説明

ICタグ用データ管理方法及びICタグ用データ管理プログラム

【課題】複数の測定データをICタグのユーザ領域に書き込むことができ、ICタグを複数の測定データを保持するデータキャリアとして機能させるICタグ用データ管理方法及びICタグ用データ管理プログラムを提供することを目的とする。
【解決手段】本ICタグ用データ管理方法は、ICタグのユーザ領域を複数のデータフィールドに分割する分割過程と、前記ICタグに書き込む記録データを生成するデータ生成過程と、前記データ生成過程で生成された前記記録データを前記データフィールド毎に書き込む書込み過程と、前記データフィールド内の保管データを読み出す読出し過程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品管理や流通などに用いられるICタグのうち、書き込みが可能なメモリ領域を有するICタグに対して、データを書き込みあるいは読み込みを行うICタグ用データ管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
メモリ領域を有するICタグとその利用法としては、ICタグを高品質な航空機メンテナンスに適用することが知られている(例えば、非特許文献1を参照。)。この場合、メンテナンス情報の入力は、整備士等が、ICタグ用ライタを制御するコンピュータからICタグ用ライタを介して、あるいは、コンピュータと一体になったICタグ用ライタから直接、データを手入力で行うものである。
【0003】
図6は、従来技術であるICタグ用データ管理方法のうち、ICタグに記録データを書き込む、すなわちライトする場合についての模式図である。簡単のため、ICタグリーダライタ603は、コンピュータ機能が一体化したハンディICタグリーダライタとする。もちろん、ICタグ用ライタを制御するコンピュータからICタグ用ライタを介して一連の操作を行う場合も同様である。また、ICタグ602はメモリ領域を有しているものとする。物品601に付されたICタグ602に対して、ハンディICタグリーダライタ603はライト機能を用いて、記録データが重畳された搬送波604をICタグ602に送信する。記録データは搬送波604から復調され、ICタグ602のメモリ領域に記憶される。このとき、ICタグ602内での処理に使われる電力は搬送波604による電磁誘導などによって供給される。
【0004】
図7は、従来技術であるICタグ用データ管理方法のうち、ICタグが保存している保管データを読み取る、すなわちリードする場合についての模式図である。物品601に付されたICタグ602に対して、ICタグリーダライタ603はリード機能を用いて、搬送波604をICタグ602に送信する。ICタグ602は保管データが重畳された搬送波605を送り返す。ICタグリーダライタ603は搬送波605から保管データを復調し、ユーザは保管データを確認できる。
【0005】
図8は、従来技術であるICタグ用データ管理方法のうち、ICタグにデータをライトする場合についてのブロックダイヤグラムである。図8は図6の説明に、データの重ね書きが可能か否かの判断が加わったものである。
【0006】
図9は、ICタグ602のメモリ領域を説明する図である。ICタグ602は、1ブロックあたり8バイトであり、各バイトに対してデータ1バイトが入る。また、ICタグ602は、最初の1ブロックがシステム領域として割り当てられており、残りがユーザ領域として割り当てられている。システム領域には、IC製造業者コードや、生産時のシリアルナンバーなどが書き込まれ、通常、ユーザはシステム領域を書き換えることは出来ない。一方、ユーザ領域はユーザが自由にデータを読み書きできる、すなわちリードライトできる領域である。図6や図8で説明したライトできる領域は、通常、このユーザ領域である。ユーザ領域には、ICタグを貼付した物品を管理すべく、出荷日時、出荷場所、生産者などのデータを、ユーザのニーズに合わせて書き込むことができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】富士通株式会社プレスリリース(2008年1月)http://pr.fujitsu.com/jp/news/2008/01/9.html、2009年7月23日検索
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ユーザ領域は、同質の複数のデータを区分して格納することを想定したものではない。複数の測定データがある場合、これらは同質のデータであるため、ICタグのユーザ領域に格納できず、ICタグは測定データのデータキャリアとして機能しない。また、時刻ごとの測定データも同様であり、これらはICタグのユーザ領域に格納できず、ICタグは測定データのロガーとして機能しない。
【0009】
具体的な航空機のメンテナンス情報について考える。例えば、トルクレンチでのボルトの締め付け作業があったとしても、従来のICタグ用管理方法は、ICタグに通常は適正なトルク値で締め付けを行ったという記録を残すのみで、トルク値を記録することはできない。
【0010】
ICタグのユーザ領域は数キロバイトと容量が小さいが、トルク値のようにセンサや測定器によって得られる測定データは、日時情報を伴っても、比較的データ量が小さく、ICタグに複数のデータを格納し得る。しかし、従来のICタグ用ソフトウェアによるICタグデータ管理方法では、測定データをそのままICタグに書き込むことができず、ICタグのユーザ領域を有効に利用することができなかった。
【0011】
そこで、本発明は、複数の測定データをICタグのユーザ領域に書き込むことができ、ICタグを複数の測定データを保持するデータキャリアとして機能させるICタグ用データ管理方法及びICタグ用データ管理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係るICタグ用データ管理方法及びICタグ用データ管理プログラムは、ICタグのユーザ領域を複数に分割し、センサや測定器からの測定データから記録データを生成し、記録データをセンサや測定器ごとに分割したユーザ領域に割り当てて書き込むこととした。
【0013】
具体的には、本発明に係るICタグ用データ管理方法は、ICタグのユーザ領域を複数のデータフィールドに分割する分割過程と、前記ICタグに書き込む記録データを生成するデータ生成過程と、前記データ生成過程で生成された前記記録データを前記データフィールド毎に書き込む書込み過程と、前記データフィールド内の保管データを読み出す読出し過程と、を有する。
【0014】
本発明に係るICタグ用データ管理方法は、センサや測定器からの測定データから記録データを生成し、この記録データをICタグのユーザ領域を分割したデータフィールドに書き込む。例えば、記録データをセンサや測定器ごとにデータフィールドに書き込むことができる。また、本発明に係るICタグ用データ管理方法は、ユーザ領域にある保管データを読み出すことができる。ここで、保管データとは、ユーザ領域内の記録データや空のデータフィールドの値(NULL)を含むデータである。
【0015】
本発明に係るICタグ用データ管理方法は、センサや測定器からの測定データをICタグリーダライタを介してICタグへ受け渡し、ICタグを複数の測定データを保持するデータキャリアとして機能させることができる。従って、本発明は、複数の測定データをICタグのユーザ領域に書き込むことができ、ICタグを複数の測定データを保持するデータキャリアとして機能させるICタグ用データ管理方法を提供することができる。
【0016】
本発明に係るICタグ用データ管理方法の前記書込み過程で、前記記録データに日時情報を付加することができる。本発明に係るICタグ用データ管理方法は、記録データに日時情報を付加することで、ICタグを単なるデータキャリアだけでなく、データロガーとして機能させることができる。
【0017】
本発明に係るICタグ用データ管理方法は、前記書込み過程で、前記記録データの種類を記載した属性情報を、前記データフィールドの1つに書き込むことができる。本発明に係るICタグ用データ管理方法は、ICタグがどのようなセンサや測定器のデータロガーとして機能しているかを書き込んでおくことができる。本発明に係るICタグ用データ管理方法を採用するシステムは、属性情報を確認することで、ICタグがどのようなセンサや測定器のデータロガーとして機能しているか、データキャリアとして使われているものか、あるいは、未使用なのか、を判断することができる。
【0018】
例えば、目的に適するセンサや測定器のデータロガーとして機能している場合、又は未使用の場合、新たな記録データの書き込みを許すという条件を予め設定しておけば、本発明に係るICタグ用データ管理方法を採用するシステムは、新たな記録データを書き込んでよいかどうかの判定を行うことができる。また、センサや測定器のデータロガーとして機能している場合、ユーザ領域が記録データで一杯になっていても、もっとも古いデータフィールドに上書きを許すという条件を予め設定しておけば、本発明に係るICタグ用データ管理方法を採用するシステムは、新たな記録データを書き込んでよいかどうかの判定を行うことができる。これらの設定は属性情報が書き込まれるデータフィールドに設定してもよい。
【0019】
本発明に係るICタグ用データ管理方法は、前記書込み過程の前に、前記読出し過程を行い、読み出された前記保管データの中の前記属性情報を確認して新たに前記記録データの書込みが可能か否かを判断する書込み可否判断過程を行い、書込み可能な場合に前記書込み過程を行うことができる。
【0020】
ユーザ領域に空があるか否かを判断してから新たな記録データを書き込むため、過去の記録データが消去されることがない。一方、ユーザ領域が一杯のときには、最も古い記録データを消去して新たな記録データを書き込むように設定してもよい。本発明に係るICタグ用データ管理方法を採用するシステムは、ICタグの限られたユーザ領域を有効に利用することができる。
【0021】
本発明に係るICタグ用データ管理方法の前記属性情報に、前記データフィールドのフィールド長及び開始ブロックが含まれることを特徴とする。
【0022】
本発明に係るICタグ用データ管理方法を採用するシステムは、記録データのデータ長とデータフィールドのフィールド長とを比較することで、使用するセンサや測定器に適したデータフィールドに書き込むことができ、効率的なユーザ領域の利用を可能にすることができる。
【0023】
また、センサや測定器が変わった場合は記録データのデータ長が変わることがある。本発明に係るICタグ用データ管理方法は、記録データのデータ長を確認してフィールド長変えることで多くのセンサや測定器に対応できるとともに、ICタグのユーザ領域を有効に利用することができる。
【0024】
本発明に係るICタグ用データ管理方法は、前記読出し過程で読み出された前記保管データの中の前記属性情報から前記データフィールドの前記フィールド長及び前記開始ブロックを取り出し、前記読出し過程の後、取り出された前記フィールド長及び前記開始ブロックに基づいて、読み出された前記保管データから前記記録データを復元するデータ復元過程をさらに行うことを特徴とする。
【0025】
本発明に係るICタグ用データ管理方法を採用するシステムは、ICタグ内に保持されている保管データを読み込み、属性情報に含まれるフィールド長及び開始ブロックの情報を用いて、元の記録データを復元し、ユーザに見やすい形式で提示することができる。
【0026】
本発明に係るICタグ用データ管理プログラムは、前記ICタグのデータ管理方法をコンピュータに実行させる。本プログラムをコンピュータに実施させることで本発明に係るICタグ用データ管理方法を実行することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、複数の測定データをICタグのユーザ領域に書き込むことができ、ICタグを複数の測定データを保持するデータキャリアとして機能させるICタグ用データ管理方法及びICタグ用データ管理プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係るICタグ用データ管理方法で用いるICタグのデータ形式を説明する図である。
【図2】本発明に係るICタグ用データ管理方法を説明するブロックダイヤグラムである。
【図3】本発明に係るICタグ用データ管理方法で用いるICタグのデータ形式を説明する図である。
【図4】本発明に係るICタグ用データ管理方法を説明するブロックダイヤグラムである。
【図5】本発明に係るICタグ用データ管理方法での読出し過程を説明する図である。
【図6】従来のICタグ用データ管理方法でICタグにデータを書き込む場合を説明する図である。
【図7】従来のICタグ用データ管理方法でICタグにデータを読み出す場合を説明する図である。
【図8】従来のICタグ用データ管理方法を説明するブロックダイヤグラムである。
【図9】従来のICタグ用データ管理方法で用いるICタグのデータ形式を説明する図である。
【図10】本発明に係るICタグ用データ管理プログラムを実行するためのコンピュータの例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0030】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態のICタグ用データ管理方法でのICタグのメモリ領域を説明する図である。本実施形態のICタグ用データ管理方法は、ICタグのユーザ領域を複数のデータフィールドに分割する分割過程と、前記ICタグに書き込む記録データを生成するデータ生成過程と、前記データ生成過程で生成された前記記録データを前記データフィールド毎に書き込む書込み過程と、前記データフィールド内の保管データを読み出す読出し過程と、を有する。また、前記書込み過程で、前記記録データに日時情報を付加する。
【0031】
例えば、本ICタグ用データ管理方法を採用するシステムは、ICタグリーダライタを用いてICタグを検査して、ユーザ領域が分割されているか否かを確認する。ICタグのユーザ領域が分割されていない場合、本システムは本ICタグ用データ管理方法の分割過程を行う。図1は、本システムがユーザ領域を複数に分割し、フィールド長として、2ブロックすなわち16バイトに相当するデータフィールドを設定したときの図である。図8の従来のICタグは、ユーザ領域全体が1つのデータフィールドであったが、本実施形態のICタグは、ユーザ領域が複数のデータフィールドに分割されている。
【0032】
続いて、本システムは、本ICタグ用データ管理方法のデータ生成過程を行う。具体的には、本システムはセンサや測定器からの測定データをICタグ用の記録データに変換する。ここで、記録データに測定時間等の日時情報を含めてもよい。なお、記録データは1データフィールドに格納可能な大きさで生成される。
【0033】
さらに、本システムは、本ICタグ用データ管理方法の書込み過程を行う。具体的には、本システムは、ICタグリーダライタを利用して記録データを各データフィールドに書き込む。例えば、ICタグリーダライタがセンサや測定器に備えられていれば、ICタグが付された物品を測定したときに、その測定データを記録データに変換してICタグに自動的に書き込むことができる。このようにすることで、本システムは、センサや測定器の測定データを、手入力を介さず、ICタグのユーザ領域に書き込むことができる。
【0034】
一方、本システムは、ICタグがデータフィールドに保管している保管データを読み出し過程で読み出すことができる。例えば、本システムは、ICタグリーダライタでデータフィールドにある保管データ全てを読み出し、空データを削除することで記録データを得ることができる。さらに、本システムは、記録データから測定データ及び日時情報を取り出すことができる。
【0035】
例えば、ユーザ領域のブロック数が16であれば、8個のデータフィールドを設けることが可能である。すなわち、ICタグに8個の記録データおよび日時情報などが格納できるので、本システムはICタグを8個の記録データのロガーとして機能させることができる。また日時情報を含まなければ、本システムはICタグを日時情報の付加されていないデータキャリアとして利用できる。
【0036】
本システムは、書込み過程の前に、読出し過程を行い、読み出された保管データを確認する。本システムは、保管データからデータフィールドの空き状況や現在データフィールド内にある記録データの日時情報を確認し、新たに記録データの書込みが可能か否かを判断する。
【0037】
図2は、図1のようにユーザ領域を分割したICタグを用いて、測定データのデータキャリアまたはロガーの機能を実現させるICタグ用データ管理方法のブロックダイヤグラムである。本システムは、ユーザ領域が記録データ等でいっぱいになった場合、一部データフィールドを消去する必要がある。図2は、そのときに新たに記録データの書込みが可能か否かを判断するブロックダイヤグラムである。
【0038】
本システムは、最初に現状におけるICタグのユーザ領域の保管データを読み取り、日時情報から最も古い記録データを消去の対象とする。具体的には、ICタグのユーザ領域の保管データを読み取り(ステップS201)、新しいICタグが否かを判断する(ステップS202)。例えば、ユーザ領域がデータフィールドに分割されていないことを認識したときに新しいICタグであると判断できる。新しいIDタグと判断した場合は、新たに記録データを書き込むか否かを判断する(ステップS207)。新たに記録データを書き込まない場合は、処理を中止する(ステップS208)。一方、新たに記録データを書き込む場合は、分割過程を行い、所定のデータフィールドに記録データを書き込む(ステップS206)。
【0039】
ステップS202で新しいICタグではないと判断した場合、空のデータフィールドがあるか否かを判断する(ステップS203)。例えば、データフィールドがNULL値で埋められていることを認識したときに、そのデータフィールドは空であると判断できる。また、データフィールドがNULL値で埋められていなくとも、一定の長さでNULLが存在し、それが記録データのデータ長を上回る場合、空のデータフィールドが存在するという判断をしてもよい。
【0040】
ステップS203で空のデータフィールドを見つけた場合、当該データフィールドに記録データを書き込む。例えば、空のデータフィールドが複数ある場合、システムエリアに近い方から書き込むことができる。一方、ステップS203で空のデータフィールドがない場合、重ね書きの可否を判断する(ステップS204)。例えば、日時情報がある記録データの場合、重ね書き可能としてもよい。また、重ね書き可能か否かの判断をユーザに問い合わせてもよい。
【0041】
ステップS204で重ね書きが可能であれば、そのデータフィールド内の記録データを消去し(ステップS205)、新たな記録データを書き込む(ステップS206)。一方、ステップS204で重ね書き不可であれば、書込みを中止する(ステップS208)。
【0042】
本システムは、このように動作することでICタグを測定データのロガーとして常に最新の複数の測定データを保持させることができる。また、図2のようなブロックダイヤグラムで表されるICタグ用データ管理プログラムを、ICタグリーダライタのソフトウェア開発でよく用いられるC言語やVisualBasicなどのプログラミング言語で実現できる。
【0043】
(第2実施形態)
図3は、本実施形態のICタグ用データ管理方法でのICタグのメモリ領域を説明する図である。本実施形態のICタグ用データ管理方法は、前記書込み過程で、前記記録データの種類を記載した属性情報を、前記データフィールドの1つに書き込む。
【0044】
本システムは、分割過程でユーザ領域を分割したときに、最初のブロック0に、記録データの種類、データフィールドの開始ブロック、およびデータフィールドの長さの値等の属性情報を書き込む領域を確保している。ここで、記録データの種類とは、センサや測定器の情報から決定する。その後は、データフィールドの開始ブロックであるブロック1から始まって2ブロックずつに相当するデータフィールドを複数設定する。
【0045】
本システムは、1データフィールドに格納可能な範囲で測定データ等を書き込む。また、本システムは、ブロック0に属性情報を書き込む。例えば、読み込み過程でICタグを読み込んだ際に、このICタグがどのようなセンサや測定器のデータのロガーとして機能しているかをユーザは知ることができる。
【0046】
さらに、本システムは、ブロック0に、データフィールドの長さの値(フィールド長)を書き込んでおくことで、分割過程で分割の規定値を与えなくても、ユーザ領域がどのように分割され、データフィールドを形成しているかを把握できる。例えば、本システムは、記録データのデータ長が変わった場合、ユーザ領域を分割し直すことができる。本システムは、記録データのデータ長が異なるセンサや測定器に対応でき、ユーザ領域を有効に利用できる。
【0047】
図4は、図3のようにユーザ領域を分割したICタグを用いて、測定データのデータキャリアまたはロガーの機能を実現させるICタグ用データ管理方法のブロックダイヤグラムである。ICタグの読み書きを行うICタグリーダライタは、最初の時点で、データフィールドに書き込むべき記録データ及び属性情報を有しているものとする。ここでは、図2と異なる部分のみ説明する。
【0048】
本システムは、前記書込み過程の前に、前記読出し過程を行い、読み出された前記保管データの中の前記属性情報を確認して新たに前記記録データの書込みが可能か否かを判断する書込み可否判断過程を行い、書込み可能な場合に前記書込み過程を行う。具体的には、ステップS207で新しいICタグにデータを新たに書き込むと判断した場合、ブロック0に属性情報を書き込み(ステップS302)、その後、ステップS206を行う。また、ステップS202で新しいICタグではないと判断した場合、読み出した属性情報に基づいて、目的に合致するICタグかどうかを判定する(ステップS301)。目的に合致するICタグの場合はステップS203を行い、目的に合致しないICタグの場合はステップS208を行う。
【0049】
ここで、「目的に合致する」とは次のような場合を示す。例えば、特定のセンサや測定器の測定データをICタグに書き込むことが必要とされている物品があった場合に、その物品がそのセンサや測定器で測定されたときに、本システムはその物品に付されているICタグは目的に合致すると判断する。
【0050】
図4のようなブロックダイヤグラムで表されるICタグ用データ管理プログラムを第1実施形態で説明したプログラミング言語で実現できる。
【0051】
(第3実施形態)
本実施形態のICタグ用データ管理方法は、前記属性情報に、前記データフィールドのフィールド長及び開始ブロックが含まれることを特徴とする。また、前記読出し過程で読み出された前記保管データの中の前記属性情報から前記データフィールドの前記フィールド長及び前記開始ブロックを取り出し、前記読出し過程の後、取り出された前記フィールド長及び前記開始ブロックに基づいて、読み出された前記保管データから前記記録データを復元するデータ復元過程をさらに行うことを特徴とする。
【0052】
図5は、本実施形態のICタグ用データ管理方法での読出し過程を説明する図である。本実施形態のICタグは、図3のようにユーザ領域が分割されている。本システムは、ICタグに保持されている保管データを読み込み(ステップS501)、保管データの中から属性情報を探し出し(ステップS503)、データフィールドの開始ブロックおよびデータフィールドのフィールド長を用いて、元の測定データを復元し(ステップS504)、ユーザに見やすい形式で提示する(ステップS505)。
【0053】
本システムは、属性情報内のデータフィールドの開始ブロックおよびデータフィールドのフィールド長から、ブロックの割り当てを知ることができる。このため、本システムは、保管データを属性情報と記録データとに分離することができる(ステップS502)。その後、本システムは、記録データから日時情報を取り出す(ステップS506)。また、本システムは、属性情報から、記録データとして書き込まれた測定データがどのようなセンサや測定器で測定されたものかを判断し、これを、データシートのヘッダに提示する(ステップS505)。本システムは、その下に、日時情報と測定データを組み合わせて提示する(ステップS505)。このとき、本システムに測定データを日時情報順に並べる機能があれば、測定データを日時情報順に提示することができる。このように、本システムは、ICタグに保持されている保管データから、元の測定データを復元し、ユーザに見やすい形式で提示可能となる。
【0054】
(ICタグ用データ管理プログラムの実施例)
第1から第3実施形態のICタグ用データ管理方法は、ICタグ用データ管理方法のプログラム(ICタグ用データ管理プログラム)をコンピュータが実行することで実現することができる。ICタグ用データ管理プログラムは、例えば、記録媒体に格納されて提供される。記録媒体としては、フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD等の記録媒体や、半導体メモリ等が例示される。ICタグ用データ管理プログラムは、LAN(Local Area Network)やインターネットを介して提供されてもよい。
【0055】
図10は、記録媒体90に記録されたプログラムを実行するためのコンピュータ300の例を示した図である。コンピュータ300は、フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD等の記録媒体90を読み取る記録媒体読み取り装置111と、作業用メモリ(RAM)112と、記録媒体90に記録されたプログラムを記憶するメモリ113と、ディスプレイ114と、入力装置であるマウス115及びキーボード116と、プログラムの実行を制御するCPU117と、データを記憶するハードディスク118と、測定器620やICタグリーダライタ603と接続するケーブル119と、を備えている。ケーブル119の形態として、USBケーブル、RS232Cケーブル、又は有線LANケーブルがある。この場合、LANやインターネットを経由して接続してもよい。他の接続形態として無線LANやBluetooth(登録商標)といった無線接続でもよい。図10では、作業用メモリ112、メモリ113、CPU117及びハードディスク118は筐体に内蔵されるので破線で示している。
【0056】
コンピュータ300は、記録媒体90が記録媒体読み取り装置111に挿入されると、記録媒体読み取り装置111から記録媒体90に格納されたICタグ用データ管理プログラムがメモリ113にインストールされる。メモリ113へのインストール完了後、CPU117はICタグ用データ管理プログラムにアクセス可能になり、当該プログラムによって、コンピュータ300は、本実施形態のICタグ用データ管理方法を実施するシステムとして動作することが可能になる。
【0057】
コンピュータ300がICタグ用データ管理方法を実施するシステムとして動作する場合、コンピュータ300はICタグリーダライタが備えられた測定器620やICタグリーダライタ603と接続されており、CPU117がICタグ用データ管理プログラムに従い、測定器620からのデータを読み出し、分割過程、データ生成過程、書込み過程、及び読出し過程を行う。また、CPU117は、ICタグリーダライタ603からの信号で書込み可否判断過程、及びデータ復元過程をおこなう。また、CPU117は、データ復元過程で復元したデータを図5で説明したようにディスプレイ114に表示することができる。
【0058】
ここでのコンピュータ300は、図10のようなパーソナルコンピュータに限らず、記録媒体読み取り装置111、CPU117を具備しソフトウエアによる処理や制御を行うDVDプレーヤ、ゲーム機、携帯電話などを含む。
【0059】
また、ICタグリーダライタ603がCPU、ROM及びRAMを内蔵しており、ROMあるいはRAMに記録されたICタグ用データ管理プログラムをCPUが実行する形態でもよい。この場合、各々のICタグリーダライタ603と測定器620とがケーブル119で直接接続され、各々のICタグリーダライタ603自身がICタグ用データ管理方法を実施することになる。コンピュータ300でデータ集計などを行う場合には、ICタグリーダライタ603との間でデータの送受に使用するケーブルを別途設けることができる。
【符号の説明】
【0060】
90:記録媒体
111:記録媒体読み取り装置
112:作業用メモリ
113:メモリ
114:ディスプレイ
115:マウス
116:キーボード
117:CPU
118:ハードディスク
119:ケーブル
300:コンピュータ
601:物品
602:ICタグ
603:ICタグリーダライタ
604:搬送波
605:データ信号が重畳された搬送波
620:測定器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICタグのユーザ領域を複数のデータフィールドに分割する分割過程と、
前記ICタグに書き込む記録データを生成するデータ生成過程と、
前記データ生成過程で生成された前記記録データを前記データフィールド毎に書き込む書込み過程と、
前記データフィールド内の保管データを読み出す読出し過程と、
を有するICタグ用データ管理方法。
【請求項2】
前記書込み過程で、前記記録データに日時情報を付加することを特徴とする請求項1に記載のICタグ用データ管理方法。
【請求項3】
前記書込み過程で、前記記録データの種類を記載した属性情報を、前記データフィールドの1つに書き込むことを特徴とする請求項1又は2に記載のICタグ用データ管理方法。
【請求項4】
前記書込み過程の前に、前記読出し過程を行い、読み出された前記保管データの中の前記属性情報を確認して新たに前記記録データの書込みが可能か否かを判断する書込み可否判断過程を行い、書込み可能な場合に前記書込み過程を行うことを特徴とする請求項3に記載のICタグ用データ管理方法。
【請求項5】
前記属性情報に、前記データフィールドのフィールド長及び開始ブロックが含まれることを特徴とする請求項3又は4に記載のICタグ用データ管理方法。
【請求項6】
前記読出し過程で読み出された前記保管データの中の前記属性情報から前記データフィールドの前記フィールド長及び前記開始ブロックを取り出し、
前記読出し過程の後、取り出された前記フィールド長及び前記開始ブロックに基づいて、読み出された前記保管データから前記記録データを復元するデータ復元過程をさらに行うことを特徴とする請求項5に記載のICタグ用データ管理方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載のICタグのデータ管理方法をコンピュータに実行させるためのICタグ用データ管理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−44048(P2011−44048A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−192583(P2009−192583)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】