説明

DNA増幅装置

【課題】 反応溶液の温度を精密に制御してDNA増幅反応を効率よく行なうことが可能なDNA増幅装置を提供する。
【解決手段】 無機基板上に形成された第1および第2の2つのプレーナ状反応セル、第1の反応セルに試料溶液を導入するための試料導入部、第2の反応セルから試料溶液を排出するための試料排出部、試料導入部と第1の反応セル、第1の反応セルと第2の反応セル、および第2の反応セルと試料排出部とを互いに連通する3つの流路、第1および第2の反応セルの底面にそれぞれ少なくとも1つずつ設けられた温度測定部、無機基板の第1および第2の反応セルの裏面に設けられた加熱手段、並びに試料溶液の搬送手段を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、DNAの増幅反応を行なって微量のDNAを増幅するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、微量のDNAを増幅する手段として、ポリメラーゼ連鎖反応(以下、PCRと略記する)が盛んに用いられている。この方法は、例えば特開平 6-292579 号公報に開示されるように、まず、目的とする核酸を含有する検体に、目的とするDNAの各々の鎖の両端部の塩基配列を含む2種類のプライマー、耐熱性DNA合成酵素および4種類のデオキシリボヌクレオシド三リン酸(dATP、dCTP、dGTPおよびdTTP)を加える。次に、系の温度を制御することのみにより、DNAを解離させる(変性)工程、解離により生成した一本鎖DNAとプライマーとを結合させる(アニーリング)工程、およびプライマーが結合した一本鎖DNAを鋳型としてDNA合成酵素により相補鎖を合成する(伸長)工程の各工程を行ない、これを1回以上繰り返す。
【0003】
このようにPCRは微量のDNAを効率よく増幅することが可能であるが、このPCRに加えて、さらに前処理および後処理を含めて自動化しようとする試みがなされている。例えば、特開平 6-327476 号公報に開示される装置では、まず全血を遠心分離し、フェノールおよびクロロホルム溶液で抽出することにより全血中の核酸成分を精製する(前処理段階)。次いで、精製した核酸成分をバッファーに溶解し、上述の2種類のプライマー、耐熱性DNA合成酵素および4種類のデオキシリボムクレオシド三リン酸を加え、熱サイクルを実施することにより目的の核酸を増幅する(PCR段階)。最後に、増幅した核酸が含まれる反応溶液をゲル電気泳動で処理し、プライマー等の不純物や副生物等を除去して目的の核酸を得る(後処理段階)。
【0004】
また、PCRを行なうための反応容器自体についてもいくつかの試みがなされている。例えば、特開平 7-75544号公報に開示される装置は、2つの恒温槽を経由する毛管を設け、検体を含む混合液を単にこの毛管内に流すことにより、DNA合成反応に必要な熱サイクルを実現している。この方法では、増幅反応を毛管内で行なうため、液流の外側と内側との温度勾配が小さくなり、系内の温度をより迅速に均一化することができるという利点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のDNA増幅装置においては、反応容器を恒温槽や金属ブロックで取り巻き、この反応容器自体を加熱および冷却することによりDNA増幅反応に必要な熱サイクルを施している。したがって、これらの装置では反応溶液の温度を直接制御するのではなく、反応容器を介して間接的に制御している。加えて、これらの装置では、反応溶液が微量であることもあって反応溶液の温度を直接測定することはできない。このため、従来のDNA増幅装置は、反応溶液の温度を精密に制御することができず、信頼性に欠ける。特開平 7-75544号公報に開示される装置では、毛管内で反応を行なうことにより、反応溶液中で温度勾配が形成されることを防いでいる。しかしながら、この装置でも反応溶液の温度を直接測定することはできず、やはり温度制御が不正確になる。
【0006】
また、上記特開平 6-327476 号公報に開示される装置は、前処理および後処理を含めて全ての工程を自動的に行なう全自動化を実現してはいるが、反応容器の移動や分注操作等は全て機械的に行なっている。このため、装置が大型化し、コストが非常に高くなる。同様に、特開平 7-75544号公報に開示される装置でも反応溶液を循環させるために機械式ポンプを用いており、このため装置が大型化しコストが高くなる欠点を有する。
【0007】
したがって、この発明は、反応溶液の温度を精密に制御し、DNA増幅反応を効率よく行なうことが可能なDNA増幅装置を提供することを目的とする。
【0008】
また、この発明は、機械的な作動部分を減少し、それにより装置全体を小型化し、かつコストを低くすることが可能なDNA増幅装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明によるDNA増幅装置は、無機基板上に形成された第1および第2の2つのプレーナ状反応セル、該第1の反応セルに試料溶液を導入するための試料導入部、該第2の反応セルから試料溶液を排出するための試料排出部、該試料導入部と該第1の反応セル、該第1の反応セルと第2の反応セル、および該第2の反応セルと該試料排出部とを互いに連通する3つの流路、該第1および第2の反応セルの底面にそれぞれ少なくとも1つずつ設けられた温度測定部、該無機基板の該第1および第2の反応セルの裏面に設けられた加熱手段、並びに試料溶液の搬送手段を具備することを特徴とする。
【0010】
この装置に用いられる無機基板は特に限定されるものではなく、例えば、シリコンウェハや他の半導体基板、ガラス、またはアルミ、ステンレス等の金属板を用いることができる。しかしながら、温度測定部を一体に形成できる点や、微細加工の技術が確立されている点からシリコンウェハを用いることが好ましい。
【0011】
無機基板上に形成される反応セル、試料導入部および排出部並びに流路の作製方法は基板の種類によって異なり、各々の材質に通常用いられる方法で作製すればよい。例えば、無機基板としてシリコンウェハを用いる場合には、半導体製造の分野で通常行なわれる方法でエッチングすればよい。エッチングは、等方性エッチングであっても異方性エッチングであってもよく、またドライエッチングであっても構わない。ただし、エッチング後の底面の平滑性の点では、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウム(TMA)等を用いる異方性のウェットエッチングが好ましい。
【0012】
反応セルの底面に設けられる温度測定部は、反応セルを形成する際に一体的に形成しても、反応セル形成後に温度測定手段を別途固定してもよい。温度測定手段としては、pn接合を利用したダイオードタイプ、各種サーミスタや熱電対等を利用することができる。無機基板がシリコンウェハである場合には、ダイオードタイプの温度測定部を基板上に直接形成することが可能であり好ましい。
【0013】
加熱手段は、試料溶液をDNA増幅反応に必要な温度に加熱することが可能なものであればどのようなものでもよく、特に限定されるものではないが、DNA増幅反応では厳密な温度管理が必要であることから、細かな温度制御が可能であるものが好ましい。
【0014】
ところで、試料溶液中には溶存空気が存在するため、加熱処理の際に微小な気泡が生じることがある。空気は断熱性が高いため、気泡が存在するとこの気泡の周囲で溶液の温度が不均一になり易い。特に、この発明による装置では反応セルが浅いプレーナ状であり、容量が少ないことから、温度制御に対する気泡の影響が大きくなる。PCRによるDNA増幅反応は厳密な温度管理が必要であり、温度の誤差を 0.1℃以内に収めないと効率や正確性が低下する。
【0015】
また、DNA増幅反応には高温で加熱する工程があるが、この高温での加熱の際、溶液の膨張によって反応セル内部の圧力が上昇する。このとき、溶液中に気泡が存在すると、気泡の膨張による圧力の上昇は溶液のそれを上回り、反応セルが破損したり、試料溶液が漏洩する恐れがある。
【0016】
したがって、溶液中の溶存空気は可能な限り除去しておくことが好ましい。
【0017】
液体の流路に発生する気泡の対処法の例としては、ベックマン社の電解質分析装置 System E4A を挙げることができる。この装置の取扱い説明書には、同装置がデバブラー・フィルター(DEBUBBLER FILTER)と称するフィルターを備えていることが記載されている。一般に、テフロン(登録商標)フィルターのような疎水性のフィルターは気体は通すが水は通さないことが知られているが、このデバブラー・フィルターはこの性質を利用したものであり、疎水性のフィルターを保持するホルダーに液体を直接通過させ、液体中の気泡を除去するものである。
【0018】
しかしながら、この発明によるDNA増幅装置のような微小な装置に上記デバブラー・フィルターをそのまま組込むことは事実上不可能である。さらに、このデバブラー・フィルターに用いられる疎水性のフィルターから微小片を切り出し、基板上の微細な流路に貼着して気泡除去機能を持たせることも考えられるが、これは技術的に非常に困難である。
【0019】
そこで、本発明者は、微小な装置に一体的に組込むことが可能な気泡除去機構についても鋭意研究を行ない、上記この発明のDNA増幅装置において第1の反応セルと第2の反応セルとを連通する流路にガス排出孔を形成することにより、この課題を解決し得ることを見出した。
【0020】
このガス排出孔の断面形状は特に限定されるものではなく、例えば矩形でも円でもよい。また、このガス排出孔の径は、最も小さいところで 0.2ないし 1.0μmであることが好ましい。さらに、このガス排出孔は、少なくともその内周面が疎水性を有していることが好ましく、さらにその開口部周縁も疎水性を有していることがより好ましい。ガス排出孔の内周面およびその開口部周縁に疎水性を付与するには、例えば、シラン処理した皮膜のような疎水性の膜で所定の領域を被覆すればよい。また、ガス排出孔が形成される基板が単結晶シリコン基板である場合には、純粋な単結晶シリコン自体が疎水性を有しているため、所定の領域で純粋な単結晶シリコン、すなわちベア単結晶シリコンを露出させればよい。なお、ここで言う「ベア単結晶シリコン」とは、純粋な単結晶シリコンの表面に疎水性を喪失しない程度の薄い自然酸化膜が形成されていることを排除するものではない。加えて、ガス排出孔の内周面は、前記流路から外部へ向けて開口面積が小さくなるテーパ状の内周面であることが好ましい。
【0021】
この発明の別の面においては、DNA増幅装置は、無機基板上に形成されたプレーナ状の反応セル、該反応セルに試料溶液を導入するための試料導入部、該反応セルから試料溶液を排出するための試料排出部、該試料導入部と該反応セルおよび該反応セルと該試料排出部とを互いに連通する2つの流路、該反応セルの底面に設けられた少なくとも1つの温度測定部、該無機基板の該反応セルの裏面に設けられた加熱手段、該反応セルの底面に載置された回転子、並びに該回転子の回転を制御するための制御手段を具備することを特徴とする。
【0022】
この装置に用いることができる無機基板、温度測定部および加熱手段、並びに反応セル、試料導入部および排出部、流路等の形成方法は前述のものと同様である。
【0023】
この装置に用いられる回転子は特に限定されるものではないが、磁性粒子を用いることが好ましい。例えば、回転羽根を反応セル内に設置しても同様の効果を得ることはできるが、構造が複雑になってしまう。この点、磁性粒子であれば、磁気を利用することにより、モーター等の駆動部分を反応セルから離れた位置に設けることができ、装置本体の構造を単純にすることができる。また、一般に使用される磁気回転子を用いることも考えられるが、浅い反応セル内に収めるにはごく微小の回転子を開発する必要があり、技術的な困難と共に高コストが予想される。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、この発明によると、反応溶液の温度を精密に制御し、DNA増幅反応を効率よく行なうことが可能なDNA増幅装置が提供される。
【0025】
また、この発明によると、機械的な作動部分を減少し、それにより装置全体を小型化し、かつコストを低くすることが可能なDNA増幅装置が提供される。
【0026】
さらに、この発明によると、試料溶液中に存在する気泡を容易に除去し、気泡が存在することに起因する試料溶液中の温度分布の不均一を防いでDNA増幅反応をより正確かつ効率的に行なうことが可能なDNA増幅装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0028】
図1はこの発明によるDNA増幅装置の第1実施形態の上面を示す平面図、図2は図1に示す装置の下面を示す平面図および図3は図1に示す装置のA−A線断面図をそれぞれ示す。図に示されるように、この第1実施形態では、無機基板101 上面に2つのプレーナ状反応セル102 および103 、並びに試料導入部104 および試料排出部105 が形成されており、試料導入部104 と反応セル102 とは流路106 で、反応セル102 と103 とは流路107 で、さらに反応セル103 と試料排出部105 とは流路108 でそれぞれ連通している。反応セル102 および103 の底面にはそれぞれ温度測定部109 および110 が設けられ、無機基板101 の下面の反応セル102 および103 に対応する位置には加熱手段111 および112 がそれぞれ設けられている。また、無機基板101 の上面には蓋板113 が接合され、基板101 の上面に形成された反応セル102 および103 、試料導入部104 、試料排出部105 、並びに流路106 、107 および108 には、この蓋板と各々の底面および側面とで空間が形成されている。
【0029】
無機基板101 の材質としては、シリコンウェハや他の半導体基板、ガラス基板、アルミ、ステンレス等の金属板などを用いることができる。無機基板101 としてシリコンウェハを用いた場合には、温度測定部109 および110 を一体に形成することができ好ましい。他の基板を用いた場合には、基板に反応セルを形成した後、別途温度測定手段、例えばサーミスタを所定の位置に固定すればよい。
【0030】
以下、無機基板101 としてシリコンウェハを例として用いて、この実施形態の作製方法を説明する。無機基板101 の上面に設けられる反応セル102 および103 、試料導入部104 、試料排出部105 、並びに流路106 、107 および108 は、シリコンウェハをエッチングすることにより形成する。エッチングの方法としては、通常シリコンウェハのエッチングに用いられるいかなる方法をも用いることができ、例えば等方性エッチング、異方性エッチングまたはドライエッチングが利用できる。ただし、エッチング後の底面の平滑性が良好なことを考慮すると、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウム(TMA)等を用いる異方性のウェットエッチングが好ましい。すなわち、異方性エッチングを利用することにより底面の平滑性を高め、試料溶液を流したときに生じる乱流や、底面への内容物、気泡等の物理吸着を抑制することができる。反応セル102 および103 の平面形状は図示するような六角形に限られるものではなく、試料溶液の移動が容易であれば、任意の形状、例えば四角形や円であっても構わない。ただし、シリコンウェハのエッチングを異方性エッチングで行なう場合には、四角形以上の多角形状であることが好ましい。これは、異方性エッチングで滑らかな曲線を形成することが困難であることから、試料溶液を移動させる際に反応セル内に溶液が残留しないようにするためである。
【0031】
また、水溶性液体を移動させる場合には、内壁が親水性であると抵抗が少なくなって流れ易くなるので、シリコンウェハに、例えば、熱酸化等の方法で酸化膜を形成するなどして内壁に親水性となる処理を施しておくことが好ましい。
【0032】
前述の通り、反応セル102 および103 の底面に設けられる温度測定部109 および110 は、反応セルと一体に形成しても、別途測定手段を固定してもよい。温度測定手段としては、pn接合を利用したダイオードタイプ、各種サーミスタや熱電対等を利用することができるが、シリコンウェハに直接形成することが可能であることから、ダイオードタイプの測定手段を用いることが好ましい。図4にダイオードタイプの温度測定部の一例の断面を示す。この温度測定部は、シリコンウェハに反応セルを形成した後、反応セルの底面に常法によって三層の互いに導電型の異なる領域114 、115 および116 からなるpn接合型ダイオードを形成し、さらに外部に測定信号を取り出すために絶縁層117 および118 並びに金属配線119 および120 を配すことにより作製することができる。温度測定部は1つの反応セル内に少なくとも1つなければならず、1つの反応セルに複数の温度測定部を設けた場合にはより精密な測定が可能となる。
【0033】
無機基板101 の上面に接合される蓋板113 は、無機基板であればどのようなものでもよく、例えばシリコンウェハやガラス基板を用いることができる。特に、ガラス基板は透明であるため、反応セル内の状態が視認できる点で好ましい。
【0034】
加熱手段111 および112 としては、DNA増幅反応に必要な熱サイクルを遂行し得るものであればどのようなものでもよく、例えば、電熱ヒータ、ペルチエ素子、赤外線ランプを用いることができる。図においては、加熱手段111 および112 は、それぞれ、無機基板101 の裏面の反応セル102 および103 に対応する位置に固定されているが、この形態に限定されるものではなく、反応セル内部を均一に加熱することが可能であれば、例えば裏面全体に1つの加熱手段を固定してもよい。反応セル内部を均一に加熱するという点から見ると、加熱手段は平面加熱が可能であるものが好ましい。
【0035】
試料導入部104 および試料排出部105 には、このDNA増幅装置に増幅反応を行なおうとする試料溶液を導入し、あるいはDNA増幅反応後の試料溶液を排出するための手段が接続される。試料溶液の導入または排出手段、並びにそれらの接続方法は特に限定されるものではなく、例えば図5に示されるように、蓋板113 の試料導入部104 および試料排出部105 に対応する位置にチューブジョイント(図示せず)を設置し、このチューブジョイントにチューブ122 を接続し、さらにいずれかのチューブ122 を試料溶液の搬送手段123 に接続すればよい。図5に示される構成では、DNA増幅装置への試料溶液の導入、DNA増幅装置からの試料溶液の排出、および2つの反応セル102 および103 の間での試料溶液の移動を1つの搬送手段123 によって行なう。搬送手段123 は試料導入部側および試料排出部側のいずれに設けてもよい。また、搬送手段は試料溶液の移動が可能であれば特に限定されるものではなく、例えばペリスタポンプを利用することができる。蓋板113 にチューブジョイントを設置する場合には、試料導入部104 および試料排出部105 は直径 0.5mm以上の円形であることが好ましい。
【0036】
このDNA増幅装置の寸法は任意であり、反応セル102 および103 内でDNA増幅反応を行なう試料溶液の容量によって変化するが、例えば試料溶液の容量を50μlとすると、図に示す六角形の反応セルの場合、一辺が 7mm、深さが 0.4mm程度は必要となる。この場合、深さを 0.4mmに統一すると、試料導入部104 と反応セル102 とを連通する流路106 および反応セル103 と試料排出部105 とを連通する流路108 の幅は 0.1− 1mm程度、反応セル102 と103 とを連通する流路107 の幅は 0.3− 1mm程度とすることが適当であり、このような寸法にすることにより反応セル壁面の表面張力によって試料溶液が自然に流れ出すことはなくなる。
【0037】
次に、この第1実施形態の装置を用いたPCRによるDNA増幅反応の手順を説明する。
【0038】
1)まず、DNA増幅反応を行なうために必要な材料、すなわち2種類以上のプライマー、耐熱性DNA合成酵素および4種類のデオキシリボヌクレオシド三リン酸(dATP、dCTP、dGTPおよびdTTP)並びに検体を含む試料溶液を、搬送手段123 を用いて試料導入部104 から第1の反応セル102 のみに導入する。
【0039】
2)反応セル102 に導入した試料溶液を、 1秒ないし 1分程度の所定の間隔で、第1の反応セル102 と第2の反応セル103 との間で繰返し移動させる。以下、DNA増幅反応が完了するまで継続的にこの移動を繰り返す。
【0040】
3)反応セル内の試料溶液を、温度測定部109 および110 で温度を測定しながら、加熱手段111 および112 で90−93℃まで昇温し、この温度を 1秒ないし 1分程度維持する。この際の維持温度の誤差は 0.1℃以内に抑える。維持温度の設定は使用する酵素の耐熱性によって決定する。
【0041】
4)反応セル内の試料溶液の温度を37℃まで降温し、この温度を 1秒ないし 3分程度維持する。この際、維持温度の誤差は 0.1℃以内に抑える。
【0042】
5)反応セル内の試料溶液の温度を40−65℃に昇温し、この温度を 1秒ないし 3分程度維持する。この際、維持温度の誤差は 0.1℃以内に抑える。
【0043】
6)上記3)−5)のサイクルを 2−1000回繰返す。繰返し回数は、試料溶液に含まれるDNAの濃度と所望する増幅率とに依存する。
【0044】
7)所定の回数3)−5)のサイクルを繰返した後、2つの反応セル間での試料溶液の移動を停止し、搬送手段123 によって試料排出部105 から試料溶液を外部に排出する。
【0045】
このDNA増幅装置は、非常に浅い反応セル内で試料溶液を平面的に加熱することができる。このため、試料溶液中に温度勾配が発生し難くなる。さらに、前述の通り、このDNA増幅装置ではDNA増幅反応を行なう間継続的に2つの反応セルの間で試料溶液を往復移動させる。これにより、試料溶液は常に撹拌された状態にあり、試料溶液の温度並びに試料溶液中の成分がより均一になる。
【0046】
加えて、試料溶液を絶えず移動させることにより、試料溶液の加熱、冷却の繰返しによって溶液中に発生する微小な気泡を大きく纏めることができる。また、2つの反応セルを繋ぐ流路の幅が反応セルの幅よりも小さいことも気泡が大きくなることに貢献する。大きく纏まった気泡は多数の微小な気泡よりもはるかに容易に除去することができる。
【0047】
さらに、試料溶液をいずれか一方の反応セルに完全に移動させることにより、空になった反応セルの内面に吸着している気泡も除去することができる。
【0048】
このように、このDNA増幅装置を用いることにより、試料溶液中の温度分布が不均一となることを防止することができ、加えて、この温度分布不均一の要因の1つである試料溶液の加熱、冷却の繰返しによって発生する微小な気泡を容易に除去することが可能となる。したがって、DNA増幅反応の精度を高めることができる。
【0049】
また、2つの反応セルがそれぞれ加熱手段と温度測定部とを備えているので、それぞれ個別に内部温度を制御し、DNA増幅反応の加熱、冷却のサイクルの繰返しをより効率よく行なうこともできる。例えば、一方の反応セルに試料溶液を移動して所定の温度に所定の時間保持する間に、他方の反応セルの内部温度を次の反応に必要な温度に合わせておくことにより、DNA増幅反応に要する時間を短縮することができる。その際、2つの反応セル間の距離が短く、温度制御が困難になる場合には、2つの反応セルの間に、この2つの反応セルを繋ぐ流路の邪魔にならない位置、例えば無機基板101 の裏面や蓋板113 内部に溝またはパイプを配し、そこに冷却水を流して2つの反応セルを断熱することもできる。
【0050】
次に、この発明によるDNA増幅装置の第2実施形態を説明する。
【0051】
図6は第2実施形態の上面を示す平面図、図7は図6に示す装置のB−B線断面図である。図に示されるように、この第2実施形態は上記第1実施形態とほぼ同様の構成をとる。すなわち、無機基板101 上面に2つのプレーナ状反応セル102 および103 、並びに試料導入部104 および試料排出部105 が形成されており、試料導入部104 と反応セル102 とは流路106 で、反応セル102 と103 とは流路107 で、さらに反応セル103 と試料排出部105 とは流路108 でそれぞれ連通している。反応セル102 および103 の底面にはそれぞれ温度測定部109 および110 が設けられ、無機基板101 の下面の反応セル102 および103 に対応する位置には加熱手段111 および112 がそれぞれ設けられている(図2参照)。また、無機基板101 の上面には蓋板113 が接合され、基板101 の上面に形成された反応セル102 および103 、試料導入部104 、試料排出部105 、並びに流路106 、107 および108 には、この蓋板と各々の底面および側面とで空間が形成されている。図に示す第2実施例では、さらに、蓋板113 の反応セル102 と103 とを繋ぐ流路107 の上面に相当する部分にガス排出孔201 が形成されている。このガス排出孔201 の平面形状は特に限定されるものではなく、例えば円形であっても矩形であってもよく、その大きさは平面形状が円形である場合に、直径 1ないし 100μm、好ましくは 1ないし30μmである。また、図7に示されるように、このガス排出孔201 の内周面には、流路107 側から外部に向けて開口面積が小さくなるようにテーパが付けられている。さらに、この内周面は疎水性を示す物質で構成されるか、もしくは、例えばシラン処理により疎水性が付与されている。
【0052】
次に、この第2実施形態の装置の作製方法について説明する。
【0053】
この装置は、蓋板113 の流路107 に相当する部分にガス排出孔201 が予め形成されていることを除いて、上記第1実施形態の装置と同様の方法で作製することができる。
【0054】
ガス排出孔201 は、蓋板113 を構成する無機基板をエッチングすることにより形成することができる。無機基板のエッチング方法は、基板の種類によって異なり、常法により行なうことができる。例えば、無機基板がシリコンウェハである場合には、まず、シリコンウェハ上に常法により酸化膜や窒化膜を形成し、通常用いられるフォトリソグラフィ技術および酸化膜または窒化膜のエッチング技術を用いてガス排出孔201 のマスクパターンを形成する。この際、酸化膜のエッチングは、例えばフッ酸とフッ化アンモニウムとの混合液を用いるバッファーエッチによって、また窒化膜のエッチングは、例えばCF4 を用いるプラズマエッチングもしくはRIE(Reactive Ion Etching)によって、それぞれ容易に行なうことができる。
【0055】
その後、このマスクパターンを用いてシリコンウェハに異方性エッチングを施し、ガス排出孔201 を形成する。異方性エッチングは単結晶シリコンの結晶面<111>に沿ってエッチングが進行するため、<100>面のシリコンウェハを用いることにより、図に示すようなテーパ状の内周面を有するガス排出孔201 を形成することができる。異方性エッチングは、例えばマスクしたシリコンウェハを80℃に加熱した32%KOH溶液に浸漬することにより行なう。この場合、異方性エッチングは、<100>面に対して54.7°の角度で内部に向けて進行する。したがって、エッチング深さ(基板の厚み)を考慮してマスクの大きさを適度に設定することにより、ガス排出孔201 の開口部の大きさを制御することができる。例えば、10μm角の開口部を形成するには、エッチング深さをdとして、一辺が( 2d/tan(54.7°)+10)μmの長さの角形を抜いたマスクを用いればよい。
【0056】
ガス排出孔201 を形成した後、マスクパターンを除去し、シリコンウェハの全面に酸化膜を形成する。ただし、マスクパターンを酸化膜で作製した場合には、マスクパターンをそのまま酸化膜として用いることもできる。
【0057】
続いて、ガス排出孔201 の内周面を以下に記す通りにシラン処理して疎水化する。まず、疎水性を付与しようとする領域、すなわちガス排出孔201 の内周面以外の領域をフォトリソグラフィ技術によってレジストで被覆する。次いで、このシリコンウェハを密封容器内に密封し、シランカップリング剤、例えばジクロロオクチルメチルシランを 2%溶解したトルエンを乾燥窒素ガスでバブリングして上記密封容器内に導入する。これにより、レジストで被覆されていない領域に気相反応で疎水性のシラン処理皮膜が形成される。皮膜が形成された後、シリコンウェハからレジストを除去する。
【0058】
なお、純粋な単結晶シリコンは疎水性を示す。したがって、ガス排出孔のマスクパターンを酸化膜で作製した場合には、ガス排出孔の形成が終了した後内周面に疎水性を付与する処理を行なうことなく使用することができる。
【0059】
また、無機基板がガラス基板である場合には、通常エキシマレーザを用いてエッチングが行われる。エキシマレーザは紫外線領域の波長を有する強力なレーザであり、その照射により分子間の結合が切断され、10μm以下の分解能でエッチングを行なうことができる。ガラスのエッチングには、効率を考慮して、通常ArFガスレーザ(波長 193nm)が用いられる。
【0060】
ガラス基板にガス排出孔を形成するには、レーザ光を光学系に導き、所望のパターンを有するマスクを通してガラス基板に照射すればよい。この際の位置決めは、精密な位置決めステージ上で行なう。ガス排出孔の開口部の大きさなどは、レーザの出力、照射時間、ガラス基板の厚み等を考慮して決定することができる。例えば、ガラス基板にエネルギー密度が 3.1J/cm2 のエキシマパルスレーザを照射すると、 100μm/ 600shotのエッチングレイトを得ることができる。したがって、厚さ 0.5mmのガラス基板に 100Hzでレーザパルスを照射すると、30秒で連通孔を形成することができる。このようにしてレーザの照射によって形成されたガス排出孔の内周面は、レーザの入射口から出射口に向かって内径が徐々に小さくなるテーパ状となる。
【0061】
ガラス基板にガス排出孔を形成した後、その内周面を以下に記す通りにシラン処理して疎水化する。まず、疎水性を付与しようとする領域、すなわちガス排出孔の内周面以外の領域をフォトリソグラフィ技術によってレジストで被覆する。次いで、このガラス基板を密封容器内に密封し、シランカップリング剤、例えばジクロロオクチルメチルシランを 2%溶解したトルエンを乾燥窒素ガスでバブリングして上記密封容器内に導入する。これにより、レジストで被覆されていない領域に気相反応で疎水性のシラン処理皮膜が形成される。皮膜が形成された後、ガラス基板からレジストを除去する。
【0062】
図においては、流路107 にガス排出孔201 を1つだけ示したが、ガス排出孔201 は1つに限定されるものではなく、複数個形成してもよい。また、製造方法も前述したものに限定されるものではなく、当業者に周知の技術で同等の加工が行なえるものであれば、どのような方法でも利用することができる。例えば、シラン処理方法として気相での反応を説明したが、クロロホルム、トルエン等を用いて液相で処理することも可能である。また、シラン処理剤も疎水性の表面処理が可能であれば様々なものが使用可能である。例えば、疎水性基として1つ以上のアルキル基やフェニル基を有するものや、ガラスへの反応基としてクロル基、メトキシ基、エトキシ基等を含む試薬を用いることができる。また、シランカップリング剤のSiをTiに換えたチタネートカップリング剤を用いることもできる。さらに、蒸着、スパッタリング等によって表面処理を行なうこともでき、例えば、連通孔の開口部以外をマスクしてパリレン等の疎水性材料を蒸着してもよいし、テフロン等の疎水性材料をスパッタリングにより所定の領域に付着させることも可能である。
【0063】
この第2実施形態は、前述の通り、蓋板113 にガス排出孔201 が形成されていることを除いて前記第1実施形態と同じ構成をとる。したがって、この第2実施形態の装置は、第1実施形態と同様の手順でDNA増幅反応を行なうことができ、第1実施形態が示す効果を同様に示す。これに加えて、この第2実施形態には、ガス排出孔201 が存在することによる効果がある。2つの反応セル102 および103 の間で試料溶液を継続的に移動させ、それにより微小な気泡が大きく纏まることは前述した通りである。この大きく纏まった気泡は、試料溶液と共に流路107 を通して2つの反応セルの間を移動する。流路107 の上面に設けられたガス排出孔201 の内周面は疎水性を示すので、親水性の液体は弾かれてしまい外部に流出することはないが、気泡は疎水性を示すため内周面に容易に付着し、そのままガス排出孔201 内を通過して外部に排出される。
【0064】
このように、この第2実施形態の装置によれば、比較的容易に気泡の除去機構と流路とを一体的に形成することができ、外部の気泡除去手段と接続する必要がなくなる。このため、回路全体をよりコンパクトにすることができ、また外部との接続部分を少なくすることができるため構造が簡単になる。さらに、流路の壁面は主として親水性であるため、水溶性液体を少ない抵抗で流すことができる。また、蓋板113 がシリコンウェハである場合には、ガス排出孔201 を異方性エッチングで形成することが可能であり、より精密な加工が可能である。さらに、外部の圧力を減じることによりガス排出孔を介する気泡の除去効率をより向上させることができる。加えて、このような場合であっても、外部との接続部分が少ないために液漏れ等の恐れがなく、装置の安定性が向上する。
【0065】
ガス排出孔の形態は図7に示される形態に限られるものではなく、例えば図8に示されるように、ガス排出孔202 の流路107 側の開口部に多孔質層203 が設けられた形態でもよい。多孔質層203 の形成方法は特に限定されるものではないが、蓋板113 がシリコンウェハである場合には、以下の手順により比較的容易に形成することができる。
【0066】
まず、蓋板113 となるシリコンウェハに、通常用いられるフォトリソグラフィ技術および酸化膜または窒化膜のエッチング技術を用いて多孔質層203 のマスクパターンを形成する。この際、酸化膜のエッチングは、例えばフッ酸とフッ化アンモニウムとの混合液を用いるバッファーエッチによって、また窒化膜のエッチングは、例えばCF4 を用いるプラズマエッチングもしくはRIE(Reactive Ion Etching)によって、それぞれ容易に行なうことができる。マスクパターンが形成された後、例えば電流密度15mA/cm2 、温度30℃で、陽極化成を行なう。これにより、シリコンウェハの表面から内部に向かって多孔質層が形成される。多孔質層の厚みは特に限定されるものではないが、通常 100μm以下で十分である。厚みは陽極化成の処理条件や処理時間により制御することができる。
【0067】
陽極化成終了後、多孔質層203 を形成した面の裏面にガス排出孔202 のマスクパターンを形成し、シリコンウェハをエッチングして多孔質層203 を露出させる。この際のエッチングには、図7に示されるガス排出孔201 と同様に異方性エッチングを利用することができるが、ここではシリコンウェハを貫通する必要はなく、多孔質層203 が露出する深さまでエッチングすればよい。このため、ガス排出孔202 のマスクパターンのサイズはガス排出孔201 の場合ほど厳密である必要はない。
【0068】
ガス排出孔202 を形成した後、マスクパターンを除去し、多孔質層203 の表面を含めてシリコンウェハの全面に酸化膜を形成する。ただし、マスクパターンを酸化膜で作製した場合には、マスクパターンをそのまま酸化膜として用いることもできる。
【0069】
続いて、多孔質層203 の流路107 側表面を以下に記す通りにシラン処理して疎水化する。まず、疎水性を付与しようとする領域、すなわち多孔質層203 の流路107 側表面、以外の領域をフォトリソグラフィ技術によってレジストで被覆する。次いで、このシリコンウェハを密封容器内に密封し、シランカップリング剤、例えばジクロロオクチルメチルシランを 2%溶解したトルエンを乾燥窒素ガスでバブリングして上記密封容器内に導入する。これにより、レジストで被覆されていない領域に気相反応で疎水性のシラン処理皮膜が形成される。皮膜が形成された後、シリコンウェハからレジストを除去する。
【0070】
このガス排出孔202 も、前述のガス排出孔201 と同様の効果を有している。すなわち、親水性の液体は弾かれてしまって外部に流出することはないが、疎水性を示す気泡は多孔質層203 の細孔を容易に通過して外部に排出される。これに加えて、前述の通り、このガス排出孔202 はガス排出孔201 の場合と比較してエッチング深さとマスクパターンのサイズを厳密に規定する必要がない。そのため、より容易に加工することができる。また、ガス排出孔202 の孔内に多孔質層203 が設けられていることにより、ガス排出孔202 は常に多数の微小孔から構成されているものと見なすことができる。すなわち、ガス排出孔202 の大きさに関わりなく、常に液漏れを生じることなく気泡の除去機能を維持することが可能である。このため、前記ガス排出孔201 よりも開口部を大きくすることができ、気泡除去効率の増加が期待できる。
【0071】
なお、図8においては、多孔質層203 はガス排出孔202 の流路107 側開口部に設けられているが、外部側開口部に設けることもできる。この場合には、エッチングにより形成されるガス排出孔202 の内周面が流路107 側になるので、この内周面にも上述のシラン処理を施して疎水性を付与することによりガス排出の効果が向上する。
【0072】
次に、この発明によるDNA増幅装置の第3実施形態について説明する。
【0073】
図9は第3実施形態の上面を示す平面図である。図9に示されるように、この第3実施形態は、図6に示される第2実施形態の構成にさらに2つのガス流通孔301 および302 を加えたものである。すなわち、この第3実施形態の構成は次の通りである。無機基板101 上面に2つのプレーナ状反応セル102 および103 、並びに試料導入部104 および試料排出部105 が形成されており、試料導入部104 と反応セル102 とが流路106 で、反応セル102 と103 とが流路107 で、さらに反応セル103 と試料排出部105 とが流路108 でそれぞれ連通している。反応セル102 および103 の底面にはそれぞれ温度測定部109 および110 が設けられ、無機基板101 の下面の反応セル102 および103 に対応する位置には加熱手段111 および112 がそれぞれ設けられている(図2参照)。また、無機基板101 の上面には蓋板113 が接合され、基板101 の上面に形成された反応セル102 および103 、試料導入部104 、試料排出部105 、並びに流路106 、107 および108 には、この蓋板と各々の底面および側面とで空間が形成されている。さらに、蓋板113 の反応セル102 と103 とを繋ぐ流路107 の上面に相当する部分にはガス排出孔201 が、試料導入部104 と反応セル102 とを繋ぐ流路106 の上面に相当する部分にはガス排出孔301 が、並びに反応セル103 と試料排出部105 とを繋ぐ流路108 の上面に相当する部分にはガス排出孔302 が形成されている。
【0074】
さらに、この装置は、試料導入部104 と反応セル102 、並びに反応セル103 と試料排出部105 との間にそれぞれ弁を設けることもできる(図示せず)。その場合には、ガス排出孔301 および302 は、各々、弁と反応セルとの間に位置しなければならない。
【0075】
ガス排出孔301 および302 は、形態的には第2実施形態におけるガス排出孔と同じであって、図7および8に示されるガス排出孔のいずれの形態でもよく、その製造方法も前述した通りである。
【0076】
前述のように、PCR反応を行なっている間に、加熱により溶液中に発生した気泡および/またはその溶液自体が膨張して反応セル内の圧力が上昇し、試料溶液が予期せず他方の反応セルに移動したり、接合部等が高圧で破損したりすることがある。この第3実施形態の装置では、反応セル内の圧力が上昇した場合には、各々の反応セルと試料導入部または試料排出部との間に形成されたガス排出孔301 または302 から空気が流出して反応セル内の圧力を下げ、高圧による試料溶液の移動や装置の破損を防止する。すなわち、ガス排出孔301 および302 により、反応セル内の圧力を常に一定に保つことが可能となる。
【0077】
次に、この発明によるDNA増幅装置の第4実施形態について説明する。
【0078】
図10は第4実施形態の上面を示す平面図、図11は図10に示される装置の下面を示す平面図、および図12は図10に示される装置のC−C線断面図をそれぞれ示す。図に示されるように、この装置では、無機基板401 上面にプレーナ状反応セル402 、試料導入部403 および試料排出部404 が形成されており、試料導入部403 と反応セル402 とは流路405 で、並びに反応セル402 と試料排出部404 とは流路406 でそれぞれ連通している。反応セル402 の底面には温度測定部407 が設けられ、無機基板401 の下面の反応セル402 に対応する位置には加熱手段408 が設けられている。また、反応セル402 の底面上には磁性粒子409 が載置され、加熱手段408 の下方にこの磁性粒子409 の運動を磁気により制御する磁気スターラー410 が設けられている。さらに、無機基板401 の上面には蓋板411 が接合され、基板401 の上面に形成された反応セル402 、試料導入部403 、試料排出部404 、並びに流路405 および406 には、この蓋板411 と各々の底面および側面とで空間が形成されている。なお、図において、磁性粒子409 は多数の粒子の集合体として表わされている。以下、磁性粒子の流径に関する記述は磁性粒子の各々について述べ、磁性粒子の動きに関する記述は磁性粒子の集合体としての動きに言及するものとする。
【0079】
この第4実施形態における無機基板401 、プレーナ状反応セル402 、試料導入部403 、試料排出部404 、流路405 および406 、温度測定部407 、加熱手段408 並びに蓋板411 は、上記第1実施例と同じ材料および方法によって作製することができる。
【0080】
反応セル402 の底面上に載置される磁性粒子は市販品をそのまま用いることができるが、その直径は好ましくは 0.1μmないし 100μm、より好ましくは 1μmないし50μmである。また、磁性粒子の表面を、例えば親水性ポリマ−等で処理して親水性を付与することにより、DNA増幅反応時に試料溶液中に含まれる成分が磁性粒子に付着することを防ぐこともできる。
【0081】
磁気スターラー410 は磁気によって反応セル402 内の磁性粒子409 を動かし、その運動を制御するものである。磁気スターラー410 は、通常、磁石、モーターおよび制御回路から構成され、モーターによって磁石を回転し、その回転を制御回路で制御する機構を有している。この第4実施形態においては、磁石の回転速度は 0ないし5000rpm、好ましくは 0ないし2000rpmの範囲で制御可能であればよい。
【0082】
この第4実施形態の装置を用いたPCRによるDNA増幅反応の手順は以下の通りである。
【0083】
1)まず、DNA増幅反応を行なうために必要な材料、すなわち2種類以上のプライマー、耐熱性DNA合成酵素および4種類のデオキシリボヌクレオシド三リン酸(dATP、dCTP、dGTPおよびdTTP)並びに検体を含む試料溶液を、上記第1実施形態と同じ搬送手段を用いて試料導入部403 から反応セル402 に導入する。
【0084】
2)磁気スターラー410 を稼動させ、反応セル402 内の磁性粒子409 を回転させる。この際の回転数は、試料溶液の容量と磁性粒子の粒径とによって決定される。
【0085】
3)反応セル内の試料溶液を、温度測定部407 で温度を測定しながら、加熱手段408 で90−93℃まで昇温し、この温度を 1秒ないし 1分程度維持する。この際の維持温度の誤差は 0.1℃以内に抑える。維持温度の設定は使用する酵素の耐熱性によって決定する。
【0086】
4)反応セル内の試料溶液の温度を37℃まで降温し、この温度を 1秒ないし 3分程度維持する。この際、維持温度の誤差は 0.1℃以内に抑える。
【0087】
5)反応セル内の試料溶液の温度を40−65℃に昇温し、この温度を 1秒ないし 3分程度維持する。この際、維持温度の誤差は 0.1℃以内に抑える。
【0088】
6)上記3)−5)のサイクルを 2−1000回繰返す。繰返し回数は、試料溶液に含まれるDNAの濃度と所望する増幅率とに依存する。
【0089】
7)所定の回数3)−5)のサイクルを繰返した後、磁性粒子の回転を停止させ、搬送手段によって試料排出部404 から試料溶液を外部に排出する。このとき、磁性粒子409 は磁気スターラー410 の磁石の磁性によって反応セル402 内に固定され、試料溶液と共に排出されることはない。
【0090】
この第4実施形態においては、反応セル内で磁性粒子が回転することにより、増幅反応を行なっている間試料溶液が常に撹拌されている状態にある。このため、増幅反応の際の加熱、冷却の繰返しによって試料溶液中に発生する微小な気泡が大きく纏まり、除去し易くなる。したがって、溶液中に気泡が存在することによって温度が不均一となることを防止することができる。また、試料溶液を十分に撹拌することができるため、溶液中の成分分布の不均一も解消することができる。
【0091】
次に、この発明によるDNA増幅装置の第5実施形態について説明する。
【0092】
図13は第5実施形態の上面を示す平面図、図14は図13に示される装置のD−D線断面図である。この第5実施形態は、磁性粒子409 の回転中心に当る部分の蓋板411 にガス排出孔501 が形成されていることを除いて上記第4実施形態と同じ構成をとる。すなわち、この第5実施形態の構成は以下の通りである。無機基板401 上面にプレーナ状反応セル402 、試料導入部403 および試料排出部404 が形成されており、試料導入部403 と反応セル402 とは流路405 で、並びに反応セル402 と試料排出部404 とは流路406 でそれぞれ連通している。反応セル402 の底面には温度測定部407 が設けられ、無機基板401 の下面の反応セル402 に対応する位置には加熱手段408 が設けられている。また、反応セル402 の底面上には磁性粒子409 が載置され、加熱手段408 の下方にこの磁性粒子409 の運動を磁気により制御する磁気スターラー410 が設けられている。無機基板401 の上面には蓋板411 が接合され、基板401 の上面に形成された反応セル402 、試料導入部403 、試料排出部404 、並びに流路405 および406 には、この蓋板411 と各々の底面および側面とで空間が形成されている。また、磁性粒子409 の回転中心に当る位置の蓋板411 にはガス排出孔501 が形成されている。
【0093】
ガス排出孔501 の内周面には、図14に示されるように、反応セル402 側から外部に向けて開口面積が小さくなるようにテーパが付けられている。また、この内周面は疎水性を示す物質で構成されるか、もしくは、例えばシラン処理により疎水性が付与されている。ガス排出孔501 の形態は図14に示される形態に限られるものではなく、図15に示されるように反応セル402 側の開口部に多孔質層502 が設けられた形態でもよい。多孔質層502 は反応セル402 側の開口部ではなく、外部側の開口部に設けてもよい。ガス排出孔501 は、前記第2実施形態と同様の方法で作製することができる。
【0094】
この第5実施形態は、前述の通り、蓋板411 にガス排出孔501 が形成されていることを除いて前記第4実施形態と同じ構成をとる。したがって、この第5実施形態の装置は、第4実施形態と同様の手順でDNA増幅反応を行なうことができ、第4実施形態が示す効果を同様に示す。これに加えて、この第5実施形態には、ガス排出孔501 が存在することによる効果がある。DNA増幅反応を行っている間、磁性粒子409 を回転させることにより試料溶液が撹拌され、溶液中に発生した微小な気泡が大きく纏められることは既述した通りである。この大きく纏められた気泡は、磁性粒子409 の回転に伴って発生する液流にのって磁性粒子409 の回転中心に集まる。磁性粒子409 の回転中心に当る位置の蓋板411 にはガス排出孔501 が形成されており、前述の通り親水性の液体は弾くが、疎水性を示す気泡は容易に通過させる。このため、回転中心に集まった気泡のみがガス排出孔501 から外部に排出される。
【0095】
このように、この第5実施形態では、増幅反応の際の加熱、冷却の繰返しによって試料溶液中に発生する気泡を効率良く外部に排出することができ、試料溶液中の温度分布が不均一になることを防ぐことができる。
【0096】
次に、この発明によるDNA増幅装置の第6実施形態について説明する。
【0097】
図16は、第6実施形態の上面を示す平面図である。図に示されるように、この第6実施形態は、試料導入部と反応セルおよび反応セルと試料排出部との間の流路にさらにガス排出孔が形成されていることを除いて前記第5実施形態と同様の構成をとる。すなわち、この第6実施形態の構成は以下の通りである。無機基板401 上面にプレーナ状反応セル402 、試料導入部403 および試料排出部404 が形成されており、試料導入部403 と反応セル402 とは流路405 で、並びに反応セル402 と試料排出部404 とは流路406 でそれぞれ連通している。反応セル402 の底面には温度測定部407 が設けられ、無機基板401 の下面の反応セル402 に対応する位置には加熱手段408 が設けられている(図14、15参照)。また、反応セル402 の底面上には磁性粒子409 が載置され、加熱手段408 の下方にこの磁性粒子409 の運動を磁気により制御する磁気スターラー410 が設けられている(図14、15参照)。無機基板401 の上面には蓋板411 が接合され、基板401 の上面に形成された反応セル402 、試料導入部403 、試料排出部404 、並びに流路405 および406 には、この蓋板411 と各々の底面および側面とで空間が形成されている。また、蓋板411 には、磁性粒子409 の回転中心に当る位置、反応セル402 と試料導入部403 とを連通する流路405 の上面に相当する部分並びに反応セル402 と試料排出部404 とを連通する流路406 の上面に相当する部分に、それぞれガス排出孔501 、601 および602 が形成されている。
【0098】
さらに、図に示す装置においては、流路405 および406 にそれぞれ弁を設けることもできる(図示せず)が、その場合には、ガス排出孔601 および602 はそれぞれ、反応セル402 と各々の弁との間に位置しなければならない。
【0099】
ガス排出孔601 および602 の形態は、前記ガス排出孔501 と全く同様であり、図14に示される形態であっても、あるいは図15に示される形態であってもよい。また、その作製方法も前記ガス排出孔501 と同様であり、前記第2実施形態と同様にして作製することができる。
【0100】
前述のように、この第6実施形態はさらに2つのガス排出孔が形成されていることを除いて前記第5実施形態と同様の構成をとる。したがって、第5実施形態と同様の作用効果を示す。さらに、この第6実施形態では、さらに2つのガス排出孔が存在することによる効果が加わる。
【0101】
PCR反応を行なっている間に、加熱により溶液中に発生した気泡および/またはその溶液自体が膨張して反応セル内の圧力が上昇し、試料溶液が予期せず反応セル外に移動したり、接合部等が高圧で破損したりすることがあることは既述の通りである。この第6実施形態では、反応セル内の圧力が上昇した場合には、反応セルと試料導入部または試料排出部との間に形成されたガス排出孔601 または602 から空気が流出して反応セル内の圧力を下げ、高圧による試料溶液の移動や装置の破損を防止する。すなわち、ガス排出孔601 および602 により、反応セル内の圧力を常に一定に保つことが可能となる。
【0102】
次に、この発明によるDNA増幅装置の第7実施形態について説明する。
【0103】
図17は第7実施形態の上面を示す平面図、図18は図17に示される装置の下面を示す平面図、図19は図17に示される装置のE−E線断面図および図20は図17に示される装置のF−F線断面図である。図に示されるように、この第7実施形態では、無機基板701 上面に2つのプレーナ状反応セル702 および703 、並びに試料導入部704 および試料排出部705 が形成されており、試料導入部704 と反応セル702 とは流路706 で、反応セル702 と703 とは流路707 で、さらに反応セル703 と試料排出部705 とは流路708 でそれぞれ連通している。反応セル702 および703 の底面にはそれぞれ温度測定部709 および710 が設けられ、無機基板701 の下面の反応セル702 および703 に対応する位置には加熱手段711 および712 がそれぞれ設けられている。また、無機基板701 の上面には蓋板713 が接合され、基板701 の上面に形成された反応セル702 および703 、試料導入部704 、試料排出部705 、並びに流路706 、707 および708 には、この蓋板713 と各々の底面および側面とで空間が形成されている。さらに、反応セル702 の上面に相当する部分の蓋板713 には少なくとも1つのガス排出孔714 が形成され、加えて、反応セル702 の裏面に設けられている加熱手段711 の下方には超音波振動子715 が設けられている。
【0104】
この第7実施形態において、無機基板701 、反応セル702 および703 、試料導入部704 、試料排出部705 、流路706 、707 および708 、温度測定部709 および710 、加熱手段711 および712 、並びに蓋板713 は、前記第1実施形態と同様の材料で、同様の方法により作製することができる。
【0105】
ガス排出孔714 の内周面には、図20に示されるように、反応セル702 側から外部に向けて開口面積が小さくなるようにテーパが付けられている。また、この内周面は疎水性を示す物質で構成されるか、もしくは、例えばシラン処理により疎水性が付与されている。ガス排出孔714 の形態は図20に示される形態に限られるものではなく、図21に示されるように反応セル702 側の開口部に多孔質層716 が設けられた形態でもよい。また、多孔質層716 は反応セル702 側の開口部ではなく、外部側の開口部に設けてもよい。ガス排出孔714 は、前記第2実施形態と同様の方法で作製することができる。
【0106】
超音波振動子715 は超音波を発生する素子であり、通常圧電体を利用して高周波電源(図示せず)で制御する。高周波電源の出力は、反応セル702 の大きさに依存して決定される。図においては、超音波振動子715 は加熱手段711 の下方に設けられているが、このような構成に限られるものではなく、無機基板701 と加熱手段711 との間であっても、あるいは蓋板713 の上方にあってもよい。また、必ずしも反応セル702 の下方もしくは上方に位置する必要もなく、無機基板701 に接触して設けられていればよく、さらには使用時に反応セル702 に接触させることができれば、無機基板701 に常設されている必要もない。
【0107】
この第7実施形態を用いたPCRによるDNA増幅反応の手順は以下の通りである。
【0108】
1)まず、DNA増幅反応を行なうために必要な材料、すなわち2種類以上のプライマー、耐熱性DNA合成酵素および4種類のデオキシリボヌクレオシド三リン酸(dATP、dCTP、dGTPおよびdTTP)並びに検体を含む試料溶液を、上記第1実施形態と同じ搬送手段を用いて試料導入部704 から第1の反応セル702 に導入する。
【0109】
2)超音波振動子715 を作動させ、超音波を 1秒ないし10分間発振させる。
【0110】
3)再び搬送手段を利用して、試料溶液を第2の反応セル703 に移動させる。
【0111】
4)第2の反応セル703 内の試料溶液を、温度測定部710 で温度を測定しながら、加熱手段712 で90−93℃まで昇温し、この温度を 1秒ないし 1分程度維持する。この際の維持温度の誤差は 0.1℃以内に抑える。維持温度の設定は使用する酵素の耐熱性によって決定する。
【0112】
5)第2の反応セル703 内の試料溶液の温度を37℃まで降温し、この温度を 1秒ないし 3分程度維持する。この際、維持温度の誤差は 0.1℃以内に抑える。
【0113】
6)第2の反応セル703 内の試料溶液の温度を40−65℃に昇温し、この温度を 1秒ないし 3分程度維持する。この際、維持温度の誤差は 0.1℃以内に抑える。
【0114】
7)上記4)−6)のサイクルを 2−1000回繰返す。繰返し回数は、試料溶液に含まれるDNAの濃度と所望する増幅率とに依存する。
【0115】
8)所定の回数4)−6)のサイクルを繰返した後、搬送手段によって試料排出部705 から試料溶液を外部に排出する。
【0116】
この第7実施形態においては、第1の反応セルに導入した試料溶液に超音波振動を加えた後、第2の反応セルにおいてDNA増幅反応を行なう。このようにDNA増幅反応に先立って試料溶液を超音波によって前処理することにより、溶液中の溶存空気を気泡として発生させ、第1の反応セルの上面に形成されたガス排出孔から排出することができる。このため、DNA増幅反応の際の加熱、冷却の繰返しによる微小な気泡の発生を抑制することができ、溶液中の温度が不均一となることを防ぐことができる。また、試料溶液を超音波によって前処理する際に加熱手段711 で試料溶液を加熱することも可能であり、これにより溶液中の溶存空気をさらに低減させることができる。
【0117】
上記DNA増幅反応の手順の説明においては、第1の反応セルは試料溶液の超音波による前処理に用い、DNA増幅反応は第2の反応セルでのみ行なっているが、前記第1ないし第3実施形態と同様の手順で反応を行なうこともできる。すなわち、第1の反応セルと第2の反応セルとの間で試料溶液を移動させて順次反応を行なってもよい。この場合には、最初の超音波による前処理で排出できなかった溶存空気が第2の反応セル内で気泡として発生したとしても、次の工程で第1の反応セルの上面に設けられたガス排出孔から速やかに排出することができる。
【0118】
なお、この第7実施形態では2つの反応セルが用いられているが、前記第4ないし第6実施形態のように反応セル1つであっても同様の効果を期待することができる。この場合には、例えば前記第4実施形態において、加熱手段408 の下方に超音波振動子を設置し、反応セル402 に試料溶液を導入した後、まず超音波振動子を 1秒ないし10分間作動させて溶液中の溶存空気を除去し、次いで磁性粒子を回転させて反応を行なえばよい。
【0119】
また、この第7実施形態の装置の周囲を減圧状態にすることにより、ガス排出孔714 からの気泡の排出をより効率よく行なうことができる。ただし、この場合には、ガス排出孔714 から試料溶液が流出しないように減圧の程度を調整する必要がある。
【0120】
次に、この発明によるDNA増幅装置の第8実施形態について説明する。
【0121】
図22は第8実施形態の上面を示す平面図、図23は図22に示される装置の下面を示す平面図、および図24は図22に示される装置のG−G線断面図である。この第8実施形態は、蓋板に減圧用の管が接続され、3つの流路のうちの2つに弁が設けられていることを除いて、前記第7実施形態と同様の構成をとる。すなわち、第8実施形態の構成は以下の通りである。無機基板701 上面に2つのプレーナ状反応セル702 および703 、並びに試料導入部704 および試料排出部705 が形成されており、試料導入部704 と反応セル702 とは流路706 で、反応セル702 と703 とは流路707 で、さらに反応セル703 と試料排出部705 とは流路708 でそれぞれ連通している。反応セル702 および703 の底面にはそれぞれ温度測定部709 および710 が設けられ、無機基板701 の下面の反応セル702 および703 に対応する位置には加熱手段711 および712 がそれぞれ設けられている。また、無機基板701 の上面には蓋板713 が接合され、基板701 の上面に形成された反応セル702 および703 、試料導入部704 、試料排出部705 、並びに流路706 、707 および708 には、この蓋板713 と各々の底面および側面とで空間が形成されている。さらに、反応セル702 の上面に相当する部分の蓋板713 には少なくとも1つのガス排出孔714 が形成され、加えて、反応セル702 の裏面に設けられている加熱手段711 の下方には超音波振動子715 が設けられている。これに加えて、ガス排出孔714 には、ジョイント部801 を介して減圧管802 が接続されており、さらに流路706 および707 にはそれぞれ弁803 および804 が設けられている。
【0122】
この第8実施形態において、無機基板701 、反応セル702 および703 、試料導入部704 、試料排出部705 、流路706 、707 および708 、温度測定部709 および710 、加熱手段711 および712 、並びに蓋板713 は、前記第7実施形態と同様に、前記第1実施形態と同様の材料で、同様の方法により作製することができる。
【0123】
ガス排出孔714 も前記第7実施形態と同様に前記第1実施形態と同様の方法で形成することができ、図24に示されるように、反応セル702 側から外部に向けて開口面積が小さくなるようにテーパが付けられた形態であっても、図25に示されるように反応セル702 側の開口部に多孔質層716 が設けられた形態でもよい。また、多孔質層716 は反応セル702 側の開口部ではなく、外部側の開口部に設けてもよい。
【0124】
減圧管802 はジョイント部801 を介して蓋板713 に形成されているガス排出孔714 に接続されている。ここで用いられるジョイント部801 および減圧管802 の材質や接続方法は特に限定されるものではなく、ガス排出孔714 と減圧管802 とを気密に接続できるものであればどのようなものでもよい。減圧管802 はさらに図示されないロータリーポンプ等の吸引手段に接続されている。
【0125】
流路706 および707 にそれぞれ設けられる弁803 および804 は、例えば、予め蓋板713 にエッチングやドリルなどで貫通孔を形成し、この貫通孔に微小な弁を固定した後無機基板701 と接合することにより作製することができる。ここで用いられる微小な弁としては市販品を用いることができ、例えばレッドウッド・マイクロシステムズ社(Redwood microsystems, Inc.)の Fluistor を好適に用いることができる。この Fluistor は気体用の弁ではあるが、液体用としても利用することが可能である。また、弁の固定方法としては、通常陽極接合による接着法が用いられるが、接着剤や粘着剤を利用して接着することもできる。
【0126】
この第8実施形態を用いたPCRによるDNA増幅反応の手順は以下の通りである。
【0127】
1)まず、弁803 および804 を開放し、DNA増幅反応を行なうために必要な材料、すなわち2種類以上のプライマー、耐熱性DNA合成酵素および4種類のデオキシリボヌクレオシド三リン酸(dATP、dCTP、dGTPおよびdTTP)並びに検体を含む試料溶液を、上記第1実施形態と同じ搬送手段を用いて試料導入部704 から第1の反応セル702 に導入する。
【0128】
2)弁803 および804 を閉鎖する。
【0129】
3)減圧管802 に接続した吸引手段を作動させ、第1の反応セル702 内部を減圧する。
【0130】
4)超音波振動子715 を作動させ、超音波を 1秒ないし10分間発振させる。
【0131】
5)弁803 および804 を開放する。
【0132】
6)再び搬送手段を利用して、試料溶液を第2の反応セル703 に移動させる。
【0133】
7)第2の反応セル703 内の試料溶液を、温度測定部710 で温度を測定しながら、加熱手段712 で90−93℃まで昇温し、この温度を 1秒ないし 1分程度維持する。この際の維持温度の誤差は 0.1℃以内に抑える。維持温度の設定は使用する酵素の耐熱性によって決定する。
【0134】
8)第2の反応セル703 内の試料溶液の温度を37℃まで降温し、この温度を 1秒ないし 3分程度維持する。この際、維持温度の誤差は 0.1℃以内に抑える。
【0135】
9)第2の反応セル703 内の試料溶液の温度を40−65℃に昇温し、この温度を 1秒ないし 3分程度維持する。この際、維持温度の誤差は 0.1℃以内に抑える。
【0136】
10)上記7)−9)のサイクルを 2−1000回繰返す。繰返し回数は、試料溶液に含まれるDNAの濃度と所望する増幅率とに依存する。
【0137】
11)所定の回数7)−9)のサイクルを繰返した後、搬送手段によって試料排出部705 から試料溶液を外部に排出する。
【0138】
この第8実施形態においては、前記第7実施形態と同様に、第1の反応セルに試料溶液を導入した後、まず超音波によって前処理を施して溶液中の溶存空気を気泡として発生させる。この際、反応セル内は減圧に保たれているため、常圧では除去しきれない溶存空気も気泡として発生する。さらに、発生した気泡は、ガス排出孔に減圧管を介して接続されているロータリーポンプ等の吸引手段により強制的に排除される。このように、試料溶液中の溶存空気をより効率的に除去することが可能であり、しかも、第1の反応セルは2つの弁を閉鎖することにより完全に密閉されるため試料溶液がガス排出孔から流出する恐れも少ない。したがって、第2の反応セルにおけるDNA増幅反応の際の加熱、冷却の繰返しによる微小な気泡の発生を抑制し、溶液中の温度が不均一となることを防ぐことができる。
【0139】
なお、上記DNA増幅反応の手順の説明においては、第1の反応セルは試料溶液の超音波による前処理に用い、DNA増幅反応は第2の反応セルでのみ行なっているが、前記第7実施形態と同様に、前記第1ないし第3実施形態と同様の手順で反応を行なうこともできる。すなわち、第1の反応セルと第2の反応セルとの間で試料溶液を移動させて順次反応を行なってもよい。この場合には、最初の減圧処理および超音波処理で排除できなかった溶存空気が第2の反応セル内で気泡として発生したとしても、次の工程で第1の反応セルの上面に設けられたガス排出孔から強制的に排出することができる。
【0140】
また、この第8実施形態では2つの反応セルが用いられているが、前記第4ないし第6実施形態のように反応セル1つであっても同様の効果を期待することができることは前記第7実施形態と同じである。
【0141】
以上、図面に基づいてこの発明によるDNA増幅装置の実施形態を説明したが、この発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能である。ここで、この発明の要旨をまとめると以下のようになる。
【0142】
(1)図1ないし5に対応:
無機基板上に形成された第1および第2の2つのプレーナ状反応セル、該第1の反応セルに試料溶液を導入するための試料導入部、該第2の反応セルから試料溶液を排出するための試料排出部、該試料導入部と該第1の反応セル、該第1の反応セルと第2の反応セル、および該第2の反応セルと該試料排出部とを互いに連通する3つの流路、該第1および第2の反応セルの底面にそれぞれ少なくとも1つずつ設けられた温度測定部、該無機基板の該第1および第2の反応セルの裏面に設けられた加熱手段、並びに試料溶液の搬送手段を具備するDNA増幅装置。
【0143】
この装置では、試料導入部から流路を介して第1の反応セルに試料溶液を導入した後、反応セルの底面に設けられた温度測定部および加熱手段を用いて試料溶液を所定の温度に加熱してDNA増幅反応を行なうが、その際、搬送手段を利用して試料溶液を第1の反応セルと第2の反応セルとの間で交互に移動させる。反応が終了した後、試料溶液の移動を停止し、第2の反応セルから試料排出部を介して溶液を外部に排出する。
【0144】
このように、試料溶液を第1の反応セルと第2の反応セルとの間で移動させることにより、溶液が撹拌され、溶液中に発生した微小な気泡を大きく纏めることができる。大きく纏まった気泡は、多数の微小な気泡よりも容易に除去することができる。このため、溶液中の気泡を効率よく除去することが可能となり、気泡が存在することによる温度の不均一や装置の破損を防ぐことができる。
【0145】
(2)図6ないし8に対応:
前記第1の反応セルと第2の反応セルとを連通する流路にガス排出孔が形成されている(1)記載のDNA増幅装置。
【0146】
この装置では、(1)の装置と同様に、増幅反応を行なっている間第1の反応セルと第2の反応セルとの間で試料溶液を交互に移動させる。この際、溶液の移動に伴う撹拌によって大きく纏められた気泡が、2つの反応セルを連通する流路に形成されたガス排出孔から外部に排出される。
【0147】
第1の反応セルと第2の反応セルとの間で試料溶液を互いに移動させることにより、増幅反応における加熱、冷却の繰返しによって発生する微小な気泡が大きく纏められることは上記(1)において説明した通りである。この大きく纏められた気泡は試料溶液と共に2つの反応セルの間を移動するが、2つの反応セルを連通する流路を通過する際に、疎水性を示す気泡のみが流路に形成されたガス排出孔を通過し、外部に放出される。したがって、単に試料溶液を2つの反応セルの間で移動させるだけで効率的に気泡を除去することが可能であり、気泡の存在により溶液の温度が不均一になることをより効率よく防ぐことができる。
【0148】
(3)図10ないし12に対応:
無機基板上に形成されたプレーナ状の反応セル、該反応セルに試料溶液を導入するための試料導入部、該反応セルから試料溶液を排出するための試料排出部、該試料導入部と該反応セルおよび該反応セルと該試料排出部とを互いに連通する2つの流路、該反応セルの底面に設けられた少なくとも1つの温度測定部、該無機基板の該反応セルの裏面に設けられた加熱手段、該反応セルの底面に載置された回転子、並びに該回転子の回転を制御するための制御手段を具備するDNA増幅装置。
【0149】
この装置では、磁性粒子等の回転子が反応セル底面に載置されており、試料溶液を反応セルに導入した後、増幅反応を行なっている間、磁気スターラー等の制御装置によって回転子を回転させる。この回転子の回転に伴って反応セル内の試料溶液も回流し、溶液中に存在する微小な気泡がその液流にのって回転子の回転中心に運ばれ、大きく纏められる。
【0150】
このように大きく纏められた気泡は容易に除去することが可能であり、気泡が存在することによって溶液の温度分布が不均一となることを防ぐことができる。このため、DNA増幅反応をより正確に、効率よく行なうことができる。また、増幅反応の間試料溶液が常に撹拌された状態にあるため、溶液中の成分分布が不均一となることを防ぐことが可能であり、DNA増幅反応の精度を高めることができる。さらに、回転子として磁性粒子を用いた場合には、構造が単純で低コストの装置を得ることができる。
【0151】
また、この発明は、以下の態様をも含むものである。
【0152】
(4)図7ないし9に対応:
試料導入部と第1の反応セルとを連通する流路および第2の反応セルと試料排出部とを連通する流路にそれぞれガス排出孔が形成されている前記(1)または(2)に記載のDNA増幅装置。
【0153】
反応セル内の試料溶液は増幅反応の際の加熱もしくは冷却により、膨張もしくは収縮する。また、反応セル内の試料溶液の周囲の空気も同様に膨張もしくは収縮する。さらに、溶液中に気泡が発生した場合には、その気泡も膨張もしくは収縮することになる。このように、増幅反応を行なっているときには、反応セル内の圧力は大きく変化している。したがって、反応セルを密閉してしまうと、特に内部の圧力が上昇したときに、セルの接合部等が破損したり、試料溶液が予期せず移動してしまう恐れがある。これらを防止するには、反応セルを開放し、圧力の変化を調整する必要がある。この装置では、各々の流路に形成されたガス排出孔が反応セル内の圧力を調整する役目を果たす。すなわち、反応セル内の圧力が上昇した場合にはガス排出孔から空気が流出し、逆に反応セル内の圧力が下降した場合には空気が流入する。
【0154】
上述のように、反応セルを開放することは重要なことではあるが、外部に対してあまり大きく開放すると、加熱時に試料溶液中の水分や揮発性の高い成分が蒸発してしまい成分濃度が変化してしまう。この装置の各々の流路に形成されるガス排出孔は微小な孔であり、蒸発による成分濃度の変化をほとんど引き起こすことなく圧力の調整のみを行なうことができる。したがって、反応セル内の圧力上昇によるセルの破損や、試料溶液の予期せぬ移動を防ぐことができる。
【0155】
(5)図13ないし15に対応:
前記反応セルの上面にガス排出孔が形成されている(3)記載のDNA増幅装置。
【0156】
この装置では、前記(3)に記載の装置と同様に、DNA増幅反応を行なっている間回転子を回転させて試料溶液を撹拌する。このとき、溶液中に存在する微小な気泡が大きく纏められることは前述した通りである。この装置では、反応セル上面にガス排出孔が形成されており、ここから大きく纏められた気泡を排出することが可能となる。回転子の回転によって纏められた気泡は回転子の回転中心に集まってくるため、ガス排出孔は反応セル上面の回転子の回転中心に当たる部分に形成することが好ましい。
【0157】
このように、この装置では試料溶液中に存在する気泡を効率よく排除することが可能であり、試料溶液において温度分布が不均一になることを抑制し、DNA増幅反応をより正確に、効率よく行なうことができる。
【0158】
(6)図16に対応:
試料導入部と反応セルとを連通する流路および反応セルと試料排出部とを連通する流路にガス排出孔が形成されている(3)または(5)に記載のDNA増幅装置。
【0159】
反応セル内の試料溶液は増幅反応の際の加熱もしくは冷却により、膨張もしくは収縮する。また、反応セル内の試料溶液の周囲の空気も同様に膨張もしくは収縮する。さらに、溶液中に気泡が発生した場合には、その気泡も膨張もしくは収縮することになる。このように、増幅反応を行なっているときには、反応セル内の圧力は大きく変化している。したがって、反応セルを密閉してしまうと、特に内部の圧力が上昇したときに、セルの接合部等が破損したり、試料溶液が予期せず移動してしまう恐れがある。これらを防止するには、反応セルを開放し、圧力の変化を調整する必要がある。この装置では、各々の流路に形成されたガス排出孔が反応セル内の圧力を調整する役目を果たす。すなわち、反応セル内の圧力が上昇した場合にはガス排出孔から空気が流出し、逆に反応セル内の圧力が下降した場合には空気が流入する。
【0160】
上述のように、反応セルを開放することは重要なことではあるが、外部に対してあまり大きく開放すると、加熱時に試料溶液中の水分や揮発性の高い成分が蒸発してしまい成分濃度が変化してしまう。この装置の各々の流路に形成されるガス排出孔は微小な孔であり、蒸発による成分濃度の変化をほとんど引き起こすことなく圧力の調整のみを行なうことができる。したがって、反応セル内の圧力上昇によるセルの破損や、試料溶液の予期せぬ移動を防ぐことができる。
【0161】
(7)図17ないし21に対応:
反応セル中の試料溶液に超音波振動を加える超音波振動子をさらに具備する (1)ないし(6)のいずれか1つに記載のDNA増幅装置。
【0162】
この装置では、反応セルに試料溶液を導入した後、DNA増幅反応を行なう前に、超音波振動子を作動させて試料溶液に超音波を加え、試料溶液中の溶存空気を気泡にして溶液から追い出す。溶液から追い出された気泡は、さらに各々の装置に備わる機能を利用して外部に排出することができる。
【0163】
このように、DNA増幅反応を行なう前に試料溶液中の溶存空気を溶液から追い出すことにより、増幅反応の際の加熱、冷却の繰返しによる気泡の発生を抑制することが可能となり、溶液の温度分布が不均一になることを防ぐことができる。
【0164】
(8)図22ないし25に対応:
試料溶液の超音波による前処理を行なう反応セルに接続する全ての流路に弁が設けられ、かつ該反応セル内部を減圧する減圧手段を具備する(7)記載のDNA増幅装置。
【0165】
上記(7)の装置では、反応セルに試料溶液を導入した後、DNA増幅反応を行なう前に、超音波振動子を作動させて試料溶液に超音波を加え、溶液中の溶存空気の追い出しを行なうことは既述の通りである。この装置では、この試料溶液の超音波による前処理の際に、反応セルに接続する全ての流路に設けられた弁を全て閉鎖し、さらに減圧手段を用いて反応セル内部を減圧する。減圧の手段としては、反応セルの上面に形成されたガス排出孔に直接ポンプ等の吸引手段を接続してもよいし、あるいは単に装置周辺を減圧するだけでもよい。
【0166】
このように試料溶液の超音波処理に加えて、反応セル内を減圧することにより、超音波処理だけでは追い出すことができなかった溶存空気を溶液から追い出すことができ、DNA増幅反応の際の加熱、冷却の繰返しによる気泡の発生をさらに抑制することが可能となる。したがって、DNA増幅反応時に溶液の温度分布が不均一となることをより有効に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】この発明によるDNA増幅装置の第1実施形態の上面を示す平面図。
【図2】図1に示される実施形態の下面を示す平面図。
【図3】図1に示される実施形態のA−A線断面図。
【図4】pn接合を利用したダイオードタイプの温度測定部の断面を示す図。
【図5】図1に示される実施形態と試料溶液の導入または排出手段との接続の一例を模式的に示す図。
【図6】この発明によるDNA増幅装置の第2実施形態の上面を示す平面図。
【図7】図6に示される実施形態ののB−B線断面図。
【図8】図6に示される実施形態に形成されるガス排出孔の変形例の断面を示す図。
【図9】この発明によるDNA増幅装置の第3実施形態の上面を示す平面図。
【図10】この発明によるDNA増幅装置の第4実施形態の上面を示す平面図。
【図11】図10に示される実施形態の下面を示す平面図。
【図12】図10に示される実施形態のC−C線断面図。
【図13】この発明によるDNA増幅装置の第5実施形態の上面を示す平面図。
【図14】図13に示される実施形態のD−D線断面図。
【図15】図13に示される実施形態に形成されるガス排出孔の変形例の断面を示す図。
【図16】この発明によるDNA増幅装置の第6実施形態の上面を示す平面図。
【図17】この発明によるDNA増幅装置の第7実施形態の上面を示す平面図。
【図18】図17に示される実施形態の下面を示す平面図。
【図19】図17に示される実施形態のE−E線断面図。
【図20】図17に示される実施形態のF−F線断面図。
【図21】図17に示される実施形態に形成されるガス排出孔の変形例の断面を示す図。
【図22】この発明によるDNA増幅装置の第8実施形態の上面を示す平面図。
【図23】図22に示される実施形態の下面を示す平面図。
【図24】図22に示される実施形態のG−G線断面図。
【図25】図22に示される実施形態に形成されるガス排出孔の変形例の断面を示す図。
【符号の説明】
【0168】
101 、401 、701 …無機基板、102 、103 、402 、702 、703 …反応セル、104 、403 、704 …試料導入部、105 、404 、705 …試料排出部、106 、107 、108 、405 、406 、706 、707 、708 …流路、109 、110 、407 、709 、710 …温度測定部、111 、112 、408 、711 、712 …加熱手段、113 、411 、713 …蓋板、114 、115 、116 …ウェル、117 、118 …絶縁層、119 、120 …金属配線、123 …搬送手段、201 、301 、302 、501 、601 、602 、714 …ガス排出孔、202 、502 、716 …多孔質層、409 …回転子、410 …制御手段、715 …超音波振動子、801 …ジョイント部、802 …減圧管、803 、804 …弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機基板上に形成された第1および第2の2つのプレーナ状反応セル、該第1の反応セルに試料溶液を導入するための試料導入部、該第2の反応セルから試料溶液を排出するための試料排出部、該試料導入部と該第1の反応セル、該第1の反応セルと第2の反応セル、および該第2の反応セルと該試料排出部とを互いに連通する3つの流路、該第1および第2の反応セルの底面にそれぞれ少なくとも1つずつ設けられた温度測定部、該無機基板の該第1および第2の反応セルの裏面に設けられた加熱手段、並びに試料溶液の搬送手段を具備するDNA増幅装置。
【請求項2】
前記第1の反応セルと第2の反応セルとを連通する流路にガス排出孔が形成されている請求項1記載のDNA増幅装置。
【請求項3】
無機基板上に形成されたプレーナ状の反応セル、該反応セルに試料溶液を導入するための試料導入部、該反応セルから試料溶液を排出するための試料排出部、該試料導入部と該反応セルおよび該反応セルと該試料排出部とを互いに連通する2つの流路、該反応セルの底面に設けられた少なくとも1つの温度測定部、該無機基板の該反応セルの裏面に設けられた加熱手段、該反応セルの底面に載置された回転子、並びに該回転子の回転を制御するための制御手段を具備するDNA増幅装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2006−212040(P2006−212040A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−127681(P2006−127681)
【出願日】平成18年5月1日(2006.5.1)
【分割の表示】特願平8−72037の分割
【原出願日】平成8年3月27日(1996.3.27)
【出願人】(590002404)技術研究組合医療福祉機器研究所 (3)
【Fターム(参考)】