PC型枠用の連結具
【課題】PC板を用いたコンクリート打込み型枠の施工において、支保工を不要とすると共に、施工を容易にする。
【解決手段】PC型枠用の連結具1は、PC板41の各々の裏側コーナー部に突設され、軸部21と頭部22とを有するボルト状の被連結金具2と、壁面を形成するように上下左右に立設されるPC板41の各々を、それらのコーナー部において被連結金具2を介して連結する連結金具3とを備える。連結金具3は、PC板41の裏側に当接される板状部材と、この板状部材の周縁に斜めに開口する複数の切欠きとを有し、被連結金具2の軸部21がその開口を通して切欠き内に挿嵌されることにより、PC板41同士を連結する。これにより、支保工が不要となると共に、型枠の施工が容易になる。
【解決手段】PC型枠用の連結具1は、PC板41の各々の裏側コーナー部に突設され、軸部21と頭部22とを有するボルト状の被連結金具2と、壁面を形成するように上下左右に立設されるPC板41の各々を、それらのコーナー部において被連結金具2を介して連結する連結金具3とを備える。連結金具3は、PC板41の裏側に当接される板状部材と、この板状部材の周縁に斜めに開口する複数の切欠きとを有し、被連結金具2の軸部21がその開口を通して切欠き内に挿嵌されることにより、PC板41同士を連結する。これにより、支保工が不要となると共に、型枠の施工が容易になる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート打込み型枠を構成するプレキャストコンクリート板(PC板)を連結するためのPC型枠用の連結具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、壁等の鉄筋コンクリート構造物の施工において、支保工で支持された型枠を仮設し、型枠にコンクリートを打込んだ後、型枠と支保工を撤去する工法が広く用いられている。このような工法は、型枠と支保工の仮設及び撤去が必要であるので、工期が長くなり、施工コストが高くなる。また、省力化工法として、工場製品のプレキャストコンクリート板を用いて現場で型枠を組み立てた後、型枠にコンクリートを打込んで一体化し、型枠の撤去を省略した工法が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、このような省力化工法は、依然として支保工が必要であり、省力化が十分とはいえない。また、この省力化工法は、作業員が型枠内側で行う組立作業があり、型枠内側には鉄筋が組まれていて作業員が入ることが難しいため、施工が容易ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−333829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題を解決するものであり、PC板を用いたコンクリート打込み型枠の施工において、支保工を不要とすると共に、施工を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、複数のプレキャストコンクリート板(以下、PC板という)を連結してコンクリート打込み型枠を構成するためのPC型枠用の連結具であって、前記PC板の各々の裏側コーナー部に突設され、軸部と頭部とを有するボルト状の被連結金具と、壁面を形成するように上下左右に立設される前記PC板の各々を、それらのコーナー部において前記被連結金具を介して連結する連結金具と、を備え、前記連結金具は、前記PC板の裏側に当接される板状部材と、この板状部材の周縁に斜めに開口する複数の切欠きとを有し、前記被連結金具の軸部が前記開口を通して切欠き内に挿嵌されることにより、前記PC板同士を連結するものである。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載のPC型枠用の連結具において、前記連結金具は、前記切欠きの縁に、前記切欠き内に挿嵌された状態の前記被連結金具の軸部が切欠き開口側へ抜脱することを防止する凸部を有するものである。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載のPC型枠用の連結具において、前記連結金具は、前記板状部材に、互いに対向して立設されるPC板間の間隔を保つためのセパレータが貫通され、該セパレータの一端が固定されるものである。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のPC型枠用の連結具を用い、立設されたPC板の上側コーナー部に突設されている前記被連結金具に前記連結金具を取り付け、そのPC板の上端に別のPC板を落とし込むように立設することにより、それらのPC板同士を連結することを特徴とするコンクリート打込み型枠の組立方法である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、型枠を構成するPC板同士を連結具で連結するので、型枠を支持する支保工が不要となる。また、連結作業前に予めPC板に取り付けられているボルト状の被連結金具が連結金具の切欠きに挿嵌されることによりPC板同士を連結するため、作業員が型枠内側に入って被連結金具を取り付ける必要がなく、型枠の施工が容易になる。
【0010】
請求項2の発明によれば、切欠き内に挿嵌された状態の軸部が凸部で係止されるので、切欠き開口側へ抜脱することが防止される。
【0011】
請求項3の発明によれば、PC板で構成された型枠にコンクリートを打込んだとき、PC板に側圧が加わるが、互いに対向するPC板は、連結金具及びセパレータを介して連結されていることにより、高い型枠強度を持つ。
【0012】
請求項4の発明によれば、型枠外側からPC板を持って落とし込むことによって容易にPC板同士を連結することができ、型枠の施工が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係るPC型枠用の連結具を用いてPC板を連結するコンクリート打込み型枠の施工中における断面図。
【図2】同連結具の断面図。
【図3】同連結具を型枠内側から見た正面図。
【図4】同連結具の連結金具の正面図。
【図5】(a)は同連結金具の側面図、(b)は図4のA−A線端面図、(c)は図4のB−B線端面図。
【図6】同連結金具における切欠きの正面図。
【図7】(a)は右傾した切欠きを有する同連結金具の正面図、(b)は左傾した切欠きを有する同連結金具の正面図。
【図8】上記コンクリート打込み型枠を型枠内側から見た正面図。
【図9】(a)は同コンクリート打込み型枠における最下段平面部用の連結金具の平面図、(b)は同連結金具の側面図、(c)は同連結金具の正面図。
【図10】(a)は最上段平面部用の連結金具の平面図、(b)は同連結金具の側面図、(c)は同連結金具の正面図。
【図11】(a)は最下段隅角部用の連結金具の平面図、(b)は同連結金具の側面図、(c)は同連結金具の正面図。
【図12】(a)は中段隅角部用の連結金具の平面図、(b)は同連結金具の側面図、(c)は同連結金具の正面図。
【図13】(a)は最上段隅角部用の連結金具の平面図、(b)は同連結金具の側面図、(c)は同連結金具の正面図。
【図14】上記コンクリート打込み型枠の中段を上から見た平面図。
【図15】斜め方向にセパレータを取り付けた上記連結金具(中段平面部用)の断面図。
【図16】同セパレータの取り付けに用いられる座金の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態に係るPC型枠用の連結具を図1乃至図7(a)(b)を参照して説明する。図1に示されるように、PC型枠用の連結具1(以下、連結具という)は、被連結金具2と連結金具3とを備え、複数のプレキャストコンクリート板41(以下、PC板という)を連結してコンクリート打込み型枠4(以下、型枠という)を構成するために用いられる。コンクリート床面5上に鉄筋6が組まれた後、PC板41が白抜き矢印で示されるように連結具1で連結され、鉄筋6の周囲に立設されて型枠4が組み立てられる。対向する連結金具3間には、セパレータ7が設けられる。セパレータ7は、棒状の型枠間隔保持材であり、対向して立設されるPC板41の間隔を保つ。型枠4が組み立てられた後、コンクリートが打込まれる。型枠4に打込まれたコンクリートによってPC板41に加わる側圧は、セパレータ7が受ける。コンクリートが硬化して型枠4と一体化し、壁等のコンクリート構造物が造られる。連結具1とセパレータ7は、コンクリート内に残置される。
【0015】
図2及び図3に示されるように、被連結金具2は、軸部21と頭部22とを有するボルト状の金具であり、PC板41の各々の裏側コーナー部に突設される。PC板41の裏側とは、コンクリートが打込まれる側である。連結金具3は、壁面を形成するように上下左右に立設されるPC板41の各々を、それらのコーナー部において被連結金具2を介して連結する金具である。この連結金具3は、PC板41の裏側に当接される板状部材31と、この板状部材31の周縁に斜めに開口する複数の切欠き32とを有し、被連結金具2の軸部21が開口を通して切欠き32内に挿嵌されることにより、PC板41同士を連結する。
【0016】
PC板41は、工場で製造される矩形のコンクリート板であり、型枠4のせき板として用いられる。せき板とは、型枠において、コンクリートの流出を防止すると共に、コンクリートによる側圧を支える板である。PC板41の寸法は、現場の作業員が一人で持つことができる大きさ及び重量(30kg以下)にするため、例えば50cm角で厚さ3〜4cm程度とすることが望ましい。PC板41は、コンクリートが硬化した後に撤去されず、コンクリート構造物の外壁を構成する。コンクリート構造物の美観を向上するため、PC板41は、表側の壁面に凹凸模様を有する化粧型枠用PC板であってもよい。PC板41の裏側コーナー部には、被連結金具2を螺合するための袋ナット42が製造時に埋め込まれる。袋ナット42は、PC板41内から抜け落ちないようにフランジ43が形成されている。PC板41は、被連結金具2が突設されない平らな状態で、現場に運搬される。このため、複数のPC板41を、互いに重ねて効率的に運搬することができる。
【0017】
被連結金具2は、例えば鋼製のボルトであり、軸部21と、軸部21よりも大径の頭部22とを有し、現場で袋ナット42に螺合されてPC板41に取り付けられる。軸部21の長さは、被連結金具2がPC板41に取り付けられたときに、頭部22とPC板41との間に所定の隙間23ができるように設定されている。その隙間23に連結金具3の板状部材31が嵌合される。板状部材31の嵌合を容易にするため、隙間23が動径方向に拡がるように、頭部22における軸部21側の面にテーパを付けてもよい。
【0018】
連結金具3は、図4及び図5(a)(b)(c)に示されるように、鉄板をプレス加工したものであり、略矩形の板状部材31を有する。板状部材31は、PC板41に当接された状態における上辺と下辺のコーナー部に切欠き32を有する。板状部材31は、切欠き32が開口していない周縁に、補強のための周リブ33が形成される。
【0019】
板状部材31は、中央部が略円錐台形状に成形され、PC板41に当接する側に凹部37を有し、凹部37の中心及びその周囲に、セパレータ7が貫通される孔35、36を有する。セパレータ7は、その端部にねじ山を有し、端部が孔35に貫通され、端部に螺嵌された2個のナット71、72によって板状部材31を挟むことによって連結金具3に固定される。一方のナット71は、凹部37内に収容される。孔36は、セパレータ7を板状部材31に斜め方向に取り付けるために用いられる。
【0020】
図6に示されるように、切欠き32は、縦長の略U字形状であり、長手方向が鉛直方向に対して斜めになるように形成され、板状部材31の周縁に斜めに開口している。切欠き32の長手方向が鉛直方向に対して成す角度θは、約20°とされる。切欠き32の長手方向に直交する幅Wは、被連結金具2の軸部21の直径よりも大きく、頭部22の直径よりも小さい。被連結金具2の軸部21は、切欠き32内に挿嵌される。連結金具3は、切欠き32内に挿嵌された状態の被連結金具2の軸部21(二点鎖線で示す)が切欠き32開口側へ抜脱することを防止する凸部34a、34b、34c(総称して、34)を切欠き32の縁に有する。凸部34a、34cにより、切欠き32内に挿嵌された状態の軸部21の中心から斜め45°上方(矢印F1、F2方向)の切欠き32の縁に、軸部21の外周円に対応する形状の円弧部34aR、34cRが形成される(斜線を付した部分)。
【0021】
被連結金具2の軸部21が切欠き32に挿嵌されるときの軸部21の中心軌跡を矢印Tで示す。切欠き32は、長手方向が斜めになるように形成されているので、軸部21は、切欠き32内を斜め下に移動して挿嵌される。このため、PC板41は、斜め下に落とし込むようにして他のPC板41と連結されるので、連結作業時において、横方向に隣接するPC板41同士の干渉を避けることができる。連結金具3は、図7(a)(b)に示されるように、形状が鏡像関係にある2種類のものが用いられる。切欠き32の長手方向が右傾している連結金具3は、先に立設されたPC板41の右隣に別のPC板41を連結するために用いられ(図7(a)参照)、切欠き32の長手方向が左傾している連結金具3は、先に立設されたPC板41の左隣に別のPC板41を連結するために用いられる(図7(b)参照)。
【0022】
切欠き32内に挿嵌された軸部21は、PC板41の重量によって切欠き32内に保持される。型枠4にコンクリートが打込まれると、PC板41に側圧が加わり、切欠き32内に挿嵌された状態の軸部21を切欠き32開口側へ抜脱する方向(図6及び図7(a)の矢印F1、F2方向)の力が生じる。軸部21は、この力を受けて切欠き32内を移動すると、凸部34、特に凸部34a及び34cで係止され、円弧部34aR、34cRと係合するので、切欠き32開口側へ抜脱することが防止される。
【0023】
上記のように構成された連結具1を用い、現場の作業員は、型枠4の組立において、立設されたPC板41の上側コーナー部に突設されている被連結金具2に連結金具3を取り付け、そのPC板41の上端に別のPC板41を落とし込むように立設することにより、それらのPC板同士を連結する。
【0024】
連結具1は、型枠4にコンクリートが打込まれる前、及び、打込まれたコンクリートが硬化する前に、型枠4を構成するPC板41同士を連結しているので、型枠4を支持する支保工が不要となる。連結具1は、PC板41の裏側に取り付けられるので、打込まれたコンクリートが硬化した後もコンクリート内に残置され、コンクリート構造物の外観に影響しない。また、連結具1は、ボルト状の被連結金具2が連結金具3の切欠き32に挿嵌されることによりPC板41同士を連結するため、被連結金具2は、連結作業前に予めPC板41に取り付けられ、作業員が型枠内側に入って取り付ける必要がなく、型枠4の施工が容易になる。このような連結具1を用いることにより、型枠外側からPC板41を持って落とし込むことによって容易にPC板41同士を連結することができ、型枠4の施工が容易になる。
【0025】
また、連結金具3は、セパレータ7を孔35、36に貫通して取り付けて、コンクリートによってPC板41に加わる側圧をセパレータ7で受ける(図4、図5(c)参照)。型枠4の高さを高くすると側圧が増大するが、セパレータ7で側圧を受けることにより、支保工で側圧を受ける必要がなくなる。型枠4は、互いに対向するPC板41が連結金具3及びセパレータ7を介して連結されていることにより、高い強度を持つ。
【0026】
図8は、型枠4における連結金具の配置を示す。上述した連結金具3は、型枠4中段における4枚のPC板41を平面的に連結する中段平面部用の連結金具である。PC板41の連結には、この中段平面部用の連結金具3に加えて、最下段平面部用の連結金具8aと、最上段平面部用の連結金具8bと、最下段部隅角用の連結金具8cと、中段隅角部用の連結金具8dと、最上段隅角部用の連結金具8eが用いられる。
【0027】
最下段平面部用の連結金具8aは、2枚のPC板41を下側コーナー部で平面的に連結し、コンクリート床面5上に立設するベース金物である。最上段平面部用の連結金具8bは、2枚のPC板41を上側コーナー部で平面的に連結するジョイント金物である。最下段部隅角用の連結金具8cは、型枠4の隅角部において、2枚のPC板41を下側コーナー部で直角に連結し、コンクリート床面5上に立設するベース金物である。中段隅角部用の連結金具8dは、4枚のPC板41を、横には直角に、上下には平面的に連結するジョイント金物である。最上段隅角部用の連結金具8eは、2枚のPC板41を上側コーナー部で直角に連結するジョイント金物である。
【0028】
図9(a)(b)(c)に示されるように、最下段平面部用の連結金具8aは、側面視でL字形に形成され、底板81a及び側板82aを有する。底板81aは、ボルトを通すための丸孔83aを有し、コンクリート床板にボルトで固定される。コンクリート床板には、このボルトを螺合する袋ナットが予め埋設される。袋ナットを用いず、底板81aをアンカーボルトでコンクリート床面に固定してもよい。側板82aは、その上部の周縁に斜めに開口する2つの切欠き32を有する。切欠き32の形状は、中段平面部用の連結金具3の切欠き32と同じであり、長手方向の傾きについては、左傾及び右傾のものが適宜選択される(連結金具8b〜8eについても同様)。連結金具8aは、補強のための周リブ85a及び中間リブ86aを有する。
【0029】
図10(a)(b)(c)に示されるように、最上段平面部用の連結金具8bは、側面視で逆L字形に形成され、側板81b及び天板82bを有する。側板81bは、その下部の周縁に斜めに開口する2つの切欠き32を有する。天板82cは、フックセパレータ(図示せず)を掛着するための丸孔83bを有する。連結金具8bは、補強のための周リブ85b及び中間リブ86bを有する。
【0030】
図11(a)(b)(c)に示されるように、最下段隅角部用の連結金具8cは、互いに直交する底板81c及び2枚の側板82c、83cを有する。底板81cは、ボルトを通すための丸孔84cを有し、コンクリート床板にボルトで固定される。各側板82c、83cは、その上部の周縁に斜めに開口する切欠き32を有する。連結金具8cは、補強のための周リブ85c及び中間リブ86cを有する。
【0031】
図12(a)(b)(c)に示されるように、中段隅角部用の連結金具8dは、平面視でL字形に形成され、2枚の側板81d、82dを有する。各側板81d、82dは、その上部の周縁に斜めに開口する切欠き82を有し、下部にPC板41にボルト止めするための丸孔83dを有する。連結金具8dは、補強のための周リブ85d及び中間リブ86dを有する。
【0032】
図13(a)(b)(c)に示されるように、最上段隅角部用の連結金具8eは、平面視でL字形に形成され、2枚の側板81e、82eを有する。各側板81e、82eは、その下部の周縁に斜めに開口する切欠き32を有する。連結金具8eは、補強のための周リブ85e及び中間リブ86eを有する。
【0033】
型枠4は、このような連結金具3、8a、8b、8c、8d、8eを用い、PC板41を下から上に順に連結して組み立てられる(図8参照)。
【0034】
図14は、型枠4の隅角部の施工順序を示す。先ず、型枠4における同図で右側の壁面が形成される。PC板41は、矢印C1で示す施工順序でコンクリート床面上に1段が順次立設される。次に、同図で上側及び下側の壁面が形成される。PC板41は、矢印C2で示す施工順序でコンクリート床面上に右から左に1段が順次立設される。次に、左側の壁面が形成される(図示せず)。
【0035】
上記のようにコンクリート床面上に立設されたPC板41の上端に、別のPC板がさらに1段立設される。施工順序は、矢印C1、C2の順である。矢印C2で示す部分の施工において、対向する連結金具3同士を接続するようにセパレータ7取り付けられる。その後、連結金具3同士を斜め方向に接続するセパレータ7が取り付けられる。セパレータ7の取り付け作業は、各段ごとに行われるので、型枠4外側から作業員の手が届く範囲で行われ、作業員が型枠4内側に入って行う必要はない。立設されたPC板41の上端に、必要な型枠4の高さに応じて、別のPC板41がさらに1段づつ立設される。
【0036】
連結金具3同士を斜め方向に接続するセパレータ7の取り付け構造について、図15及び図16を参照して説明する。図15に示されるように、ボルト73が連結金具3の凹部37側から座金38を通して孔36に挿入され、ボルト73の軸部とセパレータ7の端部が、長ナット74で締結される。長ナット74に替えて、ターンバックルを用いてもよい。座金38は、例えば、凹部37の内面に沿った形状に曲げられた鉄板であり、図16に示されるように3つの丸孔39を有するものが用いられる。
【0037】
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限られず、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、セパレータ7は、その端部をねじ山を有する鋼棒とし、中間部を鋼線としてもよい。これにより、複数のセパレータ7を容易に平面交差させることができる。
【符号の説明】
【0038】
1 PC型枠用の連結具(連結具)
2 被連結金具
21 軸部
22 頭部
3 連結金具
31 板状部材
32 切欠き
34(34a、34b、34c) 凸部
35、36 孔
4 コンクリート打込み型枠(型枠)
41 プレキャストコンクリート板(PC板)
7 セパレータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート打込み型枠を構成するプレキャストコンクリート板(PC板)を連結するためのPC型枠用の連結具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、壁等の鉄筋コンクリート構造物の施工において、支保工で支持された型枠を仮設し、型枠にコンクリートを打込んだ後、型枠と支保工を撤去する工法が広く用いられている。このような工法は、型枠と支保工の仮設及び撤去が必要であるので、工期が長くなり、施工コストが高くなる。また、省力化工法として、工場製品のプレキャストコンクリート板を用いて現場で型枠を組み立てた後、型枠にコンクリートを打込んで一体化し、型枠の撤去を省略した工法が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、このような省力化工法は、依然として支保工が必要であり、省力化が十分とはいえない。また、この省力化工法は、作業員が型枠内側で行う組立作業があり、型枠内側には鉄筋が組まれていて作業員が入ることが難しいため、施工が容易ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−333829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題を解決するものであり、PC板を用いたコンクリート打込み型枠の施工において、支保工を不要とすると共に、施工を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、複数のプレキャストコンクリート板(以下、PC板という)を連結してコンクリート打込み型枠を構成するためのPC型枠用の連結具であって、前記PC板の各々の裏側コーナー部に突設され、軸部と頭部とを有するボルト状の被連結金具と、壁面を形成するように上下左右に立設される前記PC板の各々を、それらのコーナー部において前記被連結金具を介して連結する連結金具と、を備え、前記連結金具は、前記PC板の裏側に当接される板状部材と、この板状部材の周縁に斜めに開口する複数の切欠きとを有し、前記被連結金具の軸部が前記開口を通して切欠き内に挿嵌されることにより、前記PC板同士を連結するものである。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載のPC型枠用の連結具において、前記連結金具は、前記切欠きの縁に、前記切欠き内に挿嵌された状態の前記被連結金具の軸部が切欠き開口側へ抜脱することを防止する凸部を有するものである。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載のPC型枠用の連結具において、前記連結金具は、前記板状部材に、互いに対向して立設されるPC板間の間隔を保つためのセパレータが貫通され、該セパレータの一端が固定されるものである。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のPC型枠用の連結具を用い、立設されたPC板の上側コーナー部に突設されている前記被連結金具に前記連結金具を取り付け、そのPC板の上端に別のPC板を落とし込むように立設することにより、それらのPC板同士を連結することを特徴とするコンクリート打込み型枠の組立方法である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、型枠を構成するPC板同士を連結具で連結するので、型枠を支持する支保工が不要となる。また、連結作業前に予めPC板に取り付けられているボルト状の被連結金具が連結金具の切欠きに挿嵌されることによりPC板同士を連結するため、作業員が型枠内側に入って被連結金具を取り付ける必要がなく、型枠の施工が容易になる。
【0010】
請求項2の発明によれば、切欠き内に挿嵌された状態の軸部が凸部で係止されるので、切欠き開口側へ抜脱することが防止される。
【0011】
請求項3の発明によれば、PC板で構成された型枠にコンクリートを打込んだとき、PC板に側圧が加わるが、互いに対向するPC板は、連結金具及びセパレータを介して連結されていることにより、高い型枠強度を持つ。
【0012】
請求項4の発明によれば、型枠外側からPC板を持って落とし込むことによって容易にPC板同士を連結することができ、型枠の施工が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係るPC型枠用の連結具を用いてPC板を連結するコンクリート打込み型枠の施工中における断面図。
【図2】同連結具の断面図。
【図3】同連結具を型枠内側から見た正面図。
【図4】同連結具の連結金具の正面図。
【図5】(a)は同連結金具の側面図、(b)は図4のA−A線端面図、(c)は図4のB−B線端面図。
【図6】同連結金具における切欠きの正面図。
【図7】(a)は右傾した切欠きを有する同連結金具の正面図、(b)は左傾した切欠きを有する同連結金具の正面図。
【図8】上記コンクリート打込み型枠を型枠内側から見た正面図。
【図9】(a)は同コンクリート打込み型枠における最下段平面部用の連結金具の平面図、(b)は同連結金具の側面図、(c)は同連結金具の正面図。
【図10】(a)は最上段平面部用の連結金具の平面図、(b)は同連結金具の側面図、(c)は同連結金具の正面図。
【図11】(a)は最下段隅角部用の連結金具の平面図、(b)は同連結金具の側面図、(c)は同連結金具の正面図。
【図12】(a)は中段隅角部用の連結金具の平面図、(b)は同連結金具の側面図、(c)は同連結金具の正面図。
【図13】(a)は最上段隅角部用の連結金具の平面図、(b)は同連結金具の側面図、(c)は同連結金具の正面図。
【図14】上記コンクリート打込み型枠の中段を上から見た平面図。
【図15】斜め方向にセパレータを取り付けた上記連結金具(中段平面部用)の断面図。
【図16】同セパレータの取り付けに用いられる座金の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態に係るPC型枠用の連結具を図1乃至図7(a)(b)を参照して説明する。図1に示されるように、PC型枠用の連結具1(以下、連結具という)は、被連結金具2と連結金具3とを備え、複数のプレキャストコンクリート板41(以下、PC板という)を連結してコンクリート打込み型枠4(以下、型枠という)を構成するために用いられる。コンクリート床面5上に鉄筋6が組まれた後、PC板41が白抜き矢印で示されるように連結具1で連結され、鉄筋6の周囲に立設されて型枠4が組み立てられる。対向する連結金具3間には、セパレータ7が設けられる。セパレータ7は、棒状の型枠間隔保持材であり、対向して立設されるPC板41の間隔を保つ。型枠4が組み立てられた後、コンクリートが打込まれる。型枠4に打込まれたコンクリートによってPC板41に加わる側圧は、セパレータ7が受ける。コンクリートが硬化して型枠4と一体化し、壁等のコンクリート構造物が造られる。連結具1とセパレータ7は、コンクリート内に残置される。
【0015】
図2及び図3に示されるように、被連結金具2は、軸部21と頭部22とを有するボルト状の金具であり、PC板41の各々の裏側コーナー部に突設される。PC板41の裏側とは、コンクリートが打込まれる側である。連結金具3は、壁面を形成するように上下左右に立設されるPC板41の各々を、それらのコーナー部において被連結金具2を介して連結する金具である。この連結金具3は、PC板41の裏側に当接される板状部材31と、この板状部材31の周縁に斜めに開口する複数の切欠き32とを有し、被連結金具2の軸部21が開口を通して切欠き32内に挿嵌されることにより、PC板41同士を連結する。
【0016】
PC板41は、工場で製造される矩形のコンクリート板であり、型枠4のせき板として用いられる。せき板とは、型枠において、コンクリートの流出を防止すると共に、コンクリートによる側圧を支える板である。PC板41の寸法は、現場の作業員が一人で持つことができる大きさ及び重量(30kg以下)にするため、例えば50cm角で厚さ3〜4cm程度とすることが望ましい。PC板41は、コンクリートが硬化した後に撤去されず、コンクリート構造物の外壁を構成する。コンクリート構造物の美観を向上するため、PC板41は、表側の壁面に凹凸模様を有する化粧型枠用PC板であってもよい。PC板41の裏側コーナー部には、被連結金具2を螺合するための袋ナット42が製造時に埋め込まれる。袋ナット42は、PC板41内から抜け落ちないようにフランジ43が形成されている。PC板41は、被連結金具2が突設されない平らな状態で、現場に運搬される。このため、複数のPC板41を、互いに重ねて効率的に運搬することができる。
【0017】
被連結金具2は、例えば鋼製のボルトであり、軸部21と、軸部21よりも大径の頭部22とを有し、現場で袋ナット42に螺合されてPC板41に取り付けられる。軸部21の長さは、被連結金具2がPC板41に取り付けられたときに、頭部22とPC板41との間に所定の隙間23ができるように設定されている。その隙間23に連結金具3の板状部材31が嵌合される。板状部材31の嵌合を容易にするため、隙間23が動径方向に拡がるように、頭部22における軸部21側の面にテーパを付けてもよい。
【0018】
連結金具3は、図4及び図5(a)(b)(c)に示されるように、鉄板をプレス加工したものであり、略矩形の板状部材31を有する。板状部材31は、PC板41に当接された状態における上辺と下辺のコーナー部に切欠き32を有する。板状部材31は、切欠き32が開口していない周縁に、補強のための周リブ33が形成される。
【0019】
板状部材31は、中央部が略円錐台形状に成形され、PC板41に当接する側に凹部37を有し、凹部37の中心及びその周囲に、セパレータ7が貫通される孔35、36を有する。セパレータ7は、その端部にねじ山を有し、端部が孔35に貫通され、端部に螺嵌された2個のナット71、72によって板状部材31を挟むことによって連結金具3に固定される。一方のナット71は、凹部37内に収容される。孔36は、セパレータ7を板状部材31に斜め方向に取り付けるために用いられる。
【0020】
図6に示されるように、切欠き32は、縦長の略U字形状であり、長手方向が鉛直方向に対して斜めになるように形成され、板状部材31の周縁に斜めに開口している。切欠き32の長手方向が鉛直方向に対して成す角度θは、約20°とされる。切欠き32の長手方向に直交する幅Wは、被連結金具2の軸部21の直径よりも大きく、頭部22の直径よりも小さい。被連結金具2の軸部21は、切欠き32内に挿嵌される。連結金具3は、切欠き32内に挿嵌された状態の被連結金具2の軸部21(二点鎖線で示す)が切欠き32開口側へ抜脱することを防止する凸部34a、34b、34c(総称して、34)を切欠き32の縁に有する。凸部34a、34cにより、切欠き32内に挿嵌された状態の軸部21の中心から斜め45°上方(矢印F1、F2方向)の切欠き32の縁に、軸部21の外周円に対応する形状の円弧部34aR、34cRが形成される(斜線を付した部分)。
【0021】
被連結金具2の軸部21が切欠き32に挿嵌されるときの軸部21の中心軌跡を矢印Tで示す。切欠き32は、長手方向が斜めになるように形成されているので、軸部21は、切欠き32内を斜め下に移動して挿嵌される。このため、PC板41は、斜め下に落とし込むようにして他のPC板41と連結されるので、連結作業時において、横方向に隣接するPC板41同士の干渉を避けることができる。連結金具3は、図7(a)(b)に示されるように、形状が鏡像関係にある2種類のものが用いられる。切欠き32の長手方向が右傾している連結金具3は、先に立設されたPC板41の右隣に別のPC板41を連結するために用いられ(図7(a)参照)、切欠き32の長手方向が左傾している連結金具3は、先に立設されたPC板41の左隣に別のPC板41を連結するために用いられる(図7(b)参照)。
【0022】
切欠き32内に挿嵌された軸部21は、PC板41の重量によって切欠き32内に保持される。型枠4にコンクリートが打込まれると、PC板41に側圧が加わり、切欠き32内に挿嵌された状態の軸部21を切欠き32開口側へ抜脱する方向(図6及び図7(a)の矢印F1、F2方向)の力が生じる。軸部21は、この力を受けて切欠き32内を移動すると、凸部34、特に凸部34a及び34cで係止され、円弧部34aR、34cRと係合するので、切欠き32開口側へ抜脱することが防止される。
【0023】
上記のように構成された連結具1を用い、現場の作業員は、型枠4の組立において、立設されたPC板41の上側コーナー部に突設されている被連結金具2に連結金具3を取り付け、そのPC板41の上端に別のPC板41を落とし込むように立設することにより、それらのPC板同士を連結する。
【0024】
連結具1は、型枠4にコンクリートが打込まれる前、及び、打込まれたコンクリートが硬化する前に、型枠4を構成するPC板41同士を連結しているので、型枠4を支持する支保工が不要となる。連結具1は、PC板41の裏側に取り付けられるので、打込まれたコンクリートが硬化した後もコンクリート内に残置され、コンクリート構造物の外観に影響しない。また、連結具1は、ボルト状の被連結金具2が連結金具3の切欠き32に挿嵌されることによりPC板41同士を連結するため、被連結金具2は、連結作業前に予めPC板41に取り付けられ、作業員が型枠内側に入って取り付ける必要がなく、型枠4の施工が容易になる。このような連結具1を用いることにより、型枠外側からPC板41を持って落とし込むことによって容易にPC板41同士を連結することができ、型枠4の施工が容易になる。
【0025】
また、連結金具3は、セパレータ7を孔35、36に貫通して取り付けて、コンクリートによってPC板41に加わる側圧をセパレータ7で受ける(図4、図5(c)参照)。型枠4の高さを高くすると側圧が増大するが、セパレータ7で側圧を受けることにより、支保工で側圧を受ける必要がなくなる。型枠4は、互いに対向するPC板41が連結金具3及びセパレータ7を介して連結されていることにより、高い強度を持つ。
【0026】
図8は、型枠4における連結金具の配置を示す。上述した連結金具3は、型枠4中段における4枚のPC板41を平面的に連結する中段平面部用の連結金具である。PC板41の連結には、この中段平面部用の連結金具3に加えて、最下段平面部用の連結金具8aと、最上段平面部用の連結金具8bと、最下段部隅角用の連結金具8cと、中段隅角部用の連結金具8dと、最上段隅角部用の連結金具8eが用いられる。
【0027】
最下段平面部用の連結金具8aは、2枚のPC板41を下側コーナー部で平面的に連結し、コンクリート床面5上に立設するベース金物である。最上段平面部用の連結金具8bは、2枚のPC板41を上側コーナー部で平面的に連結するジョイント金物である。最下段部隅角用の連結金具8cは、型枠4の隅角部において、2枚のPC板41を下側コーナー部で直角に連結し、コンクリート床面5上に立設するベース金物である。中段隅角部用の連結金具8dは、4枚のPC板41を、横には直角に、上下には平面的に連結するジョイント金物である。最上段隅角部用の連結金具8eは、2枚のPC板41を上側コーナー部で直角に連結するジョイント金物である。
【0028】
図9(a)(b)(c)に示されるように、最下段平面部用の連結金具8aは、側面視でL字形に形成され、底板81a及び側板82aを有する。底板81aは、ボルトを通すための丸孔83aを有し、コンクリート床板にボルトで固定される。コンクリート床板には、このボルトを螺合する袋ナットが予め埋設される。袋ナットを用いず、底板81aをアンカーボルトでコンクリート床面に固定してもよい。側板82aは、その上部の周縁に斜めに開口する2つの切欠き32を有する。切欠き32の形状は、中段平面部用の連結金具3の切欠き32と同じであり、長手方向の傾きについては、左傾及び右傾のものが適宜選択される(連結金具8b〜8eについても同様)。連結金具8aは、補強のための周リブ85a及び中間リブ86aを有する。
【0029】
図10(a)(b)(c)に示されるように、最上段平面部用の連結金具8bは、側面視で逆L字形に形成され、側板81b及び天板82bを有する。側板81bは、その下部の周縁に斜めに開口する2つの切欠き32を有する。天板82cは、フックセパレータ(図示せず)を掛着するための丸孔83bを有する。連結金具8bは、補強のための周リブ85b及び中間リブ86bを有する。
【0030】
図11(a)(b)(c)に示されるように、最下段隅角部用の連結金具8cは、互いに直交する底板81c及び2枚の側板82c、83cを有する。底板81cは、ボルトを通すための丸孔84cを有し、コンクリート床板にボルトで固定される。各側板82c、83cは、その上部の周縁に斜めに開口する切欠き32を有する。連結金具8cは、補強のための周リブ85c及び中間リブ86cを有する。
【0031】
図12(a)(b)(c)に示されるように、中段隅角部用の連結金具8dは、平面視でL字形に形成され、2枚の側板81d、82dを有する。各側板81d、82dは、その上部の周縁に斜めに開口する切欠き82を有し、下部にPC板41にボルト止めするための丸孔83dを有する。連結金具8dは、補強のための周リブ85d及び中間リブ86dを有する。
【0032】
図13(a)(b)(c)に示されるように、最上段隅角部用の連結金具8eは、平面視でL字形に形成され、2枚の側板81e、82eを有する。各側板81e、82eは、その下部の周縁に斜めに開口する切欠き32を有する。連結金具8eは、補強のための周リブ85e及び中間リブ86eを有する。
【0033】
型枠4は、このような連結金具3、8a、8b、8c、8d、8eを用い、PC板41を下から上に順に連結して組み立てられる(図8参照)。
【0034】
図14は、型枠4の隅角部の施工順序を示す。先ず、型枠4における同図で右側の壁面が形成される。PC板41は、矢印C1で示す施工順序でコンクリート床面上に1段が順次立設される。次に、同図で上側及び下側の壁面が形成される。PC板41は、矢印C2で示す施工順序でコンクリート床面上に右から左に1段が順次立設される。次に、左側の壁面が形成される(図示せず)。
【0035】
上記のようにコンクリート床面上に立設されたPC板41の上端に、別のPC板がさらに1段立設される。施工順序は、矢印C1、C2の順である。矢印C2で示す部分の施工において、対向する連結金具3同士を接続するようにセパレータ7取り付けられる。その後、連結金具3同士を斜め方向に接続するセパレータ7が取り付けられる。セパレータ7の取り付け作業は、各段ごとに行われるので、型枠4外側から作業員の手が届く範囲で行われ、作業員が型枠4内側に入って行う必要はない。立設されたPC板41の上端に、必要な型枠4の高さに応じて、別のPC板41がさらに1段づつ立設される。
【0036】
連結金具3同士を斜め方向に接続するセパレータ7の取り付け構造について、図15及び図16を参照して説明する。図15に示されるように、ボルト73が連結金具3の凹部37側から座金38を通して孔36に挿入され、ボルト73の軸部とセパレータ7の端部が、長ナット74で締結される。長ナット74に替えて、ターンバックルを用いてもよい。座金38は、例えば、凹部37の内面に沿った形状に曲げられた鉄板であり、図16に示されるように3つの丸孔39を有するものが用いられる。
【0037】
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限られず、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、セパレータ7は、その端部をねじ山を有する鋼棒とし、中間部を鋼線としてもよい。これにより、複数のセパレータ7を容易に平面交差させることができる。
【符号の説明】
【0038】
1 PC型枠用の連結具(連結具)
2 被連結金具
21 軸部
22 頭部
3 連結金具
31 板状部材
32 切欠き
34(34a、34b、34c) 凸部
35、36 孔
4 コンクリート打込み型枠(型枠)
41 プレキャストコンクリート板(PC板)
7 セパレータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のプレキャストコンクリート板(以下、PC板)を連結してコンクリート打込み型枠を構成するためのPC型枠用の連結具であって、
前記PC板の各々の裏側コーナー部に突設され、軸部と頭部とを有するボルト状の被連結金具と、
壁面を形成するように上下左右に立設される前記PC板の各々を、それらのコーナー部において前記被連結金具を介して連結する連結金具と、を備え、
前記連結金具は、前記PC板の裏側に当接される板状部材と、この板状部材の周縁に斜めに開口する複数の切欠きとを有し、前記被連結金具の軸部が前記開口を通して切欠き内に挿嵌されることにより、前記PC板同士を連結することを特徴とするPC型枠用の連結具。
【請求項2】
前記連結金具は、前記切欠きの縁に、前記切欠き内に挿嵌された状態の前記被連結金具の軸部が切欠き開口側へ抜脱することを防止する凸部を有することを特徴とする請求項1に記載のPC型枠用の連結具。
【請求項3】
前記連結金具は、前記板状部材に、互いに対向して立設されるPC板間の間隔を保つためのセパレータが貫通され、該セパレータの一端が固定されること特徴とする請求項1又は請求項2に記載のPC型枠用の連結具。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のPC型枠用の連結具を用い、立設されたPC板の上側コーナー部に突設されている前記被連結金具に前記連結金具を取り付け、そのPC板の上端に別のPC板を落とし込むように立設することにより、それらのPC板同士を連結することを特徴とするコンクリート打込み型枠の組立方法。
【請求項1】
複数のプレキャストコンクリート板(以下、PC板)を連結してコンクリート打込み型枠を構成するためのPC型枠用の連結具であって、
前記PC板の各々の裏側コーナー部に突設され、軸部と頭部とを有するボルト状の被連結金具と、
壁面を形成するように上下左右に立設される前記PC板の各々を、それらのコーナー部において前記被連結金具を介して連結する連結金具と、を備え、
前記連結金具は、前記PC板の裏側に当接される板状部材と、この板状部材の周縁に斜めに開口する複数の切欠きとを有し、前記被連結金具の軸部が前記開口を通して切欠き内に挿嵌されることにより、前記PC板同士を連結することを特徴とするPC型枠用の連結具。
【請求項2】
前記連結金具は、前記切欠きの縁に、前記切欠き内に挿嵌された状態の前記被連結金具の軸部が切欠き開口側へ抜脱することを防止する凸部を有することを特徴とする請求項1に記載のPC型枠用の連結具。
【請求項3】
前記連結金具は、前記板状部材に、互いに対向して立設されるPC板間の間隔を保つためのセパレータが貫通され、該セパレータの一端が固定されること特徴とする請求項1又は請求項2に記載のPC型枠用の連結具。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のPC型枠用の連結具を用い、立設されたPC板の上側コーナー部に突設されている前記被連結金具に前記連結金具を取り付け、そのPC板の上端に別のPC板を落とし込むように立設することにより、それらのPC板同士を連結することを特徴とするコンクリート打込み型枠の組立方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−132710(P2011−132710A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291831(P2009−291831)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(509354020)
【出願人】(502225442)株式会社クキ・イーアンドティー (7)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(509354020)
【出願人】(502225442)株式会社クキ・イーアンドティー (7)
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