説明

PETバイオマーカー製造システム用化学製造モジュールおよび投与液合成カード

陽電子放射断層撮影法(PET)に用いる1回の作動当たり約1〜4単位用量の放射性医薬品バイオマーカーを合成するためのマイクロ流体放射性医薬品製造システムおよび方法。このシステムは、加速器または他の放射性同位体発生器から放射性同位体を受け入れる反応容器を含む。この反応容器に有機試薬および水性試薬を導入し、混合物を加熱してあらかじめ選択された放射性医薬品の溶液を合成する。放射性医薬品溶液を固相抽出カラムまたはフィルターに通過させて精製する。この合成方法により、廃棄物が低減し、必要に応じた放射性医薬品の製造が可能となる。この合成方法により、単位用量が患者に投与される現場および場所の近くでの製造が可能となることで、合成から投与までの時間が短縮し、それにより、崩壊による活性同位体の損失が最小限となり、全体としてより少ない量の放射性同位体の製造が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
該当なし
連邦政府による資金適用を受けた研究開発の記載
該当なし
[0001]本発明は、陽電子放射断層撮影法(PET)に用いる放射性医薬品を合成し、精製するための化学装置および方法に関する。特に、本発明は、PETバイオマーカーの液体試料を分析するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]バイオマーカーは、生物学的システム調べるのに用いられ、生体分子を含む特定の分子を放射性同位体で「タグ付けする」または標識することにより作り出すことができる。陽電子放出放射性同位体を含むバイオマーカーは、人体の種々の器官系における潅流または代謝、生化学的および機能活性を評価するために用いられる非侵襲的画像診断法である陽電子放射断層撮影法(PET)に必要である。PETは非常に感度の高い生化学的画像技術であり、また疾患の初期の兆候は本質的に主として生化学的であるため、PETは、解剖学的変化が起こる前に、またしばしば医学的症状が明らかになる前に多くの疾患を検出し得る。PETは、身体の1つまたは複数の領域における代謝活性を評価するために放射性医薬品が患者に注射される他の核医学技術と類似している。しかし、PETは、磁気共鳴画像法(MRI)、コンピュータ断層撮影法(CT)および超音波検査などの、生理学的画像というよりも患者の解剖学的構造をイメージングする伝統的な画像技術から得られない情報を提供する。生理的活性は、経時的な解剖学的変化よりも特定の形の疾患、特に癌のはるかに早期の検出手段となる。
【0003】
[0003]陽電子放出放射性同位体は、放射性崩壊を受け、それにより、その核が陽電子を放出する。ヒト組織において、陽電子は、電子と相互作用して、陽電子および電子の総質量を2光子のエネルギーに変換する前に不可避的に数ミリメートル未満移動する。光子は、互いから約180度変位し、人体の反対側で「同時計数」光子として同時に検出することができる。現代のPETスキャナは、1つまたは両方の光子を検出し、取得データのコンピュータ再構成により、イメージングしている器官内の同位体、したがってタグ付き分子の分布の視覚描写を可能にする。
【0004】
[0004]最も臨床的に重要な陽電子放出放射性同位体は、サイクロトロンで製造される。サイクロトロンは、荷電粒子を外側準球面軌道に沿って一般的に数百万電子ボルト程度の所定の抽出エネルギーまで加速することにより稼働する。高エネルギー荷電粒子は、所定の経路に沿って移動する連続的ビームを形成し、標的に衝撃する。衝撃粒子が標的において相互に作用するとき、核反応が原子内レベルで起こり、これによって放射性同位体の製造がもたらされる。次に放射性同位体は、他の物質と化学的に結合して、人体への導入に適する放射性化学物質または放射性医薬品(以後「放射性医薬品」)を合成する。PETに用いる放射性同位体を製造するために伝統的に用いられたサイクロトロンは、物理的空間および放射線遮へいの十分な確保を必要とする大規模な機械であった。これらの要件ならびに費用の考慮により、個々の病院およびイメージングセンターがPETに用いる放射性医薬品の製造のための現場での施設を有することは実現不可能となった。
【0005】
[0005]したがって、現在の標準的慣行では、PETに用いる放射性医薬品は、集中型製造施設で合成されている。その場合、放射性医薬品は、最大322km(200マイル)離れた病院およびイメージングセンターに輸送しなければならない。少量の臨床的に重要な陽電子放出放射性同位体の半減期は比較的短いため、所与の配送品中の放射性同位体の大部分が輸送段階中に崩壊し、輸送段階中で有用でなくなると予想される。活性な放射性医薬品の十分に多量の試料がPET手順における患者への適用の時点に存在することを保証するために、輸送前にはるかにより多量の放射性医薬品を合成しなければならない。これは、活性原子の多くが輸送中に崩壊するという予想により、1単位用量よりはるかに多量の放射性同位体の製造および放射性医薬品の合成を必要とする。
【0006】
[0006]製造施設から病院またはイメージングセンター(以後「処置場」)に放射性医薬品を輸送する必要性は、PET手順に選択される同位体の種類にも影響を与える。現在、フッ素同位体、特にフッ素18(またはF−18)が最も広範な使用を享受している。F−18放射性同位体は、PETに用いる[18F]フルオロデオキシグルコース、すなわち[18F]FDGに一般的に合成される。F−18は、主として有用な量を輸送するのに十分な時間をもうけることを可能にする約110分であるその半減期のため広く用いられている。集中型製造および流通の現行のシステムは、他の可能な放射性同位体の使用を大いに妨げている。特に、炭素11は、PETに使用されたが、20.5分というその比較的短い半減期のため、放射性医薬品を相当の距離輸送しなければならない場合には、その使用が困難となる。同様の考慮により、窒素13(半減期:10分)および酸素15(半減期:2.5分)の使用が大いに排除される。
【0007】
[0007]放射性物質の使用を伴うあらゆる医学応用分野と同様に、患者を保護し、投与された放射性医薬品の有効性を保証するために、PETバイオマーカー放射性医薬品の合成および使用におけて品質管理が重要である。例えば、マンノーストリフレートからの[18F]FDGの合成について、多くの品質管理試験が存在する。最終[18F]FDG製品は、粒子状不純物を含まない清澄で透明な溶液であるべきであり、したがって、最終放射性医薬品溶液の色および透明度を試験することが重要である。最終放射性医薬品溶液は、通常、投与前に滅菌済みフィルターを通してろ過するが、合成済み放射性医薬品溶液がフィルターを通過した後に当フィルターの完全性を試験するのが賢明である。最終放射性医薬品溶液の酸性度は、許容限界内でなければならない([18F]FDGについておおむね4.5から7.5の間のpHであるが、この範囲は用途および関係する放射性医薬品トレーサーによって異なる可能性がある)。最終放射性医薬品溶液は、合成工程から残存する可能性があるエタノールまたはシアン化メチルなどの揮発性有機物の存在およびレベルについて試験すべきである。同様に、溶液は、合成工程で用いられるクラウンエーテルまたは他の試薬の存在について試験すべきである。その理由は、最終用量中のこれらの試薬の存在は問題のあるものであるためである。さらに、溶液が有用であるのに十分に高いことを保証するために、最終溶液の放射化学的純度を試験すべきである。放射性核種純度の試験、細菌エンドトキシンの存在についての試験および合成システムの無菌性の試験などの他の試験は、当技術分野で公知である。
【0008】
[0008]現在のところ、これらの試験の大部分またはすべては、数回分の用量を含有する放射性医薬品の各バッチに対して行われる。品質管理試験は、技術者により別個に実施され、すべての試験を完了するには一般的に45から60分の間を必要とする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
[0009]本発明において、PETバイオマーカー製造システムは、放射性同位体発生器、放射性医薬品製造モジュールおよび品質管理モジュールを含む。PETバイオマーカー製造システムは、約1単位用量の放射性医薬品バイオマーカーを非常に効率よく製造するために設計されている。全体のアセンブリは、約1単位用量の放射性同位体を製造するための小型低出力サイクロトロン、粒子加速器または他の放射性同位体発生器(以後「加速器」)を含む。システムはまた、マイクロ流体化学製造モジュールを含む。化学製造モジュールまたはCPMは、単位用量の放射性同位体および単位用量の放射性医薬品を合成するための試薬を受け入れる。
【0010】
[0010]加速器は、1回の作動当たり最大量の放射性同位体を製造し、この最大量は、マイクロ流体化学製造モジュールが単位用量のバイオマーカーを合成するのに必要とする放射性同位体の量とほぼ等しい。マイクロリアクターまたはマイクロ流体チップ(または両方)を用いた化学合成は、従来の(大規模)技術を用いた化学合成より著しく効率的である。収率パーセントはより高く、反応時間はより短く、それにより、単位用量の放射性医薬品を合成するのに必要な放射性同位体の量を著しく低減する。したがって、加速器は1回の作動当たりそのような比較的少量の放射性同位体のみを製造するためのものであるので、加速器により発生するビームの最大出力は、従来の粒子加速器のそれよりおよそ2桁から3桁小さい。最大ビーム出力のこの劇的な低減の直接的な結果として、加速器は、従来の粒子加速器より著しく小型かつ軽量であり、さほど厳格でない基礎構造要件を有し、はるかに小さい電力を必要とする。さらに、小型で低出力の加速器の構成要素の多くは、従来の加速器の同等の構成要素より費用がかからない。したがって、処置場の敷地内で低出力加速器および付随するCPMを使用することは実現可能である。放射性医薬品を中心的な場所で合成し、次いで遠隔の処置場に輸送する必要がないため、より少ない放射性医薬品を製造する必要があり、所望の場合には炭素11などの異なる同位体を用いることができる。
【0011】
[0011]加速器およびCPMが病院の地下室またはイメージングセンターのちょうど向かいにある場合、PET用の放射性医薬品は、合成のほぼ直後に患者に投与することができる。しかし、輸送段階を撤廃または著しく削減することで、CPMおよび得られる放射性医薬品溶液自体に対して品質管理試験を実施する必要性は無くならない。それでも、合成と投与との間の時間の短縮を生かすために、これらの品質管理試験を実施するのに必要な時間を削減することが最も重要である。大規模に製造される放射性医薬品に対する品質管理試験に必要な伝統的な45〜60分は、明らかに不十分である。さらに、加速器およびCPMがほぼちょうど1単位用量である放射性医薬品溶液を製造しているので、品質管理試験に過度な量の放射性医薬品溶液を用いないことが重要であり、一部の溶液が試験のために捕集された後に、有効な単位用量を構成するのに十分な放射性医薬品溶液が残存しなければならない。
【0012】
[0012]試料カードおよび品質管理モジュールは、操作者が放射性医薬品溶液からの微量試験試料を用いて短時間に品質管理試験を実施することを可能にする。試料カードは、CPMと連動して動作して、1試料当たり最大100マイクロリットルの規模で放射性医薬品溶液の試料を採取する。試料カードは次いで、品質管理モジュール(またはQCM)と情報交換して試料を多数の試験容器に供給し、そこで試料は多くの自動化診断試験を受ける。品質管理試験は、自動化されており、小試料に対して並行して行われるので、品質管理試験工程は、20分未満で完了し得る。さらに、大規模放射性医薬品合成および品質管理試験の伝統的なシステムのもとでは、放射性医薬品溶液はバッチとして製造され、品質管理試験はバッチ全体に対して実施されることとなり、各バッチで数回分の用量の放射性医薬品を製造する。ここでは、PETバイオマーカー製造システムは、1回の作動当たり約1単位用量を製造するため、少なくとも一部の品質管理試験は、全体としてのバッチに対してではなく、すべての用量に対して実施することができる。
【0013】
[0013]本発明の上述の特徴は、図面とともに読まれる本発明の以下の詳細な説明からより明確に理解されるようになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】加速器、化学製造モジュール(CPM)、投与液合成カード、試料カードおよび品質管理モジュール(QCM)を含む、PETバイオマーカー製造システム全体の一実施形態の概略図である。
【図2】品質管理モジュール(QCM)と情報交換する試料カードを示す図1に示す実施形態の他の図である。
【図3】化学製造モジュール(CPM)、投与液合成カードおよび試料カードの一実施形態の流れ図である。
【図4】品質管理モジュール(QCM)の一実施形態と情報交換する試料カードの一実施形態の流れ図である。
【図5】投与液合成カードおよび試料カードの一実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[0014]PETバイオマーカー放射性医薬品製造システム用の化学製造モジュールおよび投与液合成カードを以下でより十分に記述する。しかし、本発明は、多くの異なる形で実施することができ、本明細書に示す実施形態に限定されると解釈すべきではない。むしろ、本開示が十分かつ完全であることを保証し、また本開示が本発明の範囲を当業者に十分に伝えることを保証するために、これらの実施形態を示す。
【0016】
[0015]化学製造モジュール、投与液合成カードおよび試料カードは、完全なPETバイオマーカー製造システムと連動して稼働する。図1に示すように、このPETバイオマーカー製造システムの一実施形態は、放射性同位体を製造する加速器10;化学製造モジュール(またはCPM)20;投与液合成カード30;試料カード40;および品質管理モジュール(またはQCM)50を含む。加速器10が放射性同位体を製造したならば、放射性同位体は、放射性同位体導出管112を介してCPM20に装着された投与液合成カード30に移動する。CPM20は、放射性医薬品合成工程で必要である試薬および溶媒を保持している。投与液合成カード30において、放射性医薬品溶液が放射性同位体から合成され、次に試験および投与のために精製される。合成および精製の後、得られた放射性医薬品溶液のうちのわずかな百分率を試料カード40に分流させ、一方、残部は用量容器200に流入する。図2に示すように、放射性医薬品溶液の試料が試料カード40に流入したならば、操作者は、試料カード40をCPM20から除去し、それをQCM50にインターフェースで接続し、QCM50において、多くの診断機器が試料に対して自動化品質管理試験を実施する。
【0017】
[0016]図3および4に本発明の一実施形態の完全な合成および品質管理試験工程のより詳細な概要を示す。この実施形態においては、関係する放射性同位体は、酸素18同位体を含有する重水のサイクルトロンにおける衝撃により製造するフッ素18(F−18)である。しかし、試料カードおよび品質管理モジュールは、炭素11、窒素13および酸素15を含む他の放射性同位体を用いる放射性医薬品合成システムとも動作する。
【0018】
[0017]図3に示すように、放射性同位体は、放射性同位体導出管112から反応チャンバーまたは反応容器110に入る。この段階では、放射性同位体F−18は、バイオマーカー発生器からのかなりの量の重水とまだ混合されている。次に、第1の有機成分が、試薬貯蔵コンパートメント120から有機物供給ポンプ124により反応容器110に導入される。いくつかの実施形態において、第1の有機成分は、1,10−ジアザ−4,7,13,16,21,24−ヘキサオキサビシクロ[8.8.8]ヘキサコサン(一般的にKryptofix 222(商標)、以後「クリプトフィックス」)または同様のクラウンエーテルと錯形成したカリウムの溶液を含む。多くの実施形態において、カリウム−クリプトフィックス錯体または同様の有機金属錯体は、溶媒としてのアセトニトリルにより運ばれる。カリウムは、F−18フッ化物放射性同位体を活性化するが、クリプトフィックスは、カリウム原子に結合し、カリウム−フッ化物錯体の形成を阻害する。次に、ガス供給部142が反応容器110を乾燥窒素などの不活性ガスで満たし、ガスはCPM20内またはその近くの貯蔵場所140に貯蔵されていたものである。次に、反応容器110中の混合物が隣接する熱源114により加熱されて、共沸水/アセトニトリル混合物を蒸発させることにより残留重水を除去する。真空150が蒸発した水を除去する助けとなる。次に、有機物供給ポンプ124が第2の試薬貯蔵コンパートメント122から第2の有機成分を反応容器110中の混合物に加える。多くの実施形態において、第2の有機成分は、乾燥アセトニトリル中のマンノーストリフレートである。次に溶液が約セ氏110度に約2分間加熱される。この段階までに、F−18がマンノースに結合して[18F]FDGの直接的前駆体、一般的に18Fフルオロデオキシグルコーステトラアセテート(FTAG)を形成する。次に、水性酸−多くの実施形態において、水性塩酸−が貯蔵コンパートメント130から水性供給ポンプ132を通して導入される。塩酸が18F−FTAG上の保護アセチル基を除去し、18F−フルデオキシグルコース(すなわち[18F]FDG)を残す。
【0019】
[0018][18F]FDGが合成されたならば、それを試験および投与の前に精製しなければならない。溶液中の[18F]FDGが反応容器110から固相抽出カラム160を通過する。本発明のいくつかの実施形態において、固相抽出カラム160は、イオン交換樹脂で満たされた長さ、アルミナで満たされた長さおよび炭素18で満たされた長さを含む。[18F]FDGが次に、多くの実施形態において直径が約0.22マイクロメートルの細孔を有するMilliporeフィルターを含む、フィルター170を通過する。
【0020】
[0019]放射性医薬品溶液がフィルター170を通過したならば、溶液の一部が、いくつかの実施形態においてそれぞれが約10マイクロリットルの溶液を保持する多数の試料容器402a〜eを含有する試料カード40に分流される。試料容器の数は、当該作動で実施される品質管理試験の数により異なり、システムは、種々の数の試料容器を含有する種々の試料カードとともに稼働するように構成されている。放射性医薬品溶液の残部(すなわち、品質管理試験のために分流れていない溶液のすべて)は、患者への投与の準備が整った投与容器200に流入する。
【0021】
[0020]試料が試料カード40の試料容器402a〜eに入っているならば、図2に示すように、操作者が試料カード40をQCM50に挿入する。図4に示すように、放射性医薬品試料が試料容器402a〜eからQCM50内の試験容器502、602、702、802および902中に移動する。QCM50内に、放射性医薬品合成システムにより製造される放射性医薬品の各作動ごとの多くの自動化品質管理試験を実施するための機器が存在する。
【0022】
[0021]色および透明度について試験するために、光源504が試験容器502中の試料を通して白色光を照射する。次いで電子眼(electronic eye)506が試料を通過した光を検出し、参照試料を対照としてその光の強度および色を測定する。
【0023】
[0022]放射性医薬品溶液の酸性度を試験するために、pH試験デバイス604、すなわち、pHプローブまたはpHカラーストリップが試料容器602中の試料のpHを測定する。
【0024】
[0023]揮発性有機物の存在について試験するために、熱源704が試験容器702中の試料を、水性試料構成成分(今やガスの形態である)が隣接するガスクロマトグラフ706に入るように、約セ氏150度に加熱する。次いでガスセンサーマイクロアレイ708(非公式には、「電子鼻」)がシアン化メチルおよびエタノールのような化学物質の存在および存在率(例えば、ppmとして)を検出する。
【0025】
[0024]クリプトフィックスの存在について試験するために、試験容器802中の試料がヨード白金酸塩を含むシリカゲルを含むゲル804上にのせられる。次に試料およびゲル804が加温され、色認識センサー806が試料の生じた色を測定し、黄色がクリプトフィックスの存在を示す。
【0026】
[0025]試料の放射化学的純度を試験するために、試験容器902中の試料が、アセトニトリルおよび水のキャリア混合物を用いてシリカゲルカラム904を通して溶出される。いくつかの実施形態において、アセトニトリルと水とが9:1の比率で混合される。放射線プローブ906は、溶出するときに溶液の放射能量を測定する。[18F]FDGは正確に予測することができる溶出時間を有するので、プローブ906は、[18F]FDGの予測される溶出時間にまたは非常に近い時間に溶出する放射能量の百分率を測定する。95%以上の百分率は、許容される放射化学的純度を示す。
【0027】
[0026]さらに、製造される用量ごとにフィルター完全性試験も実施される。図3に示すように、放射性医薬品溶液がフィルター170を通り抜けた後、不活性ガス供給部142からの不活性ガスをフィルター170に漸増圧力で通過させることにより、フィルター170の完全性が試験される。圧力センサー302がフィルター170上の不活性ガスの圧力を測定し、フィルター170が依然として完全であるかどうかを検出する。フィルター170は、少なくとも344.8kPa(1平方インチ当たり50ポンド(psi))の圧力のもとで完全性を維持することができるべきである。
【0028】
[0027]図5に投与液合成カード30'ならびに装着された試料カード40'の一実施形態の概略図を示す。投与液合成カード30'は、放射性医薬品溶液が合成される反応容器110aを含む。放射性同位体供給部112aが放射性同位体F−18を放射性同位体供給チャンネル1121を通して反応容器110aに導入する。この段階では、放射性同位体は、バイオマーカー発生器からのかなりの量の重水と依然として混合されている。次に、有機物供給部124aがカリウム−クリプトフィックス錯体のアセトニトリル中溶液を有機物供給チャンネル1241を通して反応容器110aに導入する。窒素供給部と真空154との組合せが窒素ガスをガスチャンネル1540aおよびその時点に開位置にある弁1541を通して反応容器110aにポンプで送り込む。反応容器110a中の混合物Aが窒素雰囲気中で加熱されて、混合物Aから水を共沸により除去し、蒸発した水がガスチャンネル1540aおよび真空154を通して排出される。次に、有機物供給部124aが乾燥アセトニトリル中マンノーストリフレートを有機物供給チャンネル1241を通して反応容器110aに導入する。溶液は、約セ氏110度に約2分間加熱される。この段階までに、F−18がマンノースに結合して[18F]FDGの直接的前駆体、FTAGを形成する。次に、水性塩酸が水性供給部132aおよび水性チャンネル1321を通して反応容器110aに導入される。塩酸が中間体18F−FTAG上の保護アセチル基を除去し、18F−フルデオキシグルコース(すなわち、[18F]FDG)を残す。
【0029】
[0028]合成されたならば、溶液中の[18F]FDGが反応容器110aから反応後チャンネル1101を通過して固相抽出カラム160aに入り、そこでいくつかの望ましくない物質が溶液から除去され、それにより、放射性医薬品溶液を浄化する。本発明のいくつかの実施形態において、固相抽出(SPE)カラム160aは、イオン交換樹脂を有する長さ、アルミナで満たされた長さおよび炭素18で満たされた長さを含む。放射性医薬品溶液は、多くの実施形態において有機物供給部124aからのアセトニトリルを含む移動相とともにSPEカラム160aを通過する。移動相および不純物の一部がSPEカラム160aを出るとき、それらは、第2の反応後チャンネル1542を通過し、三方弁175および廃棄物チャンネル1104を通過して廃棄物容器201に入る。浄化放射性医薬品溶液がSPEカラム160aを出るとき、放射性医薬品溶液は、次に第2の反応後チャンネル1542を通過し、三方弁175を通過してフィルターチャンネル1103に入り、次にフィルター170aを通過する。フィルター170aが他の不純物(粒子状不純物を含む)を除去し、それにより、放射性医薬品溶液をさらに浄化する。多くの実施形態において、フィルター170aは、直径が約0.22マイクロメートルの細孔を有するMilliporeフィルターを含む。
【0030】
[0029]放射性医薬品溶液がフィルター170aを通過したならば、浄化放射性医薬品溶液が浄化後チャンネル1105を介して移動して、例示した実施形態では注射器202に組み込まれている滅菌済み用量投与容器200aに入る。いくつかの実施形態において、用量投与容器は、リン酸緩衝液および生理食塩水の混合物であらかじめ満たされている。浄化放射性医薬品溶液が滅菌済み用量投与容器200aを満たすとき、溶液Bの一部が抽出チャンネル1401、開いた弁1403および輸送チャンネル1402を通して分流して試料カード40'に入る。試料カード40'は、差し迫った試験用の溶液の分離された一定分量を保持する多数の試料ループ404a〜hおよびこの段階において閉じている多数の弁408a〜hを含有する。放射性医薬品溶液の試験試料の一定分量が採取されたならば、試料カード40'が投与液合成カード30'から分離され、図2および4に示したようにQCMに挿入される。次いで一定分量が今は開いている弁408a〜hを通して移動して試料出口ポート406a〜hに入り、そこから一定分量が図4に示したように試験容器に入る。いくつかの実施形態において、試料ループ404a〜hのそれぞれが約10マイクロリットルの試験溶液を保持する。試料ループの数は、当該作動について実施される品質管理試験の数によって異なり、システムは、種々の数の試料ループを含有する種々の試料カードとともに稼働するように構成されている。試料の一定分量が試料カード40'に入った後、用量投与容器200aに残存している過剰の溶液が排出口156により第1の排出チャンネル1560bを通じて抽出され、次いで開いた弁1561を通して移送され、第2の排出チャンネル1560aを通して移送されて、廃棄物容器210に入る。真空154が今は開いている弁1403および溶液排出チャンネル1540bを通して輸送チャンネル1402から残留溶液を排出する。
【0031】
[0030]本発明のいくつかの実施形態において、CPM20は、再投入せずに複数回の作動を実施するために放射性医薬品合成工程において必要な十分な量の試薬および溶媒を保持する。実際、いくつかの実施形態において、CPM20に1ヵ月当たりほぼ1回試薬および溶媒を装入し、試薬および溶媒のこの月の供給は、数十回分または数百回分の用量の放射性医薬品を製造するのに十分である。試薬および溶媒をCPM20に貯蔵するとき、試薬および溶媒を無菌性かつ非汚染の状態に保つことが以前のシステムのもとより容易である。いくつかの実施形態において、1回の作動後に各投与液合成カード30および試料カード40を廃棄することにより、無菌環境が支援され、汚染が抑制される。システムのこれらの構成要素は、使い捨てであるように構成されている。
【0032】
[0031]したがって、CPM20に定期的に装入される試薬および溶媒の各バッチは、複数回分の用量の放射性医薬品のバッチを供給し、各用量は別個の作動で製造される。一部の品質管理試験は、製造される用量ごとに実施されるが、他の品質管理試験は、用量のバッチごとに実施される。例えば、本発明の一実施形態において、フィルター完全性試験、色および透明度試験、酸性度試験、揮発性有機物試験、化学的純度試験ならびに放射化学的純度試験は、用量ごとに実施される。一方で、放射性核種純度試験(放射線プローブを用いて[18F]FDG中のF−18の半減期を測定する)、細菌エンドトキシン試験および無菌性試験などの一部の品質管理試験は、1バッチ当たり1回または2回のみ実施する必要がある。これらの試験は、一般的に各バッチの最初および最後の用量に対して実施される。これらの1バッチ当たりの品質管理試験はさほど頻繁に実施されないため、それらは、QCMに含めずに、むしろ別個の実験設備を用いて技術者により実施してもよい。
【0033】
[0032]本発明を一実施形態の記述により例示し、また実例となる実施形態を詳細に記述したが、添付の特許請求の範囲をそのような詳細に制限またはどのような形であれ限定することは本出願者の意図ではない。さらなる修正は、当業者には容易に明らかとなるであろう。したがって、そのより広い態様における本発明は、図示し述べた特定の詳細、代表的な装置および方法法ならびに実施例に限定されない。したがって、本出願者の一般的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、そのような詳細からの逸脱を行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性同位体および少なくも1つの試薬を受け入れるように構成された反応容器であって、熱源と熱移動連通し、それにより、前記放射性同位体および前記少なくも1つの試薬が前記反応容器中で混合され、前記熱源からの熱が前記反応容器に加えられると、放射性医薬品溶液が合成される、反応容器と、
前記放射性医薬品溶液を精製するように構成された固相抽出カラムと、
前記放射性医薬品溶液を滅菌するように構成されたフィルターと、
前記放射性医薬品溶液が前記固相抽出カラムおよび前記フィルターを通過した後に前記放射性医薬品溶液を受け入れるように構成された容器
を含み、1回の作動当たり放射性医薬品の一(1)単位用量にほぼ等しいが、それ以上の量の精製放射性医薬品溶液を製造するような規模になされている、マイクロ流体放射性医薬品合成システム。
【請求項2】
前記精製放射性医薬品溶液が前記固相抽出カラムおよび前記フィルターを通過した後に試験用の複数の一定分量の前記精製放射性医薬品溶液を受け入れるように構成された試料カードをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記反応容器、前記固相抽出カラムおよび前記フィルターが使い捨てカードに組み込まれ、前記カードが一(1)回の作動の後に廃棄される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記放射性同位体が炭素11、窒素13、酸素15およびフッ素18からなる群から選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記放射性医薬品が[18F]−2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコースである、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
陽電子放射断層撮影法に用いる放射性医薬品の少なくとも一(1)単位用量から約四(4)単位用量の間の量の放射性医薬品を製造するための方法であって、
反応容器に放射性同位体を導入し、前記反応容器に少なくとも1つの試薬を導入し、前記反応容器を加熱し、それにより、前記放射性同位体が前記少なくとも1つの試薬と反応して、望ましくない化学物質を含有する粗製の形の放射性医薬品を製造するステップと、
前記粗状態の放射性医薬品を複数の洗浄ステップを経て逐次的に移送して前記望ましくない化学物質を除去し、それにより、前記粗製放射性医薬品を精製するステップと、
前記精製放射性医薬品に対して複数のあらかじめ選択された特性についての試験を実施するように構成され、複数のあらかじめ選択された特性についての前記試験の結果を報告するように構成された試験装置に前記精製放射性医薬品の第1の部分を移送するステップと、
前記精製放射性医薬品を前記精製放射性医薬品の潜在的使用者に輸送するように構成された容器中に前記精製放射性医薬品の第2の部分を移送するステップと
を含む方法。
【請求項7】
前記複数の洗浄ステップが、前記粗放射性医薬品を固相抽出カラムに通過させるステップを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の洗浄ステップが、前記放射性医薬品を、前記放射性医薬品を滅菌するように構成されたフィルターに通過させるステップを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記システムが、1回の作動当たり放射性医薬品の1単位用量にほぼ等しいが、それ以上の量の放射性医薬品を製造するような規模になされている、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記放射性同位体が炭素11、窒素13、酸素15およびフッ素18からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記放射性医薬品が[18F]−2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコースである、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
陽電子放射断層撮影法に用いる放射性化学物質を合成し、前記放射性化学物質に対して品質管理試験をリアルタイムで実施するための方法であって、
(a)あらかじめ選択された放射性化学物質の合成のための放射性同位体および少なくとも1つの試薬を反応容器に導入するステップと、
(b)前記放射性同位体および前記少なくとも1つの試薬を反応させて、前記あらかじめ選択された放射性化学物質を、少なくとも1つの望ましくない化学物質を含有する粗状態放射性化学物質溶液として製造するステップと、
(c)少なくとも1つの望ましくない化学物質が前記放射性化学物質溶液から除去され、それにより、前記放射性化学物質溶液が少なくとも部分的に精製される、少なくとも1つの精製ステップを経て前記粗状態放射性化学物質溶液を移送するステップと、
(d)前記放射性化学物質の1単位用量にほぼ等しいが、それ以上の量の放射性化学物質を前記精製放射性化学物質溶液から抽出するステップと、
(e)前記量の放射性化学物質の前記抽出と実質的に同時に、前記残存浄化放射性化学物質溶液を、前記残存浄化放射性化学物質溶液が複数の一定分量に分割される試料カードに導入するステップと、
(f)前記一定分量のそれぞれを個々の試験容器に移送するステップと、
(g)各前記試験容器内で、前記一定分量をあらかじめ選択された特徴または化学的特性について試験するステップと、
(h)前記試験の結果を前記単位用量の前記放射性化学物質の潜在的な使用者に報告するステップと
を含み、前記ステップ(c)から(g)までを45分以内に完了する、方法。
【請求項13】
前記ステップ(a)から(g)までが、陽電子放射断層撮影法による試験が実施される場で実施される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
(i)前記単位用量の前記放射性化学物質を患者に輸送するステップをさらに含み、前記ステップ(a)から(i)までが同じ建物で実施される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記放射性同位体が炭素11、窒素13、酸素15およびフッ素18からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記放射性医薬品が[18F]−2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコースである、請求項12に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−505294(P2013−505294A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530859(P2012−530859)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/002577
【国際公開番号】WO2011/037615
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(512075291)エイビーティー・モレキュラー・イメージング,インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】