DT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御方法およびその制御装置
【課題】低温・高密度領域で運転するDT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御方法およびその制御装置を提供する。
【解決手段】DT磁気閉じ込め(ヘリカル、トカマク)型核融合発電装置10において、低温・高密度領域の自己点火運転は、通常は熱的に不安定なために平衡点周りで安定化する制御方法がとられるが、核融合出力の偏差を用いて制御する燃料供給においてその制御係数の符号を正(+1)から負(-1)に反転することで安定に制御できるようにした制御方法であり、また、この制御方法はより小型の先進閉じ込めDTヘリカル型核融合炉や、コイル配位の異なるDTヘリカル型炉、あるいはトカマク炉の低温・高密度領域における自己点火運転においても使用可能である。
【解決手段】DT磁気閉じ込め(ヘリカル、トカマク)型核融合発電装置10において、低温・高密度領域の自己点火運転は、通常は熱的に不安定なために平衡点周りで安定化する制御方法がとられるが、核融合出力の偏差を用いて制御する燃料供給においてその制御係数の符号を正(+1)から負(-1)に反転することで安定に制御できるようにした制御方法であり、また、この制御方法はより小型の先進閉じ込めDTヘリカル型核融合炉や、コイル配位の異なるDTヘリカル型炉、あるいはトカマク炉の低温・高密度領域における自己点火運転においても使用可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DTヘリカル型核融合発電装置、DTトカマク型核融合発電装置等の磁気閉じ込め型であるDT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御方法およびその制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気閉じ込めを利用した重水素とトリチウムを用いるD−T(D:重水素、T:トリチウム、以下、DTと示す)磁気閉じ込め型核融合発電装置には大別して、トカマク型核融合炉とヘリカル型核融合炉がある。
【0003】
これらの装置はいずれも図1に示されたような、通常は熱的に安定である高温・低密度の自己点火領域において運転することを想定している。しかしながら、以下のようにヘリカル装置で低温・高密度領域が実験的に達成された結果、通常は図1に示されたような、熱的に不安定である低温・高密度の自己点火領域における運転制御法の必要性が認識されるに至った。
【0004】
ここで高温・低密度の自己点火領域とは、図1の自己点火領域の「底」より右側にある実線で示した高温側の境界線のことであり、運転点がその境界線上にある場合、それは熱的に安定である。すなわち、プラズマのパラメータが変動しても常にその境界線上に戻ってくる。一方、低温・高密度の自己点火領域とは、図1の自己点火領域の「底」より左側にある点線で示した低温側の境界線のことであり、運転点がその境界線上にある場合、それは熱的に不安定である。したがって、プラズマのパラメータが変動するとその境界線上から離れていき、もはや自己点火運転は不可能となる。ここで自己点火運転とは外部から加熱パワーを入れなくても、燃料さえ注入すれば自分自身で核融合反応が持続することをいう。
【0005】
低温・高密度領域が実験的に観測された第1の例は、ドイツのマックスプランク研究所のベンデルシュタインステラレータ装置のプラズマ閉じ込め実験においてであり、2002年に温度400eV、線平均密度4x1020m−3程度の低温・高密度領域が実験的に得られた(例えば、非特許文献1参照)。
【0006】
第2の例には、日本の核融合科学研究所のLHD実験装置において、2006年に850eV、4.5x1020m−3の低温・高密度領域が実験的に達成された。(例えば、非特許文献2参照)。さらに10x1020m−3の高密度もすでに実現されている。このような高密度はトカマクにおいては達成されたことがなく、ヘリカル装置特有の現象であり、その利点を活かせる低温・高密度の自己点火領域の運転制御法の確立が緊急の課題となってきた。
【0007】
低温・高密度領域の自己点火運転の有利な点を以下に述べる。(図20も参照)
(1)高密度で運転するために、同じ核融合出力に対して閉じ込め時間が長く、また制動輻射損失パワーも大きく、プラズマ外周から漏れ出すエネルギーが小さくなる結果、ダイバータ熱流束が減少し、ダイバータ板の損傷を軽減できる。
(2)密度が高いために、閉じ込め時間が長いので、必要な閉じ込め増倍を低減させることができ、DTヘリカル炉に対する無理なパラメータを要求する必要がなくなる。
(3)低温度で運転するために、イオン温度が高くなると閉じ込めが劣化するとされている新古典論による悪影響を心配する必要が減る。
(4)低温度で運転するために、DT燃料を供給するアイスペレットの入射が高温度で運転する場合に比べてより容易である。
しかしながら、プラズマベータ値がわずかに増大することは欠点である。
【0008】
一方,トカマクを用いたDT型核融合炉には多くの設計例があるが,中でも現在世界各国の共同研究によって建設されつつあるITERトカマク型DT核融合実験炉が有名である(例えば、非特許文献3参照)。現在トカマク装置においては低温・高密度運転の実験データはないが今後の実験の進展に伴い、そのような運転領域の出現の可能性は十分に考えられる。特に、高温・低密度運転を行うトカマク型DT核融合装置ではダイバータ板への熱流束が大きく、それを低減するためにプラズマに不純物を注入するなどして輻射損失を増やすことが考えられている。しかし、そのような条件が実際の炉において実現できるかどうかは不明である。将来トカマクにおいても低温・高密度運転が可能になれば同じ核融合出力に対して閉じ込め時間が長く、また制動輻射損失パワーも大きく、プラズマ外周から漏れ出すエネルギーが小さくなる結果、ダイバータ熱流束が減少し、ダイバータ板の損傷を軽減できる。このようにトカマクにおいても低温・高密度運転は長所の一つとなる。
【0009】
【非特許文献1】K.McCormic、et al、New Advanced Operational Regime on the W7−AS Stellarator、Physical Review Letters 89(2002)015001−1。
【非特許文献2】N.Ohyabu、T.Morisaki、et al、Observation of Stable Superdense Core Plasmas in the Large Helical Device、Physical Review Letters 97(2006)055002−1。
【非特許文献3】ITER Physics Basis Editors et al.、ITER Physics Basis、Nuclear Fusion、 Vol.39 (1999)p2137。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、従来提案されているトカマク型核融合炉、ヘリカル型核融合炉における熱的に不安定である低温・高密度領域における運転方法には、以下のような解決すべき多くの問題があった。
【0011】
(1)従来提案されている熱的に不安定である低温・高密度領域における運転方法はトカマク核融合装置においては研究されていたが、ヘリカル型核融合炉の場合にはその運転方法は全く研究されたことがなかった。
(2)従来提案されている熱的に不安定である低温・高密度領域における運転方法は、0次元粒子バランス方程式、0次元パワーバランス方程式を平衡点のまわりで線形化し、それを基にその周辺でPIDフィードバック制御以外の方法で制御しようとするものであった。
(3)従来提案されている熱的に不安定である低温・高密度領域における運転方法は、定常的な運転点に達した後にどのように制御すればよいかというもので、その定常運転点にどのようにしてたどり着くかという研究はなされていなかった。
(4)従来提案されている熱的に不安定である低温・高密度領域における運転方法は、複雑な0次元粒子バランス方程式、0次元パワーバランス方程式を平衡点のまわりで線形化しなければならないので煩雑であり、それが実際の核融合炉において使用可能かどうかは不明であった。
【0012】
つまり、ヘリカル型核融合炉における熱的に不安定である低温・高密度領域における運転方法では具体的方法について何ら示されておらず、その意味では実現性が程遠いものであった。またトカマク型核融合炉においても定常運転点にどのようにしてたどり着くかという具体的方法について何ら示されておらず、その意味では実現性が程遠いものであった。
【0013】
本発明は、前記した問題点に鑑み創案されたものであり、DT磁気閉じ込め(へリカル、トカマク)型核融合発電装置において、熱的に不安定である低温・高密度領域における自己点火運転点に到達すると共に、同時にその不安定点において定常状態を維持することができるDT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御方法およびその制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記した課題を解決するため、本発明は、核融合科学研究所のLHD実験装置において得られた最近の実験データを基に、今までの共同研究をさらに発展させた結果考え出されたものであり、核融合プラズマパラメータの時間発展を表す0次元粒子バランス方程式、パワーバランス方程式を平衡点周りに線形化するという従来の思想を改めて、全く線形化することなく、また今までに使用してきたPIDフィードバック制御の係数を正から負の値に設定することのみで、閉じ込め時間には実験によって得られている経験則を用いて、計算機モデルを用いて解析することで、DT磁気閉じ込め(へリカル、トカマク)型核融合発電装置の熱的に不安定である低温・高密度の領域における自己点火運転を安定に制御する制御方法および制御装置を見出した。
【0015】
すなわち、本発明は前記した課題を解決するため、以下のようにDTヘリカル型核融合発電装置の制御方法を考え、以下の手順とした。
請求項1に記載の発明は、外部加熱パワーおよびDT燃料をプレ制御して供給し、かつ、核融合炉の核融合出力の偏差をeDTとし、核融合出力の設定値をPfoとし、実際の核融合出力の値をPfとし、制御係数をcとして、eDT=c(1−Pf/Pfo)の演算で算出される値を用いて前記DT燃料の供給をPIDフィードバック制御するDT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御方法において、前記プレ制御の後における予め設定された設定時間から、核融合出力の設定値を予め設定した値より一旦小さく再設定しておくと共に、その後、当該設定値を元の値に戻し、かつ、前記再設定時に前記制御係数cの値を正から負の値に変換することによって、急激に密度を上昇させ、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達させ、その状態を維持するように前記PIDフィードバック制御を行うこととした。
【0016】
このようなDTヘリカル型核融合発電装置の制御方法によれば、はじめに外部加熱パワーを加えて所定の核融合出力の値が出力された後に行うDT燃料供給のPIDフィードバック制御において、DT燃料の燃料供給率を演算する場合に算出する核融合出力の偏差における制御係数を正(+1)から負(−1)の値に変換した状態として制御している。すなわち、制御係数を正から負の値にしてDT燃料供給のPIDフィードバック制御を行うと、核融合出力の値が核融合出力の設定値を超えたときにDT燃料が供給され、その結果プラズマ温度が下がりプラズマ密度は上昇することになる。そうなると、自己点火領域の外側にはみ出してしまう結果、今度は核融合出力の値が核融合出力の設定値を下回り、DT燃料の供給が減少するかストップし、その結果、プラズマ温度が上がり、プラズマ密度が減少する方向に運転点が移動し、自己点火領域の中に入る。プラズマ温度が上がりプラズマ密度が下がり、かつ自己点火領域の中に入ると再び核融合出力の値が核融合出力の設定値を超え、DT燃料が供給され、プラズマ温度が下がりプラズマ密度が上昇する方向に運転点は移動する。このように、図1に示すように、横軸にプラズマ温度を取り、縦軸にプラズマ密度を取って示す運転点を表すと(図8、図9(a)、図11参照)、その運転点がイグニッション境界線(図9(a)参照)近傍で左回り旋回を繰り返しながら、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達する。
【0017】
また、請求項2に記載の発明として、DT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御方法は、外部加熱パワーを外部加熱プレ制御を行うと共に、DT燃料を燃料プレ制御を行う第1ステップと、外部加熱パワーを所定の時間で0とするようにフィードバック制御を行うと共に、前記DT燃料をPIDフィードバック制御する第2ステップと、を含み、前記第2ステップにおいて、熱的に安定な高温・低密度の自己点火領域に到達した後に、核融合出力の設定値を予め設定した値より一旦小さく再設定しておくと共に、その後、当該設定値を元の値に戻し、かつ、前記核融合出力の偏差をeDTとし、核融合出力の設定値をPfoとし、実際の核融合出力をPfとして算出するeDT=c(1−Pf/Pfo)において、前記再設定時に前記制御係数cの値を、正から負の値に変換することによって、急激に密度を上昇させ、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達させ、その状態を維持するように前記PIDフィードバック制御を行うこととした。
【0018】
このような手順により、当該制御方法では、第1ステップにおいて、外部加熱パワーを外部加熱プレ制御して設定された値の外部加熱パワーを供給すると共に、DT燃料供給を燃料プレ制御により、予め設定した値においてDT燃料を供給し、所定の核融合出力を第1設定時間内に得るようにしている。そして、当該制御方法では、第1設定時間において核融合出力が所定の値に達したら、第2ステップとして外部加熱パワーをフィードバック制御により、所定時間内に0となるようにして、かつ、DT燃料をPIDフィードバック制御により、核融合出力を熱的に安定な高温・低密度の自己点火領域に到達するまで制御する。なお、第1ステップでは、プラズマ運転密度よりもプラズマ密度限界値が大きくなるように設定し、かつそれらが次第に接近するように設定した後に、フィードバック制御を行い、このフィードバック制御を行う場合には、第1ステップにおいて出力されるプラズマ密度限界マージンの値が、予め設定した値(例えば、1.1)以上になるようにしている。そして、当該装置の制御方法では、核融合出力の値が熱的に安定な高温・低密度の自己点火領域に到達した後に、核融合出力の設定値を予め設定した値より一旦小さく再設定しておくと共に、その後、当該設定値を元の値に戻し、かつ、出力核融合出力の設定値と核融合出力の値との偏差を用いて演算するときに制御係数cを正(+1)から負(−1)の値にしている。そのため、当該装置の制御方法では、急激に密度が上昇し、熱的に安定な高温・低密度の自己点火領域から、運転点が一定核融合出力線を移動し、縦軸をプラズマ密度、横軸がプラズマ温度としてPOPCON図上で示すと、イグニッション境界線近傍を設定核融合出力線における運転点に向かって左旋回して、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達し、その点を維持した状態とする安定な運転ができる。
【0019】
さらに、請求項3に記載の発明として、DT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御方法は、第1ステップが前記した制御と同じ内容で行い、第2ステップを行う場合に、外部加熱パワーのプレ制御が、前記外部加熱パワーを炉心プラズマに加える値を予め設定された時間で0とするように段階的に減少させている。そして、第2ステップにおいて、プレ制御時における核融合出力の設定値を、核融合出力の値が越えたときに、前記核融合出力の偏差で演算に使用する制御係数に負の値を用いることによって、急激に密度を上昇させ、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達させ、その状態を維持するような制御を行わせる。
【0020】
このような手順により、DT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御方法は、熱的に安定な高温・低密度の自己点火領域に到達することなく、設定核融合出力線上における熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達するように、運転点は、縦軸をプラズマ密度、横軸がプラズマ温度としてPOPCON図上で示す軌跡において、イグニッション境界線近傍を左旋回するように制御される。つまり、本制御方法では、運転点が設定核融合出力線の上下のどちらにあるかよって燃料供給が決まることと、運転点は熱的不安定イグニッション境界線から離れるように動く、この2つの組み合わせによって、熱的不安定イグニッション境界線上の不安定平衡点の回りを左回りに、かつ旋回半径が次第に小さくなる様な回転を発生させるので、0次元粒子バランス方程式、あるいは、0次元パワーバランス方程式を不安定平衡点周りで線形化しなければできなかったような複雑な制御手法をとる必要がない。
【0021】
また、請求項4に記載の発明として、DT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御方法は、運転時に使用されるプラズマ密度分布を箱形分布とし、プラズマ密度分布およびプラズマ温度分布を固定して演算するパワーバランス方程式で前記プラズマ密度分布が箱型分布で使用される係数を予め算出して求め、かつ、前記外部加熱パワーおよびDT燃料を加えて核融合炉の核融合出力を行うこととしてもよい。そして、当該制御方法は、外部加熱パワーをプレ制御すると共に、DT燃料をプレ制御する第1ステップと、前記外部加熱パワーのプレ制御を引き続き行い、かつ、前記DT燃料供給装置から供給されるDT燃料による炉心プラズマのプラズマ密度の偏差を用いてPIDフィードバック制御する第2ステップと、前記第2ステップを行う設定時間が経過した後に、前記外部加熱パワーを設定された時間で0とするように段階的に減少させ、かつ、DT燃料の供給を核融合出力の偏差を用いてPIDフィードバック制御する第3ステップとを行っている。さらに、当該制御方法は、前記第3ステップにおいて、プラズマ密度のPIDフィードバック制御時における核融合出力の設定値を、核融合出力の値が越えたときに、前記核融合出力の偏差をeDTとし、核融合出力の設定値をPfoとし、実際の核融合出力をPfとして算出するeDT=c(1−Pf/Pfo)において、負の値の前記制御係数cを用いることによって、急激に密度を上昇させ、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達させ、その状態を維持するように前記PIDフィードバック制御を行っている。
【0022】
このような手順により、DT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御方法は、第1ステップにおいて、設定された時間まで一定の値で、外部加熱パワーをプレ制御し、かつ、DT燃料をプレ制御する。そして、当該制御方法は、第2ステップにおいて、外部加熱パワーを段階的に供給し、かつ、DT燃料供給装置から供給されるDT燃料によるプラズマ密度をPIDフィードバック制御してプラズマ密度を所定値以上に上げた状態とする。これは、核融合出力が十分に大きくなるまで外部加熱パワーがプラズマの加熱を助けてやる必要があるからである。そして、第3ステップにおいて、外部加熱パワーを段階的に0に近づけるように減少させると共に、DT燃料供給を核融合出力の偏差に基づいてPIDフィードバック制御する。このPIDフィードバック制御するときに、プラズマ密度のPIDフィードバック制御時における核融合出力の設定値を核融合出力の値が越えること、かつ、核融合出力の偏差を演算するときの制御係数に負の値を用いることによって、プラズマ密度の急上昇を引き起こさせ、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達させ、その状態を維持するような安定な運転とする。なお、運転時に使用されるプラズマ密度分布を箱形分布で与える場合、プラズマ伝導損失パワーは、プラズマ密度分布を放物分布で与える場合に比較して、大幅に減少する。
【0023】
また、本発明は前記した課題を解決するため、以下のようにDTヘリカル型核融合発電装置の制御装置を考え、以下の構成とした。
すなわち、請求項5に記載の発明は、外部加熱パワー発生装置およびDT燃料供給装置に対して予め設定されたプレ制御およびPIDフィードバック制御を行い熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域に到達させるDT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御装置において、前記DT燃料供給装置からのDT燃料のPIDフィードバック制御において、核融合出力の設定値を予め設定した値より一旦小さく再設定しておくと共に、その後、当該設定値を元の値に戻し、かつ、核融合出力の偏差をeDTとし、核融合出力の設定値をPfoとし、実際の核融合出力をPfとして算出するeDT=c(1−Pf/Pfo)において、前記再設定時に前記制御係数cを正から負の値に変換することによって、プラズマ密度の急上昇を引き起こさせ、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達させ、その状態を維持するように前記PIDフィードバック制御を行う構成とした。
【0024】
このように構成することにより、DT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御装置は、DT燃料の燃料供給率を演算する場合に、核融合出力の偏差における制御係数を正(+1)から負(−1)の値に変換した状態として制御している。すなわち、制御係数を正から負の値にしてDT燃料供給のPIDフィードバック制御を行うと、核融合出力の値が核融合出力の設定値を超えたときにDT燃料が供給され、その結果プラズマ温度が下がりプラズマ密度は上昇することになる。そうなると、自己点火領域の外側にはみ出してしまう結果、今度は核融合出力の値が核融合出力の設定値を下回り、DT燃料の供給が減少するかストップし、その結果、プラズマ温度が上がり、プラズマ密度が減少する方向に運転点が移動し、自己点火領域の中に入る。プラズマ温度が上がりプラズマ密度が下がり、かつ自己点火領域の中に入ると再び核融合出力の値が核融合出力の設定値を超え、DT燃料が供給され、プラズマ温度が下がりプラズマ密度が上昇する方向に運転点は移動する。このように、当該制御装置では、図1に示すように、横軸にプラズマ温度を取り、縦軸にプラズマ密度を取って示す運転点を表すと(図8、図9(a)、図11参照)、その運転点を左回り旋回を繰り返しながら、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達させることができる。
【0025】
さらに、請求項6に記載の発明は、外部加熱パワーおよびDT燃料を加えて核融合炉の核融合出力を行うDT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御装置において、入力手段と、外部加熱パワープレ制御手段と、DT燃料プレ制御手段と、外部加熱パワーフィードバック制御手段と、DT燃料PIDフィードバック制御手段と、を備え、前記DT燃料PIDフィードバック制御手段は、熱的に安定な高温・低密度の自己点火領域に到達した後に、核融合出力の設定値を予め設定した値より一旦小さく再設定しておくと共に、その後、当該設定値を元の値に戻し、かつ、前記核融合出力の偏差をeDTとし、核融合出力の設定値をPfoとし、実際の核融合出力をPfとして算出するeDT=c(1−Pf/Pfo)において、再設定時に前記制御係数cの値を、正から負の値に変換することによって、急激に密度を上昇させ、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達させ、その状態を維持するように前記PIDフィードバック制御を行う構成とした。
【0026】
このように構成したことにより、DT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御装置は、キーボード等の入力装置を介して入力手段により核融合炉の核融合出力に用いられメモリ等の記憶手段に記憶されている数式の変数を入力する。そして、外部加熱パワーのプレ制御、フィードバック制御、および、DT燃料のプレ制御、PIDフィードバック制御を切り替えて行う設定時間を、入力手段から入力して記憶手段に記憶しておく。つぎに、当該制御装置は、運転がスタートすると、はじめに、外部加熱パワープレ制御手段により、入力されて予め設定された外部加熱パワーを炉心プラズマに供給すると共に、DT燃料プレ制御手段により、入力されて予め設定されたDT燃料を供給する。このとき、設定された時間内で、外部加熱パワーのプレ制御およびDT燃料のプレ制御が行われるように設定されている。さらに、当該制御装置は、設定された時間の経過より、核融合炉の核融合出力を設定値にして、外部加熱パワー発生装置からの外部加熱パワーを所定の時間で0となるようにフィードバック制御すると共に、DT燃料供給装置からのDT燃料を核融合炉から検出された核融合出力の値と核融合出力の設定値との偏差に基づいてPIDフィードバック制御する。
【0027】
そして、当該制御装置は、PIDフィードバック制御により運転点が熱的に安定な高温・低密度の自己点火領域に達すると、設定された時間により、DT燃料PIDフィードバック制御手段が、核融合出力の設定値を予め設定した値より一旦小さく再設定しておくと共に、かつ、前記核融合出力の偏差をeDTとし、核融合出力の設定値をPfoとし、実際の核融合出力をPfとして算出するeDT=c(1−Pf/Pfo)において、前記再設定時に前記制御係数cの値を正から負の値に変換することによって、DT燃料の供給を行わせ、急激に密度を上昇させ、その後再度、核融合出力の設定値を戻し、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達させ、その点を維持した状態とする。ここで制御係数の値が負として核融合出力の偏差が演算されることと、核融合出力の設定値よりも核融合出力が大きいことの2つにより、DT燃料の供給が行われ、急激に密度を上昇させるので、運転点が一定核融合出力線に沿って熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域に移動する。この移動する際の運転点は、横軸を温度、縦軸を密度とするPOPCON図で示されるグラフにおいて、イグニッション境界線近傍で左旋回するように移動して、設定核融合出力線上で、かつ、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達して、維持された状態となる。
【0028】
また、請求項7に記載の発明として、DT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御装置は、入力手段と、外部加熱パワープレ制御手段と、DT燃料プレ制御手段と、DT燃料PIDフィードバック制御手段と、を備え、DT燃料PIDフィードバック制御手段がDT燃料の供給をPIDフィードバックする際に、前記プレ制御時における核融合出力の設定値を核融合出力の値が越えたときに、前記核融合出力の偏差をeDTとし、核融合出力の設定値をPfoとし、実際の核融合出力をPfとして算出するeDT=c(1−Pf/Pfo)において、負の値の前記制御係数cを用いることによって、急激に密度を上昇させ、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達させ、その状態を維持するようにPIDフィードバック制御する構成とした。
【0029】
このように構成したことにより、DT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御装置は、外部加熱パワーのプレ制御およびDT燃料のプレ制御を予め設定された設定時間内で行い、かつ、DT燃料についてPIDフィードバック制御するときに、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域に運転点が直接向かうようにしている。つまり、当該制御装置は、DT燃料PIDフィードバック制御手段が、前記プレ制御時における核融合出力の設定値を核融合出力の値が越えたときに、前記核融合出力の偏差をeDTとし、核融合出力の設定値をPfoとし、実際の核融合出力をPfとして算出するeDT=c(1−Pf/Pfo)において、負の値の前記制御係数cを用いることによって、急激に密度を上昇させると、運転点は熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に向かって移動する。この移動する際の運転点は、横軸を温度、縦軸を密度とするPOPCON図で示されるグラフにおいて、イグニッション境界の近傍で、左旋回するように移動して、設定核融合出力線上の熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達して、そこで維持される状態となる。
【0030】
さらに、請求項8に記載の発明として、DT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御装置は、入力手段と、外部加熱パワープレ制御手段と、DT燃料プレ制御手段と、DT燃料密度PIDフィードバック制御手段と、DT燃料PIDフィードバック制御手段と、を備え、前記DT燃料PIDフィードバック制御手段は、プラズマ密度のPIDフィードバック制御時における核融合出力の設定値を核融合出力の値が超えたときに、前記核融合出力の偏差をeDTとし、核融合出力の設定値をPfoとし、実際の核融合出力をPfとして算出するeDT=c(1−Pf/Pfo)において、負の値の前記制御係数cを用いることによって、急激に密度を上昇させ、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達させ、その状態を維持するように前記PIDフィードバック制御を行う構成とした。
【0031】
このように構成したことにより、DT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御装置は、入力手段により入力された変数により核融合出力で用いる数式を演算し、かつ、設定時間で、外部加熱パワープレ制御手段により外部加熱パワーのプレ制御を行うと共に、DT燃料プレ制御手段によりDT燃料のプレ制御を行う。そして、当該制御装置は、設定時間により、外部加熱パワープレ制御手段により外部加熱パワーを0とするように制御すると共に、DT燃料密度PIDフィードバック制御手段により設定されたプラズマ密度設定値と炉心プラズマから検出されたプラズマ運転密度の値との偏差に基づいて、前記DT燃料供給装置から供給されるDT燃料によるプラズマ密度をPIDフィードバック制御する。さらに、当該制御装置は、設定時間で、DT燃料PIDフィードバック制御手段によりDT燃料の供給をPIDフィードバック制御する。
【0032】
そして、当該制御装置は、DT燃料の供給をPIDフィードバック制御する際に、プラズマ密度のPIDフィードバック制御時における核融合出力の設定値を核融合出力の値が超えたときに、前記核融合出力の偏差をeDTとし、核融合出力の設定値をPfoとし、実際の核融合出力をPfとして算出するeDT=c(1−Pf/Pfo)において、負の値の前記制御係数cを用いることによって、急激に密度を上昇させると、運転点は熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に向かって移動する。この移動する際の運転点は、横軸を温度、縦軸を密度とするPOPCON図で示されるグラフにおいて、イグニッション境界線の近傍で、左旋回するように移動して、設定核融合出力線上の熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達して、維持される状態となる。
【0033】
また、請求項9に記載の発明として、DT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御装置は、核融合出力おいて検出される各値と、前記外部加熱パワー発生装置から加えられる外部加熱パワーの値と、DT燃料供給装置から供給されるDT燃料の供給量と、を表示装置に出力する出力手段を備える
構成とした。
このように構成したことにより、DT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御装置は、出力される各値からDT磁気閉じ込め型核融合発電装置の運転に必要なグラフや一覧表を表示させることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係るDT磁気閉じ込め(へリカル、トカマク)型核融合発電装置の制御装置およびその制御方法は、以下に示す優れた効果を示すものである。
請求項1および請求項5に記載の発明によれば、核融合出力の偏差を算出するときの制御係数を正から負の値に置き換えてPIDフィードバック制御するため、低温・高密度領域で運転できるので、輻射パワー損失を増やすことができ、その結果ダイバータ熱流束を低減できるので、ダイバータ板の損耗を減らすことができ、その寿命を延ばすことによって運転維持費を安価にすることができる。
【0035】
また、粒子バランス,エネルギーバランス方程式を線形化する必要も、それらの方程式に頼る必要もなく、発生した中性子を計測して得られる核融合出力の信号を用いて実際に核融合燃焼プラズマの制御ができるので,以前に提案されていた制御法に比して現実的であり、DT磁気閉じ込め型核融合発電装置の低温・高密度領域の不安定イグニッション領域による発電を可能とするもので、DT磁気閉じ込め型核融合発電装置の現実的な制御を可能とする。
【0036】
本発明によれば、プラズマ密度限界スケーリング則と閉じ込めスケーリング則を用いて行うため、核融合出力立ち上げ時間を自由に外部から設定でき、その結果、炉内部に設置しているブランケットの温度上昇時間を制御して運転することができる。また、自己点火領域の低温側に位置して外部加熱パワーを印加する必要のあるサブイグニッション領域にも、必要ならばすぐに移行できる。
さらに、本発明によれば、PIDフィードバック制御においてもプラズマ内部に起こりうる粒子閉じ込め時間の変化、不純物の一時的増加、エネルギー閉じ込め時間の変化等の擾乱に対してもロバストで安定に当該装置の運転ができる利点を有する。
【0037】
請求項2および請求項6に記載の発明によれば、核融合出力の信号を用いたPIDフィードバック制御によって定常的な運転点まで到達できるので、以前に提案されていた制御法に比して簡素で、現実的であり、DT磁気閉じ込め型核融合発電装置の低温・高密度領域の不安定イグニッション領域による発電を可能とするものである。
【0038】
請求項3および請求項7に記載の発明によれば、熱的に安定な高温・低密度の自己点火領域を経ることなく、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域に到達させることができ、PIDフィードバック制御を行う場合に、複雑な演算をすることがなく、かつ、ダイバータ熱流束を低減できるので、ダイバータ板の損耗を減らすことができる。
【0039】
請求項4および請求項8に記載の発明によれば、運転時に使用されるプラズマ密度分布を箱形分布として使用し、かつ、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域に到達させることができると共に、ダイバータ熱流束を低減できる。そのため、プラズマ密度分布を放物分布として使用するものと比較しても、ダイバータ板の損耗を減らし、その寿命を延ばすことによって運転維持費を安価にすることができる。
【0040】
請求項9に記載の発明によれば、核融合炉から検出される各値、外部加熱パワー発生装置から加えられる外部加熱パワーの値、DT燃料供給装置から供給されるDT燃料の供給量を表示装置に出力して、各値を表示するので、制御中の状態が認識できる。
【0041】
また、本発明によれば、外部加熱プレ制御、プラズマ密度およびDT燃料のPIDフィードバック制御の計算式において、須藤密度限界スケーリング則およびISS95閉じ込め則あるいは、前記須藤密度限界スケーリング則およびISS95閉じ込め則に同等なスケーリング則を用いることで、広い範囲のDTヘリカル型の核融合発電装置に適用することができる。さらに、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域における当該装置の制御が可能なことから、先進ステラレータ型核融合炉、または、超伝導コイルのコイル配置が異なるヘリカル型核融合炉であっても適用でき、かつ、タイプの異なるトカマク核融合炉においても適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、発明を実施するための最良の形態についてDT磁気閉じ込め型核融合発電装置の一例であるDTヘリカル型核融合炉において図面を参照して説明する。
図2(a)は、DTヘリカル型核融合炉の一部を切り欠いて全体を模式的に示す斜視図、図2(b)は、そのダイバータ部を示す断面図、図3は、DTヘリカル型核融合炉の断面状態を模式的に示す断面図、図4AはDTヘリカル型核融合発電装置の制御装置を示すブロック図である。
【0043】
図2(a)および図3に示すように、DTヘリカル型核融合炉10は、中心部の炉心プラズマ1から発生する中性子を熱に変換するために設置されるブランケット2、このブランケット2の外側にらせん状に巻き付くように設置される超伝導ヘリカルコイル3、プラズマ真空容器4の筒形状の内周側および外周側に沿うように4箇所の位置に設置された超伝導ポロイダルコイル6、この超伝導ポロイダルコイル6およびプラズマ真空容器4を支持する電磁力支持構造体7、この電磁力支持構造体7、超伝導ポロイダルコイル6およびプラズマ真空容器4を覆う断熱真空容器5、外部加熱パワーを与える外部加熱装置(外部加熱パワー発生装置)8、DT燃料を供給するガスあるいはペレット入射装置となるDT燃料供給装置9から構成される。
【0044】
ブランケット2は中心部の炉心プラズマ1の周りに設置された部分で、炉心プラズマ1中の核融合反応で発生した中性子をブランケット2に含まれるリチウムと反応させることによって核融合の燃料であるトリチウム(三重水素)を生産すると同時に、中性子の持つ運動エネルギーを熱エネルギーに換えるものである。
【0045】
なお、核融合炉のブランケット2は、核融合炉から出る放射線を遮へいする役割も果たす。このブランケット2内において発生した熱エネルギーが取り出されて発電に利用される。
【0046】
超伝導ヘリカルコイル3は、金属である固体物質をある臨界温度以下に冷やして電気抵抗をなくし、一度電流を流すと電流が流れ続ける超伝導の性質を利用したもので、その固体物質をコイル状に巻いて電磁石として作られたものである。この超伝導ヘリカルコイル3は、電気抵抗による発熱がないので通常の電磁石より高い電流密度を持ち、その結果コイルをコンパクトに作ることができる。
【0047】
DTヘリカル型核融合炉10は、中心部の炉心プラズマ1を取り囲むブランケット2の外側に設置する超伝導ヘリカルコイル3により、真空容器4内にねじれた閉じ込め磁場を作り,そこにプラズマを発生して閉じ込め、さらに全体を断熱真空容器5で覆い外部からの熱進入を防ぐ構造になっている。
【0048】
図2(b)に示すように、真空容器4の内壁面の所定位置には、スリットが形成されたバッフル板14が設けられており、このバッフル板14と真空容器4の内壁面に囲まれて形成したダイバータ室15が真空容器4内の四隅に形成されている。ダイバータ室15内には、ダイバータ板16が設けられている。このダイバータ板16は、グラファイトタイルで角柱形状に形成され内部に冷却管16bを挿通した柱体16aが複数並べられて構成されている。そして、ダイバータ室15内の全部またはいずれかには、粒子排気装置17が設置されている。なお、ダイバータ板16は、プラズマ閉じ込め領域から外に流れ出るプラズマ熱流および粒子流(ダイバータプラズマ)を受けて制御処理するものである
【0049】
また、DTヘリカル型核融合炉10は、超伝導ポロイダルコイル6で垂直磁場を作り、超伝導ヘリカルコイル3からの漏れ磁場を打ち消している。これらの超伝導コイルには大きな電磁力がかかるので、頑丈な電磁力支持構造体7によって支えられる。
なお、外部加熱装置8には、電子サイクロトン加熱装置あるいは中性子粒子ビーム加熱装置を使用することもできる。また、DT燃料供給装置9には、DT燃料を供給するためにガスあるいはペレット入射装置およびそれと同等の装置が用いられる。
【0050】
さらに、DTヘリカル型核融合炉10からの核融合出力等の値を検出して出力するための検出装置として、つぎのようなものが設置されている。
核融合出力の値を検出して出力する中性子出力検出器、制動輻射損失パワーの値を検出して出力するボロメータ、電子サイクロトンの値を検出する電子サイクロトロン検出器、プラズマ密度を検出する密度干渉計、反磁性の値を検出する反磁性ループ等の各検出装置である。
【0051】
これらの検出装置により検出された各値は、制御を行う場合に使用され、かつ、表示手段としての表示モニタ(表示装置)30に出力された場合、グラフ(図7、図10、図12〜図17)あるいは数値一覧表(図20)等として表示されるために使用される。
【0052】
図2(a)に示すように、外部加熱装置8およびDT燃料供給装置9は、制御装置20により制御されている。制御装置20は、図2および図4Aに示すように、入力手段21と、外部加熱パワープレ制御手段23と、フィードバック制御手段(外部加熱パワーフィードバック制御手段)24と、DT燃料プレ制御手段25と、燃料PIDフィードバック制御手段(DT燃料PIDフィードバック制御手段)26と、出力手段29とを備えている。なお、この制御手段20は、ここでは、計時手段22により計時した設定時間で各制御手段23〜26を制御するようにしている。
【0053】
図4Aに示すように、入力手段21は、図示しないキーボード等の入力装置から、図示しないメモリ等の記憶手段に、DTヘリカル型核融合炉10の核融合出力の計算で用いられている各式における変数等を入力するものである。
【0054】
計時手段22は、各制御手段23〜26の制御する設定時間を計時するものである。この計時手段22は、例えば、内蔵されているタイマ等であり、各制御手段23〜26に計時した時間を信号として送っている。
【0055】
外部加熱パワープレ制御手段23は、入力手段21を介して入力された変数から数式(例えば、後記する式10等)により演算された値に基づいて、予め設定した設定値になるように外部加熱装置8が炉心プラズマ1に供給する外部加熱パワーを制御(プレ制御)するものである。この外部加熱パワープレ制御手段23は、ここでは、計時手段22からの計時された時間が予め設定されており、その設定された設定時間に到達するまで、外部加熱パワーを段階的(図7(d)参照)に炉心プラズマ1に加えている。そして、外部加熱パワープレ制御手段23は、予め設定された50MW(図7(d)参照)以下の出力となるプレプロ値に基づいて、外部加熱装置8の外部加熱パワーを制御している。
【0056】
フィードバック制御手段24は、プラズマ密度の値と、プラズマ密度限界値とにより演算される外部加熱パワーの値に基づいて、所定の設定時間で外部加熱装置8からの外部加熱パワーを0にするようにフィードバック制御している。このフィードバック制御手段24は、ここでは、計時手段22で計時された時間が予め設定された設定時間になると、外部加熱パワーのプレ制御から切り替わりフィードバック制御を行うように設定されている。
【0057】
DT燃料プレ制御手段25は、入力手段21を介して入力された変数から数式により演算された値に基づいて、予め設定した設定値となるようにDT燃料供給装置9からのDT燃料の供給量を燃料プレ制御するものである。このDT燃料プレ制御手段25は、ここでは、計時手段22からの計時された時間が予め設定されており、その設定された設定時間に到達するまで、DT燃料を設定された供給量において炉心プラズマ1に供給している。
【0058】
燃料PIDフィードバック制御手段26は、入力手段21を介して入力された変数から数式により演算された核融合出力の設定値と、前記核融合炉の核融合出力の値との偏差に基づいて、予め設定された設定値(目標設定値)となるように、DT燃料供給装置9のDT燃料の供給をPIDフィードバック制御するものである。この燃料PIDフィードバック制御手段26は、ここでは、計時手段22によって計時された時間が予め設定された設定時間になると、DT燃料プレ制御から切り替わってPIDフィードバック制御を行うように設定されている。
【0059】
出力手段29は、DTヘリカル型核融合炉10に設けた各検出器(中性子出力検出器、ボロメータ、電子サイクロトロン検出器、密度干渉計、プラズマ反磁性ループ等)から出力される各値を表示モニタ(表示装置)30等に出力するものである。
【0060】
DTヘリカル型核融合炉10は、今まで提案されたものと基本的には同じ構造であるが、低温・高密度の自己点火領域に達するための制御方法および制御装置(制御システム)が大幅に異なる。以下、DTヘリカル型核融合炉10を運転して核融合出力に至るまでの制御方法についてシミュレーションにより説明する。
【0061】
DTヘリカル型核融合炉10の磁場強度は6Tに設定するので、最大磁場は超伝導ヘリカルコイル3の主半径方向の内側で13.3Tとなるため、臨界磁場よりも低く、コイルの製作に際して適切であることが分かる。そして、エネルギー変換のためのブランケット2を設置するための十分なスペースを確保できるように主半径を設定し、かつプラズマ閉じ込めをよくするためにプラズマ小半径もできる限り大きくしている。
【0062】
また、ここでは、ブランケット2を設置するための十分なスペースを確保できるように、一例として主半径は14.0mとし、有効小半径を1.73mとし、磁場強度を6Tとしている。なお、主半径とは、装置の中心軸からドーナツ状の真空容器内のプラズマ断面中心までの距離をいう。また、有効小半径とは、プラズマ中心からプラズマ境界線までの平均の距離をいう。
【0063】
このように構成されたDTヘリカル型核融合炉10は、図4Aの制御システムを用いて、図5Aで示すような運転方法で、図6Aによる計算アルゴリズムのフローチャートに示す手順で、コンピュータを用いてシミュレーションが行われる。図6A、B、Cのフローチャートは図5A、B、Cのそれぞれの運転法における制御方法に対応している。なお、図5A、図6Aによる計算実施例を図7と図8に示し、図5B、図6Bによる計算実施例を図10と図11に示し、さらに図12〜図16にここで使用される数式による各値の適切な範囲の一例を示し、図5(c)、図6(c)による計算実施例を図17に示している。それぞれの運転法に対する定常値は図20に表で示した。以下、はじめに、図5(a)、図6Aを参照して第1実施形態について説明し、後に、第2実施形態および第3実施形態の説明を行う。
【0064】
なお、図5Aの上段に、各制御において熱的安定領域で運転しているか不安定領域で運転しているかを示す制御係数cの値を示し、どのような制御が行われているかを表し、2段目に核融合出力の設定波形を取り、3段目に時間軸を共有させてプラズマ密度限界マージンの設定波形を示し、下段(4段目)に外部加熱パワーの波形を示した。
【0065】
図5Aには、プレ制御からPIDフィードバック制御への切替までの設定時間を30秒としたときに、その直前の29.9秒(設定の開始)におけるプラズマ密度限界マージンを初期値とし、直線的に減少させてそれから70秒後(計算のスタートから100秒後)にプラズマ密度限界マージンが1.1になるように設定する運転方法を示している。核融合出力が設定値に達したら、一定値になるように設定し、第5設定時間(130秒)に核融合出力の設定値を核融合出力の値よりも少し小さく設定し、かつ後述の(15式)の制御係数cの符号を正から負へ切り替えることで熱的に不安定な領域でも制御可能になるようにしている。
【0066】
図7から図16に、実際の運転に使用される数値を使用し、放物密度分布の場合の熱的に不安定な自己点火領域に至る過程と、熱的に不安定な定常運転点でのプラズマの種々の擾乱に対する本運転制御法のロバスト性を示し、本制御法を用いることによって熱的に不安定な自己点火領域で運転ができることを示す。図17には、最近のLHD実験装置で得られた箱形密度分布でかつ広い放物温度分布の低温・高密度運転の成果を取り入れた計算結果を示す。
【0067】
図7から図16は、DTヘリカル型核融合炉10(図2(a)参照)において、核融合出力をプレ制御およびフィードバック制御しながら運転する方法について、0次元粒子バランス方程式(12式)、エネルギーバランス方程式(1式)、ISS95閉じ込めスケーリング則(7式)を用いてプラズマパラメータの時間変化をシミュレーション計算して得た結果である。なお、プラズマ密度,温度の分布が固定されたものを0次元と呼び、ここではプラズマ密度に関しては中心がピークになる放物分布と中心が平坦になる箱形分布を用いている。温度に関しては放物分布である。これらの密度分布や温度分布は時間がたっても変化しない。
【0068】
また、前記した以外の方程式として、外部加熱パワーの式(10式)、電荷中性条件から求まる電子バランス方程式(12式)、ヘリウム灰粒子密度比の方程式(13式)等、核融合出力のシミュレーションを行うときに使用される基本式を用いて、それぞれ求めたい値を算出する。さらに、パワーバランス方程式(11式)は、イオン温度Tiと電子温度Teとが等しい(Ti=Te)として書き直した式を使用している。
【0069】
また、実際の閉じ込め時間はISS95閉じ込めスケーリング則に閉じ込め増倍度(γISS95=1.92)をかけて使用している。なお、7式で表されるISS95閉じ込めスケーリング則は、ヘリカル型装置及びステラレータ装置において実験的に確立された共通の経験則である。以下1式から15式(図5Cで示す第3実施形態では16式から22式までについても使用する)のDTヘリカル型核融合炉10の運転制御のシミュレーションに用いた式を詳しく説明する。ただし、1式以降のすべての数式において、同じ記号は同じ意味で使用するので、なるべく繰り返さないようにして説明する。
以下、
時間変化を考慮したパワーバランス方程式の簡単な式は
【0070】
【数1】
【0071】
ただし、1式中において、
dW/dtはプラズマエネルギーの時間変化、
PEXTは外部加熱パワー、
Palphaはアルファ粒子加熱パワーで、
PSはシンクロトロン輻射損失パワーであるが、小さな値であるために本計算では省略する。
【0072】
【数2】
【0073】
ただし、2式中において、
fDは重水素密度の電子密度に対する比、
fTはトリチウム密度の電子密度に対する比、
<σv(x)>DTはDT核融合反応率の体積平均、
ηαはアルファ粒子損失割合、
ne(0)は中心電子密度、
ここで、PBは制動輻射損失パワーで、3式で与えられる。
【0074】
【数3】
【0075】
ただし、3式中において、
αnは密度分布係数、
αTは温度分布係数、
ne(0)は中心電子密度
Te(0)は中心電子温度、
Zeffは有効電荷数、
PLはプラズマ伝導損失パワーであり、次の4式で与えられる。
【0076】
【数4】
【0077】
ただし4式中において
τEはエネルギー閉じ込め時間で、7式で与えられ、
Wはプラズマエネルギー、
γiはイオン温度と電子温度の比(Ti/Te)であるが、ここではγi=1としている。
また、電子密度分布ne(x)は次の5式で与えられる。
【0078】
【数5】
【0079】
図7〜図16では、αn=1で与えられる放物分布を用いた。ここで用いられているne(0)とn(0)は中心電子密度、中心プラズマ密度のことで、これらは全く同じ量を表し、同じ意味で用いられる。
プラズマ温度分布T(x)は6式で与えられる。
【0080】
【数6】
【0081】
ただし、xはプラズマ中心から小半径方向の距離である。ここで用いられているT(0)とTi(0)は中心プラズマ温度、中心イオン温度のことで、これらは全く同じ量を表し、同じ意味で用いられる。単に温度あるいはプラズマ温度とも表現する。また、電子温度とイオン温度は等しいとおいているので、電子温度も単に温度と記載する場合もある。
図7〜図16の実施例ではαT=1の放物分布を用いた。
エネルギー閉じ込め時間τE[s]は次の7式で与えられる。
【0082】
【数7】
【0083】
ただし、7式中において、
γISS95はISS95閉じ込めスケーリング則の閉じ込め増倍度、
τISS95[s]はISS95閉じ込めスケーリング則で与えられる閉じ込め時間、
ι2/3は有効小半径の2/3の場所での回転変換角度を2πで割ったもの、
aはプラズマ有効小半径、
Rはプラズマ主半径、
B0は磁場強度、
n19は線平均電子密度で1019m−3単位、
PHTは外部加熱パワーであり、正味の加熱パワーPNET(9式)を用いる。
【0084】
なお、DTヘリカル型核融合炉10では、プラズマ密度限界値は次式の様に外部加熱パワーの平方根で表すことができる須藤密度限界スケーリング則(8式)を用い、図7〜図16においては、現在の実験において実際に達成されているプラズマ密度限界値1.5〜4.5(密度限界係数γSUDO)倍を採用する。したがって、熱的に安定な領域で用いられる外部加熱パワーのフィードバック制御には8式の須藤密度限界スケーリング則を書き直して得られる下記の10式を用いる。
須藤密度限界スケーリング則は、
【0085】
【数8】
【0086】
ただし、8式中において、
γprはプラズマ密度分布係数、
γDLMはプラズマ密度限界マージン(プラズマ密度限界値とプラズマ運転密度の比、n(0)lim/n(0))で、γDLM>1でなければならない。
γSUDOは密度限界係数、
n(0)は中心電子密度で、
aは有効小半径、
Rは主半径、
Boは磁場強度である。
ここで、正味の加熱パワーPNETは、以下の9式で与えられる。
【0087】
【数9】
【0088】
ただし、9式中において、
PEXTは外部加熱パワー、
Palphaはアルファ粒子加熱パワー、
PBは制動輻射損失パワー、
PSはシンクロトロン輻射損失パワーである。
8式に9式を代入し、書き直すと次の10式になる。
【0089】
【数10】
【0090】
ただし、10式中において、
Palphaはアルファ粒子加熱パワー、
PBは制動輻射損失パワー、
PSはシンクロトロン輻射損失パワーである。
イオン温度を計算するパワーバランス方程式は、
【0091】
【数11】
【0092】
ただし、11式中において、
αnは密度分布係数、
αTは温度分布係数、
fDは重水素密度の電子密度に対する比、
fTはトリチウム密度の電子密度に対する比、
fαはHe灰(アルファ粒子がエネルギーを失い不純物になってしまったもの)密度の電子密度に対する比、
Ti(0)は中心イオン温度、
γiはイオン温度と電子温度の比(Ti/Te)、
ne(0)は中心電子密度、
[dne(0)/dt]には12式を用いる。
Palphaはアルファ粒子加熱パワー、
foは酸素不純物密度の電子密度に対する比である。
電荷中性条件から求まる電子バランス方程式は、
【0093】
【数12】
【0094】
ただし、12式中において
τp*は、重水素、トリチウム燃料粒子の有効閉じ込め時間、
τα*はヘリウム灰の有効粒子閉じ込め時間
foは酸素不純物密度割合
SDTは、重水素、トリチウムの燃料供給率である。
ヘリウム灰粒子密度比の方程式は、
【0095】
【数13】
【0096】
ただし、[dne(0)/dt]には12式を代入する。
また、核融合出力の制御は、14式の燃料供給率SDT(t)において核融合出力の偏差(15式)をフィードバック制御(PID[比例−積分−微分]制御)することによって行う。なお、PIDフィードバック制御とは、制御量が目標値から外れたときに、動作信号(制御量と目標値の差)に対して制御装置(図示せず)が応答する場合に、比例動作(P動作)、積分動作(I動作)、微分動作(D動作)を用いて行われることである。ここで、PID動作とは、P動作に、オフセットを除去する働きを持つI動作と振動を減衰する働きを持つD動作とを組み合わせたもので、安定かつ精度のよい制御が期待できる。
燃料供給率のPIDフィードバック制御式は、
【0097】
【数14】
【0098】
ただし、14式中において
eDT(Pf)は核融合出力の偏差で、
【0099】
【数15】
【0100】
で与えられる。
Pf(t)は核融合出力で、中性子発生パワーPnとアルファ粒子加熱パワーPalphaの和(Pf(t)=Pn+Palpha)で与えられ、
Pf0(t)は核融合出力の設定値、
c=+1は熱的に安定な領域で用いる正の制御係数、
c=−1は熱的に不安定な領域で用いる負の制御係数、
SDT0は定数でSDT0=4x1020m-3 、
Gf0(t)はゲインで、2〜5の値、
Tintは積分時間で10秒、
Tdは微分時間で1秒とする。
【0101】
フィードバック制御フェーズでの計算法の概略を説明する。はじめに設定した各パラメータ(例えば、装置パラメータ「a、R、B0」、γSUDO、γpr)の数値から、0次元パワーバランス方程式(11式)により外部加熱パワーを印加したときのイオン温度Ti(0)を計算し、同時に0次元粒子バランス方程式(=電子バランス方程式:式12)から目指す核融合出力を得る密度n(0)を計算し、その値が得られるように燃料供給率でフィードバック制御し、次のステップで外部加熱パワーの10式に代入して外部加熱パワーを計算する。
【0102】
そのとき、アルファ粒子加熱パワー、制動輻射損失パワー、シンクロトン輻射パワーを、算出したプラズマ密度n(0)およびイオン温度Ti(0)を用いて計算する。さらに、プラズマ密度n(0)およびイオン温度Ti(0)を計算しているときに、算出された外部加熱パワーを用いてプラズマ密度限界値を計算し、それを再び用いてプラズマ密度限界マージンγDLM=n(0)lim/n(0)を計算し、そのプラズマ密度限界マージンが1.1以下にならないように外部加熱パワーを印加する。
【0103】
ここでは、外部加熱パワーによりプラズマ密度限界値が上昇する須藤密度限界スケーリング則(8式)を用いて、プラズマ運転密度よりも常にプラズマ密度限界値が大きくなるように外部加熱パワーの値をフィードバック制御(10式)している。プラズマ密度限界マージンは[プラズマ密度限界値/プラズマ密度]であるから、プラズマ密度限界マージンを小さくするとプラズマ密度限界値をプラズマ運転密度に近づけることができ、外部加熱パワーを小さくすることができる。しかし、後でも説明するように、外部加熱パワーの10式を用いたフィードバック制御は熱的不安定領域での制御には使用することはできないので、プレプログラムとした。
【0104】
第1の実施形態として、図4Aの制御システムを用いて、図5Aで示すような運転方法について、図6Aの計算アルゴリズムのフローチャートと、120秒の核融合出力立ち上げ時間が経過した後130秒に熱的不安定領域に遷移する図7の計算結果を参照して、具体的な数値を使用したDTヘリカル型核融合炉10の運転方法のシミュレーション結果を説明する。DTヘリカル型核融合炉10も、図2(a)に示す構成において、主半径R=14.0m、有効小半径a=1.73m、磁場強度Bo=6Tのパラメータとなるように設定されているものとして説明する。
【0105】
図5Aの運転方法では、すなわち、プレプログラム制御フェーズが終わる第1設定時間(ここではスタートからt=30秒)の直前のt=29.9秒を第2設定時間とする。第1設定時間はプレプログラムにおいてその後のフィードバック(PID[比例―積分―微分])制御(熱的安定領域用PIDフィードバック制御フェーズ)が行えるレベルまで核融合出力を持ち上げるのに要する時間である。第2設定時間はフィードバック制御に入る前にプラズマ密度限界マージンの値を保持するための時間で、その値を初期値として直線的に減少させる。第3設定時間はプラズマ密度限界マージンが減少するときの目標となる時間で、プラズマ密度限界マージンが「1」より大きな値(ここでは1.1)に設定されている、スタートからt=100秒の時間である。第4設定時間は、この第3設定時間経過後に核融合出力が所定の値に到達するように制御するために設定される時間である。(これを核融合出力立ち上げ時間と呼ぶ)。ここではスタートからt=120秒で、それ以降は熱的に安定な定常状態となる。スタートから第5設定時間として130秒たった後、熱的不安定領域に遷移する。
【0106】
第2設定時間を第1設定時間よりも短くした理由は、核融合出力の立ち上げ時間を変化させても、プラズマ密度限界マージンのその後の減少のスタート地点になる初期値が変化しないようにするためである。これにより、DTヘリカル型核融合炉10の立ち上げの運転方法のより的確なシミュレーションを行うことができる。
【0107】
このシミュレーションは、図6Aのフローチャートに示すように、大きく分けてプレプログラム制御フェーズ(プレ制御フェーズ)(S2、S3、S4、S5、S6、S7)と燃料供給PIDフィードバック制御と外部加熱パワーフィードバック制御フェーズ(フィードバック制御フェーズ)(S8、S9、S10、S11、S12、S13,S14、S15)に分かれている。この境となる時間を第1設定時間とする。はじめに、DTヘリカル型核融合炉10の主半径、有効小半径、磁場強度、プラズマ密度、イオン温度、アルファ粒子密度、不純物密度の各値を入力する。以下、図5Aも併用しながら詳しく説明する。なお、図6Aにおいて、外部加熱パワーおよびDT燃料のプレ制御を第1ステップとし、外部加熱パワーのフィードバック制御およびDT燃料のPIDフィードバック制御を第2ステップとする。
【0108】
図6Aおよび図4Aに示すように、ステップS1でDTヘリカル型核融合炉10の装置パラメータの各値が入力手段21から入力されて、計算が開始されると、時間軸をX軸とし、プレプログラム制御による計算結果を出力手段29により表示モニタ30に出力して、図7に示す各グラフを表示するようにしている。すなわち、第1設定時間内におけるプラズマ密度n(0)[m3]、プラズマ密度限界値n(0)limおよびイオン温度Ti(0)[keV]のY軸値を図7(a)に表示するように、ヘリウム灰割合fαおよび核融合出力Pf[GW]のY軸値を図7(b)に表示するように、プラズマ密度限界マージンn(0)lim/n(0)および平均ベータ値<β>のY軸値を図7(c)に表示するように、外部加熱パワーPEXT[MW]および DT燃料供給率SDT[m−3/s]のY軸値を図7(d)に表示するように、表示モニタ30に出力する。このプレプログラム制御フェーズでは、ステップS3において、プラズマ密度、イオン温度、不純物等のプラズマパラメータ、閉じ込め時間を用いたプラズマ伝導損失パワー、アルファ粒子加熱パワー、制動輻射損失パワー、シンクロトロン輻射パワーを計算する。さらに、ステップS3で、各式を適宜用いてプラズマ密度限界値およびプラズマ密度限界マージンを計算している。
【0109】
図5Aの運転方法で示す第1設定時間30秒後も同様に計算を続け、同様に表示モニタ30に出力し、200秒まで計算を続ける。ここで、図7に示すグラフを作成するための各値は、シミュレーションを終了するまで随時出力される。つまり、ステップS3〜ステップS15まで進みながら随時各値が出力される。
【0110】
そして、第1設定時間である30秒が経過するか否かを判定して(ステップS6)、30秒が経過していない時には、その時間でのプレプログラム外部加熱パワーとプレプログラム燃料供給率を与え(ステップS7)、その値に基づいて、再度、ステップS2、ステップS3を30秒に到達するまで計算を繰り返す。
【0111】
ここで、図6Aに示すステップS2〜S6までは、図4Aに示す外部加熱パワープレ制御手段23による外部加熱パワーの供給と、DT燃料プレ制御手段25によるDT燃料の供給が行われている。そして、計時手段22から計時される時間の信号により、外部加熱パワープレ制御手段23およびDT燃料プレ制御手段25のそれぞれは、第1設定時間が経過したか否かを判定している。
【0112】
なお、外部加熱パワープレ制御手段23は、30秒が経過する前に、第2設定時間(29.9秒)が経過したか否かを判定して(ステップS4)、そのときのプラズマ密度限界マージンを保持し、その後の直線的減少の初期値とし、第3設定時間(100秒)にプラズマ密度限界マージン値が1.1になるように制御する(ステップS5)。つぎに、ステップS6において、30秒が経過したと判定されると、ステップS3の計算結果に基づいて、フィードバック外部加熱パワーおよびフィードバック燃料供給率を計算し、プラズマ密度限界値の制御と核融合出力の偏差を用いて熱的に安定な領域においてPIDフィードバック制御を行うようにする(ステップS8)。29.9秒でのプラズマ密度限界マージンは3.1と大きいので、熱的に安定な領域においてPIDフィードバック制御に入った瞬間に、外部加熱パワーはプレプログラム制御フェーズでの40MWよりも増大し50MWに達する。その後次第にプラズマ密度限界マージンが減少するので、同時に外部加熱パワーも減少していき、100秒で0MWとなり、熱的に安定な自己点火に到達することがわかる。
【0113】
さらに、第3設定時間(100秒)が経過したか否かを判定して(ステップS9)、経過していればそれ以降はプラズマ密度限界マージンが1.1以下にならないように制御する(ステップS10)。このステップS10において、プラズマ密度限界マージンが1.1以下に下がらないように制御するが、アルファ粒子加熱のために正味の加熱パワーが増大する結果、外部加熱パワーは0で、かつプラズマ密度限界マージンも1.1以上になる。外部加熱パワーを0としても、アルファ粒子加熱のために正味の加熱パワーが増大するので核融合反応は持続する。
【0114】
ここで、図6Aに示すステップS8〜S11までは、図4Aに示す外部加熱パワーをフィードバック制御するフィードバック制御手段24およびDT燃料をPIDフィードバック制御する燃料PIDフィードバック制御手段26によるそれぞれの制御が行われ、ステップ12〜S15までは、燃料PIDフィードバック制御手段26により制御が行われている。なお、フィードバック制御手段24では、所定時間で外部加熱パワーが0になるため、それ以降の外部加熱パワーの供給は行われない。
【0115】
その後、第4設定時間とした120秒(核融合出力立ち上げ時間)に核融合出力が1.9GWまで増大する(ステップS11、S12)。そして、第5設定時間(130秒)(ステップS13)が経過すると、熱的不安定領域に遷移させるために、燃料供給を行わせるべく核融合出力の設定値を1.9GWよりも小さい値(1.89GW )に設定する。同時に15式の制御係数cを+1から−1に変換する(ステップS14)。その結果、燃料供給が急速に増大し、プラズマ密度が増大するとともに、イオン温度は減少し、熱的に不安定な自己点火領域の境界に移動する。計算終了時間200秒までに運転点は熱的に不安定な自己点火領域の定常値に達するので(ステップS15)、各値を定常値として出力しシミュレーションを終了する。本制御法によって、本来ならば不安定であった自己点火領域が安定になり、定常値を持つことになる。
【0116】
これらのシミュレーションは、DTヘリカル型核融合炉10においては図4Aに示すような制御システムによって実行される。入力ターミナルである入力手段21から、外部加熱パワーのプレプログラム波形PEXT、核融合出力波形の設定値Pf0、密度限界マージンの設定値γDLM、燃料供給のプレプログラム波形SDT、燃料供給のPIDフィードバック制御においていつ熱的安定領域から不安定領域に移動するかを入力する。DTプラズマから発生した中性子を計測し、全中性子パワーPnを算出し、核融合出力Pfを出力する。この出力した核融合出力Pfと核融合出力波形の設定値Pf0の偏差(15式)を用いて燃料供給をフィードバック制御する。また、ボロメータで制動輻射損失パワーPBを計測し、電子サイクロトロン検出器でシンクロトロン輻射パワーPSを計測し、密度干渉計でプラズマ密度nを計測し、これらからパワーバランスを算出してフィードバック用の外部加熱パワーPEXT(10式)を算出し、外部加熱装置8を動作させる。またそれぞれ測定したプラズマパラメータを出力手段29により表示モニタ30に出力して図示しないメモリ等の記憶手段に保存している。
【0117】
なお、DTヘリカル型核融合炉10の熱的安定領域で運転した場合と不安定領域で運転した場合の定常値を図20に示す。図20では、定常に達した時のプラズマパラメータを示し、プラズマ主半径を番号1としエネルギー増倍率(Pe/PEXT)を番号39までとして定常時における各値を示している。また、図20に示すように、イオン温度、プラズマ密度分布が同じ放物分布でも、目標としている核融合出力値が得られた時の熱的安定自己点火領域の定常値と熱的不安定自己点火領域の定常値は異なる。そして、熱的不安定領域に達した後にパラメータに擾乱を与えて変化させる場合(図12〜図16)、その後の定常値は当然異なる。また、放物分布と記載している列では、密度分布係数は1、温度分布係数は1であり、その定常値は、同じ熱的不安定自己点火領域で運転しても箱形分布の場合の定常値とは異なる。すなわち、分布が異なれば定常値も異なる。
【0118】
図7に対応したPOPCON図(プラズマ密度・イオン温度の平面上に描かれた外部加熱パワーの等高線図)を図8に示す。これからわかるように、運転点は、高温・低密度の熱的安定な領域から、熱的に不安定な低温・高密度領域に移動していることがわかる。
【0119】
熱的に不安定な低温・高密度領域における安定化の原理について図9(a)を用いて説明する。一般にDT燃料をプラズマに急に入射すると、プラズマ密度は上昇し、プラズマは冷却され、イオン温度は下がる。逆に、DT燃料供給を止めると、プラズマ密度は減少し、イオン温度は上昇する。したがって、核融合出力(Pf)が設定値(Pf0)を超えると(Pf>Pf0)、15式の制御係数をc=-1とおいた式からわかるように、燃料供給率は増大し、運転点は低温・高密度側に動く(A点からB点)。自己点火領域からはみ出しB点に移動すると、B点は自己点火領域よりも低いイオン温度側にあるので、運転点は不安定で、さらに温度を下げようとする。
【0120】
そうすると、運転点が核融合出力の設定値Pf0を横切り、それを下回ることになる(B点からC点)。その結果、今度は燃料供給が減少あるいはストップし、プラズマ密度は減少し、イオン温度は上がる。その結果、運転点は自己点火領域に再び入る(C点からD点)。自己点火領域では熱的不安定性の結果、運転点はイオン温度の高い方に移動する。その結果、再び、核融合出力の設定値Pf0を横切り、それを上回るために、再び燃料供給が行われ、プラズマ密度が増大し、イオン温度が下がることになる。このようにイグニッション境界線の近傍において左回りに回転(旋回)しながら、最終的に定常運転点(自己点火領域の境界線)に近づいていく。
【0121】
一方の熱的に安定な高温・低密度の自己点火領域における核融合出力の燃料PIDフィードバック制御についても図9(b)を用いて説明する。後述する22式の定常パワーバランス方程式を利用して考える。運転点がイグニッション境界線よりも高温側にある場合、プラズマコンダクション損失パワーPLと制動輻射損失パワーPBの和が、アルファ粒子加熱パワーよりも大きいので(Palpha<PL+PB)、運転点は矢印で示すようにイオン温度の低い方に移動する。一方、イグニッション領域ではプラズマコンダクション損失パワーPLと制動輻射損失パワーPBの和が、アルファ粒子加熱パワーPalphaよりも小さいので(Palpha>PL+PB)、運転点は矢印で示すようにイオン温度の高い方に移動する。このように熱的に安定な高温・低密度領域では運転点はイグニッション境界線に向かって動く。これが熱的に安定といわれる由縁である(前記の熱的に不安定な低温・高密度領域では、これと同じメカニズムによって運転点はイグニッション境界線から離れていく。これが不安定と呼ばれる由縁である)。
【0122】
したがって、図9(b)のD点のように、核融合出力が設定値よりも大きく(Pfo<Pf)かつイグニッション領域の外側にある場合、15式の制御係数をc=+1とおいた式からわかるように、燃料供給が減って密度が下がり、イオン温度も低下する結果、運転点は矢印のように定常運転点P点の方向に向かって動く。C点のように、核融合出力が設定値よりも大きく(Pfo<Pf)かつイグニッション領域の内側にある場合、15式の制御係数をc=+1とおいた式からわかるように、燃料供給が減って密度が下がるが、今度はイオン温度が上がるために、運転点は矢印のように定常運転点P点の方向に向かって動く。
【0123】
また、A点のように、核融合出力が設定値よりも小さく(Pfo>Pf)かつイグニッション領域の外側にある場合、15式の制御係数をc=+1とおいた式からわかるように、燃料供給は増大しプラズマ密度は上がり、イオン温度は低下する結果、運転点は矢印のように定常運転点P点の方向に向かって動く。B点のように、核融合出力が設定値よりも小さく(Pfo>Pf)かつイグニッション領域の内側にある場合、15式の制御係数をc=+1とおいた式からわかるように、燃料供給は増大しプラズマ密度は上がり、イオン温度は増大する結果、運転点は矢印のように定常運転点P点の方向に向かって動く。総じて、熱的に安定なイグニッション領域内では運転点は右回りに動く。以上を簡単にまとめると、すなわち、c=+1の場合、熱的安定領域では運転点は右回りに回転し、c=−1の場合、熱的不安定領域では運転点は左回りに回転する対応関係にあることがわかる。
そして、本発明によれば、外部加熱パワーが、例えば、従来において必要とされていた100MWの最大外部加熱パワーより50%程度小さい50MW以下で足りる。
【0124】
次に第2実施形態の説明をする。図5Bは、図5Aでは第5設定時間を130秒にしていたのを30秒とし、すなわちプレ制御からPIDフィードバック制御への切替までの設定時間30秒と同時に前記の(15式)の制御係数cの符号を負(−1)へ切り替える場合である。したがって30秒以降は低温・高密度側の熱的に不安定な領域を通って、直接熱的不安定自己点火領域に達する運転である。したがって、図5Aのように熱的に安定な自己点火領域を通る必要はない。熱的不安定領域で運転中はプラズマ密度限界マージンが1以上になるようにあらかじめマージンを設定している。なお、熱的に不安定な領域では図5Bの最下段の外部加熱パワーの波形に示すように、外部加熱パワーのフィードバックは行わずプレプログラムとした。
【0125】
図4Bの制御システムを用いて、図5Bで示すような運転法について、図6Bの計算アルゴリズムのフローチャートと、30秒から熱的不安定制御を行い核融合出力立ち上げ時間が120秒の計算結果(図10)を用いて、本運転方法のシミュレーション結果を詳しく説明する。なお、同じ構成のものは同じ符号を付して説明を省略する。DTヘリカル型核融合炉は、図2(a)に示す構成において、主半径R=14.0m、有効小半径a=1.73m、磁場強度Bo=6Tのパラメータとなるように設定されているものとする。
【0126】
また、ここでは、図4Bに示すような制御システムを使用することで、DTヘリカル型核融合炉10の制御を行うものである。なお、すでに説明した構成は、同じ符号を付して説明を省略する。
図4Bに示すように、外部加熱パワープレ制御手段23は、入力手段21を介して入力された変数から数式(例えば10式等)により演算された値に基づいて、予め設定した設定値になるように外部加熱パワー発生装置から外部加熱パワーを、炉心プラズマ1に供給するプレ制御を行うと共に、予め設定された時間で外部加熱パワーを0とするように外部加熱パワーの供給を制御するものである。
【0127】
この外部加熱パワープレ制御手段23は、ここでは、計時手段22からの計時された時間が予め設定されており、その設定された設定時間に到達するまで、外部加熱パワーを段階的(図10(d)参照)に炉心プラズマ1に加え、つぎに設定されている設定時間までに外部加熱パワーを段階的(図10(d)参照)に0にするように設定されている。なお、外部加熱パワーを段階的に0となるように減少させる場合は、その一回に減少させる値が20MWを超えないようにしている。
また、図10(b)の左下に示すように、核融合出力のプレ制御(点線)における設定値は、1MWより小さな値となるように設定されており、この設定値(点線)よりも核融合出力が大きくなり、かつ制御係数cが−1になったときに密度が急上昇し、あとは核融合出力の設定値とともに増大していく。
【0128】
また、図10〜図16には、図5Bで示すような運転を行った結果を示す。図5Bの運転法において用いられている時間について詳しく説明する。第1設定時間(30秒)はプレプログラムによって外部加熱パワーを印加して、その後の熱的に不安定な領域で行うPIDフィードバック制御ができるレベルまで核融合出力を持ち上げるのに要する時間である。第2設定時間(29.9秒)はフィードバック制御に入る前にプラズマ密度限界マージンの値を保持するための時間で、その値を初期値とするが、ここでは30秒以降も外部加熱パワーをプレプログラム制御するために図5Aの様に密度限界マージンを直線的に減少させる必要がなく、その意味ではこの運転方法での大きな意味はない。また、図5Aの第3設定時間は取り除き、核融合出力立ち上げフェーズにプラズマ密度限界マージンが常に1以上になるように設定している。本運転法では図5Aで示した熱的不安定制御に移行する第5設定時間を第1設定時間まで早めて設定し、30秒から熱的に不安定な領域で燃料供給制御を行う様にしている。なお、ここでは、図5Aで示した第3設定時間に相当する設定時間はない。
【0129】
第4設定時間(120秒)は、第1設定時間(30秒)経過後に核融合出力が1.9GWの所定の値に到達するように制御するために設定される時間である(核融合出力立ち上げ時間)。一方、外部加熱パワーは第5設定時間(第1設定時間)での値をしばらく保持し、その後核融合出力の順調な増大を助けるように試行錯誤で段階的に減少させ、100秒で0になるように設定している。外部加熱パワーを0にする時間を遅らせる分にはかまわないが、その時間を早めすぎると順調な核融合出力立ち上げが損なわれてしまう。なぜなら、アルファ粒子加熱が十分に大きくなるまで外部加熱パワーがプラズマの加熱を助ける必要があるからである。ここでは外部加熱パワーを印加する時間を少しでも短くして省エネルギーをはかるとともに、イグニッション領域に達することができるのに十分な値を取り100秒とした。また、外部加熱パワーを段階的に減少させる場合、1つのステップあたりの減少量を大きくすると、核融合出力を増大させることができなくなるので、20MW以上には大きくならないようにしている。
【0130】
このシミュレーションは、図6Bのフローチャートに示すように、大きく分けてプレプログラム制御フェーズ(プレ制御フェーズ)(S2、S3、S4、S5、S6)と燃料供給PIDフィードバック制御フェーズ(PIDフィードバック制御フェーズ)(S7、S8、S9、S10、S11、S12,S13)に分かれている。この境となる時間を第1設定時間あるいは第5設定時間(30秒)とする。はじめに、DTヘリカル型核融合炉10の主半径、有効小半径、磁場強度、プラズマ密度、イオン温度、アルファ粒子密度、不純物密度の各値を入力する。以下、図5Bも併用しながら詳しく説明する。なお、図6Bおよび図5Bにおいて、外部加熱パワーおよびDT燃料のプレ制御を第1ステップとし、外部加熱パワーの段階的な減少を行うプレ制御およびDT燃料のPIDフィードバック制御を第2ステップとする。
【0131】
図6Bおよび図4Bに示すように、ステップS1でDTヘリカル核融合炉10の装置パラメータの各値が入力手段21から入力されて、計算が開始されると、時間軸をX軸とし、プレプログラム制御による計算結果を出力手段29により表示モニタ30に出力して、図10に示す各グラフを表示するようにしている。すなわち第1設定時間内におけるプラズマ密度n(0)[m3]、プラズマ密度限界値n(0)limおよびイオン温度Ti(0)[keV]のY軸値を図10(a)に、ヘリウム灰割合fαおよび核融合出力Pf[GW]のY軸値を図10(b)に、プラズマ密度限界マージンn(0)lim/n(0)および平均ベータ値<β>のY軸値を図10(c)に、外部加熱パワーPEXT[MW]および DT燃料供給率SDT[m−3/s]のY軸値を図10(d)に表示するように表示モニタ30に出力する。このプレプログラム制御フェーズでは、ステップS3において、密度、温度、不純物等のプラズマパラメータ、閉じ込め時間によるプラズマコンダクションロス、アルファ粒子加熱パワー、制動輻射損失パワー、シンクロトロン輻射パワーを計算する。さらに、ステップS3で、各式を適宜用いてプラズマ密度限界値およびプラズマ密度限界マージンを計算している。
【0132】
第1設定時間30秒後も同様に計算を続け、同様に表示モニタ30に出力し、200秒まで計算を続ける。ここで図10に示すグラフを作成するための各値は、シミュレーションを終了するまで随時出力される。つまり、ステップS3〜ステップS13まで進みながら随時各値が出力される。
【0133】
ここで、図6Bに示すステップS2〜S6までは、図4Bに示す外部加熱パワープレ制御手段23による外部加熱パワーの供給と、DT燃料プレ制御手段25によるDT燃料の供給が行われている。そして、計時手段22から計時される時間の信号により、外部加熱パワープレ制御手段23およびDT燃料プレ制御手段25のそれぞれは、第1設定時間が経過したか否かを判定している。
外部加熱パワープレ制御手段23は、第1設定時間である30秒が経過するか否かを判定して(ステップS5)、30秒が経過していない時には、その時間でのプレプログラム外部加熱パワーを供給する。それと同時に、DT燃料プレ制御手段25は、プレ制御におけるDT燃料を供給する(ステップS6)。外部加熱パワープレ制御手段23およびDT燃料プレ制御手段25は、その設定された値に基づいて、再度、ステップS2、ステップS3を30秒に到達するまで計算を繰り返す。
【0134】
つぎに、ステップS5において、30秒が経過したと判定されると、熱的不安定用制御に移行する。すなわち、ステップS3の計算結果に基づいて、燃料供給PIDフィードバック制御を、核融合出力の設定値を実際の核融合出力の値が越えた後に(図7(b)の左下点線)、15式の制御係数c=−1とおいて、核融合出力の偏差によって行い、燃料供給を急激に起こし、密度を急上昇させる(ステップS7)。このとき、29.9秒でのプラズマ密度限界マージンは3.1(図7(c)のY軸では表示されていない大きな値)と大きく、熱的不安定化燃料供給PIDフィードバック制御に入った瞬間に密度が急上昇するが、50MWの外部加熱パワーはプレプログラム制御フェーズにあり一定なので、プラズマ密度限界マージンは1以上の値である。その後、外部加熱パワーを段階的に減少させ、100秒で0MWとする。外部加熱パワーを0としても、アルファ粒子加熱のために正味の加熱パワーが増大するので核融合反応は持続し、熱的に不安定な自己点火領域に到達する。
【0135】
ここで、図6Bに示すステップS7〜S9までは、図4Bに示す外部加熱パワーをプレ制御する外部加熱パワープレ制御手段23およびDT燃料をPIDフィードバック制御する燃料PIDフィードバック制御手段26によるそれぞれの制御が行われ、ステップS10〜S12までは、燃料PIDフィードバック制御手段26により制御が行われている。なお、外部加熱パワープレ制御手段26は、ステップS10〜S12までは、外部加熱パワーを0とするように制御されている。
【0136】
このようにして熱的に不安定な領域を通って第4設定時間(120秒)に核融合出力が1.9GWまで増大し、その後、計算終了時間200秒までに運転点は熱的に不安定な自己点火領域の定常値に達するので(ステップS12)、各値を定常値として出力し(ステップS13)シミュレーションを終了する。本制御法によって、本来ならば不安定であった自己点火領域が安定になり、定常値を持つことになる。
【0137】
これらのシミュレーションは、DTヘリカル型核融合炉10においては図4Bに示すような制御システムによって実行される。入力ターミナルである入力手段21から、外部加熱パワーのプレプログラム波形PEXT、核融合出力波形の設定値Pf0、密度限界係数γSUDO、燃料供給のプレプログラム波形SDT、燃料供給のPIDフィードバック制御において熱的不安定領域に移行する時間を入力する。DTプラズマから発生した中性子を計測し、全中性子パワーPnを算出し、核融合出力Pfを出力する。この出力した核融合出力Pfと核融合出力波形の設定値Pf0の偏差(15式)を用いて燃料供給を熱的不安定用PIDフィードバック制御する。また、ボロメータで制動輻射損失パワーPBを計測し、電子サイクロトロン検出器でシンクロトロン輻射パワーPSを計測し、密度干渉計でプラズマ密度nを計測し、これらからパワーバランスを計算して正味の加熱パワーPNET(9式)を算出し、プラズマ密度マージンγDLM=n(0)lim/n(0)(8式)を算出する。プラズマ密度マージンが1以下にならない程度に密度限界係数を設定する(なお:最近のLHD実験の低温度・高密度運転においては、密度限界はほとんど存在しなくなりつつあり、密度限界係数の設定は重要でなくなりつつある)。また、それぞれ測定したプラズマパラメータを出力手段29により表示モニタ30に出力して図示しないメモリ等の記憶手段に保存している。
【0138】
図7では熱的に安定な運転点に到達してから不安定点に移動したが、図10には熱的安定点を経ることなく、直接初期状態(30秒)から熱的に不安定な低温・高密度領域に移動できることを示す。この場合30秒時において、熱的不安定領域に遷移させるために、核融合出力の設定値を核融合出力よりも小さい値に設定して(図10(b)の左下の点線)、核融合出力の値が設定値を越えると同時に、15式の制御係数cを+1から−1に変換する。このように、30秒から120秒まで、熱的に不安定な定常運転点だけでなく、その点に接近する途中でも15式によって制御できることがわかる。図7の熱的に安定な領域を通って定常運転点に到達する場合、外部加熱パワーは10式を用いてフィードバック制御できたのに対して、図10の熱的に不安定な領域を通って不安定な定常運転点に到達する場合、10式を用いてフィードバック制御制御することは困難である。高温・低密度領域の自己点火領域では、加熱パワーを増大すると、運転密度は下がる一方で密度限界は増大し、両者は離れていく。一方、低温・高密度領域の自己点火領域では、加熱パワーを増大すると、運転密度も密度限界も両者ともに増大していく。その結果8式の須藤密度限界スケーリング則を利用した10式のようなフィードバック制御は使用が困難となる。したがって、熱的不安定領域で運転する場合、外部加熱パワーはプレプログラム制御とした。
【0139】
図10に対応したPOPCON図を図11に示す。これからわかるように、運転点が熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に向かって移動する。この移動する際の運転点は、イグニッション境界線の近傍で、左旋回するように移動して設定核融合出力線上の熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達して維持される状態となる。そのため、高温・低密度の熱的に安定な領域を経由せずに、直接、熱的に不安定な低温・高密度領域に移動できることがわかる。
【0140】
本発明における熱的な不安定な領域での制御方法では、DT燃料供給のPIDフィードバック制御により密度の増減を行うので、実際にプラズマ密度を増減できるかがポイントになってくる。密度増大はDT燃料を凍らせてアイスペレットにして入射するので問題はないが、プラズマ密度を急速に減少させることができるかどうかが問題になる。一般に核融合炉ではプラズマ密度減少は燃料粒子を強力に排気することによって行うことができる。12式の右辺の大括弧の第2項目である中括弧の第1項((fD+fT)/τp*)がその密度減少を表す項である。すなわち、その分母であるτp*が密度減少時間の尺度であるが、一般に核融合炉の研究ではこの燃料粒子(DT)閉じ込め時間τp*とエネルギー閉じ込め時間tEに対する比(τp*/τE)をその指標とする。この値が小さいほど燃料粒子の排気が行われやすく、したがって密度は減少しやすいということである。DTヘリカル型核融合炉10では通常τp*/τE=3の値を使用している。図12ではイグニッション領域の存在に影響を与えるτp*/τEの取り得る最大の値を調べるために、この値を3からスキャンし、イグニッション領域がなくなる1つ手前の値について計算した結果を示す。
【0141】
すなわち、図12では重水素粒子閉じ込め時間のエネルギー閉じ込め時間に対する比を5倍大きい15にとった場合の図である。τp*/τEの比を増大させると、燃料粒子の排気に時間がかかり密度の増減ができないので安定化制御はできないのではないかと予想される。しかしながら、図12に示すように、τp*/τE=15までは定常運転点まで到達していることから、燃料粒子閉じ込め時間がここまで長くなっても熱的不安定領域でのPID燃料制御には影響を与えないことが理解できる。なお、τp*/τEをここまで大きくとれる理由は、燃料粒子の閉じ込め時間が長くなっても、核融合反応によってDT燃料が減少し、等価的に燃料粒子閉じ込め時間が短くなったからであると考えられる。すなわち12式の右辺の大括弧の第2項目の中括弧のさらに第2項目のヘリウム粒子灰(2fα/τα*)の項からわかるように、発生するヘリウム粒子灰が短時間で除去できる限りにおいては、核融合反応がある場合、等価的な燃料粒子閉じ込め時間は短くなり、熱的不安定領域で安定化制御ができることを示している。
【0142】
DT核融合で発生するヘリウム灰粒子をどの程度の速さで排気すればよいかを示す尺度がヘリウム灰粒子の閉じ込め時間である。通常、このヘリウム灰粒子の閉じ込め時間τα*とエネルギー閉じ込め時間τEに対する比(τα*/τE)をその指標とする。この値が小さいほどDT核融合で発生するヘリウム灰粒子の密度が減少する。すなわちいわゆる不純物としてのヘリウム灰粒子の密度が減少する。その結果イグニッション領域が広がる。逆にこの値が大きいとDT核融合で発生する不純物としてのヘリウム灰粒子の密度が増大するために、イグニッション領域は狭くなる。したがって、ヘリウム灰粒子の閉じ込め時間とエネルギー閉じ込め時間に対する比がどこまで許容できるかが重要になる。通常、DTヘリカル核融合炉10ではτα*/τE=3の値を用いている。この比をどこまで大きくとれるかを調べるために3からスキャンし4,5,6と大きな値について計算してみた。そのときの許容できる最大値に近い値がτα*/τE=5であり、そのときの熱的不安定自己点火領域に接近する様子を調べたのが図13である。これより大きな値を用いると、もはや自己点火領域は存在しない。ヘリウム灰粒子が短時間で除去できないと、ヘリウム灰粒子が不純物としてたまり、燃料粒子のプラズマ密度に対する割合が減少するいわゆる燃料希釈現象が起き、核融合反応が減少するからである。
【0143】
通常、DTヘリカル核融合炉10では閉じ込め増倍度はγISS95=1.92の値を用いている。もし、運転中に閉じ込め増倍度変化することを想定した場合でも本不安定制御法が使用できるかどうか調べておく必要がある。そこで低温・高密度の定常不安定領域に達した後の130秒で閉じ込め増倍度を1.92から1.8にステップ状に減少させた場合の変化を調べたのが図14である。この範囲であれば定常不安定運転点は維持でき制御できていることがわかる。また、閉じ込め増倍度が減少すると、ヘリウム灰割合は減少し、POPCON図(図11)からも理解できるように、密度が減少し、温度が上昇することがわかる。この変化の方向は熱的に安定な自己点火領域での変化とは逆である。
【0144】
図14と逆に、運転中に閉じ込め増倍度(γISS95)が増大する場合について調べた結果が図15(a)〜(d)である。低温・高密度の定常不安定領域に達した後の130秒で閉じ込め増倍度を1.92から2.2に増大させた場合の変化を調べた。この範囲であれば定常不安定運転点を維持制御できていることがわかる。閉じ込め増倍度が増大すると、ヘリウム灰割合は増大し、またPOPCON図(図11)からも理解できるように、密度が増大し、温度が減少することがわかる。この変化の方向も熱的に安定な自己点火領域での変化とは逆である。
【0145】
通常、DTヘリカル核融合炉10では酸素不純物の電子密度に対する割合はfo=0.75%の値を用いている。さらに不純物が増大するとイグニッション領域は狭くなる。そのためにどの程度までの不純物のステップ状の増大が本不安定制御法にとって許容できるかを調べた結果が図16(a)〜(d)である。すなわち、低温・高密度の定常不安定領域に達した後の130秒に酸素不純物の電子密度に対する割合をfo=0.75%から1%に増加させた。この範囲の不純物量であれば定常不安定運転点を維持制御できることがわかる。それ以上に不純物量が増加すると,自己点火領域が狭くなり,自己点火状態が維持できなくなる。
【0146】
次に第3実施形態について説明する。なお、図5Cにおいて、その上段(1段目)に各制御における項目において、熱的安定領域で運転しているか不安定領域で運転しているかを示す制御係数cの値を示し、どのような制御が行われているかを表し、2段目に核融合出力の設定波形を取り、3段目に密度制御波形を示し、4段目に時間軸を共有させてプラズマ密度限界マージンの結果の波形を示し、下段(5段目)に外部加熱パワーの波形を示した。なお、熱的に不安定な領域では図5Cの最下段の外部加熱パワーの波形に示すように、外部加熱パワーのフィードバックは行わずプレプログラムとした。
また、第2実施形態および第3実施形態では、第1実施形態ですでに説明した構成は同じ符号を付して説明を省略する。
【0147】
また、ここでは、図4Cに示すような制御システムを使用することで、DTヘリカル型核融合炉10の制御を行うものである。
図4Cに示すように、PIDフィードバック制御手段27は、核融合出力の設定値と実際の値との偏差により、DT燃料を制御する場合に、DT燃料PIDフィードバック制御手段として機能し、かつ、プラズマ密度の設定値と、プラズマ運転密度の値との偏差により、DT燃料を制御する場合に、DT燃料密度PIDフィードバック制御手段として機能する構成である。
【0148】
図5Cに示すように、この制御方法は、外部加熱パワーを加えてプレプログラム制御する一方、燃料制御において、予め設定された時間に密度PIDフィードバック制御を行う制御から、核融合出力がある一定値に達したら、核融合出力の偏差を用いた熱的不安定燃料供給PIDフィードバック制御(15式の制御係数が負(-1))によって熱的に不安定な低温・高密度領域の自己点火領域に到達する運転制御方法である。
【0149】
図4Cの制御システムを用いて、図5Cで示すような運転法で、図6Cに示す計算アルゴリズムのフローチャートと、10秒から熱的不安定制御を行い核融合出力立ち上げ時間が50秒の計算結果(図17)を用いて、本運転方法のシミュレーション結果を詳しく説明する。これはLHDヘリカル装置において得られた密度分布が箱形分布、温度分布が広い放物分布を持つ低温・高密度運転に基づいた核融合炉の運転法である。これはプレ制御を経た後、密度PIDフィードバック制御、熱的不安定用燃料供給PIDフィードバック制御に移行する運転であり、その実施例について図17を用いて説明する。DTヘリカル型核融合炉10も、図2(a)に示す構成において、主半径R=14.0m、有効小半径a=1.73m、磁場強度Bo=6Tのパラメータとなるように設定されているものとする。本運転法の計算に際しては、図5A、Bの放物分布を持つ場合の計算とは異なり、箱形密度分布なので計算はより複雑であるので、パワーバランスを計算する際にあらかじめその係数を計算しておかねばならない。
まず、箱形密度分布には次のハイパボリック関数を用いる。
【0150】
【数16】
【0151】
ただし、xはプラズマ中心から小半径方向の距離である。
したがって密度分布n(x)は次の17式になる。
【0152】
【数17】
【0153】
ここでは密度が小半径のx=0.45の場所で急激に減少するように、an=0.2 とおいた。
温度分布は6式においてαT=0.25とおいて得られる広い放物分布を用いた。これらの箱形密度分布と広い放物分布の温度分布波形を図18に示す。
このような箱型密度分布の場合のプラズマコンダクション損失パワーPLは、4式の1/(1+αn+αT)の係数に、次の18式で得られる値を代入して計算する。
【0154】
【数18】
【0155】
ただしWはプラズマエネルギー、
kはボルツマン定数である。
放物密度分布では、αn、αTを用いて単に1/(1+αn+αT)を計算すればよいが、箱形密度分布では、4式の1/(1+αn+αT)に、上のようにして数値積分して得られた値0.194429を用いて計算すればよい。
【0156】
制動輻射損失パワーの体積平均値は、3式の1/(1+2αn+0.5αT)に次の19式で得られる値を代入して計算する。
【0157】
【数19】
【0158】
箱形密度分布では、3式の1/(1+2αn+0.5αT)に、上のようにして数値積分して得られた値0.172891を用いて計算すればよい。アルファ粒子加熱の場合は箱形密度分布について直接積分することで求める。
【0159】
箱形密度分布の場合はこのようにして、1式あるいは11式のパワーバランスを計算することができる。図5Cの1段目に示す10秒から12.8秒にかけて行う密度PIDフィードバック制御は次の20式と21式を用いて計算する。
【0160】
【数20】
【0161】
ただし、20式中においてeDT(n)は密度の偏差で、
【0162】
【数21】
【0163】
で与えられる。
n(0)はピーク密度の測定値、
nGWはピーク密度の設定値、
その他の数値は14式で用いたのと同じである。すなわち、
SDT0は定数でSDT0=4x1020m-3 、
Gf0(t)はゲインで、2〜5の値、
Tintは積分時間で10秒、
Tdは微分時間で1秒とする。
【0164】
図5Cの運転法では、図5Cの5段目(Y軸が外部加熱パワー)に示すように、第一設定時間(10秒)までは単にプラズマを維持するためだけに5MWの外部加熱パワーを印加する。このフェーズをプレ制御フェーズと呼ぶ。第一設定時間(10秒)時に外部加熱パワーを印加して、同時に密度PIDフィードバック制御を行い、実際のプラズマ密度がプラズマ密度設定波形に等しくなるようにしている。第5設定時間(12.8秒)は、それ以降は熱的不安定領域での燃料供給PIDフィードバック制御を行うので、そのための十分な核融合出力が得られる時間である。第4設定時間(50秒)は、第1設定時間(10秒)経過後に核融合出力が1.9GWの所定の値に到達するように制御するために設定される時間である(核融合出力立ち上げ時間)。外部加熱パワーは第5設定時間(第1設定時間)での値をしばらく保持し、その後、核融合出力の順調な増大を助けるように段階的に減少させ、24秒で0になるように設定している。外部加熱パワーを0にする時間を遅らせる分にはかまわないが、その時間を早めすぎると順調な核融合出力立ち上げが損なわれてしまう。なぜなら、アルファ粒子加熱が十分に大きくなるまで外部加熱パワーがプラズマの加熱を助けてやる必要があるからである。
【0165】
ここでは外部加熱パワーを印加する時間を少しでも短くして省エネルギーをはかるとともに、50秒で定常イグニッション領域に達することができるのに十分な値をとり24秒とした。また、外部加熱パワーを段階的に減少させる場合、1つのステップあたりの減少量を大きくすると、核融合出力を増大させることができなくなるので、1ステップあたり20MW以下にしている。実際、図17に示すように、10秒まで5MW印加してプレプログラム制御した後、燃料制御において予め設定された時間(10秒−12.8秒)に密度PIDフィードバック制御を行う。核融合出力がある程度大きくなり、図17(b)の左下の点線に達したら、すなわち12.8秒に密度PIDフィードバック制御から14式と15式を用いた核融合出力の偏差を用いた熱的不安定用PIDフィードバック制御(c=−1)に移る。同時に核融合出力の設定値を実際の核融合出力よりも小さくなるようにしておき、密度の急上昇を引き起こす。その後50秒まで核融合出力の立ち上げを直線的に行い、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域に到達する。なお、ここでは、図5Aで示した第3設定時間に相当する設定時間はない。
【0166】
このシミュレーションは、図6Cのフローチャートに示すように、大きく分けてプレプログラム制御フェーズ(プレ制御フェーズ)(S2、S3、S4、S5、S6)と、燃料供給のための密度PIDフィードバック制御フェーズ(S7)と核融合出力を用いた燃料供給のためのPIDフィードバック制御フェーズ(PIDフィードバック制御フェーズ)(S8、S9、S10、S11、S12、S15)に分かれている。初めの境となる時間を第1設定時間(10秒)し、次の境となる時間を第5設定時間とする。はじめに、DTヘリカル型核融合炉10の主半径、有効小半径、磁場強度、プラズマ密度、イオン温度、アルファ粒子密度、不純物密度の各値を入力する。以下、図5Cも併用しながら詳しく説明する。なお、図6Cおよび図5Cにおいて、外部加熱パワーおよびDT燃料のプレ制御を第1ステップとし、DT燃料によるプラズマ密度のPIDフィードバック制御を第2ステップとし、外部加熱パワーの段階的な減少の制御およびDT燃料のPIDフィードバック制御を第3ステップとする。
【0167】
図6Cおよび図4Cに示すように、ステップS1でDTヘリカル核融合炉10の装置パラメータの各値が入力手段21から入力されて、計算が開始されると、時間軸をX軸とし、プレプログラム制御による計算結果を出力手段29により表示モニタ30に出力して、図17に示す各グラフを表示するようにしている。すなわち、第1設定時間内におけるプラズマ密度n(0)[m3]、プラズマ密度限界値n(0)limおよびイオン温度Ti(0)[keV]のY軸値を図17(a)に、ヘリウム灰割合fαおよび核融合出力Pf[GW]のY軸値を図17(b)に、プラズマ密度限界マージンn(0)lim/n(0)および平均ベータ値<β>のY軸値を図17(c)に、外部加熱パワーPEXT[MW]および DT燃料供給率SDT[m−3/s]のY軸値を図17(d)に表示するように表示モニタ30に出力する。このプレプログラム制御フェーズでは、ステップS3において、密度、温度、不純物等のプラズマパラメータ、閉じ込め時間によるプラズマコンダクションロス、アルファ粒子加熱パワー、制動輻射損失パワー、シンクロトロン輻射パワーを計算する。さらに、ステップS3で、各式を適宜用いてプラズマ密度限界値およびプラズマ密度限界マージンを計算している。
【0168】
第1設定時間10秒後も同様に計算を続け、同様に表示モニタ30に出力し、60秒まで計算を続ける。ここでグラフを作成するための各値は、シミュレーションを終了するまで随時出力される。つまり、ステップS3〜ステップS15まで進みながら随時各値が出力される。
【0169】
ここで、図6Cに示すステップS2〜S6までは、図4Cに示す外部加熱パワープレ制御手段23による外部加熱パワーの供給と、DT燃料プレ制御手段25によるDT燃料の供給が行われている。そして、計時手段22から計時される時間の信号により、外部加熱パワープレ制御手段23およびDT燃料プレ制御手段25のそれぞれは、第1設定時間が経過したか否かを判定している。
【0170】
そして、外部加熱パワープレ制御手段23およびDT燃料プレ制御手段25は、第1設定時間である10秒が経過するか否かを判定して(ステップS5)、10秒が経過していない時には、その時間でのプレ制御における外部加熱パワーとプレ制御におけるDT燃料を供給し(ステップS6)、その値に基づいて、再度、ステップS2、ステップS3を10秒に到達するまで計算を繰り返す。
【0171】
つぎに、ステップS5において、10秒が経過したと判定されると、ステップS8(12.8秒)までの核融合出力がある程度大きくなる間、DT燃料の供給をプラズマ密度によるPIDフィードバック制御により行う(ステップS7)。12.8秒になり、核融合出力がある程度大きくなり核融合出力によって制御できる様になると、ステップS3の計算結果に基づいて、DT燃料の供給についてPIDフィードバック制御を、15式の制御係数c=-1とおいて、核融合出力の偏差によって行い、同時に核融合出力の設定値を実際の核融合出力の値が越えたときに(図17(b)の左下点線)、燃料供給を急激に起こし密度を急上昇させる(ステップS9)。このように、熱的不安定化燃料供給PIDフィードバック制御に入った瞬間に密度が急上昇するが、50MWの外部加熱パワーはプレプログラム制御フェーズにあり一定なので、プラズマ密度限界マージンは1以上の値である。その後、外部加熱パワーを段階的に減少させ、24秒(ステップS10)で0MWとする(ステップS11)。外部加熱パワーを0としても、アルファ粒子加熱のために正味の加熱パワーが増大するので核融合反応は持続する(ステップS13)、そして、50秒(ステップS14)であるか否かが判定され50秒に達すると、熱的に不安定な自己点火領域に到達する。
【0172】
ここで、図6Cに示すステップS4〜S6までは、図4Cに示す外部加熱パワーをプレ制御する外部加熱パワープレ制御手段23およびDT燃料およびプラズマ密度をPIDフィードバック制御するDT燃料PIDフィードバック制御手段27によるそれぞれの制御が行われる。そして、ステップS7では、PIDフィードバック制御手段27によりプラズマ密度に対する制御が行われ、ステップ11〜S14までは、PIDフィードバック制御手段27によりDT燃料の供給に対する制御が行われている。
【0173】
このようにして熱的に不安定な領域を通って第4設定時間(50秒)に核融合出力が1.9GWまで増大し(ステップS13)、その後、計算終了時間60秒までに運転点は熱的に不安定な自己点火領域の定常値に達するので(ステップS14)、各値を定常値として出力し(ステップS15)、シミュレーションを終了する。
【0174】
これらのシミュレーションは、DTヘリカル型核融合炉10においては図4Cに示すような制御システム20によって実行される。入力ターミナルとなる入力手段21から、外部加熱パワーのプレプログラム波形PEXT、核融合出力波形の設定値Pf0、密度限界係数γSUDO、燃料供給のプレプログラム波形SDT、燃料供給のPIDフィードバック制御において熱的不安定領域に移動する時間を入力する。DTプラズマの密度nを計測し、プラズマ密度の設定値nGWの偏差(21式)から燃料供給をPIDフィードバック制御する。また、DTプラズマから発生した中性子を計測し、全中性子パワーPnを算出し、核融合出力Pfを出力する。
【0175】
密度フィードバック制御の後、この出力した核融合出力Pfと核融合出力波形の設定値Pf0の差(15式)を用いて燃料供給を熱的不安定用PIDフィードバック制御する。また、ボロメータで制動輻射損失パワーPBを計測し、電子サイクロトロン検出器でシンクロトロン輻射パワーPSを計測し、密度干渉計でプラズマ密度nを計測し、これらからパワーバランスを計算して正味の加熱パワーPNET(9式)を算出し、プラズマ密度マージンγDLM=n(0)lim/n(0)(8式)を算出する。プラズマ密度マージンが1以下にならない程度に密度限界係数を設定する。もしそれ以下だと1以上になるように入力し直し運転する。(なお、最近のLHD実験の低温度・高密度運転においては密度限界はほとんど存在しなくなりつつある。)またそれぞれ測定したプラズマパラメータを表示モニタ30に出力して図示しない記憶手段に保存する。
【0176】
図17に対応したPOPCON図を図19に示す。これからわかるように、外部加熱パワーの低い鞍点付近を通って、運転点が熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に向かって移動することがわかる。この移動する際の運転点は、イグニッション境界線の近傍で、左旋回するように移動して設定核融合出力線上の熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達して維持される状態となる。なお、初期に密度制御を行っているために7.5keV以上のプラズマ温度にはならないことがわかる。
【0177】
ここで、放物密度分布の熱的安定点と、箱形密度分布の熱的不安定点での定常値について比較検討してみる。結果は図20の表に示しているが、放物密度分布の熱的安定点でのピーク密度はn(0)=2.8x1020m−3であるが、箱形密度分布の熱的不安定点の場合n(0)=9.8x1020m−3と高い。その結果、エネルギー閉じ込め時間は放物密度分布の熱的安定点での場合τE=1.9秒と短いが、箱形密度分布の熱的不安定点の場合τE=4.7秒と長くなる。したがって、4式からわかるように、プラズマ伝導損失パワーは放物密度分布の熱的安定点での場合PL=282MWと大きく、箱形密度分布の熱的不安定点の場合PL=96MWと大幅に減少する。その結果、箱形密度分布の熱的不安定点の場合、ダイバータ板にいく熱流束、あるいは熱負荷が大幅に減少し、板の損耗が減ることになる。
【0178】
制動輻射損失パワーに関して説明するために1式のパワーバランスの定常状態をとって考える。すなわち自己点火領域での定常状態ではdW/dt=0でかつPEXT=0であるから、パワーバランスは次の22式になる。
【0179】
【数22】
【0180】
これはアルファ粒子加熱Palphaが、プラズマ伝導損失パワーPLと制動輻射損失パワーPBの和に等しいことを表している。(ここではシンクロトロン輻射パワーPSはプラズマ温度が低いために無視した。)自己点火領域で定常状態では核融合出力は一定であるから、アルファ粒子加熱Palphaも一定である。したがって、箱形密度分布の熱的不安定点の場合のようにプラズマ伝導損失パワーPLが小さくなれば、制動輻射損失パワーPBは大きくなる。すなわち、放物密度分布の熱的安定点の場合のPB=57MWよりも,箱形密度分布の熱的不安定点の場合の方がPB=248MWと大きくなる。したがって、箱形密度分布の熱的不安定点の場合、増大した制動輻射損失パワーによって第一壁が暖まる代わりに、図2(b)に示すようなダイバータ板への熱負荷が減少するのである。ここが低温・高密度運転の非常に優れた点である。
【0181】
図20の表に示すように、放物密度分布の熱的安定点でのダイバータ熱負荷はΓdiv=1.6MW/m2、箱形密度分布の熱的不安定点の場合Γdiv=0.54MW/m2と3分の1に減少する。このダイバータ熱負荷は板幅1mの場合の計算であるが、実際の核融合炉になると約0.1m程度になると考えられるので、ダイバータ熱負荷は10倍大きくなる。したがって、放物密度分布の熱的安定点でのダイバータ熱負荷はΓdiv=16MW/m2、箱形密度分布の熱的不安定点の場合Γdiv=5.4MW/m2となる。現在の冷却技術では定常状態で10MW/m2と考えられているので、低温・高密度運転は現実的であり、さらなるダイバータに関する技術開発を必要としない利点がある。
【0182】
以上、説明したように、DTヘリカル型核融合炉10では、核融合出力の偏差を用いた燃料供給PIDフィードバック制御において、熱的に安定な自己点火領域から不安定な自己点火領域に、核融合出力の設定値のわずかな変更と制御係数を変化させるのみで移動することができる。また、本制御方法によって最初の30秒の立ち上げ時期から熱的に不安定な自己点火領域まで行くことも可能であることが分かる。結局、核融合出力の偏差を用いた本燃料供給PIDフィードバック制御法を用いれば、今までは不安定と考えられていた自己点火領域でも安定に運転して制御できることが分かる。
【0183】
なお、図7から図17では、プラズマ密度限界値がプラズマ運転密度よりも常に大きくなるように設定し、プラズマ密度限界マージンを1より大きくしている。本不安定制御法そのものは、外部加熱パワーのプレプログラムを行う限り、外部加熱パワーには無関係で、またプラズマ密度限界値がプラズマ運転密度よりも高くありさえすればよい。
【0184】
また、図7から図16では、核融合出力の立ち上げ時間を120秒に設定しているが、これより長い時間でも短い時間でも不安定制御は可能であり、前記した秒数に限定されるものではない。その核融合出力の立ち上げ時間の短い例が図17になっている。
さらに、プラズマ密度限界マージンを1.1に近づける設定の開始から終了までの設定をプレ制御からPIDフィードバック制御フェーズにまたがるように行った場合の時間設定についても、外部加熱パワーのプレプログラムの時間設定についても、前記した秒数に限定されるものではない。
【0185】
なお、本発明の熱的に不安定な領域における制御のフェーズでは、密度限界マージンによる加熱パワーのフィードバック制御は困難な制御方法なので(図4B、図4C)、密度限界マージンを1以上になるようにあらかじめプレプログラムによって設定しておく必要がある。
【0186】
図17に示した運転法においても、密度PIDフィードバック制御フェーズで密度の設定値を調整することによって、加熱パワーの最小点であるPOPCONの鞍点付近を通り、熱的不安定点に到達する運転も可能であり、前記の運転法のみに限定されるものではない。
【0187】
図5B、Cで示す運転のような熱的不安定領域に早い段階で移行する運転では、時間に応じて制御を行っている。それは基本的にはプラズマのパラメータの変化、そのときの条件を見て順次制御を行っているので、前記の時間を中心にした運転法のみに限定されるものではない。
なお、すでに説明した第1実施形態において制御係数cの値を正から負の値に切り替えるタイミングは、核融合出力の設定値を核融合出力の値よりも一旦小さくするときと同時か、あるいは、一旦小さく設定した以降であればよい。つまり、制御係数cの値を正から負の値に切り替えるタイミングは、核融合出力の値が一旦小さくした核融合出力の設定値を超えた時、あるいはそれ以降であれば構わない。それによって燃料供給がおこり、急激にプラズマ密度が上昇し、熱的不安定領域に近づく。その後に核融合出力の定常設定値を元に戻せばよい。
また、以上説明したすべての実施形態では、シミュレーションにより制御装置および制御方法を示したが、このシミュレーションにより自己点火領域に到達できたことが、実際のDTヘリカル型核融合炉10を制御できたと同等であるといえる。
【図面の簡単な説明】
【0188】
【図1】本発明に係るDTヘリカル型核融合炉の2つの運転領域(1.高温・低密度、2.低温・高密度)を示すPOPCON図である。
【図2】(a)は、本発明に係るDTヘリカル型核融合炉の一部を切り欠いて全体を模式的に示す斜視図である。(b)は、本発明に係るヘリカル型核融合炉のダイバータ部の図である。
【図3】本発明に係るヘリカル型核融合炉の断面状態を模式的に示す断面図である。
【図4A】本発明に係るヘリカル型核融合炉の運転制御システムブロック図であり、ヘリカル型核融合炉のシミュレーションのプラズマ密度限界マージンの設定をプレ制御から熱的安定用PIDフィードバック制御の後に,熱的不安定用PIDフィードバック制御を行う運転を行う場合に用いる制御ダイヤグラムである。
【図4B】本発明に係るヘリカル型核融合炉のシミュレーションにおいて,プレ制御からすぐに熱的不安定用PIDフィードバック制御を行う運転を行う場合に用いる制御ダイヤグラムである。
【図4C】本発明に係るヘリカル型核融合炉のシミュレーションにおいて,プレ制御から、密度PIDフィードバック制御を行い、すぐに熱的不安定用PIDフィードバック制御を行う運転を行う場合に用いる制御ダイヤグラムである。
【図5A】本発明に係るヘリカル型核融合炉のシミュレーションのプラズマ密度限界マージンの設定をプレ制御から熱的安定用PIDフィードバック制御の後に、熱的不安定用PIDフィードバック制御を行う運転法を示すグラフ図である
【図5B】本発明に係るヘリカル型核融合炉のシミュレーションにおいて、プレ制御からすぐに熱的不安定用PIDフィードバック制御を行う運転法を示すグラフ図である。
【図5C】本発明に係るヘリカル型核融合炉のシミュレーションにおいて,プレ制御から、密度PIDフィードバック制御を行い、すぐに熱的不安定用PIDフィードバック制御を行う運転法を示すグラフ図である。
【図6A】本発明に係るヘリカル型核融合炉の運転法をシミュレーションする計算の手順を示すフローチャートであり、図4Aおよび図5(a)にそれぞれ対応している。
【図6B】本発明に係るヘリカル型核融合炉の運転法をシミュレーションする計算の手順を示すフローチャートであり、図4Bおよび図5(b)にそれぞれ対応している。
【図6C】本発明に係るヘリカル型核融合炉の運転法をシミュレーションする計算の手順を示すフローチャートであり、図4Cおよび図5(c)にそれぞれ対応している。
【図7】(a)、(b)、(c)、(d)は、図6Aで示すフローチャートに基づいて得られた各値に基づいて示したグラフであり、図5(a)の運転法を用いて、プラズマ密度限界マージンを設定し、核融合出力立上げ時間を120秒(核融合出力立上げ時間幅は90秒)に設定し,130秒で熱的不安定用PIDフィードバック制御を行う場合のシミュレーション結果を示す各グラフ図である。ただしプレプログラム制御フェーズでの外部加熱パワーは最大40MWである。
【図8】図7で示した運転軌跡をPOPCON上に描いたグラフ図である。
【図9】(a)は、本発明である熱的不安定用燃料PIDフィードバック制御法による不安定自己点火領域における安定化のメカニズムを説明する図である。(b)は、熱的安定自己点火領域での燃料PIDフィードバック制御による核融合出力の制御のメカニズムを説明する図である。
【図10】(a)、(b)、(c)、(d)は、図6(b)で示すフローチャートに基づいて得られた各値に基づいて示したグラフであり、図5(b)の運転法を用いて、プレ制御からすぐに熱的不安定用PIDフィードバック制御(開始時間30秒)を行う場合のシミュレーション結果を示す各グラフ図である。ただしプレプログラム制御フェーズでの外部加熱パワーは最大50MWである。
【図11】図10で示した運転軌跡をPOPCON図上に描いたグラフ図である。
【図12】(a)、(b)、(c)、(d)は、図6(b)で示すフローチャートに基づいて得られた各値に基づいて示したグラフであり、図5(b)の運転法を用いて、プレ制御からすぐに熱的不安定用PIDフィードバック制御(開始時間30秒)を行う場合のシミュレーション結果を示す各グラフ図である。ただし重水素粒子閉じ込め時間のエネルギー閉じ込め時間に対する比(τp*/τE)を15の大きい値にとった場合の図である。
【図13】(a)、(b)、(c)、(d)は、図6(b)で示すフローチャートに基づいて得られた各値に基づいて示したグラフであり、図5(b)の運転法を用いて、プレ制御からすぐに熱的不安定PIDフィードバック制御(開始時間30秒)を行う場合のシミュレーション結果を示す各グラフ図である。ただし重水素粒子閉じこめ時間のエネルギー閉じ込め時間に対する比(τp*/τE)は3のまま,ヘリウム灰の粒子閉じ込め時間のエネルギー閉じ込め時間に対する比(τα*/τE)を5の大きい値にとった場合の図である。
【図14】(a)、(b)、(c)、(d)は、図6(b)で示すフローチャートに基づいて得られた各値に基づいて示したグラフであり、図5(b)の運転法を用いて、プレ制御からすぐに熱的不安定PIDフィードバック制御(開始時間30秒)を行う場合のシミュレーション結果を示す各グラフ図である。ただし重水素粒子閉じ込め時間のエネルギー閉じ込め時間に対する比(τp*/τE)は3,ヘリウム灰の粒子閉じ込め時間のエネルギー閉じ込め時間に対する比(τα*/τE)は3,130秒時に閉じ込め増倍度(γISS95)を1.92から1.8に減少させた場合の擾乱に対する本不安定制御法のロバスト性を調べた図である。
【図15】(a)、(b)、(c)、(d)は、図6(b)で示すフローチャートに基づいて得られた各値に基づいて示したグラフであり、図5(b)の運転法を用いて、プレ制御からすぐに熱的不安定用PIDフィードバック制御(開始時間30秒)を行う場合のシミュレーション結果を示す各グラフ図である。ただし重水素粒子閉じ込め時間のエネルギー閉じ込め時間に対する比(τp*/τE)を3,ヘリウム灰の粒子閉じ込め時間のエネルギー閉じ込め時間に対する比(τα*/τE)は3,130秒時に閉じ込め増倍度を1.92から2.2に増大させた場合の擾乱に対する本不安定制御法のロバスト性を調べた図である。
【図16】(a)、(b)、(c)、(d)は、図6(b)で示すフローチャートに基づいて得られた各値に基づいて示したグラフであり、図5(b)の運転法を用いて、プレ制御からすぐに熱的不安定PIDフィードバック制御(開始時間30秒)を行う場合のシミュレーション結果を示す各グラフ図である。ただし重水素粒子閉じ込め時間のエネルギー閉じ込め時間に対する比(τp*/τE)は3,ヘリウム灰の粒子閉じ込め時間のエネルギー閉じ込め時間に対する比(τα*/τE)は3,130秒時に酸素不純物を入射し、その密度に対する比をfo=0.75%から1%に増大させた場合の擾乱に対する本不安定制御法のロバスト性を調べた図である。
【図17】(a)、(b)、(c)、(d)は、図6(c)で示すフローチャートに基づいて得られた各値に基づいて示したグラフであり、図5(c)の運転法を用いて、プレ制御から、密度PIDフィードバック制御後、すぐに熱的不安定PIDフィードバック制御(開始時間12.8秒)を行う場合のシミュレーション結果を示す各グラフ図である。ただし密度分布は箱形、温度分布は広い放物分布である。
【図18】箱形形状をした密度分布(箱形密度分布)と広い放物状の温度分布図である。
【図19】図17で示した運転軌跡をPOPCON上に描いたグラフ図である。
【図20】シミュレーションにおいて放物分布(密度分布係数1、温度分布係数1)と、箱形密度分布の場合の熱的不安定領域での定常値としたときのプラズマパラメータの熱的安定領域と不安定領域での定常状態の値を示す一覧表図である。
【符号の説明】
【0189】
1 炉心プラズマ
2 ブランケット
3 超伝導ヘリカルコイル
4 プラズマ真空容器
5 断熱真空容器
6 超伝導ポロイダルコイル
7 電磁力支持構造
8 外部加熱装置(外部加熱パワー発生装置)
9 DT燃料供給装置(DT燃料
10 ヘリカル型核融合炉(DT磁気閉じ込め型核融合発電装置)
20 制御装置
30 表示モニタ(表示装置)
【技術分野】
【0001】
本発明は、DTヘリカル型核融合発電装置、DTトカマク型核融合発電装置等の磁気閉じ込め型であるDT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御方法およびその制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気閉じ込めを利用した重水素とトリチウムを用いるD−T(D:重水素、T:トリチウム、以下、DTと示す)磁気閉じ込め型核融合発電装置には大別して、トカマク型核融合炉とヘリカル型核融合炉がある。
【0003】
これらの装置はいずれも図1に示されたような、通常は熱的に安定である高温・低密度の自己点火領域において運転することを想定している。しかしながら、以下のようにヘリカル装置で低温・高密度領域が実験的に達成された結果、通常は図1に示されたような、熱的に不安定である低温・高密度の自己点火領域における運転制御法の必要性が認識されるに至った。
【0004】
ここで高温・低密度の自己点火領域とは、図1の自己点火領域の「底」より右側にある実線で示した高温側の境界線のことであり、運転点がその境界線上にある場合、それは熱的に安定である。すなわち、プラズマのパラメータが変動しても常にその境界線上に戻ってくる。一方、低温・高密度の自己点火領域とは、図1の自己点火領域の「底」より左側にある点線で示した低温側の境界線のことであり、運転点がその境界線上にある場合、それは熱的に不安定である。したがって、プラズマのパラメータが変動するとその境界線上から離れていき、もはや自己点火運転は不可能となる。ここで自己点火運転とは外部から加熱パワーを入れなくても、燃料さえ注入すれば自分自身で核融合反応が持続することをいう。
【0005】
低温・高密度領域が実験的に観測された第1の例は、ドイツのマックスプランク研究所のベンデルシュタインステラレータ装置のプラズマ閉じ込め実験においてであり、2002年に温度400eV、線平均密度4x1020m−3程度の低温・高密度領域が実験的に得られた(例えば、非特許文献1参照)。
【0006】
第2の例には、日本の核融合科学研究所のLHD実験装置において、2006年に850eV、4.5x1020m−3の低温・高密度領域が実験的に達成された。(例えば、非特許文献2参照)。さらに10x1020m−3の高密度もすでに実現されている。このような高密度はトカマクにおいては達成されたことがなく、ヘリカル装置特有の現象であり、その利点を活かせる低温・高密度の自己点火領域の運転制御法の確立が緊急の課題となってきた。
【0007】
低温・高密度領域の自己点火運転の有利な点を以下に述べる。(図20も参照)
(1)高密度で運転するために、同じ核融合出力に対して閉じ込め時間が長く、また制動輻射損失パワーも大きく、プラズマ外周から漏れ出すエネルギーが小さくなる結果、ダイバータ熱流束が減少し、ダイバータ板の損傷を軽減できる。
(2)密度が高いために、閉じ込め時間が長いので、必要な閉じ込め増倍を低減させることができ、DTヘリカル炉に対する無理なパラメータを要求する必要がなくなる。
(3)低温度で運転するために、イオン温度が高くなると閉じ込めが劣化するとされている新古典論による悪影響を心配する必要が減る。
(4)低温度で運転するために、DT燃料を供給するアイスペレットの入射が高温度で運転する場合に比べてより容易である。
しかしながら、プラズマベータ値がわずかに増大することは欠点である。
【0008】
一方,トカマクを用いたDT型核融合炉には多くの設計例があるが,中でも現在世界各国の共同研究によって建設されつつあるITERトカマク型DT核融合実験炉が有名である(例えば、非特許文献3参照)。現在トカマク装置においては低温・高密度運転の実験データはないが今後の実験の進展に伴い、そのような運転領域の出現の可能性は十分に考えられる。特に、高温・低密度運転を行うトカマク型DT核融合装置ではダイバータ板への熱流束が大きく、それを低減するためにプラズマに不純物を注入するなどして輻射損失を増やすことが考えられている。しかし、そのような条件が実際の炉において実現できるかどうかは不明である。将来トカマクにおいても低温・高密度運転が可能になれば同じ核融合出力に対して閉じ込め時間が長く、また制動輻射損失パワーも大きく、プラズマ外周から漏れ出すエネルギーが小さくなる結果、ダイバータ熱流束が減少し、ダイバータ板の損傷を軽減できる。このようにトカマクにおいても低温・高密度運転は長所の一つとなる。
【0009】
【非特許文献1】K.McCormic、et al、New Advanced Operational Regime on the W7−AS Stellarator、Physical Review Letters 89(2002)015001−1。
【非特許文献2】N.Ohyabu、T.Morisaki、et al、Observation of Stable Superdense Core Plasmas in the Large Helical Device、Physical Review Letters 97(2006)055002−1。
【非特許文献3】ITER Physics Basis Editors et al.、ITER Physics Basis、Nuclear Fusion、 Vol.39 (1999)p2137。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、従来提案されているトカマク型核融合炉、ヘリカル型核融合炉における熱的に不安定である低温・高密度領域における運転方法には、以下のような解決すべき多くの問題があった。
【0011】
(1)従来提案されている熱的に不安定である低温・高密度領域における運転方法はトカマク核融合装置においては研究されていたが、ヘリカル型核融合炉の場合にはその運転方法は全く研究されたことがなかった。
(2)従来提案されている熱的に不安定である低温・高密度領域における運転方法は、0次元粒子バランス方程式、0次元パワーバランス方程式を平衡点のまわりで線形化し、それを基にその周辺でPIDフィードバック制御以外の方法で制御しようとするものであった。
(3)従来提案されている熱的に不安定である低温・高密度領域における運転方法は、定常的な運転点に達した後にどのように制御すればよいかというもので、その定常運転点にどのようにしてたどり着くかという研究はなされていなかった。
(4)従来提案されている熱的に不安定である低温・高密度領域における運転方法は、複雑な0次元粒子バランス方程式、0次元パワーバランス方程式を平衡点のまわりで線形化しなければならないので煩雑であり、それが実際の核融合炉において使用可能かどうかは不明であった。
【0012】
つまり、ヘリカル型核融合炉における熱的に不安定である低温・高密度領域における運転方法では具体的方法について何ら示されておらず、その意味では実現性が程遠いものであった。またトカマク型核融合炉においても定常運転点にどのようにしてたどり着くかという具体的方法について何ら示されておらず、その意味では実現性が程遠いものであった。
【0013】
本発明は、前記した問題点に鑑み創案されたものであり、DT磁気閉じ込め(へリカル、トカマク)型核融合発電装置において、熱的に不安定である低温・高密度領域における自己点火運転点に到達すると共に、同時にその不安定点において定常状態を維持することができるDT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御方法およびその制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記した課題を解決するため、本発明は、核融合科学研究所のLHD実験装置において得られた最近の実験データを基に、今までの共同研究をさらに発展させた結果考え出されたものであり、核融合プラズマパラメータの時間発展を表す0次元粒子バランス方程式、パワーバランス方程式を平衡点周りに線形化するという従来の思想を改めて、全く線形化することなく、また今までに使用してきたPIDフィードバック制御の係数を正から負の値に設定することのみで、閉じ込め時間には実験によって得られている経験則を用いて、計算機モデルを用いて解析することで、DT磁気閉じ込め(へリカル、トカマク)型核融合発電装置の熱的に不安定である低温・高密度の領域における自己点火運転を安定に制御する制御方法および制御装置を見出した。
【0015】
すなわち、本発明は前記した課題を解決するため、以下のようにDTヘリカル型核融合発電装置の制御方法を考え、以下の手順とした。
請求項1に記載の発明は、外部加熱パワーおよびDT燃料をプレ制御して供給し、かつ、核融合炉の核融合出力の偏差をeDTとし、核融合出力の設定値をPfoとし、実際の核融合出力の値をPfとし、制御係数をcとして、eDT=c(1−Pf/Pfo)の演算で算出される値を用いて前記DT燃料の供給をPIDフィードバック制御するDT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御方法において、前記プレ制御の後における予め設定された設定時間から、核融合出力の設定値を予め設定した値より一旦小さく再設定しておくと共に、その後、当該設定値を元の値に戻し、かつ、前記再設定時に前記制御係数cの値を正から負の値に変換することによって、急激に密度を上昇させ、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達させ、その状態を維持するように前記PIDフィードバック制御を行うこととした。
【0016】
このようなDTヘリカル型核融合発電装置の制御方法によれば、はじめに外部加熱パワーを加えて所定の核融合出力の値が出力された後に行うDT燃料供給のPIDフィードバック制御において、DT燃料の燃料供給率を演算する場合に算出する核融合出力の偏差における制御係数を正(+1)から負(−1)の値に変換した状態として制御している。すなわち、制御係数を正から負の値にしてDT燃料供給のPIDフィードバック制御を行うと、核融合出力の値が核融合出力の設定値を超えたときにDT燃料が供給され、その結果プラズマ温度が下がりプラズマ密度は上昇することになる。そうなると、自己点火領域の外側にはみ出してしまう結果、今度は核融合出力の値が核融合出力の設定値を下回り、DT燃料の供給が減少するかストップし、その結果、プラズマ温度が上がり、プラズマ密度が減少する方向に運転点が移動し、自己点火領域の中に入る。プラズマ温度が上がりプラズマ密度が下がり、かつ自己点火領域の中に入ると再び核融合出力の値が核融合出力の設定値を超え、DT燃料が供給され、プラズマ温度が下がりプラズマ密度が上昇する方向に運転点は移動する。このように、図1に示すように、横軸にプラズマ温度を取り、縦軸にプラズマ密度を取って示す運転点を表すと(図8、図9(a)、図11参照)、その運転点がイグニッション境界線(図9(a)参照)近傍で左回り旋回を繰り返しながら、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達する。
【0017】
また、請求項2に記載の発明として、DT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御方法は、外部加熱パワーを外部加熱プレ制御を行うと共に、DT燃料を燃料プレ制御を行う第1ステップと、外部加熱パワーを所定の時間で0とするようにフィードバック制御を行うと共に、前記DT燃料をPIDフィードバック制御する第2ステップと、を含み、前記第2ステップにおいて、熱的に安定な高温・低密度の自己点火領域に到達した後に、核融合出力の設定値を予め設定した値より一旦小さく再設定しておくと共に、その後、当該設定値を元の値に戻し、かつ、前記核融合出力の偏差をeDTとし、核融合出力の設定値をPfoとし、実際の核融合出力をPfとして算出するeDT=c(1−Pf/Pfo)において、前記再設定時に前記制御係数cの値を、正から負の値に変換することによって、急激に密度を上昇させ、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達させ、その状態を維持するように前記PIDフィードバック制御を行うこととした。
【0018】
このような手順により、当該制御方法では、第1ステップにおいて、外部加熱パワーを外部加熱プレ制御して設定された値の外部加熱パワーを供給すると共に、DT燃料供給を燃料プレ制御により、予め設定した値においてDT燃料を供給し、所定の核融合出力を第1設定時間内に得るようにしている。そして、当該制御方法では、第1設定時間において核融合出力が所定の値に達したら、第2ステップとして外部加熱パワーをフィードバック制御により、所定時間内に0となるようにして、かつ、DT燃料をPIDフィードバック制御により、核融合出力を熱的に安定な高温・低密度の自己点火領域に到達するまで制御する。なお、第1ステップでは、プラズマ運転密度よりもプラズマ密度限界値が大きくなるように設定し、かつそれらが次第に接近するように設定した後に、フィードバック制御を行い、このフィードバック制御を行う場合には、第1ステップにおいて出力されるプラズマ密度限界マージンの値が、予め設定した値(例えば、1.1)以上になるようにしている。そして、当該装置の制御方法では、核融合出力の値が熱的に安定な高温・低密度の自己点火領域に到達した後に、核融合出力の設定値を予め設定した値より一旦小さく再設定しておくと共に、その後、当該設定値を元の値に戻し、かつ、出力核融合出力の設定値と核融合出力の値との偏差を用いて演算するときに制御係数cを正(+1)から負(−1)の値にしている。そのため、当該装置の制御方法では、急激に密度が上昇し、熱的に安定な高温・低密度の自己点火領域から、運転点が一定核融合出力線を移動し、縦軸をプラズマ密度、横軸がプラズマ温度としてPOPCON図上で示すと、イグニッション境界線近傍を設定核融合出力線における運転点に向かって左旋回して、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達し、その点を維持した状態とする安定な運転ができる。
【0019】
さらに、請求項3に記載の発明として、DT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御方法は、第1ステップが前記した制御と同じ内容で行い、第2ステップを行う場合に、外部加熱パワーのプレ制御が、前記外部加熱パワーを炉心プラズマに加える値を予め設定された時間で0とするように段階的に減少させている。そして、第2ステップにおいて、プレ制御時における核融合出力の設定値を、核融合出力の値が越えたときに、前記核融合出力の偏差で演算に使用する制御係数に負の値を用いることによって、急激に密度を上昇させ、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達させ、その状態を維持するような制御を行わせる。
【0020】
このような手順により、DT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御方法は、熱的に安定な高温・低密度の自己点火領域に到達することなく、設定核融合出力線上における熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達するように、運転点は、縦軸をプラズマ密度、横軸がプラズマ温度としてPOPCON図上で示す軌跡において、イグニッション境界線近傍を左旋回するように制御される。つまり、本制御方法では、運転点が設定核融合出力線の上下のどちらにあるかよって燃料供給が決まることと、運転点は熱的不安定イグニッション境界線から離れるように動く、この2つの組み合わせによって、熱的不安定イグニッション境界線上の不安定平衡点の回りを左回りに、かつ旋回半径が次第に小さくなる様な回転を発生させるので、0次元粒子バランス方程式、あるいは、0次元パワーバランス方程式を不安定平衡点周りで線形化しなければできなかったような複雑な制御手法をとる必要がない。
【0021】
また、請求項4に記載の発明として、DT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御方法は、運転時に使用されるプラズマ密度分布を箱形分布とし、プラズマ密度分布およびプラズマ温度分布を固定して演算するパワーバランス方程式で前記プラズマ密度分布が箱型分布で使用される係数を予め算出して求め、かつ、前記外部加熱パワーおよびDT燃料を加えて核融合炉の核融合出力を行うこととしてもよい。そして、当該制御方法は、外部加熱パワーをプレ制御すると共に、DT燃料をプレ制御する第1ステップと、前記外部加熱パワーのプレ制御を引き続き行い、かつ、前記DT燃料供給装置から供給されるDT燃料による炉心プラズマのプラズマ密度の偏差を用いてPIDフィードバック制御する第2ステップと、前記第2ステップを行う設定時間が経過した後に、前記外部加熱パワーを設定された時間で0とするように段階的に減少させ、かつ、DT燃料の供給を核融合出力の偏差を用いてPIDフィードバック制御する第3ステップとを行っている。さらに、当該制御方法は、前記第3ステップにおいて、プラズマ密度のPIDフィードバック制御時における核融合出力の設定値を、核融合出力の値が越えたときに、前記核融合出力の偏差をeDTとし、核融合出力の設定値をPfoとし、実際の核融合出力をPfとして算出するeDT=c(1−Pf/Pfo)において、負の値の前記制御係数cを用いることによって、急激に密度を上昇させ、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達させ、その状態を維持するように前記PIDフィードバック制御を行っている。
【0022】
このような手順により、DT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御方法は、第1ステップにおいて、設定された時間まで一定の値で、外部加熱パワーをプレ制御し、かつ、DT燃料をプレ制御する。そして、当該制御方法は、第2ステップにおいて、外部加熱パワーを段階的に供給し、かつ、DT燃料供給装置から供給されるDT燃料によるプラズマ密度をPIDフィードバック制御してプラズマ密度を所定値以上に上げた状態とする。これは、核融合出力が十分に大きくなるまで外部加熱パワーがプラズマの加熱を助けてやる必要があるからである。そして、第3ステップにおいて、外部加熱パワーを段階的に0に近づけるように減少させると共に、DT燃料供給を核融合出力の偏差に基づいてPIDフィードバック制御する。このPIDフィードバック制御するときに、プラズマ密度のPIDフィードバック制御時における核融合出力の設定値を核融合出力の値が越えること、かつ、核融合出力の偏差を演算するときの制御係数に負の値を用いることによって、プラズマ密度の急上昇を引き起こさせ、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達させ、その状態を維持するような安定な運転とする。なお、運転時に使用されるプラズマ密度分布を箱形分布で与える場合、プラズマ伝導損失パワーは、プラズマ密度分布を放物分布で与える場合に比較して、大幅に減少する。
【0023】
また、本発明は前記した課題を解決するため、以下のようにDTヘリカル型核融合発電装置の制御装置を考え、以下の構成とした。
すなわち、請求項5に記載の発明は、外部加熱パワー発生装置およびDT燃料供給装置に対して予め設定されたプレ制御およびPIDフィードバック制御を行い熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域に到達させるDT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御装置において、前記DT燃料供給装置からのDT燃料のPIDフィードバック制御において、核融合出力の設定値を予め設定した値より一旦小さく再設定しておくと共に、その後、当該設定値を元の値に戻し、かつ、核融合出力の偏差をeDTとし、核融合出力の設定値をPfoとし、実際の核融合出力をPfとして算出するeDT=c(1−Pf/Pfo)において、前記再設定時に前記制御係数cを正から負の値に変換することによって、プラズマ密度の急上昇を引き起こさせ、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達させ、その状態を維持するように前記PIDフィードバック制御を行う構成とした。
【0024】
このように構成することにより、DT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御装置は、DT燃料の燃料供給率を演算する場合に、核融合出力の偏差における制御係数を正(+1)から負(−1)の値に変換した状態として制御している。すなわち、制御係数を正から負の値にしてDT燃料供給のPIDフィードバック制御を行うと、核融合出力の値が核融合出力の設定値を超えたときにDT燃料が供給され、その結果プラズマ温度が下がりプラズマ密度は上昇することになる。そうなると、自己点火領域の外側にはみ出してしまう結果、今度は核融合出力の値が核融合出力の設定値を下回り、DT燃料の供給が減少するかストップし、その結果、プラズマ温度が上がり、プラズマ密度が減少する方向に運転点が移動し、自己点火領域の中に入る。プラズマ温度が上がりプラズマ密度が下がり、かつ自己点火領域の中に入ると再び核融合出力の値が核融合出力の設定値を超え、DT燃料が供給され、プラズマ温度が下がりプラズマ密度が上昇する方向に運転点は移動する。このように、当該制御装置では、図1に示すように、横軸にプラズマ温度を取り、縦軸にプラズマ密度を取って示す運転点を表すと(図8、図9(a)、図11参照)、その運転点を左回り旋回を繰り返しながら、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達させることができる。
【0025】
さらに、請求項6に記載の発明は、外部加熱パワーおよびDT燃料を加えて核融合炉の核融合出力を行うDT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御装置において、入力手段と、外部加熱パワープレ制御手段と、DT燃料プレ制御手段と、外部加熱パワーフィードバック制御手段と、DT燃料PIDフィードバック制御手段と、を備え、前記DT燃料PIDフィードバック制御手段は、熱的に安定な高温・低密度の自己点火領域に到達した後に、核融合出力の設定値を予め設定した値より一旦小さく再設定しておくと共に、その後、当該設定値を元の値に戻し、かつ、前記核融合出力の偏差をeDTとし、核融合出力の設定値をPfoとし、実際の核融合出力をPfとして算出するeDT=c(1−Pf/Pfo)において、再設定時に前記制御係数cの値を、正から負の値に変換することによって、急激に密度を上昇させ、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達させ、その状態を維持するように前記PIDフィードバック制御を行う構成とした。
【0026】
このように構成したことにより、DT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御装置は、キーボード等の入力装置を介して入力手段により核融合炉の核融合出力に用いられメモリ等の記憶手段に記憶されている数式の変数を入力する。そして、外部加熱パワーのプレ制御、フィードバック制御、および、DT燃料のプレ制御、PIDフィードバック制御を切り替えて行う設定時間を、入力手段から入力して記憶手段に記憶しておく。つぎに、当該制御装置は、運転がスタートすると、はじめに、外部加熱パワープレ制御手段により、入力されて予め設定された外部加熱パワーを炉心プラズマに供給すると共に、DT燃料プレ制御手段により、入力されて予め設定されたDT燃料を供給する。このとき、設定された時間内で、外部加熱パワーのプレ制御およびDT燃料のプレ制御が行われるように設定されている。さらに、当該制御装置は、設定された時間の経過より、核融合炉の核融合出力を設定値にして、外部加熱パワー発生装置からの外部加熱パワーを所定の時間で0となるようにフィードバック制御すると共に、DT燃料供給装置からのDT燃料を核融合炉から検出された核融合出力の値と核融合出力の設定値との偏差に基づいてPIDフィードバック制御する。
【0027】
そして、当該制御装置は、PIDフィードバック制御により運転点が熱的に安定な高温・低密度の自己点火領域に達すると、設定された時間により、DT燃料PIDフィードバック制御手段が、核融合出力の設定値を予め設定した値より一旦小さく再設定しておくと共に、かつ、前記核融合出力の偏差をeDTとし、核融合出力の設定値をPfoとし、実際の核融合出力をPfとして算出するeDT=c(1−Pf/Pfo)において、前記再設定時に前記制御係数cの値を正から負の値に変換することによって、DT燃料の供給を行わせ、急激に密度を上昇させ、その後再度、核融合出力の設定値を戻し、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達させ、その点を維持した状態とする。ここで制御係数の値が負として核融合出力の偏差が演算されることと、核融合出力の設定値よりも核融合出力が大きいことの2つにより、DT燃料の供給が行われ、急激に密度を上昇させるので、運転点が一定核融合出力線に沿って熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域に移動する。この移動する際の運転点は、横軸を温度、縦軸を密度とするPOPCON図で示されるグラフにおいて、イグニッション境界線近傍で左旋回するように移動して、設定核融合出力線上で、かつ、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達して、維持された状態となる。
【0028】
また、請求項7に記載の発明として、DT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御装置は、入力手段と、外部加熱パワープレ制御手段と、DT燃料プレ制御手段と、DT燃料PIDフィードバック制御手段と、を備え、DT燃料PIDフィードバック制御手段がDT燃料の供給をPIDフィードバックする際に、前記プレ制御時における核融合出力の設定値を核融合出力の値が越えたときに、前記核融合出力の偏差をeDTとし、核融合出力の設定値をPfoとし、実際の核融合出力をPfとして算出するeDT=c(1−Pf/Pfo)において、負の値の前記制御係数cを用いることによって、急激に密度を上昇させ、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達させ、その状態を維持するようにPIDフィードバック制御する構成とした。
【0029】
このように構成したことにより、DT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御装置は、外部加熱パワーのプレ制御およびDT燃料のプレ制御を予め設定された設定時間内で行い、かつ、DT燃料についてPIDフィードバック制御するときに、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域に運転点が直接向かうようにしている。つまり、当該制御装置は、DT燃料PIDフィードバック制御手段が、前記プレ制御時における核融合出力の設定値を核融合出力の値が越えたときに、前記核融合出力の偏差をeDTとし、核融合出力の設定値をPfoとし、実際の核融合出力をPfとして算出するeDT=c(1−Pf/Pfo)において、負の値の前記制御係数cを用いることによって、急激に密度を上昇させると、運転点は熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に向かって移動する。この移動する際の運転点は、横軸を温度、縦軸を密度とするPOPCON図で示されるグラフにおいて、イグニッション境界の近傍で、左旋回するように移動して、設定核融合出力線上の熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達して、そこで維持される状態となる。
【0030】
さらに、請求項8に記載の発明として、DT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御装置は、入力手段と、外部加熱パワープレ制御手段と、DT燃料プレ制御手段と、DT燃料密度PIDフィードバック制御手段と、DT燃料PIDフィードバック制御手段と、を備え、前記DT燃料PIDフィードバック制御手段は、プラズマ密度のPIDフィードバック制御時における核融合出力の設定値を核融合出力の値が超えたときに、前記核融合出力の偏差をeDTとし、核融合出力の設定値をPfoとし、実際の核融合出力をPfとして算出するeDT=c(1−Pf/Pfo)において、負の値の前記制御係数cを用いることによって、急激に密度を上昇させ、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達させ、その状態を維持するように前記PIDフィードバック制御を行う構成とした。
【0031】
このように構成したことにより、DT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御装置は、入力手段により入力された変数により核融合出力で用いる数式を演算し、かつ、設定時間で、外部加熱パワープレ制御手段により外部加熱パワーのプレ制御を行うと共に、DT燃料プレ制御手段によりDT燃料のプレ制御を行う。そして、当該制御装置は、設定時間により、外部加熱パワープレ制御手段により外部加熱パワーを0とするように制御すると共に、DT燃料密度PIDフィードバック制御手段により設定されたプラズマ密度設定値と炉心プラズマから検出されたプラズマ運転密度の値との偏差に基づいて、前記DT燃料供給装置から供給されるDT燃料によるプラズマ密度をPIDフィードバック制御する。さらに、当該制御装置は、設定時間で、DT燃料PIDフィードバック制御手段によりDT燃料の供給をPIDフィードバック制御する。
【0032】
そして、当該制御装置は、DT燃料の供給をPIDフィードバック制御する際に、プラズマ密度のPIDフィードバック制御時における核融合出力の設定値を核融合出力の値が超えたときに、前記核融合出力の偏差をeDTとし、核融合出力の設定値をPfoとし、実際の核融合出力をPfとして算出するeDT=c(1−Pf/Pfo)において、負の値の前記制御係数cを用いることによって、急激に密度を上昇させると、運転点は熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に向かって移動する。この移動する際の運転点は、横軸を温度、縦軸を密度とするPOPCON図で示されるグラフにおいて、イグニッション境界線の近傍で、左旋回するように移動して、設定核融合出力線上の熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達して、維持される状態となる。
【0033】
また、請求項9に記載の発明として、DT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御装置は、核融合出力おいて検出される各値と、前記外部加熱パワー発生装置から加えられる外部加熱パワーの値と、DT燃料供給装置から供給されるDT燃料の供給量と、を表示装置に出力する出力手段を備える
構成とした。
このように構成したことにより、DT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御装置は、出力される各値からDT磁気閉じ込め型核融合発電装置の運転に必要なグラフや一覧表を表示させることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係るDT磁気閉じ込め(へリカル、トカマク)型核融合発電装置の制御装置およびその制御方法は、以下に示す優れた効果を示すものである。
請求項1および請求項5に記載の発明によれば、核融合出力の偏差を算出するときの制御係数を正から負の値に置き換えてPIDフィードバック制御するため、低温・高密度領域で運転できるので、輻射パワー損失を増やすことができ、その結果ダイバータ熱流束を低減できるので、ダイバータ板の損耗を減らすことができ、その寿命を延ばすことによって運転維持費を安価にすることができる。
【0035】
また、粒子バランス,エネルギーバランス方程式を線形化する必要も、それらの方程式に頼る必要もなく、発生した中性子を計測して得られる核融合出力の信号を用いて実際に核融合燃焼プラズマの制御ができるので,以前に提案されていた制御法に比して現実的であり、DT磁気閉じ込め型核融合発電装置の低温・高密度領域の不安定イグニッション領域による発電を可能とするもので、DT磁気閉じ込め型核融合発電装置の現実的な制御を可能とする。
【0036】
本発明によれば、プラズマ密度限界スケーリング則と閉じ込めスケーリング則を用いて行うため、核融合出力立ち上げ時間を自由に外部から設定でき、その結果、炉内部に設置しているブランケットの温度上昇時間を制御して運転することができる。また、自己点火領域の低温側に位置して外部加熱パワーを印加する必要のあるサブイグニッション領域にも、必要ならばすぐに移行できる。
さらに、本発明によれば、PIDフィードバック制御においてもプラズマ内部に起こりうる粒子閉じ込め時間の変化、不純物の一時的増加、エネルギー閉じ込め時間の変化等の擾乱に対してもロバストで安定に当該装置の運転ができる利点を有する。
【0037】
請求項2および請求項6に記載の発明によれば、核融合出力の信号を用いたPIDフィードバック制御によって定常的な運転点まで到達できるので、以前に提案されていた制御法に比して簡素で、現実的であり、DT磁気閉じ込め型核融合発電装置の低温・高密度領域の不安定イグニッション領域による発電を可能とするものである。
【0038】
請求項3および請求項7に記載の発明によれば、熱的に安定な高温・低密度の自己点火領域を経ることなく、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域に到達させることができ、PIDフィードバック制御を行う場合に、複雑な演算をすることがなく、かつ、ダイバータ熱流束を低減できるので、ダイバータ板の損耗を減らすことができる。
【0039】
請求項4および請求項8に記載の発明によれば、運転時に使用されるプラズマ密度分布を箱形分布として使用し、かつ、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域に到達させることができると共に、ダイバータ熱流束を低減できる。そのため、プラズマ密度分布を放物分布として使用するものと比較しても、ダイバータ板の損耗を減らし、その寿命を延ばすことによって運転維持費を安価にすることができる。
【0040】
請求項9に記載の発明によれば、核融合炉から検出される各値、外部加熱パワー発生装置から加えられる外部加熱パワーの値、DT燃料供給装置から供給されるDT燃料の供給量を表示装置に出力して、各値を表示するので、制御中の状態が認識できる。
【0041】
また、本発明によれば、外部加熱プレ制御、プラズマ密度およびDT燃料のPIDフィードバック制御の計算式において、須藤密度限界スケーリング則およびISS95閉じ込め則あるいは、前記須藤密度限界スケーリング則およびISS95閉じ込め則に同等なスケーリング則を用いることで、広い範囲のDTヘリカル型の核融合発電装置に適用することができる。さらに、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域における当該装置の制御が可能なことから、先進ステラレータ型核融合炉、または、超伝導コイルのコイル配置が異なるヘリカル型核融合炉であっても適用でき、かつ、タイプの異なるトカマク核融合炉においても適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、発明を実施するための最良の形態についてDT磁気閉じ込め型核融合発電装置の一例であるDTヘリカル型核融合炉において図面を参照して説明する。
図2(a)は、DTヘリカル型核融合炉の一部を切り欠いて全体を模式的に示す斜視図、図2(b)は、そのダイバータ部を示す断面図、図3は、DTヘリカル型核融合炉の断面状態を模式的に示す断面図、図4AはDTヘリカル型核融合発電装置の制御装置を示すブロック図である。
【0043】
図2(a)および図3に示すように、DTヘリカル型核融合炉10は、中心部の炉心プラズマ1から発生する中性子を熱に変換するために設置されるブランケット2、このブランケット2の外側にらせん状に巻き付くように設置される超伝導ヘリカルコイル3、プラズマ真空容器4の筒形状の内周側および外周側に沿うように4箇所の位置に設置された超伝導ポロイダルコイル6、この超伝導ポロイダルコイル6およびプラズマ真空容器4を支持する電磁力支持構造体7、この電磁力支持構造体7、超伝導ポロイダルコイル6およびプラズマ真空容器4を覆う断熱真空容器5、外部加熱パワーを与える外部加熱装置(外部加熱パワー発生装置)8、DT燃料を供給するガスあるいはペレット入射装置となるDT燃料供給装置9から構成される。
【0044】
ブランケット2は中心部の炉心プラズマ1の周りに設置された部分で、炉心プラズマ1中の核融合反応で発生した中性子をブランケット2に含まれるリチウムと反応させることによって核融合の燃料であるトリチウム(三重水素)を生産すると同時に、中性子の持つ運動エネルギーを熱エネルギーに換えるものである。
【0045】
なお、核融合炉のブランケット2は、核融合炉から出る放射線を遮へいする役割も果たす。このブランケット2内において発生した熱エネルギーが取り出されて発電に利用される。
【0046】
超伝導ヘリカルコイル3は、金属である固体物質をある臨界温度以下に冷やして電気抵抗をなくし、一度電流を流すと電流が流れ続ける超伝導の性質を利用したもので、その固体物質をコイル状に巻いて電磁石として作られたものである。この超伝導ヘリカルコイル3は、電気抵抗による発熱がないので通常の電磁石より高い電流密度を持ち、その結果コイルをコンパクトに作ることができる。
【0047】
DTヘリカル型核融合炉10は、中心部の炉心プラズマ1を取り囲むブランケット2の外側に設置する超伝導ヘリカルコイル3により、真空容器4内にねじれた閉じ込め磁場を作り,そこにプラズマを発生して閉じ込め、さらに全体を断熱真空容器5で覆い外部からの熱進入を防ぐ構造になっている。
【0048】
図2(b)に示すように、真空容器4の内壁面の所定位置には、スリットが形成されたバッフル板14が設けられており、このバッフル板14と真空容器4の内壁面に囲まれて形成したダイバータ室15が真空容器4内の四隅に形成されている。ダイバータ室15内には、ダイバータ板16が設けられている。このダイバータ板16は、グラファイトタイルで角柱形状に形成され内部に冷却管16bを挿通した柱体16aが複数並べられて構成されている。そして、ダイバータ室15内の全部またはいずれかには、粒子排気装置17が設置されている。なお、ダイバータ板16は、プラズマ閉じ込め領域から外に流れ出るプラズマ熱流および粒子流(ダイバータプラズマ)を受けて制御処理するものである
【0049】
また、DTヘリカル型核融合炉10は、超伝導ポロイダルコイル6で垂直磁場を作り、超伝導ヘリカルコイル3からの漏れ磁場を打ち消している。これらの超伝導コイルには大きな電磁力がかかるので、頑丈な電磁力支持構造体7によって支えられる。
なお、外部加熱装置8には、電子サイクロトン加熱装置あるいは中性子粒子ビーム加熱装置を使用することもできる。また、DT燃料供給装置9には、DT燃料を供給するためにガスあるいはペレット入射装置およびそれと同等の装置が用いられる。
【0050】
さらに、DTヘリカル型核融合炉10からの核融合出力等の値を検出して出力するための検出装置として、つぎのようなものが設置されている。
核融合出力の値を検出して出力する中性子出力検出器、制動輻射損失パワーの値を検出して出力するボロメータ、電子サイクロトンの値を検出する電子サイクロトロン検出器、プラズマ密度を検出する密度干渉計、反磁性の値を検出する反磁性ループ等の各検出装置である。
【0051】
これらの検出装置により検出された各値は、制御を行う場合に使用され、かつ、表示手段としての表示モニタ(表示装置)30に出力された場合、グラフ(図7、図10、図12〜図17)あるいは数値一覧表(図20)等として表示されるために使用される。
【0052】
図2(a)に示すように、外部加熱装置8およびDT燃料供給装置9は、制御装置20により制御されている。制御装置20は、図2および図4Aに示すように、入力手段21と、外部加熱パワープレ制御手段23と、フィードバック制御手段(外部加熱パワーフィードバック制御手段)24と、DT燃料プレ制御手段25と、燃料PIDフィードバック制御手段(DT燃料PIDフィードバック制御手段)26と、出力手段29とを備えている。なお、この制御手段20は、ここでは、計時手段22により計時した設定時間で各制御手段23〜26を制御するようにしている。
【0053】
図4Aに示すように、入力手段21は、図示しないキーボード等の入力装置から、図示しないメモリ等の記憶手段に、DTヘリカル型核融合炉10の核融合出力の計算で用いられている各式における変数等を入力するものである。
【0054】
計時手段22は、各制御手段23〜26の制御する設定時間を計時するものである。この計時手段22は、例えば、内蔵されているタイマ等であり、各制御手段23〜26に計時した時間を信号として送っている。
【0055】
外部加熱パワープレ制御手段23は、入力手段21を介して入力された変数から数式(例えば、後記する式10等)により演算された値に基づいて、予め設定した設定値になるように外部加熱装置8が炉心プラズマ1に供給する外部加熱パワーを制御(プレ制御)するものである。この外部加熱パワープレ制御手段23は、ここでは、計時手段22からの計時された時間が予め設定されており、その設定された設定時間に到達するまで、外部加熱パワーを段階的(図7(d)参照)に炉心プラズマ1に加えている。そして、外部加熱パワープレ制御手段23は、予め設定された50MW(図7(d)参照)以下の出力となるプレプロ値に基づいて、外部加熱装置8の外部加熱パワーを制御している。
【0056】
フィードバック制御手段24は、プラズマ密度の値と、プラズマ密度限界値とにより演算される外部加熱パワーの値に基づいて、所定の設定時間で外部加熱装置8からの外部加熱パワーを0にするようにフィードバック制御している。このフィードバック制御手段24は、ここでは、計時手段22で計時された時間が予め設定された設定時間になると、外部加熱パワーのプレ制御から切り替わりフィードバック制御を行うように設定されている。
【0057】
DT燃料プレ制御手段25は、入力手段21を介して入力された変数から数式により演算された値に基づいて、予め設定した設定値となるようにDT燃料供給装置9からのDT燃料の供給量を燃料プレ制御するものである。このDT燃料プレ制御手段25は、ここでは、計時手段22からの計時された時間が予め設定されており、その設定された設定時間に到達するまで、DT燃料を設定された供給量において炉心プラズマ1に供給している。
【0058】
燃料PIDフィードバック制御手段26は、入力手段21を介して入力された変数から数式により演算された核融合出力の設定値と、前記核融合炉の核融合出力の値との偏差に基づいて、予め設定された設定値(目標設定値)となるように、DT燃料供給装置9のDT燃料の供給をPIDフィードバック制御するものである。この燃料PIDフィードバック制御手段26は、ここでは、計時手段22によって計時された時間が予め設定された設定時間になると、DT燃料プレ制御から切り替わってPIDフィードバック制御を行うように設定されている。
【0059】
出力手段29は、DTヘリカル型核融合炉10に設けた各検出器(中性子出力検出器、ボロメータ、電子サイクロトロン検出器、密度干渉計、プラズマ反磁性ループ等)から出力される各値を表示モニタ(表示装置)30等に出力するものである。
【0060】
DTヘリカル型核融合炉10は、今まで提案されたものと基本的には同じ構造であるが、低温・高密度の自己点火領域に達するための制御方法および制御装置(制御システム)が大幅に異なる。以下、DTヘリカル型核融合炉10を運転して核融合出力に至るまでの制御方法についてシミュレーションにより説明する。
【0061】
DTヘリカル型核融合炉10の磁場強度は6Tに設定するので、最大磁場は超伝導ヘリカルコイル3の主半径方向の内側で13.3Tとなるため、臨界磁場よりも低く、コイルの製作に際して適切であることが分かる。そして、エネルギー変換のためのブランケット2を設置するための十分なスペースを確保できるように主半径を設定し、かつプラズマ閉じ込めをよくするためにプラズマ小半径もできる限り大きくしている。
【0062】
また、ここでは、ブランケット2を設置するための十分なスペースを確保できるように、一例として主半径は14.0mとし、有効小半径を1.73mとし、磁場強度を6Tとしている。なお、主半径とは、装置の中心軸からドーナツ状の真空容器内のプラズマ断面中心までの距離をいう。また、有効小半径とは、プラズマ中心からプラズマ境界線までの平均の距離をいう。
【0063】
このように構成されたDTヘリカル型核融合炉10は、図4Aの制御システムを用いて、図5Aで示すような運転方法で、図6Aによる計算アルゴリズムのフローチャートに示す手順で、コンピュータを用いてシミュレーションが行われる。図6A、B、Cのフローチャートは図5A、B、Cのそれぞれの運転法における制御方法に対応している。なお、図5A、図6Aによる計算実施例を図7と図8に示し、図5B、図6Bによる計算実施例を図10と図11に示し、さらに図12〜図16にここで使用される数式による各値の適切な範囲の一例を示し、図5(c)、図6(c)による計算実施例を図17に示している。それぞれの運転法に対する定常値は図20に表で示した。以下、はじめに、図5(a)、図6Aを参照して第1実施形態について説明し、後に、第2実施形態および第3実施形態の説明を行う。
【0064】
なお、図5Aの上段に、各制御において熱的安定領域で運転しているか不安定領域で運転しているかを示す制御係数cの値を示し、どのような制御が行われているかを表し、2段目に核融合出力の設定波形を取り、3段目に時間軸を共有させてプラズマ密度限界マージンの設定波形を示し、下段(4段目)に外部加熱パワーの波形を示した。
【0065】
図5Aには、プレ制御からPIDフィードバック制御への切替までの設定時間を30秒としたときに、その直前の29.9秒(設定の開始)におけるプラズマ密度限界マージンを初期値とし、直線的に減少させてそれから70秒後(計算のスタートから100秒後)にプラズマ密度限界マージンが1.1になるように設定する運転方法を示している。核融合出力が設定値に達したら、一定値になるように設定し、第5設定時間(130秒)に核融合出力の設定値を核融合出力の値よりも少し小さく設定し、かつ後述の(15式)の制御係数cの符号を正から負へ切り替えることで熱的に不安定な領域でも制御可能になるようにしている。
【0066】
図7から図16に、実際の運転に使用される数値を使用し、放物密度分布の場合の熱的に不安定な自己点火領域に至る過程と、熱的に不安定な定常運転点でのプラズマの種々の擾乱に対する本運転制御法のロバスト性を示し、本制御法を用いることによって熱的に不安定な自己点火領域で運転ができることを示す。図17には、最近のLHD実験装置で得られた箱形密度分布でかつ広い放物温度分布の低温・高密度運転の成果を取り入れた計算結果を示す。
【0067】
図7から図16は、DTヘリカル型核融合炉10(図2(a)参照)において、核融合出力をプレ制御およびフィードバック制御しながら運転する方法について、0次元粒子バランス方程式(12式)、エネルギーバランス方程式(1式)、ISS95閉じ込めスケーリング則(7式)を用いてプラズマパラメータの時間変化をシミュレーション計算して得た結果である。なお、プラズマ密度,温度の分布が固定されたものを0次元と呼び、ここではプラズマ密度に関しては中心がピークになる放物分布と中心が平坦になる箱形分布を用いている。温度に関しては放物分布である。これらの密度分布や温度分布は時間がたっても変化しない。
【0068】
また、前記した以外の方程式として、外部加熱パワーの式(10式)、電荷中性条件から求まる電子バランス方程式(12式)、ヘリウム灰粒子密度比の方程式(13式)等、核融合出力のシミュレーションを行うときに使用される基本式を用いて、それぞれ求めたい値を算出する。さらに、パワーバランス方程式(11式)は、イオン温度Tiと電子温度Teとが等しい(Ti=Te)として書き直した式を使用している。
【0069】
また、実際の閉じ込め時間はISS95閉じ込めスケーリング則に閉じ込め増倍度(γISS95=1.92)をかけて使用している。なお、7式で表されるISS95閉じ込めスケーリング則は、ヘリカル型装置及びステラレータ装置において実験的に確立された共通の経験則である。以下1式から15式(図5Cで示す第3実施形態では16式から22式までについても使用する)のDTヘリカル型核融合炉10の運転制御のシミュレーションに用いた式を詳しく説明する。ただし、1式以降のすべての数式において、同じ記号は同じ意味で使用するので、なるべく繰り返さないようにして説明する。
以下、
時間変化を考慮したパワーバランス方程式の簡単な式は
【0070】
【数1】
【0071】
ただし、1式中において、
dW/dtはプラズマエネルギーの時間変化、
PEXTは外部加熱パワー、
Palphaはアルファ粒子加熱パワーで、
PSはシンクロトロン輻射損失パワーであるが、小さな値であるために本計算では省略する。
【0072】
【数2】
【0073】
ただし、2式中において、
fDは重水素密度の電子密度に対する比、
fTはトリチウム密度の電子密度に対する比、
<σv(x)>DTはDT核融合反応率の体積平均、
ηαはアルファ粒子損失割合、
ne(0)は中心電子密度、
ここで、PBは制動輻射損失パワーで、3式で与えられる。
【0074】
【数3】
【0075】
ただし、3式中において、
αnは密度分布係数、
αTは温度分布係数、
ne(0)は中心電子密度
Te(0)は中心電子温度、
Zeffは有効電荷数、
PLはプラズマ伝導損失パワーであり、次の4式で与えられる。
【0076】
【数4】
【0077】
ただし4式中において
τEはエネルギー閉じ込め時間で、7式で与えられ、
Wはプラズマエネルギー、
γiはイオン温度と電子温度の比(Ti/Te)であるが、ここではγi=1としている。
また、電子密度分布ne(x)は次の5式で与えられる。
【0078】
【数5】
【0079】
図7〜図16では、αn=1で与えられる放物分布を用いた。ここで用いられているne(0)とn(0)は中心電子密度、中心プラズマ密度のことで、これらは全く同じ量を表し、同じ意味で用いられる。
プラズマ温度分布T(x)は6式で与えられる。
【0080】
【数6】
【0081】
ただし、xはプラズマ中心から小半径方向の距離である。ここで用いられているT(0)とTi(0)は中心プラズマ温度、中心イオン温度のことで、これらは全く同じ量を表し、同じ意味で用いられる。単に温度あるいはプラズマ温度とも表現する。また、電子温度とイオン温度は等しいとおいているので、電子温度も単に温度と記載する場合もある。
図7〜図16の実施例ではαT=1の放物分布を用いた。
エネルギー閉じ込め時間τE[s]は次の7式で与えられる。
【0082】
【数7】
【0083】
ただし、7式中において、
γISS95はISS95閉じ込めスケーリング則の閉じ込め増倍度、
τISS95[s]はISS95閉じ込めスケーリング則で与えられる閉じ込め時間、
ι2/3は有効小半径の2/3の場所での回転変換角度を2πで割ったもの、
aはプラズマ有効小半径、
Rはプラズマ主半径、
B0は磁場強度、
n19は線平均電子密度で1019m−3単位、
PHTは外部加熱パワーであり、正味の加熱パワーPNET(9式)を用いる。
【0084】
なお、DTヘリカル型核融合炉10では、プラズマ密度限界値は次式の様に外部加熱パワーの平方根で表すことができる須藤密度限界スケーリング則(8式)を用い、図7〜図16においては、現在の実験において実際に達成されているプラズマ密度限界値1.5〜4.5(密度限界係数γSUDO)倍を採用する。したがって、熱的に安定な領域で用いられる外部加熱パワーのフィードバック制御には8式の須藤密度限界スケーリング則を書き直して得られる下記の10式を用いる。
須藤密度限界スケーリング則は、
【0085】
【数8】
【0086】
ただし、8式中において、
γprはプラズマ密度分布係数、
γDLMはプラズマ密度限界マージン(プラズマ密度限界値とプラズマ運転密度の比、n(0)lim/n(0))で、γDLM>1でなければならない。
γSUDOは密度限界係数、
n(0)は中心電子密度で、
aは有効小半径、
Rは主半径、
Boは磁場強度である。
ここで、正味の加熱パワーPNETは、以下の9式で与えられる。
【0087】
【数9】
【0088】
ただし、9式中において、
PEXTは外部加熱パワー、
Palphaはアルファ粒子加熱パワー、
PBは制動輻射損失パワー、
PSはシンクロトロン輻射損失パワーである。
8式に9式を代入し、書き直すと次の10式になる。
【0089】
【数10】
【0090】
ただし、10式中において、
Palphaはアルファ粒子加熱パワー、
PBは制動輻射損失パワー、
PSはシンクロトロン輻射損失パワーである。
イオン温度を計算するパワーバランス方程式は、
【0091】
【数11】
【0092】
ただし、11式中において、
αnは密度分布係数、
αTは温度分布係数、
fDは重水素密度の電子密度に対する比、
fTはトリチウム密度の電子密度に対する比、
fαはHe灰(アルファ粒子がエネルギーを失い不純物になってしまったもの)密度の電子密度に対する比、
Ti(0)は中心イオン温度、
γiはイオン温度と電子温度の比(Ti/Te)、
ne(0)は中心電子密度、
[dne(0)/dt]には12式を用いる。
Palphaはアルファ粒子加熱パワー、
foは酸素不純物密度の電子密度に対する比である。
電荷中性条件から求まる電子バランス方程式は、
【0093】
【数12】
【0094】
ただし、12式中において
τp*は、重水素、トリチウム燃料粒子の有効閉じ込め時間、
τα*はヘリウム灰の有効粒子閉じ込め時間
foは酸素不純物密度割合
SDTは、重水素、トリチウムの燃料供給率である。
ヘリウム灰粒子密度比の方程式は、
【0095】
【数13】
【0096】
ただし、[dne(0)/dt]には12式を代入する。
また、核融合出力の制御は、14式の燃料供給率SDT(t)において核融合出力の偏差(15式)をフィードバック制御(PID[比例−積分−微分]制御)することによって行う。なお、PIDフィードバック制御とは、制御量が目標値から外れたときに、動作信号(制御量と目標値の差)に対して制御装置(図示せず)が応答する場合に、比例動作(P動作)、積分動作(I動作)、微分動作(D動作)を用いて行われることである。ここで、PID動作とは、P動作に、オフセットを除去する働きを持つI動作と振動を減衰する働きを持つD動作とを組み合わせたもので、安定かつ精度のよい制御が期待できる。
燃料供給率のPIDフィードバック制御式は、
【0097】
【数14】
【0098】
ただし、14式中において
eDT(Pf)は核融合出力の偏差で、
【0099】
【数15】
【0100】
で与えられる。
Pf(t)は核融合出力で、中性子発生パワーPnとアルファ粒子加熱パワーPalphaの和(Pf(t)=Pn+Palpha)で与えられ、
Pf0(t)は核融合出力の設定値、
c=+1は熱的に安定な領域で用いる正の制御係数、
c=−1は熱的に不安定な領域で用いる負の制御係数、
SDT0は定数でSDT0=4x1020m-3 、
Gf0(t)はゲインで、2〜5の値、
Tintは積分時間で10秒、
Tdは微分時間で1秒とする。
【0101】
フィードバック制御フェーズでの計算法の概略を説明する。はじめに設定した各パラメータ(例えば、装置パラメータ「a、R、B0」、γSUDO、γpr)の数値から、0次元パワーバランス方程式(11式)により外部加熱パワーを印加したときのイオン温度Ti(0)を計算し、同時に0次元粒子バランス方程式(=電子バランス方程式:式12)から目指す核融合出力を得る密度n(0)を計算し、その値が得られるように燃料供給率でフィードバック制御し、次のステップで外部加熱パワーの10式に代入して外部加熱パワーを計算する。
【0102】
そのとき、アルファ粒子加熱パワー、制動輻射損失パワー、シンクロトン輻射パワーを、算出したプラズマ密度n(0)およびイオン温度Ti(0)を用いて計算する。さらに、プラズマ密度n(0)およびイオン温度Ti(0)を計算しているときに、算出された外部加熱パワーを用いてプラズマ密度限界値を計算し、それを再び用いてプラズマ密度限界マージンγDLM=n(0)lim/n(0)を計算し、そのプラズマ密度限界マージンが1.1以下にならないように外部加熱パワーを印加する。
【0103】
ここでは、外部加熱パワーによりプラズマ密度限界値が上昇する須藤密度限界スケーリング則(8式)を用いて、プラズマ運転密度よりも常にプラズマ密度限界値が大きくなるように外部加熱パワーの値をフィードバック制御(10式)している。プラズマ密度限界マージンは[プラズマ密度限界値/プラズマ密度]であるから、プラズマ密度限界マージンを小さくするとプラズマ密度限界値をプラズマ運転密度に近づけることができ、外部加熱パワーを小さくすることができる。しかし、後でも説明するように、外部加熱パワーの10式を用いたフィードバック制御は熱的不安定領域での制御には使用することはできないので、プレプログラムとした。
【0104】
第1の実施形態として、図4Aの制御システムを用いて、図5Aで示すような運転方法について、図6Aの計算アルゴリズムのフローチャートと、120秒の核融合出力立ち上げ時間が経過した後130秒に熱的不安定領域に遷移する図7の計算結果を参照して、具体的な数値を使用したDTヘリカル型核融合炉10の運転方法のシミュレーション結果を説明する。DTヘリカル型核融合炉10も、図2(a)に示す構成において、主半径R=14.0m、有効小半径a=1.73m、磁場強度Bo=6Tのパラメータとなるように設定されているものとして説明する。
【0105】
図5Aの運転方法では、すなわち、プレプログラム制御フェーズが終わる第1設定時間(ここではスタートからt=30秒)の直前のt=29.9秒を第2設定時間とする。第1設定時間はプレプログラムにおいてその後のフィードバック(PID[比例―積分―微分])制御(熱的安定領域用PIDフィードバック制御フェーズ)が行えるレベルまで核融合出力を持ち上げるのに要する時間である。第2設定時間はフィードバック制御に入る前にプラズマ密度限界マージンの値を保持するための時間で、その値を初期値として直線的に減少させる。第3設定時間はプラズマ密度限界マージンが減少するときの目標となる時間で、プラズマ密度限界マージンが「1」より大きな値(ここでは1.1)に設定されている、スタートからt=100秒の時間である。第4設定時間は、この第3設定時間経過後に核融合出力が所定の値に到達するように制御するために設定される時間である。(これを核融合出力立ち上げ時間と呼ぶ)。ここではスタートからt=120秒で、それ以降は熱的に安定な定常状態となる。スタートから第5設定時間として130秒たった後、熱的不安定領域に遷移する。
【0106】
第2設定時間を第1設定時間よりも短くした理由は、核融合出力の立ち上げ時間を変化させても、プラズマ密度限界マージンのその後の減少のスタート地点になる初期値が変化しないようにするためである。これにより、DTヘリカル型核融合炉10の立ち上げの運転方法のより的確なシミュレーションを行うことができる。
【0107】
このシミュレーションは、図6Aのフローチャートに示すように、大きく分けてプレプログラム制御フェーズ(プレ制御フェーズ)(S2、S3、S4、S5、S6、S7)と燃料供給PIDフィードバック制御と外部加熱パワーフィードバック制御フェーズ(フィードバック制御フェーズ)(S8、S9、S10、S11、S12、S13,S14、S15)に分かれている。この境となる時間を第1設定時間とする。はじめに、DTヘリカル型核融合炉10の主半径、有効小半径、磁場強度、プラズマ密度、イオン温度、アルファ粒子密度、不純物密度の各値を入力する。以下、図5Aも併用しながら詳しく説明する。なお、図6Aにおいて、外部加熱パワーおよびDT燃料のプレ制御を第1ステップとし、外部加熱パワーのフィードバック制御およびDT燃料のPIDフィードバック制御を第2ステップとする。
【0108】
図6Aおよび図4Aに示すように、ステップS1でDTヘリカル型核融合炉10の装置パラメータの各値が入力手段21から入力されて、計算が開始されると、時間軸をX軸とし、プレプログラム制御による計算結果を出力手段29により表示モニタ30に出力して、図7に示す各グラフを表示するようにしている。すなわち、第1設定時間内におけるプラズマ密度n(0)[m3]、プラズマ密度限界値n(0)limおよびイオン温度Ti(0)[keV]のY軸値を図7(a)に表示するように、ヘリウム灰割合fαおよび核融合出力Pf[GW]のY軸値を図7(b)に表示するように、プラズマ密度限界マージンn(0)lim/n(0)および平均ベータ値<β>のY軸値を図7(c)に表示するように、外部加熱パワーPEXT[MW]および DT燃料供給率SDT[m−3/s]のY軸値を図7(d)に表示するように、表示モニタ30に出力する。このプレプログラム制御フェーズでは、ステップS3において、プラズマ密度、イオン温度、不純物等のプラズマパラメータ、閉じ込め時間を用いたプラズマ伝導損失パワー、アルファ粒子加熱パワー、制動輻射損失パワー、シンクロトロン輻射パワーを計算する。さらに、ステップS3で、各式を適宜用いてプラズマ密度限界値およびプラズマ密度限界マージンを計算している。
【0109】
図5Aの運転方法で示す第1設定時間30秒後も同様に計算を続け、同様に表示モニタ30に出力し、200秒まで計算を続ける。ここで、図7に示すグラフを作成するための各値は、シミュレーションを終了するまで随時出力される。つまり、ステップS3〜ステップS15まで進みながら随時各値が出力される。
【0110】
そして、第1設定時間である30秒が経過するか否かを判定して(ステップS6)、30秒が経過していない時には、その時間でのプレプログラム外部加熱パワーとプレプログラム燃料供給率を与え(ステップS7)、その値に基づいて、再度、ステップS2、ステップS3を30秒に到達するまで計算を繰り返す。
【0111】
ここで、図6Aに示すステップS2〜S6までは、図4Aに示す外部加熱パワープレ制御手段23による外部加熱パワーの供給と、DT燃料プレ制御手段25によるDT燃料の供給が行われている。そして、計時手段22から計時される時間の信号により、外部加熱パワープレ制御手段23およびDT燃料プレ制御手段25のそれぞれは、第1設定時間が経過したか否かを判定している。
【0112】
なお、外部加熱パワープレ制御手段23は、30秒が経過する前に、第2設定時間(29.9秒)が経過したか否かを判定して(ステップS4)、そのときのプラズマ密度限界マージンを保持し、その後の直線的減少の初期値とし、第3設定時間(100秒)にプラズマ密度限界マージン値が1.1になるように制御する(ステップS5)。つぎに、ステップS6において、30秒が経過したと判定されると、ステップS3の計算結果に基づいて、フィードバック外部加熱パワーおよびフィードバック燃料供給率を計算し、プラズマ密度限界値の制御と核融合出力の偏差を用いて熱的に安定な領域においてPIDフィードバック制御を行うようにする(ステップS8)。29.9秒でのプラズマ密度限界マージンは3.1と大きいので、熱的に安定な領域においてPIDフィードバック制御に入った瞬間に、外部加熱パワーはプレプログラム制御フェーズでの40MWよりも増大し50MWに達する。その後次第にプラズマ密度限界マージンが減少するので、同時に外部加熱パワーも減少していき、100秒で0MWとなり、熱的に安定な自己点火に到達することがわかる。
【0113】
さらに、第3設定時間(100秒)が経過したか否かを判定して(ステップS9)、経過していればそれ以降はプラズマ密度限界マージンが1.1以下にならないように制御する(ステップS10)。このステップS10において、プラズマ密度限界マージンが1.1以下に下がらないように制御するが、アルファ粒子加熱のために正味の加熱パワーが増大する結果、外部加熱パワーは0で、かつプラズマ密度限界マージンも1.1以上になる。外部加熱パワーを0としても、アルファ粒子加熱のために正味の加熱パワーが増大するので核融合反応は持続する。
【0114】
ここで、図6Aに示すステップS8〜S11までは、図4Aに示す外部加熱パワーをフィードバック制御するフィードバック制御手段24およびDT燃料をPIDフィードバック制御する燃料PIDフィードバック制御手段26によるそれぞれの制御が行われ、ステップ12〜S15までは、燃料PIDフィードバック制御手段26により制御が行われている。なお、フィードバック制御手段24では、所定時間で外部加熱パワーが0になるため、それ以降の外部加熱パワーの供給は行われない。
【0115】
その後、第4設定時間とした120秒(核融合出力立ち上げ時間)に核融合出力が1.9GWまで増大する(ステップS11、S12)。そして、第5設定時間(130秒)(ステップS13)が経過すると、熱的不安定領域に遷移させるために、燃料供給を行わせるべく核融合出力の設定値を1.9GWよりも小さい値(1.89GW )に設定する。同時に15式の制御係数cを+1から−1に変換する(ステップS14)。その結果、燃料供給が急速に増大し、プラズマ密度が増大するとともに、イオン温度は減少し、熱的に不安定な自己点火領域の境界に移動する。計算終了時間200秒までに運転点は熱的に不安定な自己点火領域の定常値に達するので(ステップS15)、各値を定常値として出力しシミュレーションを終了する。本制御法によって、本来ならば不安定であった自己点火領域が安定になり、定常値を持つことになる。
【0116】
これらのシミュレーションは、DTヘリカル型核融合炉10においては図4Aに示すような制御システムによって実行される。入力ターミナルである入力手段21から、外部加熱パワーのプレプログラム波形PEXT、核融合出力波形の設定値Pf0、密度限界マージンの設定値γDLM、燃料供給のプレプログラム波形SDT、燃料供給のPIDフィードバック制御においていつ熱的安定領域から不安定領域に移動するかを入力する。DTプラズマから発生した中性子を計測し、全中性子パワーPnを算出し、核融合出力Pfを出力する。この出力した核融合出力Pfと核融合出力波形の設定値Pf0の偏差(15式)を用いて燃料供給をフィードバック制御する。また、ボロメータで制動輻射損失パワーPBを計測し、電子サイクロトロン検出器でシンクロトロン輻射パワーPSを計測し、密度干渉計でプラズマ密度nを計測し、これらからパワーバランスを算出してフィードバック用の外部加熱パワーPEXT(10式)を算出し、外部加熱装置8を動作させる。またそれぞれ測定したプラズマパラメータを出力手段29により表示モニタ30に出力して図示しないメモリ等の記憶手段に保存している。
【0117】
なお、DTヘリカル型核融合炉10の熱的安定領域で運転した場合と不安定領域で運転した場合の定常値を図20に示す。図20では、定常に達した時のプラズマパラメータを示し、プラズマ主半径を番号1としエネルギー増倍率(Pe/PEXT)を番号39までとして定常時における各値を示している。また、図20に示すように、イオン温度、プラズマ密度分布が同じ放物分布でも、目標としている核融合出力値が得られた時の熱的安定自己点火領域の定常値と熱的不安定自己点火領域の定常値は異なる。そして、熱的不安定領域に達した後にパラメータに擾乱を与えて変化させる場合(図12〜図16)、その後の定常値は当然異なる。また、放物分布と記載している列では、密度分布係数は1、温度分布係数は1であり、その定常値は、同じ熱的不安定自己点火領域で運転しても箱形分布の場合の定常値とは異なる。すなわち、分布が異なれば定常値も異なる。
【0118】
図7に対応したPOPCON図(プラズマ密度・イオン温度の平面上に描かれた外部加熱パワーの等高線図)を図8に示す。これからわかるように、運転点は、高温・低密度の熱的安定な領域から、熱的に不安定な低温・高密度領域に移動していることがわかる。
【0119】
熱的に不安定な低温・高密度領域における安定化の原理について図9(a)を用いて説明する。一般にDT燃料をプラズマに急に入射すると、プラズマ密度は上昇し、プラズマは冷却され、イオン温度は下がる。逆に、DT燃料供給を止めると、プラズマ密度は減少し、イオン温度は上昇する。したがって、核融合出力(Pf)が設定値(Pf0)を超えると(Pf>Pf0)、15式の制御係数をc=-1とおいた式からわかるように、燃料供給率は増大し、運転点は低温・高密度側に動く(A点からB点)。自己点火領域からはみ出しB点に移動すると、B点は自己点火領域よりも低いイオン温度側にあるので、運転点は不安定で、さらに温度を下げようとする。
【0120】
そうすると、運転点が核融合出力の設定値Pf0を横切り、それを下回ることになる(B点からC点)。その結果、今度は燃料供給が減少あるいはストップし、プラズマ密度は減少し、イオン温度は上がる。その結果、運転点は自己点火領域に再び入る(C点からD点)。自己点火領域では熱的不安定性の結果、運転点はイオン温度の高い方に移動する。その結果、再び、核融合出力の設定値Pf0を横切り、それを上回るために、再び燃料供給が行われ、プラズマ密度が増大し、イオン温度が下がることになる。このようにイグニッション境界線の近傍において左回りに回転(旋回)しながら、最終的に定常運転点(自己点火領域の境界線)に近づいていく。
【0121】
一方の熱的に安定な高温・低密度の自己点火領域における核融合出力の燃料PIDフィードバック制御についても図9(b)を用いて説明する。後述する22式の定常パワーバランス方程式を利用して考える。運転点がイグニッション境界線よりも高温側にある場合、プラズマコンダクション損失パワーPLと制動輻射損失パワーPBの和が、アルファ粒子加熱パワーよりも大きいので(Palpha<PL+PB)、運転点は矢印で示すようにイオン温度の低い方に移動する。一方、イグニッション領域ではプラズマコンダクション損失パワーPLと制動輻射損失パワーPBの和が、アルファ粒子加熱パワーPalphaよりも小さいので(Palpha>PL+PB)、運転点は矢印で示すようにイオン温度の高い方に移動する。このように熱的に安定な高温・低密度領域では運転点はイグニッション境界線に向かって動く。これが熱的に安定といわれる由縁である(前記の熱的に不安定な低温・高密度領域では、これと同じメカニズムによって運転点はイグニッション境界線から離れていく。これが不安定と呼ばれる由縁である)。
【0122】
したがって、図9(b)のD点のように、核融合出力が設定値よりも大きく(Pfo<Pf)かつイグニッション領域の外側にある場合、15式の制御係数をc=+1とおいた式からわかるように、燃料供給が減って密度が下がり、イオン温度も低下する結果、運転点は矢印のように定常運転点P点の方向に向かって動く。C点のように、核融合出力が設定値よりも大きく(Pfo<Pf)かつイグニッション領域の内側にある場合、15式の制御係数をc=+1とおいた式からわかるように、燃料供給が減って密度が下がるが、今度はイオン温度が上がるために、運転点は矢印のように定常運転点P点の方向に向かって動く。
【0123】
また、A点のように、核融合出力が設定値よりも小さく(Pfo>Pf)かつイグニッション領域の外側にある場合、15式の制御係数をc=+1とおいた式からわかるように、燃料供給は増大しプラズマ密度は上がり、イオン温度は低下する結果、運転点は矢印のように定常運転点P点の方向に向かって動く。B点のように、核融合出力が設定値よりも小さく(Pfo>Pf)かつイグニッション領域の内側にある場合、15式の制御係数をc=+1とおいた式からわかるように、燃料供給は増大しプラズマ密度は上がり、イオン温度は増大する結果、運転点は矢印のように定常運転点P点の方向に向かって動く。総じて、熱的に安定なイグニッション領域内では運転点は右回りに動く。以上を簡単にまとめると、すなわち、c=+1の場合、熱的安定領域では運転点は右回りに回転し、c=−1の場合、熱的不安定領域では運転点は左回りに回転する対応関係にあることがわかる。
そして、本発明によれば、外部加熱パワーが、例えば、従来において必要とされていた100MWの最大外部加熱パワーより50%程度小さい50MW以下で足りる。
【0124】
次に第2実施形態の説明をする。図5Bは、図5Aでは第5設定時間を130秒にしていたのを30秒とし、すなわちプレ制御からPIDフィードバック制御への切替までの設定時間30秒と同時に前記の(15式)の制御係数cの符号を負(−1)へ切り替える場合である。したがって30秒以降は低温・高密度側の熱的に不安定な領域を通って、直接熱的不安定自己点火領域に達する運転である。したがって、図5Aのように熱的に安定な自己点火領域を通る必要はない。熱的不安定領域で運転中はプラズマ密度限界マージンが1以上になるようにあらかじめマージンを設定している。なお、熱的に不安定な領域では図5Bの最下段の外部加熱パワーの波形に示すように、外部加熱パワーのフィードバックは行わずプレプログラムとした。
【0125】
図4Bの制御システムを用いて、図5Bで示すような運転法について、図6Bの計算アルゴリズムのフローチャートと、30秒から熱的不安定制御を行い核融合出力立ち上げ時間が120秒の計算結果(図10)を用いて、本運転方法のシミュレーション結果を詳しく説明する。なお、同じ構成のものは同じ符号を付して説明を省略する。DTヘリカル型核融合炉は、図2(a)に示す構成において、主半径R=14.0m、有効小半径a=1.73m、磁場強度Bo=6Tのパラメータとなるように設定されているものとする。
【0126】
また、ここでは、図4Bに示すような制御システムを使用することで、DTヘリカル型核融合炉10の制御を行うものである。なお、すでに説明した構成は、同じ符号を付して説明を省略する。
図4Bに示すように、外部加熱パワープレ制御手段23は、入力手段21を介して入力された変数から数式(例えば10式等)により演算された値に基づいて、予め設定した設定値になるように外部加熱パワー発生装置から外部加熱パワーを、炉心プラズマ1に供給するプレ制御を行うと共に、予め設定された時間で外部加熱パワーを0とするように外部加熱パワーの供給を制御するものである。
【0127】
この外部加熱パワープレ制御手段23は、ここでは、計時手段22からの計時された時間が予め設定されており、その設定された設定時間に到達するまで、外部加熱パワーを段階的(図10(d)参照)に炉心プラズマ1に加え、つぎに設定されている設定時間までに外部加熱パワーを段階的(図10(d)参照)に0にするように設定されている。なお、外部加熱パワーを段階的に0となるように減少させる場合は、その一回に減少させる値が20MWを超えないようにしている。
また、図10(b)の左下に示すように、核融合出力のプレ制御(点線)における設定値は、1MWより小さな値となるように設定されており、この設定値(点線)よりも核融合出力が大きくなり、かつ制御係数cが−1になったときに密度が急上昇し、あとは核融合出力の設定値とともに増大していく。
【0128】
また、図10〜図16には、図5Bで示すような運転を行った結果を示す。図5Bの運転法において用いられている時間について詳しく説明する。第1設定時間(30秒)はプレプログラムによって外部加熱パワーを印加して、その後の熱的に不安定な領域で行うPIDフィードバック制御ができるレベルまで核融合出力を持ち上げるのに要する時間である。第2設定時間(29.9秒)はフィードバック制御に入る前にプラズマ密度限界マージンの値を保持するための時間で、その値を初期値とするが、ここでは30秒以降も外部加熱パワーをプレプログラム制御するために図5Aの様に密度限界マージンを直線的に減少させる必要がなく、その意味ではこの運転方法での大きな意味はない。また、図5Aの第3設定時間は取り除き、核融合出力立ち上げフェーズにプラズマ密度限界マージンが常に1以上になるように設定している。本運転法では図5Aで示した熱的不安定制御に移行する第5設定時間を第1設定時間まで早めて設定し、30秒から熱的に不安定な領域で燃料供給制御を行う様にしている。なお、ここでは、図5Aで示した第3設定時間に相当する設定時間はない。
【0129】
第4設定時間(120秒)は、第1設定時間(30秒)経過後に核融合出力が1.9GWの所定の値に到達するように制御するために設定される時間である(核融合出力立ち上げ時間)。一方、外部加熱パワーは第5設定時間(第1設定時間)での値をしばらく保持し、その後核融合出力の順調な増大を助けるように試行錯誤で段階的に減少させ、100秒で0になるように設定している。外部加熱パワーを0にする時間を遅らせる分にはかまわないが、その時間を早めすぎると順調な核融合出力立ち上げが損なわれてしまう。なぜなら、アルファ粒子加熱が十分に大きくなるまで外部加熱パワーがプラズマの加熱を助ける必要があるからである。ここでは外部加熱パワーを印加する時間を少しでも短くして省エネルギーをはかるとともに、イグニッション領域に達することができるのに十分な値を取り100秒とした。また、外部加熱パワーを段階的に減少させる場合、1つのステップあたりの減少量を大きくすると、核融合出力を増大させることができなくなるので、20MW以上には大きくならないようにしている。
【0130】
このシミュレーションは、図6Bのフローチャートに示すように、大きく分けてプレプログラム制御フェーズ(プレ制御フェーズ)(S2、S3、S4、S5、S6)と燃料供給PIDフィードバック制御フェーズ(PIDフィードバック制御フェーズ)(S7、S8、S9、S10、S11、S12,S13)に分かれている。この境となる時間を第1設定時間あるいは第5設定時間(30秒)とする。はじめに、DTヘリカル型核融合炉10の主半径、有効小半径、磁場強度、プラズマ密度、イオン温度、アルファ粒子密度、不純物密度の各値を入力する。以下、図5Bも併用しながら詳しく説明する。なお、図6Bおよび図5Bにおいて、外部加熱パワーおよびDT燃料のプレ制御を第1ステップとし、外部加熱パワーの段階的な減少を行うプレ制御およびDT燃料のPIDフィードバック制御を第2ステップとする。
【0131】
図6Bおよび図4Bに示すように、ステップS1でDTヘリカル核融合炉10の装置パラメータの各値が入力手段21から入力されて、計算が開始されると、時間軸をX軸とし、プレプログラム制御による計算結果を出力手段29により表示モニタ30に出力して、図10に示す各グラフを表示するようにしている。すなわち第1設定時間内におけるプラズマ密度n(0)[m3]、プラズマ密度限界値n(0)limおよびイオン温度Ti(0)[keV]のY軸値を図10(a)に、ヘリウム灰割合fαおよび核融合出力Pf[GW]のY軸値を図10(b)に、プラズマ密度限界マージンn(0)lim/n(0)および平均ベータ値<β>のY軸値を図10(c)に、外部加熱パワーPEXT[MW]および DT燃料供給率SDT[m−3/s]のY軸値を図10(d)に表示するように表示モニタ30に出力する。このプレプログラム制御フェーズでは、ステップS3において、密度、温度、不純物等のプラズマパラメータ、閉じ込め時間によるプラズマコンダクションロス、アルファ粒子加熱パワー、制動輻射損失パワー、シンクロトロン輻射パワーを計算する。さらに、ステップS3で、各式を適宜用いてプラズマ密度限界値およびプラズマ密度限界マージンを計算している。
【0132】
第1設定時間30秒後も同様に計算を続け、同様に表示モニタ30に出力し、200秒まで計算を続ける。ここで図10に示すグラフを作成するための各値は、シミュレーションを終了するまで随時出力される。つまり、ステップS3〜ステップS13まで進みながら随時各値が出力される。
【0133】
ここで、図6Bに示すステップS2〜S6までは、図4Bに示す外部加熱パワープレ制御手段23による外部加熱パワーの供給と、DT燃料プレ制御手段25によるDT燃料の供給が行われている。そして、計時手段22から計時される時間の信号により、外部加熱パワープレ制御手段23およびDT燃料プレ制御手段25のそれぞれは、第1設定時間が経過したか否かを判定している。
外部加熱パワープレ制御手段23は、第1設定時間である30秒が経過するか否かを判定して(ステップS5)、30秒が経過していない時には、その時間でのプレプログラム外部加熱パワーを供給する。それと同時に、DT燃料プレ制御手段25は、プレ制御におけるDT燃料を供給する(ステップS6)。外部加熱パワープレ制御手段23およびDT燃料プレ制御手段25は、その設定された値に基づいて、再度、ステップS2、ステップS3を30秒に到達するまで計算を繰り返す。
【0134】
つぎに、ステップS5において、30秒が経過したと判定されると、熱的不安定用制御に移行する。すなわち、ステップS3の計算結果に基づいて、燃料供給PIDフィードバック制御を、核融合出力の設定値を実際の核融合出力の値が越えた後に(図7(b)の左下点線)、15式の制御係数c=−1とおいて、核融合出力の偏差によって行い、燃料供給を急激に起こし、密度を急上昇させる(ステップS7)。このとき、29.9秒でのプラズマ密度限界マージンは3.1(図7(c)のY軸では表示されていない大きな値)と大きく、熱的不安定化燃料供給PIDフィードバック制御に入った瞬間に密度が急上昇するが、50MWの外部加熱パワーはプレプログラム制御フェーズにあり一定なので、プラズマ密度限界マージンは1以上の値である。その後、外部加熱パワーを段階的に減少させ、100秒で0MWとする。外部加熱パワーを0としても、アルファ粒子加熱のために正味の加熱パワーが増大するので核融合反応は持続し、熱的に不安定な自己点火領域に到達する。
【0135】
ここで、図6Bに示すステップS7〜S9までは、図4Bに示す外部加熱パワーをプレ制御する外部加熱パワープレ制御手段23およびDT燃料をPIDフィードバック制御する燃料PIDフィードバック制御手段26によるそれぞれの制御が行われ、ステップS10〜S12までは、燃料PIDフィードバック制御手段26により制御が行われている。なお、外部加熱パワープレ制御手段26は、ステップS10〜S12までは、外部加熱パワーを0とするように制御されている。
【0136】
このようにして熱的に不安定な領域を通って第4設定時間(120秒)に核融合出力が1.9GWまで増大し、その後、計算終了時間200秒までに運転点は熱的に不安定な自己点火領域の定常値に達するので(ステップS12)、各値を定常値として出力し(ステップS13)シミュレーションを終了する。本制御法によって、本来ならば不安定であった自己点火領域が安定になり、定常値を持つことになる。
【0137】
これらのシミュレーションは、DTヘリカル型核融合炉10においては図4Bに示すような制御システムによって実行される。入力ターミナルである入力手段21から、外部加熱パワーのプレプログラム波形PEXT、核融合出力波形の設定値Pf0、密度限界係数γSUDO、燃料供給のプレプログラム波形SDT、燃料供給のPIDフィードバック制御において熱的不安定領域に移行する時間を入力する。DTプラズマから発生した中性子を計測し、全中性子パワーPnを算出し、核融合出力Pfを出力する。この出力した核融合出力Pfと核融合出力波形の設定値Pf0の偏差(15式)を用いて燃料供給を熱的不安定用PIDフィードバック制御する。また、ボロメータで制動輻射損失パワーPBを計測し、電子サイクロトロン検出器でシンクロトロン輻射パワーPSを計測し、密度干渉計でプラズマ密度nを計測し、これらからパワーバランスを計算して正味の加熱パワーPNET(9式)を算出し、プラズマ密度マージンγDLM=n(0)lim/n(0)(8式)を算出する。プラズマ密度マージンが1以下にならない程度に密度限界係数を設定する(なお:最近のLHD実験の低温度・高密度運転においては、密度限界はほとんど存在しなくなりつつあり、密度限界係数の設定は重要でなくなりつつある)。また、それぞれ測定したプラズマパラメータを出力手段29により表示モニタ30に出力して図示しないメモリ等の記憶手段に保存している。
【0138】
図7では熱的に安定な運転点に到達してから不安定点に移動したが、図10には熱的安定点を経ることなく、直接初期状態(30秒)から熱的に不安定な低温・高密度領域に移動できることを示す。この場合30秒時において、熱的不安定領域に遷移させるために、核融合出力の設定値を核融合出力よりも小さい値に設定して(図10(b)の左下の点線)、核融合出力の値が設定値を越えると同時に、15式の制御係数cを+1から−1に変換する。このように、30秒から120秒まで、熱的に不安定な定常運転点だけでなく、その点に接近する途中でも15式によって制御できることがわかる。図7の熱的に安定な領域を通って定常運転点に到達する場合、外部加熱パワーは10式を用いてフィードバック制御できたのに対して、図10の熱的に不安定な領域を通って不安定な定常運転点に到達する場合、10式を用いてフィードバック制御制御することは困難である。高温・低密度領域の自己点火領域では、加熱パワーを増大すると、運転密度は下がる一方で密度限界は増大し、両者は離れていく。一方、低温・高密度領域の自己点火領域では、加熱パワーを増大すると、運転密度も密度限界も両者ともに増大していく。その結果8式の須藤密度限界スケーリング則を利用した10式のようなフィードバック制御は使用が困難となる。したがって、熱的不安定領域で運転する場合、外部加熱パワーはプレプログラム制御とした。
【0139】
図10に対応したPOPCON図を図11に示す。これからわかるように、運転点が熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に向かって移動する。この移動する際の運転点は、イグニッション境界線の近傍で、左旋回するように移動して設定核融合出力線上の熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達して維持される状態となる。そのため、高温・低密度の熱的に安定な領域を経由せずに、直接、熱的に不安定な低温・高密度領域に移動できることがわかる。
【0140】
本発明における熱的な不安定な領域での制御方法では、DT燃料供給のPIDフィードバック制御により密度の増減を行うので、実際にプラズマ密度を増減できるかがポイントになってくる。密度増大はDT燃料を凍らせてアイスペレットにして入射するので問題はないが、プラズマ密度を急速に減少させることができるかどうかが問題になる。一般に核融合炉ではプラズマ密度減少は燃料粒子を強力に排気することによって行うことができる。12式の右辺の大括弧の第2項目である中括弧の第1項((fD+fT)/τp*)がその密度減少を表す項である。すなわち、その分母であるτp*が密度減少時間の尺度であるが、一般に核融合炉の研究ではこの燃料粒子(DT)閉じ込め時間τp*とエネルギー閉じ込め時間tEに対する比(τp*/τE)をその指標とする。この値が小さいほど燃料粒子の排気が行われやすく、したがって密度は減少しやすいということである。DTヘリカル型核融合炉10では通常τp*/τE=3の値を使用している。図12ではイグニッション領域の存在に影響を与えるτp*/τEの取り得る最大の値を調べるために、この値を3からスキャンし、イグニッション領域がなくなる1つ手前の値について計算した結果を示す。
【0141】
すなわち、図12では重水素粒子閉じ込め時間のエネルギー閉じ込め時間に対する比を5倍大きい15にとった場合の図である。τp*/τEの比を増大させると、燃料粒子の排気に時間がかかり密度の増減ができないので安定化制御はできないのではないかと予想される。しかしながら、図12に示すように、τp*/τE=15までは定常運転点まで到達していることから、燃料粒子閉じ込め時間がここまで長くなっても熱的不安定領域でのPID燃料制御には影響を与えないことが理解できる。なお、τp*/τEをここまで大きくとれる理由は、燃料粒子の閉じ込め時間が長くなっても、核融合反応によってDT燃料が減少し、等価的に燃料粒子閉じ込め時間が短くなったからであると考えられる。すなわち12式の右辺の大括弧の第2項目の中括弧のさらに第2項目のヘリウム粒子灰(2fα/τα*)の項からわかるように、発生するヘリウム粒子灰が短時間で除去できる限りにおいては、核融合反応がある場合、等価的な燃料粒子閉じ込め時間は短くなり、熱的不安定領域で安定化制御ができることを示している。
【0142】
DT核融合で発生するヘリウム灰粒子をどの程度の速さで排気すればよいかを示す尺度がヘリウム灰粒子の閉じ込め時間である。通常、このヘリウム灰粒子の閉じ込め時間τα*とエネルギー閉じ込め時間τEに対する比(τα*/τE)をその指標とする。この値が小さいほどDT核融合で発生するヘリウム灰粒子の密度が減少する。すなわちいわゆる不純物としてのヘリウム灰粒子の密度が減少する。その結果イグニッション領域が広がる。逆にこの値が大きいとDT核融合で発生する不純物としてのヘリウム灰粒子の密度が増大するために、イグニッション領域は狭くなる。したがって、ヘリウム灰粒子の閉じ込め時間とエネルギー閉じ込め時間に対する比がどこまで許容できるかが重要になる。通常、DTヘリカル核融合炉10ではτα*/τE=3の値を用いている。この比をどこまで大きくとれるかを調べるために3からスキャンし4,5,6と大きな値について計算してみた。そのときの許容できる最大値に近い値がτα*/τE=5であり、そのときの熱的不安定自己点火領域に接近する様子を調べたのが図13である。これより大きな値を用いると、もはや自己点火領域は存在しない。ヘリウム灰粒子が短時間で除去できないと、ヘリウム灰粒子が不純物としてたまり、燃料粒子のプラズマ密度に対する割合が減少するいわゆる燃料希釈現象が起き、核融合反応が減少するからである。
【0143】
通常、DTヘリカル核融合炉10では閉じ込め増倍度はγISS95=1.92の値を用いている。もし、運転中に閉じ込め増倍度変化することを想定した場合でも本不安定制御法が使用できるかどうか調べておく必要がある。そこで低温・高密度の定常不安定領域に達した後の130秒で閉じ込め増倍度を1.92から1.8にステップ状に減少させた場合の変化を調べたのが図14である。この範囲であれば定常不安定運転点は維持でき制御できていることがわかる。また、閉じ込め増倍度が減少すると、ヘリウム灰割合は減少し、POPCON図(図11)からも理解できるように、密度が減少し、温度が上昇することがわかる。この変化の方向は熱的に安定な自己点火領域での変化とは逆である。
【0144】
図14と逆に、運転中に閉じ込め増倍度(γISS95)が増大する場合について調べた結果が図15(a)〜(d)である。低温・高密度の定常不安定領域に達した後の130秒で閉じ込め増倍度を1.92から2.2に増大させた場合の変化を調べた。この範囲であれば定常不安定運転点を維持制御できていることがわかる。閉じ込め増倍度が増大すると、ヘリウム灰割合は増大し、またPOPCON図(図11)からも理解できるように、密度が増大し、温度が減少することがわかる。この変化の方向も熱的に安定な自己点火領域での変化とは逆である。
【0145】
通常、DTヘリカル核融合炉10では酸素不純物の電子密度に対する割合はfo=0.75%の値を用いている。さらに不純物が増大するとイグニッション領域は狭くなる。そのためにどの程度までの不純物のステップ状の増大が本不安定制御法にとって許容できるかを調べた結果が図16(a)〜(d)である。すなわち、低温・高密度の定常不安定領域に達した後の130秒に酸素不純物の電子密度に対する割合をfo=0.75%から1%に増加させた。この範囲の不純物量であれば定常不安定運転点を維持制御できることがわかる。それ以上に不純物量が増加すると,自己点火領域が狭くなり,自己点火状態が維持できなくなる。
【0146】
次に第3実施形態について説明する。なお、図5Cにおいて、その上段(1段目)に各制御における項目において、熱的安定領域で運転しているか不安定領域で運転しているかを示す制御係数cの値を示し、どのような制御が行われているかを表し、2段目に核融合出力の設定波形を取り、3段目に密度制御波形を示し、4段目に時間軸を共有させてプラズマ密度限界マージンの結果の波形を示し、下段(5段目)に外部加熱パワーの波形を示した。なお、熱的に不安定な領域では図5Cの最下段の外部加熱パワーの波形に示すように、外部加熱パワーのフィードバックは行わずプレプログラムとした。
また、第2実施形態および第3実施形態では、第1実施形態ですでに説明した構成は同じ符号を付して説明を省略する。
【0147】
また、ここでは、図4Cに示すような制御システムを使用することで、DTヘリカル型核融合炉10の制御を行うものである。
図4Cに示すように、PIDフィードバック制御手段27は、核融合出力の設定値と実際の値との偏差により、DT燃料を制御する場合に、DT燃料PIDフィードバック制御手段として機能し、かつ、プラズマ密度の設定値と、プラズマ運転密度の値との偏差により、DT燃料を制御する場合に、DT燃料密度PIDフィードバック制御手段として機能する構成である。
【0148】
図5Cに示すように、この制御方法は、外部加熱パワーを加えてプレプログラム制御する一方、燃料制御において、予め設定された時間に密度PIDフィードバック制御を行う制御から、核融合出力がある一定値に達したら、核融合出力の偏差を用いた熱的不安定燃料供給PIDフィードバック制御(15式の制御係数が負(-1))によって熱的に不安定な低温・高密度領域の自己点火領域に到達する運転制御方法である。
【0149】
図4Cの制御システムを用いて、図5Cで示すような運転法で、図6Cに示す計算アルゴリズムのフローチャートと、10秒から熱的不安定制御を行い核融合出力立ち上げ時間が50秒の計算結果(図17)を用いて、本運転方法のシミュレーション結果を詳しく説明する。これはLHDヘリカル装置において得られた密度分布が箱形分布、温度分布が広い放物分布を持つ低温・高密度運転に基づいた核融合炉の運転法である。これはプレ制御を経た後、密度PIDフィードバック制御、熱的不安定用燃料供給PIDフィードバック制御に移行する運転であり、その実施例について図17を用いて説明する。DTヘリカル型核融合炉10も、図2(a)に示す構成において、主半径R=14.0m、有効小半径a=1.73m、磁場強度Bo=6Tのパラメータとなるように設定されているものとする。本運転法の計算に際しては、図5A、Bの放物分布を持つ場合の計算とは異なり、箱形密度分布なので計算はより複雑であるので、パワーバランスを計算する際にあらかじめその係数を計算しておかねばならない。
まず、箱形密度分布には次のハイパボリック関数を用いる。
【0150】
【数16】
【0151】
ただし、xはプラズマ中心から小半径方向の距離である。
したがって密度分布n(x)は次の17式になる。
【0152】
【数17】
【0153】
ここでは密度が小半径のx=0.45の場所で急激に減少するように、an=0.2 とおいた。
温度分布は6式においてαT=0.25とおいて得られる広い放物分布を用いた。これらの箱形密度分布と広い放物分布の温度分布波形を図18に示す。
このような箱型密度分布の場合のプラズマコンダクション損失パワーPLは、4式の1/(1+αn+αT)の係数に、次の18式で得られる値を代入して計算する。
【0154】
【数18】
【0155】
ただしWはプラズマエネルギー、
kはボルツマン定数である。
放物密度分布では、αn、αTを用いて単に1/(1+αn+αT)を計算すればよいが、箱形密度分布では、4式の1/(1+αn+αT)に、上のようにして数値積分して得られた値0.194429を用いて計算すればよい。
【0156】
制動輻射損失パワーの体積平均値は、3式の1/(1+2αn+0.5αT)に次の19式で得られる値を代入して計算する。
【0157】
【数19】
【0158】
箱形密度分布では、3式の1/(1+2αn+0.5αT)に、上のようにして数値積分して得られた値0.172891を用いて計算すればよい。アルファ粒子加熱の場合は箱形密度分布について直接積分することで求める。
【0159】
箱形密度分布の場合はこのようにして、1式あるいは11式のパワーバランスを計算することができる。図5Cの1段目に示す10秒から12.8秒にかけて行う密度PIDフィードバック制御は次の20式と21式を用いて計算する。
【0160】
【数20】
【0161】
ただし、20式中においてeDT(n)は密度の偏差で、
【0162】
【数21】
【0163】
で与えられる。
n(0)はピーク密度の測定値、
nGWはピーク密度の設定値、
その他の数値は14式で用いたのと同じである。すなわち、
SDT0は定数でSDT0=4x1020m-3 、
Gf0(t)はゲインで、2〜5の値、
Tintは積分時間で10秒、
Tdは微分時間で1秒とする。
【0164】
図5Cの運転法では、図5Cの5段目(Y軸が外部加熱パワー)に示すように、第一設定時間(10秒)までは単にプラズマを維持するためだけに5MWの外部加熱パワーを印加する。このフェーズをプレ制御フェーズと呼ぶ。第一設定時間(10秒)時に外部加熱パワーを印加して、同時に密度PIDフィードバック制御を行い、実際のプラズマ密度がプラズマ密度設定波形に等しくなるようにしている。第5設定時間(12.8秒)は、それ以降は熱的不安定領域での燃料供給PIDフィードバック制御を行うので、そのための十分な核融合出力が得られる時間である。第4設定時間(50秒)は、第1設定時間(10秒)経過後に核融合出力が1.9GWの所定の値に到達するように制御するために設定される時間である(核融合出力立ち上げ時間)。外部加熱パワーは第5設定時間(第1設定時間)での値をしばらく保持し、その後、核融合出力の順調な増大を助けるように段階的に減少させ、24秒で0になるように設定している。外部加熱パワーを0にする時間を遅らせる分にはかまわないが、その時間を早めすぎると順調な核融合出力立ち上げが損なわれてしまう。なぜなら、アルファ粒子加熱が十分に大きくなるまで外部加熱パワーがプラズマの加熱を助けてやる必要があるからである。
【0165】
ここでは外部加熱パワーを印加する時間を少しでも短くして省エネルギーをはかるとともに、50秒で定常イグニッション領域に達することができるのに十分な値をとり24秒とした。また、外部加熱パワーを段階的に減少させる場合、1つのステップあたりの減少量を大きくすると、核融合出力を増大させることができなくなるので、1ステップあたり20MW以下にしている。実際、図17に示すように、10秒まで5MW印加してプレプログラム制御した後、燃料制御において予め設定された時間(10秒−12.8秒)に密度PIDフィードバック制御を行う。核融合出力がある程度大きくなり、図17(b)の左下の点線に達したら、すなわち12.8秒に密度PIDフィードバック制御から14式と15式を用いた核融合出力の偏差を用いた熱的不安定用PIDフィードバック制御(c=−1)に移る。同時に核融合出力の設定値を実際の核融合出力よりも小さくなるようにしておき、密度の急上昇を引き起こす。その後50秒まで核融合出力の立ち上げを直線的に行い、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域に到達する。なお、ここでは、図5Aで示した第3設定時間に相当する設定時間はない。
【0166】
このシミュレーションは、図6Cのフローチャートに示すように、大きく分けてプレプログラム制御フェーズ(プレ制御フェーズ)(S2、S3、S4、S5、S6)と、燃料供給のための密度PIDフィードバック制御フェーズ(S7)と核融合出力を用いた燃料供給のためのPIDフィードバック制御フェーズ(PIDフィードバック制御フェーズ)(S8、S9、S10、S11、S12、S15)に分かれている。初めの境となる時間を第1設定時間(10秒)し、次の境となる時間を第5設定時間とする。はじめに、DTヘリカル型核融合炉10の主半径、有効小半径、磁場強度、プラズマ密度、イオン温度、アルファ粒子密度、不純物密度の各値を入力する。以下、図5Cも併用しながら詳しく説明する。なお、図6Cおよび図5Cにおいて、外部加熱パワーおよびDT燃料のプレ制御を第1ステップとし、DT燃料によるプラズマ密度のPIDフィードバック制御を第2ステップとし、外部加熱パワーの段階的な減少の制御およびDT燃料のPIDフィードバック制御を第3ステップとする。
【0167】
図6Cおよび図4Cに示すように、ステップS1でDTヘリカル核融合炉10の装置パラメータの各値が入力手段21から入力されて、計算が開始されると、時間軸をX軸とし、プレプログラム制御による計算結果を出力手段29により表示モニタ30に出力して、図17に示す各グラフを表示するようにしている。すなわち、第1設定時間内におけるプラズマ密度n(0)[m3]、プラズマ密度限界値n(0)limおよびイオン温度Ti(0)[keV]のY軸値を図17(a)に、ヘリウム灰割合fαおよび核融合出力Pf[GW]のY軸値を図17(b)に、プラズマ密度限界マージンn(0)lim/n(0)および平均ベータ値<β>のY軸値を図17(c)に、外部加熱パワーPEXT[MW]および DT燃料供給率SDT[m−3/s]のY軸値を図17(d)に表示するように表示モニタ30に出力する。このプレプログラム制御フェーズでは、ステップS3において、密度、温度、不純物等のプラズマパラメータ、閉じ込め時間によるプラズマコンダクションロス、アルファ粒子加熱パワー、制動輻射損失パワー、シンクロトロン輻射パワーを計算する。さらに、ステップS3で、各式を適宜用いてプラズマ密度限界値およびプラズマ密度限界マージンを計算している。
【0168】
第1設定時間10秒後も同様に計算を続け、同様に表示モニタ30に出力し、60秒まで計算を続ける。ここでグラフを作成するための各値は、シミュレーションを終了するまで随時出力される。つまり、ステップS3〜ステップS15まで進みながら随時各値が出力される。
【0169】
ここで、図6Cに示すステップS2〜S6までは、図4Cに示す外部加熱パワープレ制御手段23による外部加熱パワーの供給と、DT燃料プレ制御手段25によるDT燃料の供給が行われている。そして、計時手段22から計時される時間の信号により、外部加熱パワープレ制御手段23およびDT燃料プレ制御手段25のそれぞれは、第1設定時間が経過したか否かを判定している。
【0170】
そして、外部加熱パワープレ制御手段23およびDT燃料プレ制御手段25は、第1設定時間である10秒が経過するか否かを判定して(ステップS5)、10秒が経過していない時には、その時間でのプレ制御における外部加熱パワーとプレ制御におけるDT燃料を供給し(ステップS6)、その値に基づいて、再度、ステップS2、ステップS3を10秒に到達するまで計算を繰り返す。
【0171】
つぎに、ステップS5において、10秒が経過したと判定されると、ステップS8(12.8秒)までの核融合出力がある程度大きくなる間、DT燃料の供給をプラズマ密度によるPIDフィードバック制御により行う(ステップS7)。12.8秒になり、核融合出力がある程度大きくなり核融合出力によって制御できる様になると、ステップS3の計算結果に基づいて、DT燃料の供給についてPIDフィードバック制御を、15式の制御係数c=-1とおいて、核融合出力の偏差によって行い、同時に核融合出力の設定値を実際の核融合出力の値が越えたときに(図17(b)の左下点線)、燃料供給を急激に起こし密度を急上昇させる(ステップS9)。このように、熱的不安定化燃料供給PIDフィードバック制御に入った瞬間に密度が急上昇するが、50MWの外部加熱パワーはプレプログラム制御フェーズにあり一定なので、プラズマ密度限界マージンは1以上の値である。その後、外部加熱パワーを段階的に減少させ、24秒(ステップS10)で0MWとする(ステップS11)。外部加熱パワーを0としても、アルファ粒子加熱のために正味の加熱パワーが増大するので核融合反応は持続する(ステップS13)、そして、50秒(ステップS14)であるか否かが判定され50秒に達すると、熱的に不安定な自己点火領域に到達する。
【0172】
ここで、図6Cに示すステップS4〜S6までは、図4Cに示す外部加熱パワーをプレ制御する外部加熱パワープレ制御手段23およびDT燃料およびプラズマ密度をPIDフィードバック制御するDT燃料PIDフィードバック制御手段27によるそれぞれの制御が行われる。そして、ステップS7では、PIDフィードバック制御手段27によりプラズマ密度に対する制御が行われ、ステップ11〜S14までは、PIDフィードバック制御手段27によりDT燃料の供給に対する制御が行われている。
【0173】
このようにして熱的に不安定な領域を通って第4設定時間(50秒)に核融合出力が1.9GWまで増大し(ステップS13)、その後、計算終了時間60秒までに運転点は熱的に不安定な自己点火領域の定常値に達するので(ステップS14)、各値を定常値として出力し(ステップS15)、シミュレーションを終了する。
【0174】
これらのシミュレーションは、DTヘリカル型核融合炉10においては図4Cに示すような制御システム20によって実行される。入力ターミナルとなる入力手段21から、外部加熱パワーのプレプログラム波形PEXT、核融合出力波形の設定値Pf0、密度限界係数γSUDO、燃料供給のプレプログラム波形SDT、燃料供給のPIDフィードバック制御において熱的不安定領域に移動する時間を入力する。DTプラズマの密度nを計測し、プラズマ密度の設定値nGWの偏差(21式)から燃料供給をPIDフィードバック制御する。また、DTプラズマから発生した中性子を計測し、全中性子パワーPnを算出し、核融合出力Pfを出力する。
【0175】
密度フィードバック制御の後、この出力した核融合出力Pfと核融合出力波形の設定値Pf0の差(15式)を用いて燃料供給を熱的不安定用PIDフィードバック制御する。また、ボロメータで制動輻射損失パワーPBを計測し、電子サイクロトロン検出器でシンクロトロン輻射パワーPSを計測し、密度干渉計でプラズマ密度nを計測し、これらからパワーバランスを計算して正味の加熱パワーPNET(9式)を算出し、プラズマ密度マージンγDLM=n(0)lim/n(0)(8式)を算出する。プラズマ密度マージンが1以下にならない程度に密度限界係数を設定する。もしそれ以下だと1以上になるように入力し直し運転する。(なお、最近のLHD実験の低温度・高密度運転においては密度限界はほとんど存在しなくなりつつある。)またそれぞれ測定したプラズマパラメータを表示モニタ30に出力して図示しない記憶手段に保存する。
【0176】
図17に対応したPOPCON図を図19に示す。これからわかるように、外部加熱パワーの低い鞍点付近を通って、運転点が熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に向かって移動することがわかる。この移動する際の運転点は、イグニッション境界線の近傍で、左旋回するように移動して設定核融合出力線上の熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達して維持される状態となる。なお、初期に密度制御を行っているために7.5keV以上のプラズマ温度にはならないことがわかる。
【0177】
ここで、放物密度分布の熱的安定点と、箱形密度分布の熱的不安定点での定常値について比較検討してみる。結果は図20の表に示しているが、放物密度分布の熱的安定点でのピーク密度はn(0)=2.8x1020m−3であるが、箱形密度分布の熱的不安定点の場合n(0)=9.8x1020m−3と高い。その結果、エネルギー閉じ込め時間は放物密度分布の熱的安定点での場合τE=1.9秒と短いが、箱形密度分布の熱的不安定点の場合τE=4.7秒と長くなる。したがって、4式からわかるように、プラズマ伝導損失パワーは放物密度分布の熱的安定点での場合PL=282MWと大きく、箱形密度分布の熱的不安定点の場合PL=96MWと大幅に減少する。その結果、箱形密度分布の熱的不安定点の場合、ダイバータ板にいく熱流束、あるいは熱負荷が大幅に減少し、板の損耗が減ることになる。
【0178】
制動輻射損失パワーに関して説明するために1式のパワーバランスの定常状態をとって考える。すなわち自己点火領域での定常状態ではdW/dt=0でかつPEXT=0であるから、パワーバランスは次の22式になる。
【0179】
【数22】
【0180】
これはアルファ粒子加熱Palphaが、プラズマ伝導損失パワーPLと制動輻射損失パワーPBの和に等しいことを表している。(ここではシンクロトロン輻射パワーPSはプラズマ温度が低いために無視した。)自己点火領域で定常状態では核融合出力は一定であるから、アルファ粒子加熱Palphaも一定である。したがって、箱形密度分布の熱的不安定点の場合のようにプラズマ伝導損失パワーPLが小さくなれば、制動輻射損失パワーPBは大きくなる。すなわち、放物密度分布の熱的安定点の場合のPB=57MWよりも,箱形密度分布の熱的不安定点の場合の方がPB=248MWと大きくなる。したがって、箱形密度分布の熱的不安定点の場合、増大した制動輻射損失パワーによって第一壁が暖まる代わりに、図2(b)に示すようなダイバータ板への熱負荷が減少するのである。ここが低温・高密度運転の非常に優れた点である。
【0181】
図20の表に示すように、放物密度分布の熱的安定点でのダイバータ熱負荷はΓdiv=1.6MW/m2、箱形密度分布の熱的不安定点の場合Γdiv=0.54MW/m2と3分の1に減少する。このダイバータ熱負荷は板幅1mの場合の計算であるが、実際の核融合炉になると約0.1m程度になると考えられるので、ダイバータ熱負荷は10倍大きくなる。したがって、放物密度分布の熱的安定点でのダイバータ熱負荷はΓdiv=16MW/m2、箱形密度分布の熱的不安定点の場合Γdiv=5.4MW/m2となる。現在の冷却技術では定常状態で10MW/m2と考えられているので、低温・高密度運転は現実的であり、さらなるダイバータに関する技術開発を必要としない利点がある。
【0182】
以上、説明したように、DTヘリカル型核融合炉10では、核融合出力の偏差を用いた燃料供給PIDフィードバック制御において、熱的に安定な自己点火領域から不安定な自己点火領域に、核融合出力の設定値のわずかな変更と制御係数を変化させるのみで移動することができる。また、本制御方法によって最初の30秒の立ち上げ時期から熱的に不安定な自己点火領域まで行くことも可能であることが分かる。結局、核融合出力の偏差を用いた本燃料供給PIDフィードバック制御法を用いれば、今までは不安定と考えられていた自己点火領域でも安定に運転して制御できることが分かる。
【0183】
なお、図7から図17では、プラズマ密度限界値がプラズマ運転密度よりも常に大きくなるように設定し、プラズマ密度限界マージンを1より大きくしている。本不安定制御法そのものは、外部加熱パワーのプレプログラムを行う限り、外部加熱パワーには無関係で、またプラズマ密度限界値がプラズマ運転密度よりも高くありさえすればよい。
【0184】
また、図7から図16では、核融合出力の立ち上げ時間を120秒に設定しているが、これより長い時間でも短い時間でも不安定制御は可能であり、前記した秒数に限定されるものではない。その核融合出力の立ち上げ時間の短い例が図17になっている。
さらに、プラズマ密度限界マージンを1.1に近づける設定の開始から終了までの設定をプレ制御からPIDフィードバック制御フェーズにまたがるように行った場合の時間設定についても、外部加熱パワーのプレプログラムの時間設定についても、前記した秒数に限定されるものではない。
【0185】
なお、本発明の熱的に不安定な領域における制御のフェーズでは、密度限界マージンによる加熱パワーのフィードバック制御は困難な制御方法なので(図4B、図4C)、密度限界マージンを1以上になるようにあらかじめプレプログラムによって設定しておく必要がある。
【0186】
図17に示した運転法においても、密度PIDフィードバック制御フェーズで密度の設定値を調整することによって、加熱パワーの最小点であるPOPCONの鞍点付近を通り、熱的不安定点に到達する運転も可能であり、前記の運転法のみに限定されるものではない。
【0187】
図5B、Cで示す運転のような熱的不安定領域に早い段階で移行する運転では、時間に応じて制御を行っている。それは基本的にはプラズマのパラメータの変化、そのときの条件を見て順次制御を行っているので、前記の時間を中心にした運転法のみに限定されるものではない。
なお、すでに説明した第1実施形態において制御係数cの値を正から負の値に切り替えるタイミングは、核融合出力の設定値を核融合出力の値よりも一旦小さくするときと同時か、あるいは、一旦小さく設定した以降であればよい。つまり、制御係数cの値を正から負の値に切り替えるタイミングは、核融合出力の値が一旦小さくした核融合出力の設定値を超えた時、あるいはそれ以降であれば構わない。それによって燃料供給がおこり、急激にプラズマ密度が上昇し、熱的不安定領域に近づく。その後に核融合出力の定常設定値を元に戻せばよい。
また、以上説明したすべての実施形態では、シミュレーションにより制御装置および制御方法を示したが、このシミュレーションにより自己点火領域に到達できたことが、実際のDTヘリカル型核融合炉10を制御できたと同等であるといえる。
【図面の簡単な説明】
【0188】
【図1】本発明に係るDTヘリカル型核融合炉の2つの運転領域(1.高温・低密度、2.低温・高密度)を示すPOPCON図である。
【図2】(a)は、本発明に係るDTヘリカル型核融合炉の一部を切り欠いて全体を模式的に示す斜視図である。(b)は、本発明に係るヘリカル型核融合炉のダイバータ部の図である。
【図3】本発明に係るヘリカル型核融合炉の断面状態を模式的に示す断面図である。
【図4A】本発明に係るヘリカル型核融合炉の運転制御システムブロック図であり、ヘリカル型核融合炉のシミュレーションのプラズマ密度限界マージンの設定をプレ制御から熱的安定用PIDフィードバック制御の後に,熱的不安定用PIDフィードバック制御を行う運転を行う場合に用いる制御ダイヤグラムである。
【図4B】本発明に係るヘリカル型核融合炉のシミュレーションにおいて,プレ制御からすぐに熱的不安定用PIDフィードバック制御を行う運転を行う場合に用いる制御ダイヤグラムである。
【図4C】本発明に係るヘリカル型核融合炉のシミュレーションにおいて,プレ制御から、密度PIDフィードバック制御を行い、すぐに熱的不安定用PIDフィードバック制御を行う運転を行う場合に用いる制御ダイヤグラムである。
【図5A】本発明に係るヘリカル型核融合炉のシミュレーションのプラズマ密度限界マージンの設定をプレ制御から熱的安定用PIDフィードバック制御の後に、熱的不安定用PIDフィードバック制御を行う運転法を示すグラフ図である
【図5B】本発明に係るヘリカル型核融合炉のシミュレーションにおいて、プレ制御からすぐに熱的不安定用PIDフィードバック制御を行う運転法を示すグラフ図である。
【図5C】本発明に係るヘリカル型核融合炉のシミュレーションにおいて,プレ制御から、密度PIDフィードバック制御を行い、すぐに熱的不安定用PIDフィードバック制御を行う運転法を示すグラフ図である。
【図6A】本発明に係るヘリカル型核融合炉の運転法をシミュレーションする計算の手順を示すフローチャートであり、図4Aおよび図5(a)にそれぞれ対応している。
【図6B】本発明に係るヘリカル型核融合炉の運転法をシミュレーションする計算の手順を示すフローチャートであり、図4Bおよび図5(b)にそれぞれ対応している。
【図6C】本発明に係るヘリカル型核融合炉の運転法をシミュレーションする計算の手順を示すフローチャートであり、図4Cおよび図5(c)にそれぞれ対応している。
【図7】(a)、(b)、(c)、(d)は、図6Aで示すフローチャートに基づいて得られた各値に基づいて示したグラフであり、図5(a)の運転法を用いて、プラズマ密度限界マージンを設定し、核融合出力立上げ時間を120秒(核融合出力立上げ時間幅は90秒)に設定し,130秒で熱的不安定用PIDフィードバック制御を行う場合のシミュレーション結果を示す各グラフ図である。ただしプレプログラム制御フェーズでの外部加熱パワーは最大40MWである。
【図8】図7で示した運転軌跡をPOPCON上に描いたグラフ図である。
【図9】(a)は、本発明である熱的不安定用燃料PIDフィードバック制御法による不安定自己点火領域における安定化のメカニズムを説明する図である。(b)は、熱的安定自己点火領域での燃料PIDフィードバック制御による核融合出力の制御のメカニズムを説明する図である。
【図10】(a)、(b)、(c)、(d)は、図6(b)で示すフローチャートに基づいて得られた各値に基づいて示したグラフであり、図5(b)の運転法を用いて、プレ制御からすぐに熱的不安定用PIDフィードバック制御(開始時間30秒)を行う場合のシミュレーション結果を示す各グラフ図である。ただしプレプログラム制御フェーズでの外部加熱パワーは最大50MWである。
【図11】図10で示した運転軌跡をPOPCON図上に描いたグラフ図である。
【図12】(a)、(b)、(c)、(d)は、図6(b)で示すフローチャートに基づいて得られた各値に基づいて示したグラフであり、図5(b)の運転法を用いて、プレ制御からすぐに熱的不安定用PIDフィードバック制御(開始時間30秒)を行う場合のシミュレーション結果を示す各グラフ図である。ただし重水素粒子閉じ込め時間のエネルギー閉じ込め時間に対する比(τp*/τE)を15の大きい値にとった場合の図である。
【図13】(a)、(b)、(c)、(d)は、図6(b)で示すフローチャートに基づいて得られた各値に基づいて示したグラフであり、図5(b)の運転法を用いて、プレ制御からすぐに熱的不安定PIDフィードバック制御(開始時間30秒)を行う場合のシミュレーション結果を示す各グラフ図である。ただし重水素粒子閉じこめ時間のエネルギー閉じ込め時間に対する比(τp*/τE)は3のまま,ヘリウム灰の粒子閉じ込め時間のエネルギー閉じ込め時間に対する比(τα*/τE)を5の大きい値にとった場合の図である。
【図14】(a)、(b)、(c)、(d)は、図6(b)で示すフローチャートに基づいて得られた各値に基づいて示したグラフであり、図5(b)の運転法を用いて、プレ制御からすぐに熱的不安定PIDフィードバック制御(開始時間30秒)を行う場合のシミュレーション結果を示す各グラフ図である。ただし重水素粒子閉じ込め時間のエネルギー閉じ込め時間に対する比(τp*/τE)は3,ヘリウム灰の粒子閉じ込め時間のエネルギー閉じ込め時間に対する比(τα*/τE)は3,130秒時に閉じ込め増倍度(γISS95)を1.92から1.8に減少させた場合の擾乱に対する本不安定制御法のロバスト性を調べた図である。
【図15】(a)、(b)、(c)、(d)は、図6(b)で示すフローチャートに基づいて得られた各値に基づいて示したグラフであり、図5(b)の運転法を用いて、プレ制御からすぐに熱的不安定用PIDフィードバック制御(開始時間30秒)を行う場合のシミュレーション結果を示す各グラフ図である。ただし重水素粒子閉じ込め時間のエネルギー閉じ込め時間に対する比(τp*/τE)を3,ヘリウム灰の粒子閉じ込め時間のエネルギー閉じ込め時間に対する比(τα*/τE)は3,130秒時に閉じ込め増倍度を1.92から2.2に増大させた場合の擾乱に対する本不安定制御法のロバスト性を調べた図である。
【図16】(a)、(b)、(c)、(d)は、図6(b)で示すフローチャートに基づいて得られた各値に基づいて示したグラフであり、図5(b)の運転法を用いて、プレ制御からすぐに熱的不安定PIDフィードバック制御(開始時間30秒)を行う場合のシミュレーション結果を示す各グラフ図である。ただし重水素粒子閉じ込め時間のエネルギー閉じ込め時間に対する比(τp*/τE)は3,ヘリウム灰の粒子閉じ込め時間のエネルギー閉じ込め時間に対する比(τα*/τE)は3,130秒時に酸素不純物を入射し、その密度に対する比をfo=0.75%から1%に増大させた場合の擾乱に対する本不安定制御法のロバスト性を調べた図である。
【図17】(a)、(b)、(c)、(d)は、図6(c)で示すフローチャートに基づいて得られた各値に基づいて示したグラフであり、図5(c)の運転法を用いて、プレ制御から、密度PIDフィードバック制御後、すぐに熱的不安定PIDフィードバック制御(開始時間12.8秒)を行う場合のシミュレーション結果を示す各グラフ図である。ただし密度分布は箱形、温度分布は広い放物分布である。
【図18】箱形形状をした密度分布(箱形密度分布)と広い放物状の温度分布図である。
【図19】図17で示した運転軌跡をPOPCON上に描いたグラフ図である。
【図20】シミュレーションにおいて放物分布(密度分布係数1、温度分布係数1)と、箱形密度分布の場合の熱的不安定領域での定常値としたときのプラズマパラメータの熱的安定領域と不安定領域での定常状態の値を示す一覧表図である。
【符号の説明】
【0189】
1 炉心プラズマ
2 ブランケット
3 超伝導ヘリカルコイル
4 プラズマ真空容器
5 断熱真空容器
6 超伝導ポロイダルコイル
7 電磁力支持構造
8 外部加熱装置(外部加熱パワー発生装置)
9 DT燃料供給装置(DT燃料
10 ヘリカル型核融合炉(DT磁気閉じ込め型核融合発電装置)
20 制御装置
30 表示モニタ(表示装置)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部加熱パワーおよびDT燃料をプレ制御して供給し、かつ、核融合炉の核融合出力の偏差をeDTとし、核融合出力の設定値をPfoとし、実際の核融合出力の値をPfとし、制御係数をcとして、eDT=c(1−Pf/Pfo)の演算で算出される値を用いて前記DT燃料の供給をPIDフィードバック制御するDT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御方法において、
前記プレ制御の後における予め設定された設定時間から、核融合出力の設定値を予め設定した値より一旦小さく再設定しておくと共に、その後、当該設定値を元の値に戻し、かつ、前記再設定時に前記制御係数cの値を正から負の値に変換して、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達させ、その状態を維持するように前記PIDフィードバック制御を行うことを特徴とするDT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御方法。
【請求項2】
外部加熱パワーおよびDT燃料を供給して核融合炉の核融合出力を行うDT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御方法において、
外部加熱パワー発生装置が炉心プラズマに供給する前記外部加熱パワーを、予め設定した値となるように当該外部加熱パワーのプレ制御を行うと共に、DT燃料供給装置が前記炉心プラズマに供給する前記DT燃料を、予め設定した値となるように当該DT燃料のプレ制御を行う第1ステップと、
前記外部加熱パワーのプレ制御および前記DT燃料のプレ制御を行う時間が予め設定された第1設定時間を経過した時に、前記外部加熱パワー発生装置からの外部加熱パワーを、炉心プラズマのプラズマ密度の値とプラズマ密度限界値とにより演算される外部加熱パワーの値に基づいて所定の時間で0とするようにフィードバック制御を行うと共に、前記DT燃料供給装置からのDT燃料の供給を、前記核融合炉の核融合出力の値と核融合出力の設定値との偏差に基づいて、設定値になるようにPIDフィードバック制御を行う第2ステップと、を含み、
前記第2ステップにおいて、熱的に安定な高温・低密度の自己点火領域に到達した後に、核融合出力の設定値を予め設定した値より一旦小さく再設定しておくと共に、その後、当該設定値を元の値に戻し、かつ、前記核融合出力の偏差をeDTとし、核融合出力の設定値をPfoとし、実際の核融合出力をPfとして算出するeDT=c(1−Pf/Pfo)において、前記再設定時に前記制御係数cの値を、正から負の値に変換して、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達させ、その状態を維持するように前記PIDフィードバック制御を行うことを特徴とするDT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御方法。
【請求項3】
外部加熱パワーおよびDT燃料を供給して核融合炉の核融合出力を行うDT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御方法において、
外部加熱パワー発生装置が炉心プラズマに供給する前記外部加熱パワーを、予め設定した値となるように外部加熱パワーのプレ制御を行うと共に、DT燃料供給装置が前記炉心プラズマに供給する前記DT燃料を、予め設定した値となるようにDT燃料のプレ制御を行う第1ステップと、
前記外部加熱パワーのプレ制御を引き続き行うと共に、前記DT燃料のプレ制御を行う時間が予め設定された第1設定時間を経過した時に、前記DT燃料供給装置からのDT燃料の供給を、前記核融合炉の核融合出力の値と核融合出力の設定値との偏差に基づいて、設定値になるようにPIDフィードバック制御を行う第2ステップと、を含み、
前記第2ステップにおいて、前記外部加熱パワーを炉心プラズマに供給する値を予め設定された時間で0とするように段階的に減少させ、かつ、
当該第2ステップにおいて、前記プレ制御時における核融合出力の設定値を、核融合出力の値が越えたときに、前記核融合出力の偏差をeDTとし、核融合出力の設定値をPfoとし、実際の核融合出力をPfとして算出するeDT=c(1−Pf/Pfo)において、負の値の前記制御係数cを用いて、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達させ、その状態を維持するように前記PIDフィードバック制御を行うことを特徴とするDT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御方法。
【請求項4】
運転時に使用されるプラズマ密度分布を箱形分布とし、プラズマ密度分布およびプラズマ温度分布を固定して演算するパワーバランス方程式で前記プラズマ密度分布が箱型分布で使用される係数を予め算出して求め、かつ、前記外部加熱パワーおよびDT燃料を供給して核融合炉の核融合出力を行うDT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御方法において、
外部加熱パワー発生装置が炉心プラズマに供給する前記外部加熱パワーを、予め設定した値となるように外部加熱パワーのプレ制御を行うと共に、DT燃料供給装置が前記炉心プラズマに供給する前記DT燃料を、予め設定した値となるように前記DT燃料のプレ制御を行う第1ステップと、
前記外部加熱パワーのプレ制御を引き続き行うと共に、前記DT燃料のプレ制御を行う時間が予め設定された第1設定時間を経過した時に、予め設定されたプラズマ密度の設定値と、前記炉心プラズマから検出されたプラズマ運転密度の値との偏差に基づいて、前記DT燃料供給装置から供給されるDT燃料による前記核融合炉のプラズマ密度を、前記プラズマ密度の設定値になるようにPIDフィードバック制御する第2ステップと、
前記第2ステップを行う設定時間が経過した後に、前記外部加熱パワーを炉心プラズマに供給する値を予め設定された時間で0とするように段階的に減少させる前記外部加熱パワーのプレ制御を行うと共に、前記DT燃料供給装置からのDT燃料の供給を、前記核融合炉の核融合出力の値と核融合出力の設定値との偏差に基づいて、当該設定値になるようにPIDフィードバック制御を行う第3ステップと、を含み、
前記第3ステップにおいて、前記プラズマ密度のPIDフィードバック制御時における核融合出力の設定値を、核融合出力の値が越えたときに、前記核融合出力の偏差をeDTとし、核融合出力の設定値をPfoとし、実際の核融合出力をPfとして算出するeDT=c(1−Pf/Pfo)において、負の値の前記制御係数cを用いて、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達させ、その状態を維持するように前記PIDフィードバック制御を行うことを特徴とするDT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御方法。
【請求項5】
外部加熱パワー発生装置およびDT燃料供給装置に対して予め設定されたプレ制御およびPIDフィードバック制御を行い熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域に到達させるDT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御装置において、
前記DT燃料供給装置からのDT燃料のPIDフィードバック制御において、核融合出力の設定値を予め設定した値より一旦小さく再設定しておくと共に、その後、当該設定値を元の値に戻し、かつ、核融合出力の偏差をeDTとし、核融合出力の設定値をPfoとし、実際の核融合出力をPfとして算出するeDT=c(1−Pf/Pfo)において、負の値の前記制御係数cを用いて、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達させ、その状態を維持するように当該PIDフィードバック制御を行うことを特徴とするDT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御装置。
【請求項6】
外部加熱パワーおよびDT燃料を供給して核融合炉の核融合出力を行うDT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御装置において、
前記核融合炉の核融合出力に用いられる予め定められた数式に対する変数を入力する入力手段と、
この入力手段により入力された変数の各値に基づいて、外部加熱パワー発生装置が供給する外部加熱パワーを、予め設定した値となるようにプレ制御する外部加熱パワープレ制御手段と、
前記入力手段により入力された変数の各値に基づいて前記DT燃料供給装置が供給するDT燃料を、予め設定した値にプレ制御するDT燃料プレ制御手段と、
前記外部加熱パワー制御手段によるプレ制御の後に、前記炉心プラズマから検出されたプラズマ密度の値とプラズマ密度限界値とにより演算される外部加熱パワーの値に基づいて、前記外部加熱パワー発生装置からの外部加熱パワーを、所定の時間で0とするようにフィードバック制御する外部加熱パワーフィードバック制御手段と、
前記DT燃料プレ制御手段によるプレ制御の後に、前記核融合炉から検出された核融合出力の値と核融合出力の設定値との偏差に基づいて、前記DT燃料供給装置が供給するDT燃料を、当該設定値となるようにPIDフィードバック制御するDT燃料PIDフィードバック制御手段と、を備え、
前記DT燃料PIDフィードバック制御手段は、熱的に安定な高温・低密度の自己点火領域に到達した後に、核融合出力の設定値を予め設定した値より一旦小さく再設定しておくと共に、その後、当該設定値を元の値に戻し、かつ、前記核融合出力の偏差をeDTとし、核融合出力の設定値をPfoとし、実際の核融合出力をPfとして算出するeDT=c(1−Pf/Pfo)において、前記再設定時に前記制御係数cの値を正から負の値に変換して、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達させ、その状態を維持するように前記PIDフィードバック制御を行うことを特徴とするDT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御装置。
【請求項7】
外部加熱パワーおよびDT燃料を供給して核融合炉の核融合出力を行うDT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御装置において、
前記核融合炉の核融合出力に用いられる予め定められた数式に対する変数を入力する入力手段と、
この入力手段により入力された変数の各値に基づいて前記外部加熱パワー発生装置が供給する外部加熱パワーを、予め設定した値となるようにプレ制御すると共に、予め設定された時間で前記外部加熱パワーを0とするようにプレ制御する外部加熱パワープレ制御手段と、
前記入力手段により入力された変数の各値に基づいて、前記DT燃料供給装置が供給するDT燃料を、予め設定した値となるようにプレ制御するDT燃料プレ制御手段と、
このDT燃料プレ制御手段によるプレ制御の後に、前記核融合出力において検出された核融合出力の値と核融合出力の設定値との偏差に基づいて、前記DT燃料供給装置が供給するDT燃料を、当該設定値になるようにPIDフィードバック制御するDT燃料PIDフィードバック制御手段と、を備え、
前記DT燃料PIDフィードバック制御手段は、前記プレ制御時における核融合出力の設定値を核融合出力の値が越えたときに、前記核融合出力の偏差をeDTとし、核融合出力の設定値をPfoとし、実際の核融合出力をPfとして算出するeDT=c(1−Pf/Pfo)において、負の値の前記制御係数cを用いて、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達させ、その状態を状態するように前記PIDフィードバック制御を行うことを特徴とするDT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御装置。
【請求項8】
運転時に使用されるプラズマ密度分布を箱形分布とし、プラズマ密度分布およびプラズマ温度分布を固定して演算するパワーバランス方程式で前記プラズマ密度分布が箱型分布で使用される係数を予め算出して求め、かつ、外部加熱パワーおよびDT燃料を供給して核融合炉の核融合出力を行うDT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御装置において、
前記核融合炉の核融合出力に用いられる予め定められた数式に対する変数を入力する入力手段と、
この入力手段により入力された変数の各値に基づいて前記外部加熱パワー発生装置から供給される外部加熱パワーを、予め設定した値となるようにプレ制御すると共に、予め設定された時間で前記外部加熱パワーを0とするようにプレ制御する外部加熱パワープレ制御手段と、
前記入力手段により入力された変数の各値に基づいて、前記DT燃料供給装置が供給するDT燃料を、予め設定した値になるようにプレ制御するDT燃料プレ制御手段と、
このDT燃料プレ制御手段によるプレ制御の後に、予め設定されたプラズマ密度の設定値と炉心プラズマから検出されたプラズマ運転密度の値との偏差に基づいて、前記DT燃料供給装置から供給されるDT燃料による前記核融合炉のプラズマ密度を、当該プラズマ密度の設定値になるようにPIDフィードバック制御するDT燃料密度PID制御手段と、
このDT燃料密度PID制御手段によるプラズマ密度のPIDフィードバック制御の後に、前記DT燃料供給装置からのDT燃料の供給を、前記核融合出力の設定値と前記核融合出力において検出された核融合出力の値との偏差に基づいて、当該設定値になるようにPIDフィードバック制御するDT燃料PIDフィードバック制御手段と、を備え、
前記DT燃料PIDフィードバック制御手段は、前記プラズマ密度のPIDフィードバック制御時における核融合出力の設定値を核融合出力の値が超えたときに、前記核融合出力の偏差をeDTとし、核融合出力の設定値をPfoとし、実際の核融合出力をPfとして算出するeDT=c(1−Pf/Pfo)において、負の値の前記制御係数cを用いて、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達させ、その状態を維持するように前記PIDフィードバック制御を行うことを特徴とするDT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御装置。
【請求項9】
前記核融合出力おいて検出される各値と、前記外部加熱パワー発生装置から供給される外部加熱パワーの値と、前記DT燃料供給装置から供給されるDT燃料の供給量と、を表示装置に出力する出力手段を備えることを特徴とする請求項6から請求項8のいずれか一項に記載のDT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御装置。
【請求項1】
外部加熱パワーおよびDT燃料をプレ制御して供給し、かつ、核融合炉の核融合出力の偏差をeDTとし、核融合出力の設定値をPfoとし、実際の核融合出力の値をPfとし、制御係数をcとして、eDT=c(1−Pf/Pfo)の演算で算出される値を用いて前記DT燃料の供給をPIDフィードバック制御するDT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御方法において、
前記プレ制御の後における予め設定された設定時間から、核融合出力の設定値を予め設定した値より一旦小さく再設定しておくと共に、その後、当該設定値を元の値に戻し、かつ、前記再設定時に前記制御係数cの値を正から負の値に変換して、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達させ、その状態を維持するように前記PIDフィードバック制御を行うことを特徴とするDT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御方法。
【請求項2】
外部加熱パワーおよびDT燃料を供給して核融合炉の核融合出力を行うDT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御方法において、
外部加熱パワー発生装置が炉心プラズマに供給する前記外部加熱パワーを、予め設定した値となるように当該外部加熱パワーのプレ制御を行うと共に、DT燃料供給装置が前記炉心プラズマに供給する前記DT燃料を、予め設定した値となるように当該DT燃料のプレ制御を行う第1ステップと、
前記外部加熱パワーのプレ制御および前記DT燃料のプレ制御を行う時間が予め設定された第1設定時間を経過した時に、前記外部加熱パワー発生装置からの外部加熱パワーを、炉心プラズマのプラズマ密度の値とプラズマ密度限界値とにより演算される外部加熱パワーの値に基づいて所定の時間で0とするようにフィードバック制御を行うと共に、前記DT燃料供給装置からのDT燃料の供給を、前記核融合炉の核融合出力の値と核融合出力の設定値との偏差に基づいて、設定値になるようにPIDフィードバック制御を行う第2ステップと、を含み、
前記第2ステップにおいて、熱的に安定な高温・低密度の自己点火領域に到達した後に、核融合出力の設定値を予め設定した値より一旦小さく再設定しておくと共に、その後、当該設定値を元の値に戻し、かつ、前記核融合出力の偏差をeDTとし、核融合出力の設定値をPfoとし、実際の核融合出力をPfとして算出するeDT=c(1−Pf/Pfo)において、前記再設定時に前記制御係数cの値を、正から負の値に変換して、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達させ、その状態を維持するように前記PIDフィードバック制御を行うことを特徴とするDT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御方法。
【請求項3】
外部加熱パワーおよびDT燃料を供給して核融合炉の核融合出力を行うDT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御方法において、
外部加熱パワー発生装置が炉心プラズマに供給する前記外部加熱パワーを、予め設定した値となるように外部加熱パワーのプレ制御を行うと共に、DT燃料供給装置が前記炉心プラズマに供給する前記DT燃料を、予め設定した値となるようにDT燃料のプレ制御を行う第1ステップと、
前記外部加熱パワーのプレ制御を引き続き行うと共に、前記DT燃料のプレ制御を行う時間が予め設定された第1設定時間を経過した時に、前記DT燃料供給装置からのDT燃料の供給を、前記核融合炉の核融合出力の値と核融合出力の設定値との偏差に基づいて、設定値になるようにPIDフィードバック制御を行う第2ステップと、を含み、
前記第2ステップにおいて、前記外部加熱パワーを炉心プラズマに供給する値を予め設定された時間で0とするように段階的に減少させ、かつ、
当該第2ステップにおいて、前記プレ制御時における核融合出力の設定値を、核融合出力の値が越えたときに、前記核融合出力の偏差をeDTとし、核融合出力の設定値をPfoとし、実際の核融合出力をPfとして算出するeDT=c(1−Pf/Pfo)において、負の値の前記制御係数cを用いて、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達させ、その状態を維持するように前記PIDフィードバック制御を行うことを特徴とするDT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御方法。
【請求項4】
運転時に使用されるプラズマ密度分布を箱形分布とし、プラズマ密度分布およびプラズマ温度分布を固定して演算するパワーバランス方程式で前記プラズマ密度分布が箱型分布で使用される係数を予め算出して求め、かつ、前記外部加熱パワーおよびDT燃料を供給して核融合炉の核融合出力を行うDT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御方法において、
外部加熱パワー発生装置が炉心プラズマに供給する前記外部加熱パワーを、予め設定した値となるように外部加熱パワーのプレ制御を行うと共に、DT燃料供給装置が前記炉心プラズマに供給する前記DT燃料を、予め設定した値となるように前記DT燃料のプレ制御を行う第1ステップと、
前記外部加熱パワーのプレ制御を引き続き行うと共に、前記DT燃料のプレ制御を行う時間が予め設定された第1設定時間を経過した時に、予め設定されたプラズマ密度の設定値と、前記炉心プラズマから検出されたプラズマ運転密度の値との偏差に基づいて、前記DT燃料供給装置から供給されるDT燃料による前記核融合炉のプラズマ密度を、前記プラズマ密度の設定値になるようにPIDフィードバック制御する第2ステップと、
前記第2ステップを行う設定時間が経過した後に、前記外部加熱パワーを炉心プラズマに供給する値を予め設定された時間で0とするように段階的に減少させる前記外部加熱パワーのプレ制御を行うと共に、前記DT燃料供給装置からのDT燃料の供給を、前記核融合炉の核融合出力の値と核融合出力の設定値との偏差に基づいて、当該設定値になるようにPIDフィードバック制御を行う第3ステップと、を含み、
前記第3ステップにおいて、前記プラズマ密度のPIDフィードバック制御時における核融合出力の設定値を、核融合出力の値が越えたときに、前記核融合出力の偏差をeDTとし、核融合出力の設定値をPfoとし、実際の核融合出力をPfとして算出するeDT=c(1−Pf/Pfo)において、負の値の前記制御係数cを用いて、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達させ、その状態を維持するように前記PIDフィードバック制御を行うことを特徴とするDT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御方法。
【請求項5】
外部加熱パワー発生装置およびDT燃料供給装置に対して予め設定されたプレ制御およびPIDフィードバック制御を行い熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域に到達させるDT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御装置において、
前記DT燃料供給装置からのDT燃料のPIDフィードバック制御において、核融合出力の設定値を予め設定した値より一旦小さく再設定しておくと共に、その後、当該設定値を元の値に戻し、かつ、核融合出力の偏差をeDTとし、核融合出力の設定値をPfoとし、実際の核融合出力をPfとして算出するeDT=c(1−Pf/Pfo)において、負の値の前記制御係数cを用いて、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達させ、その状態を維持するように当該PIDフィードバック制御を行うことを特徴とするDT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御装置。
【請求項6】
外部加熱パワーおよびDT燃料を供給して核融合炉の核融合出力を行うDT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御装置において、
前記核融合炉の核融合出力に用いられる予め定められた数式に対する変数を入力する入力手段と、
この入力手段により入力された変数の各値に基づいて、外部加熱パワー発生装置が供給する外部加熱パワーを、予め設定した値となるようにプレ制御する外部加熱パワープレ制御手段と、
前記入力手段により入力された変数の各値に基づいて前記DT燃料供給装置が供給するDT燃料を、予め設定した値にプレ制御するDT燃料プレ制御手段と、
前記外部加熱パワー制御手段によるプレ制御の後に、前記炉心プラズマから検出されたプラズマ密度の値とプラズマ密度限界値とにより演算される外部加熱パワーの値に基づいて、前記外部加熱パワー発生装置からの外部加熱パワーを、所定の時間で0とするようにフィードバック制御する外部加熱パワーフィードバック制御手段と、
前記DT燃料プレ制御手段によるプレ制御の後に、前記核融合炉から検出された核融合出力の値と核融合出力の設定値との偏差に基づいて、前記DT燃料供給装置が供給するDT燃料を、当該設定値となるようにPIDフィードバック制御するDT燃料PIDフィードバック制御手段と、を備え、
前記DT燃料PIDフィードバック制御手段は、熱的に安定な高温・低密度の自己点火領域に到達した後に、核融合出力の設定値を予め設定した値より一旦小さく再設定しておくと共に、その後、当該設定値を元の値に戻し、かつ、前記核融合出力の偏差をeDTとし、核融合出力の設定値をPfoとし、実際の核融合出力をPfとして算出するeDT=c(1−Pf/Pfo)において、前記再設定時に前記制御係数cの値を正から負の値に変換して、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達させ、その状態を維持するように前記PIDフィードバック制御を行うことを特徴とするDT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御装置。
【請求項7】
外部加熱パワーおよびDT燃料を供給して核融合炉の核融合出力を行うDT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御装置において、
前記核融合炉の核融合出力に用いられる予め定められた数式に対する変数を入力する入力手段と、
この入力手段により入力された変数の各値に基づいて前記外部加熱パワー発生装置が供給する外部加熱パワーを、予め設定した値となるようにプレ制御すると共に、予め設定された時間で前記外部加熱パワーを0とするようにプレ制御する外部加熱パワープレ制御手段と、
前記入力手段により入力された変数の各値に基づいて、前記DT燃料供給装置が供給するDT燃料を、予め設定した値となるようにプレ制御するDT燃料プレ制御手段と、
このDT燃料プレ制御手段によるプレ制御の後に、前記核融合出力において検出された核融合出力の値と核融合出力の設定値との偏差に基づいて、前記DT燃料供給装置が供給するDT燃料を、当該設定値になるようにPIDフィードバック制御するDT燃料PIDフィードバック制御手段と、を備え、
前記DT燃料PIDフィードバック制御手段は、前記プレ制御時における核融合出力の設定値を核融合出力の値が越えたときに、前記核融合出力の偏差をeDTとし、核融合出力の設定値をPfoとし、実際の核融合出力をPfとして算出するeDT=c(1−Pf/Pfo)において、負の値の前記制御係数cを用いて、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達させ、その状態を状態するように前記PIDフィードバック制御を行うことを特徴とするDT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御装置。
【請求項8】
運転時に使用されるプラズマ密度分布を箱形分布とし、プラズマ密度分布およびプラズマ温度分布を固定して演算するパワーバランス方程式で前記プラズマ密度分布が箱型分布で使用される係数を予め算出して求め、かつ、外部加熱パワーおよびDT燃料を供給して核融合炉の核融合出力を行うDT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御装置において、
前記核融合炉の核融合出力に用いられる予め定められた数式に対する変数を入力する入力手段と、
この入力手段により入力された変数の各値に基づいて前記外部加熱パワー発生装置から供給される外部加熱パワーを、予め設定した値となるようにプレ制御すると共に、予め設定された時間で前記外部加熱パワーを0とするようにプレ制御する外部加熱パワープレ制御手段と、
前記入力手段により入力された変数の各値に基づいて、前記DT燃料供給装置が供給するDT燃料を、予め設定した値になるようにプレ制御するDT燃料プレ制御手段と、
このDT燃料プレ制御手段によるプレ制御の後に、予め設定されたプラズマ密度の設定値と炉心プラズマから検出されたプラズマ運転密度の値との偏差に基づいて、前記DT燃料供給装置から供給されるDT燃料による前記核融合炉のプラズマ密度を、当該プラズマ密度の設定値になるようにPIDフィードバック制御するDT燃料密度PID制御手段と、
このDT燃料密度PID制御手段によるプラズマ密度のPIDフィードバック制御の後に、前記DT燃料供給装置からのDT燃料の供給を、前記核融合出力の設定値と前記核融合出力において検出された核融合出力の値との偏差に基づいて、当該設定値になるようにPIDフィードバック制御するDT燃料PIDフィードバック制御手段と、を備え、
前記DT燃料PIDフィードバック制御手段は、前記プラズマ密度のPIDフィードバック制御時における核融合出力の設定値を核融合出力の値が超えたときに、前記核融合出力の偏差をeDTとし、核融合出力の設定値をPfoとし、実際の核融合出力をPfとして算出するeDT=c(1−Pf/Pfo)において、負の値の前記制御係数cを用いて、熱的に不安定な低温・高密度の自己点火領域の境界に到達させ、その状態を維持するように前記PIDフィードバック制御を行うことを特徴とするDT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御装置。
【請求項9】
前記核融合出力おいて検出される各値と、前記外部加熱パワー発生装置から供給される外部加熱パワーの値と、前記DT燃料供給装置から供給されるDT燃料の供給量と、を表示装置に出力する出力手段を備えることを特徴とする請求項6から請求項8のいずれか一項に記載のDT磁気閉じ込め型核融合発電装置の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2009−139153(P2009−139153A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−314044(P2007−314044)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2006年6月5日に社団法人プラズマ核融合学会が主催する 「Plasma and Fusion Research Volume2,021(2007)Rapid Communications」において、ウェブページ上で公開アドレス http://www.jspf.or jp/PFR/index.html http://www.jspf.or jp/PFR/PFR_articles/pfr2007.html http://www.jspf.or.jp/PFR/PFR_articles/pfr2007/pfr2007_02−21.html http://www.jspf.or.jp/PFR/PDF/pfr2007_02−21.pdf
【出願人】(000125369)学校法人東海大学 (352)
【出願人】(504261077)大学共同利用機関法人自然科学研究機構 (156)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2006年6月5日に社団法人プラズマ核融合学会が主催する 「Plasma and Fusion Research Volume2,021(2007)Rapid Communications」において、ウェブページ上で公開アドレス http://www.jspf.or jp/PFR/index.html http://www.jspf.or jp/PFR/PFR_articles/pfr2007.html http://www.jspf.or.jp/PFR/PFR_articles/pfr2007/pfr2007_02−21.html http://www.jspf.or.jp/PFR/PDF/pfr2007_02−21.pdf
【出願人】(000125369)学校法人東海大学 (352)
【出願人】(504261077)大学共同利用機関法人自然科学研究機構 (156)
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