説明

Vリブドベルト

【課題】耐クラック性に優れ、しかも、異音の発生を抑制させ得るVリブドベルトを提供することを課題としている。
【解決手段】ベルト長手方向に延在するリブが複数条設けられており、該リブの表面をプーリーに当接させて用いられるVリブドベルトであって、前記リブの少なくとも表面は、10%モジュラスが2〜30MPaのいずれかの値を有するポリウレタン弾性体により形成されており、且つ、前記ポリウレタン弾性体には、ポリカーボネート系ポリオールが用いられていることを特徴とするVリブドベルトを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Vリブドベルトに関し、特にプーリーに巻き掛けられて用いられるVリブドベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンやモーターなどの回転動力を伝達する手段として、駆動側と従動側との回転軸にプーリーなどを固定させて設け、これらのプーリー間にVリブドベルトやVベルトなどの伝動ベルトを掛け渡す方法が広く用いられている。
このような伝動ベルトは、運転中に被水した時などにスティック−スリップなどと呼ばれる現象を引き起こすことが知られており、プーリーとの間にスリップを生じて異音を発生させることが知られている。
このような伝動ベルトのスリップ音は、装置の騒音の原因となることから、従来、種々の対策が検討されている。
その対策の一つとして、Vリブドベルトのリブを短繊維が含有されたゴム組成物で形成する方法が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載のVリブドベルトは、短繊維を表面に露出させることによる摩擦係数の低下を利用して異音の発生を防止するもので、プーリーとの摩擦力によって短繊維を脱落させやすいという問題を有している。
したがって、被水時の異音の発生を防止する効果が短期間に低下してしまうおそれを有している。
また、この特許文献1記載のVリブドベルトにおいては、この短繊維を起点としたクラックが発生されやすくVリブドベルトの耐用期間を短縮させるおそれを有する。
すなわち、従来のVリブドベルトは、クラックの発生と、被水時における異音防止効果の低下とを抑制させることが困難であるという問題を有している。
【0004】
【特許文献1】特開2004−125012号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、上記問題点に鑑み、クラックの発生が抑制され、異音防止効果の低下が抑制されたVリブドベルトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、所定の材料によって所定のモジュラス値となるようにVリブドベルトの表面を形成させることで、該表面にクラックが発生することを抑制し得るとともに長期持続性のある異音防止効果をVリブドベルトに付与させ得ることを見出し本発明の完成に至った。
【0007】
すなわち、本発明は、ベルト長手方向に延在するリブが複数条設けられており、該リブの表面をプーリーに当接させて用いられるVリブドベルトであって、前記リブの少なくとも表面は、10%モジュラスが2〜30MPaのいずれかの値を有するポリウレタン弾性体により形成されており、且つ、前記ポリウレタン弾性体には、ポリカーボネート系ポリオールが用いられていることを特徴とするVリブドベルトを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、Vリブドベルトの表面が、10%モジュラスが2〜30MPaのいずれかの値を有するポリウレタン弾性体により形成され、しかも、ポリカーボネート系ポリオールが用いられているポリウレタン弾性体により形成されることから、短繊維の使用を抑制しつつも異音の発生を抑制させることができ、クラックの発生防止を図りうる。
しかも、このポリウレタン弾性体は、耐摩耗性に優れ、短繊維のように短期間で脱落するおそれがなく、異音抑制効果を長期持続させうる。
すなわち、本発明によれば、Vリブドベルトを、クラックの発生が抑制され、異音防止効果の低下が抑制されたものとし得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明の好ましい実施の形態について図1を参照しつつ説明する。
本実施形態のVリブドベルトは、無端状に形成されており、図1は、Vリブドベルト1の長手方向(周方向)に直交する平面による断面図を表している。
この図1にも示されているように、本実施形態のVリブドベルト1は、プーリー(図示せず)に当接されるベルト内周面側に圧縮ゴム層10が備えられており、この圧縮ゴム層10から外周面側に向かって、接着ゴム層20、カバーゴム層30が積層された三層の積層構造が形成されている。
そして、前記接着ゴム層20には心線40が埋設されている。
【0010】
前記圧縮ゴム層10には、ベルト長手方向に連続する断面略V字状の2条の溝11によって隔てられた3条のリブ12が形成されており、該リブ12は、互いに平行な状態となるように形成されてベルト長手方向に延在されている。
このリブ12は、その断面形状が内周側ほど狭幅となるように形成されており、略等脚台形の断面形状となるように形成されている。
この圧縮ゴム層10には、表面(内周面)全体を覆う表面層13と該表面層に内側で接する内層14との二層構造が形成されている。
前記表面層13は、圧縮ゴム層10の内周側の表面形状に沿って略均一なる厚みで内層14を覆うように形成されている。
【0011】
前記表面層13は、ポリウレタン弾性体(ウレタンゴム組成物)により形成されている。
しかも、ポリオール成分としてポリカーボネート系ポリオールが用いられてなるポリウレタン弾性体により形成されている。
そして、このポリウレタン弾性体が、その10%モジュラス値が2〜30MPaのいずれかとなる状態で前記表面層13を形成している。
この表面層13を形成しているポリウレタン弾性体の10%モジュラス値が2MPa以上とされているのは、10%モジュラス値が2MPa未満の場合には、Vリブドベルト1に対する異音の抑制効果が十分発揮されないためである。
また、一方で、ポリウレタン弾性体の10%モジュラス値が30MPa以下とされているのは、30MPaを超える10%モジュラス値を有するポリウレタン弾性体が用いられた場合には、表面層13にクラックを発生させやすくなり、この表面層13のクラックによって内層14に“とも割れ”を発生させるおそれがあるためである。
【0012】
なお、この表面層13を形成するポリウレタン弾性体の10%モジュラス値は、JIS K 6251に準拠して求めることができ、より詳しくは、10%伸長時における引張り応力を標準状態(温度:23±2℃、相対湿度:50±10%)で測定して求めることができる。
また、測定に際しては、通常、ベルト長手方向に沿ってVリブドベルトから採取した幅約2mm×長さ約80mm×厚み約0.5mmの大きさの短冊状試験片を用いることができる。
あるいは、例えば、表面層の形成に用いられているポリウレタン弾性体と同じ配合組成で別途作製されたシート試料から採取されるダンベル状試験片を用いることもできる。
【0013】
また、この表面層13は、異音ならびにクラックの発生をより顕著に抑制させ得る点から20〜300μmの厚みに形成されることが好ましい。
なお、圧縮ゴム層10は、前記台形断面の斜辺に相当する箇所が主としてプーリーに当接されることから、少なくとも、リブ12の側面部における表面層13の厚み(図1における「T」)が20〜300μmとなるように形成されていれば、異音ならびにクラック抑制効果を顕著なものとさせ得る。
したがって、図1に示す態様に代えて図2に示すようにリブの側面部分にのみ表面層を設けることも可能である。
【0014】
また、この表面層13は、異音ならびにクラックの発生をより顕著に抑制させ得る点から、その表面の摩擦係数が0.15〜0.45のいずれかとなるように形成されることが好ましい。
なお、この摩擦係数は、図3に示すような装置を用いて測定することができる。
より詳しくは、Vリブドベルトを所定長さに切断して測定試料(図中“A”)とし、垂直な壁面に取付けられ、しかも水平方向への応力を測定し得るように壁面に固定されて取付けられたロードセル(図中“L”)に前記測定試料の一端部を接続し、他端部に1.75kgの荷重(図中“M”)を取り付け、前記ロードセルの応力測定方向前方に配置した直径60mmのプーリー(図中“P”)に測定試料の略中間部分を支持させて測定することができる。
なお、通常、プーリーに対する測定試料の接触区間の角度(図中“θ”)が、90度となるようにして測定試料の略中間部分をプーリーで支持させて測定を実施する。
すなわち、プーリーの上端部とロードセル固定位置との区間において測定試料が水平方向に支持され、プーリーの側端部から荷重までの区間において測定試料が垂直下方に吊り下げられた状態となるようプーリーの位置をセットして測定を実施する。
この状態で、プーリーをその上部側が前記ロードセルから遠ざかる方向(図中“矢印”方向)に20rpmの速度で回転させ、該回転中に前記ロードセルにかかる応力(Tt)を測定し、このロードセルにかかる応力(Tt)と試料の垂直区間にかかる応力(Ts=1.75kgf)とにより下記式を用いて摩擦係数(μ’)を求めることができる。
摩擦係数(μ’)=ln(Tt/Ts)÷0.5π
【0015】
前記表面層13の形成には、硬化剤との混合割合などを調整することで得られるポリウレタン弾性体の硬さを調整することができ、その10%モジュラス値を2〜30MPaのいずれかとなるように調整することが容易である点において、前記ポリカーボネート系ポリオールを含有するポリウレタンプレポリマーが用いられることが好ましい。
しかも、1000〜50000のいずれかの重量平均分子量を有するポリウレタンプレポリマーが用いられることが好ましい。
表面層13の形成にポリカーボネート系ポリオールが用いられるのは、他のポリオール(例えば、ポリオレフィン系ポリオールやポリエステル系ポリオール)によって表面層13を形成させた場合には、ポリウレタン弾性体の10%モジュラス値を2〜30MPaのいずれかとしても、異音発生にいたるまでの耐久性(以下「異音耐久性」ともいう)が低いVリブドベルトとなるおそれを有するためである。
すなわち、ポリウレタン弾性体の10%モジュラス値を2〜30MPaとすることにより、異音耐久性に優れ、クラック抑制効果に優れた機能をより確実に表面層に発揮させ得る点においてポリカーボネート系ポリオールが用いられる。
【0016】
また、ウレタンプレポリマーの重量平均分子量(以下、単に「分子量」ともいう)が上記範囲、すなわち、分子量が1000以上であることが好ましいのは、1000未満であると前記表面層13の耐摩耗性が低くなり、伝動ベルトの駆動中に前記表面層が欠落しやすくなって、異音耐久性が低下するおそれを有するためである。
また、分子量が50000以下であることが好ましいのは、分子量が50000を超えると前記ウレタンプレポリマー組成物の粘度が大きくなり、製造時の作業性を低下させるおそれを有するためである。
【0017】
この前記ウレタンプレポリマーの分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定により特定される。
例えば、東ソー社製GPC(型名:HLC−8220)を用いて、TSKgel G4000HHR、G2500HHR、G2000HHRの3本のカラムを連結させ、カラム温度40℃、溶離液クロロホルム、流速1.0ml/min.、検出器RIで測定することができる。
なお、分子量はポリスチレン換算値として測定しうる。
また、分子量は、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基によるカラム吸着を防止すべく、メタノールを添加してイソシアネート基とあらかじめ反応させた後に、加温によりメタノールを揮発させた後に測定することができる。
【0018】
なお、このウレタンプレポリマーを構成するポリカーボネート系ポリオールとしては、カーボネート結合を含有する部分と炭素数5〜12の直鎖状の炭化水素部分(以下「直鎖部分」ともいう)とを有するポリカーボネート系ポリオールが好ましく、カーボネート結合を含有する部分と炭素数6〜9の直鎖部分とを有するポリカーボネート系ポリオールがより好ましい。
特に、カーボネート結合を含有する部分と、炭素数9のジオール由来の炭化水素鎖部分とを有するものであることが好ましい。
上記ポリカーボネート系ポリオールの炭素数9のジオール由来の炭化水素鎖部分は、側鎖を有するもの及び/又は異性体(直鎖部の炭素数は8)を含むものが好ましい。
上記炭化水素鎖部分が側鎖を有する場合、上記側鎖を有する炭化水素鎖の含有量は、上記炭素数9のジオール由来の炭化水素鎖部分のうち、30〜90%であることが好ましく、35〜85%であることがより好ましい。
【0019】
上記炭素数9のジオール由来の炭化水素鎖部分は、1,9−ノナンジオール及びメチルオクタンジオール由来の炭化水素鎖であることが好ましい。
【0020】
上記炭素数9のジオール由来の炭化水素鎖部分を有するポリカーボネート系ポリオールの市販品としては、例えば、クラポールC−1065N(クラレ社製、水酸基価114.8KOHmg/g、1,9−ノナンジオール/メチルオクタンジオール重量比65/35)、クラポールC−2065N(クラレ社製、水酸基価58.1KOHmg/g、1,9−ノナンジオール/メチルオクタンジオール重量比65/35)、クラポールC−1015N(クラレ社製、水酸基価112KOHmg/g、1,9−ノナンジオール/メチルオクタンジオール重量比15/85)等を挙げることができる。
【0021】
また、表面層を形成するポリウレタン弾性体には、このポリカーボネート系ポリオールが単独で用いられたウレタンプレポリマー、複数種類のポリカーボネート系ポリオールが用いられたウレタンプレポリマー、ポリカーボネート系ポリオールとポリエステル系ポリオールとがランダム共重合体を形成しているウレタンプレポリマー、ポリカーボネート系ポリオールとポリカプロラクトン系ポリオールとがランダム共重合体を形成しているウレタンプレポリマーなどを用いうる。
なお、ポリカーボネート系ポリオール以外のポリオール成分を過剰に含有させると形成されるポリウレタン弾性体の10%モジュラス値を2〜30MPaのいずれかとしても、異音耐久性が低いVリブドベルトとなるおそれを有することから、重量でポリオール成分中の90%以上がポリカーボネート系ポリオールであることが好ましい。
【0022】
前記ポリカーボネート系ポリオールとともにウレタンプレポリマーの形成に用いられるイソシアネート成分としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4'−MDI)、2,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4'−MDI)、1,4−フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)などの芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアナートメチル(NBDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)などの脂肪族ポリイソシアネート、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、H6XDI(水添XDI)、H12MDI(水添MDI)などの脂環式ポリイソシアネート、上記の各ポリイソシアネートのカルボジイミド変性ポリイソシアネート、または、これらのイソシアヌレート変性ポリイソシアネートなどが挙げられる。
また、これらのイソシアネート成分は、それぞれ単独または複数組み合わせてウレタンプレポリマーの形成に用いることができる。
【0023】
前記表面層13の形成には、このウレタンプレポリマーを含む未硬化状態の液状のウレタンゴム組成物(以下「ウレタンプレポリマー液」ともいう)を用いることができる。
例えば、硬化剤及びイソシアネート基のブロック化剤をさらに含有させて、いわゆる「一液硬化型」のウレタンプレポリマー液を作製したり、使用する直前に硬化剤などを含有させて、いわゆる「二液硬化型」のウレタンプレポリマー液を作製したりして表面層13の形成に用いることができる。
【0024】
前記硬化剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、脂肪族または芳香族環を含む多価アミンおよび多価アルコールから選ばれる1種、または2種以上の混合物を挙げることができる。
【0025】
前記多価アミンの内、ジアミンとしては、メチレンビスオルソクロロアニリン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン等の脂肪族ジアミン、p−フェニレンジアミン、m−トリレンジアミン、4,4−ジアミノジフェニルメタンなどの芳香族ジアミンなどが挙げられる。
また、3価以上の多価アミンとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。
【0026】
前記多価アルコールの内、ジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールAなどが挙げられる。
また、3価以上の多価アルコールとしてはトリイソプロパノールアミン、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセロールなどが挙げられる。
【0027】
前記ブロック化剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチルエチルケトオキシム、アセトキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトフェノンオキシム、ベンゾフェノンオキシム等のオキシム系ブロック化剤、m−クレゾール、キシレノール等のフェノール系ブロック化剤、メタノール、エタノール、ブタノール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコールモノエチルエーテル等のアルコール系ブロック化剤などが挙げられる。
【0028】
この表面層13の形成に用いられるポリウレタン弾性体には、例えば、表面層13の表面摩擦係数を前述の範囲(0.15〜0.45)となるように調整すべく、さらに、無機物粒子、樹脂粒子、短繊維などを含有させることもできる。
【0029】
前記無機物粒子としては、例えば、グラファイト粒子、二硫化モリブデン粒子、雲母粒子、タルク粒子、三酸化アンチモン粒子、二セレン化モリブデン粒子、二硫化タングステン粒子を例示でき、前記樹脂粒子としては、ポリテトラフロロエチレン粒子(以下「PTFE粒子」ともいう)、超高分子量ポリエチレン樹脂粒子(以下「UHMWPE粒子」ともいう)、架橋アクリル樹脂粒子、架橋ゴム微粒子などを例示することができる。
なお、この“超高分子量ポリエチレン”との用語は、JIS K 6936−1、−2に記載されているように、JIS K 7210によるメルトフローレートを測定することができず、190℃、21.6kgの条件によりメルトマスフローレート(MFR)を測定しても0.1g/10min未満の値となるポリエチレンを意図して用いている。
これらの無機物粒子や樹脂粒子は、通常、平均粒径100μm以下の大きさのものを採用し得る。
【0030】
前記短繊維としては、例えば、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアミド繊維、綿繊維、絹繊維、麻繊維、羊毛繊維、セルロース繊維、芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール繊維、炭素繊維、ポリケトン繊維、玄武岩繊維などを用いることができる。
なお、表面層13を形成するポリウレタン弾性体に該短繊維を含有させる場合には、最小限の量とすることが好ましく、ポリウレタン弾性体に占める割合が重量で1%未満であることが好ましく、全く含有させないことがさらに好ましい。
すなわち、短繊維は、表面摩擦係数の調整に有効ではあるものの脱落しやすく異音耐久性を低下させるおそれがあることから、摩擦係数の調整には、無機物粒子や樹脂粒子を用いることが好ましく、PTFE粒子やUHMWPE粒子が特に好ましい。
【0031】
前記内層14については、一般的なVリブドベルトの圧縮ゴム層10の形成に用いられるゴム組成物により形成させることができる。
ただし、この内層14の形成には、クラックの発生をより顕著に抑制させ得る点においてマイクロメートルサイズ、ミリメートルサイズの粒子や繊維などを含有させないことが好ましく、カーボンブラックやシリカなどのサブミクロンサイズ(1μm以下)の粒子を除いて、前記短繊維、前記無機物粒子、前記樹脂粒子などを含有させないことが好ましく、特に前記短繊維を含有させないことが好適である。
【0032】
前記内層14の形成に用いられるゴム組成物としては、例えば、ベースゴム、加硫剤、加硫促進剤、架橋助剤、カーボンブラックなどを含むものが挙げられる。
また、必要に応じて、これらに可塑剤、老化防止剤、加工助剤などのゴム配合薬品を添加させることも可能である。
【0033】
前記ベースゴムには、例えば、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、エポキシ化天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、ポリブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム、水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム、エチレン−α−オレフィンエラストマー、ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アルキル化クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレンやこれらの混合品などを用いることができる。
【0034】
前記加硫剤としては、硫黄や有機過酸化物を用いることができ、この有機過酸化物としては、例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、1,1−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ビス(t−ブチルパーオキシ−ジイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチル−ヘキシルカーボネートなどを用いることができる。
【0035】
前記加硫促進剤としては、チアゾール系、チウラム系、スルフェンアミド系のものを用いることができ、チアゾール系加硫促進剤としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトチアゾリン、ジベンドチアジル・ジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩などを例示することができ、前記チウラム系加硫促進剤としては、テトラメチルチウラム・モノスルフィド、テトラメチルチウラム・ジスルフィド、テトラエチルチウラム・ジスルフィド、N,N’−ジメチル−N,N’−ジフェニルチウラム・ジスルフィドなどを例示することができ、前記スルファミド系加硫促進剤としては、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N’−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミドなどを例示することができる。
また、その他の加硫促進剤としてビスマレイミド、エチレンチオウレアなども用いることができる。
これらの加硫促進剤は、単独で用いてもよく、2種類以上混合して用いてもよい。
【0036】
前記架橋助剤としては、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、1,2−ポリブタジエン、不飽和カルボン酸の金属塩、オキシム類、グアニジン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、N−N’−m−フェニレンビスマレイミド、硫黄などを用いることができる。
【0037】
このようなゴム組成物により形成される前記内層14は、10%モジュラスが0.8〜3MPaのいずれかの値となるように形成されることが好ましい。
この内層14を構成するゴム組成物の10%モジュラス値がこのような範囲の内のいずれかの値であることが好ましいのは、10%モジュラス値が0.8MPa未満の場合には、リブ全体の歪みが大きくなりすぎて見かけ上の摩擦係数が増大して異音の抑制効果が十分発揮されなくなるおそれを有するためである。
一方で、3MPaを超える10%モジュラス値を有するゴム組成物が用いられた場合には、リブ12(圧縮ゴム層10)に屈曲疲労が発生され易くなり、リブ12にクラックを発生させるおそれがあるためである。
【0038】
なお、この内層14を形成するゴム組成物の10%モジュラス値も、前記表面層13を形成するポリウレタン弾性体の10%モジュラス値の測定方法と同様に、JIS K 6251に準拠して求めることができる。
【0039】
また、ベースゴムと加硫剤などとを含む上記に例示のゴム組成物に代えて、表面層13の形成に用いたポリウレタン弾性体と同様の組成物(ウレタンゴム組成物)を内層14の形成に用いることもできる。
この内層14にウレタンゴム組成物を用いる場合には、そのポリオール成分が、ポリカーボネート系のものに限定されるものではなく、また、イソシアネート成分や他の成分なども、従来公知のものを適宜組み合わせて用いることができる。
【0040】
本実施形態のVリブドベルト1においては、前記接着ゴム層20、カバーゴム層30については特に限定されるものではなく、一般的なVリブドベルトにおける接着ゴム層、カバーゴム層に用いられているものと同様の材料を用いて、一般的なVリブドベルトにおける接着ゴム層、カバーゴム層と同様に構成させることができる。
また、心線40についても一般的なVリブドベルトに用いられているものと同様のものを本実施形態のVリブドベルト1にも採用することができる。
【0041】
次いで、このようなVリブドベルト1の製造方法について説明する。
本実施形態のVリブドベルトの製造方法は、カバーゴム層30と、接着ゴム層20と、圧縮ゴム層10とをそれぞれ形成するための未加硫ゴムシートを作製する未加硫ゴムシート作製工程と、心線40にレゾルシノール・ホルムアルデヒド・ラテックス処理(以下「RFL処理」ともいう)などの前処理を施す心線前処理工程と、前記未加硫ゴムシートと前記前処理された心線とを用いて円筒形状の予備成形体を形成する予備成形体作製工程と、該予備成形体を加硫一体化させて円筒状の一次成形体を作製する加硫工程と、前記一次成形体に断面略V字状の溝を形成させてリブ形状を形成させるリブ形成工程と、前記リブ形状が形成された一次成型体の表面に表面層形成用のウレタンプレポリマー液を塗布した後に硬化させて表面層を形成させる表面層形成工程と、該表面層形成工程を実施した後に、この一次成形体からVリブドベルトを所定幅に切り出す切断工程とで構成されている。
【0042】
前記未加硫ゴムシート作製工程は、例えば、ニーダー、バンバリーミキサーなどを用いて所定の配合でゴム組成物を混練した後に、カレンダー成形するなどして実施することができる。
【0043】
前記心線前処理工程は、例えば、予め作製しておいたRFL処理液に心線40を浸漬して焼き付けを実施し、必要に応じて、このRFL処理液への浸漬、焼き付けを複数回繰り返して実施した後に、例えば、接着ゴム層20を構成するゴム組成物に用いられているゴムと同様のゴムをトルエンなどに溶解してなる接着溶液に浸漬して加熱乾燥するなどして実施することができる。
【0044】
前記予備成形体作製工程は、例えば、表面が平滑な円筒状の成形ドラムの周面に前記カバーゴム層30を形成するための未加硫ゴムシートを巻き付け、次いで接着ゴム層20を形成するための未加硫ゴムシートを巻き付け、次いで前処理された心線40を螺旋状にスピニングし、さらに接着ゴム層20を形成するための未加硫ゴムシートを巻き付け、最後に圧縮ゴム層10の内の内層14を形成するための未加硫ゴムシートを巻き付けて円筒状の予備積層体を作製するなどして実施することができる。
【0045】
前記加硫工程においては、例えば、前記予備積層体を加硫缶内で加熱、及び、加圧することで、積層されたそれぞれの未加硫ゴムシートを一体化させて一次成形体を作製する方法を採用することができる。
【0046】
前記リブ形成工程においては、例えば、加硫された一次成形体を駆動ロールと従動ロールとを備える駆動システムに取り付け、張力をかけてこれらのロールを走行させながら研削ホイールによって前記一次成形体の表面(内層の表面)に複数条の溝を形成させて、該溝により互いに平行となるように分離された複数条のリブ形状を一次成形体の表面に形成させる方法を採用することができる。
【0047】
前記表面層形成工程においては、例えば、まず、表面層を形成するためのウレタンプレポリマー液の調整を実施する。
次いで、このウレタンプレポリマー液をリブ形状が形成された前記一次成形体の表面(内層の表面)に塗工して、さらに、この一次成形体を加熱して前記ウレタンプレポリマー液の硬化を実施して内層14の表面に表面層13を接着一体化させる。
なお、このとき、表面層を形成するためのウレタンプレポリマー液にPTFEやUHMWPEなどからなる樹脂粒子を分散させて、表面の摩擦係数を調整するようにしても良い。
【0048】
前記切断工程においては、例えば、表面層が形成された一次成形体を駆動ロールと従動ロールとを備える駆動システムに取り付け、張力をかけてロールを走行させながら所定リブ数ごとに一次成形体を輪切りにしてVリブドベルトを切り出す方法を採用することができる。
【0049】
なお、このような方法に代えて、特開2004−076927号公報に記載されているような、可撓性ジャケットと内周面にリブ形状が形成された外型とを用いる方法を採用することも可能である。
【0050】
本実施形態においては、Vリブドベルトを、上記の例示に基づいて説明したが、本発明においては、Vリブドベルトを上記例示に限定さするものではない。
例えば、本実施形態においては、圧縮ゴム層の内周側の表面形状に沿って略均一なる厚みで内層を覆うように形成された表面層を有する場合を例に説明したが、図2に示すようにリブの側面部分にのみ表面層を設ける場合も本発明の意図する範囲である。
なお、通常、Vリブドベルトは、主としてリブの側面においてプーリーと強く当接されることから、図2に例示する断面構造を有するように表面層が設けられていれば、図1に例示の断面構造を有するVリブドベルトとほぼ同等の効果を期待し得る。
また、本実施形態においては、圧縮ゴム層を、表面層と内層との2層構造により形成させる場合を例示しているが、単層構造とすることもでき、あるいは、3層以上の積層構造とすることもできる。
また、ここでは詳述しないが、本発明においては、本発明の効果を損ねない範囲において、上記に例示した構成に代えて従来公知の構成を置き換えることが可能である。
また、上記に例示した構成に従来公知の構成をさらに付加したりすることも可能である。
【実施例】
【0051】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0052】
(ゴム組成物の配合)
Vリブドベルトを形成する圧縮ゴム層の内層、接着ゴム層のゴム組成物には表1に示す配合を用いた。
また、背面層に相当する箇所にはRFL処理が施されたポリアミド製帆布を用いてVリブドベルトの形成を実施した。
【0053】
【表1】

【0054】
(ウレタンプレポリマー液の調製)
表面層を形成させるためのウレタンプレポリマー液の調整には、以下のような成分を用いた。
1)ポリオール
ポリオールA:クラレ社製のポリカーボネート系ポリオール(商品名「C−1015N」、水酸基価112KOHmg/g、1,9−ノナンジオール/メチルオクタンジオールの重量比が15/85)
ポリオールB:綜研化学社製のポリアクリル系ポリオール(商品名「UT−2001」)
ポリオールC:三洋化成工業社製のポリエーテル系ポリオール(商品名「ニューポールPP−1000」)
2)イソシアネート
イソシアネートA:日本ポリウレタン工業社製の2,4−TDI、2,6−TDI混合品(商品名「コロネートT−80」、2,4−TDI/2,6−TDI混合比率80/20)
イソシアネートB:日本ポリウレタン工業社製のTDI系イソシアネート(商品名「コロネートL」、TDIへの多価アルコール付加物)
イソシアネートC:BASF社製のMDI(商品名「ルプラネート」)
3)アミン
アミンA:住化バイエルウレタン社製の芳香族アミン化合物(商品名「バイテック1604」)
4)樹脂粒子
樹脂粒子A:喜多村社製のPTFE粒子(商品名「KTL−10N」)
樹脂粒子B:三井化学社製のUHMWPE粒子(商品名「ミペロンXM−220」)
【0055】
<実施例1>
(Vリブドベルトの作製)
まず、表1の配合に基づき圧縮ゴム層内層、接着ゴム層のそれぞれの配合材料をバンバリーミキサーにより混練し、カレンダーロールにより圧縮ゴム層内層用未加硫シート(厚さ0.8mm)、接着ゴム層用未加硫シート(厚さ0.4mm)を作製する未加硫ゴムシート作製工程を実施した。
次いで、接着ゴム配合を用いてカレンダーロールでフリクション加工された前記帆布を円筒状成形ドラムに巻き付けた上に、接着ゴム層用未加硫シートを1プライ巻き付け、予め前処理を施した心線をらせん状にスピニングし、さらに圧縮ゴム層内層用未加硫シートを4プライ巻きつけて未加硫積層体を作製する予備成形体作製工程を実施した。
また、前記心線には、1100dtex/2×3の構成のポリエチレンテレフタレート製の撚糸を用い、前処理としてRFL処理を施して用いた。
なお、この心線は、下撚りがS撚りで撚りピッチ16回/10cm、上撚りがZ撚りで撚りピッチ10回/10cmのものを用いた。その後、この未加硫積層体を加硫缶中で加硫し、脱型して円筒状の一次成形体を作製する加硫工程を実施した。
そして、この一次成形体の表面に研削砥石を用いてリブ形状を形成するリブ形成工程を実施した。
さらに、前記ポリオールA(ポリカーボネート系ポリオール、商品名「C−1015N」)と、該ポリオールAの水酸基1モルに対して、1.1モルの比率となる量のイソシアネートA(2,4−TDI、2,6−TDI混合品、商品名「コロネートT−80」)と、0.4モルの比率となる量のイソシアネートB(TDI系イソシアネート、商品名「コロネートL」)と、全体に占める体積割合が30体積%となる量の樹脂粒子A(PTFE粒子、商品名「KTL−10N」)を含有するウレタンプレポリマー液を作製して該ウレタンプレポリマー液をリブ形状が形成された圧縮ゴム層内層の表面に圧送式スプレーガンにてスプレー塗工し、この一次成形体を90℃で30分間加熱して表面層形成用のウレタンプレポリマー液を硬化させる表面層形成工程を実施した。
なお、形成された表面層の平均厚さは60μmであった。
最後に、この一次成形体から3リブ分の幅でVリブドベルトを切り出す切断工程を実施して図1に例示のものと略同一の断面形状を有するVリブドベルトを作成した。
なお、この実施例1のVリブドベルトの総厚さ(図1の“h1”)は、4.3mmでリブ高さ(図1の“h2”)は、2.0mm、ベルト周長1740mmであった。
【0056】
<実施例2>
実施例1において用いられたウレタンプレポリマー液に、さらに、イソシアネートC(MDI、商品名「ルプラネート」)とアミンA(芳香族アミン化合物、商品名「バイテック1604」)とをそれぞれ5重量%の含有量となるように配合されたウレタンプレポリマー液を用いた以外は、実施例1と同様にしてVリブドベルトを製造した。
【0057】
<実施例3>
イソシアネートCとアミンAの含有量をそれぞれ10重量%とした以外は、実施例2と同様にしてVリブドベルトを製造した。
【0058】
<実施例4>
実施例1において用いられたウレタンプレポリマー液の樹脂粒子Aに加えて樹脂粒子Bを10体積%となるように含有させたウレタンプレポリマー液を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてVリブドベルトを製造した。
【0059】
<比較例1>
イソシアネートCとアミンAの含有量をそれぞれ20重量%とし、硬化後のポリウレタン弾性体の10%モジュラス値が30MPaを超えるようにして表面層を形成させた以外は、実施例2と同様にしてVリブドベルトを製造した。
【0060】
<比較例2>
実施例1において用いられたウレタンプレポリマー組成物に、低分子量のポリオールを含有させて、硬化後のポリウレタン弾性体の10%モジュラス値が2MPa未満となるようにして表面層を形成させた以外は、実施例1と同様にしてVリブドベルトを製造した。
【0061】
<比較例3>
実施例1において用いられたウレタンプレポリマー組成物におけるポリオールA(ポリカーボネート系ポリオール)に代えて、ポリオールB(ポリアクリル系ポリオール、商品名「UT−2001」)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてVリブドベルトを製造した。
【0062】
<比較例4>
実施例1において用いられたウレタンプレポリマー組成物におけるポリオールA(ポリカーボネート系ポリオール)に代えて、ポリオールC(ポリエーテル系ポリオール、商品名「ニューポールPP−1000」)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてVリブドベルトを製造した。
【0063】
(10%モジュラス値の測定)
実施例1〜4、比較例1〜4のVリブドベルトの表面層の形成に用いたウレタンプレポリマー液をPETフィルム上に広げ、wet状態で200μm厚さの膜を形成し、90℃で30分間硬化させた後に引張物性をJIS K 6251に準拠して測定し10%モジュラス値を求めた。
より詳しくは、10%伸長時における所定伸び引張り応力を標準状態(温度:23±2℃、相対湿度:50±10%)で測定した。
結果を表2に示す。
なお、内層についてもJIS K 6251に準拠して10%モジュラスを測定したところ、1.0MPaであった。
【0064】
(異音耐久性:注水異音発生時間の測定)
異音評価の方法は、図4に示すように各実施例、比較例のVリブドベルトを内面側(圧縮ゴム層側)と背面側(帆布側)とにそれぞれ4個のプーリーを当接させて架け渡して実施した。
【0065】
すなわち、ベルト内周面と当接されるプーリーとして、直径80mmの駆動プーリー(図中“Pd”)と、ベルトにテンションを付与すべく荷重が掛けられた直径61mmテンションプーリー(図中“Pt")、注水を実施させるための直径130mmの樹脂製プーリー(図中“Pr”)、ならびに、直径61mmのアイドラープーリー(図中“PI1”)を用い、ベルト外周面と当接されるプーリーとして、直径80mmのアイドラープーリー(図中“PI5”)と、3個の直径61mmのアイドラープーリー(図中“PI2”〜“PI4”)を用いて実施した。
【0066】
なお、前記樹脂製プーリーには、3度のミスアライメント(ずれ角度)を設けた状態とし、前記テンションプーリーには、荷重534N(ベルト張力267N)を負荷し、前記駆動プーリーを750rpmの速度で回転させつつ、霧吹き10回を1セットとして、1時間あたり1セットの注水を実施した。
【0067】
注水箇所は、樹脂製プーリーに当接される寸前のベルト内周面に対して実施し、雰囲気温度5℃の環境下において、異音が発生するまでの時間(異音発生時間)を測定した。
なお測定においては、騒音計を用いて注水前後のベルト騒音を測定し、その差が1dB以下の場合か、もしくは、注水前よりも1dBを超える騒音が注水後に発生した場合でも、その1dBを超える騒音の発生時間が1秒間以内であった場合を「異常音発生無し」と判定し、1dBを超える音が1秒間を超える時間観測された場合を「異常音発生有り」として判定し、この「異常音発生有り」の状態が観察されるまでの時間を異音発生時間とした。結果を表2に示す。
【0068】
(クラック発生時間)
さらに、図5に示すように各実施例、比較例のVリブドベルトを4個のプーリーに架け渡して走行試験を実施した。すなわち、直径120mmの駆動プーリーPaと、同じく直径120mmの従動プーリーPbと、直径70mmの従動プーリーPcと、直径55mmのアイドラープーリーPdを用い、駆動プーリーPaを4900rpmで回転させ、アイドラープーリーPdに85kgfの張力を加え85℃の雰囲気中でVリブドベルト1を走行させ圧縮ゴム層にクラックが発生するまでの累積走行時間を測定した。
そして、比較例1のVリブドベルトにおけるクラックが発生するまでの累積時間を100とした場合の、各実施例、比較例のVリブドベルトを用いた場合のクラックが発生するまでの累積時間をクラック発生評価指数として評価した。
結果を表2に示す。
【0069】
【表2】

【0070】
この表2からも、本発明のVリブドベルトは、耐クラック性に優れ、しかも、異音の発生を抑制させ得るものであることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】一実施形態のVリブドベルトを示す断面図。
【図2】他実施形態のVリブドベルトを示す断面図。
【図3】摩擦係数測定方法を示す概略図。
【図4】異音発生時間の試験方法を示す概略図。
【図5】耐クラック性の試験方法を示す概略図。
【符号の説明】
【0072】
1:Vリブドベルト、10:圧縮ゴム層、11:溝、12:リブ、13:表面層、14:内層、20:接着ゴム層、30:カバーゴム層、40:心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト長手方向に延在するリブが複数条設けられており、該リブの表面をプーリーに当接させて用いられるVリブドベルトであって、
前記リブの少なくとも表面は、10%モジュラスが2〜30MPaのいずれかの値を有するポリウレタン弾性体により形成されており、且つ、前記ポリウレタン弾性体には、ポリカーボネート系ポリオールが用いられていることを特徴とするVリブドベルト。
【請求項2】
前記ポリウレタン弾性体は、前記ポリカーボネート系ポリオールを含有する1000〜50000のいずれかの重量平均分子量を有するポリウレタンプレポリマーが用いられて形成されている請求項1記載のVリブドベルト。
【請求項3】
前記プーリーに当接される表面を構成する表面層と該表面層の内側を構成する内層との積層構造が前記リブに形成されており、前記表面層が前記ポリウレタン弾性体により形成されており、前記内層が、10%モジュラスが0.8〜3MPaのいずれかの値を有するゴム組成物により形成されている請求項1または2記載のVリブドベルト。
【請求項4】
前記表面層の厚みが、20〜300μmのいずれかである請求項3に記載のVリブドベルト。
【請求項5】
表面層を形成している前記ポリウレタン弾性体には、樹脂粒子および無機物粒子の内の少なくとも1種が含有されている請求項3または4に記載のVリブドベルト。
【請求項6】
前記樹脂粒子として、ポリテトラフロロエチレン粒子および超高分子量ポリエチレン樹脂粒子の内の少なくとも1種が含有されている請求項5に記載のVリブドベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−99457(P2011−99457A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−57689(P2008−57689)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(000005061)バンドー化学株式会社 (429)