説明

ICカード

【目的】 外部から加わる曲げ作用をカード基材で効果的に吸収し、ICモジュール側に伝達される曲げ作用を小さくする。
【構成】 基板12と、ICチップ17を樹脂モールドしてなる樹脂モールド部19を有するICモジュール11が、カード基材30の凹部35に装着される。凹部35は基板12を接着する比較的浅い第1凹部35aと、樹脂モールド部19を受入れる比較的深い第2凹部35bとからなっている。第1凹部35aの周縁に周縁切欠36a,36bが設けられ、第1凹部35a内に第2凹部35bと周縁切欠36a,36bとを連結する連結切欠40が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はICモジュールを装着したICカードに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、マイクロコンピュータ、メモリなどのICチップを装着したチップカード、メモリカード、マイコンカードあるいは電子カードと呼ばれるカード(以下、単にICカードという)に関する研究が種々進められている。
【0003】このようなICカードは、従来の磁気カードに比べて、その記憶容量が大きいことから、銀行関係では預金通帳に代わり預貯金の履歴を、そしてクレジット関係では買物などの取引履歴を記憶させようと考えている。
【0004】このようなICカードは、ICチップが搭載されたICモジュールと、このICモジュール装着用の凹部が形成されたカード基材とから構成されている。またICモジュールはカード基材の凹部内に接着剤によって接着固定されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上述のように、ICカードはカード基材の凹部にICモジュールを装着し、接着固定して構成されている。
【0006】ところで、一般にICカードは使用中、曲げ作用を受けることになるが、この曲げ作用はカード基材から凹部の接着領域を介してICモジュールに伝達され、さらにICモジュールに伝達された曲げ作用はICチップに伝達される。
【0007】この場合、カード基材は一般にISO規格で0.76mmと極めて薄く定められているので、ICカードに加わる曲げ作用が大きくなると、基板からICチップに伝達される曲げ作用も大きくなり、ICチップが破損してしまうことがある。
【0008】本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、ICカードに大きな曲げ作用が加わってもICモジュール側に伝達される曲げ作用を小さく押えることができるICカードを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、基板と、この基板上に設けられたICチップと、ICチップを封止する樹脂モールド部とを有するICモジュールと、ICモジュールを装着する凹部が形成されたカード基材とを備え、前記カード基材の凹部は前記基板を接着固定する比較的浅い平面が略矩形状の第1凹部と、前記第1凹部内部に設けられ前記樹脂モールド部を受入れる比較的深い平面が略矩形状の第2凹部とからなり、前記第1凹部の周縁に沿って周縁切欠を設けるとともに、前記第1凹部に前記第2凹部と前記周縁切欠とを連結しかつ前記周縁切欠に平行する連結切欠を設けたことを特徴とするICカード、および基板と、この基板上に設けられたICチップと、ICチップを封止する樹脂モール部とを有するICモジュールと、ICモジュールを装着する凹部が形成されたカード基材とを備え、前記カード基材の凹部は前記基板を接着固定する比較的浅い平面が略矩形状の第1凹部と、前記第1凹部内部に設けられ前記樹脂モールド部を受入れる比較的深い平面が略矩形状の第2凹部とからなり、前記第1凹部の周縁に沿って周縁切欠を設けるとともに、前記第1凹部に前記第2凹部を囲む内部切欠を設けたことを特徴とするICカードである。
【0010】
【作用】請求項1および2記載の発明によれば、ICカードに外部から曲げ作用が加わった場合、この曲げ作用を第1凹部周縁の周縁切欠および連絡切欠または周縁切欠および内部切欠で吸収することができるので、カード基材から接着領域を介してICモジュール側に伝達される曲げ作用を小さく押えることができる。
【0011】
【実施例】以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。図1乃至図3は本発明による図1乃至図3はICカードの第1の実施例を示す図である。ここで図1R>1はICカードの側断面図、図2はカード基材の凹部を示す平面図、図3は周縁切欠および連設切欠を示す概略側面図である。
【0012】図1において、柔軟性ならびに強度にすぐれた材料からなる基板(例えば、ガラスエポキシ、ガラスBTレジン、ポリイミド等)12の一方の面に外部端子13が設けられ、他方の面にパタン層15が設けられている。この外部端子13およびパタン層15は、いずれも銅箔に銅メッキ、ニッケルメッキ、および金メッキを施して形成されている。また、外部端子13には絶縁溝13aが形成されている。また、基板12のパタン層15側の面に、ICチップ17が装着台20を介して接着固定され、パタン層15との間でボンディングワイヤ18によって必要な配線が行われている。
【0013】またICチップ17ならびにボンディングワイヤ18を含む配線部の周囲が、モールド用樹脂により樹脂封止されて樹脂モールド部19が形成されている。なお、基板12上の樹脂モールド部19周縁に、樹脂モールド部19と基板12との密着性を高めるため、保護レジスト層16が設けられている。
【0014】この場合、樹脂モールドはトランスファーモールド法により行うことが好ましく、成形樹脂の寸法ならびに形状は、ICチップ17や後述するカード基材30に合せて適宜決定される。また、樹脂モールド部19の高さは後述する第2凹部35bの深さよりも小さくなっている。また、外部端子13、基板12、およびパタン層15を貫通してスルーホール14が複数設けられ、このスルーホール14内面には外部端子13とパタン層15とを導通させる導電メッキ14aが形成され、このようにしてICモジュール11が形成される。
【0015】ところで、ICチップ17は基板12の略中央部に設けられ、樹脂モールド部19はこのICチップ17を覆っているので、ICモジュール11は全体として断面凸形状をなしている。
【0016】他方、合成樹脂製のカード基材30の表面に凹部35が形成され、この凹部35にICモジュール11を装着することによりICカード10が構成される。この場合、カード基材30の長手方向と基板12の長手方向とは一致している(第1図矢印L方向)。
【0017】カード基材30の凹部35は比較的浅い、平面が略矩形状の第1凹部35aと、比較的深い、平面が略矩形状の第2凹部35bとからなり、このうち台1凹部35aは基板12を接着剤34を介して接着固定する部分であり、第2凹部35bは樹脂モールド部19を受入れる部分である。
【0018】この場合、第2凹部35bの深さは、ICモジュール11が装着されたときにICモジュール11の樹脂モールド部19と第2凹部35bとの間に空間が生ずるか、あるいは接着状態ないし非接着状態で接触するような深さであることが好ましい。
【0019】また、カード基材30に形成される凹部35の水平方向の長さは、埋設されるICモジュール11が挿入されやすいように、該ICモジュール11と同等かあるいは若干大きいことが望ましい。
【0020】また、カード基材30の第1凹部35aの周縁全周に、第1凹部35aを囲むように周縁切欠36が設けられている。図2に示すように、周縁切欠36は平面からみて帯状に四角形を形成し、その四隅にはRが形成されている。周縁切欠36はカード基材30の長手方向と直交する切欠部36aとカード基材30の長手方向と平行する切欠36bとからなり、外部からの曲げ作用を吸収する機能を有している。この場合、周縁切欠36はその外側端がICモジュール11の外側端と略接触するよう配置され、また周縁切欠36の深さは、第2凹部35bの深さと略同一となっている。
【0021】さらに、図2および図3に示すように、第1凹部35a内に、第2凹部35bと周縁切欠36の切欠部36bとを連結する連結切欠40が形成されている。すなわち、図2に示すように、連結切欠40は、第2凹部35bの対向する2側縁から切欠部36aに平行に延びて、切欠部35bに達している。
【0022】連結切欠40の深さは、第2凹部35bの深さと略同一となっており、この連結切欠40は周縁切欠36とともに外部からの曲げ作用を吸収する機能を有している。
【0023】なお、第1凹部35aの周縁に設けられた周縁切欠36の四隅(第1凹部35aの四隅)にRが形成されているが、第2凹部35bの四隅にもRが形成されている。
【0024】次にICカードの製造方法について説明する。まず、カード基材30に形成された第1凹部35aの底面に接着剤34を配置し、ICモジュール11を挿入する。接着剤34の形状は、周縁切欠36の内側に収まるような大きさとなっている(第1図実線)。続いて、ホットスタンパー(図示せず)により外部端子13の表面のみを局部的に熱押圧(たとえば、100〜170℃、5〜15kg/cm2 、5秒で充分である)することにより、ICモジュール11をカード基材30の凹部35内に装着固定してICカード10が得られる。
【0025】この場合、接着剤34は、たとえばポリエステル系の熱接着シートが好ましく用いられる。その他、接着剤34として、不織布の両面にアクリル系粘着剤を塗布した両面粘着テープや常温硬化型ウレタン系接着剤又は、エポキシ系接着剤、シアノアクリレート系接着剤などの液状接着剤により形成することもできる。この場合は熱押圧をせず、常温押圧を行なってもよい。
【0026】上述のように接着剤34の形状は、周縁切欠36の内側に収まるような大きさとなっているので、接着剤34は全体として接着機能を果す。また、ICモジュール11と第1凹部35aの底面との間の接着領域は接着剤34の大きさと一致する。
【0027】一方、接着剤34の形状を第1凹部35aの側壁まで達するような大きさとしてもよい(第1図点線)。この場合は、周縁切欠36の内側の接着剤34が接着領域を形成し、周縁切欠36部分の接着剤34は下方へ垂れ下る。このため接着剤34の形状を第1凹部35aの側壁まで達するような大きさとした場合も、接着領域は周縁切欠36の内側に配置されることになる。
【0028】ICカード10がカード基材30の長手方向の曲げ作用を受けた場合、カード基材30に加わる曲げ作用はカード基材30の周縁切欠36の切欠部36a、および第2凹部35bと周縁切欠36とを連結する連結切欠40で吸収される。
【0029】すなわち、カード基材30の周縁切欠36および連結切欠40は、第2凹部35bと略同一の深さを有し、剛性が低下して変形し易い部分である。このためカード基材30の長手方向の曲げ作用を受けた場合、カード基材30の長手方向と直交する切欠部36aおよび連結切欠40からカード基材30が変形しカード基材30の長手方向の曲げ作用が吸収される。
【0030】一方、ICカード10がカード基材30の長手方向と直交する方向の曲げ作用を受けた場合、カード基材30に加わる曲げ作用はカード基材30の長手方向と平行する切欠部36b部分で吸収される。
【0031】このように本実施例によれば、ICカード10に加わる曲げ作用を、周縁切欠36および連結切欠40で吸収することができるので、カード基材30から接着領域を介してICモジュール11側に伝達される曲げ作用を小さく押えることができる。
【0032】次に本発明の第2の実施例を図4により説明する。第2の実施例は、第2凹部36bと周縁切欠36とを連結する連結切欠の配置位置が異なるのみであり、他は図1乃至図3に示す第1の実施例と略同様である。 すなわち、図4に示すように、第2凹部35bの対向する2側縁から周縁切欠36の切欠部36bと平行に連結切欠41が延びている。そして連結切欠41は第2凹部35bから切欠部36aに達している。
【0033】ICカード10がカード基材30の長手方向と直交する方向の曲げ作用を受けた場合、カード基材30に加わる曲げ作用はカード基材30の長手方向と平行する切欠部36bおよび連結切欠41によって吸収される。
【0034】次に本発明の第3の実施例を図5により説明する。第3の実施例は、第1の実施例に示す連結切欠40と第2の実施例に示す連結切欠41とを組合せて設けたものである。
【0035】図5に示すように、第2凹部35bから切欠部36aに平行して延びる連結切欠40と、第2凹部35bから切欠部36bに平行して延びる連結切欠41とが各々設けられている。
【0036】ICカード10がカード基材30の長手方向の曲げ作用を設けた場合、カード基材30に加わる曲げ作用は切欠部36aおよび連結せ切欠40によって吸収され、ICカード10がカード基材30の長手方向と直交する方向の曲げ作用を受けた場合、カード基材30に加わる曲げ作用は切欠部36bおよび連結切欠41によって吸収される。
【0037】次に本発明の第4の実施例を図6により説明する。第4の実施例は連結切欠40の代わりに第1凹部35a内に内部切欠41を設けたものであり、他は図1R>1乃至図3に示す第1の実施例と略同様である。
【0038】図6に示すように、第1凹部35a内に第2凹部31bを囲む内部切欠45が設けられている。内部切欠45は周縁切欠36の切欠部36aと平行する切欠部45aと、切欠部36bと平行する切欠部45bとからなり、平面からみて帯状に四角形を形成している。またその四隅にはRが形成され、その深さは第2凹部35bの深さと略同一となっている。
【0039】ICカード10がカード基材30の長手方向の曲げ作用を受けた場合、カード基材30に加わる曲げ作用は周縁切欠の切欠部36aおよび内部切欠の切欠部45aによって吸収され、ICカード10がカード基材30の長手方向と直交する方向の曲げ作用を受けた場合、カード基材30に加わる曲げ作用は切欠部36bおよび切欠部45bによって吸収される。
【0040】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、ICカードに外部から加わる曲げ作用を周縁切欠および連結切欠、または周縁切欠および内部切欠で吸収することができるので、カード基材から接着領域を介してICモジュール側に伝達される曲げ作用を小さく押えることができる。このため、ICカードへの曲げ作用によるICチップの破損を確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるICカードの第1の実施例を示す側断面図。
【図2】第1の実施例のカード基材の凹部を示す平面図。
【図3】第1の実施例の周縁切欠および連結切欠を示す概略側面図。
【図4】本発明によるICカードの第2の実施例を示す平面図。
【図5】本発明によるICカードの第3の実施例を示す平面図。
【図6】本発明によるICカードの第4の実施例を示す平面図。
【符号の説明】
10 ICカード
11 ICモジュール
12 基板
17 ICチップ
19 樹脂モールド部
30 カード基材
35 凹部
35a 第1凹部
35b 第2凹部
36 周縁切欠
40 連結切欠
41 連結切欠
45 内部切欠

【特許請求の範囲】
【請求項1】基板と、この基板上に設けられたICチップと、ICチップを封止する樹脂モールド部とを有するICモジュールと、ICモジュールを装着する凹部が形成されたカード基材とを備え、前記カード基材の凹部は前記基板を接着固定する比較的浅い平面が略矩形状の第1凹部と、前記第1凹部内部に設けられ前記樹脂モールド部を受入れる比較的深い平面が略矩形状の第2凹部とからなり、前記第1凹部の周縁に沿って周縁切欠を設けるとともに、前記第1凹部に前記第2凹部と前記周縁切欠とを連結しかつ前記周縁切欠に平行する連結切欠を設けたことを特徴とするICカード。
【請求項2】基板と、この基板上に設けられたICチップと、ICチップを封止する樹脂モール部とを有するICモジュールと、ICモジュールを装着する凹部が形成されたカード基材とを備え、前記カード基材の凹部は前記基板を接着固定する比較的浅い平面が略矩形状の第1凹部と、前記第1凹部内部に設けられ前記樹脂モールド部を受入れる比較的深い平面が略矩形状の第2凹部とからなり、前記第1凹部の周縁に沿って周縁切欠を設けるとともに、前記第1凹部に前記第2凹部を囲む内部切欠を設けたことを特徴とするICカード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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