説明

U字形電線受け具用アタッチメント

【課題】
U字形電線受け具との嵌合力が強く、U字形電線受け具から外れにくいU字形電線受け具用アタッチメントを提供する。
【解決手段】
U字形電線受け具10の下部湾曲部16に装着される曲がり部24と、平行立ち上がり部18に装着される一対の直線部26とを一体に有し、前記直線部26にはU字形電線受け具の立ち上がり部18が挿入される孔30が形成されている。この孔30は、下端側の内径が前記立ち上がり部18の外径より大きく、上端側の内径が前記立ち上がり部18の外径より小さいテーパー状になっており、これにより前記立ち上がり部18を孔30に挿入したときに、立ち上がり部18の先端部が孔30にきつく嵌合できるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーハーネスの組立に用いるU字形電線受け具用アタッチメントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用のワイヤーハーネスは次のようにして組み立てられる。まず、ワイヤーハーネスの組立線図が描かれた布線板上に、前記組立線図に沿ってU字形電線受け具を設置する。次に、所定の長さに切断され、コネクタ等が取り付けられた多数の電線を、前記U字形電線受け具に落とし込みながら前記組立線図どおりに布線する。その後、布線された電線束にテープ等を巻きつけ、さらにプロテクタ等の付属品を取り付けて、ワイヤーハーネスを完成させる。
【0003】
U字形電線受け具は主に電線が分岐する箇所などに設置されるが、形成する電線束の太さに対してU字形電線受け具の平行立ち上がり部の間隔が広すぎると、分岐する電線の電線束中心位置からのずれが大きくなり、ワイヤーハーネスの組立精度が低下する。このため従来は、平行立ち上がり部の間隔が異なる複数種類のU字形電線受け具を用意し、電線束の太さに応じたサイズのU字形電線受け具を布線板に取り付けるようにしている。しかしこの方法では、U字形電線受け具のサイズが多くなり、電線束の太さに応じてサイズの異なるU字形電線受け具を使い分ける必要があるため、布線板へのU字形電線受け具の取り付け作業が非常に面倒である。
【0004】
この問題を回避するため、布線板には同じサイズのU字形電線受け具を取り付けることとし、各U字形電線受け具に、その位置の電線束の太さに応じたサイズ(平行立ち上がり部の間隔)のアタッチメントを装着することが提案されている(特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特許第2822191号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし特許文献1に開示されているアタッチメント(アダプタ)は、試作試験した結果によると、次のような問題があることが判明した。すなわち、特許文献1記載のアタッチメントは、U字形の板部材の外周面に周溝を形成し、この周溝をU字形電線受け具に嵌合させる構造であるため、U字形電線受け具とアタッチメントとの嵌合力が弱く、完成したワイヤーハーネスを取り外すときに、アタッチメントがU字形電線受け具から外れてしまうという問題がある。また、所定の厚さの板部材にU字形の電線挿通溝を形成したものであるため、板厚面が電線束と接触することになり、テープを巻くときにアタッチメント内の電線束の際まで手指が入り難く、電線分岐部にテープをしっかりと巻き付けることが難しいという問題もある。
【0007】
本発明の第一の目的は、U字形電線受け具との嵌合力が強く、U字形電線受け具から外れにくいU字形電線受け具用アタッチメントを提供することにある。
【0008】
本発明の第二の目的は、電線束にテープを巻くときに、アタッチメント内の電線束の際まで手指が入りやすく、アタッチメント内の電線束にテープをしっかりと巻き付けることができるU字形電線受け具用アタッチメントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るU字形電線受け具用アタッチメントは、下部湾曲部と平行立ち上がり部とを備えるU字形電線受け具に装着されるものであって、前記U字形電線受け具の下部湾曲部に装着される曲がり部と、平行立ち上がり部に装着される一対の直線部とを一体に有し、前記直線部にはU字形電線受け具の立ち上がり部が挿入される孔が形成され、この孔は、下端側の内径が前記立ち上がり部の外径より大きく、上端側の内径が前記立ち上がり部の外径より小さいテーパー状になっており、これにより前記立ち上がり部を孔に挿入したときに、立ち上がり部の先端部と孔との嵌合力が向上するようになっていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明に係るU字形電線受け具用アタッチメントは、一対の直線部が、外側又は内側に傾いた形にしてもよい。
【0011】
また本発明に係るU字形電線受け具用アタッチメントは、曲がり部及び直線部の、U字形電線受け具の内側に位置する部分が、内側へ行くほど厚さが薄くなる断面先薄形に形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、アタッチメントの一対の直線部にそれぞれテーパー孔が形成され、この孔がU字形電線受け具の立ち上がり部との嵌合力を向上させるため、完成したワイヤーハーネスを取り外すときに、アタッチメントが電線受け具から外れることがなくなり、同じサイズのワイヤーハーネスを繰り返し組み立てる作業を効率よく行うことができる。
【0013】
また、アタッチメントの一対の直線部を外側又は内側に傾けておくと、アタッチメントをU字形電線受け具に装着したときに、一対の直線部が略平行になるようにアタッチメントが弾性変形するため、その弾性反発力が加わって、アタッチメントのU字形電線受け具からの外れ難さをさらに高めることができる。
【0014】
また、アタッチメントのU字形電線受け具の内側に位置する部分を、内側へ行くほど厚さが薄くなる断面先薄形に形成すると、電線束にテープを巻くときに、アタッチメント内の電線束の際まで手指が入りやすくなるため、テープをしっかりと巻き付けることができ、組み立て精度の高いワイヤーハーネスを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
〔実施形態1〕 図1は本発明の一実施形態を示す。図において、10は布線板12に取り付けられたU字形電線受け具、14はU字形電線受け具12に装着されるアタッチメントである。図1(A)はアタッチメント14をU字形電線受け具10に装着する前の状態を、(C)は装着した後の状態を示す。U字形電線受け具10は、金属丸棒で形成され、下部湾曲部16、平行立ち上がり部18及び支柱部20を有しており、支柱部20をナット22で布線板12に固定されている。
【0016】
アタッチメント14は、U字形電線受け具10の下部湾曲部16に装着される曲がり部24と、U字形電線受け具10の平行立ち上がり部18に装着される一対の直線部26とを有する、全体として略U字形である。曲がり部24の外側と直線部26の下部pの外側には連続して、U字形電線受け具10の下部湾曲部16と平行立ち上がり部18の下部が入る周溝28が形成されている。また、直線部26は中間部より上の部分qが下部pよりも外側に出っ張っており、この部分qにはU字形電線受け具10の立ち上がり部18が挿入される孔30が形成されている。この孔30は、前記周溝28と連続するように形成されているが、下端側の内径が前記立ち上がり部18の外径より大きく、上端側の内径が前記立ち上がり部18の外径より小さいテーパー状になっている。
【0017】
したがって、アタッチメント14をU字形電線受け具10に装着すると、図1(C)〜(D)のように、U字形電線受け具10の下部湾曲部16と平行立ち上がり部18の下部が周溝28に収まると共に、U字形電線受け具10の立ち上がり部18が孔30に挿入され、アタッチメント14を上から軽く押圧するだけで、立ち上がり部18の先端部をテーパー孔30にきつく嵌合させることができる。このため、完成したワイヤーハーネスを取り出すときに、アタッチメント14がワイヤーハーネスと共にU字形電線受け具10から外れることがなくなる。
【0018】
また、アタッチメント14の曲がり部24及び直線部26の、U字形電線受け具10の内側に位置する部分は、図1(D)、(E)に示すように、内側へ行くほど厚さが薄くなる断面先薄形に形成されている。このようにすると、布線された電線束にテープを巻くときに、アタッチメント14内の電線束の際まで手指が入りやすくなるため、テープをしっかりと巻き付けることができ、組み立て精度の高いワイヤーハーネスを製造することができる。
【0019】
〔実施形態2〕 図2は本発明の他の実施形態を示す。実施形態1ではアタッチメント14の一対の直線部26を平行に形成したが、この実施形態は、図2(A)に示すように、アタッチメント14の両側の直線部26を外側に若干傾けたものである。それ以外の構成は実施形態1と同じであるので、同一部分には同一符号を付してある。このようにすると、アタッチメント14を図2(B)のようにU字形電線受け具10に装着したときに、一対の直線部26が略平行になるようにアタッチメント14が弾性変形するため、その弾性反発力が加わり、さらにアタッチメント14とU字形電線受け具10の内側との接触抵抗が高くなり、アタッチメント14のU字形電線受け具10からの外れ難さをさらに高めることができる。
【0020】
〔実施形態3〕 図3は本発明のさらに他の実施形態を示す。この実施形態は、図3(A)に示すように、アタッチメント14の両側の直線部26を内側に若干傾けたものである。それ以外の構成は実施形態1と同じであるので、同一部分には同一符号を付してある。このような構成でも、アタッチメント14を図3(B)のようにU字形電線受け具10に装着したときに、一対の直線部26が略平行になるようにアタッチメント14が弾性変形し、さらにアタッチメント14とU字形電線受け具10の内側との接触抵抗が高くなり、実施形態2と同様な効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るアタッチメントの一実施形態を示す、(A)はU字形電線受け具に装着する前の正面図、(B)は同側面図、(C)はU字形電線受け具に装着した後の正面図、(D)は(C)のD−D線断面図、(E)は(C)のE−E線断面図。
【図2】本発明に係るアタッチメントの他の実施形態を示す、(A)はU字形電線受け具に装着する前の正面図、(B)はU字形電線受け具に装着した後の正面図。
【図3】本発明に係るアタッチメントのさらに他の実施形態を示す、(A)はU字形電線受け具に装着する前の正面図、(B)はU字形電線受け具に装着した後の正面図。
【符号の説明】
【0022】
10:U字形電線受け具
12:布線板
14:アタッチメント
16:下部湾曲部
18:平行立ち上がり部
20:支柱
24:曲がり部
26:直線部
28:周溝
30:孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部湾曲部と平行立ち上がり部とを備えるU字形電線受け具に装着されるU字形電線受け具用アタッチメントにおいて、前記U字形電線受け具の下部湾曲部に装着される曲がり部と、平行立ち上がり部に装着される一対の直線部とを一体に有し、前記直線部にはU字形電線受け具の立ち上がり部が挿入される孔が形成され、この孔は、下端側の内径が前記立ち上がり部の外径より大きく、上端側の内径が前記立ち上がり部の外径より小さいテーパー状になっており、これにより前記立ち上がり部を孔に挿入したときに、立ち上がり部の先端部が孔にきつく嵌合するようになっていることを特徴とするU字形電線受け具用アタッチメント。
【請求項2】
一対の直線部が、外側又は内側に傾いていることを特徴とする請求項1記載のU字形電線受け具用アタッチメント。
【請求項3】
曲がり部及び直線部の、U字形電線受け具の内側に位置する部分が、内側へ行くほど厚さが薄くなる断面先薄形に形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のU字形電線受け具用アタッチメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−310087(P2006−310087A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−131200(P2005−131200)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河オートモーティブパーツ株式会社 (571)