説明

Vリブドベルト

【課題】 エチレン−α−オレフィンエラストマーのような接着力が弱い非極性ポリマーを用いた場合でも、ベルト側面からの心線ポップアウトを抑制し、かつ屈曲疲労性、耐熱性、耐寒、耐摩耗性、耐粘着摩耗性を備えた高耐久性のVリブドベルトを提供する。
【解決手段】 ベルト背面部に設けた伸張ゴム層4と、ベルト長手方向に延びる複数のリブ部9が設けられた圧縮ゴム層5と、ベルト長手方向に沿って埋設された心線2を有したVリブドベルト1であって、ベルト背面にカバー帆布を積層しておらず、伸張ゴム層4と圧縮ゴム層5のいずれにもエチレン−α−オレフィンエラストマーを使用し、少なくとも圧縮ゴム層5には短繊維を含有し、そして心線2周りに配置される接着ゴム層3のうち、伸張ゴム層4側そして圧縮ゴム層5側の少なくとも一方に接着ゴム層が存在しない構成からなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はVリブドベルトに係り、詳しくはベルト背面にカバー帆布を使用せず、伸張ゴム層と圧縮ゴム層のいずれにも特定のエチレン−α−オレフィンエラストマーを用い、そして伸張ゴム層側そしては圧縮ゴム層側の少なくとも一方に接着ゴム層を存在させないことにより、優れた屈曲疲労性、耐熱性を有し、かつ耐寒、耐摩耗性、耐粘着摩耗性を備えた高耐久性のVリブドベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギー化、コンパクト化の社会的要請を背景に、自動車のエンジンルーム周辺の雰囲気温度は従来に比べて上昇して来ている。これにともなってVリブドベルトの使用環境温度も高くなってきた。従来、Vリブドベルトは主として天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴムが使用されてきたが、高温雰囲気下では、硬化した圧縮ゴム層で早期にクラックを生じるという問題が発生した。
【0003】
このようなベルトの早期破損現象に対し、従来からクロロプレンゴムの耐熱性の改善が検討され、ある程度の改良が行なわれてきたもののクロロプレンゴムを使用している限り限界があって現在のところ充分な効果を得るには至っていない。
【0004】
このため、最近では、クロロプレンゴムに代わってα−β−不飽和有機酸の金属塩で補強されたエチレン−α−オレフィンエラストマーを伝動ベルトに使用することが提案され、特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特表平9−500930号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、エチレン−プロピレン−ジエン系ゴムのようなエチレン−α−オレフィンエラストマーはクロロプレンゴムに比べ、長期耐熱性,耐寒性などについては優れるものの、非極性ポリマーであるがゆえに心線との静電的相互作用が弱く、心線との接着性に劣り、小径のプーリに巻きつけて用いた場合にベルト側面から心線がはみ出し、寿命となる不具合が問題となっていた。以下この不具合を心線ポップアウトと記載する。
【0006】
本発明は上述の如き実状に鑑み、これに対処するもので、エチレン−α−オレフィンエラストマーのような接着力が弱い非極性ポリマーを用いた場合でも、ベルト側面からの心線ポップアウトを抑制し、かつ屈曲疲労性、耐熱性、耐寒、耐摩耗性、耐粘着摩耗性を備えた高耐久性のVリブドベルトを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本願請求項1記載の発明は、ベルト背面にカバー帆布を積層しておらず、伸張ゴム層と圧縮ゴム層のいずれにもエチレン−α−オレフィンエラストマーを使用し、少なくとも圧縮ゴム層には短繊維を含有し、心線周りに配置される接着ゴム層のうち、伸張ゴム層側そして圧縮ゴム層側の少なくとも一方に接着ゴム層が存在しない構成であり、これによりベルト側面からの心線のポップアウトを防ぐことが可能である。これは、これまでの検討からベルト背面に弾性率が大きな、すなわちカバー帆布層のような層が存在すると、ベルトの屈曲時においてベルト背面でベルト幅方向への強い拘束力が発生するため、心線付近においてベルト幅方向に応力が発生することが明らかになったことから、弾性率の異なる部材であるカバー帆布を排除した結果である。更には、カバー帆布の排除はベルト長手方向の屈曲を容易にするため、耐屈曲疲労性も改善できる。
【0008】
また、一方の接着ゴム層を除くことにより、心線以外にベルト断面内に存在する部材間の弾性率差がより一層少なくすることができるとともに、ゴム−心線間の接着力をある程度保持でき、効果的である。更に、接着ゴム層を全く使用しない構成は、心線−ゴム間の接着力の低下が懸念されるが、検討の結果、エチレン−α−オレフィンエラストマーを用いたVリブドベルトでは、接着力低下の影響よりも弾性率の異なる部材が存在することの方が優先され、ベルト側面からの心線のポップアウトに大きく影響することが明らかになった。
【0009】
即ち、請求項1のような構成をとることで、心線のポップアウトによる寿命低下を防ぎ、屈曲疲労性を大きく改善し、また優れた耐熱性、耐寒性、耐摩耗性を有するVリブドベルトに仕上げることができる。
【0010】
また本願請求項2記載の発明は、伸張ゴム層に、エチレン含量40〜60%、ムーニー粘度40〜60のエチレン−α−オレフィンエラストマーを使用するが、このような特性を持つポリマーを使用することで、接着ゴム層が存在しなくても、心線周りへのゴムの流れ込みが十分確保できることで、ある程度の接着力を保持することが可能であり、カバー帆布を取り除いた場合に懸念されるベルト背面の耐摩耗性、耐粘着摩耗性を十分なものとし、かつ屈曲疲労性、耐熱性、耐寒性を備えたVリブドベルトとすることができる。これらの範囲はエチレン含量が40%未満であればベルト背面の粘着摩耗が顕著なものになり、70%以上であれば加工性に問題が生じ、かつ耐屈曲疲労性が劣ることになる。またムーニー粘度が40以下であれば要求される物性値を満足しなくなり、60以上であれば心線付近への流れ込みが不十分で接着力の低下が顕著になることを根拠としている。
【0011】
また本願請求項3記載の発明は、圧縮ゴム層にエチレン含量50〜70%、ムーニー粘度60〜70のエチレン−α−オレフィンエラストマーを使用することで、接着ゴム層が存在しなくても、心線周りへのゴムの流れ込みが十分確保でき、アンカー効果によりある程度の接着力を保持することが可能であり、これにより心線屈曲疲労性、耐熱性、耐寒、耐摩耗性、耐粘着摩耗性を備えたVリブドベルトとすることができる。
【0012】
また本願請求項4記載の発明は、圧縮ゴム層がゴム100重量部に対して補強短繊維の総添加量が10〜40重量部であり、この処方をとることで耐摩耗性に優れ、異音の発生低減などの効果を得ることができる。補強短繊維量が10重量部未満であれば、耐摩耗性、異音の発生抑制効果が低く、40重量部を越えると耐屈曲亀裂性に劣り、また成形性も劣る組成物となる。
【0013】
また本願請求項5記載の発明は、伸張ゴム層がゴム100重量部に対して補強短繊維の総添加量が0〜30重量部とすることで、カバー帆布が存在しない場合に懸念される粘着摩耗の発生や異音の発生を抑制することが可能である。伸張ゴム層への短繊維配合は、ゴム層に比べ高弾性率となるカバー帆布を取り除いた経緯からも極力少量にすることが望ましく、また耐屈曲疲労性を低下させないため、30重量部以上の配合は避けることが必要である。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、ベルト背面にカバー帆布を積層しないこと、伸張ゴム層と圧縮ゴム層のいずれにもエチレン−α−オレフィンエラストマーを使用すること、少なくとも圧縮ゴム層には短繊維を含有させること、そして心線周りに配置される接着ゴム層のうち、伸張ゴム層側そして圧縮ゴム層側の少なくとも一方に接着ゴム層を存在させない、の4要件を満足させることによってベルト側面からの心線のポップアウトを防ぐことができ、しかも従来のベルトの構成部材を削除することが出来て安価なベルトを提供することができる。
特に、エチレン−α−オレフィンエラストマーを用いたVリブドベルトにおいて、カバー帆布を背面に積層しないことでエチレン−α−オレフィンエラストマーのような接着力が弱い非極性ポリマーを用いた場合でも、ベルト側面からの心線ポップアウトを抑制し、かつ屈曲疲労性、耐熱性、耐寒、耐摩耗性、耐粘着摩耗性を備えた高耐久性のVリブドベルトを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1に示すVリブドベルト1は、伸張ゴム層4をベルト背面に配置し、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ガラス繊維等を素材とする高強度で低伸度のコードよりなる心線2を伸張ゴム層4側に配した接着ゴム層3と圧縮ゴム層5中に埋設している。この圧縮ゴム層5にはベルト長手方向にのびる断面略三角形の複数のリブ部9が設けられている。尚、ベルト背面にカバー帆布を積層していない。
【0016】
図2に示すVリブドベルト6は、伸張ゴム層4をベルト背面に配置し、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ガラス繊維等を素材とする高強度で低伸度のコードよりなる心線2を伸張ゴム4と圧縮ゴム層5側に配した接着ゴム層3との間に埋設し、その下側に弾性体層である圧縮ゴム層5を有している。この圧縮ゴム層5にはベルト長手方向にのびる断面略三角形の複数のリブ部9が設けられている。尚、ベルト背面にカバー帆布を積層していない。
【0017】
図3に示すVリブドベルト7は、伸張ゴム層4をベルト背面に配置し、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ガラス繊維等を素材とする高強度で低伸度のコードよりなる心線2を伸張ゴム4と圧縮ゴム層5との間に埋設している。この圧縮ゴム層5にはベルト長手方向にのびる断面略三角形の複数のリブ部9が設けられている。尚、ベルト背面にカバー帆布を積層していない。
【0018】
上記伸張ゴム層4と圧縮ゴム層5に使用されるエチレン−α−オレフィンエラストマーは、エチレン−プロピレンゴム(EPR)やエチレン−プロピレン−ジエンモノマー(EPDM)からなるゴムをいう。ジエンモノマーの例としては、ジシクロペンタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエンなどがあげられる。
【0019】
伸張ゴム層4では、エチレン含量40〜60%、ムーニー粘度40〜60のエチレン−α−オレフィンエラストマーを使用するが、このような特性を持つポリマーを使用することで、接着ゴム層が存在しなくても、心線周りへのゴムの流れ込みが十分確保できることで、ある程度の接着力を保持することが可能であり、また伸長ゴム層に要求される性能、すなわち耐摩耗性、耐粘着摩耗性、耐屈曲疲労性を満足させることが可能である。
【0020】
圧縮ゴム層5には、エチレン含量50〜70%、ムーニー粘度60〜70のエチレン−α−オレフィンエラストマーを使用することで、接着ゴム層が存在しなくても、心線周りへのゴムの流れ込みが十分確保でき、アンカー効果によりある程度の接着力を保持することが可能であり、また圧縮ゴム層に要求される性能、すなわち耐摩耗性、耐粘着摩耗性を満足することができる。
【0021】
このように伸長ゴム層4、圧縮ゴム層5に用いるポリマーの特性が異なるのは、各層に要求される特性が異なるためである。例えば耐摩耗性であれば、動力を伝達する圧縮ゴム層5の方が高いレベルの耐摩耗性が要求される。しかし各層ともに心線周りへのゴムの流れ込みを確保するには低ムーニー粘度のポリマーが適するが、耐摩耗性,耐粘着摩耗性などが低下する傾向になってしまう。このような複数の要因を考慮し、各層に用いる最適なポリマー特性を設定する。
【0022】
上記伸張ゴム層4と圧縮ゴム層5には、エチレン−α−オレフィンエラストマーの加硫剤としてパーオキサイドを、また共架橋剤としてN,N’−m−フェニレンジマレイミドを添加する。N,N’−m−フェニレンジマレイミドの添加量はエチレン−α−オレフィンエラストマー100重量部に対して0.2〜10重量部であり、0.2重量部未満の場合には、架橋密度が小さくなり耐摩耗性、耐粘着摩耗性の改善効果が小さく、一方10重量部を越えると加硫ゴムの伸びの低下が著しく、耐屈曲性に問題が生じる。
【0023】
上記有機過酸化物としては、通常、ゴム、樹脂の架橋に使用されているジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアリルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2・5−ジメチル−2・5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキサン−3,1・3−ビス(t−ブチルパーオキシ−イソプロピル)ベンゼン、1・1−ジ−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等があり、熱分解による1分間の半減期が150〜250°Cのものが好ましい。その添加量はエチレン−α−オレフィンエラストマー100重量部に対して約1〜8重量部であり、好ましくは1.5〜4重量部である。
【0024】
上記伸張ゴム層4は、ゴム100重量部に対してナイロン6、ナイロン66、ポリエステル、綿、p−アラミド、m−アラミド、綿、PBO(ポリベンゾオキサゾール)等からなる補強短繊維の総添加量が0〜30重量部であり、カバー帆布が存在しない場合に懸念される粘着摩耗の発生や異音の発生を抑制することが可能である。また伸張ゴム層への短繊維配合は、ゴム層に比べ高弾性率となるカバー帆布を取り除いた経緯からも極力少量にすることが望ましく、また耐屈曲疲労性を低下させないため、30重量部以上の配合は避けることが必要である。
【0025】
また、圧縮ゴム層5には、ナイロン6、ナイロン66、ポリエステル、綿、p−アラミド、m−アラミド、綿、PBO(ポリベンゾオキサゾール)等からなる補強短繊維を混入して圧縮ゴム層4の耐側圧性を向上させるとともに、プーリと接する面になる圧縮ゴム層5の表面をグラインダーによって研磨加工して該短繊維を突出させる。圧縮ゴム層5の表面の摩擦係数は低下して、ベルト走行時の騒音を軽減する。
【0026】
また、上記伸張ゴム層4と圧縮ゴム層5の各ゴム組成物には、通常使用されるカーボンブラック、その他炭酸カルシウム、シリカ、クレーなど各種充填剤、可塑剤、老化防止剤、加工助剤など特に限定せず配合することができる。前記各成分を混合する方法としては特に制限はなく、例えばバンバリーミキサー、ニーダー等を用い、適宜公知の手段、方法によって混練することができる。
【0027】
接着ゴム層3を設ける場合には、接着ゴム層3を形成するゴム組成物が硫黄系の架橋を施したものであり、硫黄架橋を用いることで、接着力の低下を極力抑制することができる。接着ゴム層3にもエチレン−α−オレフィンエラストマー組成物を使用するが、心線2と良好に接着するために、パーオキサイドを含まない硫黄加硫を使用する。
【0028】
Vリブドベルト1の製造方法の一例は以下の通りである。まず、円筒状の成形ドラムの周面に離型剤を塗布した後、1〜複数枚の伸張ゴム層を巻き付けた後、接着ゴム層を巻きつけ、この上にロープからなる心線を螺旋状にスピニングし、更に圧縮ゴム層を順次巻き付けて積層体を得た後、これを加硫して加硫スリーブを得る。
【0029】
次に、加硫スリーブを駆動ロールと従動ロールに掛架され所定の張力下で走行させ、更に回転させた研削ホイールを走行中の加硫スリーブに当接するように移動して加硫スリーブの圧縮ゴム層表面に3〜100個の複数の溝状部を一度に研削する。
【0030】
このようにして得られた加硫スリーブを駆動ロールと従動ロールから取り外し、該加硫スリーブを他の駆動ロールと従動ロールに掛架して走行させ、カッターによって所定に幅に切断して個々のVリブドベルトに仕上げる。
以下、添付図面を参照し、本発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0031】
実施例1〜3、比較例1〜2
本実施例で製造したVリブドベルトでは、ポリエステル繊維のロープからなる心線を用い、カバー帆布層を設けず、ベルト背面に伸張ゴム層を、またその逆側に圧縮ゴム層を設け、3個のリブをベルト長手方向に配したものである。その形状を基本として、伸張ゴム層側の接着ゴム層を設けないもの、圧縮ゴム層側の接着ゴム層を設けないもの、全く接着ゴム層の存在しないものの3種類を作製した。
【0032】
ここで圧縮ゴム層、伸張ゴム層、接着ゴム層を表1に示すゴム組成物から調製し、バンバリーミキサーで混練後、カレンダーロールで圧延したものを用いた。圧縮ゴム層、伸張ゴム層ともにには短繊維が含まれベルト幅方向に配向している。
【0033】
【表1】

【0034】
Vリブドベルト1の製造方法の一例は以下の通りである。まず、円筒状の成形ドラムの周面に1〜複数枚のカバー帆布と接着ゴム層とを巻き付けた後、この上にロープからなる心線を螺旋状にスピニングし、更に圧縮ゴム層を順次巻き付けて積層体を得た後、これを加硫して加硫スリーブを得た。
【0035】
次に、加硫スリーブを駆動ロールと従動ロールに掛架され所定の張力下で走行させ、更に回転させた研削ホイールを走行中の加硫スリーブに当接するように移動して加硫スリーブの圧縮ゴム層表面に3〜100個の複数の溝状部を一度に研削した。
【0036】
このようにして得られた加硫スリーブを駆動ロールと従動ロールから取り外し、該加硫スリーブを他の駆動ロールと従動ロールに掛架して走行させ、カッターによって所定に幅に切断して個々のVリブドベルトに仕上げた。
【0037】
このようにして得られたVリブドベルトの耐熱高張力試験(心線ポップアウト試験)の結果及び耐熱屈曲性試験の結果を表2に示した。
【0038】
高張力耐久試験の評価に用いた走行試験機は、駆動プーリ、従動プーリ(直径120mm)、テンションプーリ(直径55mm)を順に配置したものである。プーリレイアウトを図4に示した。試験機の各プーリにベルトを掛架し、雰囲気温度85℃、駆動プーリの回転数が4900rpm、ベルト張力が834N/3リブになるように駆動プーリに荷重を付与した後、走行させ、心線のポップアウト発生時間を調べた。
【0039】
耐熱屈曲性試験の評価に用いた走行試験機は、駆動プーリ、従動プーリ(直径120mm)、アイドラープーリ(直径85mm)、テンションプーリ(直径45mm)を順に配置したものである。プーリレイアウトを図5に示した。試験機の各プーリにベルトを掛架し、雰囲気温度120℃、駆動プーリの回転数が4,900rpm、ベルト張力が559N/3リブになるように駆動プーリに荷重を付与した後、走行させて心線のポップアウト発生時間を調べた。
【0040】
【表2】

【0041】
実施例1、2と比較例2を比較すると、カバー帆布がない場合には接着ゴム層の存在位置に関わらず、ポップアウトがみられないことが判った。また、実施例3と比較例1のようにカバー帆布と接着ゴム層両方が存在する場合としない場合の比較では、実施例3のようにどちらも存在しない方がポップアウトの発生が起こりにくいことが判った。これはベルト断面内に弾性率の異なる材料をできるだけ少なくしたことによって、変形による応力が比較的均等に配分され、局所的な応力集中が抑制されたためと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明のVリブドベルトは、自動車、一般産業用の伝動ベルトとして幅広く適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係るVリブドベルトの断面斜視図である。
【図2】本発明に係る他のVリブドベルトの断面斜視図である。
【図3】本発明に係る更に他のVリブドベルトの断面斜視図である。
【図4】高張力耐久試験の評価に用いた走行試験機のプーリレイアウトを示す。
【図5】耐熱屈曲性試験の評価に用いた走行試験機のプーリレイアウトを示す。
【符号の説明】
【0044】
1 Vリブドベルト
2 心線
3 接着ゴム層
4 伸張ゴム層
5 圧縮ゴム層
9 リブ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト背面部に設けた伸張ゴム層と、ベルト長手方向に延びる複数のリブ部が設けられた圧縮ゴム層と、ベルト長手方向に沿って埋設された心線を有したVリブドベルトであって、以下のA,B,C,Dの要件で構成されていることを特徴とするVリブドベルト。
A.ベルト背面部にカバー帆布が積層していないこと。
B.伸張ゴム層と圧縮ゴム層のいずれにもエチレン−α−オレフィンエラストマーを使用していること。
C.少なくとも圧縮ゴム層には短繊維を含有すること。
D.心線周りに配置される接着ゴム層は、伸張ゴム層側および圧縮ゴム層側の少なくとも一方に存在しないこと。
【請求項2】
伸張ゴム層に、エチレン含量40〜60%、ムーニー粘度40〜60のエチレン−α−オレフィンエラストマーを使用する請求項1記載のVリブドベルト。
【請求項3】
圧縮ゴム層に、エチレン含量50〜70%、ムーニー粘度60〜70のエチレン−α−オレフィンエラストマーを使用する請求項1記載のVリブドベルト。
【請求項4】
圧縮ゴム層に、ゴム100重量部に対して補強短繊維が総添加量で10〜40重量部含有する請求項1記載のVリブドベルト。
【請求項5】
伸張ゴム層に、ゴム100重量部に対して補強短繊維が総添加量で0〜30重量部含有する請求項1記載のVリブドベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−29493(P2006−29493A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−211273(P2004−211273)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)