GloboHおよび新規な糖脂質アジュバントを有する関連抗がんワクチン
免疫原性組成物、がんワクチン、およびがんを治療する方法を提供する。(a)パラ−ニトロフェニルなどのリンカーによってキャリアタンパク質と共役した、Globo Hまたはその免疫原性フラグメントなどの糖鎖、および(b)α−ガラクトシルセラミド誘導体などの、樹上細胞上のCD1dと結合できる糖脂質を含むアジュバント、を含み、前記免疫原性組成物は、IgMアイソタイプ抗体と比較して、IgGアイソタイプ抗体を相対的に高いレベルで誘導する免疫応答を誘導する、組成物を提供する。キャリアタンパク質であるジフテリア毒素交差反応物質197(DT−CRM197)、およびアジュバントであるC34を含む組成物を提供する。本明細書中に開示された免疫原性組成物によって産生された抗体は、さらにGlobo H、胚発生段階特異抗原−3(SSEA−3)、および胚発生段階特異抗原−4(SSEA−4)の少なくとも1つを中和する。DT−CRM197と共役する、Globo H、SSEA−3、およびSSEA−4を含有する免疫原性組成物を含む、乳癌幹細胞に対する治療剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願のクロスリファレンス
本出願は、2008年6月16日に出願された米国仮特許出願第61/061968号に基づく優先権を主張し、「Globo HおよびSSEA−3への特異的な免疫応答誘導組成物、およびそのがん治療のおける使用」の名称で2009年6月16日に出願された、同時継続の米国特許出願第12/485546号の一部継続出願である。本出願の内容は、その全体の内容が参照により引用される。
【0002】
本発明の技術分野
本発明は、がんワクチン分野に関する。具体的には、本出願は、免疫原性キャリアであるDT−CRM197と共役する、B細胞エピトープ、Globo H含有ワクチンに基づく糖鎖に関する。より具体的には、本発明は、C34のような新規糖脂質アジュバントとともに投与される、抗がんGlobo H−DTワクチンを目的とする。
【背景技術】
【0003】
抗がん治療を設計するため、正常細胞のないがん細胞またはがん幹細胞を標的とする分子を探索することが望まれている。異常グリコシル化は、しばしば腫瘍進行と関係があり、1969年にMeezanらによってがんの糖鎖が正常細胞と異なることが示された(Meezan E, et al. (1969) Biochemistry 8:2518-2524.)。異常グリコシル化は、特定構造の欠損または過剰発現、不完全構造の持続、および新規構造の発生を含む。前記構造の違いは、レクチン染色を用いた、正常組織および悪性組織の比較による多くの組織学的証拠によって、その後に支持された(Turner GA (1992) Clin Chim Acta 208:149-171; Gabius HJ (2000) Naturwissenschaften 87:108-121.)。
【0004】
ごく最近、糖鎖抗原に関連する腫瘍がモノクローナル抗体および質量分析法により同定された(Shriver Z, et al. (2004) Nat Rev Drug Disc 3:863-873; Pacino G, et al. (1991) Br J Cancer 63:390-398.)。このデータにより、糖脂質または糖タンパク質の形成において、がん細胞で発現される抗原と関連する多くのがんが特徴付けられ、がんの特定のタイプと関連付けられている(Bertozzi CR, Dube DH (2005) Nat Rev Drug Discovery 4:477-488.)。悪性細胞における糖鎖表面の役割については比較的にあまり知られていないが、これらの抗原に対する受動的に投与された抗体またはワクチン誘導抗体が予後の改善と関連している。
【0005】
糖鎖関連腫瘍の報告では、1984年に箱守らによって、乳癌MCF−7細胞から糖脂質抗原Globo H(Fucα1→2Galβ1→3GalNAcβ1→3Galα1→4Galβ1→4Glc)が初めて単離、同定された(Bremer EG, et al. (1984) J Biol Chem 259:14773-14777.)。抗Globoモノクローナル抗体のさらなる研究により、Globo Hは、前立腺癌、胃癌、膵臓癌、肺癌、卵巣癌および大腸癌を含む他の多くのがんにおいても存在し、並びに容易に免疫系と関与しない正常分泌組織腔表面上にはほとんど発現しないことが示された(Ragupathi G, et al. (1997) Angew Chem Int Ed 36:125-128.)。また、乳癌患者の血清に高レベルの抗Globo H抗体が含まれることが証明され(Gilewski T el al. (2001) Proc Natl Acad Sci USA 98:3270-3275; Huang C-Y, et al. (2006) Proc Natl Acad Sd USA 103:15-20; Wang C-C, et al. (2008) Proc Natl Acad Sci USA 105(33):11661-11666)、Globo H陽性の腫瘍を有する患者は、Globo H陰性の腫瘍を有する患者と比較して、生存期間が短いことも示された(Chang, Y-J, et al. (2007) Proc Natl Acad Sci USA 104(25):10299-10304.)。これらの知見は、Globo H、6糖類のエピトープ、魅力的な腫瘍マーカー、および実現可能ながんワクチンの開発のための標的を提供する。
【0006】
Globo Hはさまざまな上皮がんにおいて過剰に発現するがん抗原である。この抗原は、がん免疫療法の標的として有効でありうることが示唆されている。Globo Hに対する抗体を産生させるためのワクチンが開発されてきたが、Globo Hの抗原性が低いため、これらワクチンの抗がん活性は満足できるものではなかった。高いレベルでGlobo Hを標的とする免疫応答を生じさせることができる新規なワクチンが必要である。
【0007】
幹細胞は、自己複製能並びに異なる細胞および組織へ分化能を有する細胞群として定義される(Reya T et al., (2001) Nature 414:105-111.)。悪性腫瘍および正常細胞の両方で不均一な細胞集団を含むように、がん幹細胞は、不均一な腫瘍成長および腫瘍の維持に重要な役割を果たしている可能性がある。がん幹細胞は、脳腫瘍、乳癌、大腸癌、および前立腺癌などの多様な固形がんから同定されている。乳癌幹細胞(BCSC)は、乳癌のCD24−CD44+亜集団に存在することが、Al-HajjらによるNOD/SCIDマウスへの異種移植における表現型の多様性を有する腫瘍の産生能に基づき、初めて示された(Al-Hajj M, et al., (2003) Proc Natl Acad Sci USA 100:3983-3988)。CD24−CD44+の表現型で表される乳癌患者のがん細胞の大部分は早期に骨髄中に広まることから(Balic M et al., (2006) Clin Cancer Res 12:5615-5621)、BCSCには転移能があることが示唆される。成長能、分化能、転移能、および放射線抵抗性から、BCSCは乳癌治療の主要は標的となっている(Tang C. et al., (2007) FASEB J. 21:1-9)。
【0008】
乳癌において、Globo Hの発現は、腺管癌、小葉癌、および管状腺癌の60%以上で観測されるが、非上皮性乳癌においては観測されない(Mariani-Constantini R et al., (1984) Am. J. Pathol. 115:47-56)。内腔境界の頂側膜上皮細胞における弱い発現を除き、正常細胞の免疫系に関与しないことが明らかな部位ではGlobo Hは発現しない(Id.; Zhang S. et al., (1997) Int. J. Cancer 73:42-49)。
【0009】
また、Globo Hは、乳癌幹細胞(BCSC)で発現する。フローサイトメトリーによって、Globo Hは乳癌検体において25/41(61.0%)で発現することが明らかにされた。Globo Hは25/25の非BCSCおよび8/40のBCSC(20%)で発現された。Globo Hの6糖類の前駆体である胚発生段階特異抗原−3(SSEA−3)は、腫瘍の31/40で発現される。SSEA−3は29/31の非BCSCおよび25/40のBCSC(62.5%)で発現される(Chang W-W. et al., (2008) Proc Natl Acad Sci USA 105(33):11667-11672.)。
【0010】
DanishefskyおよびLivingstonは、以前、さまざまながんに対するGlobo H−KLFワクチン(Gilewski T el al. (2001) Proc Natl Acad Sci USA 98:3270-3275; Ragupathi G, et al. (1997) Angew Chem Int Ed 36:125-128; Kudryashov V, et al. (1998) Glycoconj J. 15:243-249; Slovin SF et al (1997) Proc Natl Acad Sci USA 96:5710-5715)、および7価ワクチン(それぞれKLHと共役するGM2、Globo H、Lewis Y、Tn、STn、TF、およびTn−MUClを含有する;Sabbatini PJ et al (2007) Clin Cancer Res 13:4170-4177)を報告している。しかしながら、7価ワクチンを接種した患者は、7つの抗原のうち、GM2抗体およびLewis Y抗体を除く5つの抗体が誘導されるのみである。GM2のように抗原が偏在的に発現されることよりも、Globo Hが正常分泌組織の最小レベルのみを有する腫瘍細胞で特別に発現されることは、ワクチン開発の標的として魅力的なものである。これらの研究において、Globo Hをオゾン分解、次いでKLHキャリアタンパク質を用いた還元的アミノ化反応により、1つのタンパク質から約150の糖鎖ユニットが生成される(Ragupathi G, et al. (1997) Angew Chem lnt Ed 36:125-128.)。MMCCHリンカーを用いるさらなる精製により、約720:1の共役比で炭化水素が増加した(Wang S-K, et al. (2008). Proc Natl Acad Sci USA105:3690-3695.)。しかしながら、正確に複合糖質を特徴づけることは困難であった。また、免疫学的アジュバントQS−21と組み合わせた合成ワクチンは、前立腺癌および転移性乳癌患者の両方で主にIgM抗体を誘導し、IgG抗体の量が少なくなった。フェーズ1の臨床試験において、ワクチン接種部位で一過性の局所皮膚反応を有する最小毒性も見られた(Gilewski T el al. (2001) Proc Natl Acad Sci USA 98:3270-3275; Ragupathi G, et al. (1997) Angew Chem lnt Ed 36:125-128; Slovin SF et al (1997) Proc Natl Acad Sci USA 96:5710-5715.)。いくつかの患者で観測された軽度のインフルエンザ様症状は、おそらくQS−21の副作用と関連がある。マレイミド修飾キャリアタンパク質KLHと共役する、前立腺癌および乳癌と関連がある糖鎖抗原――Globo−H、GM2、STn、TF、およびTn−―含有5価ワクチンは、ELISAアッセイにおいて、IgM力価よりも高いIgG力価を有する抗Globo−H血清を産生することが報告されている(Zhu J. et al. (2009) J. Am. Chem. Soc. 131(26):9298-9303)。
【0011】
したがって、Globo Hと反応する抗体、特に高い力価のIgGを増加させる代わりのキャリアおよびアジュバントの同定、並びに副作用が最小限であるワクチンの効果の向上が望まれている。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、p−ニトロフェニルリンカーを通じて、ジフテリア毒素交差反応物質197(DT−CRM197)(Thエピトープ)である免疫原性キャリアと化学的に共役した、Globo H(B細胞エピトープ)含有ワクチンに基づく糖鎖に関する。前記合成ワクチンは、糖脂質アジュバントと組み合わせて、IgG、IgG1およびIgM抗体を誘導し、乳癌モデルにおいて極めて優れた免疫原性を提供し、異種移植研究において腫瘍形成の遅延を示す。Globo H−DTおよび糖脂質C34によって誘導された抗体の糖鎖アレイ解析によって、前記抗体がGlobo Hだけでなく、SSEA−3(Gb5)およびSSEA−4(シアリルGb5)糖鎖(これらはすべてのがん細胞およびがん幹細胞に対して特異的である)を認識することが示された。
【0013】
本発明は、(a)Globo Hまたはその免疫原性フラグメントから本質的に構成され、リンカーを通じてキャリアタンパク質と共役する糖鎖、および(b)樹状細胞上のCD1d分子と結合できる糖脂質を含むアジュバントを含み、この際、IgMアイソタイプ抗体と比較して、IgGアイソタイプ抗体を相対的に高いレベルで誘導する免疫応答を誘導する免疫原性組成物に関する。
【0014】
いくつかの実施態様において、前記キャリアタンパク質はジフテリア毒素交差反応物質197(DT−CRM197)である。いくつかの実施態様において、前記リンカーはp−ニトロフェニルリンカーである。
【0015】
いくつかの実施態様において、前記アジュバントはα−ガラクトシルセラミド(α−GalCer)の合成アナログである。いくつかの実施形態において、前記アジュバントはC34であり、この際、C34は下記構造を含む。
【0016】
【化1】
【0017】
いくつかの実施態様において、免疫応答は、好ましくはIgGアイソタイプ抗体の産生を目的とする。いくつかの実施態様において、免疫原性組成物は、液性および細胞性免疫応答を誘導できる少なくとも1つのアジュバントを含む。
【0018】
いくつかの実施態様において、免疫応答によって産生した抗体は、がん細胞またはがん幹細胞で発現する抗原を中和する。いくつかの実施形態において、前記免疫応答によって産生した抗体は、Gb4抗原、胚発生段階特異抗原−3(SSEA−3)、および胚発生段階特異抗原−4(SSEA−4)の少なくとも1つを中和する。いくつかの実施形態において、Gb4抗原、胚発生段階特異抗原−3(SSEA−3)、および胚発生段階特異抗原−4(SSEA−4)の少なくとも1つを中和する抗体は、IgMアイソタイプ抗体と比較して、IgGアイソタイプ抗体を相対的に高いレベルで含む。
【0019】
本発明は、被験者の抗がん免疫応答を誘導できる免疫原性組成物を含むがんワクチンに関する。いくつかの実施態様において、前記がんワクチンは、乳癌、肺癌、肝癌、口腔癌、胃癌、大腸癌、上咽頭癌、皮膚癌、腎癌、脳腫瘍、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、および膀胱癌からなる群から選択されるがんの治療に適する。
【0020】
いくつかの実施態様において、前記がん組織は、細胞表面にGlobo H抗原を発現する。いくつかの実施態様において、前記Globo H抗原は、乳房の腫瘍上皮細胞で発現する。
【0021】
いくつかの実施形態において、前記がんワクチンは、Globo H抗原、Gb4、胚発生段階特異抗原−3(SSEA−3)、および胚発生段階特異抗原−4(SSEA−4)の少なくとも1つを中和する。いくつかの実施態様において、前記抗原は、乳癌幹細胞で発現する。
【0022】
本発明は、腫瘍成長の抑制を含み、(a)Globo Hまたはその免疫原性フラグメントから本質的に構成され、リンカーを通じてキャリアタンパク質と共役する糖鎖、および樹状細胞上のCD1d分子と結合できる糖脂質を含むアジュバントを含む免疫原性組成物を、必要に応じて被験者に投与すること、並びに(b)IgMアイソタイプ抗体と比較して、IgGアイソタイプ抗体を相対的に高い量で誘導する免疫応答を誘導することを含む方法に関する。
【0023】
前記方法のいくつかの実施形態において、前記リンカーはp−ニトロフェノールであり、前記キャリアタンパク質はジフテリア毒素交差反応物質197(DT−CRM197)であり、および前記アジュバントはα−ガラクトシルセラミド(α−GalCer)の合成アナログである。一実施形態において、前記アジュバントはC34である。
【0024】
前記方法のいくつかの実施形態において、前記免疫原性組成物はがんワクチンをさらに含み、さらにこの際、前記がんワクチンの有効量を用いる1またはそれ以上の治療法は、腫瘍成長を抑制する。いくつかの実施形態において、前記がんワクチンの投与によって腫瘍サイズが小さくなる。
【0025】
前記方法のいくつかの実施形態において、免疫応答反応が、好ましくはGlobo H抗原、Gb4、胚発生段階特異抗原−3(SSEA−3)、および胚発生段階特異抗原−4(SSEA−4)の少なくとも1つを中和するIgGアイソタイプ抗体の産生を目的とする。いくつかの実施態様おいて、Globo H抗原、胚発生段階特異抗原−3(SSEA−3)、および胚発生段階特異抗原−4(SSEA−4)の少なくとも1つが、乳癌幹細胞で発現する。いくつかの実施態様おいて、前記Globo Hは乳房の腫瘍上皮細胞で発現する。
【0026】
本発明は、(a)Globo Hまたはその免疫原性フラグメントから本質的に構成され、リンカーを通じてキャリアタンパク質と共役する糖鎖、および樹状細胞上のCD1d分子と結合できる糖脂質を含むアジュバントを含み、この際、前記免疫原性組成物がIgMアイソタイプ抗体と比較して、IgGアイソタイプ抗体を相対的に高いレベルで誘導する免疫応答を誘導する免疫原性組成物、並びに(b)薬学的に許容される賦形剤を含むがんワクチンに関する。
【0027】
いくつかの実施態様において、前記がんワクチンは、前記免疫原性組成物の前記リンカーがp−ニトロフェノールであり、前記キャリアタンパク質がジフテリア毒素交差反応物質197(DT−CRM197)であり、および前記アジュバントがα−ガラクトシルセラミド(α−GalCer)の合成アナログであることを含む。一実施形態において、前記アジュバントはC34である。
【0028】
いくつかの実施態様において、前記がんワクチンはがんの治療に用いられ、この際、前記がんワクチンの有効量を用いる1またはそれ以上の治療法は、腫瘍成長を抑制する。いくつかの実施形態において、前記がんワクチンの投与によって腫瘍サイズが小さくなる。いくつかの実施態様において、前記がんは、乳癌、肺癌、肝癌、口腔癌、胃癌、大腸癌、上咽頭癌、皮膚癌、腎癌、脳腫瘍、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、および膀胱癌からなる群から選択される。
【0029】
本発明は、(a)Globo H関連糖鎖またはその免疫原性フラグメントから本質的に構成され、リンカーを通じてキャリアタンパク質と共役する糖鎖、および(b)樹状細胞上のCD1d分子と結合できる糖脂質を含むアジュバントを含み、この際、前記Globo H関連糖鎖が、SSEA−3およびSSEA−4からなる群から選択され、IgMアイソタイプ抗体と比較して、IgGアイソタイプ抗体を相対的に高いレベルで誘導する免疫応答を誘導する免疫原性組成物に関する。前記キャリアタンパク質はジフテリア毒素交差反応物質197(DT−CRM197)であり、前記アジュバントはα−ガラクトシルセラミド(α−GalCer)の合成アナログであり、および前記リンカーはp−ニトロフェニルリンカーである。一実施形態において、前記アジュバントはC34である。
【0030】
本発明は、p−ニトロフェニルリンカーを通じてジフテリア毒素交差反応物質197(DT−CRM197)キャリアタンパク質と結合するGlobo H、および樹状細胞上のCD1d分子と結合できる糖脂質を含むアジュバントを含む、乳癌幹細胞に対する治療剤に関する。前記治療剤のいくつかの実施形態において、前記アジュバントはC34である。
【0031】
本発明は、p−ニトロフェニルリンカーを通じてジフテリア毒素交差反応物質197(DT−CRM197)キャリアタンパク質と共役するSSEA−3、および樹状細胞上のCD1d分子と結合できる糖脂質C34を含むアジュバントを含む、乳癌幹細胞に対する治療剤に関する。
【0032】
本発明は、p−ニトロフェニルリンカーを通じてジフテリア毒素交差反応物質197(DT−CRM197)キャリアタンパク質と共役するSSEA−4を含む、乳癌幹細胞に対する治療剤に関する。いくつかの実施形態において、前記治療剤は、樹状細胞上のCD1d分子と結合できる糖脂質C34を含むアジュバントをさらに含む。
【0033】
被験者への本発明に係る治療剤の投与は、乳癌幹細胞(BCSC)で発現する抗原を認識する抗体の産生を誘導し、この際、前記抗原は、Globo H、SSEA−3、およびSSEA−4からなる群から選択される。本発明は、本発明に係る治療剤を投与することを含む、乳癌の治療方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、発明の開示のいくつかの実施態様をさらに説明するためのものであり、1またはそれ以上の図面は、本明細書中の特定の実施形態の発明の詳細な説明と組み合わせて参照されることにより、本発明がより理解されうる。特許または出願は、少なくとも1つのカラーの図面を含む。カラーの図面を有する本特許権または特許出願公報のコピーは、請求により有料で庁から提供されうる。
【図1】図1は、Globo Hおよび切断型誘導体の構造を示す。
【図2】図2A〜2Cは、それぞれモノクローナル抗体VK9およびMbrl(Globo Hとの特異的結合)、並びに抗SSEA−3の特異的結合を示す。
【図3】図3A〜3Bは、Globo H複合体およびα−GalCerを接種したマウスの血清学的応答を示す。3匹のC57BL/6マウスの群は、1μgの合成複合糖質を2μgの複合糖質とともに用いて/用いないで皮下投与で接種させた。マウス血清は、IgM(図3A)およびIgG(図3B)抗体分析用にそれぞれ1:60および1:240でそれぞれ希釈した。Cy3−抗マウスIgGまたはIgM二次抗体を、PMT500で532nmにおける蛍光検出に用いた。前記データは、3匹のマウス±SEMの平均蛍光強度で示す。
【図4】図4は、α−GAlCerおよびアナログを示す。
【図5】図5は、共役Globo Hおよびα―GalCer誘導体をワクチン接種されたマウスのIgMレベルを示す。図に示されるように、マウス血清は第2および第3ワクチン接種後に収集および分析した。Cy3第2抗−マウスIgMは、PMT400、532nmの条件で検出した。その結果を、3匹のマウス±SEMの平均蛍光強度で示す。
【図6】図6は、ワクチン接種後のマウスポリクローナル抗体(抗Globo H、抗Gb5、抗SSEA−4、および抗Gb4)の反応特異性を示す。マウス血清は、2μgのアジュバントとともに用いて/用いないで、1.6μgのGH−DTの第3のワクチン接種2週間後に得た(メス、Balb/c、筋肉注射)。前記IgG力価は、糖鎖マイクロアレイで分析し、PMT400で、1000(バッククラウンドの10倍)以上のMFIの最大希釈収率で定義した。各スポットは、マウスごとの力価を示す。
【図7】図7は、異なるアジュバントを用いた場合のIgG抗体対IgM抗体の抗体力価を示す。
【図8】図8は、GH−KLHワクチンのアジュバント活性評価を示す。メスBalb/cマウスに筋肉注射で1.6μgのGH−KLHおよび2μgのアジュバントをワクチン接種し、ワクチン接種後、2週間ごとに採血した。前記血清を希釈し、マイクロアレイ分析した。
【図9】図9は、免疫付与後の抗体アイソタイプ特性を示す。マウスを上述のようにワクチン接種した。血清(1:60で希釈)は、マイクロアレイ抗体サブクラス分析した(532nm、PMT300)。前記データは、3匹のマウス±SEMの平均蛍光強度で示す。
【図10】図10は、糖脂質アジュバントと異なる種類のSSEA−3−DTまたはSSEA−4−DTによって生じるIgM抗体対IgG抗体の抗体力価を示す。
【図11】図11は、細胞表面の24の糖鎖構造を示す。
【図12A】図12Aは、異なるワクチンで誘導されるIgGの交差反応性実験を示す。図12A:Globo H−DTおよびC1アジュバントによって誘導された抗Globo H IgG。
【図12B】図12Bは、異なるワクチンで誘導されるIgGの交差反応性実験を示す。図12B:Gb5−DTおよびC1アジュバントによって誘導された抗Gb5 IgG。
【図12C】図12Cは、異なるワクチンで誘導されるIgGの交差反応性実験を示す。図12C:SSEA−4−DTおよびC1アジュバントによって誘導された抗SSEA−4 IgG。
【図13】図13は、マウス異種移植モデルを示す。2×105の4T1マウス転移性乳癌細胞を無菌PBSおよび調製し、ワクチン接種を受けたBalb/cマウスに皮下投与した。マウスの腫瘍サイズはノギスで測定し、(長さ×高さ×幅)/2(mm3)で定義した。
【図14】図14は、Globo Hハーフエステルおよび複合糖質の合成スキームを示す。
【図15】図15は、原発性乳癌幹細胞におけるSSEA−4発現のフローサイトメトリー分析を示す。BCSCおよび非BCSC表面のSSEA−4の発現は、4色の免疫蛍光染色、続くフローサイトメトリー分析によって評価した。左のパネルに示されるように、BCSCは、CD45−/CD24−/CD44+細胞として定義し、非BCSCは、その他のCD45−細胞集団として定義した。BCSCおよび非BCSCの目的の抗原の発現は、それぞれ中央および右のパネルに示されている。点線はアイソタイプの対照群を示し、数値は陽性細胞の割合を示す。
【図16】図16は、正常組織におけるSSEA−4の発現の制限を示す。正常組織配列の免疫組織化学的染色により、乳房、小腸、および直腸のSSEA−4の発現が分析された。SSEA−4のポジティブ染色では、頂側膜上皮細胞に制限される。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、DT−CRM197が数十年間ジフテリアに対するワクチンとしてヒトに広く用いられてきただけでなく、高い免疫原性を有するため、Globo HおよびSSEA−4のキャリアタンパク質に有用であるという驚くべき知見に関するものである。最も重要なことは、さまざまな複合糖質ワクチンが、FDAに承認されていることである。ジフテリア毒素交差反応物質197(DT−CRM197)は、DTの非毒性突然変異体であり、前記DTは、正常分子の免疫原性と、ヘパリン結合性上皮成長因子(HB−EGF)との結合能を共有する。DTに対する特異的な細胞膜受容体は、しばしばがんで過剰発現する(Buzzi S. et al., Cancer Immunology, Immunotherapy (2004), 53(11):1041-1048)。
【0036】
アジュバントとしてC34を用いると、GH−DTおよびSSEA−4−DTの両方が腫瘍抗原に対するIgG抗体をIgM抗体よりも多く誘導する免疫応答を最も効果的に示す。C34と組み合わせたGH−DTは、Globo Hだけでなく、SSEA−3(Gb5)およびSSEA−4をも中和する抗体を誘導し、この際、前記Globo H、SSEA−3およびSSEA−4は、乳癌細胞およびがん幹細胞に特異的である。
【0037】
さらに、糖鎖マイクロアレイの開示は、抗体特異性試験について強力な基礎となり、ワクチン試験のための患者の同定および免疫付与後の免疫応答のモニタリングに有用である。
【0038】
下記発明の詳細な説明において、実施されうる特定の実施形態を説明する方法として示される一部を形成する図面とともに説明する。これらの実施形態は、当業者が本発明を実施できるように詳細に記載され、その他の実施形態も実施可能であることが理解され、並びに本発明の技術的思想を逸脱することなく、その構造的、論理的、および電気的変更がされうる。したがって、下記実施形態の説明は、狭義に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義される。
【0039】
別途定義がない限り、すべての技術的および化学的用語は、本発明が属する分野における当業者に共通に理解されるものとして、同様の意味を有するものが使用されている。本明細書中に記載されたものと同等または等価の方法および物質は本発明の実施または試験に用いられうるが、好ましい方法および方法および物質が説明される。本明細書中で具体的に言及したすべての刊行物および特許文献は、本発明と関連して用いられうる刊行物に記載された、化学物質、細胞株、ベクター、動物、装置、統計的分析、および手法を含むすべての目的において参照により組み込まれる。本明細書中で引用したすべての刊行物は、当該技術分野における技能レベルの指標としてみなされる。本明細書の記載事項はいずれも、本発明が先発明についての開示に先行するものではないとの自認として解釈されるべきではない。
【0040】
本発明に係る物質および方法を記載する前に、本発明は、記載される特定の方法、プロトコル、物質、および試薬に限定されず、多様なものでありうることが理解される。また、本明細書中で用いられる専門用語は、特定の実施形態を示すことのみを目的としているだけであり、本発明の技術的範囲を制限するものではない(添付の特許請求の範囲によってのみ制限される)ことが理解される。
【0041】
定義
本明細書および添付の特許請求の範囲に用いられる、単数形「a」、「an」および「the」は、別に明確な記載が本文中にない限り、複数の引用を含むものであることに留意しなければならない。同様に、用語「a」(または「an」)、「1またはそれ以上」、および「少なくとも1つ」は、本明細書中で交互に用いられうる。また、用語「comprising」、「including」、および「having」も交互に用いられうることに留意する。
【0042】
本発明の実施は、別に規定がない限り、分子生物学、微生物学、組換えDNA、および免疫学における当該技術分野の技術の範囲内の従来技術が利用されうる。当該技術は、文献において十分に説明される。例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual, 2nd Ed., ed. by Sambrook, Fritsch and Maniatis (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989); DNA Cloning, Volumes I and II (D. N. Glover ed., 1985); Culture Of Animal Cells (R. I. Freshney, Alan R. Liss, Inc., 1987); Immobilized Cells And Enzymes (IRL Press, 1986); B. Perbal, A Practical Guide To Molecular Cloning (1984); the treatise, Methods In Enzymology (Academic Press, Inc., N.Y.); Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells (J. H. Miller and M. P. Calos eds., 1987, Cold Spring Harbor Laboratory); Methods In Enzymology, VoIs. 154 and 155 (Wu et al. eds.), Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology (Mayer and Walker, eds., Academic Press, London, 1987); Antibodies: A Laboratory Manual, by Harlow and Lane s (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1988); およびHandbook Of Experimental Immunology, Volumes I-IV (D. M. Weir and C. C. Blackwell, eds., 1986)を参照。
【0043】
本明細書中で用いられる用語「脂質」は、細胞シグナル経路に関与する任意の脂溶性(lipophilic)分子を意味する。
【0044】
本明細書中で用いられる用語「糖脂質」は、細胞認識の標識としての機能を有する、脂質が結合した糖を意味する。
【0045】
本明細書中で用いられる用語「アルファ−ガラクトシルセラミド」および「α−GalCer」は、ナチュラルキラーT細胞を刺激してヘルパーT(TH)1およびTH2サイトカインをともに産生する糖脂質を意味する。本明細書中で用いられる前記糖脂質誘導体C34は、下記の構造を有する。
【0046】
【化2】
【0047】
本発明に係る前記α−GalCerアナログは、細胞起源のα−GalCerアナログ(グループI:C2、C3、およびC14)、スルホン化により修飾されたα−GalCerアナログ(グループII:C4、C5、およびC9)、フェニルアルキル鎖のα−GalCerアナログ(グループIII:C6−C8、C10−C11、C15−C16、C18−C34、C8−5、およびC8−6)、およびα−GalCerアナログが切断されたフィトスフィンゴシンを含む。C34および他のアルファ−ガラクトシルセラミドアナログの構造、並びにそのアジュバントとしての用途は、その詳細が2008年4月14日に出願された、国際出願番号PCT/US2008/060275に開示されている。
【0048】
C34を含む合成α−GalCerアナログは、CD1d分子と複合体を形成できる。合成α−GalCerアナログは、NKTのT細胞受容体に認識されうる。合成α−GalCerアナログは、TH1型応答、TH2型応答、もしくはTH1型応答、およびTH2型応答を起こしうる。前記α−GalCerアナログは、in vitroでNKTを活性化させうる。前記α−GalCerアナログは、in vivoでNKTを活性化させうる。
【0049】
本明細書中で用いられる用語「糖鎖(glycan)」は、多糖またはオリゴ糖を意味する。本明細書中で用いられる糖鎖はまた、糖タンパク質、糖脂質、糖ペプチド、糖プロテオーム、ペプチドグリカン、リポ多糖、またはプロテオグリカンなどの複合糖質の糖質部分を意味する。糖鎖は、通常、単糖間における単一のO−グリコシド結合からなる。例えば、セルロースは、β―1,4結合したD−グルコースから構成される糖鎖(より具体的には、グルカン)であり、キチンは、β―1,4結合したN−アセチル−D−グルコサミンから構成される糖鎖である。糖鎖は、単糖残基のホモまたはヘテロ重合体であり、直鎖または分岐鎖でありうる。糖鎖は、糖タンバク質およびプロテオグリカンなどのタンパク質に結合して存在しうる。前記糖鎖は、一般的に、細胞の外面上に見られる。O−およびN−結合糖鎖は、真核生物において非常によく見られ、原核生物においても少数であるが見られうる。N−結合糖鎖は、シークオン配列におけるアスパラギンのR基の窒素(N)に結合して存在する。前記シークオンは、Asn−X−SerまたはAsn−X−Thr配列であり、この際、Xはプロリンを除く任意のアミノ酸である。
【0050】
本明細書中で用いられる用語「糖タンパク質」は、糖鎖を共有結合で修飾させたタンパク質を意味する。前記糖タンパク質には、下記4つのタイプがある:(1)N−結合糖タンパク質、(2)O−結合糖タンパク質(ムチン)、(3)グルコサミノグリカン(GAG、プロテオグリカンとも呼ばれる)、(4)GPIアンカー。大抵の糖タンパク質は、構造的な微小不均一性(同一のグリコシル化部位に複数の異なる糖鎖構造が結合する)、および構造的な巨大不均一性(複数の部位および複数の糖鎖タイプの結合)を有する。
【0051】
本明細書中で用いられる用語「抗原」は、免疫応答を起こすことができる任意の基質と定義される。
【0052】
本明細書中で用いられる用語「免疫原」は、抗原またはDNAワクチンのような抗原の産生を誘導できる基質を意味する。
【0053】
本明細書中で用いられる用語「免疫原性」は、免疫応答を刺激する免疫原、抗原、またはワクチンの活性を意味する。
【0054】
本明細書中で用いられる用語「免疫療法」は、予防目的/治療目的を達成するための、免疫応答を調節する概念に基づく多くの治療戦略を意味する。
【0055】
本明細書中で用いられる用語「CD1d」は、さまざまなヒト抗原提示細胞の表面に発現するタンパク質のCD1(分化1群)ファミリーのメンバーを意味する。CD1dは脂質抗原活性ナチュラルキラーT細胞に提示される。CD1dは、糖脂質抗原結合中に深抗原結合溝を有する。樹状細胞上に発現するCD1d分子は、C34等のα−GalCerアナログを含む糖脂質に結合して存在している。
【0056】
本明細書中で用いられる用語「適応免疫系」は、高度に専門化された、全身性の細胞および病原性の抗原を除去する経路を意味する。前記適応免疫系の細胞は、白血球の一種であり、リンパ球と呼ばれている。B細胞およびT細胞は、リンパ球の主要な一例である。
【0057】
本明細書中で用いられる用語「T細胞」および「Ts」は、細胞性免疫に主要な役割を果たす、リンパ球として知られている白血球群を意味する。T細胞は、細胞表面の存在するT細胞レセプター(TCR)と呼ばれる特有の受容体の存在によって、B細胞およびNKs等の他のリンパ球型と識別されうる。いくつかのT細胞のサブセットの相違は、それぞれ異なる機能を示す。ヘルパーT細胞(TH)は、適応免疫系の「仲介役」である。1度活性化されると、急速に分裂し、免疫応答を調節する、または「助ける」、サイトカインと呼ばれる低分子量タンパク質を分泌する。サイトカインのシグナルを受け取ることによって、これらの細胞は、異なるサイトカインを分泌するTH1、TH2、TH17、または他のサブセットの1つに分化する。
【0058】
本明細書中で用いられる用語「抗原提示細胞」(APC)は、細胞表面で主要組織適合性複合体(MHC)と複合体を形成する外部抗原を示す細胞を意味する。T細胞は、TCRによりこの複合体を認識しうる。APCは、専門的または非専門的の2つのカテゴリーに分類される。樹状細胞(DC)は、専門的なカテゴリーに該当され、CD1と関連してT細胞に抗原提示能がある。典型的な実施において、本開示の方法を用いたDCは、ある実施におけるリンパ、または別の実施における骨髄性骨髄前駆細胞から分化した、いくつかのDCサブセットでありうる。
【0059】
本明細書中で用いられる用語「未感作細胞」は、未分化の免疫細胞、例えば、未だ特異的病原体を認識するように分化されていないCD4T細胞を意味する。
【0060】
本明細書中で用いられる用語「ナチュラルキラー細胞」は、ウイルスまたは細胞内病原体に対する自然宿主の防御に寄与するインターフェロンで活性化された、リンパ系細胞のクラスを意味する。
【0061】
本明細書中で用いられる用語「ナチュラルキラーT細胞」は、通常のTsおよびNKsをともに有する性質/受容体を持つ、T細胞のサブセットを意味する。これらの細胞の多くは、非多形性CD1d分子、自己および外部脂質と結合する抗原提示細胞、並びに糖脂質を認識する。NKsのTCRは、CD1d分子によって提示された糖脂質抗原(シャペロン)を認識できる。NKTsの主要な応答は、刺激後の急速なIL−4、IFN−γ、およびIL−10を含むサイトカインの分泌、並びにそれによって影響が及ぼされる多様な免疫応答および発病過程である。NKTsは、均一集団または不均一集団でありうる。一つの典型的な実施において、前記集団は、ヒトおよびマウス骨髄、並びにヒト肝T細胞集団、例えば、さまざまなTCRsで発現し、多量のIL−4およびINF−γを生産しうる、CD1d反応性非インバリアントT細胞を含む、「非インバリアントNKTs」でありうる。CD1d依存性NKTsの最も知られたサブセットは、インバリエントTCR−アルファ(TCR−α)鎖を発現する。これらは、I型またはインバリエントNKTs(iNKTs)と呼ばれる。これらの細胞は、ヒト(Vα21iNKTs)およびマウス(Vα14NiKTs)間で維持され、多くの免疫学的過程に関連がある。
【0062】
本明細書中で用いられる用語「サイトカイン」は、前駆細胞が異なる特異的な細胞タイプとなることによって変化する、遺伝子発現に通常関与する免疫細胞の分化過程の影響によって、免疫応答の強度および持続を調節する、任意の多数の小さい分泌タンパク質を意味する。サイトカインは、推定される機能、分泌細胞、または作用標的に基づき、リンホカイン、インターロイキン、およびケモカインとさまざまな命名がなされている。例えば、いくつかの共通するインターロイキンは、限定されないが、IL−12、IL−18、IL−2、INF−γ、TNF、IL−4、IL−10、IL−13、IL−21、およびTGF−βを含む。
【0063】
本明細書中で用いられる用語「ケモカイン」は、リンパ球の可動および活性化の手段を与える感染部位から放出される、任意のさまざまな小さい遊走性のサイトカインを意味する。ケモカインは、白血球を感染部位に引き付ける。ケモカインは、ケモカインを4つのグループに分類できる保存システイン残基を有する。前記グループとその代表的なケモカインは、C−Cケモカイン(RANTES、MCP−1、MIP1α、およびMIP−1β)、C−X−Cケモカイン(IL−8)、Cケモカイン(リンホタクチン)、並びにCXXXCケモカイン(フラクタルカイン)である。
【0064】
本明細書中で用いられる用語「TH2型応答」は、サイトカイン、インターフェロン、ケモカインの特定のタイプが産生される等のサイトカイン発現のパターンを意味する。典型的なTH2サイトカインは、限定されないが、IL−4.IL−5、IL−6、およびIL−10を含む。
【0065】
本明細書中で用いられる用語「TH1型応答」は、サイトカイン、インターフェロン、ケモカインの特定のタイプが産生される等のサイトカイン発現のパターンを意味する。典型的なTH1サイトカインは、限定されないが、IL−2、IFN−γ、GMCSF、およびTNF−βを含む。
【0066】
本明細書中で用いられる用語「TH1バイアス」は、免疫原性応答を意味し、この際、TH1サイトカインおよび/またはケモカインの産生は、TH2サイトカインおよび/またはケモカインの産生よりも大きく増加する。
【0067】
本明細書中で用いられる用語「エピトープ」は、抗体またはT細胞レセプターの抗原結合部位と接触する抗原分子の一部として定義される。
【0068】
本明細書中で用いられる用語「ワクチン」は、全病原微生物(死滅または弱毒化)またはタンパク質、ペプチド、または多糖などの微生物の成分からなる抗原、すなわち、微生物が引き起こす疾病に対する免疫を付与する抗原を含む製剤を意味する。ワクチン製剤は天然または組換えDNA技術によって合成もしくは誘導させたものでありうる。
【0069】
本明細書中で用いられる用語「免疫学的アジュバント」は、免疫原とともに用いられる、免疫原に対する免疫応答を増強または改善する物質を意味する。本開示に係るα―GalCerアナログは、より強力にワクチンに応答するように、ワクチンを投与した患者の免疫系を刺激することによって、ワクチンの効果を改善または増強するための、免疫学的アジュバントとして用いられる。一つの典型的な実施において、C34アナログはアジュバントとして用いられる。
【0070】
本明細書中で用いられる用語「ミョウバンアジュバント」は、免疫アジュバント活性を有するアルミニウム塩を意味する。この物質は、溶液中においてタンパク質抗原を吸収および沈殿させ、当該沈殿物は、接種部位において形成された貯蔵ワクチンから抗原の持続的な放出を促進することによって、ワクチンの免疫原性を向上する。
【0071】
本明細書中で用いられる用語「抗がん免疫治療活性剤」は、腫瘍を阻害、減少および/または除去する、本開示に係るワクチンによって発生した抗体を意味する。
【0072】
本明細書中で用いられる用語「抗原特異的」は、特定抗原の供給、または抗原フラグメントの供給、その結果生じる特異的細胞増殖のような細胞集団の性質を意味する。
【0073】
本明細書中で用いられる用語「フローサイトメトリー」または「FACS」は、流体の流れの中の懸濁化した粒子または細胞の物理的または化学的性質を、光学的または電子的検出装置を通して分析する技術を意味する。
【0074】
後述するペプチド中のアミノ酸残基は、以下のように省略する:フェニルアラニンはPheまたはF;ロイシンはLeuまたはL;イソロイシンはIleまたはI;メチオニンはMetまたはM;バリンはValまたはV;セリンはSerまたはS;プロリンはProまたはP;トレオニンはThrまたはT;アラニンはAlaまたはA;チロシンはTyrまたはY;ヒスチジンはHisまたはH;グルタミンはGlnまたはQ;アスパラギンはAsnまたはN;リジンはLysまたはK;アスパラギン酸はAspまたはD;グルタミン酸はGluまたはE;システインはCysまたはC;トリプトファンはTrpまたはW;アルギニンはArgまたはR;およびグリシンはGlyまたはGである。アミノ酸のさらなる記述に対しては、Proteins: Structure and Molecular Properties by Creighton, T. E., W. H. Freeman & Co., New York1983を参照。
【0075】
本明細書中に開示される組成物は、本開示に接した当業者によって特定可能な追加の活性化剤、キャリア、ビヒクル、賦形剤、または助剤とともに含む、医薬組成物または栄養補助組成物を含みうる。
【0076】
前記医薬組成物または栄養補助組成物は好ましくは、少なくとも1つの薬学的に許容されるキャリアを含む。このような医薬組成物において、本明細書中に開示された組成物は、「活性化合物」を形成し、「活性剤」として参照される。本明細書中で用いられる用語「薬学的に許容されるキャリア」は、溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張化剤および吸収遅延剤などの、投与薬剤と相溶性が高いものを含む。補足的な活性化合物も組成物中に組み込まれうる。医薬組成物は、目的とする投与経路に適するように製剤化される。投与経路の例として、例えば、静脈内投与、皮内投与、皮下投与などの非経口投与、経口投与(例えば、吸入投与)、経皮投与(局所投与)、経粘膜投与、および直腸投与を含む。非経口投与、皮内投与、または皮下投与に適用するために用いられる溶液または懸濁液は、以下の成分を含みうる:注射用蒸留水、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒などの無菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム等の抗酸化剤;エチレンジアミンテトラ酢酸等のキレート剤;酢酸、クエン酸、またはリン酸等の緩衝剤;および塩化ナトリウムまたはDグルコース等の等張化剤。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムの等の酸または塩基を用いて調製されうる。非経口製剤は、ガラスまたはプラスチックで製造されたアンプル、使い捨てシリンジ、または多用量バイアルに封入されうる。
【0077】
本明細書中で用いられる被験者は、ヒトおよびヒト以外の霊長類(例えば、ゴリラ、マカク、マーモセット)、家畜動物(例えば、ヒツジ、ウシ、ウマ、ロバ、およびブタ)、ペット(例えば、犬、猫)、実験室試験の動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモット、ハムスター)、捕獲野生動物(例えば、キツネ、シカ)、並びに本開示に係る抗原から恩恵を受けうる他の任意の動物を意味する。本開示の抗原から恩恵を受けうる動物のタイプには制限はない。ヒトであるかヒト以外の生物であるかにかかわらず、被験者を患者、個体、動物、宿主、またはレシピエントと称することがある。
【0078】
注射の用途に好適な医薬組成物は、無菌水溶液(水溶性)、または無菌注射剤または無菌分散剤の即時調製用の分散剤および無菌粉末を含む。静脈内投与に好適なキャリアは、生理食塩水、静菌水溶液、Cremophor EL(商標)(BASF, Parsippany, N.J.社)、またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む。すべての場合において、前記組成物は、無菌および容易に注射可能できる程度の溶液でなければならない。また、製造および保存の状態で安定であり、細菌および真菌などの微生物の汚染の作用から保護されなければならない。前記キャリアは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの安定な混合物を含む溶媒または分散媒でありうる。好適な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティング剤の使用によって、分散剤の場合には必要な粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持されうる。微生物の作用は、さまざまな抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノールアスコルビン酸、チメロサールなどによって防止されうる。多くの場合において、等張化剤、例えば、糖、またはマンニトール、ソルビトール、もしくは塩化ナトリウムなどのポリアルコールを組成物中に含むことが好ましい。注射用組成物の持続的吸収は、組成物中に吸収を遅延させる添加剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含ませることによって実現されうる。
【0079】
無菌注射剤は、必要に応じて上記列挙された成分の1または組み合わせを含む好適な溶媒に、必要量の活性化合物を添加し、次いでろ過滅菌することによって調製されうる。通常、分散剤は、基礎分散媒体および上記列挙された他の必要な成分を含む無菌ビヒクル中に活性化合物を組み込むことによって調製される。無菌注射剤を調製するための無菌粉末の場合には、調製方法は真空乾燥および凍結乾燥を含み、あらかじめ無菌ろ過した溶液から活性成分に任意の必要な追加の成分を加えた活性成分の粉末が得られる。
【0080】
経口用組成物は、通常、不活性希釈剤または食用キャリアを含む。治療的経口投与を目的として、活性化合物は、賦形剤に混和され、錠剤、トローチ剤、または、ゼラチンカプセルのようなカプセル剤の形態で使用される。経口用組成物はまた、口内洗浄液として使用するために、分散媒を用いて調製されうる。薬学的に混和可能な結合剤、またはアジュバント物質は、組成物の一部として含みうる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは任意の下記の成分、または同等の性質の化合物を含みうる:微結晶性セルロース、トラガカントゴム、またはゼラチンなどの結合剤;デンプン、乳糖などの賦形剤;アルギン酸、プリモゲル、もしくはコーンスターチなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムもしくはステロテス(sterotes)などの滑沢剤;コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤;スクロースもしくはサッカリンなどの嬌味剤;またはペパーミント、サリチル酸メチル、もしくはオレンジ芳香剤などの芳香剤。
【0081】
吸入投与に対しては、化合物は、好適な推進剤、例えば二酸化炭素などの気体、または噴射器を含む加圧容器またはディスペンサーから、エアロゾルの形態で供給される。
【0082】
また、全身投与は、経粘膜投与または経皮投与でありうる。経粘膜投与または経皮投与に対しては、バリアを通過するのに好適な浸透剤が製剤において使用される。このような浸透剤は当該技術分野において周知であり、例えば、経粘膜投与においては、洗浄剤、胆汁塩、およびフシジン酸誘導体を含む。経粘膜投与は鼻腔用スプレーまたは坐剤の使用によって行われうる。経皮投与においては、活性化合物は、当該技術分野において周知の軟膏剤、ゲル化剤、またはクリーム剤に製剤化される。化合物はまた、直腸への供給のため、坐剤(例えば、ココアバターおよび他のグリセリン坐剤などの従来の坐剤の基材を含む)または停留かん腸の形態で調製されうる。
【0083】
実施によると、活性化合物はキャリアを含んで調製され、植え込み型送達システムおよびマイクロカプセル型送達システムを含む、放出制御製剤などの体内からの迅速な除去を防ぐ。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルト酸エステル、およびポリ乳酸などの生分解性、生体適合ポリマーが用いられうる。製剤化などの調製方法は、当業者にとって明らかでありうる。また、原料はアルザコーポレーションおよびノバファーマシューティカルズ社の市販品から得られうる。リポソーム懸濁化剤(モノクローナル抗体を用いた感染細胞への細胞特異抗原にターゲティングしたリポソームを含む)もまた、薬学的に許容されるキャリアとして使用されうる。これらは、当業者に公知の方法、例えば、本明細書に参照により組み込まれる、米国特許第4,522,811号明細書に記載された方法に従い調製されうる。
【0084】
投与容易な用量単位形態および均一な用量とした経口組成物または非経口組成物に設計することが好ましい。本明細書中で用いられる用量単位形態は、治療される被験者に統一された用量として適する身体的に個別の単位を意味し、各単位は、必要とする薬学的キャリアと関連して、望みの治療効果が得られるように計算された活性化合物の所定量を含む。
【0085】
化合物などの毒性および治療効果、例えばLD50(集団の50%の致死量)およびED50(集団の50%の治療有効量)は、細胞培養または動物実験における標準的な手順によって決定されうる。毒性および治療の有効性の間の用量比は治療指数であり、LD50/ED50の比として表されうる。高い治療指数を示す化合物が調製される。有害副作用を示す化合物は用いられうるが、非感染細胞への損傷の可能性を最小限にするように、感染部位に対する化合物などの標的とする輸送システムをデザインするような注意を要し、これによって副作用が少なくなる。
【0086】
細胞培養アッセイおよび動物実験により得られるデータは、ヒトにおける使用する用量の範囲の決定に用いられうる。化合物などの用量は、好ましくは、ED50を含み、低毒性または非毒性の血中濃度の範囲内とする。用量は、用いられる剤形および利用する投与経路に応じて、前記範囲内で変化しうる。本開示に係る方法において使用される任意の化合物に対し、治療有効量は、始めは細胞培養アッセイから評価されうる。用量は、動物モデルにおいて、細胞培養で決定されるIC50(例えば、試験化合物の症状を最大抑制する半分の濃度)を含む、循環血漿濃度の範囲で決定されうる。このような情報は、ヒトにおける、より的確な有効量の決定に用いられうる。血漿中のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィによって測定されうる。
【0087】
本明細書に定義されるように、活性化合物の治療有効量(例えば、有効量)は約0.001〜100g/kg体重の範囲、または過度の実験なく、専門化によって明らかであり、理解されうる他の範囲でありうる。専門家は、被験者の有効な治療に必要とされる用量および時間について、特に限定されないが、病気または疾病の重症度、既往歴、被験者の全体的な健康状態および年齢、および他の症状を含む一定の要因が影響を及ぼすことを理解している。
【0088】
他の実施態様によると、1またはそれ以上の一部のキットが、当業者によって想定され、本明細書中に開示される方法の少なくとも1つを実施するためのものである前記キットの一部は、2またはそれ以上の組成物を含み、前記組成物は、上述の方法の少なくとも1つに従い、本明細書中に開示された組成物の有効量を単独または組み合わせて含みうる。
【0089】
前記キットはまた、場合によっては、活性化剤、生物学的反応の識別子、または本開示に接した当業者によって識別可能な他の化合物を含有する組成物を含む。前記キットはまた、少なくとも1つの本明細書中に開示された組成物の有効量または細胞株を含有する組成物を含む。使用されるキットの一部の前記組成物および細胞株は、当業者に理解される手順に従い、本明細書中に開示される少なくとも1つの方法を実施するために用いられうる。
【0090】
本明細書中で用いられる用語「ポリペプチド」は、任意のアミノ酸残基の多量体またはポリマーを意味する。ポリペプチドは、2またはそれ以上のポリペプチド鎖から構成されうる。ポリペプチドは、タンパク質、ペプチド、およびオリゴペプチドを含む。ポリペプチドは直鎖または分岐鎖でありうる。ポリペプチドは、修飾アミノ酸残基、アミノ酸アナログ、または非天然アミノ酸残基を含み、非アミノ酸残基に組み込まれうる。天然または人工的な修飾、例えば、ジスルフィド結合、グリコシル化、脂質化、メチル化、アセチル化、リン酸化、または標識化合物への結合のような操作であるかを問わず、修飾されたアミノ酸ポリマーは、前記定義の範囲内である。
【0091】
本明細書中で用いられる用語「特異的結合」は、結合対(例えば、抗体および抗原)間の相互作用を意味する。さまざまな例において、特異的結合は、約106モル/リットル、約107モル/リットル、もしくは約108モル/リットル、またはそれ以下の親和性定数で示されうる。
【0092】
本発明に係るがんワクチン
本発明に係る一実施形態は、Globo Hまたはそのフラグメント(例えば、胚発生段階特異抗原−3(SSEA−3、Gb5としても知られている)またはSSEA−4)のいずれか一方、およびアジュバントを含む免疫組成物を、必要に応じて被験者に投与するがんの治療方法である。標的のがんのタイプは、限定されないが、乳癌(ステージ1−4を含む)、肺癌(例えば、小細胞肺癌)、肝癌(例えば、肝細胞癌)、口腔癌、胃癌(T1−T4を含む)、大腸癌、鼻咽頭癌、皮膚癌、腎癌、脳腫瘍(例えば、星状細胞腫、多形性膠芽腫、および髄膜腫)、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、膀胱癌、および子宮内膜、横紋筋肉腫、骨肉腫、平滑筋肉腫、並びに消化管間質腫瘍を含む。
【0093】
部位により分類されたがんは、口腔癌および咽頭癌(唇、舌、唾液腺、口腔底部、歯茎および他の口腔、鼻咽頭、扁桃腺、中咽頭、下咽頭、他の口腔/咽頭);消化器癌(食道;胃;小腸;大腸および直腸;肛門、肛門管、および肛門直腸;肝臓;肝内胆管;胆嚢;他の胆管;膵臓;後腹膜;腹膜、網、および腸間膜;他の消化器);呼吸器癌(鼻腔、中耳、および洞;喉頭;肺および気管支;胸膜;気管、縦隔、および他の呼吸器);中皮腫の癌;骨および滑膜;心臓を含む軟組織;黒色腫および非上皮性皮膚癌を含む皮膚癌;カポジ肉腫および乳癌;女性生殖器系癌(子宮頸;子宮体;子宮、NOS;卵巣;膣;外陰部;および他の女性生殖器);男性生殖器系癌(前立腺;精巣;陰茎;および他の男性生殖器);泌尿器系癌(膀胱;腎臓および腎盂;尿管;および他の泌尿器);眼および眼窩の癌;脳および神経系癌(脳;および他の神経系癌);内分泌系癌(甲状腺および胸腺を含む他の内分泌腺);リンパ腫(ホジキン病および非ホジキンリンパ腫)、多発性骨髄腫、白血病(リンパ性白血病;骨髄性白血病;単球性白血病;および他の白血病)を含む。
【0094】
本発明による癌ワクチンの好適な標的となりうる、組織型によって分類された他の癌は、限定されないが、腫瘍、悪性;癌、NOS;癌、未分化、NOS;巨細胞および紡錘細胞癌、NOS;小細胞癌、NOS;乳頭癌、NOS;扁平上皮癌、NOS;リンパ上皮癌;基底細胞癌、NOS;毛母癌;移行上皮癌、NOS;乳頭移行上皮癌;腺癌、NOS;タストリノーマ、悪性;胆管癌:肝細胞癌、NOS;肝細胞癌および胆管癌の合併;索状腺癌;腺様嚢胞癌;腺腫性ポリープにおける腺癌;腺癌、家族性大腸ポリポーシス;固形癌、NOS;カルチノイド腫瘍、悪性;細気管支肺胞癌;乳頭腺癌、NOS;嫌色素癌;好酸性癌;好酸性腺癌;好塩基性癌;透明細胞腺癌、NOS;顆粒細胞癌;濾胞状腺癌、NOS;乳頭腺癌および濾胞状腺癌;非被嚢性硬化性癌;副腎皮質細胞癌;類内膜癌;皮膚付属器癌;アポクリン腺癌;皮脂腺癌;耳垢腺癌;粘膜表皮癌;嚢胞腺癌、NOS;乳頭状嚢胞腺癌、NOS;乳頭漿液性嚢胞腺;ムチン性嚢胞腺癌;粘液腺癌;印環細胞癌;浸潤性導管癌;髄様癌、NOS;小葉癌;炎症性乳癌;パジェット病、乳房;腺房細胞癌;腺扁平上皮癌;腺癌w/扁平上皮化生;胸腺腫、悪性;卵巣間質性腫瘍、悪性;卵胞膜細胞腫、悪性;顆粒膜細胞腫、悪性;セルトリ・間質細胞腫瘍、悪性;セルトリ細胞癌;ライディッヒ細胞腫、悪性;脂質細胞腫瘍、悪性;傍神経節腫、悪性;乳房外傍神経節腫、悪性;褐色細胞腫;グロームス腫瘍;悪性黒色腫、NOS;メラニン欠乏性黒色腫;表在拡大型黒色腫;巨大色素性母斑における悪性黒色腫;類上皮細胞黒色腫;青色母斑、悪性;肉腫、悪性;線維肉腫、NOS;線維性組織球腫、悪性;粘液肉腫;脂肪肉腫、NOS;平滑筋肉腫、NOS;横紋筋肉腫、NOS;胎児性横紋筋肉腫;胞巣状横紋筋肉腫;間質肉腫、NOS;混合腫瘍、悪性、NOS;ミュラー管混合腫瘍;腎芽細胞腫;肝芽腫;癌肉腫、NOS;間葉腫、悪性;ブレンナー腫瘍、悪性;葉状腫瘍、悪性;滑膜肉腫、NOS;中皮腫、悪性;未分化胚細胞腫;胚性癌腫、NOS;奇形腫、悪性、NOS;卵巣甲状腺腫、悪性;絨毛癌;中腎腫、悪性;血管肉腫;血管内皮腫、悪性;カポジ肉腫;血管周囲細胞腫、悪性;リンパ管肉腫;骨肉腫、NOS;傍骨性骨肉腫;軟骨肉腫、NOS;軟骨芽細胞腫、悪性;間葉性軟骨肉腫;骨巨細胞腫;ユーイング肉腫;歯原性腫瘍、悪性;エナメル上皮肉腫;エナメル上皮腫、悪性;エナメル上皮線維肉腫;松果体腫、悪性;脊索腫;神経膠腫、悪性;上衣腫、NOS;星状細胞腫、NOS;原形質性星状細胞腫;線維性星状細胞腫;星状芽細胞腫;膠芽細胞腫、NOS;乏突起膠腫、NOS;希突起グリオーマ;未分化神経外胚葉性腫瘍;小脳肉腫、NOS;神経節芽細胞腫;神経芽細胞腫、NOS;網膜芽腫、NOS;嗅神経原性腫瘍;髄膜腫、悪性;神経線維肉腫;神経鞘腫、悪性;顆粒細胞腫、悪性;悪性リンパ腫、NOS;ホジキン病、NOS;ホジキン傍肉芽腫、NOS;悪性リンパ腫、小リンパ球性;悪性リンパ腫、大細胞、びまん性;悪性リンパ腫、濾胞性、NOS;菌状息肉腫;その他の特定の非ホジキンリンパ腫;悪性組織球増殖症;多発性骨髄腫;肥満細胞腫;免疫増殖性小腸疾患;白血病、NOS;リンパ性白血病、NOS;形質細胞白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞性白血病;骨髄性白血病、NOS;好塩基球性白血病;好酸球性白血病;単球性白血病、NOS;肥満細胞性白血病;巨核芽球性白血病;骨髄性肉腫;および有毛細胞白血病を含む。
【0095】
本明細書中で用いられる用語「治療」は、がん、がんの症状、またはがんの素因の治療、治癒、緩和、軽減、変化、是正、改善、好転または影響を目的として、がん、がんの症状、またはがんの素因を有する被験者への1またはそれ以上の活性化剤を含む組成物の適用または投与を意味する。本明細書中で用いられる「有効量」は、被験者に治療効果を与えるのに必要な、1またはそれ以上の他の活性化剤を単独または組み合わせた、各活性化剤の量を意味する。有効量は、当業者に理解されるように、投与経路、用いる賦形剤、併用する他の活性化剤に応じて変化する。
【0096】
上述の方法において用いられる免疫組成物は、Globo Hまたはそのフラグメントである糖鎖(例えば、糖部分を含む分子)およびアジュバントを含みうる。Globo Hは、6糖類のエピトープ(Fucα1→2Galβ1→3GalNAcβ1→3Galα1→4Galβ1→4Glc)、および任意の非糖部分を含む糖鎖である。前記フラグメントは、6糖類のエピトープのフラグメント、および適用可能であれば非糖部分を含む糖鎖である。これらのオリゴ糖は、所定の方法によって調製されうる(Huang et al., Proc.Natl. Acad. Sci USA 103:15-20 (2006)を参照)。所望であれば、非糖部分と結合されうる。
【0097】
米国特許出願第12/485,546号は、(1)Globo Hの直接前駆体であるSSEA−3が乳癌幹細胞において高レベルで発現し、乳癌治療に好適な標的として提供され、(2)α―ガラクトシルセラミド(α−GalCer)が、抗Globo Hおよび抗SSEA−3抗体の賛成を促進する有効なアジュバントであるという予想外の発見に基づくものである。
【0098】
米国特許出願第12/485,546号は、Globo Hまたはそのフラグメント(例えば、SSEA−3)、およびアジュバント(例えば、α−GalCer)を含む免疫組成物を特徴とする。Globo Hまたはそのフラグメントは、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)と共役しうる。被験者(例えば、ヒト)に投与した場合、この免疫組成物は、Globo Hまたはそのフラグメントを標的とした免疫応答(例えば、抗体産生)を引き起し、このためがん(例えば、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、および肺癌)の治療に有効である。
【0099】
米国特許出願第12/485,546号は、非ヒト哺乳動物(たとえば、マウス、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、またはウマ)に上述の免疫組成物を投与することによって、Globo Hまたはそのフラグメントに特異的な抗体を産生し、Globo Hまたはそのフラグメントと結合する抗体を哺乳動物から単離する方法に関する。
【0100】
前記開示に記載されたGlobo Hまたは他の糖鎖は、DT−CRMなどのタンパク質キャリアと共役している。C34のようなアジュバントおよび任意の薬学的に許容されるキャリア(例えば、リン酸緩衝生理食塩水、または重炭酸塩溶液)にこれらを混合して、従来の方法により免疫組成物(例えば、ワクチン)を形成する。米国特許第4,601,903号明細書、4,599,231号明細書、および4,596,792号明細書を参照。前記組成物は、注射用として、溶液または懸濁液として調製され、前記キャリアは、投与方法および投与経路に基づき、および標準的な薬学の慣習に基づき選択される。好適な薬学的キャリアおよび希釈剤、並びに使用のための薬学的な必要な物は、レミントンズ・ファーマシューティカル・サイエンスに記載されている。免疫組成物は、アジュバントとしてα−GalCerを含むことが好ましい。アジュバントの他の例は、限定されないが、コレラトキシン、大腸菌易熱性エンテロトキシン(LT)、リポソーム、免疫刺激複合体(ISOCOM)、または免疫刺激配列オリゴデオキシヌクレオチドを含む。前記組成物はまた、in vivo供給を促進するポリマーを含みうる。Audran R. et al. Vaccine 21:1250-5, 2003;およびDenis-Mize et al. Cell Immunol., 225:12-20, 2003を参照。必要であれば、Globo Hまたはそのフラグメント中の糖部分に対する免疫応答を引き起こす組成物の能力を増強するために、さらに湿潤剤または乳化剤などの補助物質、またはpH調整剤を含んでいてもよい。本明細書中に記載される免疫組成物は、非経口的に投与(例えば、静脈注射、皮下注射、または筋肉注射)されうる。また、坐剤および経口製剤を含む他の投与方法が好ましい場合もある。坐剤について、結合剤およびキャリアは、例えば、ポリアルケングリコールまたはトリグリセリドを含みうる。経口製剤は、例えば、サッカリン、セルロース、炭酸マグネシウムなどの医薬品等級などの通常用いられる賦形剤を含みうる。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸剤、カプセル剤、徐放性製剤、または粉末剤の形態をとり、本明細書中に記載された免疫組成物の10−95%を含みうる。
【0101】
免疫組成物は製剤の調剤量と両立できる態様で、治療上、有効で、保護的で、かつ免疫原性の量で投与される。前記投与量は、治療する被験者の、例えば、個人の抗体産生能、および必要であれば細胞性免疫応答を誘導に依存する。投与を必要とする活性成分の正確な量は、医師の判断に依存する。しかしながら、好適な用量の範囲は、当業者によって容易に決定可能である。また、初回投与量および追加抗原投与量の好適な投与計画は変化するが、初回投与量、続く二回目投与量を含みうる。ワクチンの用量は、投与経路に依存し、宿主の大きさによって変化しうる。
【0102】
本発明に係る前記免疫組成物は、動物中の、がんの治療および診断に用いられうる抗体を産生するために用いられうる。動物(例えば、マウス、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、およびウマ)において、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体、並びにそのフラグメントを作製する方法は、当該技術分野において周知である。例えば、Harlow and Lane, (1988) Antibodies:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New Yorkを参照。用語「抗体」は、Fab、F(ab’)2、Fv、scFv(一本鎖抗体)、およびdAb(抗体ドメイン;Ward, et. al. (1989) Nature, 341, 544)などの天然の免疫グロブリン分子、およびそのフラグメントを含む。
【0103】
Globo H−DT−CRM197および関連ワクチン
Globo H(1)およびそのフラグメント2−10は、本明細書中に記載される方法に従って合成される。共役タンパク質に関しては、図14で示されるように、精製Globo Hハーフエステルをキャリアタンパク質とインキュベートさせる。
【0104】
前記Globo H−タンパク質共役体は、各キャリアタンパク質上のGlobo H分子の数を決定するために、MALDI−TOF解析によって評価する。組み込まれたGlobo Hの平均値を表1に示す。
【0105】
【表1】
【0106】
aMALDI−TOFにおけるm/zピーク;N.D.:未決定;*GH−KLHはOptimer社から提供された
GH−KLH共役体は、主により大きいサイズおよびKLHのLys残基数が多いという要因により、KLHのGlobo H結合の最大数を示した。p−ニトロフェニルリンカーを用いた同様のカップリング処理を、ウイルス膜に100,000以上のLys残基を含む破傷風モザイクウイルスに適用した。しかしながら、4℃のリン酸ナトリウム緩衝液(pH=7.2)中でのウイルスの反応性に対するウイルスの不安定性が、さらなる進展において大きな懸念であった。また、GH−BaMV16は、サイズが非常に大きいため、MALDI−TOF解析による検出が制限された。
【0107】
合成Globo Hおよび切断フラグメント(図1)は、還元末端にペンチルアミンリンカーで結合し、NHSがコートされたスライドガラス上に共有結合で固定された。11個のオリゴ糖の9個が、マイクロアレイ上にプリントされるように選択された。それぞれのマイクロアレイスライドに、9個のGlobo Hアナログ(SSEA−4、GH、Gb5、Gb4、Gb3、Gb2、BB4、BB3、およびBB2)50μMをそれぞれ12個ずつスポットした。
【0108】
マイクロアレイ上の炭化水素を検証するために、マウスモノクローナル抗体(GloboH用のVK9およびMbrl、並びに抗SSEA−3)を用いて、それぞれの二次抗体(ヤギ抗−マウスIgGおよびIgM)を特異的結合の試験に用い、その結果を図2A〜2Cに示す。前記データは、VK9およびMbrlの両方がGlobo Hおよび4糖類であるBB4の外面を認識し、MBrlは、MM3もわずかに認識したことを示唆している。また、抗SSEA−3抗体は、交差反応を起こすことなく、特異的にSSEA−3抗原(Gb5)を認識した。前記結果から、Globo Hマイクロアレイは、免疫付与されたマウスから得られるポリクローナル抗体の特異性および効力の分析に利用されうることを示している。
【0109】
すでに報告されているように、合成Globo Hワクチンおよび併用するQS−21を用いたマウスの免疫付与は、ヒト乳癌細胞に対する抗体を産生するが、マウス抗体は、いくつかの増強ワクチン接種の後であっても、主にIgMである(Ragupathi G, et al. (1997) Angew Chem Int Ed 36:125-128)。
【0110】
マウスのグループに、糖脂質アジュバントであるα-GalCer(C1)と共役した、または共役していない合成Globo Hを1μg皮下投与し、免疫付与した。その結果、IgMの誘導に最も有効な免疫原がGH−KLH、GH−DH、およびGH−BV、次いでGH−TT、GH−BSAであること(図3Aに要約される)、並びにα−GalCerがIgM抗体を高いレベルに誘導する免疫応答を刺激できることが分かった。同様の傾向がマウスIgG抗体においても観測され(図3B)、IgGレベルはIgMレベルよりも相対的に高かった。簡潔にいうと、合成複合糖質の炭化水素の密度がより低いにもかかわらず、GH−DTは、GH−KLHと同様の免疫原性を示し、アジュバントであるα−GalCerは、免疫応答の増強を示した。
【0111】
α−GlaCerは、GH−DTに対するアジュバント効果を示したことから、C1よりもアジュバント活性の高い他の糖脂質を試験し、その結果を図4に示した。マウスのグループに、糖脂質を有する、または有さないGH−DTおよびGH−BVを用いて免疫付与した。血清を得て、糖鎖マイクロアレイ解析を行った。一般的に、マウス抗Globo H IgG力価は、免疫付与が進行すると増強するが、IgMレベルは、ワクチン接種の時間にほとんど無関係である(図5)。GH−BVをワクチン接種したグループのうち、糖脂質−ワクチン処理およびワクチンの単独処理の間で、IgMレベルに有意な差はなかった。前記結果は、糖脂質と一緒に用いたGH−BVは有効な免疫療法ではないことを示唆するが、弱い免疫原性は、BaMVが不安定であるという特徴によるものである可能性がある。それにもかかわらず、α−GalCerアナログ、特に7DW8−5は、GH−DTとうまく協力して、マウスの免疫応答を誘導した。
【0112】
興味深いことに、マウスポリクローナルIgG抗体は、GH−DTおよび様々な糖脂質アジュバントによって産生され、Globo Hを中和するだけでなく、Gb5、SSEA−4、およびGb4と交差反応し、C34は最も有効な糖脂質アジュバントであった(図6)。IgMよりも力価がより高いIgGを誘導しうる新規ワクチン組成物を探索するために、Globo H−DT複合体および糖脂質C1もしくはC34、市販のAlPO4(リン酸アルミニウム)、またはMF59を試験した。
【0113】
驚くべきことに、糖脂質C34を含むGlobo H−DTは、3回のワクチン投与後にほとんど独占的にIgG抗体を誘導する(図7)。要約すると、GH−DT複合体と組み合わせた新規糖脂質アジュバント7DW8−5は、抗Globo HのIgGおよびIgMの両方を増強することができ、GH−DTと組み合わせた糖脂質アジュバントC34は、IgMよりも抗体力価が高いIgGを誘導しうる。これらは、Gb5抗原およびSSEA−4抗原に対して異なる結合親和性を示し、ともに乳癌幹細胞の表面に発現する。
【0114】
Globo Hワクチンにおける異なる糖脂質アジュバントの効果をさらに比較するために、GH−KLHを有する7つのマウスのグループに免疫付与した。この結果、糖脂質
を含むマウスワクチンが、抗Globo H抗体を高いレベルで誘導することを示唆した(図8)。MF59は、強力なアジュバントであるが、GH−KLHとは協力せずに、Globo Hに対する抗体を誘導した。AlPO4(リン酸アルミニウム)はまた、抗体の誘導に対して明らかな影響は示さなかった。一方、C34とともに用いたGH−KLHは、1回目および2回目ワクチン接種後において、優れた免疫原性を示したが、3回目ワクチン接種後は、C1と有意な差は見られなかった。全体として、これらの知見は、炭化水素ワクチンに対するアジュバントとして、新規な糖脂質誘導体の可能性を示唆するものである。
【0115】
細胞性および液性免疫応答の性質は、抗原および抗体の組み合わせだけでなく、キャリアおよび免疫付与の経路によって影響される。Sesardicおよび共同研究者が述べているように、毒性作用がない毒素変異体であるDT−CRM197が、抗原特異的T細胞増殖を誘導し、IL−2、INF−γ、およびIL−6の脾細胞による産生を高めることが、Th1を駆動する経路における役割であることを示唆している(Miyaji EN et al. (2001) Infect Immun 69:869-874; Godefroy S, et al. (2005) Infect Immun 73:4803-4809; Stickings P, et al. (2008) Infect Immun 76:1766-1773.)。サイトカインの特徴が主にTh1であるという事実にもかかわらず、抗CRM197抗体のサブクラスは、IgG1であり、Th1/Th2の混合応答を示すIgG2aを検出できない。これらの結果は、Globo Hワクチンの抗体アイソタイプの特性の評価を促進し、本研究が、糖脂質アジュバントと組み合わせたGH−DTまたはGH−KLHが、微量のIgG2aとともに、主としてIgG1抗体を誘導することを示した(図9)。
【0116】
糖脂質アジュバントを単独で静脈投与(i.v.)した場合、Th1バイアスのサイトカイン分泌を増強するという事実にもかかわらず、抗体のクラススイッチ(IgG2a)は観測されなかった。全体として、糖脂質は、細胞性および液性免疫応答を増強するという極めて重要な役割がある。
【0117】
Globo H、SSEA−3、およびSSEA−4がんワクチン
DTと共役したSSEA−3(Gb5)およびSSEA−4を合成し、試験した。3回目ワクチン接種の後、IgMおよびIgGの抗体力価を比較し、SSEA−3−DTおよびSSEA−4−DTが、IgMよりも高力価のIgGを誘導することを見出した(図10)。
【0118】
GH−DTおよびC34がGlobo H、Gb5、およびSSEA−4を認識する抗体を誘導するため、アジュバントの存在下、SSEA−3−DTおよびSSEA−4−DTワクチンの特異性を、IgGの研究に集中して、24個の糖鎖アレイを用いて試験した(図11)。
【0119】
図12A〜12Cに示すように、Globo HおよびC34アジュバントで免疫付与されたマウスは、高い選択性でGlobo H、Gb5、およびSSEA−4を認識しうる抗体を誘導し、アジュバントMF59を有するSSEA−3−DTワクチンは低い選択性で高い免疫応答を誘導した。一方、アジュバントC34と組み合わせたSSEA−3−DTは、Globo H、SSEA−3、およびSSEA−4に対する抗体のみ誘導した。
【0120】
興味深いことに、アジュバント存在下または非存在下、SSEA−4−DT(シアリル−Gb5)は、SSEA−4およびその切断構造(末端のラクトースが欠失したSSEA−4)を特異的に認識するIgGおよびIgM抗体を誘導した。理論に制約されることなく、シアル酸は免疫原性が高く、特異的免疫応答を高度に誘導すると仮定される。
【0121】
SSEA−3−DT−C34を有するマウスの免疫付与は、Globo H、SSEA−3、およびSSEA−4と反応する抗体を誘導し、Globo Hワクチンが、Globo H、SSEA−3、およびSSEA−4を発現する腫瘍細胞および乳癌幹細胞の標的となりうることが示唆された。
【0122】
Globo H−DT−C34を有するマウスの免疫付与は、Globo H、SSEA−3、およびSSEA−4と反応する抗体を誘導し、Globo Hワクチンが、Globo H、SSEA−3、およびSSEA−4を発現する腫瘍細胞および乳癌幹細胞の標的となりうることが示唆された。
【0123】
SSEA−4−DTを有するマウスの免疫付与は、SSEA−4と反応する抗体を誘導し、SSEA−4−DTワクチンが、SSEA−4を発現する腫瘍細胞および乳癌幹細胞の標的となりうることが示唆された。
【0124】
がんワクチンによる腫瘍サイズの縮小
合成複合糖質ワクチンの効果を直接評価するために、図13に示すように、腫瘍サイズを1週間ごとに3回測定した。一般的に、Globo Hを有する乳癌細胞株に4T1を注入した後、腫瘍は2週間成長する。糖脂質アジュバントを有するワクチン接種したすべてのグループは、24日間で、単独のGH−DTおよびPBSのコントロールと比較して、相対的に腫瘍が小さいままであった。前記データは、in vivoにおいて、DH−DTおよび糖脂質アジュバントを有するワクチンは、いくつかの腫瘍進行を遅延させることを示唆している。
【0125】
乳癌およびBCSCにおけるSSEA−3およびSSEA−4の発現
BCSC中のGlobo Hの発現は、非BCSCよりも頻度が少ないが、乳癌およびBCSCにおいて、SSEA−3の発現はGlobo Hの発現よりも頻度が高いことが示された(Chang W-W. et al., (2008) Proc Natl Acad Sci USA105(33):11667-11672、全体が参照により本明細書に組み込まれる。)。
【0126】
乳癌患者35名のSSEA−3またはSSEA−4の発現範囲における臨床的特徴を評価し、表2に示した。平均年齢は48歳であった(31〜82歳である)。これらのうち、1名がステージ0、10名がステージI、19名がステージII、および5名がステージIIIであった。大部分の腫瘍試料は、51.4%のER陽性および67.5%の節転移陽性とともに、浸潤性管癌(80.0%)の病変を有していた。表2において、SSEA−3またはSSEA−4の発現の範囲は、総がん細胞中の陽性細胞の割合で表される。SSEA−3またはSSEA−4発現と関連するHER−2またはリンパ節転移の状態について統計分析が行われた。
HER−2の発現は、免疫組織化学的手法により決定された。腫瘍におけるSSEA−3またはSSEA−4の発現レベルと、ステージ(SSEA−4:P=0.3498;SSEA−3:P=0.9311)またはHER−2(SSEA−4:P=0.0142;SSEA−3:P=0.0128)などの様々な臨床病変の要因との間に有意な相関はなかった(表2)。
【0127】
【表2】
【0128】
酵素消化によって被験者から単離された原発性腫瘍細胞を特異抗体で染色し、はじめにCD45、CD24、CD44、およびCD45+細胞を白血球から除去した。BCSCおよび非BCSC間のSSEA−3またはSSEA−4の発現を比較するために、表面マーカーの発現に基づき、CD45−腫瘍細胞をさらにBCSCおよび非BCSCに分離した。前記BCSCをCD45−/CD24−/CD44+と同定し、CD45−集団は、非BCSCであると推定された。
【0129】
この方法を用いて、BCSCおよび非BCSC中のSSEA−3またはSSEA−4の発現を、35の腫瘍試料で評価した。全体として、SSEA−4は腫瘍の34/35(97.1%)で検出され、SSEA−3は27/35(77.1%)で検出された(表3)。SSEA−4またはSSEA3の発現は、フローサイトメトリーで決定した。BCSCをCD45−CD24−CD44+細胞として定義し、非BCSCをCD45−細胞の残存集団として定義した。範囲は、総細胞中の陽性細胞の割合で計算した。
【0130】
表3を要約すると、27/35(77.1%)のSSEA−3を発現したサンプルのうち、陽性の割合は1.4%〜66.4%の範囲であった。腫瘍の27/35から単離された非BCSCは、陽性の割合が24.3%〜70.4%の範囲でSSEA−3を発現した。相対的に、腫瘍の35のうち25のBCSC(65.7%)が、陽性の割合が5.0%〜58.4%の範囲でSSEA−3染色は陽性であった。
【0131】
SSEA−4を発現した34/35(97.1%)のサンプルのうち、陽性細胞の割合は0.5%〜77.1%の範囲であった。SSEA−4を発現した腫瘍の32/35から単離された非BCSCは、陽性細胞の割合が24.0%〜78.1%の範囲であった。一方、SSEA−4の染色が陽性であった腫瘍の35のうち31のBCSC(88.6%)は、陽性細胞の割合が5.6%〜83.6%の範囲であった。
【0132】
【表3】
【0133】
BCSCにおけるSSEA−4の発現
BCSCおよび非BCSC間のSSEA−4の発現を比較するために、表面マーカーの発現に基づき、CD45−腫瘍細胞をさらにBCSCおよび非BCSCに分離した。前記BCSCをCD45−/CD24−/CD44+と同定し、残りのCD45−集団は、非BCSCであると推定された。図15に示すように、これら2つの各集団内のSSEA−4の発現は、腫瘍サンプル間で変化した。例えば、患者BC0264の腫瘍細胞から単離された総数の5.7%の割合を占めたBCSCは、SSEA−4に対して陰性であったが、60.3%の割合を占めた非BCSCは、SSEA−4を発現した。患者BC0266については、SSEA−4の発現は、非BCSCの59.4%,BCSCの55.7%で観測された。BC0313については、SSEA−4の発現は、非BCSCの32.4%,BCSCの83.6%で観測された。全体として、SSEA−4は、試験サンプルの34/35(97.1%)、その陽性細胞の割合は0.5〜77.1%の範囲で観測された(表32)。
【0134】
正常細胞におけるSSEA−3およびSSEA−4の発現
組織マイクロアレイを用いて、SSEA−4の発現について、異なる20の臓器を免疫組織化学的染色により解析し、結果を表4に示す(E,上皮組織;C,結合組織)。
【0135】
【表4】
【0136】
SSEA−4は、乳房、大腸、消化管、腎、肺、卵巣、膵臓、大腸、胃、前立腺、胸腺、および子宮頸部などの、いくつかの腺組織の上皮細胞上で発現した(表4)。また、図16に示すように、Globo HおよびSSEA−3と同様の方法により(Chang W-W. et al., (2008) Proc Natl Acad Sci USA105(33):11667-11672)、SSEA−4の発現を、主として本質的に免疫応答に関与しない血清または上皮細胞の頂端表面に制限させた。
【0137】
比較すると、Globo Hは、乳房、消化管、膵臓、前立腺、および子宮頸部などのいくつかの腺組織の上皮細胞上で発現した。SSEA−3の分布は、正常乳房組織には存在せず、Globo H陰性であった腎、直腸、精巣、および胸腺に存在したことを除き、Globo Hと同様であった(Chang W-W. et al., (2008) Proc Natl Acad Sci USA105(33):11667-11672)。
【実施例】
【0138】
下記実施例は、本発明に係る好ましい実施形態の実施を含む。当業者にとっては当然のことであるが、本発明の実施において、以下の代表的な技術である実施例で十分に開示された技術は、発明者によって見出され、その実施に好ましい方法で構成されると考えられうる。しかしながら、当業者は、本開示を考慮すると、本発明の思想および技術的範囲を逸脱することなく、開示された特定の実施例において、多くの変形が構成され、類似または同様の結果が得られうる。
【0139】
一般的方法、物質、器具類
原料
市販の溶媒および試薬は、さらに精製することなくそのまま使用し、Sigma-Aldrich社、Acros社、Merck社、Echo chemical社、およびSenn Chemical社から購入した。モノクローナル抗体Mbr1はALEXIS biochemicals社、Cy3共役抗マウスIgG(IgG、IgG1、およびIgG2a)およびIgM抗体はJackson Immuno Research社から購入した。DT−RCM197タンパク質および破傷風トキソイドは、それぞれMerck社およびAdimmune社から購入した。リン酸アルミニウムゲルアジュバント(AlPO4)はBrenntag Biosector社から購入した。破傷風ウイルスおよびVK9モノクローナル抗体は、それぞれLin博士およびYu博士の研究室で調製された。糖脂質誘導体は、合成およびWong博士の研究室から提供された。
【0140】
一般的方法
グリコシル化に用いられるモレキュラーシーブス(MS, AW-300)は、粉砕して使用前に活性化した。反応は、分析用のTLCプレート(PLCシリカゲル-60, F254, 2mm, Merck社)で観測し、UV(254nm)またはp−アニスアルデヒドで視覚化させた。フラッシュカラムクロマトグラフィはシリカゲル(40-63μm)またはLiChroprep RP18(40-63μm)で行った。透析膜(セルロースエステル,MCCO=10,000)は、使用前にH2Oで洗浄した。
【0141】
器具類
プロトン核磁器共鳴(1H NMR)スペクトル、炭素核磁器共鳴(13H NMR)スペクトルは、Bruker Adbance 600 (600 MHz/150 MHz)NMR分光装置で測定した。プロトンの化学シフトは、ppmで示し、テトラメチルシラン(δ=0)を基準とした。カーボンの化学シフトも100万分の1(ppm,δスケール)で示した。DEPT135(Distortion-less enhancement by polarization transfer)を用いて多重度を決定した。データを下記のように表す:化学シフト、多重度(s=1重項、d=2重項、t=3重項、q=4重項、m=多重項、br=ブロード)、積分値、およびHzの結合定数(J)。高分解能質量スペクトルはBioTOF IIIにより、MALDI-TOF MSはUltraflex II TOF/TOF200により測定された。
【0142】
実施例1:異なるキャリアタンパク質と共役したGlobo Hの合成
Globo H(1;図11を参照)およびそのフラグメント2−10は、プログラムで制御したワンポット戦略により合成した(Huang C-Y, et al. (2006) Proc Natl Acad Sci USA 103:15-20.)。1の反応は、無水DMF中、室温で効率的同種二官能性リンカーを用いて行われた(Wu X, et al. (2004) Org Lett 6:4407-4410; Wu X, Bundle DR (2005) J Org Chem 70:7381-7388.)。前記反応は容易にTLCで観測された。より大きいRf値の生成物が生成し、遊離アミンが消失した時点で反応混合物を濃縮してDMFを留去し、ジクロロメタンおよび水で洗浄して過剰量のリンカーを除去した。最後に、精製物を逆相(C18)カラムクロマトグラフィで精製し、1%の酢酸を含む水から含水40%メタノールへと変更し、徐々に溶出させた。前記溶液を、凍結乾燥して淡黄色の生成物12を得た。最終的に、タンパク質と共役するために、前記精製Globo Hハーフエステル12(30-40 equiv)を個別のキャリアタンパク質とリン酸緩衝液(10mM,pH7.2)中、室温で24時間インキュベートした(図14)。重要なことは、リジン残基とGlobo Hハーフエステルとのカップリングを最大化するために、タンパク質の濃度を〜5mg/mLに調節しなければならないことである。24時間後、複合糖質を希釈し、脱イオン水で透析して残ったp−ニトロフェニル基を除去した。次いで、前記溶液を凍結乾燥して白色粉末13、14、および15を得た。
【0143】
前記Globo H−タンパク質共役体は、MALDI-TOF解析により各キャリアタンパク質上のGlobo Hの数を決定した。前記組み込まれたGlobo Hの数の平均値を上記の表1に記載されている。
【0144】
前記複合糖質13、14、および15をddH2Oに溶解し、最終濃度を約1pmol/μLとした。シナピン酸をマトリックスとして選択し、新たに調製したアセトニトリルおよび脱イオン水(1:1 v/v)と混合して、0.1%のTFAを含む10mg/mLの濃度の最終マトリックスを調製した。各サンプルを線形の正イオンモードで検出し、m/zスペクトルを得た。各複合糖質の分子量は、m/zで決定した。複合糖質14は、不均一性を示し、平均組み込みが2〜4を示した。GH−KLH共役体は、主により大きいサイズおよびKLHのより多いLys残基のため、Globo Hの組み込みの最大値を示した。p−ニトロフェニルリンカーを用いた同様のカップリング処理を、ウイルス膜に100,000以上のリジン残基を含む破傷風モザイクウイルスに適用した。しかしながら、4℃のリン酸ナトリウム緩衝液(pH=7.2)中でのウイルスの反応性に対するウイルスの不安定性が、さらなる進展において大きな懸念であった。また、GH−BaMV16は、サイズが非常に大きいため、MALDI-TOF解析による検出が制限された。最終的に、凍結乾燥した複合糖質は、−30℃で保存され、免疫付与前に滅菌水につけてもどされた。
【0145】
実施例2:糖鎖マイクロアレイの製造および検証
合成Globo Hおよび切断フラグメント(図1)は、還元末端にペンチルアミンリンカーで結合し、NHSがコートされたスライドガラス上に共有結合で固定された。11個のオリゴ糖の9個が、マイクロアレイ上にプリントされるように選択された。一連のオリゴ糖の濃度(1, 5, 10, 20, 40, 50, 80, 100 μM)で結合親和性および蛍光強度を最適化するための試験を行った。それぞれのマイクロアレイスライドに、9個のGlobo Hアナログ(SSEA-4、GH、Gb5、Gb4、Gb3、Gb2、BB4、BB3、およびBB2)50μMをそれぞれ12個ずつスポットした。湿度80%における反応後、使用前に前記スライドをデシケータ中、室温で保存した。
【0146】
マイクロアレイ上の炭化水素を検証するために、マウスモノクローナル抗体(Globo H用のVK9およびMbrl、並びに抗SSEA−3)を用いて、それぞれの二次抗体(ヤギ抗マウスIgGおよびIgM)を特異的結合の試験に用い、その結果を図2A〜2Cに示す。前記データは、VK9およびMbrlの両方がGlobo Hおよび4糖類であるBB4の外面を認識し、MBrlは、MM3もわずかに認識したことを示唆している(Gilewski T el al. (2001) Proc Natl Acad Sci USA 98:3270-3275; Huang C-Y, et al. (2006) Proc Natl Acad Sci USA103:15-20.)。また、抗SSEA−3抗体は、交差反応を起こすことなく、特異的にSSEA−3抗原(Gb5)を認識した。前記結果から、Globo Hマイクロアレイは、免疫付与されたマウスから得られるポリクローナル抗体の特異性および効力の分析に利用されうることを示している。
【0147】
実施例3:マウスへの免疫付与
本実験において、マウスのグループに、糖脂質アジュバントであるα-GalCer(C1)と共役した、または共役していない合成Globo Hを1μg皮下投与し、免疫付与した。1週間ごとに3度のワクチン接種をした10日後、マウス血清を収集し、次いで、抗体レベルを評価するために糖鎖マイクロアレイに導入した。図3Aに要約されるように、IgMの誘導に最も有効な免疫原が、GH−KLH、GH−DH、およびGH−BV、次いでGH−TT、GH−BSAであり、α−GalCerは、IgM抗体を高いレベルに誘導する免疫応答を刺激できることが分かった。同様の傾向がマウスIgG抗体においても観測され(図3B)、IgGレベルはIgMレベルよりも相対的に高かった。簡潔にいうと、合成複合糖質の炭化水素の密度がより低いにもかかわらず、GH−DTは、GH−KLHと同様の免疫原性を示し、アジュバントであるα−GalCerは、免疫応答の増強を示した。
【0148】
α−GlaCerは、GH−DTに対するアジュバント効果を示したことから、C1よりもアジュバント活性の高い他の糖脂質を試験し、その結果を図4に示した(Fujio M, et al. (2006) J Am Chem Soc 128:9022-9023.)。
【0149】
マウスのグループに、2μgの糖脂質を有する、または有さないGH−DTおよびGH−BV1.6μgを筋肉注射で1週間に2回免疫付与した。3回ワクチン接種をした2週間に血清を得て、糖鎖マイクロアレイ解析に導入した。一般的に、マウス抗Globo H IgG力価は、免疫付与が進行すると増強するが、IgMレベルは、ワクチン接種の時間にほとんど無関係である(図5)。GH−BVをワクチン接種したグループのうち、糖脂質−ワクチン処理およびワクチンの単独処理の間で、IgMレベルに有意な差はなかった。前記結果は、糖脂質と一緒に用いたGH−BVは有効な免疫療法ではないことを示唆するが、弱い免疫原性は、BaMVが不安定であるという特徴によるものである可能性がある。それにもかかわらず、α−GalCerアナログ、特に7DW8−5は、GH−DTとうまく協力して、マウスの免疫応答を誘導した。
【0150】
興味深いことに、マウスポリクローナルIgG抗体は、GH−DTおよび様々な糖脂質アジュバントによって産生され、Globo Hを中和するだけでなく、Gb5、SSEA−4、およびGb4と交差反応し、C34は最も有効な糖脂質アジュバントであった(図6)。IgMよりも力価がより高いIgGを誘導しうる新規ワクチン組成物を探索するために、Globo H−DT複合体および糖脂質C1もしくはC34、市販のAlPO4(リン酸アルミニウム)、またはMF59を試験した。驚くべきことに、糖脂質C34を含むGlobo H−DTは、3回のワクチン投与後にほとんど独占的にIgG抗体を誘導しうる(図7)。要約すると、GH−DT複合体と組み合わせた新規糖脂質アジュバント7DW8−5は、抗Globo HのIgGおよびIgMの両方を増強することができ、GH−DTと組み合わせた糖脂質アジュバントC34は、IgMよりも抗体力価が高いIgGを誘導しうる。これらは、これらは、Gb5抗原およびSSEA−4抗原に対して異なる結合親和性を示し、ともに乳癌幹細胞の表面に発現する。
【0151】
Globo Hワクチンにおける異なる糖脂質アジュバントの効果をさらに比較するために、GH−KLHを有する7つのマウスのグループに免疫付与した。この結果、糖脂質
を含むマウスワクチンが、抗Globo H抗体を高いレベルで誘導することを示唆した(図8)。MF59は、強力なアジュバントであるが、GH−KLHとは協力せずに、Globo Hに対する抗体を誘導した。AlPO4(リン酸アルミニウム)はまた、抗体の誘導に対して明らかな影響は示さなかった。一方、C34とともに用いたGH−KLHは、1回目および2回目ワクチン接種後において、優れた免疫原性を示したが、3回目ワクチン接種後は、C1と有意な差は見られなかった。
【0152】
毒性作用がない毒素変異体であるDT−CRM197が、抗原特異的T細胞増殖を誘導し、IL−2、INF−γ、およびIL−6の脾細胞による産生を高めることが、Th1を駆動する経路における役割であることを示唆している(Miyaji EN et al. (2001) Infect Immun 69:869-874; Godefroy S, et al. (2005) Infect Immun 73:4803-4809; Stickings P, et al. (2008) Infect Immun 76:1766-1773.)。サイトカインの特徴が主にTh1であるという事実にもかかわらず、抗CRM197抗体のサブクラスは、IgG1であり、Th1/Th2の混合応答を示すIgG2aを検出できない。これらの結果は、Globo Hワクチンの抗体アイソタイプの特性の評価を促進し、本研究が、糖脂質アジュバントと組み合わせたGH−DTまたはGH−KLHが、微量のIgG2aとともに、主としてIgG1抗体を誘導することを示した(図9)。
【0153】
糖脂質アジュバントを単独で静脈投与(i.v.)した場合、Th1バイアスのサイトカイン分泌を増強するという事実にもかかわらず、抗体のクラススイッチ(IgG2a)は観測されなかった。全体として、糖脂質は、細胞性および液性免疫応答を増強するという極めて重要な役割がある。
【0154】
DTと共役したGb5およびSSEA−4を同様の戦略により合成した。3回目ワクチン接種の後、IgMおよびIgGの抗体力価を比較し、Gb5−DTおよびSSEA−4−DTが、IgMよりも高力価のIgGを誘導することを見出した(図10)。
【0155】
実施例4:異なるワクチン組成物によって誘導される抗体の特異性研究
GH−DTおよびC34がGlobo H、Gb5(SSEA-3)、およびSSEA−4を認識する抗体を誘導したことから、次に、アジュバントの存在下、IgGの研究に集中して、SSEA−3−DTおよびSSEA−4−DTワクチンの特異性を24個の糖鎖アレイを用いて試験した(図11)。
【0156】
図12A〜12Cに示すように、Globo H−DTおよびC34アジュバントで免疫付与されたマウスは、高い選択性でGlobo H、Gb5、およびSSEA−4を認識しうる抗体を誘導し、アジュバントMF59を有するSSEA−3−DTワクチンは低い選択性で高い免疫応答を誘導した。一方、アジュバントC34と組み合わせたSSEA−3−DTは、Globo H、SSEA−3、およびSSEA−4に対する抗体のみ誘導した。
【0157】
興味深いことに、アジュバント存在下または非存在下、SSEA−4−DTは、SSEA−4およびその切断構造(末端のラクトースが欠失したSSEA−4)を特異的に認識するIgGおよびIgM抗体を誘導した。しかしながら、前記選択性の原因は明らかではない。
【0158】
合成複合糖質ワクチンの効果を直接評価するために、図13に示すように、腫瘍サイズを1週間ごとに3度測定した。一般的に、Globo Hを有する乳癌細胞株に4T1を注入した後、腫瘍は2週間成長する。糖脂質アジュバントを有するワクチン接種したすべてのグループは、24日間で、単独のGH−DTおよびPBSのコントロールと比較して、相対的に腫瘍が小さいままであった。前記予備データは、in vivoにおいて、DH−DTおよび糖脂質アジュバントを有するワクチンは、いくつかの腫瘍進行を遅延させることを示唆している。
【0159】
実施例5:Globo Hハーフエステルの調製
Globo Hハーフエステルは以下のように調製した:
【0160】
【化3】
【0161】
Globo Hアミン1(5.5 mg, 4.54 μmol)を無水DMF溶液に溶解し、次いでp−ニトロエステルリンカー(8.8 mg, 22.7 μmol)を添加して室温で1〜3時間撹拌した。反応は、TLC(1%酢酸のメタノール溶液)およびニンヒドリン試験で観測した。より大きいRf値を有する生成物の生成および遊離アミンの消失が反応の完結を示す。反応混合物を減圧下、加熱せずに濃縮してDMFを留去し、次いでCH2Cl2および1%の酢酸を含む水で2度抽出した。前記水溶液を濃縮し、逆相(C18)カラムクロマトグラフィで精製し、1%の酢酸を含む水からMeOH:H2O=4:6へと変更し、徐々に溶出させた。次に溶液を凍結乾燥して淡黄色固体の生成物12(5.4 mg, 収率88%)を得た。1H NMR (600 MHz, D2O) δ 8.25 (d, 2H, J = 9.0 Hz), 7.28 (d, 2H, J = 9.0 Hz), 5.12 (d, 1H, J = 3.9 Hz), 4.79 (d, 1H, J = 3.7 Hz), 4.51 (d, 1H, J = 7.7 Hz), 4.44 (d, 1H, J = 7.7 Hz), 4.39 (d, 1H, J = 7.7 Hz), 4.31-4.28 (t, 2H, J = 7.7 Hz), 4.15-4.1 1 (m, 2H), 3.99 (d, 1H, J = 2.0 Hz), 3.92 (d, 1H, J = 2.8 Hz), 3.89-3.44 (m, 33H), 3.16 (t, 1H, J = 8.6 Hz), 3.10 (t, 2H, J = 6.7 Hz), 2.62 (t, 2H, J = 6.9 Hz), 2.20 (t, 2H, J = 6.6 Hz), 1.93 (s, 3H), 1.62-1.49 (m, 4H) 1.54- 1.48 (m, 2H), 1.45-1.40 (m, 2H), 1.30-1.24 (m, 2H), 1.11 (d, 3H, J = 6.5 Hz) 13C NMR (150 MHz, D2O ) δ 178.0, 176.1, 176.0, 156.9, 147.1, 127.3, 124.5, 105.7, 105.0, 103.7, 103.6, 102.2, 101.0, 80.5, 80.0, 78.9, 78.0, 77.8, 77.1, 76.7, 76.4, 76.3, 76.2, 75.2, 74.6, 73.8, 73.5, 72.5, 72.1, 71.8, 71.2, 70.9, 70.8, 70.1, 69.7, 69.5, 68.5, 62.6, 62.6, 62.0, 62.0, 61.7, 53.3, 40.8, 37.1, 35.0, 30.0, 29.7, 26.4, 25.0, 24.1, 23.9, 17.0 HRMS: C55H87N3O35Na [M+Na]+ 計算値: 1372.5018; 実測値: 1372.5016.
実施例6:複合糖質を生産させる基本手順
複合糖質は以下のように調製した:
【0162】
【化4】
【0163】
BSA、DT−CRM197、および破傷風トキソイド(Adimmune社、台湾)をpH7.2の100mMリン酸緩衝液に溶解し、30〜40当量のGlobo Hハーフエステル35を添加した。次に、前記混合物を脱イオン水で希釈し、脱イオン水を5回取り換ながら透析した。前記溶液を凍結乾燥して白色粉末とした。得られたGlobo H−タンパク質共役体を、MALDI-TOF解析で特性評価し、炭化水素組み込み率を決定した。41(GH-BSA)はMALDI-TOFで76029に観測され、42(GH-DT-CRM197)は162902に観測され、44(GH-BaMV)は決定されなかった。
【0164】
実施例7:複合糖質のMALDI−TOF MS解析
複合糖質41、42、43、および一次キャリアタンパク質をddH2O(〜1 μg/μl)でもどした。マトリックスであるシナピン酸を、アセトニトリルおよび脱イオン水1:1で新たに調製し、最終マトリックスを0.1%のTFAを含む10mg/mLの濃度とした。徐々にロードし、マトリックスおよび複合糖質を混合して、プレートを乾燥させた。測定前にウシ血清アルブミンを用いた検定は厳密であった。各複合糖質および一次タンパク質サンプルを線形の正イオンモードで検出した。平均分子量は、キャリアタンパク質上の炭化水素の組み込みの平均値で計算した。
【0165】
実施例8:糖鎖マイクロアレイの製造
96ウェルからNHSでコートされたスライドガラスに、様々な濃度のプリント緩衝液(0.005%のTween20を含む300mMリン酸緩衝液、pH8.5)においてアミン含有糖鎖の〜0.7μLの沈殿物を、ロボットピン(SMP3、TeleChem International社、米国)でマイクロアレイにプリントした(BioDot、Cartesian Technologies社、米国)。それぞれのマイクロアレイスライドに、9個のGlobo Hアナログ(SSEA-4、GH、Gb5、Gb4、Gb3、Gb2、BB4、BB3、およびBB2)50μMをそれぞれ12個ずつスポットした。プリントしたスライドを湿度80%で1時間反応させ、次いで、終夜乾燥した。これらのスライドは、使用まで、デシケータ中室温で保存した。
【0166】
実施例9:血清学的アッセイ(糖鎖マイクロアレイ)
マウス血清を予備のスクリーニングとして、0.05%Tween20を含む3%BSA/PBS緩衝液(pH7.4)で1:60に希釈した。糖鎖マイクロアレイを50mMエタノールアミンで1時間ブロックし、使用前にddH2OおよびPBS緩衝液で2回洗浄した。前記血清希釈液は、次にGlobo Hマイクロアレイに導入し、室温で1時間インキュベートした。マイクロアレイスライドを、それぞれPBST(0.05%Tween20のPBS緩衝液)およびPBS緩衝液でさらに3回洗浄した。次に、Cy3−affiniPureウシ抗マウスIgG(H+L)、IgG1、IgG2a、または抗マウスIgMをマイクロアレイスライドに添加し、密封して1時間インキュベートした。最後に、前記スライドをPBST、PBS、およびddH2Oで順に3回洗浄したマイクロアレイスライドを乾燥させ、マイクロアレイ蛍光チップリーダー(Genepix 4000B)を用いて、532nmで解析した。データをソフトウェアGenePix Pro 6.0(Axon Instruments、米国、カリフォルニア州、ユニオンシティー)で解析した。正確な測定を行うため、PMTゲインを蛍光の飽和を回避する400nmに調節した。部分的なバックグラウンドは、各糖鎖スポットのシグナルから差し引いた。明らかな欠陥または検出できないスポットは省略した。極大蛍光強度は、複数のスポットから「F532nm-B532nmの平均値」の平均と定義した。
【0167】
実施例10:血清学的アッセイ(酵素結合免疫吸着法)
炭酸重炭酸緩衝液(pH 10)100μlのGlobo Hセラミド0.2μgを96ウェルプレート(NUNC)に4℃で終夜コートした。PBSで洗浄し、3%ウシ血清アルブミンを用いて、室温で30分間ブロックした。マウス血清の連続希釈液を各ウェルに添加し、室温で1時間インキュベートし、次いでDPBST(ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水、0.05% Tween20)で洗浄した。ヤギ抗マウスIgG−AP(1:200、Southern Biotech社、米国)を添加し、室温で45分間インキュベートした。プレートをPBSTで5回洗浄し、次いでアルカリリン酸基質であるp−二トロフェニルリン酸(Sigma社)とともに37℃で8時間インキュベートした。インキュベート後、3M NaOH溶液を添加して反応を停止させ、405nmでELISAリーダー(SpectraMax、Molecular Devices社)上のプレートを読み取った。力価は、0.1より大きい光学密度が得られる最大の希釈度と定義した。
【0168】
実施例11:用量および免疫付与
(1)3つのマウスのグループ(生後6週間のメスC57BL/6マウス、BioLASCO社、台湾)の腹部に、糖脂質であるC1または7DW8−5を含む、または含まないGH−KLH(Optimer社)、GH−BSA、GH−TT、GH−CRM197、およびGH−BaMVを、1週間の間隔で3回皮下投与した。各ワクチン接種には、1μgのGlobo Hを含み、2μgの糖脂質アジュバントを含む、または含まなかった。コントロールのマウスにはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)のみを投与した。最初の免疫付与前(pre-immune)および3回目ワクチン接種の10日後にマウスを採血した。(2)3つのマウスのグループ(生後8週間のメスBalb/cマウス、BioLASCO社、台湾)に、C1、C23、または7DW8−5をそれぞれ含む、または含まないGH−BaMVまたはGH−CRM197を2週間の間隔で3回筋肉投与した。各ワクチン接種には、1μgのGlobo Hを含み、2μgの糖脂質アジュバントを含む、または含まなかった。コントロールのマウスにはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)のみを投与した。免疫付与前および各ワクチン接種の2週間後にマウスを採血した。(3)3つのマウスのグループ(生後8週間のメスBalb/cマウス、BioLASCO社、台湾)に、C1、C17、7DW8−5、C30、AlPO4、MF59(1:1混合物)を含む、または含まないGH−CRM197またはGH−KLHを、(2)に示すように免疫付与した。4000gで10分間遠心分離して全血清を得た。血清学的反応を、糖鎖マイクロアレイまたは先のELISAアッセイと比較することによって解析した。
【0169】
実施例12:異種移植モデル
(1)免疫付与されたメスBalb/cマウス(PBS、GH-CRM197単独またはC1、C23、および7DW8-5をそれぞれ含む)の5つのグループに、2×105の転移性マウス乳癌細胞株である4T1(無菌PBS中)を、最終ワクチン接種した8週間後に皮下注射した。(2)免疫付与されたメスBalb/cマウス(GH-KLH単独またはC1、C17、8-5、C30、AlPO4、およびMF59をそれぞれ含む)の7つのグループに、2×105の転移性マウス乳癌細胞株である4T1(無菌PBS中)を、最終ワクチン接種した6週間後に皮下注射した。腫瘍異種移植の前後におけるマウス抗Globo H血清をモニターした。マウス腫瘍サイズは、ノギスで1週間ごとに3回測定し、(長さ×高さ×幅)/2(mm3)として定義した。
【0170】
実施例13:ヒト乳癌検体からの原発性腫瘍細胞の単離
ヒト乳癌検体は、Tri-Service General Hospital(台北、台湾)で最初の手術を受けた患者から得た。サンプルは、患者の秘密保護のため完全に暗号化し、台湾、台北のアカデミア シニカのヒトを対象とした研究の倫理審査委員会の治験審査委員会によって承認されたプロトコルが用いられた。腫瘍検体は、1mmの四角形のフラグメントにスライスし、コラゲナーゼ(1,000 U/ml)、ヒアルロニダーゼ(300 U/ml)およびDNase I(100 μg/ml)を含むRPMI1640倍地に37℃で2時間インキュベートすることによって酵素消化した。原発性乳房腫瘍細胞は、100−μmのcell strainer(BD Biosciences社)を通してろ過して収集し、5%FBS添加RPMI1640倍地に再懸濁させた。
【0171】
実施例14:フローサイトメトリー解析
原発性乳癌細胞を、2%FBSおよび0.1%NaN3含有PBSの50μl中に1×105の細胞として調製した。抗CD24−PE、抗CD44−APC、および抗CD45−PerCP−Cy5.5抗体混合物(各1μl)で細胞を標識した。Alexa488と共役したモノクローナル抗Globo H抗体(VK-9)で染色してGlobo Hの発現を検出した。FACSCantoフローサイトメーター(Becton Dickinson社)で解析を行った。BCSCは、CD45−/CD24−/CD44+細胞として定義し、非BCSCは、その他のCD45−細胞集団として定義した。Globo Hの発現は、さらにゲート部位で解析された。
【0172】
実施例15:細胞選別
マウスにおけるヒト乳癌腫瘍移植片から採取された細胞は、抗CD24−PE、抗CD44−APC、および抗H2Kd−FITC抗体混合物(BD Biosciences社)で染色した。抗体で標識された細胞の蛍光活性の選別は、FACSAria cell sorter(Becton Dickinson社)で行われた。H2Kd−/CD24−/CD44+細胞はBCSCと分類され、その他のH2Kd−細胞は非BCSCと分類された。BCSCおよび非BCSCの標準的な純度は、それぞれ>85%および>90%であった。
【0173】
実施例16:免疫組織化学
正常細胞におけるSSEA−4発現については、5の個体から提供される異なる20の臓器を含む、組織マイクロアレイスライド(Biomax社)が用いられた。スライドは、標準的免疫組織学的手順に従い、56℃で終夜乾燥させ、キシレン中で脱ろうさせ、および再水和し、次いでpH9.0のAR-10(BioGenex Laboratories社)で抗原検索を行った。SSEA−4の発現は、抗SSEA−4抗体(eBioscience社)を使用することにより決定した。二次抗体として抗ラットIgMを用いた染色によりSSEA−4を検出し、DAB基質によって発展させた。スライドをヘマトキシリンで対比染色した。原発性乳房腫瘍BCO145およびNOD/SCIDマウスからの腫瘍異種移植片を10%リン酸緩衝ホルマリンで固定し、パラフィンに埋め込んだ。パラフィン切片を2μMの厚さにカットし、SuperFrost Plus顕微鏡スライド(Menzel-Glaser社)上にマウントし、および55℃で終夜乾燥した。前記切片を、標準的な免疫組織学的手順に従い、キシレンで脱ろうおよび再水和し、次いでヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色した。免疫染色の前に、スライドをはじめ10mmol/Lクエン酸緩衝溶液(pH6.0)中に入れ、15分間マイクロウェーブをかけた。前記スライドを次に、抗ER抗体、または抗PR抗体とともに終夜インキュベートした。Super Sensitive Polymer-HRP IHC Detection System(BioGenex社)を用いて、免疫検出を行った。
【0174】
本明細書中に引用されるすべての刊行物および特許出願は、それぞれ個別の刊行物または特許出願が具体的に、および単独に参照により引用されるように表示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0175】
上述の発明は、理解を明瞭にする目的で、例示および実施例によりいくつか詳細に記載されているが、特定の変更および修飾が添付の特許請求の範囲の思想および技術的範囲に逸脱しない範囲で構成されうることが、本発明の教示から当業者には明らかである。
【0176】
要約書は、読者に迅速な技術開示の本質および趣旨の理解を与えるため、37 C. F. R §1.72 (b)に従い、提供される。前記要約書は、特許請求項の技術的範囲または意義を解釈または制限するために用いられるものではないことを理解して、提出されている。
【技術分野】
【0001】
関連出願のクロスリファレンス
本出願は、2008年6月16日に出願された米国仮特許出願第61/061968号に基づく優先権を主張し、「Globo HおよびSSEA−3への特異的な免疫応答誘導組成物、およびそのがん治療のおける使用」の名称で2009年6月16日に出願された、同時継続の米国特許出願第12/485546号の一部継続出願である。本出願の内容は、その全体の内容が参照により引用される。
【0002】
本発明の技術分野
本発明は、がんワクチン分野に関する。具体的には、本出願は、免疫原性キャリアであるDT−CRM197と共役する、B細胞エピトープ、Globo H含有ワクチンに基づく糖鎖に関する。より具体的には、本発明は、C34のような新規糖脂質アジュバントとともに投与される、抗がんGlobo H−DTワクチンを目的とする。
【背景技術】
【0003】
抗がん治療を設計するため、正常細胞のないがん細胞またはがん幹細胞を標的とする分子を探索することが望まれている。異常グリコシル化は、しばしば腫瘍進行と関係があり、1969年にMeezanらによってがんの糖鎖が正常細胞と異なることが示された(Meezan E, et al. (1969) Biochemistry 8:2518-2524.)。異常グリコシル化は、特定構造の欠損または過剰発現、不完全構造の持続、および新規構造の発生を含む。前記構造の違いは、レクチン染色を用いた、正常組織および悪性組織の比較による多くの組織学的証拠によって、その後に支持された(Turner GA (1992) Clin Chim Acta 208:149-171; Gabius HJ (2000) Naturwissenschaften 87:108-121.)。
【0004】
ごく最近、糖鎖抗原に関連する腫瘍がモノクローナル抗体および質量分析法により同定された(Shriver Z, et al. (2004) Nat Rev Drug Disc 3:863-873; Pacino G, et al. (1991) Br J Cancer 63:390-398.)。このデータにより、糖脂質または糖タンパク質の形成において、がん細胞で発現される抗原と関連する多くのがんが特徴付けられ、がんの特定のタイプと関連付けられている(Bertozzi CR, Dube DH (2005) Nat Rev Drug Discovery 4:477-488.)。悪性細胞における糖鎖表面の役割については比較的にあまり知られていないが、これらの抗原に対する受動的に投与された抗体またはワクチン誘導抗体が予後の改善と関連している。
【0005】
糖鎖関連腫瘍の報告では、1984年に箱守らによって、乳癌MCF−7細胞から糖脂質抗原Globo H(Fucα1→2Galβ1→3GalNAcβ1→3Galα1→4Galβ1→4Glc)が初めて単離、同定された(Bremer EG, et al. (1984) J Biol Chem 259:14773-14777.)。抗Globoモノクローナル抗体のさらなる研究により、Globo Hは、前立腺癌、胃癌、膵臓癌、肺癌、卵巣癌および大腸癌を含む他の多くのがんにおいても存在し、並びに容易に免疫系と関与しない正常分泌組織腔表面上にはほとんど発現しないことが示された(Ragupathi G, et al. (1997) Angew Chem Int Ed 36:125-128.)。また、乳癌患者の血清に高レベルの抗Globo H抗体が含まれることが証明され(Gilewski T el al. (2001) Proc Natl Acad Sci USA 98:3270-3275; Huang C-Y, et al. (2006) Proc Natl Acad Sd USA 103:15-20; Wang C-C, et al. (2008) Proc Natl Acad Sci USA 105(33):11661-11666)、Globo H陽性の腫瘍を有する患者は、Globo H陰性の腫瘍を有する患者と比較して、生存期間が短いことも示された(Chang, Y-J, et al. (2007) Proc Natl Acad Sci USA 104(25):10299-10304.)。これらの知見は、Globo H、6糖類のエピトープ、魅力的な腫瘍マーカー、および実現可能ながんワクチンの開発のための標的を提供する。
【0006】
Globo Hはさまざまな上皮がんにおいて過剰に発現するがん抗原である。この抗原は、がん免疫療法の標的として有効でありうることが示唆されている。Globo Hに対する抗体を産生させるためのワクチンが開発されてきたが、Globo Hの抗原性が低いため、これらワクチンの抗がん活性は満足できるものではなかった。高いレベルでGlobo Hを標的とする免疫応答を生じさせることができる新規なワクチンが必要である。
【0007】
幹細胞は、自己複製能並びに異なる細胞および組織へ分化能を有する細胞群として定義される(Reya T et al., (2001) Nature 414:105-111.)。悪性腫瘍および正常細胞の両方で不均一な細胞集団を含むように、がん幹細胞は、不均一な腫瘍成長および腫瘍の維持に重要な役割を果たしている可能性がある。がん幹細胞は、脳腫瘍、乳癌、大腸癌、および前立腺癌などの多様な固形がんから同定されている。乳癌幹細胞(BCSC)は、乳癌のCD24−CD44+亜集団に存在することが、Al-HajjらによるNOD/SCIDマウスへの異種移植における表現型の多様性を有する腫瘍の産生能に基づき、初めて示された(Al-Hajj M, et al., (2003) Proc Natl Acad Sci USA 100:3983-3988)。CD24−CD44+の表現型で表される乳癌患者のがん細胞の大部分は早期に骨髄中に広まることから(Balic M et al., (2006) Clin Cancer Res 12:5615-5621)、BCSCには転移能があることが示唆される。成長能、分化能、転移能、および放射線抵抗性から、BCSCは乳癌治療の主要は標的となっている(Tang C. et al., (2007) FASEB J. 21:1-9)。
【0008】
乳癌において、Globo Hの発現は、腺管癌、小葉癌、および管状腺癌の60%以上で観測されるが、非上皮性乳癌においては観測されない(Mariani-Constantini R et al., (1984) Am. J. Pathol. 115:47-56)。内腔境界の頂側膜上皮細胞における弱い発現を除き、正常細胞の免疫系に関与しないことが明らかな部位ではGlobo Hは発現しない(Id.; Zhang S. et al., (1997) Int. J. Cancer 73:42-49)。
【0009】
また、Globo Hは、乳癌幹細胞(BCSC)で発現する。フローサイトメトリーによって、Globo Hは乳癌検体において25/41(61.0%)で発現することが明らかにされた。Globo Hは25/25の非BCSCおよび8/40のBCSC(20%)で発現された。Globo Hの6糖類の前駆体である胚発生段階特異抗原−3(SSEA−3)は、腫瘍の31/40で発現される。SSEA−3は29/31の非BCSCおよび25/40のBCSC(62.5%)で発現される(Chang W-W. et al., (2008) Proc Natl Acad Sci USA 105(33):11667-11672.)。
【0010】
DanishefskyおよびLivingstonは、以前、さまざまながんに対するGlobo H−KLFワクチン(Gilewski T el al. (2001) Proc Natl Acad Sci USA 98:3270-3275; Ragupathi G, et al. (1997) Angew Chem Int Ed 36:125-128; Kudryashov V, et al. (1998) Glycoconj J. 15:243-249; Slovin SF et al (1997) Proc Natl Acad Sci USA 96:5710-5715)、および7価ワクチン(それぞれKLHと共役するGM2、Globo H、Lewis Y、Tn、STn、TF、およびTn−MUClを含有する;Sabbatini PJ et al (2007) Clin Cancer Res 13:4170-4177)を報告している。しかしながら、7価ワクチンを接種した患者は、7つの抗原のうち、GM2抗体およびLewis Y抗体を除く5つの抗体が誘導されるのみである。GM2のように抗原が偏在的に発現されることよりも、Globo Hが正常分泌組織の最小レベルのみを有する腫瘍細胞で特別に発現されることは、ワクチン開発の標的として魅力的なものである。これらの研究において、Globo Hをオゾン分解、次いでKLHキャリアタンパク質を用いた還元的アミノ化反応により、1つのタンパク質から約150の糖鎖ユニットが生成される(Ragupathi G, et al. (1997) Angew Chem lnt Ed 36:125-128.)。MMCCHリンカーを用いるさらなる精製により、約720:1の共役比で炭化水素が増加した(Wang S-K, et al. (2008). Proc Natl Acad Sci USA105:3690-3695.)。しかしながら、正確に複合糖質を特徴づけることは困難であった。また、免疫学的アジュバントQS−21と組み合わせた合成ワクチンは、前立腺癌および転移性乳癌患者の両方で主にIgM抗体を誘導し、IgG抗体の量が少なくなった。フェーズ1の臨床試験において、ワクチン接種部位で一過性の局所皮膚反応を有する最小毒性も見られた(Gilewski T el al. (2001) Proc Natl Acad Sci USA 98:3270-3275; Ragupathi G, et al. (1997) Angew Chem lnt Ed 36:125-128; Slovin SF et al (1997) Proc Natl Acad Sci USA 96:5710-5715.)。いくつかの患者で観測された軽度のインフルエンザ様症状は、おそらくQS−21の副作用と関連がある。マレイミド修飾キャリアタンパク質KLHと共役する、前立腺癌および乳癌と関連がある糖鎖抗原――Globo−H、GM2、STn、TF、およびTn−―含有5価ワクチンは、ELISAアッセイにおいて、IgM力価よりも高いIgG力価を有する抗Globo−H血清を産生することが報告されている(Zhu J. et al. (2009) J. Am. Chem. Soc. 131(26):9298-9303)。
【0011】
したがって、Globo Hと反応する抗体、特に高い力価のIgGを増加させる代わりのキャリアおよびアジュバントの同定、並びに副作用が最小限であるワクチンの効果の向上が望まれている。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、p−ニトロフェニルリンカーを通じて、ジフテリア毒素交差反応物質197(DT−CRM197)(Thエピトープ)である免疫原性キャリアと化学的に共役した、Globo H(B細胞エピトープ)含有ワクチンに基づく糖鎖に関する。前記合成ワクチンは、糖脂質アジュバントと組み合わせて、IgG、IgG1およびIgM抗体を誘導し、乳癌モデルにおいて極めて優れた免疫原性を提供し、異種移植研究において腫瘍形成の遅延を示す。Globo H−DTおよび糖脂質C34によって誘導された抗体の糖鎖アレイ解析によって、前記抗体がGlobo Hだけでなく、SSEA−3(Gb5)およびSSEA−4(シアリルGb5)糖鎖(これらはすべてのがん細胞およびがん幹細胞に対して特異的である)を認識することが示された。
【0013】
本発明は、(a)Globo Hまたはその免疫原性フラグメントから本質的に構成され、リンカーを通じてキャリアタンパク質と共役する糖鎖、および(b)樹状細胞上のCD1d分子と結合できる糖脂質を含むアジュバントを含み、この際、IgMアイソタイプ抗体と比較して、IgGアイソタイプ抗体を相対的に高いレベルで誘導する免疫応答を誘導する免疫原性組成物に関する。
【0014】
いくつかの実施態様において、前記キャリアタンパク質はジフテリア毒素交差反応物質197(DT−CRM197)である。いくつかの実施態様において、前記リンカーはp−ニトロフェニルリンカーである。
【0015】
いくつかの実施態様において、前記アジュバントはα−ガラクトシルセラミド(α−GalCer)の合成アナログである。いくつかの実施形態において、前記アジュバントはC34であり、この際、C34は下記構造を含む。
【0016】
【化1】
【0017】
いくつかの実施態様において、免疫応答は、好ましくはIgGアイソタイプ抗体の産生を目的とする。いくつかの実施態様において、免疫原性組成物は、液性および細胞性免疫応答を誘導できる少なくとも1つのアジュバントを含む。
【0018】
いくつかの実施態様において、免疫応答によって産生した抗体は、がん細胞またはがん幹細胞で発現する抗原を中和する。いくつかの実施形態において、前記免疫応答によって産生した抗体は、Gb4抗原、胚発生段階特異抗原−3(SSEA−3)、および胚発生段階特異抗原−4(SSEA−4)の少なくとも1つを中和する。いくつかの実施形態において、Gb4抗原、胚発生段階特異抗原−3(SSEA−3)、および胚発生段階特異抗原−4(SSEA−4)の少なくとも1つを中和する抗体は、IgMアイソタイプ抗体と比較して、IgGアイソタイプ抗体を相対的に高いレベルで含む。
【0019】
本発明は、被験者の抗がん免疫応答を誘導できる免疫原性組成物を含むがんワクチンに関する。いくつかの実施態様において、前記がんワクチンは、乳癌、肺癌、肝癌、口腔癌、胃癌、大腸癌、上咽頭癌、皮膚癌、腎癌、脳腫瘍、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、および膀胱癌からなる群から選択されるがんの治療に適する。
【0020】
いくつかの実施態様において、前記がん組織は、細胞表面にGlobo H抗原を発現する。いくつかの実施態様において、前記Globo H抗原は、乳房の腫瘍上皮細胞で発現する。
【0021】
いくつかの実施形態において、前記がんワクチンは、Globo H抗原、Gb4、胚発生段階特異抗原−3(SSEA−3)、および胚発生段階特異抗原−4(SSEA−4)の少なくとも1つを中和する。いくつかの実施態様において、前記抗原は、乳癌幹細胞で発現する。
【0022】
本発明は、腫瘍成長の抑制を含み、(a)Globo Hまたはその免疫原性フラグメントから本質的に構成され、リンカーを通じてキャリアタンパク質と共役する糖鎖、および樹状細胞上のCD1d分子と結合できる糖脂質を含むアジュバントを含む免疫原性組成物を、必要に応じて被験者に投与すること、並びに(b)IgMアイソタイプ抗体と比較して、IgGアイソタイプ抗体を相対的に高い量で誘導する免疫応答を誘導することを含む方法に関する。
【0023】
前記方法のいくつかの実施形態において、前記リンカーはp−ニトロフェノールであり、前記キャリアタンパク質はジフテリア毒素交差反応物質197(DT−CRM197)であり、および前記アジュバントはα−ガラクトシルセラミド(α−GalCer)の合成アナログである。一実施形態において、前記アジュバントはC34である。
【0024】
前記方法のいくつかの実施形態において、前記免疫原性組成物はがんワクチンをさらに含み、さらにこの際、前記がんワクチンの有効量を用いる1またはそれ以上の治療法は、腫瘍成長を抑制する。いくつかの実施形態において、前記がんワクチンの投与によって腫瘍サイズが小さくなる。
【0025】
前記方法のいくつかの実施形態において、免疫応答反応が、好ましくはGlobo H抗原、Gb4、胚発生段階特異抗原−3(SSEA−3)、および胚発生段階特異抗原−4(SSEA−4)の少なくとも1つを中和するIgGアイソタイプ抗体の産生を目的とする。いくつかの実施態様おいて、Globo H抗原、胚発生段階特異抗原−3(SSEA−3)、および胚発生段階特異抗原−4(SSEA−4)の少なくとも1つが、乳癌幹細胞で発現する。いくつかの実施態様おいて、前記Globo Hは乳房の腫瘍上皮細胞で発現する。
【0026】
本発明は、(a)Globo Hまたはその免疫原性フラグメントから本質的に構成され、リンカーを通じてキャリアタンパク質と共役する糖鎖、および樹状細胞上のCD1d分子と結合できる糖脂質を含むアジュバントを含み、この際、前記免疫原性組成物がIgMアイソタイプ抗体と比較して、IgGアイソタイプ抗体を相対的に高いレベルで誘導する免疫応答を誘導する免疫原性組成物、並びに(b)薬学的に許容される賦形剤を含むがんワクチンに関する。
【0027】
いくつかの実施態様において、前記がんワクチンは、前記免疫原性組成物の前記リンカーがp−ニトロフェノールであり、前記キャリアタンパク質がジフテリア毒素交差反応物質197(DT−CRM197)であり、および前記アジュバントがα−ガラクトシルセラミド(α−GalCer)の合成アナログであることを含む。一実施形態において、前記アジュバントはC34である。
【0028】
いくつかの実施態様において、前記がんワクチンはがんの治療に用いられ、この際、前記がんワクチンの有効量を用いる1またはそれ以上の治療法は、腫瘍成長を抑制する。いくつかの実施形態において、前記がんワクチンの投与によって腫瘍サイズが小さくなる。いくつかの実施態様において、前記がんは、乳癌、肺癌、肝癌、口腔癌、胃癌、大腸癌、上咽頭癌、皮膚癌、腎癌、脳腫瘍、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、および膀胱癌からなる群から選択される。
【0029】
本発明は、(a)Globo H関連糖鎖またはその免疫原性フラグメントから本質的に構成され、リンカーを通じてキャリアタンパク質と共役する糖鎖、および(b)樹状細胞上のCD1d分子と結合できる糖脂質を含むアジュバントを含み、この際、前記Globo H関連糖鎖が、SSEA−3およびSSEA−4からなる群から選択され、IgMアイソタイプ抗体と比較して、IgGアイソタイプ抗体を相対的に高いレベルで誘導する免疫応答を誘導する免疫原性組成物に関する。前記キャリアタンパク質はジフテリア毒素交差反応物質197(DT−CRM197)であり、前記アジュバントはα−ガラクトシルセラミド(α−GalCer)の合成アナログであり、および前記リンカーはp−ニトロフェニルリンカーである。一実施形態において、前記アジュバントはC34である。
【0030】
本発明は、p−ニトロフェニルリンカーを通じてジフテリア毒素交差反応物質197(DT−CRM197)キャリアタンパク質と結合するGlobo H、および樹状細胞上のCD1d分子と結合できる糖脂質を含むアジュバントを含む、乳癌幹細胞に対する治療剤に関する。前記治療剤のいくつかの実施形態において、前記アジュバントはC34である。
【0031】
本発明は、p−ニトロフェニルリンカーを通じてジフテリア毒素交差反応物質197(DT−CRM197)キャリアタンパク質と共役するSSEA−3、および樹状細胞上のCD1d分子と結合できる糖脂質C34を含むアジュバントを含む、乳癌幹細胞に対する治療剤に関する。
【0032】
本発明は、p−ニトロフェニルリンカーを通じてジフテリア毒素交差反応物質197(DT−CRM197)キャリアタンパク質と共役するSSEA−4を含む、乳癌幹細胞に対する治療剤に関する。いくつかの実施形態において、前記治療剤は、樹状細胞上のCD1d分子と結合できる糖脂質C34を含むアジュバントをさらに含む。
【0033】
被験者への本発明に係る治療剤の投与は、乳癌幹細胞(BCSC)で発現する抗原を認識する抗体の産生を誘導し、この際、前記抗原は、Globo H、SSEA−3、およびSSEA−4からなる群から選択される。本発明は、本発明に係る治療剤を投与することを含む、乳癌の治療方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、発明の開示のいくつかの実施態様をさらに説明するためのものであり、1またはそれ以上の図面は、本明細書中の特定の実施形態の発明の詳細な説明と組み合わせて参照されることにより、本発明がより理解されうる。特許または出願は、少なくとも1つのカラーの図面を含む。カラーの図面を有する本特許権または特許出願公報のコピーは、請求により有料で庁から提供されうる。
【図1】図1は、Globo Hおよび切断型誘導体の構造を示す。
【図2】図2A〜2Cは、それぞれモノクローナル抗体VK9およびMbrl(Globo Hとの特異的結合)、並びに抗SSEA−3の特異的結合を示す。
【図3】図3A〜3Bは、Globo H複合体およびα−GalCerを接種したマウスの血清学的応答を示す。3匹のC57BL/6マウスの群は、1μgの合成複合糖質を2μgの複合糖質とともに用いて/用いないで皮下投与で接種させた。マウス血清は、IgM(図3A)およびIgG(図3B)抗体分析用にそれぞれ1:60および1:240でそれぞれ希釈した。Cy3−抗マウスIgGまたはIgM二次抗体を、PMT500で532nmにおける蛍光検出に用いた。前記データは、3匹のマウス±SEMの平均蛍光強度で示す。
【図4】図4は、α−GAlCerおよびアナログを示す。
【図5】図5は、共役Globo Hおよびα―GalCer誘導体をワクチン接種されたマウスのIgMレベルを示す。図に示されるように、マウス血清は第2および第3ワクチン接種後に収集および分析した。Cy3第2抗−マウスIgMは、PMT400、532nmの条件で検出した。その結果を、3匹のマウス±SEMの平均蛍光強度で示す。
【図6】図6は、ワクチン接種後のマウスポリクローナル抗体(抗Globo H、抗Gb5、抗SSEA−4、および抗Gb4)の反応特異性を示す。マウス血清は、2μgのアジュバントとともに用いて/用いないで、1.6μgのGH−DTの第3のワクチン接種2週間後に得た(メス、Balb/c、筋肉注射)。前記IgG力価は、糖鎖マイクロアレイで分析し、PMT400で、1000(バッククラウンドの10倍)以上のMFIの最大希釈収率で定義した。各スポットは、マウスごとの力価を示す。
【図7】図7は、異なるアジュバントを用いた場合のIgG抗体対IgM抗体の抗体力価を示す。
【図8】図8は、GH−KLHワクチンのアジュバント活性評価を示す。メスBalb/cマウスに筋肉注射で1.6μgのGH−KLHおよび2μgのアジュバントをワクチン接種し、ワクチン接種後、2週間ごとに採血した。前記血清を希釈し、マイクロアレイ分析した。
【図9】図9は、免疫付与後の抗体アイソタイプ特性を示す。マウスを上述のようにワクチン接種した。血清(1:60で希釈)は、マイクロアレイ抗体サブクラス分析した(532nm、PMT300)。前記データは、3匹のマウス±SEMの平均蛍光強度で示す。
【図10】図10は、糖脂質アジュバントと異なる種類のSSEA−3−DTまたはSSEA−4−DTによって生じるIgM抗体対IgG抗体の抗体力価を示す。
【図11】図11は、細胞表面の24の糖鎖構造を示す。
【図12A】図12Aは、異なるワクチンで誘導されるIgGの交差反応性実験を示す。図12A:Globo H−DTおよびC1アジュバントによって誘導された抗Globo H IgG。
【図12B】図12Bは、異なるワクチンで誘導されるIgGの交差反応性実験を示す。図12B:Gb5−DTおよびC1アジュバントによって誘導された抗Gb5 IgG。
【図12C】図12Cは、異なるワクチンで誘導されるIgGの交差反応性実験を示す。図12C:SSEA−4−DTおよびC1アジュバントによって誘導された抗SSEA−4 IgG。
【図13】図13は、マウス異種移植モデルを示す。2×105の4T1マウス転移性乳癌細胞を無菌PBSおよび調製し、ワクチン接種を受けたBalb/cマウスに皮下投与した。マウスの腫瘍サイズはノギスで測定し、(長さ×高さ×幅)/2(mm3)で定義した。
【図14】図14は、Globo Hハーフエステルおよび複合糖質の合成スキームを示す。
【図15】図15は、原発性乳癌幹細胞におけるSSEA−4発現のフローサイトメトリー分析を示す。BCSCおよび非BCSC表面のSSEA−4の発現は、4色の免疫蛍光染色、続くフローサイトメトリー分析によって評価した。左のパネルに示されるように、BCSCは、CD45−/CD24−/CD44+細胞として定義し、非BCSCは、その他のCD45−細胞集団として定義した。BCSCおよび非BCSCの目的の抗原の発現は、それぞれ中央および右のパネルに示されている。点線はアイソタイプの対照群を示し、数値は陽性細胞の割合を示す。
【図16】図16は、正常組織におけるSSEA−4の発現の制限を示す。正常組織配列の免疫組織化学的染色により、乳房、小腸、および直腸のSSEA−4の発現が分析された。SSEA−4のポジティブ染色では、頂側膜上皮細胞に制限される。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、DT−CRM197が数十年間ジフテリアに対するワクチンとしてヒトに広く用いられてきただけでなく、高い免疫原性を有するため、Globo HおよびSSEA−4のキャリアタンパク質に有用であるという驚くべき知見に関するものである。最も重要なことは、さまざまな複合糖質ワクチンが、FDAに承認されていることである。ジフテリア毒素交差反応物質197(DT−CRM197)は、DTの非毒性突然変異体であり、前記DTは、正常分子の免疫原性と、ヘパリン結合性上皮成長因子(HB−EGF)との結合能を共有する。DTに対する特異的な細胞膜受容体は、しばしばがんで過剰発現する(Buzzi S. et al., Cancer Immunology, Immunotherapy (2004), 53(11):1041-1048)。
【0036】
アジュバントとしてC34を用いると、GH−DTおよびSSEA−4−DTの両方が腫瘍抗原に対するIgG抗体をIgM抗体よりも多く誘導する免疫応答を最も効果的に示す。C34と組み合わせたGH−DTは、Globo Hだけでなく、SSEA−3(Gb5)およびSSEA−4をも中和する抗体を誘導し、この際、前記Globo H、SSEA−3およびSSEA−4は、乳癌細胞およびがん幹細胞に特異的である。
【0037】
さらに、糖鎖マイクロアレイの開示は、抗体特異性試験について強力な基礎となり、ワクチン試験のための患者の同定および免疫付与後の免疫応答のモニタリングに有用である。
【0038】
下記発明の詳細な説明において、実施されうる特定の実施形態を説明する方法として示される一部を形成する図面とともに説明する。これらの実施形態は、当業者が本発明を実施できるように詳細に記載され、その他の実施形態も実施可能であることが理解され、並びに本発明の技術的思想を逸脱することなく、その構造的、論理的、および電気的変更がされうる。したがって、下記実施形態の説明は、狭義に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義される。
【0039】
別途定義がない限り、すべての技術的および化学的用語は、本発明が属する分野における当業者に共通に理解されるものとして、同様の意味を有するものが使用されている。本明細書中に記載されたものと同等または等価の方法および物質は本発明の実施または試験に用いられうるが、好ましい方法および方法および物質が説明される。本明細書中で具体的に言及したすべての刊行物および特許文献は、本発明と関連して用いられうる刊行物に記載された、化学物質、細胞株、ベクター、動物、装置、統計的分析、および手法を含むすべての目的において参照により組み込まれる。本明細書中で引用したすべての刊行物は、当該技術分野における技能レベルの指標としてみなされる。本明細書の記載事項はいずれも、本発明が先発明についての開示に先行するものではないとの自認として解釈されるべきではない。
【0040】
本発明に係る物質および方法を記載する前に、本発明は、記載される特定の方法、プロトコル、物質、および試薬に限定されず、多様なものでありうることが理解される。また、本明細書中で用いられる専門用語は、特定の実施形態を示すことのみを目的としているだけであり、本発明の技術的範囲を制限するものではない(添付の特許請求の範囲によってのみ制限される)ことが理解される。
【0041】
定義
本明細書および添付の特許請求の範囲に用いられる、単数形「a」、「an」および「the」は、別に明確な記載が本文中にない限り、複数の引用を含むものであることに留意しなければならない。同様に、用語「a」(または「an」)、「1またはそれ以上」、および「少なくとも1つ」は、本明細書中で交互に用いられうる。また、用語「comprising」、「including」、および「having」も交互に用いられうることに留意する。
【0042】
本発明の実施は、別に規定がない限り、分子生物学、微生物学、組換えDNA、および免疫学における当該技術分野の技術の範囲内の従来技術が利用されうる。当該技術は、文献において十分に説明される。例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual, 2nd Ed., ed. by Sambrook, Fritsch and Maniatis (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989); DNA Cloning, Volumes I and II (D. N. Glover ed., 1985); Culture Of Animal Cells (R. I. Freshney, Alan R. Liss, Inc., 1987); Immobilized Cells And Enzymes (IRL Press, 1986); B. Perbal, A Practical Guide To Molecular Cloning (1984); the treatise, Methods In Enzymology (Academic Press, Inc., N.Y.); Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells (J. H. Miller and M. P. Calos eds., 1987, Cold Spring Harbor Laboratory); Methods In Enzymology, VoIs. 154 and 155 (Wu et al. eds.), Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology (Mayer and Walker, eds., Academic Press, London, 1987); Antibodies: A Laboratory Manual, by Harlow and Lane s (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1988); およびHandbook Of Experimental Immunology, Volumes I-IV (D. M. Weir and C. C. Blackwell, eds., 1986)を参照。
【0043】
本明細書中で用いられる用語「脂質」は、細胞シグナル経路に関与する任意の脂溶性(lipophilic)分子を意味する。
【0044】
本明細書中で用いられる用語「糖脂質」は、細胞認識の標識としての機能を有する、脂質が結合した糖を意味する。
【0045】
本明細書中で用いられる用語「アルファ−ガラクトシルセラミド」および「α−GalCer」は、ナチュラルキラーT細胞を刺激してヘルパーT(TH)1およびTH2サイトカインをともに産生する糖脂質を意味する。本明細書中で用いられる前記糖脂質誘導体C34は、下記の構造を有する。
【0046】
【化2】
【0047】
本発明に係る前記α−GalCerアナログは、細胞起源のα−GalCerアナログ(グループI:C2、C3、およびC14)、スルホン化により修飾されたα−GalCerアナログ(グループII:C4、C5、およびC9)、フェニルアルキル鎖のα−GalCerアナログ(グループIII:C6−C8、C10−C11、C15−C16、C18−C34、C8−5、およびC8−6)、およびα−GalCerアナログが切断されたフィトスフィンゴシンを含む。C34および他のアルファ−ガラクトシルセラミドアナログの構造、並びにそのアジュバントとしての用途は、その詳細が2008年4月14日に出願された、国際出願番号PCT/US2008/060275に開示されている。
【0048】
C34を含む合成α−GalCerアナログは、CD1d分子と複合体を形成できる。合成α−GalCerアナログは、NKTのT細胞受容体に認識されうる。合成α−GalCerアナログは、TH1型応答、TH2型応答、もしくはTH1型応答、およびTH2型応答を起こしうる。前記α−GalCerアナログは、in vitroでNKTを活性化させうる。前記α−GalCerアナログは、in vivoでNKTを活性化させうる。
【0049】
本明細書中で用いられる用語「糖鎖(glycan)」は、多糖またはオリゴ糖を意味する。本明細書中で用いられる糖鎖はまた、糖タンパク質、糖脂質、糖ペプチド、糖プロテオーム、ペプチドグリカン、リポ多糖、またはプロテオグリカンなどの複合糖質の糖質部分を意味する。糖鎖は、通常、単糖間における単一のO−グリコシド結合からなる。例えば、セルロースは、β―1,4結合したD−グルコースから構成される糖鎖(より具体的には、グルカン)であり、キチンは、β―1,4結合したN−アセチル−D−グルコサミンから構成される糖鎖である。糖鎖は、単糖残基のホモまたはヘテロ重合体であり、直鎖または分岐鎖でありうる。糖鎖は、糖タンバク質およびプロテオグリカンなどのタンパク質に結合して存在しうる。前記糖鎖は、一般的に、細胞の外面上に見られる。O−およびN−結合糖鎖は、真核生物において非常によく見られ、原核生物においても少数であるが見られうる。N−結合糖鎖は、シークオン配列におけるアスパラギンのR基の窒素(N)に結合して存在する。前記シークオンは、Asn−X−SerまたはAsn−X−Thr配列であり、この際、Xはプロリンを除く任意のアミノ酸である。
【0050】
本明細書中で用いられる用語「糖タンパク質」は、糖鎖を共有結合で修飾させたタンパク質を意味する。前記糖タンパク質には、下記4つのタイプがある:(1)N−結合糖タンパク質、(2)O−結合糖タンパク質(ムチン)、(3)グルコサミノグリカン(GAG、プロテオグリカンとも呼ばれる)、(4)GPIアンカー。大抵の糖タンパク質は、構造的な微小不均一性(同一のグリコシル化部位に複数の異なる糖鎖構造が結合する)、および構造的な巨大不均一性(複数の部位および複数の糖鎖タイプの結合)を有する。
【0051】
本明細書中で用いられる用語「抗原」は、免疫応答を起こすことができる任意の基質と定義される。
【0052】
本明細書中で用いられる用語「免疫原」は、抗原またはDNAワクチンのような抗原の産生を誘導できる基質を意味する。
【0053】
本明細書中で用いられる用語「免疫原性」は、免疫応答を刺激する免疫原、抗原、またはワクチンの活性を意味する。
【0054】
本明細書中で用いられる用語「免疫療法」は、予防目的/治療目的を達成するための、免疫応答を調節する概念に基づく多くの治療戦略を意味する。
【0055】
本明細書中で用いられる用語「CD1d」は、さまざまなヒト抗原提示細胞の表面に発現するタンパク質のCD1(分化1群)ファミリーのメンバーを意味する。CD1dは脂質抗原活性ナチュラルキラーT細胞に提示される。CD1dは、糖脂質抗原結合中に深抗原結合溝を有する。樹状細胞上に発現するCD1d分子は、C34等のα−GalCerアナログを含む糖脂質に結合して存在している。
【0056】
本明細書中で用いられる用語「適応免疫系」は、高度に専門化された、全身性の細胞および病原性の抗原を除去する経路を意味する。前記適応免疫系の細胞は、白血球の一種であり、リンパ球と呼ばれている。B細胞およびT細胞は、リンパ球の主要な一例である。
【0057】
本明細書中で用いられる用語「T細胞」および「Ts」は、細胞性免疫に主要な役割を果たす、リンパ球として知られている白血球群を意味する。T細胞は、細胞表面の存在するT細胞レセプター(TCR)と呼ばれる特有の受容体の存在によって、B細胞およびNKs等の他のリンパ球型と識別されうる。いくつかのT細胞のサブセットの相違は、それぞれ異なる機能を示す。ヘルパーT細胞(TH)は、適応免疫系の「仲介役」である。1度活性化されると、急速に分裂し、免疫応答を調節する、または「助ける」、サイトカインと呼ばれる低分子量タンパク質を分泌する。サイトカインのシグナルを受け取ることによって、これらの細胞は、異なるサイトカインを分泌するTH1、TH2、TH17、または他のサブセットの1つに分化する。
【0058】
本明細書中で用いられる用語「抗原提示細胞」(APC)は、細胞表面で主要組織適合性複合体(MHC)と複合体を形成する外部抗原を示す細胞を意味する。T細胞は、TCRによりこの複合体を認識しうる。APCは、専門的または非専門的の2つのカテゴリーに分類される。樹状細胞(DC)は、専門的なカテゴリーに該当され、CD1と関連してT細胞に抗原提示能がある。典型的な実施において、本開示の方法を用いたDCは、ある実施におけるリンパ、または別の実施における骨髄性骨髄前駆細胞から分化した、いくつかのDCサブセットでありうる。
【0059】
本明細書中で用いられる用語「未感作細胞」は、未分化の免疫細胞、例えば、未だ特異的病原体を認識するように分化されていないCD4T細胞を意味する。
【0060】
本明細書中で用いられる用語「ナチュラルキラー細胞」は、ウイルスまたは細胞内病原体に対する自然宿主の防御に寄与するインターフェロンで活性化された、リンパ系細胞のクラスを意味する。
【0061】
本明細書中で用いられる用語「ナチュラルキラーT細胞」は、通常のTsおよびNKsをともに有する性質/受容体を持つ、T細胞のサブセットを意味する。これらの細胞の多くは、非多形性CD1d分子、自己および外部脂質と結合する抗原提示細胞、並びに糖脂質を認識する。NKsのTCRは、CD1d分子によって提示された糖脂質抗原(シャペロン)を認識できる。NKTsの主要な応答は、刺激後の急速なIL−4、IFN−γ、およびIL−10を含むサイトカインの分泌、並びにそれによって影響が及ぼされる多様な免疫応答および発病過程である。NKTsは、均一集団または不均一集団でありうる。一つの典型的な実施において、前記集団は、ヒトおよびマウス骨髄、並びにヒト肝T細胞集団、例えば、さまざまなTCRsで発現し、多量のIL−4およびINF−γを生産しうる、CD1d反応性非インバリアントT細胞を含む、「非インバリアントNKTs」でありうる。CD1d依存性NKTsの最も知られたサブセットは、インバリエントTCR−アルファ(TCR−α)鎖を発現する。これらは、I型またはインバリエントNKTs(iNKTs)と呼ばれる。これらの細胞は、ヒト(Vα21iNKTs)およびマウス(Vα14NiKTs)間で維持され、多くの免疫学的過程に関連がある。
【0062】
本明細書中で用いられる用語「サイトカイン」は、前駆細胞が異なる特異的な細胞タイプとなることによって変化する、遺伝子発現に通常関与する免疫細胞の分化過程の影響によって、免疫応答の強度および持続を調節する、任意の多数の小さい分泌タンパク質を意味する。サイトカインは、推定される機能、分泌細胞、または作用標的に基づき、リンホカイン、インターロイキン、およびケモカインとさまざまな命名がなされている。例えば、いくつかの共通するインターロイキンは、限定されないが、IL−12、IL−18、IL−2、INF−γ、TNF、IL−4、IL−10、IL−13、IL−21、およびTGF−βを含む。
【0063】
本明細書中で用いられる用語「ケモカイン」は、リンパ球の可動および活性化の手段を与える感染部位から放出される、任意のさまざまな小さい遊走性のサイトカインを意味する。ケモカインは、白血球を感染部位に引き付ける。ケモカインは、ケモカインを4つのグループに分類できる保存システイン残基を有する。前記グループとその代表的なケモカインは、C−Cケモカイン(RANTES、MCP−1、MIP1α、およびMIP−1β)、C−X−Cケモカイン(IL−8)、Cケモカイン(リンホタクチン)、並びにCXXXCケモカイン(フラクタルカイン)である。
【0064】
本明細書中で用いられる用語「TH2型応答」は、サイトカイン、インターフェロン、ケモカインの特定のタイプが産生される等のサイトカイン発現のパターンを意味する。典型的なTH2サイトカインは、限定されないが、IL−4.IL−5、IL−6、およびIL−10を含む。
【0065】
本明細書中で用いられる用語「TH1型応答」は、サイトカイン、インターフェロン、ケモカインの特定のタイプが産生される等のサイトカイン発現のパターンを意味する。典型的なTH1サイトカインは、限定されないが、IL−2、IFN−γ、GMCSF、およびTNF−βを含む。
【0066】
本明細書中で用いられる用語「TH1バイアス」は、免疫原性応答を意味し、この際、TH1サイトカインおよび/またはケモカインの産生は、TH2サイトカインおよび/またはケモカインの産生よりも大きく増加する。
【0067】
本明細書中で用いられる用語「エピトープ」は、抗体またはT細胞レセプターの抗原結合部位と接触する抗原分子の一部として定義される。
【0068】
本明細書中で用いられる用語「ワクチン」は、全病原微生物(死滅または弱毒化)またはタンパク質、ペプチド、または多糖などの微生物の成分からなる抗原、すなわち、微生物が引き起こす疾病に対する免疫を付与する抗原を含む製剤を意味する。ワクチン製剤は天然または組換えDNA技術によって合成もしくは誘導させたものでありうる。
【0069】
本明細書中で用いられる用語「免疫学的アジュバント」は、免疫原とともに用いられる、免疫原に対する免疫応答を増強または改善する物質を意味する。本開示に係るα―GalCerアナログは、より強力にワクチンに応答するように、ワクチンを投与した患者の免疫系を刺激することによって、ワクチンの効果を改善または増強するための、免疫学的アジュバントとして用いられる。一つの典型的な実施において、C34アナログはアジュバントとして用いられる。
【0070】
本明細書中で用いられる用語「ミョウバンアジュバント」は、免疫アジュバント活性を有するアルミニウム塩を意味する。この物質は、溶液中においてタンパク質抗原を吸収および沈殿させ、当該沈殿物は、接種部位において形成された貯蔵ワクチンから抗原の持続的な放出を促進することによって、ワクチンの免疫原性を向上する。
【0071】
本明細書中で用いられる用語「抗がん免疫治療活性剤」は、腫瘍を阻害、減少および/または除去する、本開示に係るワクチンによって発生した抗体を意味する。
【0072】
本明細書中で用いられる用語「抗原特異的」は、特定抗原の供給、または抗原フラグメントの供給、その結果生じる特異的細胞増殖のような細胞集団の性質を意味する。
【0073】
本明細書中で用いられる用語「フローサイトメトリー」または「FACS」は、流体の流れの中の懸濁化した粒子または細胞の物理的または化学的性質を、光学的または電子的検出装置を通して分析する技術を意味する。
【0074】
後述するペプチド中のアミノ酸残基は、以下のように省略する:フェニルアラニンはPheまたはF;ロイシンはLeuまたはL;イソロイシンはIleまたはI;メチオニンはMetまたはM;バリンはValまたはV;セリンはSerまたはS;プロリンはProまたはP;トレオニンはThrまたはT;アラニンはAlaまたはA;チロシンはTyrまたはY;ヒスチジンはHisまたはH;グルタミンはGlnまたはQ;アスパラギンはAsnまたはN;リジンはLysまたはK;アスパラギン酸はAspまたはD;グルタミン酸はGluまたはE;システインはCysまたはC;トリプトファンはTrpまたはW;アルギニンはArgまたはR;およびグリシンはGlyまたはGである。アミノ酸のさらなる記述に対しては、Proteins: Structure and Molecular Properties by Creighton, T. E., W. H. Freeman & Co., New York1983を参照。
【0075】
本明細書中に開示される組成物は、本開示に接した当業者によって特定可能な追加の活性化剤、キャリア、ビヒクル、賦形剤、または助剤とともに含む、医薬組成物または栄養補助組成物を含みうる。
【0076】
前記医薬組成物または栄養補助組成物は好ましくは、少なくとも1つの薬学的に許容されるキャリアを含む。このような医薬組成物において、本明細書中に開示された組成物は、「活性化合物」を形成し、「活性剤」として参照される。本明細書中で用いられる用語「薬学的に許容されるキャリア」は、溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張化剤および吸収遅延剤などの、投与薬剤と相溶性が高いものを含む。補足的な活性化合物も組成物中に組み込まれうる。医薬組成物は、目的とする投与経路に適するように製剤化される。投与経路の例として、例えば、静脈内投与、皮内投与、皮下投与などの非経口投与、経口投与(例えば、吸入投与)、経皮投与(局所投与)、経粘膜投与、および直腸投与を含む。非経口投与、皮内投与、または皮下投与に適用するために用いられる溶液または懸濁液は、以下の成分を含みうる:注射用蒸留水、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒などの無菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム等の抗酸化剤;エチレンジアミンテトラ酢酸等のキレート剤;酢酸、クエン酸、またはリン酸等の緩衝剤;および塩化ナトリウムまたはDグルコース等の等張化剤。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムの等の酸または塩基を用いて調製されうる。非経口製剤は、ガラスまたはプラスチックで製造されたアンプル、使い捨てシリンジ、または多用量バイアルに封入されうる。
【0077】
本明細書中で用いられる被験者は、ヒトおよびヒト以外の霊長類(例えば、ゴリラ、マカク、マーモセット)、家畜動物(例えば、ヒツジ、ウシ、ウマ、ロバ、およびブタ)、ペット(例えば、犬、猫)、実験室試験の動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモット、ハムスター)、捕獲野生動物(例えば、キツネ、シカ)、並びに本開示に係る抗原から恩恵を受けうる他の任意の動物を意味する。本開示の抗原から恩恵を受けうる動物のタイプには制限はない。ヒトであるかヒト以外の生物であるかにかかわらず、被験者を患者、個体、動物、宿主、またはレシピエントと称することがある。
【0078】
注射の用途に好適な医薬組成物は、無菌水溶液(水溶性)、または無菌注射剤または無菌分散剤の即時調製用の分散剤および無菌粉末を含む。静脈内投与に好適なキャリアは、生理食塩水、静菌水溶液、Cremophor EL(商標)(BASF, Parsippany, N.J.社)、またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む。すべての場合において、前記組成物は、無菌および容易に注射可能できる程度の溶液でなければならない。また、製造および保存の状態で安定であり、細菌および真菌などの微生物の汚染の作用から保護されなければならない。前記キャリアは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの安定な混合物を含む溶媒または分散媒でありうる。好適な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティング剤の使用によって、分散剤の場合には必要な粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持されうる。微生物の作用は、さまざまな抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノールアスコルビン酸、チメロサールなどによって防止されうる。多くの場合において、等張化剤、例えば、糖、またはマンニトール、ソルビトール、もしくは塩化ナトリウムなどのポリアルコールを組成物中に含むことが好ましい。注射用組成物の持続的吸収は、組成物中に吸収を遅延させる添加剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含ませることによって実現されうる。
【0079】
無菌注射剤は、必要に応じて上記列挙された成分の1または組み合わせを含む好適な溶媒に、必要量の活性化合物を添加し、次いでろ過滅菌することによって調製されうる。通常、分散剤は、基礎分散媒体および上記列挙された他の必要な成分を含む無菌ビヒクル中に活性化合物を組み込むことによって調製される。無菌注射剤を調製するための無菌粉末の場合には、調製方法は真空乾燥および凍結乾燥を含み、あらかじめ無菌ろ過した溶液から活性成分に任意の必要な追加の成分を加えた活性成分の粉末が得られる。
【0080】
経口用組成物は、通常、不活性希釈剤または食用キャリアを含む。治療的経口投与を目的として、活性化合物は、賦形剤に混和され、錠剤、トローチ剤、または、ゼラチンカプセルのようなカプセル剤の形態で使用される。経口用組成物はまた、口内洗浄液として使用するために、分散媒を用いて調製されうる。薬学的に混和可能な結合剤、またはアジュバント物質は、組成物の一部として含みうる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは任意の下記の成分、または同等の性質の化合物を含みうる:微結晶性セルロース、トラガカントゴム、またはゼラチンなどの結合剤;デンプン、乳糖などの賦形剤;アルギン酸、プリモゲル、もしくはコーンスターチなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムもしくはステロテス(sterotes)などの滑沢剤;コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤;スクロースもしくはサッカリンなどの嬌味剤;またはペパーミント、サリチル酸メチル、もしくはオレンジ芳香剤などの芳香剤。
【0081】
吸入投与に対しては、化合物は、好適な推進剤、例えば二酸化炭素などの気体、または噴射器を含む加圧容器またはディスペンサーから、エアロゾルの形態で供給される。
【0082】
また、全身投与は、経粘膜投与または経皮投与でありうる。経粘膜投与または経皮投与に対しては、バリアを通過するのに好適な浸透剤が製剤において使用される。このような浸透剤は当該技術分野において周知であり、例えば、経粘膜投与においては、洗浄剤、胆汁塩、およびフシジン酸誘導体を含む。経粘膜投与は鼻腔用スプレーまたは坐剤の使用によって行われうる。経皮投与においては、活性化合物は、当該技術分野において周知の軟膏剤、ゲル化剤、またはクリーム剤に製剤化される。化合物はまた、直腸への供給のため、坐剤(例えば、ココアバターおよび他のグリセリン坐剤などの従来の坐剤の基材を含む)または停留かん腸の形態で調製されうる。
【0083】
実施によると、活性化合物はキャリアを含んで調製され、植え込み型送達システムおよびマイクロカプセル型送達システムを含む、放出制御製剤などの体内からの迅速な除去を防ぐ。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルト酸エステル、およびポリ乳酸などの生分解性、生体適合ポリマーが用いられうる。製剤化などの調製方法は、当業者にとって明らかでありうる。また、原料はアルザコーポレーションおよびノバファーマシューティカルズ社の市販品から得られうる。リポソーム懸濁化剤(モノクローナル抗体を用いた感染細胞への細胞特異抗原にターゲティングしたリポソームを含む)もまた、薬学的に許容されるキャリアとして使用されうる。これらは、当業者に公知の方法、例えば、本明細書に参照により組み込まれる、米国特許第4,522,811号明細書に記載された方法に従い調製されうる。
【0084】
投与容易な用量単位形態および均一な用量とした経口組成物または非経口組成物に設計することが好ましい。本明細書中で用いられる用量単位形態は、治療される被験者に統一された用量として適する身体的に個別の単位を意味し、各単位は、必要とする薬学的キャリアと関連して、望みの治療効果が得られるように計算された活性化合物の所定量を含む。
【0085】
化合物などの毒性および治療効果、例えばLD50(集団の50%の致死量)およびED50(集団の50%の治療有効量)は、細胞培養または動物実験における標準的な手順によって決定されうる。毒性および治療の有効性の間の用量比は治療指数であり、LD50/ED50の比として表されうる。高い治療指数を示す化合物が調製される。有害副作用を示す化合物は用いられうるが、非感染細胞への損傷の可能性を最小限にするように、感染部位に対する化合物などの標的とする輸送システムをデザインするような注意を要し、これによって副作用が少なくなる。
【0086】
細胞培養アッセイおよび動物実験により得られるデータは、ヒトにおける使用する用量の範囲の決定に用いられうる。化合物などの用量は、好ましくは、ED50を含み、低毒性または非毒性の血中濃度の範囲内とする。用量は、用いられる剤形および利用する投与経路に応じて、前記範囲内で変化しうる。本開示に係る方法において使用される任意の化合物に対し、治療有効量は、始めは細胞培養アッセイから評価されうる。用量は、動物モデルにおいて、細胞培養で決定されるIC50(例えば、試験化合物の症状を最大抑制する半分の濃度)を含む、循環血漿濃度の範囲で決定されうる。このような情報は、ヒトにおける、より的確な有効量の決定に用いられうる。血漿中のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィによって測定されうる。
【0087】
本明細書に定義されるように、活性化合物の治療有効量(例えば、有効量)は約0.001〜100g/kg体重の範囲、または過度の実験なく、専門化によって明らかであり、理解されうる他の範囲でありうる。専門家は、被験者の有効な治療に必要とされる用量および時間について、特に限定されないが、病気または疾病の重症度、既往歴、被験者の全体的な健康状態および年齢、および他の症状を含む一定の要因が影響を及ぼすことを理解している。
【0088】
他の実施態様によると、1またはそれ以上の一部のキットが、当業者によって想定され、本明細書中に開示される方法の少なくとも1つを実施するためのものである前記キットの一部は、2またはそれ以上の組成物を含み、前記組成物は、上述の方法の少なくとも1つに従い、本明細書中に開示された組成物の有効量を単独または組み合わせて含みうる。
【0089】
前記キットはまた、場合によっては、活性化剤、生物学的反応の識別子、または本開示に接した当業者によって識別可能な他の化合物を含有する組成物を含む。前記キットはまた、少なくとも1つの本明細書中に開示された組成物の有効量または細胞株を含有する組成物を含む。使用されるキットの一部の前記組成物および細胞株は、当業者に理解される手順に従い、本明細書中に開示される少なくとも1つの方法を実施するために用いられうる。
【0090】
本明細書中で用いられる用語「ポリペプチド」は、任意のアミノ酸残基の多量体またはポリマーを意味する。ポリペプチドは、2またはそれ以上のポリペプチド鎖から構成されうる。ポリペプチドは、タンパク質、ペプチド、およびオリゴペプチドを含む。ポリペプチドは直鎖または分岐鎖でありうる。ポリペプチドは、修飾アミノ酸残基、アミノ酸アナログ、または非天然アミノ酸残基を含み、非アミノ酸残基に組み込まれうる。天然または人工的な修飾、例えば、ジスルフィド結合、グリコシル化、脂質化、メチル化、アセチル化、リン酸化、または標識化合物への結合のような操作であるかを問わず、修飾されたアミノ酸ポリマーは、前記定義の範囲内である。
【0091】
本明細書中で用いられる用語「特異的結合」は、結合対(例えば、抗体および抗原)間の相互作用を意味する。さまざまな例において、特異的結合は、約106モル/リットル、約107モル/リットル、もしくは約108モル/リットル、またはそれ以下の親和性定数で示されうる。
【0092】
本発明に係るがんワクチン
本発明に係る一実施形態は、Globo Hまたはそのフラグメント(例えば、胚発生段階特異抗原−3(SSEA−3、Gb5としても知られている)またはSSEA−4)のいずれか一方、およびアジュバントを含む免疫組成物を、必要に応じて被験者に投与するがんの治療方法である。標的のがんのタイプは、限定されないが、乳癌(ステージ1−4を含む)、肺癌(例えば、小細胞肺癌)、肝癌(例えば、肝細胞癌)、口腔癌、胃癌(T1−T4を含む)、大腸癌、鼻咽頭癌、皮膚癌、腎癌、脳腫瘍(例えば、星状細胞腫、多形性膠芽腫、および髄膜腫)、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、膀胱癌、および子宮内膜、横紋筋肉腫、骨肉腫、平滑筋肉腫、並びに消化管間質腫瘍を含む。
【0093】
部位により分類されたがんは、口腔癌および咽頭癌(唇、舌、唾液腺、口腔底部、歯茎および他の口腔、鼻咽頭、扁桃腺、中咽頭、下咽頭、他の口腔/咽頭);消化器癌(食道;胃;小腸;大腸および直腸;肛門、肛門管、および肛門直腸;肝臓;肝内胆管;胆嚢;他の胆管;膵臓;後腹膜;腹膜、網、および腸間膜;他の消化器);呼吸器癌(鼻腔、中耳、および洞;喉頭;肺および気管支;胸膜;気管、縦隔、および他の呼吸器);中皮腫の癌;骨および滑膜;心臓を含む軟組織;黒色腫および非上皮性皮膚癌を含む皮膚癌;カポジ肉腫および乳癌;女性生殖器系癌(子宮頸;子宮体;子宮、NOS;卵巣;膣;外陰部;および他の女性生殖器);男性生殖器系癌(前立腺;精巣;陰茎;および他の男性生殖器);泌尿器系癌(膀胱;腎臓および腎盂;尿管;および他の泌尿器);眼および眼窩の癌;脳および神経系癌(脳;および他の神経系癌);内分泌系癌(甲状腺および胸腺を含む他の内分泌腺);リンパ腫(ホジキン病および非ホジキンリンパ腫)、多発性骨髄腫、白血病(リンパ性白血病;骨髄性白血病;単球性白血病;および他の白血病)を含む。
【0094】
本発明による癌ワクチンの好適な標的となりうる、組織型によって分類された他の癌は、限定されないが、腫瘍、悪性;癌、NOS;癌、未分化、NOS;巨細胞および紡錘細胞癌、NOS;小細胞癌、NOS;乳頭癌、NOS;扁平上皮癌、NOS;リンパ上皮癌;基底細胞癌、NOS;毛母癌;移行上皮癌、NOS;乳頭移行上皮癌;腺癌、NOS;タストリノーマ、悪性;胆管癌:肝細胞癌、NOS;肝細胞癌および胆管癌の合併;索状腺癌;腺様嚢胞癌;腺腫性ポリープにおける腺癌;腺癌、家族性大腸ポリポーシス;固形癌、NOS;カルチノイド腫瘍、悪性;細気管支肺胞癌;乳頭腺癌、NOS;嫌色素癌;好酸性癌;好酸性腺癌;好塩基性癌;透明細胞腺癌、NOS;顆粒細胞癌;濾胞状腺癌、NOS;乳頭腺癌および濾胞状腺癌;非被嚢性硬化性癌;副腎皮質細胞癌;類内膜癌;皮膚付属器癌;アポクリン腺癌;皮脂腺癌;耳垢腺癌;粘膜表皮癌;嚢胞腺癌、NOS;乳頭状嚢胞腺癌、NOS;乳頭漿液性嚢胞腺;ムチン性嚢胞腺癌;粘液腺癌;印環細胞癌;浸潤性導管癌;髄様癌、NOS;小葉癌;炎症性乳癌;パジェット病、乳房;腺房細胞癌;腺扁平上皮癌;腺癌w/扁平上皮化生;胸腺腫、悪性;卵巣間質性腫瘍、悪性;卵胞膜細胞腫、悪性;顆粒膜細胞腫、悪性;セルトリ・間質細胞腫瘍、悪性;セルトリ細胞癌;ライディッヒ細胞腫、悪性;脂質細胞腫瘍、悪性;傍神経節腫、悪性;乳房外傍神経節腫、悪性;褐色細胞腫;グロームス腫瘍;悪性黒色腫、NOS;メラニン欠乏性黒色腫;表在拡大型黒色腫;巨大色素性母斑における悪性黒色腫;類上皮細胞黒色腫;青色母斑、悪性;肉腫、悪性;線維肉腫、NOS;線維性組織球腫、悪性;粘液肉腫;脂肪肉腫、NOS;平滑筋肉腫、NOS;横紋筋肉腫、NOS;胎児性横紋筋肉腫;胞巣状横紋筋肉腫;間質肉腫、NOS;混合腫瘍、悪性、NOS;ミュラー管混合腫瘍;腎芽細胞腫;肝芽腫;癌肉腫、NOS;間葉腫、悪性;ブレンナー腫瘍、悪性;葉状腫瘍、悪性;滑膜肉腫、NOS;中皮腫、悪性;未分化胚細胞腫;胚性癌腫、NOS;奇形腫、悪性、NOS;卵巣甲状腺腫、悪性;絨毛癌;中腎腫、悪性;血管肉腫;血管内皮腫、悪性;カポジ肉腫;血管周囲細胞腫、悪性;リンパ管肉腫;骨肉腫、NOS;傍骨性骨肉腫;軟骨肉腫、NOS;軟骨芽細胞腫、悪性;間葉性軟骨肉腫;骨巨細胞腫;ユーイング肉腫;歯原性腫瘍、悪性;エナメル上皮肉腫;エナメル上皮腫、悪性;エナメル上皮線維肉腫;松果体腫、悪性;脊索腫;神経膠腫、悪性;上衣腫、NOS;星状細胞腫、NOS;原形質性星状細胞腫;線維性星状細胞腫;星状芽細胞腫;膠芽細胞腫、NOS;乏突起膠腫、NOS;希突起グリオーマ;未分化神経外胚葉性腫瘍;小脳肉腫、NOS;神経節芽細胞腫;神経芽細胞腫、NOS;網膜芽腫、NOS;嗅神経原性腫瘍;髄膜腫、悪性;神経線維肉腫;神経鞘腫、悪性;顆粒細胞腫、悪性;悪性リンパ腫、NOS;ホジキン病、NOS;ホジキン傍肉芽腫、NOS;悪性リンパ腫、小リンパ球性;悪性リンパ腫、大細胞、びまん性;悪性リンパ腫、濾胞性、NOS;菌状息肉腫;その他の特定の非ホジキンリンパ腫;悪性組織球増殖症;多発性骨髄腫;肥満細胞腫;免疫増殖性小腸疾患;白血病、NOS;リンパ性白血病、NOS;形質細胞白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞性白血病;骨髄性白血病、NOS;好塩基球性白血病;好酸球性白血病;単球性白血病、NOS;肥満細胞性白血病;巨核芽球性白血病;骨髄性肉腫;および有毛細胞白血病を含む。
【0095】
本明細書中で用いられる用語「治療」は、がん、がんの症状、またはがんの素因の治療、治癒、緩和、軽減、変化、是正、改善、好転または影響を目的として、がん、がんの症状、またはがんの素因を有する被験者への1またはそれ以上の活性化剤を含む組成物の適用または投与を意味する。本明細書中で用いられる「有効量」は、被験者に治療効果を与えるのに必要な、1またはそれ以上の他の活性化剤を単独または組み合わせた、各活性化剤の量を意味する。有効量は、当業者に理解されるように、投与経路、用いる賦形剤、併用する他の活性化剤に応じて変化する。
【0096】
上述の方法において用いられる免疫組成物は、Globo Hまたはそのフラグメントである糖鎖(例えば、糖部分を含む分子)およびアジュバントを含みうる。Globo Hは、6糖類のエピトープ(Fucα1→2Galβ1→3GalNAcβ1→3Galα1→4Galβ1→4Glc)、および任意の非糖部分を含む糖鎖である。前記フラグメントは、6糖類のエピトープのフラグメント、および適用可能であれば非糖部分を含む糖鎖である。これらのオリゴ糖は、所定の方法によって調製されうる(Huang et al., Proc.Natl. Acad. Sci USA 103:15-20 (2006)を参照)。所望であれば、非糖部分と結合されうる。
【0097】
米国特許出願第12/485,546号は、(1)Globo Hの直接前駆体であるSSEA−3が乳癌幹細胞において高レベルで発現し、乳癌治療に好適な標的として提供され、(2)α―ガラクトシルセラミド(α−GalCer)が、抗Globo Hおよび抗SSEA−3抗体の賛成を促進する有効なアジュバントであるという予想外の発見に基づくものである。
【0098】
米国特許出願第12/485,546号は、Globo Hまたはそのフラグメント(例えば、SSEA−3)、およびアジュバント(例えば、α−GalCer)を含む免疫組成物を特徴とする。Globo Hまたはそのフラグメントは、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)と共役しうる。被験者(例えば、ヒト)に投与した場合、この免疫組成物は、Globo Hまたはそのフラグメントを標的とした免疫応答(例えば、抗体産生)を引き起し、このためがん(例えば、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、および肺癌)の治療に有効である。
【0099】
米国特許出願第12/485,546号は、非ヒト哺乳動物(たとえば、マウス、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、またはウマ)に上述の免疫組成物を投与することによって、Globo Hまたはそのフラグメントに特異的な抗体を産生し、Globo Hまたはそのフラグメントと結合する抗体を哺乳動物から単離する方法に関する。
【0100】
前記開示に記載されたGlobo Hまたは他の糖鎖は、DT−CRMなどのタンパク質キャリアと共役している。C34のようなアジュバントおよび任意の薬学的に許容されるキャリア(例えば、リン酸緩衝生理食塩水、または重炭酸塩溶液)にこれらを混合して、従来の方法により免疫組成物(例えば、ワクチン)を形成する。米国特許第4,601,903号明細書、4,599,231号明細書、および4,596,792号明細書を参照。前記組成物は、注射用として、溶液または懸濁液として調製され、前記キャリアは、投与方法および投与経路に基づき、および標準的な薬学の慣習に基づき選択される。好適な薬学的キャリアおよび希釈剤、並びに使用のための薬学的な必要な物は、レミントンズ・ファーマシューティカル・サイエンスに記載されている。免疫組成物は、アジュバントとしてα−GalCerを含むことが好ましい。アジュバントの他の例は、限定されないが、コレラトキシン、大腸菌易熱性エンテロトキシン(LT)、リポソーム、免疫刺激複合体(ISOCOM)、または免疫刺激配列オリゴデオキシヌクレオチドを含む。前記組成物はまた、in vivo供給を促進するポリマーを含みうる。Audran R. et al. Vaccine 21:1250-5, 2003;およびDenis-Mize et al. Cell Immunol., 225:12-20, 2003を参照。必要であれば、Globo Hまたはそのフラグメント中の糖部分に対する免疫応答を引き起こす組成物の能力を増強するために、さらに湿潤剤または乳化剤などの補助物質、またはpH調整剤を含んでいてもよい。本明細書中に記載される免疫組成物は、非経口的に投与(例えば、静脈注射、皮下注射、または筋肉注射)されうる。また、坐剤および経口製剤を含む他の投与方法が好ましい場合もある。坐剤について、結合剤およびキャリアは、例えば、ポリアルケングリコールまたはトリグリセリドを含みうる。経口製剤は、例えば、サッカリン、セルロース、炭酸マグネシウムなどの医薬品等級などの通常用いられる賦形剤を含みうる。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸剤、カプセル剤、徐放性製剤、または粉末剤の形態をとり、本明細書中に記載された免疫組成物の10−95%を含みうる。
【0101】
免疫組成物は製剤の調剤量と両立できる態様で、治療上、有効で、保護的で、かつ免疫原性の量で投与される。前記投与量は、治療する被験者の、例えば、個人の抗体産生能、および必要であれば細胞性免疫応答を誘導に依存する。投与を必要とする活性成分の正確な量は、医師の判断に依存する。しかしながら、好適な用量の範囲は、当業者によって容易に決定可能である。また、初回投与量および追加抗原投与量の好適な投与計画は変化するが、初回投与量、続く二回目投与量を含みうる。ワクチンの用量は、投与経路に依存し、宿主の大きさによって変化しうる。
【0102】
本発明に係る前記免疫組成物は、動物中の、がんの治療および診断に用いられうる抗体を産生するために用いられうる。動物(例えば、マウス、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、およびウマ)において、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体、並びにそのフラグメントを作製する方法は、当該技術分野において周知である。例えば、Harlow and Lane, (1988) Antibodies:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New Yorkを参照。用語「抗体」は、Fab、F(ab’)2、Fv、scFv(一本鎖抗体)、およびdAb(抗体ドメイン;Ward, et. al. (1989) Nature, 341, 544)などの天然の免疫グロブリン分子、およびそのフラグメントを含む。
【0103】
Globo H−DT−CRM197および関連ワクチン
Globo H(1)およびそのフラグメント2−10は、本明細書中に記載される方法に従って合成される。共役タンパク質に関しては、図14で示されるように、精製Globo Hハーフエステルをキャリアタンパク質とインキュベートさせる。
【0104】
前記Globo H−タンパク質共役体は、各キャリアタンパク質上のGlobo H分子の数を決定するために、MALDI−TOF解析によって評価する。組み込まれたGlobo Hの平均値を表1に示す。
【0105】
【表1】
【0106】
aMALDI−TOFにおけるm/zピーク;N.D.:未決定;*GH−KLHはOptimer社から提供された
GH−KLH共役体は、主により大きいサイズおよびKLHのLys残基数が多いという要因により、KLHのGlobo H結合の最大数を示した。p−ニトロフェニルリンカーを用いた同様のカップリング処理を、ウイルス膜に100,000以上のLys残基を含む破傷風モザイクウイルスに適用した。しかしながら、4℃のリン酸ナトリウム緩衝液(pH=7.2)中でのウイルスの反応性に対するウイルスの不安定性が、さらなる進展において大きな懸念であった。また、GH−BaMV16は、サイズが非常に大きいため、MALDI−TOF解析による検出が制限された。
【0107】
合成Globo Hおよび切断フラグメント(図1)は、還元末端にペンチルアミンリンカーで結合し、NHSがコートされたスライドガラス上に共有結合で固定された。11個のオリゴ糖の9個が、マイクロアレイ上にプリントされるように選択された。それぞれのマイクロアレイスライドに、9個のGlobo Hアナログ(SSEA−4、GH、Gb5、Gb4、Gb3、Gb2、BB4、BB3、およびBB2)50μMをそれぞれ12個ずつスポットした。
【0108】
マイクロアレイ上の炭化水素を検証するために、マウスモノクローナル抗体(GloboH用のVK9およびMbrl、並びに抗SSEA−3)を用いて、それぞれの二次抗体(ヤギ抗−マウスIgGおよびIgM)を特異的結合の試験に用い、その結果を図2A〜2Cに示す。前記データは、VK9およびMbrlの両方がGlobo Hおよび4糖類であるBB4の外面を認識し、MBrlは、MM3もわずかに認識したことを示唆している。また、抗SSEA−3抗体は、交差反応を起こすことなく、特異的にSSEA−3抗原(Gb5)を認識した。前記結果から、Globo Hマイクロアレイは、免疫付与されたマウスから得られるポリクローナル抗体の特異性および効力の分析に利用されうることを示している。
【0109】
すでに報告されているように、合成Globo Hワクチンおよび併用するQS−21を用いたマウスの免疫付与は、ヒト乳癌細胞に対する抗体を産生するが、マウス抗体は、いくつかの増強ワクチン接種の後であっても、主にIgMである(Ragupathi G, et al. (1997) Angew Chem Int Ed 36:125-128)。
【0110】
マウスのグループに、糖脂質アジュバントであるα-GalCer(C1)と共役した、または共役していない合成Globo Hを1μg皮下投与し、免疫付与した。その結果、IgMの誘導に最も有効な免疫原がGH−KLH、GH−DH、およびGH−BV、次いでGH−TT、GH−BSAであること(図3Aに要約される)、並びにα−GalCerがIgM抗体を高いレベルに誘導する免疫応答を刺激できることが分かった。同様の傾向がマウスIgG抗体においても観測され(図3B)、IgGレベルはIgMレベルよりも相対的に高かった。簡潔にいうと、合成複合糖質の炭化水素の密度がより低いにもかかわらず、GH−DTは、GH−KLHと同様の免疫原性を示し、アジュバントであるα−GalCerは、免疫応答の増強を示した。
【0111】
α−GlaCerは、GH−DTに対するアジュバント効果を示したことから、C1よりもアジュバント活性の高い他の糖脂質を試験し、その結果を図4に示した。マウスのグループに、糖脂質を有する、または有さないGH−DTおよびGH−BVを用いて免疫付与した。血清を得て、糖鎖マイクロアレイ解析を行った。一般的に、マウス抗Globo H IgG力価は、免疫付与が進行すると増強するが、IgMレベルは、ワクチン接種の時間にほとんど無関係である(図5)。GH−BVをワクチン接種したグループのうち、糖脂質−ワクチン処理およびワクチンの単独処理の間で、IgMレベルに有意な差はなかった。前記結果は、糖脂質と一緒に用いたGH−BVは有効な免疫療法ではないことを示唆するが、弱い免疫原性は、BaMVが不安定であるという特徴によるものである可能性がある。それにもかかわらず、α−GalCerアナログ、特に7DW8−5は、GH−DTとうまく協力して、マウスの免疫応答を誘導した。
【0112】
興味深いことに、マウスポリクローナルIgG抗体は、GH−DTおよび様々な糖脂質アジュバントによって産生され、Globo Hを中和するだけでなく、Gb5、SSEA−4、およびGb4と交差反応し、C34は最も有効な糖脂質アジュバントであった(図6)。IgMよりも力価がより高いIgGを誘導しうる新規ワクチン組成物を探索するために、Globo H−DT複合体および糖脂質C1もしくはC34、市販のAlPO4(リン酸アルミニウム)、またはMF59を試験した。
【0113】
驚くべきことに、糖脂質C34を含むGlobo H−DTは、3回のワクチン投与後にほとんど独占的にIgG抗体を誘導する(図7)。要約すると、GH−DT複合体と組み合わせた新規糖脂質アジュバント7DW8−5は、抗Globo HのIgGおよびIgMの両方を増強することができ、GH−DTと組み合わせた糖脂質アジュバントC34は、IgMよりも抗体力価が高いIgGを誘導しうる。これらは、Gb5抗原およびSSEA−4抗原に対して異なる結合親和性を示し、ともに乳癌幹細胞の表面に発現する。
【0114】
Globo Hワクチンにおける異なる糖脂質アジュバントの効果をさらに比較するために、GH−KLHを有する7つのマウスのグループに免疫付与した。この結果、糖脂質
を含むマウスワクチンが、抗Globo H抗体を高いレベルで誘導することを示唆した(図8)。MF59は、強力なアジュバントであるが、GH−KLHとは協力せずに、Globo Hに対する抗体を誘導した。AlPO4(リン酸アルミニウム)はまた、抗体の誘導に対して明らかな影響は示さなかった。一方、C34とともに用いたGH−KLHは、1回目および2回目ワクチン接種後において、優れた免疫原性を示したが、3回目ワクチン接種後は、C1と有意な差は見られなかった。全体として、これらの知見は、炭化水素ワクチンに対するアジュバントとして、新規な糖脂質誘導体の可能性を示唆するものである。
【0115】
細胞性および液性免疫応答の性質は、抗原および抗体の組み合わせだけでなく、キャリアおよび免疫付与の経路によって影響される。Sesardicおよび共同研究者が述べているように、毒性作用がない毒素変異体であるDT−CRM197が、抗原特異的T細胞増殖を誘導し、IL−2、INF−γ、およびIL−6の脾細胞による産生を高めることが、Th1を駆動する経路における役割であることを示唆している(Miyaji EN et al. (2001) Infect Immun 69:869-874; Godefroy S, et al. (2005) Infect Immun 73:4803-4809; Stickings P, et al. (2008) Infect Immun 76:1766-1773.)。サイトカインの特徴が主にTh1であるという事実にもかかわらず、抗CRM197抗体のサブクラスは、IgG1であり、Th1/Th2の混合応答を示すIgG2aを検出できない。これらの結果は、Globo Hワクチンの抗体アイソタイプの特性の評価を促進し、本研究が、糖脂質アジュバントと組み合わせたGH−DTまたはGH−KLHが、微量のIgG2aとともに、主としてIgG1抗体を誘導することを示した(図9)。
【0116】
糖脂質アジュバントを単独で静脈投与(i.v.)した場合、Th1バイアスのサイトカイン分泌を増強するという事実にもかかわらず、抗体のクラススイッチ(IgG2a)は観測されなかった。全体として、糖脂質は、細胞性および液性免疫応答を増強するという極めて重要な役割がある。
【0117】
Globo H、SSEA−3、およびSSEA−4がんワクチン
DTと共役したSSEA−3(Gb5)およびSSEA−4を合成し、試験した。3回目ワクチン接種の後、IgMおよびIgGの抗体力価を比較し、SSEA−3−DTおよびSSEA−4−DTが、IgMよりも高力価のIgGを誘導することを見出した(図10)。
【0118】
GH−DTおよびC34がGlobo H、Gb5、およびSSEA−4を認識する抗体を誘導するため、アジュバントの存在下、SSEA−3−DTおよびSSEA−4−DTワクチンの特異性を、IgGの研究に集中して、24個の糖鎖アレイを用いて試験した(図11)。
【0119】
図12A〜12Cに示すように、Globo HおよびC34アジュバントで免疫付与されたマウスは、高い選択性でGlobo H、Gb5、およびSSEA−4を認識しうる抗体を誘導し、アジュバントMF59を有するSSEA−3−DTワクチンは低い選択性で高い免疫応答を誘導した。一方、アジュバントC34と組み合わせたSSEA−3−DTは、Globo H、SSEA−3、およびSSEA−4に対する抗体のみ誘導した。
【0120】
興味深いことに、アジュバント存在下または非存在下、SSEA−4−DT(シアリル−Gb5)は、SSEA−4およびその切断構造(末端のラクトースが欠失したSSEA−4)を特異的に認識するIgGおよびIgM抗体を誘導した。理論に制約されることなく、シアル酸は免疫原性が高く、特異的免疫応答を高度に誘導すると仮定される。
【0121】
SSEA−3−DT−C34を有するマウスの免疫付与は、Globo H、SSEA−3、およびSSEA−4と反応する抗体を誘導し、Globo Hワクチンが、Globo H、SSEA−3、およびSSEA−4を発現する腫瘍細胞および乳癌幹細胞の標的となりうることが示唆された。
【0122】
Globo H−DT−C34を有するマウスの免疫付与は、Globo H、SSEA−3、およびSSEA−4と反応する抗体を誘導し、Globo Hワクチンが、Globo H、SSEA−3、およびSSEA−4を発現する腫瘍細胞および乳癌幹細胞の標的となりうることが示唆された。
【0123】
SSEA−4−DTを有するマウスの免疫付与は、SSEA−4と反応する抗体を誘導し、SSEA−4−DTワクチンが、SSEA−4を発現する腫瘍細胞および乳癌幹細胞の標的となりうることが示唆された。
【0124】
がんワクチンによる腫瘍サイズの縮小
合成複合糖質ワクチンの効果を直接評価するために、図13に示すように、腫瘍サイズを1週間ごとに3回測定した。一般的に、Globo Hを有する乳癌細胞株に4T1を注入した後、腫瘍は2週間成長する。糖脂質アジュバントを有するワクチン接種したすべてのグループは、24日間で、単独のGH−DTおよびPBSのコントロールと比較して、相対的に腫瘍が小さいままであった。前記データは、in vivoにおいて、DH−DTおよび糖脂質アジュバントを有するワクチンは、いくつかの腫瘍進行を遅延させることを示唆している。
【0125】
乳癌およびBCSCにおけるSSEA−3およびSSEA−4の発現
BCSC中のGlobo Hの発現は、非BCSCよりも頻度が少ないが、乳癌およびBCSCにおいて、SSEA−3の発現はGlobo Hの発現よりも頻度が高いことが示された(Chang W-W. et al., (2008) Proc Natl Acad Sci USA105(33):11667-11672、全体が参照により本明細書に組み込まれる。)。
【0126】
乳癌患者35名のSSEA−3またはSSEA−4の発現範囲における臨床的特徴を評価し、表2に示した。平均年齢は48歳であった(31〜82歳である)。これらのうち、1名がステージ0、10名がステージI、19名がステージII、および5名がステージIIIであった。大部分の腫瘍試料は、51.4%のER陽性および67.5%の節転移陽性とともに、浸潤性管癌(80.0%)の病変を有していた。表2において、SSEA−3またはSSEA−4の発現の範囲は、総がん細胞中の陽性細胞の割合で表される。SSEA−3またはSSEA−4発現と関連するHER−2またはリンパ節転移の状態について統計分析が行われた。
HER−2の発現は、免疫組織化学的手法により決定された。腫瘍におけるSSEA−3またはSSEA−4の発現レベルと、ステージ(SSEA−4:P=0.3498;SSEA−3:P=0.9311)またはHER−2(SSEA−4:P=0.0142;SSEA−3:P=0.0128)などの様々な臨床病変の要因との間に有意な相関はなかった(表2)。
【0127】
【表2】
【0128】
酵素消化によって被験者から単離された原発性腫瘍細胞を特異抗体で染色し、はじめにCD45、CD24、CD44、およびCD45+細胞を白血球から除去した。BCSCおよび非BCSC間のSSEA−3またはSSEA−4の発現を比較するために、表面マーカーの発現に基づき、CD45−腫瘍細胞をさらにBCSCおよび非BCSCに分離した。前記BCSCをCD45−/CD24−/CD44+と同定し、CD45−集団は、非BCSCであると推定された。
【0129】
この方法を用いて、BCSCおよび非BCSC中のSSEA−3またはSSEA−4の発現を、35の腫瘍試料で評価した。全体として、SSEA−4は腫瘍の34/35(97.1%)で検出され、SSEA−3は27/35(77.1%)で検出された(表3)。SSEA−4またはSSEA3の発現は、フローサイトメトリーで決定した。BCSCをCD45−CD24−CD44+細胞として定義し、非BCSCをCD45−細胞の残存集団として定義した。範囲は、総細胞中の陽性細胞の割合で計算した。
【0130】
表3を要約すると、27/35(77.1%)のSSEA−3を発現したサンプルのうち、陽性の割合は1.4%〜66.4%の範囲であった。腫瘍の27/35から単離された非BCSCは、陽性の割合が24.3%〜70.4%の範囲でSSEA−3を発現した。相対的に、腫瘍の35のうち25のBCSC(65.7%)が、陽性の割合が5.0%〜58.4%の範囲でSSEA−3染色は陽性であった。
【0131】
SSEA−4を発現した34/35(97.1%)のサンプルのうち、陽性細胞の割合は0.5%〜77.1%の範囲であった。SSEA−4を発現した腫瘍の32/35から単離された非BCSCは、陽性細胞の割合が24.0%〜78.1%の範囲であった。一方、SSEA−4の染色が陽性であった腫瘍の35のうち31のBCSC(88.6%)は、陽性細胞の割合が5.6%〜83.6%の範囲であった。
【0132】
【表3】
【0133】
BCSCにおけるSSEA−4の発現
BCSCおよび非BCSC間のSSEA−4の発現を比較するために、表面マーカーの発現に基づき、CD45−腫瘍細胞をさらにBCSCおよび非BCSCに分離した。前記BCSCをCD45−/CD24−/CD44+と同定し、残りのCD45−集団は、非BCSCであると推定された。図15に示すように、これら2つの各集団内のSSEA−4の発現は、腫瘍サンプル間で変化した。例えば、患者BC0264の腫瘍細胞から単離された総数の5.7%の割合を占めたBCSCは、SSEA−4に対して陰性であったが、60.3%の割合を占めた非BCSCは、SSEA−4を発現した。患者BC0266については、SSEA−4の発現は、非BCSCの59.4%,BCSCの55.7%で観測された。BC0313については、SSEA−4の発現は、非BCSCの32.4%,BCSCの83.6%で観測された。全体として、SSEA−4は、試験サンプルの34/35(97.1%)、その陽性細胞の割合は0.5〜77.1%の範囲で観測された(表32)。
【0134】
正常細胞におけるSSEA−3およびSSEA−4の発現
組織マイクロアレイを用いて、SSEA−4の発現について、異なる20の臓器を免疫組織化学的染色により解析し、結果を表4に示す(E,上皮組織;C,結合組織)。
【0135】
【表4】
【0136】
SSEA−4は、乳房、大腸、消化管、腎、肺、卵巣、膵臓、大腸、胃、前立腺、胸腺、および子宮頸部などの、いくつかの腺組織の上皮細胞上で発現した(表4)。また、図16に示すように、Globo HおよびSSEA−3と同様の方法により(Chang W-W. et al., (2008) Proc Natl Acad Sci USA105(33):11667-11672)、SSEA−4の発現を、主として本質的に免疫応答に関与しない血清または上皮細胞の頂端表面に制限させた。
【0137】
比較すると、Globo Hは、乳房、消化管、膵臓、前立腺、および子宮頸部などのいくつかの腺組織の上皮細胞上で発現した。SSEA−3の分布は、正常乳房組織には存在せず、Globo H陰性であった腎、直腸、精巣、および胸腺に存在したことを除き、Globo Hと同様であった(Chang W-W. et al., (2008) Proc Natl Acad Sci USA105(33):11667-11672)。
【実施例】
【0138】
下記実施例は、本発明に係る好ましい実施形態の実施を含む。当業者にとっては当然のことであるが、本発明の実施において、以下の代表的な技術である実施例で十分に開示された技術は、発明者によって見出され、その実施に好ましい方法で構成されると考えられうる。しかしながら、当業者は、本開示を考慮すると、本発明の思想および技術的範囲を逸脱することなく、開示された特定の実施例において、多くの変形が構成され、類似または同様の結果が得られうる。
【0139】
一般的方法、物質、器具類
原料
市販の溶媒および試薬は、さらに精製することなくそのまま使用し、Sigma-Aldrich社、Acros社、Merck社、Echo chemical社、およびSenn Chemical社から購入した。モノクローナル抗体Mbr1はALEXIS biochemicals社、Cy3共役抗マウスIgG(IgG、IgG1、およびIgG2a)およびIgM抗体はJackson Immuno Research社から購入した。DT−RCM197タンパク質および破傷風トキソイドは、それぞれMerck社およびAdimmune社から購入した。リン酸アルミニウムゲルアジュバント(AlPO4)はBrenntag Biosector社から購入した。破傷風ウイルスおよびVK9モノクローナル抗体は、それぞれLin博士およびYu博士の研究室で調製された。糖脂質誘導体は、合成およびWong博士の研究室から提供された。
【0140】
一般的方法
グリコシル化に用いられるモレキュラーシーブス(MS, AW-300)は、粉砕して使用前に活性化した。反応は、分析用のTLCプレート(PLCシリカゲル-60, F254, 2mm, Merck社)で観測し、UV(254nm)またはp−アニスアルデヒドで視覚化させた。フラッシュカラムクロマトグラフィはシリカゲル(40-63μm)またはLiChroprep RP18(40-63μm)で行った。透析膜(セルロースエステル,MCCO=10,000)は、使用前にH2Oで洗浄した。
【0141】
器具類
プロトン核磁器共鳴(1H NMR)スペクトル、炭素核磁器共鳴(13H NMR)スペクトルは、Bruker Adbance 600 (600 MHz/150 MHz)NMR分光装置で測定した。プロトンの化学シフトは、ppmで示し、テトラメチルシラン(δ=0)を基準とした。カーボンの化学シフトも100万分の1(ppm,δスケール)で示した。DEPT135(Distortion-less enhancement by polarization transfer)を用いて多重度を決定した。データを下記のように表す:化学シフト、多重度(s=1重項、d=2重項、t=3重項、q=4重項、m=多重項、br=ブロード)、積分値、およびHzの結合定数(J)。高分解能質量スペクトルはBioTOF IIIにより、MALDI-TOF MSはUltraflex II TOF/TOF200により測定された。
【0142】
実施例1:異なるキャリアタンパク質と共役したGlobo Hの合成
Globo H(1;図11を参照)およびそのフラグメント2−10は、プログラムで制御したワンポット戦略により合成した(Huang C-Y, et al. (2006) Proc Natl Acad Sci USA 103:15-20.)。1の反応は、無水DMF中、室温で効率的同種二官能性リンカーを用いて行われた(Wu X, et al. (2004) Org Lett 6:4407-4410; Wu X, Bundle DR (2005) J Org Chem 70:7381-7388.)。前記反応は容易にTLCで観測された。より大きいRf値の生成物が生成し、遊離アミンが消失した時点で反応混合物を濃縮してDMFを留去し、ジクロロメタンおよび水で洗浄して過剰量のリンカーを除去した。最後に、精製物を逆相(C18)カラムクロマトグラフィで精製し、1%の酢酸を含む水から含水40%メタノールへと変更し、徐々に溶出させた。前記溶液を、凍結乾燥して淡黄色の生成物12を得た。最終的に、タンパク質と共役するために、前記精製Globo Hハーフエステル12(30-40 equiv)を個別のキャリアタンパク質とリン酸緩衝液(10mM,pH7.2)中、室温で24時間インキュベートした(図14)。重要なことは、リジン残基とGlobo Hハーフエステルとのカップリングを最大化するために、タンパク質の濃度を〜5mg/mLに調節しなければならないことである。24時間後、複合糖質を希釈し、脱イオン水で透析して残ったp−ニトロフェニル基を除去した。次いで、前記溶液を凍結乾燥して白色粉末13、14、および15を得た。
【0143】
前記Globo H−タンパク質共役体は、MALDI-TOF解析により各キャリアタンパク質上のGlobo Hの数を決定した。前記組み込まれたGlobo Hの数の平均値を上記の表1に記載されている。
【0144】
前記複合糖質13、14、および15をddH2Oに溶解し、最終濃度を約1pmol/μLとした。シナピン酸をマトリックスとして選択し、新たに調製したアセトニトリルおよび脱イオン水(1:1 v/v)と混合して、0.1%のTFAを含む10mg/mLの濃度の最終マトリックスを調製した。各サンプルを線形の正イオンモードで検出し、m/zスペクトルを得た。各複合糖質の分子量は、m/zで決定した。複合糖質14は、不均一性を示し、平均組み込みが2〜4を示した。GH−KLH共役体は、主により大きいサイズおよびKLHのより多いLys残基のため、Globo Hの組み込みの最大値を示した。p−ニトロフェニルリンカーを用いた同様のカップリング処理を、ウイルス膜に100,000以上のリジン残基を含む破傷風モザイクウイルスに適用した。しかしながら、4℃のリン酸ナトリウム緩衝液(pH=7.2)中でのウイルスの反応性に対するウイルスの不安定性が、さらなる進展において大きな懸念であった。また、GH−BaMV16は、サイズが非常に大きいため、MALDI-TOF解析による検出が制限された。最終的に、凍結乾燥した複合糖質は、−30℃で保存され、免疫付与前に滅菌水につけてもどされた。
【0145】
実施例2:糖鎖マイクロアレイの製造および検証
合成Globo Hおよび切断フラグメント(図1)は、還元末端にペンチルアミンリンカーで結合し、NHSがコートされたスライドガラス上に共有結合で固定された。11個のオリゴ糖の9個が、マイクロアレイ上にプリントされるように選択された。一連のオリゴ糖の濃度(1, 5, 10, 20, 40, 50, 80, 100 μM)で結合親和性および蛍光強度を最適化するための試験を行った。それぞれのマイクロアレイスライドに、9個のGlobo Hアナログ(SSEA-4、GH、Gb5、Gb4、Gb3、Gb2、BB4、BB3、およびBB2)50μMをそれぞれ12個ずつスポットした。湿度80%における反応後、使用前に前記スライドをデシケータ中、室温で保存した。
【0146】
マイクロアレイ上の炭化水素を検証するために、マウスモノクローナル抗体(Globo H用のVK9およびMbrl、並びに抗SSEA−3)を用いて、それぞれの二次抗体(ヤギ抗マウスIgGおよびIgM)を特異的結合の試験に用い、その結果を図2A〜2Cに示す。前記データは、VK9およびMbrlの両方がGlobo Hおよび4糖類であるBB4の外面を認識し、MBrlは、MM3もわずかに認識したことを示唆している(Gilewski T el al. (2001) Proc Natl Acad Sci USA 98:3270-3275; Huang C-Y, et al. (2006) Proc Natl Acad Sci USA103:15-20.)。また、抗SSEA−3抗体は、交差反応を起こすことなく、特異的にSSEA−3抗原(Gb5)を認識した。前記結果から、Globo Hマイクロアレイは、免疫付与されたマウスから得られるポリクローナル抗体の特異性および効力の分析に利用されうることを示している。
【0147】
実施例3:マウスへの免疫付与
本実験において、マウスのグループに、糖脂質アジュバントであるα-GalCer(C1)と共役した、または共役していない合成Globo Hを1μg皮下投与し、免疫付与した。1週間ごとに3度のワクチン接種をした10日後、マウス血清を収集し、次いで、抗体レベルを評価するために糖鎖マイクロアレイに導入した。図3Aに要約されるように、IgMの誘導に最も有効な免疫原が、GH−KLH、GH−DH、およびGH−BV、次いでGH−TT、GH−BSAであり、α−GalCerは、IgM抗体を高いレベルに誘導する免疫応答を刺激できることが分かった。同様の傾向がマウスIgG抗体においても観測され(図3B)、IgGレベルはIgMレベルよりも相対的に高かった。簡潔にいうと、合成複合糖質の炭化水素の密度がより低いにもかかわらず、GH−DTは、GH−KLHと同様の免疫原性を示し、アジュバントであるα−GalCerは、免疫応答の増強を示した。
【0148】
α−GlaCerは、GH−DTに対するアジュバント効果を示したことから、C1よりもアジュバント活性の高い他の糖脂質を試験し、その結果を図4に示した(Fujio M, et al. (2006) J Am Chem Soc 128:9022-9023.)。
【0149】
マウスのグループに、2μgの糖脂質を有する、または有さないGH−DTおよびGH−BV1.6μgを筋肉注射で1週間に2回免疫付与した。3回ワクチン接種をした2週間に血清を得て、糖鎖マイクロアレイ解析に導入した。一般的に、マウス抗Globo H IgG力価は、免疫付与が進行すると増強するが、IgMレベルは、ワクチン接種の時間にほとんど無関係である(図5)。GH−BVをワクチン接種したグループのうち、糖脂質−ワクチン処理およびワクチンの単独処理の間で、IgMレベルに有意な差はなかった。前記結果は、糖脂質と一緒に用いたGH−BVは有効な免疫療法ではないことを示唆するが、弱い免疫原性は、BaMVが不安定であるという特徴によるものである可能性がある。それにもかかわらず、α−GalCerアナログ、特に7DW8−5は、GH−DTとうまく協力して、マウスの免疫応答を誘導した。
【0150】
興味深いことに、マウスポリクローナルIgG抗体は、GH−DTおよび様々な糖脂質アジュバントによって産生され、Globo Hを中和するだけでなく、Gb5、SSEA−4、およびGb4と交差反応し、C34は最も有効な糖脂質アジュバントであった(図6)。IgMよりも力価がより高いIgGを誘導しうる新規ワクチン組成物を探索するために、Globo H−DT複合体および糖脂質C1もしくはC34、市販のAlPO4(リン酸アルミニウム)、またはMF59を試験した。驚くべきことに、糖脂質C34を含むGlobo H−DTは、3回のワクチン投与後にほとんど独占的にIgG抗体を誘導しうる(図7)。要約すると、GH−DT複合体と組み合わせた新規糖脂質アジュバント7DW8−5は、抗Globo HのIgGおよびIgMの両方を増強することができ、GH−DTと組み合わせた糖脂質アジュバントC34は、IgMよりも抗体力価が高いIgGを誘導しうる。これらは、これらは、Gb5抗原およびSSEA−4抗原に対して異なる結合親和性を示し、ともに乳癌幹細胞の表面に発現する。
【0151】
Globo Hワクチンにおける異なる糖脂質アジュバントの効果をさらに比較するために、GH−KLHを有する7つのマウスのグループに免疫付与した。この結果、糖脂質
を含むマウスワクチンが、抗Globo H抗体を高いレベルで誘導することを示唆した(図8)。MF59は、強力なアジュバントであるが、GH−KLHとは協力せずに、Globo Hに対する抗体を誘導した。AlPO4(リン酸アルミニウム)はまた、抗体の誘導に対して明らかな影響は示さなかった。一方、C34とともに用いたGH−KLHは、1回目および2回目ワクチン接種後において、優れた免疫原性を示したが、3回目ワクチン接種後は、C1と有意な差は見られなかった。
【0152】
毒性作用がない毒素変異体であるDT−CRM197が、抗原特異的T細胞増殖を誘導し、IL−2、INF−γ、およびIL−6の脾細胞による産生を高めることが、Th1を駆動する経路における役割であることを示唆している(Miyaji EN et al. (2001) Infect Immun 69:869-874; Godefroy S, et al. (2005) Infect Immun 73:4803-4809; Stickings P, et al. (2008) Infect Immun 76:1766-1773.)。サイトカインの特徴が主にTh1であるという事実にもかかわらず、抗CRM197抗体のサブクラスは、IgG1であり、Th1/Th2の混合応答を示すIgG2aを検出できない。これらの結果は、Globo Hワクチンの抗体アイソタイプの特性の評価を促進し、本研究が、糖脂質アジュバントと組み合わせたGH−DTまたはGH−KLHが、微量のIgG2aとともに、主としてIgG1抗体を誘導することを示した(図9)。
【0153】
糖脂質アジュバントを単独で静脈投与(i.v.)した場合、Th1バイアスのサイトカイン分泌を増強するという事実にもかかわらず、抗体のクラススイッチ(IgG2a)は観測されなかった。全体として、糖脂質は、細胞性および液性免疫応答を増強するという極めて重要な役割がある。
【0154】
DTと共役したGb5およびSSEA−4を同様の戦略により合成した。3回目ワクチン接種の後、IgMおよびIgGの抗体力価を比較し、Gb5−DTおよびSSEA−4−DTが、IgMよりも高力価のIgGを誘導することを見出した(図10)。
【0155】
実施例4:異なるワクチン組成物によって誘導される抗体の特異性研究
GH−DTおよびC34がGlobo H、Gb5(SSEA-3)、およびSSEA−4を認識する抗体を誘導したことから、次に、アジュバントの存在下、IgGの研究に集中して、SSEA−3−DTおよびSSEA−4−DTワクチンの特異性を24個の糖鎖アレイを用いて試験した(図11)。
【0156】
図12A〜12Cに示すように、Globo H−DTおよびC34アジュバントで免疫付与されたマウスは、高い選択性でGlobo H、Gb5、およびSSEA−4を認識しうる抗体を誘導し、アジュバントMF59を有するSSEA−3−DTワクチンは低い選択性で高い免疫応答を誘導した。一方、アジュバントC34と組み合わせたSSEA−3−DTは、Globo H、SSEA−3、およびSSEA−4に対する抗体のみ誘導した。
【0157】
興味深いことに、アジュバント存在下または非存在下、SSEA−4−DTは、SSEA−4およびその切断構造(末端のラクトースが欠失したSSEA−4)を特異的に認識するIgGおよびIgM抗体を誘導した。しかしながら、前記選択性の原因は明らかではない。
【0158】
合成複合糖質ワクチンの効果を直接評価するために、図13に示すように、腫瘍サイズを1週間ごとに3度測定した。一般的に、Globo Hを有する乳癌細胞株に4T1を注入した後、腫瘍は2週間成長する。糖脂質アジュバントを有するワクチン接種したすべてのグループは、24日間で、単独のGH−DTおよびPBSのコントロールと比較して、相対的に腫瘍が小さいままであった。前記予備データは、in vivoにおいて、DH−DTおよび糖脂質アジュバントを有するワクチンは、いくつかの腫瘍進行を遅延させることを示唆している。
【0159】
実施例5:Globo Hハーフエステルの調製
Globo Hハーフエステルは以下のように調製した:
【0160】
【化3】
【0161】
Globo Hアミン1(5.5 mg, 4.54 μmol)を無水DMF溶液に溶解し、次いでp−ニトロエステルリンカー(8.8 mg, 22.7 μmol)を添加して室温で1〜3時間撹拌した。反応は、TLC(1%酢酸のメタノール溶液)およびニンヒドリン試験で観測した。より大きいRf値を有する生成物の生成および遊離アミンの消失が反応の完結を示す。反応混合物を減圧下、加熱せずに濃縮してDMFを留去し、次いでCH2Cl2および1%の酢酸を含む水で2度抽出した。前記水溶液を濃縮し、逆相(C18)カラムクロマトグラフィで精製し、1%の酢酸を含む水からMeOH:H2O=4:6へと変更し、徐々に溶出させた。次に溶液を凍結乾燥して淡黄色固体の生成物12(5.4 mg, 収率88%)を得た。1H NMR (600 MHz, D2O) δ 8.25 (d, 2H, J = 9.0 Hz), 7.28 (d, 2H, J = 9.0 Hz), 5.12 (d, 1H, J = 3.9 Hz), 4.79 (d, 1H, J = 3.7 Hz), 4.51 (d, 1H, J = 7.7 Hz), 4.44 (d, 1H, J = 7.7 Hz), 4.39 (d, 1H, J = 7.7 Hz), 4.31-4.28 (t, 2H, J = 7.7 Hz), 4.15-4.1 1 (m, 2H), 3.99 (d, 1H, J = 2.0 Hz), 3.92 (d, 1H, J = 2.8 Hz), 3.89-3.44 (m, 33H), 3.16 (t, 1H, J = 8.6 Hz), 3.10 (t, 2H, J = 6.7 Hz), 2.62 (t, 2H, J = 6.9 Hz), 2.20 (t, 2H, J = 6.6 Hz), 1.93 (s, 3H), 1.62-1.49 (m, 4H) 1.54- 1.48 (m, 2H), 1.45-1.40 (m, 2H), 1.30-1.24 (m, 2H), 1.11 (d, 3H, J = 6.5 Hz) 13C NMR (150 MHz, D2O ) δ 178.0, 176.1, 176.0, 156.9, 147.1, 127.3, 124.5, 105.7, 105.0, 103.7, 103.6, 102.2, 101.0, 80.5, 80.0, 78.9, 78.0, 77.8, 77.1, 76.7, 76.4, 76.3, 76.2, 75.2, 74.6, 73.8, 73.5, 72.5, 72.1, 71.8, 71.2, 70.9, 70.8, 70.1, 69.7, 69.5, 68.5, 62.6, 62.6, 62.0, 62.0, 61.7, 53.3, 40.8, 37.1, 35.0, 30.0, 29.7, 26.4, 25.0, 24.1, 23.9, 17.0 HRMS: C55H87N3O35Na [M+Na]+ 計算値: 1372.5018; 実測値: 1372.5016.
実施例6:複合糖質を生産させる基本手順
複合糖質は以下のように調製した:
【0162】
【化4】
【0163】
BSA、DT−CRM197、および破傷風トキソイド(Adimmune社、台湾)をpH7.2の100mMリン酸緩衝液に溶解し、30〜40当量のGlobo Hハーフエステル35を添加した。次に、前記混合物を脱イオン水で希釈し、脱イオン水を5回取り換ながら透析した。前記溶液を凍結乾燥して白色粉末とした。得られたGlobo H−タンパク質共役体を、MALDI-TOF解析で特性評価し、炭化水素組み込み率を決定した。41(GH-BSA)はMALDI-TOFで76029に観測され、42(GH-DT-CRM197)は162902に観測され、44(GH-BaMV)は決定されなかった。
【0164】
実施例7:複合糖質のMALDI−TOF MS解析
複合糖質41、42、43、および一次キャリアタンパク質をddH2O(〜1 μg/μl)でもどした。マトリックスであるシナピン酸を、アセトニトリルおよび脱イオン水1:1で新たに調製し、最終マトリックスを0.1%のTFAを含む10mg/mLの濃度とした。徐々にロードし、マトリックスおよび複合糖質を混合して、プレートを乾燥させた。測定前にウシ血清アルブミンを用いた検定は厳密であった。各複合糖質および一次タンパク質サンプルを線形の正イオンモードで検出した。平均分子量は、キャリアタンパク質上の炭化水素の組み込みの平均値で計算した。
【0165】
実施例8:糖鎖マイクロアレイの製造
96ウェルからNHSでコートされたスライドガラスに、様々な濃度のプリント緩衝液(0.005%のTween20を含む300mMリン酸緩衝液、pH8.5)においてアミン含有糖鎖の〜0.7μLの沈殿物を、ロボットピン(SMP3、TeleChem International社、米国)でマイクロアレイにプリントした(BioDot、Cartesian Technologies社、米国)。それぞれのマイクロアレイスライドに、9個のGlobo Hアナログ(SSEA-4、GH、Gb5、Gb4、Gb3、Gb2、BB4、BB3、およびBB2)50μMをそれぞれ12個ずつスポットした。プリントしたスライドを湿度80%で1時間反応させ、次いで、終夜乾燥した。これらのスライドは、使用まで、デシケータ中室温で保存した。
【0166】
実施例9:血清学的アッセイ(糖鎖マイクロアレイ)
マウス血清を予備のスクリーニングとして、0.05%Tween20を含む3%BSA/PBS緩衝液(pH7.4)で1:60に希釈した。糖鎖マイクロアレイを50mMエタノールアミンで1時間ブロックし、使用前にddH2OおよびPBS緩衝液で2回洗浄した。前記血清希釈液は、次にGlobo Hマイクロアレイに導入し、室温で1時間インキュベートした。マイクロアレイスライドを、それぞれPBST(0.05%Tween20のPBS緩衝液)およびPBS緩衝液でさらに3回洗浄した。次に、Cy3−affiniPureウシ抗マウスIgG(H+L)、IgG1、IgG2a、または抗マウスIgMをマイクロアレイスライドに添加し、密封して1時間インキュベートした。最後に、前記スライドをPBST、PBS、およびddH2Oで順に3回洗浄したマイクロアレイスライドを乾燥させ、マイクロアレイ蛍光チップリーダー(Genepix 4000B)を用いて、532nmで解析した。データをソフトウェアGenePix Pro 6.0(Axon Instruments、米国、カリフォルニア州、ユニオンシティー)で解析した。正確な測定を行うため、PMTゲインを蛍光の飽和を回避する400nmに調節した。部分的なバックグラウンドは、各糖鎖スポットのシグナルから差し引いた。明らかな欠陥または検出できないスポットは省略した。極大蛍光強度は、複数のスポットから「F532nm-B532nmの平均値」の平均と定義した。
【0167】
実施例10:血清学的アッセイ(酵素結合免疫吸着法)
炭酸重炭酸緩衝液(pH 10)100μlのGlobo Hセラミド0.2μgを96ウェルプレート(NUNC)に4℃で終夜コートした。PBSで洗浄し、3%ウシ血清アルブミンを用いて、室温で30分間ブロックした。マウス血清の連続希釈液を各ウェルに添加し、室温で1時間インキュベートし、次いでDPBST(ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水、0.05% Tween20)で洗浄した。ヤギ抗マウスIgG−AP(1:200、Southern Biotech社、米国)を添加し、室温で45分間インキュベートした。プレートをPBSTで5回洗浄し、次いでアルカリリン酸基質であるp−二トロフェニルリン酸(Sigma社)とともに37℃で8時間インキュベートした。インキュベート後、3M NaOH溶液を添加して反応を停止させ、405nmでELISAリーダー(SpectraMax、Molecular Devices社)上のプレートを読み取った。力価は、0.1より大きい光学密度が得られる最大の希釈度と定義した。
【0168】
実施例11:用量および免疫付与
(1)3つのマウスのグループ(生後6週間のメスC57BL/6マウス、BioLASCO社、台湾)の腹部に、糖脂質であるC1または7DW8−5を含む、または含まないGH−KLH(Optimer社)、GH−BSA、GH−TT、GH−CRM197、およびGH−BaMVを、1週間の間隔で3回皮下投与した。各ワクチン接種には、1μgのGlobo Hを含み、2μgの糖脂質アジュバントを含む、または含まなかった。コントロールのマウスにはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)のみを投与した。最初の免疫付与前(pre-immune)および3回目ワクチン接種の10日後にマウスを採血した。(2)3つのマウスのグループ(生後8週間のメスBalb/cマウス、BioLASCO社、台湾)に、C1、C23、または7DW8−5をそれぞれ含む、または含まないGH−BaMVまたはGH−CRM197を2週間の間隔で3回筋肉投与した。各ワクチン接種には、1μgのGlobo Hを含み、2μgの糖脂質アジュバントを含む、または含まなかった。コントロールのマウスにはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)のみを投与した。免疫付与前および各ワクチン接種の2週間後にマウスを採血した。(3)3つのマウスのグループ(生後8週間のメスBalb/cマウス、BioLASCO社、台湾)に、C1、C17、7DW8−5、C30、AlPO4、MF59(1:1混合物)を含む、または含まないGH−CRM197またはGH−KLHを、(2)に示すように免疫付与した。4000gで10分間遠心分離して全血清を得た。血清学的反応を、糖鎖マイクロアレイまたは先のELISAアッセイと比較することによって解析した。
【0169】
実施例12:異種移植モデル
(1)免疫付与されたメスBalb/cマウス(PBS、GH-CRM197単独またはC1、C23、および7DW8-5をそれぞれ含む)の5つのグループに、2×105の転移性マウス乳癌細胞株である4T1(無菌PBS中)を、最終ワクチン接種した8週間後に皮下注射した。(2)免疫付与されたメスBalb/cマウス(GH-KLH単独またはC1、C17、8-5、C30、AlPO4、およびMF59をそれぞれ含む)の7つのグループに、2×105の転移性マウス乳癌細胞株である4T1(無菌PBS中)を、最終ワクチン接種した6週間後に皮下注射した。腫瘍異種移植の前後におけるマウス抗Globo H血清をモニターした。マウス腫瘍サイズは、ノギスで1週間ごとに3回測定し、(長さ×高さ×幅)/2(mm3)として定義した。
【0170】
実施例13:ヒト乳癌検体からの原発性腫瘍細胞の単離
ヒト乳癌検体は、Tri-Service General Hospital(台北、台湾)で最初の手術を受けた患者から得た。サンプルは、患者の秘密保護のため完全に暗号化し、台湾、台北のアカデミア シニカのヒトを対象とした研究の倫理審査委員会の治験審査委員会によって承認されたプロトコルが用いられた。腫瘍検体は、1mmの四角形のフラグメントにスライスし、コラゲナーゼ(1,000 U/ml)、ヒアルロニダーゼ(300 U/ml)およびDNase I(100 μg/ml)を含むRPMI1640倍地に37℃で2時間インキュベートすることによって酵素消化した。原発性乳房腫瘍細胞は、100−μmのcell strainer(BD Biosciences社)を通してろ過して収集し、5%FBS添加RPMI1640倍地に再懸濁させた。
【0171】
実施例14:フローサイトメトリー解析
原発性乳癌細胞を、2%FBSおよび0.1%NaN3含有PBSの50μl中に1×105の細胞として調製した。抗CD24−PE、抗CD44−APC、および抗CD45−PerCP−Cy5.5抗体混合物(各1μl)で細胞を標識した。Alexa488と共役したモノクローナル抗Globo H抗体(VK-9)で染色してGlobo Hの発現を検出した。FACSCantoフローサイトメーター(Becton Dickinson社)で解析を行った。BCSCは、CD45−/CD24−/CD44+細胞として定義し、非BCSCは、その他のCD45−細胞集団として定義した。Globo Hの発現は、さらにゲート部位で解析された。
【0172】
実施例15:細胞選別
マウスにおけるヒト乳癌腫瘍移植片から採取された細胞は、抗CD24−PE、抗CD44−APC、および抗H2Kd−FITC抗体混合物(BD Biosciences社)で染色した。抗体で標識された細胞の蛍光活性の選別は、FACSAria cell sorter(Becton Dickinson社)で行われた。H2Kd−/CD24−/CD44+細胞はBCSCと分類され、その他のH2Kd−細胞は非BCSCと分類された。BCSCおよび非BCSCの標準的な純度は、それぞれ>85%および>90%であった。
【0173】
実施例16:免疫組織化学
正常細胞におけるSSEA−4発現については、5の個体から提供される異なる20の臓器を含む、組織マイクロアレイスライド(Biomax社)が用いられた。スライドは、標準的免疫組織学的手順に従い、56℃で終夜乾燥させ、キシレン中で脱ろうさせ、および再水和し、次いでpH9.0のAR-10(BioGenex Laboratories社)で抗原検索を行った。SSEA−4の発現は、抗SSEA−4抗体(eBioscience社)を使用することにより決定した。二次抗体として抗ラットIgMを用いた染色によりSSEA−4を検出し、DAB基質によって発展させた。スライドをヘマトキシリンで対比染色した。原発性乳房腫瘍BCO145およびNOD/SCIDマウスからの腫瘍異種移植片を10%リン酸緩衝ホルマリンで固定し、パラフィンに埋め込んだ。パラフィン切片を2μMの厚さにカットし、SuperFrost Plus顕微鏡スライド(Menzel-Glaser社)上にマウントし、および55℃で終夜乾燥した。前記切片を、標準的な免疫組織学的手順に従い、キシレンで脱ろうおよび再水和し、次いでヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色した。免疫染色の前に、スライドをはじめ10mmol/Lクエン酸緩衝溶液(pH6.0)中に入れ、15分間マイクロウェーブをかけた。前記スライドを次に、抗ER抗体、または抗PR抗体とともに終夜インキュベートした。Super Sensitive Polymer-HRP IHC Detection System(BioGenex社)を用いて、免疫検出を行った。
【0174】
本明細書中に引用されるすべての刊行物および特許出願は、それぞれ個別の刊行物または特許出願が具体的に、および単独に参照により引用されるように表示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0175】
上述の発明は、理解を明瞭にする目的で、例示および実施例によりいくつか詳細に記載されているが、特定の変更および修飾が添付の特許請求の範囲の思想および技術的範囲に逸脱しない範囲で構成されうることが、本発明の教示から当業者には明らかである。
【0176】
要約書は、読者に迅速な技術開示の本質および趣旨の理解を与えるため、37 C. F. R §1.72 (b)に従い、提供される。前記要約書は、特許請求項の技術的範囲または意義を解釈または制限するために用いられるものではないことを理解して、提出されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)Globo Hまたはその免疫原性フラグメントから本質的に構成され、リンカーを通じてキャリアタンパク質と共役する糖鎖;および
(b)樹状細胞上のCD1d分子と結合できる糖脂質を含むアジュバント、
を含む、免疫原性組成物であって、IgMアイソタイプ抗体と比較して、IgGアイソタイプ抗体を相対的に高いレベルで誘導する免疫応答を誘導する、免疫原性組成物。
【請求項2】
前記キャリアタンパク質が、ジフテリア毒素交差反応物質197(DT−CRM197)である、請求項1に記載の免疫原性組成物、
【請求項3】
前記アジュバントが、α−ガラクトシルセラミド(α−GalCer)の合成アナログである、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項4】
前記アジュバントが下記構造を含むC34である、請求項3に記載の免疫原性組成物。
【化1】
【請求項5】
前記リンカーがp−ニトロフェニルリンカーである、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項6】
前記リンカーがp−ニトロフェニルであり、前記キャリアタンパク質がジフテリア毒素交差反応物質197(DT−CRM197)であり、および前記アジュバントがC34である、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項7】
前記免疫応答が、好ましくはIgGアイソタイプ抗体の産生を目的とする、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項8】
前記キャリアタンパク質がジフテリア毒素交差反応物質197(DT−CRM197)であり、前記アジュバントがC34である、請求項7に記載の免疫原性組成物。
【請求項9】
少なくとも1つのアジュバントが、液性および細胞性免疫応答を誘導できることを含む、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項10】
前記免疫応答によって産生した抗体が、がん細胞またはがん幹細胞で発現する抗原を中和する、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項11】
前記免疫応答によって産生した抗体が、Gb4抗原、胚発生段階特異抗原−3(SSEA−3)、および胚発生段階特異抗原−4(SSEA−4)の少なくとも1つを中和する、請求項10に記載の免疫原性組成物。
【請求項12】
Gb4抗原、胚発生段階特異抗原−3(SSEA−3)、および胚発生段階特異抗原−4(SSEA−4)の少なくとも1つを中和する抗体が、IgMアイソタイプ抗体と比較して、IgGアイソタイプ抗体を相対的に高いレベルで含む、請求項11に記載の免疫原性組成物。
【請求項13】
前記キャリアタンパク質がジフテリア毒素交差反応物質197(DT−CRM197)であり、前記アジュバントがC34である、請求項11に記載の免疫原性組成物。
【請求項14】
被験者の抗がん免疫応答を誘導できるがんワクチン組成物をさらに含む、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項15】
前記がんワクチンが、乳癌、肺癌、肝癌、口腔癌、胃癌、大腸癌、上咽頭癌、皮膚癌、腎癌、脳腫瘍、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、および膀胱癌からなる群から選択されるがんの治療に適する、請求項14に記載のがんワクチン。
【請求項16】
前記がんの組織が、細胞表面にGlobo H抗原を発現する、請求項15に記載のがんワクチン。
【請求項17】
前記Globo H抗原が、乳房の腫瘍上皮細胞で発現する、請求項15に記載のがんワクチン。
【請求項18】
前記免疫応答によって産生した抗体が、Globo H抗原、Gb4、胚発生段階特異抗原−3(SSEA−3)、および胚発生段階特異抗原−4(SSEA−4)の少なくとも1つを中和する、請求項14に記載のがんワクチン。
【請求項19】
Globo H抗原、胚発生段階特異抗原−3(SSEA−3)、および胚発生段階特異抗原−4(SSEA−4)の少なくとも1つが、乳癌幹細胞で発現する、請求項14に記載のがんワクチン。
【請求項20】
腫瘍成長の抑制を含む治療方法であって、
(a)Globo Hまたはその免疫原性フラグメントから本質的に構成され、リンカーを通じてキャリアタンパク質と共役する糖鎖、および樹状細胞上のCD1d分子と結合できる糖脂質を含むアジュバントを含む免疫原性組成物を、必要に応じて被験者に投与すること;並びに
(b)IgMアイソタイプ抗体と比較して、IgGアイソタイプ抗体を相対的に高い量で誘導する免疫応答を誘導すること:
を含む、方法。
【請求項21】
前記免疫原性組成物の前記リンカーがp−ニトロフェノールであり、前記キャリアタンパク質がジフテリア毒素交差反応物質197(DT−CRM197)であり、および前記アジュバントがα−ガラクトシルセラミド(α−GalCer)の合成アナログである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記アジュバントがC34である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記免疫原性組成物ががんワクチンをさらに含み、さらにこの際、前記がんワクチンの有効量を用いる1またはそれ以上の治療法が、腫瘍成長を抑制する、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記がんワクチンの投与によって腫瘍サイズを小さくする、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記がんが、乳癌、肺癌、肝癌、口腔癌、胃癌、大腸癌、上咽頭癌、皮膚癌、腎癌、脳腫瘍、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、および膀胱癌からなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記免疫応答が、好ましくはIgGアイソタイプ抗体の産生を目的とする、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記免疫応答によって産生した抗体が、Globo H抗原、Gb4、胚発生段階特異抗原−3(SSEA−3)、および胚発生段階特異抗原−4(SSEA−4)の少なくとも1つを中和する、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
Globo H抗原、胚発生段階特異抗原−3(SSEA−3)、および胚発生段階特異抗原−4(SSEA−4)の少なくとも1つが、乳癌幹細胞で発現する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記Globo H抗原が、乳房の腫瘍上皮細胞で発現する、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
Gb4抗原、胚発生段階特異抗原−3(SSEA−3)、および胚発生段階特異抗原−4(SSEA−4)の少なくとも1つを中和する抗体が、IgMアイソタイプ抗体と比較して、IgGアイソタイプ抗体を相対的に高いレベルで含む、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
(a)Globo Hまたはその免疫原性フラグメントから本質的に構成され、リンカーを通じてキャリアタンパク質と共役する糖鎖、および樹状細胞上のCD1d分子と結合できる糖脂質を含むアジュバントを含み、前記免疫原性組成物がIgMアイソタイプ抗体と比較して、IgGアイソタイプ抗体を相対的に高いレベルで誘導する免疫応答を誘導する、免疫原性組成物;並びに
(b)薬学的に許容される賦形剤:
を含む、がんワクチン。
【請求項32】
前記免疫原性組成物の前記リンカーがp−ニトロフェノールであり、前記キャリアタンパク質がジフテリア毒素交差反応物質197(DT−CRM197)であり、および前記アジュバントがα−ガラクトシルセラミド(α−GalCer)の合成アナログである、請求項31に記載のがんワクチン。
【請求項33】
前記アジュバントがC34である、請求項32に記載のがんワクチン。
【請求項34】
前記がんが乳癌であり、Globo H抗原が、乳房の腫瘍上皮細胞で発現する、請求項32に記載のがんワクチン。
【請求項35】
前記免疫応答によって産生した抗体が、Globo H抗原、Gb4、胚発生段階特異抗原−3(SSEA−3)、および胚発生段階特異抗原−4(SSEA−4)の少なくとも1つを中和する、請求項32に記載のがんワクチン。
【請求項36】
前記がんが乳癌であり、Globo H抗原、胚発生段階特異抗原−3(SSEA−3)、および胚発生段階特異抗原−4(SSEA−4)の少なくとも1つが、乳癌幹細胞で発現する、請求項32に記載のがんワクチン。
【請求項37】
(a)Globo H関連糖鎖またはその免疫原性フラグメントから本質的に構成され、リンカーを通じてキャリアタンパク質と共役する糖鎖;および
(b)樹状細胞上のCD1d分子と結合できる糖脂質を含むアジュバント、
を含む、免疫原性組成物であって、前記Globo H関連糖鎖が、SSEA−3およびSSEA−4からなる群から選択され、IgMアイソタイプ抗体と比較して、IgGアイソタイプ抗体を相対的に高いレベルで誘導する免疫応答を誘導する、免疫原性組成物。
【請求項38】
前記キャリアタンパク質が、ジフテリア毒素交差反応物質197(DT−CRM197)である、請求項37に記載の免疫原性組成物。
【請求項39】
前記アジュバントが、α−ガラクトシルセラミド(α−GalCer)の合成アナログである、請求項37に記載の免疫原性組成物。
【請求項40】
前記アジュバントが下記構造を含むC34である、請求項39に記載の免疫原性組成物。
【化2】
【請求項41】
前記リンカーがp−ニトロフェニルリンカーである、請求項37に記載の免疫原性組成物。
【請求項42】
前記リンカーがp−ニトロフェニルであり、前記キャリアタンパク質がジフテリア毒素交差反応物質197(DT−CRM197)であり、および前記アジュバントがC34である、請求項37に記載の免疫原性組成物。
【請求項43】
p−ニトロフェニルリンカーを通じてジフテリア毒素交差反応物質197(DT−CRM197)キャリアタンパク質と共役するGlobo H、および樹状細胞上のCD1d分子と結合できる糖脂質を含むアジュバントを含む、乳癌幹細胞に対する治療剤。
【請求項44】
前記アジュバントがC34である、請求項43に記載の治療剤。
【請求項45】
被験者への前記治療剤の投与が、乳癌幹細胞(BCSC)で発現する抗原を認識する抗体の産生を誘導する、請求項43に記載の治療剤。
【請求項46】
抗原の少なくとも1つが、Globo H、SSEA−3、およびSSEA−4からなる群から選択される、請求項44に記載の治療剤。
【請求項47】
p−ニトロフェニルリンカーを通じてジフテリア毒素交差反応物質197(DT−CRM197)キャリアタンパク質と共役するSSEA−3、および樹状細胞上のCD1d分子と結合できる糖脂質C34を含むアジュバントを含む、乳癌幹細胞に対する治療剤。
【請求項48】
被験者への前記治療剤の投与が、乳癌幹細胞(BCSC)で発現する抗原を認識する抗体の産生を誘導する、請求項47に記載の治療剤。
【請求項49】
抗原の少なくとも1つが、Globo H、SSEA−3、およびSSEA−4からなる群から選択される、請求項48に記載の治療剤。
【請求項50】
p−ニトロフェニルリンカーを通じてジフテリア毒素交差反応物質197(DT−CRM197)キャリアタンパク質と共役するSSEA−4を含む、乳癌幹細胞に対する治療剤。
【請求項51】
樹状細胞上のCD1d分子と結合できる糖脂質C34を含むアジュバントをさらに含む、請求項50に記載の治療剤。
【請求項52】
前記アジュバントがC34である、請求項51に記載の治療剤。
【請求項53】
被験者への前記治療剤の投与が、乳癌幹細胞(BCSC)で発現するSSEA−4またはその切断構造を認識する抗体の産生を誘導する、請求項50に記載の治療剤。
【請求項54】
請求項43に記載の治療剤組成物を、必要に応じて被験者に投与することを含む、乳癌の治療方法。
【請求項55】
請求項47に記載の治療剤組成物を、必要に応じて被験者に投与することを含む、乳癌の治療方法。
【請求項56】
請求項50に記載の治療剤を、必要に応じて被験者に投与することを含む、乳癌の治療方法。
【請求項57】
請求項43〜52のいずれか1項に記載の治療剤を、必要に応じて被験者に投与することを含む、乳癌の治療方法。
【請求項1】
(a)Globo Hまたはその免疫原性フラグメントから本質的に構成され、リンカーを通じてキャリアタンパク質と共役する糖鎖;および
(b)樹状細胞上のCD1d分子と結合できる糖脂質を含むアジュバント、
を含む、免疫原性組成物であって、IgMアイソタイプ抗体と比較して、IgGアイソタイプ抗体を相対的に高いレベルで誘導する免疫応答を誘導する、免疫原性組成物。
【請求項2】
前記キャリアタンパク質が、ジフテリア毒素交差反応物質197(DT−CRM197)である、請求項1に記載の免疫原性組成物、
【請求項3】
前記アジュバントが、α−ガラクトシルセラミド(α−GalCer)の合成アナログである、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項4】
前記アジュバントが下記構造を含むC34である、請求項3に記載の免疫原性組成物。
【化1】
【請求項5】
前記リンカーがp−ニトロフェニルリンカーである、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項6】
前記リンカーがp−ニトロフェニルであり、前記キャリアタンパク質がジフテリア毒素交差反応物質197(DT−CRM197)であり、および前記アジュバントがC34である、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項7】
前記免疫応答が、好ましくはIgGアイソタイプ抗体の産生を目的とする、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項8】
前記キャリアタンパク質がジフテリア毒素交差反応物質197(DT−CRM197)であり、前記アジュバントがC34である、請求項7に記載の免疫原性組成物。
【請求項9】
少なくとも1つのアジュバントが、液性および細胞性免疫応答を誘導できることを含む、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項10】
前記免疫応答によって産生した抗体が、がん細胞またはがん幹細胞で発現する抗原を中和する、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項11】
前記免疫応答によって産生した抗体が、Gb4抗原、胚発生段階特異抗原−3(SSEA−3)、および胚発生段階特異抗原−4(SSEA−4)の少なくとも1つを中和する、請求項10に記載の免疫原性組成物。
【請求項12】
Gb4抗原、胚発生段階特異抗原−3(SSEA−3)、および胚発生段階特異抗原−4(SSEA−4)の少なくとも1つを中和する抗体が、IgMアイソタイプ抗体と比較して、IgGアイソタイプ抗体を相対的に高いレベルで含む、請求項11に記載の免疫原性組成物。
【請求項13】
前記キャリアタンパク質がジフテリア毒素交差反応物質197(DT−CRM197)であり、前記アジュバントがC34である、請求項11に記載の免疫原性組成物。
【請求項14】
被験者の抗がん免疫応答を誘導できるがんワクチン組成物をさらに含む、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項15】
前記がんワクチンが、乳癌、肺癌、肝癌、口腔癌、胃癌、大腸癌、上咽頭癌、皮膚癌、腎癌、脳腫瘍、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、および膀胱癌からなる群から選択されるがんの治療に適する、請求項14に記載のがんワクチン。
【請求項16】
前記がんの組織が、細胞表面にGlobo H抗原を発現する、請求項15に記載のがんワクチン。
【請求項17】
前記Globo H抗原が、乳房の腫瘍上皮細胞で発現する、請求項15に記載のがんワクチン。
【請求項18】
前記免疫応答によって産生した抗体が、Globo H抗原、Gb4、胚発生段階特異抗原−3(SSEA−3)、および胚発生段階特異抗原−4(SSEA−4)の少なくとも1つを中和する、請求項14に記載のがんワクチン。
【請求項19】
Globo H抗原、胚発生段階特異抗原−3(SSEA−3)、および胚発生段階特異抗原−4(SSEA−4)の少なくとも1つが、乳癌幹細胞で発現する、請求項14に記載のがんワクチン。
【請求項20】
腫瘍成長の抑制を含む治療方法であって、
(a)Globo Hまたはその免疫原性フラグメントから本質的に構成され、リンカーを通じてキャリアタンパク質と共役する糖鎖、および樹状細胞上のCD1d分子と結合できる糖脂質を含むアジュバントを含む免疫原性組成物を、必要に応じて被験者に投与すること;並びに
(b)IgMアイソタイプ抗体と比較して、IgGアイソタイプ抗体を相対的に高い量で誘導する免疫応答を誘導すること:
を含む、方法。
【請求項21】
前記免疫原性組成物の前記リンカーがp−ニトロフェノールであり、前記キャリアタンパク質がジフテリア毒素交差反応物質197(DT−CRM197)であり、および前記アジュバントがα−ガラクトシルセラミド(α−GalCer)の合成アナログである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記アジュバントがC34である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記免疫原性組成物ががんワクチンをさらに含み、さらにこの際、前記がんワクチンの有効量を用いる1またはそれ以上の治療法が、腫瘍成長を抑制する、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記がんワクチンの投与によって腫瘍サイズを小さくする、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記がんが、乳癌、肺癌、肝癌、口腔癌、胃癌、大腸癌、上咽頭癌、皮膚癌、腎癌、脳腫瘍、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、および膀胱癌からなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記免疫応答が、好ましくはIgGアイソタイプ抗体の産生を目的とする、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記免疫応答によって産生した抗体が、Globo H抗原、Gb4、胚発生段階特異抗原−3(SSEA−3)、および胚発生段階特異抗原−4(SSEA−4)の少なくとも1つを中和する、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
Globo H抗原、胚発生段階特異抗原−3(SSEA−3)、および胚発生段階特異抗原−4(SSEA−4)の少なくとも1つが、乳癌幹細胞で発現する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記Globo H抗原が、乳房の腫瘍上皮細胞で発現する、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
Gb4抗原、胚発生段階特異抗原−3(SSEA−3)、および胚発生段階特異抗原−4(SSEA−4)の少なくとも1つを中和する抗体が、IgMアイソタイプ抗体と比較して、IgGアイソタイプ抗体を相対的に高いレベルで含む、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
(a)Globo Hまたはその免疫原性フラグメントから本質的に構成され、リンカーを通じてキャリアタンパク質と共役する糖鎖、および樹状細胞上のCD1d分子と結合できる糖脂質を含むアジュバントを含み、前記免疫原性組成物がIgMアイソタイプ抗体と比較して、IgGアイソタイプ抗体を相対的に高いレベルで誘導する免疫応答を誘導する、免疫原性組成物;並びに
(b)薬学的に許容される賦形剤:
を含む、がんワクチン。
【請求項32】
前記免疫原性組成物の前記リンカーがp−ニトロフェノールであり、前記キャリアタンパク質がジフテリア毒素交差反応物質197(DT−CRM197)であり、および前記アジュバントがα−ガラクトシルセラミド(α−GalCer)の合成アナログである、請求項31に記載のがんワクチン。
【請求項33】
前記アジュバントがC34である、請求項32に記載のがんワクチン。
【請求項34】
前記がんが乳癌であり、Globo H抗原が、乳房の腫瘍上皮細胞で発現する、請求項32に記載のがんワクチン。
【請求項35】
前記免疫応答によって産生した抗体が、Globo H抗原、Gb4、胚発生段階特異抗原−3(SSEA−3)、および胚発生段階特異抗原−4(SSEA−4)の少なくとも1つを中和する、請求項32に記載のがんワクチン。
【請求項36】
前記がんが乳癌であり、Globo H抗原、胚発生段階特異抗原−3(SSEA−3)、および胚発生段階特異抗原−4(SSEA−4)の少なくとも1つが、乳癌幹細胞で発現する、請求項32に記載のがんワクチン。
【請求項37】
(a)Globo H関連糖鎖またはその免疫原性フラグメントから本質的に構成され、リンカーを通じてキャリアタンパク質と共役する糖鎖;および
(b)樹状細胞上のCD1d分子と結合できる糖脂質を含むアジュバント、
を含む、免疫原性組成物であって、前記Globo H関連糖鎖が、SSEA−3およびSSEA−4からなる群から選択され、IgMアイソタイプ抗体と比較して、IgGアイソタイプ抗体を相対的に高いレベルで誘導する免疫応答を誘導する、免疫原性組成物。
【請求項38】
前記キャリアタンパク質が、ジフテリア毒素交差反応物質197(DT−CRM197)である、請求項37に記載の免疫原性組成物。
【請求項39】
前記アジュバントが、α−ガラクトシルセラミド(α−GalCer)の合成アナログである、請求項37に記載の免疫原性組成物。
【請求項40】
前記アジュバントが下記構造を含むC34である、請求項39に記載の免疫原性組成物。
【化2】
【請求項41】
前記リンカーがp−ニトロフェニルリンカーである、請求項37に記載の免疫原性組成物。
【請求項42】
前記リンカーがp−ニトロフェニルであり、前記キャリアタンパク質がジフテリア毒素交差反応物質197(DT−CRM197)であり、および前記アジュバントがC34である、請求項37に記載の免疫原性組成物。
【請求項43】
p−ニトロフェニルリンカーを通じてジフテリア毒素交差反応物質197(DT−CRM197)キャリアタンパク質と共役するGlobo H、および樹状細胞上のCD1d分子と結合できる糖脂質を含むアジュバントを含む、乳癌幹細胞に対する治療剤。
【請求項44】
前記アジュバントがC34である、請求項43に記載の治療剤。
【請求項45】
被験者への前記治療剤の投与が、乳癌幹細胞(BCSC)で発現する抗原を認識する抗体の産生を誘導する、請求項43に記載の治療剤。
【請求項46】
抗原の少なくとも1つが、Globo H、SSEA−3、およびSSEA−4からなる群から選択される、請求項44に記載の治療剤。
【請求項47】
p−ニトロフェニルリンカーを通じてジフテリア毒素交差反応物質197(DT−CRM197)キャリアタンパク質と共役するSSEA−3、および樹状細胞上のCD1d分子と結合できる糖脂質C34を含むアジュバントを含む、乳癌幹細胞に対する治療剤。
【請求項48】
被験者への前記治療剤の投与が、乳癌幹細胞(BCSC)で発現する抗原を認識する抗体の産生を誘導する、請求項47に記載の治療剤。
【請求項49】
抗原の少なくとも1つが、Globo H、SSEA−3、およびSSEA−4からなる群から選択される、請求項48に記載の治療剤。
【請求項50】
p−ニトロフェニルリンカーを通じてジフテリア毒素交差反応物質197(DT−CRM197)キャリアタンパク質と共役するSSEA−4を含む、乳癌幹細胞に対する治療剤。
【請求項51】
樹状細胞上のCD1d分子と結合できる糖脂質C34を含むアジュバントをさらに含む、請求項50に記載の治療剤。
【請求項52】
前記アジュバントがC34である、請求項51に記載の治療剤。
【請求項53】
被験者への前記治療剤の投与が、乳癌幹細胞(BCSC)で発現するSSEA−4またはその切断構造を認識する抗体の産生を誘導する、請求項50に記載の治療剤。
【請求項54】
請求項43に記載の治療剤組成物を、必要に応じて被験者に投与することを含む、乳癌の治療方法。
【請求項55】
請求項47に記載の治療剤組成物を、必要に応じて被験者に投与することを含む、乳癌の治療方法。
【請求項56】
請求項50に記載の治療剤を、必要に応じて被験者に投与することを含む、乳癌の治療方法。
【請求項57】
請求項43〜52のいずれか1項に記載の治療剤を、必要に応じて被験者に投与することを含む、乳癌の治療方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2011−524417(P2011−524417A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−514633(P2011−514633)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際出願番号】PCT/US2009/004519
【国際公開番号】WO2010/005598
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(596118493)アカデミア シニカ (33)
【氏名又は名称原語表記】ACADEMIA SINICA
【住所又は居所原語表記】128 Sec 2,Academia Road,Nankang,Taipei 11529 TW
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際出願番号】PCT/US2009/004519
【国際公開番号】WO2010/005598
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(596118493)アカデミア シニカ (33)
【氏名又は名称原語表記】ACADEMIA SINICA
【住所又は居所原語表記】128 Sec 2,Academia Road,Nankang,Taipei 11529 TW
【Fターム(参考)】
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