説明

IQ信号発生回路

【課題】IQ位相誤差の少ないIQ信号発生回路を提供する。
【解決手段】IQ信号発生回路10では、4相入出力RCポリフェイズフィルタ11は、第1乃至第4入力端子11a、11b、11c、11dと第1乃至第4出力端子間11e、11f、11g、11hに接続された抵抗RとキャパシタCを有し、位相差が0°および180°の信号が通過すると位相差が0°、90°、180°、270°の信号を生成する。抵抗負荷回路12は、電源端子14と第1乃至第4出力端子11e、11f、11g、11hの間に接続され、4相入出力RCポリフェイズフィルタ11に流れる電流を電圧に変換する。4相入出力トランスコンダンタンスアンプ13は、第1乃至第4入力端子11a、11b、11c、11dと基準電位GNDの間に接続され、4相入出力RCポリフェイズフィルタ11に位相差が0°および180°の信号を通過させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、IQ信号発生回路に関する。
【背景技術】
【0002】
通信機器等には、I(同相)信号と、Q(I信号に90°の位相)に分割してベクトル変調および復調を行うIQ変調回路およびIQ復調回路が用いられている。
【0003】
従来、IQ信号発生回路として、電圧制御発振回路から入力された信号を逓倍する逓倍回路と、逓倍信号を2分周する2分周回路を有するものが知られている。逓倍信号を立ち上がりのタイミングと立ち下がりのタイミングで2分周することにより、それぞれ90°の位相差を持った信号を生成し、位相差が0°、90°、180°、270°の4相信号を得ていた。
【0004】
然しながら、このIQ信号発生回路は、トランジスタ等の非線形素子を多く含んでいるので、IQ信号の位相誤差が大きくなる問題がある。
【0005】
これに対して、位相差が0°および180°の信号が通過すると位相差が0°、90°、180°、270°の信号を生成する4相入出力RCポリフェイズフィルタを用いたIQ信号発生回路が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
このIQ信号発生回路は、線形素子で構成されているため位相誤差が小さくなるが、発生するIQ信号のレベルが小さい。そのため、IQ信号のレベルを調節する増幅器をIQ信号発生回路とミキサの間に設ける必要がある。その結果、増幅器の非線形性により、ミキサの入力端でIQ信号の位相誤差が発生するという問題がある。
【0007】
更に、線形素子の製造ばらつきに起因して、目的の周波数で90°の位相差が得られない場合、目的の周波数でIQ信号が得られるように補正することが難しいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−283253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、位相誤差の少ないIQ信号発生回路を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一つの実施形態によれば、IQ信号発生回路、4相入出力RCポリフェイズフィルタは、第1乃至第4入力端子と第1乃至第4出力端子間に接続された抵抗とキャパシタを有し、位相差が0°および180°の信号が通過すると位相差が0°、90°、180°、270°の信号を生成する。抵抗負荷回路は、電源端子と第1乃至第4出力端子の間に接続され、4相入出力RCポリフェイズフィルタに流れる電流を電圧に変換する。4相入出力トランスコンダンタンスアンプ13は、第1乃至第4入力端子と基準電位の間に接続され、4相入出力RCポリフェイズフィルタに位相差が0°および180°の信号を通過させる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例1に係るIQ信号発生回路を示す回路図。
【図2】本発明の実施例1に係るポリフェイズフィルタの入出力特性を示す図。
【図3】本発明の実施例1に係る定電流源を示す回路図。
【図4】本発明の実施例1に係るIQ信号の位相特性を示す図。
【図5】本発明の実施例1に係るIQ変復調回路を示すブロック図。
【図6】本発明の実施例1に係る別のIQ信号発生回路を示す回路図。
【図7】本発明の実施例2に係るポリフェイズフィルタを示す回路図。
【図8】本発明の実施例3に係るトランスコンダクションアンプを示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0013】
本実施例について、図1乃至図3を参照して説明する。図1は本実施例のIQ信号発生回路を示す回路図である。図1に示すように、本実施例のIQ信号発生回路10では、4相入出力RCポリフェイズフィルタ(以下、単にポリフェイズフィルタという)11は、第1乃至第4入力端子11a、11b、11c、11dから位相差が0°および180°の信号が通過すると、第1乃至第4出力端子11e、11f、11g、11hから位相差が0°、90°、180°、270°の信号を生成する。
【0014】
抵抗負荷回路12は、電源端子14と第1乃至第4出力端子11e、11f、11g、11hの間に接続され、ポリフェイズフィルタ11に流れる電流を電圧に変換する。
【0015】
4相入出力トランスコンダンタンスアンプ(以下、単にトランスコンダンタンスアンプという)13は、第1乃至第4入力端子11a、11b、11c、11dと基準電位GNDの間に接続され、ポリフェイズフィルタ11に位相差が0°および180°の信号を通過させる。
【0016】
ポリフェイズフィルタ11は、第1乃至第4入力端子11a、11b、11c、11dと第1乃至第4出力端子11e、11f、11g、11h間に接続された抵抗R1、R2、R3、R4とキャパシタC1、C2、C3、C4を有している。
【0017】
抵抗R1、R2、R3、R4はそれぞれ、一対の入出力端子間に接続されている。キャパシタはそれぞれ、一対の入出力端子の内の入力端子と別の一対の入出力端子の内の出力端子の間に接続されている。
【0018】
具体的には、抵抗R1は第1入力端子11aと第1出力端子11bの間に接続され、キャパシタC1は第1入力端子11aと第2出力端子11fの間に接続されている。抵抗R2は第2入力端子11bと第2出力端子11fの間に接続され、キャパシタC2は第2入力端子11bと第3出力端子11gの間に接続されている。
【0019】
同様に、抵抗R3は第3入力端子11cと第3出力端子11gの間に接続され、キャパシタC3は第3入力端子11cと第4出力端子11hの間に接続されている。抵抗R4は第4入力端子11dと第4出力端子11hの間に接続され、キャパシタC4は第4入力端子11dと第1出力端子11eの間に接続されている。
【0020】
ここで、抵抗R1乃至抵抗R4は、例えば互いに等しく(R≡R1=R2=R3=R4)、キャパシタC1乃至キャパシタC4は、例えば互いに等しく(C≡C1=C2=C3=C4)設定される。
【0021】
ポリフェイズフィルタ11では、抵抗RとキャパシタCの積で決まる周波数f(f=1/2πRC)において、第1および第2入力端子11a、11bに位相差が0°の信号、第3および第4入力端子11c、11dに位相差が180°の信号が入力されると、第1出力端子11eに位相差が0°の信号、第2出力端子11fに位相差が180°の信号、第3出力端子11gに位相差が90°の信号、第4出力端子11hに位相差が270°の信号が出力される。
【0022】
従って、抵抗RとキャパシタCは、周波数fが目的の周波数になるように形成されていることが必要である。目的の周波数は、移動体通信機器などでは、例えば5.8GHzである。
【0023】
負荷抵抗回路12は、ポリフェイズフィルタ11の第1乃至第4出力端子11e、11f、11g、11hと電源端子14の間にそれぞれ接続された負荷抵抗RL1、RL2、RL3、RL4を有している。
【0024】
具体的には、負荷抵抗RL1は第1出力端子11eと高電位配線15を介して電源端子14の間に接続されている。負荷抵抗RL2は第2出力端子11fと高電位配線15を介して電源端子14の間に接続されている。
【0025】
同様に、負荷抵抗RL3は第1出力端子11gと高電位配線15を介して電源端子14の間に接続されている。負荷抵抗RL4は第2出力端子11hと高電位配線15を介して電源端子14の間に接続されている。ここで、負荷抵抗RL1乃至抵抗RL4は互いに等しく(RL1=RL2=RL3=RL4)設定されている。
【0026】
トランスコンダンタンスアンプ13は、電圧信号を電流信号に変換するアンプであり、第1差動増幅器16と第2差動増幅器17を有している。
【0027】
第1差動増幅器16は、差動接続された一対のNチャネル絶縁ゲート電界効果トランジスタ(以後、単にMOSトランジスタという)M1、M2と、第1定電流I1が制御信号(図示せず)により可変可能に構成された第1定電流源18を有している。
【0028】
第1差動増幅器16は、一対の出力端子がそれぞれ第1および第3入力端子11a、11cに接続され、一対の入力端子にそれぞれ位相差が0°の信号IN_ipおよび180°の信号IN_inが入力され、第1定電流I1で駆動されている。
【0029】
MOSトランジスタM1はドレイン電極が第1入力端子11aに接続され、ゲート電極に位相差が0°の信号IN_ipが入力される。MOSトランジスタM2はドレイン電極が第3入力端子11cに接続され、ゲート電極に位相差が180°の信号IN_inが入力される。
【0030】
第1定電流源18は、MOSトランジスタM1、M2のソース電極と基準電位GNDとの間に接続されている。
【0031】
同様に、第2差動増幅器17は、差動接続された一対のMOSトランジスタM3、M4と、第2定電流I2が制御信号により可変可能に構成された第2定電流源19を有している。
【0032】
第2差動増幅器17は、一対の出力端子がそれぞれ第2および第4入力端子11b、11dに接続され、一対の入力端子にそれぞれ位相差が0°の信号IN_qpおよび180°の信号IN_qnが入力され、第2定電流I2で駆動されている。
【0033】
MOSトランジスタM3はドレイン電極が第2入力端子11bに接続され、ゲート電極に位相差が0°の信号IN_qpが入力される。MOSトランジスタM4はドレイン電極が第4入力端子11dに接続され、ゲート電極に位相差が180°の信号IN_qnが入力される。
【0034】
第2定電流源19は、MOSトランジスタM3、M4のソース電極と基準電位GNDとの間に接続されている。
【0035】
ここで、第1定電流I1および第2定電流I2は、等しく(I1=I2)設定されている。
【0036】
なお、位相差が0°の信号IN_ipおよび180°の信号IN_inは、例えば電圧制御発振回路からの信号を周波数逓倍または2分周することにより生成する。
【0037】
上述したIQ信号発生回路10は、十分な信号レベルを有するとともに、位相誤差の少ないIQ信号を発生するように構成されている。更に、上述したIQ信号発生回路10は、90°の位相差が得られる周波数、換言するとIQ信号の位相差が可変できるように構成されている。
【0038】
図2はポリフェイズフィルタ11の入出力特性を示す図である。図2に示すように、f=1/2πRCの周波数において、第1および第2入力端子11a、11bから、位相差が0°の信号F1を通過させ、第3および第4入力端子11c、11dから、位相差が180°の信号F2を通過させると、RCのハイパスフィルタ作用とロウパスフィルタ作用により第1乃至第4出力端子11e、11f、11g、11hに位相差がそれぞれ0°、180°、90°、270°の信号F3、F4、F5、F6が生成される。
【0039】
図3は、第1定電流源18を示す回路図である。図3に示すように、第1定電流源18は、制御信号Vcにより第1定電流(出力電流)I1が可変可能に構成された多連出力型のカレントミラー回路である。
【0040】
多連出力型のカレントミラー回路では、MOSトランジスタT0は、ドレイン電極とゲート電極が接続され、電流制限用の抵抗33を介して入力電流J0が加えられる。MOSトランジスタT1乃至T16は、制御信号Vcに基づいてゲート電極がMOSトランジスタT0のゲート電極に選択的に接続され、出力電流J1乃至J16を発生させる。
【0041】
スイッチ回路31は、スイッチS1乃至S16を有し、MOSトランジスタT1乃至T16のゲート電極を選択的にMOSトランジスタT0のゲート電極に接続する。制御回路32は、制御信号Vcに基づいてスイッチ回路31のスイッチS1乃至S16をオン・オフする。
【0042】
スイッチS1乃至S16は、例えば動作電圧の低いMOSトランジスタである。制御信号Vcは、例えば4ビットのバイナリー信号である。制御回路32は、4ビットのバイナリー信号をデコードして、スイッチS1乃至S16をオンさせる。
【0043】
これにより、第1定電流I1は、次式で表わされる。
I1=J1(S1)+J2(S2)+・・・+J16(S16) (1)
Jn=J0×Mn、n=1〜16 (2)
ここで、(Sn)はスイッチSnがオンのときに1、オフのときに0である。Mnはミラー比を示している。
【0044】
従って、例えばミラー比を全て1(Mn=1)とすると、第1定電流I1を0から16J0まで16ステップで可変することが可能である。
【0045】
第2定電流源19においても同様であり、その説明は省略する。但し、制御信号Vcが、反転して入力されるところが異なっている。即ち、第1定逓電流源18のスイッチSn(n=1〜16)がオンのとき、第2定電流源19のスイッチSn(n=1〜16)がオフになる。これにより、第1定電流I1と第2定電流I2を、相反して増減させることができる。
【0046】
第1定電流I1を可変することで、差動接続されたMOSトランジスタM1、M2のトランスコンダクタンスが変化する。第1定電流I1を減少させると、トランスコンダクタンスが小さくなる。第1定電流I1を増加させると、トランスコンダクタンスが大きくなる。
【0047】
ポリフェイズフィルタ11からトランスコンダクタンスアンプ13側をみたインピーダンスは、差動接続されたMOSトランジスタM1、M2のトランスコンダクタンスが支配的である。
【0048】
第2定電流I2についても同様である。第1および第2定電流I1、I2を相反して変えるのは、トランスコンダクタンスの増減により後述する抵抗Rの変化分(ΔR)を正負両方向に変化させ、位相差を90°をデフォルトとして両方向に変化させるためである。
【0049】
その結果、トランスコンダクタンスアンプ13のトランスコンダクタンスが変化すると、ポリフェイズフィルタ11の抵抗Rが等価的に変化したことになり、位相差が90°となる周波数を変化させることが可能である。
【0050】
その周波数は次式で表わされる。ここで、ΔRは抵抗Rの変化分である。
f=1/2π(R+ΔR)C (3)
図4は90°の位相差が得られる周波数が変化することにより、目的の周波数におけるIQ信号の位相差の変化をシミュレーションした結果を示す図である。シミュレーションは、例えば目的の周波数を5.8GHzとして、ハーモニックバランス解析法により行った。
【0051】
図4において、横軸は4ビットの制御信号Vcに対応した位相切替え量を示している。具体的には、例えば−5はスイッチS1乃至S4がオンの状態、0はスイッチS1乃至S9がオンの状態、5はスイッチS1乃至S14がオンの状態に対応している。図4に示すように、位相切替え量に応じて、IQ信号の位相差が可変されることが確認された。
【0052】
ポリフェイズフィルタ11は電流伝送路中に挿入されているので、寄生容量による影響が抑制されている。電流伝送路の抵抗はポリフェイズフィルタ11の抵抗Rが支配的なので、寄生抵抗による影響はほとんど見られない。
【0053】
従って、本実施例のIQ信号発生回路10は、IQ信号の位相誤差を生じない。抵抗RおよびキャパシタCの製造ばらつきに起因して生じる90°の位相差が得られる周波数と目的の周波数とのずれを、第1および第2定電流I1、I2を相反して調整することにより補正することが可能である。
【0054】
更に、本実施例のIQ信号発生回路10は、トランスコンダクタンスアンプ13を第1および第2差動増幅器16、17で構成しているので、同相ノイズに対して強い耐性を有している。
【0055】
図5は本実施例のIQ信号発生回路10を用いたIQ変復調器を示すブロック図である。図5に示すように、IQ変復調器40は、キャリアとなる高周波信号を発生させる信号発生回路41と、IQ変調回路42と、IQ変調回路42にベースバンド信号を供給するベースバンド回路43と、IQ復調器44で構成されている。
【0056】
信号発生回路41では、VCO(Voltage Controlled Oscillator)を用いた局部発振回路45は、例えばキャリア信号として周波数が2.9GHzの差動信号を生成し、周波数逓倍回路46は周波数が2.9GHzの差動信号を逓倍して、周波数が5.8GHzで位相差が0゜と180°の信号を生成する。
【0057】
位相差が0゜と180°の信号は、例えば差動バッファ47を介してIQ信号発生回路10に入力される。IQ信号発生回路10は位相差が0゜と180°の信号が入力されると、位相差が0゜と180°のI信号と、位相差が90゜と270°のQ信号を生成する。差動バッファ47はIQ信号発生回路10の後に接続されても構わない。
【0058】
IQ変調回路42では、I信号はI−ミキサ48に入力され、Q信号はQ−ミキサ49に入力される。I−ミキサ48はベースバンド回路43からのベースバンド信号とI信号をミキシングし、Q−ミキサ49はベースバンド回路43からのベースバンド信号とQ信号をミキシングする。
【0059】
ベースハンド回路43では、デシタルのベースバンド信号をDA変換器でアナログ信号に変換し、バッフアおよびロウパスフィルタを通して得られたアナログのベースバンド信号をI−ミキサ48およびQ−ミキサ49に出力している。
【0060】
ベースバンド信号とミキシングされたI信号、ベースバンド信号とミキシングされたQ信号は、差動パワーアンプ50で増幅され、差動出力Out_p、Out_nとして外部に出力される。
【0061】
一方、復調回路44では、位相差が0゜と180°の信号は差動バッファ51を介してミキサ52に入力される。ミキサ52は受信した高周波信号RFinをI信号とミキシングして生成された中間周波信号IFoutを外部に出力している。
【0062】
ここでは、復調回路44はIQ復調器ではない場合を示したが、IQ復調器とすることも可能である。
【0063】
以上説明したように、本実施例のIQ信号発生回路10では、位相差が0°および180°の信号を、トランスコンダクタンスアンプ13により電圧電流変換し、十分な信号レベルに増幅してから、ポリフェイズフィルタ11を通過させている。
【0064】
その結果、十分な信号レベルを有するとともに、位相誤差の少ないIQ信号を得ることができる。従って、位相誤差の少ないIQ信号発生回路10が得られる。
【0065】
また、ポリフェイズフィルタ11が電流伝送路中に挿入されているので寄生容量による影響が抑制されること、トランスコンダクタンスアンプ13のトランスコンダクタンスが支配的であるため、電流伝送路中の寄生抵抗による影響が抑制されること、トランスコンダクタンスアンプ13が同相ノイズに対して強い耐性を有している等の利点がある。
【0066】
更に、第1差動増幅器16の第1定電流I1および第2差動増幅器17の第2定電流I2を相反して変えることにより、IQ信号の位相を可変することができる。
【0067】
第1および第2定電流I1、I2により、MOSトランジスタM1、M2のトランスコンダクタンスと、MOSトランジスタM3、M4のトランスコンダクタンスが相反して変化し、等価的にポリフェイズフィルタ11の抵抗Rが可変されるためである。
【0068】
ポリフェイズフィルタ11の抵抗RおよびキャパシタCの製造ばらつきに起因して位相差が90°となる周波数fが変化しても、目的の周波数でIQ信号が得られるようにチューニングすることができる。
【0069】
第1および第2定電流I1、I2を相反して変える場合について説明したが、第1および第2定電流I1、I2の一方を固定し、他方を可変させることも可能である。
【0070】
ポリフェイズフィルタ11は、多段に接続することが可能である。ポリフェイズフィルタ11を多段接続することにより、IQ信号の生成精度を向上させることができる。
【0071】
但し、接続する段数が多すぎると、負荷抵抗RL1、RL2、RL3、RL4および抵抗R1、R2、R3、R4における電圧降下が大きくなるので、MOSトランジスタM1、M2、M3、M4が飽和領域で動作しなくなる。従って、接続する段数は2段または3段程度が適当である。
【0072】
図6はポリフェイズフィルタ11を多段に接続したIQ信号発生回路を示す回路図である。図6に示すように、IQ信号発生回路60では、2つのポリフェイズフィルタ11が2段に接続されている。
【0073】
ここでは、MOSトランジスタM1、M2、M3、M4およびMOSトランジスタT0乃至T16が、NチャネルのMOSトランジスタである場合について説明したが、PチャネルのMOSトランジスタとすることも可能である。
【0074】
また、第1、第2差増幅器16、17で、差動接続されたトランジスタがMOSトランジスタである場合について説明したが、バイポーラトランジスタを用いることも可能である。
【実施例2】
【0075】
本実施例に係るIQ信号発生回路について図7を用いて説明する。図7は本実施例のIQ信号発生回路のポリフェイズフィルタを示す回路図である。本実施例において、上記実施例1と同一の構成部分には同一符号を付してその部分の説明は省略し、異なる部分について説明する。本実施例が実施例1と異なる点は、等価的にキャパシタンスを可変できるようにしたことにある。
【0076】
即ち、図7に示すように、本実施例のポリフェイズフィルタ70では、キャパシタC1、C2、C3、C4に、可変容量ダイオードVC1、VC2、VC3、VC4が並列接続されている。
【0077】
その結果、可変容量ダイオードVC1、VC、VC3、VC4に、バイアス電圧を印加して、キャパシタC1、C2、C3、C4の容量を等価的に可変することで、位相差が90°となる周波数を変化させることが可能である。
【0078】
周波数は次式で表わされる。ここで、ΔCはキャパシタCの変化分である。周波数fが目的の周波数になるように、バイアス電圧によりΔCを調節する。
f=1/2πR(C+ΔC) (4)
本実施例は、第1、第2定電流I1、I2によりMOSトランジスタM1、M2のトランスコンダクタンスと、MOSトランジスタM3、M4のトランスコンダクタンスを相反して変えることにより、ポリフェイズフィルタ11の抵抗Rを等価的に変える手法と併用することが可能である。その場合、位相差が90°となる周波数は次式で表わされる。
【0079】
f=1/2π(R+ΔR)(C+ΔC) (5)
以上説明したように、本実施例のポリフェイズフィルタ70は、可変容量ダイオードVC1、VC、VC3、VC4により、等価的にポリフェイズフィルタ11のキャパシタCを変えている。ポリフェイズフィルタ11の抵抗Rを等価的に変える手法と併用することにより、動作範囲を拡張することができる利点がある。
【実施例3】
【0080】
本実施例に係るIQ信号発生回路について図8を用いて説明する。図8は本実施例のIQ信号発生回路のトランスコンダクタンスアンプを示す回路図である。本実施例において、上記実施例1と同一の構成部分には同一符号を付してその部分の説明は省略し、異なる部分について説明する。本実施例が実施例1と異なる点は、トランスコンダクタンスアンプを個別のMOSトランジスタで構成したことにある。
【0081】
即ち、図8に示すように、本実施例のトランスコンダクタンスアンプ80では、第1乃至第4入力端子11a、11b、11c、11dと基準電位GNDの間に、MOSトランジスタ81、83、82、84がそれぞれ、抵抗85、87、86、88を介して接続されている。
【0082】
位相差が0°の信号がMOSトランジスタ81、83のゲート電極に入力される。位相差が180°の信号がMOSトランジスタ82、84のゲート電極に入力される。
【0083】
以上説明したように、本実施例のトランスコンダクタンスアンプ80は、トランスコンダクタンスを可変可能とせずに、回路構成を簡略化しているので、容易に実施できる利点がある。
【0084】
上述した実施形態は、単に例として示したもので、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。実際、ここにおいて述べた新規な回路は、種々の他の形態に具体化されても良いし、さらに、本発明の主旨又はスピリットから逸脱することなくここにおいて述べた回路の形態における種々の省略、置き換えおよび変更を行っても良い。付随する請求項およびそれらの均等物は、本発明の範囲および主旨又はスピリットに入るようにそのような形態若しくは変形を含むことを意図している。
【0085】
本発明は、以下の付記に記載されているような構成が考えられる。
(付記1) 前記キャパシタに、可変容量ダイオードが並列接続されている請求項1に記載のIQ信号発生回路。
【0086】
(付記2) 前記4相入出力トランスコンダクタンスアンプは、
前記第1入力端子と前記基準電位の間に抵抗を介して接続され、ゲート電極に位相差が0°の信号が入力される第1絶縁ゲート電界効果トランジスタと、
前記第3入力端子と前記基準電位の間に抵抗を介して接続され、ゲート電極に位相差が180°の信号が入力される第2絶縁ゲート電界効果トランジスタと、
前記第2入力端子と前記基準電位の間に抵抗を介して接続され、ゲート電極に位相差が0°の信号が入力される第3絶縁ゲート電界効果トランジスタと、
前記第4入力端子と前記基準電位の間に抵抗を介して接続され、ゲート電極に位相差が180°の信号が入力される第4絶縁ゲート電界効果トランジスタと、
を具備する請求項1に記載のIQ信号発生回路。
【0087】
(付記3) 前記第1および第2定電流源は、前記制御信号により前記出力電流が相反して可変可能に構成されている請求項3に記載のIQ信号発生回路。
【符号の説明】
【0088】
10、60 IQ信号発生回路
11、70 ポリフェイズフィルタ
11a、11b、11c、11d 入力端子
11e、11f、11g、11h 出力端子
12 抵抗負荷回路
13、80 トランスコンダクタンスアンプ
14 電源端子
15 高電位配線
16 第1差動増幅器
17 第2差動増幅器
18 第1定電流源
19 第2定電流源
M1、M2、M3、M4、81、82、83、84 MOSトランジスタ
RL1、RL2、RL3、RL4 負荷抵抗
R1、R2、R3、R4、33、85、86、87、88 抵抗
C1、C2、C3、C4 キャパシタ
31 スイッチ回路
32 制御回路
VC1、VC2、VC3、VC4 可変容量ダイオード
40 IQ変復調回路
41 信号発生回路
42 IQ変調回路
43 ベースバンド回路
44 復調回路
45 局部発振回路
46 周波数逓倍回路
47、51 差動バッファ
48 I−ミキサ
49 Q−ミキサ
50 差動パワーアンプ
52 ミキサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1乃至第4入力端子と第1乃至第4出力端子の間に接続された抵抗とキャパシタを有し、位相差が0°および180°の信号が通過すると位相差が0°、90°、180°、270°の信号を生成する4相入出力RCポリフェイズフィルタと、
電源端子と前記第1乃至第4出力端子の間に接続され、前記4相入出力RCポリフェイズフィルタに流れる電流を電圧に変換するための抵抗負荷回路と、
前記第1乃至第4入力端子と基準電位の間に接続され、前記4相入出力RCポリフェイズフィルタに位相差が0°および180°の信号を通過させるための4相入出力トランスコンダンタンスアンプと、
を具備することを特徴とするIQ信号発生回路。
【請求項2】
前記4相入出力トランスコンダンタンスアンプは、
一対の出力端子が前記第1および第3入力端子に接続され、一対の入力端子に位相差が0°および180°の信号が入力され、第1定電流で駆動される第1差動増幅器と、
一対の出力端子が前記第2および第4入力端子に接続され、一対の入力端子に位相差が0°および180°の信号が入力され、第2定電流で駆動される第2差動増幅器と、
を具備することを特徴とする請求項1に記載のIQ信号発生回路。
【請求項3】
前記第1および第2定電流は、制御信号により出力電流が可変可能に構成された第1および第2定電流源により生成されることを特徴とする請求項2に記載のIQ信号発生回路。
【請求項4】
前記第1および第2定電流源は、ドレイン電極とゲート電極が接続され、入力電流が加えられる第1絶縁ゲート電界効果トランジスタと、前記制御信号に基づいてゲート電極が前記第1絶縁ゲート電界効果トランジスタの前記ゲート電極に選択的に接続され、出力電流を発生させる複数の第2絶縁ゲート電界効果トランジスタを有する多連出力型のカレントミラー回路であることを特徴とする請求項3に記載のIQ信号発生回路。
【請求項5】
前記負荷抵抗回路と前記4相入出力トランスコンダンタンスアンプの間に、前記4相入出力RCポリフェイズフィルタが複数段接続されていることを特徴とする請求項1に記載のIQ信号発生回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−49882(P2012−49882A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190968(P2010−190968)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)