説明

TGF−β活性化制御領域の切断面を認識する抗体

本発明の目的は、病態、組織、アイソフォーム特異的活性型TGF−β生成反応を検出することができる抗体を提供することである。本発明によれば、ヒトTGF−β1中の51番目のアミノ酸残基グリシンから110番目のアミノ酸残基アルギニンまでの領域ならびにヒトTGF−β2およびヒトTGF−β3の当該領域に存在するプロテアーゼ切断部位を特異的に認識することができる、活性型ヒトTGF−β1ならびにヒトTGF−β2およびヒトTGF−β3の生成に伴い生じるLAP(もしくは潜在型TGF−β)断片に対する抗体が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、TGF−β活性化制御領域の切断面を認識する抗体、及びその利用に関する。
【背景技術】
Transforming Growth Factor(TGF)−βは、間葉系細胞の細胞外マトリックス産生を強力に促すとともに上皮系細胞の増殖を抑制することにより、肝線維化/肝硬変、動脈硬化、肺線維症、強皮症、腎不全などの硬化性疾患の病態を形成する一方、免疫担当細胞の働きを抑制するなど、多彩な生物活性を示す分子量25kDのホモダイマー多機能性サイトカインである。TGF−βに対する中和抗体を用いた動物モデルにおける検討から、TGF−βの働きを抑制することによって硬化性疾患を予防・治療できることがわかってきた。例えば、プロテアーゼ阻害剤を用いたTGF−β活性化反応の抑制による肝線維化/肝硬変の予防・治療についてはOkuno et al.Gastroenterology 120:18784−1800,2001に記載されている。また、プロテアーゼ抗体を用いたTGF−β活性化反応の抑制による肝再生促進についてはAkita et al.Gastroenterology 123:352−364,2002に記載されている。さらに、TGF−β活性化反応に関する総説としては、近藤ほか 日本血栓止血学会誌 14(3):210−219,2003及びAnnes et al.J Cell Sci 116:217−224,2003が挙げられる。
しかし、例えば、プロテアーゼの過剰産生を抑制することにより肺組織が分解され肺気腫に陥るのを防いだり、癌細胞の増殖を抑制するなど、TGF−βは生体にとって大切な働きもしている。また、TGF−βには殆ど同じ生物活性を示すβ1からβ3までのアイソフォームが存在する。したがって、病態、組織、アイソフォーム特異的なTGF−β生成反応を検出して、これを抑制することにより、病態形成時に異常産生される特定のTGF−βアイソフォームの生成のみを抑え病気の治療や予後の診断に役立てる技術が望まれていた。しかし、従来報告されている技術では特異的生成反応を検出することは困難であった。
また、各TGF−βアイソフォーム特異的抗体(R&D社製、又はSant Cruz社製)もしくは遺伝子プローブ(Bissell et al.J Clin Invest 96:447−455,1995)を用いて、病態形成動物モデルやヒト患部においてどのTGF−βアイソフォームが産生されるかを検出する技術は開発されていたが、病態、組織、アイソフォーム特異的TGF−β生成反応を検出する方法ではなかったので、特異的治療・予防法の開発には繋がらなかった。
【発明の開示】
TGF−βが病態、組織、アイソフォーム特異的に活性化され、肝臓においてはプロテアーゼのプラスミンや血漿カリクレインによって切断活性化されるので、これらのプロテアーゼの活性を低分子合成プロテアーゼ阻害剤(小野 FOY)や抗体(特願2002−057253号)を用いて阻害することによって、病気を防ぐことができる可能性が動物モデルで示されているが、ヒトでも同じことが起きているか、またどの活性化反応が起こっているかを検出する技術は確立されていなかった。
本発明は、病態、組織又はアイソフォームに特異的な活性型TGF−β生成反応を検出することができる抗体を提供することを解決すべき課題とした。本発明はさらに、上記抗体を用いてTGF−β生成反応を検出する方法を提供することを解決すべき課題とした。本発明はさらに、上記抗体を用いて肝線維化/肝硬変、動脈硬化、肺線維症、強皮症、腎不全などの硬化性疾患を始めとするTGF−β関連疾患の特異的診断法を開発することを解決すべき課題とした。
本発明では、TGF−βが病態、組織、アイソフォーム特異的に活性化されることに着目し、活性型TGF−β生成に伴い生じる断片に特異的な抗体を提供することにより上記課題を解決した。
即ち、本発明によれば、ヒトTGF−β中に存在するプロテアーゼ切断部位切断面を特異的に認識することができる、ヒトTGF−βのLAP断片に対する抗体が提供される。
好ましくは、本発明によれば、ヒトTGF−β1中の51番目のアミノ酸残基グリシンから110番目のアミノ酸残基アルギニンまでの領域ならびにヒトTGF−β2およびヒトTGF−β3の当該領域に存在するプロテアーゼ切断部位を特異的に認識することができる、ヒトTGF−β1ならびにヒトTGF−β2およびヒトTGF−β3のLAP断片に対する抗体が提供される。
本発明の抗体は、ポリクローナル抗体でもよいし、モノクローナル抗体でもよい。
本発明の抗体の具体例としては以下の抗体が挙げられる。
プロテアーゼ切断部位が58番目のアルギニン残基と59番目のロイシン残基の間であり、59番目のロイシン残基を含む切断面を特異的に認識する抗体;
プロテアーゼ切断部位が58番目のアルギニン残基と59番目のロイシン残基の間であり、58番目のアルギニン残基を含む切断面を特異的に認識する抗体;
プロテアーゼ切断部位が56番目のリジン残基と57番目のロイシン残基の間であり、57番目のロイシン残基を含む切断面を特異的に認識する抗体;
プロテアーゼ切断部位が56番目のリジン残基と57番目のロイシン残基の間であり、56番目のリジン残基を含む切断面を特異的に認識する抗体;
プロテアーゼ切断部位が79番目のアラニン残基と80番目のロイシン残基の間であり、80番目のロイシン残基を含む切断面を特異的に認識する抗体;
プロテアーゼ切断部位が79番目のアラニン残基と80番目のロイシン残基の間であり、79番目のアラニン残基を含む切断面を特異的に認識する抗体;
プロテアーゼ切断部位が85番目のアルギニン残基と86番目のアスパラギン酸残基の間であり、86番目のアスパラギン酸残基を含む切断面を特異的に認識する抗体;プロテアーゼ切断部位が85番目のアルギニン残基と86番目のアスパラギン酸残基の間であり、85番目のアルギニン残基を含む切断面を特異的に認識する抗体;
プロテアーゼ切断部位が106番目のリジン残基と107番目のグルタミン酸残基の間であり、107番目のグルタミン酸残基を含む切断面を特異的に認識する抗体;
プロテアーゼ切断部位が106番目のリジン残基と107番目のグルタミン酸残基の間であり、106番目のリジン残基を含む切断面を特異的に認識する抗体;
プロテアーゼ切断部位が76番目のアラニン残基と77番目のバリン残基の間であり、77番目のバリン残基を含む切断面を特異的に認識する抗体;並びに、
プロテアーゼ切断部位が76番目のアラニン残基と77番目のバリン残基の間であり、76番目のアラニン残基を含む切断面を特異的に認識する抗体。
本発明の別の側面によれば、上記した本発明の抗体を含む、硬化性疾患を始めとするTGF−β関連疾患の診断薬が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、上記した本発明の抗体を用いて、試料又は組織中のヒトTGF−β1ならびにヒトTGF−β2およびヒトTGF−β3の活性化反応を検出又は測定する方法が提供される。本発明のさらに別の側面によれば、上記した本発明の抗体を用いて試料又は組織中のヒトTGF−β1ならびにヒトTGF−β2およびヒトTGF−β3の活性化反応を検出又は測定することを含む、硬化性疾患の診断方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
図1は、TGF−β活性化機構とその制御の概要を示す。
A:TGF−βの合成・分泌を高める因子、要因
TGF−β、ビタミンA、抗エストロゲン、ブレオマイシン、
デキサメサゾン、ウイルス感染、リンパ球活性化、骨折、肝線維化、
心筋梗塞、肝障害
B:細胞外基質からTGF−βを放出させる因子
エラスターゼ、チマーゼ、プラスミン、トロンビン
C:TGF−βの活性化を起こす因子
酸、アルカリ、熱、変性剤。活性酸素種(ROS)、
エンドグリコシダーゼ、トロンボスポンジン、セリンプロテアーゼ、
インテグリン、マトリックスメタロプロテアーゼ
D:細胞にTGF−β活性化を起こす因子、要因
混合培養、ビタミンA、ビタミンD、抗エストロゲン、ブレオマイシン、
デキサメサゾン、リポ多糖、IgG、インターフェロン、癌化
E:TGF−β受容体の発現を高める因子、要因
ビタミンA、肝線維化
F:TGF−β受容体の発現を減らす因子、要因
癌化、細胞外マトリックス
図2は、組織・アイソフォーム特異的TGF−β活性化反応を示す。新たに作製した血漿カリクレイン切断部位C末断面認識抗体により認識されるLAP断片は、LTBPを介して細胞外マトリックスにより多く残っていることが予想される
図3は、硬化性疾患の病態形成におけるプロテアーゼによるTGF−β活性化を示す。肝硬変・肝再生不全に加えて、動脈硬化、肺線維症、強皮症、腎不全などの硬化症疾患においても、それぞれの病態に特異的なプロテアーゼによりTGF−βが活性化されている。
図4は、硬化性疾患の病態形成におけるプロテアーゼによるTGF−β活性化を示す。右図には、硬化症疾患の患者からの組織で、プロテアーゼにより生成したLAP分解物を検出した結果を示す。
図5は、各種プロテアーゼによるLAPβ1の限定分解の結果とヒトTGF−β1のアミノ酸配列と塩基配列を示す。
図6は、実施例で作製したLAPペプチド抗体の力価をELISAで測定した結果を示す。
A:抗体力価チェックELISA(2172−PLN C−ter 56Lys Ab)
B:抗体力価チェックELISA(Rabbit Y−PLN N−ter 57Leu Ab)
図7は、実施例で作製したLAPペプチド抗体の力価をELISAで測定した結果を示す。
A:抗体力価チェックELISA(2173−PLKN C−ter 58Arg Ab)
B:抗体力価チェックELISA(Rabbit K−PLK N−ter 59Leu Ab)
図8は、LAPペプチド抗体を用いたウエスタンブロット分析の結果を示す。
A:PLN N−ter 57Leu Ab (1/800)
B:PLK N−ter 59Leu Ab (1/800)
図9は、肝再生不全動物モデルの肝臓組織染色像を示す。
図10は、劇症肝炎で死亡した患者の肝臓切片の染色像を示す。
図11は、B型肝炎で死亡した患者の肝臓切片の染色像を示す
図12は、実施例に述べた標準物質を用いたサンドイッチELISAの結果を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
TGF−βは、硬化性疾患の病態形成を担ったり、免疫担当細胞の働きを抑制する一方、プロテアーゼの過剰産生を抑制することによって肺組織が分解され肺気腫に陥るのを防いだりしたり癌細胞の増殖を抑制するなど、多彩な生物活性を示す分子量25kDのホモダイマー多機能性サイトカインである。TGF−βは受容体に結合できない分子量約300kDの不活性な潜在型として産生され、標的細胞表面やその周囲で活性化されて受容体に結合できる活性型となり、始めてその作用を発揮できるようになる(図1)。分子量25kDの活性型TGF−β1は、391個のアミノ酸からなる前駆体タンパク質(アミノ酸配列を配列表の配列番号1に記載し、塩基配列を配列番号2に記載する)としてつくられた後、ゴルジにおいてフューリン様プロテアーゼの働きで279Argと280Alaの間が切断され、カルボキシル末端側の112個のアミノ酸からなる部分がジスルフィド結合によって2量体化することにより生成する。TGF−β2と−β3も同じ構造で、Arg−Ala配列は共通している。切られた残りのアミノ末端側の部分はLAP(latency associated peptide)とよばれ、やはり2量体化し(分子量75kD)、活性型TGF−βから切り離された後も非共有結合でTGF−βをトラップして潜在型TGF−β小複合体(small latent TGF−β complex;SLC)を形成し、活性型TGF−βを受容体に結合できない構造、すなわち潜在型に留めている。さらに多くの場合、LAPダイマーの端にはLTBP(latent TGF−β binding protein)という別の遺伝子から作られる分子量約200kDのタンパク質が結合して潜在型TGF−β大複合体(Large latent TGF−β complex;LLC)を形成する。TGF−β2と−β3も同様の構造をとっている(図2)。LTBPは細胞外マトリックスタンパク質の1種であるフィブリリンと構造が似ており、LLCはこの部分を介して細胞外マトリックスにプールされている(図1及び図2)。
TGF−βの活性化は、なんらかの方法でLAPと活性型TGF−β間の会合を妨げることによってLLCにトラップされている活性型TGF−βを解離、放出する反応であり、マトリックスからLLCが放出されたのちに標的細胞表面やその近傍において起こる(図1)。生理的なTGF−β活性化反応には、トロンボスポンジンやインテグリンと結合することによってLAPの構造が変化し活性型TGF−βを放出する接着活性化反応と、プロテアーゼによってLAPが限定分解され、保持していた活性型TGF−βを放出する切断活性化反応とが知られている(図2)。本発明者らは、合成低分子プロテアーゼ阻害剤や特異抗体を用いてプラスミンや血漿カリクレインなどのセリンプロテアーゼを阻害するとTGF−β活性化反応が阻害され、病態形成を抑制できることから、肝線維化・肝硬変の病態形成過程ではプラスミンを介するTGF−β活性化が、肝再生不全の病態形成過程では血漿カリクレインによるTGF−β活性化が起こっていることを動物モデルで証明した(図3)。
TGF−βは体中のいろいろな組織に存在するが、その活性化機構は組織や組織の状態によって異なる。例えば、肺や膵臓においてはトロンボスポンジン1が働き、炎症を起こした肺や皮膚においてはインテグリンαVβ、肝臓(特に障害肝)においてはセリンプロテアーゼが働く。また、マトリックスメタロプロテインナーゼ(MMP)は癌や皮膚で働くということが報告されている。このように、活性化は組織特異的なTGF−β調節機構とみなすことができる。さらに、活性化はいつどこでどのアイソフォームが働くかアイソフォームの特異性を規定する。哺乳類においてはTGF−β1,−β2,−β3の3つのアイソフォームが産生されるが、活性型の部分はいずれも112個のアミノ酸のポリペプチドによる2量体構造を持ち、71〜82%という高いホモロジーを有することからほとんど同じような生理活性を発現する。これに対して、LAP部分のホモロジーは34〜35%と低いことから、アイソフォームによって活性化の機構は異なる。すなわち、TGF−β活性化はアイソフォーム特異性を決める翻訳後調節機構であると考えられる。例えば、TGF−β1と−β3はLAP部分にRGD配列を持つが、TGF−β2にはそれが無い。よって、インテグリンが結合して活性化するのは、TGF−β1と−β3である。逆に、MMP−9はTGF−β2に主に働くことが報告されている。病態に応じて異なる酵素が働くことによって特定のアイソフォームが生成することが予想される(図2)。
本発明者らは、プラスミンと血漿カリクレインによる切断活性化サイトを決定したところ、プラスミンは潜在型TGF−βの56Lys−57Leuの間を、血漿カリクレインは58Arg−59Leuの間を特異的に切断し似たような構造変化を引き起こしてTGF−βを活性化させることがわかった。次に、これらのプロテアーゼによって断片化された潜在型TGF−βを特異的に検出するプロテアーゼ断片化TGF−β抗体の作製を試みたところ、57Leuと59Leuの各々の切断面を認識する抗体の作製に成功した。59Leu切断面を認識する抗体は活性化反応を受けていない(切断されていない)インタクトなLAPは認識せず、血漿カリクレインによって切断されたLAPを特異的に強く認識した。さらに、この抗体によって肝再生不全動物モデルや劇症肝炎で亡くなった患者肝組織切片が染色されることから、ヒトの病態形成時にプロテアーゼによるTGF−β活性化反応が起こっていることを示すことに初めて成功し、劇症肝炎時の肝再生不全には血漿カリクレインに対する特異的阻害剤や抗体が有効に働く可能性を強く示唆した(図4)。次に、MMP3による切断部位を決定したところ、MMP3は潜在型TGF−βの79Ala−80Leuの間を特異的に切断しTGF−βを活性化させることを見出した。
本発明においては、各種プロテアーゼによって切断され活性化を引き起こす領域(51Gly−110Arg)をTGF−β活性化制御領域と定義し、ここに存在する各々のプロテアーゼ切断サイトを認識する特異抗体を作製することによって、活性型TGF−βやインタクトなLAPに対する抗体を用いた従来の技術では困難であった病態、組織、アイソフォームによって異なるそれぞれの切断活性化反応によるTGF−β生成反応を特異的に検出する技術を確立した。同様なストラテジーを用いて他のプロテアーゼによる切断活性化反応、さらにはトロンボスポンジンやインテグリンによる接着活性化反応を検出する抗体を作製することができる。
上記の通り、本発明の抗体はヒトTGF−β1ならびにヒトTGF−β2およびヒトTGF−β3のLAP断片に対する抗体であって、特に、ヒトTGF−β1中の51番目のアミノ酸残基グリシンから110番目のアミノ酸残基アルギニンまでの領域ならびにヒトTGF−β2およびヒトTGF−β3の当該領域に存在するプロテアーゼ切断部位を特異的に認識することができることを特徴とする。
本発明の抗体の具体例としては、プロテアーゼ切断部位が58番目のアルギニン残基と59番目のロイシン残基の間であり、59番目のロイシン残基を含む切断面を特異的に認識する抗体;プロテアーゼ切断部位が58番目のアルギニン残基と59番目のロイシン残基の間であり、58番目のアルギニン残基を含む切断面を特異的に認識する抗体;プロテアーゼ切断部位が56番目のリジン残基と57番目のロイシン残基の間であり、57番目のロイシン残基を含む切断面を特異的に認識する抗体;プロテアーゼ切断部位が56番目のリジン残基と57番目のロイシン残基の間であり、56番目のリジン残基を含む切断面を特異的に認識する抗体;プロテアーゼ切断部位が79番目のアラニン残基と80番目のロイシン残基の間であり、80番目のロイシン残基を含む切断面を特異的に認識する抗体;プロテアーゼ切断部位が79番目のアラニン残基と80番目のロイシン残基の間であり、79番目のアラニン残基を含む切断面を特異的に認識する抗体;プロテアーゼ切断部位が85番目のアルギニン残基と86番目のアスパラギン酸残基の間であり、86番目のアスパラギン酸残基を含む切断面を特異的に認識する抗体;プロテアーゼ切断部位が85番目のアルギニン残基と86番目のアスパラギン酸残基の間であり、85番目のアルギニン残基を含む切断面を特異的に認識する抗体;プロテアーゼ切断部位が106番目のリジン残基と107番目のグルタミン酸残基の間であり、107番目のグルタミン酸残基を含む切断面を特異的に認識する抗体;プロテアーゼ切断部位が106番目のリジン残基と107番目のグルタミン酸残基の間であり、106番目のリジン残基を含む切断面を特異的に認識する抗体;プロテアーゼ切断部位が76番目のアラニン残基と77番目のバリン残基の間であり、77番目のバリン残基を含む切断面を特異的に認識する抗体;並びに、プロテアーゼ切断部位が76番目のアラニン残基と77番目のバリン残基の間であり、76番目のアラニン残基を含む切断面を特異的に認識する抗体が挙げられる。
本発明の抗体は、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体の何れでもよい。本発明の抗体の作製は定法により行なうことができる。
例えば、活性型ヒトTGF−β1に対するポリクローナル抗体は、上記したようなプロテアーゼ切断部位のアミノ酸から始まるC末側LAPβ1配列(例えば、10アミノ酸残基)の最後にシステイン残基を付与したペプチド、もしくは上記したようなプロテアーゼ切断部位で終わるN末側LAPβ1配列(例えば、10アミノ酸残基)の最初にシステイン残基を付与したペプチドを抗原として哺乳動物を免疫感作し、該哺乳動物から血液を採取し、採取した血液から抗体を分離・精製することにより得ることができる。例えば、マウス、ハムスター、モルモット、ニワトリ、ラット、ウサギ、イヌ、ヤギ、ヒツジ、ウシ等の哺乳動物を免疫することができる。免疫感作の方法としては、当業者に公知の通常の免疫感作の方法を用いて、例えば抗原を1回以上投与することにより行うことができる。
抗原投与は、例えば、7から30日、特に12から16日間隔で2〜14回投与することができる。投与量は1回につき、例えば抗原約0.05から2mg程度を目安とすることができる。投与経路も特に限定されず、皮下投与、皮内投与、腹膜腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与等を適宜選択することができるが、静脈内、腹膜腔内もしくは皮下に注射することにより投与することが好ましい。また、抗原は適当な緩衝液、例えば完全フロイントアジュバント、RAS〔MPL(Monophosphoryl Lipid A)+TDM(Synthetic Trehalose Dicorynomycolate)+CWS(Cell Wall Skeleton)アジュバントシステム〕、水酸化アルミニウム等の通常用いられるアジュバントを含有する適当な緩衝液に溶解して用いることができるが、投与経路や条件等によっては、上記したアジュバントは使用しない場合もある。ここでアジュバントとは抗原とともに投与したとき、非特異的にその抗原に対する免疫反応を増強する物質を意味する。
免疫感作した哺乳動物を0.5から4ケ月間飼育した後、該哺乳動物の血清を耳静脈等から少量サンプリングし、抗体価を測定することができる。抗体価が上昇してきたら、状況に応じて抗原の投与を適当回数実施する。例えば10μg〜1000μgの抗原を用いて追加免疫を行なうことができる。最後の投与から1〜2ケ月後に免疫感作した哺乳動物から通常の方法により血液を採取して、該血液を、例えば遠心分離、硫酸アンモニウムまたはポリエチレングリコールを用いた沈澱、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー等のクロマトグラフィー等の通常の方法によって分離・精製することにより、ポリクローナル抗血清として、本発明のポリクローナル抗体を得ることができる。なお血清は、たとえば、56℃で30分間処理することによって補体系を不活性化してもよい。
また、本発明の抗体がモノクローナル抗体の場合、該モノクローナル抗体のグロブリンタイプは特に限定されず、例えばIgG、IgM、IgA、IgE、IgD等が挙げられる。また、本発明のモノクローナル抗体は、ヒト化抗体又はヒト抗体でもよい。
本発明のモノクローナル抗体を産生する細胞株は特に制限されないが、例えば、抗体産生細胞とミエローマ細胞株との細胞融合によりハイブリドーマとして得ることができる。本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、以下のような細胞融合法によって得ることができる。
抗体産生細胞としては、免疫された動物からの脾細胞、リンパ節細胞、Bリンパ球等を使用する。抗原としては、ポリクローナル抗体の場合と同様のペプチドを使用することができる。免疫される動物としてはマウス、ラット等が使用され、これらの動物への抗原の投与は常法に従って行う。例えば完全フロインドアジュバント、不完全フロインドアジュバントなどのアジュバントと抗原ペプチドとの懸濁液もしくは乳化液を調製し、これを動物の静脈、皮下、皮内、腹腔内等に数回投与することによって動物を免疫化する。免疫化した動物から抗体産生細胞として例えば脾細胞を取得し、これとミエローマ細胞とをそれ自体公知の方法(G.Kohler et al .,Nature,256 495(1975))により融合することにより、ハイブリドーマを作製することができる。
細胞融合に使用するミエローマ細胞株としては、例えばマウスではP3X63Ag8、P3U1株、Sp2/0株などが挙げられる。細胞融合を行なうに際しては、ポリエチレングリコール、センダイウイルスなどの融合促進剤を用い、細胞融合後のハイブリドーマの選抜にはヒポキサンチン・アミノプテリン・チミジン(HAT)培地を常法に従って使用することができる。細胞融合により得られたハイブリドーマは限界希釈法等によりクローニングすることができる。更に、酵素免疫測定法等によりスクリーニングを行なうことにより、活性型ヒトTGF−β1生成に伴い生じるLAP断片を特異的に認識するモノクローナル抗体を産生する細胞株を得ることができる。
このようにして得られたハイブリドーマから目的とするモノクローナル抗体を製造するには、通常の細胞培養法や腹水形成法により該ハイブリドーマを培養し、培養上清あるいは腹水から該モノクローナル抗体を精製すればよい。培養上清もしくは腹水からのモノクローナル抗体の精製は、常法により行なうことができる。例えば、硫安分画、ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどを適宜組み合わせて使用できる。
また、上記したような各種抗体の断片も本発明の範囲内である。抗体の断片としては、F(ab’)2フラグメント、Fab’フラグメント等が挙げられる。
本発明の抗体は標識抗体として使用することもできる。標識抗体を作製することにより、ヒトTGF−β1ならびにヒトTGF−β2およびヒトTGF−β3の活性化反応の検出や測定を簡便に行うことができる。抗体の標識の種類及び標識方法は当業者に知られているものから適宜選択することができる。
標識として酵素を使用する場合には、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、炭酸アンヒドラーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、リゾチーム、マレートデヒドロゲナーゼ、グルコース−6−ホスフェートデヒドロゲナーゼ等を標識として使用することができる。これらの酵素を本発明の抗体又はその断片(F(ab’)2フラグメント、Fab’フラグメント等)に標識する方法としては、酵素の糖鎖を過ヨウ素酸で酸化し、生成したアルデヒド基に該抗体などのアミノ酸を結合させる方法や、酵素にマレイミド基あるいはピリジルスルフィド基等を導入し、該抗体のFab’フラグメントに存在するチオール基と結合させる方法等を挙げることができる。
標識として酵素を使用する場合、試験試料と標識抗体とをインキュベートした後、遊離した標識抗体を洗浄して除去してから、上記の標識酵素の基質を作用させて発色等で反応を測定することによって標識抗体を検出することができる。例えば、ペルオキシダーゼで標識される場合には、基質として過酸化水素、発色試薬としてジアミノベンジジンまたはO−フェニレンジアミンと組み合わさって褐色または黄色を生じる。グルコースオキシダーゼで標識される場合には、基質として、たとえば2,2’−アシド−ジ−(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸(ABTS)等を用いる。
標識として蛍光色素を使用する場合には、例えば、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)又はTRITC(テトラメチルローダミンBイソチオシアネート)等の蛍光色素で本発明の抗体又はその断片を標識することができる。本発明の抗体又はその断片と蛍光色素との結合は常法によって行うことができる。
標識として呈色標識物質を使用する場合には、例えば、コロイド金属および着色ラテックスなどを標識として使用できる。コロイド金属の代表例としては、金ゾル、銀ゾル、セレンゾル、テルルゾルおよび白金ゾルなどのそれぞれの分散粒子である金属コロイド粒子を挙げることができる。コロイド金属の粒子の大きさは、通常は、直径3〜60nm程度とされる。また、着色ラテックスの代表例としては、赤色および青色などのそれぞれの顔料で着色されたポリスチレンラッテクスなどの合成ラテックスを挙げることができる。ラテックスとして天然ゴムラテックスのような天然ラッテクスを使用することができる。着色ラテックスの大きさは、直径数十nm〜数百nm程度から選択することができる。これらの呈色標識物質は市販品をそのまま使用することができるが、場合によりさらに加工し、または、それ自体公知の方法で製造することもできる。
本発明の抗体又はその断片と呈色標識物質との結合は常法によって行うことができる。例えば、呈色標識物質が金ゾルの分散粒子である金コロイド粒子の場合には、通常は、抗体と金ゾルとを室温下で混合することによって両者を物理的に結合することが可能である。
なお、標識としては、上記以外にもアフィニティー標識(例えば、ビオチン等)、又は、同位体標識(例えば、125I等)等を使用することもできる。
本発明の標識抗体を用いた酵素抗体法、免疫組織染色法、免疫ブロット法、直接蛍光抗体法又は間接蛍光抗体法等の分析は当業者に周知の方法で行なうことができ、その実験条件も当業者ならば適宜選択することができる。
本発明の抗体を用いることにより、生体試料又は組織中において、ヒトTGF−β1ならびにヒトTGF−β2およびヒトTGF−β3の活性化反応を検出又は測定することができ、これにより硬化性疾患を始めとするTGF−β関連疾患を診断することができる。このようなヒトTGF−β1ならびにヒトTGF−β2およびヒトTGF−β3の活性化反応を検出又は測定する方法並びに硬化性疾患を始めとするTGF−β関連疾患の診断方法も本発明の範囲内である。
本発明の抗体は、生体内におけるヒトTGF−β1ならびにヒトTGF−β2およびヒトTGF−β3の活性化反応を検出又は測定することができ、これにより硬化性疾患を始めとするTGF−β関連疾患を診断することができる。即ち、本発明の抗体は、活性型ヒトTGF−β1ならびにヒトTGF−β2およびヒトTGF−β3に起因する硬化性疾患(例えば、肝線維化/肝硬変、動脈硬化、肺線維症、強皮症、腎不全など)を始めとするTGF−β関連疾患の診断薬として有用である。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
先ず、実施例の全体の概要を説明する。ヒト組換えLAPβ1を各種プロテアーゼ;ヒト血漿カリクレイン(PLK)、ヒト血液由来プラスミン、ヒト組換えマトリックスメタロプロテアーゼ3(MMP3)で切断したのち各切断部位アミノ酸配列を決定した。切断部位を含むペプチドを合成し、抗原ペプチドを作製した。抗原ペプチドの切断面と反対側に付与したシステイン残基のチオール基を利用して代表的キャリアータンパク質であるKLH(Keyhole Lympet Hemocyanin)に結合させた抗原ペプチドをウサギに免疫し、初回免疫4週間後から抗血清を回収し、目的の抗体が産生されていることをELISAにより評価した。抗体力価の上昇が安定してきたところで、抗原ペプチドを固定したセファロース樹脂を用いて特異的ペプチド抗体を精製した。さらに、このペプチド抗体よりペプチド配列認識抗体を除去し、目的物である切断部位断面認識抗体(LAPβ1のプロテアーゼにより切断される部位を特異的に認識する抗体)を得た。得られた切断部位断面認識抗体の特異性をウエスタンブロットにて確認した。また、肝再生不全動物モデル、劇症肝炎による死亡患者の肝組織切片における染色性を評価した。
[実施例1]:各種プロテアーゼによるLAPβ1の限定分解
ヒト組換えLAPβ1(R&D社)800ngを総量27μlのPBSバッファー中にて終濃度222.2μg/mlのヒト血漿カリクレイン(シグマ社)、終濃度111.1μg/mlのヒト血液由来プラスミン(PLN)(シグマ社)、並びに終濃度6μg/mlのヒト組換えマトリックスメタロプロテアーゼ3(MMP3)(Alexis社)と37℃、0−30分インキュベーションし、12.5%ポリアクリルアミドゲル電気泳動にて分離したのちに、和光純薬の銀染色キットを用いて分解を確認した。
[実施例2]:限定分解部位の決定−TGF−β活性化制御領域の発見
各種プロテアーゼによって限定分解したLAPβ1断片(200−400ng)をLaemmli(Nature 227,680(1979))の方法に従いSDS−12.5%ポリアクリルアミドゲル電気泳動にて分離し、ゲル上のタンパク質をPVDF(ポリビニデンジフルオリド)膜に電気泳動転写後、CBB(クマシーブルーR250)色素で可視化した。可視化されたPVDF膜状のタンパク質バンドを切り取り、微量パルス液相プロテインシークエンサー(Procise 494cLC,Applied Biosysytems社製)の反応層に入れ、標準のプログラムにてエドマン分解を行い、各サイクルでN末端より順番に切り出されるPTH(フェニルチオヒダントイン)−アミノ酸をクロマトグラフィーの溶出時間より同定した。このようにして限定分解された各断片のN末端10残基のシークエンスを決定することにより各限定分解部位を決定したところ、プラスミンは潜在型TGF−βの56Lys−57Leuの間を、血漿カリクレインは58Arg−59Leuの間を、さらにMMP3は79Ala−80Leuの間を特異的に切断し、似たような構造変化を引き起こすことでTGF−βを活性化させることがわかった(図5)。さらに長時間インキュベーションすると、プラスミンは85Arg−86Aspの間、106Lys−107Gluの間を順次切断した。このように各種プロテアーゼによって切断され活性化を引き起こす領域(51Gly−110Arg)をTGF−β活性化制御領域と定義した。
[実施例3]:抗原ペプチドの作製
上記で決定した切断部位のアミノ酸から始まるC末側LAPβ1配列(10アミノ酸残基)の最後にシステイン残基を付与したペプチド、もしくは切断部位で終わるN末側LAPβ1配列(10アミノ酸残基)の最初にシステイン残基を付与したペプチドを固相合成のFmoc法(合成機;島津製作所PSSM−8)にて合成した。脱保護剤はエタンジチオール/チオアニソール/トリフルオロ酢酸を用いた。合成ペプチドに対し抗原性を付与するためにキャリア蛋白質としてヘモシアニン(keyhole limpet hemocyanin;KLH)(シグマ社製)を結合させた。KLHに含まれるアミノ基をm−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシニミドエステル(MBS)で修飾したものを作り、これにシステイン残基を含む合成ペプチドを反応させて、両者を共有結合させた。ヘモシアニン20mgを溶かした10mMリン酸ナトリウムバッファー,pH7.2、1.25mlに0.3mg/μlMBSジメチルホルムアミド溶液10μlを滴下し室温で30分攪拌して両者を結合させる。沈殿物を遠心して取り除いた上清をセファデックスG25ゲルろ過カラムにかけ50mMリン酸ナトリウムバッファー,pH6.0で流して未反応のMBSとMBS結合KLHとを分取した。MBS結合KLH分画はCBBで同定し100μgずつ使用した。0.5mlの蒸留水に溶かした合成ペプチド1mgとMBS結合KLH溶液半量の0.2Mリン酸ナトリウムバッファー,pH7.4を加えて室温で3時間振とうし、MBSのNHSエステルを介してKLHを各ペプチドのシステイン残基と結合させた。
[実施例4]:ウサギへの免疫・採血
ウサギ(雌、約2kg、ニュージーランドホワイト、北山ラベス)を購入後1週間隔離し環境に慣れさせた。免疫前採血(10ml)したのちに、合成ペプチド100μgを含むKLH−ペプチド抗原溶液と、RIBI社の完全アジュバンド100μlとを金属製接続管を通して均一にしたエマルジョンをウサギの背中へ数十箇所に分けて免疫した。初回免疫4週間後から、一週間毎に10mlずつ採血と追加免疫を14週間まで繰り返し、心臓より全採血した。採血は、左右交互の耳動脈より行い、抗血液凝固剤として1/10量の3.8%クエン酸ナトリウム溶液を用いた。採血した血液を4℃、30分、10,000rpmで遠心して血球成分を取り除いて血漿を得た。これに終濃度10mM塩化カルシウム溶液を加えて4℃、オーバーナイト静置して固め、凝固成分を遠心(4℃、15分、10,000rpm)で取り除いて抗血清を回収した。
[実施例5]:抗体産生の確認
各抗血清中の抗体力価の推移はBSAを結合させた各種抗原ペプチドを用いたELISA(Enzyme−linked Immuno−sorbent Assay)にて測定した。BSA結合ペプチドは、抗原に用いたKLH結合ペプチドと同じ方法で作製した。これを50mM炭酸バッファー,pH9.6で4μg/mlに希釈したものを100μlずつ96穴イムノプレート(ヌンク社製)の各穴に入れ4℃、オーバーナイトでインキュベーションしてプレートをBSA結合ペプチドでコートし、PBS−0.05%Tween20で3回洗浄したのちに、各抗血清をPBS−0.05%Tween20で薄めた希釈系列を調製し、これを100μlずつ加えて37℃で2時間インキュベーションする。PBS−0.05%Tween20で3回洗浄したのちに、アルカリフォスファターゼ結合ヤギ抗ウサギ抗体(Jackson社製、7,500倍PBS−0.05%Tween20で希釈)を100μlずつ加えて再度37℃で2時間インキュベーションする。PBS−0.05%Tween20で3回洗浄したのちに1mg/ml p−ニトロフェニルリン酸塩含有ジエタノールアミンバッファーを200μlずつ加えて37℃で1時間インキュベーションしたのちに黄色の発色程度を405nmの吸光度を測定することにより決定した。
図6および図7に、プラスミン(PLN)切断部位(56Lys−57Leu)のC末断面(56Lys)抗体(図6のA)とN末断面(57Leu)抗体(図6のB)、並びに血漿カリクレイン(PLK)切断部位(58Arg−59Leu)のC末断面(58Arg)抗体(図7のA)とN末断面(59Leu)抗体(図7のB)のデータを示す。4回目免疫後から抗体力価の上昇がみられ、それ以降、高い抗体力価が保持された。
[実施例6]:特異的ペプチド抗体の精製
抗原ペプチドを固定したセファロース樹脂を作製し、これに吸着させることにより抗血清中に含まれるペプチド抗体を精製した。蒸留水で膨潤したエポキシ活性化セファロース樹脂(Pharmacia Biotech社)50%スラリー1mlと各種抗原ペプチド1mgを結合バッファー(50mM炭酸バッファー,pH8)4ml中にて45℃、オーバーナイトで反応させ、セファロース樹脂に抗原ペプチドを結合させた。0.1Mモノエタノールアミン含有50mMトリス塩酸バッファー,pH8中にて45℃、オーバーナイトでインキュベーションして未反応の官能基をブロックした後に、0.5M塩化ナトリウム含有0.1M酢酸バッファー,pH4と0.5M塩化ナトリウム含有結合バッファーにて交互に3回ずつ洗浄して抗原ペプチドを固定したセファロース樹脂を作製した。ペプチド固定セファロース樹脂1mlと回収した抗血清5mlとを4℃、オーバーナイトで撹拌して抗血清中に含まれるペプチド抗体を樹脂に結合させたのちに、TBSバッファー(0.15M塩化ナトリウムを含む20mMトリス塩酸バッファー,pH7.5)、洗浄バッファー(1M塩化ナトリウム、1%トライトンX−100を含む20mMトリス塩酸バッファー,pH7.5)、TBSバッファー、0.15M塩化ナトリウム溶液で洗浄したのちにグリシンバッファーpH2.5中に溶出した。このとき抗体を即座に中性にするために、回収分画には予め溶出体積の1/20の1Mトリスバッファーを入れておく。得られた抗体の濃度はBCAアッセイキット(Pierce)により決定した。
[実施例7]:切断部位断面認識抗体の精製(ペプチド配列認識抗体の除去)
上記セファロース樹脂に固定化したペプチドの切断面末端をアセチル化してブロックした樹脂を作製し、これを詰めたカラムにペプチド抗体を通すことにより、ペプチド配列認識抗体を除去して切断面認識抗体のみを精製した。アセチル化は、アセチルイミダゾール0.12g/4mlジメチルホルムアミド中にてペプチド固定セファロース樹脂を室温にて5分を2回撹拌して行い、ジメチルホルムアミドで洗浄後スピンカラムに詰め(カラムボリューム1ml)、これに上術のように精製したペプチド抗体100μgを通してペプチド配列認識抗体を除去し、非吸着分画を回収し切断部位断面認識抗体とした。抗体のタンパク濃度はBCAアッセイにより決定した。
[実施例8]:切断部位断面認識抗体の認識特異性の確認
上記で得られた切断部位断面認識抗体の認識特異性をウェスタンブロット解析にて確認した。図8のAに、プラスミン切断部位(56Lys−57Leu)のN末断面(57Leu)認識抗体を用いた結果を示す。図8のBに、血漿カリクレイン切断部位(58Arg−59Leu)のN末断面(59Leu)認識抗体を用いた結果を示す。
図8では、プロテアーゼ処理していないヒト組換えLAPβ1、終濃度222.2μg/mlの血漿カリクレインで37℃、30分インキュベーションして切断したLAPβ1、終濃度111.1μg/mlのプラスミンで37℃、10分インキュベーションして切断したLAPβ1、各800ngを12.5%ポリアクリルアミドゲル電気泳動にて分離したのちに、PVDF(ポリビニデンジフルオリド)膜に電気泳動転写した。膜上のタンパク質のウェスタンブロット解析は、プラスミン切断部位N末断面認識ウサギ抗体または血漿カリクレイン切断部位N末断面認識ウサギ抗体(終濃度3.25μg/ml)とホースラディッシュペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ウサギIgG抗体(最終1:1,500希釈)の組み合わせを用いて、既報の方法に従って行った(Okuno M他、Gastroenterology 2001;120:1784−1800)。バンドはAmersham−Pharmacia(Buckinghamshire,UK)ECL systemで検出した。
血漿カリクレイン切断部位N末断面(59Leu)認識抗体は、活性化反応を受けていない(切断されていない)インタクトなLAPβ1をほとんど認識せず(レーン1)、血漿カリクレイン(PLK)よって切断されたLAPβ1断片のみ強く認識し(レーン2)、血漿カリクレイン切断部位(58Arg−59Leuの間)より2残基前の56Lys−57Leuで切断されたプラスミン(PLN)切断LAPβ1断片を弱く認識した(レーン3)。この結果は、血漿カリクレイン切断部位N末断面認識抗体は、血漿カリクレインによって断片化された潜在型TGF−βの切断面を特異的に検出する抗体であることを示している。
[実施例9]:肝再生不全動物モデルにおける有用性の確認
血漿カリクレイン切断部位N末断面認識抗体の組織免疫染色における有用性を評価するために、血漿カリクレインによるTGF−β活性化反応が病態形成の原因であることがわかっている内毒素(LPS)前投与による部分肝切除後の肝再生不全マウスモデル(Akitaほか、Gastroenterology 123:352−364,2002)を作製し抗体の染色性を試した(図9)。
H/HeNマウス(5週齢、日本クレア,東京,日本)を1週間隔離し、無作為に各10匹に分けたマウスに、50μlの生理食塩水(500ng/g体重のLPS(Escherichia coli 0111:B4、Sigma Chemical Co.(St.Louis,MO))を含むもの、又は含まないもの)を腹腔内注射し、24時間後に偽手術もしくはHigginsおよびAndersonの方法(Higgins GM他、Arch Pathol 1931;12:186−202)に従って67%部分肝切除手術を施し、手術48時間後にエーテル麻酔下で下大静脈から失血させて屠殺した。肝臓を素早く取り出し、10%緩衝ホルマリン[ホルマリン(37%パラホルムアルデヒド3%エタノール水溶液)をPBSで10倍希釈したもの]にて4℃、24時間固定したのちに、アルコール系列で脱水し,キシロールで置換した後、自動包埋装置を用いてパラフィンに入れ,型に固めて肝組織パラフィン包埋ブロックを作製した。ミクロトームを用いて肝組織パラフィン包埋ブロックから薄さ5μmの切片を作製し、免疫組織染色に用いた。キシレン10分2回にてパラフィンを除去した後,100%,70%,50%エタノール各1回でリンスし,水洗後風乾してDAKO Pen(DAKO Cytomation,Kyoto,Japan)にて切片周囲にサークルを描き,さらに数分風乾後、無水エタノール:3%過酸化水素水=9:1混合液に浸して内在性パーオキシダーゼ活性のブロッキングを行った。その後に、Vectastain ABC elite kit(Vector Laboratories,Burlingame,CA)を用いて染色、発色を行った。キット付属のブロッキング溶液とインキュベーションしたのちに、一次抗体(マウス抗TGF−βモノクローナル抗体(図9の上段)もしくは血漿カリクレイン切断部位N末断面認識抗体(図9の中段);1%BSAを含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に最終濃度13μg/ml)と一緒に加湿チャンバー内で4℃で一晩インキュベートした。同一ウサギの免疫前抗体を対照として用いた(図9の下段)。PBSで洗浄後、使用説明書に従ってビオチン化二次抗体、アビジンDH−ビオチン化パーオキシダーゼ混合液と順次反応させ切片を染色した。ジアミノベンジジンテトラヒドロクロライドを用いて発色させ、ヘマトキシリンを用いて核の対比染色を行った。軽く水でリンスしたのち,風乾させ,50%,70%,100%エタノール各1回でリンスし、キシレン10分1回にて透徹し,非水溶性封入剤にて封入して顕微鏡観察に用いた。
生理的食塩水投与偽手術を施したコントロール群ではいずれの抗体によっても染色性は認められなかった(図9の左側)。生理的食塩水投与部分肝切除手術群、LPS投与偽手術でも同様にほとんど染色性は認められなかった。これに対して、LPS投与部分肝切除手術群においては、TGF−β抗体によって類洞周囲の星細胞を中心とした顕著な染色像とその周囲の肝細胞にうっすらとした染色像(図9の右側上段パネル)が認められ、血漿カリクレイン切断部位N末断面認識抗体においても類洞周囲を中心とした染色像が認められた(図9の右側中段パネル)。免疫前抗体では特異的な染色像は得られなかった(図9の右側下段パネル)。この結果は、LPS投与部分肝切除手術群において起こった血漿カリクレイン依存TGF−β活性化反応の結果生じた活性型TGF−βとLAP断片とがそれぞれの抗体で認識されたことを示している。すなわち、血漿カリクレイン切断部位N末断面認識抗体によってLPS投与部分肝切除手術群において血漿カリクレイン依存TGF−β活性化反応が起こったことを表しており、動物モデルにおける有効性が示された。
[実施例10]:ヒト病変肝における有用性の確認1
さらに、血漿カリクレイン切断部位N末断面認識抗体によって劇症肝炎で死亡した患者肝組織切片が染色されること(図10)から、ヒトの病態形成時にプロテアーゼによるTGF−β活性化反応が起こっていることを示すことに成功した。
10%緩衝ホルマリン固定,パラフィン包埋した患者肝組織から切片(2.5μm)を作製し,キシレン20分4回にて脱パラフィン後,エタノール2回,90%,80%,70%エタノール各1回でリンスし,水洗後風乾してDAKO Pen(DAKO Cytomation,Kyoto,Japan)にて切片周囲にサークルを描き,さらに30分風乾後、切片に一次抗体(免疫前抗体(図10の左側パネル)もしくは血漿カリクレイン切断部位N末断面認識抗体(図10の右側パネル))を最終濃度13μg/mlにて室温1時間湿箱中で反応させた。PBSにて1回リンス後さらに30分洗浄したのちに、二次抗体(Biotin−labeled Swine anti−Rabbit IgG F(ab’)2 fragment(DAKO Cytomation,Kyoto,Japan))10μg/mlにて室温1時間反応させた。PBSにて1回リンス後さらに30分洗浄したのちに、Alkaline phosphatase−labeled Strept ABC Complex(DAKO Cytomation,Kyoto,Japan)にて室温で40分反応させた。PBSにて1回リンス後さらに30分洗浄したのちに、添付書に従い調製したNew Fuchsin substrate(DAKO Cytomation,Kyoto,Japan)を反応させ陰性コントロール(図10の左側パネル)に淡くバックグウンドの染まりが出るまで発色した。軽く水でリンスしたのち,風乾させ,キシレン10分3回にて透徹し,非水溶性封入剤にて封入して顕微鏡観察に用いた。
免疫前抗体(図10の左側パネル)に比べて血漿カリクレイン切断部位N末断面認識抗体(図10の右側パネル)では、線維に埋もれながらも僅かに細胞構造を保っている肝細胞が淡く染色されるとともに、特に星細胞と思われる幾つかの細胞が赤く染まっていることが観察された(矢印)。この結果は、患者さんの病態形成時に血漿カリクレインによるTGF−β活性化反応が起こっていることを示しており、劇症肝炎時の肝再生不全には血漿カリクレインに対する特異的阻害剤や抗体が有効に働く可能性を強く示唆している。
[実施例11]:ヒト病変肝における有用性の確認2
B型肝炎で死亡した患者肝組織切片を染色したところ、血漿カリクレイン切断部位C末切断面認識抗体を用いた場合と比較して、血漿カリクレイン切断部位N末切断面認識抗体を用いた場合により明確な染色像を得ることができた(図11)。
B型肝炎で死亡した患者肝組織から10%緩衝ホルマリン固定,パラフィン包埋した切片(2.5μm)を作製し,キシレン20分4回にて脱パラフィン後,エタノール2回,90%,80%,70%エタノール各1回でリンスし,水洗後風乾してDAKO Pen(DAKO Cytomation,Kyoto,Japan)にて切片周囲にサークルを描き,さらに30分風乾後、切片に一次抗体として血漿カリクレイン切断部位C末断面認識抗体(58番目のアルギニンを認識する抗体)(図11の左側上パネル)、血漿カリクレイン切断部位N末断面認識抗体(59番目のロイシンを認識する抗体)(図11のまん中上パネル)、無免疫ウサギ抗体を最終濃度13μg/ml、または活性型TGF−β認識マウスモノクロナル抗体(図11の右側上パネル)、もしくは無免疫マウス抗体を最終濃度1μg/mlにて室温1時間湿箱中で反応させた。PBSにて1回リンス後さらに30分洗浄したのちに、二次抗体(Biotin−labeled Swine anti−Rabbit IgG F(ab’)2 fragment(DAKO Cytomation,Kyoto,Japan)もしくは、Biotin−labeled Swine anti−Mouse IgG F(ab’)2 fragment(DAKO Cytomation,Kyoto,Japan))10μg/mlにて室温1時間反応させた。PBSにて1回リンス後さらに30分洗浄したのちに、Horseradish Peroxidase−labeled Strept ABC Complex(DAKO Cytomation,Kyoto,Japan)にて室温で40分反応させた。PBSにて1回リンス後さらに30分洗浄したのちに、添付書に従い調製したDAB substrate(DAKO Cytomation,Kyoto,Japan)を反応させ陰性コントロール(図11の下段パネル)に淡くバックグウンドの染まりが出るまで発色した。軽く水でリンスしたのち,風乾させ,キシレン10分3回にて透徹し,非水溶性封入剤にて封入して顕微鏡観察に用いた。
免疫前抗体(下段パネル)に比べて血漿カリクレイン切断部位C末断面認識抗体(図11の上図まん中)では、星細胞を中心とした染色が見られるが、血漿カリクレイン切断部位N末断面認識抗体(図11の上図左)では、C末断面認識抗体(図11の上図まん中)に比べて、より明確な染色像を得ることができた。活性型TGF−β認識マウスモノクロナル抗体(図11の上図右)でも、C末断面認識抗体(図11の上図まん中)と同様の染色像を得ることができたが、バックグランドはやや高かった(図11の下図右)。この結果は、病態形成時に血漿カリクレインによるTGF−β活性化反応が起こっていることを明確に示しており、B型肝炎肝炎時の肝再生不全には血漿カリクレインに対する特異的阻害剤や抗体が有効に働く可能性を強く示唆している。
[実施例12]:MMP2及びMMP9ではLAPの特異的切断は起こらないことの確認
ヒト組換えLAPβ1(R&D社)800ngを総量27μlの50mM Trisバッファー(50mM Tris−HCl,pH7−200mM NaCl−1μM ZnCl−5mM CaCl−0.05%Brij 35−0.05%NaN)中にて終濃度13.3μg/mlのヒトマトリックスメタロプロテアーゼ2(MMP2)(Alexis社)、もしくは終濃度13.3μg/mlのヒトマトリックスメタロプロテアーゼ9(MMP9)(Alexis社)と37℃、30分インキュベーションし、12.5%ポリアクリルアミドゲル電気泳動にて分離したのちに、和光純薬の銀染色キットを用いて染色したが、LAPの分解は確認できなかった。この時用いたMMP2とMMP9は、潜在型のものを購入し、上記50mM Trisバッファー中にて終濃度2mMの4−aminophenylmercuric acetate(APMA)と37℃、1時間インキュベーションすることによって活性化した後に実験に供した。APMA処理によりMMP2とMMP9が活性型になっていることは、150mM Trisバッファー(150mM Tris−HCl,pH7.5−100mM NaCl−10mM CaCl−0.05%Brij 35)中にて蛍光合成基質MOCAc−Pro−Leu−Gly−Leu−A2pr(Dnp)−Ala−Arg−NH2(ペプチド研究所製)を用いた活性測定(Ex 280nm−Em 360nm;Reference:C.G.Knight,et al.,FEBS Lett.,296:263,1992)を行い確認した。
[実施例13]:サンドイッチELIZA法による断片化LAPの検出
サンドイッチELIZA法は情報(Harlow and Lane,Immunoassays,In Antibodies−A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York,pp.553−612,1988)に従って行った。すなわち、市販の抗ヒトLAPモノクロナル抗体(R&D社製)をイムノプレート(Nunc社製)1ウエル当たり1μg(20μg/ml of PBSを50μl)添加し、4℃で一晩インキュベーションすることによってコートした。PBSで2回洗浄した後に、ブロッキング溶液(3%ウシ血清アルブミン−0.02%アジ化ナトリウム含有PBS)200μlと4℃でもう一晩インキュベーションすることによってブロッキングを行なった。PBSで2回洗浄した後に、1ウエル当たり0,125,250,500,1,000,2,000ngの市販ヒトLAPβ1(R&D社製)ブロッキング溶液希釈系列、ヒト血漿カリクレイン(Sigma社製)処理(37℃,40分インキュベーション)ヒトLAPβ1(R&D社製)ブロッキング溶液希釈系列、もしくはプラスミン(Sigma社製)処理(37℃,40分インキュベーション)ヒトLAPβ1(R&D社製)ブロッキング溶液希釈系列各50μlを加え、37℃で2時間反応させた。PBSで4回洗浄後、血漿カリクレイン切断部位C末断面認識抗体もしくは免疫前抗体25μg/ml PBS溶液を各ウエルに40μlずつ入れて室温で2時間シェーキングしながら反応させた。PBSで4回洗浄後、アルカリフォスファターゼ標識ヤギ抗ウサギ抗体(Jackson社製、7,500倍PBS−0.05%Tween20で希釈)を100μlずつ加えて37℃で2時間インキュベーションした。PBS−0.05%Tween20で3回洗浄したのちに1mg/ml p−ニトロフェニルリン酸塩含有ジエタノールアミンバッファーを200μlずつ加えて37℃で1時間インキュベーションしたのちに黄色の発色程度を405nmの吸光度を測定することにより決定した。その結果、断片化LAPを検出できることが確認された(図12)。
【産業上の利用可能性】
本発明においては、TGF−β活性化制御領域に存在する各々のプロテアーゼ切断部位を認識する特異抗体を作製することによって、従来の技術では困難であった病態、組織、アイソフォーム特異的TGF−β生成反応(活性化反応)を検出することが可能になった。さらに、検出された各々の活性化反応を特異的に阻害する合成低分子阻害剤や抗体を用いて異常TGF−β生成反応のみを抑える新規治療法の診断、並びに予後の診断に役立つことが期待できる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトTGF−β中に存在するプロテアーゼ切断部位を特異的に認識することができる、ヒトTGF−βのLAP断片に対する抗体。
【請求項2】
ヒトTGF−β1中の51番目のアミノ酸残基グリシンから110番目のアミノ酸残基アルギニンまでの領域ならびにヒトTGF−β2およびヒトTGF−β3の当該領域に存在するプロテアーゼ切断部位を特異的に認識することができる、ヒトTGF−β1ならびにヒトTGF−β2およびヒトTGF−β3のLAP断片に対する抗体。
【請求項3】
ポリクローナル抗体である、請求項1又は2に記載の抗体。
【請求項4】
モノクローナル抗体である、請求項1又は2に記載の抗体。
【請求項5】
プロテアーゼ切断部位が58番目のアルギニン残基と59番目のロイシン残基の間であり、59番目のロイシン残基を含む切断面を特異的に認識する、請求項1から4の何れかに記載の抗体。
【請求項6】
プロテアーゼ切断部位が58番目のアルギニン残基と59番目のロイシン残基の間であり、58番目のアルギニン残基を含む切断面を特異的に認識する、請求項1から4の何れかに記載の抗体。
【請求項7】
プロテアーゼ切断部位が56番目のリジン残基と57番目のロイシン残基の間であり、57番目のロイシン残基を含む切断面を特異的に認識する、請求項1から4の何れかに記載の抗体。
【請求項8】
プロテアーゼ切断部位が56番目のリジン残基と57番目のロイシン残基の間であり、56番目のリジン残基を含む切断面を特異的に認識する、請求項1から4の何れかに記載の抗体。
【請求項9】
プロテアーゼ切断部位が79番目のアラニン残基と80番目のロイシン残基の間であり、80番目のロイシン残基を含む切断面を特異的に認識する、請求項1から4の何れかに記載の抗体。
【請求項10】
プロテアーゼ切断部位が79番目のアラニン残基と80番目のロイシン残基の間であり、79番目のアラニン残基を含む切断面を特異的に認識する、請求項1から4の何れかに記載の抗体。
【請求項11】
プロテアーゼ切断部位が85番目のアルギニン残基と86番目のアスパラギン酸残基の間であり、86番目のアスパラギン酸残基を含む切断面を特異的に認識する、請求項1から4の何れかに記載の抗体。
【請求項12】
プロテアーゼ切断部位が85番目のアルギニン残基と86番目のアスパラギン酸残基の間であり、85番目のアルギニン残基を含む切断面を特異的に認識する、請求項1から4の何れかに記載の抗体。
【請求項13】
プロテアーゼ切断部位が106番目のリジン残基と107番目のグルタミン酸残基の間であり、107番目のグルタミン酸残基を含む切断面を特異的に認識する、請求項1から4の何れかに記載の抗体。
【請求項14】
プロテアーゼ切断部位が106番目のリジン残基と107番目のグルタミン酸残基の間であり、106番目のリジン残基を含む切断面を特異的に認識する、請求項1から4の何れかに記載の抗体。
【請求項15】
プロテアーゼ切断部位が76番目のアラニン残基と77番目のバリン残基の間であり、77番目のバリン残基を含む切断面を特異的に認識する、請求項1から4の何れかに記載の抗体。
【請求項16】
プロテアーゼ切断部位が76番目のアラニン残基と77番目のバリン残基の間であり、76番目のアラニン残基を含む切断面を特異的に認識する、請求項1から4の何れかに記載の抗体。
【請求項17】
請求項1から16の何れかに記載の抗体を含む、硬化性疾患を始めとするTGF−β関連疾患の診断薬。
【請求項18】
請求項1から16の何れかに記載の抗体を用いて、試料又は組織中のヒトTGF−β1ならびにヒトTGF−β2およびヒトTGF−β3の活性化反応を検出又は測定する方法。
【請求項19】
請求項1から16の何れかに記載の抗体を用いて試料又は組織中のヒトTGF−β1ならびにヒトTGF−β2およびヒトTGF−β3の活性化反応を検出又は測定することを含む、硬化性疾患を始めとするTGF−β関連疾患の診断方法。

【国際公開番号】WO2005/023870
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【発行日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513729(P2005−513729)
【国際出願番号】PCT/JP2004/013189
【国際出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【Fターム(参考)】