説明

N,N−ビス(2−ヒドロキシアルキル)アミノ酸の製造方法およびアミノ酸組成物およびその用途

【課題】従来のキレート剤と比較して十分な鉄イオンキレート能を有するアミノ酸(塩)を高収率で製造することができる環境にやさしい製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の製造方法は、N,N−ビス(2−ヒドロキシアルキル)アミンと、不飽和モノカルボン酸または不飽和モノカルボン酸塩を反応させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N,N−ビス(2−ヒドロキシアルキル)アミノ酸(塩)の製造方法に関する。より具体的には、副生成物の生成を押さえ、環境にやさしいN,N−ビス(2−ヒドロキシアルキル)アミノ酸(塩)の製造方法に関する。
【0002】
本発明はまた、N,N−ビス(2−ヒドロキシアルキル)アミノ酸(塩)、不飽和モノカルボン酸(塩)を含有するアミノ酸組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
キレート剤は、2個以上の配位結合を形成することにより金属イオンを封鎖することができることから、金属イオンが存在することによる弊害等を除去するために、洗剤、繊維、紙パルプ、金属表面処理、写真等の様々な分野で用いられており、現在では化学工業や日常生活に欠くことができないものである。例えば、洗剤等の分野では、用いられる水の調製において硬水中のカルシウム、マグネシウム等の金属イオンを除去するために用いられ、繊維、紙パルプ等の分野では、漂白剤である過酸化水素等の金属イオンによる分解を抑制するために用いられている。
【0004】
このようなキレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等が従来から用いられているが、近年では、N−ビスヒドロキシアルキルアミノ酸類、特にN−ビスヒドロキシエチルアスパラギン酸類が様々な用途においてキレート性能を発揮することから注目されている(例えば特許文献1)。
しかし、例えば洗剤分野において、洗剤のコンパクト化の要求が近年強くなってきている。これに伴ない、キレート剤にも複数の機能が要求されてきている。例えば、洗濯水中に鉄イオンが繊維に吸着することにより、繊維の黄ばみが発生するという問題があるが、キレート剤にはカルシウムイオン等に加え、鉄イオン等の重金属イオンをも除去する機能(鉄イオンキレート能)が要求される。しかし、従来のキレート剤の鉄イオンキレート能は、必ずしも満足できるものではなく、より一層の鉄イオンキレート能を有するキレート剤が要求されている。
【0005】
一方、N,N−ビス(2−ヒドロキシアルキル)アミノ酸(塩)の製造方法に関して、特許文献2には、β−プロピオールアセトンとジエタノールアミンとの反応により、N,N−ジ−2−ヒドロキシエチル−β−アミノプロピオン酸を製造する方法が開示されている。しかしこの反応は、N,N−ジ−2−ヒドロキシエチル−2−ヒドロキシエチルアミドが複製する為、N,N−ジ−2−ヒドロキシエチル−β−アミノプロピオン酸の収率は56%と低いという問題がある。
【0006】
さらに、非特許文献1には、以下の反応式(1)に記載した方法によりN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ酸(塩)を製造する方法が知られている。
【0007】
【化1】

【0008】

式(1)中、Xは塩素原子または臭素原子である。
しかし、上記の方法は、ハロゲン化物を使用する為、反応溶媒として有機溶剤を使用しなければならない。その為、有機溶剤の残存により用途によっては使用できないことがある。さらに、製造により有機溶剤の廃液が発生する為、環境にやさしい製造方法とは言い難い。
【0009】
さらに、非特許文献1には、以下の反応式(2)に記載した方法によりN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ酸(塩)を製造する方法が知られている。
【0010】
【化2】

【0011】

しかし、上記の方法によれば、アミンの活性水素に対し、エチレンオキサイドが不均等に付加することがある為(すなわち2モル以上の付加することがある)、得られる生成物の水酸基量が少なくなることに起因して十分な鉄イオンキレート能が得られなかったり、さらに副生成物としてポリエチレングリコールが生成しやすいことに起因して取り扱いが困難になることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003−252839号公報
【特許文献2】米国特許第2526557号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】K.JANKOWSKI and C.BERSE,Preparation of N−(2−Hydroxyalkyl)−2−Morpholones and N,N−Bis(2−Hydroxyalkyl)Amino Acids,BULLETIN DE L’ACADEMIE POLONAISE DESSCIENCES.SERIE DES SCIENCES CHIMIQUES,VARSOVIE,1970,Vol.18,No.3,p.183−192
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、従来のキレート剤と比較して十分な鉄イオンキレート能を有するアミノ酸(塩)組成物を提供することにある。本発明の別の目的は、従来のキレート剤と比較して十分な鉄イオンキレート能を有するアミノ酸(塩)を高収率で製造することができる環境にやさしい製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のアミノ酸(塩)の製造方法は、N,N−ビス(2−ヒドロキシアルキル)アミンと、不飽和モノカルボン酸または不飽和モノカルボン酸塩を反応させることを特徴とする。
【0016】
本発明の別の局面によれば、アミノ酸(塩)組成物が提供される。本発明のアミノ酸(塩)組成物は、(1)不飽和モノカルボン酸および/または不飽和モノカルボン酸塩、および、(2)N,N−ビス(2−ヒドロキシアルキル)アミノ酸および/またはN,N−ビス(2−ヒドロキシアルキル)アミノ酸、を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、収率が高く、環境にやさしい特定構造を有するアミノ酸(塩)の製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、従来よりも鉄イオンキレート能に優れたアミノ酸(塩)組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、実施例1で製造したN,N−ジ−2−ヒドロキシエチル−β−アミノプロピオン酸ナトリウムを含む本発明のアミノ酸(塩)組成物のHNMRチャートである。HNMRは重水溶媒で測定した。
【図2】図2は、本発明のアミノ酸(塩)組成物から製造された酸型のアミノ酸塩である、N,N−ジ−2−ヒドロキシエチル−β−アミノプロピオン酸塩酸塩のHNMRチャートである。HNMRは重ジメチルスルホキシド溶媒で測定した。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔アミノ酸(塩)組成物〕
本発明のアミノ酸(塩)組成物は、N,N−ビス(2−ヒドロキシアルキル)アミノ酸(塩)(以下アミノ酸Aと省略する)を含むことを特徴としている。本発明において、「アミノ酸(塩)」とは、アミノ酸、アミノ酸の塩の総称である。
【0020】
本発明で「塩」とは、カルボキシル基が、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属の塩;アンモニウム塩;有機アミン塩;等である形態、アミノ基が塩酸塩、硫酸塩等の無機酸の塩;酢酸塩等の有機酸塩;等である形態が挙げられる。カルボキシル基が塩である場合、ナトリウム塩、カリウム塩であれば、アミノ酸Aの鉄イオンキレート能がより向上するから好ましい。一方、アミノ基が塩である場合、経済面、性能面のバランスから、塩酸塩が好ましい。
【0021】
上記アミノ酸Aは、N,N−ビス(2−ヒドロキシアルキル)アミンと、不飽和モノカルボン酸または不飽和モノカルボン酸塩を反応させることを特徴とする。
【0022】
<N,N−ビス(2−ヒドロキシアルキル)アミン>
上記N,N−ビス(2−ヒドロキシアルキル)アミンとしては、下記一般式(3)で表される化合物が好ましい。
【0023】
【化3】

【0024】

上記一般式(3)において、R、Rは炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アリール基である。
上記一般式(3)において、R、Rはアルキル基、アリール基であれば良く、他の官能基で置換されたアルキル基やアリール基であっても良く、アルキル基は分岐状、環状構造を含んでいても良い。当該他の官能基としては、不飽和モノカルボン酸(塩)との反応に過度に悪影響を与えなければ限定はされないが、例えば、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、アシル基、エーテル基、アミド基、エステル基等である。
上記一般式(3)において、R、Rは、得られるアミノ酸Aの水酸基価が高くなることに起因して鉄イオンの沈着防止能が向上する傾向ことから、エチレン基、イソプロピレン基であることが好ましく、エチレン基であることが特に好ましい。
【0025】
上記N,N−ビス(2−ヒドロキシアルキル)アミンは、アンモニアとアルキレンオキサイドを反応させることにより製造したものであることが好ましい。得られるアミノ酸Aの水酸基価が高くなることに起因して鉄イオンのキレート力が向上する傾向ことから、アンモニアとエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドを反応させたものが好ましく、アンモニアとエチレンオキサイドを反応させたものが特に好ましい。
【0026】
上記N,N−ビス(2−ヒドロキシアルキル)アミンは、具体的には、得られるアミノ酸Aの水酸基価が高くなることに起因して鉄イオンのキレート力が向上する傾向ことから、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミンが特に好ましい。
【0027】
<不飽和モノカルボン酸(塩)>
本発明において、不飽和モノカルボン酸(塩)とは、不飽和モノカルボン酸、不飽和モノカルボン酸塩の総称である。不飽和モノカルボン酸塩としては、不飽和モノカルボン酸のカルボキシル基が、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属の塩;アンモニウム塩;有機アミン塩;等の構造である場合であり、得られるアミノ酸Aの鉄イオンキレート能がより向上することからナトリウム塩、カリウム塩であることが好ましい。
【0028】
本発明において、不飽和モノカルボン酸(塩)は、不飽和の炭素−炭素二重結合と、カルボキシル基またはカルボキシル基の塩を1分子に1つ有することを特徴としている。
本発明における不飽和モノカルボン酸(塩)としては、下記一般式(4)で表される化合物が好ましい。
【0029】
【化4】

【0030】

上記一般式(4)において、Rは水素原子、メチル基、水酸基、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を表し、Rは単結合または炭素数1〜20のアルキレン基であり、Mは水素原子、リチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子、アンモニウム塩、4級アミン塩を表す。
上記一般式(4)において、Rが炭素数1〜20のアルキレン基の場合、炭素数1〜20である限り、無置換のアルキレン基であっても、他の官能基で置換されたアルキレン基であっても良い。当該他の官能基としては、N,N−ビス(2−ヒドロキシアルキル)アミンとの反応に過度に悪影響を与えなければ限定はされないが、例えば、水酸基、スルホン酸基、アシル基、エーテル基、アミド基、エステル基等である。
【0031】
なお、本発明において、不飽和モノカルボン酸(塩)の代わりに、対応するエステル化合物、アミド化合物を使用して、N,N−ビス(2−ヒドロキシアルキル)アミンと反応後にカルボキシル基を加水分解しても良い。そのような意味において、本発明において、不飽和モノカルボン酸(塩)は対応するエステル、アミドでも良い。但し反応効率の面で不飽和モノカルボン酸(塩)であることが好ましい。
上記一般式(4)において、Rが単結合の場合とは、具体的には上記一般式(4)が下記一般式(5)で表されることである。
【0032】
【化5】

【0033】

上記一般式(5)において、R、Mは上記一般式(4)におけるR、Mとそれぞれ同一である。
上記一般式(4)において、アミノ酸Aの収率が向上することから、Rは水素原子であることが好ましく、得られるアミノ酸Aの水酸基価が高くなることに起因して鉄イオンの沈着防止能が向上する傾向ことから、Rは単結合であることが好ましく、同様な理由からMは、ナトリウム原子、カリウム原子であることが好ましい。
【0034】
本発明において、不飽和モノカルボン酸(塩)は、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、α−ヒドロキシアクリル酸等が挙げられ、アミノ酸Aの収率が向上することから、アクリル酸、クロトン酸が好ましい。
【0035】
上記アミノ酸Aとしては、好ましくは下記一般式で表される化合物が挙げられる。
【0036】
【化6】

【0037】

上記一般式(6)において、Rは水素原子、メチル基、水酸基、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を表し、Rは単結合または炭素数1〜20のアルキレン基であり、Mは水素原子、リチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子、アンモニウム塩、4級アミン塩を表し、R、Rは炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アリール基を表す。
上記一般式(6)において、R〜Rの定義および好ましい形態は、特に断らない限り上記一般式(4)におけるR、Rとそれぞれ同一であり、R、Rは特に断らない限り上記一般式(3)におけるR、Rと同一である。
【0038】
<アミノ酸(塩)組成物の組成>
アミノ酸(塩)組成物は、アミノ酸Aを必須成分として含み、通常は不飽和モノカルボン酸(塩)を含む。アミノ酸(塩)組成物の組成は、任意成分として、水、メタノールなどの溶媒、N,N−ビス(2−ヒドロキシアルキル)アミンを含み得る。
【0039】
アミノ酸(塩)組成物に含まれるアミノ酸Aは、好ましくはアミノ酸(塩)組成物の固形分の質量100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、99質量%以下である。アミノ酸(塩)組成物に含まれるアミノ酸Aが99質量%以下であれば、固形にした場合の溶解性等の取り扱いが容易になる。
【0040】
アミノ酸(塩)組成物に含まれる不飽和モノカルボン酸(塩)は、好ましくはアミノ酸(塩)組成物の固形分の質量100質量%に対して、0質量%以上、5質量%以下である。
アミノ酸(塩)組成物に含まれる不飽和モノカルボン酸(塩)がアミノ酸(塩)組成物の固形分の質量100質量部に対して、5質量%を超えれば、ゲル化が生じる等の経時的な安定性が損なわれる虞がある。より好ましくは2質量%以下である。一方、下限に関しては、製造工程が簡略化できる面から0.01質量%以上であることがより好ましい。
【0041】
アミノ酸(塩)組成物が水を含有する場合の好ましい含有量としては、アミノ酸(塩)組成物が固形の場合、0.5質量%以上、10質量%以下である。水の含有量が上記範囲に入れば、取り扱いが容易になるから好ましい。
また、アミノ酸(塩)組成物が液状の場合、アミノ酸(塩)組成物の水の含有量は好ましくはアミノ酸(塩)組成物100質量%に対して、30質量%以上、95質量以下である。水の含有量が95質量%を上回れば、運搬時や保存時の効率が著しく低下する虞がある。一方、水の含有量が30を下回れば、粘性が増加して液体としての取り扱いが困難になったり、沈殿が生成するなど保存安定性が悪化する。より好ましくは40質量%以上であり、75質量%以下である。
【0042】
〔製造方法〕
本発明のN,N−ビス(2−ヒドロキシアルキル)アミノ酸またはその塩の製造方法は、N,N−ビス(2−ヒドロキシアルキル)アミンと、不飽和モノカルボン酸または不飽和モノカルボン酸塩を反応させることを特徴とする。
【0043】
N,N−ビス(2−ヒドロキシアルキル)アミンおよびその好ましい形態に関しては、上記<N,N−ビス(2−ヒドロキシアルキル)アミン>において記載した通りである。また、不飽和モノカルボン酸または不飽和モノカルボン酸塩、およびその好ましい形態に関しては、上記<不飽和モノカルボン酸(塩)>において記載した通りである。
【0044】
本発明の製造方法において反応に使用するN,N−ビス(2−ヒドロキシアルキル)アミンと、不飽和モノカルボン酸(塩)の比率は、モル比で45:55〜55:45にすることが好ましく、より好ましくは47:53〜53:47であり、更に好ましくは49:51〜51:49である。上記範囲を超えれば、アミノ酸Aの収率が低下する傾向にある。
【0045】
<反応溶媒>
本発明の製造方法に使用する溶媒は、N,N−ビス(2−ヒドロキシアルキル)アミンおよび不飽和モノカルボン酸または不飽和モノカルボン酸塩を溶解できるものが好ましい。反応収率が向上することから水系溶媒であることが好ましく、水であることが特に好ましい。また、用途によっては、アミノ酸(塩)組成物への有機溶剤の混入は厳しく制限されるが、水であれば、溶剤除去の工程が不要なため生産効率が高くなるばかりか、溶剤の残存量を低減する段階の熱履歴によるアミノ酸(塩)組成物の着色が抑制される為、好ましい。また、水を使用すれば、有機溶剤を使用する場合と比較して廃液等が著しく低減できる為、環境面において特に好ましい。
【0046】
<反応時の原料の中和度>
本発明の製造方法において、反応収率が向上することから、不飽和モノカルボン酸は反応時に中和して使用することが好ましい。「反応時に中和して」とは、予め中和してから反応器に添加しても良く、不飽和モノカルボン酸と中和剤を別々に反応器に添加して反応器中で中和反応とN,N−ビス(2−ヒドロキシアルキル)アミンとの反応を同時に行なっても良いことを表す。収率をより向上させることができる点において、不飽和モノカルボン酸は、反応前に予め塩基性物質で中和することが好ましい。反応前に予め中和する不飽和モノカルボン酸は、不飽和モノカルボン酸の全使用量の50モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることが更に好ましく、100モル%(全量)であることが特に好ましい。該不飽和モノカルボン酸塩は、予め反応器に仕込んでも、反応開始以後に徐々に反応器に添加しても良い。
【0047】
上記中和剤としては、塩基性の化合物であれば良いが、反応収率が向上することから、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等が好ましい。
該中和剤(N,N−ビス(2−ヒドロキシアルキル)アミンおよびその反応結果物は除く、以下同じ)と不飽和モノカルボン酸の使用する割合はモル比で不飽和モノカルボン酸100モルに対し、中和剤が50モル以上、120モル以下が好ましく、80モル以上、115モル以下が好ましく、90モル以上、110モル以下がより好ましく、95モル以上、105モル以下が更に好ましい。中和剤が不飽和モノカルボン酸100モルに対し、50モル未満であれば、N,N−ビス(2−ヒドロキシアルキル)アミンのアミノ基と不飽和モノカルボン酸のカルボキシル基の相互作用により反応収率が低下する傾向にある。一方、中和剤が不飽和モノカルボン酸100モルに対し、120モルを超えると最終生成物のアルカリ含有量が高くなり安全上問題となる虞がある。
【0048】
<反応原料等の添加方法>
本発明の製造方法において、上記中和剤、N,N−ビス(2−ヒドロキシアルキル)アミン、不飽和モノカルボン酸は、それぞれ予め反応器に仕込んでも、反応開始以後に徐々に反応器に添加しても構わない。反応時の原料濃度を増加させ、反応効率を向上できることから、N,N−ビス(2−ヒドロキシアルキル)アミンまたは不飽和モノカルボン酸の少なくともいずれか一方を予め反応器に仕込むことが好ましい。
上記N,N−ビス(2−ヒドロキシアルキル)アミンを反応開始前に反応器に仕込む場合において、N,N−ビス(2−ヒドロキシアルキル)アミンの全使用量の50質量%以上を反応開始前に反応器に仕込むことが好ましく、80質量%以上がより好ましく、全量が最も好ましい。
不飽和モノカルボン酸、不飽和モノカルボン酸塩を反応開始以後に徐々に反応器に添加する場合は、全使用量の80質量%以上を反応開始以後に徐々に反応器に添加することが好ましく、90質量%以上がより好ましく、全量が最も好ましい。
また、不飽和モノカルボン酸、不飽和モノカルボン酸塩は水などの溶媒と混合して滴下することが副反応の防止上好ましい。
なお、本発明において反応開始時とはN,N−ビス(2−ヒドロキシアルキル)アミンの少なくとも一部と不飽和モノカルボン酸(塩)の少なくとも一部の両方を反応器に添加した時点である。
【0049】
<反応時の反応液のpH>
本発明の製造方法において、反応時のpHは、7.5以上であり、9以上が好ましく、10以上が更に好ましい。反応時のpHが7.5未満であれば、収率が低下するため好ましくない。
【0050】
<反応温度、反応時間>
本発明の製造方法において、反応温度は50℃以上、120℃以下であることが好ましい。
50℃未満の場合、反応速度が遅くなり、反応効率が悪くなる。また、反応収率も低下する傾向にある。120℃を超えると、副反応が進行し、反応物の着色が大きくなる。
本発明の製造方法において、反応時間は0.5時間以上、10時間以下が好ましい。より好ましくは、1時間以上、4.5時間以下である。
【0051】
<反応時の圧力、雰囲気>
本発明の製造方法において、反応は常圧下、減圧下、加圧下のいずれで行なっても構わない。反応収率が向上する傾向にあることから、常圧下で反応するか、または減圧下で溶媒を除去しながら反応を行なうことが好ましい。
本発明の製造方法において、反応は、窒素ガスなどの不活性ガスの雰囲気下で行なっても良い。また、反応後に窒素ガスなどの不活性ガスの雰囲気下で保存しても良い。
本発明の製造方法において、反応触媒を添加しても構わない。
本発明の製造方法において、保存安定性の向上等を目的として反応後に更なる中和工程を設けても良い。
なお、本発明の製造方法において、上記の通り、不飽和モノカルボン酸(塩)に代えて対応するエステルまたはアミドを使用することも可能であるが、その場合、エステル基またはアミド基の加水分解工程を設けても良い。
【0052】
本発明の製造方法において、溶媒を用いてアミノ酸Aを製造した場合、所望に応じて乾燥工程、および/または濃縮工程または更なる希釈工程等の濃度調整工程を設けても良い。
【0053】
<酸型のアミノ酸Aの製造工程>
本発明の製造方法において、上記の通り、得られたアミノ酸Aは好ましくは、不飽和モノカルボン酸由来の基が中和された形態で製造されることとなるが、酸型のアミノ酸A(アミノ基が中和されたアミノ酸Aを含む)を製造する工程を設けても構わない。
該酸型のアミノ酸Aを製造する工程は、好ましくは(i)アミノ酸Aの水溶液等に酸を添加してpHを酸性にする工程を含んで製造される。なお、この際に生成する塩等の沈殿が生ずれば、濾過等により除去しても良い。
更に、該酸型のアミノ酸Aを製造する工程は、(ii)酸型アミノ酸Aを単離するために、アミノ酸Aの水溶液等に有機溶剤を添加してアミノ酸Aを析出させ、析出したアミノ酸Aをろ別する工程を含んでいても良い。(ii)の工程は、好ましくは(i)の工程後に行なわれる。
なお、上記(i)、(ii)の工程は必要によりそれぞれ繰り返し行なうことができる。
上記工程(i)において、酸とは、鉱酸、有機酸のいずれでも良く、例えば塩酸、硫酸、硝酸、亜硫酸、リン酸、ホウ酸、炭酸、酢酸、クエン酸等が例示されるが、安価な面から好ましくは塩酸を使用することが好ましい。また、上記工程(i)において、pHは2未満にすることが製造効率が高いことから好ましい。より好ましくはpHは1程度にすることである。
上記工程(i)における酸の添加量は、アミノ基とカルボキシル基の合計に対して当モル以上、好ましくは1.3倍モル以上添加することが好ましい。
上記工程(i)、(ii)において、アミノ酸Aの水溶液等とは、アミノ酸Aの水溶液又は水性溶液を言い、好ましくはアミノ酸Aを水または、水と低級アルコール等の水と相溶する有機溶剤からなる混合溶媒に溶解した溶液である。
酸型のアミノ酸Aの水溶液等を製造した後、乾燥・固化させても良い。
【0054】
〔用途〕
本発明のアミノ酸(塩)(アミノ酸A)またはアミノ酸(塩)組成物は、キレート剤として使用可能であるが、水処理剤、繊維処理剤、分散剤、洗剤組成物等の添加剤として用いられうる。洗剤添加剤としては、衣料用、食器用、住居用、毛髪用、身体用、歯磨き用、及び自動車用など、様々な用途の洗剤に添加されて使用されうる。
【0055】
<水処理剤>
本発明のアミノ酸(塩)またはアミノ酸(塩)組成物は、水処理剤に添加することができる。該水処理剤には、必要に応じて、他の配合剤として、重合リン酸塩、ホスホン酸塩、防食剤、スライムコントロール剤、キレート剤を用いても良い。
【0056】
上記水処理剤は、冷却水循環系、ボイラー水循環系、海水淡水化装置、パルプ蒸解釜、黒液濃縮釜等でのスケール防止に有用である。また、性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでもよい。
【0057】
<繊維処理剤>
本発明のアミノ酸(塩)またはアミノ酸(塩)組成物は、繊維処理剤に添加することができる。該繊維処理剤は、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つと、本発明の重合体組成物を含む。
【0058】
上記繊維処理剤における本発明のアミノ酸(塩)の含有量は、繊維処理剤全体に対して、好ましくは1〜100重量%であり、より好ましくは5〜100重量%である。また、性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでいてもよい。
【0059】
以下に、より実施形態に近い、繊維処理剤の配合例を示す。この繊維処理剤は、繊維処理における精錬、染色、漂白、ソーピングの工程で使用することができる。染色剤、過酸化物および界面活性剤としては繊維処理剤に通常使用されるものが挙げられる。
【0060】
本発明のアミノ酸(塩)と、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つとの配合比率は、例えば、繊維の白色度、色むら、染色けんろう度の向上のためには、繊維処理剤純分換算で、本発明の重合体組成物1重量部に対して、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つを0.1〜100重量部の割合で配合された組成物を繊維処理剤として用いることが好ましい。
【0061】
上記繊維処理剤を使用できる繊維としては、任意の適切な繊維を採用し得る。例えば、木綿、麻等のセルロース系繊維、ナイロン、ポリエステル等の化学繊維、羊毛、絹糸等の動物性繊維、人絹等の半合成繊維およびこれらの織物および混紡品が挙げられる。
【0062】
上記繊維処理剤を精錬工程に適用する場合は、本発明のアミノ酸(塩)組成物と、アルカリ剤および界面活性剤とを配合することが好ましい。漂白工程に適用する場合では、本発明のアミノ酸(塩)組成物と、過酸化物と、アルカリ性漂白剤の分解抑制剤としての珪酸ナトリウム等の珪酸系薬剤とを配合することが好ましい。
【0063】
<無機顔料分散剤>
本発明のアミノ酸(塩)やアミノ酸(塩)組成物は、無機顔料分散剤に添加することができる。該無機顔料分散剤には、必要に応じて、他の配合剤として、縮合リン酸およびその塩、ホスホン酸およびその塩、ポリビニルアルコールを用いても良い。
【0064】
上記無機顔料分散剤中における、本発明のアミノ酸(塩)の含有量は、無機顔料分散剤全体に対して、好ましくは5〜100重量%である。また性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでいてもよい。
【0065】
上記無機顔料分散剤は、紙コーティングに用いられる重質ないしは軽質炭酸カルシウム、クレイの無機顔料の分散剤として良好な性能を発揮し得る。例えば、無機顔料分散剤を無機顔料に少量添加して水中に分散することにより、低粘度でしかも高流動性を有し、かつ、それらの性能の経日安定性が良好な、高濃度炭酸カルシウムスラリーのような高濃度無機顔料スラリーを製造することができる。
【0066】
上記無機顔料分散剤を無機顔料の分散剤として用いる場合、該無機顔料分散剤の使用量は、無機顔料100重量部に対して、0.05〜2.0重量部が好ましい。該無機顔料分散剤の使用量が上記範囲内にあることによって、十分な分散効果を得ることが可能となり、添加量に見合った効果を得ることが可能となり、経済的にも有利となり得る。
【0067】
<洗剤組成物>
本発明のアミノ酸(塩)やアミノ酸(塩)組成物は、洗剤組成物にも添加しうる。
本発明のアミノ酸(塩)組成物は、上述したアミノ酸(塩)を含むが、洗剤組成物における当該アミノ酸(塩)の含有量は特に制限されない。ただし、優れた鉄イオンキレート能を発揮しうるという観点からは、アミノ酸(塩)の含有量は、洗剤組成物の全量に対して、好ましくは0.1〜15質量%であり、より好ましくは0.3〜10質量%であり、さらに好ましくは0.5〜5質量%である。
洗剤用途で用いられる洗剤組成物には、通常、洗剤に用いられる界面活性剤や添加剤が含まれる。これらの界面活性剤や添加剤の具体的な形態は特に制限されず、洗剤分野において従来公知の知見が適宜参照されうる。また、上記洗剤組成物は、粉末洗剤組成物であってもよいし、液体洗剤組成物であってもよい。
界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤からなる群から選択される1種または2種以上である。2種以上が併用される場合、アニオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤との合計量は、界面活性剤の全量に対して50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上であり、特に好ましくは80質量%以上である。
アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸またはエステル塩、アルカンスルホン酸塩、飽和脂肪酸塩、不飽和脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルケニルエーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、アルキルリン酸エステルまたはその塩、アルケニルリン酸エステルまたはその塩等が好適である。これらのアニオン性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基には、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級脂肪酸アルカノールアミドまたはそのアルキレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコキシド、脂肪酸グリセリンモノエステル、アルキルアミンオキサイド等が好適である。これらのノニオン性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基には、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
カチオン性界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩等が好適である。また、両性界面活性剤としては、カルボキシル型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤等が好適である。これらのカチオン性界面活性剤、両性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基は、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
上記界面活性剤の配合割合は、通常、洗剤組成物の全量に対して10〜60質量%であり、好ましくは15〜50質量%であり、さらに好ましくは20〜45質量%であり、特に好ましくは25〜40質量%である。界面活性剤の配合割合が少なすぎると、十分な洗浄力を発揮できなくなる虞があり、界面活性剤の配合割合が多すぎると、経済性が低下する虞がある。
添加剤としては、アルカリビルダー、キレートビルダー、カルボキシメチルセルロースナトリウム等の汚染物質の再沈着を防止するための再付着防止剤、ベンゾトリアゾールやエチレン−チオ尿素等の汚れ抑制剤、ソイルリリース剤、色移り防止剤、柔軟剤、pH調節のためのアルカリ性物質、香料、可溶化剤、蛍光剤、着色剤、起泡剤、泡安定剤、つや出し剤、殺菌剤、漂白剤、漂白助剤、酵素、染料、溶媒等が好適である。また、粉末洗剤組成物の場合にはゼオライトを配合することが好ましい。
上記洗剤組成物は、洗剤ビルダーを含んでもよい。他の洗剤ビルダーとしては、特に制限されないが、例えば、炭酸塩、炭酸水素塩、珪酸塩などのアルカリビルダーや、トリポリリン酸塩、ピロリン酸塩、ボウ硝、ニトリロトリ酢酸塩、エチレンジアミンテトラ酢酸塩、クエン酸塩、(メタ)アクリル酸の共重合体塩、アクリル酸−マレイン酸共重合体、フマル酸塩、ゼオライト等のキレートビルダー、カルボキシメチルセルロース等の多糖類のカルボキシル誘導体等が挙げられる。上記ビルダーに用いられる対塩としては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、アンモニウム、アミン等が挙げられる。
上記添加剤と他の洗剤用ビルダーの合計の配合割合は、通常、洗浄剤組成物100質量%に対して0.1〜50質量%が好ましい。より好ましくは0.2〜40質量%であり、さらに好ましくは0.3〜35質量%であり、特に好ましくは0.4〜30質量%であり、最も好ましくは0.5〜20質量%以下である。添加剤/他の洗剤ビルダーの配合割合が0.1質量%未満であると、十分な洗剤性能を発揮できなくなる虞があり、50質量%を超えると経済性が低下する虞がある。
なお、上記洗剤組成物の概念には、家庭用洗剤の合成洗剤、繊維工業その他の工業用洗剤、硬質表面洗浄剤のほか、その成分の1つの働きを高めた漂白洗剤等の特定の用途にのみ用いられる洗剤も含まれる。
上記洗剤組成物が液体洗剤組成物である場合、液体洗剤組成物に含まれる水分量は、通常、液体洗剤組成物の全量に対して0.1〜75質量%であることが好ましく、より好ましくは0.2〜70質量%であり、さらに好ましくは0.5〜65質量%であり、さらにより好ましくは0.7〜60質量%であり、特に好ましくは1〜55質量%であり、最も好ましくは1.5〜50質量%である。
上記洗剤組成物が液体洗剤組成物である場合、当該洗剤組成物は、カオリン濁度が200mg/L以下であることが好ましく、より好ましくは150mg/L以下であり、さらに好ましくは120mg/L以下であり、特に好ましくは100mg/L以下であり、最も好ましくは50mg/L以下である。
また、本発明のアミノ酸(塩)やアミノ酸(塩)組成物を液体洗剤組成物に添加する場合としない場合とでのカオリン濁度の変化(差)は、500mg/L以下であることが好ましく、より好ましくは400mg/L以下であり、さらに好ましくは300mg/L以下であり、特に好ましくは200mg/L以下であり、最も好ましくは100mg/L以下である。カオリン濁度の値としては、以下の手法により測定される値を採用するものとする。
【0068】
<カオリン濁度の測定方法>
厚さ10mmの50mm角セルに均一に攪拌した試料(液体洗剤)を仕込み、気泡を除いた後、日本電色株式会社製NDH2000(商品名、濁度計)を用いて25℃でのTubidity(カオリン濁度:mg/L)を測定する。
上記洗浄剤組成物に配合することができる酵素としては、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ等が好適である。中でも、アルカリ洗浄液中で活性が高いプロテアーゼ、アルカリリパーゼ及びアルカリセルラーゼが好ましい。
上記酵素の添加量は、洗浄剤組成物100質量%に対して5質量%以下であることが好ましい。5質量%を超えると、洗浄力の向上が見られなくなり、経済性が低下するおそれがある。
上記洗剤組成物は、カルシウムイオンやマグネシウムイオンの濃度が高い硬水(例えば、100mg/L以上)の地域中で使用しても、塩の析出が少なく、優れた洗浄効果を有する。この効果は、洗剤組成物が、LASのようなアニオン界面活性剤を含む場合に特に顕著である。
【実施例】
【0069】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。なお、特に明記しない限り、実施例における部および%は重量基準である。
N,N−ビス(2−ヒドロキシアルキル)アミノ酸、不飽和モノカルボン酸の定量は、高速液体クロマトグラフィーにより分析した。また、不飽和モノカルボン酸の重合体の生成は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により分析した。酸型アミノ酸のHCl含有量は、イオンクロマトグラフィーでClイオンを定量することにより分析した。分析条件は以下の通りである。
【0070】
(高速液体クロマトグラフィーの測定条件)
分析条件:
カラム:ODS−80TM(東ソー株式会社製)
移動相:5mMりん酸二水素アンモニウム(pH=2.4)
移動相流速:0.5ml/min
検出波長:UV、210nm
カラム温度:20℃
(GPCの測定条件)
GPCカラム:G−3000PWXL(東ソー株式会社製)
移動相:リン酸水素二ナトリウム12水和物34.5gとリン酸二水素ナトリウム2水和物46.2gに純水を加えて全量を5,000gとし、その後、0.45μmのメンブランフィルターでろ過した水溶液。
検出波長:UV、214nm
移動相流量:0.5mL/分
温度:35℃
検量線:創和科学製のポリアクリル酸ナトリウム標準サンプルで作成
(イオンクロマトグラフィーの測定条件)
装置:ICS−3000(DIONEX製)
カラム:ガードカラム、IonPac AG18 、分離カラムIonPac AS18
検出器:電気伝導度検出器
溶離液:グラジエント条件、水酸化カリウム7〜50ml
(鉄イオンキレート能の評価)
密閉できる容器に、5質量%のキレート剤水溶液、0.135Mの鉄イオンの0.1N硝酸水溶液、30質量%水酸化ナトリウム水溶液を、試験液のキレート剤濃度が0.2質量%、鉄イオン濃度が300ppm、水酸化ナトリウム濃度が3質量%になるように秤量、水で希釈50mlの溶液を調整した。なお、当該溶液を調整する際に、鉄イオン硝酸水溶液を最後に添加するようにする。液該溶液を振盪した後、室温にて4時間静置した。静置後、上澄み液をろ別し、ろ液をICP発光分析装置(株式会社 島津製作所製)を用い、鉄イオンの定量を行なった。下記式で計算される可溶鉄イオン濃度(%)を鉄イオンキレート能とした。
【0071】
【数1】

【0072】

なお、上記式において、初期鉄イオン濃度は300ppmである。
【0073】
(実施例1)
温度計、攪拌機を備えたガラス製反応器に水16.0質量部、48%水酸化ナトリウム水溶液を16.7質量部を仕込んだ。つぎに80%アクリル酸水溶液18.2質量部を連続的に滴下した。つぎにジエタノールアミン21.0質量部を反応器に投入した。その後反応溶液を80℃に昇温し、同温度で10時間反応を行なうことにより、本発明のアミノ酸(塩)組成物(1)を得た。液体クロマトグラフィーで反応液を分析し、転化率を算出したところ、アクリル酸の転化率は91.6%であった。ガスクロマトグラフィーでジエタノールアミンを分析したところ、検出限界以下であった。アミノ酸(塩)組成物(1)のHNMRチャートを図1に示す。
【0074】
(酸型のアミノ酸塩(アミノ酸A)の合成)
アミノ酸(塩)組成物(1)約70質量部に35%塩酸水溶液36.5質量部をゆっくり添加した。水を留去するにつれ塩化ナトリウムの結晶が析出する為、濾過を行なった。ろ液にエタノール80質量部を加えて攪拌したところ、白色粉末が析出した。白色粉末をろ別し更にエタノールを加えて洗浄した。白色粉末をろ別し50℃で減圧乾燥したところ、28.1質量部の白色粉末を得た。精製後の収率はアクリル酸ベースで65%であった。酸型のアミノ酸(塩)のHNMRチャートを図2に示す。白色粉末のCl含有量をイオンクロマトグラフィーで定量したところ、20.6質量%であった。
【0075】
本発明の製造方法によれば、従来の製造方法と比較して、環境に易しく、またN,N−ビス(2−ヒドロキシアルキル)アミノ酸を高い収率で製造できることが明らかとなった。
【0076】
(実施例2)
実施例1で得られたアミノ酸(塩)組成物(1)について上記方法により鉄イオンキレート能を測定した。鉄イオンキレート能は0.77であった(可溶鉄イオン濃度は0.77%)。
【0077】
(比較例1)
代表的なキレート剤である、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)について、上記方法により鉄イオンキレート能を測定した。鉄イオンキレート能は0.20であった(可溶鉄イオン濃度は0.20%)。
【0078】
上記実施例2と比較例1より、本発明のアミノ酸(塩)組成物は、従来のキレート剤と比較して、良好な鉄イオンキレート能を有することが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明のアミノ酸(塩)組成物は、高い鉄イオンキレート能を有する。したがって、水処理剤、洗剤用ビルダー、洗剤組成物、分散剤、洗浄剤、等の添加剤に用いた場合に特に優れた性能を発揮できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N,N−ビス(2−ヒドロキシアルキル)アミンと、不飽和モノカルボン酸または不飽和モノカルボン酸塩を反応させることを特徴とする、N,N−ビス(2−ヒドロキシアルキル)アミノ酸またはその塩の製造方法。
【請求項2】
(1)不飽和モノカルボン酸および/または不飽和モノカルボン酸塩、
および、
(2)N,N−ビス(2−ヒドロキシアルキル)アミノ酸および/またはN,N−ビス(2−ヒドロキシアルキル)アミノ酸、
を含有するアミノ酸組成物。
【請求項3】
請求項2に記載のアミノ酸組成物を含むキレート剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−184865(P2010−184865A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28070(P2009−28070)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】