説明

EP灰の処理システム、EP灰の処理方法、及びEP灰の処理用プログラム

【課題】EP灰が移送される複数のサイロのうちいずれかに不調が生じた場合や、いずれかの灰量が限界に達した場合などにおいても、火力発電所のユニット運転を継続することを可能にする。
【解決手段】EP灰の処理システム10においては、EP灰を電気集塵器11,12から1号中継サイロ21又は極細粉サイロ22へ移送する移送経路中に切替装置30が設けられ、当該切替装置30により、EP灰の全量について、1号中継サイロ21又は極細粉サイロ22のうちいずれのサイロへ移送させるかを選択可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EP灰の処理システム、EP灰の処理方法、及びEP灰の処理用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所は、各種のユニット(例えば、ボイラなど)で構成されており、これらのユニット運転に伴って、大量の石炭灰が排出される。そして、排出された石炭灰は、火力発電所に設けられた電気集塵器により、EP(Electron Particle)灰として捕集され、各種の処理が施されるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
より具体的に説明すると、火力発電所から排出される石炭灰は、その粒径の大小に応じて、電気集塵器の各室において捕集され、例えば、第1〜3室を有する電気集塵器にあっては、第1,2室において粒径の大きなEP灰が捕集され、第3室においては粒径の小さなEP灰が捕集される。そして、このように捕集されたEP灰は、中継サイロに移送されて再利用処理が施され、或いは、極細粉サイロに移送されて廃棄処理が施される。
【0004】
とりわけ、従来の技術にあっては、図3に示すように、電気集塵器の第3室において捕集されたEP灰(図3の「EP3室灰」参照)については、中継サイロ又は極細粉サイロのうちいずれのサイロへ移送させるかを選択することが可能であったものの、電気集塵器の第1,2室において捕集されたEP灰(図3の「A−EP1,2室灰」及び「A−EP1,2室灰」参照)については、中継サイロへのみ移送させるようになっていた。
【特許文献1】特開平4−78481号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術にあっては、次のような問題があった。
すなわち、従来の技術にあっては、前述した如く、電気集塵器の第1,2室において捕集されたEP灰は、中継サイロへのみ移送されることとなっており、極細粉サイロへ移送することができないようになっていた。
そのため、火力発電所のユニット運転中に中継サイロに不調が生じた場合や、中継サイロに収納される灰量が限界に達した場合などにおいては、ユニット全体を停止する必要があり、ユニット運転を継続することができないという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、EP灰が移送される複数のサイロのうちいずれかに不調が生じた場合や、いずれかの灰量が限界に達した場合などにおいても、火力発電所のユニット運転を継続することが可能なEP灰の処理システム、EP灰の処理方法、及びEP灰の処理用プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、火力発電所から排出される石炭灰のうち電気集塵器で捕集されたEP灰を、第一のサイロ又は第二のサイロへ移送し、前記第一のサイロへ移送されたEP灰を再利用処理し、前記第二のサイロへ移送されたEP灰を廃棄処理するEP灰の処理システムであって、前記EP灰を前記電気集塵器から前記第一のサイロ又は前記第二のサイロへ移送する移送経路中に切替装置が設けられ、当該切替装置により、前記EP灰の全量について、前記第一のサイロ又は前記第二のサイロのうちいずれのサイロへ移送させるかを選択可能にしたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、火力発電所から排出される石炭灰のうち電気集塵器で捕集されたEP灰を、第一のサイロ又は第二のサイロへ移送し、前記第一のサイロへ移送されたEP灰を再利用処理し、前記第二のサイロへ移送されたEP灰を廃棄処理するEP灰の処理方法であって、前記EP灰の全量について、前記第一のサイロ又は前記第二のサイロのうちいずれのサイロへ移送させるかを選択可能にしたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、火力発電所から排出される石炭灰のうち電気集塵器で捕集されたEP灰を、第一のサイロ又は第二のサイロへ移送し、前記第一のサイロへ移送されたEP灰を再利用処理し、前記第二のサイロへ移送されたEP灰を廃棄処理するEP灰の処理システムにおいて、前記EP灰を前記電気集塵器から前記第一のサイロ又は前記第二のサイロへ移送する移送経路中に切替装置が設けられ、且つ、当該切替装置を制御するコンピュータが設けられ、前記コンピュータに、前記EP灰の全量について、前記第一のサイロ又は前記第二のサイロのうちいずれのサイロへ移送させるかを選択するステップを実行させるEP灰の処理用プログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、EP灰が移送される複数のサイロのうちいずれかに不調が生じた場合や、いずれかの灰量が限界に達した場合などにおいても、火力発電所のユニット運転を継続することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図1及び図2を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明の実施形態に係る火力発電所の石炭灰処理システムを示す概略図、図2は図1の各系統概略図である。
【0012】
図1に示すように、火力発電所の石炭灰処理システム100は、本発明のEP灰の処理システム10を備える。このEP灰の処理システム10は、火力発電所の1号ボイラ1から排出される石炭灰のうち電気集塵器11,12で捕集されたEP灰を、いずれも第一のサイロである1号中継サイロ21又は第二のサイロである極細粉サイロ22へ移送し、1号中継サイロ21へ移送されたEP灰については再利用処理し、極細粉サイロ22へ移送されたEP灰については廃棄処理するシステムである。
【0013】
このEP灰の処理システム10にあっては、EP灰を一対の電気集塵器11,12から1号中継サイロ21又は極細粉サイロ22へ移送する移送経路中に、当該EP灰を捕集する捕集装置23及び切替装置30が設けられている。切替装置30は、コンピュータ31によりプログラム制御されているが、手動制御されたものであってもよい。
【0014】
また、各移送経路、すなわち、電気集塵器11で捕集されたEP灰を当該電気集塵器11から1号中継サイロ21又は極細粉サイロ22へ移送する移送経路(図1の「B系統」参照)、及び電気集塵器12で捕集されたEP灰を当該電気集塵器12から1号中継サイロ21又は極細粉サイロ22へ移送する移送経路(図1の「C系統」参照)は、いずれも捕集装置23に連結されている。そして、この捕集装置23の下流側に設けられた切替装置30、及びコンピュータ31により、捕集装置23で捕集されたEP灰の全量について、1号中継サイロ21又は極細粉サイロ22のうちいずれのサイロへ移送させるかを選択可能としている。例えば、図2に示すように、捕集装置23で捕集されたEP灰の全量(図2の「EP1,2、3室灰」参照)について、より具体的には、電気集塵器11,12の第3室において捕集されたEP灰のみならず、電気集塵器11,12の第1,2室において捕集されたEP灰についても、1号中継サイロ21又は極細粉サイロ22のうちいずれのサイロへ移送させるかを選択可能としている。
【0015】
このような火力発電所の石炭灰処理システム100においては、EP灰の処理システム10の切替装置30によって、EP灰の全量について、1号中継サイロ21又は極細粉サイロ22のうちいずれのサイロへ移送させるかを選択することが可能となっている。そのため、1号中継サイロ21の払い出し装置に不調が生じた場合や、1号中継サイロ21の灰量が限界に達した場合などにおいては、コンピュータ31により、切替装置30を切り替えて、EP灰の全量を極細粉サイロ22へ移送させるように選択することにより、極細粉サイロ22の下流側に設けられた極細粉JPP(ジェットパルジョンポンプ)32を介して灰捨場へ捨てたり、或いは、ジェットバック車33などによりEP灰を搬出することで、火力発電所のユニット運転を停止することなく継続することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る火力発電所の石炭灰処理システムを示す概略図である。
【図2】図1の各系統概略図である。
【図3】従来例に係る各系統概略図である。
【符号の説明】
【0017】
10 EP灰の処理システム
11,12 電気集塵器
21 1号中継サイロ(第一のサイロの一例)
22 極細粉サイロ(第二のサイロの一例)
23 捕集装置
30 切替装置
31 コンピュータ
100 火力発電所の石炭灰処理システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
火力発電所から排出される石炭灰のうち電気集塵器で捕集されたEP灰を、第一のサイロ又は第二のサイロへ移送し、前記第一のサイロへ移送されたEP灰を再利用処理し、前記第二のサイロへ移送されたEP灰を廃棄処理するEP灰の処理システムであって、
前記EP灰を前記電気集塵器から前記第一のサイロ又は前記第二のサイロへ移送する移送経路中に切替装置が設けられ、当該切替装置により、前記EP灰の全量について、前記第一のサイロ又は前記第二のサイロのうちいずれのサイロへ移送させるかを選択可能にしたことを特徴とするEP灰の処理システム。
【請求項2】
火力発電所から排出される石炭灰のうち電気集塵器で捕集されたEP灰を、第一のサイロ又は第二のサイロへ移送し、前記第一のサイロへ移送されたEP灰を再利用処理し、前記第二のサイロへ移送されたEP灰を廃棄処理するEP灰の処理方法であって、
前記EP灰の全量について、前記第一のサイロ又は前記第二のサイロのうちいずれのサイロへ移送させるかを選択可能にしたことを特徴とするEP灰の処理方法。
【請求項3】
火力発電所から排出される石炭灰のうち電気集塵器で捕集されたEP灰を、第一のサイロ又は第二のサイロへ移送し、前記第一のサイロへ移送されたEP灰を再利用処理し、前記第二のサイロへ移送されたEP灰を廃棄処理するEP灰の処理システムにおいて、前記EP灰を前記電気集塵器から前記第一のサイロ又は前記第二のサイロへ移送する移送経路中に切替装置が設けられ、且つ、当該切替装置を制御するコンピュータが設けられ、前記コンピュータに、前記EP灰の全量について、前記第一のサイロ又は前記第二のサイロのうちいずれのサイロへ移送させるかを選択するステップを実行させるEP灰の処理用プログラム。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【公開番号】特開2011−31207(P2011−31207A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181677(P2009−181677)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】