説明

NYHAI患者についてのナトリウム利尿ペプチドによる心機能不全の診断および危険性層化

本発明の目的は、心機能不全の改善された診断、および/もしくは危険性層化、および/もしくは結果予後のための方法を提供することである。本発明は、NYHA I患者についての心機能不全の診断、および/もしくは危険性層化、および/もしくは結果予後のための方法に関し、ここでプロANPマーカー、またはそのフラグメントもしくは部分ペプチドの決定は、試験されるべき患者に対するBNP、プロBNP、および/もしくはNT−プロBNPの決定と並行して行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NYHA I患者についての心機能不全の診断、および/もしくは危険性層化、および/もしくは結果予後のための方法に関し、ここでプロANPマーカー、またはそのフラグメントもしくは部分ペプチドの決定は、試験されるべき患者に対するBNP、プロBNP、および/もしくはNT−プロBNPの決定と並行して行われる。
【背景技術】
【0002】
欧州では、急性の息切れの症状を有する約100万人の患者が、1年間に、病院の救急救命室を訪れている。息切れは、多くの疾患の主な症状であり、上記場合のうちの約35〜47%においては、心機能不全に帰し得る(非特許文献1および非特許文献2)。
【0003】
初期段階では、上記患者はしばしば、心機能不全にほとんど気づかない。処置しなければ、上記疾患は、重篤度が増し、後期段階では、安静時ですら完全な肉体的疲労に至る。全ての身体器官(心筋自体を含む)の供給不足は、この段階において死に至り得る。一旦上記疾患が進行してしまうと、寿命は、最適な治療をもってしても非常に短くなる(1年あたり約30%が死亡)。従って、任意の心機能不全をできる限り早期に認識し、そしてto 結果として、その原因に対処することが重要である。
【0004】
従って、適切な治療を始めるために、初期段階で根底にある疾患の初期診断および区別が、ならびに救急治療および集中治療においても、必要とされる。非特異的症状(息切れ、咳)に起因して、心機能不全および他の疾患の区別および範囲の決定の両方が、しばしば悪化する。
【0005】
試験は、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNPもしくはNTプロBNP)の血漿濃度の決定によって利用可能であり、脳性ナトリウム利尿ペプチドは、心機能不全の慣用的な診断に首尾良く利用されている(Maiselら.(前出))。NT−プロBNPは、心機能不全を追跡するために、先行技術に従って利用される。先行技術によれば、プロANPはまた、マーカーとして記載されてきた。US5498524は、無症候性の患者における心機能不全の診断のためのプロANPの使用を記載している。EP721105B1は、心疾患のための適切な抗体によってプロANPを決定するための方法を記載している。
【0006】
しかし、先行技術によれば、心機能不全を示す患者の、特に、診断、危険性層化、および結果予後を改善することが大いに求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Januzzi JL Jr,Camargo CA,Anwaruddin S,Baggish AL,Chen AA,Krauser DG,Tung R,Cameron R,Nagurney JT,Chae CU,Lloyd−Jones DM,Brown DF,Foran−Melanson S,Sluss PM,Lee−Lewandrowski E,Lewandrowski KG,The N−terminal proBNP investigation of dyspnea in the emergency department (PRIDE) study,Am J Cardiol.95(8)(2005),pp.948−954
【非特許文献2】Maisel AS,Krishnaswamy P,Nowak RM,McCord J,Hollander JE,Duc P,Omland T,Storrow AB,Abraham WT,Wu AH,Clopton P,Steg PG,Westheim A,Knudsen CW,Perez A,Kazanegra R,Herrmann HC,McCullough PA;Breathing Not Properly Multinational Study Investigators,Rapid measurement of B−type natriuretic peptide in the emergency diagnosis of heart failure,N Engl J Med.347(3)(2002),pp.161−167
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、心機能不全の改善された診断、および/もしくは危険性層化、および/もしくは結果予後のための方法を提供することである。
【0009】
しかし、現在公知のマーカーを利用する公知の診断方法の1つの欠点は、危険性のある患者の初期のおよび完全な検出が十分に達成されていないことであり、従って、危険性層化は、不十分にしか行われていない。本発明のさらなる目的は、危険性のある患者、特に、患者の亜群についての改善された検出を可能にする、心機能不全の危険性層化のための方法を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
驚くべきことには、プロBNP、NT−プロBNP、および/もしくはBNPの決定と並行して、プロANP、またはそのフラグメントもしくは部分ペプチド(特に、NT−プロANP、またはそのフラグメントもしくは部分ペプチド)を決定する際に、心機能不全の診断、危険性層化、および結果予後の改善が、実際に、無症候性のいかなる不快感もない心機能不全(NYHAステージI)において、特にいかなる不快感もない左心機能不全(NYHAステージI)において、達成され得ることが示された。
【0011】
従って、上記目的は、請求項1に記載の方法(本明細書中以降、本発明の方法といわれる)によって解決される。
【0012】
従って、本発明の方法は、特に有利な様式において、クラスNYHA Iの患者について診断および予後の誘意性(valence)の改善を可能にする。
【0013】
本発明の最も好ましい実施形態において、患者は、少なくとも30kg/mのボディーマス指数(BMI)をさらに有する。これは、診断および予後の誘意性をさらに顕著に改善する、さらなるパラメーターである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、MR−プロANPについての曲線下面積(AUC)=0.665およびNT−プロBNPについての曲線下面積=0.533を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の範囲内において、「心機能不全」とは、安静時もしくは負荷時の間に組織代謝を確保するために、心臓が急性的にもしくは慢性的に十分に血液を供給できない、および結果として、十分な酸素を組織に供給できないことを意味する。臨床的観点からは、収縮機能もしくは拡張機能疾患の意味で心機能障害に本来基づく代表的な症状(呼吸困難、疲労、流体保持)が存在する場合、心機能不全が存在する。本発明はまた、慢性心機能不全(CHF)を含む(Christian Mewis,Reimer Riessen,およびIoakim Spyridopoulosによって刊行されたKardiologie compact,第2版(無改訂),Thieme 2006)。心機能不全の原因は、高血圧(high blood pressure)(高血圧(hypertension))、および/もしくは冠動脈のアテローム硬化(石灰化)(冠動脈心疾患)に加えて、心臓弁欠損(すなわち、リウマチ熱の後期の効果として)、心筋炎(心筋炎症)、心不整脈、心臓発作であり得る。本発明は、(欝血性)心機能不全を伴う高血圧性心疾患、(欝血性)心機能不全を伴う高血圧性心疾患および腎疾患をさらに含む。本発明は、いかなる不快感もない心機能不全(NYHAステージI)を有する患者に関する(NYHA=New York Heart Associationの分類(Hoppe UCら:Guidelines for the Therapy of Chronic Cardiac Insufficiency. Z Kardiol(2005)94:488−509))。
【0016】
本発明によれば、用語「危険性層化」とは、可能な限り有望な経過の目的とともに、患者、特に救急救命室患者、ならびに機能不全のより集中的な診断および治療/処置を可能にするという目的で、より悪化した予後の危険性のあるもしくはより悪化した予後を有する患者を見いだすことを包含する。次に、危険性層化は、本発明によれば、いかなる不快感もない心機能不全(NYHAステージI)に関して与えられる有効な処置方法を可能にする。
【0017】
最も有利なことには、安全な診断もしくは結果予後は、特に、救急医療および/もしくは集中医療の場合において、本発明の方法によって行われ得る。本発明の方法は、迅速な治療的成功をもたらす臨床的決定を可能にする。このような臨床的決定はまた、心機能不全の処置もしくは治療のための薬物療法(例えば、ACEインヒビター、AT1アンタゴニスト:アンギオテンシン−IIレセプターの遮断薬(サブタイプ1)、β遮断薬である、Bisoprolol、Carvedilol、Metoprolol、およびNebivolol、バソプレッシンレセプターアンタゴニスト、NYHAステージIII以上からアルドステロンアンタゴニスト、カルシウム増感剤(Levosimendan))による継続処置を含む。
【0018】
従って、さらに好ましい実施形態において、本発明の方法は、いかなる不快感もない心機能不全(NYHAステージI)の治療制御に関する。
【0019】
従って、本発明はまた、患者の危険性層化のための、特に、臨床的決定のための患者の層化のための、好ましくは、年代順に重要な集中医療もしくは緊急医療において、および上記患者の入院のための方法に関する。
【0020】
本発明の方法のさらに好ましい実施形態において、上記診断は、予後に関して、好ましくは、結果予後に関して、鑑別診断的初期検出および検出のため、重篤度の評価のため、およびいかなる不快感もない心機能不全(NYHAステージI)を有する患者の経過の評価に付随する治療のために行われる。
【0021】
本発明の方法のさらなる実施形態において、体液(特に、血液、必要に応じて、全血もしくは血清)は、試験されるべき患者から採取され、上記診断は、インビトロ/エキソビボ(例えば、ヒトもしくは動物の身体の外で)行われる。上記診断は、少なくとも1つの患者サンプルにおいて、上記マーカー、プロANP、またはそのフラグメントもしくは部分ペプチド(特に、NT−プロANP、またはそのフラグメントもしくは部分ペプチド)、およびその既存の量の決定に基づいて、行われ得る。マーカー、プロBNP、NT−プロBNP、および/もしくはBNPの決定は、少なくとも1つの患者サンプルにおいて、本発明に従って、その既存の量において、並行して行われる。
【0022】
用語「プロANP」(同様に、NT−プロANP)は、本発明の範囲内において、98アミノ酸を含む心房性ナトリウム利尿ペプチド、またはそのフラグメントもしくは部分ペプチドの遊離ポリペプチド/タンパク質を意味する。N末端フラグメントプロANP(AS 1−98)は、126アミノ酸からなるプロホルモン「プロANP」(AS 1〜126、配列番号1を参照のこと)からの循環するホルモンα−ANP(28ASを有する99〜126)の分離から作り出され、筋内分泌細胞の分泌顆粒中に貯蔵され、そして本発明において含まれる。さらに、本発明のポリペプチドは、翻訳後修飾(例えば、グリコシル化、脂質化、もしくは誘導体化)を有し得る。特に、NT−プロANP(AS 1〜98)は、血漿中において特に安定である。
【0023】
本発明の範囲内において、フラグメントおよび部分ペプチドは、特に、NT−プロANP(1−98)もしくはプロANP(1〜126)のAS 50〜90の中央領域に関し得、本発明によれば、NT−プロANP(1〜98)(MR−プロANPともいわれる。WO2004046181および配列番号1を参照のこと)のAS 53〜90を有するフラグメントもしくは部分ペプチドが、特に好ましい。適切なアッセイは、WO2004046181A1(BRAHMS AG)において開示される。NT−プロANP(AS 1〜98)もまた、好ましい。本発明は、そのフラグメント(α)−ANP(AS 99〜126)を含む。
【0024】
本発明の範囲内において、BNP(AS 77〜108)は、B−タイプナトリウム利尿ペプチドを意味する。これは、プロホルモン、プロBNP(AS 1〜108、配列番号2を参照のこと)から分離され、ここで上記NT−プロBNP(AS 1〜76)は、同時に作り出される。本発明によれば、NT−プロBNPが好ましい。
【0025】
「並行した決定」とは、上記決定が、特に、同時に行われるか、または十分な割り当てもしくは組み合わせ評価を少なくとも可能にすることを意味する。
【0026】
さらなる実施形態において、プロANP、NT−プロANP、またはそのフラグメントもしくは部分ペプチドの決定は、さらなるマーカー(好ましくは、心機能不全を既に示すもの)に加えて、BNP、プロBNP、および/もしくはNT−プロBNPの決定と並行して行われ得、そして本発明の方法においてマーカー組み合わせの相乗効果を可能にする。
【0027】
従って、本発明は、上記決定が、試験されるべき患者に対して、炎症マーカー、心血管マーカー、もしくは虚血マーカーの群からの少なくとも1種のさらなるマーカーを伴って、さらに選択される、本発明の方法のこのような実施形態に関する。
【0028】
本発明によれば、上記炎症マーカーは、C反応性タンパク質(CRP)、サイトカイン(例えば、TNF−α)、インターロイキン(例えば、IL−6)、プロカルシトニン(1〜116,3〜116)、および接着分子(例えば、VCAMもしくはICAM)の群からの少なくとも1種のマーカーから選択され得、そして上記心血管マーカーは、クレアチンキネシス、ミエロペルオキシダーゼ酵素作用、コペプチン、ミオグロビン、心筋トロポニン、CRPの群からの少なくとも1種のマーカーから選択され得る。さらに、これらはまた、循環調節性(プロ)ホルモン、特に、例えば、プロガストリン放出ペプチド(プロGRP)、プロエンドセリン(プロEnd)、プロレプチン、プロニューロペプチド−Y、プロソマトスタチン、プロニューロペプチド−YY、プロオピオメラノコルチン、プロアドレノメデュリン(プロADM)、コペプチン、またはこれらの部分配列を意味する。
【0029】
上記虚血マーカーは、トロポニンIおよびトロポニンT、CK−MBの群からの少なくとも1種の マーカーから選択され得る。
【0030】
本発明のさらなる実施形態において、本発明の方法は、上記マーカーの並行決定もしくは同時決定によって行われ得(すなわち、96個以上の穴を有するマルチタイタープレート)、ここで上記決定は、少なくとも1つの患者サンプルに対して行われる。
【0031】
さらに、本発明の方法およびその決定は、自動分析機、特に、Kryptor(http://www.kryptor.net/)によって行われ得る。
【0032】
さらなる実施形態において、本発明の方法およびその決定は、迅速試験(例えば、ラテラルフロー試験)によって、好ましくは、マルチパラメーター決定において、行われうる。
【0033】
本発明のさらなる目的は、上記マーカー、プロBNP、NT−プロBNP、および/もしくはBNPの決定と並行した、いかなる不快感もない心機能不全(NYHAステージI)のインビトロ診断、および/もしくは危険性層化、および/もしくは結果予後のための、試験されるべき患者に対するマーカー、プロANPもしくはNT−プロANP、またはそのフラグメントもしくは部分ペプチドの使用に関する。MR−プロANPは、好ましいフラグメントもしくは部分ペプチドである。本発明に従う使用はまた、上記のさらなる実施形態に関する。
【0034】
以下の実施例および図面は、本発明の詳細な説明の役に立つが、上記実施例および図面に本発明を限定しない。
【実施例】
【0035】
(実施例および図面)
実施例1:NHYAクラス1を有する患者:生存/死亡のための受信者動作特性(ROC,StatView 5.0 software for Windows(登録商標)(Abacus,Concepts,Berkley,Canada,and MedCalc,Broekstraat,Mariakerke,Belgium))分析。MR−プロANPを、上記患者の血漿から単離し、−80℃で凍結した。MR−プロANPを検出するために、サンドイッチアッセイ(LIA)を、BRAHMS AGによるWO2004046181に従って利用した(Morgenthalerら. Immunoluminometric assay for the midregion of pro−atrial natriuretic peptide in human plasma,Clin.Chem,2004;50:234−236)。
【0036】
NT−プロBNPを、ELICIA(Roche Diagnostics,Penzberg,Germany)によって決定した。
【0037】
試験個体の数n=66/7名の患者は死亡した。
【0038】
図1は、MR−プロANPについての曲線下面積(AUC)=0.665およびNT−プロBNPについての曲線下面積=0.533を示す
MR−プロANP:0.665−0.5(有意でない):0.165
NT−プロBNP:0.533−0.5(有意でない):0.033
0.165/0.033=5
従って、このことは、NHYAクラス1における患者の亜群におけるNT−プロBNPと比較して、5倍より高いMR−プロANPについての診断誘意性(生存/死亡の考察)を生じる。
【0039】
(実施例2)
Cox回帰による、NT−プロBNPと比較した、MR−プロANPの増大した予後誘意性の確認
一変量分析:
アプローチ:メジアンを、NYHA−1患者の亜群において、両方のマーカー(MR−プロANPおよびNT−プロBNP)について計算した;
このことは、NT−プロBNPについてのメジアンを生じ、このメジアンは、MR−プロANPについてより3.7倍高い。従って、NT−プロBNPについての危険比を、Cox分析においてMR−プロANPのものより3.7倍高い濃度で計算した。
【0040】
上記一変量Cox比例ハザード分析の結果:
マーカー χ 危険比(95% CI) P
MR−プロANP
(100pmol/Lあたりの増加) 6.758 2.517(1.255-5.047) 0.009
NT−プロBNP
(370pg/ml 増加) 0.383 1.107(0.803-1.525) 0.536

有意な結果がNT−プロBNPについては得られなかった(p=0.536)という事実とは無関係に、NT−プロBNP(1.107)と比較して、MR−プロANPについての危険比2.517は、NYHA−1患者の亜群における改善を例示する。危険比1,000は、濃度単位あたりの死亡の危険性が増大していないことを示す。MR−プロANPについては、危険比2.517は、単位(ここでは100pmol/L)あたりの死亡の危険性が、151.7%まで増大することを意味する。これは、NT−プロBNPと比較して、14.2倍高い危険性の増大である。
【0041】
多変量モデル:
マーカー χ 危険比(95% CI) P
LN MR−プロANP 5.861 25.554(1.854-352.272) 0.015
LN NT−プロBNP 2.093 0.429(0.136-1.350) 0.148
年齢 1.673 0.943(0.863-1.031) 0.196
この結果は、繰り返すと、MR−プロANPを使用して得られる改善を示す。なぜなら、MR−プロANPは、NT−プロBNPおよび年齢を有するモデルにおいてNYHA−1亜群における死亡についての単一の独立した予測量として残っているからである(p=0.015)。
【0042】
(実施例3:BMI≧30kg/mを有する患者)
Cox回帰によって、NT−プロBNPと比較した、MR−プロANPの予後誘意性の増加の分析(試験患者数:n=114;36名の患者が死亡した)
一変量分析:
アプローチ:メジアンを、BMI≧30kg/mを有する患者の亜群において、両方のマーカー(MR−プロANPおよびNT−プロBNP)について計算した;このことは、NT−プロBNPについてのメジアンを生じた。このメジアンは、MR−プロANPについてより5倍高い。従って、NT−プロBNPについての危険比は、Cox分析におけるMR−プロANPのものより5倍高い濃度で計算した。
【0043】
一変量Cox比例ハザード分析の結果:
マーカー χ 危険比(95% CI) P
MR−プロANP
(100pmol/L 増加) 14.414 1.503(1.217-1.855) <0.0001
NT−プロBNP
(370pg/ml 増加) 0.662 1.024(0.963-1.094) 0.416
有意な結果がNT−プロBNPについては得られなかった(p=0.416)という事実とは無関係に、NT−プロBNP(1.024)と比較して、MR−プロANPについての危険比1.503は、BMI≧30を有する患者の亜群の利点を意味した。危険比1,000は、濃度単位あたりの死亡の危険性が増大していないことを示す。従って、MR−プロANPについて、危険比1.503は、単位(ここでは100pmol/L)あたりの死亡の危険性が50.3%まで増大することを意味する。これは、NT−プロBNPと比較して、21倍高い危険性の増加である。
【0044】
多変数モデル:
マーカー χ 危険比(95% CI) P
LN MR−プロANP 7.198 2.776(1.317-5.854) 0.007
LN NT−プロBNP 0.005 0.985(0.644-1.506) 0.943
この結果は、繰り返すと、上記MR−プロANPの予後増大を示す。なぜなら、MR−プロANPは、NT−プロBNPを有するモデルにおいてBMI≧30を有する患者の亜群における死亡についての単一の独立した予測値として残っているからである(p=0.007)。しかし、NT−プロBNPは、独立した予測値ではない。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

表3:NewYork Heart Associationによる分類
(NYHA)
NYHA I 物理的制限なし。日常的な肉体的労作は、不適当な疲労、律動障害、息切れ、狭心症のいずれも引き起こさない。

NYHA II 肉体的能力の軽度の制限。安静時には症状は認められない。日常的な肉体的労作によって、疲労、律動障害、息切れもしくは狭心症。

NYHA III 通常の活動で肉体的能力のより高度の制限。安静時には症状は認められない。わずかな肉体的労作によって、疲労、律動障害、息切れもしくは狭心症。

NYHA IV 全ての肉体的活動および安静時の不快感。ベッドに拘束される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
いかなる不快感もない心機能不全(NYHAステージI)のインビトロ診断、および/もしくは危険性層化、および/もしくは結果予後のための方法であって、
マーカープロANPもしくはNT−プロANP、またはそのフラグメントもしくは部分ペプチドの決定は、試験されるべき患者に対するマーカープロBNP、NT−プロBNP、および/もしくはBNPの決定と並行して行われる、
ことで特徴づけられる、方法。
【請求項2】
前記マーカーは、MR−プロANP(NT−プロANPのAS 53〜90)であることで特徴づけられる、請求項1に記載の、いかなる不快感もない心機能不全(NYHAステージI)のインビトロ診断、および/もしくは危険性層化、および/もしくは結果予後のための方法。
【請求項3】
前記患者は、少なくとも30kg/mのBMIを有することで特徴づけられる、請求項1または2に記載の、いかなる不快感もない心機能不全(NYHAステージI)のインビトロ診断、および/もしくは危険性層化、および/もしくは結果予後のための方法。
【請求項4】
特に集中医療もしくは緊急医療において、および該患者の入院について、臨床的決定、特に、薬物療法による継続処置および継続治療を行うためのものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の、いかなる不快感もない心機能不全(NYHAステージI)のインビトロ診断、および/もしくは危険性層化、および/もしくは結果予後のための方法。
【請求項5】
鑑別診断的初期検出および検出、重篤度の評価、ならびに経過の評価に付随する治療のためのものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の、いかなる不快感もない心機能不全(NYHAステージI)のインビトロ診断、および/もしくは危険性層化、および/もしくは結果予後のための方法。
【請求項6】
炎症マーカー、心血管マーカー、もしくは虚血マーカーの群から選択される少なくとも1種のさらなるマーカーの決定が、試験されるべき患者に対してさらに行われる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記炎症マーカーは、C反応性タンパク質(CRP)、TNF−αのようなサイトカイン、IL−6のようなインターロイキン、プロカルシトニン(1−116,3−116)、およびVCAMもしくはICAMのような接着分子の群からの少なくとも1種のマーカーから選択されることで特徴づけられる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記心血管マーカーは、クレアチンキネシス、ミエロペルオキシダーゼ酵素作用、コペプチン、ミオグロブリン、心筋トロポニン、CRP、ならびに、プロガストリン放出ペプチド(プロGRP)、プロエンドセリン(プロEnd)、プロレプチン、プロニューロペプチド−Y、プロソマトスタチン、プロニューロペプチド−YY、プロオピオメラノコルチン、プロアドレノメデュリン(プロADM)、コペプチン、またはこれらの部分配列のような循環調節性(プロ)ホルモンの群からの少なくとも1種のマーカーから選択されることで特徴づけられる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記虚血マーカーは、トロポニンIおよびトロポニンT、CK−MBの群からの少なくとも1種のマーカーから選択されることで特徴づけられる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記マーカーの並行決定もしくは同時決定が行われることで特徴づけられる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記決定は、少なくとも1つの患者サンプルに対して行われることで特徴づけられる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記決定は、自動分析機で、特にKryptorによって行われる、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記決定は、迅速試験によって、特に、個々のパラメーター決定もしくはマルチパラメーター決定において行われることで特徴づけられる、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
いかなる不快感もない心機能不全(NYHAステージI)のインビトロ診断、および/もしくは危険性層化、および/もしくは結果予後のための、試験されるべき患者に対してマーカープロBNP、NT−プロBNP、および/もしくはBNPの決定と並行した、マーカープロANPもしくはNT−プロANP、またはそのフラグメントもしくは部分ペプチドの使用。

【図1】
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【公表番号】特表2010−520442(P2010−520442A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−551101(P2009−551101)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【国際出願番号】PCT/DE2008/000357
【国際公開番号】WO2008/106938
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(509091332)ブラームズ アクチェンゲゼルシャフト (12)
【Fターム(参考)】