説明

TOC計及びCO2吸収剤の寿命評価方法

【課題】簡単な構造で、CO吸収剤の交換時期を、周囲温度、外気のCO濃度等、外部環境に影響されることなく適正にユーザに通知できるTOC計を提供する。
【解決手段】CO吸収剤を収納したパージガス用アブソーバ39と、液体試料を導入し酸化させる試料酸化部18と、試料酸化部18から導入された被測定ガス中のCOを検出し、パージガス用アブソーバ39を経由したガスをパージガスとして導入する検出部6と、パージガス用アブソーバ39と検出部6との間に設けられ、パージガスが単独で検出部6に被測定ガスとして導入されるように切り換える流路切り換え機構(81,82)とを備えるTOC計である。このTOC計は、流路切り換え機構(81,82)により、定期的にパージガスを被測定ガスとして検出部6に導入し、パージガス中に含まれるCOの変化を検出することにより、CO吸収剤の寿命を評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部環境の空気から二酸化炭素(CO)を除去してパージガス、キャリアガス等として用いるTOC(全有機体炭素)計、及びこのCO吸収剤の寿命評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体試料中のTOC濃度を測定するTOC計は、水道、河川、プラント用水などの水質管理を始めとした様々な分野で活用されている。COを除去、精製した外部環境の空気を、試料中のCOを除去するためのスパージ(通気処理)に用いるスパージガス、TOC計が備える検出部の光学系等をパージ(浄化)するパージガスや、測定用のガス成分を検出部や試料酸化部へ輸送するキャリアガスとして利用するTOC計等が考案されている(特許文献1、2参照)。
【0003】
このようなTOC計では、パージガスやキャリアガス等としての条件を満足させるために、ガス中のCOを除去するためにソーダライム等のCO吸収剤が用いられる。CO吸収剤は、メーカが推奨する交換周期で交換、若しくはCO吸収剤の性能劣化時、即ち測定値への影響を確認した時点で交換している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−43245号公報
【特許文献2】特開2008−139229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
CO吸収剤の性能が劣化すると、TOC計のベースラインの乱れ、測定値のばらつき等、測定結果に影響が現れる。しかし、CO吸収剤は周囲温度、外気のCO濃度など環境の影響を受けるため、測定結果に影響を及ぼす前に適正に交換することが難しい。
【0006】
本発明は、簡単な構造で、CO吸収剤の交換時期を、周囲温度、外気のCO濃度等、外部環境に影響されることなく適正にユーザに通知できるTOC計、及びCO吸収剤の寿命評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、(イ)CO吸収剤を収納したパージガス用アブソーバと、(ロ)液体試料を導入し酸化させる試料酸化部と、(ハ)試料酸化部から導入された被測定ガス中のCOを検出し、パージガス用アブソーバを経由したガスをパージガスとして導入する検出部と、(ニ)パージガス用アブソーバと検出部との間に設けられ、パージガスが単独で検出部に被測定ガスとして導入されるように切り換える流路切り換え機構とを備えるTOC計であることを要旨とする。この第1の態様に係るTOC計は、流路切り換え機構により、定期的にパージガスを被測定ガスとして検出部に導入し、パージガス中に含まれるCOの変化を検出することにより、CO吸収剤の寿命を評価することを特徴とする。
【0008】
本発明の第2の態様は、(イ)CO吸収剤を収納したキャリアガス用アブソーバと、(ロ)キャリアガス用アブソーバを経由したキャリアガスと共に、液体試料を導入し酸化させる試料酸化部と、(ハ)試料酸化部から導入された被測定ガス中のCOを検出する検出部と、(ニ)キャリアガスのみが単独で検出部に被測定ガスとして導入されるように切り換える流路切り換え機構とを備えるTOC計であることを要旨とする。この第2の態様に係るTOC計は、流路切り換え機構により、キャリアガスを被測定ガスとして検出部に導入され、定期的にキャリアガス中に含まれるCOの変化を検出することにより、CO吸収剤の寿命を評価することを特徴とする。
【0009】
本発明の第3の態様は、(イ)CO吸収剤をそれぞれ収納したスパージガス用アブソーバと、(ロ)液体試料を導入し酸化させる試料酸化部と、(ハ)スパージガス用アブソーバを経由したスパージガスを用いて液体試料に対して通気処理を行い、無機炭素をCOに変換する無機炭素反応部と、(ニ)試料酸化部から導入された被測定ガス中のCOを検出する検出部と、(ホ)スパージガスのみが単独で検出部に被測定ガスとして導入されるように切り換える流路切り換え機構とを備えるTOC計であることを要旨とする。この第3の態様に係るTOC計は、流路切り換え機構により、定期的にスパージガスを被測定ガスとして検出部に導入し、スパージガス中に含まれるCOの変化を検出することにより、CO吸収剤の寿命を評価することを特徴とする。
【0010】
本発明の第4の態様は、CO吸収剤を収納したパージガス用アブソーバと、液体試料を導入し酸化させる試料酸化部と、試料酸化部から導入された被測定ガス中のCOを検出する検出部とを備えるTOC計において、CO吸収剤の寿命を評価するCO吸収剤の寿命評価方法に関する。この第4の態様に係るCO吸収剤の寿命評価方法は、(イ)定期的にガス導入経路を切り換え、パージガスを被測定ガスとして検出部に導入するステップと、(ロ)被測定ガスとして導入されたパージガス中に含まれるCOの変化を検出部で検出するステップと、(ハ)検出部で検出したCOの値を基準値と比較して、CO吸収剤の寿命を評価するステップとを含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の第5の態様は、CO吸収剤を収納したキャリアガス用アブソーバと、キャリアガス用アブソーバを経由したキャリアガスと共に、液体試料を導入し酸化させる試料酸化部と、試料酸化部から導入された被測定ガス中のCOを検出する検出部とを備えるTOC計において、CO吸収剤の寿命を評価するCO吸収剤の寿命評価方法に関する。この第4の態様に係るCO吸収剤の寿命評価方法は、(イ)定期的にガス導入経路を切り換え、キャリアガスのみを単独で被測定ガスとして検出部に導入するステップと、(ロ)被測定ガスとして導入されたキャリアガス中に含まれるCOの変化を検出部で検出するステップと、(ハ)検出部で検出したCOの値を基準値と比較して、CO吸収剤の寿命を評価するステップとを含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の第6の態様は、CO吸収剤をそれぞれ収納したスパージガス用アブソーバと、液体試料を導入し酸化させる試料酸化部と、スパージガス用アブソーバを経由したスパージガスを用いて液体試料に対して通気処理を行い、無機炭素をCOに変換する無機炭素反応部と、試料酸化部から導入された被測定ガス中のCOを検出する検出部とを備えるTOC計において、CO吸収剤の寿命を評価するCO吸収剤の寿命評価方法に関する。この第4の態様に係るCO吸収剤の寿命評価方法は、(イ)定期的にガス導入経路を切り換え、スパージガスのみを単独で被測定ガスとして検出部に導入するステップと、(ロ)被測定ガスとして導入されたスパージガス中に含まれるCOの変化を検出部で検出するステップと、(ハ)検出部で検出したCOの値を基準値と比較して、CO吸収剤の寿命を評価するステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡単な構造で、CO吸収剤の交換時期を、周囲温度、外気のCO濃度等、外部環境に影響されることなく適正にユーザに通知できるTOC計、及びCO吸収剤の寿命評価方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るTOC計の構成を説明する模式図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るTOC計に用いるシリンジを説明する模式図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るTOC計に用いる検出部を説明する模式図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るTOC計に用いる制御部の基本的な論理構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係るCO吸収剤の寿命評価方法を説明するフローチャートである。
【図6】図5に示すフローチャートのステップS108の内容を更に詳細に説明するフローチャートである。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係るCO吸収剤の寿命評価方法を説明するタイミング図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係るCO吸収剤の寿命評価方法を説明するトレンドグラフである。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係るTOC計の構成を説明する模式図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係るTOC計の構成を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、図面を参照して、本発明の第1〜第3の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、装置の構成等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0016】
又、以下に示す第1〜第3の実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、装置の構成、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0017】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係るTOC計は、図1に示すように、外部環境の空気から二酸化炭素(CO)を除去するCO吸収剤をそれぞれ収納したスパージガス用アブソーバ43、キャリアガス用アブソーバ48、パージガス用アブソーバ39を有するガス供給部3と、スパージガス用アブソーバ43を経由したスパージガスを用いて液体試料に対して通気処理を行い、無機炭素を除去するシリンジ(無機炭素反応部)2と、キャリアガス用アブソーバ48を経由したキャリアガスと共に、シリンジ(無機炭素反応部)2によって無機炭素(IC)を除去された液体試料を導入され、液体試料中の炭素成分を酸化させる試料酸化部18、パージガス用アブソーバ39を経由したガスをパージガスとして導入し、試料酸化部18からキャリアガスと共に導入された被測定ガス中のCOを検出する検出部6、パージガス用アブソーバ39と検出部6との間に設けられ、パージガス用アブソーバ39を経由したガスが被測定ガスとして検出部6に導入されるように切り換える流路切り換え機構(81,82)を有する測定部5とを備える。
【0018】
測定部5をなす検出部6は、例えば、図3に示すように、赤外線を吸収しない不活性ガスを封入された基準セル62と、測定対象のガスが導入される被測定ガス導入部(64,65)と、基準セル62及び被測定ガス導入部(64,65)に赤外線を照射する光源61と、光源61と対向するように配置され、特定波長の赤外線の吸収を検出する検出器66とを備える非分散型赤外線式ガス分析計(NDIR)等の赤外線分析計を採用可能である。被測定ガス導入部(64,65)は、図3に示すように、例えば光路長の長い長光路セル64と、長光路セル64より光路長の短い短光路セル65の2つのセルから構成されることが可能であるが、例示に過ぎず、図3に示す構造に限定される必要はなく、例えば単一のセル等でも構わない。長光路セル64は、比較的小さいCO濃度の測定に適し、短光路セル65は、比較的大きいCO濃度の測定に適しているので、検出部6は、測定対象のガスに応じて長光路セル64、短光路セル65を適宜選択して使用することで、より正確なCO濃度を赤外分光することが可能である。検出部6に導入されたガスは、被測定ガス導入部(64,65)を通過した後、NO検出部57へと導入される。検出器66による検出信号は、図1、図3及び図4に示す制御部7に入力され、制御部7において、信号強度、基準セル62に封入された不活性ガスによる既知濃度、試料酸化部18に導入された試料の量等から、被測定ガス導入部(64,65)に導入されたガスのCO濃度が求められる。図3に示すように、検出部6は更に、検出部6の内部のパージ(浄化)を行う検出部パージガスGを導入するためのパージガス導入部63を備える。
【0019】
図1及び図3に示す流路切り換え機構(81,82)は、内部に駆動機構を備え、それぞれのバルブの開閉を制御部7によって制御可能な三方電磁バルブ81,82又は三方電磁バルブと均等な動作をする部材、例えば複数の電磁バルブの組み合わせ等により構成可能である。又、三方電磁バルブ81,82の代わりに空気圧等の流体の圧力で駆動されるバルブ等でも構わない。三方電磁バルブ81は、流路Fを介して、被測定ガス導入部(64,65)の上流側に位置する三方電磁バルブ82と接続されている。流路切り換え機構(81,82)は、パージガス用アブソーバ39を通過した検出部パージガスGを、流路Fを介して被測定ガス導入部(64,65)に導入するように流路を切り換えることができる。図1に示すガス供給部3の抵抗管38を通過した検出部パージガスGは、流路Fを進行し、パージガス用アブソーバ39においてCOを除去され、三方電磁バルブ81を通過し、パージガス導入部63から検出部6に導入される。検出部6に導入された検出部パージガスGは、光源61、基準セル62、被測定ガス導入部(64,65)、検出器66等の間をパージする。
【0020】
図1に示すように、ガス供給部3のスパージガス用アブソーバ43、キャリアガス用アブソーバ48、パージガス用アブソーバ39にそれぞれ導入される外部環境の空気は、ガス供給部3のガス入口31から取り込まれる。ガス供給部3は、図1に示すように、流路Fの上流側から順に、ガス入口31、ガス入口31から取り込まれたガスの圧力を調節する調圧弁32、圧力計33、流路の開閉を行う電磁弁34を備え、電磁弁34の下流側において、流路Fは2方に分岐する。流路Fが2方に分岐した一方の流路Fは、調圧弁35及び流量計36を介して、測定部5へと接続され、他方の流路Fは、燃焼炉19に収納されたガス精製管37へと接続されている。ガス精製管37は、内部に酸化触媒が充填され、燃焼炉19に加熱されることによって、流入したガス中の炭素成分をCOに変換する。
【0021】
ガス精製管37の下流側において、流路Fは3方に分岐する。3方に分岐された流路F,F,Fは、それぞれ、シリンジ2のスパージガスG、測定部5のキャリアガスG、測定部5の検出部パージガスGの導入に用いられる。スパージガスGは、シリンジ2内の試料をスパージ(通気処理)し、又、試料中の既存のCOを置換するためにも用いられる。スパージガスG用の流路Fは、上流側から順に、流量を制御するマスフローコントローラ41、流量計42、ソーダライム等のCO吸収剤が充填されたスパージガス用アブソーバ43、異物を除去するメンブレンフィルタ44、3方電磁弁45を介して、シリンジ2のガス導入部23に接続される(図2参照。)。3方電磁弁45のシリンジ2と接続される弁は、通常、閉じた状態になっている。キャリアガスG用の流路Fは、上流側から順に、マスフローコントローラ46、流量計47、キャリアガス用アブソーバ48、メンブレンフィルタ49、ガスの逆流を防ぐ逆止弁16を介して、測定部5へと接続される。検出部パージガスG用の流路Fは、ガスの温度を下げ、ガス圧を調節する抵抗管38を介して、試料酸化部18、検出部6等を備える測定部5へと接続される。
【0022】
シリンジ2は、図2に示すように、円筒状のバレル21と、バレル21との内壁とでなす空間を試料空間25とし、内壁に密着しながら往復運動をするプランジャチップ22と、往復運動を駆動するようにプランジャチップ22に取り付けられたプランジャ24と、バレル21を貫通する穴を介して、試料空間25若しくはバレル21とプランジャ24との間に定義される駆動空間26に精製ガスを導入するガス導入部23とを備える。シリンジ2は、ガス導入部23からのガスの流入、プランジャチップ22の往復運動により、流体の吸入及び吐出を行う。
【0023】
バレル21は、マルチポートバルブ1の各ポートから選択的に吸入可能なオフライン試料11、試料入口12からの試料、標準試料13、酸14、希釈水15等を収容し、プランジャチップ22の位置によって、試料空間25若しくは駆動空間26にガス導入部23からガスが導入される。プランジャチップ22は、プランジャ24の先端に接続され、CO及び有機溶媒等の汚染成分がプランジャチップ22の表面から試料空間25に流れ込まないようバレル21の内壁と密着しながら往復運動する。プランジャチップ22の往復運動は、プランジャ24に設けられた駆動機構20によって行われる。
【0024】
シリンジ2は、バレル21の試料空間25に満たされた流体に対して、プランジャチップ22を介した裏側のバレル21とプランジャ24との間の駆動空間26を、ガス導入部23からの汚染成分を含まないスパージガスGをパージガスとして満たすことにより、シリンジ2の周囲の環境に汚染されたガスがバレル21内の試料空間25に漏洩しないようにできる。又、ガス導入部23は、ガスの調圧、流量制御機構及び必要に応じて流体導入のオン及びオフスイッチ機能等を備えるようにしても良い。
【0025】
マルチポートバルブ1は、第1のポートにオフライン試料11が、第1の流路Pを介して接続されており、第2のポートにオンライン試料用の試料入口12が、第2の流路Pを介して接続されている。試料として上下水道水、各種プラント用水、河川等の液体試料が使用可能である。第3のポートには、既知濃度の標準試料13が、第3の流路Pを介して接続されている。第4のポートには、塩酸、燐酸等の酸14が、第4の流路Pを介して接続されている。第5のポートには希釈、洗浄等に用いる希釈水15が、第5の流路Pを介して接続されている。第6のポートは、第6の流路Pを介して、図示を省略した排気口に接続されている。第7のポートは、第7の流路Pを介して、測定部5の試料酸化部18に接続されている。第8のポートは、第8の流路Pを介して、排水口であるドレイン100に接続されている。共通ポートは、共通流路Pを介して、シリンジ2と接続されている。マルチポートバルブ1は、駆動機構10によって駆動され、第1〜第8のポートと共通ポートとの接続を切り換える。
【0026】
測定部5を構成する試料酸化部18は、図1に示すように、ガス供給部3のガス精製管37と共に燃焼炉19に収納され。測定部5としては、他に、検出部6と、流路切り換え機構(81,82)と、ガス中の窒素酸化物(NO)濃度を測定するNO検出部57と、NO検出部57に用いるオゾン(O)を発生するオゾン発生装置56と、NO検出部57で用いられたオゾンを分解するオゾン分解装置58等とを備える。
【0027】
試料酸化部18は、第7の流路Pを介してマルチポートバルブ1の第7のポートに接続された試料入口171と、ドレイン100に接続されたドレイン管172とを有する試料注入部17を上部に備える。試料注入部17は、試料入口171からの流体を試料酸化部18内に導入するか、ドレイン管172に導入するかを、駆動機構170によって駆動されるスライド式の機構によって決定する。駆動機構170は、測定部制御手段705によって駆動制御される。試料酸化部18は更に、上部に流路Fが接続されたキャリアガス導入部181を備え、キャリアガス用アブソーバ48及びメンブレンフィルタ49を通過したキャリアガスGは、キャリアガス導入部181から試料酸化部18の内部に導入される。
【0028】
試料酸化部18は、内部に酸化コバルト、酸化銅、アルミナ等の金属酸化物、白金等の貴金属等が酸化触媒として充填され、燃焼炉19により加熱されることによって、試料中の炭素成分をCOに、窒素成分をNOに変換する。試料酸化部18において加熱された試料ガスは、試料酸化部18の下部から引き出される流路Fを進行する。流路Fは、上流側から順に、水を分離し、排出するスクラバ51、水分を除去する電子クーラ52、ハロゲン成分を除去するハロゲンスクラバ53、三方電磁バルブ82、メンブレンフィルタ54を介して、検出部6に接続される。電子クーラ52において除去された水分は、ドレインポット55を経てドレイン100に排出される。
【0029】
NO検出部57は、化学発光式NO計(CLM)であり、一酸化窒素(NO)とオゾンとの反応時の化学発光の強度が、NOの分子の量に比例することを利用し、測定対象のガス中のNO濃度を測定することにより、ガス中のTN(全窒素)濃度を測定する。測定に用いられるオゾンは、NO検出部57に接続されたオゾン発生装置56から供給される。オゾン発生装置56は、ガス供給部3の調圧弁35及び流量計36を介して導入されたガスをオゾン源として用いる。NO検出部57から排出されたガスはオゾンを含んでおり、オゾン分解装置58においてオゾンが熱分解された後、アブソーバ59においてCOが除去され、排気口500から排気される。
【0030】
制御部7は、図4に示すように、演算装置(CPU)70と、プログラム記憶装置711と、検出信号記憶装置712と、測定情報記憶装置713と、運転履歴記憶装置714と、入出力制御部72と、入力装置731と、出力装置732と、表示装置733とを備え、ノイマン型コンピュータのハードウェア構成をなしている。
【0031】
演算装置70は、第1の実施の形態に係るTOC計の定期点検を行うタイミングを判定する定期点検判定手段700と、マルチポートバルブ駆動回路741を介して、マルチポートバルブ1の駆動制御するマルチポートバルブ制御手段701と、プランジャ駆動回路742を介して、シリンジ2のプランジャ24を駆動制御するプランジャ制御手段702と、ガス供給部駆動回路743を介して、調圧弁32,35、電磁弁34、マスフローコントローラ41,46、3方電磁弁45の駆動制御をすることで各流路の流体の流量を制御するガス供給部制御手段703と、測定部駆動回路744を介して、流路切り換え機構(81,82)の駆動制御することで流路を切り換える流路切り換え機構制御手段704と、検出部6及びNO検出部57を駆動制御する他、測定部5の各部の駆動を制御する測定部制御手段705と、検出部6及びNO検出部57からの検出信号を処理する検出信号処理手段706と、スパージガス用アブソーバ43、キャリアガス用アブソーバ48、パージガス用アブソーバ39に充填されたCO吸収剤の寿命を評価する寿命評価手段707と、スパージガス用アブソーバ43、キャリアガス用アブソーバ48、パージガス用アブソーバ39が交換時期であることを表示装置733に表示させる交換時期通知手段708と、第1の実施の形態に係るTOC計が前回行った定期点検からの累積時間若しくは累積稼働時間等を計算する累積時間計算手段(時計)709とを論理構成として有する。
【0032】
プログラム記憶装置711は、第1の実施の形態に係るTOC計の各部の駆動を制御するための一連のプログラムを格納する。検出信号記憶装置712は、検出部6において検出された信号強度若しくはCO濃度と、規定値として、高純度空気、高純度窒素、新品のCO吸収剤等による既知の信号強度若しくはCO濃度と同等の値とを格納する。測定情報記憶装置713は、試料ID、測定方法、測定日時、測定結果等の情報を格納する。運転履歴記憶装置714は、累積時間計算手段(時計)709が計算した第1の実施の形態に係るTOC計の稼働時間、日時等の運転履歴を格納する。
【0033】
入力装置731、出力装置732、及び表示装置733は、入出力制御部72を介して演算装置70とのデータの送受信を行う。図4において、入力装置731はキーボード、マウス、ライトペン等で構成される。入力装置731より分析実行者は、測定対象の試料ID、測定方法等の分析条件の設定を行うことが可能である。更に、入力装置731より、測定中止の命令、設定した各情報の修正等を行うことも可能である。又、出力装置732及び表示装置733は、それぞれ、プリンタ装置及びディスプレイ装置等により構成することが可能である。表示装置733は、測定に関する一連の設定画面や分析結果等の他、アブソーバの交換時期を通知するメッセージ等を表示する。
【0034】
なお、図4のプログラム記憶装置711、検出信号記憶装置712、測定情報記憶装置713は、論理構成を模式的に表示したものであり、現実の物理的構成としては、例えば、プログラム記憶装置711、検出信号記憶装置712、測定情報記憶装置713等の記憶内容は同一のハードウェアに格納されても構わない。記憶装置であるハードウェアは、例えば、SRAM、DRAM等の揮発性の記憶装置からなる主記憶装置、及び、ハードディスク(HD)等の磁気ディスク、磁気テープ、光ディスク、光磁気ディスク等の不揮発性の記憶装置からなる補助記憶装置が使用可能である。補助記憶装置としては、その他、RAMディスク、ICカード、フラッシュメモリーカード、USBフラッシュメモリー、フラッシュディスク(SSD)等が使用可能である。
【0035】
−CO吸収剤の寿命評価方法−
図5のフローチャートを用いて、本発明の第1の実施の形態に係るTOC計が備えるパージガス用アブソーバ39のCO吸収剤の寿命評価方法を図1〜図3を参照しながら、一例として説明する:
(イ)先ず、ステップS101において、累積時間計算手段(時計)709が、運転履歴記憶装置714から運転履歴を読み出し、累積時間を算出すると、定期点検判定手段700は、累積時間が所定の期間を超過したか否かを判定し、第1の実施の形態に係るTOC計が定期点検のタイミングであるか否かを判定する。定期点検のタイミングであると判定された場合は、ステップS102に進み、測定部制御手段705は、検出部6に赤外分光の準備を開始する命令を送信し、検出部6の赤外分光の準備が開始される。ステップS101において、定期点検のタイミングではないと判定された場合は、ステップS107に進む。検出部6は赤外分光で検出された信号を制御部7に送信し、検出信号処理手段706において、検出信号が処理され、検出された信号強度若しくは算出されたCO濃度を検出信号記憶装置712に格納する。このとき、例えば被測定ガス導入部(64,65)にはキャリアガスGのみが被測定ガスとして導入され、検出部6はキャリアガスGのCO濃度を検出している。キャリアガスGは、流路Fを経てキャリアガス用アブソーバ48によってCOが吸収されたガスである。ステップS102においては、3方電磁弁45のシリンジ2側の弁は、閉じた状態でスパージガスGをシリンジ2に送出していない。又、流路切り換え機構(81,82)間の流路Fは開通しておらず、検出器パージガスGは検出部6内に導入されていない。図7は検出部6の赤外分光の準備を開始してからの時間と信号強度との関係を示す図である。キャリアガスGによる信号強度の値は、図7に黒塗りの菱形(◆)で示すように100である。
【0036】
(ロ)ステップS102において、流路切り換え機構制御手段704は流路切り換え機構(81,82)にバルブの開閉を制御する信号を送信し、被測定ガスとしてパージガス用アブソーバ39を通過した検出部パージガスGのみが流路Fを通過して被測定ガスとして検出部6に導入されるように流路を切り換える。流路を切り換えた後、ステップS103において、検出信号処理手段706による検出部パージガスGの赤外分光を開始する。検出部パージガスGによる赤外分光信号強度の値は、図7に黒塗りの丸(●)で示すように250となっている。ステップS101において検出部6の駆動を開始してから10分経過した時点で流路を切り換え、検出部6に検出部パージガスGが導入されるようにしたので、図7に「測定開始位置(時刻)」を示すように、開始後10分の時点で検出部6の信号強度が変化していることが確認できる。
【0037】
(ハ)ステップS104において、寿命評価手段707は、検出された信号強度と規定値とを検出信号記憶装置712から読み出し、検出された信号強度が規定値以上か否かを判定する。検出された信号強度が規定値以上と判定された場合は、パージガス用アブソーバ39の吸収性能が低減し、CO吸収剤が寿命であるとして、ステップS105に進み、交換時期通知手段708は、表示装置733に測定対象のパージガス用アブソーバ39のCO吸収剤の交換を促すメッセージを表示させる。表示装置733が、パージガス用アブソーバ39のCO吸収剤の交換を促すメッセージを表示した場合は、TOC計の操作者又は設備管理者等が、TOC計を停止し、パージガス用アブソーバ39のCO吸収剤の交換を行う。検出された信号強度が規定値より低いと判定された場合は、ステップS106に進む。
【0038】
(ニ)ステップS106において、プログラム記憶装置711に記憶された内容若しくは入力装置731からの入力に基づき、更にスパージガス用アブソーバ43、キャリアガス用アブソーバ48の吸収性能を評価するか否かを決定する。更にスパージガス用アブソーバ43、キャリアガス用アブソーバ48の性能を評価する場合は再度ステップS102に戻る。スパージガス用アブソーバ43、キャリアガス用アブソーバ48の性能を評価しない場合は、ステップS107に進み、プログラム記憶装置711に記憶された内容若しくは入力装置731からの入力に基づき、TOC(全有機体炭素)及びTN(全窒素)濃度の測定を行うか否かを決定する。TOC、TN測定を行う場合はステップS108に進み、TOC、TN測定を行う。ステップS108において、TOC、TN測定を行った後は、ステップS109に進み、流路切り換え機構制御手段704が流路切り換え機構(81,82)にバルブの開閉を制御する信号を送信し、パージガスGをパージガス導入部63に導入するように流路を切り換えることによって検出部6をパージし、ステップS101に戻る。TOC、TN測定を行わない場合はステップS110に進み、検出部6のパージを行うか否かを決定する。検出部6のパージを行う場合は、ステップS111において、検出部6をパージし、ステップS101に戻る。検出部6のパージを行わない場合は終了する。
【0039】
又、図8に示すように、制御部7は検出部パージガスGを測定した結果を一定周期、例えば1ヶ月周期で並べてトレンドグラフとして記録、出力することも可能である。信号強度の規定値を400とした。3月1日の測定において、検出された信号強度は規定値以上となっているので、寿命評価手段707によって信号強度が規定値以上と判断され、交換時期通知手段708は、パージガス用アブソーバ39のCO吸収剤の交換時期であることを示すメッセージを表示装置733に表示する。制御部7は、同様に、スパージガス用アブソーバ43、キャリアガス用アブソーバ48の性能を測定した結果を、表示装置733に一定周期で並べてトレンドグラフとして記録、出力することも可能である。
【0040】
ステップS101において、累積時間計算手段(時計)709が、自動的に定期点検のタイミングを判定する代わりに、TOC計の操作者又は設備管理者等が手動でTOC計に用いるCO吸収剤の寿命評価方法を開始するようにしても良い。例えば、第1の実施の形態に係るTOC計が有する機能の一覧を、マウスやキーボード等の入力装置731からの入力によりクリック可能なボタンとして、表示装置733に表示することができる。具体的には、「保守」と表示されたボタンをクリックすると、第1の実施の形態に係るTOC計の保守に関する項目が表示され、表示された項目内の「二酸化炭素吸収剤」と表示されたボタンをクリックし、続いて「測定開始」と表示されたボタンをクリックすることにより、第1の実施の形態に係るTOC計に用いるCO吸収剤の寿命評価方法を開始するような態様も可能である。
【0041】
−ステップS108の内容−
図6のフローチャートを用いて、上述した図5のフローチャートのステップS108の内容の一例について説明する:
(イ)先ず、ステップS71において、試料として、オフライン試料11若しくは試料入口12からのオンライン試料をシリンジ2に採取するように、駆動機構10によってマルチポートバルブ1を駆動し、共通流路Pと、第1の流路P若しくは第2の流路Pとを接続する。駆動機構20によって、プランジャ24を引き、シリンジ2内に試料を適量吸引した後、駆動機構10によってマルチポートバルブ1を駆動し、共通流路Pと第4の流路Pとを接続する。駆動機構20によってプランジャ24を引き、シリンジ2に酸14を少量吸引する。シリンジ2は、例えば容量5mlとすることが可能である。駆動機構10によってマルチポートバルブ1を駆動し、共通流路Pと第6の流路Pとを接続した後、3方電磁弁45のシリンジ2側の弁を開き、ガス導入部23から酸14が加えられ酸性になった試料に、流路Fを経たスパージガスGを一定時間連続して送り込むことでスパージ(通気処理)する。スパージにより試料の無機炭素(IC)成分は、COに変換され、更に、変換されたCOは、スパージガスGにより排出され、シリンジ2内から除去される。
【0042】
(ロ)ステップS72において、駆動機構10によってマルチポートバルブ1を駆動し、共通流路Pと第7の流路Pとを接続する。駆動機構20によってプランジャ24が押し込まれ、IC成分が除去された試料は、第7の流路Pを通り、試料酸化部18に送出される。試料を送出する際には、バレル21に設けられたガス導入部23から、キャリアガスとして、スパージガスGが用いられて試料が試料酸化部18に輸送され、試料は、試料酸化部18内で燃焼炉19によって加熱され試料ガスとなり、試料ガス中の炭素成分がCOに変換され、窒素成分がNOに変換される。
【0043】
(ハ)ステップS73において、流路Fからキャリアガス導入部181を介して試料酸化部18内にキャリアガスGが導入され、試料ガスは、流路Fのスクラバ51、電子クーラ52、ハロゲンスクラバ53を順に通過することにより、脱水、冷却除湿、ハロゲン除去され、検出部6において、試料ガス中に含まれるCOが赤外分光により検出される。検出部6を通過した試料ガスは、NO検出部57に導入され、NO検出部57において、試料ガス中に含まれるNOが検出される。検出部6、NO検出部57による検出信号は、制御部7の検出信号処理手段706において処理され、CO濃度、NO濃度を算出し、終了する。
【0044】
−キャリアガス用アブソーバのCO吸収剤の評価−
キャリアガス用アブソーバ48に充填されたCO吸収剤の寿命の評価方法は、図5に示すフローチャートの流路を変更するステップS102の内容は以下の通りとなる:
先ず、3方電磁弁45のシリンジ2側の弁を閉じる、駆動機構10によりマルチポートバルブ1を駆動し、共通流路Pと第7の流路Pとの接続を解除する、若しくは試料注入部17をスライドさせることにより、スパージガスGが試料酸化部18内に導入されないようにする。三方電磁バルブ82の流路F側の弁が開いている場合は、流路F側の弁を閉じ、ハロゲンスクラバ53側の弁を開き、検出部パージガスGが流路Fからパージガス導入部63に、キャリアガスGが流路Fから検出部6に被測定ガスとして導入されるようにする。キャリアガス用アブソーバ48を通過したキャリアガスGのみが、キャリアガス導入部181から試料酸化部18内に導入され、スクラバ51、電子クーラ52、ハロゲンスクラバ53を順に通過し、検出部6の被測定ガス導入部(64,65)に導入されるので、検出部6から制御部7に検出信号が入力され、制御部7において、キャリアガスGに含まれるCOの濃度から、キャリアガス用アブソーバ48に充填されたCO吸収剤の寿命の評価をすることができる。
【0045】
−スパージガス用アブソーバのCO吸収剤の評価−
スパージガス用アブソーバ43に充填されたCO吸収剤の寿命の評価方法は、図5に示すフローチャートの流路を変更するステップS102の内容は以下の通りとなる:
先ず、駆動機構10によりマルチポートバルブ1を駆動し、共通流路Pと第7の流路Pとを接続することでシリンジ2と試料酸化部18とを開通する。続いて、流路Fにおいて、スパージガス用アブソーバ43を通過したスパージガスGを、ガス導入部23から試料空間25へ導入可能なように、プランジャ24を駆動機構20によって駆動し、又、3方電磁弁45のシリンジ2側の弁を開く。三方電磁バルブ82の流路F側の弁が開いている場合は、流路F側の弁を閉じ、ハロゲンスクラバ53側の弁を開き、検出部パージガスGが流路Fからパージガス導入部63に、スパージガス用アブソーバ43を通過したスパージガスGのみが流路Fから検出部6に被測定ガスとして導入されるようにする。スパージガスGは、シリンジ2、マルチポートバルブ1、試料酸化部18、流路Fのスクラバ51、電子クーラ52、ハロゲンスクラバ53、三方電磁バルブ82、メンブレンフィルタ54を順に通過し、検出部6の被測定ガス導入部(64,65)に導入されるので、検出部6から制御部7に検出信号が入力され、制御部7において、スパージガスGに含まれるCOの濃度から、スパージガス用アブソーバ43に充填されたCO吸収剤の寿命の評価をすることができる。
【0046】
図1に示す流路切り換え機構(81,82)と同様に、パージガス用アブソーバ39、及びパージガス用アブソーバ39を経由したガスを、被測定ガスとして検出部6に被測定ガスとして導入するように流路を切り換える流路切り換え機構を別途備えるようにしても良いが、なくても良い。
【0047】
以上のように、第1の実施の形態に係るTOC計においては、スパージガス用アブソーバ43、キャリアガス用アブソーバ48、パージガス用アブソーバ39をそれぞれ通過したガスを、それぞれ検出部6に被測定ガスとして導入するように定期的に流路を変更することにより、簡単な構造で、CO吸収剤の交換時期を、周囲温度、外気のCO濃度等、外部環境に影響されることなく適正にユーザに通知できる。
【0048】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態に係るTOC計においては、TOCの測定方法として、無機炭素(IC)成分を除去してから全炭素(TC)の測定を行う不揮発性有機炭素(NPOC)の測定を用いて説明したが、IC成分を除去せず測定したTC濃度と、別途測定したIC濃度との差をとる差し引き法を用いても良い。
【0049】
本発明の第2の実施の形態に係るTOC計は、図9に示すように、外部環境の空気から二酸化炭素(CO)を除去するCO吸収剤をそれぞれ収納したキャリアガス用アブソーバ48、パージガス用アブソーバ39を有するガス供給部3と、キャリアガス用アブソーバ48を経由したキャリアガスと共に、液体試料中の炭素成分を酸化させる試料酸化部18、液体試料に対し通気処理を行い、無機炭素成分を処理する無機炭素反応部(IC反応部)92、パージガス用アブソーバ39を経由したガスをパージガスとして導入し、試料酸化部18からキャリアガスと共に導入された被測定ガス中のCOを検出する検出部6、パージガス用アブソーバ39と検出部6との間に設けられ、パージガス用アブソーバ39を経由したガスが被測定ガスとして検出部6に導入されるように切り換える流路切り換え機構(81,82)を有する測定部5とを備える。
【0050】
測定部5をなす検出部6は、例えば、図3に示したのと同様に、赤外線を吸収しない不活性ガスを封入された基準セル62と、測定対象のガスが導入される被測定ガス導入部(64,65)と、基準セル62及び被測定ガス導入部(64,65)に赤外線を照射する光源61と、光源61と対向するように配置され、特定波長の赤外線の吸収を検出する検出器66とを備える非分散型赤外線式ガス分析計(NDIR)等の赤外線分析計を採用可能である。被測定ガス導入部(64,65)は、図3に示したのと同様に、例えば、長光路セル64と、長光路セル64より光路長の短い短光路セル65の2つのセルから構成されることが可能である。
【0051】
無機炭素反応部92は、図9に示すように、上部にIC試料注入部91を備え、IC試料注入部91は、マルチポートバルブ1の第6のポートに接続された第6の流路Pと接続されている。第6の流路Pは、IC試料注入部91を介して、液体試料、酸14等を無機炭素反応部92内に導入する。無機炭素反応部92の下部は、流路Fと接続されており、試料酸化部18は、スクラバ51、流路Fを介して、キャリアガスG、試料ガスを無機炭素反応部92に送出する。
【0052】
液体試料、酸14等は、第1の実施の形態に係るTOC計と同様に、シリンジ2、マルチポートバルブ1の駆動によって吸入、吐出される。試料酸化部18において、液体試料中のTC成分は酸化されCOとなる。TC成分によるCOを含む試料ガスは、スクラバ51、無機炭素反応部92、電子クーラ52、ハロゲンスクラバ53、三方電磁バルブ82、メンブレンフィルタ54を通過し、被測定ガスとして検出部6に導入され、TC成分によるCO濃度が測定される。一方、マルチポートバルブ1及びシリンジ2から第6の流路Pを介して、液体試料及び酸14が無機炭素反応部92内に導入され、試料酸化部18を介して、キャリアガスGがスパージガスとして供給されることにより、通気処理をされ、IC成分をCOに変換する。IC成分によるCOは、キャリアガスGによって、無機炭素反応部92から、電子クーラ52、ハロゲンスクラバ53、三方電磁バルブ82、メンブレンフィルタ54を通過し、被測定ガスとして検出部6に導入され、IC成分によるCO濃度が測定できる。
【0053】
第2の実施の形態に係るTOC計では、制御部7の演算装置が、以上のように測定されたTC濃度からIC濃度を差し引くことにより、液体試料中のTOC濃度を測定する。
【0054】
図9に示す流路切り換え機構(81,82)は、内部に駆動機構を備え、それぞれのバルブの開閉を制御部7によって制御可能な三方電磁バルブ81,82又は三方電磁バルブと均等な動作をする部材、例えば複数の電磁バルブの組み合わせ等により構成可能である。三方電磁バルブ81は、流路Fを介して、被測定ガス導入部(64,65)の上流側に位置する三方電磁バルブ82と接続されている。流路切り換え機構(81,82)は、パージガス用アブソーバ39を通過した検出部パージガスGを、流路Fを介して被測定ガス導入部(64,65)に導入するように流路を切り換えることができる。図9に示すガス供給部3の抵抗管38を通過した検出部パージガスGは、流路Fを進行し、パージガス用アブソーバ39においてCOを除去され、三方電磁バルブ81を通過し、パージガス導入部63から検出部6に導入される。検出部6に導入された検出部パージガスGは、光源61、基準セル62、被測定ガス導入部(64,65)、検出器66等の間をパージする。
【0055】
図9に示すように、ガス供給部3のキャリアガス用アブソーバ48、パージガス用アブソーバ39にそれぞれ導入される外部環境の空気は、ガス供給部3のガス入口31から取り込まれる。ガス供給部3は、図9に示すように、流路Fの上流側から順に、ガス入口31、ガス入口31から取り込まれたガスの圧力を調節する調圧弁32、圧力計33、流路の開閉を行う電磁弁34を備え、電磁弁34の下流側において、流路Fは2方に分岐する。流路Fが2方に分岐した一方の流路Fは、調圧弁35及び流量計36を介して、測定部5へと接続され、他方の流路Fは、燃焼炉19に収納されたガス精製管37へと接続されている。ガス精製管37は、内部に酸化触媒が充填され、燃焼炉19に加熱されることによって、流入したガス中の炭素成分をCOに変換する。
【0056】
第2の実施の形態に係るTOC計において説明したキャリアガス用アブソーバ48に充填されたCO吸収剤の寿命評価方法は、図9に示す第2の実施の形態に係るTOC計においても、図1に示すTOC計と同様に実施することができる。図9に示すTOC計において、キャリアガスGは、試料酸化部18から排出された後、スクラバ51、無機炭素反応部92、電子クーラ52、ハロゲンスクラバ53を順に通過し、検出部6の被測定ガス導入部(64,65)に導入されるようにすれば良い。
【0057】
(第3の実施の形態)
第1の実施の形態に係るTOC計は、スパージガスG及びキャリアガスGを、試料酸化部18を経由させて検出部6に導入したが、スパージガス用アブソーバ43を通過したスパージガスG及びキャリアガス用アブソーバ48を通過したキャリアガスGを直接検出部6に導入するための流路及び流路切り換え機構を備えるようにしても良い。
【0058】
第3の実施の形態に係るTOC計は、図10に示すように、第1の実施の形態に係るTOC計の構成に、更に、流路Fの、スパージガス用アブソーバ43の下流側、シリンジ2の上流側に位置する三方電磁バルブ83と、流離Fの、キャリアガス用アブソーバ48の下流側、試料酸化部18の上流側に位置する三方電磁バルブ84と、流路Fの、ハロゲンスクラバ53の下流側、メンブレンフィルタ54の上流側に位置し、三方電磁バルブ83,84とそれぞれ流路F,F10を介して接続された五方電磁バルブ85とを備える。流路切り換え機構(83,84,85)は、それぞれ内部に駆動機構を備え、バルブを開閉を制御部7の流路切り換え機構制御手段704によって制御することができる。
【0059】
第1の実施の形態に係るTOC計において、三方電磁バルブ81から三方電磁バルブ82に接続される流路Fは、第3の実施の形態に係るTOC計において、三方電磁バルブ81から五方電磁バルブ85の1つの弁に接続されており、三方電磁バルブ82が五方電磁バルブ85に置き換わっている。五方電磁バルブ85は、検出部6側のバルブの他の4つのバルブのいずれか1つから流入されるガスを選択的に検出部6に導入する。
【0060】
第3の実施の形態に係るTOC計においてCO吸収剤の寿命を評価するには、流路Fを流れるスパージガスG、流路Fを流れるキャリアガスG、流路Fを流れる検出部パージガスGのいずれかを、検出部6の被測定ガス導入部(64,65)に導入するように、流路切り換え機構制御手段704は、三方電磁バルブ81,83,84,85がそれぞれ備えるバルブの開閉を制御すれば良い。スパージガス用アブソーバ43の吸収性能を評価する場合は、流路切り換え機構制御手段704により、流路切り換え機構83,85のバルブの開閉を制御し、第1の43を通過したスパージガスGが流路Fを経由し、スパージガスGのみが検出部6の被測定ガス導入部(64,65)に導入されるようにする。キャリアガス用アブソーバ48の吸収性能を評価する場合は、流路切り換え機構制御手段704により、流路切り換え機構84,85のバルブの開閉を制御し、キャリアガス用アブソーバ48を通過したキャリアガスGが流路F10を経由し、キャリアガスGのみが検出部6の被測定ガス導入部(64,65)に導入されるようにする。
【0061】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は第1〜第3の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0062】
第1〜第3の実施の形態においては、酸化触媒を用いた燃焼触媒酸化方式の試料酸化部18について説明したが、酸化剤、紫外線を用いた湿式酸化方式であっても良く、熱分解法を用いたオゾン分解装置58は、活性炭法、二酸化マンガン等による触媒法等を用いた他の方式の装置であっても良い。
【0063】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0064】
〜F10…流路
…共通流路
〜P…第1〜第8の流路
1…マルチポートバルブ
2…シリンジ(無機炭素反応部)
3…ガス供給部
5…測定部
6…検出部
7…制御部
10…駆動機構
11…オフライン試料
12…試料入口
13…標準試料
14…酸
15…希釈水
16…逆止弁
17…試料注入部
18…試料酸化部
19…燃焼炉
20…駆動機構
21…バレル
22…プランジャチップ
23…ガス導入部
24…プランジャ
25…試料空間
26…駆動空間
31…ガス入口
32,35…調圧弁
33…圧力計
34…電磁弁
36,42,47…流量計
37…ガス精製管
38…抵抗管
39…パージガス用アブソーバ
41,46…マスフローコントローラ
43…スパージガス用アブソーバ
44,49,54…メンブレンフィルタ
45…3方電磁弁
48…キャリアガス用アブソーバ
51…スクラバ
52…電子クーラ
53…ハロゲンスクラバ
55…ドレインポット
56…オゾン発生装置
57…NO検出部
58…オゾン分解装置
59…アブソーバ
61…光源
62…基準セル
63…パージガス導入部
64…長光路セル
65…短光路セル
66…検出器
70…演算装置
72…入出力制御部
81,82,83,84…三方電磁バルブ(流路切り換え機構)
85…五方電磁バルブ(流路切り換え機構)
91…IC試料注入部
92…無機炭素反応部
100…ドレイン
170…駆動機構
171…試料入口
172…ドレイン管
181…キャリアガス導入部
500…排気口
701…マルチポートバルブ制御手段
702…プランジャ制御手段
703…ガス供給部制御手段
704…流路切り換え機構制御手段
705…測定部制御手段
706…検出信号処理手段
707…寿命評価手段
708…交換時期通知手段
711…プログラム記憶装置
712…検出信号記憶装置
713…測定情報記憶装置
731…入力装置
732…出力装置
733…表示装置
741…マルチポートバルブ駆動回路
742…プランジャ駆動回路
743…ガス供給部駆動回路
744…測定部駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CO吸収剤を収納したパージガス用アブソーバと、
液体試料を導入し酸化させる試料酸化部と、
前記試料酸化部から導入された被測定ガス中のCOを検出し、前記パージガス用アブソーバを経由したガスをパージガスとして導入する検出部と、
前記パージガス用アブソーバと前記検出部との間に設けられ、前記パージガスが単独で前記検出部に前記被測定ガスとして導入されるように切り換える流路切り換え機構とを備え、
前記流路切り換え機構により、定期的に前記パージガスを前記被測定ガスとして前記検出部に導入し、前記パージガス中に含まれるCOの変化を検出することにより、前記CO吸収剤の寿命を評価することを特徴とするTOC計。
【請求項2】
CO吸収剤を収納したキャリアガス用アブソーバを更に備え、
前記試料酸化部は、前記キャリアガス用アブソーバを経由したキャリアガスと共に、前記液体試料を導入し酸化させ、
前記流路切り換え機構が、定期的に前記キャリアガスのみを単独で前記被測定ガスとして前記検出部に導入し、前記キャリアガス中に含まれるCOの変化を検出することにより、前記キャリアガス用アブソーバのCO吸収剤の寿命を評価することを特徴とする請求項1に記載のTOC計。
【請求項3】
CO吸収剤を収納したキャリアガス用アブソーバと、
前記キャリアガス用アブソーバを経由したキャリアガスと共に、液体試料を導入し酸化させる試料酸化部と、
前記試料酸化部から導入された被測定ガス中のCOを検出する検出部と、
前記キャリアガスのみが単独で前記検出部に被測定ガスとして導入されるように切り換える流路切り換え機構とを備え、
前記流路切り換え機構により、前記キャリアガスを前記被測定ガスとして前記検出部に導入され、定期的に前記キャリアガス中に含まれるCOの変化を検出することにより、CO吸収剤の寿命を評価することを特徴とするTOC計。
【請求項4】
CO吸収剤を収納したスパージガス用アブソーバと、
前記スパージガス用アブソーバを経由したスパージガスを用いて前記液体試料に対して通気処理を行い、無機炭素をCOに変換する無機炭素反応部
とを更に備え、前記流路切り換え機構が、定期的に前記スパージガスのみを単独で前記被測定ガスとして前記検出部に導入し、前記スパージガス中に含まれるCOの変化を検出することにより、前記スパージガス用アブソーバのCO吸収剤の寿命を評価することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のTOC計。
【請求項5】
CO吸収剤をそれぞれ収納したスパージガス用アブソーバと、
液体試料を導入し酸化させる試料酸化部と、
前記スパージガス用アブソーバを経由したスパージガスを用いて前記液体試料に対して通気処理を行い、無機炭素をCOに変換する無機炭素反応部と、
前記試料酸化部から導入された被測定ガス中のCOを検出する検出部と、
前記スパージガスのみが単独で前記検出部に被測定ガスとして導入されるように切り換える流路切り換え機構とを備え、
前記流路切り換え機構により、定期的に前記スパージガスを前記被測定ガスとして前記検出部に導入し、前記スパージガス中に含まれるCOの変化を検出することにより、前記CO吸収剤の寿命を評価することを特徴とするTOC計。
【請求項6】
CO吸収剤を収納したパージガス用アブソーバと、液体試料を導入し酸化させる試料酸化部と、前記試料酸化部から導入された被測定ガス中のCOを検出する検出部とを備えるTOC計において、前記CO吸収剤の寿命を評価するCO吸収剤の寿命評価方法であって、
定期的にガス導入経路を切り換え、前記パージガスを前記被測定ガスとして前記検出部に導入するステップと、
前記被測定ガスとして導入された前記パージガス中に含まれるCOの変化を前記検出部で検出するステップと、
前記検出部で検出したCOの値を基準値と比較して、前記CO吸収剤の寿命を評価するステップ
とを含むことを特徴とするCO吸収剤の寿命評価方法。
【請求項7】
前記TOC計がCO吸収剤を収納したキャリアガス用アブソーバを更に備え、前記試料酸化部が、前記キャリアガス用アブソーバを経由したキャリアガスと共に、前記液体試料を導入し酸化させる場合において、
定期的に前記キャリアガスのみを単独で前記被測定ガスとして前記検出部に導入し、前記キャリアガス中に含まれるCOの変化を検出するステップを更に含むことを特徴とする請求項6に記載のCO吸収剤の寿命評価方法。
【請求項8】
CO吸収剤を収納したキャリアガス用アブソーバと、前記キャリアガス用アブソーバを経由したキャリアガスと共に、液体試料を導入し酸化させる試料酸化部と、前記試料酸化部から導入された被測定ガス中のCOを検出する検出部とを備えるTOC計において、前記CO吸収剤の寿命を評価するCO吸収剤の寿命評価方法であって、
定期的にガス導入経路を切り換え、前記キャリアガスのみを単独で前記被測定ガスとして前記検出部に導入するステップと、
前記被測定ガスとして導入された前記キャリアガス中に含まれるCOの変化を前記検出部で検出するステップと、
前記検出部で検出したCOの値を基準値と比較して、前記CO吸収剤の寿命を評価するステップ
とを含むことを特徴とするCO吸収剤の寿命評価方法。
【請求項9】
前記TOC計がCO吸収剤を収納したスパージガス用アブソーバと、前記スパージガス用アブソーバを経由したスパージガスを用いて前記液体試料に対して通気処理を行い、無機炭素をCOに変換する無機炭素反応部とを更に備え、
定期的に前記スパージガスのみを単独で前記被測定ガスとして前記検出部に導入し、前記スパージガス中に含まれるCOの変化を検出するステップを更に含むことを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載のCO吸収剤の寿命評価方法。
【請求項10】
CO吸収剤をそれぞれ収納したスパージガス用アブソーバと、液体試料を導入し酸化させる試料酸化部と、前記スパージガス用アブソーバを経由したスパージガスを用いて前記液体試料に対して通気処理を行い、無機炭素をCOに変換する無機炭素反応部と、前記試料酸化部から導入された被測定ガス中のCOを検出する検出部とを備えるTOC計において、前記CO吸収剤の寿命を評価するCO吸収剤の寿命評価方法であって、
定期的にガス導入経路を切り換え、前記スパージガスのみを単独で前記被測定ガスとして前記検出部に導入するステップと、
前記被測定ガスとして導入された前記スパージガス中に含まれるCOの変化を前記検出部で検出するステップと、
前記検出部で検出したCOの値を基準値と比較して、前記CO吸収剤の寿命を評価するステップ
とを含むことを特徴とするCO吸収剤の寿命評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−53112(P2011−53112A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202926(P2009−202926)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】