説明

L型天秤付き釣り用錘

【課題】潮の流れなどの影響を受けても根掛かりを防止できるL型天秤付き釣り用錘の提供を目的とする。
【解決手段】本発明のL型天秤付き釣り用錘1は、錘体10の上部に浮力体15を有して成る。L型天秤4は、釣り用錘1の長手方向中心軸Xに沿って上方に延びる第1のアーム6と、釣り用錘1の長手方向中心軸Xに対して垂直な方向に延びる第2のアーム8とを有する。釣り用錘1全体の重心Gは、長手方向中心軸Xに対して第2のアーム8の延在方向と反対の方向に偏心して位置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錘体にL型天秤が付設されたL型天秤付き釣り用錘に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特に投げ釣り用の錘として、仕掛けと道糸の両方を結びつけることができるL型の天秤が付設されたL型天秤付き釣り用錘が知られている。図5に示されるように、このような釣り用錘100は、例えば、錘体104上にプラスチック等の浮力体106を備えて成る本体102を有し、浮力体106にL型天秤110が設けられる(例えば、特許文献1参照)。L型天秤110は、本体102の長手方向中心軸に沿って浮力体106の上端から延びる第1のアーム112と、本体102の長手方向中心軸に対して垂直な方向で浮力体106の上端から延びる第2のアーム114とを有しており、第1のアーム112に道糸が結合され、第2のアーム114に仕掛け130が結合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−56732号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようなL型天秤付き釣り用錘100は、例えば海藻や岩等の根が点在する海中に仕掛け130と共に投入されて海底B(図5参照)に着底した後、仕掛け130を巻き上げるべく海底Bに沿って引き摺られる際などにおいて、仕掛け130を介して或いは直接に根に引っ掛かってしまうことが多々ある。これは、図5に示されるように、錘100の重心位置に起因して、錘100が潮の流れの方向に傾いた際に、第2のアーム114もその傾き方向(したがって、海底Bへ向けた方向)に向けられて、仕掛け130が海底Bを這うように流されるからである。
【0005】
本発明は、前記事情に着目してなされたものであり、その目的とするところは、潮の流れなどの影響を受けても根掛かりを防止できるL型天秤付き釣り用錘を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、錘体の上部に浮力体を有するL型天秤付き釣り用錘であって、前記L型天秤は、前記釣り用錘の長手方向中心軸に沿って上方に延びる第1のアームと、前記釣り用錘の長手方向中心軸に対して垂直な方向に延びる第2のアームとを有し、釣り用錘全体の重心が前記長手方向中心軸に対して前記第2のアームの延在方向と反対の方向に偏心して位置されることを特徴とする。
【0007】
この請求項1に記載の発明によれば、錘体の上部に浮力体が設けられているため、L型天秤付き釣り用錘が海底などの水底で自立できる。しかも、その自立姿勢は、釣り用錘全体の重心が該釣り用錘の長手方向中心軸に対して第2のアームの延在方向と反対の方向に偏心して位置されていることに起因して、重心方向に傾けられるとともに、第2のアームがその傾き方向と反対の方向、すなわち、海底から離れる上向き方向に向けられた姿勢となる。したがって、仕掛けが海底を這うように流されず、根掛かりを防止できる(図2参照)。また、海底などにおいて錘が潮の流れの影響を受けても、第2のアームは、海底から離れる上向き方向に向けられる姿勢が変わらない。具体的には、錘の下端が海底に接地した状態で錘全体は傾いて自立しているが、潮の影響を受けても、その傾いた自立姿勢は変わらず、錘の下端を支点として潮の流れの方向へ水平面内で回転するだけである。したがって、同様に根掛かりを防止できる。
なお、上記構成において、「第2のアームの延在方向と反対の方向」とは、第2のアームの長手方向軸線の延長線上のみならず、この延長線の両側45度の範囲(延長線を中心とする全体で90度の範囲)にわたる任意の方向を含むものとする。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記浮力体が前記錘体に対して接合され、その接合面は、前記長手方向中心軸と垂直な面に対して傾斜していることを特徴とする。
【0009】
この請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、浮力体と錘体との接合面が釣り用錘の長手方向中心軸と垂直な面に対して傾斜しているため、釣り用錘全体の重心を効果的且つ簡単に前記長手方向中心軸に対して第2のアームの延在方向と反対の方向に偏心させることができる。また、このように、接合面が傾斜していると、例えば仕掛けを巻き上げるべく錘が傾いた状態で海底に沿って引き摺られる際に(例えば、図2参照)、海底側となる錘体の面積を、接合面が傾斜していない(長手方向中心軸に対して垂直な)場合と比べて大きくでき、また、錘体が浮力体と比較して硬質となっていることから、海底の凹凸等による錘の破損を抑制できる(浮力体の損傷を防止できる)。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記錘体は、前記長手方向中心軸から偏心した位置に、前記錘体の比重と異なる比重の材料を有することを特徴とする。
【0011】
この請求項3に記載の発明によれば、請求項1または請求項2に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、錘体が、釣り用錘の長手方向中心軸から偏心した位置に、錘体の比重と異なる比重の材料を有するため、釣り用錘全体の重心を簡単且つ調整可能に前記長手方向中心軸に対して第2のアームの延在方向と反対の方向に偏心させることができる。また、錘体の比重と異なる比重の材料を錘体に対して着脱可能にすれば、水底への着底時の錘の姿勢(傾斜角度)を自在に調整でき有益である。
【0012】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記錘体が前記長手方向中心軸に対して非対称な形状を成すことを特徴とする。
【0013】
この請求項4に記載の発明によれば、請求項1または請求項2に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、錘体が釣り用錘の長手方向中心軸に対して非対称な形状を成しているため、釣り用錘全体の重心を効果的且つ簡単に前記長手方向中心軸に対して第2のアームの延在方向と反対の方向に偏心させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のL型天秤付き釣り用錘によれば、潮の流れなどの影響を受けても根掛かりを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は本発明の第1の実施形態に係るL型天秤付き釣り用錘の正面図、(b)は(a)のL型天秤付き釣り用錘を上側(天秤側)から見た平面図である。
【図2】図1のL型天秤付き釣り用錘を海底に着底させた様子を示す概略図である。
【図3】(a)は本発明の第2の実施形態に係るL型天秤付き釣り用錘の正面図、(b)は本発明の第3の実施形態に係るL型天秤付き釣り用錘の正面図である。
【図4】(a)は本発明の第4の実施形態に係るL型天秤付き釣り用錘の正面図、(b)は本発明の第5の実施形態に係るL型天秤付き釣り用錘の正面図である。
【図5】従来のL型天秤付き釣り用錘を海底に着底させた様子を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るL型天秤付き釣り用錘の実施形態について説明する。
図1は本発明の第1の実施形態を示している。図示のように、本実施形態のL型天秤付き釣り用錘1は、錘体10と錘体10の上部に設けられる浮力体15とから成る本体2を有しており、浮力体15には例えば金属製のL型天秤4が設けられている。ここで、錘体10は、SUS、タングステン、スズ、鉄などの金属から形成され、また、浮力体15は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂や木材などから形成されている。
【0017】
また、本体1は、縦長の略弾頭状を成しており、その長手方向に沿って中心軸(長手方向中心軸)Xを有している。そして、本体1は、中心軸Xと垂直な面P1に対して傾斜する接合面P2で浮力体15と錘体10とが互いに接合されて構成される。
【0018】
L型天秤4は、本体2(したがって、釣り用錘1)の長手方向中心軸Xに沿って浮力体15の端部(上端)から延びる第1のアーム6と、本体2の長手方向中心軸Xに対して垂直な方向で浮力体15(第1のアーム6の基部の近傍)から延びる第2のアーム8とを有し、第1のアーム6の接続リング6aに道糸52(図2参照)が結合され、第2のアーム8の接続リング8aに仕掛け50(図2参照)が結合されるようになっている。なお、アーム6,8は、浮力体15に固着されていてもよく、あるいは、浮力体15に着脱可能に取り付けられていてもよい。
【0019】
ここで、本実施形態の重要な特徴として、釣り用錘1全体の重心Gは、特に図1の(b)に示されるように、本体2の長手方向中心軸Xに対して第2のアーム8の延在方向と反対の方向に所定の距離Lだけ偏心して位置されている。すなわち、そのような重心位置となるように、例えば、錘体10および浮力体15の重量や形状等、あるいは、天秤4の長さ等、更には接合面P2の傾斜等が設定されている。
【0020】
図2は、本実施形態のL型天秤付き釣り用錘1を例えば海藻Cや岩等の根が点在する海中に仕掛け50と共に投入して海底Bに着底させた(あるいは、更には仕掛け50を巻き上げるべく海底Bに沿って引き摺っている)状態を示している。本実施形態のL型天秤付き釣り用錘1は、錘体10の上部に浮力体15が設けられているため、海底Bで(勿論、淡水の水底でも)自立できることは言うまでもないが、潮の流れなどの影響を受けても根掛かりを防止できる点で優れている。これは、本実施形態の釣り用錘1の全体の重心Gが本体2の長手方向中心軸Xに対して第2のアーム8の延在方向と反対の方向に偏心して位置されているためであり、図2に示されるように海底B等において錘1が潮の流れの方向(結果として、重心Gが位置する方向)に傾いた際には、第2のアーム8が、その傾き方向と反対の方向、すなわち、海底Bから離れる上向き方向に向けられるようになる。したがって、仕掛け50が海底Bを這うように流されず、根掛かりを防止できる。
【0021】
このように、本実施形態によれば、釣り用錘1全体の重心Gが本体2の長手方向中心軸Xに対して第2のアーム8の延在方向と反対の方向に偏心して位置されているため、潮の流れの影響を受けても根掛かりを防止できる。また、浮力体15と錘体10との接合面P2が本体2の長手方向中心軸Xと垂直な面P1に対して傾斜しているため、釣り用錘1全体の重心Gを効果的且つ簡単に本体2の長手方向中心軸Xに対して第2のアーム8の延在方向と反対の方向に偏心させることができる。また、このように、接合面P2が傾斜していると、例えば仕掛け50を巻き上げるべく錘1が横倒しされた状態で海底Bに沿って引き摺られる際に(例えば、図2参照)、海底側となる錘体の面積を、接合面が傾斜していない(長手方向中心軸に対して垂直な)場合と比べて大きくでき、また、錘体が浮力体と比較して硬質となっていることから、海底の凹凸等による錘の破損を抑制できる(浮力体の損傷を防止できる)。
【0022】
図3の(a)は本発明の第2の実施形態を示している。図示のように、本実施形態では、釣り用錘1全体の重心Gを簡単且つ調整可能に本体2の長手方向中心軸Xに対して第2のアーム8の延在方向と反対の方向に偏心させるため、錘体10が、本体2の長手方向中心軸Xから偏心した位置に、錘体10の比重と異なる(錘体10の比重よりも高い)比重の材料(例えば、タングステンから形成される)45を有する。具体的には、例えば、錘体10には、長手方向中心軸Xに対して第2のアーム8の延在方向と反対の方向に偏心した位置に、中心軸Xと略平行に沿って延びる縦穴が形成されており、接合面P2(本発明の接合面は傾斜していない)で開口する前記縦孔の開口部から例えば円柱状の材料45が埋め込まれる。このように錘体10の比重と異なる(錘体10の比重よりも高い)比重の材料45を錘体10に対して着脱可能にすれば、水底への着底時の錘1の姿勢(傾斜角度)を自在に調整できるため有益である。無論、材料45が錘体10に単に埋設されて着脱できない構成であっても構わない。
【0023】
図3の(b)は本発明の第3の実施形態を示している。図示のように、本実施形態でも、釣り用錘1全体の重心Gを簡単且つ調整可能に本体2の長手方向中心軸Xに対して第2のアーム8の延在方向と反対の方向に偏心させるため、錘体10が該錘体10の比重と異なる(錘体10の比重よりも高い)比重の材料(例えばタングステンから形成される)48を有する。具体的には、この材料48は、浮力体15と錘体10との間に介挿され、重心Gの偏心に寄与するべく第2のアーム8の延在方向と反対の側で中心軸Xに沿って延出する延出部48aを有する(この意味で、錘体10は、長手方向中心軸Xから偏心した位置に、錘体10の比重と異なる比重の材料部分48aを有すると言える)。また、材料48は、例えば図示のように円筒状を成して錘体10の支持軸部10aに被嵌されるようになっていてもよい。
【0024】
図4(a)は本発明の第4の実施形態を示している。図示のように、本実施形態では、釣り用錘1全体の重心Gを効果的且つ簡単に本体2の長手方向中心軸Xに対して第2のアーム8の延在方向と反対の方向に偏心させるため、錘体10が本体2の長手方向中心軸Xに対して非対称な形状を成している。具体的には、錘体10は、重心Gの偏心に寄与するべく第2のアーム8の延在方向と反対の側で中心軸Xと略垂直な方向に向けて外側に膨出する膨出部10aを有する。このような構成でも、重心Gの偏心を効果的に実現でき有益である。
【0025】
図4(b)は本発明の第5の実施形態を示している。図示のように、本実施形態では、釣り用錘1全体の重心Gを簡単且つ調整可能に本体2の長手方向中心軸Xに対して第2のアーム8の延在方向と反対の方向に偏心させるため、錘体10が、本体2の長手方向中心軸Xから偏心した位置に、錘体10の比重と異なる(錘体10の比重よりも軽い)比重の材料(例えば、浮力体15と同じ材料あるいは発泡スチロールなどから形成される)49を有する。具体的には、例えば、錘体10には、長手方向中心軸Xに対して第2のアーム8の延在方向と同じ方向に偏心した位置に、中心軸Xと略平行に沿って延びる縦穴が形成されており、接合面P2(本発明の接合面は傾斜していない)で開口する前記縦孔の開口部から例えば円柱状の材料49が埋め込まれる。このように錘体10の比重よりも軽い比重の材料49を錘体10に対して着脱可能にすれば、水底への着底時の錘1の姿勢(傾斜角度)を自在に調整できるため有益である。無論、材料49が錘体10に単に埋設されて着脱できない構成であっても構わない。
【0026】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できることは言うまでもない。例えば、前述した実施形態では、L型天秤4が浮力体15の上端から延びているが、L型天秤4は浮力体15の任意の位置から延びていればよく、あるいは、浮力体15以外の部位から延びていてもよい。また、前述した実施形態では、第2のアーム8の長手方向軸線のほぼ延長線上に重心Gが位置しているが、重心Gは、第2のアーム8の延在方向と反対の方向において、第2のアーム8の長手方向軸線の延長線の両側45度の範囲(延長線を中心とする全体で90度の範囲)にわたる任意の方向に位置されてもよい。
【符号の説明】
【0027】
1,1A,1B,1C,1D L型天秤付き釣り用錘
2 本体
4 L型天秤
6 第1のアーム
8 第2のアーム
10 錘体
15 浮力体
45,48,49 錘体の比重と異なる比重の材料
G 重心
P1 長手方向中心軸と垂直な面
P2 接合面
X 長手方向中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
錘体の上部に浮力体を有するL型天秤付き釣り用錘であって、
前記L型天秤は、前記釣り用錘の長手方向中心軸に沿って上方に延びる第1のアームと、前記釣り用錘の長手方向中心軸に対して垂直な方向に延びる第2のアームとを有し、
釣り用錘全体の重心が前記長手方向中心軸に対して前記第2のアームの延在方向と反対の方向に偏心して位置されることを特徴とするL型天秤付き釣り用錘。
【請求項2】
前記浮力体が前記錘体に対して接合され、その接合面は、前記長手方向中心軸と垂直な面に対して傾斜していることを特徴とする請求項1に記載のL型天秤付き釣り用錘。
【請求項3】
前記錘体は、前記長手方向中心軸から偏心した位置に、前記錘体の比重と異なる比重の材料を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のL型天秤付き釣り用錘。
【請求項4】
前記錘体が前記長手方向中心軸に対して非対称な形状を成すことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のL型天秤付き釣り用錘。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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