説明

DHA成分含有卵産生雌鶏の飼料および雌鶏の飼養方法並びに鶏卵

【課題】DHAが含まれている卵の雌鶏飼料及び飼養方法とそれにより得られる鶏卵を発明した。
【解決手段】定法通り、5〜200部の紫蘇種子の油を絞り、得られた紫蘇種子の油と余った紫蘇種子の滓を飼料に加え、混合した飼料の総量を1000部とする。その飼料を使って、毎日2回、続けて四週間以上、雌鶏を飼養した後、0.12%〜0.38%のドコサヘキサエン酸量が含まれている鶏卵が得られる。この発明は、紫蘇種子の油と滓を全部、添加物として飼料に加えて雌鶏を飼養して、これらの雌鶏が産んだ鶏卵のDHAとALAの含有量は高く、良い保健効果もある。そして、卵の美味しさを保っていて、コストも下がり、飼養効果は良好である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はある飼料および使用方法と所得製品に関わって、特にDHAが含まれている卵の雌鶏飼料および使用方法とそれにより得られる鶏卵製品である。
【背景技術】
【0002】
DHAの化学名は「ドコサヘキサエン酸」、普通は脳黄金と言われる。人間の細胞膜は一つの飽和脂肪酸と一つの不飽和脂肪酸からなる脂質の2重膜であり、この不飽和脂肪酸こそDHAである。だからDHAは人間の身体では脳細胞に多く存在して、人間の健康にとって重要な作用がある。ALAはα−リノレン酸、化学名は「オクタデカトリエン酸」で、人体内で基本的な情報を伝達する物質であり、これらの化学情報は人間の体の無数の生理化過程を発動し、そしてコントロールする。1978年、Derbergがグリーンランドのエスキモー人では、心血管系の疾病の発病率の低さはたくさんの魚を食べることと関係があるということを最初に発表した。これ以来20年、人々は魚油に豊富に含まれているDHAやEPAについて,多くの研究をした。研究の結果によって、DHA、ALAが血清コレステロール値を下げる、心血管系の疾病の発病を減らす、脳や神経組織の発育を促進するなどいろいろな作用がある。よって、DHAが含まれる魚油製品が多数開発された、たとえば、アメリカのSperuEPA-200、オーストラリアのEfand、我が国無錫のEthyl Polyenoateなどである。これらの魚油製品は確かに保健の作用があるが、人々の飲食習慣から見れば、これらの「薬物」のような製品は制限がある。これに対して、あるメーカーはDHA卵の生産に着手した、しかし、今までの製品はほとんど魚油、亜麻のさねなどを原料として、飼料に入れて雌鶏を飼養した後に得られたものである。このような飼養方法はコストが高いだけではなく、産んだ卵は非常に生臭く、卵の美味しさも損なわれていた。もし生臭さを減らす添加物を使う場合には、コストはさらに上がる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明の内容はあるDHAが含まれている卵の雌鶏飼料及び使用方法と所得製品を提供する。この方法で飼養していた雌鶏はDHA量が高い卵を産むことができ、そして、卵の味も保つことができ、コストも下げられる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明の技術方法は、5〜200部の紫蘇種子の油を絞って、所得の紫蘇種子の油と余った紫蘇種子の滓を飼料に入れて、混合した飼料の総量を1000部に達させる。そうして、DHAが含まれている卵の雌鶏飼料が得られる。
この発明では、混合した飼料には0.02〜0.8部のビタミンEと0.01〜0.3部の緑茶ポリフェノールも入れられる。
その他、この1000部の混合飼料の中に、慣例比率に従って、主たる材料のトウモロコシと豆くずの総量は650〜895部にして、補助的な材料のビタミン、鉱物、カルシウム,燐の総量は100〜150部にする。
【0005】
この混合飼料を毎日2回、続けて4週間雌鶏を飼養する。
この飼料を飼養された雌鶏が産んだ卵は、DHA含有量は0.12%〜0.38%、オクタデカトリエン酸の含有量は0.13%〜0.57%(重量百分比)。
DHAが血清コレステロール値を下げ、心血管系の疾病の発病を減らし、脳や神経組織の発育を促進し、細胞を活性化し、記憶力を増強し、脳の老化を防止する。特に妊婦や、子供と老人にとって、効果が非常に著しい。そして、血管を拡張させ、動脈硬化を予防し、糖尿病及び脳血栓を防止し、中性脂肪値を低下させ、プロスタグランジン(Pg3)産生を促進し、血液凝固を抑制しコレステロール及びトリグリセリド値を低下させ、血圧を低下させ、炎症を軽減し、成人病を予防し、抗癌作用、抗アレルギー作用、血清中の脂肪及び飽和脂肪を低下させる作用がある。
【0006】
紫蘇種子(Perilla frutescens)は特別な香りがある。紫蘇種子の油の含有量は40%〜50%であって、60%のα−リノレン酸を豊富に含めている。今まで発見された一番高いα−リノレン酸量を持っている植物である。紫蘇の主な成分であるα−リノレン酸はω−3系高度不飽和脂肪酸の母体であって、人間の体が欠乏しているω−3系高度不飽和脂肪酸を補充する一番良い資源である。海洋魚油にはEPAとDHAが豊富に含まれている。紫蘇油はω−3脂肪酸が豊富に含まれている植物油であり、体で代謝した後、EPAとDHAの形で存在する。α−リノレン酸の二重結合はEPAやDHAより少ない。よって紫蘇油の酸化安定性は魚油より強い。魚油にはコレステロールが含まれているが、紫蘇油の方にはこれがない。そして、亜麻種子のα−リノレン酸含有量は50%だけ、その上、今市場で発売されている亜麻種子を使って飼養された鶏が産んだ卵の味はまずい。
【発明の効果】
【0007】
今までの技術と比べると、本発明は紫蘇種子の油を絞って、それにより得た紫蘇の油と余った紫蘇種子の滓を飼料に入れて、飼養された雌鶏が産生した卵にはDHAとALAの含有量は高くて、良い保健効果がある。そして、卵の美味しさも保っていて、コストも下がり、飼養効果は良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施例1:200部の紫蘇種子を定法通りに油を絞って、得られた紫蘇種子油と余った紫蘇種子滓を市販のトウモロコシ、豆滓、ふすま,ピーナッツなどの飼料に加え、主たる材料の総量を650部にして、補助的な材料の多種のビタミンや微量元素(例えば、三酸化鉄、硫酸銅など)と骨粉の総量を150部にし、そして0.02部のビタミンEと0.01部の緑茶ポリフェノールも入れる。
以上の飼料で飼養された雌鶏が産んだ鶏卵中の、ドコサヘキサエン酸量の重量百分比は0.38%、ALA量の重量百分比は0.57%であった。
実施例2:5部の紫蘇種子を定法通りに油を絞って、得られた紫蘇種子油と余った紫蘇種子滓を市販のトウモロコシ、豆滓、魚粉などの飼料に加え、主たる材料の総量を895部にして、補助的な材料の多種のビタミンや微量元素(例えば、三酸化鉄、硫酸銅など)と貝粉の総量を100部にする。
【0009】
以上の飼料で飼養された雌鶏が産んだ鶏卵中の、ドコサヘキサエン酸量の重量百分比は0.12%、ALA量の重量百分比は0.13%であった。
実施例3:100部の紫蘇種子を定法通りに油を絞って、得られた紫蘇種子油と余った紫蘇種子滓を市販のトウモロコシ、豆滓の混合飼料に入れて、主たる材料の総量を770部にして、補助的な材料の多種のビタミンや微量元素(例えば、三酸化鉄、硫酸銅など)と石粉の総量を130部にし、そして0.4部のビタミンEと0.15部の緑茶ポリフェノールも加える。
以上の飼料で飼養された雌鶏が産んだ鶏卵中の、ドコサヘキサエン酸量の重量百分比は0.24%、ALA量の重量百分比は0.27%であった。
【0010】
実施例4:120部の紫蘇種子を定法通りに油を絞って、得られた紫蘇種子油と余った紫蘇種子滓を市販の880部のトウモロコシ飼料に加える。
以上の飼料で飼養された雌鶏が産んだ鶏卵中の、ドコサヘキサエン酸量の重量百分比は0.22%、ALA量の重量百分比は0.25%であった。
実施例5:150部の紫蘇種子を定法通りに油を絞って、得られた紫蘇種子油と余った紫蘇種子滓を市販の850部のふすま飼料に入れる。
以上の飼料で飼養された雌鶏が産んだ鶏卵中の、ドコサヘキサエン酸量の重量百分比は0.23%、ALA量の重量百分比は0.26%であった。
【0011】
以上の飼料を使って毎日2回、続けて4週間で雌鶏を飼養する。このような飼養方法は産卵雌鶏にとって必要な代謝エネルギーを満足できるのみならず、雌鶏に飼料中のオクタデカトリエン酸を十分に吸収させ、雌鶏が産んだ卵のドコサヘキサエン酸とオクタデカトリエン酸の含有量を必要なレベルに達せさせる。
鳥類は味覚があまり発達していないため、摂食量は飼料のエネルギー量によって決まる。つまり鶏は自身のエネルギー量に従って摂食量を控える。エネルギー量が高くなれば、摂食料は少量となり、エネルギー量が低くなれば、摂食量は多くなる。したがって、エネルギー量が高い飼料を調合すれば、飼料の量が減り、コストも下げられる。
【0012】
炭水化物飼料の主な成分は澱粉類と糖類であって、一日分の混合飼料の70%を占める。穀類飼料の中で、トウモロコシは単独でのエネルギー量が一番高いものであるので、混合飼料の45%〜70%を占める.ふすまは食感がよくて、蛋白質と燐の含有量が高く、混合飼料の5%〜30%を占める。しかし、蛋白質とリンの代謝能が高くないから、飼料の調合にとってはあまり良好でない。大麦は大量の粗繊維を含んでいるので、たくさん使う必要がなく、混合飼料の15%〜20%を占める。コーリャンは味がちょっと渋く、餌として与えすぎると鶏の便秘を起こす可能性に鑑み、混合飼料の10%ぐらいを占める。
蛋白質類飼料には蛋白質が30%〜65%含まれており、混合飼料の5%〜30%を占める。豆滓、ピーナッツ滓は良い植物蛋白質であり、食感がよくて栄養も全面的であって、混合飼料の10%〜20%を占める。しかし、ピーナッツ滓の貯蔵時間が長くなると、アフラトキシンG1が生まれやすい。綿種子滓には毒性物質を含むので、あまりたくさん使うのは好ましくなく、普通は混合飼料の7%以内に控える。魚粉は最も良い動物蛋白質なので、混合飼料の5%〜15%を占める。しかし、魚粉の塩分含有量を考慮し、使用魚粉の塩分含有量は混合飼料の0.4%以内に控えるべきでである。その上、魚粉のコストも高い。多種な蛋白質飼料を入れるのはアミノ酸のバランスを保つためである。
【0013】
ミネラル飼料は主に混合飼料のミネラル不足を補充し、混合飼料の0.3%〜9%を占める。骨粉は主にカルシウムやリンを補充し、混合飼料の2%〜3%を占める。貝粉は主にカルシウムを補充し、混合飼料の8%〜10%を占める。石粉はカルシウム、リン酸水素カルシウムはカルシウムと燐を補充し、混合飼料の10%〜12%を占める。これは産卵雌鶏にとっては多量に使った方がいいが、そうでない鶏にはあまり多量に使ってはならない。食塩は混合飼料のナトリウムを補充し、混合飼料の0.3%〜0.4%を占めるが、魚粉の塩含有量も考慮すべきである。石粉は手に入りやすくて、値段も安い。
飼養している間は、混合飼料1000部中の紫蘇種子は5〜200部の間とすることができる。紫蘇種子の量は、鶏卵中に必要とされるDHA量に応じて調節する。通常と違うDHAとALA含有量の鶏卵はそれまでとは違った消費者に適する。しかし、混合飼料1000部中の紫蘇種子を200部以上とすると、雌鶏はこれ以上のα−リノレン酸を吸収できないため無駄となる。しかし、混合飼料1000部中の紫蘇種子を5部未満とすると、雌鶏が産んだ鶏卵のDHA含有量は大幅に下がり、必要量には達しない。また、ビタミンEと緑茶ポリフェノールは抗酸化剤である。
【0014】
本発明は紫蘇種子の油を絞った後、油と滓を一緒に飼料に入れて雌鶏を飼養する。そうすれば、α−リノレン酸はさらに吸収しやすくなる。α−リノレン酸の化学名は「オクタデカトリエン酸」であり、鶏の身体の中でプロスタグランジンE3とDHAに転化される、この反応過程は下記の通り。
【0015】
【化1】

本発明の中で、紫蘇種子の中のα−リノレン酸の一部が鶏に吸収された後ドコサヘキサエン酸とプロスタグランジンE3に転化され、この他の直接吸収された部分がALAである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫蘇種子を絞って得られた油5〜200部と、その紫蘇種子の絞り滓とを混合して飼料に加え、混合した飼料の総量を1000部とすることを特徴とする、DHA成分含有卵産生雌鶏の飼料。
【請求項2】
前記混合飼料には、0.02〜0.8部のビタミンEと0.01〜0.3部の緑茶ポリフェノールも混入されていることを特徴とする請求項1記載のDHA成分含有卵産生雌鶏の飼料。
【請求項3】
1000部の前記混合飼料の中で、慣例比率に従って、主たる材料のトウモロコシと豆くずの総量を650〜895部とし、補助的な材料のビタミン、鉱物、カルシウム,燐の総量は100〜150部とすることを特徴とする請求項1記載のDHA成分含有卵産生雌鶏の飼料。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちのいずれかに記載の前記混合飼料を毎日2回、続けて4週間用いて雌鶏を飼養することを特徴とする雌鶏の飼養方法。
【請求項5】
請求項4記載の飼養方法で飼養した雌鶏が産生した鶏卵であって、DHAの重量百分比が0.12%〜0.38%であることを特徴とする鶏卵。
【請求項6】
オクタデカトリエン酸の重量百分比が0.13%〜0.57%であることを特徴とする請求項5記載の鶏卵。