説明

Vリブドベルト及びそれを用いたベルト異音評価方法

【課題】 ベルト本体の下面にリブ部の形成されたVリブドベルトにおいて、リブ部の表面状態に着目して、ベルト走行試験でより確実に異音が再現されるようなベルトを得る。
【解決手段】 VリブドベルトBのリブ部4aの側面から突出する短繊維4b,4b,…をカットして、該側面の摩擦係数μ’を1.5よりも大きくする。前記短繊維4b,4b,…のカットは、リブ部4aを研削によって形成した後、研削砥石の送り量をゼロにする、いわゆるゼロカットによって行う。また、前記リブ部4aの側面の表面状態は、表面粗さRaが6μm以下になるようにしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト本体の下面にリブ部の形成されたVリブドベルトに関し、特に、ベルト走行時の異音を評価する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車の補機を駆動させる駆動装置として、エンジン回転をベルトによって補機に伝動するベルト式補機駆動装置(ベルト伝動装置)が知られており、その伝動用ベルトとして、伝動能力や寿命等の観点から、一般的に、Vリブドベルトが用いられている。このVリブドベルトは、例えば図1に示すように、ベルト幅方向に所定のピッチで並ぶように心線が埋設されたベルト本体1の下面に、ベルト幅方向に所定のピッチで並ぶように複数条(図1の場合には3条)のリブ部4,4,…が形成されたものである。
【0003】
このようなVリブドベルトにおいて、例えば特許文献1に開示されるように、リブ部を構成するゴム層に短繊維を含有させて、これらの短繊維の一部をリブ部側面から突出させることで、ベルトの耐久性を向上させるとともに、ベルトとプーリとの間の摩擦抵抗を調整するようにしたものが知られている。
【特許文献1】特開2001−176668号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般的に、ベルト伝動装置のプーリは、セッティング時のずれや運転条件等の影響を受けて傾き易いため、その傾きが大きくてプーリに対するVリブドベルトの進入角が大きい場合には、該ベルトのリブ部側面とその側面に接触するプーリの溝面との間に摺動が生じて異音を発生する可能性がある。そのため、従来より、リブ部表面の摩擦係数が比較的高い走行済みのベルトを用いて、プーリを傾けた状態でベルト走行試験を行い、異音が発生するかどうかを確認している。
【0005】
しかしながら、上述のようなベルト走行試験によってベルトの異音を評価する場合、常に異音が発生するわけではなく、ベルトの表面状態等によって異音が発生しない場合があるため、異音の発生を正確に判定することができず、Vリブドベルトの設計に異音評価の結果を的確に反映させるのは難しかった。
【0006】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ベルト本体の下面にリブ部の形成されたVリブドベルトにおいて、リブ部の表面状態に着目して、ベルト走行試験でより確実に異音が再現されるようなベルトを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の解決手段では、Vリブドベルトのリブ部からの短繊維の突出を抑えて、該リブ部の表面が摩擦力の大きい所定の表面状態になるようにした。
【0008】
すなわち、請求項1の発明では、ベルト本体の下面に、ベルト長さ方向に延びる複数のリブ部が研削によって形成されたVリブドベルトを対象とする。そして、少なくとも前記リブ部のゴム層には、その表面から突出するように短繊維が含有されていて、前記リブ部の表面は、摩擦係数が1.5よりも大きくなるように研磨されているものとする。
【0009】
この構成により、リブ部表面からの短繊維の突出が抑えられて、該表面の摩擦係数は製品状態や走行済みのベルトの摩擦係数よりも高い値になるため、プーリが傾いた状態でのベルト走行試験においてベルトとプーリとの間の摩擦力が大きくなり、より確実に異音を発生させることができる。すなわち、図5に一例を示すように、走行済みのベルト(図の例では摩擦係数が略1.28)を用いた場合には、ベルトのプーリへの進入角度を変化させてもほとんど異音は生じないが、上述のようにリブ部表面の摩擦係数を1.5よりも大きくすることで、ベルト進入角度を大きくすると確実に異音が生じるようになる。
【0010】
請求項2の発明では、ベルト本体の下面に、ベルト長さ方向に延びる複数のリブ部が研削によって形成されたVリブドベルトを対象とする。そして、少なくとも前記リブ部のゴム層には、その表面から突出するように短繊維が含有されていて、前記リブ部の表面は、表面粗さRaが6μmよりも小さくなるように研磨されているものとする。
【0011】
これにより、リブ部表面から突出する短繊維はカットされて、該リブ部表面は表面粗さRaが6μmよりも小さい滑らかな面となり、表面の摩擦係数が高くなるため、上述の請求項1と同様、プーリを傾けた状態でのベルト走行試験において再現性良く異音を発生させることができる。
【0012】
上述の構成において、リブ部の表面は、該リブ部の研削工具の送り量を略ゼロにして所定回数以上、研磨されるのが好ましい(請求項3の発明)。このように、リブ部研削後に研削工具のベルト側への送り量をゼロにする、いわゆるゼロカットを所定回数以上、行うことによって、前記請求項1及び2の構成を低コストで確実に実現することができる。しかも、リブ部を研削するための研削工具を用いることで、該リブ部表面は全周に亘ってほぼ均一に研磨されるため、リブ部表面の摩擦係数を全周に亘って大きくすることができ、より確実にベルト走行時の異音を発生させることが可能となる。ここで、前記所定回数とは、リブ部表面が、ベルト走行試験において再現性良く異音を発生するような表面状態となるゼロカットの回数を意味する。
【0013】
また、請求項4の発明では、ベルト本体の下面に、ベルト長さ方向に延びる複数のリブ部が研削によって形成されたVリブドベルトを対象としていて、リブ部の表面は、所定の表面状態になるように、該リブ部の研削工具の送り量を略ゼロにして所定回数以上、研磨されているものとする。これにより、前記請求項3の発明と同様の作用を得ることができる。
【0014】
なお、上述のベルト走行試験として、具体的には、例えば、前記請求項1〜4のうち、いずれか一つのVリブドベルトを用いて、前記VリブドベルトをVリブドプーリに対して所定の進入角度になるように巻き掛けるとともに、所定の運転状態で前記Vリブドプーリを回転させて、ベルト走行の際の異音を評価するようにすればよい(請求項5の発明)。ここで、所定の進入角度とは、VリブドベルトがVリブドプーリから脱落しないような範囲内の角度であり、所定の運転状態とは、例えば、実際の走行状態を再現したような運転状態を意味する。
【発明の効果】
【0015】
以上より、本発明に係るVリブドベルト及びベルト異音評価方法によれば、リブ部の表面から突出する短繊維をカットして、該表面の摩擦係数を1.5よりも大きくする若しくは表面粗さRaを6μmよりも小さくすることで、プーリを傾けた状態のベルト走行試験でより確実に異音を発生させることができる。しかも、前記リブ部を研削によって形成した後、その研削に用いた研削工具を利用してゼロカットを行うことで、上述のような構成のリブ部表面を低コストで確実に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0017】
図1は本発明の実施形態に係るVリブドベルトBを示す。このVリブドベルトBは、例えば自動車に搭載されるエンジンによりその補機を駆動する補機駆動系(後述する図4参照)に用いられるもので、ベルト本体1と、このベルト本体1の上面(背面、外周面)側に積層された背面帆布層3とを備えており、前記ベルト本体1は、横断面で見て略矩形状の接着ゴム層2と、該接着ゴム層2の下面側、すなわちベルト本体1の下面(底面、内周面)側に積層されたリブゴム層4とからなる。
【0018】
前記背面帆布層3は、ナイロンや綿等の織布にゴムを溶剤に溶かしたゴム糊による接着処理が施されてベルト本体1(接着ゴム層2)背面に貼付されており、ベルト背面がフラットなプーリ(例えば、背面アイドラなど)に当接するようにVリブドベルトBが巻き掛けられた場合の動力伝達の一端を担っている。
【0019】
一方、前記接着ゴム層2は、耐熱性及び耐候性に優れたエチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)等のゴム組成物からなり、該ゴム層2内には、略ベルト長さ方向に延び且つベルト幅方向に所定ピッチをあけて並ぶように螺旋状に巻かれた心線5が埋設されている。なお、この心線5は、ポリビニルアルコール(PVA)繊維等からなる複数の単糸を撚り合わせることによって構成されている。
【0020】
前記リブゴム層4は、前記接着ゴム層2と同様、主体ゴムとしてEPDMを含むゴム組成物からなる。そして、このリブゴム層4の下面側には、それぞれベルト長さ方向に延びる複数条のリブ部4a,4a,…(本実施形態では3条)がベルト幅方向に所定ピッチで並んだ状態で形成されている。これにより、例えばVリブドベルトBをプーリに巻き掛けた場合には、前記リブゴム層4の各リブ部4aがプーリに当接し、動力を駆動側から従動側へ伝達するようになっている。
【0021】
また、前記各リブ部4aを含むリブゴム層4には、短繊維4b,4b,…がベルト幅方向に配向された状態で含有されている。この短繊維4b,4b,…は、例えば、ナイロン等によって構成されたもので、前記各リブ部4aが研削加工によって形成される場合には、該各リブ部4aの側面(表面)から外方に突出した状態となる。
【0022】
ここで、前記各リブ部4aの形成方法について説明すると、該各リブ部4aは、その形状に対応するような凹凸部の設けられた研削砥石(研削工具)を用いて前記リブゴム層4の下面側に形成される。具体的には、前記研削砥石は、その外周面上にリブ部4a,4a,…の形状(図1参照)に対応するような凹凸が周方向に形成されており、高速で回転しながらベルトBのリブゴム層4に押し付けられて該リブゴム層4を研削する。そうすると、前記研削砥石によって該リブゴム層4の下面は凹凸状に研削されて突状部分が前記リブ部4a,4a,…となる。なお、前記VリブドベルトBも比較的、ゆっくり走行していて、前記研削砥石によって該ベルトBの全周が研削されるようになっている。
【0023】
そして、上述のように前記各リブ部4aを研削加工によって形成した後、仕上げ段階で研削砥石の送り量を略ゼロにする、いわゆるゼロカットを行うことで、前記各リブ部4aの側面がベルト全周に亘って研磨されるため、該側面から突出する短繊維4b,4b,…はカットされ、その突出量は抑えられる。このように、前記各リブ部4aの側面から突出した短繊維4b,4b,…の突出量が抑えられると、該側面の摩擦係数は、リブゴム層4を主に構成するゴム組成物の影響が大きくなり、前記短繊維4b,4b,…の突出量が抑えられていない状態よりも摩擦係数は大きくなる。具体的には、短繊維4b,4b,…のカットされていない状態(製品状態)での摩擦係数は略0.8〜0.9であるが、前記短繊維4b,4b,…をカットした状態では、図2に示すように、ゼロカットの回数N(各リブ部4aの側面に対して研削砥石が回転した回数)に応じて摩擦係数は徐々に大きくなる。
【0024】
前記図2は、ゼロカットの回数N(研削砥石の回転数300m/min時でのゼロカット回数)と前記各リブ部4aの側面の摩擦係数μ’及び表面粗さRaとの関係を示している。この図より、ゼロカット回数Nが多くなるほど、前記各リブ部4aの側面の表面粗さRaが小さくなる一方、摩擦係数μ’が大きくなることがわかる。図の例では、前記各リブ部4aの側面の摩擦係数μ’が1.3よりも大きくなるのは、ゼロカットを15回以上行った場合であり、摩擦係数μ’が1.5よりも大きくなるのは、ゼロカットを20回以上行った場合である。そして、このときの前記各リブ部4aの側面の表面粗さRaは、それぞれ、8μm及び6μmよりも小さくなる。
【0025】
なお、前記VリブドベルトBの各リブ部4aの側面の摩擦係数μ’は、図3に示すように、プーリ10に巻き掛けられたベルトBの一端側にウェイト11を吊り下げて、その状態での該ベルトBの張力に基づいて摩擦係数を算出する、いわゆるプーリ回転法によって求めた。なお、VリブドベルトBの張力の計測は、雰囲気温度25度で行われた。
【0026】
具体的には、VリブドベルトBを、水平部と垂直部とが形成されるようにプーリ10に略90°の角度で巻き掛け、このVリブドベルトBの垂直部の下端に荷重W=1.75kgのウェイト11を吊下げる一方、水平部の先端側をロードセル12を介して壁等に固定した。そして、前記プーリ10をVリブドベルトBの水平部の張力が増大するように回転数42rpmにて回転させた。
【0027】
そして、前記ロードセル12によって計測された張力T2及び前記ウェイト11によってVリブドベルトBに生じる張力T1から、該VリブドベルトBのリブ部4aの側面の摩擦係数μ’が次式により求められる。
【0028】
μ’=ln(T2/T1)/(π/2)
また、前記VリブドベルトBの各リブ部4aの側面の表面粗さRaは、接触式の表面粗さ計((株)東京精密製のsurfcom 120A)を用いて、カットオフ値0.80、測定長8mm、雰囲気温度25度の条件で計測した。
【0029】
(異音評価)
次に、プーリが傾いている場合のVリブドベルトBのベルト走行時の異音評価について説明する。
【0030】
前記VリブドベルトBは、上述の構成(図1参照)と同じ構成で、各リブ部4aの側面に施した処理のみが異なる3種類のベルトを用意した。具体的には、実施例1として各リブ部4aを20回以上ゼロカットして側面の摩擦係数を1.55にしたベルト、実施例2として各リブ部4aを略18回ゼロカットして側面の摩擦係数を1.38にしたベルト、及び比較例として走行済みのベルト(各リブ部4aの側面の摩擦係数が1.28)を用意した。
【0031】
また、前記各VリブドベルトBの走行試験は、図4に示すような実際のエンジンの補機駆動系のレイアウトで行った。具体的には、前記各VリブドベルトBは、クランクシャフトプーリ21、オートテンショナーのテンションプーリ22、オルタネータ用プーリ23、パワステポンプ用プーリ24及びウォーターポンプ用プーリ25に巻き掛けられているとともに、パワステポンプ用プーリ24とウォーターポンプ用プーリ25(Vリブドプーリ)との間に配設された背面アイドラ26に、前記ベルトBの背面側(図1において背面帆布層3側)が巻き掛けられている。これにより、前記各VリブドベルトBが、駆動プーリである前記クランクシャフトプーリ21のトルクを従動プーリである補機駆動用の前記各プーリ23,24,25に伝達するようになっている。なお、本実施形態における走行試験装置では、前記背面アイドラ26の回転軸を傾けて該背面アイドラ26を所定角度範囲で回動または傾斜させることができように構成されている。
【0032】
そして、前記ウォーターポンプ用プーリ25へのベルトBの進入角度が所定の角度になるように、前記背面アイドラ26を上下方向から見て時計回り若しくは反時計回り(図中において手前側若しくは奥側)に回動させた状態で、駆動プーリである前記クランクシャフトプーリ21を図中の矢印方向に600〜800rpm(アイドリング状態)及び600〜3000rpm(レーシング状態)で回転させた。なお、補機駆動系を側方から見た図4において、前記背面アイドラ26を手前側に回動させると、前記VリブドベルトBはウォーターポンプ用プーリ25に対して手前側から進入し、逆に、前記背面アイドラ26を奥側に回動させると、前記VリブドベルトBはウォーターポンプ用プーリ25に対して奥側から進入する。
【0033】
本実施形態では、前記背面アイドラ26のミスアライメント角度(回動角度)を変化させて、すなわち前記ウォーターポンプ用プーリ25へのVリブドベルトBのベルト進入角度を変化させて、ベルト走行時に該VリブドベルトBとプーリ25との間の摩擦によって発生する異音を図示しないマイクロフォン等によって計測した。なお、前記ベルト進入角度は、図4において、ウォーターポンプ用プーリ25の奥側から手前側に向かってベルトBが進入する場合を正の値とし、ウォーターポンプ用プーリ25の手前側から奥側に向かってベルトBが進入する場合を負の値とした。また、ベルト進入角度は±3度以上になると、VリブドベルトBの各リブ部4aがプーリに設けられた溝部(図示省略)から外れて脱落するため、それよりも小さい角度の範囲内でベルト進入角度を変化させるようにした。
【0034】
図5に異音計測結果を示す。この計測結果より、ベルト進入角度が大きくなると、発生する異音が大きくなる傾向にあり、リブ部4aの側面の摩擦係数μ’が高いほど、その傾向が顕著になることが分かる。すなわち、前記リブ部4aの側面の摩擦係数μ’が比較的低い走行済みベルトの場合には、ベルト進入角度を変えてもほとんど騒音レベルは変わらないが、前記リブ部4aの側面の摩擦係数μ’が大きい場合(特に、摩擦係数μ’が1.5よりも大きい場合)には、ベルト進入角度が大きくなると、急激に騒音レベルが大きくなり異音が発生していることが分かる。
【0035】
なお、本実施形態において、異音とは、騒音レベルが略85dBAを超えるような大きな騒音を意味しており、図5に示すように、前記リブ部4aの側面の摩擦係数μ’が1.3よりも大きければ、略85dBA以上の大きな騒音を確実に発生させることができる。さらに、摩擦係数μ’を1.5よりも大きくすれば、より確実に大きな異音を発生させることができる。
【0036】
このように、VリブドベルトBの各リブ部4aの側面の摩擦係数μ’を1.5よりも大きくすることで、ベルト走行試験においてプーリ25へのベルト進入角度を変化させると、該プーリ25へのベルト進入時の摩擦力が大きくなるため、走行済みのベルトを用いた場合よりも確実に異音を発生させることができる。なお、上述のとおり、摩擦係数μ’と表面粗さRaとの間には、図2に示すような相関関係があるため、VリブドベルトBのリブ4aの側面の表面粗さRaが6μmより小さくなるようにしても同様の効果を得ることができる。
【0037】
したがって、従来のような走行済みベルトを用いた走行試験に比べてより確実に異音を発生させることができ、ベルトの異音評価をより的確にベルトの設計に反映させることができる。
【0038】
しかも、VリブドベルトBのリブ部4a,4a,…を形成する際の研削砥石を用いて該各リブ部4aの表面を研磨することで、該表面の摩擦係数μ’を低コストで確実に高くすることができる。さらに、前記研削砥石を用いることによって、前記各リブ部4aの表面がベルト全周に亘って研磨されるため、該表面の摩擦係数μ’をベルト全周でほぼ均一にすることができ、ベルト走行時の異音をより確実に発生させることができる。
【0039】
なお、ベルト走行試験において、VリブドベルトBのリブ部4aの表面に霧吹き器等を用いて水をかけたり、該リブ部4aの表面を脱脂したりしてもよい。こうすることで、前記ベルトBの各リブ部4aの側面の摩擦係数μ’はさらに大きくなるため、異音をさらに確実に発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態に係るVリブドベルトの断面斜視図である。
【図2】Vリブドベルトのリブ部をゼロカットした場合のゼロカット回数と該リブ部表面の摩擦係数及び表面粗さとの関係を示す図である。
【図3】摩擦係数評価試験を行うための実験装置の概略構成を示す図である。
【図4】異音測定試験を行った実際のエンジン補機駆動系の概略構成の一例を示す図である。
【図5】異音測定試験の試験結果を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
B Vリブドベルト
1 ベルト本体
2 接着ゴム層
3 背面帆布層
4 リブゴム層
4a リブ部
4b 短繊維
5 心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト本体の下面に、ベルト長さ方向に延びる複数のリブ部が研削によって形成されたVリブドベルトであって、
少なくとも前記リブ部のゴム層には、その表面から突出するように短繊維が含有されていて、
前記リブ部の表面は、摩擦係数が1.5よりも大きくなるように研磨されていることを特徴とするVリブドベルト。
【請求項2】
ベルト本体の下面に、ベルト長さ方向に延びる複数のリブ部が研削によって形成されたVリブドベルトであって、
少なくとも前記リブ部のゴム層には、その表面から突出するように短繊維が含有されていて、
前記リブ部の表面は、表面粗さRaが6μmよりも小さくなるように研磨されていることを特徴とするVリブドベルト。
【請求項3】
請求項1または2のいずれか一つにおいて、
リブ部の表面は、該リブ部の研削工具の送り量を略ゼロにして所定回数以上、研磨されていることを特徴とするVリブドベルト。
【請求項4】
ベルト本体の下面に、ベルト長さ方向に延びる複数のリブ部が研削によって形成されたVリブドベルトであって、
リブ部の表面は、所定の表面状態になるように、該リブ部の研削工具の送り量を略ゼロにして所定回数以上、研磨されていることを特徴とするVリブドベルト。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一つのVリブドベルトを用い、
前記VリブドベルトをVリブドプーリに対して所定の進入角度になるように巻き掛けるとともに、所定の運転状態で前記Vリブドプーリを回転させて、ベルト走行の際の異音を評価することを特徴とするベルト異音評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−97724(P2006−97724A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−281492(P2004−281492)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000005061)バンドー化学株式会社 (429)