説明

NBR手袋及びその製造方法

【構成】 NBRラテックスで構成される手袋基体内面の一部または全部にアクリル系樹脂層を設けたことを特徴とするNBR手袋。
【効果】 本発明のNBR手袋は、従来の同種手袋の有する欠点、すなわちベタ付いて内部に手をいれにくいことや、塩素処理により表面が滑り易くなる等の欠点がなく、手袋内面および外面とも適切な使い易さを与えることができるものである。 そして、NBRには、塩化ビニル手袋のような耐油性や機械的強度が弱いという欠点がないので、本発明のNBR手袋は塩化ビニル手袋に代わり家庭用および産業用手袋として広く利用できる可能性を有するものである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はNBR手袋に関し、さらに詳細には、家庭用もしくは作業用手袋としての使用の際に、装着しやすいにもかかわらず表面が滑りにくく、使用感の良いNBR手袋に関する。
【0002】
【従来の技術】現在、家庭用あるいは作業用手袋として、高分子あるいはゴムを基体とした、いわゆるノンサポート型手袋が提供されている。 このノンサポート型手袋の基体としては、塩化ビニルが多く利用されているが、この塩化ビニル製の手袋には、石油類を扱う作業を行うと、塩化ビニル中から可塑剤が溶出してしまい、硬化するため長時間の使用には耐えられないという問題があった。 また、先の尖ったものにより突き刺された場合に穴があき易く、更に摩耗し易い等機械的強度の面での弱さも問題とされていた。
【0003】このような塩化ビニル製の手袋の上記欠点を解消するものとして、ニトリル−ブタジエンゴム(NBR)製の手袋が提供されているが、このNBR手袋はゴム特有のベタ付があり、使用時や製造時において大きな問題となっていた。
【0004】すなわち、NBRのベタ付きにより、装着時に手に密着して不快感を与えたり、着脱が不便である等の問題があった。 そして、使用時のこのような問題を解決する方法としては、NBR手袋全体を塩素処理することが行われており、この方法によって内面の滑りは良くなるが、同時に外面が滑り易くなり過ぎたり、変色するという欠点があった。
【0005】上記欠点を防ぐために、製膜後にある種の粉砕体を離型助剤として使用することも行われているが、このようにして得られた手袋は裏面に粉体が残存しているので、電子部品関係や精密工業などにおいては使用できないという欠点があった。
【0006】また、ノンサポート型の手袋は、手型を手袋を構成する高分子ラテックスに浸漬し、付着した高分子ラテックスを加熱してゲル化、製膜後、反転させて製品とするものであるため、高分子ラテックスとしてNBRラテックスを利用すると、製膜後の離型の際に被膜同士が貼り付いてしまい、製造上も問題となっていた。更に、上記塩素処理を行う場合は、極めて毒性が強い塩素ガスを使用するため、更に安全性や装置面で慎重な取扱が要求されるという問題があった
【0007】
【発明が解決しようとする課題】従って、使用時や製造時において問題となる、NBR手袋に特有のベタ付を、塩素処理や離型粉体の使用によらず防ぐ方法の開発が求められていた。
【0008】
【課題を解決するための手段】斯る実情に鑑み、本発明者らはNBR手袋のべた付き防止について鋭意検討した結果、当該手袋の内面のみにアクリル系樹脂層を設けることにより、製造時および使用時のNBRの欠点を解消できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】すなわち本発明は、NBR樹脂で構成される手袋基体内面の一部または全部にアクリル系樹脂層を設けたことを特徴とするNBR手袋およびその製造方法を提供するものである。
【0010】本発明のNBR手袋は、常法にしたがいNBRラテックスで基体を製膜、形成し、次いで、アクリル系樹脂ペーストでアクリル系樹脂層を形成させることにより製造される。
【0011】具体的には、まず、手型をNBRラテックス、加硫剤、安定剤、活性剤等よりなるNBRラテックスコンパウンドに浸漬し、これを引き上げた後加熱して手型表面のNBRをゲル化する。手型のNBRラテックスコンパウンドへの浸漬時間は、10〜120秒程度であり、浸漬後の加熱は、50〜150℃程度の温度で、30〜120分程度行えば良い。
【0012】次いで、これをアクリル系樹脂、有機または無機の微粉末、分散剤等よりなるアクリル系樹脂エマルジョンに浸漬し、引き上げた後加熱して製膜する。ここで用いるアクリル系樹脂は、少なくとも一部の構成成分としてアクリル系樹脂を含むものをいい、本来のアクリル樹脂の他、アクリル樹脂とウレタン樹脂の混合物、アクリル樹脂とスチレン樹脂の混合物をも含む。このアクリル系樹脂エマルジョンの浸漬時間は、0.5〜1.5分程度とすれば良く、引き上げ後の乾燥は、80〜150℃程度の温度で、20〜60分程度行えば良い。
【0013】なお、このアクリル系樹脂エマルジョンには、適当な滑り効果を与えるため、炭酸カルシウム、シリカ等の無機微粒子や、塩化ビニル樹脂等の有機微粒子を添加することもできる。この微粒子の配合量は、前記エマルジョンに対し一般には、30〜150重量%程度で良く、この配合量が多過ぎるとアクリル樹脂層のフィルム強度が大幅に低下する場合がある。
【0014】また、このアクリル系樹脂ペーストには、手袋中でのかびや細菌の発生を抑制するため、抗菌剤や抗かび剤を加えることもできる。 抗菌剤および抗かび剤の例としては、ネオシントール(神東塗料株式会社)、プリベントールBCM(バイエル株式会社)等を挙げることができる。
【0015】最後に、製膜された手袋を手型から反転離型させれることにより、本発明のNBR手袋が得られる。
【作用】本発明は、NBRとアクリル系樹脂がなじみが良く、一体化した皮膜を形成するという性質を利用したものである。そして、上記のようにして得られる本発明のNBR手袋は、外側のNBR部分はなんら影響なく、内面のみアクリル系樹脂層による適度な滑り性を与えるものであるため、従来のNBR手袋のようなベタ付による製造、使用時の不便はない。 また、このアクリル系樹脂層中に滑り効果となる微粒子や、抗菌剤や抗かび剤を配合することもできるので、内側に適切なベタ付き防止効果を与えたり、臭い等の発生をも防止することができ、使用感の良い手袋とすることができる。
【0016】
【発明の効果】本発明のNBR手袋は、従来の同種手袋の有する欠点、すなわちベタ付いて内部に手をいれにくいことや、塩素処理により表面が滑り易くなる等の欠点がなく、手袋内面および外面とも適切な使い易さを与えることができるものである。そして、NBRには、塩化ビニル手袋のような耐油性や機械的強度が弱いという欠点がないので、本発明のNBR手袋は塩化ビニル手袋に代わり家庭用および産業用手袋として広く利用できる可能性を有するものである。
【0017】
【実施例】次に、実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例になんら制約されるものでない。
【0018】実 施 例 1表1の組成の、NBRラテックスに陶磁器性手型の掌部を2分浸漬し、引き上げた。 次にこの手型を加熱窯(110℃)中で5分間加熱処理し、手型表面のゾルをゲル化し、NBR基体被膜を形成した。
【0019】この基体被膜が形成された手型を、表2の組成のアクリル系樹脂ペースト中に60秒間浸漬し、アクリル系樹脂ゾルを付着させた。 次にこの手型を加熱窯(110℃)中で約70分加熱処理し、全体を製膜した後、手型より反転離型してNBR手袋を得た(本発明品1)。
【0020】


【0021】


【0022】実 施 例 2アクリル系樹脂エマルジョンとして、表3の組成のものを使用する以外は実施例1と同様にして、NBR手袋(本発明品2)を得た。
【0023】


【0024】試 験 例 1実施例1および2で得られたNBR手袋について、16名のパネルにより、装着時および使用時の滑りやすさを調べた。 なお、対照としては、NBRのみで製膜した手袋(比較品1)および比較品1を塩素処理した手袋(比較品2)を用いた。この結果を表4に示す。
【0025】


【0026】* 評価基準は次の通りである。
( 装 着 時 )
◎ : スムーズに手にはめることができる。
○ : やや手にはめにくい。
△ : 手にはめにくい。
× : 手にはめることが極めて難しい。
【0027】( 使 用 時 )
◎ : 細かいものもつかみ易い。
○ : 普通にものをつかむことができる。
△ : ものがややつかみにくい。
× : 滑ってしまいものがつかみにくい。
【0028】この試験結果から、本発明手袋は装着し易いにもかかわらず、使用時はものがつかみ易く、作業性が極めて高いものであることが明らかになった。
以 上

【特許請求の範囲】
【請求項1】 NBRラテックスで構成される手袋基体内面の一部または全部にアクリル系樹脂層を設けたことを特徴とするNBR手袋。
【請求項2】 アクリル系樹脂層が、アクリル樹脂、アクリル−ポリウレタン樹脂またはアクリル−スチレン樹脂から選ばれた樹脂で形成されるものであるNBR手袋。
【請求項3】 アクリル系樹脂層が、微粉体を含有するものである請求項第1項記載のNBR手袋。
【請求項4】 アクリル系樹脂層が、抗菌剤および/または抗かび剤を含有するものである請求項第1項記載のNBR手袋。
【請求項5】 手型を、NBRラテックスに浸漬した後、ゲル化、製膜し、更にアクリル系樹脂ペーストに浸漬して製膜することを特徴とするNBR手袋の製造方法。
【請求項6】 アクリル系樹脂エマルジョンが微粉体を含有するものである請求項第5項記載のNBR手袋の製造方法。

【公開番号】特開平8−337910
【公開日】平成8年(1996)12月24日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−169307
【出願日】平成7年(1995)6月13日
【出願人】(000102544)エステー化学株式会社 (127)