説明

T型安全かみそり

【課題】
かみそり刃組立体の首振り量を増加させることかでき、アゴやワキのような輪郭の大きな部位、或いは足、手の毛剃りを行うように長い輪郭域でのかみそり刃組立体の追従を容易に行うことができるとともに、コントロールがしやすく、毛剃りの効率化を図ることができるT型安全かみそりを提供する。
【解決手段】
安全かみそり1は、替刃カートリッジ300の係合部を支持し、替刃カートリッジ300の長手方向に延びて係合部を通る仮想軸線の周りで替刃カートリッジ300を回動自在に支持する支持体200を有する。支持体200は替刃カートリッジ300を係合部に対して回動方向に付勢する圧縮コイルバネ44を備える。安全かみそり1は支持体200を仮想軸線と平行な第2軸線Oの周りで回動自在に支持するホルダ100と、支持体200を第2軸線Oの周りで回動付勢する前記バネ114を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、T型安全かみそりに関し、詳しくは、刃先が輪郭(凹凸)のある皮膚に沿って首振りをするT型安全かみそりに関する。
【背景技術】
【0002】
T型安全かみそりは、最適な毛剃りが可能となるように刃体の刃先がハンドルの長手方向に対して一定の傾斜姿勢になるように取付けられている。しかし、顔やボディの特に大きな輪郭(例えばアゴやワキに)に沿って毛剃りを行う場合、使用者は輪郭に対する刃先の最適の姿勢を維持するために刃先の前記輪郭に対する傾斜を手際よくコントロールさせる必要に迫られる。
【0003】
上記のように輪郭に対する刃先の姿勢を維持するためのコントロールは、刃先がハンドルの長手方向に対して固定されたT型安全かみそりでは、使用者はT型安全かみそりを持つ状態を大きく変化させて行う必要がある。この場合、毛剃りに慣れたものであれば、適切に行うことが可能である。しかし、毛剃りに慣れない使用者の場合は、前記コントロールすること自体がむずかしい。
【0004】
そこで、従来から、ハンドルの上部に対して、該かみそり刃組立体の下面側に、ハンドルの軸線とは直交する方向に枢動のための軸線を備えたジャーナル軸受装置が設けられ、該ジャーナル軸受装置を含む首振り機構により、かみそり刃組立体を傾動自在に指示したものが提案されている(特許文献1乃至特許文献6、以下、従来技術1という)。
【0005】
例えば、従来技術の代表的な特許文献1のT型安全かみそりでは、前記ジャーナル軸受装置と、ハンドルの上部に設けられたカム従節装置から強制偏向力を受けるためのカム部材を備える。この提案された従来技術は、かみそり刃組立体が肌の輪郭上を枢動しながら、最適な姿勢を維持することを可能とし、毛剃り効率の向上が図られている。
【0006】
又、特許文献7、8のT型安全かみそりでは、ハンドルの上部に弾性的に変形するロッド又はたわみ材が連結され、かみそりヘッドをハンドルに対してロッド又はたわみ材を介して支持する構成を採用している。この構成によって、かみそりヘッドが前記ロッド又はたわみ材を介して輪郭に追従できるようにされている(以下、従来技術2という)。
【0007】
特許文献9では、安全かみそりブレードユニットが、ブーレード組立体を組み付けられた上側フレームと、サブフレームと、ベースフレームが断面Z状に組付けられて、各フレーム間がヒンジを介して連結され、各フレーム間には、複数のバネウエブを介在させた構成を備える(以下、従来技術3という)。この構成によって、同様に安全かみそりブレードユニットが、輪郭に追従できるようにされている。
【0008】
なお、特許文献10は、本出願時の技術水準を示す参考の公報である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公昭57−12640号公報
【特許文献2】特開昭55−99289号公報
【特許文献3】実開昭57−45864号公報
【特許文献4】実開昭57−55470号公報
【特許文献5】実開昭57−58364号公報
【特許文献6】特許第3875207号
【特許文献7】実開昭55−143177号公報
【特許文献8】特開平3−173595号公報
【特許文献9】特許第4184076号
【特許文献10】特開2000−300871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、従来技術1の首振り機構では、かみそり刃組立体のカム部材は、ハンドルのカム従節装置の端に連結された圧縮ばねによって発生する強制偏向力に応答してハンドルのカム従節部材と係合するようになっている。そして、かみそり刃組立体は輪郭に沿って動かされるに従って枢動する。このとき、前記カム従節部材は、移動せしめられて圧縮ばねを圧縮し、圧縮バネの負荷を増大させる。この圧縮バネの負荷の増大は、かみそり刃組立体の皮膚に押し返す力が増すことを意味する。これは、刃体の刃先が皮膚を押圧した状態で毛剃りが継続されることから、切り傷や肌荒れの原因となる。
【0011】
これらの課題は、従来技術2においても、同様に生ずる。すなわち、特許文献7,8では、かみそりヘッドが輪郭に沿って動かされるに従って移動し、傾動量が増せばロッド又はたわみ材の弾性力が蓄積されるため、同様に刃体の刃先が皮膚を押圧した状態で毛剃りが継続されることから、切り傷や肌荒れの原因となる。
【0012】
又、従来技術3においては、安全かみそりブレードユニットは上側フレームと、サブフレームと、ベースフレームの各フレーム間に設けられた複数のバネウエブを備えている。このことから、安全かみそりブレードユニットが輪郭に沿って動かされるに従って前記バネウエブが弾性力を蓄積して変形し、同様に刃体の刃先が皮膚を押圧した状態で毛剃りが継続されることから、切り傷や肌荒れの原因となる。
【0013】
又、上記の課題とは別に、上記のように挙げられた従来技術1〜3では、下記で説明するコントロールのしにくい課題がある。
まず、従来技術1において、首振り機構による刃体の刃先の移動範囲を図12(a)に示す。図12(a)では、ジャーナル軸受装置の旋回軸から、刃先縁(例えば、複数刃を有する場合は、最初に肌に接触する第1刃体の刃先縁)と旋回軸Cとの距離は、一般的なかみそり刃組立体の大きさを想定した場合、数mmの範囲内であるため、3mm程度のものを想定した原理図で描いている。すなわち、この図では、前記3mmの半径で刃先縁が動くことを前提として10倍して描いたものである。
【0014】
この図では旋回軸Cの周りで、かみそり刃組立体が回転(揺動)した場合、先端の円弧E1で図示された部分が前記刃先縁の移動範囲(移動軌跡)である。このように刃先縁は、限られた円弧E1(曲線)の移動範囲内でしか移動ができない。このため、この円弧E1(曲線)の限られた範囲の中に刃先縁が位置するように、輪郭に対する刃先の姿勢を維持するため、輪郭の凹凸が大きな場合や、毛剃りの範囲が例えば、足のすね、手の腕の毛剃りを行うときのように長い距離に亘って毛剃りを行う場合、すなわち、毛剃り範囲が長くなる場合、輪郭に対する刃先の最適の姿勢を維持するためにハンドルを把持する手のコントロールは、より難しくなる。具体的には、輪郭に対する刃先の最適の姿勢を維持するために、ハンドルを持つ手を、毛剃り対象の手、又は足等の長さ方向に大きく動かす必要がある。
【0015】
又、従来技術2における刃体の刃先の移動範囲を、図12(b)に示す。図12(b)では、ロッド又はたわみ材の基端Kから刃先縁(例えば、複数刃を有する場合は、最初に肌に接触する第1刃体の刃先縁)との距離は、一般的なT型安全かみそりの大きさから想定すると、1cm〜数cmであると予想できるため、2cm程度のものを想定した原理図で描いている。この図では、前記2cmの半径で刃先縁が動くことを前提として2.5倍して描いたものである。
【0016】
この図では、ロッド又はたわみ材の基端Kから刃先縁が移動した場合、先端の円弧E2で図示された部分が前記刃先縁の移動範囲(移動軌跡)である。このように刃先縁は、円弧E2(曲線)の移動範囲内でしか移動ができない。このため、従来技術2においても従来技術2と同様にこの円弧E2の限られた範囲の中に刃先縁が位置するように、輪郭に対する刃先の姿勢を維持するため、ハンドルを持つ手を毛剃り対象の手又は足等の長さ方向に大きく動かす必要があるとともに、輪郭の細かい凹凸に対してはかみそりヘッドが追従することができない問題がある。
【0017】
さらに、従来技術3では、安全かみそりブレードユニットにおける刃体の刃先の移動範囲を図12(c)に示す。安全かみそりブレードユニットを、一般的な大きさで想定した場合、各ブレードの刃先を前とすると、前後方向の長さは数mm〜10mm前後であると想定できる。図12(c)では、安全かみそりブレードユニットを構成するフレーム(上側フレームF1、サブフレームF2、ベースフレームF3)の前後方向長さを8mmとし、3.75倍で図示している。
【0018】
そして、上フレームに配置される第1刃体(例えば、複数刃を有する場合は、最初に肌に接触するブレード)の刃先縁と、上側フレームF1とサブフレームF2間のヒンジaまでの距離を、ここでは説明の便宜上、同じ長さにしたものを想定した原理図で描いている。なお、bは、べースフレームとサブフレーム間のヒンジである。
【0019】
この図では、第1刃体が移動する場合、先端側の円弧状部分dと、後側の円弧状部分gで囲まれた範囲が前記刃先縁の移動範囲(移動領域)である。このように刃先縁は、限られた2つの円弧状(曲線)で囲まれた範囲内でしか移動ができず、しかも、この領域は、数mmの半径で、描かれる極めて狭い範囲である。
【0020】
このため、この限られた範囲の中に刃先縁が位置するように、輪郭に対する刃先の姿勢を維持するため、輪郭の凹凸が大きな場合や、毛剃りの範囲が例えば、足のすね、手の腕の毛剃りを行うときのように長い距離に亘って毛剃りを行う場合、従来例1と同様に、毛剃り範囲が長くなる場合、輪郭に対する刃先の最適の姿勢を維持するためにハンドルを把持する手のコントロールは、より難しくなる。具体的には、輪郭に対する刃先の最適の姿勢を維持するために、ハンドルを持つ手を、毛剃り対象の手、又は足等の長さ方向に大きく動かす必要がある。
【0021】
本発明の目的は、かみそり刃組立体の首振り量を増加させることかでき、アゴやワキのような輪郭の大きな部位、或いは足、手の毛剃りを行うように長い輪郭域でのかみそり刃組立体の追従を容易に行うことができるとともに、コントロールがしやすく、毛剃りの効率化を図ることができるT型安全かみそりを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記問題を解決するために請求項1に記載の発明は、かみそり刃組立体と、前記かみそり刃組立体に設けられた軸受手段を支持し、該かみそり刃組立体の長手方向に延びて前記軸受手段を通る第1軸線の周りで該かみそり刃組立体を回動自在に支持する支持体であって、前記かみそり刃組立体を前記軸受手段に対する回動方向に付勢する第1付勢手段を備えた支持体と、前記支持体を前記第1軸線と平行な第2軸線の周りで回動自在に支持するホルダと、前記支持体を前記第2軸線の周りで回動付勢する第2付勢手段を備えることを特徴とするT型安全かみそりを要旨とするものである。
【0023】
請求項2の発明は、請求項1において、前記かみそり刃組立体は少なくとも一つの刃体を備え、前記ホルダを下方に、前記かみそり刃組立体を上にし、かつ前記かみそり刃組立体の前記刃体の刃先を下に向けたとき、前記第1軸線が該かみそり刃組立体が有する前記刃体と重なる位置、或いは、下方に位置し、前記支持体の前記ホルダに対する回動自在に支持する回動支点が、前記かみそり刃組立体を上にホルダを下にしたとき、前記刃体よりも下方に位置することを特徴とする。
【0024】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2において、第1付勢手段の付勢力が第2付勢手段の付勢力よりも弱いことを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1又は請求項2において、第2付勢手段の付勢力が第1付勢手段の付勢力よりも弱いことを特徴とする。
【0025】
請求項5の発明は、請求項1又は請求項2において、第1付勢手段の付勢力と第2付勢手段の付勢力と同じにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
請求項1乃至請求項5の発明によれば、毛剃り時に、かみそり刃組立体が支持体に対して首振りされ、さらに、支持体がホルダに対して回動自在にされているため、かみそり刃組立体の首振り量を増加させることができる。又、アゴやワキのような輪郭の大きな部位、或いは足、手の毛剃りを行うように長い輪郭域でのかみそり刃組立体の追従を容易に行うことができるとともに、コントロールがしやすく、毛剃りの効率化を図ることができる。
【0027】
又、請求項2の発明によれば、第1軸線が、かみそり刃組立体が有する前記刃体と重なる位置、或いは、下方に位置し、かつ、回動支点が、前記かみそり刃組立体を上にホルダを下にしたとき、前記刃体よりも下方に位置するため、刃先が安定してスムースな毛剃りが可能となる。
【0028】
すなわち、前記支持体の第1軸線が通る軸受手段は、支持体を介してかみそり刃組立体を保持する部分でもある。仮に、前記軸受手段が刃体の後方(刃先の幅方向の刃先に対向する方向)に位置する場合、刃体の刃先は毛の切断抵抗と刃先の後方からの押圧により刃が不安定な状態(積雪における後輪駆動車が駆動するのと同様にビビリなどが発生しやすい)となる。又、第2軸線の回動支点が刃先より後方に位置する場合も同様の問題がある。一方、首振りの回動支点が、刃先の前方(下方)になる場合は前述の逆であり、回動支点が、前記かみそり刃組立体を上にホルダを下にしたとき、前記刃体よりも下方に位置するため、刃先が安定してスムースな毛剃りが可能となり、回動支点が刃先下方に位置する方が刃先が安定してスムースな毛剃りが可能となる。
【0029】
請求項3の発明によれば、刃先に近い支持体の第1付勢手段が、第2付勢手段よりも、付勢力が弱いため、支持体に対するかみそり刃組立体の首振り(以下、第1首振りという)の方が、支持体のホルダに対する首振り(以下、第2首振りという)よりもしやすい。このため、毛剃り時に、かみそり刃組立体が輪郭に沿って動かされるに従ってかみそり刃組立体の第1首振りが、支持体のホルダに対する第2首振りよりも先に行われる。このため、第1首振りの首振り量(回動量)が増すつれて第1付勢手段は圧縮されて負荷を増していく。この場合、第1首振りだけであると、かみそり刃組立体を皮膚に押し返す力が増加する結果、切り傷や肌荒れの原因となるが、請求項3の発明では第2首振りにより、第1首振りによるその押し返し力が低減され、切り傷や肌荒れの虞が少なく、ソフトな剃り感が得られる。
【0030】
請求項4の発明によれば、安全かみそりを肌に当てたとき、支持体の第2首振りにより衝撃が緩和され、刃先面(髭剃り接線面)がいち早く肌に密着し、特定の刃先が集中して肌に食い込むことが無いため、肌を傷つける虞を少なくできる。
【0031】
請求項5の発明によれば、輪郭に沿って移動する際、かみそり刃組立体が押圧されて、かみそり刃組立体又は支持体の首振り限界に達したときでも、他方の残った側の付勢手段の付勢力も、首振り限界に達した側の付勢力と同じであるため、この同じ付勢力により肌に対してかみそり刃組立体を押圧させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】(a)は本発明を具体化した一実施形態のT型安全かみそりの全体斜視図、(b)は同じく実施形態の刃先先縁の移動範囲を示す説明図。
【図2】(a)は要部断面図、(b)は、ホルダの正面図。
【図3】(a)は支持体の要部正断面図であり、(b)は(a)におけるA−A断面図である。
【図4】図3(b)におけるB−B断面図。
【図5】刃台の斜視図。
【図6】ホルダと刃台との位置関係を示す要部断面図。
【図7】図6におけるC−C断面図。
【図8】安全かみそりの作用を説明するためのホルダの要部正断面図。
【図9】安全かみそりの作用を説明するための要部断面図。
【図10】(a)は他の実施形態の安全かみそりの側面図、(b)は、要部側面図。
【図11】同じく他の実施形態のホルダの正面図。
【図12】(a)〜(c)は、従来の安全かみそりの刃体の刃先線縁の移動範囲の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態を図1〜9を参照して説明する。
図1(a)に示すように、T型安全かみそり(以下、単に安全かみそりという)1はホルダ100と、支持体200とかみそり刃組立体としての替刃カートリッジ300とにより略T字状に形成されている。前記ホルダ100はそれぞれ合成樹脂製の柄部110とカバー120とにより構成されている。
【0034】
前記ホルダ100の上部には、支持体200が、回動自在に軸支されている。すなわち、図2(a)、(b)に示すように柄部110の上部腹面には溝状の軸受111が柄部110の長手方向に直交する方向に形成されている。なお、図2(a)において、右側を腹側といい、左側を背側という。
【0035】
支持体200は、背側及び先端部を開口するケース本体210と、背側の開口を覆うケースカバー220を備えている。そして、ケース本体210の腹側の面(下面)の左右両側には突片212、214(図2(b)参照)が突設され、両突片212,214に前記軸受111に回動自在に嵌合したピン124の両端が止着されることにより、支持体200が前記ホルダ100に取付けされている。前記軸受111(ピン124)の軸心が、第2軸線Oに相当し、前記軸受111が回動支点に相当する。
【0036】
そして、ケース本体210は、前記軸受111に支持されたピン124の周りで回動し、図2(a)に示すように、ケース本体210の先端側の底壁面がホルダ100の先端係止面110aに当接されることにより、図2(a)における時計方向の回動が制限される。
【0037】
又、前記ホルダ100の上部背側の面には、カバー120に覆われた凹部112が形成されている。凹部112の底面にはバネ支持突起113が形成され、第2付勢手段としてのバネ114が巻装されている。バネ支持突起113には、有蓋円筒状の当接部材115が被せられ、前記バネ114により付勢されて、カバー120の透孔122を介して外部に突出されている。前記バネ114は、圧縮コイルバネにより構成されている。当接部材115は、その基端に透孔122の内側周縁に係止される係止フランジ116が形成され、透孔122から抜き出し不能になっている。そして、当接部材115は、前記バネ114により、その先端がケース本体210の底壁の基端に当接し、ケース本体210を図2(a)に示す底壁がホルダ100の先端係止面110aに当接係止させている。
【0038】
又、支持体200が、ホルダ100に対して図2(a)において、反時計方向に回動した際、底壁の基端がホルダ100の背面に当接することによりその反時計方向の回動が規制される。
【0039】
(支持体200)
次に支持体200の内部構成について説明する。
図3(a)に示すように、前記ケース本体210には、収容凹部からなる収容室8が形成されている。同収容室8内にはヘッド部10が収容されている。前記ケース本体210の収容室8の内面奥部には、一対の支持ピン9が左右に離間して配置されている。尚、図3(a)において、紙面左右をそれぞれ左、右といい、紙面上下をそれぞれ上、下という。そして、前記各支持ピン9に対してヘッド部10が着脱可能に嵌合されている。
【0040】
図3(a)、(b)及び図4に示すように、ヘッド部10はヘッド本体21と一対の支持アーム22a、22bとプッシャー23とリリースカム24とリリースボタン25とを備えている。
【0041】
図3(a)、(b)に示すように、ヘッド本体21の一側には収容部31が凹設されている。収容部31の先端側側面には一対の支持ピン32が互いに離間して突設されている。そして、前記各支持ピン32に対して、把持部材としての一対の支持アーム22a、22bが図3(a)において時計方向及び反時計方向に回動自在にそれぞれ取り付けられており、各々の先端部が互いに接近離間可能とされている。前記支持アーム22a、22bは、例えば、合成樹脂等の弾性体からなる。そして、前記各支持アーム22a、22bの先端部は収容室8の先端に形成された開口部から上方へ突出されている。前記各支持アーム22a、22bの先端部には、互いに相対する内方に向かって係合突部33a、33bが延出形成されている。
【0042】
又、前記各支持アーム22a、22bの基端部には、内方に向かって傾斜部34a、34bが延出されており、その外側面には傾斜面35a、35bが基端側に向かうほど互いの傾斜面35a、35bに近づくように形成されている。左側の支持アーム22aの外側面には、その基端側から先端側に向かって、傾斜面35aと連接された第1当接面36a及び第1当接面36aと連接された第2当接面37aが形成されている。一方、右側の支持アーム22bの外側面には、その基端側から先端側に向かって、傾斜面35bと連接された第1当接面36b及び第1当接面36bと連接された第2当接面37bが形成されている。
【0043】
前記各傾斜部34a、34bの内側面間には圧縮コイルバネ39の両端部が係止され、該圧縮コイルバネ39により、同両支持アーム22a、22bの基端部をそれぞれ外方に付勢している。
【0044】
圧縮コイルバネ39が両支持アーム22a、22bの基端部をそれぞれ外方に付勢している状態では、図3(a)に示すように第1当接面36a、36bがヘッド本体21の収容部31の左右両側壁内側面に当接されているとともに、両支持アーム22a、22bの係合突部33a、33bは互いに接近している。又、図8に示すように、圧縮コイルバネ39の付勢力に抗して、各支持アーム22a、22bの係合突部33a、33bが互いに離間されると、第2当接面37a、37bがヘッド本体21の収容部31の左右両側壁内側面に当接される。
【0045】
前記収容部31において両支持ピン32よりも基端側(図3(a)において、下方側)の中央部の側面にはバネ受突起41が突設されている。そして、プッシャー23には、自身の長さ方向(図3(a)、(b)において上下方向)にバネ収容孔42が延設され、該バネ収容孔42に前記バネ受突起41が係入されている。プッシャー23は、前記両支持アーム22a、22b間に配置されており、前記バネ受突起41にバネ収容孔42がガイドされることにより、前記収容部31の先端側と基端側を結ぶ方向に往復動可能とされている。
【0046】
プッシャー23のバネ収容孔42において、先端側の内面(図3(a)において、上側の内面)と前記バネ受突起41間に圧縮コイルバネ44が介在配置されることにより、プッシャー23は、ケース本体210の先端開口部から突出する方向(以下、突出方向という)へ付勢されている。圧縮コイルバネ44は、第1付勢手段に相当する。第1付勢手段としての圧縮コイルバネ44の付勢力は、第2付勢手段としてのバネ114の付勢力と同じになるように設定されている(請求項5)。
【0047】
又、プッシャー23の先端部は圧縮コイルバネ44の付勢力によって、各支持アーム22a、22bの係合突部33a、33bの下端面に当接可能にされており、このことによって、プッシャー23の突出方向の移動が規制されている。又、図8に示すように、圧縮コイルバネ39の付勢力に抗して、各支持アーム22a、22bの係合突部33a、33bが互いに離間され、第2当接面37a、37bがヘッド本体21の収容部31の左右両側壁内側面に当接されると、プッシャー23の突出方向への移動の規制が解除される。
【0048】
図3(b)に示すように、収容部31の先端部中央には前記突出方向に沿って摺動溝51が形成されており、同摺動溝51に沿ってプッシャー23が突出方向に摺動可能とされている。前記プッシャー23の先端部にはカム面としての係合凹部52が切込形成されており、同係合凹部52は、本実施形態ではV字状をなす一対の斜状の面53、54にて構成されている。同係合凹部52の形状はV字状に限定するものではなく、U字状であってもよい。
【0049】
前記ヘッド本体21の他側(反収容部側であり、図3(b)において左側)には、中央部から基端部に亘って摺動溝55が形成されている。摺動溝55にはリリースカム24の摺接部が係入されており、同リリースカム24の摺接部は摺動溝55に沿って先端側と基端側を結ぶ方向に往復摺動可能とされている。
【0050】
図3(b)に示すように、リリースカム24の摺接部の先端には装着孔56が形成されている。前記ケースカバー220の外側面には前記突出方向と同方向に延びた貫通孔47を有するボタン装着部48が凹設されている。リリースボタン25の取付端部は貫通孔47に遊挿され、前記装着孔56に固定されている。リリースボタン25の操作部25aはケースカバー220の外側面から突出されており、外部から前記突出方向と同方向に往復操作可能とされている。
【0051】
リリースカム24は前記摺接部と延出部57とにより断面L字状をなしている。即ち、摺接部の基端部にはリリースカム24の長手方向(図3(b)において上下方向)とは直交する方向(同図において右側)に延出された延出部57が形成されている。そして、さらに延出部57から先端に向かって正断面U字状をなす押圧部58が形成されている。
【0052】
図3(a)に示すように、押圧部58の左右両端部上部には、円弧状の押圧面59a、59bがそれぞれ形成されている。各押圧面59a、59bは前記各支持アーム22a、22bの傾斜面35a、35bにそれぞれ当接されている。
【0053】
本実施形態では、支持アーム22aと支持アーム22bとにより自在継手手段が構成されている。又、プッシャー23と圧縮コイルバネ44とにより復元手段が構成されている。
【0054】
(替刃カートリッジ300)
次に替刃カートリッジ300について説明する。替刃カートリッジ300は刃台61を備えている。
【0055】
図5に示すように、刃台61の下面(すなわち、裏面)中央には一対の凹所70が形成され、両凹所70間には被挟着部としての隔壁63が替刃の刃体の幅方向に沿って形成されている。隔壁63の下端部には左右両側に張り出された膨出部64が形成されている。
【0056】
膨出部64において隔壁63を挟んだ左右両側の各上面には、前記各支持アーム22a、22bの係合突部33a、33bを係脱可能な係合面65a、65b(図5においては左側の支持アーム22aの係合突部33aに対応する係合面65aのみを図示)がそれぞれ凹状の円弧面となるように形成されている。前記隔壁63と膨出部64とにより、被支持部としての係合部62が構成されている。ここで、係合面65a、65bを有する係合部62は、軸受手段に相当する。
【0057】
そして、図6及び図7に示すように、各支持アーム22a、22bの第1当接面36a、36bがヘッド本体21の収容部31の内側面に当接されている状態において、各支持アーム22a、22bの係合突部33a、33bがそれぞれ係合部62に係合されている。
【0058】
即ち、各支持アーム22a、22bの係合突部33a、33bによって隔壁63が挟持されるとともに、膨出部64の係合面65a、65bと係合突部33a、33bとの係合により替刃カートリッジ300の抜き出しが不能になる。
【0059】
尚、係合突部33a、33bにおいて、係合面65a、65bとの当接面40a、40bは図7に示すように、剃刀刃67(刃体)の幅方向に沿った凸状の円弧面に形成されており、図7のR方向への回動が回動自在とされている。このことによって、本実施形態では、替刃カートリッジ300は、支持体200の一対の支持アーム22a、22bによって支持されている。
【0060】
一方、図5に示すように、前記膨出部64の下端部には係合凹部52のV字の角度よりも角度が大きい断面三角形状をなす係合突部66が形成されており、同係合突部66は前記プッシャー23のV字状をなす係合凹部52に係合されている(図6参照)。
【0061】
ここで、前記圧縮コイルバネ44の付勢力によりプッシャー23が突出方向(図3(a)において上方)に付勢されているため、図6及び図7に示すように、プッシャー23の先端部である係合凹部52の先縁部は係合突部66の当接面71、72に当接されている。
【0062】
本実施形態では、係合凹部52における斜状の面53、54同士のなす角度をα(図示しない)、係合突部66における当接面71、72同士がなす角度をβ(図示しない)としたとき、α<βとされている。この係合凹部52のV字の角度と係合突部66の三角形の角度との違いによって、替刃カートリッジ300はカム作用により復元位置(傾動前の元位置)に復帰する。又、各支持アーム22a、22bの係合突部33a、33bの当接面40a、40bは係合面65a、65bにそれぞれ当接されている。
【0063】
そして、前記各係合面65a、65bはそれぞれ円弧状に形成されているため、替刃カートリッジ300は各支持アーム22a、22bの係合突部33a、33bに対して、図7において時計方向及び反時計方向に回動自在に支持されており、首振り可能とされている。
【0064】
即ち、替刃カートリッジ300は支持体200に対して、刃台61の係合部62が一対の支持アーム22a、22bによって、係合突部33a、33bの当接面40a、40bに沿って替刃カートリッジ300の刃体の刃幅方向(図7に示す矢印R方向)ヘ傾動自在に挟着支持されている。
【0065】
本実施形態では、前記R方向は、係合部62の係合面65a、65bの両者の曲率中心を通過する仮想軸線M(図7参照)を回動中心とした回転方向をいう。すなわち、R方向は、把持部材としての一対の支持アーム22a、22bの各係合突部を結ぶ軸を中心に回転する方向である。そして、本実施形態において、各係合突部33a、33bを結ぶ軸(仮想軸線M)は第1軸線に相当し、仮想軸線Mは、第2軸線Oと平行関係にある。そして、仮想軸線Mは、替刃カートリッジ300の長手方向に延び、前記係合部62を通る軸線である。
【0066】
尚、係合面65a、65bが1つの曲率半径を有する場合は、前記仮想軸線Mは1個となる。又、係合面65a、65bが複数の曲率半径を有する円弧が連続して形成されている場合は、前記仮想軸線Mはそれに応じて複数個存在する。この場合、R方向とは、それぞれの仮想軸線Mの周りで回動したときの方向をいう。そして、これらの仮想軸線Mは、いずれも、第2軸線Oと平行関係にある。
【0067】
又、図6に示すように、替刃カートリッジ300の支持アーム22a、22bによる挟着支持において、刃台61の係止面69a、69bと各支持アーム22a、22bの係合突部33a、33bとの間には、距離L1、L2を有する隙間が形成されるように隔壁63の長さが設定されている。このことによって、替刃カートリッジ300は支持体200に対して、同図において左右方向に揺動可能とされている。即ち、替刃カートリッジ300は支持体200に対して、刃台61の係合部62が一対の支持アーム22a、22bによって、替刃カートリッジ300の中央部を中心にした刃体の厚さ方向(図6に示す矢印P方向)ヘ傾動自在に挟着支持されている。本実施形態では、距離L1と距離L2とは同じ値に設定されている。
【0068】
さらに、替刃カートリッジ300は支持体200に対して、刃台61の係合部62が一対の支持アーム22a、22bによって、替刃カートリッジ300の中央部を中心にして刃体の刃幅方向(図6に示す矢印Q方向)へ傾動自在に挟着支持されている。本実施形態では、前記Q方向は、支持アーム22a、22bの両者間を通過するとともに、図6の中立位置に位置する係合部62(隔壁63、係合突部66)の中心を通過する仮想軸線Lを回動中心とした回転方向をいう。
【0069】
このように、替刃カートリッジ300は支持体200に対して、刃台61の係合部62が一対の支持アーム22a、22bによって、前記P方向、Q方向、R方向、単独、又はこれらのいずれかの2方向、又は3方向が合成された方向へ傾動自在に挟着支持されている。
【0070】
このように、P方向とは刃先端側から見たときに、被挟着部を中心に回転する方向であり、Q方向とは、刃面と垂直で被挟着部を通る軸(L)を中心に回転する方向である。
図1(a)に示すように、替刃カートリッジ300の上部(表面側)には、髭等の毛剃りを行うための刃体としての3枚の剃刀刃67が設けられている。図6、図7、図9では、前記3枚の剃刀刃67のうち、毛剃りする際に、最初に皮膚に接触する剃刀刃67(以下、この刃体を第1刃体という)のみを図示している。そして、ホルダ100を下方に、替刃カートリッジ300を上にし、かつ替刃カートリッジ300の剃刀刃67(第1刃体)の刃先を下に向けたとき(図7においては、「刃先」と書いてある方向を下向きにしたとき)、仮想軸線M(第1軸線)が、剃刀刃67(第1刃体)と重なる位置に位置している(図7参照)。
【0071】
又、図2に示すように支持体200のホルダ100に対する回動自在に支持する軸受111(回動支点)が、替刃カートリッジ300(かみそり刃組立体)を上にホルダ100を下にしたとき、剃刀刃67(第1刃体)よりも下方に位置するように設定されている。
【0072】
(実施形態の作用)
さて、上記のように構成されて、替刃カートリッジ300が支持体200に装着された安全かみそり1を使用して髭等の毛を剃る場合の作用を説明する。
【0073】
図2(a)の状態で、替刃カートリッジ300の上面(すなわち、表面)全体を顔面等に押し当てると、圧縮コイルバネ44の付勢力と前記バネ114の付勢力と同じにされているため、毛剃り中、輪郭に沿って移動する際、替刃カートリッジ300が押圧されて、替刃カートリッジ300又は支持体200の首振り限界に達したときでも、他方の残った側の付勢手段の付勢力も、首振り限界に達した側の付勢力と同じであり、この同じ付勢力により肌に対して替刃カートリッジ300を押圧する。
【0074】
この場合、替刃カートリッジ300側では、刃台61の係合突部66の当接面71、72が、圧縮コイルバネ44の付勢力に抗してプッシャー23の先端部を押圧し、プッシャー23がケース本体210内へ移動する。すると、刃台61の係合面65a、65bが各支持アーム22a、22bの係合突部33a、33bの当接面40a、40bからそれぞれ離間し、やがて、係合突部33a、33bは刃台61の凹所70内の係止面69a、69bにそれぞれ当接される。そして、その状態で髭等の毛剃りが行われる。
【0075】
一方、支持体200側では、前記バネ114の付勢力に抗して、図2(a)において、反時計方向に回転し、この状態で髭等の毛剃りが行われる。
又、替刃カートリッジ300側では、替刃カートリッジ300の上面(すなわち、表面)において、ケースカバー220側(図7において反刃先側)に負荷がかかるように替刃カートリッジ300を顔面等に押し当てると、図6に示すように、刃台61の係合突部66の当接面71、72が、圧縮コイルバネ44の付勢力に抗してプッシャー23の先端部を押圧し、プッシャー23が支持体200側に移動する。このとき、刃台61の係合面65a、65bはそれぞれ円弧状に形成されているため、替刃カートリッジ300は各支持アーム22a、22bの係合突部33a、33bに対して、図7において時計方向(矢印Ra側)に回転する。
【0076】
すると、係合突部33a、33bの先端部は刃台61の係止面69a、69bにそれぞれ当接される。即ち、替刃カートリッジ300は支持体200に対して、一対の支持アーム22a、22bによって、ケースカバー220側(図9において反刃先側)が下がるように傾斜された状態で支持され、その状態で髭等の毛剃りが行われる。
【0077】
一方、このとき支持体200側では、負荷が替刃カートリッジ300に加わると、支持体200は、前記バネ114の付勢力に抗して、図2(a)において、反時計方向に回転し、この状態で髭等の毛剃りが行われる。
【0078】
又、替刃カートリッジ300の上面(すなわち、表面)において、ケース本体210側(図7において刃先側)に負荷がかかるように替刃カートリッジ300を顔面等に押し当てると、図示はしないが、刃台61の係合突部66の当接面71、72が、圧縮コイルバネ44の付勢力に抗してプッシャー23の先端部を押圧し、プッシャー23が支持体200側に移動する。このとき、刃台61の係合面65a、65bはそれぞれ円弧状に形成されているため、替刃カートリッジ300は各支持アーム22a、22bの係合突部33a、33bに対して、図7において反時計方向(矢印Rb側)に回転する。そして、替刃カートリッジ300は支持体200に対して、一対の支持アーム22a、22bによって、ケース本体210側(刃先側)が下がるように傾斜された状態で支持され、その状態で髭等が剃られる。
【0079】
一方、このとき支持体200側では、負荷が替刃カートリッジ300に加わると、支持体200は、前記バネ114の付勢力に抗して、図2(a)において、反時計方向に回転し、この状態で髭等の毛剃りが行われる。
【0080】
なお、替刃カートリッジ300の支持体200に対する着脱は本発明と関係せず、又、特許文献10に詳細な説明がされているため説明を省略する。
さて、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0081】
(1) 本実施形態の安全かみそり1は、替刃カートリッジ300(かみそり刃組立体)と、替刃カートリッジ300の裏面に設けられた係合部62(軸受手段)を支持し、替刃カートリッジ300の長手方向に延びて係合部62を通る仮想軸線M(第1軸線)の周りで替刃カートリッジ300を回動自在に支持する支持体200を有する。そして、支持体200は、替刃カートリッジ300を係合部62に対して回動方向に付勢する圧縮コイルバネ44(第1付勢手段)を備える。
【0082】
又、安全かみそり1は、支持体200を仮想軸線M(第1軸線)と平行な第2軸線Oの周りで回動自在に支持するホルダ100と、支持体200を第2軸線Oの周りで回動付勢する前記バネ114(第2付勢手段)を備える。
【0083】
この結果、毛剃り時に、替刃カートリッジ300が支持体200に対して首振り(第1首振り)され、さらに、支持体200がホルダ100に対して回動自在(第2首振り)するため、替刃カートリッジ300の首振り量を増加させることができる。又、アゴやワキのような輪郭の大きな部位、或いは足、手の毛剃りを行うように長い輪郭域での替刃カートリッジ300の追従を容易に行うことができるとともに、コントロールがしやすく、毛剃りの効率化を図ることができる。
【0084】
図1(b)は、支持体200(替刃カートリッジ300)が第2軸線Oを中心として回転(首振り)され、さらに替刃カートリッジ300が、仮想軸線Mを中心に回転(首振り)するときの剃刀刃67(第1刃体)の刃先が位置する移動領域(移動範囲)をハッチングで示す。同図では、第2軸線Oと仮想軸線M間を2cmとして想定し、その2.5倍で描いたものである。同図に示すように刃先が位置する移動領域は、従来技術1、2、3に比較して、その領域を拡大できることが分かる。
【0085】
この領域が増加することは下記の点において有利である。すなわち、この拡大された領域内において、安全かみそり1を持った手をコントロールすることになるため、例えば、足、手の毛剃りを行うように長い輪郭域で毛剃りを行う場合、安全かみそりを把持した手を大きく動かす必要がなくなり、このコントロールがしやすくなる利点がある。
【0086】
(2) 本実施形態の替刃カートリッジ300(かみそり刃組立体)は3つの剃刀刃67(刃体)を備え、ホルダ100を下方に、替刃カートリッジ300を上にし、かつ替刃カートリッジ300の剃刀刃67の刃先を下に向けたとき、仮想軸線M(第1軸線)が替刃カートリッジ300が有する剃刀刃67(第1刃体)と重なる位置に位置する。そして、支持体200のホルダ100に対する回動自在に支持する軸受111(回動支点)が、替刃カートリッジ300を上にホルダ100を下にしたとき、剃刀刃67よりも下方に位置する。
【0087】
この結果、仮想軸線Mが、替刃カートリッジ300が有する剃刀刃67(第1刃体)と重なる位置し、かつ、軸受111が、替刃カートリッジ300を上にホルダ100を下にしたとき、剃刀刃67(第1刃体)よりも下方に位置するため、刃先が安定してスムースな毛剃りが可能となる。すなわち、支持体200の仮想軸線M(第1軸線)が通る係合部62(軸受手段)は、支持体200を介して替刃カートリッジ300を保持する部分でもある。
【0088】
仮に、係合部62(軸受手段)が剃刀刃67(第1刃体)の後方(刃先の幅方向の刃先に対向する方向)に位置する場合、剃刀刃67(第1刃体)の刃先は毛の切断抵抗と刃先の後方からの押圧により刃が不安定な状態(積雪における後輪駆動車が駆動するのと同様にビビリなどが発生しやすい)となる。又、第2軸線Oの軸受111(回動支点)が刃先より後方に位置する場合も同様の問題がある。一方、首振りの軸受111が、刃先の前方(下方)になる場合は前述の逆であり、軸受111が、前記かみそり刃組立体を上にホルダを下にしたとき、剃刀刃67(第1刃体)よりも下方に位置するため、刃先が安定してスムースな毛剃りが可能となり、軸受111が刃先下方に位置する方が刃先が安定してスムースな毛剃りが可能となる。
【0089】
(3) 本実施形態では、第2付勢手段としてのバネ114と、第1付勢手段としての圧縮コイルバネ44とを同じ付勢力としている。この結果、毛剃り中、輪郭に沿って移動する際、替刃カートリッジ300が押圧されて、替刃カートリッジ300又は支持体200の首振り限界に達したときでも、他方の残った側の付勢手段の付勢力も、首振り限界に達した側の付勢力と同じであるため、この同じ付勢力により肌に対して替刃カートリッジ300を押圧させることができる。
【0090】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を説明する。
なお、第2実施形態の安全かみそりは、第1実施形態の安全かみそり1とは、基本的な構成は同じであるため、第1実施形態と同一構成に対しては同一符号を付して、異なるところを説明し、図は第1実施形態の図を参照するものとする。
【0091】
第2実施形態では、第2付勢手段としてのバネ114が、第1付勢手段としての圧縮コイルバネ44よりも弱くなるように設定されている。
従って、第2実施形態では、安全かみそり1により、毛剃りを行う場合、替刃カートリッジ300に負荷が掛かると、最初に支持体200が、ホルダ100に対して図2(a)において、反時計方向に回動(首振り)が行われる。そして、替刃カートリッジ300負荷が増大して、支持体200の底壁がホルダ100の背面に当接されて反時計方向の回動が規制された後、替刃カートリッジ300の首振りが、圧縮コイルバネ44の付勢力に抗して首振りが行われる。
【0092】
このようにして、替刃カートリッジ300の首振り量が増大する。
第2実施形態では、下記の特徴がある。
(4) 本実施形態では、第2付勢手段としてのバネ114が、第1付勢手段としての圧縮コイルバネ44よりも弱くなるように設定されている。この結果、安全かみそり1を肌に当てたとき、支持体200の首振り(第2首振り)により衝撃が緩和され、刃先面(髭剃り接線面)がいち早く肌に密着し、特定の刃先が集中して肌に食い込むことが無いため、肌を傷つける虞を少なくできる。
【0093】
なお、前記実施形態は以下のように変更してもよい。
・ 前記各実施形態では、押圧部材としてのプッシャー23を一対の支持アーム22a、22b間に配置し、同プッシャー23を付勢手段としての圧縮コイルバネ44の付勢力によって、替刃カートリッジ300の長手方向中央部に形成された被支持部としての係合部62に当接させたが、次のようにしてもよい。即ち、被支持部としての係合部62を一対、替刃カートリッジ300の長手方向中央部から左右方向に離間された位置に設けるとともに、その係合部62に対応する位置にプッシャー23を配置し、同プッシャー23を圧縮コイルバネ44の付勢力によって、係合部62に当接させてもよい。
【0094】
・ 刃台61の係合突部66とプッシャー23の係合凹部52との凹凸関係を逆にしてもよい。
・ 前記各実施形態では、把持部材としての一対の支持アーム22a、22bによって、替刃カートリッジ300を支持体200に対して傾動自在に支持したが、2対以上の把持部材によって、替刃カートリッジ300を支持体200に対して傾動自在に支持してもよい。
【0095】
・ 前記各実施形態では、プッシャー23の係合凹部52のV字の角度よりも角度が大きい断面三角形状をなす係合突部66としたが、断面半円状をなす係合突部66としてもよい。
【0096】
・ 又、プッシャー23の係合凹部52における斜状の面53、54同士のなす角度と、係合突部66における当接面71、72同士がなす角度とが等しくなるように、係合突部66を構成してもよい。
【0097】
・ 前記各実施形態では、替刃カートリッジ300に備える剃刀刃67(刃体)の数を3枚としたが、1枚でもよく、或いは、2枚、4枚、5枚以上としてもよい。なお、このように複数(2枚、4枚以上の場合)の刃体を備えた替刃カートリッジ300では、請求項2の「刃体」の意味は、毛剃りを行う際、最初に皮膚に接触する刃体を指す。
【0098】
・ 前記各実施形態では、ホルダ100を下方に、替刃カートリッジ300を上にし、かつ替刃カートリッジ300の剃刀刃67(第1刃体)の刃先を下に向けたとき(図7においては、「刃先」と書いてある方向を下向きにしたとき)、仮想軸線M(第1軸線)が、剃刀刃67(第1刃体)と重なる位置に位置させた。この代わりに、ホルダ100を下方に、替刃カートリッジ300を上にし、かつ替刃カートリッジ300の剃刀刃67(第1刃体)の刃先を下に向けたとき(図7においては、「刃先」と書いてある方向を下向きにしたとき)、仮想軸線M(第1軸線)が、剃刀刃67(第1刃体)の刃先よりも下方に位置させてもよい。この場合、前記実施形態と同様に、首振りの軸受111(回動支点)が、刃先の前方(下方)になる場合、軸受111(回動支点)が、替刃カートリッジ300を上にホルダ100を下にしたとき、剃刀刃67(第1刃体)よりも下方に位置するため、刃先が安定してスムースな毛剃りが可能となり、前記軸受111(回動支点)が刃先下方に位置する方が刃先が安定してスムースな毛剃りが可能となる。
【0099】
・ 前記各実施形態では、当接部材115、バネ114をホルダ100側に設けたが、支持体200側に設けても良い。この場合、当接部材115は、ホルダ100の背面側に先端が当接するように配置し、バネ114で常時付勢する構成とする。
【0100】
・ 前記各実施形態において、第1付勢手段及び第2付勢手段は圧縮コイルバネ44に限定されるものではなく、板ばね、ひねりコイルバネ等により構成してもよい。
・ 前記第1実施形態では、第2付勢手段としてのバネ114と、第1付勢手段としての圧縮コイルバネ44とを同じ付勢力としたが、圧縮コイルバネ44(第1付勢手段)の付勢力をバネ114(第2付勢手段)の付勢力よりも弱くしてもよい。
【0101】
この場合、剃刀刃67(第1刃体)の刃先に近い支持体200の圧縮コイルバネ44が、バネ114よりも、付勢力が弱いため、支持体200に対する替刃カートリッジ300の第1首振りの方が、支持体200のホルダ100に対する第2首振りよりもしやすい。このため、毛剃り時に、替刃カートリッジ300が輪郭に沿って動かされるに従って替刃カートリッジ300の第1首振りが、支持体200のホルダ100に対する第2首振りよりも先に行われる。このため、第1首振りの首振り量(回動量)が増すつれて圧縮コイルバネ44は圧縮されて負荷を増していく。この場合、第1首振りだけであると、替刃カートリッジ300を皮膚に押し返す力が増加する結果、切り傷や肌荒れの原因となるが、本実施形態では第2首振りにより、第1首振りによるその押し返し力が低減され、切り傷や肌荒れの虞が少なく、ソフトな剃り感が得られる。
【0102】
・ 図10、図11は第1実施形態の安全かみそり1の構成中、下記のように構成を変更してもよい。この変形例では、第1実施形態の構成中、バネ支持突起113、当接部材115、バネ114が省略され、その代わりに、ホルダ100の先端部に板バネ250を一体、或いは別部材を固定したものである。板バネ250の先端は、支持体200の底壁に係止されている。ホルダ100の先端は、二股状をなして一対のアーム部140が形成され、両アーム部140の外側面に軸部142がそれぞれ突出されている。そして、支持体200は、その軸部142において、回動自在に支持されている。前記軸部142間は仮想軸線Mが通過する。他の構成は第1実施形態と同一である。
【0103】
・ 前記各実施形態では、軸受手段をかみそり刃組立体(替刃カートリッジ300)の裏面に設けたが、裏面に限定されるものではなく、替刃カートリッジ300の長手方向の両端面に、例えば凹部或いは軸孔を設け、該凹部又は軸孔に係合突部33a、33bを回動自在に支持するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0104】
M…仮想軸線(第1軸線)、O…第2軸線、
1…安全かみそり、44…圧縮コイルバネ(第1付勢手段)、
62…係合部(軸受手段)、100…ホルダ、
114…バネ(第2付勢手段)、200…支持体、
300…替刃カートリッジ(かみそり刃組立体)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
かみそり刃組立体と、
前記かみそり刃組立体に設けられた軸受手段を支持し、該かみそり刃組立体の長手方向に延びて前記軸受手段を通る第1軸線の周りで該かみそり刃組立体を回動自在に支持する支持体であって、前記かみそり刃組立体を前記軸受手段に対する回動方向に付勢する第1付勢手段を備えた支持体と、
前記支持体を前記第1軸線と平行な第2軸線の周りで回動自在に支持するホルダと、
前記支持体を前記第2軸線の周りで回動付勢する第2付勢手段を備えることを特徴とするT型安全かみそり。
【請求項2】
前記かみそり刃組立体は少なくとも一つの刃体を備え、
前記ホルダを下方に、前記かみそり刃組立体を上にし、かつ前記かみそり刃組立体の前記刃体の刃先を下に向けたとき、前記第1軸線が該かみそり刃組立体が有する前記刃体と重なる位置、或いは、下方に位置し、
前記支持体の前記ホルダに対する回動自在に支持する回動支点が、前記かみそり刃組立体を上にホルダを下にしたとき、前記刃体よりも下方に位置することを特徴とする請求項1に記載のT型安全かみそり。
【請求項3】
第1付勢手段の付勢力が第2付勢手段の付勢力よりも弱いことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のT型安全かみそり。
【請求項4】
第2付勢手段の付勢力が第1付勢手段の付勢力よりも弱いことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のT型安全かみそり。
【請求項5】
第1付勢手段の付勢力と第2付勢手段の付勢力と同じにしたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のT型安全かみそり。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−5041(P2011−5041A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152528(P2009−152528)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000112473)フェザー安全剃刀株式会社 (17)