説明

SIPクライアント上のアプリケーションプラットフォーム及びインターフェイス

【課題】任意のアプリケーションプログラムとその起動条件をSIP信号上のパラメータで指定するための汎用インターフェイスを提供する。
【解決手段】計算機Aのユーザは手動でアプリケーションA記憶部10のアプリケーションAをインターフェイス部30に登録する。具体的には、アプリケーションAの実行ファイル名、ファイルシステム上の実行ファイル格納位置、起動条件を登録する。これにより、アプリケーションAは、SIP信号上のパラメータで記述されたアプリケーションとして、SIPクライアントアプリケーション記憶部201に記憶される。次に、計算機Aから計算機BへアプリケーションAを起動するためSIP/SDP部202からSIP/SDP部212へSIP信号を送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SIP(セッション initiation protocol)クライアント上のアプリケーションプラットフォーム及びインターフェイスに関し、例えば、SIPクライアント間でアプリケーションプログラムを起動するため、IPネットワーク上の各端末に備えるSIP(セッション initiation protocol)クライアント上のアプリケーションプラットフォーム及びインターフェイスに関する。
【背景技術】
【0002】
IPネットワーク(インターネット)の普及に伴い、音声情報を符号化し、IPパケットに載せることにより、公衆電話網(PTN)とIPネットワークを接続する技術がVoIP(voice over IP)である。VoIPを利用して、IP電話やデスクトップ会議を行うため、音声・動画像データの送受信方法や発呼信号にはITU−T(国際電気通信連合電気通信標準化部門)勧告によるH.323が用いられていた。しかし、H.323は、動画像の双方向伝送を前提としているために、音声のみのIP電話ではオーバーヘッドが重い。そこで、H.323より構造が簡単なSIP(セッション initiation protocol)が使用されるようになっている。SIPはIETF(internet engineering task force:IAB(internet architecture boardの下部組織)が規定する双方向リアルタイム通信のためのプロトコルであり、セッション(双方向通信)をinitiateする(確立する(受信確認を行う))ためのプロトコル(IETF RFC2543)である。
【0003】
しかし、現状では、IPネットワーク上には、SIPをサポートしていないサーバも少なくない。
【0004】
そこで、特許文献1に開示されているSIPトンネリング装置及びそれを用いた通信システムでは、SIPアプリケーションプログラムと非SIPアプリケーションプログラムをIPネットワーク上のSIPトンネリング装置に送信し、両プログラムを連携させる。
【0005】
また、パーソナルコンピュータ同士をIPネットワークで接続し、Java(登録商標)分散オブジェクト同士でセッションを確立することは、パーソナルコンピュータとIPネットワークとの接続が頻繁に切断されるため、容易ではなかった。
【0006】
そこで、特許文献2に開示されているセッション確立方法では、Java分散オブジェクト同士でセッションを確立するために、JavaオブジェクトをIPネットワーク上のリポシトリに格納しておき、SIPによりセッションを確立した後で、Javaオブジェクトをダウンロードする。これにより、遠隔教育、地域コミュニケーション、ネットワークゲームなどを行う。
【0007】
また、IPネットワークに接続可能な端末装置は多様化しており、一方がエンコードしたデータを相手側がデコードできないという問題が生じるが、従来のSIPでは、発呼者が、利用可能なメディアフォーマットを一方的に送信し、受信側では、その中からメディアフォーマットを選択するに過ぎなかった。
【0008】
そこで、特許文献3に開示された端末装置、データ送受信システム及びデータ送受信開始方法では、端末装置同士が共通のメディアフォーマットを扱えない場合でも、IPネットワーク上のデータ変換装置に端末装置の能力情報を送信することにより、最適な通信形態を自動的に選択する。
【0009】
このように、SIPクライアント間・サーバ間のSIP信号上のパラメータに従って、アプリケーションを起動する機能は実現されている。
【0010】
【特許文献1】特開2002−247130号公報(図2、段落0036)
【特許文献2】特開2003−22250号公報(図1、段落0006)
【特許文献3】特開2003−309664号公報(図1、段落0108)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1〜3では、セッションを確立するため、IPネットワーク上に第三者の端末(SIPトンネル装置、リポジトリ、データ変換装置)が必要だった。
【0012】
また、SIPクライアント間・サーバ間のSIP信号上のパラメータに従ってアプリケーションを起動する機能は実現されているが、起動されるアプリケーションが限られていた。
【0013】
更に、IPクライアント間のインターフェイスも存在していなかった。
【0014】
また、起動されたアプリケーションはSIPクライアントから独立したアプリケーションであったため、通信機能を個別に実装する必要があった。
【0015】
そこで、本発明は、任意のアプリケーションプログラムとその起動条件をSIP信号上のパラメータで指定するための汎用インターフェイスを提供することを目的とする。
【0016】
また本発明は、当該汎用インターフェイスを含む端末同士が通信するとき、アプリケーションプログラムが送信側・受信側に存在しない場合は、IPネットワーク上の他の計算機からそれを取り込むことを目的とする。
【0017】
更に本発明は、SIPクライアントの再起動を行うことなく、SIPクライアントのサービスを追加することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前述の課題を解決するため本発明によるSIPクライアント上のアプリケーションプラットフォーム及びインターフェイスは次のような特徴的な構成を採用している。
【0019】
(1)SIP/SDP部及びSIPクライアントアプリケーション部からなるSIPクライアントと、
任意アプリケーション部と、
前記任意アプリケーション部を前記SIPクライアント部で起動させるインターフェイスとを備えたSIP上のアプリケーションプラットフォームにおいて、
前記任意アプリケーション部に格納されたアプリケーションの実行ファイル名、実行ファイル格納位置及び起動条件を、前記インターフェイスを介して前記SIPクライアントに登録するアプリケーションプラットフォーム。
【0020】
(2)IPネットワーク上の2以上の前記アプリケーションプラットフォームにおいて、
SIP信号により指定された前記任意アプリケーションを起動する上記(1)のアプリケーションプラットフォーム。
【0021】
(3)前記SIP信号により指定された前記任意アプリケーションが一方の前記アプリケーションプラットフォームに存在しないときは、
前記IPネットワーク上の他の端末から前記任意アプリケーションの実行ファイルをダウンロードする上記(2)のアプリケーションプラットフォーム。
【0022】
(4)前記SIPクライアントを再起動することなく、
2以上の任意アプリケーションを実行する上記(2)のアプリケーションプラットフォーム。
【0023】
(5)前記SIPクライアントを介して前記任意アプリケーションの動作を同期させるとともに、インスタントメッセージを送受信し、
前記SIPクライアントを介することなく、前記任意アプリケーションを動作させる上記(2)のアプリケーションプラットフォーム。
【0024】
(6)任意アプリケーション部を、SIP/SDP部上のSIPクライアントアプリケーション部に呼び出すためのインターフェイスにおいて、
前記インターフェイスは、前記任意アプリケーション部に格納されたアプリケーションの実行ファイル名、実行ファイル格納位置及び起動条件を登録するインターフェイス。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、SIPクライアントが実装する機能と密接に関連したアプリケーションの実現が可能となる。アプリケーション間の通信において、OSI参照モデルでのセッション層以下を隠蔽することにより、アプリケーションの実装を簡略化することができる。すなわち、アプリケーションは、IPネットワークレベルで、SIPが通信されていることを認識する必要がなく、SIPクライアントのプレゼンスサービス、インスタントメッセージ、VoIPサービス、アプリケーションセッション確立機能などをアプリケーションから利用可能とする。このように、本発明のインターフェイスは、SIPとアプリケーションの間でミドルウエアとして機能する。さらに、一旦セッションが確立されれば、各種アプリケーションは、インターフェイスを介して次々と切替えることができるため、SIPクライアントの再起動を行うことなく各種のサービスを実行することができる。
【実施例】
【0026】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明する。
図1は、SIPクライアント同士の双方向通信システムのブロック図である。
【0027】
計算機Aと計算機Bは、Network/Inter Process 40(IPネットワーク40)によって接続されている。計算機A及び計算機Bの内部構造は同じであり、それぞれ、Application A10、11(アプリケーションA記憶部10、11)と、SIP Client Application201、211(SIPクライアントアプリケーション記憶部201、211)と、SIP/SDP202、212(SIP/SDP部202、212)と、Interface30、31(インターフェイス部30、31)とを備える。以下、SIP Client Application201、211(SIPクライアントアプリケーション記憶部201、211)及びSIP/SDP202、212(SIP/SDP部202、212)を一括して、SIPクライアント部20、21という。
【0028】
このように、IPネットワーク上の端末は、任意のアプリケーション10、11、インターフェイス30、31、SIPクライアント20、21を含むアプリケーションプラットフォームを有する。
【0029】
図2は、SIPクライアント同士の双方向通信システムの動作を説明するための図である。
【0030】
先ず、ステップS10において、計算機Aのユーザは手動でアプリケーションA記憶部10のアプリケーションAをインターフェイス部30に登録する。具体的には、アプリケーションAの実行ファイル名、ファイルシステム上の実行ファイル格納位置、起動条件を登録する。これにより、アプリケーションAは、SIP信号上のパラメータで記述されたアプリケーションとして、SIPクライアントアプリケーション記憶部201に記憶される。
【0031】
次に、計算機Aから計算機BへアプリケーションAを起動するためSIP/SDP部202からSIP/SDP部212へSIP信号を送信する。具体的には、ユーザの手動操作による起動の場合は、計算機AのSIPクライアント20は、アプリケーションAのファイルシステム上の位置と起動条件を取得してアプリケーションAを起動する(ステップS20)。
【0032】
続いて、ステップS25において、計算機BのユーザがアプリケーションAの起動を希望することを入力し、計算機AのアプリケーションAと計算機BのアプリケーションAがSIP/SDP部202、212によってセッションを確立し、サービスを開始する。具体的には、ユーザの手動操作による起動の場合は、SIPクライアント20、21は、アプリケーションAのファイルシステム上の位置と起動条件を取得してアプリケーションAを起動する(ステップS30)。
【0033】
一方、ステップS20を実行した後に、アプリケーションAが存在しないことが判明する場合がある。そのときは、ステップS40に進み、計算機BのSIPクライアント20は、計算機BのユーザにアプリケーションAが存在しないことをユーザに知らせる。
【0034】
ステップS40に続くステップS45においては、IPネットワーク40上の別の計算機Cより、アプリケーションAの実行ファイルを取り込み、インターフェイス部31に登録する。具体的には、アプリケーションAの実行ファイル名、ファイルシステム上の実行ファイル格納位置、起動条件を登録する。これにより、アプリケーションAは、SIP信号上のパラメータで記述されたアプリケーションとして、SIPクライアントアプリケーション記憶部211に記憶される。
なお、計算機Cは、実行ファイルを格納しているだけでよいため、上述したアプリケーションプラットフォームを有することは必ずしも必要ではない。そこで、ステップS25に戻り、計算機BがアプリケーションAの起動を希望することを入力する。
【0035】
このようにして、SIPにより、アプリケーションAの双方向動作が行われる。
【0036】
具体的な例を挙げて説明すると、アプリケーションAが、ゲームであるとすると、ゲーム中の主人公の状態と、ユビキタスクライアント上の自状態との連携機能(例えば、主人公が休憩中なら、自状態も休憩中となる)が、SIPクライアント20(特にSIPクライアントアプリケーション記憶部201)―インターフェイス部30−アプリケーションA記憶部10(及び、SIPクライアント21(特にSIPクライアントアプリケーション記憶部211)―インターフェイス部31−アプリケーションA記憶部11)により実現される。
【0037】
また、ゲーム上のイベントに同期してインスタントメッセージを送信する機能が、SIPクライアント20のSIP/SDP部202―インターフェイス部30−アプリケーションA記憶部10(及び、SIP/SDP部212―インターフェイス部31−アプリケーションA記憶部11)により実現される。
【0038】
また、登録されたバディとの対戦機能が、アプリケーションA記憶部10とアプリケーションA記憶部11をSIPを介さず直接IPネットワークで通信することにより実現される。
【0039】
なお、アプリケーションAは、ゲームに限らず、スケジューラと自状態との同期(登録された予定表に従って、時間どおりに自状態を変更すること)、特定の送信元からのインスタントメッセージを認識して自動応答すること、SIPアプリケーションを提供者からユーザに配信することなどにも応用することができる。これら各種アプリケーションは、アプリケーション起動のためのSIP信号を送信するだけで起動されるため、SIPクライアント自体を再起動する必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】SIPクライアント同士の双方向通信システムのブロック図である。
【図2】SIPクライアント同士の双方向通信システムの動作を説明する図である。
【符号の説明】
【0041】
10、11、12 Application A(アプリケーションA記憶部)
20、21 SIP Client(SIPクライアント部)
201,211 SIP Client Application(SIPクライアントアプリケーション記憶部)
202,212 SIP/SDP(SIP/SDP部)
30、31 Interface(インターフェイス部)
202,212 SIP/SDP(セッション確立プロトコル(SIP)/セッション記述プロトコル(SDP)部)
40 Network/Inter Process(IPネットワーク)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SIP/SDP部及びSIPクライアントアプリケーション部からなるSIPクライアントと、
任意アプリケーション部と、
前記任意アプリケーション部を前記SIPクライアント部で起動させるインターフェイスとを備えたSIP上のアプリケーションプラットフォームにおいて、
前記任意アプリケーション部に格納されたアプリケーションの実行ファイル名、実行ファイル格納位置及び起動条件を、前記インターフェイスを介して前記SIPクライアントに登録することを特徴とするアプリケーションプラットフォーム。
【請求項2】
IPネットワーク上の2以上の前記アプリケーションプラットフォームにおいて、
SIP信号により指定された前記任意アプリケーションを起動することを特徴とする請求項1に記載のアプリケーションプラットフォーム。
【請求項3】
前記SIP信号により指定された前記任意アプリケーションが一方の前記アプリケーションプラットフォームに存在しないときは、
前記IPネットワーク上の他の端末から前記任意アプリケーションの実行ファイルをダウンロードすることを特徴とする請求項2に記載のアプリケーションプラットフォーム。
【請求項4】
前記SIPクライアントを再起動することなく、
2以上の任意アプリケーションを実行することを特徴とする請求項2に記載のアプリケーションプラットフォーム。
【請求項5】
前記SIPクライアントを介して前記任意アプリケーションの動作を同期させるとともに、インスタントメッセージを送受信し、
前記SIPクライアントを介することなく、前記任意アプリケーションを動作させることを特徴とする請求項2に記載のアプリケーションプラットフォーム。
【請求項6】
任意アプリケーション部を、SIP/SDP部上のSIPクライアントアプリケーション部に呼び出すためのインターフェイスにおいて、
前記インターフェイスは、前記任意アプリケーション部に格納されたアプリケーションの実行ファイル名、実行ファイル格納位置及び起動条件を登録することを特徴とするインターフェイス。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−127185(P2006−127185A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−315144(P2004−315144)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(000232254)日本電気通信システム株式会社 (586)
【Fターム(参考)】