説明

I型インターフェロン産生細胞を標的化するための組成物及び方法

本開示は、インターロイキン3受容体a(IL−3Ra)鎖と結合し、免疫グロブリンが結合する形質細胞様樹状細胞(pDC)及び好塩基球を欠乏化又は少なくとも部分的に排除する免疫グロブリンを哺乳動物に投与するステップを含む、ループス、シェーグレン症候群又は強皮症を治療するための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願のデータ
本願は、2010年8月17日に出願された標題「Compositions and Methods for Targeting type I Interferon-Producing Cells」の米国特許出願第61/374,497号明細書、2010年8月17日に出願された標題「Humanized Anti-Interleukin 3 Receptor Alpha Chain Antibodies」の米国特許出願第61/374,489号明細書及び2010年2月17日に出願された標題「Treatment of Chronic Inflammatory Conditions」の米国特許出願第12/707,297号明細書に対する優先権を主張するものである。これら出願の全内容は、これにより参照により本明細書の一部を構成するものとして援用する。
【0002】
分野
本開示は、炎症性疾患の治療に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
サイトカインのインターフェロン(IFN)ファミリーは、I型及びII型両方のサブグループを含む。I型サブグループは、IFNa、IFNP、IFNω、IFNK及びIFNxから構成され、II型サブグループは、IFNyによって表される。I型IFNは、ポリクローナルT細胞応答の刺激、アイソタイプスイッチ、クラスI主要組織適合抗原(MHC)分子の発現及び樹状細胞(DC)分化の誘導等、複数の免疫調節効果を有する。I型IFNは、マクロファージ及びナチュラルキラー(NK)細胞の両方を刺激して抗ウイルス応答を誘発し、また、腫瘍に対し活性を有する。I型IFNは、視床下部における温度感受性ニューロンの活性を変化させることにより発熱させる発熱性因子としても作用する。I型IFN系の特色は、活発な抗ウイルス免疫応答の開始を確実にする、シグナル伝達経路の迅速な誘導及び増幅である。
【0004】
しかし、このような経路は、迅速なウイルス根絶には非常に効果的であるが、この増幅は、宿主組織に対する免疫応答において適応不全となり、自己免疫疾患を生じ得る。例として、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ及び糸球体腎炎が挙げられる。
【0005】
SLEとは、免疫欠損により、自己抗体産生とそれに続く皮膚、腎臓、血液、脳及び関節等、複数の臓器における炎症及び/又は組織損傷がもたらされる慢性自己免疫疾患である。疾病経過は、慢性的に活動性、再発及び寛解又は長期寛解となり得る。SLEは、IFNa等のI型IFNを含む多くのサイトカインのレベル上昇によって特徴づけられる。
【0006】
SLEにおけるIFNaの役割のエビデンスは、SLE患者から得られた血清が、正常な哺乳動物から得られた単球のDC成熟化を誘導したことを示す数例のin vitro試験において立証されている。このように、SLE患者から得られた血清は、正常な静止状態の単球が免疫応答誘導可能な抗原提示細胞となるよう誘導することができた。更に、マウスのSLEモデル(NZBマウス)におけるIFNAR1(I型IFN受容体のa鎖)発現の抑制は、溶血性貧血を抑制し、糸球体腎炎を抑制した。
【0007】
臨床的には、活動性SLE患者は、多くの場合、血清中I型IFNレベルが上昇しており、このレベルは疾患活動性と正の相関を有する。SLEにおけるIFNaの推定的な役割の更なる臨床エビデンスは、IFNa治療を行った非SLE患者が、時に自己抗体及びSLEと一致した臨床症状を発症するとの観察から得られる。
【0008】
I型インターフェロンは、リンパ球(NK細胞、B細胞及びT細胞)、マクロファージ、線維芽細胞、内皮細胞、骨芽細胞並びに特定の樹状細胞等、多くの細胞型によって産生される。形質細胞様樹状細胞(plasmacytoid dendric cell)(pDC)は、外来抗原に応答する最も強力なI型IFN産生細胞として同定された。pDCは、血液と、I型インターフェロン供給源である末梢リンパ器官とに存在する循環樹状細胞のサブタイプである。ヒトpDCは通常、表面マーカー、IL−3受容体a鎖(IL−3Ra、CD123)、BDCA−2(CD303)及びBDCA−4(CD304)を発現するが、CD11c又はCD14を発現せず、この特徴により、この細胞はそれぞれ通常型の樹状細胞又は単球から区別される。刺激とそれに続く活性化により、pDCは、大量のI型インターフェロン(主としてIFN−a及びIFN−β)を産生する。
【0009】
SLE等、I型IFN依存性炎症性疾患におけるIFNaの明確な役割から、このサイトカインの作用を中和する抗体又は可溶性IFNARタンパク質は、治療アプローチ候補として探求されている。
【0010】
SLE等、I型IFN依存性炎症性疾患の治療に提案される代替的なアプローチは、I型インターフェロン発現細胞によって発現された細胞表面分子と結合する化合物を用いることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
自己免疫疾患の治療に関して試験されてきた化合物の一クラスに、毒素とコンジュゲートした抗体由来の単鎖Fv(scFv)を含む免疫毒素がある。このような化合物は、IL−3Ra発現細胞の殺傷に有用であると示唆されてきた。しかし、このような分子は、多くの不利益を伴う。例えば、免疫毒素は、肝臓及び腎臓に損傷を生じることが知られている。scFvとコンジュゲートした小サイズ毒素は、この免疫毒素が腎臓により迅速に排出されてこの臓器の損傷を更に増悪させること、この免疫毒素が利益をもたらすのに十分な時間身体に保持できないことも意味する。更に、毒素成分は一般に非ヒトであり、これは、患者における免疫応答を誘導し得ることを意味する。この免疫応答は、分子を中和する可能性がある。従って、このような免疫毒素は、慢性自己免疫疾患の治療に必要とされ得る複数の治療に適用できない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
要旨
従来の一部のアプローチに反して、本発明者らは、I型IFN受容体及び/又はIFN−aの遮断が、I型IFNの正の抗ウイルス効果が失われるのを回避するのに十分な特異性を持たない可能性があることを理解した。その代わりに、本発明者らは、pDC及び好塩基球等、IL−3応答性細胞におけるIL−3活性の低下若しくは阻害及び/又はIL−3応答性細胞の欠乏化若しくは排除に着目した。本発明者らは、IL−3Raに対する免疫グロブリンを活用して、pDC及び好塩基球等、IL−3応答性細胞におけるIL−3の活性を低下又は阻害した(即ち、IL−3シグナル伝達を中和した)。しかし、本発明者らは、IL−3シグナル伝達のみを中和する免疫グロブリンは、IFNaレベルを十分に低下させて治療上の利益をもたらす可能性が低いことを見出した。従って、本発明者らは、哺乳動物の免疫系を更に誘導できる免疫グロブリンを活用して、IL−3応答性細胞(例えば、pDC及び好塩基球)を少なくとも部分的に欠乏化又は排除して、これによりI型IFN依存性炎症性疾患及びpDC及び好塩基球に関連する状態、例えばループス(狼瘡(lupus))を治療した。IL−3応答性細胞におけるIL−3活性の低下又は阻害と、IL−3応答性細胞の少なくとも部分的な欠乏化又は排除の両方が可能な免疫グロブリンを用いることにより、本発明者らは、IFNaレベルをin vitroで低下させることができた。IL−3応答性細胞を少なくとも部分的に欠乏化又は排除するために哺乳動物の免疫系を用いることにより、毒素使用とそれに伴う負の効果の回避が可能となった。
【0013】
pDCが、炎症性疾患におけるI型IFNの唯一の供給源ではないが、I型IFNの重要な供給源であることを考慮し、本発明者らは、本開示に提示されている方法が、I型IFN受容体及び/又はIFN−aを標的とする方法よりもI型IFNの正の効果を打ち消す可能性の低い、より正確で標的化された治療アプローチを提供すると考えた。具体的なI型IFN依存性炎症性疾患は、ループス、例えばSLEである。
【0014】
本発明者らは、増強された抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)誘導能を有する免疫グロブリンが、IFNa産生及び/又は循環pDC及び好塩基球の数を低用量で低下できることも見出した。本発明者らは、これらの効果が投与後数日間持続し、効果の長さが用量依存性であることも見出した。
【0015】
本発明者らは、pDC及び好塩基球数が、免疫グロブリン投与後に回復することも見出したが、この結果は、治療後に哺乳動物の免疫応答(例えば、ウイルスに対する)も回復することを意味する。
【0016】
本開示は、哺乳動物におけるループスを治療する方法を提供し、上記方法は、IL−3Ra鎖と結合してIL−3シグナル伝達を中和し、免疫グロブリンが結合するpDC及び好塩基球を欠乏化又は少なくとも部分的に排除して、これにより哺乳動物におけるループスを治療する免疫グロブリンであって、免疫グロブリンが結合する細胞を殺傷する毒性化合物とコンジュゲートしていない免疫グロブリンを哺乳動物に投与するステップを含む。一例において、ループスはSLEである。
【0017】
本開示は、哺乳動物におけるループスを治療する方法を追加的に又は代替的に提供し、上記の方法は、IL−3Ra鎖と結合してモノクローナル抗体7G3とIL−3Raとの結合を競合的に阻害し、免疫グロブリンが結合するpDC及び好塩基球を欠乏化又は少なくとも部分的に排除して、これにより哺乳動物におけるループスを治療する免疫グロブリンを哺乳動物に投与するステップを含む。一例において、免疫グロブリンは、IL−3Raと結合し、IL−3シグナル伝達を中和する。一例において、ループスはSLEである。
【0018】
本開示は、哺乳動物におけるループスを治療する方法を追加的に又は代替的に提供し、上記方法は、IL−3Ra鎖と結合してモノクローナル抗体7G3とIL−3Raとの結合を競合的に阻害し、免疫グロブリンが結合するpDC及び好塩基球を欠乏化又は少なくとも部分的に排除して、これにより哺乳動物におけるループスを治療する免疫グロブリンであって、免疫グロブリンが結合する細胞を殺傷する毒性化合物とコンジュゲートしていない免疫グロブリンを哺乳動物に投与するステップを含む。一例において、免疫グロブリンは、IL−3Raと結合してIL−3シグナル伝達を中和する。一例において、ループスはSLEである。
【0019】
本開示はまた、哺乳動物におけるシェーグレン症候群を治療する方法を提供し、上記方法は、IL−3Ra鎖と結合し、IL−3シグナル伝達を中和及び/又はモノクローナル抗体7G3とIL−3Raとの結合を競合的に阻害し、免疫グロブリンが結合するpDC及び好塩基球を欠乏化又は少なくとも部分的に排除して、これにより哺乳動物におけるシェーグレン症候群を治療する免疫グロブリンであって、免疫グロブリンが結合する細胞を殺傷する毒性化合物とコンジュゲートしていない免疫グロブリンを哺乳動物に投与するステップを含む。
【0020】
本開示はまた、哺乳動物における強皮症を治療する方法を提供し、上記方法は、IL−3Ra鎖と結合し、IL−3シグナル伝達を中和及び/又はモノクローナル抗体7G3とIL−3Raとの結合を競合的に阻害し、免疫グロブリンが結合するpDC及び好塩基球を欠乏化又は少なくとも部分的に排除して、これにより哺乳動物における全身性強皮症を治療する免疫グロブリンであって、免疫グロブリンが結合する細胞を殺傷する毒性化合物とコンジュゲートしていない免疫グロブリンを哺乳動物に投与するステップを含む。一例において、強皮症は全身性強皮症である。
【0021】
更に別の一例において、本開示は、IL−3Ra鎖と結合する免疫グロブリンと、医薬的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤とを含む、本開示の上述の例に従って用いるための医薬組成物を提供する。例示的な免疫グロブリンは、本明細書に記載されており、本開示のこの例に適用される。一例において、免疫グロブリンは、免疫グロブリンが結合する細胞を殺傷する毒性化合物とコンジュゲートしていない。一例において、免疫グロブリンは、免疫グロブリンが結合するpDC及び好塩基球を欠乏化又は少なくとも部分的に排除する。一例において、免疫グロブリンは、IL−3Raと結合してIL−3シグナル伝達を中和する。一例において、免疫グロブリンは、モノクローナル抗体7G3とIL−3Raとの結合を競合的に阻害する。
【0022】
更にまた別の一例において、本開示は、IL−3Ra鎖と結合する免疫グロブリンと、医薬的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤と、キット使用のための説明書とを含む、本開示の上述の例に従って用いるためのキットを提供する。IL−3Raと結合する例示的な免疫グロブリンは、本明細書に記載されており、本開示のこの例に適宜変更して適用するべきである。
【0023】
一例において、本方法は、哺乳動物におけるIL−3シグナル伝達の中和並びにpDC及び好塩基球の欠乏化又は少なくとも部分的な排除に有効な量の免疫グロブリンを投与するステップを含む。
【0024】
一例において、IL−3Raは、1又は複数のI型インターフェロンを産生するpDCにより発現される。従って、一例において、免疫グロブリンは、1又は複数のI型インターフェロンを産生するpDC上のIL−3Raと結合する。
【0025】
一例において、IL3Ra鎖は、1又は複数のサイトカインを産生する好塩基球により発現される。従って、一例において、免疫グロブリンは、1又は複数のサイトカインを産生する好塩基球上のIL−3Raと結合する。
【0026】
一例において、免疫グロブリンは、モノクローナル抗体7G3と同じエピトープと結合する。
【0027】
別の一例において、免疫グロブリンは、モノクローナル抗体7G3によって結合されたエピトープと重複するエピトープと結合する。
【0028】
一例において、免疫グロブリンは、IL−3Raと特異的に結合する。
【0029】
一例において、免疫グロブリンは、そのままの(naked)免疫グロブリンである。
【0030】
本開示により企図される例示的な免疫グロブリンは、抗体及びその抗原結合性フラグメントである。
【0031】
一例において、免疫グロブリンは全長抗体である。
【0032】
一例において、免疫グロブリンは、キメラ免疫グロブリン、例えば、キメラ抗体又はその抗原結合性フラグメントである。例えば、キメラ抗体は、非ヒト哺乳動物(例えば、マウス)によって産生された抗体に由来する重鎖可変領域(V)及び軽鎖可変領域(V)並びにヒト由来の定常領域を含む。一例において、キメラ抗体は、モノクローナル抗体7G3由来の可変領域を含む。
【0033】
別の一例において、免疫グロブリンは、ヒト化免疫グロブリン、例えば、ヒト化抗体又はその抗原結合性フラグメントである。一例において、ヒト化抗体又はその抗原結合性フラグメントは、モノクローナル抗体7G3のヒト化型又はその抗原結合性フラグメントである。例えば、ヒト化抗体は、モノクローナル抗体7G3に由来する相補性決定領域(CDR)を含む。一例において、ヒト化抗体は、モノクローナル抗体7G3のVのCDRを含む。追加的な又は代替的な一例において、ヒト化抗体は、モノクローナル抗体7G3のVのCDR2及びCDR3並びに1又は複数のアミノ酸置換を含むモノクローナル7G3のCDR1を含む。一例において、ヒト化抗体は、配列番号3に記述されている配列を含む軽鎖可変領域(V)と、配列番号2に記述されている配列を含む重鎖可変領域(V)とを含む。
【0034】
更に別の一例において、免疫グロブリンは、ヒト抗体又はその抗原結合性フラグメント等、ヒト免疫グロブリンである。
【0035】
本開示により企図されている例示的な抗原結合性フラグメントとして、次のものが挙げられる。
(i)ドメイン抗体(dAb);
(ii)Fv;
(iii)scFv又はその安定化型(例えば、ジスルフィド安定化scFv);
(iv)二量体scFv又はその安定化型);
(iv)二重特異性抗体(diabody)、三重特異性抗体(triabody)、四重特異性抗体(tetrabody)又はより高次の多量体;
(v)Fabフラグメント;
(vi)Fab’フラグメント;
(vii)F(ab’)フラグメント;
(viii)F(ab’)フラグメント;
(ix)抗体のFc領域と融合した(i)〜(viii)のうちいずれか1種;
(x)免疫エフェクター細胞と結合する抗体又はその抗原結合性フラグメントと融合した(i)〜(viii)のうちいずれか1種
【0036】
当業者であれば本明細書における開示から理解できると思われるが、例示的な免疫グロブリンは、毒性化合物とコンジュゲートしていなくても、免疫グロブリンが結合する細胞を欠乏化又は少なくとも部分的に排除することができる。
【0037】
一例において、免疫グロブリンは、細胞にアポトーシスを行わせる。
【0038】
一例において、免疫グロブリンは、エフェクター機能、例えば、免疫グロブリンが結合する細胞の殺傷をもたらすエフェクター機能を誘導することができる。例示的なエフェクター機能は、ADCC、抗体依存性細胞媒介性食作用(ADCP)及び/又は補体依存性細胞傷害(CDC)を含む。
【0039】
一例において、免疫グロブリンは、ADCCを誘導することができる。
【0040】
一例において、免疫グロブリンは、エフェクター機能を誘導することのできる抗体Fc領域を含む。例えば、エフェクター機能は、FC介在性エフェクター機能である。一例において、Fc領域は、IgG1 Fc領域又はIgG3 Fc領域又はハイブリッドIgG1/IgG2 Fc領域である。
【0041】
一例において、免疫グロブリンは、野生型ヒトIgG1及び/又はヒトIgG3 Fc領域と類似(例えば、有意差がない又は約10%以内である)又は同一レベルのエフェクター機能を誘導することができる。
【0042】
一例において、免疫グロブリンは、本明細書に記載されているch7G3又はhz7G3と類似(例えば、有意差がない又は約10%以内である)又は同一レベルのエフェクター機能を誘導することができる。
【0043】
一例において、免疫グロブリンは、増強されたレベルのエフェクター機能を誘導することができる。
【0044】
一例において、免疫グロブリンにより誘導されたエフェクター機能のレベルは、野生型IgG1 Fc領域を含む場合の免疫グロブリンのレベルと比べて増強されている。
【0045】
一例において、エフェクター機能は、本明細書に記載されているch7G3又はhz7G3の機能と比べて増強されている、或いはそれを超える。
【0046】
一例において、免疫グロブリンは、アフコシル化(afucosylated)されている、或いはアフコシル化されたFc領域を含む。
【0047】
別の一例において、免疫グロブリンは、タンパク質フコシル化レベルが低下するよう変化させられていないヒト又はCHO細胞により産生された免疫グロブリンと比べて、より低レベルのフコシル化を有する。この例と一致して、より低レベルのフコシル化とは、免疫グロブリンを含む組成物において、フコシル化免疫グロブリン(例えば、フコースを含む、抗体のAsn297と結合したグリコシル基)のパーセンテージが、タンパク質フコシル化レベルを低下するよう変化させられていないヒト又はCHO細胞により産生されるものよりも低いことを意味すると理解されるであろう。
【0048】
一例において、免疫グロブリンは、hz7G3V3である。例えば、免疫グロブリンは、配列番号3に記述されている配列を含む軽鎖可変領域(V)と、配列番号2に記述されている配列を含む重鎖可変領域(V)とを含むアフコシル化ヒト化抗体である。例えば、免疫グロブリンは、配列番号5に記述されている配列を含む軽鎖と、配列番号4に記述されている配列を含む重鎖とを含むアフコシル化ヒト化抗体である。
【0049】
一例において、免疫グロブリンは、検出可能レベルのa−1,6−フコシル基転移酵素(FUT8)を発現しない(或いは、その低レベルを発現する)哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞)によって発現された、配列番号3に記述されている配列を含む軽鎖可変領域(V)と、配列番号2に記述されている配列を含む重鎖可変領域(V)とを含むヒト化抗体である。一例において、免疫グロブリンは、検出可能レベルのa−1,6−フコシル基転移酵素(FUT8)を発現しない(或いはその低レベルを発現する)哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞)によって発現された、配列番号5に記述されている配列を含む軽鎖と、配列番号4に記述されている配列を含む重鎖とを含むアフコシル化ヒト化抗体である。
【0050】
一例において、免疫グロブリンは、免疫グロブリンにより誘導されるエフェクター機能を増強する1又は複数のアミノ酸配列置換を含むFc領域を含む。例えば、1又は複数のアミノ酸配列置換は、置換を含まないFc領域と比較してFc領域のFey受容体(FcyR)に対する親和性を増加させる。例えば、1又は複数のアミノ酸置換は、置換を含まないFc領域と比較してFc領域の、FcyRI、FcyRIIa、FcyRIIc及びFcyRIIIaからなる群から選択されたFcyRに対する親和性増加を増強する。一例において、1又は複数のアミノ酸配列置換は、
(i)KabatのEU付番方式に従ったS239D、A330L及びI332E;又は
(ii)KabatのEU付番方式に従ったS239D及びI332E
である。
【0051】
例えば、免疫グロブリンは、配列番号3に記述されている配列を含む軽鎖可変領域(V)と、配列番号2に記述されている配列を含む重鎖可変領域(V)とを含むヒト化抗体であり、該抗体は、
(i)KabatのEU付番方式に従ったS239D、A330L及びI332E;又は
(ii)KabatのEU付番方式に従ったS239D及びI332E
である1又は複数のアミノ酸配列置換を含むFc領域を含む。
【0052】
一例において、免疫グロブリンは、hz7G3V1及びhz7G3V2からなる群から選択される。例えば、免疫グロブリンは、配列番号5に記述されている配列を含む軽鎖と、配列番号6に記述されている配列を含む重鎖とを含む(hz7G3V1)、或いは配列番号5に記述されている配列を含む軽鎖と、配列番号7に記述されている配列を含む重鎖とを含む(hz7G3V2)抗体である。
【0053】
一例において、哺乳動物に免疫グロブリンを投与した後、哺乳動物における循環中のpDC及び/又は好塩基球の数は、免疫グロブリンを投与する前の循環中のpDC及び/又は好塩基球の数と比べて少なくとも約50%低下する。
【0054】
例えば、哺乳動物に免疫グロブリンを投与してから少なくとも約6時間後、哺乳動物における循環中のpDC及び/又は好塩基球の数は、免疫グロブリンを投与する前の循環中のpDC及び/又は好塩基球の数と比べて少なくとも約50%低下する。
【0055】
例えば、哺乳動物における循環中のpDC及び/又は好塩基球の数は、免疫グロブリンを更に投与せずに投与後少なくとも7日間、免疫グロブリンを投与する前の循環中のpDC及び/又は好塩基球の数と比べて少なくとも約50%低下する。例えば、哺乳動物における循環中のpDC及び/又は好塩基球の数は、免疫グロブリンを更に投与せずに投与後少なくとも8日間又は10日間又は11日間又は15日間又は20日間又は21日間又は22日間又は28日間又は35日間又は42日間又は49日間又は50日間又は57日間又は60日間又は63日間又は70日間、免疫グロブリンを投与する前の循環中のpDC及び/又は好塩基球の数と比べて少なくとも約50%低下する。
【0056】
例えば、哺乳動物における循環中のpDC及び/又は好塩基球の数は、免疫グロブリンを投与する前の循環中のpDC及び/又は好塩基球の数と比べて少なくとも約50%>又は55%又は60%>又は65%又は70%>又は75%又は80%又は85%又は90%又は95%又は96%又は97%又は98%又は99%低下する。
【0057】
一例において、方法は、治療上有効量の免疫グロブリン等、有効量の免疫グロブリンを投与するステップを含む。
【0058】
一例において、方法は、哺乳動物に約0.0001mg/kg〜50mg/kgの間の免疫グロブリンを投与するステップを含む。例えば、方法は、約0.0005mg/kg〜約50mg/kgの間を投与するステップを含む。例えば、方法は、約0.001mg/kg〜約45mg/kgの間を投与するステップを含む。例えば、方法は、約0.005mg/kg〜約40mg/kgの間を投与するステップを含む。例えば、方法は、約0.05mg/kg〜約35mg/kgの間を投与するステップを含む。例えば、方法は、約0.1mg/kg〜約30mg/kgの間を投与するステップを含む。例えば、方法は、約0.1mg/kg〜約15mg/kgの間を投与するステップを含む。例えば、方法は、約0.1mg/kg〜約10mg/kgの間を投与するステップを含む。例えば、方法は、約0.1mg/kg〜約1mg/kgの間を投与するステップを含む。例えば、方法は、約10mg/kg〜約30mg/kgの間を投与するステップを含む。例えば、方法は、約20mg/kg〜約30mg/kgの間を投与するステップを含む。
【0059】
一例において、免疫グロブリンは、0.1mg/kgの用量で投与される。
【0060】
一例において、免疫グロブリンは、1mg/kgの用量で投与される。
【0061】
一例において、免疫グロブリンは、10mg/kgの用量で投与される。
【0062】
一例において、免疫グロブリンは、30mg/kgの用量で投与される。
【0063】
一例において、免疫グロブリンは、哺乳動物に複数回投与される。一例において、投与間の期間は、少なくとも約8日間等、少なくとも約7日間、例えば、少なくとも約9日間又は10日間である。一例において、投与間の期間は、少なくとも約11日間である。別の一例において、投与間の期間は、少なくとも約16日間等、少なくとも約15日間、例えば、少なくとも約18日間又は20日間である。一例において、投与間の期間は、少なくとも約22日間である。別の一例において、投与間の期間は、少なくとも約30日間等、少なくとも約25日間、例えば、少なくとも約40日間又は45日間である。一例において、投与間の期間は、少なくとも約57又は60日間である。
【0064】
例えば、免疫グロブリンは、0.0005mg/kg〜5mg/kgの間等、0.0001mg/kg〜5mg/kgの間、例えば、0.005mg/kg〜5mg/kgの間等、0.001mg/kg〜5mg/kgの間及び5mg/kgの用量で投与され、投与間の期間は、少なくとも約7日間又は8日間又は9日間又は10日間又は11日間である。例えば、免疫グロブリンは、0.01mg/kg〜5mg/kgの間の用量で投与され、投与間の期間は、少なくとも約7日間又は8日間又は9日間又は10日間又は11日間である。例えば、免疫グロブリンは、0.1mg/kg〜2mg/kgの間の用量で投与され、投与間の期間は、少なくとも約7日間又は8日間又は9日間又は10日間又は11日間である。例えば、免疫グロブリンは、0.1mg/kg〜1mg/kgの間の用量で投与され、投与間の期間は、少なくとも約7日間又は8日間又は9日間又は10日間又は11日間である。一部の例において、投与間の期間は、少なくとも約11日間又は15日間且つ約20日間未満等、少なくとも約7日間且つ約22日間未満、例えば、少なくとも約13日間且つ約18日間未満である。
【0065】
一例において、免疫グロブリンは、0.1mg/kgの用量で投与され、投与間の期間は、6日間又は7日間又は8日間又は9日間又は10日間又は11日間又は14日間又は15日間である。
【0066】
一例において、免疫グロブリンは、1mg/kgの用量で投与され、投与間の期間は、6日間又は7日間又は8日間又は9日間又は10日間又は11日間又は14日間又は15日間又は20日間又は21日間又は22日間である。
【0067】
例えば、免疫グロブリンは、6mg/kg〜50mg/kgの間の用量で投与され、投与間の期間は、少なくとも約15日間である。例えば、免疫グロブリンは、10mg/kg〜30mg/kgの間の用量で投与され、投与間の期間は、少なくとも約14又は15日間である。例えば、免疫グロブリンは、20mg/kg〜30mg/kgの間の用量で投与され、投与間の期間は、少なくとも約14又は15日間である。一部の例において、投与間の期間は、少なくとも約21又は22日間且つ約65日間未満等、少なくとも約20日間且つ約70日間未満、例えば少なくとも約25日間且つ約57日間未満である。
【0068】
一例において、免疫グロブリンは、10mg/kgの用量で投与され、投与間の期間は、14日間又は15日間又は21日間又は22日間又は30日間又は48日間又は50日間又は56日間又は57日間又は60日間である。
【0069】
一例において、免疫グロブリンは、30mg/kgの用量で投与され、投与間の期間は、14日間又は15日間又は21日間又は22日間又は30日間又は48日間又は50日間又は56日間又は57日間又は60日間である。
【0070】
一例において、免疫グロブリンは、哺乳動物における循環免疫複合体及び/又は自己抗体及び/又はループス、例えばSLEの炎症若しくはその他の症状(例えば、本明細書に記載されている)のレベルを低下させる時間及び条件下で、ループス、例えばSLEを患う哺乳動物に投与される。一例において、免疫グロブリンは、1回又は複数回投与される。免疫グロブリンが複数回投与される場合、一部の例において、免疫グロブリンは、哺乳動物における循環免疫複合体及び/又は自己抗体及び/又はループス、例えばSLEの炎症若しくはその他の症状(例えば、本明細書に記載されている)のレベルを有意に低下させるのに十分な回数投与される。一部の例において、免疫グロブリンは、哺乳動物における循環免疫複合体及び/又は自己抗体及び/又はループス、例えばSLEの炎症若しくはその他の症状(例えば、本明細書に記載されている)のレベルが有意に低下しなくなったときに再投与される。
【0071】
一部の例において、免疫グロブリンが複数回投与される場合、免疫グロブリンは、哺乳動物における循環免疫複合体及び/又は自己抗体及び/又はループス、例えばSLEの炎症若しくはその他の症状(例えば、本明細書に記載されている)のレベルを、健常な被験体と同様の(例えば、10%又は20%以内の)レベルへと低下させるのに十分な回数投与される。一部の例において、免疫グロブリンは、哺乳動物における循環免疫複合体及び/又は自己抗体及び/又はループス、例えばSLEの炎症若しくはその他の症状(例えば、本明細書に記載されている)のレベルが有意に低下しなくなったときに再投与される。
【0072】
一例において、方法は、哺乳動物における循環免疫複合体及び/又は自己抗体及び/又はループス、例えばSLEの炎症若しくはその他の症状のレベルを検出するステップと、レベルが低下しない場合、免疫グロブリンの投与を反復するステップとを更に含む。
【0073】
一例において、哺乳動物における循環免疫複合体及び/又は自己抗体及び/又はループス、例えばSLEの炎症若しくはその他の症状のレベルは、健常な哺乳動物において検出されるレベルへと低下する。
【0074】
一例において、方法は、哺乳動物における循環中及び/又は炎症組織中のpDC及び/又は好塩基球の数を検出するステップを更に含む。
【0075】
一例において、方法は、循環中に検出されるpDC及び/又は好塩基球の数が、免疫グロブリンを投与する前の循環中のpDC及び/又は好塩基球の数の約50%以内である場合、免疫グロブリンの投与を反復するステップを更に含む。例えば、方法は、循環中に検出されるpDC及び/又は好塩基球の数が、免疫グロブリンを投与する前の循環中のpDC及び/又は好塩基球の数の約60%、70%、75%、80%、85%、90%又は95%以内である場合、免疫グロブリンの投与を反復するステップを更に含む。
【0076】
一例において、免疫グロブリンの投与が終了した後、被験体における循環中のpDC及び/又は好塩基球の数は増加する。例えば、被験体における循環中のpDC及び/又は好塩基球の数は、正常又は健常な被験体及び/又は正常又は健常な被験体の集団におけるレベルと同様のレベルへと増加する。例えば、被験体における循環中のpDC及び/又は好塩基球の数は、治療終了後約11日又は20日、22日又は30日又は57日又は60日又は65日又は70日後に増加する。
【0077】
本開示はまた、免疫グロブリンを本明細書に記載されている通り、いずれかの例に従って、ループス、例えばSLEを再発している、或いはループス、例えばSLEの再発発症リスクのある哺乳動物に投与して、これによりループス、例えばSLEの再発を予防するステップを含む、哺乳動物におけるループス、例えばSLEの再発を予防するための方法を提供する。
【0078】
一例において、方法は、予防上有効量の免疫グロブリン等、有効量の免疫グロブリンを投与するステップを含む。
【0079】
一例において、方法は、ループス、例えばSLEを再発している哺乳動物を同定するステップを更に含む。例えば、方法は、哺乳動物における循環中の自己抗体(例えば、Clqに対する)及び/又は抗dsDNA抗体及び/又は免疫複合体を検出するステップを含む。ループス、例えばSLEを再発している哺乳動物を決定するための方法は、本技術分野で公知のものである及び/又は本明細書に記載されている。
【0080】
一例において、免疫グロブリンは、本明細書に記載されている通り、本開示のいずれかの例に従って投与される。
【0081】
一例において、治療される哺乳動物は、このような治療を必要としている。例えば、哺乳動物は、この疾患又は状態を患う、或いは疾患又は状態の発症リスクがある、或いは疾患又は状態を再発している、或いは再発リスクがある。一例において、治療を必要としている哺乳動物は、例えば、健常な哺乳動物の集団において検出されるレベルと比べて増加レベルの循環中IFNaを有する。
【0082】
適切には、本開示の上述の例において、哺乳動物はヒトである。
【0083】
他の目的、実施例及び利点は、以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。当業者であれば、この詳細な説明から、本開示の精神及び範囲内における様々な変更及び修正が明らかとなるため、詳細な説明及び特定の実施例は、単に説明のために記載されている。更に、実施例は、本開示に開示されている方法の原則を示すものであり、当業者にとって明らかに有用となり得るあらゆる実施例への本開示の適用を具体的に説明しない。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】図1は、種々の細胞系列(X軸)における細胞当りのIL−3Ra発現の平均レベル(Y軸)を示すグラフ表示である。
【図2】図2は、IL−3Raと結合するアフコシル化ヒト化抗体(hz7G3V3)を種々の投薬量で投与する前後の好塩基球(左側)又はpDC(右側)のパーセンテージを示す2個のグラフ表示を含む図である。数値は、末梢血試料における全細胞のパーセンテージとして表す(Y軸)。抗体の投与時間に対する末梢血の採取時間をX軸に示す。抗体の投薬量も示す。
【図3】図3は、様々な条件下で種々の抗体によって誘導されたADCCに起因する細胞溶解レベルを示すグラフ表示である。試験した抗体の命名法は、本明細書の記載と一致する。抗体は、自己標的エフェクター条件下(pDC1−NK1、pDC2−NK2)及び同種異系間標的エフェクター条件下(pDC1−NK2、pDC2−NK1)で試験した。結果は、自発的溶解及びExtran(商標)により得られる最大の溶解の関数として決定された、特異的溶解のパーセンテージとして提示する。
【図4】図4は、C型CpGオリゴヌクレオチドで活性化されたpDCを含有するPBMCによって細胞培養培地に分泌されたIFNa量を示す2個のグラフ表示を含む図である。X軸に示されている濃度の提示されている抗体と共に細胞を培養した。ELISAを用いて検出されたIFNa量をY軸に示す。オリゴヌクレオチドによる活性化の6時間後(左側)及び24時間後(右側)に行ったアッセイの結果を示す。
【図5】図5は、C型CpGオリゴヌクレオチドで活性化されたpDCを含有するPBMCによって細胞培養培地に分泌されたIFNa量を示すグラフ表示である。種々の濃度の、IL−3Raと結合するアフコシル化ヒト化抗体(hz7G3V3)又はアイソタイプ対照抗体(図示されている)と共に細胞を培養した。ELISAを用いて検出されたIFNa量をY軸に示す。オリゴヌクレオチドによる活性化の24時間後に行ったアッセイの結果を示す。
【図6】図6は、C型CpGオリゴヌクレオチドで活性化されたpDCを含有するPBMCによって細胞培養培地に分泌されたIFNa量を示すグラフ表示である。種々の濃度の、IL−3Raと結合するアフコシル化ヒト化抗体(hz7G3V3)又はこの抗体のFabフラグメント(7G3 Fab)(図示されている)と共に細胞を培養した。ELISAを用いて検出されたIFNa量をY軸に示す。オリゴヌクレオチドによる活性化の24時間後に行ったアッセイの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0085】
詳細な説明
配列表の要点
配列番号1は、IL−3Ra鎖のアミノ酸配列である。
配列番号2は、hz7G3のVのアミノ酸配列である。
配列番号3は、hz7G3のVのアミノ酸配列である。
配列番号4は、hz7G3の重鎖のアミノ酸配列である。
配列番号5は、hz7G3の軽鎖のアミノ酸配列である。
配列番号6は、hz7G3V1の重鎖のアミノ酸配列である。
配列番号7は、hz7G3V2の重鎖のアミノ酸配列である。
【0086】
概要
本明細書の全体を通じて、他に特に記述がない限り、或いは文脈がそれ以外を必要としない限り、単一のステップ、組成物、ステップ群又は組成物群への言及は、1及び数種(即ち、1又は複数)のこれらステップ、組成物、ステップ群又は組成物群を包含すると解釈するべきである。
【0087】
当業者であれば、本開示が、特に説明されている以外のバリエーション及び改変を許容することを理解するであろう。本開示が、あらゆるこのようなバリエーション及び改変を含むことを理解されたし。本開示は、本明細書において個々に又は集合的に言及又は提示されているあらゆるステップ、特色、組成物及び化合物並びに前記ステップ又は特色のあらゆる組み合わせ又はその2以上も含む。
【0088】
本開示は、本明細書に記載されている例証のみを目的とする特定の実施例により定められた範囲に限定するべきではない。機能的均等の製品、組成物及び方法は、明らかに本開示の範囲内に含まれる。
【0089】
本明細書に開示されているいかなる実施例も、他に特に記述がない限り、本開示のその他の実施例へと適宜変更して適用できると解釈するべきである。
【0090】
他に特に規定がない限り、本明細書に用いられているあらゆる技術及び科学用語は、当該技術分野(例えば、細胞培養、分子遺伝学、免疫学、免疫組織化学、タンパク質化学及び生化学)の当業者によって一般に理解されるものと同じ意義を有すると解釈するべきである。
【0091】
他に断りがない限り、本開示において利用されている組換えタンパク質、細胞培養及び免疫学の技法は、標準手順であり、当業者にとって周知のものである。このような技法は、J. Perbal、A Practical Guide to Molecular Cloning、John Wiley and Sons (1984)、J.Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbour Laboratory Press (1989)、T.A.Brown (編集者)、Essential Molecular Biology: A Practical Approach、1及び2巻、IRL Press(1991)、D.M. Glover and B.D. Hames (編集者)、DNA Cloning: A Practical Approach、1〜4巻、IRL Press (1995及び1996)並びにF.M. Ausubelら(編集者)、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience (1988、現時点までのあらゆる最新情報を含む)、Ed Harlow and David Lane (編集者) Antibodies: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbour Laboratory(1988)並びにJ.E.Coliganら(編集者) Current Protocols in Immunology、John Wiley&Sons(現時点までのあらゆる最新情報を含む)等、ソース文献を通じて記載及び説明されている。
【0092】
本明細書における可変領域及びその一部、免疫グロブリン、抗体並びにそれらのフラグメントの記載及び定義は、Kabat「Sequences of Proteins of Immunological Interest」国立衛生研究所、メリーランド州ベテスダ、1987及び1991、Borkら、J Mol. Biol. 242、309〜320、1994、Chothia and Lesk J. Mol Biol. 196: 901〜917、1987、Chothiaら、Nature 342、877〜883、1989及び/又はAl-Lazikaniら、J Mol Biol 273、927〜948、1997における記述により更に明らかにすることができる。
【0093】
用語「及び/又は」、例えば、「X及び/又はY」は、「X及びY」又は「X又はY」のいずれかを意味すると理解するべきであり、両方の意義又はいずれかの意義に明確な支持を与えるものと解釈するべきである。
【0094】
本明細書を通じて、単語「含む(comprise)」又は「含む(comprises)」若しくは「含んでいる(comprising)」等の変化形は、記されている要素、整数若しくはステップ又は要素、整数若しくはステップ群の包含を暗示するが、その他の要素、整数若しくはステップ又は要素、整数若しくはステップ群を除外するものではないと理解されるであろう。
【0095】
本明細書において、用語「に由来する」は、指定の整数が、特定の供給源から得ることができるが、必ずしも該供給源から直接的に得られる必要はないことを示唆するもの解釈するべきである。
【0096】
定義(抜粋)(selected definition)
本明細書において,用語「免疫グロブリン」は、免疫グロブリンアイソタイプIgA、IgD、IgM、IgG及びIgE並びにそれらの抗原結合性フラグメント等、免疫グロブリン遺伝子複合体の任意の抗原結合性タンパク質産物を含む。例示的な免疫グロブリンは抗体である。免疫グロブリンは、ポリクローナルであってもモノクローナルであってもよく、モノクローナルが本開示の例示的な一形態である。適切に脱免疫化(de-immunized)されることにより、哺乳動物に投与された免疫グロブリンに対する哺乳動物による免疫応答を低下又は排除した任意の免疫グロブリンは、用語「免疫グロブリン」に含まれる。ヒト治療の特定の事例において、適切な免疫グロブリンは、キメラ、ヒト化又はヒト免疫グロブリンを含む。天然起源であれ、ヒト介入による産生であれ(例えば、組換えDNA技術による)、変化した又は変種アミノ酸残基、配列又は糖鎖付加を含む改変され、突然変異誘発されたキメラ及び/又はヒト化免疫グロブリンもまた、用語「免疫グロブリン」に含まれる。当業者(skilled addressee)であれば、本開示の「免疫グロブリン」が、IL−3Ra鎖と結合するよう適応した代替的免疫グロブリン又は非免疫グロブリンタンパク質スキャフォールドに基づく他の結合部分及び/又は配列と置換され得ることを理解するであろう。例示的なタンパク質として、Fc受容体結合部分が挙げられる。例えば、用語「免疫グロブリン」に包含されるタンパク質は、ドメイン抗体、ラクダ科動物抗体及び軟骨魚類由来の抗体(即ち、免疫グロブリン新規抗原受容体(immunoglobulin new antigen receptor)(IgNAR))を含む。一般に、ラクダ科動物抗体及びIgNARは、V3/4を含むがVを欠き、多くの場合、重鎖免疫グロブリンと呼ばれる。他の「免疫グロブリン」は、T細胞受容体と、例えば、可変領域を含む抗原結合部位のために抗原と結合できるタンパク質を含有する他の免疫グロブリン様ドメインとを含む。
【0097】
当業者であれば、「抗体」は、一般に、複数のポリペプチド鎖、例えば、Vを含むポリペプチドと、Vを含むポリペプチドで構成される可変領域を含むタンパク質であると考えられていることを認識するであろう。抗体は一般に、その一部が、定常領域又は定常フラグメント又はフラグメント結晶化可能(crystallizable)(Fc)に配置される定常ドメインも含む。V及びVは、相互作用して1又は数個の密接に関連した抗原と特異的に結合できる抗原結合領域を含むFvを形成する。一般に、哺乳動物由来の軽鎖は、κ軽鎖又はλ軽鎖のいずれかであり、哺乳動物由来の重鎖は、α、δ、ε、γ又はμである。抗体は、任意の型(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、クラス(例えば、IgGi、IgG、IgG、IgG、IgAi及びIgA)又はサブクラスのものとなることができる。用語「抗体」は、ヒト化抗体、霊長類化(primatized)抗体、ヒト抗体及びキメラ抗体も包含する。
【0098】
用語「全長抗体」、「インタクト抗体」又は「全抗体」は、抗体の抗原結合性フラグメントとは対照的に、その実質的インタクト型の抗体を意味するよう互換的に用いられる。特に、全抗体は、Fc領域を含み重鎖及び軽鎖を有する抗体を含む。定常ドメインは、野生型配列定常ドメイン(例えば、ヒト野生型配列定常ドメイン)又はそのアミノ酸配列変種となることができる。一部の事例において、インタクト抗体は、1又は複数のエフェクター機能を有することができる。
【0099】
抗体の「抗原結合性フラグメント」は、インタクト抗体の抗原結合及び/又は可変領域を含む。抗体フラグメントの例として、Fab、Fab’、F(ab’)及びFvフラグメント;二重特異性抗体;線状抗体(linear antibody);抗体フラグメントから形成された単鎖抗体分子及び多特異性(multispecific)抗体が挙げられる。
【0100】
本開示の文脈において、「エフェクター機能」は、細胞の殺傷をもたらす抗体のFc領域(天然配列Fc領域又はアミノ酸配列変種Fc領域)と結合する細胞又はタンパク質に媒介される生物活性を意味する。抗体によって誘導されるエフェクター機能の例として、補体依存性細胞傷害;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC);抗体依存性細胞食作用(ADCP);及びB細胞活性化が挙げられる。本開示の文脈において、用語「免疫グロブリンにより誘導されるエフェクター機能」又はその類似の用語は、「免疫グロブリンのエフェクター機能」又は類似の用語と互換的に用いられ、各用語は、その他の用語に対し逐語的な支持を与える。
【0101】
「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」又は「ADCC」は、特定の細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(「NK」)細胞、好中球及びマクロファージ)に存在するFc受容体(「FcR」)上に結合した分泌Igが、これら細胞傷害性エフェクター細胞と抗原生成標的細胞との特異的な結合を可能にし、その後、標的細胞の細胞毒による殺傷を可能にする細胞傷害性の一形態を意味する。対象分子のADCC活性を評価するため、in vitro ADCCアッセイを行うことができる。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞として、末梢血単核細胞(「PBMC」)及びNK細胞が挙げられる。
【0102】
本明細書において、「可変領域」は、抗原と特異的に結合できる本明細書に規定されている抗体の軽鎖及び/又は重鎖の部分を意味し、例えば、CDRのアミノ酸配列、即ち、CDR1、CDR2及びCDR3並びにフレームワーク領域(FR)を含む。例えば、可変領域は、3個のCDRと共に、3又は4個のFR(例えば、FR1、FR2、FR3及び必要に応じてFR4)を含む。Vは、重鎖の可変領域を意味する。Vは、軽鎖の可変領域を意味する。CDR及びFRに割り当てられたアミノ酸ポジションは、Kabat(1987及び1991(上記を参照))又は本開示に係る方法の実施における他の付番方式、例えば、Clothia and Leskの超可変ループ付番方式(1987及び/又は1989(上記を参照)及び/又はAl-Lazikaniら、1997(上記を参照))に従って規定することができる。例えば、Kabatの付番方式に従い、V FR及びCDRは、次の通りに配置される。Kabat付番方式に従って番号を振った、残基1〜30(FR1)、31〜25(CDR1)、36〜49(FR2)、50〜65(CDR2)、66〜94(FR3)、95〜102(CDR3)及び103〜113(FR4)。例えば、Kabatの付番方式に従い、V FR及びCDRは次の通りに置かれる。残基1〜23(FR1)、24〜34(CDR1)、35〜49(FR2)、50〜56(CDR2)、57〜88(FR3)、89〜97(CDR3)及び98〜107(FR4)。
【0103】
本明細書において、用語「相補性決定領域」(別称CDR、即ち、CDR1、CDR2及びCDR3)は、その配列が抗体間で変動する、FR間のループを形成する抗体可変ドメインのアミノ酸残基を意味する。CDRの一部又は全体は、抗原と結合する能力を抗体に付与する。各可変ドメインは通常、CDR1、CDR2及びCDR3として同定される3個のCDR領域を有する。各相補性決定領域は、Kabatら(1991)によって定義された「相補性決定領域」由来のアミノ酸残基及び/又は「超可変ループ」Chothia and Lesk(1987)若しくはその他の公知の付番技法又はIMGT付番方式(Le Francら、2003)等、それらの組み合わせ由来の残基を含むことができる。
【0104】
「フレームワーク領域」(以下、FR)は、CDR残基以外の可変ドメイン残基である。
【0105】
用語「定常領域」又は「フラグメント結晶化可能」又は「Fc」又は「Fc領域」又は「Fc部分」(本明細書において互換的に用いることができる)は、本明細書において、一般に(必須ではないが)糖鎖付加され、補体カスケードの1又は複数のFc受容体及び/又は成分と結合できる少なくとも1個の定常ドメインを含む抗体の部分を意味する。重鎖定常領域は、5種のアイソタイプ、α、δ、ε、γ又はμのうちいずれかから選択することができる。更に、種々のサブクラス(重鎖のIgGサブクラス等)の重鎖は、異なるエフェクター機能に関与し、よって、所望の重鎖定常領域を選ぶことにより、所望のエフェクター機能を有するタンパク質を産生することができる。例示的な重鎖定常領域は、ガンマ1(IgG1)、ガンマ2(IgG2)及びガンマ3(IgG3)又はそれらのハイブリッドである。
【0106】
「定常ドメイン」は、抗体(同一型、例えば、IgG又はIgM又はIgEの抗体)においてその配列が高度に類似した抗体ドメインである。抗体の定常領域は一般に、複数の定常ドメインを含み、例えば、γ、a及びδ 重鎖の定常領域は、2種の定常ドメインを含む。
【0107】
本明細書において、用語「特異的に結合する」は、免疫グロブリンが、別の抗原又は細胞とよりも高頻度で、より迅速に、より長期間及び/又はより高親和性で、IL−3Ra又はそれを発現する細胞と反応又は会合することを意味すると解釈するべきである。この定義を解釈すると、例えば、IL−3Raと特異的に結合する免疫グロブリンが、第二の抗原と特異的に結合できてもできなくてもよいことが理解される。そのようなものとして、「特異的結合」は、排他的結合又は別の抗原とは検出不能な結合を必ずしも必要としない。用語「特異的に結合する」は、本明細書において「選択的に結合」と互換的に用いられる。一般に、本明細書における結合への言及は、特異的結合を意味し、各用語は、その他の用語に対し明確な支持をも与えるものと理解されるべきである。
【0108】
用語「競合的に阻害する」は、免疫グロブリンが、7G3と称するモノクローナル抗体とIL−3Raとの結合を低下又は阻害することを意味すると理解するべきである。免疫グロブリンが、モノクローナル抗体7G3の結合を完全に阻害する必要はなく、むしろ結合を統計的に有意な量、例えば、少なくとも約10%又は20%又は30%又は40%又は50%又は60%又は70%又は80%又は90%又は95%低下させることのみを必要とすることは、前述から明らかになるであろう。結合の競合的阻害を決定するための方法は、本技術分野で公知のものである及び/又は本明細書に記載されている。例えば、モノクローナル抗体7G3は、免疫グロブリンの存在下又は不在下でIL−3Raに曝露される。免疫グロブリンの存在下において、免疫グロブリンの不在下よりも少量のモノクローナル抗体が結合する場合、免疫グロブリンは、モノクローナル抗体7G3の結合を競合的に阻害すると考えられる。
【0109】
2種のエピトープの文脈における「重複」は、2種のエピトープが、一方のエピトープと結合する免疫グロブリンが、他方のエピトープと結合する免疫グロブリンの結合を競合的に阻害するのに十分な数のアミノ酸残基を共有することを意味すると解釈するべきである。例えば、2種のエピトープは、少なくとも1個又は2個又は3個又は4個又は5個又は6個以上のアミノ酸を共有する。
【0110】
本明細書において、用語「中和する」は、免疫グロブリンが、細胞におけるIL−3介在性シグナル伝達を低下又は阻害できる、及び/又はIL−3Ra鎖及び/又はIL−3Ra鎖とIL−3RP鎖のヘテロ二量体(コロニー刺激因子2受容体としても知られる)と、IL−3との結合を低下又は阻害できることを意味すると解釈するべきである。
【0111】
本明細書における「モノクローナル抗体7G3」又は「7G3」への言及は、受託番号HB−12009としてATCCに寄託され、米国特許第6177078号明細書に記載されている7G3と称するハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体への言及である。モノクローナル抗体7G3は、例えば、BD Biosciences(米国ニュージャージー州)からも市販されている。
【0112】
用語「KabatのEU付番方式」は、免疫グロブリン重鎖の付番が、Kabatら、1991、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、アメリカ合衆国公衆衛生局(United States Public Health Service)、国立衛生研究所、ベテスダ、に教示されているEUインデックスに従うことを意味すると理解されるであろう。EUインデックスは、ヒトIgG1 EU抗体の残基付番に基づく。
【0113】
本明細書において、用語「治療」は、臨床病理の経過において治療されている個体又は細胞の自然経過を変化させるよう計画された臨床的介入を意味する。望ましい治療効果は、疾患進行速度の低下、病状の寛解又は緩和及び回復又は予後改善を含む。例えば、疾患(例えば、ループス)に関連する1又は複数の症状が軽減又は排除される場合、個体は首尾よく「治療」されている。
【0114】
本明細書において、用語「予防」は、個体における疾患の発生又は再発に関する予防法の提供を含む。個体は、疾患発症又は疾患再発し得る又はそのリスクを有し得るが、まだ疾患又は再発と診断されていない。
【0115】
本明細書において、疾患若しくは状態の発症若しくはその再発(例えば、SLE)又は再発の「リスクのある」哺乳動物は、本開示に係る治療前に、検出可能な疾患又は疾患症状を有しても有さなくてもよく、また、検出可能な疾患又は疾患症状を提示してもしなくてもよい。「リスクがある」とは、哺乳動物が、本技術分野で公知の及び/又は本明細書に記載されている疾患又は状態の発症と相関する測定可能なパラメータである1又は複数のリスク因子を有することを表す。
【0116】
「有効量」は、所望の治療上又は予防上の結果を得るのに必要な投薬量及び期間で少なくとも有効な量を意味する。有効量は、1又は複数の投与でもたらされ得る。本開示の一部の例において、用語「有効量」は、上文に記載されている疾患又は状態の治療を得るのに必要な量を意味する。有効量は、治療する疾患又は状態に応じて、また、治療されている哺乳動物に関連する体重、年齢、人種的背景、性別、健康状態及び/又は体調並びに他の要因に応じて変動し得る。通常、有効量は、医師によるルーチンの試行及び実験(trial and experimentation)により決定できる比較的広範囲(例えば、「投薬量」範囲)に含まれるであろう。有効量は、治療期間に亘り単一用量又は1回若しくは数回の反復用量で投与することができる。
【0117】
「治療上有効量」は、少なくとも、特定の障害(例えば、SLE)の測定可能な改善を得るのに必要とされる最小濃度である。本明細書における治療上有効量は、患者の病状、年齢、性別及び体重並びに個体における所望の応答を誘発する免疫グロブリンの能力等、要因に応じて変動し得る。治療上有効量は、また、治療上有益な効果が、免疫グロブリンの任意の毒性又は有害効果を上回る量である。
【0118】
「予防上有効量」は、所望の予防上の結果を得るのに必要な投薬量及び期間で有効な量を意味する。通常、予防的用量は、疾患に先立ち、或いは疾患初期において哺乳動物において用いられるため、予防上有効量は、治療上有効量未満となることができるが、必ずしもその通りではない。
【0119】
本明細書において、「形質細胞様樹状細胞」又は「pDC」は、IFNa及びIFNp等、I型インターフェロンを産生する血液末梢リンパ器官に存在する循環樹状細胞の一種である。ヒトpDCは、表面マーカーIL−3Ra、BDCA−2(CD303)、BDCA−4(CD304)並びにトール様受容体7及び9を発現する。一般に、ヒトpDCは、CD11c又はCD14を発現しない。典型的なヒトpDC表面表現型は、CD20、CD3CD14、CD19CD56、HLADR、CD11c及びCD123である。
【0120】
本明細書において、「好塩基球」は、種々のサイトカイン(例えば、IL−4、IL−6、IL−13)、ヒスタミン及びロイコトリン(leukotrine)を産生する稀少なタイプの顆粒球である。ヒト好塩基球は、IL−3Ra、FcsR1、CD49b、CD69又はCD203等、細胞表面マーカーを発現する。
【0121】
用語「そのままの抗体」は、別の化合物、例えば、毒性化合物又は放射標識とコンジュゲートしていない抗体を意味する。
【0122】
IL−3Ra鎖のアミノ酸配列は、Gene ID受託番号3563及び/又は配列番号1として教示されているが、これは命名法のためだけであり、限定を目的としない。
【0123】
本開示に従って治療される「哺乳動物」は、霊長類、家畜(例えば、ヒツジ、ウマ、ウシ、ブタ、ロバ)、コンパニオンアニマル(例えば、イヌやネコ等、ペット)、実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモット)、競技用動物(例えば、競走馬、ラクダ、グレイハウンド)又は捕獲野生動物となることができる。一例において、哺乳動物はヒトである。
【0124】
免疫グロブリン
本開示の方法における使用に適した例示的な免疫グロブリンは本明細書に記載されているが、次の段落は、追加的な例示的な免疫グロブリンについて記載する。
【0125】
一例において、免疫グロブリンは、IFNa分泌の誘導因子と接触させたPBMCからのIFNa分泌を低下させることができる。例えば、PBMCは、CpGオリゴヌクレオチド、例えば、C型CpGオリゴヌクレオチド等、トール様受容体(TLR)−7/9アゴニストに曝露される。例えば、細胞は、1μM又は2μM又は3μM又は4μM又は5μM濃度のC型CpGオリゴヌクレオチドと接触させる。一例において、IFNaのレベルは、免疫グロブリン不在下又はアイソタイプ対照免疫グロブリン(例えば、IL−3Raと結合しない)存在下のレベルと比較して低下した。一例において、IFNaのレベルは、約50%又は少なくとも60%又は少なくとも70%又は少なくとも80%又は少なくとも90%低下する。例えば、免疫グロブリンは、0.04μg/ml〜約4μg/mlの間等、0.01μg/ml〜約15μg/mlの間、例えば、0.1μg/ml〜約1μg/mlの間の濃度でIFNaの低下を達成することができる。
【0126】
別の一例において、免疫グロブリンは、PBMC集団における検出可能なpDC及び/又は好塩基球の数を低下させることができる。一例において、pDC及び/又は好塩基球の数は、免疫グロブリン不在下又はアイソタイプ対照免疫グロブリン(例えば、IL−3Raと結合しない)存在下のレベルと比較して低下する。一例において、pDC及び/又は好塩基球の数は、約50%又は少なくとも60%又は少なくとも70%又は少なくとも80%又は少なくとも90%低下する。一例において、免疫グロブリンは、PBMCを免疫グロブリンと接触させた後4時間以内に、或いはPBMCを免疫グロブリンと接触させた後24時間以内に、或いはPBMCを免疫グロブリンと接触させた後48時間以内にpDC及び/又は好塩基球の数を低下させることができる。
【0127】
更に別の一例において、免疫グロブリンは、哺乳動物(例えば、カニクイザル等、非ヒト霊長類)の循環中の好塩基球及び/又はpDC数を、2mg/kg以下の用量、例えば、1mg/kg以下の用量又は0.1mg/kg以下の用量で単回投与後少なくとも7日間低下させることができる。例えば、好塩基球及び/又はpDC数は、免疫グロブリン投与前の細胞数の70%(又は80%又は90%又は95%)未満へと低下する。一例において、細胞数は、末梢血中の全細胞のパーセンテージとして算出される。例えば、細胞は、少なくとも8日間又は10日間又は11日間低下する。例えば、pDC数は、少なくとも8日間又は9日間又は10日間又は11日間又は12日間又は13日間又は14日間又は15日間低下する。一例において、pDCの数は、少なくとも11日間低下する。例えば、好塩基球の数は、少なくとも5日間又は6日間又は7日間又は8日間又は9日間又は10日間低下する。一例において、好塩基球の数は、少なくとも8日間低下する。
【0128】
更に別の一例において、免疫グロブリンは、哺乳動物(例えば、カニクイザル等、非ヒト霊長類)の循環中の好塩基球及び/又はpDC数を、40mg/kg以下の用量、例えば、30mg/kg以下の用量又は10mg/kg以下の用量で単回投与後少なくとも15日間低下させることができる。例えば、好塩基球及び/又はpDC数は、免疫グロブリン投与前の細胞数の70%(又は80%又は90%又は95%)未満へと低下する。一例において、細胞数は、末梢血中の全細胞のパーセンテージとして算出される。例えば、細胞は、少なくとも21日間又は22日間又は30日間又は35日間又は40日間又は49日間又は50日間又は57日間又は63日間又は65日間又は70日間低下する。例えば、pDCの数は、少なくとも12日間又は13日間又は14日間又は15日間又は16日間又は17日間又は18日間又は19日間又は20日間低下する。一例において、pDCの数は、少なくとも15日間低下する。例えば、好塩基球の数は、少なくとも12日間又は13日間又は14日間又は15日間又は16日間又は17日間又は18日間又は19日間又は20日間又は21日間又は22日間又は23日間又は24日間又は25日間又は26日間又は27日間又は28日間低下する。一例において、好塩基球の数は、少なくとも15日間(例えば、10mg/kg用量の後)又は22日間(例えば、30mg/kg用量の後)低下する。
【0129】
一例において、免疫グロブリンは、哺乳動物(例えば、カニクイザル等、非ヒト霊長類)に投与しても、好中球及び/又はT細胞及び/又はB細胞及び/又は単球及び/又は赤血球の数を低下又は欠乏化させない。例えば、免疫グロブリンは、好中球及び/又はT細胞及び/又はB細胞及び/又は単球及び/又は赤血球の数を、免疫グロブリン投与前のレベル(複数可)と比較して約10%若しくは20%若しくは30%若しくは40%若しくは50%を超えて又は統計的に有意な量低下又は欠乏化させない。例えば、免疫グロブリンは、好中球及び/又はT細胞及び/又はB細胞及び/又は単球及び/又は赤血球の細胞死を誘導しない。
【0130】
抗体
一例において、本明細書に記載されている通り、いずれかの実施例における免疫グロブリンは抗体である。
【0131】
抗体を作製するための方法は、本技術分野で公知及び/又はHarlow and Lane (編集者) Antibodies: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、(1988)に記載されている。一般に、このような方法において、必要に応じて任意の適切な又は所望の担体、アジュバント又は医薬的に許容される賦形剤と共に製剤された、IL−3Raタンパク質若しくは免疫原性フラグメント又はそれらのエピトープ、或いはそれ(即ち、免疫原)を発現及び提示する細胞は、非ヒト動物、例えば、マウス、ニワトリ、ラット、ウサギ、モルモット、イヌ、ウマ、ウシ、ヤギ又はブタへと投与される。免疫原は、鼻腔内、筋肉内、皮下、静脈内、皮内、腹腔内又は他の公知の経路により投与することができる。
【0132】
ポリクローナル抗体の産生は、免疫化動物の血液を免疫化後の種々の時点でサンプリングしてモニターすることができる。所望の抗体価を得る必要がある場合、1又は複数回の更なる免疫化を行ってよい。適切な力価が得られるまで追加免疫及び力価測定のプロセスは反復される。所望のレベルの免疫原性が得られたら、免疫化動物の血を抜き、血清を単離して保存する及び/又はこの動物を用いてモノクローナル抗体(Mab)を作製する。
【0133】
モノクローナル抗体は、本開示により企図される抗体の例示的な一形態である。用語「モノクローナル抗体」又は「MAb」は、同一抗原(複数可)、例えば、抗原内の同一エピトープと結合できる同種抗体集団を意味する。この用語は、抗体の供給源又はその作製様式に関する限定を目的としない。
【0134】
Mabの産生のため、例えば、米国特許第4196265号明細書又はHarlow and Lane (1988)(上記を参照)に例証されている手順等、数多くの公知の技法のうちいずれか一法を用いることができる。
【0135】
例えば、適切な動物は、抗体産生細胞を刺激するのに十分な条件下において免疫原で免疫化される。ウサギ、マウス及びラット等、齧歯類は、例示的な動物である。ヒト免疫グロブリンタンパク質を発現するよう、また、例えば、マウス免疫グロブリンタンパク質を発現しないよう遺伝子操作されたマウスは、本開示の抗体の作製に用いることもできる(例えば、国際公開第2002/066630号パンフレットに記載されている)。
【0136】
免疫化の後、抗体を産生する潜在能力を有する体細胞、特にBリンパ球(B細胞)は、MAb作製プロトコールにおける使用のために選択される。これらの細胞は、脾臓、扁桃腺若しくはリンパ節生検又は末梢血試料から得ることができる。次に、免疫化動物に由来するB細胞は、一般に、免疫原で免疫化された動物と同じ種に由来する不死骨髄腫細胞の細胞と融合される。
【0137】
ハイブリッド細胞は、組織培養培地中にヌクレオチドの新規合成を遮断する薬剤を含む選択培地における培養により増幅される。例示的な薬剤は、アミノプテリン、メトトレキサート及びアザセリンである。
【0138】
増幅したハイブリドーマは、例えば、フローサイトメトリー及び/又は免疫組織化学及び/又はイムノアッセイ(例えば、ラジオイムノアッセイ、酵素イムノアッセイ、細胞傷害性アッセイ、プラークアッセイ、ドットイムノアッセイ等)によるもの等、抗体特異性及び/又は力価に関する機能的選択に付される。
【0139】
或いは、ABL−MYC技術(NeoClone、米国53713ウィスコンシン州マディソン)が、MAbを分泌する細胞系の産生に用いられる(例えば、Largaespadaら、J. Immunol. Methods. 197:85〜95、1996に記載されている)。
【0140】
抗体は、例えば、米国特許第6300064号明細書及び/又は米国特許第5885793号明細書に記載されている通り、ディスプレイライブラリー、例えば、ファージディスプレイライブラリーのスクリーニングによっても産生又は単離することができる。
【0141】
一例において、米国特許第6,177,078号明細書に記載されている通り、抗体は、7G3、6H6又は9F5である。これら抗体の改変バージョン(例えば、本明細書に記載されている方法による等、脱免疫化、キメラ又はヒト化バージョン)も企図されている。
【0142】
キメラ抗体
免疫グロブリンは、合成免疫グロブリンであることができる。一例において、本明細書に記載されている抗体は、キメラ抗体である。用語「キメラ抗体」は、重鎖及び/又は軽鎖部分が、特定の種(例えば、マウス等、マウス(murine))に由来する、或いは特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一又は相同であるが、一方、鎖(複数可)の残り部分が、別の種(例えば、ヒト等、霊長類)に由来する、或いは別の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一又は相同である抗体を意味する。通常、主にヒトドメインを有する抗体を産生するため、キメラ抗体は、齧歯類又はウサギ可変領域及びヒト定常領域を利用する。キメラ抗体を産生するための方法は、例えば、米国特許第4816567号明細書及び米国特許第5807715号明細書に記載されている。
【0143】
本開示は、例えば、ある生物種に由来する可変領域が、別の生物種に由来するタンパク質の領域と融合したキメラ免疫グロブリンも含む。例えば、本開示は、ある生物種に由来するT細胞受容体定常ドメインと融合した別個の生物種のT細胞受容体に由来する可変領域を含む免疫グロブリンを企図する。
【0144】
ヒト化及びヒト抗体
本開示の抗体は、ヒト化抗体でもヒト抗体でもよい。
【0145】
用語「ヒト化抗体」は、非ヒト生物種の抗体に由来する抗原結合部位又は可変領域と、ヒト抗体の構造及び/又は配列に基づくこの分子の残りの抗体構造とを有するキメラ抗体のサブクラスを意味すると理解するべきである。抗原結合部位は、ヒト抗体の可変ドメインにおける適切なFRに移植された非ヒト抗体由来の相補性決定領域(CDR)と、ヒト抗体由来の残りの領域とを含む。抗原結合部位は、野生型であっても、1又は複数のアミノ酸置換により改変されていてもよい。一部の例において、ヒト免疫グロブリンのFR残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。
【0146】
非ヒト抗体又はその一部(例えば、可変領域)をヒト化するための方法は、本技術分野で公知のものである。ヒト化は、米国特許第5225539号明細書又は米国特許第5585089号明細書の方法に従って行うことができる。抗体をヒト化するための他の方法も除外されない。
【0147】
抗体に関連する本明細書における用語「ヒト抗体」は、ヒト、例えば、ヒト生殖系列又は体細胞で発見された配列に由来する又は対応する可変領域(例えば、V3/4 V)と、必要に応じて定常領域とを有する抗体を意味する。「ヒト」抗体は、ヒト配列によってコードされないアミノ酸残基、例えば、ランダム又は部位特異的変異によってin vitroで導入された変異(特に、保存的置換に関与する変異、或いは抗体の少数の残基、例えば、1、2、3、4又は5個の抗体残基、例えば、抗体の1又は複数のCDRを構成する1、2、3、4又は5個の残基における変異)を含むことができる。このような「ヒト抗体」は、実際には、ヒトによって産生される必要はなく、むしろこれらは、組換え手段を用いて産生することができる、及び/又はヒト抗体定常及び/又は可変領域をコードする核酸を含むトランスジェニック動物(例えば、マウス)から単離することができる(例えば、上述通り)。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリー(例えば、米国特許第5885793号明細書に記載)等、本技術分野で公知の種々の技法を用いて産生することができる。
【0148】
選択されたエピトープを認識するヒト抗体は、「誘導選択(guided selection)」と呼ばれる技法を用いて作製することもできる。このアプローチにおいて、選択された非ヒトモノクローナル抗体、例えば、マウス抗体を用いて、該エピトープを認識する完全なヒト抗体の選択を誘導する(例えば、米国特許第5565332号明細書に記載)。
【0149】
脱免疫化抗体及び免疫グロブリン
本開示は、脱免疫化抗体又はタンパク質も企図する。脱免疫化抗体及びタンパク質は、1又は複数のエピトープ、例えば、B細胞エピトープ又はT細胞エピトープが除去されて(即ち、変異導入され)、これにより、哺乳動物が、該抗体又はタンパク質に対する免疫応答を生じる可能性を低下させる。脱免疫化抗体及びタンパク質を産生するための方法は、本技術分野で公知のものであり、例えば、国際公開第00/34317号パンフレット、国際公開第2004/108158号パンフレット及び国際公開第2004/064724号パンフレットに記載されている。
【0150】
当業者であれば、適切な変異を導入するため並びにその結果生じるタンパク質を発現及びアッセイするための方法は、本明細書の記載に基づき明らかとなるであろう。
【0151】
重鎖抗体
重鎖抗体は、重鎖を含むが軽鎖を含まないという点に限り、多くの他の形態の抗体とは構造的に異なる。従って、このような免疫グロブリンは、「重鎖のみ抗体(heavy chain only antibody)」とも呼ばれる。重鎖免疫グロブリンは、例えば、ラクダ科動物及び軟骨魚類に存在する(IgNARとも呼ばれる)。
【0152】
天然に存在する重鎖抗体に存在する可変領域は、一般に、従来の4本鎖抗体に存在する重鎖可変領域(「Vドメイン」と呼ばれる)や、従来の4本鎖抗体に存在する軽鎖可変領域(「Vドメイン」と呼ばれる)と区別するため、ラクダ科動物抗体においては「VHHドメイン」、IgNARにおいてはV−NARと呼ばれる。
【0153】
ラクダ科動物由来の重鎖抗体及びその可変領域並びにそれらの産生及び/又は単離及び/又は使用方法の概要は、とりわけ次の参考文献、国際公開第94/04678号パンフレット、国際公開第97/49805号パンフレット及び国際公開第97/49805号パンフレットに見出すことができる。
【0154】
軟骨魚類由来の重鎖免疫グロブリン及びその可変領域並びにそれらの産生及び/又は単離及び/又は使用方法の概要は、とりわけ国際公開第2005/118629号パンフレットに見出すことができる。
【0155】
抗体フラグメント
単一ドメイン抗体
一部の例において、本開示の免疫グロブリンは、単一ドメイン抗体(用語「ドメイン抗体」又は「dAb」と互換的に用いられる)である、或いはそれを含む。単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全体又は一部を含む単一ポリペプチド鎖である。特定の例において、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体(Domantis、Inc.、マサチューセッツ州ウォルサム;例えば、米国特許第6248516号明細書を参照)である。
【0156】
二重特異性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体
一部の例において、本開示の免疫グロブリンは、国際公開第98/044001号パンフレット及び/又は国際公開第94/007921号パンフレットに記載されているもの等、二重特異性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体又はより高次のタンパク質複合体である、或いはそれらを含む。
【0157】
例えば、二重特異性抗体は、各ポリペプチド鎖が構造V−X−V又はV−X−V(式中、Vは、抗体軽鎖可変領域であり、Vは、抗体重鎖可変領域であり、Xは、単一ポリペプチド鎖におけるVとVが会合する(又はFvを形成する)には不十分な残基を含むリンカーである、或いはこれは存在せず、一方のポリペプチド鎖のVが、他方のポリペプチド鎖のVと結合して抗原結合部位を形成する、即ち、1又は複数の抗原と特異的に結合できるFv分子を形成する)を含む2本の関連するポリペプチド鎖を含むタンパク質である。V及びVは、各ポリペプチド鎖で同一であってもよいし、或いはV及びVは、二特異性の二重特異性抗体を形成するよう、各ポリペプチド鎖で異なっていてもよい(即ち、異なる特異性を有する2種のFvを含む)。
【0158】
エフェクター活性を誘導できる二重特異性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体等は、IL−3Raと結合できる抗原結合ドメイン及び免疫細胞、例えばT細胞における細胞表面分子(例えば、CD3)と結合できる抗原結合ドメインを用いて産生することができる。
【0159】
単鎖Fv(scFv)フラグメント
当業者であれば、scFvが、単一のポリペプチド鎖にV及びV領域を含み、VとVとの間に、scFvが抗原結合のため(即ち、単一ポリペプチド鎖のVとVが、互いに会合してFvを形成するため)の所望の構造の形成を可能にするポリペプチドリンカーを含むことを認識するであろう。例えば、リンカーは、12アミノ酸を超える残基を含み、scFvのより好ましいリンカーの一つは(GlySer)である。
【0160】
本開示はまた、単一システイン残基がVのFR及びVのFRに導入され、ジスルフィド結合によって連結されたシステイン残基同士が安定的なFvを生じる、ジスルフィド安定化Fv(又はdiFv若しくはdsFv)を企図する。
【0161】
或いは、又は更に、本開示は、二量体scFv、即ち、非共有結合又は共有結合、例えば、ロイシンジッパードメイン(例えば、Fos又はJunに由来する)によって連結した2種のscFv分子を含むタンパク質を包含する。或いは、2種のscFvは、米国特許出願公開第20060263367号明細書に記載されている通り、両方のscFvが形成されて、抗原と結合するのに十分な長さのペプチドリンカーにより連結される。
【0162】
本開示はまた、エフェクター活性を誘導できる二量体scFvを企図する。例えば、一方のscFvは、IL−3Raと結合し、もう一方のscFvは、免疫細胞、例えばT細胞における細胞表面分子(例えば、CD3)と結合する。一例において、二量体タンパク質は、dAbとscFvの組み合わせである。エフェクター機能を誘導できる二特異性抗体フラグメントの例は、例えば、米国特許第7235641号明細書に記載されている。
【0163】
他の抗体及び抗体フラグメント
本開示はまた、
(i)米国特許第5,731,168号明細書に記載されている「鍵と鍵穴(key and hole)」二特異性タンパク質;
(ii)例えば、米国特許第4,676,980号明細書に記載されているヘテロコンジュゲートタンパク質;
(iii)例えば、米国特許第4,676,980号明細書に記載されている化学的架橋剤を用いて産生されたヘテロコンジュゲートタンパク質;及び
(iv)Fab(例えば、EP19930302894に記載)
等、他の抗体及び抗体フラグメントを企図する。
【0164】
Fc領域
本開示は、Fcと融合した免疫グロブリンの抗原結合性フラグメント等、抗体Fc領域を含む免疫グロブリンを包含する。
【0165】
本開示のタンパク質産生に有用なFc領域の配列は、多くの異なるソースから得ることができる。一部の例において、タンパク質のFc又はその一部は、ヒト抗体に由来する。更に、Fc又はその一部は、IgM、IgG、IgD、IgA及びIgE等、任意の抗体クラス並びにIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4等、任意の抗体アイソタイプに由来することができる。一例において、Fcは、ヒトのアイソタイプIgG1又はヒトのアイソタイプIgG2又はヒトのアイソタイプIgG3又は前述いずれかのハイブリッドである。
【0166】
一例において、Fc領域は、エフェクター機能を誘導することができる。例えば、Fc領域は、ヒトIgG1又はIgG3 Fc領域である。別の一例において、Fc領域は、IgG1及びIgG2 Fc領域のハイブリッド又はIgG1及びIgG3 Fc領域のハイブリッド又はIgG2及びIgG3 Fc領域のハイブリッドである。例示的なヒトIgG1及びIgG2 Fc領域のハイブリッドは、Chappelら、Proc. Natl Acad. Sci. USA、88:9036〜9040、1991に記載されている。
【0167】
Fc領域が、エフェクター機能を誘導できるか否か決定するための方法は、当業者であれば理解できるであろう及び/又は本明細書に記載されている。
【0168】
エフェクター機能
適切には、本開示の方法における使用に適切な抗IL−3Ra免疫グロブリンは、IL−3Ra形質細胞様樹状細胞の少なくとも部分的な欠乏化、実質的な欠乏化又は排除を促進する又は可能にするエフェクター機能を有する、或いはそれを提示する。このようなエフェクター機能は、Fc受容体との結合親和性の増強、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞媒介性食作用(ADCP)及び/又は補体依存性細胞傷害(CDC)であり得る。
【0169】
当業者であれば本明細書の記述に基づき理解できるように、本開示の一部の例は、エフェクター機能を誘導できる免疫グロブリンを利用する。
【0170】
一例において、免疫グロブリンは、ADCC等、エフェクター機能を誘導できるような様式でIL−3Raと結合する。
【0171】
一例において、免疫グロブリンは、ADCC等、エフェクター機能の誘導を可能にするIL−3Ra内のエピトープと結合する。
【0172】
別の一例において、免疫グロブリンは、哺乳動物のpDC及び/又は好塩基球におけるIL−3Raと結合して、これによりADCC等、エフェクター機能を誘導することができる。
【0173】
例えば、免疫グロブリンは、細胞表面におけるIL−3Raと、ADCC等、エフェクター機能の誘導に十分な時間結合し続ける。例えば、免疫グロブリンは、ADCC誘導が可能となるよう内部移行が早すぎることはない。
【0174】
或いは、又は更に、免疫グロブリンは、免疫エフェクター細胞が免疫グロブリンにおけるFc領域と結合し、ADCC等、エフェクター機能を誘導できる様式で、細胞表面におけるIL−3Raと結合する。例えば、免疫グロブリンのFc領域は、免疫グロブリンがIL−3Raと結合すると、免疫エフェクター細胞におけるFc受容体(例えば、FcyR)と相互作用できるような様式で露出している。本開示の文脈において、用語「免疫エフェクター細胞」は、Fc受容体を発現し、それと結合する細胞をADCC又はADCPにより殺傷することのできる任意の細胞を意味すると理解されるべきである。
【0175】
免疫グロブリンのエフェクター機能に関する上の各段落は、CDC誘導に適宜変更して適用するものと解釈するべきである。例えば、免疫グロブリンは、補体成分C1qが免疫グロブリンにおけるFc領域と結合してCDCを誘導できる様式で、細胞表面におけるIL−3Raと結合する。
【0176】
一例において、免疫グロブリンは、エフェクター機能のレベル増強を誘導することができる。
【0177】
一例において、Fc領域によって誘導されたエフェクター機能のレベルは、IgG1抗体の野生型Fc領域又はIgG3抗体の野生型Fc領域と比べて増強される。
【0178】
別の一例において、Fc領域は、誘導できるエフェクター機能のレベルが、改変なしのFc領域と比較して増加するよう改変される。このような改変は、アミノ酸レベル及び/又は二次構造レベル及び/又は三次構造レベル及び/又はFc領域の糖鎖付加であることができる。
【0179】
一例において、抗IL−3Ra免疫グロブリンは、ch7G3(野生型ヒトIgG1 Fc領域を含む7G3のキメラバージョン、国際公開第2009/070844号パンフレットにおいてCSL360と呼ばれる)又はhz7G3(野生型ヒトIgG1 Fc領域を含む7G3のヒト化バージョン)によって示されるレベルを超えるエフェクター機能のレベルを有する、或いはそれを提示する。本開示の文脈において、ch7G3及びhz7G3は、基本的に同一レベルのエフェクター機能を示す。
【0180】
当業者であれば、より優れたエフェクター機能は、例えば、より高い効果レベル、より持続的な効果又はより迅速な効果速度として、数多くの仕方のいずれかにおいて顕在化できることを理解するであろう。
【0181】
例えば、抗IL−3Ra免疫グロブリンは、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を含むエフェクター機能を有する、或いはそれを提示する。
【0182】
一例において、Fc領域は、そのエフェクター機能増強を誘導する能力を増加させる1又は複数のアミノ酸改変を含む。一例において、Fc領域は、1又は複数のFcyRとより高い親和性で結合する。一例において、Fc領域は、FcyRに対し、野生型Fc領域の親和性の1倍を超えてより高い、或いは野生型Fc領域の親和性の5倍を超えてより高い、或いは野生型Fc領域の親和性の5倍〜300倍の間を超えてより高い親和性を有する。一例において、Fc領域は、KabatのEUインデックスに従って付番した230、233、234、235、239、240、243、264、266、272、274、275、276、278、302、318、324、325、326、328、330、332及び335からなる群から選択されたポジションに、少なくとも1個のアミノ酸置換を含む。一例において、Fc領域は、KabatのEUインデックスに従って付番した
【数1】

からなる群から選択された少なくとも1個のアミノ酸置換を含む。一例において、Fc領域は、KabatのEUインデックスに従って付番した
【数2】

からなる群から選択されたアミノ酸置換を含む。
【0183】
別の一例において、Fc領域は、FcyRIIbよりもFcyRIIIaと効率的に結合する。例えば、Fc領域は、KabatのEUインデックスに従って付番した234、235、239、240、264、296、330及びI332からなる群から選択されたポジションに、少なくとも1個のアミノ酸置換を含む。一例において、Fc領域は、KabatのEUインデックスに従って付番したL234Y、L234I、L235I、S239D、S239E、S239N、S239Q、V240A、V240M、V264I、V264Y、Y296Q、A330L、A330Y、A330I、I332D及びI332Eからなる群から選択された少なくとも1個のアミノ酸置換を含む。例えば、Fc領域は、KabatのEUインデックスに従って付番した
【数3】

からなる群から選択されたアミノ酸置換を含む。
【0184】
更に別の一例において、Fc領域は、野生型Fc領域によって媒介されたレベルを超えるレベルでADCCを誘導する。例えば、Fc領域は、野生型Fc領域によって誘導されるレベルの5倍を超えてより高い、或いは5倍〜1000倍の間を超えてより高いレベルでADCCを誘導する。一例において、Fc領域は、KabatのEUインデックスに従って付番した230、233、234、235、239、240、243、264、266、272、274、275、276、278、302、318、324、325、326、328、330、332及び335からなる群から選択されたポジションに、少なくとも1個のアミノ酸置換を含む。一例において、Fc領域は、KabatのEUインデックスに従って付番した
【数4】

からなる群から選択された少なくとも1個のアミノ酸置換を含む。一例において、Fc領域は、KabatのEUインデックスに従って付番した
【数5】

からなる群から選択されたアミノ酸置換を含む。
【0185】
一例において、Fc領域は、KabatのEUインデックスに従って付番した次のアミノ酸置換、S239D/I332Eを含む。このFc領域は、野生型Fc領域と比較してFcyRIIIaに対する親和性が約14倍増加し、野生型Fc領域と比較して約3.3増加したADCC誘導能を有する。
【0186】
一例において、Fc領域は、KabatのEUインデックスに従って付番した次のアミノ酸置換、S239D/A330L/I332Eを含む。このFc領域は、野生型Fc領域と比較してFcyRIIIaに対する親和性が約138倍増加し、野生型Fc領域と比較して約323増加したADCC誘導能を有する。
【0187】
エフェクター機能を誘導するFc領域の能力を増加させる追加的なアミノ酸置換は、本技術分野で公知のものである及び/又は例えば、米国特許第6737056号明細書又は米国特許第7317091号明細書に記載されている。
【0188】
一例において、Fc領域の糖鎖付加は、そのエフェクター機能増強を誘導する能力を増加するよう変化させられる。この点について、哺乳動物細胞によって産生された天然の抗体は通常、一般に、N型結合によりFc領域C2ドメインのAsn297と結合した分岐型の二分岐オリゴ糖(branched, biantennary oligosaccharide)を含む。オリゴ糖は、種々の炭水化物、例えば、マンノース、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース及びシアル酸並びに二分岐オリゴ糖構造の「基部(stem)」においてGlcNAcと結合したフコースを含むことができる。一部の例において、本開示に係るFc領域は、Fc領域と結合した(直接的又は間接的に)フコースを欠く、即ち、Fc領域が「アフコシル化」した炭水化物構造を含む。このような変種は、ADCCを誘導する能力が改善され得る。アフコシル化抗体を産生するための方法は、a−1,6−フコシル基転移酵素(FUT8)を発現できない細胞系において免疫グロブリンを発現させるステップ(例えば、Yumane-Ohnukiら、Biotechnol. Bioengineer.、87:614〜622、2004に記載)、FUT8に対する低分子干渉RNAを発現する細胞において免疫グロブリンを発現させるステップ(例えば、Moriら、Biotechnol. Bioengineer.、88:901〜908、2004に記載)、グアノシン二リン酸(GDP)−マンノース4,6−デヒドラターゼ(GMD)を発現できない細胞において免疫グロブリンを発現させるステップ(例えば、Kandaら、J. Biotechnol.、130:300〜310、2007に記載)を含む。本開示はまた、例えば、β−(1,4)−N−アセチルグルコサミンイル転移酵素III(GnT−III)を発現するよう改変された細胞系を用いて産生した、フコシル化レベルが低下した免疫グロブリンの使用を企図する(例えば、Umanaら、Nat. Biotechnol.、17:176〜180、1999に記載)。
【0189】
一例において、本開示に係る免疫グロブリンは、アフコシル化されている。例えば、免疫グロブリンは、FUT8を発現しない細胞(例えば、CHO細胞等、哺乳動物細胞)において産生される。
【0190】
他の方法として、Fc介在性エフェクター機能増強を誘導できる抗体を生得的に産生する細胞系の使用が挙げられる(例えば、ウイルスワクチン生産のためのアヒル胚由来幹細胞、国際公開第2008/129058号パンフレット;鳥類EBX(登録商標)細胞における組換えタンパク質産生、国際公開第2008/142124号パンフレット)。
【0191】
本開示の方法において有用な免疫グロブリンは、オリゴ糖が二分された、例えば、Fc領域と結合した二分岐オリゴ糖がGlcNAcによって二分された免疫グロブリンを含む。このような免疫グロブリンは、フコシル化が低下した及び/又はADCC機能が改善され得る。このような免疫グロブリンの例は、例えば、米国特許第6602684号明細書及び米国特許出願公開第20050123546号明細書に記載されている。
【0192】
オリゴ糖における少なくとも1個のガラクトース残基がFc領域と結合した免疫グロブリンも企図される。このような免疫グロブリンは、CDC機能が改善され得る。このような免疫グロブリンは、例えば、国際公開第1997/30087号パンフレット及び国際公開第1999/22764号パンフレットに記載されている。
【0193】
ADCC活性を示す免疫グロブリンの非限定的な例として、本明細書において「hz7G3V1」、「hz7G3V2」及び「hz7G3V3」と称するモノクローナル抗体が挙げられる。各事例において、これらの免疫グロブリンによって示されるエフェクター機能のレベルは、ch7G3(野生型ヒトIgG1 Fc領域を含む7G3のキメラ型)又はhz7G3と比べて増強される、或いはそれを超える。
【0194】
別の非限定的な例において、異なるエピトープとの結合の又は内部移行速度がより遅い(例えば、ch7G3又はhz7G3と比較して)結果、抗IL−3Ra免疫グロブリンは、ADCC機能増強等、エフェクター機能を増強して新規に産生することができる。
【0195】
エフェクター機能を誘導する免疫グロブリンの能力を決定するための方法は、本技術分野で公知のものである及び/又は本明細書においてより詳細に記載されている。
【0196】
追加的な改変
本開示は、免疫グロブリンに対する追加的な改変も企図する。
【0197】
例えば、免疫グロブリンは、免疫グロブリンの半減期を増加させる1又は複数のアミノ酸置換を含む。例えば、免疫グロブリンは、新生児Fc領域(FcRn)に対するFc領域の親和性を増加させる1又は複数のアミノ酸置換を含むFc領域を含む。例えば、Fc領域は、より低いpH、例えば、約pH6.0においてFcRnに対する親和性を増加させて、エンドソームにおけるFc/FcRn結合を促進した。一例において、Fc領域は、約pH6におけるFcRnに対する親和性を、約pH7.4におけるその親和性と比較して増加させ、これは、細胞による再利用に続くFcの血液中への再放出を促進する。これらのアミノ酸置換は、血液からのクリアランスを低下させることによる、免疫グロブリンの半減期延長に有用である。
【0198】
例示的なアミノ酸置換は、KabatのEU付番方式に従ったT250Q及び/又はM428Lを含む。追加的な又は代替的なアミノ酸置換は、例えば、米国特許出願公開第20070135620号明細書に記載されている。
【0199】
タンパク質産生
一例において、本明細書に記載されているいずれかの例における免疫グロブリンは、例えば、本明細書に記載されている通り及び/又は本技術分野で公知の通りに、免疫グロブリン産生に十分な条件下でハイブリドーマを培養することにより産生される。
【0200】
組換え発現
別の一例において、本明細書に記載されているいずれかの例における免疫グロブリンは組換えである。
【0201】
組換えタンパク質の場合、これをコードする核酸は発現ベクターにクローニングされ、次にベクターは、そのままでは免疫グロブリンタンパク質を産生しない大腸菌(E.coli)細胞、酵母細胞、昆虫細胞又はサルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児由来腎臓(HEK)細胞若しくは骨髄腫細胞等の哺乳動物細胞等、宿主細胞にトランスフェクトされる。免疫グロブリンの発現に用いられる例示的な細胞は、CHO細胞、骨髄腫細胞又はHEK細胞である。これらの目標を達成するための分子クローニング技法は、本技術分野で公知のものであり、例えば、Ausubelら(編集者)、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience(1988、現時点までのあらゆる最新情報を含む)又はSambrookら、Molecularar Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)に記載されている。幅広いクローニング及びin vitro増幅方法が、組換え核酸の構築に適切である。組換え抗体を産生する方法も本技術分野で公知のものである。米国特許第4,816,567号明細書又は米国特許第5530101号明細書を参照されたし。
【0202】
単離後、核酸は、更にクローニングするため(DNA増幅)又は無細胞系若しくは細胞における発現のために、発現構築物又は発現ベクターにおけるプロモーターに作動可能に連結して挿入される。
【0203】
本明細書において、用語「プロモーター」は、その最も広範な文脈において解釈するべきであり、例えば、発生及び/又は外部刺激に応答して、或いは組織特異的様式で、核酸の発現を変化させる追加的な調節エレメント(例えば、上流活性化配列、転写因子結合部位、エンハンサー及びサイレンサー)あり又はなしの、正確な転写開始に必要とされるTATAボックス又はイニシエータエレメント等、ゲノム遺伝子の転写調節配列を含む。この文脈において、用語「プロモーター」は、それに作動可能に連結した核酸の発現をもたらす、活性化する又は増強する組換え、合成若しくは融合核酸又はその誘導体の説明にも用いられる。例示的なプロモーターは、前記核酸の発現を更に増強するため及び/又は空間的発現及び/又は時間的発現を変化させるため、1又は複数の特異的調節エレメントの追加的なコピーを含有することができる。
【0204】
本明細書において、用語「に作動可能に連結した」は、核酸の発現がプロモーターによって制御されるような、核酸に対するプロモーターの配置を意味する。
【0205】
細胞における発現のために多くのベクターが利用できる。ベクター構成要素は一般に、次のうち1又は複数を含むが、これらに限定されない;シグナル配列、免疫グロブリンをコードする配列(例えば、本明細書に提供されている情報に由来する)、エンハンサーエレメント、プロモーター及び転写終結配列。当業者であれば、免疫グロブリン発現のために適切な配列を認識するであろう。例示的なシグナル配列は、原核生物分泌シグナル(例えば、pelB、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、Ipp又は熱安定性エンテロトキシンII)、酵母分泌シグナル(例えば、インベルターゼリーダー、a因子リーダー又は酸性ホスファターゼリーダー)又は哺乳動物分泌シグナル(例えば、単純ヘルペスgDシグナル)を含む。
【0206】
哺乳動物細胞において活性を有する例示的なプロモーターは、サイトメガロウイルス最初期プロモーター(CMV−IE)、ヒト伸長因子1−ciプロモーター(EF1)、核内低分子RNAプロモーター(U1a及びU1b)、cc−ミオシン重鎖プロモーター、サルウイルス40プロモーター(SV40)、ラウス肉腫ウイルスプロモーター(RSV)、アデノウイルス主要後期プロモーター、β−アクチンプロモーター;CMVエンハンサー/β−アクチンプロモーター若しくは免疫グロブリンプロモーターを含むハイブリッド調節エレメント又はそれらの活性フラグメントを含む。有用な哺乳動物宿主細胞系の例は、SV40によって形質転換したサル腎臓CV1系統(COS−7、ATCC CRL 1651);ヒト胎児由来腎臓系統(293又は懸濁培養における増殖のためにサブクローニングした293細胞);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);又はチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)である。
【0207】
例えば、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)及び分裂酵母(S. pombe)を含む群から選択される酵母細胞等、酵母細胞における発現に適切な典型的なプロモーターとして、ADH1プロモーター、GAL1プロモーター、GAL4プロモーター、CUP1プロモーター、PHO5プロモーター、nmtプロモーター、RPR1プロモーター又はTEF1プロモーターが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0208】
単離された核酸又はこれを含む発現構築物を発現のために細胞に導入するための手段は、当業者にとって公知のものである。所定の細胞に用いられる技法は、公知の成功した技法に依存する。組換えDNAを細胞に導入するための手段は、とりわけマイクロインジェクション、DEAE−デキストランを介したトランスフェクション、リポフェクタミン(Gibco、米国メリーランド州)及び/又はcellfectin(Gibco、米国メリーランド州)を用いることによる等、リポソームを介したトランスフェクション、PEG介在性DNA取り込み、エレクトロポレーション及びDNAコーティングしたタングステン又は金粒子(Agracetus Inc.、米国ウィスコンシン州)使用による等の微粒子銃(microparticle bombardment)を含む。
【0209】
免疫グロブリン産生に用いられる宿主細胞は、用いる細胞型に応じて様々な培地で培養することができる。HamのFl0(Sigma)、基礎培地((MEM)、(Sigma)、RPMl−1640(Sigma)及びダルベッコ変法イーグル培地((DMEM)、Sigma)等、市販の培地が、哺乳動物細胞の培養に適切である。本明細書に記されている他の細胞型を培養するための培地は、本技術分野で公知のものである。
【0210】
タンパク質の単離
免疫グロブリンを精製するための方法は、本技術分野で公知のものである及び/又は本明細書に記載されている。
【0211】
免疫グロブリンが培地に分泌される場合、このような発現系から得られる上清は先ず一般に、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えば、Amicon又はMillipore Pellicon限外濾過装置を用いて濃縮される。タンパク質分解を阻害するため、PMSF等、プロテアーゼ阻害剤が前述のステップのうちいずれかに含まれていてよく、外来性汚染物の増殖を予防するために抗生物質が含まれていてよい。
【0212】
細胞から調製された免疫グロブリンは、例えば、イオン交換、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、親和性クロマトグラフィー(例えば、プロテインA親和性クロマトグラフィー若しくはプロテインGクロマトグラフィー)又は前述のいずれかの組み合わせを用いて精製することができる。これらの方法は、本技術分野で公知のものであり、例えば、国際公開第99/57134号パンフレット又はEd Harlow and David Lane (編集者) Antibodies: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbour Laboratory、(1988)に記載されている。
【0213】
当業者であれば、免疫グロブリンは、精製又は検出を容易にするタグ、例えば、ポリヒスチジンタグ(例えば、ヘキサヒスチジンタグ)又はインフルエンザウイルス赤血球凝集素(HA)タグ又はサルウイルス5(V5)タグ又はFLAGタグ又はグルタチオンS−転移酵素(GST)タグを含むよう改変できることも認識できるであろう。次に、その結果得られる免疫グロブリンは、親和性精製等、本技術分野で公知の方法を用いて精製される。例えば、ヘキサhisタグを含む免疫グロブリンは、この免疫グロブリンを含む試料を、固体又は半固体担体上に固定化されたヘキサhisタグと特異的に結合するニッケル−ニトリロ三酢酸(Ni−NTA)と接触させ、試料を洗浄して未結合の免疫グロブリンを除去し、その後に結合した免疫グロブリンを溶出することにより精製される。或いは、又は更に、タグと結合するリガンド又は抗体が、親和性精製方法において用いられる。
【0214】
免疫グロブリン活性のアッセイ
競合的結合の決定
モノクローナル抗体7G3の結合を競合的に阻害する免疫グロブリンを決定するためのアッセイは、当業者であれば理解できるであろう。例えば、7G3は、検出可能な標識、例えば、蛍光標識又は放射性標識とコンジュゲートされる。次に、標識抗体及び検査免疫グロブリンが混合され、IL−3Ra若しくはそのエピトープ又はそれを発現する細胞と接触される。次に、標識7G3のレベルが決定され、標識抗体が免疫グロブリンの不在下でIL−3Ra、エピトープ又は細胞と接触した場合に決定されたレベルと比較される。検査免疫グロブリンの存在下における標識7G3のレベルが、免疫グロブリンなしと比較して低下する場合、免疫グロブリンは、7G3とIL−3Raとの結合を競合的に阻害すると考えられる。
【0215】
必要に応じて、検査免疫グロブリンは、7G3とは異なる標識とコンジュゲートされる。この代替的標識は、検査免疫グロブリンと、IL−3Ra又はエピトープ又は細胞との結合レベルの検出を可能にする。
【0216】
別の一例において、免疫グロブリンは、IL−3Raを7G3と接触させる前にIL−3Raと結合してよい。免疫グロブリンの存在下において結合した7G3量の、免疫グロブリンの不在下と比較した低下は、免疫グロブリンが、IL−3Raと7G3の結合を競合的に阻害することを示す。標識免疫グロブリンを用いて、また、先ず7G3をIL−3Raと結合することにより、相互アッセイを行うことができる。この場合、7G3の存在下でIL−3Raと結合した標識免疫グロブリン量の、7G3の不在下と比較した低下は、免疫グロブリンが、7G3とIL−3Raの結合を競合的に阻害することを示す。
【0217】
別の一例において、免疫グロブリンによって結合されたエピトープは、7G3によって結合されたエピトープと同一又は重複しているか決定するようマッピングされる。エピトープマッピング法は、当業者であれば理解できるであろう。例えば、IL−3Ra配列に亘る一連の重複ペプチド、例えば、10〜15アミノ酸を含むペプチドが産生される。次に、免疫グロブリンは各ペプチドと接触され、免疫グロブリンと結合するペプチド(複数可)が決定される。この操作は、免疫グロブリンが結合するエピトープを含むペプチド(複数可)の決定を可能にする。複数の非隣接ペプチドが免疫グロブリンによって結合される場合、免疫グロブリンは、立体構造エピトープと結合することができる。
【0218】
或いは、又は更に、IL−3Ra内のアミノ酸残基は、例えば、アラニンスキャニング変異誘発により変異導入され、免疫グロブリン及び/又は7G3結合を低下又は阻害する変異が決定される。免疫グロブリンの結合を低下又は阻害するいずれかの変異は、免疫グロブリンによって結合されるエピトープ内に存在する可能性がある。
【0219】
或いは、又は更に、免疫グロブリンは、7G3が結合するエピトープを用いて産生され、よって、同一エピトープと結合する可能性がある。
【0220】
必要に応じて、IL−3Ra又はそのエピトープに対する免疫グロブリンの解離定数(Kd)が決定される。IL−3Ra結合免疫グロブリンの「Kd」又は「Kd値」は、一例において、放射標識IL−3Ra結合アッセイ(RIA)により測定される。このアッセイは、滴定系列の非標識IL−3Raの存在下で最小濃度の放射性IL−3Raにより免疫グロブリンを平衡化する。洗浄して未結合IL−3Raを除去した後、放射能の量を決定すると、この値はタンパク質のKdを示す。
【0221】
別の例において、Kd又はKd値は、表面プラズモン共鳴アッセイを用いることにより、例えば、BIAcore表面プラズモン共鳴(BIAcore、Inc.、ニュージャージー州ピスカタウェイ)を固定化IL−3Raと共に用いることによって測定される。
【0222】
一部の例において、IL−3Raとの結合に関して競合する可能性があるため、7G3と同様のKd又はより高いKdを有するタンパク質が選択される。
【0223】
中和の決定
本開示の一部の例において、免疫グロブリンは、IL−3シグナル伝達を中和することができる。
【0224】
受容体を介してリガンドのシグナル伝達を中和する免疫グロブリンの能力を評価するための種々のアッセイは、本技術分野で公知のものである。
【0225】
一例において、免疫グロブリンは、3Ra鎖及び/又はIL−3Ra鎖とIL−3RP鎖のヘテロ二量体と、IL−3との結合を低下又は阻害する。これらのアッセイは、標識IL−3及び/又は標識免疫グロブリンを用いて本明細書に記載されている競合的結合アッセイとして行うことができる。
【0226】
別の一例において、免疫グロブリンは、好塩基球からのIL−3介在性ヒスタミン放出を低下又は阻害する。例えば、好塩基球を含む低密度の白血球は、IgE、IL−3及び種々の濃度の免疫グロブリンと共にインキュベートされる。対照細胞は、免疫グロブリン(陽性対照)又はIL−3(陰性対照)を含まない。次に、ヒスタミン放出レベルは、標準技法、例えば、RIAを用いて評価される。ヒスタミン放出レベルを陽性対照に満たないレベルへと低下させる免疫グロブリンは、IL−3シグナル伝達を中和すると考えられる。一例において、低下のレベルは、免疫グロブリン濃度と相関する。IL−3介在性ヒスタミン放出を評価するための例示的な方法は、例えば、Lopezら、J. Cell. Physiol.、145:69、1990に記載されている。
【0227】
更に別の一例において、免疫グロブリンは、白血病性細胞系TF−1のIL−3介在性増殖を低下又は阻害する。例えば、TF−1細胞は、IL−3又はGM−CSFなしで、増殖を停止するのに十分な時間(例えば、24〜48時間)培養される。次に、細胞は、IL−3及び種々の濃度の免疫グロブリンの存在下で培養される。対照細胞は、免疫グロブリン(陽性対照)又はIL−3(陰性対照)を含まない。次に、細胞増殖は、標準技法、例えば、3H−チミジン取り込みを用いて評価される。IL−3の存在下で細胞増殖を陽性対照に満たないレベルへと低下又は阻害する免疫グロブリンは、IL−3シグナル伝達を中和すると考えられる。
【0228】
IL−3シグナル伝達中和を評価するための別のアッセイは、免疫グロブリンが、内皮細胞に対するIL−3介在性効果を低下又は阻害するか否か決定するステップを含む。例えば、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)は、IL−3(必要に応じて、IFN−γと共に)及び種々の濃度の免疫グロブリンの存在下で培養される。次に、分泌されたIL−6の量は、例えば、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を用いて評価される。対照細胞は、免疫グロブリン(陽性対照)又はIL−3(陰性対照)を含まない。IL−3の存在下でIL−6産生を陽性対照に満たないレベルへと低下又は阻害する免疫グロブリンは、IL−3シグナル伝達を中和すると考えられる。
【0229】
本開示により、IL−3シグナル伝達の中和を評価するための他の方法が企図されている。
【0230】
エフェクター機能の決定
ADCC活性を評価するための方法は、本技術分野で公知のものである。
【0231】
一例において、ADCC活性のレベルは、51Cr放出アッセイ、ユーロピウム放出アッセイ又は35S放出アッセイを用いて評価される。これらアッセイのそれぞれにおいて、IL−3Raを発現する細胞は、化合物が細胞によって取り込まれるのに十分な時間及び条件下で、記述されている化合物のうち1又は複数と共に培養される。35S放出アッセイの事例において、IL−3Raを発現する細胞は、標識アミノ酸が新規合成タンパク質へと取り込まれるのに十分な時間、35S標識メチオニン及び/又はシステインと共に培養することができる。次に、細胞は、免疫グロブリンの存在下又は不在下、免疫エフェクター細胞、例えば、末梢血単核細胞(PBMC)及び/又はNK細胞の存在下で培養される。次に、細胞培養培地における51Cr、ユーロピウム及び/又は35Sの量が検出され、免疫グロブリンの不在下と比較した免疫グロブリンの存在下における増加は、免疫グロブリンがエフェクター機能を有することを示す。免疫グロブリンによって誘導されるADCCレベルを評価するためのアッセイを開示する例示的な刊行物として、Hellstromら、Proc. Natl Acad. Sci. USA 55:7059〜7063、1986及びBruggemannら、J. Exp. Med. 7(5(5:1351〜1361、1987が挙げられる。
【0232】
免疫グロブリンによって誘導されるADCCレベルを評価するための他のアッセイとして、ACTI(商標)フローサイトメトリー用非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology、Inc.米国カリフォルニア州)又はCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega、米国ウィスコンシン州)が挙げられる。
【0233】
或いは、又は更に、免疫グロブリンのエフェクター機能は、例えば、米国特許第7317091号明細書に記載されている通り、1又は複数のFcyRに対するその親和性を決定することにより評価される。
【0234】
C1q結合アッセイは、免疫グロブリンが、C1qと結合でき、CDCを誘導できることを確認するために行うこともできる。補体活性化を評価するため、CDCアッセイを行うことができる(例えば、Gazzano-Santoroら、J. Immunol. Methods 202:163、1996を参照)。
【0235】
治療有効性の評価
In Vitroアッセイ
本明細書に記載されている疾患又は状態、例えば、ループスを治療する免疫グロブリンの能力の評価に、種々のin vitroアッセイが利用できる。
【0236】
例えば、pDC及び/又は好塩基球又はそれらを含む細胞集団(例えば、PBMC)は、免疫グロブリン及び疾患又は状態において生じる細胞の誘導因子(例えば、ループスの場合はCpGオリゴヌクレオチド及び/又は免疫複合体)の存在下又は不在下で培養される。次に、疾患又は状態の治療における免疫グロブリンの有効性は、例えば、ELISAを用いて細胞培養培地に分泌されるIFNaレベルを決定することにより評価される。或いは、又は更に、ヒスタミン分泌又はIL−4、IL−6及び/又はIL−13分泌のレベルが評価される。これらサイトカインのうちいずれかのレベルの、免疫グロブリンの不在下(又はアイソタイプ対照免疫グロブリンの存在下)と比較した低下は、免疫グロブリンが疾患又は状態の治療に適切であることを示す。或いは、又は更に、細胞死のレベルが評価される。細胞死の増加(特に、他の細胞型の細胞死がバックグラウンドを超えて検出可能に増加しない、pDC及び/又は好塩基球の細胞死)は、疾患又は状態の治療に適切な免疫グロブリンを示す。この点について、本明細書で上に述べた通り、IFNa等、サイトカインは、一部の疾患/状態、例えば、ループスにおいて役割を果たすと考えられる。従って、IFNa産生を低下させる免疫グロブリンは、このような状態の治療に適切であると考えられる。
【0237】
In Vivoアッセイ
一例において、疾患又は状態を治療する免疫グロブリンの有効性は、in vivoアッセイを用いて評価される。
【0238】
例えば、免疫グロブリンが非ヒト動物(例えば、非ヒト霊長類)に投与され、循環中のpDC及び/又は好塩基球の数/レベルが評価される。投与前及び/又は免疫グロブリンが投与されていない対照哺乳動物と比較して、pDC及び/又は好塩基球の数/レベルを低下させる免疫グロブリンは、疾患又は状態の治療に適切であると考えられる。
【0239】
別の一例において、IFNa等、サイトカインのレベルは、哺乳動物の循環において例えば、ELISAを用いて検出される。投与前及び/又は免疫グロブリンが投与されていない対照哺乳動物のレベルと比較してサイトカインレベルを低下させる免疫グロブリンは、疾患又は状態の治療に適切であると考えられる。IFNa等、サイトカインは、一部の疾患/状態、例えば、ループスにおいて役割を果たすと考えられるため、IFNa産生を低下させる免疫グロブリンは、このような状態の治療に適切であると考えられる。
【0240】
別の一例において、免疫グロブリンは、ループスの非ヒト哺乳動物(例えば、非ヒト霊長類)モデルに投与される。例えば、SLEを患うヒトの血漿は、SLEモデルの作製に十分な時間及び条件下でカニクイザル等、非ヒト霊長類に注入される(例えば、Pincusら、Clin. Immunol.、105:141〜154、2002に記載)。免疫グロブリンは、非ヒト霊長類に投与され、例えば、本明細書に記載されているアッセイを用いてSLE症状におけるその効果が評価される。例えば、抗dsDNA抗体及び/又は免疫複合体のレベルが評価される。1又は複数のSLE症状を低下させる免疫グロブリンは、SLEの治療に適切であると考えられる。
【0241】
治療される状態
本開示の方法により治療される疾患又は状態は、通常、I型インターフェロンに関連する又はそれに部分的に起因若しくは媒介され、及び/又はI型インターフェロンを産生する樹状細胞及び/又は好塩基球の欠乏化、除去若しくは少なくとも部分的な排除に対して応答性である。適宜、疾患又は状態は、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群及び全身性強皮症(SSc)等の強皮症から選択される。
【0242】
一例において、疾患又は状態はループスである。例えば、疾患又は状態は、円板状ループス、亜急性皮膚エリテマトーデス、薬剤誘発性ループス、新生児ループス、ループス腎炎又はSLEである。
【0243】
特定の疾患又は状態はSLEである。
【0244】
一例において、SLEは血清反応陰性SLEである、即ち、自己抗体によって特徴づけられない。従って、一例において、本開示の方法は、例えば、本明細書に記載されている自己抗体等、自己抗体の不在を検出することにより、血清反応陰性SLEを患う哺乳動物を同定するステップを更に含む。
【0245】
別の一例において、SLEは血清反応陽性SLEである。例えば、SLEは、抗核抗体(ANA)、抗C1q抗体、抗二本鎖DNA(dsDNA)抗体、抗Sm抗体、抗核リボヌクレオタンパク質抗体、抗リン脂質抗体、抗リボソームP抗体、抗Ro/SS−A抗体、抗Ro抗体及び抗La抗体等、自己抗体によって特徴づけられる。従って、一例において、本開示の方法は、例えば、本明細書に記載されている自己抗体等、自己抗体の存在を検出することにより、血清反応陽性SLEを患う哺乳動物を同定するステップを更に含む。
【0246】
自己抗体を検出するための方法は、当業者であれば理解できるであろう。例えば、被験体から得られた血清又は血漿試料を、抗体−抗原複合体が形成されるのに十分な時間及び条件下で抗原、例えばdsDNAと接触させる。次に、その結果得られる複合体を、複合体が形成される時間及び条件下で、哺乳動物抗体(例えば、抗Fc抗体)と結合できる標識抗体と接触させ、標識の量を検出する。標識の検出は自己抗体の存在を示す。
【0247】
本明細書に記載されているいずれかの例における方法は、疾患若しくは状態を有する又は疾患若しくは状態の再発発症リスクがあることに基づいて、治療のための哺乳動物を選択するステップを更に含むことができる。このような状態及び疾患の具体例は、上述の通りである。
【0248】
例えば、ループスである又はループス発症若しくはその再発リスクのある個体は、自己抗体、例えば上述の自己抗体の検出に基づいて同定することができる。
【0249】
SLEの診断は、現在の米国リウマチ学会(ACR)判断基準に追加的に又は代替的に従うことができる、及び/又は活動性疾患は、イギリス諸島ループス活動性グループ(British Isles Lupus Activity Group)(BILAG)の1つの「A」判断基準若しくは2つのBILAG「B」判断基準及び/又は欧州コンセンサスループス活動性基準(European Consensus Lupus Activity Measure)(ECLAM)及び/又はループス活動性指数(Lupus Activity Index)(LAI)及び/又は国立衛生研究所SLE指数スコア(SLE Index Score)(SIS)及び/又は全身性ループス活動性基準(Systemic Lupus Activity Measure)(SLAM)及び/又はSLE疾患活動性指数(SLE disease activity index)(SLEDAI)により定義することができる。Tanら、Arth Rheum 25、1982から適応されたSLEの診断に用いられる一部の徴候、症状又は他の指標は、頬における発疹等の頬部発疹、円板状発疹又は紅斑(red raised patch)、皮膚発疹の発症又は増加をもたらす太陽光に対する反応等の光線過敏症、鼻又は口における潰瘍等の口腔潰瘍、2以上の末梢関節に関与する非びらん性関節炎(関節周りの骨が破壊されない関節炎)等の関節炎、漿膜炎、胸膜炎又は心膜炎、尿中の過剰なタンパク質(0.5gm/日を超える又はテストスティックで3)等の腎障害及び/又は細胞性円柱(尿及び/又は白血球及び/又は腎尿細管細胞に由来する異常要素)、神経学的徴候、症状若しくは他の指標、発作(痙攣)及び/又は薬物不在下の精神障害又はこのような効果の原因となることが知られている代謝障害並びに溶血性貧血若しくは白血球減少症(1立方ミリメートル当り4,000細胞を下回る白血球数)若しくはリンパ球減少症(1立方ミリメートル当り1,500未満のリンパ球)若しくは血小板減少症(1立方ミリメートル当り100,000未満の血小板)等の血液学的徴候、症状若しくは他の指標であり得る。白血球減少症及びリンパ球減少症は、2回以上の機会で検出されなければならない。血小板減少症は、それを誘導することが知られている薬物の不在下で検出されなければならない。本開示は、ループスのこれらの徴候、症状又は他の指標に限定されない。
【0250】
一例において、哺乳動物は、例えば、前述の基準のうち1又は複数により、重度のSLEを患っていると診断されている。
【0251】
ループス再発を患うリスクのある哺乳動物もまた、前述の症状のうち1又は複数を提示する可能性があり、ループスの症状を以前に患ったことがある。或いは、又は更に、ループス再発を患うリスクのある哺乳動物は、ループスを以前に患ったことが知られており、エストロゲン療法及び/又はスルホンアミド薬及び/又はインターフェロンにより治療している。
【0252】
一例において、被験体は、シェーグレン(Sjorgen’s)症候群を患う。本明細書に記載されている各例は、シェーグレン症候群の治療に適宜変更して適用されると解釈するべきである。
【0253】
シェーグレン症候群は、自己抗体(例えば、抗核抗体(例えば、SSA/Ro及びSSB/La)、リウマトイド因子、アルファ−フォドリン及び/又は抗甲状腺抗体)、眼の乾き、唾液腺炎症及び/又は貧血を検出することにより診断することができる(或いは、シェーグレン症候群を患う被験体を選択できる)。
【0254】
一例において、シェーグレン症候群はループスを伴う、即ち、ループスを患う被験体において生じる。
【0255】
一例において、被験体は強皮症を患う。本明細書に記載されている各例は、強皮症の治療に適宜変更して適用されると解釈するべきである。
【0256】
一例において、強皮症は、限局性全身性強皮症(limited systemic scleroderma)又はびまん性全身性強皮症等、全身性強皮症である。
【0257】
強皮症は、自己抗体(例えば、抗トポイソメラーゼ抗体(びまん性全身性型の強皮症における)、抗セントロメア抗体(限局性全身性型の強皮症における)、抗U3抗体又は抗RNAポリメラーゼ抗体)、特に手指、足、顔及び首における皮膚のつっぱり又は皮膚の硬化を生じ得る皮膚の炎症の局所性又は広汎性徴候(発赤、腫れ、圧痛、そう痒及び疼痛)を検出することにより診断することができる(或いは強皮症を患う被験体を選択することができる)。種々の症状は、例えば、消化器系、肺及び血管にも生じ得る。
【0258】
一例において、強皮症はループスを伴う、即ち、ループスを患う被験体において生じる。
【0259】
一例において、哺乳動物は、この疾患又は状態の治療に用いられる別の化合物による治療に対し抵抗性である、それに対し適切に応答しない、或いはそれに不適である。例えば、哺乳動物は、コルチコステロイド及び/又は免疫抑制剤及び/又は抗マラリア剤及び/又はアザチオプリン及び/又はシクロホスファミド及び/又はミコフェノール酸モフェチル及び/又はメトトレキサート及び/又は抗TNF抗体及び/又は抗CD20抗体及び/又は抗IL6抗体及び/又は抗CD22抗体による治療に対し抵抗性である、それに対し適切に応答しない、或いはそれに不適である。
【0260】
組成物
適宜、抗IL−3Ra免疫グロブリンの哺乳動物への投与のための組成物又は方法において、免疫グロブリンは、本技術分野において理解される通り、医薬的に許容される担体、希釈剤及び/又は賦形剤と組み合わされる。従って、本開示の一例は、医薬的に許容される担体、希釈剤及び/又は賦形剤と組み合わせた抗IL.3Ra免疫グロブリンを含む医薬組成物を提供する。別の一例において、本開示は、哺乳動物への投与前に免疫グロブリンと組み合わせる又は混合するのに適切な、医薬的に許容される担体、希釈剤及び/又は賦形剤を含むキットを提供する。この例において、キットは、使用のための説明書を更に含むことができる。
【0261】
一般用語において、「担体、希釈剤又は賦形剤」は、任意の哺乳動物、例えば、ヒトに安全に投与することのできる固体若しくは液体の充填剤、結合剤、希釈剤、カプセル封入物質、乳化剤、湿潤剤、溶媒、懸濁化剤、コーティング剤又は滑沢剤を意味する。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Co.米国ニュージャージー州、1991)に記載されている通り、特定の投与経路に依存して、本技術分野で公知の様々な許容される担体、希釈剤又は賦形剤を用いることができる。
【0262】
ほんの一例として、担体、希釈剤又は賦形剤は、糖(例えば、スクロース、マルトース、トレハロース、グルコース)、澱粉、セルロース及びその誘導体、麦芽、ゼラチン、タルク、硫酸カルシウム、植物油、合成油及び合成モノ又はジグリセリドを含む油、低級アルコール、ポリオール、アルギン酸、リン酸緩衝溶液、ステアリン酸ナトリウム又はマグネシウム等の滑沢剤、等張性生理食塩水並びに発熱物質不含水を含む群から選択することができる。例えば、担体、希釈剤又は賦形剤は、非経口投与に適合性又は適切である。非経口投与は、消化管を通らない任意の投与経路を含む。非経口投与の非限定的な例として、注射、注入等が挙げられる。具体例として、注射による投与として、静脈内、動脈内、筋肉内及び皮下注射が挙げられる。例えば、皮内、筋肉内及び皮下送達され得るデポー剤又は徐放性製剤による送達もまた企図される。
【0263】
併用療法
一例において、IL−3Raと結合する免疫グロブリンは、組み合わせて、或いは追加的な治療ステップ又は治療用製剤の追加的な成分として、疾患又は状態、例えば、ループス(SLE等)の治療に有用な別の化合物と組み合わせて投与される。
【0264】
例えば、他の化合物は抗炎症性化合物である。或いは、又は更に、他の化合物は、免疫抑制剤である。或いは、又は更に、他の化合物は、プレドニゾン及び/又はプレドニゾロン等、コルチコステロイドである。或いは、又は更に、他の化合物は、ヒドロキシクロロキン又はクロロキニン等、抗マラリア化合物である。或いは、又は更に、他の化合物は、メトトレキサートである。或いは、又は更に、他の化合物は、アザチオプリンである。或いは、又は更に、他の化合物は、シクロホスファミドである。或いは、又は更に、他の化合物は、ミコフェノール酸モフェチルである。或いは、又は更に、他の化合物は、抗CD20抗体(例えば、リツキシマブ又はオファツムマブ)である。或いは、又は更に、他の化合物は、抗CD22抗体(例えば、エプラツズマブ)である。或いは、又は更に、他の化合物は、抗TNF抗体(例えば、インフリキシマブ又はアダリムマブ又はゴリムマブ)である。或いは、又は更に、他の化合物は、CTLA−4アンタゴニスト(例えば、アバタセプト、CTLA4−Ig)である。或いは、又は更に、他の化合物は、抗IL−6抗体である。或いは、又は更に、他の化合物は、抗BLys抗体(例えば、ベリムマブ)等、BLysアンタゴニストである。
【0265】
投薬量及び投与のタイミング
疾患若しくは状態又はその再発の予防若しくは治療のため、活性薬剤(即ち、抗IL−3Ra免疫グロブリン)の適切な投薬量は、治療される疾患の種類、疾患の重症度及び経過、免疫グロブリンが予防目的で投与されるのか治療目的で投与されるのか、以前の治療法、患者の臨床歴及び免疫グロブリンに対する応答性並びに主治医の裁量に依存するであろう。特定の投薬レジメン、即ち、用量、タイミング及び反復は、特定の個体及び医師に評価される該個体の病歴に依存するであろう。通常、臨床医は、投薬量が所望の結果を得られる量に達するまで免疫グロブリンを投与するであろう。
【0266】
本開示の方法は、哺乳動物におけるループス(例えば、SLE)等、疾患又は状態の症状の治療、寛解又は予防に、或いは哺乳動物の予後の改善に有用である。免疫グロブリンによる治療後に、ループスを患う哺乳動物におけるクオリティオブライフを改善することができ、ループスの症状を低下又は排除することができる。本開示の方法は、ループス発症又はその再発リスクのある個体におけるループスの発症遅延又は予防にも有用である。
【0267】
本明細書に記載されている免疫グロブリンのin vivo投与のため、正常な投薬量は、1日間当り約10ng/kg〜最大約100mg/kg(個体体重)又はそれ以上に変動し得る。例示的な投薬量及びその範囲は、本明細書に記載されている。数日間以上に亘る反復投与のため、治療される疾患又は障害の重症度に応じて、治療は、所望の症状抑制が達成されるまで持続することができる。
【0268】
一部の例において、免疫グロブリンは、約1mg/kg〜約10mg/kg、或いは約2mg/kg又は約3mg/kg又は4mg/kg又は5mg/kg等、約1mg/kg〜約30mg/kgの間の初期(又は負荷(loading))量で投与される。次に、免疫グロブリンは、約0.0005mg/kg〜約1mg/kg等、約0.0001mg/kg〜約1mg/kg、例えば、約0.005mg/kg〜約1mg/kg等、約0.001mg/kg〜約1mg/kg、例えば、約0.2mg/kg又は0.3mg/kg又は0.4mg/kg又は0.5mg/kg等、約0.1mg/kg〜約1mg/kgの間の維持量で投与することができる。維持量は、10〜15日毎、例えば、10日又は11日又は12日又は13日又は14日又は15日毎等、7〜30日毎に投与することができる。
【0269】
一部の例において、免疫グロブリンは、約0.0005mg/kg〜約50mg/kgの間等、約0.0001mg/kg〜約50mg/kgの間、例えば、約0.001mg/kg〜約45mg/kgの間、例えば、約0.05mg/kg〜約35mg/kgの間等、約0.005mg/kg〜約40mg/kgの間、の用量で投与される。例えば、免疫グロブリンは、約0.2mg/kg又は0.3mg/kg又は0.4mg/kg又は0.5mg/kg等、約0.1mg/kg〜約1mg/kg等、約0.01mg/kg〜約1mg/kgの間の用量で(例えば、より高い負荷量なしで)投与される。一部の例において、例えば、10〜22日毎、例えば、10〜15日毎、例えば、10日又は11日又は12日又は13日又は14日又は15日又は16日又は17日又は18日又は19日又は20日又は21日又は22日毎等、7〜30日毎に多数の用量が投与される。例えば、免疫グロブリンは、7日毎又は14日毎又は21日毎に投与される。
【0270】
一部の例において、免疫グロブリンは、約1mg/kg〜約10mg/kg又は約2mg/kg又は約3mg/kg又は4mg/kg又は5mg/kg等、或いは、約10mg/kg又は15mg/kg又は20mg/kg又は25mg/kg等、約10mg/kg〜30mg/kg等、約1mg/kg〜約30mg/kgの間の用量で(例えば、より低い維持量なしで)投与される。一部の例において、例えば、14〜60日毎等、14〜70日毎等、10〜70日毎、例えば、14〜40日毎又は14〜30日毎等、14〜50日毎に多数の用量が投与される。例えば、用量は、14日又は21日又は25日又は28日又は35日又は40日又は42日又は49日又は50日又は55日又は57日又は63日又は又は70日毎に投与される。例えば、免疫グロブリンは、21日毎又は28日毎又は35日毎又は42日毎又は49日毎又は56日毎に投与される。
【0271】
一部の例において、治療開始時に、哺乳動物は、7日間連続又は6日間連続又は5日間連続又は4日間連続以下で免疫グロブリンを投与される。
【0272】
治療に対し適切に応答しない哺乳動物の場合、1週間に複数回の用量を投与することができる。或いは、又は更に、増加した用量を投与することができる。
【0273】
別の一例において、有害反応を経験している哺乳動物のため、初期(又は負荷)量を1週間の多数の日に、或いは多数の連続日に分割することができる。
【0274】
特定の免疫グロブリンの投薬量は、免疫グロブリンの1又は複数の投与をなされた哺乳動物において経験的に決定することができる。免疫グロブリンの有効性を評価するため、疾患又は状態、例えば、ループス(SLE等)の臨床症状をモニターすることができる。
【0275】
本開示の方法における免疫グロブリンの投与は、例えば、レシピエントの生理学的状態、投与目的が治療であるか予防であるかということ、及び当業者にとって公知の他の要因に応じて、継続的であっても間欠的であってもよい。免疫グロブリンの投与は、前選択された期間に亘り基本的に継続的であっても、例えば、ループス(SLE等)の発症中又は発症後におけるいずれかの一連の間隔を置いた(spaced)用量であってもよい。
【0276】
一例において、免疫グロブリンは、SLEの重症度を評価するスコア、例えば、BILAG判断基準及び/又はECLAM及び/又はLAI及び/又はSIS及び/又はSLAM及び/又はSLEDAIの低下を達成するよう投与される。例えば、免疫グロブリンによる治療は、BILAG及び/又はSLEDAIに従った1又は2又は3ポイントの低下を達成する。例えば、治療開始後15週間又は治療開始後30週間又は治療開始後52週間まで低下は達成される。例えば、効果は、治療開始後約20週間又は30週間又は40週間又は50週間持続する。
【0277】
非限定的な実施例
実施例に用いた抗体命名法は、次の通りである。(i)抗IL−3Raマウスモノクローナル抗体(7G3と称する)、(ii)7G3とヒトIgG1定常ドメインとのキメラバージョン(ch7G3と称する)、(iii)7G3のヒト化IgG1バージョン(hz7G3と称する)、(iv)Xencor V90、S239D/I332E、G1/G2 Fc改変を含有する7G3のヒト化バージョン(hz7G3V1と称する)、(v)Xencor V209、S239D/I332E/A330L G1/G2 Fc改変を含有する7G3のヒト化バージョン(hz7G3V2と称する)及び(vi)フコシル基転移酵素欠損CHO細胞系を用いて産生されたhz7G3のアフコシル化バージョン(hz7G3V3と称する)。
【実施例1】
【0278】
IL−3Raの発現
標準技法を用いてヒトからPBMCを同定し、系列特異的細胞表面マーカーと結合する抗体を用いて種々の細胞系列を単離した。Quantibrite(商標)ビーズ(BD Biosciences)を用いて、系列毎の細胞当りのIL−3Ra分子の数を決定した。図1に示す通り、IL−3Raは、pDC及び好塩基球において高度に発現し、検査した他の細胞系列においては低レベルであった。この限定的な発現パターンにより、IL−3Raは、pDC及び好塩基球を選択的に排除するよう設計された抗体に対して有用な標的となる。
【実施例2】
【0279】
in vitroにおけるヒトpDCの抗IL−3Ra mAb欠乏化
Ficoll(商標)分離により正常ドナーから末梢血単核細胞(PBMC)を単離し、RPMI/10%FCSにおいて抗体なしで(抗体なし)、或いは10μg/ml抗ch7G3又は10μg/ml抗hz7G3V3と共に37℃で種々の時間インキュベートした。96ウェルU字底プレートにおいて200μL容量で1×10細胞をルーチンに培養した。形質細胞様樹状細胞(pDC)数及び好塩基球数の解析をフローサイトメトリーにより決定した(それぞれ表1及び2)。フローサイトメトリーにより系列マーカー陰性(CD20、CD3、CD14、CD19 CD56)、HLA−DR陽性、CD11c陰性及びIL−3Ra陽性であるとしてヒトpDCを同定した(フロー図におけるゲートボックス(gated box)を参照)。フローサイトメトリーにより、ヒト好塩基球を系列マーカー陰性(CD20、CD3、CD14、CD19 CD56)、IgE陽性及びIL−3Ra陽性であるとして同定した。Fc−ドメインに修飾を含有する抗IL−3Ra抗体(hz7G3V3)は、早くも添加4時間後にPBMCからpDC及び好塩基球を欠乏化させ、pDC及び好塩基球欠乏化を添加最大48時間後まで維持した。エフェクター機能増強なしの抗IL−3R抗体(ch7G3)の添加は、添加24時間後及び48時間後に観察されたpDC数減少をもたらした。しかし、観察された効果は、実質的にhz7G3V3で観察された効果に満たず、48時間ではpDCを実質的に完全には欠乏化しなかった。
【0280】
【表1】

【0281】
【表2】

【実施例3】
【0282】
非ヒト霊長類におけるIn vivoでの抗IL−3RaによるpDC及び好塩基球欠乏化
オーストラリア国立霊長類センター(Australian National Primate Facility)にて、その標準操作手順に従って非GLPカニクイザルの非ヒト霊長類(NHP)試験を行った。全プロトコール及びその修正は、動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)によって承認された。Fc−ドメインに抗体エフェクター機能を増強する改変を有する中和抗IL−3Ra抗体(hz7G3V3)を、静脈内注入により未処理(naive)サルに単一用量投与した。種々の時点にて末梢血を採取し、NHP好塩基球及びpDCの解析をフローサイトメトリーにより行った。フローサイトメトリーにより、NHP好塩基球をIgE+/CD123陽性として同定した。フローサイトメトリーにより、pDCを系列マーカー陰性(CD20、CD3、CD14、CD19、CD56)、HLA−DR陽性、CD11c陰性及びIL−3Ra陽性として同定した。
【0283】
hz7G3V3の投与は、全用量において、抗体投与後6時間もの早さで、末梢血における好塩基球及びpDC数を相当に低下させたことが明らかになった。この低下は、11日目(好塩基球)又は15日目(pDC)のいずれかにおける両方の細胞型の用量依存性回復(return)前に8日間に亘り持続した(図2)。
【0284】
検査したその他の細胞型(好中球、T細胞、B細胞、単球及び赤血球等)における有意な低下は、いずれの用量においてもサルに関しては観察されず、有害事象は観察されなかった。これらのデータは、hz7G3V3がin vivoで投与されるとpDC及び好塩基球を選択的に欠乏化させること、また、hz7G3V3がこの系から排除されるとpDC及び好塩基球集団が回復できることを示す。
【実施例4】
【0285】
抗IL−3Ra mAbのADCC活性のIn vitro比較
陰性選択キット(Miltenyi Biotech)をメーカーによって詳述されている通りに用いて、2種の健常なバフィーコートからヒトpDC及びNK細胞を単離した。10μg/mlの種々のバージョンの抗IL−3Ra抗体(hz7G3V1、hz7G3V2及びhz7G3V3)の存在下で、96ウェルU字底プレートにおいて、最終容量150μL中に10:1のE:T比でNK細胞(エフェクター「E」=100,000細胞)及びpDC(標的「T」=10,000細胞)を共にインキュベートした。RPMI/10%FCSにおける37℃4時間インキュベーションの後、自己溶解(pDC1−NKl、pDC2−NK2)及び同種異系間溶解(pDC1−NK2、pDC2−NK1)を試験した。LDH CytoTox 96非放射性細胞傷害性キット(Promega)を用いて細胞溶解を測定した。
【0286】
次の計算により特異的溶解を決定した:
特異的溶解=[試料溶解−自発的溶解]/[最大の溶解 自発的溶解]×100%
【0287】
最大の溶解は、終濃度0.75%(v/v)となるようExtran(商標)を添加することにより評価した。自発的溶解は、細胞単独(Abなし)でウェル内で生じる溶解である。
【0288】
ADCC能力増強のために操作された抗IL−3Ra mAbでは、抗IL−3Ra抗体hz7G3と比較してpDC溶解の有意なレベルが観察された(図3)。
【実施例5】
【0289】
抗IL−3Ra mAbによるインターフェロン産生の阻害
正常ドナーから末梢血単核細胞(PBMC)を単離し、抗体なし(0μg/ml)、増加用量(1、10又は100μg/ml)の抗IL−3R抗体hz7G3又はFc−ドメインに抗体エフェクター機能を増強する改変を含有する抗IL−3R抗体(hz7G3V3及びhz7G3V1)と共に37℃で18時間インキュベートした。C型CpGオリゴヌクレオチド(5μM)を添加して、形質細胞様樹状細胞を活性化した。活性化6時間後又は24時間後のいずれかに上清を採取し、ELISAによりIFNa産生に関してアッセイした。図4に示す通り、抗体hz7G3の添加は、IFNa産生の僅かな低下をもたらし、この効果は、抗体用量増加によって影響を受ける様子はなかった。対照的に、Fc−ドメインに修飾を含有する抗IL−3Pv抗体(hz7G3V3及びhz7G3V1)の添加は、全用量の抗体で活性化6時間後及び24時間後の両方においてPBMCからIFNa産生を相当に低下させた。
【0290】
更なる試験において、正常ドナーからPBMCを単離し、抗体なし又は増加用量のhz7G3V3又はアイソタイプ対照抗体と共に37℃で18時間インキュベートした。C型CpGオリゴヌクレオチド(5μM)を添加して、pDCを活性化させた。活性化24時間後に上清を採取し、ELISAによりIFNy産生に関してアッセイした。hz7G3V3の添加は、PBMCからIFNa産生を相当に低下させた。hz7G3V3によるpDCのin vitro欠乏化は、TLR−7/9リガンド、CpGで処理したPBMCにおけるIFNa産生の阻害と相関する(図5)。PBMCへのCpGの添加は、主にTLR−7/9アゴニストであるクロマチン成分を含有する、SLE免疫複合体と同様の様式でIFNa産生を誘導する。これらのデータは、hz7G3V3が、末梢血細胞においてTLR−7/9アゴニストによって誘導されたIFNaの供給源を効果的に排除できることを示す。データは、hz7G3V3の標的とならない末梢血中の他の細胞型が、TLR−7/9刺激に対する応答におけるIFNa産生に関してpDCの減少を相殺できないことも示す。
【0291】
更なる試験を行って、IFNaレベルの細胞欠乏化の効果を決定した。正常ドナーからPBMCを単離し、抗体なし(0μg/ml)、Fc−ドメインに抗体エフェクター機能を増強する改変を含有する中和抗IL−3R抗体(hz7G3V3)又は該抗体のFab領域(hz7G3 Fab)の増加用量と共に37℃で18時間インキュベートした。C型CpGオリゴヌクレオチド(5μM)を添加して、pDCを活性化させた。活性化6時間後又は24時間後に上清を採取し、ELISAによりIFNa産生に関してアッセイした。図6に示す通り、エフェクター機能を欠く中和抗IL−3R Fab(hz7G3 Fab)の添加は、IFNa産生を低下させないが、Fc−ドメインに改変を含有する抗IL−3R抗体(hz7G3V3)の添加は、活性化6時間後及び24時間後の両方でPBMCにおけるIFNa産生を完全に阻害した。
【0292】
本明細書において参照されている各特許及び科学文書の開示、コンピュータプログラム及びアルゴリズムは、その全体を参照により本明細書の一部を構成するものとして援用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物におけるループスを治療する方法であって、インターロイキン3受容体α(IL−3Rα)鎖と結合してモノクローナル抗体7G3とIL−3Rαとの結合を競合的に阻害し、そして免疫グロブリンが結合する形質細胞様樹状細胞(pDC)及び好塩基球を欠乏化又は少なくとも部分的に排除して、これにより哺乳動物におけるループスを治療する免疫グロブリンを哺乳動物に投与するステップを含み、前記免疫グロブリンは、免疫グロブリンが結合する細胞を殺傷する毒性化合物とコンジュゲートしていない、前記方法。
【請求項2】
ループスが全身性エリテマトーデス(SLE)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
IL3Rα鎖が、1又は複数のI型インターフェロンを産生するpDCによって発現される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
IL3Rα鎖が、1又は複数のサイトカインを産生する好塩基球によって発現される、請求項1又は3に記載の方法。
【請求項5】
免疫グロブリンが、モノクローナル抗体7G3と同じエピトープ又は重複するエピトープと結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
免疫グロブリンがIL−3シグナル伝達を中和する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
免疫グロブリンが、抗体又はその抗原結合性フラグメントである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
抗体がキメラ抗体である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
キメラ抗体が、モノクローナル抗体7G3の可変領域を含むキメラ抗体である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
抗体がヒト化抗体である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
ヒト化抗体が、モノクローナル抗体7G3に由来する相補性決定領域を含むヒト化抗体である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ヒト化抗体が、配列番号3に記述されている配列を含む軽鎖可変領域(V)と、配列番号2に記述されている配列を含む重鎖可変領域(V)とを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
抗体がヒト抗体である、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
免疫グロブリンがエフェクター機能を誘導できる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
エフェクター機能が、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞媒介性食作用(ADCP)及び/又は補体依存性細胞傷害(CDC)である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
免疫グロブリンによって誘導されたエフェクター機能のレベルが、野生型IgG1 Fc領域を含む場合の免疫グロブリンのレベルと比べて増強されている、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
エフェクター機能が、ch7G3又はhz7G3の機能と比べて増強されている、或いはそれを超える、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
免疫グロブリンが、アフコシル化されたFc領域を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
免疫グロブリンがhz7G3V3である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
免疫グロブリンが、免疫グロブリンによって誘導されたエフェクター機能を増強する1又は複数のアミノ酸配列置換を含むFc部分を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
1又は複数のアミノ酸配列置換が、置換を含まないFc部分と比較してFc部分のFcγ受容体(FcγR)に対する親和性を増加させる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
1又は複数のアミノ酸配列置換が、
(i)KabatのEU付番方式に従ったS239D、A330L及びI332E;又は
(ii)KabatのEU付番方式に従ったS239D及びI332E
である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
免疫グロブリンが、hz7G3V1及びhz7G3V2からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
免疫グロブリンを投与した後、哺乳動物における循環中の形質細胞様樹状細胞(pDC)及び好塩基球の数が、免疫グロブリンを投与する前の哺乳動物における循環中のpDC及び/又は好塩基球の数と比較して少なくとも約50%低下する、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
免疫グロブリン投与の少なくとも約6時間後に、哺乳動物における循環中のpDC及び好塩基球の数が、免疫グロブリンを投与する前の哺乳動物における循環中のpDC及び/又は好塩基球の数と比較して少なくとも約50%低下する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
哺乳動物における循環中のpDC及び好塩基球の数が、免疫グロブリンを更に投与することなく投与後少なくとも7日間、免疫グロブリンを投与する前の哺乳動物における循環中のpDC及び/又は好塩基球の数と比較して少なくとも約50%低下する、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
約0.001mg/kg〜50mg/kgの間の免疫グロブリンを哺乳動物に投与するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
免疫グロブリンが哺乳動物に複数回投与され、投与間の期間が少なくとも約11日間である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
哺乳動物におけるループスの治療に用いるための医薬組成物であって、インターロイキン3受容体α(IL−3Rα)鎖と結合してモノクローナル抗体7G3とIL−3Rαとの結合を競合的に阻害する免疫グロブリンと、医薬的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤とを含み、前記免疫グロブリンは、免疫グロブリンが結合する形質細胞様樹状細胞(pDC)及び好塩基球を欠乏化又は少なくとも部分的に排除し、そして前記免疫グロブリンは、免疫グロブリンが結合する細胞を殺傷する毒性化合物とコンジュゲートしていない、前記医薬組成物。
【請求項30】
請求項1〜27のいずれか一項に記載の方法に用いるためのキットであって、IL−3Rα鎖と結合してモノクローナル抗体7G3とIL−3Rαとの結合を競合的に阻害する免疫グロブリン;医薬的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤;及び前記キットを使用するための説明書を含み、前記免疫グロブリンは、免疫グロブリンが結合する形質細胞様樹状細胞(pDC)及び好塩基球を欠乏化又は少なくとも部分的に排除し、そして前記免疫グロブリンは、免疫グロブリンが結合する細胞を殺傷する毒性化合物とコンジュゲートしていない、前記キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−519690(P2013−519690A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553146(P2012−553146)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際出願番号】PCT/AU2011/000155
【国際公開番号】WO2011/100786
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(500021413)シーエスエル、リミテッド (28)
【Fターム(参考)】