説明

T1免疫応答とT2免疫応答との間で調節するためのワクチン

【課題】in vivoで体液性及び細胞性免疫応答を調節することができる免疫原性リポペプチドを含有するリポソームワクチンを提供する。
【解決手段】少なくとも1種のモノリポペプチドと少なくとも1種のジリポペプチドとを含む、少なくとも一つのリポソームを含むリポソーム組成物。好適には前記モノリポペプチドと前記ジリポペプチドとが、MUC Iペプチド、結核ペプチド、マラリアペプチド、及びB型肝炎ペプチドからなる群より選択される。前記モノリポペプチドと前記ジリポペプチドとが異なるアミノ酸配列を有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2001年3月27日提出の「T1免疫応答とT2免疫応答との間で調節す
るためのワクチン」と題する、米国仮出願第60/278,698号(引用することによ
り本明細書の一部をなすものとする)への優先権を主張する。
【0002】
[発明の分野]
本発明は、in vivo免疫応答、特に体液性免疫応答及び細胞性免疫応答を調節す
ることができるリポソームワクチンを提供する。
【背景技術】
【0003】
[発明の背景]
疾患と効果的に戦うためには、ワクチンは、抗体産生(体液性免疫)及び免疫細胞動員
(細胞性免疫)等の幾つかの免疫反応を理想的に刺激しなければならない。
【0004】
細胞性免疫応答は、細胞障害性(CTL)T細胞及び遅延型過敏症(DTH)T細胞等
の、Tリンパ球の増殖及び刺激を引き起こし、これが次にはマクロファージを活性化し、
病原体の増殖を妨げる。体液性応答の誘導により、体内のB細胞は、加害病原体に対する
抗体を産生する。しかし、一部の細胞内病原体及びレトロウイルスは生き残り、また、体
液性免疫応答に極めて抵抗力があり、このような生物学的侵入者を破壊するためには、細
胞障害性T細胞の刺激が必要である。
【0005】
合成ペプチドは、しばしば抗原性エピトープとして使用され、標準的なペプチド合成技
術を使用して、最小限の副作用しか誘導しないように、個別につくることができる。しか
し、このようなペプチドは、一般に、比較的弱い免疫原性応答を生じさせる。
【0006】
しかし、免疫原性は、この合成ペプチドに脂質を付着させることによって増強すること
ができる。たとえば、合成ペプチド抗原に脂質を加えることにより、免疫化したマウス、
チンパンジー、又はヒトで、強力なT細胞増殖、CTL、及び抗体応答が誘導されること
が明らかにされている(BenMohamedら、Vaccin,18,2843−28
55(2000年);Gahery−Segardら、J.Virology.,74,
1694−1703(2000年);Sethら、AIDS Res.Hum.Retr
oviruses,16,337−343(2000年);Tsunodaら、Vacc
ine,17,675−685(1999年);BenMohamedら、Eur.J.
Immunol.,27,1242−1253(1997年);Vitielloら、J
.Clin.Invest.,95,341−349(1995年))。
【0007】
このような抗原の調製品は、ワクチン「担体」を使用してin vivo送達すること
が可能であるが、この担体自体が宿主の体液性免疫応答の標的になる可能性がある。従っ
て、宿主の抗体がワクチン担体に対して作用し、抗原性エピトープに作用せず、この結果
、抗担体抗体によるワクチンの急速なクリアランスを招き、実際のワクチンの有用性を打
ち消す。
【0008】
一方、リポペプチドの脂質部分をリポソームに組み入れることは、担体に対する免疫応
答を引き起こさずに、in vivoで抗原を送達する極めて有用な方法である。しかし
、こうした改善はどれも、一方の、他方に対する免疫応答の調節の役に立たない。すなわ
ち、ペプチド1個に付着させる脂質の数を変えることによって、リポペプチドが、細胞性
免疫応答及び体液性免疫応答を生じさせることは、これまで、明らかにされていない。
【発明の開示】
【0009】
しかし、本発明は、一つの抗原性ペプチド、及び担体それ自体に対する体液性応答を刺
激しない担体を使用することによって、細胞性免疫応答及び体液性免疫応答を生じさせ、
両者の間で調節する、新規な方法を提供する。
【0010】
[発明の概要]
本発明は、免疫原性リポペプチドを含有するリポソームの製剤に関する。本発明はさら
に、個体において免疫応答を引き起こしかつ調節することができる製剤の形態での、この
ようなリポソームの投与に関する。
【0011】
一実施形態において、本発明は、免疫原性ペプチドの脂質誘導体を包含する、自己組織
化脂質を含む免疫原性リポソームを製造する方法を提供する。本発明のリポソーム製剤は
、モノリポペプチド類、ジリポペプチド類又は各々の混合物のいずれかを含み、かつこれ
(ら)送達して、細胞性、体液性、又は細胞性及び体液性の免疫応答を惹起し、さらに、
それによって、それらの免疫応答をそれぞれ、調節することができる。このペプチドは、
エピトープ、又は本質的に抗原性である類似した特長を呈する免疫原性のアミノ酸配列で
ある。
【0012】
本発明の別の実施形態は、免疫応答を刺激し、かつ調節することができる組成物を提供
する。このような組成物は、リポソーム小胞の脂質二重層が少なくとも1種の免疫原性モ
ノリポペプチド及び少なくとも1種のジリポペプチドを含み、モノリポペプチドの比率は
、約0%以上から約100%未満まで変化し、ジリポペプチドの比率は、約0%以上であ
って約100%未満まで変化する、リポソーム小胞を含む。
【0013】
本発明のまた別の実施形態は、モノリポペプチドとジリポペプチドとが同じリポソーム
小胞又は異なるリポソーム小胞と関連している、少なくとも1種のモノリポペプチドと少
なくとも1種のジリポペプチドとの有効量を患者に投与するステップを含む、細胞性免疫
応答を刺激する方法を提供する。一実施形態では、投与されるモノリポペプチドの比率は
約50%以上であって、モノリポペプチドの比率は、約70%以上であって又は約90%
以上であってもよい。
【0014】
本発明のまた別の態様は、モノリポペプチドとジリポペプチドとが同じリポソーム小胞
又は異なるリポソーム小胞と関連している、少なくとも1種のモノリポペプチドと少なく
とも1種のジリポペプチドとの有効量を患者に投与するステップを含む、体液性免疫応答
を刺激する方法を提供する。一実施形態では、投与されるモノリポペプチドの比率は約5
0%より多く、モノリポペプチドの比率は、約70%以上又は約90%以上であってもよ
い。
【0015】
本発明は、モノリポペプチド又はジリポペプチドのペプチド部分が、結核、B型肝炎、
マラリア、及び癌からなる群より選択される疾患関連のタンパク質に由来する組成物も含
む。好ましい実施形態において、このペプチドは、タンパク質の免疫原性領域の少なくと
も5個の連続したアミノ酸を含む。より好ましい実施形態では、モノリポペプチド又はジ
リポペプチドは、MUC Iタンパク質配列からデザインされる。さらに好ましい実施形
態では、MUC Iリポペプチドは、配列GVTSAPDTRPAPGSTAを含む。別
の好ましい実施形態では、モノリポペプチド又はジリポペプチドは、配列DQVHFQP
LPPAVVKLSDALIKを含む、結核リポペプチドからデザインされる。別の好ま
しい実施形態では、本発明の抗原性MUC Iペプチドは、配列SGVTSAPDTRP
APGSTAPPAHGVTSAPDTRPAPGSTAPPAHGVSSL(配列番号
1)の任意の部分から選択することができる。
【0016】
別の実施形態では、モノリポペプチド又はジリポペプチドは、結核ペプチドからデザイ
ンされる。より好ましい実施形態では、この結核ペプチドは、配列、DQVHFQPLP
PAVVKLSDALIK(配列番号2)を有する。
【0017】
また別の実施形態では、本発明は、脂質付加された抗原性B型肝炎ペプチドを使用する
。好ましい実施形態では、このB型肝炎ペプチドは、配列、IRTPPAYRPPNAP
ILK(配列番号3)を有する。別の好ましい実施形態では、マラリアペプチドは、脂質
を含むように修飾されていてもよい。好ましい一実施形態では、このマラリアペプチドは
、配列、VTHESYQELVKKLEALEDAVK(配列番号4)を有する。
【0018】
従って、本発明の一態様は、少なくとも1種のモノリポペプチドと少なくとも1種のジ
リポペプチドとを含む少なくとも1種のリポソームを含むリポソーム組成物を提供する。
【0019】
好ましい実施形態では、モノリポペプチドとジリポペプチドとは、MUC Iペプチド
、結核ペプチド、マラリアペプチド、及びB型肝炎ペプチドからなる群より選択される。
より好ましい実施形態では、モノリポペプチドとジリポペプチドペプチドとは、配列番号
1〜4より選択される任意の配列の全部又は一部であってもよい。別の好ましい実施形態
では、モノリポペプチドとジリポペプチドとは、異なるアミノ酸配列を有する。
【0020】
また別の好ましい実施形態では、リポソーム中のモノリポペプチドの比率は、リポソー
ムに組み入れられているリポペプチドの総量を基準にして、0%以上から約100%未満
まで変化し、ジリポペプチドの比率は、0%以上から約100%未満まで変化する。
【0021】
一実施形態では、リポソームに組み入れられているモノリポペプチドの比率とジリポペ
プチドの比率とは、それぞれ約50%である。
【0022】
別の実施形態では、モノリポペプチドの比率は、約50〜約99%である。
【0023】
もう一つの実施形態では、リポソームに組み入れられているジリポペプチドの比率は、
約50〜約99%である。
【0024】
別の好ましい実施形態では、モノリポペプチドとジリポペプチドとは、異なる抗原性エ
ピトープである。
【0025】
本発明は、第1のリポソーム組成物と第2のリポソーム組成物とを含み、第1のリポソ
ーム組成物がモノリポペプチドを含み、かつ第2のリポソーム組成物がジリポペプチドを
含むリポソーム製剤も提供する。
【0026】
一実施形態では、本発明のリポソーム製剤は、MUC Iペプチド、結核ペプチド、マ
ラリアペプチド、及びB型肝炎ペプチドからなる群より選択される少なくとも1種のモノ
リポペプチドと少なくとも1種のジリポペプチドとを含む。より好ましい実施形態では、
モノリポペプチドとジリポペプチドペプチドとは、配列番号1〜4のいずれか一つより選
択される任意の配列の全部又は一部である。別の実施形態では、リポソーム製剤中のモノ
リポペプチドとジリポペプチドとは、異なるアミノ酸配列を有する。別の実施形態では、
モノリポペプチドとジリポペプチドとは、同一のアミノ酸配列を有する。
【0027】
本発明は、少なくとも1種のモノリポペプチドと少なくとも1種のジリポペプチドとの
有効量を患者に投与するステップを含む、免疫応答を調節する方法も提供する。また別の
態様では、前述の個体に少なくとも1種のモノリポペプチドと少なくとも1種のジリポペ
プチドとの有効量を投与するステップを含む、免疫原性ペプチに対する個体の免疫応答を
調節するために個体を治療する方法も提供する。モノリポペプチドとジリポペプチドとは
、MUC Iペプチド、結核ペプチド、マラリアペプチド、及びB型肝炎ペプチドからな
る群より選択される。より好ましい実施形態では、モノリポペプチドとジリポペプチドペ
プチドとは、配列番号1〜4より選択される、任意の配列の全部又は一部である。
【0028】
好ましい実施形態では、モノリポペプチドとジリポペプチドとがリポソームに組み入れ
られており、リポソームに組み入れられているリポペプチドの総量を基準にして、モノリ
ポペプチドの比率は0%以上から約100%未満まで変化し、ジリポペプチドの比率は0
%以上から約100%未満まで変化する。別の実施形態では、リポソームに組み入れられ
ているモノリポペプチドの比率とジリポペプチドの比率とは、それぞれ約50%である。
また別の実施形態では、モノリポペプチドの比率は、約50〜約99%である。さらにも
う一つの実施形態では、ジリポペプチドの比率は、約50〜約99%である。
【0029】
好ましい実施形態では、免疫応答を調節する方法は、結果として体液性応答を刺激する
。別の実施形態では、調節は、結果として細胞性応答を刺激する。また別の好ましい実施
形態では、調節の結果として、体液性応答又は細胞性応答の少なくとも一方の強度が増す

【0030】
免疫応答を調節する方法は、モノリポペプチドとジリポペプチドとともにアジュバント
を同時投与するステップをさらに含んでもよい。好ましい実施形態では、このアジュバン
トはリピドAである。
【0031】
本発明は、リポソーム的に結合したモノリポペプチドを含む製剤を先ず投与するステッ
プと、その後、リポソーム的に結合したジリポペプチドを含む製剤を次に投与するステッ
プとを含む、細胞性免疫応答と体液性免疫応答との間で調節する方法も提供する。あるい
は、別の実施形態は、リポソーム的に結合したジリポペプチドを含む製剤を先ず投与する
ステップと、その後、リポソーム的に結合したモノリポペプチドを含む製剤を次に投与す
るステップとを含む。
【0032】
一実施形態では、モノリポペプチドとジリポペプチドとは、MUC Iペプチド、結核
ペプチド、マラリアペプチド、及びB型肝炎ペプチドからなる群より選択される。別の実
施形態では、このモノリポペプチドとジリポペプチドペプチドとは、配列番号1〜4より
選択される、任意の配列の全部又は一部である。
【0033】
本発明の別の態様は、実質的にジリポペプチドからなる少なくとも一つのリポソームを
個体に投与するステップを含む、免疫応答を調節する方法を含む。本発明のまた別の態様
は、ジリポペプチドからなる少なくとも一つのリポソームを個体に投与するステップを含
む、免疫応答を調節する方法を含む。本発明のさらに他の一態様は、ジリポペプチドを含
む少なくとも一つのリポソームを個体に投与するステップを含む、免疫応答を調節する方
法を含む。好ましい実施形態では、この免疫応答を調節する方法は、アジュバントを同時
投与するステップをさらに含む。より好ましい実施形態では、このアジュバントはリピド
Aである。
【0034】
好ましい実施形態では、ジリポペプチドは、MUC Iペプチド、結核ペプチド、マラ
リアペプチド、及びB型肝炎ペプチドからなる群より選択される。別の実施形態では、ジ
リポペプチドペプチドは、配列番号1〜4より選択される任意の配列の全部又は一部であ
る。
【0035】
本発明は、脂質付加された(lipidated)抗原性ペプチドも提供する。一実施形態にお
いて、本発明は、MUC Iペプチドのアミノ酸に付着した一つの脂質を含む、MUC
Iペプチド組成物を提供する。好ましい実施形態では、このMUC Iペプチドは、配列
番号1の配列の全部又は一部を含む。また別の好ましい実施形態では、このMUC Iペ
プチドは、配列SGVTSAPDTRPAPGSTA又はSTAPPAHGVTSAPD
TRPAPGSTAPPを含む。
【0036】
別の実施形態では、本MUC Iペプチド組成物は、やはりMUC Iペプチドのアミ
ノ酸に付着した第2の脂質をさらに含む。一実施形態では、各脂質は、異なるアミノ酸に
付着している。別の実施形態では、脂質は、MUC IペプチドのN末端又はC末端のい
ずれかに配置されている。
【0037】
本発明は、結核ペプチドのアミノ酸に付着した一つの脂質を含む結核ペプチド組成物も
提供する。好ましい実施形態では、この結核ペプチドは、配列DQVHFQPLPPAV
VKLSDALIKを含む。別の実施形態では、この結核ペプチド組成物は、結核ペプチ
ドの少なくとも一つのアミノ酸に付着した脂質二つを含む。別の実施形態では、各脂質は
、異なるアミノ酸に付着している。別の実施形態では、この脂質は、結核ペプチドのN末
端又はC末端のいずれかに配置されている。
【0038】
本発明は、B型肝炎ペプチドのアミノ酸に付着した一つの脂質を含むB型肝炎ペプチド
組成物も提供する。好ましい実施形態では、このB型肝炎ペプチドは、配列IRTPPA
YRPPNAPILKを含む。別の実施形態では、このB型肝炎ペプチド組成物は、B型
肝炎ペプチドの少なくとも一つのアミノ酸に付着した脂質二つを含む。別の実施形態では
、各脂質は、異なるアミノ酸に付着している。別の実施形態では、この脂質は、B型肝炎
ペプチドのN末端又はC末端のいずれかに配置されている。
【0039】
本発明は、マラリアペプチドのアミノ酸に付着した一つの脂質を含むマラリアペプチド
組成物も提供する。好ましい実施形態では、このマラリアペプチドは、配列VTHESY
QELVKKLEALEDAVKを含む。別の実施形態では、このマラリアペプチド組成
物は、マラリアペプチドの少なくとも一つのアミノ酸に付着した脂質二つを含む。別の実
施形態では、各脂質は、異なるアミノ酸に付着している。別の実施形態では、この脂質は
、マラリアペプチドのN末端又はC末端のいずれかに配置されている。
【0040】
本発明は、二以上の脂質を含む、配列番号1〜4からなる群から選択されるペプチドも
提供する。
【0041】
好ましい実施形態では、脂質は、ミリスチル、パルミトイル及びラウリルからなる群よ
り選択される。
【0042】
本発明の別の態様は、抗原性ペプチドのモノリポペプチド又はジリポペプチドの一方又
はそれらの両方が中に組み入れられている少なくとも一つのリポソームを含む組成物の、
前述のペプチドに対する免疫応答を調節するためのワクチンとしての使用であって、モノ
リポペプチドとジリポペプチドの相対的な量が、T細胞増殖及び抗体産生の相対的強度を
調節することを特徴とする。
【0043】
前述の概説及び以下の図面の簡単な説明は、代表的かつ例示的なものであり、また請求
の範囲のとおりに、本発明のさらなる説明を提供する。他の目的、利点及び新規な特徴は
、以下の本発明の詳細な説明から、当業者に容易に明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】リポソーム中のMUC1ジリポペプチド又はモノリポペプチドで2回免疫化したC57B1/6マウスにおけるT細胞増殖及びIFN−γのレベルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
[好ましい実施形態の詳細な説明]
本発明の予期せぬ驚くべき発見は、一つの脂質鎖を含むリポソーム的に結合したペプチ
ドと少なくとも二つの脂質鎖を含むリポソーム的に結合したペプチドとを、連続的に、又
は組合せて、投与することにより、in vivo免疫応答の誘導を調節できることであ
る。
【0046】
用語「調節する(modulate)」は、ある正しい均衡への多少の変化、調整、又は適応を
意味する。従って、免疫応答は、免疫学的活性の変化を起こす因子を刺激することによっ
て調節することが可能である。免疫応答の強度も、調節することが可能である。たとえば
、調節を遂行する因子の投与後、T細胞増殖の強度又はレベルを高く又は低くすることが
できる。本発明では、それらの因子はリポソーム的に結合したリポペプチドであってもよ
い。
【0047】
意外なことに、一つの脂質鎖を有するペプチドは、リポソーム製剤に組み入れられたと
き、大きい細胞性免疫応答(すなわち、「T1」免疫応答)を生じさせることができるが
、体液性応答は最小限にすぎないか又は全く生じさせないことが発見された。しかし、二
つの脂質がその表面に付着しており、同一のペプチドがリポソームに組み入れられたとき
、大きい体液性応答(すなわち、「T2」応答)を誘導し、最小限の細胞性応答又は甚大
な細胞性応答のいずれかを伴うように作ることができる。リポペプチドで認められる細胞
性応答の範囲は、そのリポペプチドの個性によって異なる。T1、2、又は2より多い脂
質が抗原性ペプチド上に存在することも、免疫応答が活性化される強度を上昇又は低減す
る。刺激される免疫応答の強度及び免疫応答のタイプも、抗原性ペプチド上の、二つの脂
質間のアミノ酸残基の数を変えることによって調節することができる。
【0048】
本発明は、リポソーム二重層に結合したペプチドに、一以上の脂質鎖を付着させること
により、最小限から甚大までの範囲の可変細胞活性とともに、主として体液性免疫応答が
、刺激されることを示す。本発明は、第2の脂質を抗原性ペプチドに付着させることによ
り、モノ脂質誘導体と比して、T細胞増殖ならびに抗体産生誘導のレベルが上昇すること
も示す。用語「誘導体」は、親物質の必須要素を含む別のものから誘導される又は得られ
る化合物を意味する。従って、抗原の脂質誘導体は、少なくとも一つの脂質が付着してい
るペプチドを指す。従って、ジリポペプチドのみを含むリポソーム製剤の有効量を投与し
て、抗体産生及び細胞性活性を生じさせることが可能である。リポソーム的に結合したリ
ポペプチド製剤の「有効量」は、免疫応答を調節するそのリポペプチドの、実験的に導き
出された量を指す。
【0049】
一部の抗原では、ジリポペプチドリポソーム製剤が、大きな体液性応答に加えて、大き
な細胞性応答を誘発することも発見された。
【0050】
具体的には、MUC−1ペプチド、結核ペプチド、及びB型肝炎ペプチドでは、モノリ
ポペプチドを有するリポソーム製剤は、主として細胞性応答及び最小限の体液性応答を誘
導し、ジリポペプチドを有するリポソーム製剤は、主として体液性応答及び最小限の細胞
性応答を誘導したことを、実施例が示している。ジリポペプチド及びモノリポペプチドの
組合せを投与することにより、結果として優れた細胞性応答及び体液性応答を生じた。
【0051】
本発明の別の利点は、異なるリポペプチドをリポソームに組み入れることができ、それ
によって、同時にかつ同一条件で、免疫系に輸送し、提供できることである。従って、個
体をT1誘導性モノリポペプチド及びT2誘導性ジリポペプチドを含むリポソームで治療
することにより、その個体で、多数の免疫応答を誘導することが可能である。あるいは、
多数の免疫応答を同時に誘導するために、リポソーム的に結合したモノリポペプチド及び
リポソーム的に結合したジリポペプチドの混合物を使用することもできる。
【0052】
従って、本発明は、抗原性ペプチドに付着している脂質の数を変えることによって新規
な組成物及び免疫応答を調節する方法を提供する。免疫応答は、免疫応答の強度と同様に
、二つ以上の脂質を抗原性ペプチドに加えることにより調節することができる。さらに、
免疫応答の強度は、脂質間のアミノ酸の間隔を変えることにより、調節することができる

【0053】
予備刺激した抗原提示細胞又はT細胞を患者に注射することにより、免疫応答を生じさ
せることもできる。「養子免疫療法」として知られるこの技法は、いったん体内に再導入
されると、原因物質と戦うために準備刺激される抗原特異的細胞の拡大した個体群をin
vitroで作る。本質的に、細胞を患者から除去し、in vitro刺激し、及び
再感染させて患者の血流に戻す。具体的には、抗原提示細胞等の末梢血液リンパ球を単離
し、次いで、in vitroでこの細胞を抗原に暴露することによって、「負荷される
(charged)」。この抗原は抗原提示細胞によりエンドサイトーシスを受け、その結果、
主要組織適合複合体と結合し、次に細胞の外面に提示される。次いで、この予備刺激され
た細胞個体群を、患者に再感染させることができる。負荷前に、末梢血リンパ球を、樹状
細胞及び/又はマクロファージに分けることもできる。
【0054】
従って、膜結合した、抗原性リポペプチドを含む本発明のリポソーム製剤を、単離され
た抗原提示細胞にn vitroで加えて、それらを「負荷」する。たとえば、モノリポ
−MUC Iペプチド、ジリポ−MUC Iペプチド、又は両ペプチドの組合せを含むリ
ポソーム製剤を使用して、末梢血液リンパ球を負荷し、次いでこれを細胞ワクチンとして
患者に再感染させることができる。
【0055】
あるいは、「養子T細胞輸送療法」を実施してもよい。これは、患者のT細胞を、予備
的に負荷した抗原提示細胞とともに、in vitroでインキュベートすることを伴う
。このT細胞は活性化され、たとえば、腺癌に罹患している患者に再投与される。当該技
術分野で広く認められた、養子T細胞輸送療法のための技法の説明に関しては、Bart
elsら、Annals of Surgical Oncology,3(1):67
(1996)(引用することにより本明細書の一部をなすものとする)を参照されたい。
このように、本発明に従って、脂質付加された抗原性ペプチドは、選択され、リポソーム
に組み入れられており、末梢血リンパ球を刺激するために使用され、この末梢血リンパ球
は患者に注射で戻してもよく、又はそれ自体を使用して、単離T細胞を活性化することも
できる。T細胞活性化方法も、癌、腫瘍、ウイルス感染症、及び細菌感染症等の、様々な
病状に関与する抗原に対する細胞障害性及びヘルパーT細胞応答を生じさせるのに有用で
ある。
【0056】
[リポソーム]
リポソームは、水性コンパートメントを取り囲む一つ以上の脂質二重層からなる微小な
小胞である。たとえば、Bakker−Woudenbergら、Eur.J.Clin
.Microbiol.Infect.Dis.12(補遺1):S61(1993年)
及びKim,Drugs,46:618(1993年)を参照されたい。リポソームは、
天然の細胞膜にも存在する嵩高い脂質分子を用いて製剤化ができるため、一般に、安全に
投与することができ、また生分解性である。
【0057】
調製方法によって、リポソームはユニラメラであってもマルチラメラであってもよく、
また様々のサイズであってもよく、その直径は約0.02μm〜約10μmの範囲である
。様々な薬剤をリポソームに封入することができる。疎水性薬剤は二重層中に分配され、
親水性薬剤は内部の水性空間に分配される。たとえば、Machyら、Liposome
s in Cell Biology and Pharamacology(John
Libbey,1987年)、及びOstroら、American J.Hosp.
Pharm.46:1576(1989年)を参照されたい。
【0058】
リポソームは、実質的にあらゆるタイプの細胞に吸着し、次いで組み入れられた薬剤を
放出することができる。あるいは、リポソームは標的細胞と融合し、それによってリポソ
ームの内容物が標的細胞に流れ込むことができる。あるいは、リポソームは、食作用を有
する細胞によりエンドサイトーシスを受けることができる。エンドサイトーシスに続いて
リポソーム脂質のリソソーム内分解及び封入された薬剤の放出が起こる。Scherph
ofら、Ann.N.Y.Acad.Sci.,446:368(1985年)。
【0059】
本発明の方法で使用される他の適当なリポソームとしては、マルチラメラ小胞(MLV
)、オリゴラメラ(oligolamellar)小胞(OLV)、ユニラメラ小胞(U
V)、小型ユニラメラ小胞(SUV)、中型ユニラメラ小胞(MUV)、大型ユニラメラ
小胞(LUV)、巨大ユニラメラ小胞(GUV)、多小胞(multivesicula
r vesicle)(MVV)、逆相蒸発法(REV)で作られたユニラメラ又はオリ
ゴラメラ(oligolamellar)小胞、逆相蒸発法(REV)で作られたマルチ
ラメラ小胞(MLV−REV)、安定なプルリラメラ小胞(plurilamellar
vesicle)(SPLV)、凍結乾燥及び解凍したMLV(FATMLV)、押出
成形法で作製された小胞(VET)、フレンチプレスにより作製された小胞(FPV)、
融合により作製された小胞(FUV)、脱水−再水和小胞(DRV)、及びバブルソーム
(bubble some)(BSV)などがある。当業者は、これらのリポソームを作
製する技法は当該技術分野で周知であることを理解するであろう。Colloidal
Drug Delivery Systems,66巻(J.Kreuter編、Mar
cel Dekker,Inc.,1994年)
【0060】
[脂質]
「脂質」は、酸素基、窒素基、又はイオウ基を有するアミノ酸に付着することができる
ミリスチル分子、パルミトイル分子、又はラウリル分子であってもよい。このようなアミ
ノ酸としては、スレオニン、セリン、リジン、アルギニン、及びシステインアミノ酸等が
あるが、この限りではない。「モノリポペプチド」は、脂質鎖が1個だけ付着しているペ
プチドである。同様に、「ジリポペプチド」は、1個又は2個のアミノ酸に2個の脂質鎖
が付着したペプチドである。2個の脂質鎖が2個のアミノ酸残基に付着している場合、こ
れらの残基は、任意のアミノ酸数だけ間隔をあけて配置されていてもよい。
【0061】
「リポソームの製剤」は、モノリポペプチド及び/又はジリポペプチドを組み入れるこ
とができるin vitroで作られる脂質小胞を示す。従って、「リポソーム的に結合
した」は、部分的にリポソームに組み入れられた、またはリポソームに付着しているペプ
チドを指す。リポソーム製剤は、「リポソームワクチン」を指すこともある。リポソーム
製剤は、二つのタイプのリポソームを含んでもよく、第1のものは、全部ではないが主と
して、その構造に組み入れられたモノリポペプチドを含み、第2のものは、全部ではない
が主として、その構造の中にジリポペプチドを含む。モノリポペプチドとジリポペプチド
が同一リポソーム上に存在しなくても、「モノリポソーム」及び「ジリポソーム」の個別
の調製物を一緒に投与して、免疫応答調節することができる。
【0062】
リポソームに組み入れる場合、モノリポペプチドとジリポペプチドとは、同一の抗原性
エピトープであるペプチドであってもよい。あるいは、各リポペプチドに関するペプチド
配列は、異なるエピトープを含んでもよい。このリポペプチドは、同一のタンパク質又は
異なるタンパク質と関連した抗原であってもよい。
【0063】
ペプチド分子の脂質が脂質二重層に自然に組み込まれるため、リポペプチドをリポソー
ムに組み入れることができる。従って、リポペプチドを、リポソームの「表面」に提示す
ることが可能である。あるいは、ペプチドをリポソーム内に封入してもよい。リポソーム
を作製し、ペプチド等の分子とともにそれらを製剤化する技法は、当業者に周知である。
【0064】
[代表的なアジュバント]
本発明のリポソームワクチンは、アジュバントを用いて有利に製剤化することも可能で
ある。当該技術分野で従来知られている通り、アジュバントは、抗原に対する特異的応答
を増強するための、特異的抗原刺激と関連して作用する物質である。モノホスホリルリピ
ドA(MPLA)は、たとえば、特異的Tリンパ球へのリポソーム抗原の提示増強を引き
起こす有効なアジュバントである。Alving,C.R.,Immunobiol.,
187:430−446(1993年)。当業者は、リピドA及びその誘導体等の脂質を
主成分とするアジュバントも適することを理解するであろう。ムラミールジペプチド(M
DP)は、リポソームに組み込まれたとき、アジュバント性を増強することも明らかにさ
れている(Gupta RKら、「毒性及びアジュバント性との間のAdjuvants
−Aバランス」、Vaccine,11,293−306(1993年))。
【0065】
別のクラスのアジュバントは、IL−2等の刺激性サイトカイン類を含む。従って、本
発明のリポソームワクチンは、IL−2とともに製剤化してもよく、又は、最適な抗原性
応答を得るために、IL−2を別々に投与してもよい。IL−2は、リポソームを使用し
て、製剤化することが可能である。
【0066】
[代表的なワクチン製剤]
ワクチンは、薬学的に許容し得る賦形剤とともに製剤化することが可能である。このよ
うな賦形剤は、当該技術分野で周知であるが、一般的に生理学的に耐容でき、かつ本発明
の組成物のワクチン特性に関して不活性であるか又は増強性でなければならない。例とし
ては、滅菌水、生理学食塩水等の液体媒体等が挙げられる。賦形剤は、リポソームワクチ
ンを製剤化する任意の段階で加えてもよく、また完成したワクチン組成物と混合してもよ
い。
【0067】
ワクチンは、複数の投与経路に合わせて製剤化することが可能である。特に好ましい経
路としては、一度に又は複数の単位投薬量で投与される、筋内注射、皮下注射、皮内注射
、エアロゾル、又は経口投与、又はこれらの経路の組合せによる等がある。ワクチンの投
与は周知であり、最終的には個々の製剤及び担当医の判断に左右される。ワクチン製剤は
、懸濁液として維持してもよく、凍結乾燥し、後で水和して使用可能なワクチンを作って
もよい。
【0068】
より大きい特異性を提供するためには、従ってin vivo投与中の毒性又は他の好
ましくない作用のリスクを低減するためには、本発明の組成物がそれを介して作用するよ
うにデザインされる細胞、すなわち、抗原提示細胞を、本発明の組成物の標的にすること
が有利である。これは、免疫原性ペプチドを含有するリポソームを、体内のある特定の位
置に誘導する、従来のターゲティング技術を使用して、便利に達成することが可能である
。抗原提示細胞をターゲットするためには、例えば、マンノース及び抗体のFc部分を、
抗原性ペプチドに化学的に結合させるか、又はターゲティングペプチドを、免疫原性リポ
ペプチドに組み換え的に融合させる。他の、類似した戦術は、専門家によく知られている

【0069】
[リポペプチド及びリポソーム製剤の代表的な量]
免疫応答を異なる強度に調節するように、リポソーム内の抗原性モノリポペプチドとジ
リポペプチドの比率を変えることができる。たとえば、リポソーム内に組み入れられてい
るジリポペプチドの量を、モノリポペプチドの量に比して増加させることにより、結果と
して得られる製剤を、より体液誘導性にすることができる。もちろん、異なる抗原に対す
る応答の大きさが異なるため、体液性応答と細胞性応答との所望のバランスを達成するた
めには、異なる比率を必要とする可能性がある。
【0070】
たとえば、当業者は、モノリポペプチドの比率がリポソームの約0%以上から約100
%未満まで変化する、共有結合した免疫原性モノリポペプチドとジリポペプチドの比で構
成されているリポソームを作ることができる。同様に、ジリポペプチドは、0以上から約
100%未満までの比率で、リポソーム膜中に存在してもよい。たとえば、モノリポペプ
チド75%とジリポペプチド25%とを含むリポソームは、主としてT1免疫応答と多少
のT2活性をもたらす。本発明は、モノリポペプチド約1〜約30%、モノリポペプチド
約30〜約50%、又はモノリポペプチド約50〜約99%を含むリポソームを作る方法
を提供する。同様に、ジリポペプチド約1〜約30%、ジリポペプチド約30〜約50%
、又はジリポペプチド約50〜約99%を含むリポソームを作ることもできる。従って、
本発明は、たとえば、約10%:約90%、約30%:約70%、約50%:約50%、
約70%:約30%、約90%:約10%及び約99%:約1%等の比率でモノリポペプ
チド:ジリポペプチドを含有するリポソームの作製を可能にする。相対的な免疫原性の決
定は、免疫学において普通の技術を有する者の範囲内である。
【0071】
モノリポペプチドとジリポペプチドとは、同一リポソーム小胞又は異なるリポソーム小
胞のいずれかと関連している。少なくとも1種のモノリポペプチドと少なくとも1種のジ
リポペプチドとを含有するリポソーム製剤の有効量を、患者に投与することができる。従
って、ある比率のモノリポペプチドとジリポペプチドとを含む単一のリポソーム製剤を患
者に投与して、所望の免疫応答を生じさせることができる。又は代わりに、異なる比率の
モノリポペプチドとジリポペプチドとを含む、少なくとも二つのリポソーム製剤の組合せ
を患者に投与して、類似の又は異なる免疫応答を生じさせることができる。
【0072】
本発明との関係で、その様々な文法的な形で「治療する」は、疾患状態、疾患進行、疾
患原因物質、又は他の異常な状態の悪影響を予防すること、治癒すること、無効にするこ
と、軽減すること、緩和すること、最小限にすること、抑制すること、又は停止させるこ
とを指す。
【0073】
[本発明で有用な代表的な免疫原性ペプチド]
in vivoで免疫応答を誘導又は調節する目的で、任意のペプチド抗原又はエピト
ープに脂質付加して、リポソーム内に組み入れることが可能である。1、2、又は2より
多い脂質を、ペプチドの任意の部分に加えることができる。当業者は、抗原性ペプチドが
、個体を冒している疾患のタイプに基づいて選択されることを理解するであろう。たとえ
ば、「MUC−1」抗原は、腺癌の処置に使用することができる抗原特異的T細胞を作る
の有用である。同様に、結核ペプチド、B型肝炎ペプチド、又はマラリアペプチドは全て
、本発明に従って脂質付加することができ、またそのペプチド類が関連した特異的疾患を
治療するために、必要に応じて、細胞性免疫及び体液性免疫を生じさせるのに使用するこ
とができる。本発明は、MUC−1、結核ペプチド、B型肝炎ペプチド、又はマラリアペ
プチドのリポソーム的に結合したリポペプチドワクチンとしての使用に限定されない。
【0074】
様々な免疫原性ペプチドに脂質付加して、リポソーム膜内に組み入れ、多数の異なる免
疫原性特異的ワクチンを作成することができる。たとえば、ムチン由来ペプチドに脂質付
加したときの免疫原性効果を、本明細書に記載する。MUC Iムチンは、健常者の全て
の上皮細胞で発現される高分子糖タンパク質である。MUC Iのコアペプチド配列は、
タンパク質の全体にわたってどこかで60〜120回反復される20アミノ酸残基を含む
。反復される配列、GVTSAPDTRPAPGSTAPPAHは、グリコシル化が可能
な5部位(ボールド体で表すS(セリン)及びボールド体で表すT(スレオニン))及び
免疫原性「DTR」エピトープ(下線部)を有する。
【0075】
一般に、炭水化物は、セリン残基又はスレオニン残基の一つ以上にOで結合された構造
として連結され、5部位全てがグリコシル化されるとき、エピトープは隠蔽される。しか
し、癌細胞では、結果として生じる炭水化物が切断型であるように、このグリコシル化工
程が早くに終結される。結果として、DTRエピトープが露出し、ペプチドのコア配列及
び炭水化物は免疫原性になる。従って、このペプチド配列は、免疫応答を誘導して調節す
るために、本発明と関連して使用することが可能なエピトープの一例である。たとえば、
本発明の抗原性MUC Iペプチドは、配列SGVTSAPDTRPAPGSTAPPA
HGVTSAPDTRPAPGSTAPPAHGVSSL(配列番号1)の任意の部分か
ら選択することができ、また1、2、又は2以上の脂質を含むように、脂質付加すること
ができる。
【0076】
免疫原性ペプチドのサイズも変化を受ける。サイズが16(1882ダルトン)〜40
(5050ダルトン)アミノ酸の範囲の脂質付加されたMUC−Iペプチド分子は、たと
えば、本発明に記載のような免疫応答を生じさせる。しかし、このような免疫原性ペプチ
ドは、サイズによって限定されず、所望の免疫原の一部であってもよく、全部であっても
よい。一般に、小さいペプチド抗原は、製造しやすくかつ特異性が高いため、好適である
。従って、SGVTSAPDTRPAPGSTA及びSTAPPAHGVTSAPDTR
PAPGSTAPPは、本発明に従って脂質付加することができる、より小さいMUC
Iペプチドである。従ってそれらがマルチマー(すなわち、同一エピトープの多数のコピ
ー)でない限り、ほとんどの抗原が、約9〜約100アミノ酸を含む。より具体的には、
記載通りに、サイズが約9〜約20、約20〜約40、約40〜約60、約60〜約80
、及び約80〜約100アミノ酸である抗原に脂質付加してリポソーム内に組み入れるこ
とができる。タンパク質抗原の断片を組換えDNA技法で製造してアッセイし、個々のエ
ピトープを同定することができる。小さいペプチドをin vitro合成方法で製造し
てアッセイすることが好ましい。従って、本発明に従って、任意の抗原性配列の全部又は
一部を、脂質付加形で使用することが可能である。「全部、又は一部」は、抗原性ペプチ
ド全体又はより大きいペプチドから誘導される幾らか小さいペプチドのいずれも脂質付加
できることを意味する。「より小さいペプチド」は、より大きいペプチド抗原の断片であ
ってもよく、組み換えにより、又は化学的に合成してもよい。
【0077】
合成し、脂質付加し、リポソーム的に調製されるワクチンで使用することができるペプ
チドの他の実例としては、結核、B型肝炎、マラリア、及び癌疾患に関与するペプチドな
どがあるが、この限りではない。
【0078】
Mycobacterium tuberculosisの38kDaの分泌タンパク
質が起源である結核ペプチドDQVHFQPLPPAVVKLSDALIK(配列番号2
)は、一つ又は二つの脂質を使用して作り、上述のリポソーム製剤に製剤化することがで
きる。
【0079】
同様に、B型肝炎抗原性ペプチドは、アミノ酸配列IRTPPAYRPPNAPILK
(配列番号3)で示される。同様に、マラリアペプチドVTHESYQELVKKLEA
LEDAVK(配列番号4)も、リポソームワクチンに製剤化することができる。
【0080】
抗原性ペプチドの天然の配列内に存在する、スレオニン、セリン、リジン、アルギニン
、又はシステイン等のアミノ酸は、脂質を連結させることができる便利な部位である可能
性がある。あるいは、脂質部分の連結を促進するために、これらのアミノ酸のうちの任意
の一つを、末端又はペプチド配列内のいずれかに付加してもよい。このように、二つの脂
質の連結を容易にするために、2個のリジン残基をそのカルボキシル末端に持つ抗原性ペ
プチドを作ることができる。「作られる」によって、本発明は、一つ以上の付加的アミノ
酸をペプチド配列に導入するために、従来のペプチド合成方法を使用することを意味する
。しかし、所望のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドをデザインするために、組
換え方法も使用することができる。従って、本発明は、脂質付加を受けやすい抗原性ペプ
チドの化学的合成及び組換え合成を予見するものである。
【0081】
本明細書を通して、米国特許公報を含む、公的に入手できる書類へのあらゆる及び全て
の言及は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0082】
以下の実施例は、本発明を説明するためのものであって、本発明を制限するためのもの
ではない。これらは、使用され得るものの代表であるが、当業者に周知の他の手順を使用
することもできる。
【実施例1】
【0083】
この実施例の目的は、MUC−1抗原リポソームワクチンの投与に応答したT細胞増殖
応答及び抗MUC−1抗体レベルを決定することである。
【0084】
使用した手順の概要
(i)免疫化
MUC1に基づくリポソームワクチン(「BLP25リポソームワクチン」)を100
μg(250μl)の用量で、2週間間隔で、2、3、又は4回、右鼠径部及び左鼠径部
に皮下注射した(各部位に125μl)。
【0085】
(ii)T細胞増殖アッセイ
BLP25リポソームワクチンで最後に免疫化した9日後、全てのマウスを屠殺し、リ
ンパ節を外科的に切除した。次いで、ナイロンウール精製したリンパ節T細胞を、未実験
の同系マウスの脾臓から得て、マイトマイシンC処理した抗原提示細胞(APC)ととも
に培養した。これらの混合培養に、MUC1由来の合成リポペプチド(BP1−148)
及び対照ペプチド(BP1−72)を、4日間パルス投与した。第4日の後、IFN−g
アッセイ用に幾らかの上澄を回収し、次いでこの培養に、トリチウム標識チミジンを含有
する新鮮な培地をパルス投与した。さらに18〜20時間後、DNAに取り込まれたトリ
チウムの取り込みを、液体シンチレーションカウンターでカウントした。
【0086】
(iii)IFN−γアッセイ
回収した上澄中のIFN−γレベルを、サンドイッチ技法を使用した特異的ELISA
法で決定した。簡単に記載すると、96ウェルマキシソープ(Maxisorp)平底プ
レート(デンマークのNunc社製)を、50μlのキャッチャーモノクローナル抗体R
4.6A2(バイオミラ(Biomira)社製、ロット番号IM98A20A)で、3
7℃、5%のCO2にて35分間、被覆した。次いで、このプレートを洗浄し、被検サン
プル及び陽性標準サイトカインサンプル(ファーミンゲン(Pharmingen)社製
、ロット番号M031554)とともに、45分間インキュベートした。
【0087】
2回洗浄した後、第2のビオチニル化抗体を加えた。XMG1.2(バイオミラ(Bi
omira)社製、ロット番号BG98G02B)。洗浄後、ペルオキシダーゼ複合スト
レプトアビジン(ジャクソン・イムノリサーチ(Jackson Immunorese
arch社製)、ロット番号42350)を加え、再度30分間インキュベートした。5
回洗浄した後、HRPO基質溶液100μl:クエン酸及びNa2HPO4・7H2Oで緩
衝化した1mg/mlのABTS(アルドリッチ(Aldrich)社製、ロット番号0
1328ES)10mlで希釈した30%のH22 1μlを使用直前に調製し、各ウェ
ルに加えた。サーモマックス(Thermomax)ELISA読取装置を使用し、40
5nmの波長にて、カイネティック・モードで10分間、最適密度を測定した。参照標準
と比較することにより、被検サンプルのサイトカインレベルを決定した。
【0088】
(iv)抗MUC1抗体レベル
マイクロタイター96ウェルプレートを、BP1−151HSA複合体(HSAに結合
させたMUC1 24アミノ酸ペプチド)、又はBlend C(Blend Cは、卵
巣癌腹水から精製された天然のヒトMUC1ムチンである)で被覆した。血清の段階希釈
を抗原被覆プレート上で、室温にて1時間、インキュベートし、その後、ウェルを完全に
洗浄した。ペルオキシダーゼ標識ヤギ抗マウスIgG特異的抗体を加え、室温にて1時間
、インキュベートした。次いで各プレートを洗浄し、ABTS基質を加えた。15分後、
ELISA読取装置を使用して、405nmにおける吸光度を測定した。
【実施例2】
【0089】
[モノ及びジ脂質付加MUC I抗原性ペプチド]
この実施例の目的は、リポソーム的に結合した、2個の脂質鎖を有するMUC Iペプ
チドは、1個の脂質を有するMUC Iペプチドと比較して、免疫化マウスにおける抗M
UC I抗体の産生を劇的に増加させることを示すことである。
【0090】
MUC Iペプチドは、脂質を1個又は2個含むように、化学的に合成された。「BP
1−217」は、コアペプチド配列のカルボキシ末端に付着した2個のリポセリン残基を
有し、「BP1−228」は、カルボキシ末端に着いたリポセリンを1個だけ有する。モ
ノリポペプチドとジリポペプチドとを、リポソームに別々に組み入れ、結果として得られ
たリポソーム製剤をワクチンとして評価した。
BP1−217:GVTSAPDTRPAPGSTAS(ミリスチル)S(ミリスチル)

BP1−228:GVTSAPDTRPAPGSTAS(ミリスチル)L
【0091】
C57BL/6マウスを、ジリポペプチドリポソームワクチン、BP1−217で、少
なくとも2回、皮下免疫化した後、T2、体液性応答を誘導し、非常に高レベルの抗MU
C I免疫グロブリンG(IgG)を産生した。対照的に、モノリポペプチド、BP1−
228で2回免疫化したマウスでは、非常に低レベルのIgG産生を伴う細胞性応答が引
き起こされた。たとえば、BP1−217は、BP1−151HSA固相で1/72,0
00〜1/218,700の範囲の抗MUC I IgG力価をもたらし、Blend
C固相で1/100−112700の力価をもたらしたが、BP1−228は、BP1−
151HSA固相で低力価のIgG抗体を産生したにすぎず、また、BlendC固相で
は抗体が検出されなかった。以下の表1を参照されたい。
【0092】
モノリポペプチドであるBP1−228又はBLP−25は、2個の脂質鎖を有するM
UC1ペプチドに比して、非常に低い抗体レベルを生じさせるか、又は抗体レベルを全く
生じさせない。試験した全ての製剤が、リポソーム製剤であり、リピドAアジュバントを
含有する。
【0093】
免疫化ごとに、40〜100μgの任意の量のMUC1リポペプチドを使用してもよく
(本発明はこれらの量に限定されない)、使用される特異的ペプチドによって変化しても
よい。リポソーム内のMUC1ペプチド5μgは、強いT1免疫応答を引き出したが、抗
体は産生しなかった。臨床治験では、患者に注射した用量1000μgのBLP25は、
特異的T細胞増殖の誘導に非常に有効であった。
【0094】
脂質鎖間の定性的というよりむしろ定量的な差が、T1応答又はT2応答を引き出す上
で重要なことも明らかにされちる。すなわち、ペプチドに付着している脂質鎖のタイプと
関係なく、体液性免疫応答を引き出すことができる。たとえば、MUC Iペプチド、二
つの隣り合ったリジン残基に付着した二つのパルミトイルリジン新油性アミノ酸残基を有
する「BP1−132」も、体液性免疫を誘導することが明らかにされている。表2を参
照されたい。
BP1−132:TAPPAHGVTSAPDTRPAPGSTAPPK(パルミテート
)K(パルミテート)G
【0095】
BP1−132を含むリポソーム製剤で2回免疫化したマウスは、BP1−217で記
録されたものと似た力価を有する、抗MUC I抗体産生を誘導した(1/218,70
0のIgG、118100〜1/72,900のIgM)。
【0096】
【表1】

【0097】
ジリポ−MUC Iペプチドリポソームで2回免疫化することにより、主としてT2、
体液性、免疫応答が刺激されるが、T細胞増殖及びIFN−γ産生によって分かる通り、
多少の細胞性免疫系活性が残存する。しかし、本発明は、二つの脂質鎖(たとえば、パル
ミトイルリジン脂質鎖又はミリスチルセリン脂質鎖のいずれか)が付着したMUC Iペ
プチドのリポソーム投与は、抗体産生を劇的に増加し、体液性免疫系を刺激することを示
す。
【0098】
この達成は、哺乳動物モデルでこれまで確認されていない。
【0099】
【表2】

【0100】
観察された現象をさらに特性決定するために、モノリポペプチド又はジリポペプチドを
含む、MUC Iに基づくリポソーム製剤で、MUC Iトランスジェニックマウスを免
疫化した。表3に示す通り、ジリポペプチド(BP1−217)で免疫化したとき、強い
IgG抗体応答が再度確認されたが、4回の免疫化後だけであった。これは、MUC I
抗原寛容原性であるC57B1/6MUC Iトランスジェニックマウスは、この寛容性
を破って、高レベルの抗MUC IIgGを誘導するためには、正常なC57B1/6マ
ウスより多い免疫化を必要とすることを示す。モノリポペプチド(たとえば、BP1−2
28)のみで免疫化したマウスは、非常に低いIgG力価を示した。
【0101】
従って、モノリポ−MUC Iペプチドを含むリポソーム製剤の投与は、細胞性応答を
刺激する。ジリポ−MUC Iペプチドリポソーム製剤による免疫化は、体液性応答を誘
導する。モノリポ−MUC I及びジリポ−MUC Iを含むリポソームの創製物は、免
疫化したとき、細胞性免疫応答及び体液性免疫応答の両者を生じさせる。従って、免疫応
答の調節は、特定のリポソーム製剤をある一定の順序で選択的に投与するステップによっ
て達成される。
【0102】
【表3】

【実施例3】
【0103】
[モノ−及びジ脂質付加結核ペプチド]
MUC Iモノリポペプチドとジリポペプチドとで確認されたように、ジリポ結核ペプ
チドで免疫化することにより、抗体産生が劇的に増加した。表4を参照されたい。
【0104】
【表4】

【0105】
ジリポ結核ペプチドで2回免疫化することにより、IgG力価のレベルが、モノリポ結
核ペプチドによる免疫化後に誘導され力価に比して劇的に上昇した。以上の結果から、二
つの脂質が存在することにより、体液性応答に関連のある力価がほぼ10倍上昇すること
がわかる。
【実施例4】
【0106】
[モノ−及びジ脂質付加B型肝炎ペプチド]
【表5】

【0107】
ジリポB型肝炎ペプチドで2回免疫化することにより、モノリポB型肝炎ペプチドによ
る免疫化後に誘導された力価に比して、IgG力価のレベルが顕著に上昇した。同様に、
IgM抗体のレベルは、ジリポペプチドリポソーム製剤を用いて免疫化処理をした後に、
より高かった。
【実施例5】
【0108】
[モノ−及びジ脂質付加マラリアペプチド]
【表6】

【0109】
ジリポマラリアペプチドで2回免疫化することにより、モノリポマラリアペプチドによ
る免疫化後に誘導された力価に比して、IgG力価及びIgM力価の両者のレベルが上昇
した。この場合、マラリアジリポペプチドワクチンは、モノリポワクチンに比して、より
強い細胞増殖及びIFN−γレベルを誘導した。これは、抗原に付着した脂質の数を変え
ることによって、免疫応答の強度、すなわち、細胞性免疫応答を調節できることを示す。
【実施例6】
【0110】
[リポソーム中のモノ−及びジリポペプチドの比率変化]
種々の比率でモノリポペプチドとジリポペプチドとをリポソームに組み入れることによ
って、体液性応答のレベル及び強度を調節することが可能である。表7に、様々なリポソ
ーム構築物で2回免疫化した後のC57BI/6マウスにおけるIgM力価をまとめる。
予想通り、BLP25モノリポペプチド又は生理食塩水で免疫化したマウス(グループ5
及び6)は、検出可能なIgM力価を生じなかった。しかし、全てのリポソーム製剤が、
類似した細胞性免疫応答を引き起こした(データは表示せず)。
【0111】
3:1の比率の、モノリポペプチドとジリポペプチドとの混合物は、それぞれ、抗体力
価を有意に改善しなかった(グループ1)。しかし、1:1の比率でモノリポペプチドと
ジリポペプチドとをリポソームに組み入れたとき、グループ1と比較して、抗体力価の上
昇が認められた。1:3の比率でMUC1モノリポペプチドとジリポペプチドとを含有す
るリポソーム製剤で免疫化したマウス(グループ3)で、最強の抗体応答が確認された。
【0112】
従って、種々の比率でモノリポペプチドとジリポペプチドとをリポソームに組み入れる
ことによって、体液性応答のレベルを調節することが可能である。
【0113】
【表7】

【実施例7】
【0114】
[MUC1リポペプチドにおける脂質鎖の位置が体液性免疫応答に及ぼす作用]
カルボキシ末端に付着した2個のリポセリン残基を有するMUC1リポペプチドでマウ
スを免疫化した後、強力な抗体応答が実証され、この強い抗体応答が維持され得るかどう
か、リポセリン残基の位置又は数が変更されるかどうかという疑問が生じた。
【0115】
この疑問に答えるために、異なるリポセリン残基配置を有する幾つかのMUC1リポペ
プチド構築物を合成した。表8に示すデータから、カルボキシ末端に3個のリポセリン残
基を有する製剤番号5のみが、強力な抗MUC1 IgG応答を引き起こすことができた
ことがわかる。二つの脂質鎖の間に3−セリンスペーサーを挿入することにより(製剤番
号4)、抗体応答のレベル低下を招いた。
【0116】
同様に、MUC1ペプチドの真ん中に脂質鎖1個だけが挿入された製剤番号2は、多少
低い抗体力価を示したが、MUC1分子の中央の位置に2個のリポセリン残基が挿入され
たとき(製剤番号1)これらの抗体力価ははるかに高かった。リポセリン残基が極端な位
置に配置されたとき(1個はカルボキシ末端で、1個がアミノ末端(製剤番号2))、多
少低い抗体力価が確認された。
【0117】
2個又は3個のリポセリン残基がカルボキシ末端に配置されるとき、最強の抗体応答を
生じさせ得る可能性がある。リポセリン残基の位置を変えることにより、かなりの抗体力
価が依然として維持され、BLP25又は生理食塩水(グループ6及び7)より高いが、
カルボキシ末端位置に比して有意に低い。
【0118】
【表8】

【0119】
本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、本発明の方法及び組成物において様々な
改変及び変更を行うことができることは、当業者に明白であろう。従って、本発明は、添
付の特許請求の範囲及びそれらの均等物の範囲に入るという条件で、本発明の改変及び変
更を包含することを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のモノリポペプチドと少なくとも1種のジリポペプチドとを含む、少な
くとも一つのリポソームを含むリポソーム組成物。
【請求項2】
前記モノリポペプチドと前記ジリポペプチドとが、MUC Iペプチド、結核ペプチド
、マラリアペプチド、及びB型肝炎ペプチドからなる群より選択される、請求項1に記載
のリポソーム組成物。
【請求項3】
前記モノリポペプチドと前記ジリポペプチドとが異なるアミノ酸配列を有する、請求項
1に記載のリポソーム組成物。
【請求項4】
前記リポソームに組み入れられているリポペプチドの総量を基準にして、前記モノリポ
ペプチドの比率が0%以上から約100%未満まで変化し、前記ジリポペプチドの比率が
0%以上から約100%未満まで変化する、請求項1に記載のリポソーム組成物。
【請求項5】
前記リポソームに組み入れられている前記モノリポペプチドの比率と前記ジリポペプチ
ドの比率とがそれぞれ約50%である、請求項4に記載のリポソーム組成物。
【請求項6】
前記モノリポペプチドの比率が約50〜約99%である、請求項4に記載のリポソーム
組成物。
【請求項7】
前記ジリポペプチドの比率が約50〜約99%である、請求項4に記載のリポソーム組
成物。
【請求項8】
前記モノリポペプチドと前記ジリポペプチドとが異なる抗原性エピトープである、請求
項1に記載のリポソーム組成物。
【請求項9】
前記抗原性エピトープが異なるタンパク質に由来する、請求項8に記載のリポソーム組
成物。
【請求項10】
前記モノリポペプチドと前記ジリポペプチドペプチドとが、配列番号1〜4より選択さ
れる任意の配列の全部又は一部である、請求項1に記載のリポソーム組成物。
【請求項11】
第1のリポソーム組成物と第2のリポソーム組成物とを含むリポソーム製剤であって、
前記第1のリポソーム組成物がモノリポペプチドを含み、前記第2のリポソーム組成物が
ジリポペプチドを含むリポソーム製剤。
【請求項12】
前記モノリポペプチドと前記ジリポペプチドとが、MUC Iペプチド、結核ペプチド
、マラリアペプチド、及びB型肝炎ペプチドからなる群より選択される、請求項11に記
載のリポソーム製剤。
【請求項13】
前記モノリポペプチドと前記ジリポペプチドペプチドとが、配列番号1〜4のいずれか
一つから選択される任意の配列の全部又は一部である、請求項11に記載のリポソーム製
剤。
【請求項14】
前記モノリポペプチドと前記ジリポペプチドとが異なるアミノ酸配列を有する、請求項
11に記載のリポソーム製剤。
【請求項15】
前記モノリポペプチドと前記ジリポペプチドとが同一のアミノ酸配列を有する、請求項
11に記載のリポソーム製剤。
【請求項16】
免疫原性ペプチドに対する個体の免疫応答を調節するために個体を治療する方法であっ
て、少なくとも1種のモノリポペプチドと少なくとも1種のジリポペプチドとの有効量を
、前記個体に投与するステップを含む方法。
【請求項17】
前記モノリポペプチドと前記ジリポペプチドとがリポソームに組み入れられており、前
記リポソームに組み入れられているリポペプチドの総量を基準にして、前記モノリポペプ
チドの比率が0%以上から約100%未満まで変化し、前記ジリポペプチドの比率が0%
以上から約100%未満まで変化する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記リポソームに組み入れられている前記モノリポペプチドの比率と前記ジリポペプチ
ドの比率とが、それぞれ約50%である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記モノリポペプチドの比率が約50〜約99%である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記ジリポペプチドの比率が約50〜約99%である、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記調節が、体液性応答を刺激する、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記調節が、細胞性応答を刺激する、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記調節が、体液性応答又は細胞性応答の少なくとも一方の強度を上昇させる、請求項
16に記載の方法。
【請求項24】
前記モノリポペプチドと前記ジリポペプチドとが、MUC Iペプチド、結核ペプチド
、マラリアペプチド、及びB型肝炎ペプチドからなる群より選択される、請求項16に記
載の方法。
【請求項25】
前記モノリポペプチドと前記ジリポペプチドペプチドとが、配列番号1〜4から選択さ
れる任意の配列の全部又は一部である、請求項16に記載の方法。
【請求項26】
前記モノリポペプチドと前記ジリポペプチドとともに、アジュバントを同時投与するス
テップをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項27】
前記アジュバントがリピドAである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
免疫原性ペプチドに対する個体の免疫応答を調節するために個体を治療する方法であっ
て、リポソーム的に結合したモノリポペプチドを含む製剤とリポソーム的に結合したジリ
ポペプチドを含む製剤とを、前記個体に同時に投与するステップを含む方法。
【請求項29】
前記モノリポペプチドと前記ジリポペプチドとが、MUC Iペプチド、結核ペプチド
、マラリアペプチド、及びB型肝炎ペプチドからなる群より選択される、請求項28に記
載の方法。
【請求項30】
前記モノリポペプチドと前記ジリポペプチドペプチドとが、配列番号1〜4から選択さ
れる任意の配列の全部又は一部である、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記モノリポペプチドと前記ジリポペプチドとが同一のアミノ酸配列を有する、請求項
28に記載の方法。
【請求項32】
免疫原性ペプチドに対する個体の免疫応答を調節するために個体を治療する方法であっ
て、リポソーム的に結合したモノリポペプチドを含む製剤を前記個体に先ず投与するステ
ップと、次いでリポソーム的に結合したジリポペプチドを含む製剤を投与するステップと
を含む方法。
【請求項33】
前記モノリポペプチドと前記ジリポペプチドとが、MUC Iペプチド、結核ペプチド
、マラリアペプチド、及びB型肝炎ペプチドからなる群より選択される、請求項32に記
載の方法。
【請求項34】
前記モノリポペプチドと前記ジリポペプチドペプチドとが、配列番号1〜4から選択さ
れる任意の配列の全部又は一部である、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記モノリポペプチドと前記ジリポペプチドとが同一のアミノ酸配列を有する、請求項
32に記載の方法。
【請求項36】
免疫原性ペプチドに対する個体の免疫応答を調節するために個体を治療する方法であっ
て、リポソーム的に結合したジリポペプチドを含む製剤を、前記個体に先ず投与するステ
ップと、次いで、リポソーム的に結合したモノリポペプチドを含む製剤を投与するステッ
プとを含む方法。
【請求項37】
前記モノリポペプチドと前記ジリポペプチドとが、MUC Iペプチド、結核ペプチド
、マラリアペプチド、及びB型肝炎ペプチドからなる群より選択される、請求項36に記
載の方法。
【請求項38】
前記モノリポペプチドと前記ジリポペプチドペプチドとが、配列番号1〜4から選択さ
れる任意の配列の全部又は一部である、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記モノリポペプチドと前記ジリポペプチドとが同一のアミノ酸配列を有する、請求項
36に記載の方法。
【請求項40】
免疫原性ペプチドに対する個体の免疫応答を調節するために個体を治療する方法であっ
て、実質的にジリポペプチドからなる少なくとも一つのリポソームを前記個体に投与する
ステップを含む方法。
【請求項41】
前記ジリポペプチドが、MUC Iペプチド、結核ペプチド、マラリアペプチド、及び
B型肝炎ペプチドからなる群より選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記ジリポペプチドペプチドが、配列番号1〜4から選択される任意の配列の全部又は
一部である、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
免疫原性ペプチドに対する個体の免疫応答を調節するために個体を治療する方法であっ
て、ジリポペプチドからなる少なくとも一つのリポソームを、前記個体に投与するステッ
プを含む方法。
【請求項44】
前記ジリポペプチドが、MUC Iペプチド、結核ペプチド、マラリアペプチド、及び
B型肝炎ペプチドからなる群より選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記ジリポペプチドペプチドが、配列番号1〜4から選択される任意の配列の全部又は
一部である、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
免疫原性ペプチドに対する個体の免疫応答を調節するために個体を治療する方法であっ
て、ジリポペプチドを含む少なくとも一つのリポソームを前記個体に投与するステップを
含む方法。
【請求項47】
前記ジリポペプチドが、MUC Iペプチド、結核ペプチド、マラリアペプチド、及び
B型肝炎ペプチドからなる群より選択される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記ジリポペプチドペプチドが、配列番号1〜4から選択される任意の配列の全部又は
一部である、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
MUC Iペプチドのアミノ酸に付着した一つの脂質を含む、MUC Iペプチド組成
物。
【請求項50】
配列番号1の配列の全部又は一部を含む、請求項49に記載のMUC Iペプチド組成
物。
【請求項51】
配列SGVTSAPDTRPAPGSTA又はSTAPPAHGVTSAPDTRPA
PGSTAPPを含む、請求項49に記載のMUC Iペプチド組成物。
【請求項52】
MUC Iペプチドのアミノ酸に付着した第2の脂質を含む、請求項49に記載のMU
C Iペプチド組成物。
【請求項53】
配列番号1の配列の全部又は一部を含む、請求項52に記載のMUC Iペプチド組成
物。
【請求項54】
配列SGVTSAPDTRPAPGSTA又はSTAPPAHGVTSAPDTRPA
PGSTAPPを含む、請求項52に記載のMUC Iペプチド組成物。
【請求項55】
各脂質が異なるアミノ酸に付着している、請求項52に記載のMUC Iペプチド組成
物。
【請求項56】
前記脂質が、前記MUC IペプチドのN末端又はC末端のいずれかに配置されている
、請求項52に記載のMUC Iペプチド組成物。
【請求項57】
結核ペプチドのアミノ酸に付着した一つの脂質を含む、結核ペプチド組成物。
【請求項58】
配列DQVHFQPLPPAVVKLSDALIKを含む、請求項55に記載の結核ペ
プチド組成物。
【請求項59】
結核ペプチドの少なくとも一つのアミノ酸に付着した二つの脂質を含む、結核ペプチド
組成物。
【請求項60】
配列DQVHFQPLPPAVVKLSDALIKを含む、請求項59に記載の結核ペ
プチド組成物。
【請求項61】
各脂質が異なるアミノ酸に付着している、請求項59に記載の結核ペプチド組成物。
【請求項62】
前記脂質が、前記結核ペプチドのN末端又はC末端のいずれかに配置されている、請求
項59に記載の結核ペプチド組成物。
【請求項63】
B型肝炎ペプチドのアミノ酸に付着した一つの脂質を含む、B型肝炎ペプチド組成物。
【請求項64】
配列IRTPPAYRPPNAPILKを含む、請求項63に記載のB型肝炎ペプチド
組成物。
【請求項65】
B型肝炎ペプチドの少なくとも一つのアミノ酸に付着した二つの脂質を含む、B型肝炎
ペプチド組成物。
【請求項66】
配列IRTPPAYRPPNAPILKを含む、請求項65に記載のB型肝炎ペプチド
組成物。
【請求項67】
各脂質が異なるアミノ酸に付着している、請求項65に記載のB型肝炎ペプチド組成物

【請求項68】
前記脂質が、前記B型肝炎ペプチドのN末端又はC末端いずれかに配置されている、請
求項65に記載のB型肝炎ペプチド組成物。
【請求項69】
マラリアペプチドのアミノ酸に付着した一つの脂質を含む、マラリアペプチド組成物。
【請求項70】
配列VTHESYQELVKKLEALEDAVKを含む、請求項69に記載のマラリ
アペプチド組成物。
【請求項71】
マラリアペプチドの少なくとも一つのアミノ酸に付着した二つの脂質を含む、マラリア
ペプチド組成物。
【請求項72】
配列VTHESYQELVKKLEALEDAVKを含む、請求項71に記載のマラリ
アペプチド組成物。
【請求項73】
各脂質が異なるアミノ酸に付着している、請求項71に記載のマラリアペプチド組成物

【請求項74】
前記脂質が、前記マラリアペプチドのN末端又はC末端のいずれかに配置されている、
請求項71に記載のマラリアペプチド組成物。
【請求項75】
二つ以上の脂質を含む、配列番号1〜4からなる群より選択されるペプチド。
【請求項76】
前記脂質が、ミリスチル、パルミトイル及びラウリルからなる群より選択される、請求
項49又は52のいずれか1項に記載のMUC Iペプチド組成物。
【請求項77】
前記脂質が、ミリスチル、パルミトイル及びラウリルからなる群より選択される、請求
項57又は59のいずれか1項に記載の結核ペプチド組成物。
【請求項78】
前記脂質が、ミリスチル、パルミトイル及びラウリルからなる群より選択される、請求
項63又は65のいずれか1項に記載のB型肝炎ペプチド組成物。
【請求項79】
前記脂質が、ミリスチル、パルミトイル及びラウリルからなる群より選択される、請求
項69又は71のいずれか1項に記載のマラリアペプチド組成物。
【請求項80】
アジュバントを同時投与するステップをさらに含む、請求項28、32、36、40、
43又は46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項81】
前記アジュバントがリピドAである、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
抗原性ペプチドの、モノリポペプチド若しくはジリポペプチドの一方、又はそれらの両
方が組み入れられている少なくとも一つのリポソームを含む組成物の、前記ペプチドへの
免疫応答を調節するためのワクチンとしての使用であって、モノリポペプチドとジリポペ
プチドとの相対的な量がT細胞増殖及び抗体産生の相対的な強度を調節する使用。

【図1】
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【公開番号】特開2011−105720(P2011−105720A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−255171(P2010−255171)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【分割の表示】特願2002−574998(P2002−574998)の分割
【原出願日】平成14年3月27日(2002.3.27)
【出願人】(509301703)オンコシリオン・インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】