説明

MCSPの表面発現を証明する細胞の細胞傷害性媒介

本発明は、癌疾患の診断および治療、詳細には、腫瘍細胞の細胞傷害性の媒介、最も詳細には、細胞傷害応答の開始手段としての、任意選択的に、1つまたは複数の化学療法薬と組み合わせた癌疾患修飾抗体(CDMAB)の使用に関する。本発明は、さらに、本発明のCDMABを使用する結合アッセイに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、癌疾患の診断および治療、詳細には、腫瘍細胞の細胞傷害性の媒介、最も詳細には、細胞傷害応答の開始手段としての、任意選択的に、1つまたは複数の化学療法薬と組み合わせた癌疾患修飾抗体(CDMAB)の使用に関する。本発明は、さらに、本発明のCDMABを使用する結合アッセイに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
黒色腫関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(MCSP)は、ヒト転移性黒色腫細胞株に対するモノクローナル抗体を開発した研究者によってそれぞれ独自に同定された。黒色腫細胞表面に会合する特異的抗原と反応する抗原がいくつか見出されている。これらの抗体は個別に産生されたので、標的抗原名によって複数の名称を有するが、その後、これら全てをMCSPとした。したがって、MCSPはまた、高分子量黒色腫関連抗原(HMW−MAA)、ヒト黒色腫プロテオグリカン(HMP)、黒色腫関連プロテオグリカン抗原(MPG)、および黒色腫コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(mel−CSPG)と呼ばれており、種々の特異的抗体の抗原として同定されており、そのいくつかを以下に記載している。MCSPはまた、ラットプロテオグリカンNG2と80%を超えて相同であることが見出され、それにより、それにちなんだ名称もある。
【0003】
MCSPは、250kDaのN結合糖タンパク質および450kDaを超えるプロテオグリカン成分からなる糖タンパク質−プロテオグリカン複合体である。コア糖タンパク質は、遊離糖タンパク質として黒色腫細胞表面上に存在するか、コンドロイチン硫酸の付加によって修飾されている。MCSPの分子クローニングにより、いくつかの構造の特徴が同定されている。全部で10個のシステイン(5つのジスルフィド結合を形成する見込みがある)、15個の可能なN結合グリコシル化部位、および11個の潜在的なコンドロイチン硫酸結合部位を含む3つの細胞外ドメインが存在する。膜貫通セグメントは、1つのシステインを含むが、この残基の機能的意義は確立されていない。細胞質ドメインは、プロテインキナーゼCによるリン酸化部位としての機能を果たし得る3つのトレオニン残基を有するにもかかわらず、MCSPがリン酸化されることは依然として示されていない。
【0004】
MCSPが黒色腫の大部分で発現されることが示されており、当初は、正常な細胞および他の腫瘍型での分布は非常に限られていると考えられていた。この結論を導いた1つの初期の研究は、抗MCSP抗体B5を使用してMCSPの分布を決定するためにホルムアルデヒドまたはメタノールで固定した正常組織および腫瘍組織の免疫組織化学(IHC)を使用した。この研究では、抗体B5は、試験した22種の黒色腫腫瘍のうちの17種、試験した2種の星状細胞腫のうちの2種が反応し、試験した23種の癌腫とは反応しないことが見出された。試験した22種の正常組織のうち、B5は、皮膚角化細胞、肺胞上皮、および毛細管内皮のみと結合することが見出された。
【0005】
別の研究は、凍結組織切片を使用した抗MCSP抗体9.2.27によって定義されるMCSPの組織分布を試験した。また、反応性は、試験した全ての黒色腫組織および細胞株で見出されたが、試験した6つの種々の癌腫瘍(carcinoma tumor)のいずれにおいても反応性は示されなかった。試験した7種の胎児組織のうち、皮膚のみで反応性を示し、且つ大動脈でわずかに反応性を示す一方で、成体組織では、試験した13種の組織のうち3種しか反応性を示さなかった。
【0006】
その後の研究では、抗MCSP抗体B5、9.2.27、225.28S、およびA0122(その全てが、MCSPの個別のエピトープを認識する)を使用したMCSPの分布を試験した。この研究は、凍結組織に対して行われた。全ての抗MCSP抗体が類似の染色パターンを有し、以前に、MCSP陰性と考えられていた神経、間葉、および上皮起源の正常および悪性腫瘍と反応することが見出された。詳細には、抗体B5は、試験した24種の器官中で種々の上皮組織、結合組織、神経組織、および筋組織と反応し、試験した34種の種々の腫瘍のうち28種で反応した。著者は、その所見と以前の報告との間の相違は、固定液の選択が重要であることに留意した、改良されてより一貫性のあるIHC技術の使用に起因すると説明しており、恐らく、MCSP抗原の重要な特徴がIHCに関与する処理工程に対するその感受性であると結論づけられている。
【0007】
超微細構造レベルでのMCSPを局在化するためのさらなる研究を行った。電子顕微鏡法を使用した免疫局在化研究により、MCSPがほとんど排他的に微小突起(細胞−細胞接触および細胞−下層接着で役割を果たし得る黒色腫細胞表面の微小ドメイン)に局在することが証明された。
【0008】
1996年のMCSPの分子クローニングでは、MCSPcDNAプローブを使用した腫瘍細胞株および正常なヒト組織におけるMCSP発現のノーザンブロット分析が可能であった。試験した8種の種々の腫瘍細胞株のうち、黒色腫細胞株中でのみMCSPの発現が認められた。MCSP発現は、試験した16種の正常な成人の組織および4種の正常な胎児組織のいずれにも認められなかった。MCSPの異なる組織局在化研究で見出された矛盾は、この抗原の実際の発現パターンを解明するか、報告された相違を説明するためにさらなる研究が必要であり得ることを示す。
【0009】
プロテオグリカンは細胞−細胞相互作用および細胞−細胞外基質(ECM)相互作用を媒介することが公知であるので、この過程におけるMCSPの役割を調査した。MCSPは、黒色腫細胞のα4β1−インテグリン媒介性接着および拡大を刺激することが示されており、MCSPコアタンパク質を介したシグナル伝達が細胞の接着および運動性を調節して腫瘍の侵入および転移に寄与し得るp130casの動員およびチロシンリン酸化を誘導することも提案されている。これらの結果の組み合わせにより、MCSPがインテグリンの活性化および細胞骨格を再編成させる経路の刺激の両方によって黒色腫細胞の接着が増強するように機能することができることが示された。
【0010】
MCSPはまた、おそらくMCSPのコンドロイチン硫酸成分によって、膜結合型3−マトリックスメタロプロテイナーゼ(MT3−MMP)と会合することも見出されている。in vivoにおける黒色腫中でのMT3−MMP発現が成長中の腫の周辺でECMタンパク質の分解を促進し、それにより、腫瘍が拡大することができる空間を得ることができることが示唆されている。したがって、MT3−MMPとMCSPとの間の会合は、黒色腫侵入を促進するための活性化工程であり得る。
【0011】
腫瘍の侵入および転移に結合する過程におけるMCSPの役割を試験するために、抗MCSP抗体を使用したいくつかのin vitroアッセイが行われている。足場非依存性増殖におけるMCSPの役割を、抗体9.2.27を使用して評価した。9.2.27を含む軟寒天中で培養した黒色腫細胞は、そのコロニー形成の67〜74%の特異的減少を示した。これらの所見により、MCSPが細胞−細胞相互作用に関与し、足場非依存性増殖に寄与し得ることが示唆された。同著者はまた、ウシ大動脈内皮(BAE)細胞の基底膜上のM14黒色腫細胞の接着を測定するアッセイにおける9.2.27を使用したMCSPの遮断効果を試験した。9.2.27処置の効果を、コントロールモノクローナル抗体W6/32(全クラスI組織適合抗原に指向する)での処置と比較した。M14コントロール細胞および抗体で前処置したM14細胞を、BAE細胞の基底膜上にプレートした。9.2.27で27%の細胞接着の有意な阻害が認められたのに対して、W6/32処置細胞では有意な効果は認められなかった。9.2.27での細胞の前処置のより顕著な効果は、走査電子顕微鏡法を使用して超微細構造レベルで検証された細胞拡大の阻害であった。
【0012】
黒色腫細胞に対して開発され、MCSPを特異的に認識することが決定された多数の抗体を、その抗癌効果を決定するために、in vitroアッセイおよびin vivoアッセイの両方で試験した。
【0013】
モノクローナル抗体9.2.27は、MCSPのコア糖タンパク質成分を認識し、腫瘍抑制性について調査された最初の抗体の1つであった。Bumol et al.は、ヌードマウスで成長した黒色腫の免疫療法のために、9.2.27および9.2.27のジフテリア毒素A(DTA)抱合体を調査した。in vitro細胞傷害性アッセイを、[35S]メチオニンのタンパク質組み込みによって示されるM21ヒト黒色腫細胞におけるタンパク質合成に対する9.2.27および9.2.27−DTA抱合体の効果の測定によって最初に行った。9.2.27−DTA抱合体は、M21黒色腫細胞におけるタンパク質合成を有意に阻害したが、非抱合DTAでより高い効果が認められた。9.2.27のみでは最小の効果しか認められなかった。9.2.27および9.2.27−DTA抱合体の両方を、ヒト黒色腫保有ヌードマウスにおける抗腫瘍効果について調査した。M21腫瘍をマウスに皮下移植し、3日間成長させ、3日目、およびその後3日間隔で9.2.27または9.2.27−DTA抱合体のいずれでマウスを処置した。処置したマウスの腫瘍体積を、非処置コントロールマウスの腫瘍体積と比較した。18日目に(データを報告した最後の日)、非処置コントロールと比較して、9.2.27処置マウスは、64%の腫瘍成長阻害を示す一方で、9.2.27−DTA抱合体処置マウスは、52%の腫瘍成長阻害を示した。この最初の研究では、著者は、9.2.27および9.2.27−DTA抱合体はヌードマウスにおけるM21黒色腫の腫瘍成長の抑制に対するその効果がほぼ等しいと結論づけている。この最初の研究は、9.2.27での処置による腫瘍成長のin vivo抑制を報告しており、いくつかのその後の研究(同一著者による研究が含まれる)では、未修飾の(naked)9.2.27はいかなるin vivoでの抗腫瘍効果も示さないことが証明されている。集合的に、以下に概説するように、ヒト腫瘍の治療のための9.2.27の有用性を調査するために実施した実験により、癌細胞は9.2.27によってターゲティングされるが、抗癌活性は未修飾の抗体での処置に起因しないことが証明されている。
【0014】
9.2.27免疫抱合体(immunoconjugate)を使用したその後の治療研究を予想して大量の9.2.27を投与するようにデザインされた第I相臨床試験を行った。フローサイトメトリーおよび/または免疫ペルオキシダーゼ染色によって9.2.27と腫瘍が反応した8人の悪性黒色腫患者に、単回用量の抗体を静脈内投与し、1、10、50、100、および200mgの漸増用量で1週間に2回投与した。患者は少しの副作用も経験せず、9.2.27が転移黒色腫結節に局在したにもかかわらず、臨床反応は認められなかった。
【0015】
その後の研究では、9.2.27を治療薬ドキソルビシン(DXR)と抱合し、抱合体をin vitroおよびin vivoでの黒色腫の成長阻害について調査した。DXR−9.2.27抱合体で処置したM21細胞の成長阻害を、[H]チミジン組み込みアッセイを使用して測定した。抱合体は、M21標的細胞の特異的用量依存性成長阻害を示し、且つMCSPネガティブコントロール細胞株に効果がなかった。9.2.27のみの効果を試験するin vitroアッセイを行わなかった。DXR−9.2.27抱合体をin vivoで調査するために、M21細胞を皮下注射し、8〜10日間腫瘍を確立させた。10日目に皮下注射し、その後3日間隔で30日間皮下注射した。DXR−9.2.27抱合体で処置したマウスのみで有意な腫瘍成長抑制が認められた。DXR治療のみおよび9.2.27治療のみでは腫瘍成長を抑制することができず、9.2.27とDXRとの混合物は類似の負の効果を示した。
【0016】
9.2.27抱合体の効果を調査する別の研究を行った。Schrappe et al.は、化学療法薬4−デスアセチルビンブラスチン−3−カルボキシヒドラジド(DAVLBHY)を9.2.27と抱合し、ヒト神経膠腫に対するその効果を試験した。ヌードマウスにU87MG(ヒト神経膠腫細胞株)細胞を皮下注射し、2、5、7、および9日目に動物を処置した。腫瘍体積は、9.2.27−DAVLBHYによって最も有効に減少した。PBSのみまたは9.2.27のみで処置したコントロール群は、腫瘍が急速に成長し、9.2.27処置マウスの腫瘍体積はPBS処置マウスと比較して減少しなかった。
【0017】
ヒトM21黒色腫細胞株に対して抗体225.28Sを作製し、高分子量黒色腫関連抗原に反応することが最初に記載されている。この分子は、MCSPと同一の分子であることがその後に示された。初期の研究では、ヒト黒色腫細胞株に対する225.28S(IgG2a)の細胞溶解能力を試験し、その能力を別の抗MCSP抗体(IgGであるクローン653.40S)と比較した。225.28Sおよび653.40Sは、MCSP上の同一または空間的に近い抗原決定基を認識すると判断された。いずれの抗体もin vitroアッセイで補体と組み合わせて黒色腫細胞を溶解することができないことが見出された。両抗体は、抗体依存性細胞媒介性(ADCC)細胞傷害性アッセイで標的黒色腫細胞の溶解を媒介することができ、225.28Sは653.40Sよりも高い溶解活性を示した。しかし、抗黒色腫抗原抗体を使用した他者の報告よりも有意に高いエフェクター細胞/標的細胞比で黒色腫細胞の溶解が認められただけであった。著者は、ヒト補体組み合わせたこれらの抗体の細胞溶解活性の欠如およびADCCで溶解させるのに高いエフェクター細胞/標的細胞比が必要であることにより、黒色腫患者へのモノクローナル抗体の注射が腫瘍細胞を破壊しそうにないことが示唆されると結論づけた。著者は、これらの抗体の免疫治療での使用は放射性同位体、化学療法薬、または毒剤(toxic agent)のキャリアとしての試料に制限されると示唆していた。
【0018】
未修飾の抗体225.28Sを、2人の末期黒色腫患者に10mgの用量で静脈内送達させる第I相試験でのその治療可能性について調査した。臨床的な副作用や大きな毒作用は認められず、これは抗体の投与に起因し得るが、正の治療応答も認められなかった。
【0019】
抗体225.28Sをピューロチオニン(purothionin)(分裂細胞に特異的に毒性を示す低分子量ポリペプチド)と抱合し、ヒト黒色腫細胞株Colo38に対するin vitro毒性について試験した。Colo38細胞の225.28S−ピューロチオニン抱合体との24時間の培養によってH−チミジン取り込みが阻害されることが見出された。さらに、抱合体と7日間インキュベートした培養物でColo38細胞の生存度は劇的に減少した。in vitro毒性が認められたにもかかわらず、225.28S−ピューロチオニン処置を生き残った黒色腫細胞が依然としてわずかに存在した。著者らは、悪性疾患の免疫療法は毒剤のキャリアとして異なる腫瘍関連抗原に対するモノクローナル抗体のカクテルに依存しなければならず、225.28S抱合体のみでは癌の治療に十分ではないと示唆した。225.28S−ピューロチオニン抱合体の治療効果を、ヌードマウスにおけるヒト黒色腫の成長によって評価した。Colo38細胞を、ヌードマウスに皮下または腹腔内に移植した。1、3、および5日目に腹腔内移植マウスを処置し、1、3、5、および20日目に皮下移植マウスを処置した。全マウスの生存をモニタリングした。225.28S−ピューロチオニン抱合体での処置した腹腔内移植マウスのみで統計的に有意な延命が認められた。225.28Sのみ、ピューロチオニンのみ、または225.28Sとピューロチオニンとの混合物では、腹腔内移植マウスまたは皮下移植マウスのいずれにおいても生存度は増加しなかった。皮下移植マウスの腫瘍体積も記録し、225.28S−ピューロチオニン抱合体処置によって腫瘍体積が有意に減少することが見出された。225.28Sのみでの処置では、腫瘍体積は減少しなかった。
【0020】
225.28Sを化学療法薬メトトレキセート(MTX)とも抱合し、腫瘍成長に対するその効果をin vivoで調査した。ヌードマウスにM21ヒト黒色腫細胞を皮下移植し、1、4、7、および14日目に処置した。MTX−225.28S抱合体は、腫瘍成長を阻害した唯一の治療であった。225.28Sのみ、MTXのみ、225.28SとMTXとの混合物では、腫瘍成長を阻害することができなかった。
【0021】
225.28Sを、異種性試薬の投与によるヒトにおける潜在的毒作用を調査するためにデザインした研究で使用した。85人の転移性皮膚黒色腫患者に、131I、123I、111In、99Tcで標識したインタクトな225.28SまたはF(ab’)フラグメントのいずれかを投与した。抗体の注射量は、14〜750μgの範囲であった。いかなる患者においても臨床的に検出可能な副作用は認められなかった。臨床応答は報告されなかったが、必ずしもこの研究が毒物学的(toxologic)目的のためにデザインされていると期待されるわけではなかった。
【0022】
225.28Sを使用して、MCSPの鏡像を有するマウス抗イディオタイプ抗体(抗体MF11−30が含まれる)を生成した。MF11−30は、同系および異種系の両方で抗MCSP抗体産生を誘導することが認められている。進行性悪性黒色腫患者における毒性および応答を試験するためにデザインされた漸増用量のMF11−30を、2つの臨床試験で試験した。両研究では、抗体投与に起因する副作用はほとんど認められず、本治療法は十分に許容された。第2の試験では、少なくとも1:8の力価で抗−抗イディオタイプ抗体を産生し、且つ血清MCSPレベルの顕著な変化が認められなかった7人の患者の平均生存度が55週間(16〜95週間の範囲)であり、これは、その平均生存度が19週間(8〜57週間の範囲)の残りの12人の患者(1:4の力価で抗−抗イディオタイプ抗体を産生するか、MCSPの血清レベルが増加した患者)よりも有意に高かった。
【0023】
黒色腫細胞に対する抗体763.74も生成し、これは、MCSPを認識する。抗体763.74のin vitroまたはin vivo抗癌効果を示すいかなる報告も存在していないが、この抗体を使用して、マウス抗イディオタイプモノクローナル抗体も生成されている。これらの抗体のうちの1つ(MK2−23)は、抗MCSP抗体763.74によって定義される決定基の内部イメージ(internal image)を有する。前臨床試験では、MK2−23での免疫化により、同系宿主(BALB/cマウス)および異種宿主(ウサギ)の両方において抗MCSP抗体の産生が誘導されることが示された。MK2−23の免疫原性は、キャリアタンパク質であるキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)と抱合し、アジュバントと共に投与した場合に顕著に増強された。黒色腫患者におけるMK2−23によって誘導された体液性応答を特徴づけるための臨床試験を行った。0、7、および28日目に2mgのKLHと抱合し、カルメット・ゲラン桿菌(BCG)と混合したMK2−23の皮下注射を用いて、25人のIV期黒色腫患者を免疫化した。抗−抗イディオタイプ抗体の力価が低い場合、さらなる注射を行った。MK2−23で免疫化した約60%の患者が抗MCSP抗体を産生したが、抗MCSP抗体のレベルおよび親和性は低かった。MK2−23での免疫化後に抗MCSP抗体を産生した患者の生存は産生してない患者よりも有意に長いことが見出された。抗MCSP抗体を産生した患者の生存度の中央値は52週間(19〜93週間の範囲)である一方で、その血清中に検出可能な抗MCSP抗体を含まない9人の患者の生存度の中央値は19週間(9〜45週間の範囲)であった。抗MCSP抗体を産生した3人の患者は、その疾患の部分的寛解を経験した。この研究で有望な結果が達成されたにもかかわらず、MK2−23で免疫化された40%の患者は、検出可能な抗MCSP抗体と応答しなかった。さらに、部分的寛解を達成した3人の全患者が最終的に疾患の再発を経験した。いくつかの抑制細胞組の選択的不活化によって腫瘍関連抗原の細胞性応答および体液性応答を増強することが報告されている低容量のシクロホスファミド(CTX)での患者の前処置によってMK2−23の免疫原性の増加が試みられた。しかし、MK2−23の免疫原性に対するCTXでの前処置の効果は検出されなかった。
【0024】
モノクローナル抗体48.7は、ヒト転移性黒色腫細胞株M1733に対して産生され、その後にMCSPであると決定された分子に対して反応することが報告された。第I相臨床試験で、48.7を、ヒト黒色腫上に存在するトランスフェリン様細胞表面糖タンパク質p97に指向するマウスモノクローナル抗体96.5と組み合わせて投与した。5人の患者に、それぞれ2mgのmAb(96.5および48.7)を1日目に投与し、それぞれ10mgを2日目に投与し、それぞれ25mgを3〜10日目に投与した。処置は十分に許容されたが、全患者で処置に対する臨床応答は存在せず、疾患が進行した。これらの2つの抗体を、黒色腫が中枢神経系に転移した3人の患者をこれらの抗体のうちの1つの放射性標識Fabフラグメントで処置する個別の臨床試験で調査した。2人の患者に、脳腫瘍への抗体の侵入を増強するための血液脳関門の浸透圧開放(osmotic opening)と併用して5mgの48.7の131I標識Fabフラグメントを投与した。浸透圧BBB修飾により、腫瘍保有半球および脊髄液へのFabの送達が増加したが、腫瘍への抗体の明確な継続的局在化は認められなかった。著者は、局在化の欠如は抗体の不適切な投与に起因すると仮定した。
【0025】
メリムン(Melimmune)は、MCSPの個別のエピトープを模倣する2つのマウス抗イディオタイプ抗体(メリムン−1(I−Mel−1)およびメリムン−2(I−Mel−2))の二重調製物であった。I−Mel−1は、抗MCSP抗体225.28に対して産生される抗イディオタイプ抗体MF11−30のサブクローンであった(前に考察)。I−Mel−1は、ウサギにおいて抗MCSP応答を誘導することが示された。I−Mel−2は、抗MCSP抗体MEM136に対して産生される抗イディオタイプ抗体であり、MCSP上の225.28と異なるエピトープと反応する。I−Mel−2はまた、ウサギにおいて抗MCSP応答を誘導することが示された。I−Mel−1およびI−Mel−2の1:1組成物を含むメリムン調製物を、転移性疾患の証拠のない黒色腫を切除した21人の患者の第I相試験で使用した。1つの施設で参加したこれらの12人の患者についての詳細な免疫応答分析を報告した。患者に、0.2〜4.0mg(I−Mel−1およびI−Mel−2をそれぞれ0.1〜2.0mg)の範囲の用量を使用した2つの治療スケジュールのうちの1つによってメリムンを投与した。全患者は、抗I−Mel−1抗体および抗I−Mel−2抗体の両方を産生し、12人の患者のうちの10人でI−Mel−2に対するピーク抗体応答がI−Mel−1よりも高かった。しかし、この研究では、患者の血清がMCSP発現Mel−21細胞への放射性標識225.28の結合、Mel−21細胞への放射性標識MEM136の欠尾久のいずれも阻害することができなかったので、MCSPに対する特異的抗体の誘導を証明することができなかった。直接細胞結合アッセイを使用して、患者の血清中の抗MCSP抗体の存在についてもアッセイしたが、FACSベースのアッセイにおいてM21細胞への免疫後血清への結合と比較して、免疫前血清への結合に相違は認められなかった。
【0026】
26人の転移性黒色腫患者を、2mgのI−Mel−2および100μgまたは250μgのアジュバントSAF−mを2週間に1回4週間にわたって筋肉内送達させ、その後、疾患が進行するまで2ヶ月に1回筋肉内させて処置した個別の臨床試験でI−Mel−2を試験した。阻害放射免疫アッセイを使用して、26人の患者のうちの5人で抗MCSP抗体が検出された。検出可能な抗MCSP抗体を5人の患者のうち、1人が完全な寛解を経験し、1人の疾患が安定化し、残りの3人の疾患が進行した。完全に寛解した患者の抗MCSP抗体の力価が最も高かった(1:1500)。
【0027】
先行特許
特許文献1(およびその関連特許:特許文献2、特許文献3)は、MEM136に対する抗イディオタイプ抗体IMelpg2(「IM32」としても公知)、黒色腫に関連するヒトのプロテオグリカンに指向する抗体(「HMW−MAA」としても公知)を教示している。IMelpg2抗体は、MEM136に特異的に指向することが示され、細胞がMPGエピトープを発現する疾患の診断および治療に役立つことが示唆された。in vitroアッセイにおいて決定したところ、腫瘍細胞侵入に対するIMelpg2の効果が認められたにもかかわらず、試験した抗体で最も有効というわけではなく、in vivo抗腫瘍効果も示さないが、Ab3応答を示す。
【0028】
特許文献4は、HMW−MAAの定義していないエピトープに特異性を示すMab225.28に対する抗イディオタイプ抗体を教示する。これらの抗体は、黒色腫の有効な免疫療法として有用である。MF11−30およびIMelpg1の両方ならびに225.28に対するポリクローナル抗イディオタイプ抗体が報告されており、黒色腫患者において臨床試験を受けたMF11−30を有する動物モデルで評価されているが、支持するデータは存在しなかった。MF11−30は、225.28イディオタイプ抗体を誘導することができる。IMelpg1細胞株は、BMサイクリンでのMF11−30細胞株の処置およびマイコプラズマ汚染の非存在についての試験に由来した。IMelpg1に対する抗体をウサギ血清中で誘導することができ、Colo38黒色腫細胞に結合することが示されているにもかかわらず、in vitro、in vivoのいずれにおいても殺腫瘍活性を示さなかった。
【0029】
特許文献5は、不溶性免疫複合体からの抗体の産生を教示する。この場合、Mab9.2.27に対するラット抗イディオタイプ抗体(HMW−MAAに指向する抗体)を、抗原用としてのプロテインA−Sepharoseへの9.2.27の固定によって生成した。黒色腫細胞に対する抗体を、Sepharoseに抱合した種々の細胞または細胞溶解物複合体を使用して産生した。黒色腫細胞に結合するが、正常なT細胞やB細胞に結合しないマウスモノクローナル抗体を、9.2.27と比較した。以下の9.2.27と類似の性質を有する抗体を、さらなる特徴付けのために選択した:NR−ML−02、NR−ML−03、NR−ML−04、NR−ML− 05、NR−ML−06。これらの各抗体は、捕捉抗体としての9.2.27および抗原供給源としての可溶化SK MEL−28黒色腫膜を使用したサンドイッチELISAアッセイにおいて陽性であった。さらに、これらの抗体は、黒色腫腫瘍細胞を認識し、平滑筋細胞および内皮細胞とも反応すると特徴づけられた。10種の抗体がNR−ML−02/NR−ML−04と同一の決定基を認識し、3種の抗体がNR−ML−03またはNR−ML−05と同一の決定基を認識し、45種が前記5種の抗体によって決定されるエピトープと同一のエピトープを認識しない、さらなる61種の抗プロテオグリカン抗体が産生された。特許文献6では、これらの抗体を放射性標識し、黒色腫異種移植片を保有するヌードマウスにおける腫瘍取り込みについて9.2.27と比較した。腫瘍取り込みは、NR−ML−05およびNR−ML−02で最も高く、次いで9.2.27が高く、次いでNR−ML−02が高かった。これらのいずれの発明においても、これらの抗体が癌疾患の全身腫瘍組織量を減少させることも、癌疾患を有する哺乳動物の生存度を増加させることも示されなかった。
【0030】
特許文献7は、非抱合遮断抗体での前処置による腫瘍関連抗原を保有する組織への抱合抗体送達を増強させる方法を教示している。HMW−MAA、9.2.27、およびNR−ML−05に対する抗体を、テクネチウム(technicium)99(Tc−99)と抱合し、非標識Mab NR−2AD(たった1人の患者のB細胞リンパ種に特異的な抗イディオタイプ抗体)の投与前後に臨床目的で投与した。これらの研究をレポーター放射性同位体として細胞傷害性や放射性除去効果を示さないTc−99を使用してデザインしたので、抗腫瘍効果を示す証拠は存在しなかったが、この過程の使用によって抗HMW−MAA抗体の取り込みが増加した。
【0031】
特許文献8は、Mab 9.2.27をコードする抗体遺伝子を使用したキメラ抗体の構築を教示している。キメラ抗体を使用した癌疾患の診断または治療に関する開示は行われていなかった。
【0032】
特許文献9および特許文献10は、抗HMW−MAA抗体763.74に指向するマウス抗イディオタイプ抗体MK2−23およびその抱合体を開示している。MK2−23は763.74に直接結合して、Colo38黒色腫細胞への763.74の結合を阻害することができる。さらに、MK2−23によって誘発されたAb3はHMW−MAAに直接結合して、Colo38黒色腫細胞への763.74結合を競合的に阻害することができる。IV期黒色腫患者における臨床試験において、MK2−23を使用した有効な免疫療法を行った。89%の患者の免疫化後血清がColo38黒色腫細胞と反応してColo38への763.74の結合を阻害し、Ab3抗体の誘導が示唆された。15人の患者のうちの6人で、転移病変のサイズの減少が報告されているが、研究の詳細は示されていなかった。患者の血清における抗体の特異性が部分的に特徴づけられ、763.74抗体が固有の抗腫瘍効果を示さなかったので、Ab3抗体が存在する範囲で、Ab3が認められた任意の臨床応答を担うかどうかは不明である。US5866124は、MK2−23由来の抗HMW−MAA抗体763.74に指向するキメラ抗イディオタイプ抗体MK2−CHγ1およびその誘導体を教示している。
【0033】
多数の発明(特許文献11、特許文献12、特許文献13、特許文献14、特許文献15、特許文献16など)は、HMW−MAAに指向する抗体への化合物の抱合を教示しているが、癌疾患の治療におけるその有用性を開示できていない。重要なことに、これらの抗体は抗癌治療薬としてのみ有効であり、細胞傷害効果または細胞増殖抑制効果を付与するために抱合体は必要ないであろう。
【0034】
これらの特許および特許出願は、MCSP抗原および関連抗体を同定しているが、本発明の単離モノクローナル抗体を開示せず、本発明の単離モノクローナル抗体の有用性を教示も示唆もしていない。
【特許文献1】US5270202
【特許文献2】WO9216646A1
【特許文献3】EP0576570A1
【特許文献4】EP0380607B1
【特許文献5】US4879225
【特許文献6】US5084396
【特許文献7】US5034223
【特許文献8】US5580774
【特許文献9】US5493009
【特許文献10】US5780029
【特許文献11】US5017693
【特許文献12】US5707603
【特許文献13】US5817774
【特許文献14】US6248870
【特許文献15】US5112954
【特許文献16】US6238667
【発明の開示】
【0035】
発明の要旨
本発明者らは、発明の名称が「個別の患者特異的抗癌抗体」の米国特許第6,180,357号を以前に付与されており、これは、癌疾患の治療に有用な個別にカスタマイズされた抗癌抗体の選択プロセスに関する。本明細書の目的のために、用語「抗体」および「モノクローナル抗体」(mAb)を交換可能に使用することができ、これらの用語は、ハイブリドーマ(例えば、マウスまたはヒト)によって産生されたインタクトな免疫グロブリン、免疫抱合体、必要に応じて、免疫グロブリンフラグメントおよび免疫グロブリン由来の組換えタンパク質(キメラおよびヒト化免疫グロブリン、F(ab’)およびF(ab’)フラグメント、単鎖抗体、組換え免疫グロブリン可変領域(Fv)s、融合タンパク質など)をいう。タンパク質の構造または機能に有意に影響を与えることなくポリペプチド中のいくつかのアミノ酸配列を変化させることができることが当該分野で十分に認識されている。抗体の分子再編成では、一般に、骨格領域の核酸配列またはアミノ酸配列の修飾を許容することができる。これらには、置換(保存的置換が好ましい)、欠失、または付加が含まれるが、これらに限定されない。さらに、標準的な化学療法手段(例えば、放射性核種)を本発明のCDMABと抱合することは本発明の範囲内であり、それにより、化学療法薬の使用が注目される。CDMABを、毒素、細胞傷害性部分、酵素(例えば、ビオチン抱合酵素)、または造血細胞と抱合して、抗体抱合体を形成することもできる。
【0036】
本出願は、癌疾患改変モノクローナル抗体をコードするハイブリドーマ細胞株を単離するための米国特許第6,180,357号に教示の患者特異的抗癌抗体の産生方法を使用する。これらの抗体を、1つの腫瘍のために特別に作製することができるので、癌治療のオーダーメイド(customization)が可能である。本出願の文脈の範囲内で、細胞死滅(細胞傷害)または細胞成長阻害(細胞増殖抑制)特性を有する抗癌抗体を、以後、細胞傷害性という。これらの抗体を、癌の病期分類および診断の補助で使用することができ、腫瘍転移の治療に使用することができる。
【0037】
個別抗癌治療の見通しにより、患者が管理される方法が変化する。起こり得る臨床的シナリオは、腫瘍サンプルを提示(presentation)時に得て、積み重ねる(bank)ことである。このサンプルから、腫瘍を既存の癌疾患改変抗体のパネルより分類することができる。患者を従来のように病期分類するが、利用可能な抗体は、患者のさらなる病期分類で役立ち得る。患者を直ちに既存の抗体で処置し、そして/または本明細書中に概説の方法または本明細書中に開示のスクリーニングと組み合わせたファージディスプレイライブラリーを使用して腫瘍に特異的な抗体パネルを産生することができる。他の腫瘍が処置されるエピトープと同一のいくつかのエピトープを保有する可能性があるので、生成された全抗体を抗癌抗体のライブラリーに添加する。本方法にしたがって産生された抗体は、これらの抗体に結合する癌を有するかなり多数の患者における癌疾患の治療に有用であり得る。
【0038】
米国特許第6,180,357号および米国特許出願番号10/348,231号に開示のプロセスを実質的に使用して、マウスモノクローナル抗体11BD−2E11−2を、患者の乳癌生検由来の細胞でのマウスの免疫化後に得た。11BD−2E11−2抗原は、異なる組織起源のいくつかのヒト細胞株の細胞表面上に発現した。乳癌細胞株MCF−7および卵巣癌細胞株OVCAR−3は、in vitroでの11BD−2E11−2の細胞傷害効果に感受性を示した。
【0039】
培養物中のMCF−7およびOVCAR−3細胞に対する11BD−2E11−2細胞傷害性の結果を、マウスに移植した場合のこれらの癌細胞に対するその抗腫瘍活性によってさらに拡大した(米国特許出願番号10/762,129号に開示)。前臨床異種移植片腫瘍モデルは、治療効率の有効な予測材料と見なされる。
【0040】
ヒト乳癌の予防in vivoモデルでは、11BD−2E11−2は腫瘍成長を予防し、全身腫瘍組織量を減少させた(米国特許出願番号10/762,129号に開示)。51日目に(最後の処置直後)、11BD−2E11−2処置群の平均腫瘍体積は、アイソタイプコントロールの20%であった。モニタリングを、処置後280日間継続した。11BD−2E11−2治療群の40%が移植から7.5ヶ月後を超えて依然として生存していた。逆に、アイソタイプコントロール群は、処置から6.5ヶ月後に100%死滅した。したがって、11BD−2E11−2は、十分に確立されたヒト乳癌モデルにおいて、コントロール群と比較して生存度を上昇させ、全身腫瘍組織量を減少させた。
【0041】
11BD−2E11−2が1つを超えるヒト乳癌モデルで有効であるかどうかを決定するために、確立された乳癌モデルにおけるMDA−MB−468(MB−468)に対するその抗腫瘍活性を決定した(米国特許出願番号10/810,744号に開示)。11BD−2E11−2は、緩衝液コントロールと比較して腫瘍成長が25%減少させた。したがって、11BD−2E11−2は、確立された乳癌異種移植片モデルおよび予防的乳癌異種移植片モデルでの腫瘍成長の予防に有効であった。さらに、11BD−2E11−2は、少なくとも2つの異なる乳癌モデルで抗腫瘍活性を示した。
【0042】
ヒト乳癌モデルにおける有利な効果に加えて、11BD−2E11−2処置はまた、予防卵巣癌モデルにおいてOVCAR−3細胞に対する抗腫瘍活性を示した(米国特許出願番号10/762,129号に開示)。このモデルでは、腫瘍進行の代理基準として体重を使用した。移植80日後(処置終了から16日後)、処置群のマウスは、コントロール群の平均体重の87.6%であった(p=0.015)。したがって、十分に確立されたヒト卵巣癌モデルにおける緩衝液コントロール群と比較して腫瘍進行が遅延したので、11BD−2E11−2処置は有効であった。11BD−2E11−2の抗腫瘍活性は、いくつかの異なる癌モデルにおいて、魅力的な抗癌治療薬となる。
【0043】
11BD−2E11−2が1つを超えるヒト卵巣癌モデルで有効であるかどうかを決定するために、確立された卵巣癌モデルにおけるES−2+SEAP細胞(ヒト胎盤分泌アルカリホスファターゼ(SEAP)でトランスフェクトしたES−2卵巣癌細胞)に対するその抗腫瘍活性を決定した(米国特許出願番号10/810,744号に開示)。11BD−2E11−2は、緩衝液コントロールと比較して、治療群のマウスコホートでの生存が増加した。さらに、11BD−2E11−2処置群内の1匹のマウスは、処置後の循環SEAPレベルが非常に減少した。循環SEAPレベルを、全身腫瘍組織量の指標として使用することができる。したがって、11BD−2E11−2は、確立された卵巣癌異種移植片モデルおよび予防卵巣癌異種移植片モデルにおける腫瘍成長予防に有効であった。さらに、11BD−2E11−2は、2つの異なるヒト卵巣癌モデルで抗腫瘍活性を示した。
【0044】
生化学データは、11BD−2E11−2の抗原がMCSPであることを示し(米国特許出願番号10/810,744号に開示)、以前の免疫組織化学分析および他の研究所で実施したin vitro研究により、黒色腫細胞上のMCSPの発現が証明され、腫瘍の接着、侵入、および転移におけるMCSPの役割が示された。したがって、予防および確立されたヒト黒色腫モデルの両方における11BD−2E11−2の有効性を決定した。予防黒色腫モデルでは、55日目に(処置終了から5日後)、11BD−2E11−2処置群の平均腫瘍体積は、緩衝液コントロール処置群の58%であった(p=0.046)。確立されたモデルでは、抗体11BD−2E11−2は、処置期間後に緩衝液コントロール処置群と比較して、腫瘍成長が49%抑制された。結果は、この実験における動物数が限られていたので有意に到達しなかったが(p=0.1272)、傾向は明らかであった。したがって、11BD−2E11−2は、確立された黒色腫異種移植片モデルおよび予防黒色腫異種移植片モデルでの腫瘍成長の予防に有効であった。さらに、11BD−2E11−2は、2つの異なるヒト乳癌モデルおよび卵巣癌モデルならびにヒト黒色腫モデルで抗腫瘍活性を示した。
【0045】
薬物標的としての11BD−2E11−2エピトープを立証するために、凍結正常ヒト組織における11BD−2E11−2抗原の発現を決定した(米国特許出願番号10/810,744号に開示)。11BD−2E11−2でのIHC染色により、大部分の組織(肝臓、腎臓、および心臓などの重要器官の細胞が含まれる)が11BD−2E11−2抗原を発現することができなかった。それにもかかわらず、ほとんど全ての組織中の血管の平滑筋繊維が染色された。いくつかの組織の上皮も染色された。
【0046】
乳癌患者内への11BD−2E11−2抗原の局在化および有病率は、患者に対する11BD−2E11−2免疫療法の利点の評価および有効な臨床試験のデザインで重要である。癌患者由来の乳房腫瘍における11BD−2E11−2抗原発現に取り組むために、8人(7つのさらなるサンプルは、マイクロアレイスライドから完全に剥がれているか、マイクロアレイスライド上の腫瘍を代表しなかった)の各乳癌患者由来の腫瘍組織サンプルを、11BD−2E11−2抗原の発現についてスクリーニングした(米国特許出願番号10/810,744号に開示)。研究結果は、62%の組織サンプルが11BD−2E11−2抗原について陽性染色されたことを示した。染色が悪性疾患細胞に制限されるので、患者サンプル内での11BD−2E11−2の発現は、癌細胞に特異的なようであった。さらに、11BD−2E11−2は、乳癌患者由来の正常組織の3つのサンプルのうちの1つを染色した(2つのさらなるサンプルは、マイクロアレイスライドから完全に剥がれていた)。腫瘍をその病期または癌の進行度に基づいて分析した場合、結果から、11BD−2E11−2の正の発現が高いほど腫瘍の病期がより進行しているという傾向は示唆されなかった。しかし、結果は、サンプルサイズの小ささによって制限された。
【0047】
11BD−2E11−2の抗原がMCSPであり、他の研究所で行われた以前の免疫組織化学分析およびin vitro研究によって黒色腫細胞上のMCSPの発現が証明されているので、乳癌患者内への11BD−2E11−2抗原の局在化および有病率を決定した(米国特許出願番号10/810,744号に開示)。これは、乳癌患者に対する11BD−2E11−2免疫療法の利点の評価および有効な臨床試験のデザインで重要である。癌患者由来の黒色腫における11BD−2E11−2抗原発現に取り組むために、33人の各黒色腫患者由来の腫瘍組織を、11BD−2E11−2抗原の発現について評価した。研究結果は、67%の組織サンプルが11BD−2E11−2抗原について陽性染色されたことを示した。染色が悪性疾患細胞に制限されるので、患者サンプル内での11BD−2E11−2の発現は、癌細胞に特異的なようであった。さらに、11BD−2E11−2は、黒色腫患者由来の6つの利用可能な正常組織サンプルのうちで染色されたサンプルは存在しなかった。
【0048】
生化学データは、11BD−2E11−2によって認識される抗原がMCSPであることを示す(米国特許出願番号10/810,744号に開示)。これは、11BD−2E11−2免疫沈降タンパク質がMCSPのラットホモログに対する抗体によって認識され、抗MCSP免疫沈降タンパク質が11BD−2E11−2によって認識されることを示す研究によって支持された。これらのIHCおよび生化学的結果は、11BD−2E11−2がMCSP抗原に結合することを証明する。したがって、多くの証拠により、11BD−2E11−2がMCSP上に存在する固有のエピトープのライゲーションによって抗癌効果を媒介することが示された。さらなる生化学データはまた、本明細書中で概説されるように、11BD−2E11−2によって認識される抗原がMCSPであることを証明している。これらの抗体エピトープマッピングの結果は、11BD−2E11−2が2つの主要な結合部位を有する不連続なエピトープに結合することができえることを示した。
【0049】
まとめると、このデータは、11BD−2E11−2抗原が癌関連抗原であり、ヒトで発現し、病理学的に関連する癌標的であることを証明する。さらに、このデータはまた、ヒト癌組織への11BD−2E11−2抗体の結合を証明し、診断、治療の予測、または予後診断であり得るアッセイのために適切に使用することができる。さらに、細胞この抗原の細胞局在化は、ほとんどの非悪性細胞でこの抗原の発現を欠くので、細胞の癌の状態を示し、この所見により、この抗原、その遺伝子または誘導体、そのタンパク質もしくはその変異形を、診断、治療の予測、または予後診断であり得るアッセイに使用することができる。
【0050】
多数の異なる抗MCSP抗体が産生され、多数のin vitro系およびin vivo系で試験されている。前臨床モデルでは、再現されなかった1つの研究を除き、未修飾のMCSP抗体は、異なる黒色腫モデルおよび1つの神経膠腫モデルにおける腫瘍減少または生存度の増加に無効であることが示された。他の癌型は、抗MCSP抗体を使用して研究されなかった。ヒトにおける未修飾抗MCSP抗体の全試験により、いかなる正の臨床結果も得られなかった。未修飾の11BD−2E11−2は、ヒト乳癌のマウスモデルにおいて生存度を高め、全身腫瘍組織量を減少させることが示された。11BD−2E11−2はまた、ヒト卵巣癌のマウスモデルにおいて腫瘍の進行を阻害し、生存度を高めた。抗MCSP抗体を多数の毒剤または化学療法薬と抱合し、これらの抱合体は、マウス黒色腫モデルで試験した場合、正のin vivo結果を証明した。ヒトで試験した抗MCSP抱合体の報告は存在しなかったので、これらの抱合体の安全性は知られていない。しかし、モノクローナル抗体のみの送達は十分に許容され、これに関連する毒性は、あったとしてもほんの少しであった。したがって、未修飾の抗MCSP抗体での癌患者の治療によって正の臨床結果を得ることができる場合、有利であり、現在利用可能な治療より改良されているであろう。抗癌活性を示すための毒剤への抱合に11BD−2E11−2は必要ないので、抗体−毒素抱合体の投与に関して特別な配慮は必要ない。多数の抗MCSP抗体を使用して抗イディオタイプ抗体も生成されており、これらは、動物およびヒトで試験されている。小規模の非盲検では、抗イディオタイプ抗体での患者の免疫化によって検出可能な抗MCSP免疫応答が得られた場合、特定の免疫応答が得られなかった患者と比較して、これらの患者の生存度の中央値は増加した。示した例では、抗イディオタイプ抗体の投与によってMCSPをターゲティングし、正の臨床応答を得ることができる。このアプローチに関する問題は、抗イディオタイプ抗体で免疫化した患者全員から抗MCSP応答が得られるわけではないことである。したがって、直接投与の際に正の臨床結果を得ることができる抗MCSP抗体を利用可能であり、これにより、臨床的な利益を得るために患者自身の免疫系に依存する問題が克服されるであろう。11BD−2E11−2は、MCSPを直接ターゲティングして前臨床異種移植片腫瘍モデルで抗癌効果を示すような抗体であり、治療効力の有益な予測材料と見なされる。
【0051】
全体的に、本発明は、投与した場合に哺乳動物中で抗原を発現する癌の全身腫瘍組織量を減少させ(それにより、疾患の進行を遅延させる)、治療された哺乳動物を延命することもできることができる治療薬の標的としての11BD−2E11−2抗原の使用を教示する。本発明はまた、哺乳動物中で抗原を発現する癌の全身腫瘍組織量を減少させ、この抗原を発現する腫瘍を保有する哺乳動物を延命するためにその抗原にターゲティングするためのCDMAB(11BD−2E11−2)の使用を教示する。さらに、本発明はまた、この抗原を発現する腫瘍を保有する哺乳動物の診断、治療の予測、または予後診断で有用であり得る癌細胞中の11BD−2E11−2抗原の検出のための使用を教示する。
【0052】
患者が初期治療が無効であるか、転移する場合、再治療のために腫瘍に特異的な抗体の生成プロセスを繰り返すことができる。さらに、抗癌抗体を、患者から得た赤血球に抱合し、転移治療のために再注入することができる。転移性癌に有効な治療はほとんど存在せず、転移は為に至る不幸な結果の前兆である。しかし、転移性癌は、通常、十分に脈管化しており、赤血球による抗癌抗体の送達は腫瘍部位への抗体の濃縮効果があり得る。転移前でさえ、ほとんどの癌細胞は、その生存のために宿主の血液供給に依存し、赤血球に抱合した抗癌抗体もin situで腫瘍に有効であり得る。あるいは、抗体を、他の造血細胞(例えば、リンパ球、マクロファージ、単球、ナチュラルキラー細胞など)に抱合することができる。
【0053】
5つの抗体クラスが存在し、それぞれ、その重鎖によって付与される機能に関連する。一般に、未修飾抗体による癌細胞の死滅は抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)または補体依存性細胞傷害性(CDC)のいずれによって媒介されると考えられている。例えば、マウスIgMおよびIgG2a抗体は、補体系のC−1成分の結合およびそれによる補体活性化の古典経路の活性化によってヒト補体を活性化し、腫瘍を溶解することができる。ヒト抗体について、最も有効な補体活性化抗体は、一般に、IgMおよびIgG1である。IgG2aおよびIgG3アイソタイプのマウス抗体は、Fc受容体を有する細胞傷害性細胞の動員に有効であり、単球、マクロファージ、顆粒球、および一定のリンパ球によって細胞を死滅させる。IgG1およびIgG3アイソタイプのヒト抗体は、ADCCを媒介する。
【0054】
別の可能な抗体媒介性癌死滅機構は、細胞膜およびその関連する糖タンパク質または糖脂質中の種々の化学結合の加水分解を触媒するように機能する抗体(いわゆる触媒抗体)の使用による。
【0055】
より広く受け入れられている2つのさらなる抗体媒介性癌細胞死滅機構が存在する。第1の機構は、身体が癌細胞上に存在する推定抗原に対する免疫応答を生成するように誘導するワクチンとしての抗体の使用である。第2の機構は、成長受容体をターゲティングしてその機能を妨害するか、その機能が有効に喪失されるように成長受容体を下方制御するための抗体の使用である。
【0056】
制癌剤の臨床的有用性は、患者に対する許容可能なリスクプロフィール下での薬物の利点に基づく。癌療法では、一般に、生存することが最も求められるが、延命に加えて、他の十分に認識された利点が多数存在する。治療が生存に悪影響を与えないこれらの他の利点には、症状の緩和、有害事象からの防御、再発までの期間または無疾患での生存の延長、および進行までの期間の延長が含まれる。これらの基準は一般に許容されており、米国食品医薬品局(FDA)などの規制機関は、これらの利点が得られる薬物を承認している(Hirschfeld et al.Critical Reviews in Oncology/Hematolgy 42:137−143 2002)。これらの基準に加えて、これらの利点を予測することができる他の評価項目(endpooint)が存在することが十分に認識されている。部分的に、米国FDAによって付与された迅速承認プロセスでは、患者の利益が予想される可能性が高い代替法が存在することを認めている。2003年現在、このプロセスで16種の薬物が承認されており、これらのうちの4種が完全に承認されている(すなわち、追跡研究により、代理評価項目によって予想された直接的な患者の利点が証明されている)。固形腫瘍における薬物効果の決定のための1つの重要な評価項目は、治療に対する応答の測定による全身腫瘍組織量の評価である(Therasse et al.Journal of the National Cancer Institute 92(3):205−216 2000)。このような評価のための臨床基準(RECIST基準)を、Response Evaluation Criteria in Solid Tumors Working Group(国際的癌専門機関)によって推奨されている。RECIST基準による客観的応答によって示される全身腫瘍組織量に対する効果を示す薬物は、適切なコントロール群と比較して、最終的に、患者に直接利点をもたらす傾向がある。前臨床目的では、全身腫瘍組織量は、一般に、評価および報告がより容易である。臨床目的に転換することができるこの前臨床研究では、前臨床モデルで延命する薬物は、最も期待される臨床的有用性を有する。臨床治療に対して正の応答を生成する薬物と同様に、前臨床目的全身腫瘍組織量を減少させる薬物はまた、疾患に対して有意な直接的影響を与え得る。延命は、制癌剤治療で最も求められる臨床転帰であるが、臨床的有用性を有する他の利点が存在し、疾患進行の遅延、延命、またはその両方に相関し得る全身腫瘍組織量の減少により、直接的利点を得ることができ、且つ臨床的影響も与えることができることが明白である(Eckhardt et al.Developmental Therapeutics:Successes and Failures of Clinical Trial Designs of Targeted Compounds;ASCO Educational Book,39th Annual Meeting,2003,pages 209−219)。
【0057】
したがって、本発明の目的は、ハイブリドーマ細胞株ならびにハイブリドーマ細胞株がコードされる対応単離モノクローナル抗体およびその抗原結合フラグメントを単離するために、癌細胞に細胞傷害性を示すと同時に非癌細胞に比較的毒性のない特定の個体由来の細胞由来癌疾患修飾抗体を産生する方法を使用することである。
【0058】
本発明のさらなる目的は、CDMABおよびその抗原結合フラグメントを教示することである。
本発明のさらなる目的は、細胞傷害性がADCCによって媒介されるCDMABを産生することである。
本発明のなおさらなる目的は、細胞傷害性がCDCによって媒介されるCDMABを産生することである。
本発明のなおさらなる目的は、細胞傷害性が細胞化学結合の加水分解を触媒する能力があるCDMABを産生することである。
本発明のなおさらなる目的は、癌の診断、予後診断、およびモニタリングのための結合アッセイで有用なCDMABを産生することである。
本発明の他の目的および利点は、以下の説明から明らかであり、例として、本発明の一定の実施形態を記載する。
【0059】
(図面の簡単な説明)
特許または出願は、カラーで作成した少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を含む本特許または特許出願公開公報の副本は、願書および必要な手数料の支払いによって特許庁から提供される。
図1は、11BD−2E11−2で探索したMDA−MB−231(レーン1)またはOVCAR−3(レーン2)膜のウェスタンブロットを示す図である。還元条件下で膜タンパク質を分離した。右側に分子量マーカーを示す。
図2は、MDA−MB−231膜への11BD−2E11−2の結合に対する脱グリコシル化の効果を示す図である。脱グリコシル化緩衝液のみ(レーン1)、PNGアーゼF、エンド−o−グリコシダーゼ、シアリダーゼ、ガラクトシダーゼ、およびグリコサミノダーゼの組み合わせ(レーン2)、PNGアーゼF、エンド−o−グリコシダーゼ、およびシアリダーゼの組み合わせ(レーン3)、シアリダーゼのみ(レーン4)、エンド−o−グリコシダーゼのみ(レーン5)、ならびにPNGアーゼのみ(レーン6)でインキュベートしたMDA−MB−231膜への11BD−2E11−2結合。
図3は、11BD−2E11−2で免疫沈降したMDA−MB−231膜タンパク質のSDS−PAGE(パネルA)およびウェスタンブロット(パネルB)を示す図である。レーン1は分子量標準を示し、レーン2はMDA−MB−231膜タンパク質を示し、レーン3は11BD−2E11−2免疫沈降物質を示し、レーン4はアイソタイプコントロール免疫沈降物質を示す。
図4は、11BD−2E11−2(パネルA)、IgG1アイソタイプコントロール(クローン107.3、パネルB)、抗ラットNG2(ポリクローナル、パネルC)、正常ウサギIgG(パネルD)、抗MCSP(クローン9.2.27、パネルE)、およびIgG2aアイソタイプコントロール(クローンG155−228、パネルF)で探索したタンパク質のウェスタンブロットを示す図である。レーン1:11BD−2E11−2免疫沈降物、レーン2:IgG1アイソタイプコントロール(クローン107.3)免疫沈降物、レーン3:抗MCSP(クローン9.2.27)免疫沈降物、レーン4:IgG2aアイソタイプコントロール(クローンG155−228)免疫沈降物、レーン5:MDA−MB−231膜、およびレーン6:サンプル緩衝液のみ(ネガティブコントロール)。
図5は、MCSPペプチドアレイへの11BD−2E11−2の結合強度(Noehringer光単位)を示す図である。
図6は、いくつかの癌細胞株および非癌細胞に指向する11BD−2E11−2、アイソタイプコントロール、または抗EGFRの代表的FACSヒストグラムを示す図である。
図7は、凍結した正常なヒト組織アレイ由来の心臓の組織切片に対して11BD−2E11−2(A)およびアイソタイプコントロール抗体(B)を使用して得た結合パターンを示す代表的な顕微鏡写真を示す図である。心筋線維に対する11BD−2E11−2染色は認められなかった。倍率は200倍である。
図8は、凍結した正常なヒト組織アレイ由来の骨格筋の組織切片に対して11BD−2E11−2(A)、抗アクチン(B)、およびアイソタイプコントロール抗体(C)を使用して得た結合パターンを示す代表的な顕微鏡写真を示す図である。11BD−2E11−2は、骨格筋を染色しなかったが、血管の平滑筋は染色する(矢印)。倍率は200倍である。
図9は、乳癌腫瘍(浸潤性腺管癌)への11BD−2E11−2(A)およびアイソタイプコントロール抗体(B)の結合の代表的な顕微鏡写真を示す図である。パネルA中の黒色の矢印は、腫瘍細胞を示す。倍率は200倍である。
図10は、凍結した正常なヒト組織アレイ由来の悪性黒色腫の組織切片に対して11BD−2E11−2(A)、ポジティブコントロール抗CD63(NKI−C3)(B)、およびネガティブアイソタイプコントロール抗体(C)を用いて得られた結合パターンを示す代表的な顕微鏡写真を示す図である。倍率は200倍である。
図11は、凍結した黒色腫ヒト組織アレイ由来の悪性黒色腫(A)および正常な皮膚(B)の組織切片に対して11BD−2E11−2を用いて得られた結合パターンを示す代表的な顕微鏡写真を示す図である。11BD−2E11−2は悪性黒色腫を強く染色するが、正常な皮膚は染色しない。倍率は200倍である。
図12は、予防MDA−MB−468乳癌モデルにおける腫瘍成長に対する11BD−2E11−2または緩衝液コントロールの効果を示す図である。破線は、抗体が投与された期間を示す。データポイントは、平均+/−SEMを示す。
図13は、確立されたES−2異種移植片研究における11BD−2E11−2または緩衝液コントロール抗体での処置後の腫瘍保有マウスの生存を示す図である。
図14は、確立されたES−2異種移植片研究における11BD−2E11−2または緩衝液コントロールでの処置前、処置中、および処置後の腫瘍保有マウスのSEAPレベルを示す図である。
図15は、予防A2058黒色腫モデルにおける腫瘍成長に対する11BD−2E11−2または緩衝液コントロールの効果を示す図である。破線は、抗体が投与された期間を示す。データポイントは、平均+/−SEMを示す。
図16は、確立されたA2058黒色腫モデルにおける腫瘍成長に対する11BD−2E11−2または緩衝液コントロールの効果を示す図である。破線は、抗体が投与された期間を示す。データポイントは、平均+/−SEMを示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
【実施例1】
【0061】
ウェスタンブロッティングによる結合タンパク質の同定
抗体11BD−2E11−2によって認識される抗原を同定するために、この抗原を発現する細胞膜を、ゲル電気泳動に供し、ウェスタンブロッティングによって膜に移し、この抗体によって検出されたタンパク質を決定した(米国特許出願番号10/810,744号に開示)。
【0062】
1.膜の調製
以前の研究により、FACSによって乳癌株MDA−MB−231(MB−231)への11BD−2E11−2の結合が証明されている。以前の研究により、卵巣癌細胞株OVCAR−3に対する11BD−2E11−2の有効性も証明されている。したがって、これら2つの細胞株由来の膜調製物を、抗原同定のために使用した。さらなるウェスタンブロッティングおよび免疫沈降研究により、A2058膜調製物への11BD−2E11−2の類似の結合パターンも証明された。
【0063】
全ての細胞膜を、MB−231乳癌細胞またはOVCAR−3卵巣細胞の密集培養物から調製した。細胞蓄積物(cell stack)から培地を除去し、リン酸緩衝化生理食塩水を使用して細胞を洗浄した。細胞を、プラットフォームシェーカー上で分離緩衝液(Gibco−BRL,Grand Island,NY)中にて37℃で20分間分離した。細胞を回収し、900gにて4℃で10分間遠心分離した。遠心分離後、細胞ペレットをPBSに再懸濁し、900gにて4℃で10分間再度遠心分離して洗浄した。ペレットを、−80℃で保存した。細胞ペレットを、1gの細胞あたり3mLの緩衝液の比率で、50mLの完全プロテアーゼインヒビターカクテル(Roche,LavalQC)あたり1錠を含む均質化緩衝液に再懸濁した。細胞懸濁液を、氷上でpolytronホモジナイザーを使用した均質化に供し、細胞を溶解した。細胞ホモジネートを、15,000gにて4℃で10分間遠心分離して、核粒子を除去した。上清を採取し、チューブに分注し、75,600gにて4℃で90分間遠心分離した。チューブから上清を慎重に除去し、各膜ペレットを、約5mLの均質化緩衝液に再懸濁した。全チューブ由来の再懸濁ペレットを1つのチューブに合わせ、75,600gにて4℃で90分間遠心分離した。チューブから上清を慎重に除去し、ペレットを秤量した。1%のTritonX−100を含む可溶化緩衝液を、1gの膜ペレットあたり3mLの緩衝液の比率でペレットに添加した。氷上での300rpmで1時間のプラットフォームシェーカーでの震盪によって膜を溶解した。膜溶液を、75,600gで遠心分離して不溶性物質をペレット化した。チューブから可溶化膜タンパク質を含む上清を慎重に取り出し、タンパク質含有量についてアッセイし、−80℃で保存した。
【0064】
2.SDS−PAGEおよびウェスタンブロット
SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって膜タンパク質を分離した。20μgの膜タンパク質を、100mM DTTを含むSDS−PAGEサンプル緩衝液と混合し、8%のSDS−PAGEゲルのレーンにローディングした。予め染色した分子量マーカーサンプル(Invitrogen,Burlington,ON)を、基準レーンで泳動した。100Vで10分間、その後に150Vで、予め染色した分子量マーカーが十分に分離するまで電気泳動を行った。40Vで16時間のエレクトロブロッティングによって、タンパク質をゲルからPVDF膜(Millipore,Billerica,MA)に移した。予め染色したマーカーのゲルから膜への完全な移動に注目することによって移動を評価した。移動後、膜を、5%脱脂粉乳を含む0.5%Tween−20(TBST)含有Tris緩衝化生理食塩水で2時間ブロッキングした。膜をTBSTで1回洗浄し、その後、3%脱脂粉乳を含むTBSTで希釈した5μg/mLの11BD−2E11−2と2時間インキュベートした。TBSTでの3回の洗浄後、膜を、Jckson Immunologicals(West Grove PA)の西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)と抱合したヤギ抗マウスIgG(Fc)とインキュベートした。このインキュベーション後、TBSTで3回洗浄し、その後、HRP基質である3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)(VectorLaboratories,Burlington ONの基質キット)とインキュベートした。
【0065】
図1では、11BD−2E11−2は、分離したMB−231(レーン1)およびOVCAR−3(レーン2)膜タンパク質の3分子量領域に明確に結合する。分子量(MW)標準との比較により、抗体は、分子量が約150、240、および280kDaのタンパク質に結合する。この細胞株を使用してより強い反応性が認められたので、MB−231膜を使用して全てのさらなる研究を行った。
【実施例2】
【0066】
11BD−2E11−2に結合した抗原のグリコシル化の決定
抗体11BD−2E11−2によって認識される抗原が糖タンパク質であるかどうかを決定するために、MB−231膜を、PNGアーゼF、エンド−o−グリコシダーゼ、シアリダーゼ、ガラクトシダーゼ、およびグルコサミニダーゼの異なる組み合わせとインキュベートした。11BD−2E11−2で記載のように、膜を、SDS−PAGEで分離し、その後、ウェスタンを行った。図2は、脱グリコシル化緩衝液のみ(レーン1)、PNGアーゼF、エンド−o−グリコシダーゼ、シアリダーゼ、ガラクトシダーゼ、およびグリコサミノダーゼの組み合わせ(レーン2)、PNGアーゼF、エンド−o−グリコシダーゼ、およびシアリダーゼの組み合わせ(レーン3)、シアリダーゼのみ(レーン4)、エンド−o−グリコシダーゼのみ(レーン5)、ならびにPNGアーゼのみ(レーン6)でインキュベートしたMB−231膜への11BD−2E11−2結合の結果を証明する。グリコシダーゼでのMB−231膜の処置では11BD−2E11−2の結合は消失しないが、全レーンでタンパク質の分子量シフトが認められ、11BD−2E11−2によって認められた抗原が糖タンパク質であることを示す。
【実施例3】
【0067】
11BD−2E11−2に結合した抗原の同定
1.免疫沈降
可溶化膜糖タンパク質の抗体での免疫沈降による同族リガンドの単離によって11BD−2E11−2の抗原の同定を行った。100μLのプロテインGDynabeads(Dynal Biotech,Lake Success NY)を、1mLの0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)で3回洗浄した。100μgの11BD−2E11−2を含む全体積が100μLの0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)を、洗浄したビーズに添加した。混合物を、回転混合しながら1時間インキュベートした。非結合抗体を除去し、11BD−2E11−2コーティングビーズを、0.1% Tween−20を含む0.5mLの0.1Mリン酸ナトリウム(pH7.4)で3回洗浄した。11BD−2E11−2コーティングビーズを、1mL 0.2Mトリエタノールアミン(pH8.2)で2回洗浄した。1mLの0.02Mジメチルピメリミデートを含む0.2Mトリエタノールアミン(pH8.2)の添加および回転混合しながら30分間インキュベートすることによって11BD−2E11−2をビーズに化学架橋した。1mLの0.05M Tris(pH7.5)とビーズを回転混合しながらインキュベートすることによって、反応を停止させた。11BD−2E11−2架橋ビーズを、0.1% Tween−20を含む1mLの1mM KHPO、10mM NaHPO、137mM NaCl、2.7mM KCl(PBS)で3回洗浄した。11BD−2E11−2架橋ビーズを、0.1Mクエン酸塩(pH3.0)とのインキュベーションによって予め溶離し、その後に、0.1% Tween−20を含む0.1M PBSで3回洗浄した。第2の抗体架橋ビーズ組を、記載の同一様式で、トリニトロフェノール(無関係の分子)に対するマウスIgG抗体(BD Biosciences,Oakville ON由来のクローン107.3)を使用して調製し、ネガティブIgG1アイソタイプコントロールとして使用した。
【0068】
11BD−2E11−2架橋ビーズを、1%BSAを含む0.1Mリン酸ナトリウム(pH7.4)中で回転混合しながら4℃で30分間インキュベートすることによってブロッキングした。ビーズを、0.1Mリン酸ナトリウム(pH7.4)で3回洗浄した。500μgのMB−231細胞由来の全膜調製物を、11BD−2E11−2架橋ビーズと回転混合しながら4℃で2.5時間インキュベートした。免疫複合体結合ビーズを、1%TritonX−100を含む1mLの1mM KHPO、10mM NaHPO、287mM NaCl、2.7mM KClで3回洗浄した。11BD−2E11−2タンパク質を、穏やかに混合しながら30μLの0.1Mクエン酸塩(pH3.0)と3分間インキュベートすることによって溶離した。溶離タンパク質を、9μLの1M Tris(pH9)の添加によって中性pHにした。中和した溶離タンパク質を、−80℃で保存した。11BD−2E11−2架橋ビーズを、0.1% Tween−20を含む3mL PBSで洗浄した。IgGアイソタイプコントロール(クローン107.3)架橋ビーズを、MB−231膜タンパク質とインキュベートし、11BD−2E11−2ビーズと同一の様式で処理した。
【0069】
MB−231膜タンパク質由来の11BD−2E11−2免疫沈降タンパク質の2つのバッチを記載のように産生し、合わせた。IgG1(クローン107.3)アイソタイプコントロールビーズについても実施した。62%のこの免疫沈降混合物(620μgのMB−231膜タンパク質から免疫沈降したタンパク質量に相当する)を、4〜20%の勾配のSDS−PAGEゲルの1つのレーンにロードした。107.3架橋ビーズから産生した同量の材料(20μgのMB−231膜タンパク質であった)を、隣のレーンにロードした。非染色分子量マーカーのサンプル(Invitrogen,Burlington ON)または予め染色された分子量マーカーのサンプルを、基準レーンで泳動した。サンプルを、100Vで10分間、その後に150Vで60分間の電気泳動によって分離した。SYPRO Ruby(商標)(BioRad,Mississauga,ON)中でのゲルのインキュベーションによってタンパク質を染色した。並行ウェスタンブロットでは、180μgのMB−231膜タンパク質から免疫沈降タンパク質量に相当する18%の免疫沈降混合物およびIgG1アイソタイプコントロール(クローン107.3)から産生した同量の材料を、電気泳動によって分離した。40Vで16時間のエレクトロブロッティングによって、タンパク質をゲルからPVDF膜(Millipore,Billerica,MA)に移した。移動後、膜を、5%脱脂粉乳を含むTBSTで2時間ブロッキングした。膜を、3%脱脂粉乳を含むTBSTで希釈した5μg/mLの11BD−2E11−2で2時間探索した。TBSTでの3回の洗浄後、膜を、HRPと抱合したヤギ抗マウスIgG(Fc)とインキュベートした。このインキュベーション後、TBSTで3回洗浄し、その後、HRP基質であるTMBとインキュベートした。
【0070】
図3は、11BD−2E11−2によって免疫沈降したタンパク質から得たゲルおよびウェスタンブロットを示す。ゲル(パネルA)上のレーン1は、分子量標準を示し、レーン2はMB−231膜タンパク質を示す。11BD−2E11−2免疫沈降材料を含むレーン(レーン3)に分子量240kDaおよび280kDaの2つの異なるバンドが存在したが、107.3免疫沈降材料を含むレーン(レーン4)には存在しなかった。対応するウェスタンブロット(パネルB)では、11BD−2E11−2は、分子量240kDaおよび280kDaの11BD−2E11−2免疫沈降タンパク質と強く反応した(レーン3)。ウェスタンブロットでは、11BD−2E11−2は、150kDaの11BD−2E11−2免疫沈降タンパク質中のさらなるバンドとも強く反応し、このバンドは、染色したゲルで検出不可能であった。11BD−2E11−2免疫沈降タンパク質に対する11BD−2E11−2の反応性プロフィールは、MB−231の全膜で認められたプロフィールと類似していた(レーン2)。IgG1アイソタイプコントロール(クローン107.3、レーン4)によって免疫沈降したタンパク質に対する11BD−2E11−2の反応性は認められず、免疫沈降タンパク質への11BD−2E11−2の結合が特異的であり、タンパク質の汚染に起因しないことを示した。
【0071】
2.質量分析法
11BD−2E11−2によって免疫沈降した240kDaおよび280kDaのタンパク質に対応するゲル領域(図3、パネルA、レーン3)を、滅菌外科用メスを使用して切り出した。次いで、これらのゲルスライスを、MALDI/MSおよびLC/MS/MSを使用した質量分析法によるタンパク質の同定に使用した。
【0072】
サンプルを、PROGESTワークステーションにてトリプシンを使用したタンパク質分解消化に供し、得られた消化物の上清の一部を、MALDI/MS分析に使用した。ZipTipsを使用して、ロボット(ProMS)によってスポッティングを行い、60%アセトニトリル,0.2%TFA中に調製したマトリックス(α−シアノ4−ヒドロキシ桂皮酸)を含むC18材料からペプチドを溶離した。VoyagerDE−STR装置(Applied Biosystems,FosterCity CA)によってMALDI/MSデータを収集し、ペプチド質量検索のために、認められたm/z値をProFound(Proteometricsソフトウェアパッケージ)に供した。ProFoundは、NCBInrデータベースのローカルに保存されたコピーに問い合わせた。消化物の上清のさらなる部分を、200nL/分の流速で75μmのC18カラムを使用したMicromassQ−Tof2によるナノLC/MS/MSによって分析した。MASCOTのローカルコピーを使用してMS/MSデータを検索した。
MALDI/MSおよびLC/MS/MSによって同定されたタンパク質を、表1に示す。
表1.MDA−MB−231膜の11BD−2E11−2免疫沈降によって同定されたタンパク質
【0073】
【表1】

両サンプルを、黒色腫関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(MCSP)と同定した。
【0074】
3.確認
既知の抗MCSP抗体が11BD−2E11−2によって免疫沈降されたタンパク質と反応するのかどうかまたはその逆の決定によって推定抗原を確認した。ネガティブIgG2aアイソタイプコントロールとして使用したトリニトロフェノール(非関連分子)へのマウス抗MCSPモノクローナル抗体9.2.27(IgG2a)(Chemicon,Temecula CA)およびマウスIgG2a抗体(BD Biosciences;Oakville ONのクローンG155−178)の添加以外は前記と同一の様式で免疫沈降物を調製した。11BD−2E11−2免疫沈降物、IgG1アイソタイプコントロール(クローン107.3)免疫沈降物、抗MCSP(クローン9.2.27)免疫沈降物、IgG2aアイソタイプコントロール(クローンG155−228)免疫沈降物、およびMB−231膜を、6つの同型の10%ゲルでのSDS−PAGEによって分離した。電気泳動およびウェスタンブロッティングを、上記のように行った。膜を、3%脱脂粉乳を含むTBSTで希釈した5μg/mLの11BD−2E11−2、IgG1アイソタイプコントロール(クローン107.3)、抗MCSP(クローン9.2.27)、IgG2aアイソタイプコントロール(クローンG155−228)、ウサギポリクローナル抗ラットNG2抗体(MCSPは、ラットNG2のヒトホモログである、Chemicon,Temecula CA)、および正常なウサギIgG(Sigma,Saint Louis MO)と2.5時間インキュベートした。図4は、記載のウェスタンブロッティングの結果を証明する。図4(パネルA)は、11BD−2E11−2免疫沈降物(レーン1)、IgG1アイソタイプコントロール(クローン107.3)免疫沈降物(レーン2)、抗MCSP(クローン9.2.27)免疫沈降物(レーン3)、IgG2aアイソタイプコントロール(クローンG155−228)免疫沈降物(レーン4)、MB−231膜(レーン5)、およびサンプル緩衝液のみ(ネガティブコントロール)(レーン6)への11BD−2E11−2の結合を示す。11BD−2E11−2は、MB−231膜および11BD−2E11−2免疫沈降物中の約150、240、および280kDaの同一の3つのバンドを認識した。上の280kDaバンドのみは、抗MCSP(クローン9.2.27)免疫沈降物レーン中で認められた。いずれかのアイソタイプコントロール沈降物レーンで反応は認められず、免疫沈降物に対する11BD−2E11−2の反応性は、タンパク質が11BD−2E11−2および9.2.27の両方に特異的に結合し、免疫沈降することに起因することを示す。IgG1アイソタイプコントロール(クローン107.3)で探索した並行ブロット(パネルB)では、いかなるレーンにおいても反応性は認められず、11BD−2E11−2で探索したブロット中に認められる反応性が特異的であることを示した。パネルCは、並行ブロットへのウサギポリクローナル抗ラットNG2抗体の結合を示す。抗NG2は、11BD−2E11−2免疫沈降物中の約150kDaおよび240kDaの2つのバンドに結合する一方で(レーン1)、いかなる他のレーン中のこの分子量範囲のタンパク質とも結合しない。並行ブロットでは(パネルD)、正常なウサギIgGは、IgG2a免疫沈降物(レーン4)およびMB−231膜(レーン5)中のタンパク質に対するわずかな非特異的反応性を示す。したがって、パネルCのこれらのレーン(ウサギ抗NG2で探索)中の同一の反応性は、非特異的と見なさなければならない。並行ブロット(パネルE)では、抗MCSP(クローン9.2.27)は、抗MCSP(クローン9.2.27)免疫沈降レーン中の1つのバンドへの非常にわずかな結合のみを示し(レーン3、矢印で示す)、このバンドはMB−231膜(レーン5)では認められず、9.2.27のこの抗原に対する親和性は低く、濃縮サンプル中などの濃縮形態で存在する場合のみに反応性を示すことを示す。IgG2aアイソタイプコントロール(クローンG155−228)で探索した最後の並行ブロット(パネルF)では、いかなるレーンにも反応性は認められず、抗MCSP(クローン9.2.27)で探索したブロット中で認められた反応性は特異的であることを示した。これらの結果は、11BD−2E11−2免疫沈降タンパク質がMCSPのラットホモログによって認識され、抗MCSP免疫沈降タンパク質が11BD−2E11−2によって認識されることを証明する。
【0075】
既知の市販の抗体を使用した確認と組み合わせた質量分析による同定は、11BD−2E11−2の抗原がMCSPであることを証明する。これは、MCSPのコアタンパク質が糖タンパク質であるという実施例2の脱グリコシル化実験とも一致する。
【実施例4】
【0076】
抗体エピトープマッピング
11BD−2E11−2によって認識されるMCSP分子領域を決定するために、抗体エピトープマッピング実験を行った。MCSPのアミノ酸配列に基づいた重複ペプチドアレイを合成し、段階的様式で細胞膜に共有結合し、所定の配置を得た。各ペプチドは18アミノ酸長であり、9アミノ酸が重複していた。ペプチドアレイを、ブロッキング緩衝液と数時間インキュベートした。11BD−2E11−2を、Wilson and Nakaneの方法にしたがった修正過ヨウ素酸塩法を使用して、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)に抱合した。ブロッキング後、ブロッキング緩衝液中で、ペプチドアレイを1μg/mL 11BD−2E11−2−HRPとインキュベートした。別の実験では、ペプチドアレイを、ネガティブコントロールとしてのヒツジ抗マウスIgG−HRPとインキュベートした。ペプチドアレイを、TBSTで洗浄し、化学発光基質とインキュベートした。電荷結合素子(CCD)カメラを使用して化学発光反応時のペプチドアレイ上の各スポットの発光を定量し、各ペプチドのシグナル強度値を得た(Boehringer光単位;BLU)。この実験について、7500BLU未満の全シグナルをバックグラウンドと見なした。ペプチドアレイの結合データを、表2に列挙する。
【0077】
【表2−1】

【0078】
【表2−2】

【0079】
【表2−3】

【0080】
【表2−4】

【0081】
【表2−5】

【0082】
図5は、結合データのグラフを示す。11BD−2E11−2は、ペプチド番号26(配列番号1)および番号71(配列番号2)に最も強く結合した。より弱い結合(バックグラウンドよりも強い)を、ペプチド番号3(配列番号3)、番号66(配列番号4)、番号170(配列番号5)、番号251(配列番号6)、番号252(配列番号7)、および番号256(配列番号8)で認識することができた。これらの結果は、11BD−2E11−2が2つの主な結合部位(ペプチド番号26および番号71)を有する不連続なエピトープおよび多数の他の部位に結合することができることを示した。
【実施例5】
【0083】
米国特許出願番号10/743,451号で概説されるように、ハイブリドーマ細胞株11BD−2E11−2を、ブダペスト条約に基づき、11月11日にAmerican Type Culture Collection,10801 University Blvd.,Manassas,VA 20110−2209にアクセッション番号PTA−5643で寄託した。CFR 1.808に基づいて、寄託機関は、寄託物の公的利用に課された全ての制限事項を特許付与時に変更せずに解除することを保証する。
【0084】
抗体産生:
11BD−2E11−2モノクローナル抗体を、CL−1000フラスコ(BD Biosciences,Oakville,ON)中でのハイブリドーマ(PTA−5643)の培養ならびに1週間に2回の回収および再播種によって産生した。プロテインG Sepharose 4 Fast Flow(Amersham Biosciences,Baie d’Urfe,QC)を使用した標準的な抗体精製手順にしたがって、抗体を精製した。
【0085】
以前に米国特許出願番号10/348,231に記載するように、細胞傷害性アッセイにおいて、11BD−2E11−2を、ポジティブコントロール(抗Fas(EOS9.1,IgM,kappa,20μg/mL,eBioscience,San Diego,CA)、抗Her2/neu(IgGl,kappa,10μg/mL,Inter Medico,Markham,ON)、抗EGFR(C225,IgGl,kappa,5μg/mL,Cedarlane,Hornby,ON)、シクロヘキシミド(100μmol、Sigma,Oakville,ON)、NaN(0.1%,Sigma,Oakville,ON))およびネガティブコントロール(107.3(抗TNP,IgGl,kappa,20μg/mL,BD Biosciences,Oakville,ON)、Gl 155−178(抗TNP,IgG2a,kappa,20μg/mL,BD Biosciences,Oakville,ON)、MPC−Il(未知の抗原特異性、IgG2b,kappa,20μg/mL)、J606(抗フルクトサン、IgG3,kappa,20μg/mL)、IgG緩衝液(2%))と比較した(表2)。乳癌細胞株(MDA−MB−231(MB−231)、MDA−MB−468(MB−468)、MCF−7)、結腸癌細胞株(HT−29,SWl 116,SW620)、肺癌細胞株(NCI H460)、卵巣癌細胞株(OVCAR−3(OVCAR))、前立腺癌細胞株(PC−3)、および非癌細胞株(CCD 27sk,Hs888 Lu)を試験した(全てATCC,Manassas,VA由来)。生/死細胞傷害性アッセイを、Molecular Probes(Eugene,OR)から入手した。以下に概説のように変更して、製造者の説明書にしたがってアッセイを行った。細胞をプレートし、その後に所定の適切な密度でアッセイを行った。2日後、精製した抗体またはコントロールを培地で希釈し、100μlを細胞プレートに移し、5%COインキュベーター中で5日間インキュベートした。次いで、逆にしてプレートを空にし、ブロットを乾燥させた。MgClおよびCaClを含む室温のDPBSを、多チャネルスクイーズボトルから各ウェルに分注し、3回軽くたたき、逆にすることによって空にし、ブロットを乾燥させた。MgClおよびCaClを含むDPBSで希釈した50μlの蛍光カルセイン色素を各ウェルに添加し、5%COインキュベーター中にて37℃で30分間インキュベートした。プレートを、Perkin−Elmer HTS7000蛍光プレートリーダーで読み取り、データをMicrosoft Excelで分析し、表3に結果を集計した。データは、3連で試験した4回の実験の平均を示し、且つ以下の様式で定性的に示した:4/4の実験が閾値細胞傷害性を超える(+++)、3/4の実験が閾値細胞傷害性を超える(++)、2/4の実験が閾値細胞傷害性を超える(+)。表1中の印のない細胞は、矛盾しているか閾値細胞傷害性未満の効果を示す。11BD−2E11−2は、乳癌細胞および卵巣癌細胞で特異的に細胞傷害性を示し、正常な細胞に影響を与えなかった。化学的細胞傷害薬は、その期待する細胞傷害性を誘導する一方で、比較のために含まれる多数の他の抗体も予想通り生物学的細胞アッセイがいくらか制限された。全体として、11BD−2E11−2抗体は2つの癌細胞型に対して細胞傷害活性を有することが示された。全ての癌細胞型が感受性を示さなかったので、抗体は、その活性に選択性を示した。さらに、抗体は非癌細胞型に対して細胞傷害性を示さなかったので、抗体の機能的特異性が証明され、これは治療状況において重要な要因である。
【0086】
【表3】

【0087】
米国特許出願番号10/348、231号および同第10/810、744号に以前に記載のように、癌細胞株および正常細胞株の上記パネルならびに以下のさらなる卵巣癌細胞株(A2780−cp、A2780−S、C−14、OV2008、Hey、OCC−I、OVCA−429、およびES−2+SEAP)への11BD−2E11−2の結合を、フローサイトメトリー(FACS)によって評価した。DPBS(Ca++およびMg++を含まない)での細胞単層の最初の洗浄によって、FACS用の細胞を調製した。次いで、細胞分離緩衝液(INVITROGEN,Burlington,ON)を使用して、37℃でその細胞培養プレートから細胞を除去した。遠心分離および回収後、細胞を、MgCl、CaCl、2%または25%ウシ胎児血清(FBS)を含む4℃のDulbeccoリン酸緩衝化生理食塩水(洗浄培地)に再懸濁し、計数し、適切な細胞密度に等分し、スピンしてペレットにし、20μg/mLで11BD−2E11−2またはコントロール抗体(アイソタイプコントロールまたは抗FBS)を含む染色培地(MgClおよびCaCl+/−2%FBSを含むDPBS)に氷上で30分間再懸濁した。Alexa Fluor 488抱合二次抗体の添加前に、細胞を洗浄培地で1回洗浄した。次いで、Alexa Fluor 488抱合二次抗体を含む染色培地を、20〜30分間添加した。次いで、細胞を最後の洗浄に供し、1μg/mLヨウ化プロピジウムまたは1.5%パラホルムアルデヒドを含む染色培地に再懸濁した。フローサイトメトリーにおける捕捉細胞を、CellQuestソフトウェア(BD Biosciences,Oakville,ON)を使用してFACScanにおけるサンプルを流すことによって評価した。細胞の前方散乱(FSC)および側方散乱(SSC)を、FSCおよびSSC検出器の電圧および振幅の増加の調整によって設定した。3つの蛍光チャネル(FLl、FL2、およびおFL3)の検出器を、細胞が約1〜5単位の蛍光強度の中央値を有する均一なピークを有するように、精製されたアイソタイプコントロール抗体およびその後にAlexa Fluor 488抱合二次抗体で染色した細胞を流すことによって調整した。FSCおよびヨウ化プロピジウム(使用した場合)を排除するためのゲーティングによって生細胞を捕捉した。各サンプルについて、分析のために約10,000個の生細胞を捕捉し、結果を表4および5に示す。表4および5は、アイソタイプコントロールに対する平均蛍光強度の増加倍率を集計し、以下のように定性的に示す:5未満(−)、5〜50(+)、50〜100(++)、100超(+++)。括弧内に細胞染色率を示す。
【0088】
【表4】

【0089】
【表5】

【0090】
11BD−2E11−2抗体の代表的なヒストグラムを、図6に示した。11BD−2E11−2は、乳房腫瘍細胞株MDA−MB−231(表4)およびいくつかの卵巣腫瘍細胞株(ES−2+SEAPが含まれる)への特異的腫瘍結合を示した(図5)。非癌細胞への11BD−2E11−2の結合も認められたが、結合は細胞傷害性を示さなかった。これは、結合が必ずしもその同族抗原の抗体ライゲーションの結果を予測するものではなく、自明でない所見であることのさらなる証拠であった。これにより、異なる細胞における抗体ライゲーションの状況が単なる抗体結合よりもむしろ細胞傷害性の決定要因であることが示唆された。
【実施例6】
【0091】
正常ヒト組織の染色
ヒトにおける11BD−2E11−2抗原の分布を特徴づけるためにIHC研究を行った。さらなる実験条件を決定するためにIHC至適化研究予め行った。11BD−2E11−2モノクローナル抗体を産生し、上記のように精製した。
【0092】
米国特許出願番号10/810,744号に開示されているように、凍結ヒト正常器官組織アレイ(Clinomics,Watervliet,NY)を使用して、抗体を20種の正常なヒト組織に抗体に結合させた。冷(−20℃)アセトン中でスライドを10分間後固定し、その後に室温にした。スライドを、4℃の冷リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)にて2分間で3回リンスし、その後、それぞれを3%過酸化水素での10分間の洗浄によって内因性のペルオキシダーゼ活性を遮断した。次いで、スライドを、PBSにて5分間で3回リンスし、その後、Universalブロッキング液(Dako,Toronto,Ontario)中にて室温で5分間インキュベートした。11BD−2E11−2、抗ヒト筋肉アクチン(クローンHHF35,Dako,Toronto,Ontario)、またはアイソタイプコントロール抗体(クロカビのグルコースオキシダーゼ(哺乳動物組織中に存在せず、且つ誘導することもできない酵素)に指向する;Dako,Toronto,Ontario)を、抗体希釈緩衝液(Dako,Toronto,Ontario)で作業濃度(各抗体で5μg/mL(抗アクチンの2μg/mLを除く)に希釈し、室温で一晩または(for)1時間インキュベートした。スライドを、PBSで3回、それぞれ2分間洗浄した。一次抗体の免疫反応性を、市販のHRP抱合二次抗体(Dako Envision System,Toronto,Ontario)で室温で30分間検出/視覚化した。この工程後、スライドを、PBSで3回、それぞれ2分間洗浄し、免疫ペルオキシダーゼ染色のためのDAB(3,3’−ジアミノベンジジン四塩酸塩、Dako,Toronto,Ontario)色原体基質溶液の室温で10分間の添加によって発色させた。水道水でのスライドの洗浄によって、発色反応を停止させた。Meyerヘマトキシリン(Sigma Diagnostics,Oakville,ON)で対比染色後、スライドをエタノール(95〜100%)で段階的に脱水し、キシレンで浄化した。封入剤(Dako Faramount,Toronto,Ontario)を使用して、スライドにカバーガラスをのせた。スライドを、Axiovert 200(Zeiss Canada,Toronto,ON)を使用して顕微鏡試験を行い、Northern Eclipse Imaging Software(Mississauga,ON)を使用してデジタル画像を取り込み、保存した。結果を読み取り、スコアリングし、病理学者が解釈した。
【0093】
表6は、正常なヒト組織のアレイの11BD−2E11−2染色の結果のまとめを示す。表から、組織染色についての2つの主なカテゴリーが存在した。組織群は、完全に負であった。これらの組織は、甲状腺、気管支、および左心室の心筋を含んでいた(図7)。第2の組織群は、組織切片中で陽性染色された組織を含んでいたが、血管の平滑筋線維および/または上皮に限られていた(図8)。これらの結果により、11BD−2E11−2の抗原が正常組織上に広範に発現されず、抗体はヒトの少数の組織にのみ結合することが示唆された。11BD−2E11−2による正常なヒト組織の染色は、抗MCSP抗体(B5)について以前に報告された染色と類似する。B5は、皮膚ケラチノサイト、肺胞上皮、および毛細管内皮に結合することが以前に示された。
【0094】
【表6】

表6:凍結したヒト正常組織上の11BD−2E11−2
略語:SMF:平滑筋線維、Bg:バックグラウンド染色、PD:部分的剥離、F:折り畳み(folded)、CD:完全に剥離。
【実施例7】
【0095】
ヒト乳房腫瘍組織染色
11BD−2E11−2抗原のヒト乳癌との癌関連(cancer association)を決定するためにIHC研究に着手した(米国特許出願番号10/810,744号に開示)。アクチン(ポジティブコントロール)およびクロカビのグルコースオキシダーゼ(哺乳動物組織中に存在せず、且つ誘導することもできない酵素)に指向する抗体(ネガティブコントロール)と比較した。15人の乳癌患者由来の乳癌組織アレイおよび乳癌患者中の非新生物乳房組織由来の5サンプルを使用した(Clinommics,Watervliet,NY)。以下の各患者についての情報を提供した:年齢、性別、および診断。実施例6のIHCの手順に従った。
【0096】
表7は、乳癌組織アレイの11BD−2E11−2抗体染色の結合のまとめを提供する。各アレイは、15人の各患者由来の腫瘍サンプルを含んでいた。全体として、試験した8人の患者のうちの62%(7つの組織サンプルは完全に剥がれているか、代表しなかった)は、11BD−2E11−2抗原に陽性であった。11BD−2E11−2についても、乳癌患者由来の3つの正常な乳房組織サンプル(同様に、組織サンプルのうちの2つは完全に剥がれている)のうちで陽性のものはなかった(図9)。11BD−2E11−2抗原については、陽性発現が高いほど腫瘍の病期が進行するという傾向はないようであった。しかし、この結果は、サンプルサイズの小ささによって制限された。11BD−2E11−2染色は、癌細胞に特異的であった(図9)。11BD−2E11−2由来の染色パターンは、患者サンプルにおいて、抗体が悪性疾患細胞に高度に特異的であるので、魅力的な薬物にできる標的となることを示した。11BD−2E11−2の乳房腫瘍組織染色は、抗MCSP抗体(B5)について以前に報告された染色と類似する。B5は、60%の乳癌腫瘍組織に結合することが以前に示されていた。
表7:凍結ヒト正常組織および乳房腫瘍組織に対する11BD−2E11−2 IHC
【0097】
【表7】

略語:SMF:平滑筋線維、PD:部分的剥離、F:折り畳み(folded)、CD:完全に剥離。
【実施例8】
【0098】
11BD−2E11−2抗原のヒト黒色腫との癌関連を決定するためにIHC研究に着手した。抗CD63抗体(NIK−C3;MEDICORP,Montreal QC;ポジティブコントロール)およびクロカビのグルコースオキシダーゼ(哺乳動物組織中に存在せず、且つ誘導することもできない酵素)に指向する抗体(ネガティブコントロール)と比較した。35人の黒色腫患者由来の黒色腫癌組織アレイおよび黒色腫癌患者中の正常な皮膚組織由来の10サンプルを使用した(TriStar Technology Group,LLC,Bethesda,MD)。以下の修正以外は実施例6由来のIHCの手順に従った。免疫ペルオキシダーゼ染色のためのAEC(Dako,Toronto,Ontario)色原体基質溶液の室温で10分間の添加によって発色させた。水道水でのスライドの洗浄によって、発色反応を停止させた。Meyerヘマトキシリン(Sigma Diagnostics,Oakville,ON)で対比染色後、スライドを蒸留水で浄化した。
【0099】
表8は、黒色腫癌組織アレイの11BD−2E11−2抗体染色の結果のまとめを示す。各アレイは、35人の各患者由来の腫瘍サンプルおよび10人の患者由来の正常な皮膚を含んでいた。全体として、試験した33人の患者のうちの67%(2つの組織サンプルは完全に剥がれている)は、11BD−2E11−2抗原に陽性であった(図10)。さらに、黒色腫癌患者由来の6つの正常な皮膚組織サンプル(組織サンプルのうちの4つは代表しないか利用可能ではなかった)のうちで陽性のものはなかった(図11)。11BD−2E11−2染色は、癌細胞に特異的であった(図11)。11BD−2E11−2由来の染色パターンは、患者サンプルにおいて、抗体が悪性疾患細胞に高度に特異的であるので、魅力的な薬物にできる標的となることを示し、潜在的な薬物としての11BD−2E11−2の有用性が示される。
表8:凍結ヒト正常皮膚組織および黒色腫組織に対する11BD−2E11−2IHC
【0100】
【表8】

略語:meta:転移、NR:切片が代表的ではない、cd:切片が完全に剥がれている、NA:切片が利用可能ではない。
【実施例9】
【0101】
in vivoMDA−MB−468確立腫瘍実験
米国特許出願番号10/810,744号に開示され、且つ図12を参照して、6〜8週齢のメスSCIDマウスに、200万個のMDA−MB−468ヒト乳癌細胞を含む100μlの生理食塩水を頸部に皮下注射することによって移植した。腫瘍成長を、カルパスを使用して毎週測定した。コホートの大部分の腫瘍体積が100mmに到達した場合、5〜6匹のマウスを、2つの各治療群に無作為に分類した。11BD−2E11−2または緩衝液コントロールを、2.7mM KCl、1mM KHPO、137mM NaCl、および20mM NaHPOを含む希釈剤でのストック濃度からの希釈後に10mg/kg/投与にて300μlの体積で腹腔内投与した。次いで、抗体を、同一の様式で移植66日後まで1週間に3回ずつ全部で10回投与した。およそ7日毎にカリパスを使用して、研究期間または各動物がCCAC終点に到達するまで腫瘍成長を測定した。研究中に動物の体重を記録した。研究終了時、CCACガイドラインに従って、全動物を安楽死させた。
【0102】
無作為分類時、各群の平均腫瘍体積および標準偏差は類似していた。統計的に、群間で体重の増加は認められなかった。これは、真の無作為化が起こったことを示した。図12に示すように、抗体11BD−2E11−2は、3週間の治療終了時に、緩衝液コントロールと比較して、腫瘍成長を25%抑制した(p=0.52)。これは有意差ではなかったが、研究を通して、緩衝液コントロールと比較して、腫瘍体積が減少する傾向が認められた。したがって、11BD−2E11−2は、確立された乳癌モデルで有効性を示した。
【実施例10】
【0103】
in vivoES−2+SEAP確立腫瘍実験
米国特許出願番号10/810,744号に開示され、且つ図13および14を参照して、6〜8週齢のメス胸腺欠損ヌードマウスに、ヒト胎盤分泌アルカリホスファターゼ(SEAP)を発現するように安定にトランスフェクトした1000万個のES−2+SEAPヒト卵巣癌細胞を腹腔内移植した。1000万個の卵巣癌細胞を、500μlの無血清α−MEMに再懸濁した。7日目に、3匹のマウスの腫瘍成長を確認した。7日目の腫瘍成長の確認後、8匹のマウスを2つの各治療群に無作為に分類した。11BD−2E11−2または緩衝液コントロールを、2.7mM KCl、1mM KHPO、137mM NaCl、および20mM NaHPOを含む希釈剤でのストック濃度からの希釈後に10mg/kg/投与にて250μlの体積で腹腔内投与した。次いで、抗体を、1日1回ずつを5回、その後に1日おきに1回ずつをさらに5回、合計で10回投与した。全身腫瘍組織量を、循環SEAPレベルの測定によって予想し、研究期間または各動物がCCAC終点に到達するまで剖検にて視覚的に評価した。研究中に動物の体重を記録した。研究終了時、CCACガイドラインに従って、全動物を安楽死させた。
【0104】
無作為分類時、循環血漿SEAPレベル(全身腫瘍組織量を示す)を分析した。11BD−2E11−2群および緩衝液コントロール群との間の平均SEAPレベルの有意差は認められなかった。しかし、群内で、有益な腫瘍取り込み率(take−rate)は認められなかった。図13に示すように、抗体11BD−2E11−2は、治療群のコホートの生存が改善される傾向が示された。図14に示すように、11BD−2E11−2処置を受けた1匹の動物は、SEAPの循環量がほぼ無視できるレベルに減少した。SEAPの低循環レベルは、移植から約60日後まで継続した。
【実施例11】
【0105】
in vivoA2058ヒト黒色腫予防腫瘍実験
図15を参照して、4〜8週齢のメスSCIDマウスに、75万個のA2058ヒト黒色腫癌細胞を含む100μlの生理食塩水を頸部に皮下注射することによって移植した。マウスを2つの治療群に5匹ずつ無作為に分類した。移植後、20mg/kgの11BD−2E11−2試験抗体または緩衝液コントロールを、2.7mM KCl、1mM KHPO、137mM NaCl、および20mM NaHPOを含む希釈剤でのストック濃度からの希釈後に300μlの体積で腹腔内投与した。次いで、抗体または緩衝液コントロールを、同一の様式で、1日1回ずつ7週間投与した。
【0106】
およそ7日毎にカリパスを使用して、10週間または各動物がCanadian Council for Animal Care(CCAC)終点に到達するまで腫瘍成長を測定した。研究中に動物の体重を記録した。研究終了時、CCACガイドラインに従って、全動物を安楽死させた。
【0107】
図15に示すように、11BD−2E11−2処置により、緩衝液コントロールでの処置と比較して腫瘍成長が減少した。55日目に(処置終了から5日後)、11BD−2E11−2処置群の平均腫瘍体積は、緩衝液コントロール処置群の58%であった(p=0.046、対応のないt検定)。したがって、11BD−2E11−2は、同一の癌におけるコントロールと比較して、ヒト癌の乳癌、卵巣癌、および黒色腫in vivoモデルで有効性を示し、全身腫瘍組織量が減少した。
【実施例12】
【0108】
in vivoA2058ヒト黒色腫確立腫瘍実験
図16を参照して、6〜8週齢のメスSCIDマウスに、50万個のA2058ヒト黒色腫癌細胞を含む100μlの生理食塩水を頸部に皮下注射することによって移植した。腫瘍成長を、カルパスを使用して毎週測定した。コホートの大部分の腫瘍体積が100mmに到達した場合、5匹のマウスを、2つの各治療群に無作為に分類した。11BD−2E11−2または緩衝液コントロールを、2.7mM KCl、1mM KHPO、137mM NaCl、および20mM NaHPOを含む希釈剤でのストック濃度からの希釈後に20mg/kg/投与にて300μlの体積で腹腔内投与した。次いで、抗体を、同一の様式で移植44日後まで1週間に3回ずつ全部で10回投与した。およそ7日毎にカリパスを使用して、研究期間または各動物がCCAC終点に到達するまで腫瘍成長を測定した。研究中に動物の体重を記録した。研究終了時、CCACガイドラインに従って、全動物を安楽死させた。
【0109】
無作為分類時、各群の平均腫瘍体積および標準偏差は類似していた。統計的に、群間で体重の増加は認められなかった。これは、真の無作為化が起こったことを示した。図13に示すように、抗体11BD−2E11−2は、治療終了時に、緩衝液コントロールと比較して、腫瘍成長を49%抑制した(p=0.1272、対応のないt検定)。これは有意差ではなかったが、研究を通して、緩衝液コントロールと比較して、腫瘍体積が減少する傾向が認められた。したがって、11BD−2E11−2は、確立された乳癌モデル、卵巣癌モデル、および黒色腫癌モデルで有効性を示した。全体的に、複数のヒト癌モデルで11BD−2E11−2によって利点(コントロール処置と比較した生存度の改善および/または全身腫瘍組織量の増加)が得られるこれらの結果により、哺乳動物(ヒトが含まれる)における癌治療についてのこの抗体の薬理学的利点および薬学的利点が示唆される。
【0110】
非常に多数の証拠により、11BD−2E11−2がMSCP上に存在するエピトープのライゲーションによって抗癌効果を媒介することが示される。本発明の目的のために、このエピトープを、ハイブリドーマ細胞株11BD−2E11−2によってコードされたモノクローナル抗体、その抗原結合フラグメント、またはその抗体抱合体に結合する能力によって特徴づけられる「MSCP抗原部分」と定義する。実施例3では、11BD−2E11−2抗体を使用して、MDA−MB−231細胞などの発現細胞から同族抗原を免疫沈殿させることができることが示されている。さらに、11BD−2E11−2抗体を、例示の技術(FACS、細胞ELISA、またはIHCであるが、これらに限定されない)を使用して、特異的に結合するMSCP抗原部分を発現する細胞および/または組織の検出で使用することができることを示し得る。
【0111】
したがって、FACS、細胞ELISA、またはIHCアッセイを使用して、免疫沈降11BD−2E11−2抗原がこのような細胞または組織への11BD−2E11−2の結合を阻害することができると示し得る。さらに、11BD−2E11−2抗体のように、他の抗体MSCP抗体を使用して、他のMSCP抗原形態を免疫沈降および単離することができ、抗原を使用して、同一のアッセイ型によって、抗原を発現する細胞または組織への抗体の結合を阻害することもできる。
【0112】
本明細書中に記載の全ての特許および刊行物は、本発明が関連する分野の当業者のレベルを示す。全ての特許および刊行物は、各刊行物が具体的且つ個別に参考として援用されるものと同一の範囲で本明細書中に参考として援用される。
【0113】
本発明の一定の形態を例示しているが、本明細書中に記載され、且つ示されている部分の特定の形態または配置に制限されないと理解すべきである。本発明の範囲を逸脱することなく種々の変更形態を実施することができ、本発明が、明細書中の表示および記載に制限されると見なされることを意図しないことが当業者に明らかである。当業者は、本発明を、目的を実施し、記載の目的および利点、ならびにその固有物(inherent)を得るために十分に適合されることを容易に認識する。本明細書中に記載の任意のオリゴヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、生体関連化合物、方法、手順、および技術は、現在、好ましい実施形態の代表であり、例示であることを意図し、本発明の範囲を制限することを意図しない。当業者は、本明細書中の用途および他の用途を変更し、この変更は、本発明の精神の範囲内に含まれ、且つ添付の特許請求の範囲の範囲によって定義される。本発明を特定の好ましい実施形態と共に記載しているが、特許請求の範囲に記載の本発明がこのような特定の実施形態に過度に制限すべきではないと理解すべきである。実際、当業者に明らかな本発明を実施するために記載した様式の種々の修正形態は、以下の特許請求の範囲の範囲内であると見なされる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】11BD−2E11−2で探索したMDA−MB−231(レーン1)またはOVCAR−3(レーン2)膜のウェスタンブロットを示す図である。還元条件下で膜タンパク質を分離した。右側に分子量マーカーを示す。
【図2】MDA−MB−231膜への11BD−2E11−2の結合に対する脱グリコシル化の効果を示す図である。脱グリコシル化緩衝液のみ(レーン1)、PNGアーゼF、エンド−o−グリコシダーゼ、シアリダーゼ、ガラクトシダーゼ、およびグリコサミノダーゼの組み合わせ(レーン2)、PNGアーゼF、エンド−o−グリコシダーゼ、およびシアリダーゼの組み合わせ(レーン3)、シアリダーゼのみ(レーン4)、エンド−o−グリコシダーゼのみ(レーン5)、ならびにPNGアーゼのみ(レーン6)でインキュベートしたMDA−MB−231膜への11BD−2E11−2結合。
【図3】11BD−2E11−2で免疫沈降したMDA−MB−231膜タンパク質のSDS−PAGE(パネルA)およびウェスタンブロット(パネルB)を示す図である。レーン1は分子量標準を示し、レーン2はMDA−MB−231膜タンパク質を示し、レーン3は11BD−2E11−2免疫沈降物質を示し、レーン4はアイソタイプコントロール免疫沈降物質を示す。
【図4】11BD−2E11−2(パネルA)、IgG1アイソタイプコントロール(クローン107.3、パネルB)、抗ラットNG2(ポリクローナル、パネルC)、正常ウサギIgG(パネルD)、抗MCSP(クローン9.2.27、パネルE)、およびIgG2aアイソタイプコントロール(クローンG155−228、パネルF)で探索したタンパク質のウェスタンブロットを示す図である。レーン1:11BD−2E11−2免疫沈降物、レーン2:IgG1アイソタイプコントロール(クローン107.3)免疫沈降物、レーン3:抗MCSP(クローン9.2.27)免疫沈降物、レーン4:IgG2aアイソタイプコントロール(クローンG155−228)免疫沈降物、レーン5:MDA−MB−231膜、およびレーン6:サンプル緩衝液のみ(ネガティブコントロール)。
【図5】MCSPペプチドアレイへの11BD−2E11−2の結合強度(Noehringer光単位)を示す図である。
【図6】いくつかの癌細胞株および非癌細胞に指向する11BD−2E11−2、アイソタイプコントロール、または抗EGFRの代表的FACSヒストグラムを示す図である。
【図7】凍結した正常なヒト組織アレイ由来の心臓の組織切片に対して11BD−2E11−2(A)およびアイソタイプコントロール抗体(B)を使用して得た結合パターンを示す代表的な顕微鏡写真を示す図である。心筋線維に対する11BD−2E11−2染色は認められなかった。倍率は200倍である。
【図8】凍結した正常なヒト組織アレイ由来の骨格筋の組織切片に対して11BD−2E11−2(A)、抗アクチン(B)、およびアイソタイプコントロール抗体(C)を使用して得た結合パターンを示す代表的な顕微鏡写真を示す図である。11BD−2E11−2は、骨格筋を染色しなかったが、血管の平滑筋は染色する(矢印)。倍率は200倍である。
【図9】乳癌腫瘍(浸潤性腺管癌)への11BD−2E11−2(A)およびアイソタイプコントロール抗体(B)の結合の代表的な顕微鏡写真を示す図である。パネルA中の黒色の矢印は、腫瘍細胞を示す。倍率は200倍である。
【図10】凍結した正常なヒト組織アレイ由来の悪性黒色腫の組織切片に対して11BD−2E11−2(A)、ポジティブコントロール抗CD63(NKI−C3)(B)、およびネガティブアイソタイプコントロール抗体(C)を用いて得られた結合パターンを示す代表的な顕微鏡写真を示す図である。倍率は200倍である。
【図11】凍結した黒色腫ヒト組織アレイ由来の悪性黒色腫(A)および正常な皮膚(B)の組織切片に対して11BD−2E11−2を用いて得られた結合パターンを示す代表的な顕微鏡写真を示す図である。11BD−2E11−2は悪性黒色腫を強く染色するが、正常な皮膚は染色しない。倍率は200倍である。
【図12】予防MDA−MB−468乳癌モデルにおける腫瘍成長に対する11BD−2E11−2または緩衝液コントロールの効果を示す図である。破線は、抗体が投与された期間を示す。データポイントは、平均+/−SEMを示す。
【図13】確立されたES−2異種移植片研究における11BD−2E11−2または緩衝液コントロール抗体での処置後の腫瘍保有マウスの生存を示す図である。
【図14】確立されたES−2異種移植片研究における11BD−2E11−2または緩衝液コントロールでの処置前、処置中、および処置後の腫瘍保有マウスのSEAPレベルを示す図である。
【図15】予防A2058黒色腫モデルにおける腫瘍成長に対する11BD−2E11−2または緩衝液コントロールの効果を示す図である。破線は、抗体が投与された期間を示す。データポイントは、平均+/−SEMを示す。
【図16】確立されたA2058黒色腫モデルにおける腫瘍成長に対する11BD−2E11−2または緩衝液コントロールの効果を示す図である。破線は、抗体が投与された期間を示す。データポイントは、平均+/−SEMを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌疾患を罹患した患者の治療方法であって、
前記患者に癌疾患の治療に有用な抗癌抗体の産生方法にしたがって産生した抗癌抗体またはそのフラグメントを投与する工程と、前記抗体またはそのフラグメントが、癌組織の細胞に対して細胞傷害性を示し、本質的に、非癌細胞に対して良性であることを特徴とすることと、
ここで、前記抗体またはそのフラグメントを薬学的に許容可能なアジュバントを含む混合薬中に含め、前記癌疾患治療の媒介に有効な量を投与することと、
前記抗体が、前記癌組織によって発現される抗原部分に結合する単離モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントであり、前記抗原部分がATCCにPTA−5643として寄託されているクローンによってコードされるモノクローナル抗体の識別可能な特徴(identifying characteristics)を有する抗体に結合することを特徴とすることを含む、方法。
【請求項2】
前記単離モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントが、ヒト化またはキメラ化されている、請求項1に記載の癌疾患を罹患した患者の治療方法。
【請求項3】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントを、毒素、酵素、放射性化合物、および造血細胞からなる群から選択されるメンバーと抱合し、それにより、抗体抱合体を形成する工程と、
前記抗体抱合体またはその抱合フラグメントを前記患者に投与する工程と、
ここで、前記抗体抱合体または抱合フラグメントを薬学的に許容可能なアジュバントを含む混合薬中に含め、前記癌疾患治療の媒介に有効な量を投与することを含む請求項1に記載の癌疾患を罹患した患者の治療方法。
【請求項4】
前記抗体またはそのフラグメントが、ヒト化またはキメラ化されている請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記抗体またはそのフラグメントの細胞傷害性が、抗体依存性細胞毒性によって媒介される請求項1に記載の癌疾患を罹患した患者の治療方法。
【請求項6】
前記抗体またはそのフラグメントの細胞傷害性が、補体依存性細胞毒性によって媒介される請求項1に記載の癌疾患を罹患した患者の治療方法。
【請求項7】
前記抗体またはそのフラグメントの細胞傷害性が、細胞化学結合の加水分解の触媒によって媒介される請求項1に記載の癌疾患を罹患した患者の治療方法。
【請求項8】
前記抗体またはそのフラグメントの細胞傷害性が、腫瘍細胞に対して惹起する推定癌抗原に対する免疫応答の生成によって媒介される請求項1に記載の癌疾患を罹患した患者の治療方法。
【請求項9】
前記抗体またはそのフラグメントの細胞傷害性が、その機能を妨害するための細胞膜タンパク質のターゲティングによって媒介される請求項1に記載の癌疾患を罹患した患者の治療方法。
【請求項10】
前記抗体またはそのフラグメントの細胞傷害性が、細胞死滅の開始シグナルを生成するのに有効な細胞タンパク質の高次構造の変化によって媒介される請求項1に記載の癌疾患を罹患した患者の治療方法。
【請求項11】
前記生成方法が、特定の個体から得た癌細胞および非癌細胞を含む組織サンプルを使用する請求項1に記載の癌疾患を罹患した患者の治療方法。
【請求項12】
癌疾患を罹患した患者の治療方法であって、
前記患者に癌疾患の治療に有用な抗癌抗体の産生方法にしたがって産生した抗体またはその抗原結合フラグメントを投与する工程と、前記抗体が、癌組織の細胞に対して細胞傷害性を示し、本質的に、非癌細胞に対して良性であることと、
ここで、前記抗体が、ATCCにPTA−5643として寄託されているクローンによってコードされる単離モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントであり、前記抗体を薬学的に許容可能なアジュバントを含む混合薬中に含め、前記癌疾患治療の媒介に有効な量を投与することを含む方法。
【請求項13】
前記抗体またはそのフラグメントが、ヒト化またはキメラ化されている請求項12に記載の癌疾患を罹患した患者の治療方法。
【請求項14】
前記抗体またはそのフラグメントを、毒素、酵素、放射性化合物、および造血細胞からなる群から選択されるメンバーと抱合し、それにより、抗体抱合体を形成する工程と、
前記抗体抱合体またはそのフラグメントを前記患者に投与する工程と、
ここで、前記抱合抗体を薬学的に許容可能なアジュバントを含む混合薬中に含め、前記癌疾患治療の媒介に有効な量を投与することを含む請求項12に記載の癌疾患を罹患した患者の治療方法。
【請求項15】
前記抗体またはそのフラグメントが、ヒト化またはキメラ化されている請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記抗体またはそのフラグメントの細胞傷害性が、抗体依存性細胞毒性によって媒介される請求項12に記載の癌疾患を罹患した患者の治療方法。
【請求項17】
前記抗体またはそのフラグメントの細胞傷害性が、補体依存性細胞毒性によって媒介される請求項12に記載の癌疾患を罹患した患者の治療方法。
【請求項18】
前記抗体またはそのフラグメントの細胞傷害性が、細胞化学結合の加水分解の触媒によって媒介される請求項12に記載の癌疾患を罹患した患者の治療方法。
【請求項19】
前記抗体またはそのフラグメントの細胞傷害性が、腫瘍細胞に対して惹起する推定癌抗原に対する免疫応答の生成によって媒介される請求項12に記載の癌疾患を罹患した患者の治療方法。
【請求項20】
前記抗体またはそのフラグメントの細胞傷害性が、その機能を妨害するための細胞膜タンパク質のターゲティングによって媒介される請求項12に記載の癌疾患を罹患した患者の治療方法。
【請求項21】
前記抗体またはそのフラグメントの細胞傷害性が、細胞死滅の開始シグナルを生成するのに有効な細胞タンパク質の高次構造の変化によって媒介される請求項12に記載の癌疾患を罹患した患者の治療方法。
【請求項22】
前記生成方法が、特定の個体から得た癌細胞および非癌細胞を含む組織サンプルを使用する請求項12に記載の癌疾患を罹患した患者の治療方法。
【請求項23】
細胞表面上のMCSP抗原部分を発現するヒト腫瘍細胞の細胞傷害性を媒介するプロセスであって、
前記腫瘍細胞を単離モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントと接触させる工程と、前記抗体またはその抗原結合フラグメントが発現MCSP抗原部分に結合する単離モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントであることと、前記抗原部分がATCCにPTA−5643として寄託されているクローンによってコードされるモノクローナル抗体の識別可能な特徴を有する抗体に結合することを特徴とすることと
それにより、前記結合の結果として細胞傷害性が起こることを含むプロセス。
【請求項24】
前記単離抗体またはその抗原結合フラグメントが、ヒト化またはキメラ化されている請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
前記単離抗体またはその抗原結合フラグメントを、細胞傷害性部分、酵素、放射性化合物、および造血細胞からなる群から選択されるメンバーと抱合し、それにより、抗体抱合体が形成される請求項23に記載のプロセス。
【請求項26】
前記単離抗体またはその抗原結合フラグメントが、ヒト化またはキメラ化されている請求項25に記載のプロセス。
【請求項27】
前記単離抗体またはその抗原結合フラグメントがマウスである請求項23に記載のプロセス。
【請求項28】
前記ヒト腫瘍組織サンプルを、乳房、卵巣、または黒色腫組織からなる群から選択される組織を起源とする腫瘍から得る請求項23に記載のプロセス。
【請求項29】
ATCCにPTA−5643として寄託されているクローンによってコードされる単離モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントに特異的に結合するMCSP抗原部分を発現する細胞の存在を決定するための結合アッセイであって、
細胞サンプルを準備する工程と、
単離モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントを準備する工程と、前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、前記発現MCSP抗原部分に結合する単離モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントであることと、前記抗原部分がATCCにPTA−5643として寄託されているクローンによってコードされるモノクローナル抗体の識別可能な特徴を有する抗体に結合することを特徴とすることと、
前記単離モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントを前記細胞サンプルと接触させる工程と、
前記単離モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントの前記細胞サンプルへの結合を決定する工程と、
それにより、前記単離モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントに特異的に結合するMCSP抗原部分を発現する細胞の存在を決定することを含む、結合アッセイ。
【請求項30】
前記細胞サンプルを、乳房、卵巣、または黒色腫組織からなる群から選択される組織を起源とする腫瘍から得る請求項29に記載の結合アッセイ。
【請求項31】
単離モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントに特異的に結合するMCSP抗原部分を発現するサンプル中の細胞を単離またはスクリーニングするプロセスであって、前記抗原部分がATCCにPTA−5643として寄託されているクローンによってコードされるモノクローナル抗体の識別可能な特徴を有する抗体に結合することを特徴とすることと、
細胞サンプルを準備する工程と、
単離モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントを準備する工程と、前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、前記発現MCSP抗原部分に結合する単離モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントであることと、前記抗原部分がATCCにPTA−5643として寄託されているクローンによってコードされるモノクローナル抗体の識別可能な特徴を有する抗体に結合することを特徴とすることと、
前記単離モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントを前記細胞サンプルと接触させる工程と、
前記単離モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントの前記細胞サンプルへの結合を決定する工程と、
それにより、ATCCにPTA−5643として寄託されているクローンによってコードされる単離モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントに特異的に結合するMCSP抗原部分を発現する前記細胞が前記結合によって単離され、前記細胞サンプル中のその存在が確認されることを含むプロセス。
【請求項32】
前記細胞サンプルを、乳房、卵巣、または黒色腫組織からなる群から選択される組織を起源とする腫瘍から得る請求項31に記載のプロセス。
【請求項33】
哺乳動物におけるヒト腫瘍の治療によって延命し、そして/または疾患の進行を遅延させる方法であって、
前記腫瘍が、ATCCにアクセッション番号PTA−5643として寄託されているクローンによってコードされるモノクローナル抗体の識別可能な特徴を有するモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントに特異的に結合する抗原を発現することと、前記哺乳動物に、前記哺乳動物の全身腫瘍組織量を減少さるのに有効な量のモノクローナル抗体を投与する工程と、それにより、疾患の進行が遅延し、そして/または延命されることを含む方法。
【請求項34】
前記抗体を細胞傷害性部分と抱合する請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記細胞傷害性部分が、放射性同位体である請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記抗体が補体を活性化する請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記抗体が、抗体依存性細胞毒性を媒介する請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記抗体が、マウス抗体である請求項33に記載の方法。
【請求項39】
前記抗体が、ヒト化抗体である請求項33に記載の方法。
【請求項40】
前記抗体がキメラ抗体である請求項33に記載の方法。
【請求項41】
発現MCSP抗原部分に特異的に結合する、ATCCにPTA−5643として寄託されているクローンによってコードされる単離モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントの識別可能な特徴を有するモノクローナル抗体に特異的に結合する発現MCSP抗原部分を含むMCSPのエピトープ。
【請求項42】
前記MCSPのエピトープに特異的に結合する、ATCCにPTA−5643として寄託されているクローンによってコードされる単離モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントの識別可能な特徴を有するモノクローナル抗体に結合する請求項41に記載のMCSPエピトープを含む抗体−抗原複合体。
【請求項43】
前記抗体がキメラ抗体である請求項42に記載の抗体−抗原複合体。
【請求項44】
前記抗体がヒト化抗体である請求項42に記載の抗体−抗原複合体。
【請求項45】
前記単離抗体またはその抗原結合フラグメントを、細胞傷害性部分、酵素、放射性化合物、および造血細胞からなる群から選択されるメンバーと抱合し、それにより、抗体抱合体が形成される請求項42に記載の抗体−抗原複合体。
【請求項46】
ペプチド配列LEFTLTTQSRQAPLAFQA(配列番号1)が特異的に結合する請求項41に記載のエピトープ。
【請求項47】
ペプチド配列CGGPAQDLTFRVSDGLQA(配列番号2)が特異的に結合する請求項41に記載のエピトープ。
【請求項48】
ペプチド配列LEFTLTTQSRQAPLAFQA(配列番号1)およびCGGPAQDLTFRVSDGLQA(配列番号2)が特異的に結合する請求項41に記載のエピトープ。
【請求項49】
TLTMLARLASAASFFGEN(配列番号3)、ACEGLTFQVLGTSSGLPV(配列番号4)、VLRGAPGTEVRSFTQAQL(配列番号5)、KTGKHDVQVLTAKPRNGL(配列番号6)、LTAKPRNGLAGDTETFRK(配列番号7)、およびPGGQPDPELLQFCRTPNP(配列番号8)からなる群から選択される少なくとも1つのペプチド配列にさらに結合する請求項48に記載のエピトープ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2008−514550(P2008−514550A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−532733(P2007−532733)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【国際出願番号】PCT/CA2005/000450
【国際公開番号】WO2006/032127
【国際公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(504236592)アリアス リサーチ、インコーポレイテッド (28)
【Fターム(参考)】