説明

CO2液化ユニット及び食品冷凍設備、並びに既設食品冷凍設備の改造方法

【課題】フロン系冷媒を用いた既設食品冷凍設備を、大幅な改造をせず地球環境に無害な冷凍設備に切り替えることを可能とした。
【解決手段】機械室10にフロン系冷凍回路20が配置され、食品冷凍室1にフロン系冷媒により冷却されたCO冷媒で食品を凍結させる空気冷却器2が配置されている食品冷凍設備に設けられたCO液化ユニット30であって、該CO液化ユニット30は、機械室10側に設けられ、フロン系冷凍回路20にて凝縮液化後に膨張されたフロン系冷媒が供給されるサージタンク31と、サージタンク31からのフロン系冷媒が通流するカスケードコンデンサ35と、カスケードコンデンサ35にてフロン系冷媒により冷却されて液化したCO冷媒を貯留するCO受液器37とが上方から順に配置された竪型構造を有し、CO受液器37のCO冷媒を空気冷却器2に循環させる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロン系冷媒使用の冷凍サイクルを熱源として食品の凍結を行なう食品冷凍設備が備えるCO液化ユニット及び該食品冷凍設備、並びに既設食品冷凍設備の改造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、フロン系冷媒は、分子構造上から特定フロンであるCFC(クロロフルオロカーボン)と、その代替用途で開発されたフロンであるR−22等HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)及び代替フロンと一般に呼称されるHFC(ハイドロフルオロカーボン)とに分類される。CFC冷媒は化学的に安定なため分解しにくく、成層圏で初めて分解され、そこで発生した塩素がオゾン層を破壊するため1995年末に全廃されている。
【0003】
一方、HCFC冷媒は、化学的にCFC冷媒ほど安定でないため、成層圏まで達する量が少なく、オゾン層に与える影響がCFC冷媒の1/20程度であるが、2010年からは1989年比で25%まで生産量及び消費量が規制される。
また、HFC冷媒は分子中に塩素を含まないため、オゾン層を破壊しない冷媒であり、CFCやHCFCに代わって使用され出した冷媒である。しかし、HCFC冷媒と同様に、COに比べ数百〜1万倍以上の温室効果をもつことから、これらのフロン系冷媒も地球温暖化の一つの要因として取り上げられ使用上の規制が強化されつつある。
【0004】
ここで、従来例を示す図6及び図7を参照して、フロン系冷媒を用いて食品の凍結を行なう食品冷凍設備につき説明する。
図6は蒸発式凝縮器52を備えた食品冷凍設備の構成例である。この食品冷凍設備は、フロン系冷媒使用の冷凍サイクルを備えている。冷凍機(圧縮機)51で圧縮されたフロン系冷媒は、蒸発式凝縮器52で凝縮されて液化した後、フロン系高圧受液器53を介して膨張弁54に供給されて膨張し、低圧液化したフロン系冷媒は空気冷却器55で蒸発潜熱により周囲の冷凍空間を冷却した後、冷凍機51に戻される。そして、空気冷却器55で冷却された冷却用空気によって食品冷凍室56の冷凍空間が冷却され、例えば図示されるようにスパイラルコンベア57上を搬送される食品58が凍結されるようになっている。
図7は水冷式凝縮器62を備えた食品冷凍設備の構成例である。この食品冷凍設備は、図6に示した冷凍設備とは凝縮器の構成が異なっており、冷却塔61で冷却した冷却水をポンプで水冷式凝縮器62に送り、この水冷式凝縮器62でフロン系冷媒を凝縮する構成となっている。
【0005】
従来は上記したようなフロン系冷媒を用いた冷凍設備が多く普及していたが、今後の冷媒問題を考慮して、産業分野においては新規に製造される冷凍設備には地球環境にやさしい自然冷媒を使用することが推進されている。特に一般消費者への対応を重視する観点からも、食品産業の分野においては食品等の凍結を行なう冷凍設備には自然冷媒を使用することが望まれている。しかし、既設のフロン系冷媒を用いた冷凍設備の自然冷媒使用への転換は、改造工事に手間がかかり費用も嵩むことから、進んでいないのが実状である。
【0006】
そこで、特許文献1(特開2008−157481号公報)には、食品や飲料水等の被冷却物を冷却するための冷却設備であって、既設のR−22等フロン系冷媒を用いたブライン冷却設備のブライン循環量を削減可能とし、かつ自然冷媒及びブラインのポンプ動力を低減可能とする自然冷媒冷却設備への改造方法が開示されている。これは、アンモニア冷媒使用の冷凍回路と、二酸化炭素使用の冷凍回路とをカスケードコンデンサを介して接続し、被冷却対象物を冷却するブライン循環ライン側に二酸化炭素冷凍回路を配置し、既存のフロン冷凍回路から前記二酸化炭素冷凍回路に切り替えるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−157481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記したように、近年、フロン系冷媒を用いた冷凍設備においては、地球環境に与える影響が大きいことから規制が進みつつあるが、既設のフロン系冷媒を用いた冷凍設備の自然冷媒使用への転換は、改造工事に手間がかかり費用も嵩むことから、設備を総入れ替えすることは困難であった。
また、食品分野においては、食品冷凍室内に配置される空気冷却器は食品冷凍室内を循環する空気を介して直接食品に接するため、日常の生産機械の衛生管理として清浄維持の洗浄が行われている。しかし、洗浄によって空気冷却器のフィンや配管等が損傷したり耐久性が低下したりすることがあるため、食品への異物混入及びフロン系冷媒の漏出のおそれがある。
【0009】
そこで、特許文献1に記載される構成を採用することにより、フロン系冷媒を使用する必要がなくなり、地球環境保全の観点からは有効であるが、フロン系冷凍回路を完全に撤去してアンモニア等自然冷媒を使用した冷凍回路と二酸化炭素冷凍回路とに切り替えることは大幅な改造となり、また既存設備で使用していたフロン系冷媒を援用することができないため、コストが増大してしまうという問題があった。
【0010】
したがって、フロン系冷媒の漏出等の問題を引き起こすことなくこのフロン系冷媒を有効に使用継続でき、コストが安価で地球環境に無害な冷凍設備が望まれている。
本発明はかかる従来技術の課題に鑑み、フロン系冷媒を用いた既設の食品冷凍設備を、大幅な改造をせず地球環境に無害な冷凍設備に切り替えることができるCO液化ユニット及び食品冷凍設備、並びに既設食品冷凍設備の改造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明に係る食品冷凍設備のCO液化ユニットは、機械室又は該機械室に隣接する屋外若しくは屋上(以下、機械室等と略称する)に、フロン系冷媒使用の冷凍サイクルを構成するフロン系冷凍回路が配置されているとともに、食品冷凍室に前記フロン系冷媒により冷却されたCO冷媒を用いて食品を凍結させる空気冷却器が配置されている食品冷凍設備に設けられたCO液化ユニットであって、前記CO液化ユニットは前記機械室等に設けられ、該CO液化ユニットは、前記フロン系冷凍回路にて凝縮液化後に膨張されたフロン系冷媒が供給されるサージタンクと、前記サージタンクからの前記フロン系冷媒が通流するカスケードコンデンサと、前記カスケードコンデンサにて前記フロン系冷媒により冷却されて液化したCO冷媒を貯留するCO受液器とが上方から順に配置された竪型構造を有し、前記CO受液器の前記CO冷媒を前記空気冷却器に循環させる構成としたことを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、サージドラムとカスケードコンデンサとCO受液器とからCO液化ユニットを構成することにより、既設の食品冷凍設備にこのCO液化ユニットを追設することで既存設備を大幅に改造することなく地球環境に無害な冷凍設備へ簡単に切り替えることが可能となる。
また、CO液化ユニットは、サージドラム、カスケードコンデンサ、CO受液器の順に高さ位置が低くなるように配置した竪型構造とすることにより、サージドラムとカスケードコンデンサ間でフロン系冷媒を自然循環させることができ、且つカスケードコンデンサとCO受液器との間でCO冷媒を自然循環させることができ、ポンプの設置コストや動力コストを削減可能となる。さらに、CO液化ユニットを竪型とすることにより設置面積を小さくすることができ、既存の冷凍設備を大幅に拡張することなく機械室側にCO液化ユニットを容易に追設することが可能となる。
なお、フロン系冷媒とは、CFC(クロロフルカーボン)、HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)類、HFC(ハイドロフルオロカーボン)類を含む。
【0013】
また、前記サージドラムと前記カスケードコンデンサとを接続する前記フロン系冷媒の配管、及び前記カスケードコンデンサと前記CO受液器とを接続する前記CO冷媒の配管の少なくとも何れかの機器の配管構造において、主として液体が通流する配管は、配管入口側が前記機器の下部に接続され、主としてガスが通流する配管は、配管入口側が前記機器の上部に接続されていることが好ましい。
このように、CO液化ユニットの各機器(サージドラム、カスケードコンデンサ、CO受液器)の配管構造において、主として液体が通流する配管は、配管入口側を前記機器の下部に接続することで、ポンプ等を使用せずに液体の冷媒を循環することができる。また、主としてガスが通流する配管は、配管入口側を前記機器の上部に接続することで、機器上部に溜まったガスのみを他の機器に循環することができる。
【0014】
さらに、前記カスケードコンデンサが、プレートシェル型熱交換器であることが好ましい。
プレートシェル型熱交換器はコンパクトな構成であるため、機械室内の、既設のフロン系冷凍回路の近傍に設置可能であり、−40℃のCO液の粘度は非常に小さいため電気的にも消費電力の小さいCO液ポンプの追加のみで済み、特に電気設備の変更を必要としないため設置が容易である。
【0015】
また、本発明に係る食品冷凍設備は、上記したCO液化ユニットと、前記フロン系冷媒が順に循環する冷凍機、凝縮器、フロン系高圧受液器、膨張弁又は液面制御弁を含むフロン系冷凍回路と、前記フロン系冷凍回路の前記フロン系冷媒で冷却された前記CO冷媒を循環させるCO循環ラインとが機械室等に配置されているとともに、前記CO循環ラインに介装された空気冷却器と、前記空気冷却器により冷却される冷凍空間とが食品冷凍室に配置されていることを特徴とする。
【0016】
この食品冷凍設備では、機械室等のフロン系冷凍回路の近傍にCO液化ユニットを設け、空気冷却器をCO冷媒の圧力に対応する構成とし、該CO液化ユニットと該空気冷却器との間にCO循環ラインを構成している。
CO液化ユニットにはフロン系冷凍回路の蒸発器を構成するカスケードコンデンサが含まれており、CO冷媒を自然循環させる循環ラインをカスケードコンデンサとCO液化ユニット内のCO受液器との間で形成する。カスケードコンデンサでフロン系冷媒の蒸発潜熱によってCO冷媒を液化し、液化したCO冷媒はCO受液器を介してCO循環ラインにより食品冷凍室内に配置された空気冷却器に送られる。CO冷媒は一部蒸発して周囲から蒸発潜熱を奪うことにより、食品冷凍室内の雰囲気を冷却する。一部気化したCO冷媒はCO受液器に戻り、カスケードコンデンサでフロン系冷媒により冷却され液化する。
このような構成とすることにより、フロン系冷媒はフロン系冷凍回路とこの近傍のCO液化ユニットとの循環ラインに封入されるため、フロン系冷媒の充填量が少量で済み、フロン系冷媒が外部に漏れるおそれもほとんど無くなり、地球環境に無害な食品冷凍設備を提供することが可能となる。
【0017】
さらに、本発明に係る既設食品冷凍設備の改造方法は、機械室等にフロン系冷媒使用の冷凍サイクルを構成するフロン系冷凍回路が配置されているとともに、食品冷凍室に前記フロン系冷媒を用いて食品を凍結させる空気冷却器が配置され、前記フロン系冷凍回路と前記空気冷却器の間にフロン系循環ラインが設けられた既設食品冷凍設備の改造方法において、前記機械室等に、前記フロン系冷凍回路に介装され該冷凍回路で凝縮液化後に膨張されたフロン系冷媒が供給されるサージタンクと、前記サージタンクからの前記フロン系冷媒が通流するカスケードコンデンサと、前記カスケードコンデンサにて前記フロン系冷媒により冷却されて液化したCO冷媒を貯留するCO受液器とが上方から順に配置された竪型構造を有するCO液化ユニットを配設する第1のステップと、前記フロン系循環ラインを、前記CO受液器と前記空気冷却器の間を接続したCO循環ラインに切り替える第2のステップとを備えることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、フロン系冷凍回路を撤去することなく、この冷凍回路をそのままCO循環ラインの熱源として利用するようにし、フロン系冷媒が循環する冷凍サイクルを最小限に縮小しているため、R−22等フロン系冷媒の規制が一段と強化されても問題なく、地球環境に無害な冷凍設備を提供可能としている。
また、上記したように食品冷凍室内に配置される空気冷却器は、食品冷凍室内を循環する空気を介して直接食品に接するため、日常の生産機械の衛生管理として清浄維持の洗浄が行われる。そのため食品冷凍室内に配置される空気冷却器は、定期的に更新される。それに反して、食品冷凍室の熱源となる冷凍サイクルを構成する冷凍装置は、稼働時間の積算を基に軸受等を定期的に交換することにより故障することなく長期に亘って使用可能であり、生産ラインの更新等の生産規模等の変更がない限り更新されることはない。冷凍装置に比べて短期間で更新となる空気冷却器の更新時期に合わせて、本発明の改造方法を採用することにより、既設の食品冷凍設備を大幅に改造することなく地球環境に無害な設備への改造が可能となる。
【発明の効果】
【0019】
以上記載のように本発明によれば、サージドラムとカスケードコンデンサとCO受液器とからCO液化ユニットを構成することにより、既設の食品冷凍設備にこのCO液化ユニットを追設することで既存設備を大幅に改造することなく地球環境に無害な冷凍設備へ簡単に切り替えることが可能となる。
また、CO液化ユニットは、サージドラム、カスケードコンデンサ、CO受液器の順に高さ位置が低くなるように配置した竪型構造とすることにより、サージドラムとカスケードコンデンサ間でフロン系冷媒を自然循環させることができ、且つカスケードコンデンサとCO受液器との間でCO冷媒を自然循環させることができ、ポンプの設置コストや動力コストを削減可能となる。さらに、CO液化ユニットを竪型とすることにより設置面積を小さくすることができ、既存の冷凍設備を大幅に拡張することなく機械室側にCO液化ユニットを容易に追設することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る食品冷凍設備の基本構成図である。
【図2】CO液化ユニットを示す構成図である。
【図3】CO液化ユニットを示す図であり、(A)は側面図で、(B)は正面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る食品冷凍設備の全体構成図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る食品冷凍設備の全体構成図である。
【図6】従来の蒸発式凝縮器を備えた食品冷凍設備の全体構成図である。
【図7】従来の空冷式凝縮器を備えた食品冷凍設備の全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
図1は本発明に係る食品冷凍設備の基本構成図である。この食品冷凍設備は、食品(飲料を含む)を凍結するための冷凍設備である。食品は調理済みのものも未調理のものも含む。
食品冷凍設備は、食品の凍結を行なう食品冷凍室1と、食品冷凍室1を冷却するための冷熱を生成する機械室10とを備えている。
【0022】
食品冷凍室1は、空気冷却器2と、スパイラルコンベア3とを有している。
前記空気冷却器2は、後述するCO液化ユニットから循環されるCO冷媒により食品冷凍室1の冷凍空間を冷却する。
前記スパイラルコンベア3は、食品を搬送する手段である。なお、搬送手段はこれに限定されるものではない。
上記した構成を備える食品冷凍室1では、スパイラルコンベア3により搬送される食品を、空気冷却器2から送風される冷却用空気により凍結させるようになっている。
【0023】
機械室10は、フロン系冷媒使用の冷凍サイクルを構成するフロン系冷凍回路20と、フロン系冷凍回路20と食品冷凍室1の空気冷却器2との間に設けられたCO液化ユニット30とを備えている。なお、本実施形態では一例として、凝縮器22、蒸発式凝縮器25、冷却塔27を除く機器を機械室10内に配置した構成を示しているが、各機器の設置場所はこれに限定されるものではなく、CO液化ユニット30、フロン系冷凍回路20を含む各機器は、機械室10又は該機械室10に隣接する屋外若しくは屋上に設置することができる。
【0024】
上記フロン系冷凍回路20は、冷凍機(圧縮機)21と、凝縮器22と、フロン系高圧受液器23と、液冷却器24とを有している。
前記冷凍機21は、フロン系冷媒を圧縮する手段で、多段で構成されていてもよい。
前記凝縮器22は、冷凍機21で圧縮されたフロン系冷媒ガスを凝縮させ液化する。凝縮器22は、水冷式、空冷式、蒸発式のいずれを用いてもよい。
前記フロン系高圧受液器23は、フロン系冷媒液が貯留され、主に負荷変動による冷媒量の変化を調整する。
前記液冷却器24は、フロン系冷媒液を過冷却する手段であり、必要に応じて選択的に設置される。
なお、フロン系冷媒とは、CFC(クロロフルカーボン)、HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)類、HFC(ハイドロフルオロカーボン)類を含む。
【0025】
上記CO液化ユニット30は、サージドラム31と、油戻し器32と、膨張弁33と、カスケードコンデンサ(CO液化器)35と、CO受液器37と、CO液循環ポンプ38とを有する。
前記サージドラム31は、液冷却器24から膨張弁33を介して供給されるフロン系冷媒液と、カスケードコンデンサ35から戻ってきたフロン系冷媒ガスとを混合して、気液混合体をガスと液体とに分離し、フロン系冷媒ガスを冷凍機21に戻してフロン系冷媒液をカスケードコンデンサ35に送る。
前記油戻し器32は、サージドラム31に溜まった冷凍機油を冷凍機21に戻す。
前記膨張弁33は、液冷却器24からの高圧のフロン系冷媒液を膨張させ、低圧のフロン系冷媒液をサージドラム31に供給する。なお、膨張弁33は液面制御弁であってもよい。
【0026】
前記カスケードコンデンサ35は、CO冷媒をフロン系冷媒により冷却して液化する。このカスケードコンデンサ35は、プレートシェル型熱交換器であることが好ましい。プレートシェル型熱交換器はコンパクトな構成であるため、機械室10内の、既設のフロン系冷凍回路20の近傍に設置可能であり、−40℃のCO液の粘度は非常に小さいため電気的にも消費電力の小さいCO液ポンプの追加のみで済み、特に電気設備の変更を必要としないため設置が容易である。
前記CO受液器37は、CO冷媒液が貯留され、主に負荷変動による冷媒量の変化を調整する。
前記CO液循環ポンプ38は、CO冷媒液を空気冷却器2に循環させる。
【0027】
なお、サージドラム31とカスケードコンデンサ35との間にはフロン系冷媒を自然循環させる循環ラインが形成されており、またカスケードコンデンサ35とCO受液器37との間にはCO冷媒を自然循環させる循環ラインが形成されている。
【0028】
上記した構成を備える食品冷凍設備において、機械室10では、フロン系冷凍回路20の圧縮機21でフロン系冷媒ガスが圧縮され、高温高圧のフロン系冷媒ガスは凝縮器22で冷却され凝縮し、液化したフロン系冷媒液はフロン系高圧受液器23に貯留され液冷却器24で過冷却された後、膨張弁33により膨張され、低圧のフロン系冷媒液はCO液化ユニット30のサージドラム31に送られる。
サージドラム31では、フロン系冷媒のガスと液体の気液混合体がフロン系冷媒ガスとフロン系冷媒液とに分離され、フロン系液はカスケードコンデンサ35に送られる。カスケードコンデンサ35では、フロン系冷媒液の蒸発潜熱によってCO冷媒ガスが液化され、CO冷媒液はCO液循環ポンプ38により食品冷凍室1の空気冷却器2に送られる。空気冷却器2では、CO冷媒液が一部蒸発して周囲の冷凍空間から蒸発潜熱を奪うことにより該冷凍空間を冷却し、スパイラルコンベア3上を搬送される食品が凍結される。
【0029】
空気冷却器2を通過したCO冷媒は、液体とガスの気液混合体としてCO受液器37に戻される。
一方、カスケードコンデンサ35を通過したフロン系冷媒は、液体とガスの気液混合体としてサージドラム31に戻される。そして、サージドラム31で分離されたフロン系冷媒ガスは冷凍機21に返送される。
【0030】
このような構成とすることにより、フロン系冷媒はフロン系冷凍回路20とこの近傍のCO液化ユニットとの循環ラインに封入されるため、フロン系冷媒の充填量が少量で済み、フロン系冷媒が外部に漏れるおそれもほとんど無くなり、地球環境に無害な食品冷凍設備を提供することが可能となる。
【0031】
図2及び図3を参照して、本発明に係るCO液化ユニットの好適な一例につき具体的に説明する。図2はCO液化ユニットを概略的に示した構成図であり、図3はCO液化ユニットを示す図であり、(A)は側面図で、(B)は正面図である。
【0032】
図2及び図3に示すようにCO液化ユニット30は、サージドラム31とカスケードコンデンサ35とCO受液器37とが縦方向に配置された竪型の装置構成を有している。具体的には、サージドラム31、カスケードコンデンサ35、CO受液器37はいずれも、それぞれ横置き円筒状に形成されており、この順に上方から配置されている。なお、図3に示されるCO液化ユニット30は、配管の構造上、サージドラム31とカスケードコンデンサ35とを鉛直方向に対してずらして配置している。このように、サージドラム31、カスケードコンデンサ35、CO受液器37の位置関係は、高さ位置が上記した関係となっていればそれぞれが鉛直方向に対してずれて配置されていてもよいし、鉛直方向に直線上に配置されていてもよい。
【0033】
上記したように、サージドラム31とカスケードコンデンサ35とCO受液器37とからCO液化ユニット30を構成することにより、既設の食品冷凍設備にこのCO液化ユニット30を追設することで既存設備を大幅に改造することなく地球環境に無害な冷凍設備へ簡単に切り替えることが可能となる。
また、CO液化ユニット30は、サージドラム31、カスケードコンデンサ35、CO受液器37の順に高さ位置が低くなるように配置した竪型構造とすることにより、サージドラム31とカスケードコンデンサ35間でフロン系冷媒を自然循環させることができ、且つカスケードコンデンサ35とCO受液器37との間でCO冷媒を自然循環させることができ、ポンプの設置コストや動力コストを削減可能となる。さらに、CO液化ユニット30を竪型とすることにより設置面積を小さくすることができ、既存の冷凍設備を大幅に拡張することなく機械室側にCO液化ユニット30を容易に追設することが可能となる。
【0034】
また、サージドラム31とカスケードコンデンサ35との間を接続するフロン系冷媒の配管(ライン)、及びカスケードコンデンサ35とCO受液器37との間を接続するCO冷媒の配管(ライン)の構造において、主として液体が通流する配管は、配管入口側が上記機器(サージドラム31、カスケードコンデンサ35、CO受液器37)の下部に接続され、主としてガスが通流する配管は、配管入口が上記機器の上部に接続されていることが好ましい。
【0035】
具体的には、以下の構成とすることが好ましい。
サージドラム31の下部には、液冷却器24(図1参照)からのフロン系冷媒液が供給される供給ライン41が接続されている。供給ライン41には膨張弁33が設けられている。
また、サージドラム31の上部には、冷凍機21へフロン系冷媒ガスを戻す戻りライン44が接続されている。
さらに、サージドラム31の下部には、フロン系冷媒液をカスケードコンデンサ35に供給する供給ライン42が接続されており、この供給ライン42は、カスケードコンデンサ35の横方向一端部に接続されている。
カスケードコンデンサ35の横方向両端の上部には、フロン系冷媒ガスをサージドラム31に戻す戻りライン43が接続されており、この戻りライン43は、サージドラム31の横方向両端に接続されている。
【0036】
CO受液器37の上部には、CO冷媒ガスをカスケードコンデンサ35に供給する供給ライン45が接続されており、この供給ライン45は、カスケードコンデンサ35の上部に接続されている。
また、カスケードコンデンサ35の下部には、CO冷媒液をCO受液器37に戻す戻りライン46が接続されており、この戻りライン46はCO受液器37の上部に接続されている。
さらに、CO受液器37の下部には、空気冷却器2(図1参照)にCO冷媒液を供給するCO循環ライン47aが接続されているとともに、CO受液器37の上部には、CO冷媒のガスと液体との気液混合体を空気冷却器2から戻すCO循環ライン47bが接続されている。
【0037】
このように、CO液化ユニット30の各機器の配管構造において、主として液体が通流する配管は、配管入口側を前記機器の下部に接続することで、ポンプ等を使用せずに液体の冷媒を循環することができる。また、主としてガスが通流する配管は、配管入口側を前記機器の上部に接続することで、機器上部に溜まったガスのみを他の機器に循環することができる。
【0038】
次に、本発明の具体的な実施形態につき以下に説明する。第1実施形態は蒸発式凝縮器を備えた食品冷凍設備に関し、第2実施形態は空冷式凝縮器を備えた食品冷凍設備に関する。
なお、以下の実施形態において、図1乃至図3に示した装置構成と同一の構成については、その詳細な説明を省略する。また、図4及び図5の符号は、図1乃至図3と同一である。
【0039】
(第1実施形態)
図4は本発明の第1実施形態に係る食品冷凍設備の全体構成図である。
この食品冷凍設備は、蒸発式凝縮器(エバコン:Evaporative Condenser)25を備えている。蒸発式凝縮器25は、配管内にフロン系冷媒を流し、この配管に上部より水を噴霧しながら配管間に空気を送り、噴霧水の一部を蒸発させて蒸発潜熱を奪うことにより配管内のフロン系冷媒を冷却する公知の装置が用いられる。
【0040】
冷凍機21で圧縮された高温高圧のフロン系冷媒ガスは、ライン48を通って蒸発式凝縮器25に送られ、該蒸発式凝縮器25で凝縮液化された後、ライン49を通ってフロン系高圧受液器23に送られる。フロン系高圧受液器23から送られるフロン系冷媒液は、供給ライン41を通って膨張弁33で膨張され、低圧のフロン系冷媒液となってサージドラム31に供給される。
サージドラム31では、供給ライン42を通ってフロン系冷媒液がカスケードコンデンサ35に供給され、カスケードコンデンサ35でCO冷媒の冷却に用いられたフロン系冷媒ガスは、戻りライン43を通ってサージドラム31に戻される。サージドラム31のフロン系冷媒ガスは、戻りライン44を通って冷凍機21に戻される。
【0041】
一方、CO受液器37のCO冷媒気液混合体は、供給ライン45を通ってカスケードコンデンサ35に供給される。カスケードコンデンサ35でフロン系冷媒液により冷却されたCO冷媒は、戻りライン46を通ってCO受液器37に戻される。CO受液器37のCO冷媒液は、CO循環ライン47aを通って空気冷却器2に供給される。空気冷却器2では、CO冷媒の蒸発潜熱により冷却用空気を冷却し、該冷却用空気を食品冷凍室1の冷凍空間に送風する。食品冷凍室1では、スパイラルコンベア3上を搬送される食品が、この冷却用空気により凍結される。空気冷却器2を通過したCO冷媒は、液体にガスが含まれた状態でCO循環ライン47bを通ってCO受液器37に戻される。
このように、第1実施形態によれば、蒸発式凝縮器25によりフロン系冷媒を凝縮させる構成としているため、冷媒の凝縮効率を高く維持でき、且つ凝縮に用いられる冷却水量を少なくすることが可能である。
【0042】
(第2実施形態)
図5は本発明の第1実施形態に係る食品冷凍設備の全体構成図である。
この冷凍設備では、水冷式凝縮器26を備えている。水冷式凝縮器26は、冷却塔27で冷却した水を冷却水ポンプ28で循環させ、この冷却水により水冷式凝縮器26内のフロン系冷媒を冷却して凝縮させる公知の装置が用いられる。
この第2実施形態の他の構成は、上記した第1実施形態と同一であるため説明を省略する。
このように第2実施形態によれば、水冷式凝縮器26によりフロン系冷媒を凝縮させる構成としているため、設置コストが安価であり、またポンプ等が不要であるため動力コストを低減できる。
【0043】
上記した本発明の実施形態に係る食品冷凍設備は、図6又は図7に示す従来の冷凍設備を改造して製造してもよい。この改造方法を以下に説明する。
なお、既設冷凍設備は、機械室にフロン系冷媒使用の冷凍サイクルを構成するフロン系冷凍回路が配置されているとともに、食品冷凍室にフロン系冷媒を用いて食品を凍結させる空気冷却器が配置され、フロン系冷凍回路と空気冷却器の間にフロン系循環ラインが設けられた構成を備える。
【0044】
まず、第1のステップとして、図2及び図3に示したように、機械室10側に、フロン系冷凍回路20に介装され該冷凍回路20で凝縮液化後に膨張されたフロン系冷媒が供給されるサージタンク31と、サージタンク31からのフロン系冷媒が通流するカスケードコンデンサ35と、カスケードコンデンサ35にてフロン系冷媒により冷却されて液化したCO冷媒を貯留するCO受液器37とが上方から順に配置された竪型構造を有するCO液化ユニットを配設する。これは、フロン系高圧受液器23からのフロン系冷媒液がサージドラム31に供給されるように供給ライン41でこれらを接続し、該供給ライン41上に膨張弁33を配設している。また、サージドラム31からのフロン系冷媒ガスが冷凍機21に戻るように戻りライン44でこれらを接続している。
【0045】
次に、第2のステップとして、既設冷凍設備における、フロン系高圧受液器から空気冷却器を通って冷凍機に戻るフロン系冷媒のフロン系循環ラインを、CO受液器37と空気冷却器2との間を接続したCO循環ライン47a、47bに切り替える。なお、CO循環ライン47a上にはCO液循環ポンプが設けられる。
これらのステップにより改造工事が完了する。
【0046】
この食品冷凍設備の改造方法によれば、フロン系冷凍回路20を撤去することなく、この冷凍回路をそのままCO循環ライン47a、47bの熱源として利用するようにし、フロン系冷媒が循環する冷凍サイクルを最小限に縮小しているため、R−22等フロン系冷媒の規制が一段と強化されても問題なく、地球環境に無害な冷凍設備を提供可能としている。
また食品冷凍室1内に配置される空気冷却器2の更新時期に合わせて、上記した改造方法を採用することにより、既設の食品冷凍設備を大幅に改造することなく地球環境に無害な設備への改造が可能となる。
【符号の説明】
【0047】
1 食品冷凍室
2 空気冷却器
3 スパイラルコンベア
10 機械室
20 フロン系冷凍回路
21 冷凍機
22 凝縮器
23 フロン系高圧受液器
24 液冷却器
30 CO液化ユニット
31 サージドラム
35 カスケードコンデンサ
37 CO受液器
38 CO液循環ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械室又は該機械室に隣接する屋外若しくは屋上(以下、機械室等と略称する)に、フロン系冷媒使用の冷凍サイクルを構成するフロン系冷凍回路が配置されているとともに、食品冷凍室に前記フロン系冷媒により冷却されたCO冷媒を用いて食品を凍結させる空気冷却器が配置されている食品冷凍設備に設けられたCO液化ユニットであって、
前記CO液化ユニットは前記機械室等に設けられ、該CO液化ユニットは、前記フロン系冷凍回路にて凝縮液化後に膨張されたフロン系冷媒が供給されるサージタンクと、前記サージタンクからの前記フロン系冷媒が通流するカスケードコンデンサと、前記カスケードコンデンサにて前記フロン系冷媒により冷却されて液化したCO冷媒を貯留するCO受液器とが上方から順に配置された竪型構造を有し、
前記CO受液器の前記CO冷媒を前記空気冷却器に循環させる構成としたことを特徴とする食品冷凍設備のCO液化ユニット。
【請求項2】
前記サージドラムと前記カスケードコンデンサとを接続する前記フロン系冷媒の配管、及び前記カスケードコンデンサと前記CO受液器とを接続する前記CO冷媒の配管の少なくとも何れかの機器の配管構造において、主として液体が通流する配管は、配管入口側が前記機器の下部に接続され、主としてガスが通流する配管は、配管入口側が前記機器の上部に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の食品冷凍設備のCO液化ユニット。
【請求項3】
前記カスケードコンデンサが、プレートシェル型熱交換器であることを特徴とする請求項1又は2に記載の食品冷凍設備のCO液化ユニット。
【請求項4】
請求項1に記載のCO液化ユニットと、前記フロン系冷媒が順に循環する冷凍機、凝縮器、フロン系高圧受液器、膨張弁又は液面制御弁を含むフロン系冷凍回路と、前記フロン系冷凍回路の前記フロン系冷媒で冷却された前記CO冷媒を循環させるCO循環ラインとが機械室等に配置されているとともに、
前記CO循環ラインに介装された空気冷却器と、前記空気冷却器により冷却される冷凍空間とが食品冷凍室に配置されていることを特徴とする食品冷凍設備。
【請求項5】
機械室等にフロン系冷媒使用の冷凍サイクルを構成するフロン系冷凍回路が配置されているとともに、食品冷凍室に前記フロン系冷媒を用いて食品を凍結させる空気冷却器が配置され、前記フロン系冷凍回路と前記空気冷却器の間にフロン系循環ラインが設けられた既設食品冷凍設備の改造方法において、
前記機械室等に、前記フロン系冷凍回路に介装され該冷凍回路で凝縮液化後に膨張されたフロン系冷媒が供給されるサージタンクと、前記サージタンクからの前記フロン系冷媒が通流するカスケードコンデンサと、前記カスケードコンデンサにて前記フロン系冷媒により冷却されて液化したCO冷媒を貯留するCO受液器とが上方から順に配置された竪型構造を有するCO液化ユニットを配設する第1のステップと、
前記フロン系循環ラインを、前記CO受液器と前記空気冷却器の間を接続したCO循環ラインに切り替える第2のステップとを備えることを特徴とする既設食品冷凍設備の改造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−196579(P2011−196579A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61277(P2010−61277)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000148357)株式会社前川製作所 (267)