説明

PET一致プロセッサ

PETスキャナは、第1の検出器モジュールで起こっている第1のイベントを検出する第1のモジュール・プロセッサと、各モジュール・プロセッサが対応する残りの検出器モジュールで起こっている第2のイベントを検出するように構成された複数の残りのモジュール・プロセッサとを含む。複数の残りのモジュール・プロセッサは、第1および第2のサブセットに分割される。第1のサブセットのモジュール・プロセッサは、第1のイベントの発生を示す第1の信号を第1のモジュール・プロセッサから受信するように構成される。第2のサブセットのモジュール・プロセッサは、第2のイベントの発生を示す第2の信号を第1のモジュール・プロセッサに供給するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ポジトロン放出断層撮影(「PET」)システム、特に、PETシステムにおけるデータ取得に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
ポジトロン放出断層撮影(「PET」)では、放射性物質が患者内に配置される。放射性減衰プロセスでは、この物質がポジトロンを放出する。このようなポジトロンは、電子にぶつかるまで患者内を移動する。ポジトロンと電子がぶつかると、互いに消滅しあう。これによって、互いに逆方向に進む2つのγ線光子が放出される。これらのγ線光子を検出することによって、患者内の放射性物質の分布を推定することができる。
【0003】
光子を検出するために、患者は検出モジュールのリングの軸に沿って配置される。各検出モジュールは、γ線光子によって照明されたときに電気信号を生成する検出器を含む。この信号はイベントと呼ばれる。各モジュールに関連するプロセッサは、イベントに関する情報を圧縮することによってイベント・データ・パケットを作成する。このイベント・データ・パケットは、他のモジュールからの他の多数のイベント・データ・パケットと一緒に、中央一致プロセッサに集められる。
【0004】
一致プロセッサは、リング上のすべての検出器からイベント・データ・パケットを受信し、そのデータを処理する。一致プロセッサは、一対のイベントを検出した検出器の位置およびそれらのイベントの時間に基づいて、一対のイベントが、患者内でポジトロンと電子が消滅しあうことによって生じたイベントであるかどうかを判定する。次いで、一致プロセッサは、各イベントに関する圧縮された情報を、後で画像再構成プロセスによって使用できるように保存する。
【発明の開示】
【0005】
本発明による一局面では、PETスキャナは、それぞれの第1および第2のイベントを検出する第1および第2検出器モジュールを含む。各検出器モジュールは、対応する第1および第2のモジュール・プロセッサと通信する。第1のモジュール・プロセッサは、第2のイベントの発生を示す信号を第2のモジュール・プロセッサから受信し、第1のイベントの発生を示す信号を第3のモジュール・プロセッサに供給するように構成される。
【0006】
本発明のこの局面の態様は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を含んでよい。
【0007】
第1のモジュール・プロセッサは、第1のモジュール・プロセッサが第1のイベントと第2のイベントが一致を形成しているかどうかを判定するように構成される。第1のモジュール・プロセッサは、検出された第1のイベントと、第2のイベントを示す受信された信号とが、一致を形成しているかどうかを判定するように構成される。
【0008】
第1のモジュール・プロセッサは、第1のイベントと第2のイベントが一致を形成しているとみなしたときに第2のモジュール・プロセッサに要求信号を送信するように構成される。この場合、第2のモジュール・プロセッサは、第2のイベントに関する追加的な情報を第1のモジュール・プロセッサに送信することによって要求信号に応答するように構成される。
【0009】
第2のモジュール・プロセッサは、第2のイベントを検出した後に、第2のイベントに関する追加的な情報を第1のモジュール・プロセッサに送信するように構成される。
【0010】
モジュール・プロセッサの構成は、これらのモジュール・プロセッサに関連する検出器モジュール間の幾何学的な関係に基づく構成であってよい。たとえば、一態様では、第2および第3のモジュール・プロセッサは、第1の検出器モジュールと、第2および第3のモジュール・プロセッサの1つに対応する検出器モジュールとが、患者が配置される体積を含む視野を規定するように選択される。あるいは、第1のモジュール・プロセッサと第2および第3のモジュール・プロセッサの1つが、第1のモジュール・プロセッサと、第2および第3のモジュール・プロセッサの1つに対応する検出器モジュールとが、検出器モジュールのリング上で互いに向かい合うように選択することができる。
【0011】
複数のモジュール・プロセッサが第3のモジュール・プロセッサとして指定される。第1のモジュール・プロセッサは、第1のイベントの発生を示す信号を複数の第3のモジュール・プロセッサの各々に供給するように構成される。
【0012】
複数のモジュール・プロセッサが第2のモジュール・プロセッサとして指定される。第1のモジュール・プロセッサは、第2のモジュール・プロセッサに関連する第2の検出器モジュールでの第2のイベントの発生を示す信号を複数の第2のモジュール・プロセッサのいずれかから受信するように構成される。
【0013】
本発明の他の局面によれば、PETスキャナは、第1の検出器モジュールで起こっている第1のイベントを検出する第1のモジュール・プロセッサと、各モジュール・プロセッサが対応する残りの検出器モジュールで起こっている第2のイベントを検出するように構成された複数の残りのモジュール・プロセッサとを含む。複数の残りのモジュール・プロセッサは、第1および第2のサブセットに分割される。第1のサブセットのモジュール・プロセッサは、第1のイベントの発生を示す第1の信号を第1のモジュール・プロセッサから受信するように構成される。第2のサブセットのモジュール・プロセッサは、第2のイベントの発生を示す第2の信号を第1のモジュール・プロセッサに供給するように構成される。
【0014】
本発明のこの局面の態様は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を含んでよい。
【0015】
一致プロセスは第1のモジュール・プロセッサ上で実行される。一致プロセスは、第1のイベントと第2のイベントが一致を形成しているかどうかを判定する。
【0016】
第1のモジュール・プロセッサは、第2のサブセットにおける残りのモジュール・プロセッサに要求信号を送信するように構成される。残りのモジュール・プロセッサの第2のサブセットは、第2のイベントに関する追加的な情報を供給することによって要求信号に応答するように構成された選択された残りのモジュール・プロセッサを含む。
【0017】
残りのモジュール・プロセッサの第2のサブセットは、第1のモジュール・プロセッサからの要求信号が存在しないときに第2のイベントに関する追加的な情報を供給するように構成された選択された残りのモジュール・プロセッサを含む。
【0018】
モジュール・プロセッサをどのようにして第1のサブセットおよび第2のサブセットとして指定するかは、これらのモジュール・プロセッサに関連する検出器モジュール間の幾何学的な関係に依存してよい。たとえば、第1および第2のサブセットの少なくとも1つは、患者の一部によって占有される体積を含む視野を第1の検出器モジュールと一緒に規定する検出器モジュールでのイベントを検出する残りのモジュール・プロセッサを含んでよい。あるいは、残りのモジュール・プロセッサの第1のサブセットの少なくとも1つは、第1の検出器モジュールと向かい合う検出器モジュールでイベントを検出する残りのモジュール・プロセッサを含んでよい。
【0019】
本発明の他の局面によれば、一致を検出する方法は、第1の検出器モジュールで起こっている第1のイベントに関する第1の情報を第1の検出器モジュールで収集する段階と、対応する残りの検出器モジュールで起こっている第2のイベントに関する第2の情報を複数の残りのモジュール・プロセッサの各々で収集する段階と、第1のイベントの発生を示す第1の信号を残りのモジュール・プロセッサの第1のサブセットからそれぞれの残りのモジュール・プロセッサに供給する段階と、残りのモジュール・プロセッサの第2のサブセットにおけるそれぞれの残りのモジュール・プロセッサから第2のイベントの発生を示す第2の信号を受信する段階とを含む。
【0020】
本発明によるPETスキャナでは、各モジュール・プロセッサはマスタおよびスレーブとして働く。各モジュール・プロセッサは、マスタとして、少数の利用可能な検出器モジュールでのみ検出されたイベントを検討する。この分散アーキテクチャは、各モジュール・プロセッサが、一致を形成するイベント対を探索するときに、すべてのモジュール・プロセッサで検出されたイベントの総数の一部のみを処理することを意味する。それにもかかわらず、モジュール・プロセッサは、すべての検出器モジュールで検出されたイベントを集合的に検討する。
【0021】
さらに、このようなイベント対を識別する手順では、イベントが起こったモジュール検出器の位置を検討する必要はない。マスタ・プロセッサは、選択されたスレーブ・プロセッサからイベント情報を受信するに過ぎないので、マスタ・プロセッサに検討のために与えられるイベントは、スレーブ・プロセッサを適切に選択することによって事前に制限することができる。
【0022】
本発明の分散アーキテクチャはさらに、データ・トラフィックが、利用可能なデータ・リンクによって搬送可能な量を超える可能性を低くする。各マスタは、限られた数のスレーブのみと通信するので、すべてのデータを単一の中央プロセッサに集める必要はない。これによって、限られた帯域幅のデータ・リンクを求める競合が制限される。
【0023】
特に明示しないかぎり、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって共通に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されたのと同様または同等の方法および材料を本発明を実施または試験する際に用いることができるが、以下に適切な方法および材料について説明する。矛盾がある場合、定義を含む本明細書が優先される。さらに、材料、方法、および例は例示的なものに過ぎず、制限的なものではない。
【0024】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかになろう。
【0025】
図1を参照すると、PETスキャナ10は、患者が横たわるベッド14を囲む検出器モジュール16A〜Kのリング12を含んでいる。各検出器モジュール16A〜K(以下、「モジュール」と呼ぶ)はいくつかの検出器ブロック17を含んでいる。検出器ブロック17は通常、シンチレーション結晶と光学的に通信する4つの光電子増倍管を含む。光電子増倍管およびシンチレーション結晶の構成の詳細は、本発明を理解するうえで重大なものではなく、したがって、説明を明確にするために省略する。
【0026】
シンチレーション結晶は、γ線によって照明されたときに、短時間の間可視光を発する結晶である。この可視光は光電子増倍管によって検出され、光電子増倍管は、以下では「イベント」の検出と呼ばれる入射γ線光子の検出を示す電気信号を生成する。
【0027】
PETスキャナ10によって患者の一部を撮像する場合、患者に放射性物質が導入される。放射性物質は、減衰する際ポジトロンを放出する。ポジトロンは、患者内を短い距離にわたって移動した後、通常電子とぶつかる。この結果起こるポジトロンと電子の消滅によって、互いに逆方向に進む2つのγ線光子が生成される。これらの光子は、どちらも患者内で偏向または吸収されない程度に、患者から出て、2つの検出器モジュール16A〜Kにぶつかる。
【0028】
特に、これらの光子の一方が第1の検出器モジュール16Aにぶつかるとき、他方の光子は、第1の検出器モジュールと向かい合う第2の検出器モジュール16E、F、G、またはHにぶつかる。この結果2つのイベント、すなわち、第1の検出器モジュール16Aでの一方のイベントとそれと向かい合う第2の検出器モジュール16E、F、G、またはHでの他方のイベントが起こる。これらのイベントはそれぞれ、γ線光子の検出を示す。この2つのイベントが第1の検出器モジュール16Aと第2の検出器モジュール16E、F、G、またはHで同時に検出された場合、これらのイベントは、第1の検出器モジュール16Aと第2の検出器モジュール16E、F、G、またはHを接続する線の中点で消滅が起こっていることを示す可能性が高い。この2つのイベントが第1の検出器モジュール16Aと第2の検出器モジュール16E、F、G、またはHでほぼ同時に検出された場合、これらのイベントは、第1の検出器モジュール16Aと第2の検出器モジュール16E、F、G、またはHを接続する線の中点近くで消滅が起こっていることを示す可能性が高い。
【0029】
PETスキャナ10で重要なものが、互いに向かい合う検出器モジュール16A、16E〜Fによって同時にまたはほぼ同時に検出される一対のイベントであることは明らかである。これらの特性を有する一対のイベントを「一致」と呼ぶ。PET走査の過程で、各検出器モジュール16A〜Kは多数のイベントを検出する。しかし、一致を表すのはこれらのうち限られた数のイベントだけである。本発明は、一致を表すイベント対を識別するイベントを効率的にふるいわける方法に関する。
【0030】
各検出器モジュール16A〜Kには、関連する検出器モジュール16A〜Kによって検出されたイベントに応答するモジュール・プロセッサ18A〜Kが関連付けされている。モジュール・プロセッサ18A〜Kは、互いにデータ通信する処理素子とメモリ素子とを含んでいる。処理素子は、様々な論理演算を実行する組合せ論理そしを含む演算論理装置(「ALU」)と、命令レジスタと、関連するデータ・レジスタと、クロックとを含んでいる。各クロック間隔中に、プロセッサは、メモリ素子から命令を取り込み、命令レジスタにロードする。命令が作用するデータも同様に、関連するデータ・レジスタにロードされる。その後のクロック間隔では、処理素子がその命令を実行する。このような命令のシーケンスを「プロセス」と呼ぶ。
【0031】
各モジュール・プロセッサ18A〜Kはマスタ・プロセスとスレーブ・プロセスを同時に実行する。各モジュール・プロセッサ18A〜Kは、2つのモジュール・プロセッサのマスタであると同時に、他の2つのモジュール・プロセッサのスレーブである。本明細書では、「マスタ」は、マスタ・モジュール・プロセッサとして働くモジュール・プロセッサ18A〜Kを意味し、「スレーブ」は、スレーブ・モジュール・プロセッサとして働くモジュール・プロセッサ18A〜Kを意味するものとする。「マスタ・モジュール」および「スレーブ・モジュール」の語は、それぞれマスタおよびスレーブに関連する検出器モジュール16A〜Kを指すのに用いられるものとする。
【0032】
各マスタの2つのスレーブは、リング12の、これらのスレーブに関連する検出器モジュール16A〜Kの相対的な位置に基づいて選択される。特に、各マスタのスレーブは、マスタ検出器で検出されたイベントと任意のスレーブ検出器で検出されたイベントが一致対を形成する可能性を最大にするように選択される。
【0033】
図1に示されている11個の検出器モジュールの構成について、モジュール・プロセッサ18A〜K間のマスタ/スレーブ関係は以下のとおりである。

モジュール・プロセッサ18A〜K間のスレーブ/マスタ関係は以下のとおりである。

【0034】
図2は、11個のモジュール・プロセッサのマスタ/スレーブ関係を示すために追加された線を有する図1のリング12を示している。検出器モジュール16Aから16Eと検出器モジュール16Aから16Fを接続する線は、モジュール・プロセッサ18Eおよび18Fがモジュール・プロセッサ18Aのスレーブであることを示している。モジュール・プロセッサ18Fは、検出器モジュール16Fを検出器モジュール16Jおよび16Kに接続する線によって示されているように、それ自体の2つのスレーブを有している。残りのマスタ/スレーブ関係を表す18本の線は、図を明確にするために省略されている。
【0035】
図3に示されているように、マスタ18Aは第1および第2のデータ・リンク20A、22Aによってその第1のスレーブ18Eに接続されている。同様に、マスタ18Aは第1および第2のデータ・リンク20B、22Bによってその第2のスレーブ18Fに接続されている。第1および第2のデータ・リンク20A〜B、22A〜Bは、マスタ18Aと対応するスレーブ18E〜Fとの間でトリガ・パルスを送信するのに用いられる。したがって、第1および第2のデータ・リンク20A〜B、22A〜Bは通常、単一のワイヤである。
【0036】
スレーブ18Eは、それに関連する検出器モジュール16Eからイベント(以下、「スレーブ・イベント」と呼ぶ)を示す信号を受信すると、第1のデータ・リンク20A上でマスタ18Aにパルスを送信する。マスタ18Aは、スレーブ18Eによって検出されたスレーブ・イベントを一致の構成イベントとみなしたときは、第2のデータ・リンク22A上でこのスレーブ18Eにパルスを送り返す。
【0037】
通常LVDS(「低電圧差分標準」)チャネルである第3のデータ・リンク24A〜Bは、マスタ18Aとそのスレーブ18E〜Fのそれぞれとを接続する。スレーブ18E〜Fはこの第3のデータ・リンク24A〜Bを用いて、スレーブ・イベントに関する追加的な情報をマスタ18Aに送信する。このような追加的な情報は、たとえば、そのイベントをトリガした入射光子のエネルギーと、光電子増倍管
によって生成された電圧信号の波形とを含んでよい。
【0038】
図4は、スレーブによって行われる手順を示している。スレーブは、それに関連するスモジュール・プロセッサからスレーブ・イベントを示す信号を受信すると(段階26)、そのスレーブ・イベントの検出をスレーブのそれぞれのマスタの両方に報告する(段階28A〜B)。スレーブは、スレーブをこれらのマスタに接続する2つの第1のデータ・リンクのそれぞれでパルスを送信することによって報告を行う。スレーブは次いで、スレーブをこれらの2つのマスタのそれぞれに接続する2つの第2のデータ・リンクのいずれかでスレーブのマスタからの応答を待つ(段階30A〜B)。
【0039】
スレーブは、マスタからの第2のデータ・リンク上で受信された要求パルスに応答して、スレーブ・イベントに関する追加的な情報を含むデータ・パケットを作成する(段階32A〜B)。このデータ・パケットは次いで、この追加的な情報(段階34A〜B)を要求したいずれかのマスタに第3のデータ・リンク上で送信される。スレーブは、データ・パケットを送信した後、次のイベントを待つ(段階36)。どちらのマスタも定義済みの時間間隔内に応答パルスを送信しない場合、スレーブは、スレーブ・イベントを放棄し(段階38)、次のスレーブ・イベントを待つ(段階36)。
【0040】
図5は、マスタによって行われる手順を示している。マスタは、それに関連する検出器モジュールからスレーブ・イベントを示す信号を受信すると(段階40)、スレーブ・イベントの発生時間を、マスタ自体に関連する検出器モジュールによって受信されたイベント(以下、「マスタ・イベント」と呼ぶ)の発生時間と比較する(段階42)。マスタ・イベントとスレーブ・イベントの発生時間が選択された公差以下しか異ならない場合、マスタは、マスタ・イベントおよびそのスレーブ・イベントを一致とみなす(段階44)。そうでない場合、マスタは、このスレーブ・イベントを無視し、次のスレーブ・イベントを待つ(段階46)。公差は、マスタ検出器モジュールとスレーブ検出器モジュールを連結する線の、患者内に位置すると考えられる部分の長さに基づいて選択される。たとえば、この部分が24cm延びるような胴回りを有する患者の場合、適切な公差は80ナノ秒である。
【0041】
マスタは、マスタ・イベントとスレーブ・イベントとの一致を認識すると、そのスレーブ・イベントを検出したいずれかのスレーブに要求パルスを送信する(段階48)。図4に関して説明したように、このパルスは、スレーブによってそのスレーブ・イベントに関する追加的な情報を求める要求として解釈される。マスタは次いで、スレーブ・イベントに関する追加的な情報を含むデータ・パケットを待つ。
【0042】
マスタは、データ・パケットを受信すると(段階50)、共に一致を構成するマスタ・イベントとスレーブ・イベントについての情報を含む一致レコードを作成する。この一致レコードは、既知の断層撮影アルゴリズムを実行する画像再構成プロセスによって後で処理できるように、磁気ディスクや磁気テープなどの大容量記憶媒体上に記憶される(段階52)。
【0043】
本明細書に記載されたように、各スレーブは2つのマスタを有し、各マスタは2つのスレーブを有している。しかし、スレーブが特定数のマスタを有し、マスタが特定数のスレーブを有するという要件はない。各マスタが同じ数のスレーブを有するか、または各スレーブが同じ数のマスタを有するという要件もない。
【0044】
図示のPETスキャナ10は11個の検出器モジュールを有している。しかし、異なる数の検出器モジュールを使用してよい。本発明はリング12内の検出器モジュールの数に依存しない。しかし、奇数の検出器モジュールを有すると形状的に好都合である。
【0045】
図4では、スレーブは、マスタにイベントを通知するが、イベントに関する情報については、マスタが実際にその情報を要求するまで送信しない。これによって、第3のデータ・リンクがデータ・パケットをスレーブからマスタに送るためにビジー状態になる確率が最小限に抑えられ、それによって、データ・パケットがなくなる確率が最小限に抑えられる。しかし、この場合、マスタが必要なデータ・パケットを要求しなければならなくなるためある程度複雑さが増すことにもなる。
【0046】
または、スレーブは、そのスレーブに関連する検出器モジュールで検出された各イベントについてのデータ・パケットをマスタに送信する。マスタは、このイベントを一致の一部とみなさない場合、単にデータ・パケットを放棄する。これによって、マスタがスレーブにデータ・パケットを送信するよう要求する必要がなくなるため、第2のデータ・リンクが不要になる。
【0047】
本発明およびその好ましい実施形態について説明したが、発明者が新規でありかつ開封特許状によって保護されるものとして請求するものは特許請求の範囲に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】モジュールのリングを示す図である。
【図2】図1に示されているモジュールのサブセット間のマスタ/スレーブ関係を示す図である。
【図3】マスタとその2つのスレーブとの接続を示す図である。
【図4】スレーブによって行われるプロセスのフローチャートである。
【図5】マスタによって行われるプロセスのフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、PETスキャナであって、第1のモジュール・プロセッサが、第2のイベントの発生を示す信号を第2のモジュール・プロセッサから受信し、第1のイベントの発生を示す信号を第3のモジュール・プロセッサに供給するように構成されるPETスキャナ:
第1のイベントを検出する第1の検出器モジュール;
第2のイベントを検出する第2の検出器モジュール;
第1の検出器モジュールと通信する第1のモジュール・プロセッサ;
第2の検出器モジュールと通信する第2のモジュール・プロセッサ;および
第3のモジュール・プロセッサ。
【請求項2】
第1のモジュール・プロセッサが、第1のイベントと第2のイベントが一致を形成しているかどうかを判定するように構成される、請求項1記載のPETスキャナ。
【請求項3】
第1のモジュール・プロセッサが、検出された第1のイベントおよび第2のイベントを示す受信された信号が一致を形成しているかどうかを判定するように構成される、請求項1記載のPETスキャナ。
【請求項4】
第1のモジュール・プロセッサが、第1のイベントと第2のイベントが一致を形成しているとみなしたときに第1のモジュール・プロセッサが第2のモジュール・プロセッサに要求信号を送信するように構成され、
第2のモジュール・プロセッサが、第2のイベントに関する追加的な情報を第1のモジュール・プロセッサに送信することによって要求信号に応答するように構成される、請求項2記載のPETスキャナ。
【請求項5】
第2のモジュール・プロセッサが、第2のイベントを検出した後に、第2のイベントに関する追加的な情報を第1のモジュール・プロセッサに送信するように構成される、請求項1記載のPETスキャナ。
【請求項6】
第1の検出器モジュールならびに第2および第3のモジュール・プロセッサの1つに対応する検出器モジュールが、患者が配置される体積を含む視野を規定するように第1のモジュール・プロセッサならびに第2および第3のモジュール・プロセッサの1つが選択される、請求項1記載のPETスキャナ。
【請求項7】
第1のモジュール・プロセッサならびに第2および第3のモジュール・プロセッサの1つに対応する検出器モジュールが、検出器モジュールのリング上で互いに向かい合うように第1のモジュール・プロセッサならびに第2および第3のモジュール・プロセッサの1つが選択される、請求項1記載のPETスキャナ。
【請求項8】
複数の第3のモジュール・プロセッサをさらに含み、第1のモジュール・プロセッサが第1のイベントの発生を示す信号を複数の第3のモジュール・プロセッサの各々に供給するように構成される、請求項1記載のPETスキャナ。
【請求項9】
複数の第2のモジュール・プロセッサをさらに含み、第1のモジュール・プロセッサが第2のモジュール・プロセッサに関連する第2の検出器モジュールでの第2のイベントの発生を示す信号を複数の第2のモジュール・プロセッサのいずれか1つから受信するように構成される、請求項1記載のPETスキャナ。
【請求項10】
以下を含む、PETスキャナ:
第1の検出器モジュールで起こる第1のイベントを検出する第1のモジュール・プロセッサ;ならびに
複数の残りのモジュール・プロセッサのそれぞれが対応する残りの検出器モジュールで起こっている第2のイベントを検出するように構成され、
各モジュール・プロセッサが、第1のイベントの発生を示す第1の信号を第1のモジュール・プロセッサから受信するように構成される、第1のサブセットの残りのモジュール・プロセッサ、および
各モジュール・プロセッサが、第2のイベントの発生を示す第2の信号を第1のモジュール・プロセッサに供給するように構成される、第2のサブセットの残りのモジュール・プロセッサ、を含む複数の残りのモジュール・プロセッサ。
【請求項11】
第1のモジュール・プロセッサ上で実行されて、第1のイベントと第2のイベントが一致を形成しているかどうかを判定する一致プロセスをさらに含む、請求項10記載のPETスキャナ。
【請求項12】
第1のモジュール・プロセッサが、第2のサブセットにおける残りのモジュール・プロセッサに要求信号を送信するように構成され、
残りのモジュール・プロセッサの第2のサブセットが、第2のイベントに関する追加的な情報を供給することによって要求信号に応答するように構成された選択された残りのモジュール・プロセッサを含む、請求項10記載のPETスキャナ。
【請求項13】
残りのモジュール・プロセッサの第2のサブセットが、第1のモジュール・プロセッサからの要求信号が存在しないときに第2のイベントに関する追加的な情報を供給するように構成された選択された残りのモジュール・プロセッサを含む、請求項10記載のPETスキャナ。
【請求項14】
第1および第2のサブセットの少なくとも1つが、患者の一部によって占有される体積を含む視野を第1の検出器モジュールと一緒に規定する検出器モジュールでのイベントを検出する残りのモジュール・プロセッサを含む、請求項10記載のPETスキャナ。
【請求項15】
残りのモジュール・プロセッサの第1のサブセットの少なくとも1つが、第1の検出器モジュールと向かい合う検出器モジュールでのイベントを検出する残りのモジュール・プロセッサを含む、請求項10記載のPETスキャナ。
【請求項16】
以下の段階を含む、一致を検出する方法:
第1の検出器モジュールで起こっている第1のイベントに関する第1の情報を第1の検出器モジュールで収集する段階;
対応する残りの検出器モジュールで起こっている第2のイベントに関する第2の情報を複数の残りのモジュール・プロセッサの各々で収集する段階;
第1のイベントの発生を示す第1の信号を残りのモジュール・プロセッサの第1のサブセットからそれぞれの残りのモジュール・プロセッサに供給する段階;および
残りのモジュール・プロセッサの第2のサブセットにおけるそれぞれの残りのモジュール・プロセッサから第2のイベントの発生を示す第2の信号を受信する段階。
【請求項17】
第1のモジュール・プロセッサ上で一致プロセスを実行して、第1のイベントと第2のイベントが一致を形成しているかどうかを判定する段階をさらに含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
残りのモジュール・プロセッサの第2のサブセットにおける残りのモジュール・プロセッサに要求信号を供給する段階、および
要求信号に応答して、残りのモジュール・プロセッサから第2のイベントに関する追加的な情報を受信する段階、をさらに含む、請求項16記載の方法。
【請求項19】
第1のモジュール・プロセッサからの要求信号が存在しないときに残りのモジュール・プロセッサの第2のサブセットにおける残りのモジュール・プロセッサから第2のイベントに関する追加的な情報を受信する段階をさらに含む、請求項16記載の方法。
【請求項20】
第1および第2のサブセットの少なくとも1つにおける残りのモジュール・プロセッサを、患者の一部によって占有される体積を含む視野を第1の検出器モジュールと一緒に規定する検出器モジュールに対応するように選択する段階をさらに含む、請求項16記載の方法。
【請求項21】
第1および第2のサブセットの少なくとも一方における残りのモジュール・プロセッサを、第1の検出器モジュールと向かい合う検出器モジュールに対応するように選択する段階をさらに含む、請求項16記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−503266(P2006−503266A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−519637(P2004−519637)
【出願日】平成15年6月25日(2003.6.25)
【国際出願番号】PCT/US2003/019851
【国際公開番号】WO2004/005965
【国際公開日】平成16年1月15日(2004.1.15)
【出願人】(505012900)フォトディテクション システムズ インコーポレーティッド. (1)
【Fターム(参考)】