SRSV検出キット
【課題】検体からこれまでに見出されているSRSV関連ウイルスを簡易に検出でき、その血清型及び遺伝子型を確実に判別できるキットを提供する。
【解決手段】特定の塩基配列又は該塩基配列の1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を有するHu/NLV/Chiba 407/1987/JP遺伝子;特定の塩基配列又は該塩基配列の1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を有するHu/NLV/Kashiwa 47/1997/JP遺伝子;特定の塩基配列又は該塩基配列の1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を有するHu/NLV/Mie 7k/1994/JP遺伝子;特定の塩基配列又は該塩基配列の1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を有するHu/NLV/Osaka 10−25/1999/JP遺伝子。
【解決手段】特定の塩基配列又は該塩基配列の1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を有するHu/NLV/Chiba 407/1987/JP遺伝子;特定の塩基配列又は該塩基配列の1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を有するHu/NLV/Kashiwa 47/1997/JP遺伝子;特定の塩基配列又は該塩基配列の1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を有するHu/NLV/Mie 7k/1994/JP遺伝子;特定の塩基配列又は該塩基配列の1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を有するHu/NLV/Osaka 10−25/1999/JP遺伝子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体中の小型球形ウイルス(Small Round Structured Virus、以下「SRSV」という)を検出、判別するためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
SRSVは、1972年に発見されたヒトのウイルス性胃腸炎の原因ウイルスの一つであり、小児期の急性胃腸炎や成人や年長児に食中毒様の集団発生を引き起こすことが知られている。SRSVは、細胞培養によってウイルスを増殖させることができず且つ感受性を示す動物モデルもないことから、SRSV抗原及び抗SRSV抗体の入手は困難であり、当該ウイルスの免疫血清学的な検出法の開発は遅れていた。
【0003】
斯かる状況の下、1993年にSRSVの一つであるノーウォーク(Norwalk)ウイルスの遺伝子クローニングが成功し全ゲノムの塩基配列が解析され(特許文献1)、その後RNAポリメラーゼ領域の一部を増幅するPCR法が開発され、これまでに14種類のSRSV関連ウイルスが見出されている。更にこれらのRNAポリメラーゼ領域の約120アミノ酸についての分析により、SRSVはノーウォークウイルス株をプロトタイプとする遺伝子型Iとスノーマウンテン(Snow Mountain)ウイルス株をプロトタイプとする遺伝子型IIの大きく2つの遺伝子型(genogroup)に分類できるとされている。
【0004】
しかし、SRSV関連ウイルスの遺伝子解析が進むにつれ、同一遺伝子型内でも多くの多様性があることが知られ、実際に各遺伝子型のプロトタイプであるノーウォークウイルス株及びスノーマウンテンウイルス株の遺伝子に対するプライマーを用いたRT−PCR法では、全てのSRSVを検出できず、SRSVを効率良く増幅させるプライマーの構築やRT−PCR法の条件の設定は非常に困難であることが明らかとなった。
【0005】
一方、遺伝子発現により、ノーウォークウイルス株、スノーマウンテンウイルス株等の一部のウイルスについては抗原が作製され、抗体の取得及びこれを用いたELISAによるSRSV検出法も構築されているが、SRSVの多様性により胃腸炎を引き起こす全てのSRSVを確実に検出することができなかった。
他方、わが国では、平成9年にSRSVが食品衛生法における食中毒原因因子に指定され、SRSVによる食中毒が発生した場合にはその感染ルートの特定が必須となり、感染者の便及び食品中のSRSVを簡便で且つ確実に検出同定する方法が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表平6−506823号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、検体からこれまでに見出されているSRSV関連ウイルスを簡易に検出でき、その血清型及び遺伝子型を確実に判別できるキットを提供することに関する。
【0008】
本発明者らは、斯かる実状に鑑みSRSV関連ウイルスについて遺伝学的及び免疫学的に検討したところ、新たに見出された新規ウイルスペプチドを加えた11種のSRSV関連ウイルスペプチドより得られる抗体を組み合わせて用いることにより、検体中の殆どのSRSVを検出でき、SRSVの血清型及び遺伝子型を確実に判別できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
即ち、本発明は、下記(a)〜(k);
(a)配列番号1に示すアミノ酸配列を有するペプチド若しくは該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチド又はそれらの部分ペプチド、
(b)配列番号2に示すアミノ酸配列を有するペプチド若しくは該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチド又はそれらの部分ペプチド、
(c)配列番号3に示すアミノ酸配列を有するペプチド若しくは該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチド又はそれらの部分ペプチド、
(d)配列番号4に示すアミノ酸配列を有するペプチド若しくは該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチド又はそれらの部分ペプチド、
(e)配列番号5に示すアミノ酸配列を有するペプチド若しくは該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチド又はそれらの部分ペプチド、
(f)配列番号6に示すアミノ酸配列を有するペプチド若しくは該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチド又はそれらの部分ペプチド、
(g)配列番号7に示すアミノ酸配列を有するペプチド若しくは該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチド又はそれらの部分ペプチド、
(h)配列番号8に示すアミノ酸配列を有するペプチド若しくは該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチド又はそれらの部分ペプチド、
(i)配列番号9に示すアミノ酸配列を有するペプチド若しくは該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチド又はそれらの部分ペプチド、
(j)配列番号10に示すアミノ酸配列を有するペプチド若しくは該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチド又はそれらの部分ペプチド、
(k)配列番号11に示すアミノ酸配列を有するペプチド若しくは該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチド又はそれらの部分ペプチド、
よりなる群から選択された一つのSRSV関連ウイルス構成ペプチドに対する抗体を全て含有することを特徴とするSRSV検出キットを提供するものである。
【0010】
また本発明は、下記SRSV関連ウイルス(a)〜(d);
(a)配列番号1に示すアミノ酸配列を有するペプチド若しくは該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチド又はそれらの部分ペプチド、
(b)配列番号2に示すアミノ酸配列を有するペプチド若しくは該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチド又はそれらの部分ペプチド、
(c)配列番号3に示すアミノ酸配列を有するペプチド若しくは該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチド又はそれらの部分ペプチド、
(d)配列番号4に示すアミノ酸配列を有するペプチド若しくは該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチド又はそれらの部分ペプチド、
よりなる群から選択された一つのSRSV関連ウイルス構成ペプチドに対する抗体を全て含有することを特徴とするSRSV遺伝子型判別のためのSRSV検出キットを提供するものである。
【0011】
更に本発明は、下記SRSV関連ウイルス(e)〜(k);
(e)配列番号5に示すアミノ酸配列を有するペプチド若しくは該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチド又はそれらの部分ペプチド、
(f)配列番号6に示すアミノ酸配列を有するペプチド若しくは該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチド又はそれらの部分ペプチド、
(g)配列番号7に示すアミノ酸配列を有するペプチド若しくは該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチド又はそれらの部分ペプチド、
(h)配列番号8に示すアミノ酸配列を有するペプチド若しくは該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチド又はそれらの部分ペプチド、
(i)配列番号9に示すアミノ酸配列を有するペプチド若しくは該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチド又はそれらの部分ペプチド、
(j)配列番号10に示すアミノ酸配列を有するペプチド若しくは該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチド又はそれらの部分ペプチド、
(k)配列番号11に示すアミノ酸配列を有するペプチド若しくは該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチド又はそれらの部分ペプチド、
よりなる群から選択された一つのSRSV関連ウイルス構成ペプチドに対する抗体を全て含有することを特徴とするSRSV遺伝子型判別のためのSRSV検出キットを提供するものである。
【0012】
更にまた、本発明は、配列番号15、20、21及び22で示される塩基配列又は該塩基配列の1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を有するSRSV関連ウイルス株遺伝子を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】Hu/NLV/Seto 124/1989/JP株由来の中空ウイルス粒子の電子顕微鏡写真である(×100,000)。
【図2】Hu/NLV/Funabashi 258/1996/JP株由来の中空ウイルス粒子の電子顕微鏡写真である(×100,000)。
【図3】Hu/NLV/Chiba 407/1987/JP株由来の中空ウイルス粒子の電子顕微鏡写真である(×100,000)。
【図4】Hu/NLV/Narita 104/1997/JP株由来の中空ウイルス粒子の電子顕微鏡写真である(×100,000)。
【図5】Hu/NLV/Sanbu 809/1998/JP株由来の中空ウイルス粒子の電子顕微鏡写真である(×100,000)。
【図6】Hu/NLV/Ichikawa 754/1998/JP株由来の中空ウイルス粒子の電子顕微鏡写真である(×100,000)。
【図7】Hu/NLV/Chitta 1876/1996/JP株由来の中空ウイルス粒子の電子顕微鏡写真である(×100,000)。
【図8】Hu/NLV/Kashiwa 47/1997/JP株由来の中空ウイルス粒子の電子顕微鏡写真である(×100,000)。
【図9】Hu/NLV/Mie 7k/1994/JP株由来の中空ウイルス粒子の電子顕微鏡写真である(×100,000)。
【図10】Hu/NLV/Kashiwa 645/1999/JP株由来の中空ウイルス粒子の電子顕微鏡写真である(×100,000)。
【図11】Hu/NLV/Osaka 10−25/1999/JP株由来の中空ウイルス粒子の電子顕微鏡写真である(×100,000)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.SRSV関連ウイルス
本発明のSRSV検出キットは、前記(a)〜(k)群の11種類の特定のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するSRSV関連ウイルス構成ペプチドに対する抗体を用いることを特徴とするものである。このうち、(d)群、(i)群、(j)群及び(k)群に属するペプチドは、現在までにジーンバンクに登録されている全てのSRSV関連ウイルス株(下記表1)とは異なる新規ペプチドであり、これらに対する抗体を含めて11種類の抗体を含有したキットすることにより、SRSV関連ウイルスを漏れなく検出することができる。
【0015】
本発明SRSV関連ウイルス構成ペプチドには、ペプチドとしてそれらと同等の抗原性を有する限り、そのアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加された変異体、又は当該アミノ酸配列をコードする塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された変異体が包含される。
(a)群における配列番号1に示すアミノ酸配列を有するペプチドとしては、例えば日本のSRSV感染患者の糞便由来Hu/NLV/Kashiwa 645/1999/JP株のウイルス構成ペプチドが挙げられ、該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチドとしては、例えばDesert Shield/90/SA株(ジーンバンク登録番号:U04469)由来のもの等が包含される。
(b)群における配列番号2に示すアミノ酸配列を有するペプチドとしては、例えば日本のSRSV感染患者の糞便由来Hu/NLV/Seto 124/1989/JP株のウイルス構成ペプチドが挙げられ、該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチドとしては、例えばKY−89/89J株(ジーンバンク登録番号:L23828)及びNorwalk/68/US株(ジーンバンク登録番号:M876611)由来のもの等が包含される。
(c)群における配列番号3に示すアミノ酸配列を有するペプチドとしては、例えば日本のSRSV感染患者の糞便由来Hu/NLV/Funabashi 258/1996/JP株のウイルス構成ペプチドが挙げられ、該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチドとしては、例えばSouthampton/91/UK株(ジーンバンク登録番号:L07418)由来のもの等が包含される。
(d)群における配列番号4に示すアミノ酸配列を有するペプチドとしては、例えば日本のSRSV感染患者の糞便由来Hu/NLV/Chiba 407/1987/JP株のウイルス構成ペプチドが挙げられる。
斯かる配列番号4に示すアミノ酸配列を有するペプチドは、現在までにジーンバンクに登録されている全てのSRSV関連ウイルス株(下記表1)と構造遺伝子(配列番号15)の相同性が75%未満であり、これまでに報告のない新規な配列を有するペプチドである。
(e)群における配列番号5に示すアミノ酸配列を有するペプチドとしては、例えば日本のSRSV感染患者の糞便由来Hu/NLV/Narita 104/1997/JP株のウイルス構成ペプチドが挙げられ、該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチドとしては、例えばBristol/93/UK株(ジーンバンク登録番号:X76716)、Lordsdale/93/UK(ジーンバンク登録番号:X86557)、Camberwell/94/AU株(ジーンバンク登録番号:U46500)由来のもの等が包含される。
(f)群における配列番号6に示すアミノ酸配列を有するペプチドとしては、例えば日本のSRSV感染患者の糞便由来Hu/NLV/Sanbu 809/1998/JP株のウイルス構成ペプチドが挙げられ、該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチドとしては、例えばMexico/89/MEX株(ジーンバンク登録番号:U22498)、Auckland株(ジーンバンク登録番号:U460391)、Toronto/77/CA株(ジーンバンク登録番号:U02030)、OTH−25/89/J(ジーンバンク登録番号:L23830)由来のもの等が包含される。
(g)群における配列番号7に示すアミノ酸配列を有するペプチドとしては、例えば日本のSRSV感染患者の糞便由来Hu/NLV/Ichikawa 754/1998/JP株のウイルス構成ペプチドが挙げられ、該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチドとしては、例えばSnow Mountain/76/US株(ジーンバンク登録番号:U70059)、Melksham/89/UK株(ジーンバンク登録番号:X81879)由来のもの等が挙げられる。
(h)群における配列番号8に示すアミノ酸配列を有するペプチドとしては、例えば日本のSRSV感染患者の糞便由来Hu/NLV/Chitta 1876/1996/JP株のウイルス構成ペプチドが挙げられ、該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチドとしては、例えばHawaii/71/US株(ジーンバンク登録番号:U07611)由来のもの等が包含される。
(i)群における配列番号9に示すアミノ酸配列を有するペプチドとしては、例えば日本のSRSV感染患者の糞便由来Hu/NLV/Kashiwa 47/1997/JP株のウイルス構成ペプチドが挙げられる。
斯かる配列番号9に示すアミノ酸配列を有するペプチドは、現在までにジーンバンクに登録されている全てのSRSV関連ウイルス株(下記表1)と構造遺伝子(配列番号20)の相同性が75%未満であり、これまでに報告のない新規な配列を有するペプチドである。
(j)群における配列番号10に示すアミノ酸配列を有するペプチドとしては、例えば日本のSRSV感染患者の糞便由来Hu/NLV/Mie 7k/1994/JP株のウイルス構成ペプチドが挙げられる。
斯かる配列番号10に示すアミノ酸配列を有するペプチドは、現在までにジーンバンクに登録されている全てのSRSV関連ウイルス株(下記表1)と構造遺伝子(配列番号21)の相同性が70%未満であり、これまでに報告のない新規な配列を有するペプチドである。
(k)群における配列番号11に示すアミノ酸配列を有するペプチドとしては、例えば日本のSRSV感染患者の糞便由来Hu/NLV/Osaka 10−25/1999/JP株のウイルス構成ペプチドが挙げられる。
斯かる配列番号11に示すアミノ酸配列を有するペプチドは、現在までにジーンバンクに登録されている全てのSRSV関連ウイルス株(下記表1)と構造遺伝子(配列番号22)の相同性が70%未満であり、これまでに報告のない新規な配列を有するペプチドである。
【0016】
【表1】
【0017】
これら(a)〜(k)群のSRSV関連ウイルス構成ペプチドには、上記ペプチドの他に、当該ペプチド中の特定のアミノ酸配列を有し、当該ペプチドと同等の抗原性を有する部分ペプチドが包含される。
これらのSRSV関連ウイルス構成ペプチドは、そのRNAポリメラーゼ領域の約120アミノ酸についてのホモロジー解析によれば2つの遺伝子型に分類することができる。即ち、(a)〜(d)群のペプチドの属するI型と、(e)〜(k)群のペプチドが属するII型に分類される。
【0018】
2.SRSV関連ウイルス構造遺伝子のクローニング
SRSV感染患者の便よりセチルトリメチルアンモニウムブロマイド法等を用いて、ウイルスRNAを抽出し、オリゴ−dTプライマー及び逆転写酵素によりcDNAを作製し、これと各SRSV関連ウイルスの構造遺伝子領域を増幅するプライマーを用いてPCRを行うことにより構造遺伝子断片を増幅する。
斯かる構造遺伝子断片は、一度大腸菌クローニングベクターを用いてTAクローニングを行いプラスミドに組み込まれる。
【0019】
ここで使用可能なクローニングベクターとしては、大腸菌に代表される原核細胞を宿主とするプラスミド及びλファージ等に代表されるバクテリオファージ由来のベクター等公知のものを使用でき、クローニングベクターとその宿主細胞とを適当に組み合わせて使用することが望ましい。クローニングベクターの具体的な例としては、pBR322、pUC19、pCRII等が挙げられる。また、遺伝子の挿入方法は公知の常法に従えばよく、これらのベクターの構築にあたっては、遺伝子操作の容易である大腸菌系を使用することが望ましい。
【0020】
3.構造遺伝子の発現及び中空ウイルス粒子の作製
上記で得られた(a)〜(k)群の各ウイルス構造遺伝子の断片を適当な発現系を用いて発現させるか或いは、該ウイルス構成ペプチドから遺伝子工学的に作製された中空ウイルス粒子を用いることにより、各ウイルスに対する抗体を得ることができる。以下に大腸菌を用いた場合の発現と、中空ウイルス粒子の作製について説明する。
【0021】
(1)大腸菌による発現
各SRSV関連ウイルスの構造遺伝子領域を組み込んだプラスミドを、構造遺伝子領域を切断しない制限酵素で消化後構造遺伝子領域を回収し、例えば、pGEX(GST融合蛋白発現ベクター;ファルマシア製)、pTrc99A(大腸菌発現ベクター;ファルマシア製)、pTrxFus(チオレドキシン融合蛋白発現ベクター;インビトロゲン社製)、pET(pT7RNAプロモーターを用いた発現ベクター;ノバゲン社製)、マルトース結合蛋白又はβガラクトシダーゼの融合蛋白発現ベクター等に組み込む。このとき、組み込む構造遺伝子領域は、完全長でもよいし、部分的な領域でもよく、好ましくはSRSVの抗原エピトープを最低一つ有する部分的な領域である方がよい。このようにして構造遺伝子領域を組み込んだ遺伝子発現ベクターを遺伝子発現に適した大腸菌、例えば、BL21株、DH10B株、JM109株、XL1−Blue株等で形質転換する。得られた形質転換体を一般的な培養液、例えばL−broth等で培養することにより遺伝子発現を行うことができる。発現には、遺伝子発現誘導剤、例えばIPTG等を添加することや、PLプロモーターを用いた場合、熱ショックを与えることが好ましい。
発現されたペプチドの精製は、一般的な大腸菌を用いた発現蛋白の精製法に従えばよく、例えば、発現蛋白が可溶化していたならばGSTカラム又はマルトース結合蛋白用カラムを用いたアフィニティー精製を行えばよく、発現蛋白が不溶化していたならば、Niキレートを用いたアフィニティー精製を行えばよい。
【0022】
(2)SRSV中空ウイルス粒子の作成
SRSV関連ウイルスの構造遺伝子領域を組み込んだプラスミドを、構造遺伝子領域を切断しない制限酵素で消化し構造遺伝子領域を回収し、例えばpVL1393等のバキュロウイルストランスファーベクターに組み込む。斯かるトランスファーベクターと直鎖状で増殖必須遺伝子領域を欠失させてあるバキュロウイルスDNAと共にトランスフェクションし、昆虫細胞内で相同組換えを起こさせることにより目的とする組換えバキュロウイルスを作製することができる。
【0023】
得られた組換えバキュロウイルスをSf9細胞、Tn5細胞等の昆虫細胞に感染させ、常法により適当な成育条件下で培養することによりSRSVの構造蛋白を発現させ、自己集合させることにより中空ウイルス粒子を生産させることができる。生化学的な精製法例えば遠心分離等を用いれば中空ウイルス粒子を分離精製することができる。中空ウイルス粒子が形成されているかどうかは、ウラニル酢酸でネガティブ染色し、電子顕微鏡で検鏡することにより確認することができる。
かくして得られた中空ウイルス粒子は、内部に遺伝子を持たないため感染性はないが、構造がウイルス粒子とほぼ同じ形をしているので、ウイルス粒子と同等な抗原性を持つものである。
【0024】
4.SRSV関連ウイルスに対する抗体の取得
得られたウイルス構成ポリペプチド又は中空ウイルス粒子を動物に免疫することにより、抗SRSV関連ウイルス抗体を調製することができる。尚、斯かる抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体の何れでもよい
例えば、中空ウイルス粒子を用いた場合の免疫抗体の作製は、精製された各SRSV関連ウイルスの中空ウイルス粒子を常法に従ってウサギに免疫し、分離血清より中空ウイルス粒子に対するIgG抗体(抗SRSV抗体)を取得することができる。尚、抗体の分離精製にはDEAEセファロースクロマトグラフィー等の手段が用いられる。
かくして得られた(a)〜(k)群からなる11種類の中空ウイルス粒子と対応する抗SRSV抗体を用いてその交差反応性を測定すると、後記表2に示すように各SRSV関連ウイルス間では交差反応は全く示さない。従って、本発明のSRSVの検出法によれば、SRSVの11種類の血清型を同時に判別することが可能である。また、このことは同時に遺伝子型Iと遺伝子型IIの判別が可能であることも示している。
【0025】
5.SRSV関連ウイルスの検出
上記で得られた各抗SRSV抗体を用いた検体中のSRSVの検出は、通常用いられる抗原抗体反応を利用した免疫学的測定法、例えばサンドイッチ法によるラジオイムノアッセイや酵素免疫測定法(ELISA)等を用いることができるが、特にELISAが好ましい。即ち、11種類の抗SRSV抗体をマイクロプレートに分注してSRSVスクリーニングプレートを作製し、SRSV感染患者の便から調製した便乳剤の希釈液を当該プレートのウェルに加えて反応させた後、各ウイルスのパーオキシダーゼ(POD)標識抗SRSV抗体を加えて反応させる。次いで基質液(過酸化水素を含むTMB)を加えて反応させた後、0.6N硫酸を加えて反応を停止させ、ELISAオートリーダーでウェルの吸光度(450nm/630nm)を測定することによりSRSVを検出できる。
【0026】
ここで、検体中のSRSVの検出のみを行う場合には、11種類の抗SRSV抗体全てを混合固定化したマイクロプレートを用いたキットとすればよく、SRSVの血清型まで判別する場合には、11種類の抗SRSV抗体全てをそれぞれ別個のプレートに固定化したマイクロプレートを用いたキットとすればよい。
また、遺伝子型の判別は、(a)〜(d)群のペプチドに対する抗体を混合固定化したマイクロプレート(I型プレート)又は(e)〜(k)群のペプチドに対する抗体を混合固定化したマイクロプレート(II型プレート)を用いたキットとすることにより可能となる。
尚、本発明の各抗SRSV抗体をラテックスや磁気ビーズ等の担体を用いて固定化することにより、検体中のSRSV関連ウイルスを確実に捕捉することができ、ラテックスならば遠心操作、磁気ビーズならば磁石でSRSV捕捉担体を回収することができ、回収後にウイルスRNAを抽出し利用することができる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例により本発明のSRSV検出キットを具体的に説明する。
実施例1 SRSV関連ウイルスの構造遺伝子のクローニング
(1)cDNA合成
SRSV患者の便(0.5〜1.0g)に9mLのPBSと1mLのダイフロンを加え、ホモジナイズした。次いで、3000rpmで20分間遠心してその上清を回収し、10%便乳剤とした。
この便乳剤1mLを用い、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド法によりSRSVのRNAを抽出し、最終的に0.1%ジエチルピロカーボネート液30μLに浮遊させた。この浮遊液を用いて、Oligo−dT(12−18)プライマー及びAMV(Avian Myeloblastosis Virus)(生化学工業社製)由来逆転写酵素によりcDNAを作製した。
【0028】
(2)構造遺伝子領域の単離
(1)で作製したcDNAと、以下に示す構造遺伝子領域を増幅するプライマーを用いてPCRを行い、PCR後、アガロースゲル電気泳動法により増幅させた構造遺伝子断片を分離し、SuprecTM−01(TAKARA)を用いて回収した。
Hu/NLV/Kashiwa 645/1999/JP遺伝子:G1/F2(配列番号23)、Oligo−dT(33)(配列番号24)
Hu/NLV/Seto 124/1989/JP遺伝子:G1/F2(配列番号23)、G1/R0(配列番号25)
Hu/NLV/Funabashi 258/1996/JP遺伝子:G1/F2(配列番号23)、Oligo−dT(33)(配列番号24)
Hu/NLV/Chiba 407/1987/JP遺伝子:D5(配列番号26)、CV−U4(配列番号27)
Hu/NLV/Narita 104/1997/JP遺伝子:97k104/F1(配列番号28)、97k104/R1(配列番号29)
Hu/NLV/Sanbu 809/1998/JP遺伝子:G2/F3(配列番号30)、MV−R1(配列番号31)
Hu/NLV/Ichikawa 754/1998/JP遺伝子:G2/F3(配列番号30)、SMV−R1(配列番号32)
Hu/NLV/Chitta 1876/1996/JP遺伝子:G2/F3(配列番号30)、G2/R0(配列番号33)
Hu/NLV/Kashiwa 47/1997/JP遺伝子:97k104/F1(配列番号28)、Oligo−dT(33)(配列番号24)
Hu/NLV/Mie 7k/1994/JP遺伝子:G2/F3(配列番号30)、Oligo−dT(33)(配列番号24)
Hu/NLV/Osaka 10−25/1999/JP遺伝子:GFCR7(配列番号34)、Oligo−dT(33)(配列番号24)
【0029】
(3)構造遺伝子のクローニング
回収した構造遺伝子断片を、大腸菌クローニングベクターpCRII(INVITROGEN社製)にTAクローニングを行った。これらのクローンからウイルスの構造遺伝子を組み込むプラスミドpCRII/645、pCRII/124、pCRII/258、pCRII/Chiba、pCRII/104、pCRII/809、pCRII/754、pCRII/76、pCRII/47、pCRII/7k、pCRII/10−25を得た。
【0030】
実施例2 塩基配列の決定
Hu/NLV/Kashiwa 645/1999/JP株、Hu/NLV/Seto 124/1989/JP株、Hu/NLV/Funabashi 258/1996/JP株、Hu/NLV/Chiba 407/1987/JP株、Hu/NLV/Narita 104/1997/JP株、Hu/NLV/Sanbu 809/1998/JP株、Hu/NLV/Ichikawa 754/1998/JP株、Hu/NLV/Chitta 1876/1996/JP株、Hu/NLV/Kashiwa 47/1997/JP株、Hu/NLV/Mie 7k/1994/JP株及びHu/NLV/Osaka 10−25/1999/JP株の構造遺伝子の塩基配列の決定は、以下の方法により行った。
【0031】
はじめに、トランスファーベクターであるpVL1393のポリヘドリンプロモーターの近傍にプライマー(第1プライマー)を設定し、dye termination法によりサイクルシークエンシングキットFS(パーキンエルマー社製)を用いてラベリング反応を行った。この際使用したトランスファーベクターのDNA濃度は0.4μg/μLであり、シークエンシングプライマーの濃度は3.2pmol/μLである。更に、反応終了後、セントリプレップスピンカラム(パーキンエルマー社)を用いて過剰量の蛍光色素を除外した。この反応液を真空凍結乾燥機によって完全に乾燥させ、専用のサンプルバッファー(パーキンエルマー社製)20μlに浮遊させる。更に、攪拌後遠心沈殿させ95℃で2分間の加熱操作を行い、急冷後オートシークエンサー(ABI Genetic analyzer 310)で解析した。
【0032】
次いで、第1プライマーによって決定された塩基配列を用いて、その塩基配列の3’側に新たなシークエンス用のプライマー(第2プライマー)を設定した。この第2プライマーを用いて、前述と同様にサイクルシークエンシングキットでラベリング反応を行った。反応後、前述と同様の操作を行い、オートシークエンサーで塩基配列を解析した。このように、毎回決定した塩基配列の3’側にシークエンス用プライマーを設定し、塩基配列の決定を行った。これを繰り返し、11種類のSRSV関連ウイルス構造遺伝子の5’末端から3’末端まで塩基配列(配列番号12〜配列番号22)を決定した。このうち、配列番号15(Hu/NLV/Chiba 407/1987/JP株)、配列番号20(Hu/NLV/Kashiwa 47/1997/JP株)、配列番号21(Hu/NLV/Mie 7k/1994/JP株)及び配列番号22(Hu/NLV/Osaka 10−25/1999/JP株)で示される塩基配列は、これまでに報告されていない新規な配列であることが確認された。
【0033】
実施例3 中空ウイルス粒子を産生する組換えバキュロウイルスの作製
(1)トランスファーベクターの構築
実施例1(3)で得られた構造遺伝子領域を組み込んだプラスミドを構造遺伝子領域を切断しない制限酵素で消化し、アガロースゲル電気泳動法によって分離後、構造遺伝子領域をSuprecTM−01(TAKARA)により回収した。次いで、回収した遺伝子断片を、同じ制限酵素で消化したバキュロウイルストランスファーベクターpVL1393(INVITROGEN社製)に組み込み、トランスファーベクターを作製した。
【0034】
(2)組換えバキュロウイルスの作製
0.5μgのバキュロウイルスDNA(Baculo-Gold)と1μgの(1)で得られたトランスファーベクターを8μLの蒸留水に溶解し、2倍希釈した等量のリポフェクチンと混合して室温で15分間放置する。昆虫細胞用培地Ex−cell400に懸濁した1×105個のSf9細胞を26.5℃で30分間プラスティックシャーレ(直径3.5cm)内に吸着後、トランスファーベクターとBaculo−Gold混合液を細胞に滴下し26.5℃で培養した。24時間後、培養液を10%牛胎児血清及び2%BTB(GIBCO BRL社製)を含むTC100(GIBCO BRL社製;以後TC100)培地に交換し、更に培養を継続した。
【0035】
(3)組換えバキュロウイルスの純化
(2)で得られた組換えバキュロウイルスを5日間培養した後、培養上清をTC100等の昆虫細胞培養用メディウムを用いて10倍に希釈した。その0.1mLを取り、直径3.5cmのプラスチックシャーレに培養した3×106個のSf9細胞に接種した。26.5℃、60分間吸着後1%アガロースME(低融点アガロース)を含むTC100培養液2mLを重層し26.5℃で培養した。更に、培養開始後4日目に0.005%のニュートラルレッドを含むTC1001mLを重層して26.5℃で培養した。翌日出現したプラークをマイクロチップでかき取り、TC100培地に懸濁した。
【0036】
(4)組換えバキュロウイルスのシードの作製と感染力価の測定
(3)で得られた懸濁液を1×107個のSf9細胞に接種し、26.5℃、60分間吸着後TC100を加え、26.5℃で3から4日間培養した。この培養液を2500rpm、10分間、4℃で遠心し、培養上清を回収した。この回収した培養上清を、1×107個のSf9細胞に接種し、26.5℃、60分間吸着後TC100を加え、26.5℃で3から4日間培養した。
次いで、この培養上清を直径3.5cmのプラスチックシャーレに培養した3×107個のSf9細胞に接種し、26.5℃で60分間吸着後1%アガロースME(低融点アガロース)を含むTC100培養液2mLを重層し26.5℃で培養した。次いで培養開始後4日目に0.005%のニュートラルレッドを含むTC 100を1mL重層して26.5℃で培養した。翌日出現したプラークを計測し、組換えバキュロウイルスの感染力価を算出し、組換えバキュロウイルスシードの感染力価とした。
【0037】
実施例4 中空ウイルス粒子の作製
(1)組換えバキュロウイルスを用いた構造蛋白の発現
Sf9昆虫細胞に対して組換えバキュロウイルスをM.O.I.(Multiplicity of infection)1から10で感染させた。この時、組換えウイルス液を細胞に滴下させ、静かに振とうさせながら約60分程度吸着させた。その後、TC 100昆虫細胞用培地を添加し、26.5℃、5から6日間培養した。
【0038】
(2)発現蛋白の同定
組換えウイルス感染培養上清を経時的に採取し、SDS−PAGEで分離後をクーマシーブルー染色で検出し、予想される分子量により発現蛋白の妥当性を確認した。また、SDS−PAGEで蛋白を分離後ニトロセルロース膜に転写し、SRSVの回復期血清によるウエスターンブロッティング法で発現蛋白を同定した。
【0039】
(3)中空ウイルス粒子の精製と回収
組換えバキュロウイルスシードをM.O.I.1から10で感染させ、約60分吸着後、Ex−cell400を添加し、26.5℃で3日間培養した。次いで、プロテアーゼ阻害剤、例えばペプスタチンA及びリューペプチンを培養液に最終濃度1mMになるように加え更に2から3日間培養を続けた。
【0040】
培養後2500rpm、10分間、4℃で遠心し、培養上清を回収した。回収した培養液を10000rpmで30分間遠心して組換えバキュロウイルスを取り除いた。この上清をベックマンSW28ローターで25000rpm、4時間遠心して中空ウイルス粒子を沈殿させた。次いで、上清を捨てた遠心管を逆さにして、完全に上清を除き、その後プロテアーゼ阻害剤を加えたグレースバッファー又はPBS(−)0.5mLを各遠心管に加え、4℃一晩静置した。
静置後、加えておいたプロテアーゼ阻害剤入りグレースバッファーで中空ウイルス粒子を懸濁させ回収した。次いで、回収した中空ウイルス粒子に、CsClを3.8g加えたプロテアーゼ阻害剤入りグレースバッファー又はPBS(−)を加え13mLとし、16℃、35000rpm、24から48時間超遠心した。超遠心後、中空ウイルス粒子が集まっている青白いバンドを回収し、プロテアーゼ阻害剤入りグレースバッファーを用いて5倍希釈後、ベックマンTL100.3ローターで45000rpm、3時間超遠心して、中空ウイルス粒子を沈殿させた。
【0041】
沈殿させた中空ウイルス粒子をプロテアーゼ阻害剤入りグレースバッファー又はPBS(−)で可溶化した。次いで、10%から50%のショ糖を含むプロテアーゼ阻害剤入りグレースバッファー溶液を4PAチューブに作り、そこに中空ウイルス粒子可溶化液を重層し、35000rpm、4時間、4℃でショ糖密度勾配遠心を行った。遠心後、中空ウイルス粒子の青白いバンドを26G針付きの1mLシリンジで回収し、精製SRSV中空ウイルス粒子とした。
精製SRSV中空ウイルス粒子をグレースバッファーで適宜希釈して、Bradford法により蛋白量を測定した。
精製SRSV中空ウイルス粒子は、ウラニル酢酸でネガティブ染色し、電子顕微鏡で検鏡し中空ウイルス粒子を形成しているかを確認した(図2〜12)。
【0042】
実施例5 中空ウイルス粒子を用いた免疫抗体及び標識抗体の作製
(1)中空ウイルス粒子に対する免疫抗体の作製
Hu/NLV/Kashiwa 645/1999/JP株、Hu/NLV/Seto 124/1989/JP株、Hu/NLV/Funabashi 258/1996/JP株、Hu/NLV/Chiba 407/1987/JP株、Hu/NLV/Narita 104/1997/JP株、Hu/NLV/Sanbu 809/1998/JP株、Hu/NLV/Ichikawa 754/1998/JP株、Hu/NLV/Chitta 1876/1996/JP株、Hu/NLV/Kashiwa 47/1997/JP株、Hu/NLV/Mie 7k/1994/JP株及びHu/NLV/Osaka 10−25/1999/JP株から得られた精製SRSV中空ウイルス粒子500μgを含む1mLのリン酸緩衝液(pH7.2)と1mLのフロインドの不完全アジュバントを混合し、3kgのニュージーランド白色ウサギに常法に従って免疫した。3週間後、0.25μgのSRSV中空ウイルス粒子を含むリン酸緩衝液(pH7.2)1mLとフロインドの不完全アジュバント1mLを混合して免疫した(追加免疫)。次いで、3週間後追加免疫と同様に免疫を行い、この約7から10日間後に全採血し、血清成分を分離した。
【0043】
分離精製した血清を硫安分画後、50mM Tris−HCl(pH7.6)で4℃、一晩透析した。次いで50mM Tris−HCl(pH7.6)で平衡化したDEAEセファロースクロマトグラフィーにかけ、UV波長280nmでモニタリングし、O.D.のピークを集めて、中空ウイルス粒子に対するDE
AE精製IgG抗体(抗SRSV抗体)とした。
【0044】
(2)標識抗体の作製
抗SRSV抗体を過ヨウ素酸改良法〔酵素免疫測定法,2:91(1982)〕でPOD標識した。即ちPODを4mg/mLになるように蒸留水で溶解し、0.1M過ヨウ素酸ナトリウム0.2mLを加え、室温で約20分間反応させた。次いで1mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.0)で一晩透析した。透析後、0.2M炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.5)を0.02mL加え、pH9.5にすると同時に抗SRSV抗体を8mg加えた。
室温で約2時間反応させ、4mg/mL水酸化ホウ素ナトリウムを0.1mL加え、4℃で約2時間反応させた。反応後、10mMリン酸バッファーを用いてセファクリルS−200によるゲル濾過を行い、UV波長280nmでモニタリングしてPOD標識抗SRSV抗体画分を集めた。
【0045】
(3)抗SRSV抗体固相プレートの作製
抗SRSV抗体を炭酸バッファー(pH9.5)で各々0.5−10μg/mL濃度に希釈し、ポリスチレン平型マイクロプレート(ヌンク社製)に100μL/ウェルで分注し、4℃で一晩静置した。18時間以上静置したマイクロプレートを最終濃度0.05% Tween20を含むPBS200μL/ウェルで3〜4回洗浄後、最終濃度0.5%牛血清アルブミン(BSA)と0.05%Tween 20を含む10mM PBS(pH7.2)200μL/ウェル加えて4℃一晩静置し、抗SRSV抗体固相マイクロプレートを作製した。
【0046】
実施例6 交差反応性
(1)抗原検出ELISA
各精製SRSV中空ウイルス粒子をそれぞれ緩衝液(10mMPBS(pH7.2)に最終濃度0.2%牛血清アルブミン(BSA)と0.05%Tween 20を含む溶液)で4ng/mLから0.04ng/mLまで希釈した。
次いで、希釈した各中空ウイルス粒子(VLP)を、それぞれの抗SRSV抗
体固相マイクロプレートのウェルに100μL加え、室温60分間反応させた。反応後、ウェルの反応液を吸引除去し、最終濃度0.05% Tween20を含む10mM PBS(pH7.2)をウェルに200μL加え、同様に吸引除去した。この操作を少なくとも3回行った。洗浄後、緩衝液で20000倍に希釈した各血清型のPOD標識抗SRSV抗体を100μL/ウェル加え、室温60分間反応させた。洗浄後、過酸化水素を含むTMB溶液を100μL/ウェル加え、室温で30分間反応させた。反応後、0.6Nの硫酸を100μL/ウェル加え、ELISAオートリーダーでウェルの吸光度(450nm/630nm)を測定した。結果を表2に示す。
【0047】
【表2】
【0048】
表中、645はHu/NLV/Kashiwa 645/1999/JP株、124はHu/NLV/Seto 124/1989/JP株、258はHu/NLV/Funabashi 258/1996/JP株、407はHu/NLV/Chiba 407/1987/JP株、104はHu/NLV/Narita 104/1997/JP株、809はHu/NLV/Sanbu 809/1998/JP株、754はHu/NLV/Ichikawa 754/1998/JP株、1876はHu/NLV/Chitta 1876/1996/JP株、47はHu/NLV/Kashiwa 47/1997/JP株、7kはHu/NLV/Mie 7k/1994/JP株、10−25はHu/NLV/Osaka 10−25/1999/JP株を示す。
【0049】
これより、異なる遺伝子型IとIIの間で交差反応性は見られなかったことはもちろん同一遺伝子型間においても交差反応は見られず、用いた11種類のウイスル株の血清型はそれぞれ異なることが確認された。
【0050】
試験例1 SRSVの遺伝型の判別
遺伝子型Iに属するSRSV(Hu/NLV/Kashiwa 645/1999/JP株、Hu/NLV/Seto 124/1989/JP株、Hu/NLV/Funabashi 258/1996/JP株、Hu/NLV/Chiba 407/1987/JP株)の抗SRSV抗体を炭酸バッファー(pH9.5)で0.5−10μg/mL濃度に希釈混合し、ポリスチレン平型マイクロプレート(ヌンク社製)に100μL/ウェルで分注し、4℃で一晩静置した。18時間以上静置したマイクロプレートを最終濃度0.05% Tween20を含むPBS200μL/ウェルで3〜4回洗浄後、最終濃度0.5%牛血清アルブミン(BSA)と0.05% Tween20を含む10mM PBS(pH7.2)を200μL/ウェル加えて4℃一晩静置し、遺伝子型Iの各血清型に対する抗SRSV−IgG抗体を混合固相したマイクロプレート(I型プレート)を作製した。
【0051】
次いで、遺伝子型IIに属するSRSV(Hu/NLV/Narita 104/1997/JP株、Hu/NLV/Sanbu 809/1998/JP株、Hu/NLV/Ichikawa 754/1998/JP株、Hu/NLV/Chitta 1876/1996/JP株、Hu/NLV/Kashiwa 47/1997/JP株、Hu/NLV/Mie 7k/1994/JP株、Hu/NLV/Osaka 10−25/1999/JP株)の抗SRSV抗体を同様に固相してII型プレートを作製した。
【0052】
SRSV患者の便(0.5〜1.0g)に9mLのPBSと1mLのダイフロンを加え、ホモジナイズした。次いで、19000gで20分間遠心してその上清を回収し、10%便乳剤とし、この10%便乳剤を緩衝液で等量希釈し、その希釈液をI及びII型プレートのウェルに100μL加え、室温60分間反応させた。反応後、ウェルの反応液を吸引除去し、最終濃度0.05% Tween20を含む10mM PBS(pH7.2)をウェルに200μL加え、同様に吸引除去した。この操作を少なくとも3回行った。洗浄後、緩衝液で20000倍に希釈した各血清型のPOD標識抗SRSV抗体を100μL/ウェル加え、室温60分間反応させた。洗浄後、過酸化水素を含むTMB溶液を100μL/ウェル加え、室温で30分間反応させた。反応後、0.6Nの硫酸を100μL/ウェ ル加え、ELISAオートリーダーでウェルの吸光度(450nm/630nm)を測定した。
【0053】
その結果、遺伝子型IのSRSVに感染した患者の便検体15例は、14例がI型プレートにのみ反応しII型プレートに反応しなかった。遺伝子型IIのSRSVに感染した患者の便検体7例は、6例がI型プレートに反応しないでII型プレートにのみ反応し、遺伝子型の判別が実際に可能であることを確認した。
【0054】
試験例2 SRSVの血清型の判別
SRSV(Hu/NLV/Kashiwa 645/1999/JP株、Hu/NLV/Seto 124/1989/JP株、Hu/NLV/Funabashi 258/1996/JP株、Hu/NLV/Chiba 407/1987/JP株、Hu/NLV/Narita 104/1997/JP株、Hu/NLV/Sanbu 809/1998/JP株、Hu/NLV/Ichikawa 754/1998/JP株、Hu/NLV/Chitta 1876/1996/JP株、Hu/NLV/Kashiwa 47/1997/JP株、Hu/NLV/Mie 7k/1994/JP株及びHu/NLV/Osaka 10−25/1999/JP株)の各抗SRSV抗体をそれぞれ単独に炭酸バッファー(pH9.5)で0.5−10μg/mL濃度に希釈し、ポリスチレン平型マイクロプレート(ヌンク社製)に100μL/ウェルで分注し、4℃で一晩静置した。18時間以上静置したマイクロプレートを最終濃度0.05% Tween20を含むPBS200μL/ウェルで3〜4回洗浄後、最終濃度0.5%牛血清アルブミン(BSA)と0.05% Tween20を含む10mM PBS(pH7.2)を200μL/ウェル加えて4℃で一晩静置し、抗SRSV抗体固相マイクロプレート(血清型別プレート)を作製した。
SRSV患者の便検体に対し、試験例1と同様にELISAを行った。結果を表3に示す。
【0055】
【表3】
【0056】
これにより、本発明のSRSV検出法によれば、93%という高い確率でSRSVを検出でき、且つその血清型を判別できることが明らかとなった。
尚、本発明のキットによりなされた型別は、PCR及び塩基配列の解析によりなされた型別と一致した(表4)。
【0057】
【表4】
【0058】
また、SRSV(Hu/NLV/Kashiwa 645/1999/JP株、Hu/NLV/Seto 124/1989/JP株、Hu/NLV/Funabashi 258/1996/JP株、Hu/NLV/Chiba 407/1987/JP株、Hu/NLV/Narita 104/1997/JP株、Hu/NLV/Sanbu 809/1998/JP株、Hu/NLV/Ichikawa 754/1998/JP株、Hu/NLV/Chitta 1876/1996/JP株、Hu/NLV/Kashiwa 47/1997/JP株、Hu/NLV/Mie 7k/1994/JP株及びHu/NLV/Osaka 10−25/1999/JP株)の各抗SRSV抗体を炭酸バッファー(pH9.5)で0.5−10μg/mL濃度に希釈しこれらを全て混合し、又は混合してから希釈してものを用いて同様に抗SRSV抗体固相マイクロプレートを作製した。SRSVに感染した患者の便検体22例に対し、試験例1と同様にELISAを行ったところ、20例で検体中のSRSVを検出できた。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のSRSV検出キットによれば、簡易で且つ確実にこれまでに見出されている殆どのSRSV関連ウイルスを検出し、その血清型及び遺伝子型を判別することができる。従って、SRSVによる食中毒が発生した場合の感染ルートの特定、感染拡大の防止及び疫学調査等に有用である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体中の小型球形ウイルス(Small Round Structured Virus、以下「SRSV」という)を検出、判別するためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
SRSVは、1972年に発見されたヒトのウイルス性胃腸炎の原因ウイルスの一つであり、小児期の急性胃腸炎や成人や年長児に食中毒様の集団発生を引き起こすことが知られている。SRSVは、細胞培養によってウイルスを増殖させることができず且つ感受性を示す動物モデルもないことから、SRSV抗原及び抗SRSV抗体の入手は困難であり、当該ウイルスの免疫血清学的な検出法の開発は遅れていた。
【0003】
斯かる状況の下、1993年にSRSVの一つであるノーウォーク(Norwalk)ウイルスの遺伝子クローニングが成功し全ゲノムの塩基配列が解析され(特許文献1)、その後RNAポリメラーゼ領域の一部を増幅するPCR法が開発され、これまでに14種類のSRSV関連ウイルスが見出されている。更にこれらのRNAポリメラーゼ領域の約120アミノ酸についての分析により、SRSVはノーウォークウイルス株をプロトタイプとする遺伝子型Iとスノーマウンテン(Snow Mountain)ウイルス株をプロトタイプとする遺伝子型IIの大きく2つの遺伝子型(genogroup)に分類できるとされている。
【0004】
しかし、SRSV関連ウイルスの遺伝子解析が進むにつれ、同一遺伝子型内でも多くの多様性があることが知られ、実際に各遺伝子型のプロトタイプであるノーウォークウイルス株及びスノーマウンテンウイルス株の遺伝子に対するプライマーを用いたRT−PCR法では、全てのSRSVを検出できず、SRSVを効率良く増幅させるプライマーの構築やRT−PCR法の条件の設定は非常に困難であることが明らかとなった。
【0005】
一方、遺伝子発現により、ノーウォークウイルス株、スノーマウンテンウイルス株等の一部のウイルスについては抗原が作製され、抗体の取得及びこれを用いたELISAによるSRSV検出法も構築されているが、SRSVの多様性により胃腸炎を引き起こす全てのSRSVを確実に検出することができなかった。
他方、わが国では、平成9年にSRSVが食品衛生法における食中毒原因因子に指定され、SRSVによる食中毒が発生した場合にはその感染ルートの特定が必須となり、感染者の便及び食品中のSRSVを簡便で且つ確実に検出同定する方法が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表平6−506823号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、検体からこれまでに見出されているSRSV関連ウイルスを簡易に検出でき、その血清型及び遺伝子型を確実に判別できるキットを提供することに関する。
【0008】
本発明者らは、斯かる実状に鑑みSRSV関連ウイルスについて遺伝学的及び免疫学的に検討したところ、新たに見出された新規ウイルスペプチドを加えた11種のSRSV関連ウイルスペプチドより得られる抗体を組み合わせて用いることにより、検体中の殆どのSRSVを検出でき、SRSVの血清型及び遺伝子型を確実に判別できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
即ち、本発明は、下記(a)〜(k);
(a)配列番号1に示すアミノ酸配列を有するペプチド若しくは該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチド又はそれらの部分ペプチド、
(b)配列番号2に示すアミノ酸配列を有するペプチド若しくは該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチド又はそれらの部分ペプチド、
(c)配列番号3に示すアミノ酸配列を有するペプチド若しくは該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチド又はそれらの部分ペプチド、
(d)配列番号4に示すアミノ酸配列を有するペプチド若しくは該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチド又はそれらの部分ペプチド、
(e)配列番号5に示すアミノ酸配列を有するペプチド若しくは該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチド又はそれらの部分ペプチド、
(f)配列番号6に示すアミノ酸配列を有するペプチド若しくは該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチド又はそれらの部分ペプチド、
(g)配列番号7に示すアミノ酸配列を有するペプチド若しくは該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチド又はそれらの部分ペプチド、
(h)配列番号8に示すアミノ酸配列を有するペプチド若しくは該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチド又はそれらの部分ペプチド、
(i)配列番号9に示すアミノ酸配列を有するペプチド若しくは該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチド又はそれらの部分ペプチド、
(j)配列番号10に示すアミノ酸配列を有するペプチド若しくは該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチド又はそれらの部分ペプチド、
(k)配列番号11に示すアミノ酸配列を有するペプチド若しくは該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチド又はそれらの部分ペプチド、
よりなる群から選択された一つのSRSV関連ウイルス構成ペプチドに対する抗体を全て含有することを特徴とするSRSV検出キットを提供するものである。
【0010】
また本発明は、下記SRSV関連ウイルス(a)〜(d);
(a)配列番号1に示すアミノ酸配列を有するペプチド若しくは該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチド又はそれらの部分ペプチド、
(b)配列番号2に示すアミノ酸配列を有するペプチド若しくは該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチド又はそれらの部分ペプチド、
(c)配列番号3に示すアミノ酸配列を有するペプチド若しくは該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチド又はそれらの部分ペプチド、
(d)配列番号4に示すアミノ酸配列を有するペプチド若しくは該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチド又はそれらの部分ペプチド、
よりなる群から選択された一つのSRSV関連ウイルス構成ペプチドに対する抗体を全て含有することを特徴とするSRSV遺伝子型判別のためのSRSV検出キットを提供するものである。
【0011】
更に本発明は、下記SRSV関連ウイルス(e)〜(k);
(e)配列番号5に示すアミノ酸配列を有するペプチド若しくは該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチド又はそれらの部分ペプチド、
(f)配列番号6に示すアミノ酸配列を有するペプチド若しくは該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチド又はそれらの部分ペプチド、
(g)配列番号7に示すアミノ酸配列を有するペプチド若しくは該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチド又はそれらの部分ペプチド、
(h)配列番号8に示すアミノ酸配列を有するペプチド若しくは該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチド又はそれらの部分ペプチド、
(i)配列番号9に示すアミノ酸配列を有するペプチド若しくは該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチド又はそれらの部分ペプチド、
(j)配列番号10に示すアミノ酸配列を有するペプチド若しくは該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチド又はそれらの部分ペプチド、
(k)配列番号11に示すアミノ酸配列を有するペプチド若しくは該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチド又はそれらの部分ペプチド、
よりなる群から選択された一つのSRSV関連ウイルス構成ペプチドに対する抗体を全て含有することを特徴とするSRSV遺伝子型判別のためのSRSV検出キットを提供するものである。
【0012】
更にまた、本発明は、配列番号15、20、21及び22で示される塩基配列又は該塩基配列の1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を有するSRSV関連ウイルス株遺伝子を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】Hu/NLV/Seto 124/1989/JP株由来の中空ウイルス粒子の電子顕微鏡写真である(×100,000)。
【図2】Hu/NLV/Funabashi 258/1996/JP株由来の中空ウイルス粒子の電子顕微鏡写真である(×100,000)。
【図3】Hu/NLV/Chiba 407/1987/JP株由来の中空ウイルス粒子の電子顕微鏡写真である(×100,000)。
【図4】Hu/NLV/Narita 104/1997/JP株由来の中空ウイルス粒子の電子顕微鏡写真である(×100,000)。
【図5】Hu/NLV/Sanbu 809/1998/JP株由来の中空ウイルス粒子の電子顕微鏡写真である(×100,000)。
【図6】Hu/NLV/Ichikawa 754/1998/JP株由来の中空ウイルス粒子の電子顕微鏡写真である(×100,000)。
【図7】Hu/NLV/Chitta 1876/1996/JP株由来の中空ウイルス粒子の電子顕微鏡写真である(×100,000)。
【図8】Hu/NLV/Kashiwa 47/1997/JP株由来の中空ウイルス粒子の電子顕微鏡写真である(×100,000)。
【図9】Hu/NLV/Mie 7k/1994/JP株由来の中空ウイルス粒子の電子顕微鏡写真である(×100,000)。
【図10】Hu/NLV/Kashiwa 645/1999/JP株由来の中空ウイルス粒子の電子顕微鏡写真である(×100,000)。
【図11】Hu/NLV/Osaka 10−25/1999/JP株由来の中空ウイルス粒子の電子顕微鏡写真である(×100,000)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.SRSV関連ウイルス
本発明のSRSV検出キットは、前記(a)〜(k)群の11種類の特定のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するSRSV関連ウイルス構成ペプチドに対する抗体を用いることを特徴とするものである。このうち、(d)群、(i)群、(j)群及び(k)群に属するペプチドは、現在までにジーンバンクに登録されている全てのSRSV関連ウイルス株(下記表1)とは異なる新規ペプチドであり、これらに対する抗体を含めて11種類の抗体を含有したキットすることにより、SRSV関連ウイルスを漏れなく検出することができる。
【0015】
本発明SRSV関連ウイルス構成ペプチドには、ペプチドとしてそれらと同等の抗原性を有する限り、そのアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加された変異体、又は当該アミノ酸配列をコードする塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された変異体が包含される。
(a)群における配列番号1に示すアミノ酸配列を有するペプチドとしては、例えば日本のSRSV感染患者の糞便由来Hu/NLV/Kashiwa 645/1999/JP株のウイルス構成ペプチドが挙げられ、該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチドとしては、例えばDesert Shield/90/SA株(ジーンバンク登録番号:U04469)由来のもの等が包含される。
(b)群における配列番号2に示すアミノ酸配列を有するペプチドとしては、例えば日本のSRSV感染患者の糞便由来Hu/NLV/Seto 124/1989/JP株のウイルス構成ペプチドが挙げられ、該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチドとしては、例えばKY−89/89J株(ジーンバンク登録番号:L23828)及びNorwalk/68/US株(ジーンバンク登録番号:M876611)由来のもの等が包含される。
(c)群における配列番号3に示すアミノ酸配列を有するペプチドとしては、例えば日本のSRSV感染患者の糞便由来Hu/NLV/Funabashi 258/1996/JP株のウイルス構成ペプチドが挙げられ、該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチドとしては、例えばSouthampton/91/UK株(ジーンバンク登録番号:L07418)由来のもの等が包含される。
(d)群における配列番号4に示すアミノ酸配列を有するペプチドとしては、例えば日本のSRSV感染患者の糞便由来Hu/NLV/Chiba 407/1987/JP株のウイルス構成ペプチドが挙げられる。
斯かる配列番号4に示すアミノ酸配列を有するペプチドは、現在までにジーンバンクに登録されている全てのSRSV関連ウイルス株(下記表1)と構造遺伝子(配列番号15)の相同性が75%未満であり、これまでに報告のない新規な配列を有するペプチドである。
(e)群における配列番号5に示すアミノ酸配列を有するペプチドとしては、例えば日本のSRSV感染患者の糞便由来Hu/NLV/Narita 104/1997/JP株のウイルス構成ペプチドが挙げられ、該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチドとしては、例えばBristol/93/UK株(ジーンバンク登録番号:X76716)、Lordsdale/93/UK(ジーンバンク登録番号:X86557)、Camberwell/94/AU株(ジーンバンク登録番号:U46500)由来のもの等が包含される。
(f)群における配列番号6に示すアミノ酸配列を有するペプチドとしては、例えば日本のSRSV感染患者の糞便由来Hu/NLV/Sanbu 809/1998/JP株のウイルス構成ペプチドが挙げられ、該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチドとしては、例えばMexico/89/MEX株(ジーンバンク登録番号:U22498)、Auckland株(ジーンバンク登録番号:U460391)、Toronto/77/CA株(ジーンバンク登録番号:U02030)、OTH−25/89/J(ジーンバンク登録番号:L23830)由来のもの等が包含される。
(g)群における配列番号7に示すアミノ酸配列を有するペプチドとしては、例えば日本のSRSV感染患者の糞便由来Hu/NLV/Ichikawa 754/1998/JP株のウイルス構成ペプチドが挙げられ、該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチドとしては、例えばSnow Mountain/76/US株(ジーンバンク登録番号:U70059)、Melksham/89/UK株(ジーンバンク登録番号:X81879)由来のもの等が挙げられる。
(h)群における配列番号8に示すアミノ酸配列を有するペプチドとしては、例えば日本のSRSV感染患者の糞便由来Hu/NLV/Chitta 1876/1996/JP株のウイルス構成ペプチドが挙げられ、該アミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するペプチドとしては、例えばHawaii/71/US株(ジーンバンク登録番号:U07611)由来のもの等が包含される。
(i)群における配列番号9に示すアミノ酸配列を有するペプチドとしては、例えば日本のSRSV感染患者の糞便由来Hu/NLV/Kashiwa 47/1997/JP株のウイルス構成ペプチドが挙げられる。
斯かる配列番号9に示すアミノ酸配列を有するペプチドは、現在までにジーンバンクに登録されている全てのSRSV関連ウイルス株(下記表1)と構造遺伝子(配列番号20)の相同性が75%未満であり、これまでに報告のない新規な配列を有するペプチドである。
(j)群における配列番号10に示すアミノ酸配列を有するペプチドとしては、例えば日本のSRSV感染患者の糞便由来Hu/NLV/Mie 7k/1994/JP株のウイルス構成ペプチドが挙げられる。
斯かる配列番号10に示すアミノ酸配列を有するペプチドは、現在までにジーンバンクに登録されている全てのSRSV関連ウイルス株(下記表1)と構造遺伝子(配列番号21)の相同性が70%未満であり、これまでに報告のない新規な配列を有するペプチドである。
(k)群における配列番号11に示すアミノ酸配列を有するペプチドとしては、例えば日本のSRSV感染患者の糞便由来Hu/NLV/Osaka 10−25/1999/JP株のウイルス構成ペプチドが挙げられる。
斯かる配列番号11に示すアミノ酸配列を有するペプチドは、現在までにジーンバンクに登録されている全てのSRSV関連ウイルス株(下記表1)と構造遺伝子(配列番号22)の相同性が70%未満であり、これまでに報告のない新規な配列を有するペプチドである。
【0016】
【表1】
【0017】
これら(a)〜(k)群のSRSV関連ウイルス構成ペプチドには、上記ペプチドの他に、当該ペプチド中の特定のアミノ酸配列を有し、当該ペプチドと同等の抗原性を有する部分ペプチドが包含される。
これらのSRSV関連ウイルス構成ペプチドは、そのRNAポリメラーゼ領域の約120アミノ酸についてのホモロジー解析によれば2つの遺伝子型に分類することができる。即ち、(a)〜(d)群のペプチドの属するI型と、(e)〜(k)群のペプチドが属するII型に分類される。
【0018】
2.SRSV関連ウイルス構造遺伝子のクローニング
SRSV感染患者の便よりセチルトリメチルアンモニウムブロマイド法等を用いて、ウイルスRNAを抽出し、オリゴ−dTプライマー及び逆転写酵素によりcDNAを作製し、これと各SRSV関連ウイルスの構造遺伝子領域を増幅するプライマーを用いてPCRを行うことにより構造遺伝子断片を増幅する。
斯かる構造遺伝子断片は、一度大腸菌クローニングベクターを用いてTAクローニングを行いプラスミドに組み込まれる。
【0019】
ここで使用可能なクローニングベクターとしては、大腸菌に代表される原核細胞を宿主とするプラスミド及びλファージ等に代表されるバクテリオファージ由来のベクター等公知のものを使用でき、クローニングベクターとその宿主細胞とを適当に組み合わせて使用することが望ましい。クローニングベクターの具体的な例としては、pBR322、pUC19、pCRII等が挙げられる。また、遺伝子の挿入方法は公知の常法に従えばよく、これらのベクターの構築にあたっては、遺伝子操作の容易である大腸菌系を使用することが望ましい。
【0020】
3.構造遺伝子の発現及び中空ウイルス粒子の作製
上記で得られた(a)〜(k)群の各ウイルス構造遺伝子の断片を適当な発現系を用いて発現させるか或いは、該ウイルス構成ペプチドから遺伝子工学的に作製された中空ウイルス粒子を用いることにより、各ウイルスに対する抗体を得ることができる。以下に大腸菌を用いた場合の発現と、中空ウイルス粒子の作製について説明する。
【0021】
(1)大腸菌による発現
各SRSV関連ウイルスの構造遺伝子領域を組み込んだプラスミドを、構造遺伝子領域を切断しない制限酵素で消化後構造遺伝子領域を回収し、例えば、pGEX(GST融合蛋白発現ベクター;ファルマシア製)、pTrc99A(大腸菌発現ベクター;ファルマシア製)、pTrxFus(チオレドキシン融合蛋白発現ベクター;インビトロゲン社製)、pET(pT7RNAプロモーターを用いた発現ベクター;ノバゲン社製)、マルトース結合蛋白又はβガラクトシダーゼの融合蛋白発現ベクター等に組み込む。このとき、組み込む構造遺伝子領域は、完全長でもよいし、部分的な領域でもよく、好ましくはSRSVの抗原エピトープを最低一つ有する部分的な領域である方がよい。このようにして構造遺伝子領域を組み込んだ遺伝子発現ベクターを遺伝子発現に適した大腸菌、例えば、BL21株、DH10B株、JM109株、XL1−Blue株等で形質転換する。得られた形質転換体を一般的な培養液、例えばL−broth等で培養することにより遺伝子発現を行うことができる。発現には、遺伝子発現誘導剤、例えばIPTG等を添加することや、PLプロモーターを用いた場合、熱ショックを与えることが好ましい。
発現されたペプチドの精製は、一般的な大腸菌を用いた発現蛋白の精製法に従えばよく、例えば、発現蛋白が可溶化していたならばGSTカラム又はマルトース結合蛋白用カラムを用いたアフィニティー精製を行えばよく、発現蛋白が不溶化していたならば、Niキレートを用いたアフィニティー精製を行えばよい。
【0022】
(2)SRSV中空ウイルス粒子の作成
SRSV関連ウイルスの構造遺伝子領域を組み込んだプラスミドを、構造遺伝子領域を切断しない制限酵素で消化し構造遺伝子領域を回収し、例えばpVL1393等のバキュロウイルストランスファーベクターに組み込む。斯かるトランスファーベクターと直鎖状で増殖必須遺伝子領域を欠失させてあるバキュロウイルスDNAと共にトランスフェクションし、昆虫細胞内で相同組換えを起こさせることにより目的とする組換えバキュロウイルスを作製することができる。
【0023】
得られた組換えバキュロウイルスをSf9細胞、Tn5細胞等の昆虫細胞に感染させ、常法により適当な成育条件下で培養することによりSRSVの構造蛋白を発現させ、自己集合させることにより中空ウイルス粒子を生産させることができる。生化学的な精製法例えば遠心分離等を用いれば中空ウイルス粒子を分離精製することができる。中空ウイルス粒子が形成されているかどうかは、ウラニル酢酸でネガティブ染色し、電子顕微鏡で検鏡することにより確認することができる。
かくして得られた中空ウイルス粒子は、内部に遺伝子を持たないため感染性はないが、構造がウイルス粒子とほぼ同じ形をしているので、ウイルス粒子と同等な抗原性を持つものである。
【0024】
4.SRSV関連ウイルスに対する抗体の取得
得られたウイルス構成ポリペプチド又は中空ウイルス粒子を動物に免疫することにより、抗SRSV関連ウイルス抗体を調製することができる。尚、斯かる抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体の何れでもよい
例えば、中空ウイルス粒子を用いた場合の免疫抗体の作製は、精製された各SRSV関連ウイルスの中空ウイルス粒子を常法に従ってウサギに免疫し、分離血清より中空ウイルス粒子に対するIgG抗体(抗SRSV抗体)を取得することができる。尚、抗体の分離精製にはDEAEセファロースクロマトグラフィー等の手段が用いられる。
かくして得られた(a)〜(k)群からなる11種類の中空ウイルス粒子と対応する抗SRSV抗体を用いてその交差反応性を測定すると、後記表2に示すように各SRSV関連ウイルス間では交差反応は全く示さない。従って、本発明のSRSVの検出法によれば、SRSVの11種類の血清型を同時に判別することが可能である。また、このことは同時に遺伝子型Iと遺伝子型IIの判別が可能であることも示している。
【0025】
5.SRSV関連ウイルスの検出
上記で得られた各抗SRSV抗体を用いた検体中のSRSVの検出は、通常用いられる抗原抗体反応を利用した免疫学的測定法、例えばサンドイッチ法によるラジオイムノアッセイや酵素免疫測定法(ELISA)等を用いることができるが、特にELISAが好ましい。即ち、11種類の抗SRSV抗体をマイクロプレートに分注してSRSVスクリーニングプレートを作製し、SRSV感染患者の便から調製した便乳剤の希釈液を当該プレートのウェルに加えて反応させた後、各ウイルスのパーオキシダーゼ(POD)標識抗SRSV抗体を加えて反応させる。次いで基質液(過酸化水素を含むTMB)を加えて反応させた後、0.6N硫酸を加えて反応を停止させ、ELISAオートリーダーでウェルの吸光度(450nm/630nm)を測定することによりSRSVを検出できる。
【0026】
ここで、検体中のSRSVの検出のみを行う場合には、11種類の抗SRSV抗体全てを混合固定化したマイクロプレートを用いたキットとすればよく、SRSVの血清型まで判別する場合には、11種類の抗SRSV抗体全てをそれぞれ別個のプレートに固定化したマイクロプレートを用いたキットとすればよい。
また、遺伝子型の判別は、(a)〜(d)群のペプチドに対する抗体を混合固定化したマイクロプレート(I型プレート)又は(e)〜(k)群のペプチドに対する抗体を混合固定化したマイクロプレート(II型プレート)を用いたキットとすることにより可能となる。
尚、本発明の各抗SRSV抗体をラテックスや磁気ビーズ等の担体を用いて固定化することにより、検体中のSRSV関連ウイルスを確実に捕捉することができ、ラテックスならば遠心操作、磁気ビーズならば磁石でSRSV捕捉担体を回収することができ、回収後にウイルスRNAを抽出し利用することができる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例により本発明のSRSV検出キットを具体的に説明する。
実施例1 SRSV関連ウイルスの構造遺伝子のクローニング
(1)cDNA合成
SRSV患者の便(0.5〜1.0g)に9mLのPBSと1mLのダイフロンを加え、ホモジナイズした。次いで、3000rpmで20分間遠心してその上清を回収し、10%便乳剤とした。
この便乳剤1mLを用い、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド法によりSRSVのRNAを抽出し、最終的に0.1%ジエチルピロカーボネート液30μLに浮遊させた。この浮遊液を用いて、Oligo−dT(12−18)プライマー及びAMV(Avian Myeloblastosis Virus)(生化学工業社製)由来逆転写酵素によりcDNAを作製した。
【0028】
(2)構造遺伝子領域の単離
(1)で作製したcDNAと、以下に示す構造遺伝子領域を増幅するプライマーを用いてPCRを行い、PCR後、アガロースゲル電気泳動法により増幅させた構造遺伝子断片を分離し、SuprecTM−01(TAKARA)を用いて回収した。
Hu/NLV/Kashiwa 645/1999/JP遺伝子:G1/F2(配列番号23)、Oligo−dT(33)(配列番号24)
Hu/NLV/Seto 124/1989/JP遺伝子:G1/F2(配列番号23)、G1/R0(配列番号25)
Hu/NLV/Funabashi 258/1996/JP遺伝子:G1/F2(配列番号23)、Oligo−dT(33)(配列番号24)
Hu/NLV/Chiba 407/1987/JP遺伝子:D5(配列番号26)、CV−U4(配列番号27)
Hu/NLV/Narita 104/1997/JP遺伝子:97k104/F1(配列番号28)、97k104/R1(配列番号29)
Hu/NLV/Sanbu 809/1998/JP遺伝子:G2/F3(配列番号30)、MV−R1(配列番号31)
Hu/NLV/Ichikawa 754/1998/JP遺伝子:G2/F3(配列番号30)、SMV−R1(配列番号32)
Hu/NLV/Chitta 1876/1996/JP遺伝子:G2/F3(配列番号30)、G2/R0(配列番号33)
Hu/NLV/Kashiwa 47/1997/JP遺伝子:97k104/F1(配列番号28)、Oligo−dT(33)(配列番号24)
Hu/NLV/Mie 7k/1994/JP遺伝子:G2/F3(配列番号30)、Oligo−dT(33)(配列番号24)
Hu/NLV/Osaka 10−25/1999/JP遺伝子:GFCR7(配列番号34)、Oligo−dT(33)(配列番号24)
【0029】
(3)構造遺伝子のクローニング
回収した構造遺伝子断片を、大腸菌クローニングベクターpCRII(INVITROGEN社製)にTAクローニングを行った。これらのクローンからウイルスの構造遺伝子を組み込むプラスミドpCRII/645、pCRII/124、pCRII/258、pCRII/Chiba、pCRII/104、pCRII/809、pCRII/754、pCRII/76、pCRII/47、pCRII/7k、pCRII/10−25を得た。
【0030】
実施例2 塩基配列の決定
Hu/NLV/Kashiwa 645/1999/JP株、Hu/NLV/Seto 124/1989/JP株、Hu/NLV/Funabashi 258/1996/JP株、Hu/NLV/Chiba 407/1987/JP株、Hu/NLV/Narita 104/1997/JP株、Hu/NLV/Sanbu 809/1998/JP株、Hu/NLV/Ichikawa 754/1998/JP株、Hu/NLV/Chitta 1876/1996/JP株、Hu/NLV/Kashiwa 47/1997/JP株、Hu/NLV/Mie 7k/1994/JP株及びHu/NLV/Osaka 10−25/1999/JP株の構造遺伝子の塩基配列の決定は、以下の方法により行った。
【0031】
はじめに、トランスファーベクターであるpVL1393のポリヘドリンプロモーターの近傍にプライマー(第1プライマー)を設定し、dye termination法によりサイクルシークエンシングキットFS(パーキンエルマー社製)を用いてラベリング反応を行った。この際使用したトランスファーベクターのDNA濃度は0.4μg/μLであり、シークエンシングプライマーの濃度は3.2pmol/μLである。更に、反応終了後、セントリプレップスピンカラム(パーキンエルマー社)を用いて過剰量の蛍光色素を除外した。この反応液を真空凍結乾燥機によって完全に乾燥させ、専用のサンプルバッファー(パーキンエルマー社製)20μlに浮遊させる。更に、攪拌後遠心沈殿させ95℃で2分間の加熱操作を行い、急冷後オートシークエンサー(ABI Genetic analyzer 310)で解析した。
【0032】
次いで、第1プライマーによって決定された塩基配列を用いて、その塩基配列の3’側に新たなシークエンス用のプライマー(第2プライマー)を設定した。この第2プライマーを用いて、前述と同様にサイクルシークエンシングキットでラベリング反応を行った。反応後、前述と同様の操作を行い、オートシークエンサーで塩基配列を解析した。このように、毎回決定した塩基配列の3’側にシークエンス用プライマーを設定し、塩基配列の決定を行った。これを繰り返し、11種類のSRSV関連ウイルス構造遺伝子の5’末端から3’末端まで塩基配列(配列番号12〜配列番号22)を決定した。このうち、配列番号15(Hu/NLV/Chiba 407/1987/JP株)、配列番号20(Hu/NLV/Kashiwa 47/1997/JP株)、配列番号21(Hu/NLV/Mie 7k/1994/JP株)及び配列番号22(Hu/NLV/Osaka 10−25/1999/JP株)で示される塩基配列は、これまでに報告されていない新規な配列であることが確認された。
【0033】
実施例3 中空ウイルス粒子を産生する組換えバキュロウイルスの作製
(1)トランスファーベクターの構築
実施例1(3)で得られた構造遺伝子領域を組み込んだプラスミドを構造遺伝子領域を切断しない制限酵素で消化し、アガロースゲル電気泳動法によって分離後、構造遺伝子領域をSuprecTM−01(TAKARA)により回収した。次いで、回収した遺伝子断片を、同じ制限酵素で消化したバキュロウイルストランスファーベクターpVL1393(INVITROGEN社製)に組み込み、トランスファーベクターを作製した。
【0034】
(2)組換えバキュロウイルスの作製
0.5μgのバキュロウイルスDNA(Baculo-Gold)と1μgの(1)で得られたトランスファーベクターを8μLの蒸留水に溶解し、2倍希釈した等量のリポフェクチンと混合して室温で15分間放置する。昆虫細胞用培地Ex−cell400に懸濁した1×105個のSf9細胞を26.5℃で30分間プラスティックシャーレ(直径3.5cm)内に吸着後、トランスファーベクターとBaculo−Gold混合液を細胞に滴下し26.5℃で培養した。24時間後、培養液を10%牛胎児血清及び2%BTB(GIBCO BRL社製)を含むTC100(GIBCO BRL社製;以後TC100)培地に交換し、更に培養を継続した。
【0035】
(3)組換えバキュロウイルスの純化
(2)で得られた組換えバキュロウイルスを5日間培養した後、培養上清をTC100等の昆虫細胞培養用メディウムを用いて10倍に希釈した。その0.1mLを取り、直径3.5cmのプラスチックシャーレに培養した3×106個のSf9細胞に接種した。26.5℃、60分間吸着後1%アガロースME(低融点アガロース)を含むTC100培養液2mLを重層し26.5℃で培養した。更に、培養開始後4日目に0.005%のニュートラルレッドを含むTC1001mLを重層して26.5℃で培養した。翌日出現したプラークをマイクロチップでかき取り、TC100培地に懸濁した。
【0036】
(4)組換えバキュロウイルスのシードの作製と感染力価の測定
(3)で得られた懸濁液を1×107個のSf9細胞に接種し、26.5℃、60分間吸着後TC100を加え、26.5℃で3から4日間培養した。この培養液を2500rpm、10分間、4℃で遠心し、培養上清を回収した。この回収した培養上清を、1×107個のSf9細胞に接種し、26.5℃、60分間吸着後TC100を加え、26.5℃で3から4日間培養した。
次いで、この培養上清を直径3.5cmのプラスチックシャーレに培養した3×107個のSf9細胞に接種し、26.5℃で60分間吸着後1%アガロースME(低融点アガロース)を含むTC100培養液2mLを重層し26.5℃で培養した。次いで培養開始後4日目に0.005%のニュートラルレッドを含むTC 100を1mL重層して26.5℃で培養した。翌日出現したプラークを計測し、組換えバキュロウイルスの感染力価を算出し、組換えバキュロウイルスシードの感染力価とした。
【0037】
実施例4 中空ウイルス粒子の作製
(1)組換えバキュロウイルスを用いた構造蛋白の発現
Sf9昆虫細胞に対して組換えバキュロウイルスをM.O.I.(Multiplicity of infection)1から10で感染させた。この時、組換えウイルス液を細胞に滴下させ、静かに振とうさせながら約60分程度吸着させた。その後、TC 100昆虫細胞用培地を添加し、26.5℃、5から6日間培養した。
【0038】
(2)発現蛋白の同定
組換えウイルス感染培養上清を経時的に採取し、SDS−PAGEで分離後をクーマシーブルー染色で検出し、予想される分子量により発現蛋白の妥当性を確認した。また、SDS−PAGEで蛋白を分離後ニトロセルロース膜に転写し、SRSVの回復期血清によるウエスターンブロッティング法で発現蛋白を同定した。
【0039】
(3)中空ウイルス粒子の精製と回収
組換えバキュロウイルスシードをM.O.I.1から10で感染させ、約60分吸着後、Ex−cell400を添加し、26.5℃で3日間培養した。次いで、プロテアーゼ阻害剤、例えばペプスタチンA及びリューペプチンを培養液に最終濃度1mMになるように加え更に2から3日間培養を続けた。
【0040】
培養後2500rpm、10分間、4℃で遠心し、培養上清を回収した。回収した培養液を10000rpmで30分間遠心して組換えバキュロウイルスを取り除いた。この上清をベックマンSW28ローターで25000rpm、4時間遠心して中空ウイルス粒子を沈殿させた。次いで、上清を捨てた遠心管を逆さにして、完全に上清を除き、その後プロテアーゼ阻害剤を加えたグレースバッファー又はPBS(−)0.5mLを各遠心管に加え、4℃一晩静置した。
静置後、加えておいたプロテアーゼ阻害剤入りグレースバッファーで中空ウイルス粒子を懸濁させ回収した。次いで、回収した中空ウイルス粒子に、CsClを3.8g加えたプロテアーゼ阻害剤入りグレースバッファー又はPBS(−)を加え13mLとし、16℃、35000rpm、24から48時間超遠心した。超遠心後、中空ウイルス粒子が集まっている青白いバンドを回収し、プロテアーゼ阻害剤入りグレースバッファーを用いて5倍希釈後、ベックマンTL100.3ローターで45000rpm、3時間超遠心して、中空ウイルス粒子を沈殿させた。
【0041】
沈殿させた中空ウイルス粒子をプロテアーゼ阻害剤入りグレースバッファー又はPBS(−)で可溶化した。次いで、10%から50%のショ糖を含むプロテアーゼ阻害剤入りグレースバッファー溶液を4PAチューブに作り、そこに中空ウイルス粒子可溶化液を重層し、35000rpm、4時間、4℃でショ糖密度勾配遠心を行った。遠心後、中空ウイルス粒子の青白いバンドを26G針付きの1mLシリンジで回収し、精製SRSV中空ウイルス粒子とした。
精製SRSV中空ウイルス粒子をグレースバッファーで適宜希釈して、Bradford法により蛋白量を測定した。
精製SRSV中空ウイルス粒子は、ウラニル酢酸でネガティブ染色し、電子顕微鏡で検鏡し中空ウイルス粒子を形成しているかを確認した(図2〜12)。
【0042】
実施例5 中空ウイルス粒子を用いた免疫抗体及び標識抗体の作製
(1)中空ウイルス粒子に対する免疫抗体の作製
Hu/NLV/Kashiwa 645/1999/JP株、Hu/NLV/Seto 124/1989/JP株、Hu/NLV/Funabashi 258/1996/JP株、Hu/NLV/Chiba 407/1987/JP株、Hu/NLV/Narita 104/1997/JP株、Hu/NLV/Sanbu 809/1998/JP株、Hu/NLV/Ichikawa 754/1998/JP株、Hu/NLV/Chitta 1876/1996/JP株、Hu/NLV/Kashiwa 47/1997/JP株、Hu/NLV/Mie 7k/1994/JP株及びHu/NLV/Osaka 10−25/1999/JP株から得られた精製SRSV中空ウイルス粒子500μgを含む1mLのリン酸緩衝液(pH7.2)と1mLのフロインドの不完全アジュバントを混合し、3kgのニュージーランド白色ウサギに常法に従って免疫した。3週間後、0.25μgのSRSV中空ウイルス粒子を含むリン酸緩衝液(pH7.2)1mLとフロインドの不完全アジュバント1mLを混合して免疫した(追加免疫)。次いで、3週間後追加免疫と同様に免疫を行い、この約7から10日間後に全採血し、血清成分を分離した。
【0043】
分離精製した血清を硫安分画後、50mM Tris−HCl(pH7.6)で4℃、一晩透析した。次いで50mM Tris−HCl(pH7.6)で平衡化したDEAEセファロースクロマトグラフィーにかけ、UV波長280nmでモニタリングし、O.D.のピークを集めて、中空ウイルス粒子に対するDE
AE精製IgG抗体(抗SRSV抗体)とした。
【0044】
(2)標識抗体の作製
抗SRSV抗体を過ヨウ素酸改良法〔酵素免疫測定法,2:91(1982)〕でPOD標識した。即ちPODを4mg/mLになるように蒸留水で溶解し、0.1M過ヨウ素酸ナトリウム0.2mLを加え、室温で約20分間反応させた。次いで1mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.0)で一晩透析した。透析後、0.2M炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.5)を0.02mL加え、pH9.5にすると同時に抗SRSV抗体を8mg加えた。
室温で約2時間反応させ、4mg/mL水酸化ホウ素ナトリウムを0.1mL加え、4℃で約2時間反応させた。反応後、10mMリン酸バッファーを用いてセファクリルS−200によるゲル濾過を行い、UV波長280nmでモニタリングしてPOD標識抗SRSV抗体画分を集めた。
【0045】
(3)抗SRSV抗体固相プレートの作製
抗SRSV抗体を炭酸バッファー(pH9.5)で各々0.5−10μg/mL濃度に希釈し、ポリスチレン平型マイクロプレート(ヌンク社製)に100μL/ウェルで分注し、4℃で一晩静置した。18時間以上静置したマイクロプレートを最終濃度0.05% Tween20を含むPBS200μL/ウェルで3〜4回洗浄後、最終濃度0.5%牛血清アルブミン(BSA)と0.05%Tween 20を含む10mM PBS(pH7.2)200μL/ウェル加えて4℃一晩静置し、抗SRSV抗体固相マイクロプレートを作製した。
【0046】
実施例6 交差反応性
(1)抗原検出ELISA
各精製SRSV中空ウイルス粒子をそれぞれ緩衝液(10mMPBS(pH7.2)に最終濃度0.2%牛血清アルブミン(BSA)と0.05%Tween 20を含む溶液)で4ng/mLから0.04ng/mLまで希釈した。
次いで、希釈した各中空ウイルス粒子(VLP)を、それぞれの抗SRSV抗
体固相マイクロプレートのウェルに100μL加え、室温60分間反応させた。反応後、ウェルの反応液を吸引除去し、最終濃度0.05% Tween20を含む10mM PBS(pH7.2)をウェルに200μL加え、同様に吸引除去した。この操作を少なくとも3回行った。洗浄後、緩衝液で20000倍に希釈した各血清型のPOD標識抗SRSV抗体を100μL/ウェル加え、室温60分間反応させた。洗浄後、過酸化水素を含むTMB溶液を100μL/ウェル加え、室温で30分間反応させた。反応後、0.6Nの硫酸を100μL/ウェル加え、ELISAオートリーダーでウェルの吸光度(450nm/630nm)を測定した。結果を表2に示す。
【0047】
【表2】
【0048】
表中、645はHu/NLV/Kashiwa 645/1999/JP株、124はHu/NLV/Seto 124/1989/JP株、258はHu/NLV/Funabashi 258/1996/JP株、407はHu/NLV/Chiba 407/1987/JP株、104はHu/NLV/Narita 104/1997/JP株、809はHu/NLV/Sanbu 809/1998/JP株、754はHu/NLV/Ichikawa 754/1998/JP株、1876はHu/NLV/Chitta 1876/1996/JP株、47はHu/NLV/Kashiwa 47/1997/JP株、7kはHu/NLV/Mie 7k/1994/JP株、10−25はHu/NLV/Osaka 10−25/1999/JP株を示す。
【0049】
これより、異なる遺伝子型IとIIの間で交差反応性は見られなかったことはもちろん同一遺伝子型間においても交差反応は見られず、用いた11種類のウイスル株の血清型はそれぞれ異なることが確認された。
【0050】
試験例1 SRSVの遺伝型の判別
遺伝子型Iに属するSRSV(Hu/NLV/Kashiwa 645/1999/JP株、Hu/NLV/Seto 124/1989/JP株、Hu/NLV/Funabashi 258/1996/JP株、Hu/NLV/Chiba 407/1987/JP株)の抗SRSV抗体を炭酸バッファー(pH9.5)で0.5−10μg/mL濃度に希釈混合し、ポリスチレン平型マイクロプレート(ヌンク社製)に100μL/ウェルで分注し、4℃で一晩静置した。18時間以上静置したマイクロプレートを最終濃度0.05% Tween20を含むPBS200μL/ウェルで3〜4回洗浄後、最終濃度0.5%牛血清アルブミン(BSA)と0.05% Tween20を含む10mM PBS(pH7.2)を200μL/ウェル加えて4℃一晩静置し、遺伝子型Iの各血清型に対する抗SRSV−IgG抗体を混合固相したマイクロプレート(I型プレート)を作製した。
【0051】
次いで、遺伝子型IIに属するSRSV(Hu/NLV/Narita 104/1997/JP株、Hu/NLV/Sanbu 809/1998/JP株、Hu/NLV/Ichikawa 754/1998/JP株、Hu/NLV/Chitta 1876/1996/JP株、Hu/NLV/Kashiwa 47/1997/JP株、Hu/NLV/Mie 7k/1994/JP株、Hu/NLV/Osaka 10−25/1999/JP株)の抗SRSV抗体を同様に固相してII型プレートを作製した。
【0052】
SRSV患者の便(0.5〜1.0g)に9mLのPBSと1mLのダイフロンを加え、ホモジナイズした。次いで、19000gで20分間遠心してその上清を回収し、10%便乳剤とし、この10%便乳剤を緩衝液で等量希釈し、その希釈液をI及びII型プレートのウェルに100μL加え、室温60分間反応させた。反応後、ウェルの反応液を吸引除去し、最終濃度0.05% Tween20を含む10mM PBS(pH7.2)をウェルに200μL加え、同様に吸引除去した。この操作を少なくとも3回行った。洗浄後、緩衝液で20000倍に希釈した各血清型のPOD標識抗SRSV抗体を100μL/ウェル加え、室温60分間反応させた。洗浄後、過酸化水素を含むTMB溶液を100μL/ウェル加え、室温で30分間反応させた。反応後、0.6Nの硫酸を100μL/ウェ ル加え、ELISAオートリーダーでウェルの吸光度(450nm/630nm)を測定した。
【0053】
その結果、遺伝子型IのSRSVに感染した患者の便検体15例は、14例がI型プレートにのみ反応しII型プレートに反応しなかった。遺伝子型IIのSRSVに感染した患者の便検体7例は、6例がI型プレートに反応しないでII型プレートにのみ反応し、遺伝子型の判別が実際に可能であることを確認した。
【0054】
試験例2 SRSVの血清型の判別
SRSV(Hu/NLV/Kashiwa 645/1999/JP株、Hu/NLV/Seto 124/1989/JP株、Hu/NLV/Funabashi 258/1996/JP株、Hu/NLV/Chiba 407/1987/JP株、Hu/NLV/Narita 104/1997/JP株、Hu/NLV/Sanbu 809/1998/JP株、Hu/NLV/Ichikawa 754/1998/JP株、Hu/NLV/Chitta 1876/1996/JP株、Hu/NLV/Kashiwa 47/1997/JP株、Hu/NLV/Mie 7k/1994/JP株及びHu/NLV/Osaka 10−25/1999/JP株)の各抗SRSV抗体をそれぞれ単独に炭酸バッファー(pH9.5)で0.5−10μg/mL濃度に希釈し、ポリスチレン平型マイクロプレート(ヌンク社製)に100μL/ウェルで分注し、4℃で一晩静置した。18時間以上静置したマイクロプレートを最終濃度0.05% Tween20を含むPBS200μL/ウェルで3〜4回洗浄後、最終濃度0.5%牛血清アルブミン(BSA)と0.05% Tween20を含む10mM PBS(pH7.2)を200μL/ウェル加えて4℃で一晩静置し、抗SRSV抗体固相マイクロプレート(血清型別プレート)を作製した。
SRSV患者の便検体に対し、試験例1と同様にELISAを行った。結果を表3に示す。
【0055】
【表3】
【0056】
これにより、本発明のSRSV検出法によれば、93%という高い確率でSRSVを検出でき、且つその血清型を判別できることが明らかとなった。
尚、本発明のキットによりなされた型別は、PCR及び塩基配列の解析によりなされた型別と一致した(表4)。
【0057】
【表4】
【0058】
また、SRSV(Hu/NLV/Kashiwa 645/1999/JP株、Hu/NLV/Seto 124/1989/JP株、Hu/NLV/Funabashi 258/1996/JP株、Hu/NLV/Chiba 407/1987/JP株、Hu/NLV/Narita 104/1997/JP株、Hu/NLV/Sanbu 809/1998/JP株、Hu/NLV/Ichikawa 754/1998/JP株、Hu/NLV/Chitta 1876/1996/JP株、Hu/NLV/Kashiwa 47/1997/JP株、Hu/NLV/Mie 7k/1994/JP株及びHu/NLV/Osaka 10−25/1999/JP株)の各抗SRSV抗体を炭酸バッファー(pH9.5)で0.5−10μg/mL濃度に希釈しこれらを全て混合し、又は混合してから希釈してものを用いて同様に抗SRSV抗体固相マイクロプレートを作製した。SRSVに感染した患者の便検体22例に対し、試験例1と同様にELISAを行ったところ、20例で検体中のSRSVを検出できた。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のSRSV検出キットによれば、簡易で且つ確実にこれまでに見出されている殆どのSRSV関連ウイルスを検出し、その血清型及び遺伝子型を判別することができる。従って、SRSVによる食中毒が発生した場合の感染ルートの特定、感染拡大の防止及び疫学調査等に有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号15で示される塩基配列又は該塩基配列の1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を有するHu/NLV/Chiba 407/1987/JP遺伝子。
【請求項2】
配列番号20で示される塩基配列又は該塩基配列の1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を有するHu/NLV/Kashiwa 47/1997/JP遺伝子。
【請求項3】
配列番号21で示される塩基配列又は該塩基配列の1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を有するHu/NLV/Mie 7k/1994/JP遺伝子。
【請求項4】
配列番号22で示される塩基配列又は該塩基配列の1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を有するHu/NLV/Osaka 10−25/1999/JP遺伝子。
【請求項1】
配列番号15で示される塩基配列又は該塩基配列の1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を有するHu/NLV/Chiba 407/1987/JP遺伝子。
【請求項2】
配列番号20で示される塩基配列又は該塩基配列の1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を有するHu/NLV/Kashiwa 47/1997/JP遺伝子。
【請求項3】
配列番号21で示される塩基配列又は該塩基配列の1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を有するHu/NLV/Mie 7k/1994/JP遺伝子。
【請求項4】
配列番号22で示される塩基配列又は該塩基配列の1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を有するHu/NLV/Osaka 10−25/1999/JP遺伝子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−268808(P2010−268808A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157975(P2010−157975)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【分割の表示】特願2001−505195(P2001−505195)の分割
【原出願日】平成12年6月22日(2000.6.22)
【出願人】(591222245)国立感染症研究所長 (48)
【出願人】(591125371)デンカ生研株式会社 (72)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【分割の表示】特願2001−505195(P2001−505195)の分割
【原出願日】平成12年6月22日(2000.6.22)
【出願人】(591222245)国立感染症研究所長 (48)
【出願人】(591125371)デンカ生研株式会社 (72)
【Fターム(参考)】
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