説明

LED照明装置

【課題】放熱効果をより高めることのできるLED照明装置を提供する。
【解決手段】本発明によって提供されるLED照明装置Aは、所定の厚みを有する基板20および放熱部材40と、基板20に支持されるLED31とを備え、基板20および放熱部材40の厚み方向に貫通する貫通孔28内をその軸心方向に進退運動可能な棒状部材43を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(以下、LED)を光源として用いることができるLED照明装置に関する。
【0002】
図9は、従来の、LEDが光源として用いられるLEDランプの一例を断面図で示している(たとえば特許文献1参照)。同図に示されたLEDランプXは、板状の基板91と、基板91上に搭載された複数のLED92と、基板91を収容する管93と、端子94とを備えている。基板91上には、複数のLED92および端子94に接続される図示しない配線パターンが形成されている。このLEDランプXは、端子94を一般用蛍光灯照明器具のソケットの差込口に嵌合させることにより、複数のLED92を発光させることができるように構成されている。
【0003】
上記のLEDランプXでは、複数のLED92の発光時に熱が生じるため、基板91およびLED92の温度が不当に上昇し、基板91の表面の配線パターンおよびLED92が破損するおそれがある。
【0004】
そこで、たとえば基板91の裏面に放熱部材を設け、LED92の発光時に生じる熱を放熱部材を介して外部へ放散させることが考えられる。しかしながら、放熱部材による放熱効果は、放熱部材の形状に依存する場合が多く、単に放熱部材を設けただけでは、LED92の発光時に生じる熱を十分に放散させることができないことがある。
【0005】
【特許文献1】実開平6−54103号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、放熱部材による放熱効果をより高めることのできるLED照明装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によって提供されるLED照明装置は、所定の厚みを有する支持部材と、上記支持部材に支持される発光ダイオードと、を備えるLED照明装置であって、上記支持部材の厚み方向に貫通する貫通孔内をその軸心方向に進退運動可能な棒状部材を備えることを特徴としている。
【0008】
このような構成によれば、棒状部材が貫通孔内で進退運動すると、貫通孔内の空気が外部に放出されたり、外部の空気が貫通孔内に吸入されたりして、貫通孔内における空気の出し入れを行うことができる。そのため、支持部材がたとえば放熱部材によって構成されれば、貫通孔内に放熱部材によって熱が放散され、その貫通孔内における空気の出し入れを行うことができるので、放熱部材による放熱効果をより高めることができる。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記棒状部材は、その表面が凹凸状に形成されている。このような構成によれば、棒状部材が進退運動したとき、凹凸状に形成された棒状部材の表面で空気を捕らえ易くなるので、空気の出し入れを好ましく行うことができる。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記棒状部材の長さは、上記進退運動の振幅が最大になったとき、上記棒状部材の先端部が上記貫通孔から外部に突出するように、上記支持部材の厚みより大とされる。このような構成によれば、棒状部材の進退運動の振幅が最大になったとき、棒状部材の先端部が貫通孔から外部に突出するので、貫通孔内の空気を上方に確実に放出させることができる。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記棒状部材が連結され、上記貫通孔の上記軸心方向に振動することにより上記棒状部材を進退させる振動体を備える。このような構成によれば、棒状部材は振動体によって進退運動されるので、安定した進退運動が可能となる。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記支持部材は、基板と、その基板に接続された放熱部材とによって構成される。このような構成によれば、支持部材が放熱部材を含む構成とされているので、発光ダイオードによって生じる熱を放熱部材によって好ましく放散させることができる。
【0013】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0015】
図1〜図3は、本発明に係るLED照明装置の実施形態を示している。図1は、LED照明装置の要部斜視図である。図2は図1のII-II線に沿う要部断面図である。図3は図1のIII-III線に沿う要部断面図である。図1ないし図3に示すLED照明装置Aは、ケース10、基板20、LEDモジュール30、放熱部材40、振動体50および振動発生器60を備えている。なお、図1に示すLED照明装置は、たとえば室内の天井などに設置されて用いられるが、この場合、LEDモジュール30のLED31(後述)の主出射方向が下方を向くように設置される。
【0016】
ケース10は、基板20、放熱部材40、振動体50および振動発生器60などを収容するためのものである。ケース10は、所定の方向に延びる細長の枡状に形成され、基板20などを収容する凹部11を有している。ケース10の長手方向の両端の内側面11aには、基板20の長手方向の両端が固定されて取り付けられている。ケース10の凹部11の底面11bには、振動発生器60が固定されて取り付けられている。なお、図示しないが、ケース10の上端面11cには、基板10などを覆うようにそれらを保護するための透光性のカバーが設けられている。
【0017】
基板20は、たとえばガラスエポキシ樹脂からなり、細長の板状に形成されている。基板20は、所定の厚みを有している。基板20には、その表裏面にたとえばCuからなる配線パターンが形成されている。配線パターンは、表面側に形成され互いに離間する金属配線層21,22、裏面側に形成された金属層23、および基板20の厚み方向に貫通するスルーホール24の内面を覆う金属層25によって構成される。金属配線層21と金属層23とは、金属層25を介して導通している。金属配線層21,22は、保護層26によって覆われている。
【0018】
基板20には、一方の端部近傍の側面にコネクタ27が備えられている。コネクタ27には、図示しない駆動回路が接続されている。駆動回路には、図示しない電源ケーブルに接続されており、電源ケーブルは、外部の電源コンセントなどに接続可能とされている。コネクタ27は、複数の端子を有しており、これらは基板20に形成された金属配線層21,22に導通している。このLED照明装置Aでは、上記端子を通じて複数のLEDモジュール30に電力が供給され、LED31を発光させることができる。
【0019】
LEDモジュール30は、基板20に実装されることにより基板20に支持されている。LEDモジュール30は、LED31、互いに離間する金属製のリード32,33、ワイヤ34、および樹脂パッケージ35を備えている。LEDモジュール30は、基板20の長手方向に沿って並ぶように複数個配置されている。各LEDモジュール30は、LED31の主出射方向が基板20と直交する方向を向くように設置されている。
【0020】
LED31は、たとえばn型半導体層およびp型半導体層と、これらに挟まれた活性層(いずれも図示略)とが積層された構造とされている。LED31は、たとえばAlGaInP系半導体からなる場合、青色光を発光可能である。LED31は、リード32に搭載されている。LED31の上面は、ワイヤ34を介してリード33に接続されている。リード32は金属配線層21に接続されており、リード33は金属配線層22に接続されている。
【0021】
樹脂パッケージ35は、LED31およびワイヤ34を保護するためのものである。樹脂パッケージ35は、LED31からの光に対して透光性を有するたとえばシリコン樹脂によって形成されている。また、樹脂パッケージ35に、青色光によって励起されることにより黄色光を発する蛍光材料を混入すれば、LEDモジュール30から白色光を出射させることが可能となる。
【0022】
放熱部材40は、たとえばAlからなり、基板20の長手方向に沿って延びる細長の板状に形成されている。放熱部材40は、所定の厚みを有している。放熱部材40は、基板20の裏面に、たとえばネジ(図略)などを用いて取り付けられて接続されている。放熱部材40の上面41は、金属層23に接している。放熱部材40の側面には複数の凹部42が形成されており、凹凸を有する形状となっている。凹部42は、基板20の長手方向に沿って放熱部材40の全長にわたって形成されている。これらの凹部42は、放熱部材40を形成する際に用いる金型に凸部を設けることによって形成することができる。なお、本発明でいう支持部材は、基板20と放熱部材40とを含むものである。
【0023】
基板20および放熱部材40には、それらの厚み方向に貫通する複数の貫通孔28が形成されている。各貫通孔28は、隣り合うLEDモジュール30の間の位置に所定の間隔を隔ててそれぞれ形成されている。各貫通孔28は、基板20の上面視で円形状とされ、その直径が4mm程度とされている。各貫通孔28には、後述する棒状部材43がそれぞれ嵌入される。
【0024】
振動体50は、貫通孔28の軸心方向に振動するものであり、各棒状部材43を貫通孔28の軸心方向に進退運動させるものである。振動体50は、樹脂などからなり、放熱部材40の長手方向に沿って延びる細長の板状に形成されている。振動体50の上面51には、複数の棒状部材43が立設されている。各棒状部材43は、基板20に形成された各貫通孔28に対応して所定の間隔を隔ててそれぞれ設けられている。
【0025】
棒状部材43は、振動体50によって貫通孔28の軸心方向に進退運動可能とされたものである。棒状部材43は、貫通孔28内で進退運動することにより、貫通孔28内の空気を外部に放出したり、貫通孔28の外部から空気を吸入したりするためのものである。
【0026】
棒状部材43は、樹脂などからなり、貫通孔28の軸心方向に延びた細長状に形成されている。棒状部材43の直径は、貫通孔28のそれより小とされ、たとえば2mm程度とされている。棒状部材43の長さは、基板20および放熱部材40の厚みより大とされている。棒状部材43の表面は、図4に示すように、凹凸状に形成されている。詳細には、棒状部材43の表面には、複数の突起状の小片44が拡散的に外方を向くように設けられている。なお、棒状部材43の表面の形状は、上記の形状に限るものではない。
【0027】
振動体50による振動の振幅(棒状部材43の進退方向におけるストローク)は、所定の長さに設定されている。たとえば振動の振幅が上方側に最大になったときには、棒状部材43の先端部43aが基板20の上面より突出する一方、振動の振幅が下方側に最大になったときには、棒状部材43の先端部43aが貫通孔28内に位置するように、振幅が設定されている。
【0028】
振動発生器60は、貫通孔28の軸心方向に振動体50を振動させるためのものである。振動発生器60は、図示しないが、たとえばコイルに流れる電流に基づいて発生する起磁力により可動鉄心を往復運動させる振動アクチュエータによって構成されている。振動発生器60は、上記した図示しない電源ケーブルに接続され、この電源ケーブルを通じて電源電圧が供給される。なお、振動発生器60の構成は、上記した構成に限るものではない。
【0029】
次に、LED照明装置Aの作用について説明する。
【0030】
LED照明装置Aが点灯されるとLED31で熱が発生し、LED31で発生した熱は、リード32(図2参照)を伝わって金属配線層21に伝えられる。金属配線層21に伝わった熱は、金属層25を通じて、基板20の裏面側に形成された金属層23に伝えられる。さらに、金属層23に伝わった熱は放熱部材40に伝えられる。放熱部材40は、伝えられた熱を外部に放散する。
【0031】
さらに、本実施形態では、振動発生器60が駆動され、この振動発生器60の駆動により振動体50が貫通孔28の軸心方向に振動する。振動体50が振動すると、振動体50に接続されている複数の棒状部材43は、貫通孔28の軸心方向に進退運動される。この棒状部材43の進退運動により、貫通孔28内の空気が外部に放出されたり、外部から貫通孔28内に空気が吸入されたりする。
【0032】
より具体的には、図3に示した、棒状部材43の先端部43aが貫通孔28から上方に突出する状態(振幅が上方側に最大のとき)から、図5に示すように、棒状部材43の先端部43aが貫通孔28の中間部に位置する状態(振幅が下方側に最大のとき)になるまで棒状部材43が変位すると(矢印F1参照)、基板20の上方に滞留していた空気は、棒状部材43の変位動作にともなって移動され、矢印W1に示すように、貫通孔28内に吸入される。基板20の上方に滞留していた空気は、比較的温度の低い空気であるので、この空気の吸入により、貫通孔28内の空気の温度が下げられ、放熱部材40の一部が冷却される。
【0033】
また、貫通孔28内に滞留していた空気は、棒状部材43の下方への変位動作にともなって貫通孔28内を移動し、矢印W2に示すように、放熱部材40の下方の外部空間に放出される。貫通孔28内に滞留していた空気は、放熱部材40による熱の放散によって比較的温度の高い空気であるので、この空気が外部に放出されることにより、放熱部材40による放熱が促進される。
【0034】
その後、棒状部材43の進退方向が反転され、図5に示す状態から、図6に示すように、棒状部材43の先端部43aが貫通孔28から突出する状態(振幅が上方側に最大のとき)になるまで棒状部材43が変位する(矢印F2参照)。これにより、貫通孔28内に滞留していた、放熱部材40によって熱が放散された比較的温度の高い空気は、矢印W3に示すように、棒状部材43の変位動作にともなって基板20の上方の外部空間に放出される。また、放熱部材40と振動体50との間に滞留していた、比較的温度の低い空気は、矢印W4に示すように、棒状部材43の上方への変位動作にともなって貫通孔28内に吸入される。
【0035】
上記の棒状部材43の進退運動は、以降継続的に連続して行われ、そのため、貫通孔28内の空気の外部への放出や、外部から貫通孔28内への空気の吸入が繰り返し行われる。
【0036】
本実施形態によれば、棒状部材43による進退運動により、放熱部材40によって放熱された比較的温度の高い空気を、基板20の上方や放熱部材40の下方に放出することができる。そのため、放熱部材40による放熱が促進される。また、基板20の上方や放熱部材40の下方に滞留していた比較的温度の低い空気を貫通孔28内に吸入することができる。そのため、吸入された空気によって放熱部材40を冷却することができる。このように、本実施形態によれば、貫通孔28内の空気の出し入れを活発に行うことができるので、放熱部材40による放熱効果をより一層高めることができる。
【0037】
したがって、本実施形態においては、基板20およびLEDモジュール30の温度が過度に上昇することを抑制でき、LED照明装置Aとしての寿命を延ばすことができる。そのため、LED照明装置Aは、安定した照明を供給することができる。
【0038】
棒状部材43は、その表面が凹凸状に形成されているため、表面が滑らかな場合に比べて、棒状部材43の進退運動時により空気を捕らえ易くなり、空気の出し入れをより好ましく行うことができる。
【0039】
上記実施形態においては、図7に示すように、振動体50による振動の振幅が下方側に最大になったとき、棒状部材43の先端部43aが貫通孔28から露出するまで、棒状部材43が変位してもよい。このように棒状部材43が変位すると、貫通孔28内に滞留していた、放熱部材40によって放熱された比較的温度の高い空気を、貫通孔28の下方により一層好ましく放出することができる。
【0040】
なお、本実施形態のLED照明装置を、たとえば電車などの移動体における照明として適用させることもできる。この場合、LED照明装置の棒状部材43を進退運動させる振動源には、電車の走行時における振動が利用される。すなわち、図8に示すように、このLED照明装置A′の振動体50は、車両の天井70などに設置され、放熱部材40および基板20などは、振動体50の下面に支持部材71によって支持される。支持部材71は、放熱部材40などを支持するとともに、車両の振動を吸収するために用いられ、たとえばダンパ72やばね73などを含む構成とされている。この適用例では、電車の走行時における振動によって棒状部材43が進退運動されるので、LED照明装置A′を車両内の照明として用いる場合、放熱効果の高い良好なLED照明装置とすることができる。
【0041】
本発明にかかるLED照明装置は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明にかかるLED照明装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。たとえば、基板20と放熱部材40とは、たとえばAlなどの同一の材質で一体的に形成されていてもよい。また、貫通孔28の基板23における形成位置は、上記した実施形態に限るものではない。また、貫通孔28は、基板20の上面または放熱部材40の下面に近づくほど広がるようなテーパが形成されてもよい。また、棒状部材43は、振動体50と一体的に形成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明にかかるLED照明装置を示す要部斜視図である。
【図2】図1のII-II線に沿う要部断面図である。
【図3】図1のIII-III線に沿う要部断面図である。
【図4】棒状部材の要部斜視図である。
【図5】棒状部材の動作を説明するための図である。
【図6】棒状部材の動作を説明するための図である。
【図7】棒状部材の動作を説明するための図である。
【図8】本発明にかかるLED照明装置の変形例を示す要部断面図である。
【図9】従来の、LEDが光源として用いられるLEDランプの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0043】
A,A′ LED照明装置
10 ケース
20 基板
21,22 金属配線層
23,25 金属層
24 スルーホール
26 保護層
27 コネクタ
28 貫通孔
30 LEDモジュール
31 LED(発光ダイオード)
32,33 リード
34 ワイヤ
35 樹脂パッケージ
40 放熱部材
42 凹部
43 棒状部材
43a 先端部
50 振動体
60 振動発生器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の厚みを有する支持部材と、
上記支持部材に支持される発光素子と、
を備えるLED照明装置であって、
上記支持部材の厚み方向に貫通する貫通孔内をその軸心方向に進退運動可能な棒状部材を備えることを特徴とする、LED照明装置。
【請求項2】
上記棒状部材は、その表面が凹凸状に形成されている、請求項1に記載のLED照明装置。
【請求項3】
上記棒状部材の長さは、上記進退運動の振幅が最大になったとき、上記棒状部材の先端部が上記貫通孔から外部に突出するように、上記支持部材の厚みより大とされる、請求項1または2に記載のLED照明装置。
【請求項4】
上記棒状部材が連結され、上記貫通孔の上記軸心方向に振動することにより上記棒状部材を進退させる振動体を備える、請求項1ないし3のいずれかに記載のLED照明装置。
【請求項5】
上記支持部材は、基板と、その基板に接続された放熱部材とによって構成される、請求項1ないし4のいずれかに記載のLED照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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