説明

KVM切替器およびKVM切替方法

【課題】複数のコンピュータと、該複数のコンピュータに共用されるキーボード、マウス、ディスプレイを備えた入出力装置との間に配置され、操作対象となる1台のコンピュータと入出力装置との接続を切り替えるKVM切替器であって、リモコンからの切替指示をディスプレイを介して受信し、切替動作を行うKVM切替器を提供する。
【解決手段】KVM切替器1はビデオ信号切替回路4とキーボード・マウス切替回路108とマイクロコントローラ3を備える一方、ディスプレイ2はHDMI−CEC規格に対応し、リモコン10からのコマンドを受信する手段と、受信したコマンドをCEC信号9としてマイクロコントローラ3へ送信する手段とを備えるものであり、マイクロコントローラ3は、CEC信号を受信するとビデオ信号切替回路4とキーボード・マウス切替回路108に対して接続対象コンピュータ101の切替指示信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
複数のコンピュータと、これら複数のコンピュータに共用されるキーボード、マウス、ディスプレイを備えた入出力装置との間に配置され、入出力装置が操作対象にするコンピュータに接続を切り替えるKVM切替器であって、リモートコントローラからの切替指示をディスプレイを介して受信し、切替動作を行うKVM切替器およびKVM切替方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
KVM(Keyboard/Video/Mouse)切替器、すなわち、2台以上のコンピュータを接続し、これらのコンピュータで共用される一組の入出力装置(キーボード、マウス、ディスプレイ)を2台以上のコンピュータのいずれかに切り替えて用いる技術は公知である。
【0003】
図2に従い、従来のKVM切替器について簡単に説明する。
KVM切替器100は、2台以上のパソコン101をKVM切替器100内部の回路で切り替えることによって、1組の入出力装置(コンソールディスプレイ102、キーボード103、マウス104)を対象となったパソコン101に接続することを実現する。
このKVM切替器100の切替動作は切替ボタン105、あるいはキーボード103上の特殊キーの押し下げ、あるいは特定キーの押し下げの組み合わせをマイクロコントローラ(MCU)106が検出し、ビデオ信号切替回路107およびキーボード・マウス切替回路108に信号を送ることによって実行されていた。
【0004】
このようなKVM切替器に関し、複数の特許出願がなされ、特許文献1もその一つである。
特許文献1には、KVM切替器に接続したUSB機器をコンソール(Keyboard、Video、Mouse)とは独立して切り替える「コンソールデバイス及び周辺デバイスの信号スイッチ」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2005−509947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図2に例示するような従来のKVM切替器100では操作者は、切替操作を行うために常にキーボード103やKVM切替器100に手の届く範囲にいる必要があり、離れた場所から切替操作を行うことはできなかった。
一方、特許文献1では、操作者による切替操作は具体的にどのようになされるのかについて特に言及しておらず、遠隔操作によって切替を行うという課題に何ら応えるものではなかった。
【0007】
このような問題点に鑑み、本発明は遠隔操作により切替を実現し、しかもこの操作を簡単に行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、
複数のコンピュータと、これらのコンピュータに共用される入出力装置(キーボード、マウスおよびディスプレイで1セットを構成する)との間に配置され、前記複数のコンピュータのうち操作対象となる1台のコンピュータと前記入出力装置との接続を切り替えるKVM切替器であって、
該KVM切替器はビデオ信号切替回路とキーボード・マウス切替回路とマイクロコントローラを備える一方、
前記ディスプレイはHDMI−CEC規格に対応し、リモートコントローラからのコマンドを受信する手段と、前記受信したコマンドをCEC信号として前記マイクロコントローラへ送信する手段とを備えるものであり、
前記マイクロコントローラは、前記CEC信号を受信すると前記ビデオ信号切替回路と前記キーボード・マウス切替回路に対して接続対象コンピュータの切替指示信号を出力することを特徴とする。
これにより、リモートコントローラ(以下、「リモコン」)で操作ができるので、KVM切替器やキーボードから離れた場所にいてもコンピュータの切替やテレビの視聴ができる。
【0009】
「HDMI−CEC(High
Definition MultimediaInterface −Consumer Electronics Control)」規格とは、HDMI(登録商標)ケーブルを介してコントロール信号(CEC信号)を伝送し、機器間の連携動作を実現するプロトコルである。HDMI−CECは、リンク機能とも呼ばれ、パソコンやテレビなどの機器間の連携を簡単な操作で実現できることから、業界標準として最近の薄型テレビやビデオレコーダなどで幅広く使用されるようになってきている。
HDMI−CECによる機器間制御に利用される機器の一つとして、テレビの視聴のために広く利用されているテレビのリモコンがある。本発明は、HDMI−CECを活用し、テレビとして視聴することもできるコンソールディスプレイをリモコンで操作することによって、KVM切替器の遠隔操作ができる点に最大の特徴がある。
KVM切替器によって一組の入出力装置を切り替えて共用する複数のコンピュータには、下記の実施形態のパソコンに限らず、ゲーム機器、HDMIソース機器などもある。
【0010】
上記の目的を達成するために、請求項2に係る発明は、請求項1に記載のKVM切替器において、前記受信したコマンドは前記KVM切替器に対する拡張コマンドであることを特徴とする。
これにより、KVM切替器への指示のための統一的なコマンドがHDMI−CEC規格として現在は存在していなくても、本発明のようなリモコンによるKVM切替器の操作が可能である。
なお、HDMI−CEC規格には独自にコマンドを定義し開発する余地があるので、KVM切替器への指示コマンドの追加が可能である。
【0011】
また、請求項3に記載した、請求項1に記載のKVM切替器によって切替を行う方法も上記の目的を達成するためのものである。
【発明の効果】
【0012】
従来のKVM切替器のように、特定の操作ボタンを押すとか、キーボード上の特定キーを予め定めた方法で押すとかの操作に加えて、テレビ視聴に利用するリモコンを使って切替操作を行うこととしたので、KVM切替器やキーボードから離れた場所にいても入出力装置による操作対象となるパソコンの切替ができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のKVM切替器の実施の一形態を示す図である。
【図2】従来のKVM切替器の実施の一形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明のKVM切替器の実施の一形態を示す図である。なお、従来と同様の機器、機能については図2と同一の符号を用いる。また、図1および図2ではパソコン101は2台のみ記載されているが、3台以上の接続ができるように実施することもできる。
【0015】
KVM切替器1は、2台のパソコン101a,101b(以下、任意のいずれかのパソコンを指すとき、代表する番号として「101」と表記する)をKVM1内部の回路で切り替えることによって1組のコンソールディスプレイ2、キーボード103、マウス104を共用することを実現する。
コンソールディスプレイ2として、HDMI−CEC規格に対応していれば、パソコンのモニタ画面として使用されるディスプレイのほかに、テレビやビデオプロジェクター等も用いることができる。
【0016】
KVM切替器1には、マイクロコントローラ3と、HDMI規格に対応したビデオ信号切替回路4およびキーボード・マウス切替回路108を含み構成される。
キーボード103とマウス104はUSB接続とPS/2接続のいずれでもよい。ただし、USB接続であれば、KVM切替器1とそこにつながるパソコン101側の回路をつなぐ信号線5は1組でよいが、PS/2接続の場合は信号線5が2組必要である。
パソコン101から送信されるビデオ信号6はビデオ信号切替回路4を介してコンソールディスプレイ2へ送信される。KVM切替器1は、図示しないHDMI端子を持ち、HDMIケーブル7を介してビデオ信号8をコンソールディスプレイ2へ送信する。ここで、パソコン101からビデオ信号切替回路4に送信されるときのビデオ信号6はDVI規格でもよいが、コンソールディスプレイ2への出力はHDMIケーブル7を介するので、KVM切替器1にDVI規格からHDMI規格へ変換するケーブルを提供する等の対策が必要である。
【0017】
コンソールディスプレイ2からKVM切替器1へはCEC信号9が送られるが、1本のHDMIケーブル7に含まれる信号線でこのCEC信号は送信される。
コンソールディスプレイ2に対して各種指示を出すためにテレビのリモコン10が使用される。このリモコン10は、HDMI−CEC規格対応のテレビを操作するために市販されている製品を使用すればよい。つまり、本実施の形態では、入出力手段(Keyboard/Video/Mouse)を切り替える手段としてテレビ用のリモコンが使用できるのである。
なお、従来のKVM切替器100と同様に、パソコンの切替操作を行うための切替ボタン105も適宜備えている。本実施の形態のKVM切替器1は、テレビ用のリモコンを用いて遠隔操作ができる点に骨子があるが、図2に示すような従来のKVM切替器100と同様の機能も保持しているのである。
【0018】
以下に、上記のように構成されたKVM切替器1の動作について説明する。
まず、コンソールディスプレイ2およびKVM切替器1、各パソコン101a、101bの電源が投入され、それぞれが起動すると所定の手順により、KVM切替器1およびそれに接続されている各パソコン101a、101bがCEC信号上に登録される。続いて、コンソールディスプレイ2をリモコン10で操作することにより、登録されているパソコン101が切替の選択肢としてコンソールディスプレイ2上の設定画面に表示される。操作者は引き続きリモコン10を操作し、表示されているいずれか1台のパソコン101を選択することによりKVM切替器1によるパソコンの切替操作を実行することが可能となる。
【0019】
リモコン10を操作すると、コンソールディスプレイ2内部に設けられているリモコンからの信号の受信手段で受信したコマンドをCEC制御ソフトウェアが処理し、KVM切替器1用のコマンドを発行する。この発行されたコマンドはCECプロトコルに基づいて、CEC信号線を経由してKVM切替器1内部のマイクロコントローラ3に送信される。マイクロコントローラ3はそれに応答し、発行されたコマンドが操作対象のパソコン101の切替を指示するコマンドであればビデオ信号切替回路4及びキーボード・マウス切替回路108を制御して切替操作を実行する。コンソールディスプレイ2を介してリモコン10の操作に従った動作をKVM切替器1に実現させるためにはCEC信号線、プロトコルに準じて、KVM用のコマンドなどを追加拡張する場合があるが、これらについての詳細説明は省略する。
【0020】
コンソールディスプレイ2はHDMI−CEC規格対応であれば、パソコンのモニタ画面だけでなくテレビも使用することができる。操作手段としてのリモコン10もコンソールディスプレイやテレビに付属するリモコンでも、市販の一般的なリモコンでもよい。したがって、リモコンによるテレビのチャンネル切替と同様の操作によって、KVM切替器1に接続されているパソコン101を切替え、切り替えられたパソコン101の画像出力をコンソールディスプレイ2上に映し出すことが可能になる。例えば、パソコン101の内蔵HDDに保存してある画像データをコンソールディスプレイ2に再生することもできる。
コンソールディスプレイ2でテレビ番組を視聴中であってもリモコン10の操作により、テレビ画面からパソコン101の画面に切り替えて入出力装置による操作対象とすることができる。また、パソコン101を使用中であっても一時的にテレビ番組の視聴に切り替えることが可能である。したがって、操作者はパソコンの操作の合間にテレビ番組を見たり、テレビ番組を見ている途中でパソコンの操作をしたり、といったことができる。
【0021】
以上の実施の形態は、あくまでも一例であって、コンソールディスプレイは、KVM切替器に対してHDMI−CEC規格に対応したCEC信号を送信できればどのようなものでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0022】
従来のKVM切替器の機能を保持しつつ、テレビのリモコンによる操作機能を追加したことで、KVM切替器が離れた場所にあっても操作可能となり使い勝手が良くなることから、多数のユーザの支持が得られるものと期待される。

【符号の説明】
【0023】
1 KVM切替器
2 コンソールディスプレイ
3 マイクロコントローラ
4 ビデオ信号切替回路
5 キーボード・マウスからの信号
6 コンピュータからのビデオ信号
7 HDMIケーブル
8 HDMI規格対応のビデオ信号
9 CEC信号
10 リモートコントローラ
100 従来のKVM切替器
101 コンピュータ
102 (100と接続する)コンソールディスプレイ
103 キーボード
104 マウス
105 操作ボタン
106 (100の)マイクロコントローラ
107 (100の)ビデオ信号切替回路
108 キーボード・マウス切替回路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコンピュータと、該複数のコンピュータに共用されるキーボード、マウス、ディスプレイを備えた入出力装置との間に配置され、前記複数のコンピュータのうち操作対象となる1台のコンピュータと前記入出力装置との接続を切り替えるKVM切替器であって、
該KVM切替器はビデオ信号切替回路とキーボード・マウス切替回路とマイクロコントローラを備える一方、
前記ディスプレイはHDMI−CEC規格に対応し、リモートコントローラからのコマンドを受信する手段と、前記受信したコマンドをCEC信号として前記マイクロコントローラへ送信する手段とを備えるものであり、
前記マイクロコントローラは、前記CEC信号を受信すると前記ビデオ信号切替回路と前記キーボード・マウス切替回路に対して接続対象コンピュータの切替指示信号を出力することを特徴とするKVM切替器。
【請求項2】
前記受信したコマンドは前記KVM切替器に対する拡張コマンドであることを特徴とする請求項1に記載のKVM切替器。
【請求項3】
複数のコンピュータと、該複数のコンピュータに共用されるキーボード、マウス、ディスプレイを備えた入出力装置との間に配置されるKVM切替器によって、前記複数のコンピュータのうち操作対象となる1台のコンピュータと前記入出力装置との接続を切り替える方法であって、
前記KVM切替器はビデオ信号切替回路とキーボード・マウス切替回路とマイクロコントローラを備える一方、
前記ディスプレイはHDMI−CEC規格に対応し、リモートコントローラからのコマンドを受信する手段と、前記受信したコマンドをCEC信号として前記マイクロコントローラへ送信する手段とを備えるものであり、
前記マイクロコントローラは、前記CEC信号を受信すると前記ビデオ信号切替回路と前記キーボード・マウス切替回路とを制御し接続対象コンピュータの切替を行うことを特徴とするKVM切替方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−22639(P2011−22639A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164503(P2009−164503)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【出願人】(399105911)ラトックシステム株式会社 (2)