することができる。圧縮錠は、粉末又は顆
粒など、易流動性の形の活性材料を、賦形剤と場合によっては混合して適切な機械で圧縮
することによって調製することができる。不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化化合物の混
合物を適切な機械で成形することによって、成形錠剤を作製することができる。
【0115】
本発明の経口剤形で使用することができる賦形剤の例としては、結合剤、充填剤、崩壊
剤、及び滑沢剤が挙げられるが、これらに限定されない。医薬組成物及び剤形での使用に
適した結合剤には、コーンスターチ、馬鈴薯デンプン、又は他のデンプン、ゼラチン;ア
カシア、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、他のアルギナート、トラガカント粉末、グ
アーゴムなど、天然及び合成のゴム;セルロース及びその誘導体(例えば、エチルセルロ
ース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセル
ロースナトリウム)、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、プレアルファ化デンプ
ン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、No.2208、2906、291
0)、微結晶セルロース、並びにその混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0116】
本明細書で開示されている医薬組成物及び剤形での使用に適した充填剤の例としては、
タルク、炭酸カルシウム(例えば、顆粒又は粉末)、微結晶セルロース、粉末化セルロー
ス、デクストレート、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、デンプン、プレ
アルファ化デンプン、及びその混合物が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の
医薬組成物中の結合剤又は充填剤は、通常は医薬組成物又は剤形の約50〜約99重量パ
ーセントで存在する。
【0117】
適切な形の微結晶セルロースには、AVICEL PH 101、AVICEL PH
103 AVICEL RC 581、AVICEL PH 105(FMC Corporatio
n, American Viscose Division, Avicel Sales, ペンシルバニア州Marcus Hookから入手
可能)、及びその混合物として販売されている材料が含まれるが、これらに限定されない
。特有の結合剤は、AVICEL RC 581として販売されている微結晶セルロース
及びカルボキシメチルセルロースナトリウムの混合物である。適切な無水又は低水分の賦
形剤又は添加剤には、AVICEL PH 103(商標)及びStarch 1500
LMが含まれる。
【0118】
崩壊剤を本発明の組成物で使用して、水性環境に曝露されたとき崩壊する錠剤を提供す
る。多すぎる崩壊剤を含有する錠剤は、貯蔵中に崩壊する恐れがあり、少なすぎる場合は
、所望の速度で又は所望の条件下で崩壊しない恐れがある。したがって、活性材料の放出
を不利益に変更する程多すぎることも少なすぎることもない十分な量の崩壊剤を使用して
、本発明の固体経口剤形を形成すべきである。崩壊剤の使用量は、製剤のタイプに基づい
て変わり、当業者に容易に識別可能である。典型的な医薬組成物は、約0.5〜約15重
量パーセントの崩壊剤、具体的には約1〜約5重量パーセントの崩壊剤を含む。
【0119】
本発明の医薬組成物及び剤形で使用することができる崩壊剤には、寒天、アルギン酸、
炭酸カルシウム、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドン、
ポラクリリンカリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ジャガイモ又はタピオカのデ
ンプン、プレアルファ化デンプン、他のデンプン、粘土、他のアルギン、他のセルロース
、ゴム、及びその混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0120】
本発明の医薬組成物及び剤形で使用できる滑沢剤には、ステアリン酸カルシウム、ステ
アリン酸マグネシウム、鉱物油、軽鉱物油、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、
ポリエチレングリコール、他のグリコール、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、タ
ルク、水素化植物油(例えば、落花生油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、ト
ウモロコシ油、及び大豆油)、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル
、寒天、及びその混合物が含まれるが、これらに限定されない。追加の滑沢剤には、例え
ばサイロイドシリカゲル(AEROSIL 200、米国メリーランド州BaltimoreのW.R
.Grace Co.によって製造)、合成シリカの凝固エアロゾル(米国テキサス州PlanoのDegus
sa Co.によって市販)、CAB O SIL(米国マサチューセッツ州ボストンのCabot
Co.によって販売されている発熱性二酸化ケイ素製品)、及びそれらの混合物が含まれる
。滑沢剤を使用するにしても、通常は滑沢剤が組み込まれる医薬組成物又は剤形の約1重
量パーセント未満の量でしか使用しない。
【0121】
4.2.5 遅延放出剤形
本発明の化合物などの活性材料は、当業者に周知の制御放出手段又は送達装置によって
投与することができる。例としては、参照によりそれぞれ本明細書に組み込まれる米国特
許第3,845,770号;第3,916,899号;第3,536,809号;第3,
598,123号;並びに第4,008,719号、第5,674,533号、第5,0
59,595号、第5,591,767号、第5,120,548号、第5,073,5
43号、第5,639,476号、第5,354,556号、及び第5,733,566
号に記載されているものが挙げられるが、これらに限定されない。このような剤形を使用
して、例えばヒドロプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、ゲル、透析
膜、浸透圧系、多層コーティング、微粒子、リポソーム、マイクロスフェア、又はその組
合せを使用する1つ又は複数の活性材料の緩徐放出又は制御放出をもたらし、様々な比率
の所望の放出プロファイルをもたらすことができる。本明細書に記載するものを含めて、
当業者に周知の適切な制御放出製剤を、本発明の活性材料と共に使用するために容易に選
択することができる。したがって、本発明は、制御放出に適応する錠剤、カプセル剤、ゲ
ルキャップ、及びカプレット剤などであるが、これらに限定されない、経口投与に適した
単回投与剤形を包含する。
【0122】
制御放出薬剤製品はすべて、制御放出薬剤生成物はすべて、その非制御対応物によって
実現されるものより薬物療法を改善させるという共通の目的を有している。理想的には、
最適に設計された制御放出製剤の医療における使用は、最低限の薬物物質を使用して最少
量の時間で病態を治癒又は制御することを特徴とする。制御放出製剤の利点には、薬物活
性の拡張、投与頻度の低減、及び対象の服薬遵守の向上が含まれる。さらに、制御放出製
剤を使用して、作用の発現時間、又は薬物血中レベルなど他の特性に影響を及ぼすことが
でき、したがって副(例えば、有害)作用の出現に影響を及ぼすことができる。
【0123】
制御放出製剤の多くは、最初に所望の治療効果を即座に生じるある一定量の薬物(活性
材料)を放出し、別の量の薬物を徐々にかつ連続的に放出して、このレベルの治療又は予
防効果を長期にわたって維持するように設計されている。身体における薬物のレベルをこ
の一定レベルに維持するためには、薬物を、代謝され身体から排出される量の薬物に置換
する速度で剤形から放出しなければならない。活性材料の制御放出を、pH、温度、酵素
、水、又は他の生理的状態、又は化合物に限定されないがこれらを含めて様々な条件によ
って刺激することができる。
【0124】
4.2.6 非経口剤形
固体の無水経口剤形が好ましいが、本発明は非経口剤形も提供する。非経口剤形は、皮
下、静脈内(ボーラス注射を含めて)、筋肉内、及び動脈内が含まれるが、これらに限定
されない様々な経路で対象に投与することができる。これらの投与は、通常は汚染物質に
対する対象の自然の防御を迂回するので、非経口剤形は、無菌であるか、又は対象に投与
する前に滅菌できることが好ましい。非経口剤形の例としては、注射用に準備された液剤
、医薬として許容し得る注射用ビヒクルに溶解又は懸濁するように準備された乾燥製品、
注射用に準備された懸濁剤、及び乳濁液が挙げられるが、これらに限定されない。
【0125】
本発明の非経口剤形を提供するために使用することができる適切なビヒクルは、当業者
に周知である。例としては、米国薬局方注射用水;塩化ナトリウム注射剤、リンゲル注射
剤、デキストロース注射剤、デキストロースと塩化ナトリウム注射剤、及び乳酸リンゲル
注射剤などであるがこれらに限定されない水性ビヒクル;エチルアルコール、ポリエチレ
ングリコール、及びポリプロピレングリコールなどであるがこれらに限定されない水混和
性ビヒクル;並びにトウモロコシ油、綿実油、落花生油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミ
リスチン酸イソプロピル、及び安息香酸ベンジルなどであるがこれらに限定されない非水
性ビヒクルが挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書に開示する活性材料のうちの1つ又は複数の溶解性を高める化合物を、本発明
の非経口剤形に組み込むこともできる。
【0126】
4.2.7 経皮、局所、及び経粘膜剤形
固体の無水経口剤形が好ましいが、本発明は経皮、局所、及び経粘膜剤形も提供する。
本発明の経皮、局所、及び経粘膜剤形としては、眼液剤、スプレー、エアゾール剤、クリ
ーム、ローション剤、軟膏、ゲル、液剤、乳剤、懸濁剤、又は当業者に周知の他の形が挙
げられるが、これらに限定されない。例えば、「レミントンの製薬科学(Remington's Ph
armaceutical Sciences)」、第16版及び第18版, Mack Publishing, ペンシルバニア州Ea
ston(1980 & 1990);及び「薬剤剤形へのイントロダクション(Introduction to Pharmace
utical Dosage Forms)」、第4版, Lea & Febiger, Philadelphia(1985)を参照のこと。
口腔内の粘膜組織の治療に適した剤形は、洗口剤又は口腔ゲルとして調剤することができ
る。さらに、経皮剤形には、「レザバータイプ」又は「マトリックスタイプ」の貼付剤が
含まれる。これらは、皮膚に貼って、特定の期間着用して、所望量の活性材料の浸透を可
能にすることができる。
【0127】
本発明に包含される経皮、局所、及び経粘膜剤形を提供するために使用することができ
る適切な賦形剤(例えば、担体及び希釈剤)及び他の材料は、薬剤技術分野の技術者に周
知であり、所与の医薬組成物又は剤形を適用する特定の組織に依存する。その点を考慮に
入れると、典型的な賦形剤には、ローション剤、チンキ剤、クリーム、乳剤、ゲル、又は
軟膏を形成するために水、アセトン、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリ
コール、ブタン 1,3 ジオール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロ
ピル、鉱物油、及びそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。これらは、非
毒性であり、医薬として許容し得るものである。望むなら、保湿剤又は保水剤を、医薬組
成物及び剤形に添加することもできる。このような追加の材料の例は、当技術分野で周知
である。例えば、「レミントンの製薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」
、第16版及び第18版, Mack Publishing, ペンシルバニア州Easton(1980 & 1990)を参照の
こと。
【0128】
処置対象の特有の組織に応じて、本発明の活性材料での処置の前、それと共に、又はそ
の後に追加の成分を使用することができる。例えば、浸透増強剤を使用して、活性材料を
組織に送達するのを助けることができる。適切な浸透増強剤には、アセトン;エタノール
、オレイルアルコール、及びテトラヒドロフリルアルコールなどの様々なアルコール;ジ
メチルスルホキシドなどのアルキルスルホキシド;ジメチルアセトアミド;ジメチルホル
ムアミド;ポリエチレングリコール;ポリビニルピロリドンなどのピロリドン;コリドン
(Kollidon)グレード(ポビドン、ポリビドン);尿素;並びにTween 8
0(ポリソルベート80)及びSpan 60(ソルビタンモノステアレート)などの様
々な水溶性又は不溶性糖エステルが含まれるが、これらに限定されない。
【0129】
医薬組成物若しくは剤形、又は医薬組成物若しくは剤形が適用される組織のpHを、1
つ又は複数の活性材料の送達が改善されるように調整することもできる。同様に、溶媒担
体の極性、そのイオン強度、又は緊張度を、送達が改善されるように調整することができ
る。ステアラートなどの化合物を医薬組成物又は剤形に添加して、1つ又は複数の活性材
料の親水性又は親油性を、送達が改善するように有利に変更することもできる。この点に
関しては、ステアラートは、製剤用の脂質ビヒクル、乳化剤、又は界面活性剤、及び送達
改善剤又は浸透増強剤として働くことができる。活性材料の様々な塩、水和物、又は溶媒
和物を使用して、得られた組成物の特性をさらに調整することができる。
【0130】
4.2.8 用量及び単位投与剤形
ヒトの治療では、予防的又は治療的処置に従って、かつ治療対象の対象に特異的な年齢
、体重、感染の段階、及び他の要因に従って、医師が最も適切であると考えられる薬量を
決定する。一般に、用量は、約1〜約1000mg/日/成人、又は約5〜約250mg
/日、又は約10〜50mg/日/成人である。いくつかの実施形態では、投与量は、約
5〜約400mg/日、より好ましくは25〜200mg/日/成人である。約50〜約
500mg/日の用量も好ましい。
【0131】
別の態様では、本発明は、それを必要とする対象に、C型肝炎ウイルスに対して治療係
数が高い本発明の化合物、又は医薬として許容し得るその塩の有効量を投与することによ
って、対象においてC型肝炎ウイルス感染を治療又は予防する方法を提供する。治療係数
は、下記の実施例で記載する方法など、当業者に周知の任意の方法に従って測定すること
ができる。いくつかの実施形態では、治療係数は、化合物が毒性となる濃度とC型肝炎ウ
イルスに対して有効である濃度の比である。細胞毒性(例えば、IC50又はIC90
及び致死用量(例えば、LD50又はLD90)を含めて、毒性は当業者に周知の任意の
技法で測定することができる。同様に、有効濃度(例えば、EC50又はEC90)及び
有効用量(例えば、ED50又はED90)を含めて、有効濃度は、当業者に周知の任意
の技法で測定することができる。好ましくは、同様な測定値を比(例えば、IC50/E
50、IC90/EC90、LD50/ED50、又はLD90/ED90)で比較す
る。いくつかの実施形態では、治療係数は、2.0、5.0、10.0、15.0、20
.0、25.0、50.0、75.0、100.0、125.0、150.0以上の高い
ものとすることができる。
【0132】
障害、又は1つ若しくは複数のその症状の予防、治療、管理、又は改善に有効となる本
発明の化合物又は組成物の量は、疾患又は病態の性質及び重症度、並びに活性材料を投与
する経路によって異なる。投与頻度及び投与量も、実施される特定の療法(例えば、治療
剤又は予防剤)、障害、疾患、又は病態の重症度、投与経路、並びに対象の年齢、体重、
応答、及び既往歴に応じて各対象に特異的な要因に従って、異なる。有効用量は、インビ
トロ又は動物モデル試験系に由来する用量反応曲線から推定することができる。
【0133】
組成物の例示的な用量には、対象又は検体の重量の1キログラム当たり活性化合物の量
(ミリグラム又はマイクログラム)(例えば、約10マイクログラム/キログラム〜約5
0ミリグラム/キログラム、約100マイクログラム/キログラム〜約25ミリグラム/
キログラム、又は約100マイクログラム/キログラム〜約10ミリグラム/キログラム
)が含まれる。本発明の組成物の場合、対象に投与される用量は、通常は対象の体重1k
g当たり、活性化合物の重量に基づいて0.140mg〜3mgである。好ましくは、対
象に投与される用量は、対象の体重1kg当たり0.20mg〜2.00mg、又は0.
30mg〜1.50mgである。
【0134】
一般に、本明細書に記載する病態用の本発明の組成物の推奨1日用量範囲は、約0.1
mg〜約1000mg/日の範囲内であり、1日1回の単回投与又は1日を通して分割投
与で投与される。一実施形態では、1日用量を均等分割した投与量で1日2回投与する。
1日用量は、具体的には約10mg〜約200mg/日、より具体的には約10mg〜約
150mg/日、さらにより具体的には約25〜約100mg/日であるべきである。当
業者に自明であるように、場合によっては、本明細書に開示する範囲外の投与量の活性材
料を使用することが必要な場合がある。さらに、臨床医又は治療医は、対象の応答に関連
して、療法の中断、調整、又は終結の方法と時期を見分けられることに留意されたい。
【0135】
当業者に容易に理解されるように、様々な治療有効量が、様々な疾患及び病態に適用可
能であり得る。同様に、このような障害を予防、管理、治療、又は改善するのに十分であ
るが、本発明の組成物に付随する有害作用を引き起こすには不十分であり、又はそれを低
減するには十分な量も、上記の投与量及び投与回数スケジュールに包含される。さらに、
対象に反復投与量の本発明の組成物を多回投与する場合、投与量はすべて同じである必要
はない。例えば、対象に投与する投与量は、組成物の予防又は治療の効果を改善するため
に増やすことができ、或いは特定の対象が経験している1つ又は複数の副作用を低減させ
るために減らすことができる。
【0136】
特定の実施形態では、対象において障害、又は1つ若しくは複数のその症状を予防、治
療、管理、又は改善するために投与される本発明の組成物又は本発明の組成物の、活性化
合物の重量に基づく投与量は、対象の体重1kg当たり0.1mg、1mg、2mg、3
mg、4mg、5mg、6mg、10mg、又は15mg以上である。別の実施形態では
、対象において障害、又は1つ若しくは複数のその症状を予防、治療、管理、又は改善す
るために投与される本発明の組成物又は本発明の組成物の投与量は、単位用量が0.1m
g〜200mg、0.1mg〜100mg、0.1mg〜50mg、0.1mg〜25m
g、0.1mg〜20mg、0.1mg〜15mg、0.1mg〜10mg、0.1mg
〜7.5mg、0.1mg〜5mg、0.1〜2.5mg、0.25mg〜20mg、0
.25〜15mg、0.25〜12mg、0.25〜10mg、0.25mg〜7.5m
g、0.25mg〜5mg、0.5mg〜2.5mg、1mg〜20mg、1mg〜15
mg、1mg〜12mg、1mg〜10mg、1mg〜7.5mg、1mg〜5mg、又
は1mg〜2.5mgである。
【0137】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物又は組成物の1つ又は複数の負荷用量、続い
て1つ又は複数の維持用量を用いて、治療又は予防を開始することができる。このような
実施形態では、負荷用量は、例えば1日〜5週間、約60〜約400mg/日、又は約1
00〜約200mg/日とすることができる。負荷用量の後に、1つ又は複数の維持用量
が続き得る。維持用量はそれぞれ独立に、約10mg〜約200mg/日、より具体的に
は約25mg〜約150mg/日、さらにより具体的には約25〜約80mg/日とする
ことができる。維持用量を、好ましくは日毎に投与し、単回投与、又は分割投与として投
与することができる。
【0138】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物又は組成物の用量を投与して、対象の血液又
は血清中で活性材料の定常状態濃度を実現することができる。定常状態濃度を、当業者が
利用可能な技法に従った測定により決定することができ、或いは身長、体重、及び年齢な
ど、対象の物理的諸特性に基づくことができる。いくつかの実施形態では、対象の血液又
は血清中で約300〜約4000ng/mL、約400〜約1600ng/mL、又は約
600〜約1200ng/mLの定常状態濃度が実現されるのに十分な量の本発明の化合
物又は組成物を投与する。血液又は血清中の定常状態濃度の約1200〜約8000ng
/mL、又は約2000〜約4000ng/mLが1日〜5日間実現されるように、負荷
用量を投与することができる。対象の血液又は血清中で約300〜約4000ng/mL
、約400〜約1600ng/mL、又は約600〜約1200ng/mLの定常状態濃
度が実現されるように、維持用量を投与することができる。
【0139】
いくつかの実施形態では、本発明の同じ組成物の投与を反復することができ、投与間隔
は少なくとも1日、2日、3日、5日、10日、15日、30日、45日、2か月、75
日、3か月、又は6か月とすることができる。他の実施形態では、同じ予防剤又は治療剤
の投与を反復することができ、投与間隔は少なくとも少なくとも1日、2日、3日、5日
、10日、15日、30日、45日、2か月、75日、3か月、又は6か月とすることが
できる。
【0140】
いくつかの態様では、本発明は、本発明の化合物、又は医薬として許容し得るその塩を
投与に適した形で含む単位投与量を提供する。このような形を先に詳述する。いくつかの
実施形態では、単位投与量は、1〜1000mg、5〜250mg、又は10〜50mg
の活性材料を含む。特定の実施形態では、単位投与量は、約1、5、10、25、50、
100、125、250、500、又は1000mgの活性材料を含む。このような単位
投与量は、当業者に知られている技法に従って調製することができる。
【0141】
4.3 キット
本発明は、HCV感染の治療又は予防方法に使用するためのキットも提供する。キット
は、本発明の薬剤化合物又は組成物、及び細菌感染治療又は予防するための使用に関する
情報を医療提供者に提供する説明書を含むことができる。説明書は、印刷された形、又は
フロッピーディスク、CD、若しくはDVDなどの電子媒体の形、又はこのような説明書
が得られるウェブサイトアドレスの形で提供され得る。単位用量の本発明の化合物又は組
成物は、対象に投与された場合に治療上又は予防上有効な血漿中レベルの化合物又は組成
物を対象において少なくとも1日維持することができるような投与量を含むことができる
。いくつかの実施形態では、本発明の化合物又は組成物は、無菌の水性医薬組成物又は乾
燥粉末(例えば、凍結乾燥)組成物として含まれ得る。一実施形態では、化合物が式(I
)によるものである。
【0142】
いくつかの実施形態では、適切なパッケージングが提供される。本明細書では、「パッ
ケージング」は慣例的に系で使用され、対象への投与に適した本発明の化合物又は組成物
を固定された限度内に保持することができる固体マトリックス又は材料を指す。このよう
な材料には、ガラス及びプラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポ
リカルボナート)ビン、バイアル、紙、プラスチック、並びにプラスチック箔積層エンベ
ロープなどが含まれる。電子線滅菌技法を使用する場合、パッケージングは、内容物の滅
菌が可能になるように十分に低密度であるべきである。
本発明のキットは、本発明の化合物又は組成物に加えて、上記の方法で記載されるよう
に化合物又は組成物と共に使用するための他の化合物又は組成物も含むことができる。
【0143】
下記の実施例は、本発明で使用される代表的シクロスポリン誘導体の合成を例示し、下
記の参考例は、その調製における中間体の合成を例示する。これらの実施例は、本発明の
範囲を限定するものでもなく、そのように解釈されるべきものでもない。具体的に本明細
書に記載されている以外の別の方法で本発明を実施できることは明白であろう。本発明の
多数の修正及び変形が本明細書の教示を考えると可能であり、したがって本発明の範囲内
に入る。
【実施例】
【0144】
(5.実施例)
5.1 実施例1: 3−メトキシシクロスポリン
3−(メルカプトベンズチアゾル−2−イルチオ)シクロスポリン(0.4g、0.2
8mmol)及びカンファースルホン酸(0.7g、3mmol)の乾燥テトラヒドロフ
ラン及び乾燥メタノールの溶液を、50℃で2時間加熱した。混合物を室温まで放冷し、
飽和重炭酸ナトリウム、エーテル、及び水を添加した。層を分液し、水相をジエチルエー
テルで抽出した。合わせた有機抽出液を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、蒸発乾
固した。ジクロロメタン及び酢酸エチルのミックスで溶離してシリカゲルクロマトグラフ
ィーを繰り返すことによって、120mgの3−メトキシシクロスポリン(化合物A)を
得た。
【0145】
重クロロホルム中でのこの化合物のNMRシグナルは、5.83ppm(サルコシン
H)、3.49ppm(メトキシ CH)、83.5ppm(サルコシン C)、及び
58.7ppm(メトキシ CH)である。
【0146】
5.2 実施例2: 3−(2−アミノエトキシ)シクロスポリン
3−(N−Fmoc−2−アミノエトキシ)シクロスポリン(0.52g、0.35m
mol)のジメチルホルムアミド(16ml)溶液に、ピペリジン(4ml)を添加した
。混合物を、窒素中で1.25時間撹拌した。得られた混合物を、酢酸エチル(25ml
)及び水(25ml)で希釈した。有機相を、水(20ml)、ブライン(2回×10m
l)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、蒸発乾固した。得られた材料を
、メタノール/酢酸エチルから100%メタノールへのグラジエントで溶離してシリカゲ
ルクロマトグラフィーを繰り返すことによって精製し、白色ガムの3−(2−アミノエト
キシ)シクロスポリン(化合物B)(130mg)を得た。重クロロホルム中でのこの化
合物のNMRシグナルは、5.95ppm(サルコシン H)である。
【0147】
塩形成
化合物B(130mg)をジクロロメタンに溶解し、メタンスルホン酸溶液(0.1M
ジクロロメタン溶液1ml)で処理した。撹拌を10分間継続した。溶媒を蒸発させ、残
渣をジエチルエーテルで粉末にして、白色固体(120mg)を得た。
【0148】
5.3 実施例3: 3−(2−ジメチルアミノエトキシ)シクロスポリン
3−(2−アミノエトキシ)シクロスポリン(0.375g、0.3mmol)、ホル
マリン(0.8mmol)、及びギ酸(1.33mmol)の1,4−ジオキサン溶液を
、80℃で5時間加熱した。混合物を室温まで放冷し、飽和重炭酸ナトリウムで希釈した
。得られた混合物をジクロロメタンで抽出し、合わせた有機抽出液を無水硫酸マグネシウ
ムで乾燥し、濾過し、蒸発させた。残渣を、メタノール/ジクロロメタンから100%メ
タノールへのグラジエントで溶離してシリカゲルカラムクロマトグラフィーを繰り返すこ
とによって精製して、3−(2−ジメチルアミノエトキシ)シクロスポリン(化合物C、
230mg)を得た。
重クロロホルム中でのこの化合物のNMRシグナルは、6.01ppm(サルコシン
H)及び82.6ppm(サルコシン C)である。
【0149】
塩形成
tert−ブチルメチルエーテル及びメタノール中化合物C(194mg)の溶液に、
塩酸の溶液(2.0Mエーテル溶液2ml)を添加した。得られた混合物を1時間撹拌し
、次いで溶媒を蒸発させた。残渣をエーテルで粉末にして、淡黄色固体(154mg)を
得た。
【0150】
5.4 実施例4:3−メトキシ−4−(γ−ヒドロキシメチルロイシン)−シクロス
ポリン
3−メトキシ−4−(γ−ヒドロキシメチルロイシン)−シクロスポリン
1,4−ジ−アセチル−3−メトキシ−4−(γ−ヒドロキシメチルロイシン)−シク
ロスポリン(275mg)のメタノール(15mL)溶液に、メタノール(0.12mL
)中25重量%ナトリウムメトキシドを添加し、得られた混合物を、窒素中、室温で24
時間撹拌した。メタノールを減圧下除去し、残渣を酢酸エチル(50mL)で希釈し、飽
和塩化アンモニウム(30mL)、ブライン(30mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム
で乾燥した。溶媒除去した後、分取液体クロマトグラフィーを使用して、残渣を精製して
、表題化合物(化合物T)33mgを得た。
【0151】
重クロロホルム中でのこの化合物のNMRシグナルは、(ppm)で5.80(一重線
、サルコシン H)、並びに7.14、7.39、7.69、及び7.96(二重線NH
シグナル4本)である。LCMS(ESI):計算値C631131114:12
47、実測値1248.5(M+H)
【0152】
5.5 実施例5〜13:3−エーテルシクロスポリン
上記の式(I)の下記の化合物(式中、Aは上記の式(IIa)の残基であり、Bはエ
チルであり、Xは酸素であり、Rはイソブチルである)も、各生成物について指定した
実施例又は参考例で記載されている方式で同様に進めることによって調製した。
【表1】

【0153】
5.6 実施例14:3−(2−メトキシエチルチオ)−4−(γ−ヒドロキシメチル
ロイシン)シクロスポリン
窒素中、液体アンモニア(30mL)をフラスコに凝縮した。ナトリウムアミド(1.
0g)、続いて4−(γ−ヒドロキシメチルロイシン)−シクロスポリン(1.22g、
1.0mmol)のtert−ブチルメチルエーテル(20mL)溶液を添加した。混合
物を−35℃で90分間撹拌した。2−メトキシエチルジスルフィド(5.9g)を添加
した。撹拌を−35℃でさらに2時間継続する。固体の塩化アンモニウム(1.5g)を
添加し、混合物を−33℃で10分間撹拌した。室温にまで温めた後、混合物をtert
−ブチルメチルエーテルで希釈し、水、ブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し
た。溶媒除去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを使用して、残渣をまず酢酸
エチル/ヘプタン、次いでメタノール/酢酸エチルで溶離して精製して、3−(2−メト
キシエチルチオ)−4−(γ−ヒドロキシメチルロイシン)シクロスポリン(化合物N)
500mgを得た。重クロロホルム中でのこの化合物のNMRシグナルは、(ppm)で
5.97(一重線、サルコシン H)、並びに7.14、7.47、7.62、及び7.
92(二重線NHシグナル4本)である。LCMS(ES):計算値C65H117N1
1O14S:1307、実測値1308.6(M+H)+。
【0154】
5.7 実施例15〜19:3−チオエーテルシクロスポリン
上記の式(I)の下記の化合物(式中、Aは上記の式(IIa)の残基であり、Bはエ
チルであり、Xは硫黄である)も、各生成物について指定した実施例又は参考例で記載さ
れている方式で同様に進めることによって調製した。
【表2】

【0155】
5.8 参考例1: 3−(メルカプトベンズチアゾル−2−イルチオ)シクロスポリ

不活性雰囲気中、−70℃でリチウムジイソプロピルアミド(LDA)(10.0mm
ol)の乾燥テトラヒドロフラン溶液に、シクロスポリンA(1.2g、1.0mmol
)の乾燥テトラヒドロフラン溶液を滴下し、撹拌を−70℃で1時間継続し、この後、固
体のビス−ベンゾチアゾールジスルフィド(5g、15mmol)を1回で添加した。得
られた懸濁液を放置して室温にまで温め、18時間撹拌した。混合物を濾過し、濾液を水
で処理し、蒸発乾固した。残渣を酢酸エチルに溶解し、ブラインで洗浄し、無水硫酸マグ
ネシウムで乾燥し、濾過し、蒸発乾固した。得られた茶色のゴム(3.3g)を、シリカ
ゲルクロマトグラフィーによって酢酸エチル/イソヘキサンで溶離して精製して、ベージ
ュ色固体の3−(メルカプトベンズチアゾル−2−イルチオ)シクロスポリン(0.33
g)を得た。重クロロホルム中でのこの化合物のNMRシグナルは、6.98ppm(サ
ルコシン H)である。
【0156】
5.9 参考例2: 3−(N−Fmoc−2−アミノエトキシ)−シクロスポリン
3−(メルカプトベンズチアゾル−2−イルチオ)シクロスポリン(0.7g、0.5
mmol)の乾燥テトラヒドロフラン溶液に、カンファースルホン酸(0.175g、0
.75mmol)及び(2−ヒドロキシ−エチル)−カルバミン酸9H−フルオレン−9
−イルメチルエステル(1.7g、6mmol)を添加し、得られた溶液を50℃で4.
5時間加熱した。反応ミックスを室温まで放冷し、酢酸エチル(25ml)で希釈した。
溶液を飽和硫酸ナトリウム(20ml)、ブライン(20ml)で洗浄し、無水硫酸マグ
ネシウムで乾燥し、濾過し、蒸発乾固した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーによっ
て、残渣を酢酸エチル/ジクロロメタンで溶離して精製し、ガムとして3−(N−Fmo
c−2−アミノエトキシ)シクロスポリン(0.52g)を得た。重クロロホルム中での
この化合物のNMRシグナルは、5.9ppm(サルコシン H)である。
【0157】
5.10 参考例:(2−ヒドロキシ−エチル)−カルバミン酸9H−フルオレン−9
−イルメチルエステル
6℃で、エタノールアミン(0.49g、8mmol)、テトラヒドロフラン、水、及
び重炭酸ナトリウム(1.5g、18mmol)の混合物を撹拌した中に、クロロギ酸9
−フルオレニルメチル(2.27g、8.8mmol)のテトラヒドロフラン溶液を1回
で添加し、撹拌を1時間継続し、混合物を放置して室温にまで温めた。混合物を水で希釈
し、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機抽出液を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過
し、蒸発させて、粗生成物を得た。粗生成物をジクロロメタンで再結晶して、白色固体の
(2−ヒドロキシ−エチル)−カルバミン酸9H−フルオレン−9−イルメチルエステル
(1.2g)を得た。
【0158】
5.11 参考例4:1,4−ジ−アセチル−3−メトキシ−4−(γ−ヒドロキシメ
チルロイシン)−シクロスポリン
1,3,4−トリ−アセチル−4−(γ−ヒドロキシメチルロイシン)−シクロスポリ
ン(295mg)のメタノール(5mL)溶液に、カンファースルホン酸(55mg)を
添加した。得られた混合物を、窒素中50℃で5時間撹拌した。メタノールを減圧下除去
し、残渣を酢酸エチル(50mL)で希釈し、飽和重炭酸ナトリウム(30mL)、ブラ
イン(30mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒除去した後、表題化合
物275mgを得、さらに精製することなく、次のステップに使用した。
【0159】
重クロロホルム中でのこの化合物のNMRシグナルは、(ppm)で1.92(一重線
、OAc)、2.00(一重線、OAc)、5.71ppm(一重線、サルコシン H)
、並びに7.33、7.43、8.03、及び8.51(二重線NHシグナル4本)であ
る。LCMS(ESI):計算値C631131114:1331、実測値133
2.6(M+H)
【0160】
5.12 参考例5: 1,3,4−トリ−アセチル−4−(γ−ヒドロキシメチルロ
イシン)−シクロスポリン
1,4−ジ−アセチル−3−フェニルチオ−4−(γ−ヒドロキシメチルロイシン)−
シクロスポリン(389mg)の氷酢酸(8mL)の溶液に、酢酸水銀(389mg)を
添加し、得られた混合物を、窒素中50℃で3時間撹拌した。酢酸を減圧下除去し、残渣
を酢酸エチル(50mL)で希釈し、飽和重炭酸ナトリウム(30mL)、ブライン(3
0mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒除去した後、シリカゲルカラム
クロマトグラフィーを使用して、残渣をまず酢酸エチル/ヘプタン(30:70)、次い
でメタノール/酢酸エチル(0.2/100)で溶離して精製して、表題化合物280m
gを得た。
【0161】
5.13 参考例6: 1,4−ジ−アセチル−3−フェニルチオ−4−(γ−ヒドロ
キシメチルロイシン)−シクロスポリン
3−フェニルチオ−4−(γ−ヒドロキシメチルロイシン)−シクロスポリン(550
mg)の乾燥ジクロロメタン(10mL)溶液に、4−ジメチルアミノピリジン(310
mg)、トリエチルアミン(0.35mL)、及び無水酢酸(0.16mL)をこの順序
で添加し、得られた混合物を、窒素中、室温で60時間撹拌した。酢酸エチル(50mL
)で希釈し、水(50mL)、1.0N HCl(50mL)、飽和重炭酸ナトリウム(
50mL)、ブライン(50mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒除去
し、真空乾燥した後、表題化合物389mgが得られた。
【0162】
重クロロホルム中でのこの化合物のNMRシグナルは、(ppm)で2.00(3H、
一重線、OAc)、2.04(3H、一重線、OAc)、6.11(1H、一重線、サル
コシン H)、7.20−7.37(6H、多重線、NH及びフェニル)、並びに7.4
4、8.03、及び8.52(二重線NHシグナル3本)である。
【0163】
5.14 参考例7: 3−フェニルチオ−4−(γ−ヒドロキシメチルロイシン)−
シクロスポリン
液体アンモニア(30mL)を、窒素中、フラスコに凝縮させた。ナトリウムアミド(
1.0g)、続いて4−(γ−ヒドロキシメチルロイシン)−シクロスポリン(1.22
g、1.0mmol)のtert−ブチルメチルエーテル(15mL)溶液を添加した。
混合物を−35℃で90分間撹拌した。次いで、ジフェニルジスルフィド(4.4g、2
0mmol)のtert−ブチルメチルエーテル(15mL)溶液を添加した。撹拌を−
35℃でさらに2時間継続する。固体の塩化アンモニウム(1.5g)を添加し、混合物
を−33℃で10分間撹拌した。室温にまで温めた後、混合物をtert−ブチルメチル
エーテル(50mL)で希釈し、水(50mL)、ブライン(50mL)で洗浄し、無水
硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒除去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを使
用して、残渣をまず酢酸エチル/ヘプタン(30:70)、次いでメタノール/酢酸エチ
ル(0.2:100)で溶離して精製して、表題化合物550mgを得た。
【0164】
重クロロホルム中でのこの化合物のNMRシグナルは、(ppm)で6.12(1H、
一重線、サルコシン H)、7.33(5H、多重線、Ph)、並びに7.14、7.3
9、7.65、及び7.96(二重線NHシグナル4本)である。
【0165】
5.16 実施例21: [(R)−2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルチオ−S
ar]3[4’−ヒドロキシ−MeLeu]4 シクロスポリン(化合物O)の塩
この実施例は、本発明の医薬として許容し得る塩が本発明の方法での使用に有利な溶解
性を示すことを実証する。
【0166】
[(R)−2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルチオ−Sar]3[4’−ヒドロキ
シ−MeLeu]4 シクロスポリンA(1.0g)を10mLのエチルエーテルに溶解
した。対応する酸(1.0当量)を添加し、25℃で2時間撹拌した。沈殿物を濾過によ
り回収し、冷エーテルで洗浄し、真空乾燥し、分析した。酢酸塩及びプロピオン酸塩の実
施例では、10mLのヘプタンをエーテル溶液に添加して、沈殿を促進した。濁度滴定を
使用して、生理的緩衝液、すなわちダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中での各
塩の溶解性を決定した(Schoteら、2002. J Pharm Sciences 91(3):856)。pH7.2の
緩衝剤は、生理的濃度のカルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、リン酸塩、
及び塩化物を有する。PBS中でのシクロスポリンの溶解性は0.015〜0.020m
Mであるが、塩は0.45〜0.65mMの範囲で可溶である。化合物Oの下記の塩を調
製した。
【表3】

【0167】
(実施例21)
HCV活性
この実施例は、本発明の化合物がHCV感染に対して有効であることを実証する。さら
に、この実施例は、本発明の化合物が、シクロスポリンAに比べて、有利な有効性若しく
は細胞毒性、又は両方を示すことを実証する。
【0168】
HCVに対する活性について、Krigerら、2001, Journal of Virology, 75:4614-4624
、Pietschmannら、2002, Journal of Virology 76:4008-4021によって記述されているも
のから適応された方法、及び米国特許第6,630,343号に記載されているようなH
CV RNAコンストラクトを使用して、本発明の化合物(実施例1〜21で記載された
ように調製された塩として)を試験した。これらの参考文献の内容は、参照によりその全
体が本明細書に組み込まれる。
【0169】
安定なルシフェラーゼ(LUC)レポーターを含むHCV RNAレプリコンであるヒ
ト肝癌細胞系ET(lub ubineo/ET)で、化合物を試験した。HCV RNAレプリコン
ETは、ホタルルシフェラーゼ(LUC)、ユビキチン、及びネオマイシンリン酸転移酵
素(NeoR)融合タンパク質の産生を駆動するHCVの5’末端(HCV配列内リボソ
ーム進入部位(IRES)、及びHCVコアタンパク質の最初の数個のアミノ酸を含む)
を含む。ユビキチンの開裂によって、LUC及びNeoRタンパク質が放出される。EM
CV IRESエレメントは、HCV構造タンパク質NS3−NS5の翻訳を制御する。
NS3タンパク質によって、HCVポリタンパク質が開裂して、HCV複製に必要とされ
る成熟したNS3、NS4A、NS4B、NS5A、及びNS5Bタンパク質が放出され
る。レプリコンの3’末端に、HCVの標準の3’ NTRがある。LUCレポーターの
活性は、HCV複製レベルと正比例し、正の対照の抗ウイルス化合物は、LUCの端点を
使用して再現性のある抗ウイルス応答をもたらす。
【0170】
化合物を、0.02〜2.0μM、0.03〜3μM、2.0〜20μM、又は1〜1
00μMにわたってそれぞれ5つの半対数濃度でDMSOに溶解した。ETのサブコンフ
ルエントな培養物を、細胞数(細胞毒性)又は抗ウイルス活性の分析に供する96ウェル
プレートに播き、翌日、化合物を適切なウェルに添加した。細胞が依然としてサブコンフ
ルエントであった72時間後、細胞を処理した。抗ウイルス活性を、EC50及びEC
として表した。EC50及びEC90は、ウイルス複製をそれぞれ50%及び90%低
減させた化合物の有効濃度である。化合物のEC50及びEC90値は、HCV RNA
レプリコン由来のLUC活性として評価されたHCV RNAレベルに由来した。細胞毒
性を、IC50及びIC90として表した。IC50及びIC90は、細胞生存率をそれ
ぞれ50%及び90%抑制した化合物の濃度である。比色試験を用いて、化合物のIC
及びIC90値を細胞数及び細胞毒性の指標として算出した。LUCレポーターの活性
は、ヒト細胞系におけるHCV RNAレベルに正比例する。インターフェロン−α−2
bを正の対照として使用した平行実験で、HCV−レプリコンアッセイを確証した。シク
ロスポリンも比較によって試験した。本発明の化合物は、ヒト肝臓細胞におけるHCV複
製をシクロスポリンより大いに強力に阻害する。さらに、細胞毒性のレベルを考慮すると
、本発明の化合物の多くは、シクロスポリンより広い安全域(例えば、細胞毒性IC50
対 抗ウイルス剤EC50)を発現する。
【0171】
結果は以下の通りであった(別段の記述のない限り、値はすべて、nMで表す)。「N
/D」は、データが決定されなかったこと(not determined)を意味する。
【表4】

【0172】
5.17 実施例22: シクロフィリン結合及びHCV活性
この実施例は、それを必要とする対象におけるHCV感染を治療又は予防するための本
発明の化合物の有効性を評価するための方法をさらに提供する。
【0173】
いくつかのシクロスポリンは、シクロフィリンB(CyPB)に結合にすることにより
、HCV感染を治療又は予防する際に有効であることが実証されている。Watashiら、200
5, Molecular Cell 19:111-122; Nakagawaら、2005 Gastroenterology 129(3).1031-41を
参照のこと。その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。任意の特定の作
動理論に拘泥するものではないが、シクロフィリンBは、HCVゲノムの効率的な複製に
クリティカルであると考えられる。標準的アッセイにおいて、シクロフィリンBを阻害す
るシクロスポリンA及びシクロスポリンの誘導体は、HCVの複製を劇的に低減すること
ができる。
【0174】
したがって、シクロフィリン、例えばシクロフィリンBとの結合又はその調節を評価す
ることによって、本発明の化合物は、HCV感染の治療又は予防に有効であることがわか
る。本発明の化合物によるシクロフィリンの調節は、標準的技法、例えばWatashiら、200
5に記載されているもの、Nakagawaら、2005に記載されているもの、又はBillichら、J. V
irol. 69:2451-2461に記載されているものに従って測定する。その内容は参照によりその
全体が本明細書に組み込まれる。
【0175】
5.18 実施例23: HIV活性
ヒト免疫不全ウイルス−1(HIV)に対する抗レトロウイルス活性について、ヒトT
−リンパ芽球様細胞系CEM−SSがHIV株HIV−1IIIBに感染することを利用
して、本発明の化合物を試験した(Weislowら、1989, J. Natl. Cancer Inst. 81:577- 5
86)。このMTS細胞保護アッセイでは、各実験は、細胞対照ウェル(細胞のみ)、ウイ
ルス対照ウェル(細胞にウイルスを加えたもの)、薬物毒性ウェル(細胞に薬物のみを加
えたもの)、薬物比色対照ウェル(薬物のみ)、及び実験ウェル(薬物に細胞及びウイル
スを加えたもの)を含んだ。化合物をまずDMSOに溶解し、20又は2μMの高濃度で
始めた6つの半対数希釈率を使用して試験した。50μLの体積のHIV−1RFを各ウ
ェルに添加した。このウイルス量は、感染して6日後、約90%の細胞殺滅が得られるよ
うに決定された。アッセイ終了時に、アッセイプレートを可溶性テトラゾリウム系色素MT
S(CellTiter 96 Reagent、Promega)で染色して、細胞生存率を決定し、化合物毒性を定
量した。MTSを代謝的に活性な細胞のミトコンドリア酵素によって代謝して、可溶性ホ
ルマザン生成物が得られ、細胞生存率及び化合物細胞毒性の定量分析に供した。ジドブジ
ン(3’−アジド−3’−デオキシチミジン、すなわちAZT)を正の対照として使用し
た平行実験で、アッセイを確証した。アッセイには、化合物のEC50(ウイルス複製を
50%抑制する濃度)、IC50(細胞増殖を50%抑制する濃度)、及び選択性指数(
IC50/EC50)の決定を含まれた。
【0176】
選択された化合物の結果は以下の通りであった(別段の記述のない限り、値はすべて、
nMで表す)。
【表5】

【0177】
5.19 実施例24: 経口剤形
本発明の化合物の1つ又は複数は、カプセル剤として調製することができる。このよう
なカプセル剤は、化合物10〜200mg、並びに微結晶セルロース、プレアルファ化デ
ンプン、ラクトース、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポピドン、ポビドン、ヒ
ドロキシプロピルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、及び二酸化ケイ素からなる群
から選択された1つ又は複数の賦形剤を含むことができる。得られた組成物を、ゼラチン
又は可塑剤など、1つ又は複数の標準的カプセル化組成物でカプセル化することができる

【0178】
本発明の化合物の1つ又は複数を、塩としてシロップ剤又はエリキシル剤で調剤するこ
とができる。化合物又は複数の化合物は、全濃度が5〜50mg/mLであり得る。シロ
ップ剤又はエリキシル剤は、さらにポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポ
リエチレングリコールの混合物、PEG 400、エチレンオキシド及びプロピレンオキ
シドのブロックコポリマー(例えば、ポロキサマー407)、ポリソルベート20、エタ
ノール、砂糖、クエン酸、及び/又は矯味剤を含むことができる。
【0179】
本明細書に引用された刊行物及び特許出願は、それぞれ個々の刊行物又は特許出願が具
体的かつ個別に参照により組み込まれるように示されたかのように参照により本明細書に
組み込まれる。本発明を様々な好ましい実施形態によって記述したが、その趣旨から逸脱
することなく、様々な修正、置換、省略、及び変更を実施できることを当業者なら理解す
るであろう。したがって、本発明の範囲は、その等価物を含めて、下記の特許請求の範囲
によってのみ限定されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする対象におけるC型肝炎ウイルス感染の治療又は予防方法であって、治
療有効量の一般式(I)のシクロスポリン誘導体、又は医薬として許容し得るその塩若し
くは溶媒和物を対象に投与することを含む、前記方法:
【化1】

(式中、
Aは、式(IIa)又は(IIb)の残基であり:
【化2】

Bは、エチル、1−ヒドロキシエチル、イソプロピル、又はn−プロピルであり;
は、同じでも異なってもよい1個又は複数のR基によって場合によっては置換さ
れていてもよい、1〜6個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖のアルキル;
ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、モノアルキルアミノ、及びジアルキルアミノからなる
群から選択された同じでも異なってもよい1個又は複数の基によって場合によっては置換
されていてもよい、2〜6個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖のアルケニル;
ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、モノアルキルアミノ、及びジアルキルアミノからなる
群から選択された同じでも異なってもよい1個又は1個若しくは複数の基によって場合に
よっては置換されていてもよい、2〜6個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖のアルキニル

ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、モノアルキルアミノ、及びジアルキルアミノからなる
群から選択された同じでも異なってもよい1個又は複数の基によって場合によっては置換
されていてもよい、3〜6個の炭素原子を含むシクロアルキル;
1〜6個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖のアルコキシカルボニルであり;
は、イソブチル又は2−ヒドロキシイソブチルであり;
Xは、−S(O)−又は酸素であり;
は、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、−NR
、及び−NR(CHNRからなる群から選択され;
及びRはそれぞれ、同じでも異なってもよく、独立に:
水素;
同じでも異なってもよい1個又は複数のR基によって場合によっては置換されていて
もよい1〜6個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖のアルキル;
2〜4個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖のアルケニル又はアルキニル;
1〜6個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖のアルキルによって場合によっては置換され
ていてもよい3〜6個の炭素原子を含むシクロアルキル;
ハロゲン、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノ、及びジアル
キルアミノからなる群から選択された同じでも異なってもよい1〜5個の基によって場合
によっては置換されていてもよいフェニル;
5又は6個の環原子、並びに窒素、硫黄、及び酸素から選択された同じでも異なっても
よい1〜3個のヘテロ原子を含む飽和でも不飽和でもよい複素環であり;
或いはRとRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、4〜6個の環原
子を含む飽和又は不飽和の複素環を形成し、この環は、窒素、酸素、及び硫黄からなる群
から選択された別のヘテロ原子を場合によっては含んでもよく、アルキル、フェニル、及
びベンジルからなる群から選択された同じでも異なってもよい1〜4個の基によって場合
によっては置換されていてもよく;
は、水素、又は1〜6個の炭素原子を含む直鎖若しくは分枝鎖のアルキルであり、
は、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、及び−NR
からなる群から選択され;
及びRは、同じでも異なってもよく、それぞれ、水素、又は1〜6個の炭素原子
を含む直鎖若しくは分枝鎖のアルキルを表し;
nは0、1、又は2であり;
mは2〜4の整数である。)。
【請求項2】
Aが式(IIa)の残基であり、Bがエチルである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
が、2−アミノエチル、2−アミノプロピル、2−モノアルキルアミノエチル、2
−モノアルキルアミノプロピル、2−ジアルキルアミノエチル 2−ジアルキルアミノプ
ロピル、2−モノシクロアルキルアミノエチル、2−モノシクロアルキルアミノプロピル
、2−ジシクロアルキルアミノエチル、又は2−ジアルキルアミノプロピルであり、アル
キルが1〜4個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖であり、シクロアルキルが3〜6個の炭
素原子を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
Xが酸素又は硫黄である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
Xが酸素である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
Xが硫黄である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
Xが硫黄であり、Rが、ジメチルアミノエチル、ジエチルアミノエチル、メチル−t
ert−ブチルアミノエチル、及びエチル−tert−ブチルアミノエチルからなる群か
ら選択される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
式(I)のシクロスポリン誘導体が:
3−メトキシシクロスポリン;
3−(2−アミノエトキシ)シクロスポリン;
3 (2 N,N ジメチルアミノエトキシ)シクロスポリン;
3−(イソプロポキシ)シクロスポリン;
3−(2−エチルブトキシ)シクロスポリン;
3−(2,2−ジメチルプロポキシ)シクロスポリン;
3−(2−ヒドロキシエトキシ)シクロスポリン;
3−(3−ヒドロキシプロポキシ)シクロスポリン;
3−[2−(N−メチルアミノ)エトキシ]シクロスポリン;
3−[2−(N−メチル−N−イソプロピルアミノ)エトキシ]シクロスポリン;
3−[2−(ピペリジン−1−イル)エトキシ]シクロスポリン;
3−[2−(N−モルホリン)エトキシ)シクロスポリン;
3−エトキシシクロスポリン;
3−(2−メトキシエチルチオ)−4−(γヒドロキシメチルロイシン)シクロスポリ
ン;
3−[(R)−2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルチオ−Sar]−4−(γヒド
ロキシメチルロイシン)シクロスポリン;
3−エチルチオシクロスポリン;
3−プロペニルチオシクロスポリン;
3−[(2−メトキシ)エチルチオ]シクロスポリン;
3−(メチルチオ)−4−(γヒドロキシメチルロイシン)シクロスポリン;
3−(メトキシ)−4−(γヒドロキシメチルロイシン)シクロスポリン;
3−(プロプ−2−エン−1−オキシ)−4−(γヒドロキシメチルロイシン)シクロ
スポリン;
3−(イソプロポキシ)−4−(γヒドロキシメチルロイシン)シクロスポリン;
3−(エトキシ)−4−(γヒドロキシメチルロイシン)シクロスポリン;
3−[2−(メトキシ)エトキシ]−4−(γヒドロキシメチルロイシン)シクロスポ
リン;
3−[3−(メトキシ)プロポキシ]−4−(γヒドロキシメチルロイシン)シクロス
ポリン;
又は医薬として許容し得るその塩である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
シクロスポリン誘導体を経口投与する、請求項1記載の方法。
【請求項10】
シクロスポリン誘導体の投与量が、約1〜約1000mg/日である、請求項1記載の
方法。
【請求項11】
シクロスポリン誘導体の投与量が、約25〜200mg/日である、請求項10記載の
方法。
【請求項12】
前記対象が、インターフェロンでの処置に対して不応性である、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記対象がHIVに同時感染している、請求項1記載の方法。
【請求項14】
一般式(I)のシクロスポリン誘導体、又は医薬として許容し得るその塩の、C型肝炎
ウイルス感染の予防及び/又は治療用の医薬品の製造における使用:
【化3】

(式中、A、B、R、R、及びXは、請求項1から6のいずれか一項に記載の通り
である。)。
【請求項15】
対象におけるC型肝炎ウイルス感染の治療又は予防方法であって、治療有効量の3−[
(R)−2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルチオ−Sar]−4−(γ−ヒドロキシ
メチルロイシン)シクロスポリン、又は医薬として許容し得るその塩を投与することを含
む方法。
【請求項16】
3−[(R)−2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルチオ−Sar]−4−(γ−ヒ
ドロキシメチルロイシン)シクロスポリン、又は医薬として許容し得るその塩の、C型肝
炎ウイルス感染の予防及び/又は治療用の医薬品の製造における使用。
【請求項17】
対象におけるC型肝炎ウイルス感染の治療又は予防方法であって、治療有効量の一般式
(I)のシクロスポリン誘導体、又は医薬として許容し得るその塩若しくは溶媒和物を投
与することを含む方法:
【化4】

(式中、
Aは、式(IIa)又は(IIb)の残基であり:
【化5】

Bは、エチル、1−ヒドロキシエチル、イソプロピル、又はn−プロピルであり;
は、同じでも異なってもよい1個又は複数のR基によって場合によっては置換さ
れていてもよい、1〜6個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖のアルキル;
ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、モノアルキルアミノ、及びジアルキルアミノからなる
群から選択された同じでも異なってもよい1個又は複数の基によって場合によっては置換
されていてもよい、2〜6個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖のアルケニル;
ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、モノアルキルアミノ、及びジアルキルアミノからなる
群から選択された同じでも異なってもよい1個又は1個若しくは複数の基によって場合に
よっては置換されていてもよい、2〜6個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖のアルキニル

ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、モノアルキルアミノ、及びジアルキルアミノからなる
群から選択された同じでも異なってもよい1個又は複数の基によって場合によっては置換
されていてもよい、3〜6個の炭素原子を含むシクロアルキル;
1〜6個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖のアルコキシカルボニルであり;
は、イソブチル又は2−ヒドロキシイソブチルであり;
Xは酸素であり;
は、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、−NR
、及び−NR(CHNRからなる群から選択され;
及びRはそれぞれ、同じでも異なってもよく、独立に:
水素;
同じでも異なってもよい1個又は複数のR基によって場合によっては置換されていて
もよい1〜6個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖のアルキル;
2〜4個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖のアルケニル又はアルキニル;
1〜6個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖のアルキルによって場合によっては置換され
ていてもよい3〜6個の炭素原子を含むシクロアルキル;
ハロゲン、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アミノ、N−アルキルアミノ、及びジ
アルキルアミノからなる群から選択された同じでも異なってもよい1〜5個の基によって
場合によっては置換されていてもよいフェニル;
5又は6個の環原子、並びに窒素、硫黄、及び酸素から選択された同じでも異なっても
よい1〜3個のヘテロ原子を含む飽和でも不飽和でもよい複素環であり;
或いはRとRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、4〜6個の環原
子を含む飽和又は不飽和の複素環を形成し、この環は、窒素、酸素、及び硫黄からなる群
から選択された別のヘテロ原子を場合によっては含んでもよく、アルキル、フェニル、及
びベンジルからなる群から選択された同じでも異なってもよい1〜4個の基によって場合
によっては置換されていてもよく;
は、水素、又は1〜6個の炭素原子を含む直鎖若しくは分枝鎖のアルキルであり;
は、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、及び−NR
からなる群から選択され;
及びRはそれぞれ、同じでも異なってもよく、独立に水素、又は1〜6個の炭素
原子を含む直鎖若しくは分枝鎖のアルキルであり;
nは0、1、又は2であり;
mは2〜4の整数である。)。
【請求項18】
一般式(I)のシクロスポリン誘導体の医薬として許容し得る塩:
【化6】

(式中、
Aは、式(IIa)又は(IIb)の残基であり:
【化7】

Bは、エチル、1−ヒドロキシエチル、イソプロピル、又はn−プロピルであり;
は、同じでも異なってもよい1個又は複数のR基によって場合によっては置換さ
れていてもよい、1〜6個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖のアルキル;
ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、モノアルキルアミノ、及びジアルキルアミノからなる
群から選択された同じでも異なってもよい1個又は複数の基によって場合によっては置換
されていてもよい、2〜6個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖のアルケニル;
ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、モノアルキルアミノ、及びジアルキルアミノからなる
群から選択された同じでも異なってもよい1個又は1個若しくは複数の基によって場合に
よっては置換されていてもよい、2〜6個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖のアルキニル

ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、モノアルキルアミノ、及びジアルキルアミノからなる
群から選択された同じでも異なってもよい1個又は複数の基によって場合によっては置換
されていてもよい、3〜6個の炭素原子を含むシクロアルキル;
1〜6個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖のアルコキシカルボニルであり;
は、イソブチル又は2−ヒドロキシイソブチルであり;
Xは酸素であり;
は、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、−NR
、及び−NR(CHNRからなる群から選択され;
及びRは、同じでも異なってもよく、それぞれ:
水素;
同じでも異なってもよい1個又は複数のR基によって場合によっては置換されていて
もよい1〜6個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖のアルキル;
2〜4個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖のアルケニル又はアルキニル;
1〜6個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖のアルキルによって場合によっては置換され
ていてもよい3〜6個の炭素原子を含むシクロアルキル;
ハロゲン、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アミノ、N−アルキルアミノ、及びジ
アルキルアミノからなる群から選択された同じでも異なってもよい1〜5個の基によって
場合によっては置換されていてもよいフェニル;
5又は6個の環原子、並びに窒素、硫黄、及び酸素から選択された同じでも異なっても
よい1〜3個のヘテロ原子を含む飽和でも不飽和でもよい複素環を表し;
或いはRとRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、4〜6個の環原
子を含む飽和又は不飽和の複素環を形成し、この環は、窒素、酸素、及び硫黄からなる群
から選択された別のヘテロ原子を場合によっては含んでもよく、アルキル、フェニル、及
びベンジルからなる群から選択された同じでも異なってもよい1〜4個の基によって場合
によっては置換されていてもよく;
は、水素、又は1〜6個の炭素原子を含む直鎖若しくは分枝鎖のアルキルであり、
は、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、及び−NR
からなる群から選択され;
及びRはそれぞれ、同じでも異なってもよく、独立に水素、又は1〜6個の炭素
原子を含む直鎖若しくは分枝鎖のアルキルであり;
nは0、1、又は2であり;
mは2〜4の整数である。)。
【請求項19】
前記塩が、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、塩化物、メタンスルホン酸塩、又はプロピ
オン酸塩である、請求項18記載の医薬として許容し得る塩。
【請求項20】
請求項18記載の塩の水和物。

【公開番号】特開2012−167113(P2012−167113A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−106395(P2012−106395)
【出願日】平成24年5月8日(2012.5.8)
【分割の表示】特願2007−534872(P2007−534872)の分割
【原出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(507103363)スシネキス インク (6)
【Fターム(参考)】