CCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法
【課題】 作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤を特定する方法を提供すること。
【解決手段】 複数の調色サンプルから作製異常サンプルと正常サンプルとを特定した後において、該作製異常サンプルに対し、
作製異常サンプルの実測分光反射率RREALabnと正常サンプルの各シミュレーション誤差ΔRnorの、各波長における分光反射率の相加平均を示す分光反射率ΔRnor-aveとの各波長における分光反射率の差を示す分光反射率RCAL'abnを求め、RCAL'abnに基づき、白着色剤及び黒着色剤を固定して各着色剤の着色剤配合比率の変化率を求め、該変化率が異常値を示す着色剤を作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤と特定する。
【解決手段】 複数の調色サンプルから作製異常サンプルと正常サンプルとを特定した後において、該作製異常サンプルに対し、
作製異常サンプルの実測分光反射率RREALabnと正常サンプルの各シミュレーション誤差ΔRnorの、各波長における分光反射率の相加平均を示す分光反射率ΔRnor-aveとの各波長における分光反射率の差を示す分光反射率RCAL'abnを求め、RCAL'abnに基づき、白着色剤及び黒着色剤を固定して各着色剤の着色剤配合比率の変化率を求め、該変化率が異常値を示す着色剤を作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤と特定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ターゲットの表色値を目標にして調色する技術としてCCM(Computer Color Matching)が知られている。CCMは、赤、青、黄等の各着色剤の光学特性である波長毎の吸収係数、錯乱係数を予め測定してデータベースに記憶しておき、どの着色剤をどのような比率(以下、「着色剤配合比率」ともいう)で混合すれば、ターゲット(色見本)の表色値に合致するのかをシミュレーションする技術である。
【0003】
CCMの基本操作としては、まず、(a)ターゲットの分光反射率等を実測してこれに該当する表色値を求め、(b)次に該表色値に近似する表色値が得られると予想されるような着色剤配合比率をデータベースからシミュレーションして求め、該着色剤配合比率で調色サンプルを作製し、(c)作製した調色サンプルの分光反射率等を実測し、該実測した分光反射率、表色値等のデータと(b)で予想した分光反射率、表色値等のデータとを比較し、 (d) (c)で見出された表色値のズレを矯正するべく、着色剤配合比率をシミュレーションで補正し、(e) (b)〜(d)の作業を繰返し行い、調色サンプルの表色値をターゲットに近づけていく、すなわち、ターゲットと調色サンプルとの色差を漸減させていくものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、CCMで作製した調色サンプル中には、シミュレーションで指定された種類の着色剤が計算された量で配合されていなかったり、シミュレーションで指定された以外の種類の着色剤が混入されてしまったり、種類や配合量比率はシミュレーションの指定通りでも着色剤自体が発色異常であるためにシミュレーションされた表色値を得られなかったりするため等の種々の理由により、通常表色値が適正範囲内にあるように調色された正常サンプルのみならず、表色値が適正範囲外となるように調色された作製異常サンプルが得られてしまう場合がある。また、CCM以外の例えば、視感調色で得られた調色サンプルについても、上記と同様に作製異常サンプルが得られてしまう場合がある。
【0005】
このため、作製異常サンプルが作製された場合には、作製異常の程度、すなわち作製異常分がどの程度のものなのかを判断できれば、その原因を取り除いたりすること等が可能になるため調色作業上好ましい。さらに、作製異常原因となる着色剤を特定することまでできればより好ましい。従って、本発明の目的は、作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤を特定する方法を見出すことにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる実情において、本発明者らは鋭意研究した結果、作製異常サンプルの実測分光反射率から少なくとも1個の正常サンプルのシミュレーション分光反射率差の相加平均値を減じた差から求められる着色剤配合比率と、作製異常サンプルの着色剤配合比率とにおいて、白着色剤及び黒着色剤の着色剤配合比率を固定した際の着色剤毎の配合比率の変化率が、作製異常サンプルの作製異常原因となっていること等を見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、複数の調色サンプルから作製異常サンプルと正常サンプルとを特定した後において、該作製異常サンプルに対し、
下記式(3)により、RREALabnとΔRnor-aveとの各波長における分光反射率の差を示す分光反射率RCAL'abnを求めるステップ(rd1)、
RCAL'abn=RREALabn−ΔRnor-ave (3)
(RREALabn:作製異常サンプルの実測分光反射率、ΔRnor-ave:少なくとも1個の正常サンプルの各シミュレーション誤差ΔRnorの、各波長における分光反射率の相加平均を示す分光反射率)
前記RCAL'abnから計算された三刺激値XYZをターゲットとして計算されたシミュレーション分光反射率RCALqを、正常サンプルの調色に用いられる自己着色剤のみでCCMシミュレーションして算出したものと、該自己着色剤にCCMシステムのデータベース内にある着色剤1種類を加えてCCMシミュレーションして算出したもの複数個とを求めるステップ(rd2)、
前記RCALqと前記RCAL'abnとの、各波長における分光反射率の差の絶対値の測定波長域全体に渡る総和を示すRSDIFqを各RCALqについて求めるステップ(rd3)、
全てのRCALqのうち前記RSDIFqが最小値になるものをRCALq-minとして特定するステップ(rd4)、及び、
該RCALq-min中に含まれる着色剤の種類から前記自己着色剤を除いた残りの着色剤を、前記作製異常サンプルの作製異常原因の着色剤として特定するステップ(rd5)を含む工程を行うことを特徴とするCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、複数の調色サンプルから作製異常サンプルと正常サンプルとを特定した後において、該作製異常サンプルに対し、
下記式(3′)により、TREALabnとΔTnor-aveとの各波長における分光透過率の差を示す分光透過率TCAL'abnを求めるステップ(td1)、
TCAL'abn=TREALabn−ΔTnor-ave (3′)
(TREALabn:作製異常サンプルの実測分光透過率、ΔTnor-ave:少なくとも1個の正常サンプルの各シミュレーション誤差ΔTnorの、各波長における分光透過率の相加平均を示す分光透過率)
前記TCAL'abnから計算された三刺激値XYZをターゲットとして計算されたシミュレーション分光透過率TCALqを、正常サンプルの調色に用いられる自己着色剤のみでCCMシミュレーションして算出したものと、該自己着色剤にCCMシステムのデータベース内にある着色剤1種類を加えてCCMシミュレーションして算出したもの複数個とを求めるステップ(td2)、
前記TCALqと前記TCAL'abnとの、各波長における分光透過率の差の絶対値の測定波長域全体に渡る総和を示すTSDIFqを各TCALqについて求めるステップ(td3)、
全てのTCALqのうち前記TSDIFqが最小値になるものをTCALq-minとして特定するステップ(td4)、及び、
該TCALq-min中に含まれる着色剤の種類から前記自己着色剤を除いた残りの着色剤を、前記作製異常サンプルの作製異常原因の着色剤として特定するステップ(td5)を含む工程を行うことを特徴とするCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、CCMソフト中に組込んで実行することを特徴とする前記CCMによる作製異常サンプル中の作製異常分の特定方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法よれば、作製異常サンプルの作製異常原因が、自己着色剤以外の着色剤が混入されている場合において、高い精度で作製異常着色剤を特定できる。
【0011】
上記作製異常原因着色剤の特定方法は、CCMソフト中に組込んで実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
はじめに、CCMによる調色工程の概要について説明する。CCMの調色工程の概要は、以下のとおりである。なお、本発明において、調色サンプルとは、以下の調色過程で作製されたサンプルを意味し、作製異常サンプルとは調色サンプルのうち以下の調色工程で色差や実測分光反射率等が異常な値を示すもの、正常サンプルとは調色サンプルのうち作製異常サンプルに該当しないものを意味する。
【0013】
(a).まず、ターゲット(色見本)を測色してターゲットの表色値を三刺激値XYZとして求める。
(b).次に、該表色値に基づき、CCMデータベース内に記憶されている着色剤固有の分光反射率又は分光透過率から算出された吸収係数及び散乱係数から、該表色値に合致すると予想される着色剤の配合比率(以下、着色剤の配合比率を「着色剤配合比率」ともいう。)をCCMシミュレーションし、第1回調色サンプル用の着色剤配合比率、該比率から想定される表色値及びシミュレーション分光反射率等を算出する(シミュレーション分光反射率については、以下「RCAL」とも表記する。)。
(c).(b)で算出された着色剤配合比率に基づき第1回調色サンプルを作製し、該サンプルの表色値及び実測分光反射率等を測定する(実測分光反射率については、以下「RREAL」とも表記する。)。
(d). (c) で得たRREALと(b)で得たRCALとの差であるシミュレーション誤差(以下「ΔR」とも表記する。)や、第1回調色サンプルにおける(c)での実測色差と顧客が要求するターゲット(色見本)との合致度(色差)を勘案し、補正調色して第2回調色サンプル用の着色剤配合比率、該比率から想定される表色値及びシミュレーション分光反射率等を算出する。さらに第2回調色サンプルについて、(c)及び(d)の操作を行う。
(e).以下、第3回調色サンプル以後の調色サンプルについて、(b)〜(d)の操作を繰り返して、第n回調色サンプルの表色値をターゲットの表色値に近づけてゆく。(b)〜(d)の操作は調色サンプルとターゲットとの色差が予め製品毎に設定された範囲内になるまで行う。なお、作製異常サンプルが作製される場合には、上記操作を中止することもある。
【0014】
シミュレーション分光反射率RCALは、以下のCCM理論によって求められる。ここで、第n回調色サンプルのCCMシミュレーション分光反射率をRCAL-nと表す。CCM理論は調色対象物の形態によって異なる。調色対象物が半透明物又は不透明物の場合、クベルカ・ムンクの理論が適用される。印刷や染色の場合、クベルカ・ムンク理論の1定数法が適し、塗料やプラスチックの場合、クベルカ・ムンク理論の2定数法が適する。対象物が透明物の場合、ランバートベールの理論が適用される。
【0015】
クベルカ・ムンク理論を応用した方法は数多くあり、ここでは、その代表的な方法を説明する。クベルカ・ムンクは式(11) で示される。
K/S=(1−R)2/2R (11)
【0016】
式(11) を逆展開すると式(12) となる
R=1+(K/S)−((K/S)2+2(K/S))1/2 (12)
(式中、Rは調色対象物の分光反射率を示し、Kは着色剤の吸収係数を示し、Sは散乱係数を示す。)
【0017】
クベルカ・ムンク理論の1定数法の場合、それぞれのカラー(例えば赤インキ、青インキ)を規定量計量し、それぞれの色の着色物の分光反射率を測定し、式(11) から、カラーのK/S関数、つまりFnを事前に登録しておく。Fn は式(13)で示される。
Fn=((K/S)n −(K/S)o )/Cn (13)
(式中、(K/S)nは着色物の分光反射率から式(11) で得られたK/S値を示し、(K/S)oは被着色物(例えば紙など)のK/S値を示し、Cnはカラーの重量%を示し。Fnはカラー単位重量%当たりのカラー自体が持つK/S値を示し。nはカラー名を示す。)
【0018】
複数のカラーを混合し、その混合カラーで着色物を得る場合、式(14) で(K/S)mix 値を算出する。
(K/S)mix =F1C1+ ・・・+FnCn+(K/S)0 (14)
【0019】
調色品は配合が既知であるから、式(14) のCnは既知であり、Fn及び (K/S)0は事前にCCM装置に登録されているから、調色品の(K/S)mix が得られる。(K/S)mix を式(12) のK/Sに代入するとCCMシミュレーション分光反射率RPR-n が得られる。
【0020】
クベルカ・ムンク理論の2定数の場合、混合カラーでは、ダンカンの式(15) が適用される。
(K/S)mix =(K1C1+・・+KnCn+K0)/
(S1C1+・・+SnCn+S0) (15)
(式中、Knは各カラーの吸収係数を示し、Snは散乱係数を示し、Cnは重量%を示し、K0は被着色物(例えば樹脂など)の吸収係数を示し、S0はその散乱係数を示す。)
【0021】
式(15) は、例えば白aなど特定の顔料をリファレンス(参照)とし、その他のカラーはリファレンスに対する相対値として式(16) に展開される。
(K/S)mix =Σ(Kn/Sn)(Sn/ Sa)Cn+・・・+(K0/S0)(S0/Sa) /
(Σ(Sn/ Sa)Cn+・・・+S0/Sa) (16)
(式中、K n/Snは各カラーの分光反射率を測定し、式(11) より求められるK/S 値を示し、K0/S0は被着色物(例えば樹脂など)を測定し、式(11) より求められるK/S 値を示し、Sn/ Saは各カラーの白aに対する相対散乱係数を示し、S0/Saは被着色物の白aに対する相対散乱係数を示す。)これらの値は事前にCCM装置に登録しておく。
【0022】
調色品は配合が既知であるから、式(16) のC nは既知となり、その他は上記の如く、CCM装置に登録されているので調色品の(K/S )mix が得られる。そして、(K/S )mix を式(12) のK/S に代入するとCCMシミュレーション分光反射率RCAL-n が得られる。
【0023】
なお、調色対象物が透明な場合は、上記CCMシミュレーション分光反射率RCAL-nに代えて、ランバートベールの理論式(17)を使用することにより、CCMシミュレーション分光透過率TCAL-nが得られる。
D=−Log T (17)
【0024】
各々のカラーを規定量計量し、そのカラーでの着色物の分光透過率を測定し、式(17) から、各カラーのD関数、つまりDnを事前に登録しておく。カラー単位重量%当たりの、カラー自体が持つD値(Dn)は式(18) で示される。
Dn=(−Log Tn+Log To)/Cn (18)
(式中、Tnは各カラー単体での着色物の分光透過率を示し、Toは被着色物(例えば樹脂など)の分光透過率を示し、nはカラー名を示す。)
【0025】
複数のカラーを混合し、その混合カラーでの着色物のD値は式(19) で算出される。
Dmix =D1C1+ ・・・+DnCn+D0 (19)
【0026】
調色品は配合が既知であるから、式(19) のCnは既知であり、Dnは事前にCCM装置に登録されているから、調色品のDmix が得られる。Dmix を式(17) のDに代入するとCCMシミュレーション分光透過率TCAL-n が得られる。
【0027】
なお、前述のクベルカ−ムンク理論の1定数法、クベルカ−ムンク理論の2定数法及びランバートベール法はCCMシミュレーションの技法であって、CCMシミュレーション分光反射率RCAL-n 及びCCMシミュレーション分光透過率TCAL-nを求める手法の一例である。
【0028】
本発明の方法において、まず、CCMによる作製異常サンプル中の作製異常分の特定方法を実施する。すなわち、CCMによる作製異常サンプル中の作製異常分の特定方法は、複数の調色サンプルから作製異常サンプルと正常サンプルとを特定した後において、該作製異常サンプルに対し行うものである。
【0029】
本発明において、複数の調色サンプルから作製異常サンプルと正常サンプルとを特定する方法としては、特に限定されず、公知の方法や人間の視感で特定する方法等を用いることができる。
【0030】
次に、前記式(1)により、RREALnとRCALnとの各波長における分光反射率の差を示す分光反射率を、調色サンプルnのシミュレーション誤差ΔRnと規定する。
【0031】
なお、本発明において、前記式(1)は測定波長域内の各波長において適用するものとする。すなわち、前記式(1)で表される数値は波長毎に得られる単一の数値であるが、本発明においては、測定波長域内の任意の波長で測定した複数の数値の集合体を表するものとする。例えば、RREALnは波長−分光反射率座標のグラフに表すと、測定波長域内で測定した任意の波長の点数が多いと、折れ線グラフや図1のような曲線等に類似するものとなる。ただし、本発明においては、表色値等の計算に用いられるデータは、前記式(1)で算出される各波長のデータのみが用いられ、グラフに表された曲線や折れ線グラフ等に基づいて計算することは行わない。
【0032】
さらに、下記式(2)により、ΔRabnとΔRnor-aveとの各波長における分光反射率の差を示す分光反射率ΔR'abnを求め、該ΔR'abnを前記作製異常サンプルの作製異常分として特定する。
ΔR'abn=ΔRabn−ΔRnor-ave (2)
(ΔRabn:作製異常サンプルのシミュレーション誤差、ΔRnor-ave:少なくとも1個の正常サンプルの各シミュレーション誤差ΔRnorの、各波長における分光反射率の相加平均を示す分光反射率)
【0033】
ここで、ΔRabn、ΔRnor、ΔRnor-ave等は、前記式(1)で規定されるシミュレーション誤差である。なお、ΔRnor-aveは、少なくとも1個の正常サンプルの各シミュレーション誤差ΔRnorの、各波長における分光反射率の相加平均を示す分光反射率である。このため、ΔRnor-aveは、例えば、正常サンプルがa、b、cの3個あり、ΔRaの波長λ1における値が50%、波長λ2における値が50%であり、ΔRbの波長λ1における値が40%、波長λ2における値が40%であり、ΔRcの波長λ1における値が30%、波長λ2における値が60%であるとすると、ΔRnor-aveは、ΔRa、ΔRb、ΔRcのそれぞれの値そのものでもよく、また、ΔRa、ΔRb、ΔRc全ての相加平均をとれば、波長λ1における値が40%、波長λ2における値が50%となる。
【0034】
また、前記式(2)は前記式(1)と同様に、測定波長域内の各波長において適用するものとする。すなわち、前記式(2)で表される数値は波長毎に得られる単一の数値であるが、本発明においては、測定波長域内の任意の波長で測定した複数の数値の集合体を表するものとする。例えば、ΔRabnは波長−分光反射率座標のグラフに表すと、測定波長域内で測定した任意の波長の点数が多いと、折れ線グラフや図1のような曲線等に類似するものとなる。ただし、本発明においては、表色値等の計算に用いられるデータは、前記式(2)で算出される各波長のデータのみが用いられ、グラフに表された曲線や折れ線グラフ等に基づいて計算することは行わない。
【0035】
本発明では、前記式(2)により、ΔR'abnを求め、該ΔR'abnを前記作製異常サンプルの作製異常分として特定する推定を行う。
【0036】
このように推定する根拠は、以下の通りである。すなわち、CCMにおいて、シミュレーション誤差ΔRnは正常サンプルnorのもの(ΔRnor)であれば略一定の値を採る。このため、ΔRnが異常値を採る調色サンプルn、すなわち作製異常サンプルabnのΔRn(ΔRabn)が異常値を採る理由は、ΔRabnがΔRnorに加えて作製異常分ΔR'abnが加算されているものと推定しうるからである。
【0037】
本発明に係るCCMによる作製異常サンプル中の作製異常分の表示方法は、前記作製異常分ΔR'abnを、波長と分光反射率差とをそれぞれ軸とした座標に表示するものである。このように、前記ΔR'abnを、波長と分光反射率差とをそれぞれ軸とした座標に表示すると、正常サンプルはΔR'abnの絶対値が小さい値となるためΔR'abn値で形成するグラフがΔR'abn=0の近傍に略直線状のものとなるのに対し、作製異常サンプルはΔR'abnがゼロから遠い値を採るためΔR'abn値で形成するグラフがΔR'abn=0の近傍から大きく逸脱し、通常、作製異常原因となっている着色剤に特有の波長域に山部、谷部や平坦部を有する曲線状に存在するため、一見して調色サンプルが正常サンプルか作製異常サンプルかを容易に判断できる。
【0038】
なお、上記CCMによる作製異常サンプル中の作製異常分の特定方法及びCCMによる作製異常サンプル中の作製異常分の表示方法は、CCMソフト中に組込んで実行すると、調色作業中に即座に異常を判断できるため好ましい。
【0039】
なお、本発明において、調色サンプルが透明な場合は、上記分光反射率に代えて、分光透過率を用いることが好ましい。具体的には、本発明に係るCCMによる作製異常サンプル中の作製異常分の特定方法を、複数の調色サンプルから作製異常サンプルと正常サンプルとを特定した後において、該作製異常サンプルに対し、
前記式(1′)により、TREALnとTCALnとの各波長における分光透過率の差を示す分光透過率を、調色サンプルnのシミュレーション誤差ΔTnと規定するとき、
下記式(2′)により、ΔTabnとΔTnor-aveとの各波長における分光透過率の差を示す分光透過率ΔT'abnを求め、該ΔT'abnを前記作製異常サンプルの作製異常分として特定することを特徴とするCCMによる作製異常サンプル中の作製異常分の特定方法とすればよい。
ΔT'abn=ΔTabn−ΔTnor-ave (2′)
(ΔTabn:作製異常サンプルのシミュレーション誤差、ΔTnor-ave:少なくとも1個の正常サンプルの各シミュレーション誤差ΔTnorの、各波長における分光透過率の相加平均を示す分光反射率)
【0040】
該分光透過率を用いる方法は、上記の分光反射率を用いる方法において、分光反射率を分光透過率に代える以外は同様である。
【0041】
本発明に係る第1のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法は、作製異常サンプルの作製異常原因が、自己着色剤の種類は正常サンプルと一致しているが、自己着色剤の配合比率が作業工程上のトラブル等により変化したことにある場合に、高い精度で作製異常着色剤を特定できるものである。
【0042】
該方法は、複数の調色サンプルから作製異常サンプルと正常サンプルとを特定した後において、該作製異常サンプルに対し行うものである。
【0043】
本発明に係る第1のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法において、複数の調色サンプルから作製異常サンプルと正常サンプルとを特定する方法としては、特に限定されず、公知の方法や人間の視感で特定する方法等を用いることができる。
【0044】
次に、前記作製異常サンプルの本来作製しようとした着色剤配合比率RAT(RCALabn)からシミュレーション分光反射率RCALabnを算出するステップ
(ra1)を行う。作製異常サンプルの着色剤配合比率RAT(RCALabn)は、本来、作製しようとした配合であり、CCM工程にて得られた配合でもよいし、視感調色工程で得られた配合でもよい。RAT(RCALabn)を満たすシミュレーション分光反射率は、CCM工程で保有されていればそれを使用し、視感調色サンプルの場合は新たにその配合をキーインしてRCALabnを計算する。
【0045】
次に、前記式(3)により、RREALabnとΔRnor-aveとの各波長における分光反射率の差を示す分光反射率RCAL'abnを求めるステップ(ra2) を行う。
【0046】
なお、前記式(3)は前記式(1)と同様に、測定波長域内の各波長において適用するものとする。すなわち、前記式(3)で表される数値は波長毎に得られる単一の数値であるが、本発明においては、測定波長域内の任意の波長で測定した複数の数値の集合体を表するものとする。例えば、RREALabnは波長−分光反射率座標のグラフに表すと、測定波長域内で測定した任意の波長の点数が多いと、折れ線グラフや図1のような曲線等に類似するものとなる。ただし、本発明においては、表色値等の計算に用いられるデータは、前記式(3)で算出される各波長のデータのみが用いられ、グラフに表された曲線や折れ線グラフ等に基づいて計算することは行わない。
【0047】
本発明に係る第1のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法では、前記式(3)により、分光反射率RCAL'abnを求め、該RCAL'abnに基づいて、ステップ(ra3)以後の操作を行う。
【0048】
このようにステップ(ra3)以後の操作で、着色剤配合比率の異常を求めるに当たり、分光反射率RCAL'abnを基準として用いることができる根拠は、以下の通りである。すなわち、まず、作製異常サンプルabnの実測分光反射率RREALabnは、前記式(1)より下記式(1a)として表される。
RREALabn=RCALabn+ΔRabn (1a)
【0049】
該ΔRabnは、前記式(2)より下記式(2a)として表されるように、ΔRnor-aveに作製異常分ΔR'abnが加算されたものである。
ΔRabn=ΔR'abn+ΔRnor-ave (2a)
【0050】
そこで、作製異常分ΔR'abnを顕在化するべく、式(1a)のΔRabnに(2a)のΔRabnを代入して、整理すると下記式(3a)のように表される。
RCALabn+ΔR'abn=RREALabn−ΔRnor-ave (3a)
【0051】
すなわち、式(3)のRCAL'abnは、RREALabnから正常サンプルにも共通するシミュレーション誤差ΔRnor-aveを除去することで作製異常分ΔR'abnを顕在化させるものである。このように該作製異常分ΔR'abnが顕在化させることにより、以後のステップで作製異常原因着色剤を特定することが可能になる。
【0052】
次に、該RCAL'abnを略満たし、且つ、着色剤配合比率中の白着色剤の配合比率が前記RAT(RCALabn)の白着色剤の配合比率と等しくなるように算出した白固定時着色剤配合比率RATwh(RCAL'abn)を求めるステップ(ra3)を行う。具体的には、例えば、RAT(RCALabn)において着色剤が白着色剤wh、黒着色剤bl、赤着色剤re及び貴着色剤yeの4種類であり、且つ、着色剤配合比率wh:bl:re:yeが10:10:10:10だとすると、RATwh(RCAL'abn)では、wh:bl:re:yeを10:11:9:20のように白着色剤whの着色剤配合比率を10のまま固定して着色剤配合比率を求めるような操作をいう。
【0053】
また、前記RCAL'abnを略満たし、且つ、着色剤配合比率中の黒着色剤の配合比率が前記RAT(RCALabn)の黒着色剤の配合比率と等しくなるように算出した黒固定着色剤配合比率RATbl(RCAL'abn)を求めるステップ(ra4) を行う。該ステップ(ra4)の内容は着色剤配合比率を固定する着色剤を白着色剤から黒着色剤に変えた以外はステップ(ra3)と同様である。なお、ステップ(ra3)とステップ(ra4)とは、いずれを先に行ってもよく、また、同時に行ってもよい。
【0054】
次に、前記RAT(RCALabn)に対する前記RATwh(RCAL'abn)の着色剤配合比率の変化率を着色剤毎に算出して着色剤xの白固定時配合比変化率ΔCOMxRATwh(RCAL'abn)を求めるステップ(ra5)を行う。具体的には、上記の例でいうと、例えば、RAT(RCALabn)のwh:bl:re:yeが10:10:10:10で、RATwh(RCAL'abn)のwh:bl:re:yeが10:11:9:12である場合、着色剤whの白固定時配合比変化率ΔCOMwhRATwh(RCAL'abn)は0%、着色剤blの白固定時配合比変化率ΔCOMblRATwh(RCAL'abn)は10%、着色剤reの白固定時配合比変化率ΔCOMreRATwh(RCAL'abn)は−10%、着色剤yeの白固定時配合比変化率ΔCOMyeRATwh(RCAL'abn)は100%と求められるような操作をいう。
【0055】
次に、該ΔCOMxRATwh(RCAL'abn)が他の着色剤に比べて異常値を示す着色剤を白固定時異常着色剤として特定するステップ(ra6)を行う。具体的には、例えば、COMwhRATwh(RCAL'abn)が0%、ΔCOMblRATwh(RCAL'abn)が10%、着色剤reの白固定時配合比変化率ΔCOMreRATwh(RCAL'abn)が−10%、ΔCOMyeRATwh(RCAL'abn)が100%であると、ΔCOMyeRATwh(RCAL'abn)の絶対値が他に比べて大きく異常値を示すため、着色剤yeを白固定時異常着色剤として特定するような操作や、COMwhRATwh(RCAL'abn)が100%、ΔCOMblRATwh(RCAL'abn)が110%、着色剤reの白固定時配合比変化率ΔCOMreRATwh(RCAL'abn)が10%、ΔCOMyeRATwh(RCAL'abn)が90%であると、ΔCOMreRATwh(RCAL'abn)の絶対値が他に比べて小さく異常値を示すため、着色剤reを白固定時異常着色剤として特定するような操作をいう。なお、ΔCOMxRATwh(RCAL'abn)の異常性は絶対値の大小で判断するため、ΔCOMxRATwh(RCAL'abn)の数値が負の値であっても、同様に判断する。
【0056】
また、前記RAT(RCALabn)に対する前記RATbl(RCAL'abn)の着色剤配合比率の変化率を着色剤毎に算出して着色剤xの黒固定時配合比変化率ΔCOMxRATbl(RCAL'abn)を求めるステップ(ra7)を行う。該ステップ(ra7)の内容は着色剤配合比率を固定する着色剤を白着色剤から黒着色剤に変えた以外はステップ(ra5)と同様である。なお、ステップ(ra5)とステップ(ra7)とは、いずれを先に行ってもよく、また、同時に行ってもよい。
【0057】
次に、該ΔCOMxRATbl(RCAL'abn)が他の着色剤に比べて異常値を示す着色剤を黒固定時異常着色剤として特定するステップ(ra8)を行う。該ステップ(ra8)の内容は着色剤配合比率を固定する着色剤を白着色剤から黒着色剤に変えた以外はステップ(ra6)と同様である。なお、ステップ(ra6)とステップ(ra8)とは、いずれを先に行ってもよく、また、同時に行ってもよい。
【0058】
最後に、前記白固定時異常着色剤又は前記黒固定時異常着色剤のいずれか又は両方に該当する着色剤を、前記作製異常サンプルの作製異常原因の着色剤として特定するステップ(ra9)を行う。具体的には、上記の例でいうと、例えば白固定時異常着色剤及び黒固定時異常着色剤が共に着色剤yeである場合や、白固定時異常着色剤又は黒固定時異常着色剤のいずれかに該当する着色剤が着色剤yeである場合に、着色剤yeを作製異常サンプルの作製異常原因の着色剤として特定するような操作をいう。なお、白固定時異常着色剤又は黒固定時異常着色剤が、黄着色剤や赤着色剤のような有彩色である場合には白固定時異常着色剤又は黒固定時異常着色剤のいずれか一方を特定するだけで作製異常原因の着色剤として特定することが可能であるが、白着色剤や黒着色剤のような無彩色である場合には、白固定時異常着色剤及び黒固定時異常着色剤の両方に共通するものを作製異常原因の着色剤として特定する。
【0059】
上記本発明に係る第1のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法は、作製異常サンプルの作製異常原因が、自己着色剤の種類は正常サンプルと一致しているが、自己着色剤の配合比率が作業工程上のトラブル等により変化したことにある場合に、高い精度で作製異常着色剤を特定できるものである。なお、本明細書において、自己着色剤とは正常サンプルに含まれる着色剤をいう。
【0060】
なお、上記CCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法は、CCMソフト中に組込んで実行すると、調色作業中に即座に異常を判断できるため好ましい。
【0061】
なお、本発明において、調色サンプルが透明な場合は、上記分光反射率に代えて、分光透過率を用いることが好ましい。具体的には、本発明に係る第1のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法を、複数の調色サンプルから作製異常サンプルと正常サンプルとを特定した後において、該作製異常サンプルに対し、
前記作製異常サンプルの本来作製しようとした着色剤配合比率RAT(TCALabn)からシミュレーション分光反射率TCALabnを算出するステップ (ta1)、
前記式(3′)により、TREALabnとΔTnor-aveとの各波長における分光透過率の差を示す分光透過率TCAL'abnを求めるステップ(ta2)、
該TCAL'abnを略満たし、且つ、着色剤配合比率中の白着色剤の配合比率が前記RAT(TCALabn)の白着色剤の配合比率と等しくなるように算出した白固定時着色剤配合比率RATwh(TCAL'abn)を求めるステップ(ta3)、
前記TCAL'abnを略満たし、且つ、着色剤配合比率中の黒着色剤の配合比率が前記RAT(TCALabn)の黒着色剤の配合比率と等しくなるように算出した黒固定着色剤配合比率RATbl(TCAL'abn)を求めるステップ(ta4)、
前記RAT(TCALabn)に対する前記RATwh(TCAL'abn)の着色剤配合比率の変化率を着色剤毎に算出して着色剤xの白固定時配合比変化率ΔCOMxRATwh(TCAL'abn)を求めるステップ(ta5)、
該ΔCOMxRATwh(TCAL'abn)が他の着色剤に比べて異常値を示す着色剤を白固定時異常着色剤として特定するステップ(ta6)、
前記RAT(TCALabn)に対する前記RATbl(TCAL'abn)の着色剤配合比率の変化率を着色剤毎に算出して着色剤xの黒固定時配合比変化率ΔCOMxRATbl(TCAL'abn)を求めるステップ(ta7)、
該ΔCOMxRATbl(TCAL'abn)が他の着色剤に比べて異常値を示す着色剤を黒固定時異常着色剤として特定するステップ(ta8)、及び、
前記白固定時異常着色剤又は前記黒固定時異常着色剤のいずれか又は両方に該当する着色剤を、前記作製異常サンプルの作製異常原因の着色剤として特定するステップ(ta9)を含む工程を行うことを特徴とするCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法とすればよい。該方法を本発明に係る第2のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法という。
【0062】
本発明に係る第2のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法は、上記本発明に係る第1のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法において、分光反射率を分光透過率に代える以外は同様である。
【0063】
本発明に係る第3のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法は、作製異常サンプルの作製異常原因が、特に自己着色剤の種類は正常サンプルと一致しているが、自己着色剤自体の発色安定性が着色剤の凝集等により損なわれている場合において、高い精度で作製異常着色剤を特定できるものである。
【0064】
該方法は、複数の調色サンプルに対し行うものである。
【0065】
本発明に係る第3のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法において、複数の調色サンプルから検定したいサンプルを特定する方法としては、特に限定されず、公知の方法や人間の視感で特定する方法等を用いることができる。
【0066】
次に、前記式(1)により、RREALnとRCALnとの各波長における分光反射率の差を示す分光反射率を、調色サンプルnのシミュレーション誤差ΔRnとして求めるステップ(rb1)を行う。
【0067】
次に、前記式(4)により、調色サンプル中の任意の2個の調色サンプルiと調色サンプルjとの各波長における分光反射率の差を示す分光反射率ΔΔRi-jを、全ての調色サンプルの組み合わせについて求めるステップ(rb2) を行い、
【0068】
次に、前記ΔΔRi-jのうち、大きいものから順に少なくとも1個選択したΔΔRi-jをΔΔRi-j.larとして求めるステップ(rb3)を行う。
【0069】
前記ステップ(rb2)は、作製異常サンプルを含めた全ての調色サンプル間でシミュレーション誤差同士を差し引くことにより、作製異常サンプルがシミュレーション誤差中に含む作製異常分を顕在化させる操作である。そして、前記ステップ(rb3)は、顕在化した作製異常分のうち、特に顕在化した作製異常分を表すデータを抽出する操作である。
【0070】
前記ステップ(rb2)及び(rb3)を行う理由は以下のとおりである。まず、着色剤のうち1種でも発色不安定なものが含まれていると、調色が適切に行われないため、通常は調色サンプルの略全部が作製異常サンプルabnとなる。これら作製異常サンプルabnは、前記式(2)を変形した下記式(2b)によりシミュレーション誤差ΔRabn中に作製異常分ΔR'abnを含むものとなる。
ΔRabn=ΔRnor-ave+ΔR'abn (2b)
【0071】
しかし、作製異常サンプルが数多く存在すると、通常ΔR'abnが作製異常サンプル毎に異なった値を有するため、式(2b)においてΔRnor-aveが一定とみなし得る場合でないと、作製異常分ΔR'abnを特定することができない。しかし、上記のように着色剤のうち1種でも発色不安定なものがあると、調色サンプルの略全部が作製異常サンプルabnとなり、正常サンプルの絶対数が作製異常サンプルよりもはるかに少ないため、前記式(2)におけるΔRnor-aveを信頼し得る値として得ることができない。このため、前記式(2)により作製異常分ΔR'abnを特定することが実質的にできないため、前記式(2)以外の方法で作製異常分を特定する必要がある。
【0072】
この点について、具体例として、調色サンプルa、b、cの3個が存在する場合を挙げて説明する。それぞれの作製異常サンプルのシミュレーション誤差ΔRabn-a、ΔRabn-b、ΔRabn-cを、それぞれの作製異常サンプルの作製異常分ΔR'abn-a、ΔR'abn-b、ΔR'abn-cを含めて表すと次のようになる。
ΔRabn-a=ΔRnor-ave+ΔR'abn-a (2b-a)
ΔRabn-b=ΔRnor-ave+ΔR'abn-b (2b-b)
ΔRabn-c=ΔRnor-ave+ΔR'abn-c (2b-c)
【0073】
ここでΔR'abn-a、ΔR'abn-b等の作製異常分とは、例えば、調色サンプルaの発色異常原因着色剤が赤着色剤reであれば、赤着色剤reに特有の波長域に現れる作製異常分がΔR'abn-aであり、調色サンプルbの発色異常原因着色剤が黄着色剤yeであれば、黄着色剤yeに特有の波長域に現れる作製異常分がΔR'abn-bであるといったものである。
【0074】
これら(2b-a)〜(2b-c)の式同士で左辺毎、右辺毎に差を採ると、下記式(2c)のようになる。
ΔRabn-a−ΔRabn-b=ΔR'abn-a−ΔR'abn-b
ΔRabn-b−ΔRabn-c=ΔR'abn-b−ΔR'abn-c
ΔRabn-c−ΔRabn-a=ΔR'abn-c−ΔR'abn-a (2c)
ΔRabn-b−ΔRabn-a=ΔR'abn-b−ΔR'abn-a
ΔRabn-c−ΔRabn-b=ΔR'abn-c−ΔR'abn-b
ΔRabn-a−ΔRabn-c=ΔR'abn-a−ΔR'abn-c
【0075】
このように2個の調色サンプルのシミュレーション誤差ΔRabn間で差を採ると、それぞれの式においてΔRnor-aveが相殺され、上記ΔR'abn-a−ΔR'abn-b等のような2個の調色サンプルの作製異常分ΔR'abn同士の差のみが算出される。そして、この作製異常分ΔR'abn同士の差、すなわちシミュレーション誤差ΔRabn同士の差は、2個の調色サンプル間における着色剤の発色異常による作製異常分の2個の分の差を示すものであるから、シミュレーション誤差ΔRabn同士の差の値が大きい場合には、作製異常分が顕在化したものと推定できる。
【0076】
例えば、調色サンプルaの発色異常原因着色剤が赤着色剤reでありその原因が発色過多によるものであり、且つ、調色サンプルbの発色異常原因着色剤が赤着色剤reでありその原因が発色不十分によるものであれば、作製異常分の現れる波長域が同じであるため、赤着色剤re作製異常分の2個分が加重され、赤着色剤reの作製異常分が顕在化する。
【0077】
また、調色サンプルaの発色異常原因着色剤が赤着色剤reで、調色サンプルbの発色異常原因着色剤が黄着色剤yeであれば、作製異常分の現れる波長域が異なるため、ΔRabn-a−ΔRabn-bには、赤着色剤reの作製異常分及び黄着色剤yeの作製異常分が加重され、赤着色剤re及び黄着色剤yeの作製異常分が顕在化する。この様子は、波長−分光反射率のグラフに表すと、赤着色剤reの作製異常分の特定波長域に生ずる分光反射率曲線の山と黄着色剤yeの作製異常分の特定波長域に生ずる分光反射率曲線の山とが、異なる特定波長域に離れて又は一部重なって生じるようなものとなる。
【0078】
このように、任意の調色サンプルiと調色サンプルjとで、前記式(4)で表される分光反射率|ΔΔRi-j|を算出し、さらに|ΔΔRi-j|が大きい値を採れば、作製異常分を顕在化させることができるため、さらに下記操作を行えば作製異常原因着色剤を特定できるものと推定できる。
【0079】
次に、任意に選択される少なくとも1個の調色サンプルのシミュレーション分光反射率の各波長における分光反射率の相加平均を示す分光反射率RCALn-aveを求めるステップ(rb4)を行う。例えば、調色サンプルがa、b、cの3個あり、RCALaの波長λ1における値が50%、波長λ2における値が50%であり、RCALbの波長λ1における値が40%、波長λ2における値が40%であり、RCALcの波長λ1における値が30%、波長λ2における値が60%であるとすると、RCALn-aveは、RCALa、RCALb、RCALcのそれぞれの値そのものでもよく、また、RCALa、RCALb、RCALc全ての相加平均をとれば、波長λ1における値が40%、波長λ2における値が50%となる。RCALn-aveは、以下のステップにおいて、ΔΔRi-j.larを加えた値のベースとなるにすぎず、すなわち、RCALn-aveは現実的な調色サンプルの分光反射率等のデータを持つものであればよいため、少なくとも1個の調色サンプルについての相加平均値をとればよい。
【0080】
次に、前記式(5)により、前記RCALn-aveと前記ΔΔRi-j. larとの各波長における分光反射率の和を示す分光反射率RCAL*+n-aveを求めるステップ(rb5)を行う。
【0081】
該ステップ(rb5)は、シミュレーション誤差の差分ΔΔRi-j.larを調色サンプルとして一応現実的なL*a*b*を有するRCALn-aveに加えて作製異常分が加重されたRCAL*+n-aveを得、該RCAL*+n-aveでCCMにて着色剤配合比率を算出することにより、作製異常分が加重された着色剤配合比率を得るものである。
【0082】
次に、前記RCALn-aveを満たす着色剤配合比率RAT(RCALn-ave)を求めるステップ(rb6)を行う。該ステップ(rb6)は、少なくとも1個の正常サンプルの着色剤配合比率の平均からシミュレーション分光反射率RCALn-aveを算出するステップである。
【0083】
次に、前記RCAL*+n-aveを略満たし、且つ、着色剤配合比率中の白着色剤の配合比率が前記RAT(RCALn-ave)の白着色剤の配合比率と等しくなるように算出した白固定時着色剤配合比率RATwh(RCAL*+n-ave)を求めるステップ(rb7)を行う。このステップにおける操作は、前記ステップ(ra3)と同様である。
【0084】
また、前記RCAL*+n-aveを略満たし、且つ、着色剤配合比率中の黒着色剤の配合比率が前記RAT(RCALn-ave)の黒着色剤の配合比率と等しくなるように算出した黒固定時着色剤配合比率RATbl(RCAL*+n-ave)を求めるステップ(rb8) を行う。該ステップ(rb8)の内容は着色剤配合比率を固定する着色剤を白着色剤から黒着色剤に変えた以外はステップ(rb7)と同様である。なお、ステップ(rb7)とステップ(rb8)とは、いずれを先に行ってもよく、また、同時に行ってもよい。
【0085】
次に、前記RAT(RCALn-ave)に対する前記RATwh(RCAL*+n-ave)の着色剤配合比率の変化率を着色剤毎に算出して着色剤xの白固定時配合比変化率ΔCOMxRATwh(RCAL*+n-ave)を求めるステップ(rb9) を行う。このステップにおける操作は、前記ステップ(ra5)と同様である。
【0086】
次に、該ΔCOMxRATwh(RCAL*+n-ave)が他の着色剤に比べて異常値を示す着色剤を白固定時異常着色剤として特定するステップ(rb10) を行う。このステップにおける操作は、前記ステップ(ra6)と同様である。
前記RAT(RCALn-ave)に対する前記RATbl(RCAL*+n-ave)の着色剤配合比率の変化率を着色剤毎に算出して着色剤xの黒固定時配合比変化率ΔCOMxRATbl(RCAL*+n-ave)を求めるステップ(rb11)を行う。このステップにおける操作は、前記ステップ(ra7)と同様である。
【0087】
次に、該ΔCOMxRATbl(RCAL*+n-ave)が他の着色剤に比べて異常値を示す着色剤を黒固定時異常着色剤として特定するステップ(rb12) を行う。このステップにおける操作は、前記ステップ(ra8)と同様である。
【0088】
最後に、前記白固定時異常着色剤又は前記黒固定時異常着色剤のいずれか又は両方に該当する着色剤を、作製異常サンプルの作製異常原因の着色剤として特定するステップ(rb13) を行う。このステップにおける操作は、前記ステップ(ra9)と同様である。
【0089】
上記本発明に係る第3のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法は、作製異常サンプルの作製異常原因が、自己着色剤の種類は正常サンプルと一致しているが、自己着色剤自体の発色安定性が着色剤の凝集等により損なわれている場合に、高い精度で作製異常着色剤を特定できるものである。なお、本発明に係る第3のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法は、このような場合にのみ効果を有するものではなく、作製異常サンプルの作製異常原因が、自己着色剤の種類は正常サンプルと一致しているが、自己着色剤の配合比率が作業工程上のトラブル等により変化したことにある場合、及び、作製異常サンプルの作製異常原因が、特に自己着色剤以外の着色剤が混入されている場合においても同様の効果を奏するものである。
【0090】
なお、上記CCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法は、CCMソフト中に組込んで実行すると、調色作業中に即座に異常を判断できるため好ましい。
【0091】
なお、本発明において、調色サンプルが透明な場合は、上記分光反射率に代えて、分光透過率を用いることが好ましい。具体的には、本発明に係る第3のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法を、複数の調色サンプルに対し、
前記式(1′)により、TREALnとTCALnとの各波長における分光透過率の差を示す分光透過率を、調色サンプルnのシミュレーション誤差ΔTnとして求めるステップ(tb1)、
前記式(4′)により、調色サンプル中の任意の2個の調色サンプルiと調色サンプルjとの各波長における分光透過率の差を示す分光透過率ΔΔTi-jを、全ての調色サンプルの組み合わせについて求めるステップ(tb2)、
前記ΔΔTi-jのうち、大きいものから順に少なくとも1個選択したΔΔTi-jをΔΔTi-j.larとして求めるステップ(tb3)、
任意に選択される少なくとも1個の調色サンプルのシミュレーション分光透過率の各波長における分光透過率の相加平均を示す分光透過率TCALn-aveを求めるステップ(tb4)、
前記式(5′)により、前記TCALn-aveと前記ΔΔTi-j. larとの各波長における分光透過率の和を示す分光透過率TCAL*+n-aveを求めるステップ(tb5)、
前記TCALn-aveを満たす着色剤配合比率RAT(TCALn-ave)を求めるステップ(tb6)、
前記TCAL*+n-aveを略満たし、且つ、着色剤配合比率中の白着色剤の配合比率が前記RAT(TCALn-ave)の白着色剤の配合比率と等しくなるように算出した白固定時着色剤配合比率RATwh(TCAL*+n-ave)を求めるステップ(tb7)、
前記TCAL*+n-aveを略満たし、且つ、着色剤配合比率中の黒着色剤の配合比率が前記RAT(TCALn-ave)の黒着色剤の配合比率と等しくなるように算出した黒固定時着色剤配合比率RATbl(TCAL*+n-ave)を求めるステップ(tb8)、
前記RAT(TCALn-ave)に対する前記RATwh(TCAL*+n-ave)の着色剤配合比率の変化率を着色剤毎に算出して着色剤xの白固定時配合比変化率ΔCOMxRATwh(TCAL*+n-ave)を求めるステップ(tb9)、
該ΔCOMxRATwh(TCAL*+n-ave)が他の着色剤に比べて異常値を示す着色剤を白固定時異常着色剤として特定するステップ(tb10)、
前記RAT(TCALn-ave)に対する前記RATbl(TCAL*+n-ave)の着色剤配合比率の変化率を着色剤毎に算出して着色剤xの黒固定時配合比変化率ΔCOMxRATbl(TCAL*+n-ave)を求めるステップ(tb11)、
該ΔCOMxRATbl(TCAL*+n-ave)が他の着色剤に比べて異常値を示す着色剤を黒固定時異常着色剤として特定するステップ(tb12)、及び、
前記白固定時異常着色剤又は前記黒固定時異常着色剤のいずれか又は両方に該当する着色剤を、作製異常サンプルの作製異常原因の着色剤として特定するステップ(tb13)を含む工程を行うことを特徴とするCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法とすればよい。該方法を本発明に係る第4のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法という。
【0092】
本発明に係る第4のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法は、上記本発明に係る第3のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法において、分光反射率を分光透過率に代える以外は同様である。
【0093】
本発明に係る第5のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法は、作製異常サンプルの作製異常原因が、自己着色剤の種類は正常サンプルと一致しているが、自己着色剤自体の発色安定性が着色剤の凝集等により損なわれている場合において、高い精度で作製異常着色剤を特定できるものである。すなわち、本発明に係る第5のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法は、本発明に係る第3のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法と同様の場合において、高い精度で作製異常着色剤を特定できるものである。
【0094】
本発明に係る第5のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法は、ステップ(rc5)において、本発明に係る第3のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法のステップ(rb5)で前記式(5)を用いてRCAL*+n-aveを得る代わりに、前記式(6)を用いてRCAL*-n-aveを得る以外は、同様の操作を行うものであり、また、ステップ(rc6)以後のステップにおいて、本発明に係る第3のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法のステップ(rb6) 以後のステップで用いるRCAL*+n-aveに代えて、RCAL*-n-aveを用いる以外は、同様のステップを有するものである。
【0095】
該方法は、複数の調色サンプルに対し行うものである。
【0096】
本発明に係る第5のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法において、複数の調色サンプルから検定したいサンプルを特定する方法としては、特に限定されず、公知の方法や人間の視感で特定する方法等を用いることができる。
【0097】
次に、前記式(1)により、RREALnとRCALnとの各波長における分光反射率の差を示す分光反射率を、調色サンプルnのシミュレーション誤差ΔRnとして求めるステップ(rc1) を行う。該ステップ(rc1)は、前記ステップ(rb1)と全く同じ操作である。
【0098】
次に、前記式(4)により、調色サンプル中の任意の2個の調色サンプルiと調色サンプルjとの各波長における分光反射率の差を示す分光反射率ΔΔRi-jを、全ての調色サンプルの組み合わせについて求めるステップ(rc2) を行い、
【0099】
次に、前記ΔΔRi-jのうち、大きいものから順に少なくとも1個選択したΔΔRi-jをΔΔRi-j.larとして求めるステップ(rc3) を行う。ステップ(rc2)は、前記ステップ(rb2)と全く同じ操作であり、該ステップ(rc3)は、前記ステップ(rb3)と全く同じ操作である。
【0100】
次に、任意に選択される少なくとも1個の調色サンプルのシミュレーション分光反射率の各波長における分光反射率の相加平均を示す分光反射率RCALn-aveを求めるステップ(rc4) を行う。該ステップ(rc4)は、前記ステップ(rb4)と全く同じ操作である。
【0101】
次に、前記式(6)により、前記RCALn-aveと前記ΔΔRi-j. larとの各波長における分光反射率の差を示す分光反射率RCAL*-n-aveを求めるステップ(rc5) を行う。
該ステップ(rc5)は、前記ステップ(rb5) において、前記式(5)を用いてRCAL*+n-aveを得る代わりに、ステップ(rc5)において前記式(6)を用いてRCAL*-n-aveを得る以外は、実質的に同様の操作を行うものである。
【0102】
該ステップ(rc5)は、シミュレーション誤差の差分ΔΔRi-j.larを調色サンプルとして一応現実的なL*a*b*を有するRCALn-aveから減じて作製異常分がマイナス方向に加重されたRCAL*-n-aveを得、該RCAL*-n-aveでCCMシミュレーションすることにより、作製異常分がマイナス方向に加重された分光反射率等のデータを得るものである。このようにΔΔRi-j.larをRCALn-aveから減じる理由は、前記ステップ(rb5)で述べたのと同様であり、非現実的なL*a*b*を有するΔΔRi-j.larの値のみでCCMシミュレーションすると、CCMシミュレーションの結果が現実的な調色サンプルの分光反射率等のデータから大きく逸脱してしまうからである。
【0103】
次に、前記RCALn-aveを満たす着色剤配合比率RAT(RCALn-ave)を求めるステップ(rc6) を行う。該ステップ(rc6)は、前記ステップ(rb6)と全く同じ操作である。
【0104】
次に、前記RCAL*-n-aveを略満たし、且つ、着色剤配合比率中の白着色剤の配合比率が前記RAT(RCALn-ave)の白着色剤の配合比率と等しくなるように算出した白固定時着色剤配合比率RATwh(RCAL*-n-ave)を求めるステップ(rc7) を行う。該ステップ(rc7)は、RCAL*+n-aveに代えてRCAL*-n-aveを用いる以外は前記ステップ(rb7)と同様である。
【0105】
また、前記RCAL*-n-aveを略満たし、且つ、着色剤配合比率中の黒着色剤の配合比率が前記RAT(RCALn-ave)の黒着色剤の配合比率と等しくなるように算出した黒固定時着色剤配合比率RATbl(RCAL*-n-ave)を求めるステップ(rc8) を行う。該ステップ(rc8)は、RCAL*+n-aveに代えてRCAL*-n-aveを用いる以外は前記ステップ(rb8)と同様である。なお、ステップ(rc7)とステップ(rc8)とは、いずれを先に行ってもよく、また、同時に行ってもよい。
【0106】
次に、前記RAT(RCALn-ave)に対する前記RATwh(RCAL*-n-ave)の着色剤配合比率の変化率を着色剤毎に算出して着色剤xの白固定時配合比変化率ΔCOMxRATwh(RCAL*-n-ave)を求めるステップ(rc9) を行う。該ステップ(rc9)は、RATwh(RCAL*+n-ave)に代えてRATwh(RCAL*-n-ave)を用いる以外は前記ステップ(rb9)と同様である。
【0107】
該ΔCOMxRATwh(RCAL*-n-ave)が他の着色剤に比べて異常値を示す着色剤を白固定時異常着色剤として特定するステップ(rc10) を行う。該ステップ(rc10)は、ΔCOMxRATwh(RCAL*+n-ave)に代えてΔCOMxRATwh(RCAL*-n-ave)を用いる以外は前記ステップ(rb10)と同様である。
【0108】
前記RAT(RCALn-ave)に対する前記RATbl(RCAL*-n-ave)の着色剤配合比率の変化率を着色剤毎に算出して着色剤xの黒固定時配合比変化率ΔCOMxRATbl(RCAL*-n-ave)を求めるステップ(rc11) を行う。該ステップ(rc11)は、ΔCOMxRATbl(RCAL*+n-ave)に代えてΔCOMxRATbl(RCAL*-n-ave)を用いる以外は前記ステップ(rb11)と同様である。
【0109】
次に、該ΔCOMxRATbl(RCAL*-n-ave)が他の着色剤に比べて異常値を示す着色剤を黒固定時異常着色剤として特定するステップ(rc12) を行う。該ステップ(rc12)は、ΔCOMxRATbl(RCAL*+n-ave)に代えてΔCOMxRATbl(RCAL*-n-ave)を用いる以外は前記ステップ(rb12)と同様である。
【0110】
最後に、前記白固定時異常着色剤又は前記黒固定時異常着色剤のいずれか又は両方に該当する着色剤を、作製異常サンプルの作製異常原因の着色剤として特定するステップ(rc13) を行う。
【0111】
上記本発明に係る第5のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法は、作製異常サンプルの作製異常原因が、自己着色剤の種類は正常サンプルと一致しているが、自己着色剤自体の発色安定性が着色剤の凝集等により損なわれている場合に、高い精度で作製異常着色剤を特定できるものである。なお、本発明に係る第5のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法は、このような場合にのみ効果を有するものではなく、作製異常サンプルの作製異常原因が、自己着色剤の種類は正常サンプルと一致しているが、自己着色剤の配合比率が作業工程上のトラブル等により変化したことにある場合、及び、作製異常サンプルの作製異常原因が、特に自己着色剤以外の着色剤が混入されている場合においても同様の効果を奏するものである。
【0112】
なお、上記CCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法は、CCMソフト中に組込んで実行すると、調色作業中に即座に異常を判断できるため好ましい。
【0113】
なお、本発明において、調色サンプルが透明な場合は、上記分光反射率に代えて、分光透過率を用いることが好ましい。具体的には、本発明に係る第5のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法を、複数の調色サンプルに対し、
前記式(1′)により、TREALnとTCALnとの各波長における分光透過率の差を示す分光透過率を、調色サンプルnのシミュレーション誤差ΔTnとして求めるステップ(tc1)、
前記式(4′)により、調色サンプル中の任意の2個の調色サンプルiと調色サンプルjとの各波長における分光透過率の差を示す分光透過率ΔΔTi-jを、全ての調色サンプルの組み合わせについて求めるステップ(tc2)、
前記ΔΔTi-jのうち、大きいものから順に少なくとも1個選択したΔΔTi-jをΔΔTi-j.larとして求めるステップ(tc3)、
任意に選択される少なくとも1個の調色サンプルのシミュレーション分光透過率の各波長における分光透過率の相加平均を示す分光透過率TCALn-aveを求めるステップ(tc4)、
前記式(6′)により、前記TCALn-aveと前記ΔΔTi-j. larとの各波長における分光透過率の差を示す分光透過率TCAL*-n-aveを求めるステップ(tc5)、
前記TCALn-aveを満たす着色剤配合比率RAT(TCALn-ave)を求めるステップ(tc6)、
前記TCAL*-n-aveを略満たし、且つ、着色剤配合比率中の白着色剤の配合比率が前記RAT(TCALn-ave)の白着色剤の配合比率と等しくなるように算出した白固定時着色剤配合比率RATwh(TCAL*-n-ave)を求めるステップ(tc7)、
前記TCAL*-n-aveを略満たし、且つ、着色剤配合比率中の黒着色剤の配合比率が前記RAT(TCALn-ave)の黒着色剤の配合比率と等しくなるように算出した黒固定時着色剤配合比率RATbl(TCAL*-n-ave)を求めるステップ(tc8)、
前記RAT(TCALn-ave)に対する前記RATwh(TCAL*-n-ave)の着色剤配合比率の変化率を着色剤毎に算出して着色剤xの白固定時配合比変化率ΔCOMxRATwh(TCAL*-n-ave)を求めるステップ(tc9)、
該ΔCOMxRATwh(TCAL*-n-ave)が他の着色剤に比べて異常値を示す着色剤を白固定時異常着色剤として特定するステップ(tc10)、
前記RAT(TCALn-ave)に対する前記RATbl(TCAL*-n-ave)の着色剤配合比率の変化率を着色剤毎に算出して着色剤xの黒固定時配合比変化率ΔCOMxRATbl(TCAL*-n-ave)を求めるステップ(tc11)、
該ΔCOMxRATbl(TCAL*-n-ave)が他の着色剤に比べて異常値を示す着色剤を黒固定時異常着色剤として特定するステップ(tc12)、及び、
前記白固定時異常着色剤又は前記黒固定時異常着色剤のいずれか又は両方に該当する着色剤を、作製異常サンプルの作製異常原因の着色剤として特定するステップ(tc13)を含む工程を行うことを特徴とするCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法とすればよい。該方法を本発明に係る第6のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法という。
【0114】
本発明に係る第6のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法は、上記本発明に係る第5のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法において、分光反射率を分光透過率に代える以外は同様である。
【0115】
本発明に係る第7のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法は、作製異常サンプルの作製異常原因が、特に自己着色剤以外の着色剤が混入されている場合において、高い精度で作製異常着色剤を特定できるものである。
【0116】
該方法は、複数の調色サンプルから作製異常サンプルと正常サンプルとを特定した後において、該作製異常サンプルに対し行うものである。
【0117】
本発明に係る第7のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法において、複数の調色サンプルから作製異常サンプルと正常サンプルとを特定する方法としては、特に限定されず、公知の方法や人間の視感で特定する方法等を用いることができる。
【0118】
次に、前記式(3)により、RREALabnとΔRnor-aveとの各波長における分光反射率の差を示す分光反射率RCAL'abnを求めるステップ(rd1)を行う。
【0119】
次に、前記RCAL'abnから計算された三刺激値XYZをターゲットとして計算されたシミュレーション分光反射率RCALqを、正常サンプルの調色に用いられる自己着色剤のみでCCMシミュレーションして算出したものと、該自己着色剤にCCMシステムのデータベース内にある着色剤1種類を加えてCCMシミュレーションして算出したもの複数個とを求めるステップ(rd2) を行う。
【0120】
次に、前記RCALqと前記RCAL'abnとの、各波長における分光反射率の差の絶対値の測定波長域全体に渡る総和を示すRSDIFqを各RCALqについて求めるステップ(rd3) を行う。
【0121】
次に、全てのRCALqのうち前記RSDIFqが最小値になるものをRCALq-minとして特定するステップ(rd4) を行う。
【0122】
次に、該RCALq-min中に含まれる着色剤の種類から前記自己着色剤を除いた残りの着色剤を、前記作製異常サンプルの作製異常原因の着色剤として特定するステップ(rd5) を行う。
【0123】
なお、上記CCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法は、CCMソフト中に組込んで実行すると、調色作業中に即座に異常を判断できるため好ましい。
【0124】
なお、本発明において、調色サンプルが透明な場合は、上記分光反射率に代えて、分光透過率を用いることが好ましい。具体的には、本発明に係る第7のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法を、複数の調色サンプルから作製異常サンプルと正常サンプルとを特定した後において、該作製異常サンプルに対し、
前記式(3′)により、TREALabnとΔTnor-aveとの各波長における分光透過率の差を示す分光透過率TCAL'abnを求めるステップ(td1)、
前記TCAL'abnから計算された三刺激値XYZをターゲットとして計算されたシミュレーション分光透過率TCALqを、正常サンプルの調色に用いられる自己着色剤のみでCCMシミュレーションして算出したものと、該自己着色剤にCCMシステムのデータベース内にある着色剤1種類を加えてCCMシミュレーションして算出したもの複数個とを求めるステップ(td2)、
前記TCALqと前記TCAL'abnとの、各波長における分光透過率の差の絶対値の測定波長域全体に渡る総和を示すTSDIFqを各TCALqについて求めるステップ(td3)、
全てのTCALqのうち前記TSDIFqが最小値になるものをTCALq-minとして特定するステップ(td4)、及び、
該TCALq-min中に含まれる着色剤の種類から前記自己着色剤を除いた残りの着色剤を、前記作製異常サンプルの作製異常原因の着色剤として特定するステップ(td5)を含む工程を行うことを特徴とするCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法とすればよい。該方法を本発明に係る第8のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法という。
【0125】
本発明に係る第8のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法は、上記本発明に係る第7のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法において、分光反射率を分光透過率に代える以外は同様である。
【0126】
本発明は、CCMや視感調色作業において、作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定作業に用いることができる。
【実施例】
【0127】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものでない。
【0128】
実施例1
[作製再現性の推定方法]
図1(a)〜(h)に、調色サンプルの実測の分光反射率とシミュレーション分光反射率および両者の差ΔR-nを表示し、調色過程において2回目の調色サンプルに異常があった場合の例を概念的に示す。横軸は可視光の波長範囲を、左側グラフの縦軸は分光反射率を、右側グラフの縦軸は分光反射率差を表す。また、左側グラフの点線は実測分光反射率RREAL-nを、実線はシミュレーション分光反射率RCAL-nを示す。ただし、このグラフでは両者の差が比較しずらいので、右側グラフにRCAL-nを基準にRREAL-nとの差ΔR-nを示した。なお、見やすく表示するために縦軸を5倍にして表示した。
ΔR-n=RREAL-n−RCAL-n (35)
【0129】
図1(a)〜(h)の個別の表示を一つにまとめて図2(a)〜(b)に示した。図2(b)から明らかなように1、3,4回目の調色サンプルのΔRはほぼ同じ値になっているが2回目の調色サンプルのΔRは他と異なっており、作製過程における異常サンプル(以下、作製異常サンプルと記す)であり、このΔRの異なりから異常として摘出が可能となる。異常と判断されたサンプルのRCAL-abn(サフィックスを-abnとして示す)に対するRREAL-abnの差ΔR-abnには異常分とシミュレーション誤差が含まれているので、シミュレーション誤差を取り除けば異常分が抽出できることになる。異常分の抽出方法の概念を図3(a)〜(c)に示す。異常分の抽出方法の計算手順(I)(II)(III)(IV)を以下に記し、手順(I) (II) (III)で得られた分光反射率を図3(b)の(I) (II) (III)に示し、手順(IV)で得られた分光反射率差を図3(c)の(IV)に示した。横軸、縦軸は図1(a)〜(h)と同じである。左側上段は、図2で正常と判断された調色サンプルのΔR-nの平均ΔR-aveを表す。計算手順は、(I)作製異常サンプルの実測分光反射率RREAL-abnを測定する。(II)作製しようとした着色剤の比率からシミュレーション分光反射率RCAL-abnを計算する。(III)異常として摘出されたもの以外の調色サンプル(作製再現性が良いと認識された調色サンプル)のシミュレーション誤差ΔR-nの平均値ΔR-aveを算出し、(II)で求めたRCAL-abnにΔR-aveを加えたRREAL’-abnを計算する。つまり、RREAL’-abnはサンプルが正しく作製されたと仮定した時の実測分光反射率を意味する。(IV)RREAL’-abnと実測分光反射率RREAL-abnとの差が異常分として抽出される。
RREAL’-abn=RCAL-abn+ΔR-ave (36)
ここで、ΔR-ave=(1/n)Σ(RREAL-n−RCAL-n )
ただし、ΔR-aveの算出にあたってRREAL-abnの測定値は除く。
【0130】
作製異常サンプルの異常分ΔR’-abnは式(37)で表される。
ΔR’-abn =RREAL-abn − RREAL’-abn (37)
【0131】
[サンプルの作製と測定]
ターゲットSに対し、色相(H)、明度(V)、彩度(C)の三属性の一つがΔE*=2程度+側に変化したサンプルは調色サンプルを想定したものであり、三属性の成分が複合された実際の調色サンプルはこの色の範囲に包含される。Sはこれから作製しようとするサンプルに相当する。今Sを作製しようとして作製異常サンプルができてしまったことを想定し、使用されている着色剤(以下自己着色剤と表示する)の比率が変化した作製異常サンプルとしてS配合の一つの着色剤の量を増減させ、SとのΔE*が1程度のサンプルを作製した。また、異質の着色剤が混入した作製異常サンプルとして自己着色剤と異なる4種類の着色剤のうち1種類を追加し、SとのΔE*が1程度のサンプルを作製した。調色サンプル、作製異常サンプルの配合はCCMシステムにてサンプルSからの補正計算にて算出した。
【0132】
作製したサンプルの着色剤配合を表1に、表色値と色差を表2に示す。表1中の単位は、重量部である。表2のΔE*欄に示されるように、調色サンプルを想定したサンプルH+,V+、C+はΔE*が2程度、自己着色剤の量が増減した作製異常を想定したサンプル+4172,-4172、+4420、-4420、+4050、-4050、+4710、-4710はΔE*が1程度、表2の異質の着色剤が混入された作製異常を想定したサンプル+4510、+4170、+4157、+4440、+4467はΔE*が1程度のものが作製されていることがわかる。
【0133】
更に、式(6)のΔR-aveは先に作製した調色サンプルH+,V+、C+のシミュレーション誤差ΔRの平均を使用するので、サンプル作製の期間差の影響を検討した。表3に調色サンプルH+,V+、C+の実測分光反射率RREALとシミュレーション反射率RCALから計算されたΔL*、Δa*、Δb*の平均からの偏差の色差を計算し、その値をΔΔE*欄に記した。表4に試験サンプルのシミュレーション誤差ΔL*、Δa*、Δb*の平均からの偏差の色差を計算してΔΔE*欄に記した。表4のΔΔE*欄から分かるように、その色差は十分小さく作製誤差は極めて小さいことを確認した。
【0134】
次に、表3に示される調色サンプルのΔL*、Δa*、Δb*の平均と表4の試験サンプルのΔL*、Δa*、Δb*の平均の差を色差計算し表5のΔΔE*欄に記した。表5のΔΔE*の値が検定しようとしている試験サンプルの色差1に比べ十分小さいことが分かったので、シミュレーション誤差ΔR-aveは先に作製した調色サンプルH+,V+、C+のシミュレーション誤差ΔRの平均を採用しても差し支えないことを確認した。
【0135】
[摘出された作成異常サンプルの異常原因の特定]
ここでの試験、検討は計量間違いなどで調色サンプルの中から異常品が摘出され、その異常品の原因となった着色剤を特定することを想定している。調色作業者に異常品を警告するだけでなく、その異常原因を知らせることは警告の確実さを知らせることにもなる。また、調色サンプルと生産品の間に発色の差があった場合、試験サンプルとして生産品を加えることにより、どの着色剤が変化したかを特定することにも応用できる。ポイントは白着色剤、黒着色剤の増減が判別できるか否かである。つまり、白着色剤が増加した場合と黒着色剤が減少した場合ではどちらも反射率は増加することとなり、逆に白着色剤の減少と黒着色剤の増加はどちらも反射率は減少し、どちらの着色剤が原因であったかを判別するのは難しいからである。図4に自己着色剤の白着色剤EP-4050、黒着色剤P-4710及び有彩色の赤着色剤P-4172、黄着色剤P-4420の分光反射率を示す。有彩色着色剤の分光反射率は、その重量%の比率が5:95(有彩色着色剤:白着色剤)のものである。図5(a)〜(b)に示されるように、調色サンプルのシミュレーション分光反射率RCAL-nに対する実測分光反射率RREAL-nの差ΔR-nから異常品の摘出が可能である。図5(a)〜(b)に示されるように正常に作製された調色サンプルH+、V+、C+の波長ごとのΔR-nは、ほぼ同じ値を持つことから重なり合っているが、作製異常サンプル+4510、+4172、-4172のΔR-abnは異常分が加味されるので、正常に作製された調色サンプルのΔR-nの重なりから逸脱していることがわかる。このΔR-abnには本来のシミュレーション誤差ΔRと異常分ΔR’-abnが複合されたものなので、シミュレーション誤差ΔRを除去する必要がある。除去するシミュレーション誤差ΔRには正常サンプルH+、V+、C+のΔRの平均ΔR-aveを用い、作製異常サンプルのΔR-abnからΔR-aveを除去した分光反射率差を図6(a)〜(d)の縦軸にΔΔRとして表示した。ΔR-abnの計算に用いるシミュレーション反射率RCAL-abnは本来作製しようとしたサンプルSの配合にて計算した。図6(a) 及び(c)に有彩色着色剤の量が増減した異常サンプルのΔΔRを示す。図中のΔΔRが0の水平ラインの近くにある細線は正常と認識された調色サンプルH+、V+、C+のΔΔRである。図から明らかなように赤着色剤p-4172が変化した異常サンプル+4172、-4172のΔΔRは水平ラインから逸脱し、逸脱した波長域が図4に示されたP-4172の吸収波長域と一致していることから、原因となった着色剤はp-4172と特定できる。同様に黄着色剤P-4420の場合も水平ラインから逸脱した波長域がP-4420の吸収波長域と一致ししていることから原因となった着色剤はP-4420であることが特定できる。 課題の白着色剤、黒着色剤の量が増減した異常サンプルのΔΔRを図6(b)及び(d)に示す。白着色剤の増加ならびに黒着色剤の減少は水平ラインの上側に、白着色剤の減少、黒着色剤の増加は水平ラインの下側になっており異常サンプルであることは判断できるが、どの着色剤が原因であるかの特定はできない。また、白着色剤、黒着色剤の分光分布はどちらも平坦であるが図6(b)及び(d)に示されるΔΔRは平坦ではない。このように、白色顔料、黒色顔料の増減によるΔΔRの形はサンプルの色により異なり、その形からはどの着色剤かは特定できない。
【0136】
そこで、別の方法でアプローチする必要がある。シミュレーション誤差を相殺するために正常サンプルのΔR-aveを用いることが有効であることは表4〜表7のΔΔE*が小さいことから確認されているので、逆に、異常サンプルの実測反射率RREAL-abnをΔR-aveで補正すれば実際に混合された配合に近似した配合が得られると考えられる。実際に混合した配合と近似した配合が得られれば、得られた配合と作製しようとした配合とを比較し、各着色剤の変化率を求めればどの着色剤が大きく変化したかを推定することができることになる。これにより、原因となった着色剤を特定できると考えられる。実測反射率RREAL-abnのシミュレーション誤差の補正は式(38)による。
RCAL’-abn=RREAL-abn−ΔR-ave (38)
【0137】
シミュレーション配合の計算には、ニュートン−ラフソン(Newton-Raphson)法を用いた。まず、ターゲットとして配合を求めたいサンプルの分光反射率RCAL’-abnから三刺激値XRCAL’、YRCAL’、ZRCAL’を求める。次に、式(34)のCiに任意の初期値を与え、求められた(K/S)mixから式(32)によりシミュレーション反射率RCALを求め、そのRCALからシミュレーション三刺激値XRCAL、YRCAL、ZRCAL を求め、両者の差ΔX、ΔY、ΔZを式(39)より求める。
【0138】
R=1+(K/S)−((K/S)2+2(K/S))1/2 (32)
(式中、Rは調色対象物の分光反射率を示し、Kは着色剤の吸収係数を示し、Sは散乱係数を示す。)
【0139】
(K/S)mix ={Σ(Ki/Si)(Si/Sa)Ci+・・・+(K0/S0)(S0/Sa) }/
{Σ(Si/Sa)Cn+・・・+S0/Sa}(34)
(式中、Ki/Siは各着色剤の担体着色品の分光反射率の測定値から式(31)より求められるK/S 値を示し、K0/S0は被着色物(例えば樹脂など)の測定値から式(31)より求められるK/S 値を示し、Si/ Saは各着色剤のリファレンスaに対する相対散乱係数を示し、S0/Saは被着色物のリファレンスaに対する相対散乱係数を示す。)
【0140】
K/S=(1−R)2/2R (31)
【0141】
ΔX=∫λ(RCAL’-abn−RCAL)λsλxλdλ
ΔY=∫λ(RCAL’-abn−RCAL) λsλyλdλ (39)
ΔZ=∫λ(RCAL’-abn−RCAL) λsλzλdλ
【0142】
ここでsλはイルミナントD65の分光分布、xλ、yλ、zλ は10度視野CIE等色関数を使用した。初期値に対する補正量ΔCiの計算方法は、式(40)より求めた。
(∂X/∂C1)ΔC1+(∂X/∂C2)ΔC2+・・・
+(∂X/∂Ci)Ci=ΔX
(∂Y/∂C1)ΔC1+(∂Y/∂C2)ΔC2+・・・
+(∂Y/∂Ci)Ci=ΔY (40)
(∂Z/∂C1)ΔC1+(∂Z/∂C2)ΔC2+・・・
+(∂Z/∂Ci)Ci=ΔZ
【0143】
式(40)はCiのiが3であれば、解が得られる。式(41)を加えて4色のCiを計算した。kは着色剤のトータル量を示し、任意に指定する。
C1+C2+C3+C4 =k (41)
【0144】
式(34)のCiに式(41)で計算されたΔCi を加算して修正し、2,3回ループ計算させてターゲットとの色差が0.05以下になるようにする。求められたCiがターゲットの着色剤の配合となる。
【0145】
異常サンプルのRCAL’-abnをターゲットにしてシミュレーション配合を算出し、作製しようとした配合に対し各着色剤の変化率を計算する。色の変化は各着色剤Ciの比率が変化することによるが、着色剤のトータル量kが変わればCiの値も変化する。そこで、何らかの基準を決めて配合を計算する必要があるので、白着色剤が同量になるように求めた配合と、黒着色剤が同量になるように求めた配合の二通りを求めた。二通り求めた理由は白着色剤、黒着色剤を特定するために、白着色剤の量を固定した場合の他の着色剤の量の変化と、黒着色剤の量を固定した場合の他の着色剤の量の変化を比較するためである。
【0146】
表6に作製しようとしたサンプルSの配合を示す。表6中の単位は、重量部である。表7にYR1の4172が増加した場合のシミュレーション配合と作製しようとした配合を基準にした自己着色剤の量の変化率を一例として表示し、その変化率のグラフを図7上段左側に示した。表7中の単位は、重量部である。他はグラフのみ表示した。図はいずれも2つの図で1サンプルを表し、左側が白着色剤を等量にした場合、右側は黒着色剤を等量にした場合の変化率を表し、サンプル名のサフィックスは作製異常の原因として想定した着色剤の名前を表す。
【0147】
図7、図8は原因となる着色剤が有彩色の場合である。図7の+4172ではYR6+4172を除き左側(白を等量)及び右側(黒を等量)ともに4172の変化率が他の着色剤の変化率より大きいことから異常の原因となる着色剤が4172の増加と特定できる。同じく図7の-4172では4172の変化率が他の着色剤の変化率より大きいことから異常の原因となる着色剤が4172の減少と特定できる。同様に、図10から異常となる着色剤が4420であることが特定できる。
【0148】
図9、図10は原因となる着色剤が無彩色の場合である。図9の+4050において白着色剤の量を等量にした左側は他の着色剤の変化量はともに大きく減少しているが、黒着色剤の量を等量にした右側は白着色剤の変化量だけが大きいが他の着色剤の変化量は小さいことが分かる。このような場合、白着色剤以外が同等に大きく変動したことよりも、白着色剤が変動したと考える方が理にかなっている。このことから白着色剤が作製異常の原因となった着色剤であることが特定できる。同様に図9の-4050は右側から4050の減少と特定できる。図10の+4710は左側から4710の増加と特定できる。図10の-4710は左側から4710の減少と特定できる。
【0149】
実施例2
[調色サンプルに使用された発色不安定な着色剤の特定]
使用する着色剤の大半が発色不安定な場合、調色サンプル(n)の実測反射率RREAL-nとシミュレーション反射率RCAL-nの差ΔR-nは規則性が無くなるので、複数の着色剤が発色不安定であることが予想される。この場合は、要求する許容範囲に調色することは常に困難になるので、着色剤を根本から再検討する必要がある。ここで取り上げる試験、検討はデータベースに登録されている大半の着色剤の発色安定性は高いがその中に不安定な着色剤がいくつかあり、調色サンプル(n)に使用された着色剤の1色が不安定な着色剤であった場合を想定している。1色でも不安定な着色剤があると調色サンプル(n)のΔR-nは異なる値となるので、調色サンプル(n)のうちどのサンプルが異常サンプルなのかは特定することができない。しかしながら、ΔR-nがどのように変化しいるかを調べれば変化させる原因となった着色剤を特定できるのではないかと考えられる。図11(a)〜(g)に調色サンプル3点の場合の発色不安定な着色剤を特定する概念図を示す。図の横軸、縦軸は図1と同じである。図11(a)〜(c)は調色サンプルのRREAL(点線)とRCAL(実線)である。1回目のサンプル(I)は定常に発色された例で実線と点線の差はシミュレーション誤差ΔRである。2回目のサンプル(II)は赤着色剤の発色が定常より進んだ例、3回目のサンプル(III)は赤着色剤の発色が定常に至らなかった例である。図11(d)〜(g)はRREALとRCALの差ΔRであり、本来はΔRはほぼ同じ値となるはずであるが、発色が不安定な着色剤があるため同じ値になっていない。図11(g)はサンプル(I) (II) (III)のサンプル間(I)−(II)、(II)−(III)、(III)−(I)のΔRの差において、ΔRの絶対値の最大が負の場合はΔRに−1を乗じてΔΔRとして表示した。サンプル間でΔRを差し引くことによりシミュレーション誤差が相殺され異常分が抽出されることになる。よって、図11(g)のΔΔRの最大値を持つ組み合わせのΔΔRが調色サンプルの発色不安定分の最大の振れ幅となる。調色サンプルが3つ以上の場合はすべての組み合わせのΔΔRから発色不安定分を求める。任意の調色サンプルのRCALに対し、発色不安定分ΔΔRを加算または減じてCCMによりシミュレーション配合を計算し、前述のように配合の変化率を調べれば原因となった着色剤を特定することができることとなる。不安定な発色は不特定であることから加算するか減じるか、どの調色サンプルの配合を基準にするかは規定する必要はない。ターゲットとしてRCALを使用するのは、RCALを使用すればシミュレーション誤差が加味されないためである。RCALは着色剤の比率を指定すれば計算から求められるので、調色サンプルの平均的な配合でも良い。試験サンプルとして、(S、+4172、-4172)、(S、+4420、-4420)、(S、+4050、-4050)、(S、+4710、-4710)の組み合わせを使用し、RCALの計算にはサンプルSの配合を用い、Sの配合に対し各着色剤の変化率を計算し、その結果を図12、図13に示した。図の表示方法は図7、図8と同じである。図中のサンプル名のサフィックスは作製異常の原因として想定した着色剤の名前を表している。図12の4172では左側、右側とも4172の変化率が他よりも大きい。図12の4420では左側、右側とも4420の変化率が他よりも大きい。図13の4050では右側から4050の変化率が他よりも大きいことが分かる。図13の4710では左側から4710の変化率が他よりも大きいことが分かる。このことにより、作製異常の原因となった着色剤をそれぞれ特定できることが判明した。例えば、異常原因となる着色剤が赤着色剤、黄着色剤の2つの場合、サンプル(II)は赤着色剤だけが発色異常となり、サンプル(III)は黄着色剤だけが発色異常となると、図11(g)のΔΔRのパターンは異なった形となり、ΔΔRの最大値を持つ組み合わせのΔΔRは2つの異常着色剤した示さないことになる。このような場合は図11(g)のΔΔRから、どの組み合わせのΔΔRから異常着色剤を推定するかを指定すればよい。
【0150】
実施例3
[混入された異質の着色剤の推定]
ここでの試験、検討は調色工程で作製した調色サンプルと生産工程で作製した検査サンプルの色が異なった場合、工程の違いによる発色の差なのか使用されていない異質の着色剤が混入されたためなのかの判断をし、使用されていない着色剤が混入された場合の着色剤を推定することを想定している。サンプルYR2、YR4のSに異質の着色剤として図14(a)〜(c)に示される分光反射率を持つ着色剤4510、4170、4157、4440、4467の中の一つを追加混合し、SとのΔE*が約1の配合をCCMシステムによって求めた。作製したサンプルの実測値は表2に示されているように設定した色差が得られている。図15(a)〜(d)に図6と同様に正常と認識されたサンプルH+、V+、C+のRREALとRCALから計算されたΔRの平均であるΔR-aveとの差ΔΔRを示した。図中のΔΔRが0の水平ラインの近くにある細線は正常と認識された調色サンプルH+、V+、C+のΔΔRである。図15(a)及び(c)は赤着色剤4157、黄着色剤4467が混入したもの、図15(b)及び(d)は赤着色剤4170、黄着色剤4440、緑着色剤4510が混入した例である。ΔΔRが0の水平ラインから逸脱した波長域から400〜500nmは黄系着色剤、500〜600nmは橙、赤、茶、紫系着色剤、600nm〜700nmは緑、青系着色剤が異常原因の着色剤であることは分かる。まず、自己着色剤の量が変化したのか、異質の着色剤が混入されたのかを判別する必要がある。緑着色剤4510が混入した例は図6に示される自己着色剤の比率が変化した場合と異なる波長域(この場合は640nm付近)に誤差が出るので異質の着色剤が混入したことが分かる。赤着色剤4157の例は図15(a)及び(c)の4157のΔΔRのパターンと図6(a)及び(c)の自己着色剤4172のΔΔRのパターンとが異なることから異質の着色剤が混入したことが分かる。黄着色剤4467、4440はともにΔΔRのパターンの異なりからでは判別できない。
【0151】
そこで、どのような着色剤が混入されたかを推定するために、式(8)により作製異常サンプルのRCAL’-abnを算出し、RCAL’-abnをターゲットとしてデータベース上の各種着色剤の組み合わせでシミュレーション配合を求め、その配合のRCAL-kとRCAL’-abnとの差の総計を計算した。つまり、CCMデータベースの中に原因となる着色剤があればその着色剤が使用されたRCAL-kとRCAL’-abnとの一致性が高いはずであるから、分光反射率差の総和は小さくなるはずである。検索に使用したCCMデータベースの顔料組成を表8に、色相の位置関係をマンセル色相環として図16に示した。指定する着色剤の4色は自己着色剤を指定し、5色目をCCMデータベースから順次選択してシミュレーション配合を求め反射率差の総和を計算し、総和の小さい順に上位から5番目までの配合の5色目の着色剤の名前を表9の選択欄に示した。表中の上段にある着色剤の名前は設定した異質の着色剤の名前である。選択欄の黒枠は設定した異質の着色剤名であることを示す。6番目の着色剤名が4色とあるのは自己着色剤の量が変動したと想定した場合の反射率差の総和を示す。表9に示されるように、緑着色剤+4510は一位に選択され、2番目以降ならびに4色の総和との差も大きいことから着色剤が4510であることが推定できる。黄着色剤4440も一位に選択され、2番目以降ならびに4色の総和との差も大きいことから着色剤が4440であることが推定できる。赤着色剤4157の例も一位に選択されており、4色の総和との差も大きいことから異質の着色剤が混入したことが分かり、2番目以降との差が大きいことから4157であることが推定できる。このように、自己着色剤と分光分布が大きく異なっている着色剤が混入された場合は、混入された着色剤を推定できることが証明された。
【0152】
【表1】
【0153】
【表2】
【0154】
【表3】
【0155】
【表4】
【0156】
【表5】
【0157】
【表6】
【0158】
【表7】
【0159】
【表8】
【0160】
【表9】
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】波長(nm)に対する分光反射率及び分光反射率差を示すグラフである。
【図2】波長(nm)に対する分光反射率及び分光反射率差を示すグラフである。
【図3】波長(nm)に対する分光反射率及び分光反射率差を示すグラフである。
【図4】波長(nm)に対する分光反射率を示すグラフである。
【図5】波長(nm)に対する分光反射率差を示すグラフである。
【図6】波長(nm)に対する分光反射率差の差分を示すグラフである。
【図7】各着色剤の配合比率の変化率を示すグラフである。
【図8】各着色剤の配合比率の変化率を示すグラフである。
【図9】各着色剤の配合比率の変化率を示すグラフである。
【図10】各着色剤の配合比率の変化率を示すグラフである。
【図11】波長(nm)に対する分光反射率、分光反射率差及び分光反射率差の差分を示すグラフである。
【図12】各着色剤の配合比率の変化率を示すグラフである。
【図13】各着色剤の配合比率の変化率を示すグラフである。
【図14】波長(nm)に対する分光反射率を示すグラフである。
【図15】波長(nm)に対する分光反射率差の差分を示すグラフである。
【図16】混入した各着色剤とCCMデータベース内の各着色剤とのマンセル色相環上における位置を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明はCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ターゲットの表色値を目標にして調色する技術としてCCM(Computer Color Matching)が知られている。CCMは、赤、青、黄等の各着色剤の光学特性である波長毎の吸収係数、錯乱係数を予め測定してデータベースに記憶しておき、どの着色剤をどのような比率(以下、「着色剤配合比率」ともいう)で混合すれば、ターゲット(色見本)の表色値に合致するのかをシミュレーションする技術である。
【0003】
CCMの基本操作としては、まず、(a)ターゲットの分光反射率等を実測してこれに該当する表色値を求め、(b)次に該表色値に近似する表色値が得られると予想されるような着色剤配合比率をデータベースからシミュレーションして求め、該着色剤配合比率で調色サンプルを作製し、(c)作製した調色サンプルの分光反射率等を実測し、該実測した分光反射率、表色値等のデータと(b)で予想した分光反射率、表色値等のデータとを比較し、 (d) (c)で見出された表色値のズレを矯正するべく、着色剤配合比率をシミュレーションで補正し、(e) (b)〜(d)の作業を繰返し行い、調色サンプルの表色値をターゲットに近づけていく、すなわち、ターゲットと調色サンプルとの色差を漸減させていくものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、CCMで作製した調色サンプル中には、シミュレーションで指定された種類の着色剤が計算された量で配合されていなかったり、シミュレーションで指定された以外の種類の着色剤が混入されてしまったり、種類や配合量比率はシミュレーションの指定通りでも着色剤自体が発色異常であるためにシミュレーションされた表色値を得られなかったりするため等の種々の理由により、通常表色値が適正範囲内にあるように調色された正常サンプルのみならず、表色値が適正範囲外となるように調色された作製異常サンプルが得られてしまう場合がある。また、CCM以外の例えば、視感調色で得られた調色サンプルについても、上記と同様に作製異常サンプルが得られてしまう場合がある。
【0005】
このため、作製異常サンプルが作製された場合には、作製異常の程度、すなわち作製異常分がどの程度のものなのかを判断できれば、その原因を取り除いたりすること等が可能になるため調色作業上好ましい。さらに、作製異常原因となる着色剤を特定することまでできればより好ましい。従って、本発明の目的は、作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤を特定する方法を見出すことにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる実情において、本発明者らは鋭意研究した結果、作製異常サンプルの実測分光反射率から少なくとも1個の正常サンプルのシミュレーション分光反射率差の相加平均値を減じた差から求められる着色剤配合比率と、作製異常サンプルの着色剤配合比率とにおいて、白着色剤及び黒着色剤の着色剤配合比率を固定した際の着色剤毎の配合比率の変化率が、作製異常サンプルの作製異常原因となっていること等を見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、複数の調色サンプルから作製異常サンプルと正常サンプルとを特定した後において、該作製異常サンプルに対し、
下記式(3)により、RREALabnとΔRnor-aveとの各波長における分光反射率の差を示す分光反射率RCAL'abnを求めるステップ(rd1)、
RCAL'abn=RREALabn−ΔRnor-ave (3)
(RREALabn:作製異常サンプルの実測分光反射率、ΔRnor-ave:少なくとも1個の正常サンプルの各シミュレーション誤差ΔRnorの、各波長における分光反射率の相加平均を示す分光反射率)
前記RCAL'abnから計算された三刺激値XYZをターゲットとして計算されたシミュレーション分光反射率RCALqを、正常サンプルの調色に用いられる自己着色剤のみでCCMシミュレーションして算出したものと、該自己着色剤にCCMシステムのデータベース内にある着色剤1種類を加えてCCMシミュレーションして算出したもの複数個とを求めるステップ(rd2)、
前記RCALqと前記RCAL'abnとの、各波長における分光反射率の差の絶対値の測定波長域全体に渡る総和を示すRSDIFqを各RCALqについて求めるステップ(rd3)、
全てのRCALqのうち前記RSDIFqが最小値になるものをRCALq-minとして特定するステップ(rd4)、及び、
該RCALq-min中に含まれる着色剤の種類から前記自己着色剤を除いた残りの着色剤を、前記作製異常サンプルの作製異常原因の着色剤として特定するステップ(rd5)を含む工程を行うことを特徴とするCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、複数の調色サンプルから作製異常サンプルと正常サンプルとを特定した後において、該作製異常サンプルに対し、
下記式(3′)により、TREALabnとΔTnor-aveとの各波長における分光透過率の差を示す分光透過率TCAL'abnを求めるステップ(td1)、
TCAL'abn=TREALabn−ΔTnor-ave (3′)
(TREALabn:作製異常サンプルの実測分光透過率、ΔTnor-ave:少なくとも1個の正常サンプルの各シミュレーション誤差ΔTnorの、各波長における分光透過率の相加平均を示す分光透過率)
前記TCAL'abnから計算された三刺激値XYZをターゲットとして計算されたシミュレーション分光透過率TCALqを、正常サンプルの調色に用いられる自己着色剤のみでCCMシミュレーションして算出したものと、該自己着色剤にCCMシステムのデータベース内にある着色剤1種類を加えてCCMシミュレーションして算出したもの複数個とを求めるステップ(td2)、
前記TCALqと前記TCAL'abnとの、各波長における分光透過率の差の絶対値の測定波長域全体に渡る総和を示すTSDIFqを各TCALqについて求めるステップ(td3)、
全てのTCALqのうち前記TSDIFqが最小値になるものをTCALq-minとして特定するステップ(td4)、及び、
該TCALq-min中に含まれる着色剤の種類から前記自己着色剤を除いた残りの着色剤を、前記作製異常サンプルの作製異常原因の着色剤として特定するステップ(td5)を含む工程を行うことを特徴とするCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、CCMソフト中に組込んで実行することを特徴とする前記CCMによる作製異常サンプル中の作製異常分の特定方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法よれば、作製異常サンプルの作製異常原因が、自己着色剤以外の着色剤が混入されている場合において、高い精度で作製異常着色剤を特定できる。
【0011】
上記作製異常原因着色剤の特定方法は、CCMソフト中に組込んで実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
はじめに、CCMによる調色工程の概要について説明する。CCMの調色工程の概要は、以下のとおりである。なお、本発明において、調色サンプルとは、以下の調色過程で作製されたサンプルを意味し、作製異常サンプルとは調色サンプルのうち以下の調色工程で色差や実測分光反射率等が異常な値を示すもの、正常サンプルとは調色サンプルのうち作製異常サンプルに該当しないものを意味する。
【0013】
(a).まず、ターゲット(色見本)を測色してターゲットの表色値を三刺激値XYZとして求める。
(b).次に、該表色値に基づき、CCMデータベース内に記憶されている着色剤固有の分光反射率又は分光透過率から算出された吸収係数及び散乱係数から、該表色値に合致すると予想される着色剤の配合比率(以下、着色剤の配合比率を「着色剤配合比率」ともいう。)をCCMシミュレーションし、第1回調色サンプル用の着色剤配合比率、該比率から想定される表色値及びシミュレーション分光反射率等を算出する(シミュレーション分光反射率については、以下「RCAL」とも表記する。)。
(c).(b)で算出された着色剤配合比率に基づき第1回調色サンプルを作製し、該サンプルの表色値及び実測分光反射率等を測定する(実測分光反射率については、以下「RREAL」とも表記する。)。
(d). (c) で得たRREALと(b)で得たRCALとの差であるシミュレーション誤差(以下「ΔR」とも表記する。)や、第1回調色サンプルにおける(c)での実測色差と顧客が要求するターゲット(色見本)との合致度(色差)を勘案し、補正調色して第2回調色サンプル用の着色剤配合比率、該比率から想定される表色値及びシミュレーション分光反射率等を算出する。さらに第2回調色サンプルについて、(c)及び(d)の操作を行う。
(e).以下、第3回調色サンプル以後の調色サンプルについて、(b)〜(d)の操作を繰り返して、第n回調色サンプルの表色値をターゲットの表色値に近づけてゆく。(b)〜(d)の操作は調色サンプルとターゲットとの色差が予め製品毎に設定された範囲内になるまで行う。なお、作製異常サンプルが作製される場合には、上記操作を中止することもある。
【0014】
シミュレーション分光反射率RCALは、以下のCCM理論によって求められる。ここで、第n回調色サンプルのCCMシミュレーション分光反射率をRCAL-nと表す。CCM理論は調色対象物の形態によって異なる。調色対象物が半透明物又は不透明物の場合、クベルカ・ムンクの理論が適用される。印刷や染色の場合、クベルカ・ムンク理論の1定数法が適し、塗料やプラスチックの場合、クベルカ・ムンク理論の2定数法が適する。対象物が透明物の場合、ランバートベールの理論が適用される。
【0015】
クベルカ・ムンク理論を応用した方法は数多くあり、ここでは、その代表的な方法を説明する。クベルカ・ムンクは式(11) で示される。
K/S=(1−R)2/2R (11)
【0016】
式(11) を逆展開すると式(12) となる
R=1+(K/S)−((K/S)2+2(K/S))1/2 (12)
(式中、Rは調色対象物の分光反射率を示し、Kは着色剤の吸収係数を示し、Sは散乱係数を示す。)
【0017】
クベルカ・ムンク理論の1定数法の場合、それぞれのカラー(例えば赤インキ、青インキ)を規定量計量し、それぞれの色の着色物の分光反射率を測定し、式(11) から、カラーのK/S関数、つまりFnを事前に登録しておく。Fn は式(13)で示される。
Fn=((K/S)n −(K/S)o )/Cn (13)
(式中、(K/S)nは着色物の分光反射率から式(11) で得られたK/S値を示し、(K/S)oは被着色物(例えば紙など)のK/S値を示し、Cnはカラーの重量%を示し。Fnはカラー単位重量%当たりのカラー自体が持つK/S値を示し。nはカラー名を示す。)
【0018】
複数のカラーを混合し、その混合カラーで着色物を得る場合、式(14) で(K/S)mix 値を算出する。
(K/S)mix =F1C1+ ・・・+FnCn+(K/S)0 (14)
【0019】
調色品は配合が既知であるから、式(14) のCnは既知であり、Fn及び (K/S)0は事前にCCM装置に登録されているから、調色品の(K/S)mix が得られる。(K/S)mix を式(12) のK/Sに代入するとCCMシミュレーション分光反射率RPR-n が得られる。
【0020】
クベルカ・ムンク理論の2定数の場合、混合カラーでは、ダンカンの式(15) が適用される。
(K/S)mix =(K1C1+・・+KnCn+K0)/
(S1C1+・・+SnCn+S0) (15)
(式中、Knは各カラーの吸収係数を示し、Snは散乱係数を示し、Cnは重量%を示し、K0は被着色物(例えば樹脂など)の吸収係数を示し、S0はその散乱係数を示す。)
【0021】
式(15) は、例えば白aなど特定の顔料をリファレンス(参照)とし、その他のカラーはリファレンスに対する相対値として式(16) に展開される。
(K/S)mix =Σ(Kn/Sn)(Sn/ Sa)Cn+・・・+(K0/S0)(S0/Sa) /
(Σ(Sn/ Sa)Cn+・・・+S0/Sa) (16)
(式中、K n/Snは各カラーの分光反射率を測定し、式(11) より求められるK/S 値を示し、K0/S0は被着色物(例えば樹脂など)を測定し、式(11) より求められるK/S 値を示し、Sn/ Saは各カラーの白aに対する相対散乱係数を示し、S0/Saは被着色物の白aに対する相対散乱係数を示す。)これらの値は事前にCCM装置に登録しておく。
【0022】
調色品は配合が既知であるから、式(16) のC nは既知となり、その他は上記の如く、CCM装置に登録されているので調色品の(K/S )mix が得られる。そして、(K/S )mix を式(12) のK/S に代入するとCCMシミュレーション分光反射率RCAL-n が得られる。
【0023】
なお、調色対象物が透明な場合は、上記CCMシミュレーション分光反射率RCAL-nに代えて、ランバートベールの理論式(17)を使用することにより、CCMシミュレーション分光透過率TCAL-nが得られる。
D=−Log T (17)
【0024】
各々のカラーを規定量計量し、そのカラーでの着色物の分光透過率を測定し、式(17) から、各カラーのD関数、つまりDnを事前に登録しておく。カラー単位重量%当たりの、カラー自体が持つD値(Dn)は式(18) で示される。
Dn=(−Log Tn+Log To)/Cn (18)
(式中、Tnは各カラー単体での着色物の分光透過率を示し、Toは被着色物(例えば樹脂など)の分光透過率を示し、nはカラー名を示す。)
【0025】
複数のカラーを混合し、その混合カラーでの着色物のD値は式(19) で算出される。
Dmix =D1C1+ ・・・+DnCn+D0 (19)
【0026】
調色品は配合が既知であるから、式(19) のCnは既知であり、Dnは事前にCCM装置に登録されているから、調色品のDmix が得られる。Dmix を式(17) のDに代入するとCCMシミュレーション分光透過率TCAL-n が得られる。
【0027】
なお、前述のクベルカ−ムンク理論の1定数法、クベルカ−ムンク理論の2定数法及びランバートベール法はCCMシミュレーションの技法であって、CCMシミュレーション分光反射率RCAL-n 及びCCMシミュレーション分光透過率TCAL-nを求める手法の一例である。
【0028】
本発明の方法において、まず、CCMによる作製異常サンプル中の作製異常分の特定方法を実施する。すなわち、CCMによる作製異常サンプル中の作製異常分の特定方法は、複数の調色サンプルから作製異常サンプルと正常サンプルとを特定した後において、該作製異常サンプルに対し行うものである。
【0029】
本発明において、複数の調色サンプルから作製異常サンプルと正常サンプルとを特定する方法としては、特に限定されず、公知の方法や人間の視感で特定する方法等を用いることができる。
【0030】
次に、前記式(1)により、RREALnとRCALnとの各波長における分光反射率の差を示す分光反射率を、調色サンプルnのシミュレーション誤差ΔRnと規定する。
【0031】
なお、本発明において、前記式(1)は測定波長域内の各波長において適用するものとする。すなわち、前記式(1)で表される数値は波長毎に得られる単一の数値であるが、本発明においては、測定波長域内の任意の波長で測定した複数の数値の集合体を表するものとする。例えば、RREALnは波長−分光反射率座標のグラフに表すと、測定波長域内で測定した任意の波長の点数が多いと、折れ線グラフや図1のような曲線等に類似するものとなる。ただし、本発明においては、表色値等の計算に用いられるデータは、前記式(1)で算出される各波長のデータのみが用いられ、グラフに表された曲線や折れ線グラフ等に基づいて計算することは行わない。
【0032】
さらに、下記式(2)により、ΔRabnとΔRnor-aveとの各波長における分光反射率の差を示す分光反射率ΔR'abnを求め、該ΔR'abnを前記作製異常サンプルの作製異常分として特定する。
ΔR'abn=ΔRabn−ΔRnor-ave (2)
(ΔRabn:作製異常サンプルのシミュレーション誤差、ΔRnor-ave:少なくとも1個の正常サンプルの各シミュレーション誤差ΔRnorの、各波長における分光反射率の相加平均を示す分光反射率)
【0033】
ここで、ΔRabn、ΔRnor、ΔRnor-ave等は、前記式(1)で規定されるシミュレーション誤差である。なお、ΔRnor-aveは、少なくとも1個の正常サンプルの各シミュレーション誤差ΔRnorの、各波長における分光反射率の相加平均を示す分光反射率である。このため、ΔRnor-aveは、例えば、正常サンプルがa、b、cの3個あり、ΔRaの波長λ1における値が50%、波長λ2における値が50%であり、ΔRbの波長λ1における値が40%、波長λ2における値が40%であり、ΔRcの波長λ1における値が30%、波長λ2における値が60%であるとすると、ΔRnor-aveは、ΔRa、ΔRb、ΔRcのそれぞれの値そのものでもよく、また、ΔRa、ΔRb、ΔRc全ての相加平均をとれば、波長λ1における値が40%、波長λ2における値が50%となる。
【0034】
また、前記式(2)は前記式(1)と同様に、測定波長域内の各波長において適用するものとする。すなわち、前記式(2)で表される数値は波長毎に得られる単一の数値であるが、本発明においては、測定波長域内の任意の波長で測定した複数の数値の集合体を表するものとする。例えば、ΔRabnは波長−分光反射率座標のグラフに表すと、測定波長域内で測定した任意の波長の点数が多いと、折れ線グラフや図1のような曲線等に類似するものとなる。ただし、本発明においては、表色値等の計算に用いられるデータは、前記式(2)で算出される各波長のデータのみが用いられ、グラフに表された曲線や折れ線グラフ等に基づいて計算することは行わない。
【0035】
本発明では、前記式(2)により、ΔR'abnを求め、該ΔR'abnを前記作製異常サンプルの作製異常分として特定する推定を行う。
【0036】
このように推定する根拠は、以下の通りである。すなわち、CCMにおいて、シミュレーション誤差ΔRnは正常サンプルnorのもの(ΔRnor)であれば略一定の値を採る。このため、ΔRnが異常値を採る調色サンプルn、すなわち作製異常サンプルabnのΔRn(ΔRabn)が異常値を採る理由は、ΔRabnがΔRnorに加えて作製異常分ΔR'abnが加算されているものと推定しうるからである。
【0037】
本発明に係るCCMによる作製異常サンプル中の作製異常分の表示方法は、前記作製異常分ΔR'abnを、波長と分光反射率差とをそれぞれ軸とした座標に表示するものである。このように、前記ΔR'abnを、波長と分光反射率差とをそれぞれ軸とした座標に表示すると、正常サンプルはΔR'abnの絶対値が小さい値となるためΔR'abn値で形成するグラフがΔR'abn=0の近傍に略直線状のものとなるのに対し、作製異常サンプルはΔR'abnがゼロから遠い値を採るためΔR'abn値で形成するグラフがΔR'abn=0の近傍から大きく逸脱し、通常、作製異常原因となっている着色剤に特有の波長域に山部、谷部や平坦部を有する曲線状に存在するため、一見して調色サンプルが正常サンプルか作製異常サンプルかを容易に判断できる。
【0038】
なお、上記CCMによる作製異常サンプル中の作製異常分の特定方法及びCCMによる作製異常サンプル中の作製異常分の表示方法は、CCMソフト中に組込んで実行すると、調色作業中に即座に異常を判断できるため好ましい。
【0039】
なお、本発明において、調色サンプルが透明な場合は、上記分光反射率に代えて、分光透過率を用いることが好ましい。具体的には、本発明に係るCCMによる作製異常サンプル中の作製異常分の特定方法を、複数の調色サンプルから作製異常サンプルと正常サンプルとを特定した後において、該作製異常サンプルに対し、
前記式(1′)により、TREALnとTCALnとの各波長における分光透過率の差を示す分光透過率を、調色サンプルnのシミュレーション誤差ΔTnと規定するとき、
下記式(2′)により、ΔTabnとΔTnor-aveとの各波長における分光透過率の差を示す分光透過率ΔT'abnを求め、該ΔT'abnを前記作製異常サンプルの作製異常分として特定することを特徴とするCCMによる作製異常サンプル中の作製異常分の特定方法とすればよい。
ΔT'abn=ΔTabn−ΔTnor-ave (2′)
(ΔTabn:作製異常サンプルのシミュレーション誤差、ΔTnor-ave:少なくとも1個の正常サンプルの各シミュレーション誤差ΔTnorの、各波長における分光透過率の相加平均を示す分光反射率)
【0040】
該分光透過率を用いる方法は、上記の分光反射率を用いる方法において、分光反射率を分光透過率に代える以外は同様である。
【0041】
本発明に係る第1のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法は、作製異常サンプルの作製異常原因が、自己着色剤の種類は正常サンプルと一致しているが、自己着色剤の配合比率が作業工程上のトラブル等により変化したことにある場合に、高い精度で作製異常着色剤を特定できるものである。
【0042】
該方法は、複数の調色サンプルから作製異常サンプルと正常サンプルとを特定した後において、該作製異常サンプルに対し行うものである。
【0043】
本発明に係る第1のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法において、複数の調色サンプルから作製異常サンプルと正常サンプルとを特定する方法としては、特に限定されず、公知の方法や人間の視感で特定する方法等を用いることができる。
【0044】
次に、前記作製異常サンプルの本来作製しようとした着色剤配合比率RAT(RCALabn)からシミュレーション分光反射率RCALabnを算出するステップ
(ra1)を行う。作製異常サンプルの着色剤配合比率RAT(RCALabn)は、本来、作製しようとした配合であり、CCM工程にて得られた配合でもよいし、視感調色工程で得られた配合でもよい。RAT(RCALabn)を満たすシミュレーション分光反射率は、CCM工程で保有されていればそれを使用し、視感調色サンプルの場合は新たにその配合をキーインしてRCALabnを計算する。
【0045】
次に、前記式(3)により、RREALabnとΔRnor-aveとの各波長における分光反射率の差を示す分光反射率RCAL'abnを求めるステップ(ra2) を行う。
【0046】
なお、前記式(3)は前記式(1)と同様に、測定波長域内の各波長において適用するものとする。すなわち、前記式(3)で表される数値は波長毎に得られる単一の数値であるが、本発明においては、測定波長域内の任意の波長で測定した複数の数値の集合体を表するものとする。例えば、RREALabnは波長−分光反射率座標のグラフに表すと、測定波長域内で測定した任意の波長の点数が多いと、折れ線グラフや図1のような曲線等に類似するものとなる。ただし、本発明においては、表色値等の計算に用いられるデータは、前記式(3)で算出される各波長のデータのみが用いられ、グラフに表された曲線や折れ線グラフ等に基づいて計算することは行わない。
【0047】
本発明に係る第1のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法では、前記式(3)により、分光反射率RCAL'abnを求め、該RCAL'abnに基づいて、ステップ(ra3)以後の操作を行う。
【0048】
このようにステップ(ra3)以後の操作で、着色剤配合比率の異常を求めるに当たり、分光反射率RCAL'abnを基準として用いることができる根拠は、以下の通りである。すなわち、まず、作製異常サンプルabnの実測分光反射率RREALabnは、前記式(1)より下記式(1a)として表される。
RREALabn=RCALabn+ΔRabn (1a)
【0049】
該ΔRabnは、前記式(2)より下記式(2a)として表されるように、ΔRnor-aveに作製異常分ΔR'abnが加算されたものである。
ΔRabn=ΔR'abn+ΔRnor-ave (2a)
【0050】
そこで、作製異常分ΔR'abnを顕在化するべく、式(1a)のΔRabnに(2a)のΔRabnを代入して、整理すると下記式(3a)のように表される。
RCALabn+ΔR'abn=RREALabn−ΔRnor-ave (3a)
【0051】
すなわち、式(3)のRCAL'abnは、RREALabnから正常サンプルにも共通するシミュレーション誤差ΔRnor-aveを除去することで作製異常分ΔR'abnを顕在化させるものである。このように該作製異常分ΔR'abnが顕在化させることにより、以後のステップで作製異常原因着色剤を特定することが可能になる。
【0052】
次に、該RCAL'abnを略満たし、且つ、着色剤配合比率中の白着色剤の配合比率が前記RAT(RCALabn)の白着色剤の配合比率と等しくなるように算出した白固定時着色剤配合比率RATwh(RCAL'abn)を求めるステップ(ra3)を行う。具体的には、例えば、RAT(RCALabn)において着色剤が白着色剤wh、黒着色剤bl、赤着色剤re及び貴着色剤yeの4種類であり、且つ、着色剤配合比率wh:bl:re:yeが10:10:10:10だとすると、RATwh(RCAL'abn)では、wh:bl:re:yeを10:11:9:20のように白着色剤whの着色剤配合比率を10のまま固定して着色剤配合比率を求めるような操作をいう。
【0053】
また、前記RCAL'abnを略満たし、且つ、着色剤配合比率中の黒着色剤の配合比率が前記RAT(RCALabn)の黒着色剤の配合比率と等しくなるように算出した黒固定着色剤配合比率RATbl(RCAL'abn)を求めるステップ(ra4) を行う。該ステップ(ra4)の内容は着色剤配合比率を固定する着色剤を白着色剤から黒着色剤に変えた以外はステップ(ra3)と同様である。なお、ステップ(ra3)とステップ(ra4)とは、いずれを先に行ってもよく、また、同時に行ってもよい。
【0054】
次に、前記RAT(RCALabn)に対する前記RATwh(RCAL'abn)の着色剤配合比率の変化率を着色剤毎に算出して着色剤xの白固定時配合比変化率ΔCOMxRATwh(RCAL'abn)を求めるステップ(ra5)を行う。具体的には、上記の例でいうと、例えば、RAT(RCALabn)のwh:bl:re:yeが10:10:10:10で、RATwh(RCAL'abn)のwh:bl:re:yeが10:11:9:12である場合、着色剤whの白固定時配合比変化率ΔCOMwhRATwh(RCAL'abn)は0%、着色剤blの白固定時配合比変化率ΔCOMblRATwh(RCAL'abn)は10%、着色剤reの白固定時配合比変化率ΔCOMreRATwh(RCAL'abn)は−10%、着色剤yeの白固定時配合比変化率ΔCOMyeRATwh(RCAL'abn)は100%と求められるような操作をいう。
【0055】
次に、該ΔCOMxRATwh(RCAL'abn)が他の着色剤に比べて異常値を示す着色剤を白固定時異常着色剤として特定するステップ(ra6)を行う。具体的には、例えば、COMwhRATwh(RCAL'abn)が0%、ΔCOMblRATwh(RCAL'abn)が10%、着色剤reの白固定時配合比変化率ΔCOMreRATwh(RCAL'abn)が−10%、ΔCOMyeRATwh(RCAL'abn)が100%であると、ΔCOMyeRATwh(RCAL'abn)の絶対値が他に比べて大きく異常値を示すため、着色剤yeを白固定時異常着色剤として特定するような操作や、COMwhRATwh(RCAL'abn)が100%、ΔCOMblRATwh(RCAL'abn)が110%、着色剤reの白固定時配合比変化率ΔCOMreRATwh(RCAL'abn)が10%、ΔCOMyeRATwh(RCAL'abn)が90%であると、ΔCOMreRATwh(RCAL'abn)の絶対値が他に比べて小さく異常値を示すため、着色剤reを白固定時異常着色剤として特定するような操作をいう。なお、ΔCOMxRATwh(RCAL'abn)の異常性は絶対値の大小で判断するため、ΔCOMxRATwh(RCAL'abn)の数値が負の値であっても、同様に判断する。
【0056】
また、前記RAT(RCALabn)に対する前記RATbl(RCAL'abn)の着色剤配合比率の変化率を着色剤毎に算出して着色剤xの黒固定時配合比変化率ΔCOMxRATbl(RCAL'abn)を求めるステップ(ra7)を行う。該ステップ(ra7)の内容は着色剤配合比率を固定する着色剤を白着色剤から黒着色剤に変えた以外はステップ(ra5)と同様である。なお、ステップ(ra5)とステップ(ra7)とは、いずれを先に行ってもよく、また、同時に行ってもよい。
【0057】
次に、該ΔCOMxRATbl(RCAL'abn)が他の着色剤に比べて異常値を示す着色剤を黒固定時異常着色剤として特定するステップ(ra8)を行う。該ステップ(ra8)の内容は着色剤配合比率を固定する着色剤を白着色剤から黒着色剤に変えた以外はステップ(ra6)と同様である。なお、ステップ(ra6)とステップ(ra8)とは、いずれを先に行ってもよく、また、同時に行ってもよい。
【0058】
最後に、前記白固定時異常着色剤又は前記黒固定時異常着色剤のいずれか又は両方に該当する着色剤を、前記作製異常サンプルの作製異常原因の着色剤として特定するステップ(ra9)を行う。具体的には、上記の例でいうと、例えば白固定時異常着色剤及び黒固定時異常着色剤が共に着色剤yeである場合や、白固定時異常着色剤又は黒固定時異常着色剤のいずれかに該当する着色剤が着色剤yeである場合に、着色剤yeを作製異常サンプルの作製異常原因の着色剤として特定するような操作をいう。なお、白固定時異常着色剤又は黒固定時異常着色剤が、黄着色剤や赤着色剤のような有彩色である場合には白固定時異常着色剤又は黒固定時異常着色剤のいずれか一方を特定するだけで作製異常原因の着色剤として特定することが可能であるが、白着色剤や黒着色剤のような無彩色である場合には、白固定時異常着色剤及び黒固定時異常着色剤の両方に共通するものを作製異常原因の着色剤として特定する。
【0059】
上記本発明に係る第1のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法は、作製異常サンプルの作製異常原因が、自己着色剤の種類は正常サンプルと一致しているが、自己着色剤の配合比率が作業工程上のトラブル等により変化したことにある場合に、高い精度で作製異常着色剤を特定できるものである。なお、本明細書において、自己着色剤とは正常サンプルに含まれる着色剤をいう。
【0060】
なお、上記CCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法は、CCMソフト中に組込んで実行すると、調色作業中に即座に異常を判断できるため好ましい。
【0061】
なお、本発明において、調色サンプルが透明な場合は、上記分光反射率に代えて、分光透過率を用いることが好ましい。具体的には、本発明に係る第1のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法を、複数の調色サンプルから作製異常サンプルと正常サンプルとを特定した後において、該作製異常サンプルに対し、
前記作製異常サンプルの本来作製しようとした着色剤配合比率RAT(TCALabn)からシミュレーション分光反射率TCALabnを算出するステップ (ta1)、
前記式(3′)により、TREALabnとΔTnor-aveとの各波長における分光透過率の差を示す分光透過率TCAL'abnを求めるステップ(ta2)、
該TCAL'abnを略満たし、且つ、着色剤配合比率中の白着色剤の配合比率が前記RAT(TCALabn)の白着色剤の配合比率と等しくなるように算出した白固定時着色剤配合比率RATwh(TCAL'abn)を求めるステップ(ta3)、
前記TCAL'abnを略満たし、且つ、着色剤配合比率中の黒着色剤の配合比率が前記RAT(TCALabn)の黒着色剤の配合比率と等しくなるように算出した黒固定着色剤配合比率RATbl(TCAL'abn)を求めるステップ(ta4)、
前記RAT(TCALabn)に対する前記RATwh(TCAL'abn)の着色剤配合比率の変化率を着色剤毎に算出して着色剤xの白固定時配合比変化率ΔCOMxRATwh(TCAL'abn)を求めるステップ(ta5)、
該ΔCOMxRATwh(TCAL'abn)が他の着色剤に比べて異常値を示す着色剤を白固定時異常着色剤として特定するステップ(ta6)、
前記RAT(TCALabn)に対する前記RATbl(TCAL'abn)の着色剤配合比率の変化率を着色剤毎に算出して着色剤xの黒固定時配合比変化率ΔCOMxRATbl(TCAL'abn)を求めるステップ(ta7)、
該ΔCOMxRATbl(TCAL'abn)が他の着色剤に比べて異常値を示す着色剤を黒固定時異常着色剤として特定するステップ(ta8)、及び、
前記白固定時異常着色剤又は前記黒固定時異常着色剤のいずれか又は両方に該当する着色剤を、前記作製異常サンプルの作製異常原因の着色剤として特定するステップ(ta9)を含む工程を行うことを特徴とするCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法とすればよい。該方法を本発明に係る第2のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法という。
【0062】
本発明に係る第2のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法は、上記本発明に係る第1のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法において、分光反射率を分光透過率に代える以外は同様である。
【0063】
本発明に係る第3のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法は、作製異常サンプルの作製異常原因が、特に自己着色剤の種類は正常サンプルと一致しているが、自己着色剤自体の発色安定性が着色剤の凝集等により損なわれている場合において、高い精度で作製異常着色剤を特定できるものである。
【0064】
該方法は、複数の調色サンプルに対し行うものである。
【0065】
本発明に係る第3のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法において、複数の調色サンプルから検定したいサンプルを特定する方法としては、特に限定されず、公知の方法や人間の視感で特定する方法等を用いることができる。
【0066】
次に、前記式(1)により、RREALnとRCALnとの各波長における分光反射率の差を示す分光反射率を、調色サンプルnのシミュレーション誤差ΔRnとして求めるステップ(rb1)を行う。
【0067】
次に、前記式(4)により、調色サンプル中の任意の2個の調色サンプルiと調色サンプルjとの各波長における分光反射率の差を示す分光反射率ΔΔRi-jを、全ての調色サンプルの組み合わせについて求めるステップ(rb2) を行い、
【0068】
次に、前記ΔΔRi-jのうち、大きいものから順に少なくとも1個選択したΔΔRi-jをΔΔRi-j.larとして求めるステップ(rb3)を行う。
【0069】
前記ステップ(rb2)は、作製異常サンプルを含めた全ての調色サンプル間でシミュレーション誤差同士を差し引くことにより、作製異常サンプルがシミュレーション誤差中に含む作製異常分を顕在化させる操作である。そして、前記ステップ(rb3)は、顕在化した作製異常分のうち、特に顕在化した作製異常分を表すデータを抽出する操作である。
【0070】
前記ステップ(rb2)及び(rb3)を行う理由は以下のとおりである。まず、着色剤のうち1種でも発色不安定なものが含まれていると、調色が適切に行われないため、通常は調色サンプルの略全部が作製異常サンプルabnとなる。これら作製異常サンプルabnは、前記式(2)を変形した下記式(2b)によりシミュレーション誤差ΔRabn中に作製異常分ΔR'abnを含むものとなる。
ΔRabn=ΔRnor-ave+ΔR'abn (2b)
【0071】
しかし、作製異常サンプルが数多く存在すると、通常ΔR'abnが作製異常サンプル毎に異なった値を有するため、式(2b)においてΔRnor-aveが一定とみなし得る場合でないと、作製異常分ΔR'abnを特定することができない。しかし、上記のように着色剤のうち1種でも発色不安定なものがあると、調色サンプルの略全部が作製異常サンプルabnとなり、正常サンプルの絶対数が作製異常サンプルよりもはるかに少ないため、前記式(2)におけるΔRnor-aveを信頼し得る値として得ることができない。このため、前記式(2)により作製異常分ΔR'abnを特定することが実質的にできないため、前記式(2)以外の方法で作製異常分を特定する必要がある。
【0072】
この点について、具体例として、調色サンプルa、b、cの3個が存在する場合を挙げて説明する。それぞれの作製異常サンプルのシミュレーション誤差ΔRabn-a、ΔRabn-b、ΔRabn-cを、それぞれの作製異常サンプルの作製異常分ΔR'abn-a、ΔR'abn-b、ΔR'abn-cを含めて表すと次のようになる。
ΔRabn-a=ΔRnor-ave+ΔR'abn-a (2b-a)
ΔRabn-b=ΔRnor-ave+ΔR'abn-b (2b-b)
ΔRabn-c=ΔRnor-ave+ΔR'abn-c (2b-c)
【0073】
ここでΔR'abn-a、ΔR'abn-b等の作製異常分とは、例えば、調色サンプルaの発色異常原因着色剤が赤着色剤reであれば、赤着色剤reに特有の波長域に現れる作製異常分がΔR'abn-aであり、調色サンプルbの発色異常原因着色剤が黄着色剤yeであれば、黄着色剤yeに特有の波長域に現れる作製異常分がΔR'abn-bであるといったものである。
【0074】
これら(2b-a)〜(2b-c)の式同士で左辺毎、右辺毎に差を採ると、下記式(2c)のようになる。
ΔRabn-a−ΔRabn-b=ΔR'abn-a−ΔR'abn-b
ΔRabn-b−ΔRabn-c=ΔR'abn-b−ΔR'abn-c
ΔRabn-c−ΔRabn-a=ΔR'abn-c−ΔR'abn-a (2c)
ΔRabn-b−ΔRabn-a=ΔR'abn-b−ΔR'abn-a
ΔRabn-c−ΔRabn-b=ΔR'abn-c−ΔR'abn-b
ΔRabn-a−ΔRabn-c=ΔR'abn-a−ΔR'abn-c
【0075】
このように2個の調色サンプルのシミュレーション誤差ΔRabn間で差を採ると、それぞれの式においてΔRnor-aveが相殺され、上記ΔR'abn-a−ΔR'abn-b等のような2個の調色サンプルの作製異常分ΔR'abn同士の差のみが算出される。そして、この作製異常分ΔR'abn同士の差、すなわちシミュレーション誤差ΔRabn同士の差は、2個の調色サンプル間における着色剤の発色異常による作製異常分の2個の分の差を示すものであるから、シミュレーション誤差ΔRabn同士の差の値が大きい場合には、作製異常分が顕在化したものと推定できる。
【0076】
例えば、調色サンプルaの発色異常原因着色剤が赤着色剤reでありその原因が発色過多によるものであり、且つ、調色サンプルbの発色異常原因着色剤が赤着色剤reでありその原因が発色不十分によるものであれば、作製異常分の現れる波長域が同じであるため、赤着色剤re作製異常分の2個分が加重され、赤着色剤reの作製異常分が顕在化する。
【0077】
また、調色サンプルaの発色異常原因着色剤が赤着色剤reで、調色サンプルbの発色異常原因着色剤が黄着色剤yeであれば、作製異常分の現れる波長域が異なるため、ΔRabn-a−ΔRabn-bには、赤着色剤reの作製異常分及び黄着色剤yeの作製異常分が加重され、赤着色剤re及び黄着色剤yeの作製異常分が顕在化する。この様子は、波長−分光反射率のグラフに表すと、赤着色剤reの作製異常分の特定波長域に生ずる分光反射率曲線の山と黄着色剤yeの作製異常分の特定波長域に生ずる分光反射率曲線の山とが、異なる特定波長域に離れて又は一部重なって生じるようなものとなる。
【0078】
このように、任意の調色サンプルiと調色サンプルjとで、前記式(4)で表される分光反射率|ΔΔRi-j|を算出し、さらに|ΔΔRi-j|が大きい値を採れば、作製異常分を顕在化させることができるため、さらに下記操作を行えば作製異常原因着色剤を特定できるものと推定できる。
【0079】
次に、任意に選択される少なくとも1個の調色サンプルのシミュレーション分光反射率の各波長における分光反射率の相加平均を示す分光反射率RCALn-aveを求めるステップ(rb4)を行う。例えば、調色サンプルがa、b、cの3個あり、RCALaの波長λ1における値が50%、波長λ2における値が50%であり、RCALbの波長λ1における値が40%、波長λ2における値が40%であり、RCALcの波長λ1における値が30%、波長λ2における値が60%であるとすると、RCALn-aveは、RCALa、RCALb、RCALcのそれぞれの値そのものでもよく、また、RCALa、RCALb、RCALc全ての相加平均をとれば、波長λ1における値が40%、波長λ2における値が50%となる。RCALn-aveは、以下のステップにおいて、ΔΔRi-j.larを加えた値のベースとなるにすぎず、すなわち、RCALn-aveは現実的な調色サンプルの分光反射率等のデータを持つものであればよいため、少なくとも1個の調色サンプルについての相加平均値をとればよい。
【0080】
次に、前記式(5)により、前記RCALn-aveと前記ΔΔRi-j. larとの各波長における分光反射率の和を示す分光反射率RCAL*+n-aveを求めるステップ(rb5)を行う。
【0081】
該ステップ(rb5)は、シミュレーション誤差の差分ΔΔRi-j.larを調色サンプルとして一応現実的なL*a*b*を有するRCALn-aveに加えて作製異常分が加重されたRCAL*+n-aveを得、該RCAL*+n-aveでCCMにて着色剤配合比率を算出することにより、作製異常分が加重された着色剤配合比率を得るものである。
【0082】
次に、前記RCALn-aveを満たす着色剤配合比率RAT(RCALn-ave)を求めるステップ(rb6)を行う。該ステップ(rb6)は、少なくとも1個の正常サンプルの着色剤配合比率の平均からシミュレーション分光反射率RCALn-aveを算出するステップである。
【0083】
次に、前記RCAL*+n-aveを略満たし、且つ、着色剤配合比率中の白着色剤の配合比率が前記RAT(RCALn-ave)の白着色剤の配合比率と等しくなるように算出した白固定時着色剤配合比率RATwh(RCAL*+n-ave)を求めるステップ(rb7)を行う。このステップにおける操作は、前記ステップ(ra3)と同様である。
【0084】
また、前記RCAL*+n-aveを略満たし、且つ、着色剤配合比率中の黒着色剤の配合比率が前記RAT(RCALn-ave)の黒着色剤の配合比率と等しくなるように算出した黒固定時着色剤配合比率RATbl(RCAL*+n-ave)を求めるステップ(rb8) を行う。該ステップ(rb8)の内容は着色剤配合比率を固定する着色剤を白着色剤から黒着色剤に変えた以外はステップ(rb7)と同様である。なお、ステップ(rb7)とステップ(rb8)とは、いずれを先に行ってもよく、また、同時に行ってもよい。
【0085】
次に、前記RAT(RCALn-ave)に対する前記RATwh(RCAL*+n-ave)の着色剤配合比率の変化率を着色剤毎に算出して着色剤xの白固定時配合比変化率ΔCOMxRATwh(RCAL*+n-ave)を求めるステップ(rb9) を行う。このステップにおける操作は、前記ステップ(ra5)と同様である。
【0086】
次に、該ΔCOMxRATwh(RCAL*+n-ave)が他の着色剤に比べて異常値を示す着色剤を白固定時異常着色剤として特定するステップ(rb10) を行う。このステップにおける操作は、前記ステップ(ra6)と同様である。
前記RAT(RCALn-ave)に対する前記RATbl(RCAL*+n-ave)の着色剤配合比率の変化率を着色剤毎に算出して着色剤xの黒固定時配合比変化率ΔCOMxRATbl(RCAL*+n-ave)を求めるステップ(rb11)を行う。このステップにおける操作は、前記ステップ(ra7)と同様である。
【0087】
次に、該ΔCOMxRATbl(RCAL*+n-ave)が他の着色剤に比べて異常値を示す着色剤を黒固定時異常着色剤として特定するステップ(rb12) を行う。このステップにおける操作は、前記ステップ(ra8)と同様である。
【0088】
最後に、前記白固定時異常着色剤又は前記黒固定時異常着色剤のいずれか又は両方に該当する着色剤を、作製異常サンプルの作製異常原因の着色剤として特定するステップ(rb13) を行う。このステップにおける操作は、前記ステップ(ra9)と同様である。
【0089】
上記本発明に係る第3のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法は、作製異常サンプルの作製異常原因が、自己着色剤の種類は正常サンプルと一致しているが、自己着色剤自体の発色安定性が着色剤の凝集等により損なわれている場合に、高い精度で作製異常着色剤を特定できるものである。なお、本発明に係る第3のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法は、このような場合にのみ効果を有するものではなく、作製異常サンプルの作製異常原因が、自己着色剤の種類は正常サンプルと一致しているが、自己着色剤の配合比率が作業工程上のトラブル等により変化したことにある場合、及び、作製異常サンプルの作製異常原因が、特に自己着色剤以外の着色剤が混入されている場合においても同様の効果を奏するものである。
【0090】
なお、上記CCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法は、CCMソフト中に組込んで実行すると、調色作業中に即座に異常を判断できるため好ましい。
【0091】
なお、本発明において、調色サンプルが透明な場合は、上記分光反射率に代えて、分光透過率を用いることが好ましい。具体的には、本発明に係る第3のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法を、複数の調色サンプルに対し、
前記式(1′)により、TREALnとTCALnとの各波長における分光透過率の差を示す分光透過率を、調色サンプルnのシミュレーション誤差ΔTnとして求めるステップ(tb1)、
前記式(4′)により、調色サンプル中の任意の2個の調色サンプルiと調色サンプルjとの各波長における分光透過率の差を示す分光透過率ΔΔTi-jを、全ての調色サンプルの組み合わせについて求めるステップ(tb2)、
前記ΔΔTi-jのうち、大きいものから順に少なくとも1個選択したΔΔTi-jをΔΔTi-j.larとして求めるステップ(tb3)、
任意に選択される少なくとも1個の調色サンプルのシミュレーション分光透過率の各波長における分光透過率の相加平均を示す分光透過率TCALn-aveを求めるステップ(tb4)、
前記式(5′)により、前記TCALn-aveと前記ΔΔTi-j. larとの各波長における分光透過率の和を示す分光透過率TCAL*+n-aveを求めるステップ(tb5)、
前記TCALn-aveを満たす着色剤配合比率RAT(TCALn-ave)を求めるステップ(tb6)、
前記TCAL*+n-aveを略満たし、且つ、着色剤配合比率中の白着色剤の配合比率が前記RAT(TCALn-ave)の白着色剤の配合比率と等しくなるように算出した白固定時着色剤配合比率RATwh(TCAL*+n-ave)を求めるステップ(tb7)、
前記TCAL*+n-aveを略満たし、且つ、着色剤配合比率中の黒着色剤の配合比率が前記RAT(TCALn-ave)の黒着色剤の配合比率と等しくなるように算出した黒固定時着色剤配合比率RATbl(TCAL*+n-ave)を求めるステップ(tb8)、
前記RAT(TCALn-ave)に対する前記RATwh(TCAL*+n-ave)の着色剤配合比率の変化率を着色剤毎に算出して着色剤xの白固定時配合比変化率ΔCOMxRATwh(TCAL*+n-ave)を求めるステップ(tb9)、
該ΔCOMxRATwh(TCAL*+n-ave)が他の着色剤に比べて異常値を示す着色剤を白固定時異常着色剤として特定するステップ(tb10)、
前記RAT(TCALn-ave)に対する前記RATbl(TCAL*+n-ave)の着色剤配合比率の変化率を着色剤毎に算出して着色剤xの黒固定時配合比変化率ΔCOMxRATbl(TCAL*+n-ave)を求めるステップ(tb11)、
該ΔCOMxRATbl(TCAL*+n-ave)が他の着色剤に比べて異常値を示す着色剤を黒固定時異常着色剤として特定するステップ(tb12)、及び、
前記白固定時異常着色剤又は前記黒固定時異常着色剤のいずれか又は両方に該当する着色剤を、作製異常サンプルの作製異常原因の着色剤として特定するステップ(tb13)を含む工程を行うことを特徴とするCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法とすればよい。該方法を本発明に係る第4のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法という。
【0092】
本発明に係る第4のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法は、上記本発明に係る第3のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法において、分光反射率を分光透過率に代える以外は同様である。
【0093】
本発明に係る第5のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法は、作製異常サンプルの作製異常原因が、自己着色剤の種類は正常サンプルと一致しているが、自己着色剤自体の発色安定性が着色剤の凝集等により損なわれている場合において、高い精度で作製異常着色剤を特定できるものである。すなわち、本発明に係る第5のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法は、本発明に係る第3のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法と同様の場合において、高い精度で作製異常着色剤を特定できるものである。
【0094】
本発明に係る第5のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法は、ステップ(rc5)において、本発明に係る第3のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法のステップ(rb5)で前記式(5)を用いてRCAL*+n-aveを得る代わりに、前記式(6)を用いてRCAL*-n-aveを得る以外は、同様の操作を行うものであり、また、ステップ(rc6)以後のステップにおいて、本発明に係る第3のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法のステップ(rb6) 以後のステップで用いるRCAL*+n-aveに代えて、RCAL*-n-aveを用いる以外は、同様のステップを有するものである。
【0095】
該方法は、複数の調色サンプルに対し行うものである。
【0096】
本発明に係る第5のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法において、複数の調色サンプルから検定したいサンプルを特定する方法としては、特に限定されず、公知の方法や人間の視感で特定する方法等を用いることができる。
【0097】
次に、前記式(1)により、RREALnとRCALnとの各波長における分光反射率の差を示す分光反射率を、調色サンプルnのシミュレーション誤差ΔRnとして求めるステップ(rc1) を行う。該ステップ(rc1)は、前記ステップ(rb1)と全く同じ操作である。
【0098】
次に、前記式(4)により、調色サンプル中の任意の2個の調色サンプルiと調色サンプルjとの各波長における分光反射率の差を示す分光反射率ΔΔRi-jを、全ての調色サンプルの組み合わせについて求めるステップ(rc2) を行い、
【0099】
次に、前記ΔΔRi-jのうち、大きいものから順に少なくとも1個選択したΔΔRi-jをΔΔRi-j.larとして求めるステップ(rc3) を行う。ステップ(rc2)は、前記ステップ(rb2)と全く同じ操作であり、該ステップ(rc3)は、前記ステップ(rb3)と全く同じ操作である。
【0100】
次に、任意に選択される少なくとも1個の調色サンプルのシミュレーション分光反射率の各波長における分光反射率の相加平均を示す分光反射率RCALn-aveを求めるステップ(rc4) を行う。該ステップ(rc4)は、前記ステップ(rb4)と全く同じ操作である。
【0101】
次に、前記式(6)により、前記RCALn-aveと前記ΔΔRi-j. larとの各波長における分光反射率の差を示す分光反射率RCAL*-n-aveを求めるステップ(rc5) を行う。
該ステップ(rc5)は、前記ステップ(rb5) において、前記式(5)を用いてRCAL*+n-aveを得る代わりに、ステップ(rc5)において前記式(6)を用いてRCAL*-n-aveを得る以外は、実質的に同様の操作を行うものである。
【0102】
該ステップ(rc5)は、シミュレーション誤差の差分ΔΔRi-j.larを調色サンプルとして一応現実的なL*a*b*を有するRCALn-aveから減じて作製異常分がマイナス方向に加重されたRCAL*-n-aveを得、該RCAL*-n-aveでCCMシミュレーションすることにより、作製異常分がマイナス方向に加重された分光反射率等のデータを得るものである。このようにΔΔRi-j.larをRCALn-aveから減じる理由は、前記ステップ(rb5)で述べたのと同様であり、非現実的なL*a*b*を有するΔΔRi-j.larの値のみでCCMシミュレーションすると、CCMシミュレーションの結果が現実的な調色サンプルの分光反射率等のデータから大きく逸脱してしまうからである。
【0103】
次に、前記RCALn-aveを満たす着色剤配合比率RAT(RCALn-ave)を求めるステップ(rc6) を行う。該ステップ(rc6)は、前記ステップ(rb6)と全く同じ操作である。
【0104】
次に、前記RCAL*-n-aveを略満たし、且つ、着色剤配合比率中の白着色剤の配合比率が前記RAT(RCALn-ave)の白着色剤の配合比率と等しくなるように算出した白固定時着色剤配合比率RATwh(RCAL*-n-ave)を求めるステップ(rc7) を行う。該ステップ(rc7)は、RCAL*+n-aveに代えてRCAL*-n-aveを用いる以外は前記ステップ(rb7)と同様である。
【0105】
また、前記RCAL*-n-aveを略満たし、且つ、着色剤配合比率中の黒着色剤の配合比率が前記RAT(RCALn-ave)の黒着色剤の配合比率と等しくなるように算出した黒固定時着色剤配合比率RATbl(RCAL*-n-ave)を求めるステップ(rc8) を行う。該ステップ(rc8)は、RCAL*+n-aveに代えてRCAL*-n-aveを用いる以外は前記ステップ(rb8)と同様である。なお、ステップ(rc7)とステップ(rc8)とは、いずれを先に行ってもよく、また、同時に行ってもよい。
【0106】
次に、前記RAT(RCALn-ave)に対する前記RATwh(RCAL*-n-ave)の着色剤配合比率の変化率を着色剤毎に算出して着色剤xの白固定時配合比変化率ΔCOMxRATwh(RCAL*-n-ave)を求めるステップ(rc9) を行う。該ステップ(rc9)は、RATwh(RCAL*+n-ave)に代えてRATwh(RCAL*-n-ave)を用いる以外は前記ステップ(rb9)と同様である。
【0107】
該ΔCOMxRATwh(RCAL*-n-ave)が他の着色剤に比べて異常値を示す着色剤を白固定時異常着色剤として特定するステップ(rc10) を行う。該ステップ(rc10)は、ΔCOMxRATwh(RCAL*+n-ave)に代えてΔCOMxRATwh(RCAL*-n-ave)を用いる以外は前記ステップ(rb10)と同様である。
【0108】
前記RAT(RCALn-ave)に対する前記RATbl(RCAL*-n-ave)の着色剤配合比率の変化率を着色剤毎に算出して着色剤xの黒固定時配合比変化率ΔCOMxRATbl(RCAL*-n-ave)を求めるステップ(rc11) を行う。該ステップ(rc11)は、ΔCOMxRATbl(RCAL*+n-ave)に代えてΔCOMxRATbl(RCAL*-n-ave)を用いる以外は前記ステップ(rb11)と同様である。
【0109】
次に、該ΔCOMxRATbl(RCAL*-n-ave)が他の着色剤に比べて異常値を示す着色剤を黒固定時異常着色剤として特定するステップ(rc12) を行う。該ステップ(rc12)は、ΔCOMxRATbl(RCAL*+n-ave)に代えてΔCOMxRATbl(RCAL*-n-ave)を用いる以外は前記ステップ(rb12)と同様である。
【0110】
最後に、前記白固定時異常着色剤又は前記黒固定時異常着色剤のいずれか又は両方に該当する着色剤を、作製異常サンプルの作製異常原因の着色剤として特定するステップ(rc13) を行う。
【0111】
上記本発明に係る第5のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法は、作製異常サンプルの作製異常原因が、自己着色剤の種類は正常サンプルと一致しているが、自己着色剤自体の発色安定性が着色剤の凝集等により損なわれている場合に、高い精度で作製異常着色剤を特定できるものである。なお、本発明に係る第5のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法は、このような場合にのみ効果を有するものではなく、作製異常サンプルの作製異常原因が、自己着色剤の種類は正常サンプルと一致しているが、自己着色剤の配合比率が作業工程上のトラブル等により変化したことにある場合、及び、作製異常サンプルの作製異常原因が、特に自己着色剤以外の着色剤が混入されている場合においても同様の効果を奏するものである。
【0112】
なお、上記CCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法は、CCMソフト中に組込んで実行すると、調色作業中に即座に異常を判断できるため好ましい。
【0113】
なお、本発明において、調色サンプルが透明な場合は、上記分光反射率に代えて、分光透過率を用いることが好ましい。具体的には、本発明に係る第5のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法を、複数の調色サンプルに対し、
前記式(1′)により、TREALnとTCALnとの各波長における分光透過率の差を示す分光透過率を、調色サンプルnのシミュレーション誤差ΔTnとして求めるステップ(tc1)、
前記式(4′)により、調色サンプル中の任意の2個の調色サンプルiと調色サンプルjとの各波長における分光透過率の差を示す分光透過率ΔΔTi-jを、全ての調色サンプルの組み合わせについて求めるステップ(tc2)、
前記ΔΔTi-jのうち、大きいものから順に少なくとも1個選択したΔΔTi-jをΔΔTi-j.larとして求めるステップ(tc3)、
任意に選択される少なくとも1個の調色サンプルのシミュレーション分光透過率の各波長における分光透過率の相加平均を示す分光透過率TCALn-aveを求めるステップ(tc4)、
前記式(6′)により、前記TCALn-aveと前記ΔΔTi-j. larとの各波長における分光透過率の差を示す分光透過率TCAL*-n-aveを求めるステップ(tc5)、
前記TCALn-aveを満たす着色剤配合比率RAT(TCALn-ave)を求めるステップ(tc6)、
前記TCAL*-n-aveを略満たし、且つ、着色剤配合比率中の白着色剤の配合比率が前記RAT(TCALn-ave)の白着色剤の配合比率と等しくなるように算出した白固定時着色剤配合比率RATwh(TCAL*-n-ave)を求めるステップ(tc7)、
前記TCAL*-n-aveを略満たし、且つ、着色剤配合比率中の黒着色剤の配合比率が前記RAT(TCALn-ave)の黒着色剤の配合比率と等しくなるように算出した黒固定時着色剤配合比率RATbl(TCAL*-n-ave)を求めるステップ(tc8)、
前記RAT(TCALn-ave)に対する前記RATwh(TCAL*-n-ave)の着色剤配合比率の変化率を着色剤毎に算出して着色剤xの白固定時配合比変化率ΔCOMxRATwh(TCAL*-n-ave)を求めるステップ(tc9)、
該ΔCOMxRATwh(TCAL*-n-ave)が他の着色剤に比べて異常値を示す着色剤を白固定時異常着色剤として特定するステップ(tc10)、
前記RAT(TCALn-ave)に対する前記RATbl(TCAL*-n-ave)の着色剤配合比率の変化率を着色剤毎に算出して着色剤xの黒固定時配合比変化率ΔCOMxRATbl(TCAL*-n-ave)を求めるステップ(tc11)、
該ΔCOMxRATbl(TCAL*-n-ave)が他の着色剤に比べて異常値を示す着色剤を黒固定時異常着色剤として特定するステップ(tc12)、及び、
前記白固定時異常着色剤又は前記黒固定時異常着色剤のいずれか又は両方に該当する着色剤を、作製異常サンプルの作製異常原因の着色剤として特定するステップ(tc13)を含む工程を行うことを特徴とするCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法とすればよい。該方法を本発明に係る第6のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法という。
【0114】
本発明に係る第6のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法は、上記本発明に係る第5のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法において、分光反射率を分光透過率に代える以外は同様である。
【0115】
本発明に係る第7のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法は、作製異常サンプルの作製異常原因が、特に自己着色剤以外の着色剤が混入されている場合において、高い精度で作製異常着色剤を特定できるものである。
【0116】
該方法は、複数の調色サンプルから作製異常サンプルと正常サンプルとを特定した後において、該作製異常サンプルに対し行うものである。
【0117】
本発明に係る第7のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法において、複数の調色サンプルから作製異常サンプルと正常サンプルとを特定する方法としては、特に限定されず、公知の方法や人間の視感で特定する方法等を用いることができる。
【0118】
次に、前記式(3)により、RREALabnとΔRnor-aveとの各波長における分光反射率の差を示す分光反射率RCAL'abnを求めるステップ(rd1)を行う。
【0119】
次に、前記RCAL'abnから計算された三刺激値XYZをターゲットとして計算されたシミュレーション分光反射率RCALqを、正常サンプルの調色に用いられる自己着色剤のみでCCMシミュレーションして算出したものと、該自己着色剤にCCMシステムのデータベース内にある着色剤1種類を加えてCCMシミュレーションして算出したもの複数個とを求めるステップ(rd2) を行う。
【0120】
次に、前記RCALqと前記RCAL'abnとの、各波長における分光反射率の差の絶対値の測定波長域全体に渡る総和を示すRSDIFqを各RCALqについて求めるステップ(rd3) を行う。
【0121】
次に、全てのRCALqのうち前記RSDIFqが最小値になるものをRCALq-minとして特定するステップ(rd4) を行う。
【0122】
次に、該RCALq-min中に含まれる着色剤の種類から前記自己着色剤を除いた残りの着色剤を、前記作製異常サンプルの作製異常原因の着色剤として特定するステップ(rd5) を行う。
【0123】
なお、上記CCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法は、CCMソフト中に組込んで実行すると、調色作業中に即座に異常を判断できるため好ましい。
【0124】
なお、本発明において、調色サンプルが透明な場合は、上記分光反射率に代えて、分光透過率を用いることが好ましい。具体的には、本発明に係る第7のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法を、複数の調色サンプルから作製異常サンプルと正常サンプルとを特定した後において、該作製異常サンプルに対し、
前記式(3′)により、TREALabnとΔTnor-aveとの各波長における分光透過率の差を示す分光透過率TCAL'abnを求めるステップ(td1)、
前記TCAL'abnから計算された三刺激値XYZをターゲットとして計算されたシミュレーション分光透過率TCALqを、正常サンプルの調色に用いられる自己着色剤のみでCCMシミュレーションして算出したものと、該自己着色剤にCCMシステムのデータベース内にある着色剤1種類を加えてCCMシミュレーションして算出したもの複数個とを求めるステップ(td2)、
前記TCALqと前記TCAL'abnとの、各波長における分光透過率の差の絶対値の測定波長域全体に渡る総和を示すTSDIFqを各TCALqについて求めるステップ(td3)、
全てのTCALqのうち前記TSDIFqが最小値になるものをTCALq-minとして特定するステップ(td4)、及び、
該TCALq-min中に含まれる着色剤の種類から前記自己着色剤を除いた残りの着色剤を、前記作製異常サンプルの作製異常原因の着色剤として特定するステップ(td5)を含む工程を行うことを特徴とするCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法とすればよい。該方法を本発明に係る第8のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法という。
【0125】
本発明に係る第8のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法は、上記本発明に係る第7のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法において、分光反射率を分光透過率に代える以外は同様である。
【0126】
本発明は、CCMや視感調色作業において、作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定作業に用いることができる。
【実施例】
【0127】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものでない。
【0128】
実施例1
[作製再現性の推定方法]
図1(a)〜(h)に、調色サンプルの実測の分光反射率とシミュレーション分光反射率および両者の差ΔR-nを表示し、調色過程において2回目の調色サンプルに異常があった場合の例を概念的に示す。横軸は可視光の波長範囲を、左側グラフの縦軸は分光反射率を、右側グラフの縦軸は分光反射率差を表す。また、左側グラフの点線は実測分光反射率RREAL-nを、実線はシミュレーション分光反射率RCAL-nを示す。ただし、このグラフでは両者の差が比較しずらいので、右側グラフにRCAL-nを基準にRREAL-nとの差ΔR-nを示した。なお、見やすく表示するために縦軸を5倍にして表示した。
ΔR-n=RREAL-n−RCAL-n (35)
【0129】
図1(a)〜(h)の個別の表示を一つにまとめて図2(a)〜(b)に示した。図2(b)から明らかなように1、3,4回目の調色サンプルのΔRはほぼ同じ値になっているが2回目の調色サンプルのΔRは他と異なっており、作製過程における異常サンプル(以下、作製異常サンプルと記す)であり、このΔRの異なりから異常として摘出が可能となる。異常と判断されたサンプルのRCAL-abn(サフィックスを-abnとして示す)に対するRREAL-abnの差ΔR-abnには異常分とシミュレーション誤差が含まれているので、シミュレーション誤差を取り除けば異常分が抽出できることになる。異常分の抽出方法の概念を図3(a)〜(c)に示す。異常分の抽出方法の計算手順(I)(II)(III)(IV)を以下に記し、手順(I) (II) (III)で得られた分光反射率を図3(b)の(I) (II) (III)に示し、手順(IV)で得られた分光反射率差を図3(c)の(IV)に示した。横軸、縦軸は図1(a)〜(h)と同じである。左側上段は、図2で正常と判断された調色サンプルのΔR-nの平均ΔR-aveを表す。計算手順は、(I)作製異常サンプルの実測分光反射率RREAL-abnを測定する。(II)作製しようとした着色剤の比率からシミュレーション分光反射率RCAL-abnを計算する。(III)異常として摘出されたもの以外の調色サンプル(作製再現性が良いと認識された調色サンプル)のシミュレーション誤差ΔR-nの平均値ΔR-aveを算出し、(II)で求めたRCAL-abnにΔR-aveを加えたRREAL’-abnを計算する。つまり、RREAL’-abnはサンプルが正しく作製されたと仮定した時の実測分光反射率を意味する。(IV)RREAL’-abnと実測分光反射率RREAL-abnとの差が異常分として抽出される。
RREAL’-abn=RCAL-abn+ΔR-ave (36)
ここで、ΔR-ave=(1/n)Σ(RREAL-n−RCAL-n )
ただし、ΔR-aveの算出にあたってRREAL-abnの測定値は除く。
【0130】
作製異常サンプルの異常分ΔR’-abnは式(37)で表される。
ΔR’-abn =RREAL-abn − RREAL’-abn (37)
【0131】
[サンプルの作製と測定]
ターゲットSに対し、色相(H)、明度(V)、彩度(C)の三属性の一つがΔE*=2程度+側に変化したサンプルは調色サンプルを想定したものであり、三属性の成分が複合された実際の調色サンプルはこの色の範囲に包含される。Sはこれから作製しようとするサンプルに相当する。今Sを作製しようとして作製異常サンプルができてしまったことを想定し、使用されている着色剤(以下自己着色剤と表示する)の比率が変化した作製異常サンプルとしてS配合の一つの着色剤の量を増減させ、SとのΔE*が1程度のサンプルを作製した。また、異質の着色剤が混入した作製異常サンプルとして自己着色剤と異なる4種類の着色剤のうち1種類を追加し、SとのΔE*が1程度のサンプルを作製した。調色サンプル、作製異常サンプルの配合はCCMシステムにてサンプルSからの補正計算にて算出した。
【0132】
作製したサンプルの着色剤配合を表1に、表色値と色差を表2に示す。表1中の単位は、重量部である。表2のΔE*欄に示されるように、調色サンプルを想定したサンプルH+,V+、C+はΔE*が2程度、自己着色剤の量が増減した作製異常を想定したサンプル+4172,-4172、+4420、-4420、+4050、-4050、+4710、-4710はΔE*が1程度、表2の異質の着色剤が混入された作製異常を想定したサンプル+4510、+4170、+4157、+4440、+4467はΔE*が1程度のものが作製されていることがわかる。
【0133】
更に、式(6)のΔR-aveは先に作製した調色サンプルH+,V+、C+のシミュレーション誤差ΔRの平均を使用するので、サンプル作製の期間差の影響を検討した。表3に調色サンプルH+,V+、C+の実測分光反射率RREALとシミュレーション反射率RCALから計算されたΔL*、Δa*、Δb*の平均からの偏差の色差を計算し、その値をΔΔE*欄に記した。表4に試験サンプルのシミュレーション誤差ΔL*、Δa*、Δb*の平均からの偏差の色差を計算してΔΔE*欄に記した。表4のΔΔE*欄から分かるように、その色差は十分小さく作製誤差は極めて小さいことを確認した。
【0134】
次に、表3に示される調色サンプルのΔL*、Δa*、Δb*の平均と表4の試験サンプルのΔL*、Δa*、Δb*の平均の差を色差計算し表5のΔΔE*欄に記した。表5のΔΔE*の値が検定しようとしている試験サンプルの色差1に比べ十分小さいことが分かったので、シミュレーション誤差ΔR-aveは先に作製した調色サンプルH+,V+、C+のシミュレーション誤差ΔRの平均を採用しても差し支えないことを確認した。
【0135】
[摘出された作成異常サンプルの異常原因の特定]
ここでの試験、検討は計量間違いなどで調色サンプルの中から異常品が摘出され、その異常品の原因となった着色剤を特定することを想定している。調色作業者に異常品を警告するだけでなく、その異常原因を知らせることは警告の確実さを知らせることにもなる。また、調色サンプルと生産品の間に発色の差があった場合、試験サンプルとして生産品を加えることにより、どの着色剤が変化したかを特定することにも応用できる。ポイントは白着色剤、黒着色剤の増減が判別できるか否かである。つまり、白着色剤が増加した場合と黒着色剤が減少した場合ではどちらも反射率は増加することとなり、逆に白着色剤の減少と黒着色剤の増加はどちらも反射率は減少し、どちらの着色剤が原因であったかを判別するのは難しいからである。図4に自己着色剤の白着色剤EP-4050、黒着色剤P-4710及び有彩色の赤着色剤P-4172、黄着色剤P-4420の分光反射率を示す。有彩色着色剤の分光反射率は、その重量%の比率が5:95(有彩色着色剤:白着色剤)のものである。図5(a)〜(b)に示されるように、調色サンプルのシミュレーション分光反射率RCAL-nに対する実測分光反射率RREAL-nの差ΔR-nから異常品の摘出が可能である。図5(a)〜(b)に示されるように正常に作製された調色サンプルH+、V+、C+の波長ごとのΔR-nは、ほぼ同じ値を持つことから重なり合っているが、作製異常サンプル+4510、+4172、-4172のΔR-abnは異常分が加味されるので、正常に作製された調色サンプルのΔR-nの重なりから逸脱していることがわかる。このΔR-abnには本来のシミュレーション誤差ΔRと異常分ΔR’-abnが複合されたものなので、シミュレーション誤差ΔRを除去する必要がある。除去するシミュレーション誤差ΔRには正常サンプルH+、V+、C+のΔRの平均ΔR-aveを用い、作製異常サンプルのΔR-abnからΔR-aveを除去した分光反射率差を図6(a)〜(d)の縦軸にΔΔRとして表示した。ΔR-abnの計算に用いるシミュレーション反射率RCAL-abnは本来作製しようとしたサンプルSの配合にて計算した。図6(a) 及び(c)に有彩色着色剤の量が増減した異常サンプルのΔΔRを示す。図中のΔΔRが0の水平ラインの近くにある細線は正常と認識された調色サンプルH+、V+、C+のΔΔRである。図から明らかなように赤着色剤p-4172が変化した異常サンプル+4172、-4172のΔΔRは水平ラインから逸脱し、逸脱した波長域が図4に示されたP-4172の吸収波長域と一致していることから、原因となった着色剤はp-4172と特定できる。同様に黄着色剤P-4420の場合も水平ラインから逸脱した波長域がP-4420の吸収波長域と一致ししていることから原因となった着色剤はP-4420であることが特定できる。 課題の白着色剤、黒着色剤の量が増減した異常サンプルのΔΔRを図6(b)及び(d)に示す。白着色剤の増加ならびに黒着色剤の減少は水平ラインの上側に、白着色剤の減少、黒着色剤の増加は水平ラインの下側になっており異常サンプルであることは判断できるが、どの着色剤が原因であるかの特定はできない。また、白着色剤、黒着色剤の分光分布はどちらも平坦であるが図6(b)及び(d)に示されるΔΔRは平坦ではない。このように、白色顔料、黒色顔料の増減によるΔΔRの形はサンプルの色により異なり、その形からはどの着色剤かは特定できない。
【0136】
そこで、別の方法でアプローチする必要がある。シミュレーション誤差を相殺するために正常サンプルのΔR-aveを用いることが有効であることは表4〜表7のΔΔE*が小さいことから確認されているので、逆に、異常サンプルの実測反射率RREAL-abnをΔR-aveで補正すれば実際に混合された配合に近似した配合が得られると考えられる。実際に混合した配合と近似した配合が得られれば、得られた配合と作製しようとした配合とを比較し、各着色剤の変化率を求めればどの着色剤が大きく変化したかを推定することができることになる。これにより、原因となった着色剤を特定できると考えられる。実測反射率RREAL-abnのシミュレーション誤差の補正は式(38)による。
RCAL’-abn=RREAL-abn−ΔR-ave (38)
【0137】
シミュレーション配合の計算には、ニュートン−ラフソン(Newton-Raphson)法を用いた。まず、ターゲットとして配合を求めたいサンプルの分光反射率RCAL’-abnから三刺激値XRCAL’、YRCAL’、ZRCAL’を求める。次に、式(34)のCiに任意の初期値を与え、求められた(K/S)mixから式(32)によりシミュレーション反射率RCALを求め、そのRCALからシミュレーション三刺激値XRCAL、YRCAL、ZRCAL を求め、両者の差ΔX、ΔY、ΔZを式(39)より求める。
【0138】
R=1+(K/S)−((K/S)2+2(K/S))1/2 (32)
(式中、Rは調色対象物の分光反射率を示し、Kは着色剤の吸収係数を示し、Sは散乱係数を示す。)
【0139】
(K/S)mix ={Σ(Ki/Si)(Si/Sa)Ci+・・・+(K0/S0)(S0/Sa) }/
{Σ(Si/Sa)Cn+・・・+S0/Sa}(34)
(式中、Ki/Siは各着色剤の担体着色品の分光反射率の測定値から式(31)より求められるK/S 値を示し、K0/S0は被着色物(例えば樹脂など)の測定値から式(31)より求められるK/S 値を示し、Si/ Saは各着色剤のリファレンスaに対する相対散乱係数を示し、S0/Saは被着色物のリファレンスaに対する相対散乱係数を示す。)
【0140】
K/S=(1−R)2/2R (31)
【0141】
ΔX=∫λ(RCAL’-abn−RCAL)λsλxλdλ
ΔY=∫λ(RCAL’-abn−RCAL) λsλyλdλ (39)
ΔZ=∫λ(RCAL’-abn−RCAL) λsλzλdλ
【0142】
ここでsλはイルミナントD65の分光分布、xλ、yλ、zλ は10度視野CIE等色関数を使用した。初期値に対する補正量ΔCiの計算方法は、式(40)より求めた。
(∂X/∂C1)ΔC1+(∂X/∂C2)ΔC2+・・・
+(∂X/∂Ci)Ci=ΔX
(∂Y/∂C1)ΔC1+(∂Y/∂C2)ΔC2+・・・
+(∂Y/∂Ci)Ci=ΔY (40)
(∂Z/∂C1)ΔC1+(∂Z/∂C2)ΔC2+・・・
+(∂Z/∂Ci)Ci=ΔZ
【0143】
式(40)はCiのiが3であれば、解が得られる。式(41)を加えて4色のCiを計算した。kは着色剤のトータル量を示し、任意に指定する。
C1+C2+C3+C4 =k (41)
【0144】
式(34)のCiに式(41)で計算されたΔCi を加算して修正し、2,3回ループ計算させてターゲットとの色差が0.05以下になるようにする。求められたCiがターゲットの着色剤の配合となる。
【0145】
異常サンプルのRCAL’-abnをターゲットにしてシミュレーション配合を算出し、作製しようとした配合に対し各着色剤の変化率を計算する。色の変化は各着色剤Ciの比率が変化することによるが、着色剤のトータル量kが変わればCiの値も変化する。そこで、何らかの基準を決めて配合を計算する必要があるので、白着色剤が同量になるように求めた配合と、黒着色剤が同量になるように求めた配合の二通りを求めた。二通り求めた理由は白着色剤、黒着色剤を特定するために、白着色剤の量を固定した場合の他の着色剤の量の変化と、黒着色剤の量を固定した場合の他の着色剤の量の変化を比較するためである。
【0146】
表6に作製しようとしたサンプルSの配合を示す。表6中の単位は、重量部である。表7にYR1の4172が増加した場合のシミュレーション配合と作製しようとした配合を基準にした自己着色剤の量の変化率を一例として表示し、その変化率のグラフを図7上段左側に示した。表7中の単位は、重量部である。他はグラフのみ表示した。図はいずれも2つの図で1サンプルを表し、左側が白着色剤を等量にした場合、右側は黒着色剤を等量にした場合の変化率を表し、サンプル名のサフィックスは作製異常の原因として想定した着色剤の名前を表す。
【0147】
図7、図8は原因となる着色剤が有彩色の場合である。図7の+4172ではYR6+4172を除き左側(白を等量)及び右側(黒を等量)ともに4172の変化率が他の着色剤の変化率より大きいことから異常の原因となる着色剤が4172の増加と特定できる。同じく図7の-4172では4172の変化率が他の着色剤の変化率より大きいことから異常の原因となる着色剤が4172の減少と特定できる。同様に、図10から異常となる着色剤が4420であることが特定できる。
【0148】
図9、図10は原因となる着色剤が無彩色の場合である。図9の+4050において白着色剤の量を等量にした左側は他の着色剤の変化量はともに大きく減少しているが、黒着色剤の量を等量にした右側は白着色剤の変化量だけが大きいが他の着色剤の変化量は小さいことが分かる。このような場合、白着色剤以外が同等に大きく変動したことよりも、白着色剤が変動したと考える方が理にかなっている。このことから白着色剤が作製異常の原因となった着色剤であることが特定できる。同様に図9の-4050は右側から4050の減少と特定できる。図10の+4710は左側から4710の増加と特定できる。図10の-4710は左側から4710の減少と特定できる。
【0149】
実施例2
[調色サンプルに使用された発色不安定な着色剤の特定]
使用する着色剤の大半が発色不安定な場合、調色サンプル(n)の実測反射率RREAL-nとシミュレーション反射率RCAL-nの差ΔR-nは規則性が無くなるので、複数の着色剤が発色不安定であることが予想される。この場合は、要求する許容範囲に調色することは常に困難になるので、着色剤を根本から再検討する必要がある。ここで取り上げる試験、検討はデータベースに登録されている大半の着色剤の発色安定性は高いがその中に不安定な着色剤がいくつかあり、調色サンプル(n)に使用された着色剤の1色が不安定な着色剤であった場合を想定している。1色でも不安定な着色剤があると調色サンプル(n)のΔR-nは異なる値となるので、調色サンプル(n)のうちどのサンプルが異常サンプルなのかは特定することができない。しかしながら、ΔR-nがどのように変化しいるかを調べれば変化させる原因となった着色剤を特定できるのではないかと考えられる。図11(a)〜(g)に調色サンプル3点の場合の発色不安定な着色剤を特定する概念図を示す。図の横軸、縦軸は図1と同じである。図11(a)〜(c)は調色サンプルのRREAL(点線)とRCAL(実線)である。1回目のサンプル(I)は定常に発色された例で実線と点線の差はシミュレーション誤差ΔRである。2回目のサンプル(II)は赤着色剤の発色が定常より進んだ例、3回目のサンプル(III)は赤着色剤の発色が定常に至らなかった例である。図11(d)〜(g)はRREALとRCALの差ΔRであり、本来はΔRはほぼ同じ値となるはずであるが、発色が不安定な着色剤があるため同じ値になっていない。図11(g)はサンプル(I) (II) (III)のサンプル間(I)−(II)、(II)−(III)、(III)−(I)のΔRの差において、ΔRの絶対値の最大が負の場合はΔRに−1を乗じてΔΔRとして表示した。サンプル間でΔRを差し引くことによりシミュレーション誤差が相殺され異常分が抽出されることになる。よって、図11(g)のΔΔRの最大値を持つ組み合わせのΔΔRが調色サンプルの発色不安定分の最大の振れ幅となる。調色サンプルが3つ以上の場合はすべての組み合わせのΔΔRから発色不安定分を求める。任意の調色サンプルのRCALに対し、発色不安定分ΔΔRを加算または減じてCCMによりシミュレーション配合を計算し、前述のように配合の変化率を調べれば原因となった着色剤を特定することができることとなる。不安定な発色は不特定であることから加算するか減じるか、どの調色サンプルの配合を基準にするかは規定する必要はない。ターゲットとしてRCALを使用するのは、RCALを使用すればシミュレーション誤差が加味されないためである。RCALは着色剤の比率を指定すれば計算から求められるので、調色サンプルの平均的な配合でも良い。試験サンプルとして、(S、+4172、-4172)、(S、+4420、-4420)、(S、+4050、-4050)、(S、+4710、-4710)の組み合わせを使用し、RCALの計算にはサンプルSの配合を用い、Sの配合に対し各着色剤の変化率を計算し、その結果を図12、図13に示した。図の表示方法は図7、図8と同じである。図中のサンプル名のサフィックスは作製異常の原因として想定した着色剤の名前を表している。図12の4172では左側、右側とも4172の変化率が他よりも大きい。図12の4420では左側、右側とも4420の変化率が他よりも大きい。図13の4050では右側から4050の変化率が他よりも大きいことが分かる。図13の4710では左側から4710の変化率が他よりも大きいことが分かる。このことにより、作製異常の原因となった着色剤をそれぞれ特定できることが判明した。例えば、異常原因となる着色剤が赤着色剤、黄着色剤の2つの場合、サンプル(II)は赤着色剤だけが発色異常となり、サンプル(III)は黄着色剤だけが発色異常となると、図11(g)のΔΔRのパターンは異なった形となり、ΔΔRの最大値を持つ組み合わせのΔΔRは2つの異常着色剤した示さないことになる。このような場合は図11(g)のΔΔRから、どの組み合わせのΔΔRから異常着色剤を推定するかを指定すればよい。
【0150】
実施例3
[混入された異質の着色剤の推定]
ここでの試験、検討は調色工程で作製した調色サンプルと生産工程で作製した検査サンプルの色が異なった場合、工程の違いによる発色の差なのか使用されていない異質の着色剤が混入されたためなのかの判断をし、使用されていない着色剤が混入された場合の着色剤を推定することを想定している。サンプルYR2、YR4のSに異質の着色剤として図14(a)〜(c)に示される分光反射率を持つ着色剤4510、4170、4157、4440、4467の中の一つを追加混合し、SとのΔE*が約1の配合をCCMシステムによって求めた。作製したサンプルの実測値は表2に示されているように設定した色差が得られている。図15(a)〜(d)に図6と同様に正常と認識されたサンプルH+、V+、C+のRREALとRCALから計算されたΔRの平均であるΔR-aveとの差ΔΔRを示した。図中のΔΔRが0の水平ラインの近くにある細線は正常と認識された調色サンプルH+、V+、C+のΔΔRである。図15(a)及び(c)は赤着色剤4157、黄着色剤4467が混入したもの、図15(b)及び(d)は赤着色剤4170、黄着色剤4440、緑着色剤4510が混入した例である。ΔΔRが0の水平ラインから逸脱した波長域から400〜500nmは黄系着色剤、500〜600nmは橙、赤、茶、紫系着色剤、600nm〜700nmは緑、青系着色剤が異常原因の着色剤であることは分かる。まず、自己着色剤の量が変化したのか、異質の着色剤が混入されたのかを判別する必要がある。緑着色剤4510が混入した例は図6に示される自己着色剤の比率が変化した場合と異なる波長域(この場合は640nm付近)に誤差が出るので異質の着色剤が混入したことが分かる。赤着色剤4157の例は図15(a)及び(c)の4157のΔΔRのパターンと図6(a)及び(c)の自己着色剤4172のΔΔRのパターンとが異なることから異質の着色剤が混入したことが分かる。黄着色剤4467、4440はともにΔΔRのパターンの異なりからでは判別できない。
【0151】
そこで、どのような着色剤が混入されたかを推定するために、式(8)により作製異常サンプルのRCAL’-abnを算出し、RCAL’-abnをターゲットとしてデータベース上の各種着色剤の組み合わせでシミュレーション配合を求め、その配合のRCAL-kとRCAL’-abnとの差の総計を計算した。つまり、CCMデータベースの中に原因となる着色剤があればその着色剤が使用されたRCAL-kとRCAL’-abnとの一致性が高いはずであるから、分光反射率差の総和は小さくなるはずである。検索に使用したCCMデータベースの顔料組成を表8に、色相の位置関係をマンセル色相環として図16に示した。指定する着色剤の4色は自己着色剤を指定し、5色目をCCMデータベースから順次選択してシミュレーション配合を求め反射率差の総和を計算し、総和の小さい順に上位から5番目までの配合の5色目の着色剤の名前を表9の選択欄に示した。表中の上段にある着色剤の名前は設定した異質の着色剤の名前である。選択欄の黒枠は設定した異質の着色剤名であることを示す。6番目の着色剤名が4色とあるのは自己着色剤の量が変動したと想定した場合の反射率差の総和を示す。表9に示されるように、緑着色剤+4510は一位に選択され、2番目以降ならびに4色の総和との差も大きいことから着色剤が4510であることが推定できる。黄着色剤4440も一位に選択され、2番目以降ならびに4色の総和との差も大きいことから着色剤が4440であることが推定できる。赤着色剤4157の例も一位に選択されており、4色の総和との差も大きいことから異質の着色剤が混入したことが分かり、2番目以降との差が大きいことから4157であることが推定できる。このように、自己着色剤と分光分布が大きく異なっている着色剤が混入された場合は、混入された着色剤を推定できることが証明された。
【0152】
【表1】
【0153】
【表2】
【0154】
【表3】
【0155】
【表4】
【0156】
【表5】
【0157】
【表6】
【0158】
【表7】
【0159】
【表8】
【0160】
【表9】
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】波長(nm)に対する分光反射率及び分光反射率差を示すグラフである。
【図2】波長(nm)に対する分光反射率及び分光反射率差を示すグラフである。
【図3】波長(nm)に対する分光反射率及び分光反射率差を示すグラフである。
【図4】波長(nm)に対する分光反射率を示すグラフである。
【図5】波長(nm)に対する分光反射率差を示すグラフである。
【図6】波長(nm)に対する分光反射率差の差分を示すグラフである。
【図7】各着色剤の配合比率の変化率を示すグラフである。
【図8】各着色剤の配合比率の変化率を示すグラフである。
【図9】各着色剤の配合比率の変化率を示すグラフである。
【図10】各着色剤の配合比率の変化率を示すグラフである。
【図11】波長(nm)に対する分光反射率、分光反射率差及び分光反射率差の差分を示すグラフである。
【図12】各着色剤の配合比率の変化率を示すグラフである。
【図13】各着色剤の配合比率の変化率を示すグラフである。
【図14】波長(nm)に対する分光反射率を示すグラフである。
【図15】波長(nm)に対する分光反射率差の差分を示すグラフである。
【図16】混入した各着色剤とCCMデータベース内の各着色剤とのマンセル色相環上における位置を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の調色サンプルから作製異常サンプルと正常サンプルとを特定した後において、該作製異常サンプルに対し、
下記式(3)により、RREALabnとΔRnor-aveとの各波長における分光反射率の差を示す分光反射率RCAL'abnを求めるステップ(rd1)、
RCAL'abn=RREALabn−ΔRnor-ave (3)
(RREALabn:作製異常サンプルの実測分光反射率、ΔRnor-ave:少なくとも1個の正常サンプルの各シミュレーション誤差ΔRnorの、各波長における分光反射率の相加平均を示す分光反射率)
前記RCAL'abnから計算された三刺激値XYZをターゲットとして計算されたシミュレーション分光反射率RCALqを、正常サンプルの調色に用いられる自己着色剤のみでCCMシミュレーションして算出したものと、該自己着色剤にCCMシステムのデータベース内にある着色剤1種類を加えてCCMシミュレーションして算出したもの複数個とを求めるステップ(rd2)、
前記RCALqと前記RCAL'abnとの、各波長における分光反射率の差の絶対値の測定波長域全体に渡る総和を示すRSDIFqを各RCALqについて求めるステップ(rd3)、
全てのRCALqのうち前記RSDIFqが最小値になるものをRCALq-minとして特定するステップ(rd4)、及び、
該RCALq-min中に含まれる着色剤の種類から前記自己着色剤を除いた残りの着色剤を、前記作製異常サンプルの作製異常原因の着色剤として特定するステップ(rd5)を含む工程を行うことを特徴とするCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法。
【請求項2】
複数の調色サンプルから作製異常サンプルと正常サンプルとを特定した後において、該作製異常サンプルに対し、
下記式(3′)により、TREALabnとΔTnor-aveとの各波長における分光透過率の差を示す分光透過率TCAL'abnを求めるステップ(td1)、
TCAL'abn=TREALabn−ΔTnor-ave (3′)
(TREALabn:作製異常サンプルの実測分光透過率、ΔTnor-ave:少なくとも1個の正常サンプルの各シミュレーション誤差ΔTnorの、各波長における分光透過率の相加平均を示す分光透過率)
前記TCAL'abnから計算された三刺激値XYZをターゲットとして計算されたシミュレーション分光透過率TCALqを、正常サンプルの調色に用いられる自己着色剤のみでCCMシミュレーションして算出したものと、該自己着色剤にCCMシステムのデータベース内にある着色剤1種類を加えてCCMシミュレーションして算出したもの複数個とを求めるステップ(td2)、
前記TCALqと前記TCAL'abnとの、各波長における分光透過率の差の絶対値の測定波長域全体に渡る総和を示すTSDIFqを各TCALqについて求めるステップ(td3)、
全てのTCALqのうち前記TSDIFqが最小値になるものをTCALq-minとして特定するステップ(td4)、及び、
該TCALq-min中に含まれる着色剤の種類から前記自己着色剤を除いた残りの着色剤を、前記作製異常サンプルの作製異常原因の着色剤として特定するステップ(td5)を含む工程を行うことを特徴とするCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法。
【請求項3】
CCMソフト中に組込んで実行することを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項記載のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常分の特定方法。
【請求項1】
複数の調色サンプルから作製異常サンプルと正常サンプルとを特定した後において、該作製異常サンプルに対し、
下記式(3)により、RREALabnとΔRnor-aveとの各波長における分光反射率の差を示す分光反射率RCAL'abnを求めるステップ(rd1)、
RCAL'abn=RREALabn−ΔRnor-ave (3)
(RREALabn:作製異常サンプルの実測分光反射率、ΔRnor-ave:少なくとも1個の正常サンプルの各シミュレーション誤差ΔRnorの、各波長における分光反射率の相加平均を示す分光反射率)
前記RCAL'abnから計算された三刺激値XYZをターゲットとして計算されたシミュレーション分光反射率RCALqを、正常サンプルの調色に用いられる自己着色剤のみでCCMシミュレーションして算出したものと、該自己着色剤にCCMシステムのデータベース内にある着色剤1種類を加えてCCMシミュレーションして算出したもの複数個とを求めるステップ(rd2)、
前記RCALqと前記RCAL'abnとの、各波長における分光反射率の差の絶対値の測定波長域全体に渡る総和を示すRSDIFqを各RCALqについて求めるステップ(rd3)、
全てのRCALqのうち前記RSDIFqが最小値になるものをRCALq-minとして特定するステップ(rd4)、及び、
該RCALq-min中に含まれる着色剤の種類から前記自己着色剤を除いた残りの着色剤を、前記作製異常サンプルの作製異常原因の着色剤として特定するステップ(rd5)を含む工程を行うことを特徴とするCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法。
【請求項2】
複数の調色サンプルから作製異常サンプルと正常サンプルとを特定した後において、該作製異常サンプルに対し、
下記式(3′)により、TREALabnとΔTnor-aveとの各波長における分光透過率の差を示す分光透過率TCAL'abnを求めるステップ(td1)、
TCAL'abn=TREALabn−ΔTnor-ave (3′)
(TREALabn:作製異常サンプルの実測分光透過率、ΔTnor-ave:少なくとも1個の正常サンプルの各シミュレーション誤差ΔTnorの、各波長における分光透過率の相加平均を示す分光透過率)
前記TCAL'abnから計算された三刺激値XYZをターゲットとして計算されたシミュレーション分光透過率TCALqを、正常サンプルの調色に用いられる自己着色剤のみでCCMシミュレーションして算出したものと、該自己着色剤にCCMシステムのデータベース内にある着色剤1種類を加えてCCMシミュレーションして算出したもの複数個とを求めるステップ(td2)、
前記TCALqと前記TCAL'abnとの、各波長における分光透過率の差の絶対値の測定波長域全体に渡る総和を示すTSDIFqを各TCALqについて求めるステップ(td3)、
全てのTCALqのうち前記TSDIFqが最小値になるものをTCALq-minとして特定するステップ(td4)、及び、
該TCALq-min中に含まれる着色剤の種類から前記自己着色剤を除いた残りの着色剤を、前記作製異常サンプルの作製異常原因の着色剤として特定するステップ(td5)を含む工程を行うことを特徴とするCCMによる作製異常サンプル中の作製異常原因着色剤の特定方法。
【請求項3】
CCMソフト中に組込んで実行することを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項記載のCCMによる作製異常サンプル中の作製異常分の特定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2006−106012(P2006−106012A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−4574(P2006−4574)
【出願日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【分割の表示】特願2001−333428(P2001−333428)の分割
【原出願日】平成13年10月30日(2001.10.30)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【分割の表示】特願2001−333428(P2001−333428)の分割
【原出願日】平成13年10月30日(2001.10.30)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【Fターム(参考)】
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