説明

Snメッキ剥離方法及びSnメッキ剥離装置

【課題】Snメッキした銅及び銅合金材からSnメッキ層を短時間で容易かつ確実に除去することができるSnメッキ剥離方法及びSnメッキ剥離装置を提供する。
【解決手段】銅基材の表面にSnメッキ層が形成されたワークWからSnメッキ層を剥離するに際して、ワークWを酸化性溶液中13に浸漬し、回転攪拌することによってワークW同士が重なりあった部分の引き剥がすとともに互いに擦り合わせながら、ワークWを陽極電解することによってSnメッキ層を効率良く除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置や電子・電気部品の素材として利用される表面にSnメッキ層が形成されたSnメッキ銅材からSnメッキ層を剥離するSnメッキ剥離方法及びSnメッキ剥離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コネクタ部品やリードフレーム等の電子・電気部品として、銅基材の表面にSnメッキが施されたSnメッキ銅材が利用されている。この種のSnメッキ銅材を製造する場合、まず銅基材の表面を洗浄し、表面を活性化する等の前処理を施し、電解または無電解メッキ法で厚さ0.25〜1μm程度のSnメッキ層を形成する。
【0003】
このSnメッキ銅材を電子・電気部品としてそのまま使用に供する場合もあるが、さらにリフロー(溶融)処理を行って、Snメッキ層の表面を平滑化してから使用することがある。
このようなSnメッキ銅材においては、銅基材とSnメッキ層の境界部には、CuSnやCuSn等のSn‐Cu層が形成される。そして、このようなSnメッキをおこなった後に、この板材にプレス加工、打抜き加工、曲げ加工などの金属加工を施すことによりコネクタ部品等の電子・電気部品が製造される。
【0004】
一方、上記のようなコネクタ部品等のスクラップや打ち抜き屑等を銅資源として有効に活用するには銅基材とSnメッキ層の分離が必要となる。Snメッキされた銅基材からSnメッキ層を剥離する方法としては、一般的にSnメッキ銅材を水酸化ナトリウム溶液等のアルカリ溶液や硫酸等の酸化性溶液に浸漬して陽極電解を行う方法が知られている。
【0005】
また、例えば特許文献1に示すように、Snメッキ銅材に硫酸を含有する酸化性溶液を一方向から連続的に通液し、該酸化性溶液中に溶出したSnイオンを連続して反応系外に排出することにより効率よくSnメッキ層を除去する方法が提案されている。
【特許文献1】特開平5−171306号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のようにアルカリ溶液中で陽極電解を行う場合には、Snメッキ銅材に生成されたCuSnやCuSn等の金属間化合物がアルカリ溶液中に電解されにくいため、完全に剥離することが困難であるという問題があった。
また、酸化性溶液中で陽極電解を行う場合には、酸化剤を連続投入する必要がある他、Hイオン濃度を適切に管理する必要があり、処理には多くの時間と手間を要してしまっていた。
一方、特許文献1に示す方法では、酸化性溶液を連続的に通液する必要があるためコストの上昇を抑えることができないという問題があった。
さらにいずれの方法を用いた場合であってもSnメッキ銅材同士が重なり合った部分においてはSnメッキ層を除去することが困難であり、また、総じて処理に多くの時間を要していた。
【0007】
この発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、Snメッキ銅材からSnメッキ層を短時間で容易かつ確実に除去することができるSnメッキ剥離方法及びSnメッキ剥離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、この発明は以下の手段を提案している。
即ち、本発明に係るSnメッキ剥離方法は、銅基材の表面にSnメッキ層が形成されたワークからSnメッキ層を剥離するSnメッキ剥離方法であって、前記ワークを酸化性溶液中に浸漬して、回転攪拌するのと同時に該ワークを陽極として電解を行うことを特徴としている。
【0009】
回転攪拌することによって、ワークが重なりあった部分を引き剥がすことでワークの表面全体を確実に酸化性溶液に触れさせることができるとともに、ワークを互いに擦り合わせることで機械的にSnメッキ層を分離させることができ、陽極電解を効果的に行うことが可能となる。さらに、電解されたSnイオンは、酸化性溶液中では単体では存在できず直ちにSnOのスラッジとなり、また、銅基材が電解された場合にはCuイオンは陰極に析出するため、CuとSnとを分離して回収することができる。また、陽極電解と機械的な回転攪拌とを併用することによって、必要以上に酸化性溶液を投入せずともSnメッキ層を確実かつ容易に剥離することが可能となるため、コストを低減させることも可能となる。
【0010】
また、本発明に係るSnメッキ剥離方法においては、前記ワークを小片状に切断した後に酸化性溶液中に浸漬して電解を行うことを特徴としている。ワークがある程度大きい場合には、小片上に切断することによって回転攪拌による寄与を向上させることができるため、効率よくSnメッキ層を剥離させることが可能となる。
【0011】
本発明に係るSnメッキ剥離装置は、銅基材の表面にSnメッキ層が形成されたワークからSnメッキ層を剥離するSnメッキ剥離装置であって、周面に貫通孔が形成された回転ドラムと、陰極が付設されて酸化性溶液が収容される電解槽と、前記回転ドラムを水平軸線回りに回転させる駆動機構とを備え、前記回転ドラムの一部を前記電解槽に浸漬し、前記回転ドラムを陽極として電解しながら該回転ドラム内のワークを回転攪拌することを特徴としている。
【0012】
このような特徴のSnメッキ剥離装置によれば、ワークは貫通孔を介して回転ドラム内に浸入した酸化性溶液に浸漬されており、また、回転ドラムが陽極として通電されると該回転ドラムの内部のワークも陽極となる。これにより、電解液としての酸化性溶液によって陽極としてのワークと電解槽内の陰極とが隔てられた電気化学的構造が成立する。回転ドラムが回転する際であっても酸化性溶液は貫通孔を解して内外を絶えず移動することが可能なため上記の電気化学的構造が崩れることはなく、回転攪拌によってワーク同士が重なりあった部分を引き剥がすとともに該ワークを互いに擦り合わせながら、陽極電解を行うことができ、Snメッキ層の剥離の促進を図ることができる。
【0013】
また、本発明に係るSnメッキ剥離装置は、前記回転ドラムの前記水平軸線方向一端側に投入口が設けられるとともに、他端側に排出口が設けられ、前記回転ドラムの内周面に、前記水平軸線に沿って一定角度に捩れる複数条のガイド部が設けられていることを特徴としている。
【0014】
ワークを投入口から回転ドラム内に投入し、回転ドラムを正回転させると、ワークはガイド部によって一端側に導かれ、これにより行き場を失ったワークは一端側の端面に押し上げられるようにして回転して攪拌される。また、回転ドラムを逆回転させると、ワークは他端側に導かれて排出口に至り、処理を終えたワークを容易に回転ドラム内から排出することが可能となる。従って、ワークを回転ドラムに投入してから排出するまでの一連の作業を自動化することができるとともに、攪拌効果を上昇させてより効果的にワークからSnメッキ層を除去することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るSnメッキ剥離方法及びSnメッキ剥離装置によれば、ワークとなるSnメッキ銅板を酸化性溶液中で陽極電解しながら機械的に回転攪拌することによって、Snメッキ銅材からSnメッキ層を短時間で容易かつ確実に除去することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態であるSnメッキ剥離装置について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の実施の形態に係るSnメッキ剥離装置の側面図、図2は本発明の実施の形態に係るSnメッキ剥離装置の正面図、図3は本発明の実施の形態に係るSnメッキ剥離装置の平面図、図4はSnメッキ剥離装置の原理を説明する模式図、図5は回転ドラムの側断面模式図である。
本実施形態のSnメッキ剥離装置1は、コネクタ部品等のような表面にSnメッキ層が形成された銅基材のスクラップや打ち抜き屑等をワークWとして、該ワークWからSnメッキ層を剥離するために使用される。
【0017】
図1から図3に示すように、本実施形態のSnメッキ剥離装置1は、ベース2と、該ベース2上に設置された電解槽10と、該電解槽10の槽内に設置された支持台11と、この支持台11上に支持された回転ドラム20と、回転ドラム20を軸線O回りに回転させる駆動機構30と、回転ドラム20から排出されたワークを搬出する搬出装置40とから概略構成されている。
【0018】
ベース2は、Snメッキ剥離装置1の基盤となるものであり、その後方側(図1及び図3において左側、図2において紙面奥側)には、該ベース2の表面から一段窪んで軸線Oに直交する方向に延びる地下ピット3が設けられている。
【0019】
電解槽10は、平面視矩形状の上方が開口した箱型形状をなしており、その底面10aの後方側には、ステンレス鋼からなる四角平板状の固定陰極板12が付設されている。この固定陰極板12は、図4の模式図に示すように、電源50に接続されて陰極に通電することができるように構成されている。
【0020】
また、電解槽10の底面10aの固定陰極板12の直ぐ前方側(図1及び図3において左側、図2において紙面手前側)には支持台11が設置されている。この支持台11は上記底面10aに立設する4つの支柱11a上に四角平板状のプレート11bを備え、該プレート11b上には、図3に示すように、平面視にて軸線Oを挟んだ両側に、軸線Oと平行な軸線回りに回転可能なローラー11cがそれぞれ2つずつ配設されている。なお、該プレート11bの同一側の2つのローラー11cは軸線Oに平行な同一直線状に一定の間隔を空けて配設されている。また、ローラー11cは、絶縁性の高い材質である例えばウレタン等から構成されている。
【0021】
そして、このような電解槽10の槽内には、図1から図4に示す液面Pまで酸化性溶液13が収容されている。本実施形態においては、酸化性溶液13として硫酸水溶液(例えば濃度71g/L)が用いられており、該硫酸液中にはSnイオン(例えば濃度15g/L)が添加されている。なお、これに限らず例えば硝酸等の他の酸化性溶液を用いたものであってもよい。
【0022】
回転ドラム20は、ステンレス鋼からなり後方側が端部に向かうに従い縮径するテーパ状に形成された概略筒状をなしており、前方側に位置して周面が軸線に平行な円筒部21と、後方側に位置し略円錐形状をなし端部に排出口22aが形成された円錐部22とから構成されている。
【0023】
円筒部21は、その周面全体に、図4の模式図に示すように、外周面と内周面とを連通させる多数の貫通孔23(図1から図3において省略)が設けられている。この貫通孔23は、内部に投入されたワークWを回転ドラム20の外部に流出することなく内部に保持することができ、かつ酸化性溶液13が容易に通過することができる程度の大きさに設定されている。なお、この他回転ドラム20の周面が例えばネット状に形成されたものであってもよい。
【0024】
また、円筒部21の前方側の一端面24の中央には投入口24aが設けられており、該投入口24aの周囲には、一段前方側に凸となるように円形に形成された伝動フランジ24bが設けられている。
【0025】
さらに、円筒部21の外周面には環状をなすローラー当接部26が軸線O方向に一定の間隔を空けて2つ形成されている。このローラー当接部26の間隔は、前述のローラー11cの軸線O方向の間隔と同一に設定されている。これによって、1つのローラー当接部26に軸線Oを挟んで両側に位置する2つのローラー11cが下方から当接して、回転ドラム20を計4点で均等に支持しながら回転ドラム20の回転に合わせて回転するようになっている。
また、このように各ローラー11cに支持されることによって、回転ドラム20はその下方一部が電解槽10内の酸化性溶液13に浸漬されており、貫通孔23を介して回転ドラム20内部に酸化性溶液13が浸入することによって、回転ドラム20内は液面Pまで酸化性溶液13で満たされている。
【0026】
また、図1及び図3に示すように、円筒部21の外周面の軸線O方向の中央部には、該外周面の表面から環状に凸となるように形成された通電フランジ27が設けられている。この通電フランジ27の側方には電源50の陽極側に接続されて逆L字状をなす通電部28が立設されており、該通電部28の先端に設けられた摺接部28aが通電フランジ27を軸線方向O両側から挟むようにして接触している。これにより、回転ドラム20の回転時であっても通電フランジ27と通電部28の摺接部28aとが摺接することによって、回転ドラム20を陽極として通電することが可能となっている。
【0027】
さらに、円筒部21の内周面には、図5に示すように、軸線Oに沿って一定角度で捩れるように、即ち前方側から後方側に向かうに従って回転方向T側に捩れるように形成された複数条の一次ガイド部29aが設けられている。また、円錐部22の内周壁面にも、該一次ガイド部29aと同様に捩れる二次ガイド部29bが設けられている。これにより、回転ドラム20内に投入されたワークWは、回転ドラム20が回転方向Tに回転する際には一次ガイド部29aに沿って前方側に案内されて一端面24に至り、回転方向T後方側に回転する場合には一次ガイド部29a及び二次ガイド部29bに案内されて排出口22aに至るようになっている。
【0028】
駆動機構30は回転ドラム20の側方に設置されて回転ドラム20を回転させる役割を有しており、モータ等の動力源31を備え、該動力源31の回転軸32と回転ドラム20の伝動フランジ24bとに巻き掛けられた伝動ベルト33によって動力源31の回転が回転ドラム20に伝達されるように構成されている。なお、動力源31は正逆方向に回転可能であり、これにより回転ドラム20は回転方向T前方側への回転を正回転として、回転方向T後方側への回転を逆回転として双方向に回転可能とされている。
なお、この駆動機構30は、本実施形態においては回転ドラム20の側方に設置されているが、該回転ドラム20の上部に設置されていてもよい。これにより、モータ等の動力源31の偏荷重の負荷を軽減することができ、より円滑な運転を行うことが可能となる。
【0029】
搬出装置40は、回転ドラム20の排出口22aの直ぐ下方にて排出されるワークWを受けるワーク受部41と、該ワーク受部41からワークWを搬送する周知のスクリューコンベアやSUSメッシュベルトコンベア等からなる搬送部42とから構成されている。これにより処理が終えられたワークWが次工程へと運ばれる。
なお、上記搬送部42では、ワークWに水がかけられる構成としてもよく、これによって電解剥離後のワークWには搬送部42により移送される過程において同時に水洗い処理が施され、ワークW表面の付着物が除去される。
【0030】
次に、以上のような構成のSnメッキ剥離装置1を用いてのSnメッキ剥離方法及びSnメッキ剥離装置1の作用について図面に基づいて説明する。
本実施形態に係るSnメッキ剥離装置1に投入されるワークWとしては、表面にSnメッキ層が形成された銅基材であれば、上述したスクラップや打ち抜き屑等の小片状のものの他、ワイヤー状や帯状等の比較的大きな形状のものも採用することができる。
後者の場合には、回転ドラム20内に投入する前処理として、ワークWは例えばスクラップカッター等の切断機によって小片状に切断される。また、場合によっては切断される前に、ベンディング機等によりベンディング成形が施されてもよい。
【0031】
そして、ワークWは、例えばスクリューコンベヤ等の図示しない投入手段によって投入口24aから回転ドラム20の円筒部21内に投入される。この際、Snメッキ層の剥離性を向上させるため、ワークWの投入量は回転ドラム20の充填率が30%以下となるように調整される。なお、回転ドラム20内に投入されたワークWは、該回転ドラム20内に貫通孔23を介して浸入してきた酸化性溶液13に浸漬されるが、投入した段階で必ずしもすべてのワークWが酸化性溶液13に浸漬される必要はなく、図1、図2及び図4に示すように、酸化性溶液13の液面Pの上方までワークWが存在し、下方に位置するワークWのみが酸化性溶液13に浸漬された状態でもよい。
【0032】
このように回転ドラム20内にワークWが投入された状態で、駆動機構30によって回転ドラム20が軸線O回りに回転方向Tに、例えば0.5〜2.5rpmの回転速度で正回転されるとともに、回転ドラム20が通電部28を介して陽極となるように、固定陰極板12が陰極となるように通電される。
【0033】
以下、図4を参照しながら作用について詳細に説明する。
回転ドラム20が陽極として通電されると、該回転ドラム20の内周面に接触しているワークWも陽極となる。これにより、Snメッキ剥離装置1の稼動時おいては、電解液としての酸化性溶液13によって、陽極としてのワークWと電解槽10内の固定陰極板12とが隔てられた電気化学的構造が成立する。なお、回転ドラム20が回転しても、酸化性溶液13は回転ドラム20内で液面Pを維持しながら貫通孔23を介して内外を絶えず移動することができるため、上記電気化学的構造が崩れることはない。そして、このように通電されることによってワークW表面のSnメッキ層が酸化性溶液13中にSnイオンとして陽極電解される。
なお、酸化性溶液13がSnイオンを含有しているため、電解当初にHイオンの酸化による水素の発生はなく、当初から安定してSnメッキ層を電解することができる。
【0034】
また、回転ドラム20の回転によってワークWが回転攪拌されることによって、投入時には酸化性溶液13に浸漬されていなかったワークWを酸化性溶液13に浸漬させて電解の対象とすることができるとともに、ワークW同士が重なりあった部分を容易に引き剥がすことができるため、各ワークWの表面全体を確実に酸化性溶液13に触れさせることが可能となる。さらに、回転攪拌によってワークWは互いに擦り合わせられるため、ワークW表面から機械的にSnメッキ層を分離することで剥離を促進させて、陽極電解を効果的に行うことが可能となる。
【0035】
さらに、このように回転ドラム20が回転方向Tに回転する際には、円筒部21内のワークWは一次ガイド部29aによって前方側に導かれる。これによって、図5に示すように、一端面24に至り行き場を失ったワークWは矢印Aに示すように一端面24に押し上げられるようにして回転される。これにより回転ドラム20によるワークWの回転攪拌効果をさらに向上させることができる。
【0036】
回転ドラム20内でSnメッキ層が除去されたワークWを排出する際には、駆動機構30によって回転ドラム20を回転方向T後方側に逆回転させることで、ワークWはガイド部29a、29bによって図5に示す矢印B方向に後方側に誘導され、最終的に排出口22aから搬出装置40のワーク受部41に向けて排出される。そしてワークWは搬送部42により次工程へと搬送されて、液切り、水洗い、乾燥等の処理が施され、再び銅資源として利用される。
【0037】
このように本実施形態のSnメッキ剥離装置1は、回転攪拌によってワークWの表面全体を酸化性溶液に触れさせながら、かつワークW表面から機械的にSnメッキ層を分離しながらSnメッキ層の陽極電解を行うため、電解を効果的に行うことができ、より短時間かつ容易にワークWからSnメッキ層を除去することが可能となる。
また、回転攪拌と陽極電解を併用することによって、必要以上に酸化性溶液13を投入せずともSnメッキ層を確実かつ容易に剥離することが可能となるため、コストを低減させることが可能となる。
【0038】
さらに、酸化性溶液13中に電解されたSnイオンは、イオン化傾向が水素よりも小さいため容易に酸化されてSnOのスラッジとして析出する。このスラッジは地下ピット3で回収され、処理を施すことによってSnを分離し再び資源として利用することができる。一方、電解の進行によってSnメッキ層が部分的に除去されて露出した銅基板は電解の対象となるが、これが電解されてCuイオンとなった場合には固定陰極板12に単体の銅として析出する。これにより、CuとSnとを確実に分離して回収することが可能となる。
【0039】
さらに、回転ドラム20の回転方向を転換させることでワークWを回転ドラム20に投入してから排出するまでの一連の作業を自動化することができるとともに、攪拌効果を上昇させることができ、より効果的にワークからSnメッキ層を除去することが可能となる。
【0040】
以上、本発明によるSnメッキ剥離方法及びSnメッキ剥離装置の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0041】
例えば、本実施形態においては、回転ドラム20は略円筒状をなしているが、これに限定されず、四角柱状等の多角柱状のものであってもよい。また、回転ドラム20と電解槽10との絶縁をするに際し、例えばスポンジシート等と用いてもよい。さらに、回転ドラム20を回転させる駆動機構30の動力源31としては、モータ等の電動のもののみならず、例えば手動で回転させられるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施の形態に係るSnメッキ剥離装置の側面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るSnメッキ剥離装置の正面図である。
【図3】Snメッキ剥離装置の原理を説明する模式図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るSnメッキ剥離装置の平面図である。
【図5】回転ドラムの側断面模式図である。
【符号の説明】
【0043】
1 Snメッキ剥離装置
10 電解槽
12 固定陰極板(陰極)
13 酸化性溶液
20 回転ドラム
23 貫通孔
22a 排出口
24a 投入口
29a 一次ガイド部(ガイド部)
29b 二次ガイド部(ガイド部)
30 駆動機構
O 軸線(水平軸線)
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅基材の表面にSnメッキ層が形成されたワークからSnメッキ層を剥離するSnメッキ剥離方法であって、
前記ワークを酸化性溶液中に浸漬して、回転攪拌するのと同時に該ワークを陽極として電解を行うことを特徴とするSnメッキ剥離方法。
【請求項2】
前記ワークを小片状に切断した後に酸化性溶液中に浸漬して電解を行うことを特徴とする請求項1に記載のSnメッキ剥離方法。
【請求項3】
銅基材の表面にSnメッキ層が形成されたワークからSnメッキ層を剥離するSnメッキ剥離装置であって、
周面に貫通孔が形成された回転ドラムと、
陰極が付設されて酸化性溶液が収容される電解槽と、
前記回転ドラムを水平軸線回りに回転させる駆動機構とを備え、
前記回転ドラムの一部を前記電解槽に浸漬し、前記回転ドラムを陽極として電解しながら該回転ドラム内のワークを回転攪拌することを特徴とするSnメッキ剥離装置。
【請求項4】
前記回転ドラムの前記水平軸線方向一端側に投入口が設けられるとともに、他端側に排出口が設けられ、
前記回転ドラムの内周面に、前記水平軸線に沿って一定角度に捩れる複数条のガイド部が設けられていることを特徴とする請求項3に記載のSnメッキ剥離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−132940(P2010−132940A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307527(P2008−307527)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(000176822)三菱伸銅株式会社 (116)