説明

X線を利用した流動情報測定用カプセル及びこれを利用した流動情報測定方法

【課題】被検体の流動状況を精密に計測するための手段を提供する。
【解決手段】本発明はX線を利用した流動情報測定用カプセル及びこれを利用した流動情報測定方法に関するものであって、より詳しくは生体適合高分子;有機造影剤または脱イオン水;及び架橋剤を含み、架橋剤によって架橋された生体適合高分子の内部が有機造影剤に満たされたり、空になっているX線を利用した流動情報測定用カプセル及びこれを利用した流動情報測定方法を提供することによって、イメージング(imaging)時間を大きく延長し、正確な定量的血流の測定が可能で、生体内部の流動情報を正確に把握できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線を利用した流動情報測定用カプセル及びこれを利用した流動情報測定方法に関するものであって、より詳しくは、X線造影分析技術によるイメージング(imaging)時間を増やして、生体に直ちに適用して、正確な定量的血流の測定が可能であり、生体内部の流動情報を正確に把握できるX線を利用した流動情報測定用カプセル及びこれを利用した流動情報測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、心臓血管疾患(cardiovascular disease)の主要原因として分析される血液流動に対する関心が高くなり、医学と工学とが融合的に研究する学際間研究が増加傾向にある。血液の再循環領域や非常に低いせん断応力領域の発生などのような非正常的な血液流動が心臓血管疾患の発症転換点のうちの一つに新しく出現するに従ってより血液流動に対する定量的でかつ正確な流動情報が要求されている。
【0003】
X線は不透明な生体や物体内部を容易に透過するため、医療診断用や非破壊検査用として幅広く使用されてきた。特に本発明分野に関連しては、最近の放射光加速器とデジタル映像処理方法との発展に伴って、生きて動くサンプルに対する映像を高い空間解像度及び優れたコントラストで得ることができるようになった。その結果、X線を利用した新たな映像化方法等が開発されて生命科学、医療工学及び材料工学など多様な分野に応用が拡大されている。特に発展の顕著な、不透明な流体流れの定量的速度場情報を測定できるX線粒子映像速度法(Particle Image Velocimetry、PIV)もそのうちの一つである。この粒子映像速度法は、最近、流体力学分野において幅広く用いられている定量的な流動可視化方法で、追跡粒子(tracer particles)が含まれた流動映像にデジタル映像処理方法を適用して、速度場情報を得ることができる。
【0004】
従来のX線を利用した映像化方法においては、液状のヨード系造影剤またはバリウム系造影剤が多く用いられた。特に医学分野では、生体適合高分子をヨード系造影剤またはバリウム系造影剤に懸濁して用いていた。しかしながら、このような造影剤を用いる場合、生体適合高分子と造影剤との比重差による懸濁不安定性、ヨード化合物の生体安全性及び短いイメージング時間などの問題があった。
また、このような液状の造影剤は測定しようとする流体と混合されて、X線映像において個々の粒子に区分されて現れないために定量的な流動情報を測定するための流動解析用追跡粒子に用いるには不可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一実施形態では、長いイメージング時間と正確な定量的血流の流速情報測定が可能な粒子状のX線を利用した流動情報測定用カプセルを提供することができる。
本発明の他の一実施形態においては、前記X線を利用した流動情報測定用カプセルを利用した血流の流動情報を取得する方法を提供することができる。
本発明が目的とする技術的課題等は前述した技術的課題に限らず、言及しなくても、また他の技術的課題が下記の記載から当業者に明確に理解できる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態によれば、生体適合高分子;有機造影剤;及び架橋剤を含んで構成された、X線を利用した流動情報測定用カプセルを提供する。
また、本発明の他の一実施形態によれば、生体適合高分子;脱イオン水;及び架橋剤を含んで構成されたX線を利用した流動情報測定用カプセルを提供する。
本発明のまた他の一実施形態によれば、前記X線を利用した流動情報測定用カプセルを追跡粒子に使用するX線を利用した流動情報測定方法を提供する。
その他、本発明の実施形態らの具体的な事項は、以下の詳細な説明に含まれている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一実施形態によるX線造影を利用した流動情報測定用カプセルは、従来の液状造影剤に比べて、はるかに長い映像取得時間を有することができ、肉眼で見えない生体内部流動を数マイクロメーターの正確度で測定でき、血液流動の時間に応じた速度分布変化をリアルタイムで測定できる。したがって、循環器疾患の早期診断だけでなく医学分野における画期的な転換点をむかえるようになるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施例によるX線を利用した流動情報測定用カプセルの形態を示す図である。
【図2】本発明の一実施例によるX線を利用した流動情報測定用カプセルの製造方法を示すものである。
【図3】本発明の一実施例によるX線を利用した流動情報測定用カプセルの製造方法であるマイクロ流体技術を示すものである。
【図4】本発明の一実施例によるX線を利用した流動情報測定方法である粒子映像速度法の基本原理を示すものである。
【図5】本発明の実施例1によるX線を利用した流動情報測定用カプセルの走査電子顕微鏡(SEM)イメージを示すものである。
【図6】本発明の実施例1によるX線を利用した流動情報測定用カプセル内部の構成物質(中心部)に対するEDS(energy dispersive spectroscopy)分析結果を示すグラフである。
【図7】本発明の実施例2によるX線を利用した流動情報測定用カプセル内部の構成物質(中心部)に対するEDS(energy dispersive spectroscopy)分析結果を示すグラフである。
【図8】本発明の実施例1による有機造影剤が含まれたカプセルのX線イメージを示すものである。
【図9】本発明の実施例1による有機造影剤が含まれたカプセルの明暗比グラフを示すものである。
【図10】本発明の実施例2による有機造影剤が含まれてないカプセルのX線イメージを示すものである。
【図11】本発明の実施例2による有機造影剤が含まれてないカプセルの明暗比グラフを示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を詳しく説明する。ただし、これは例示として提示されるものであり、これによって、本発明が限られず、本発明は後述する請求範囲の範疇によって定義される。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、生体適合高分子;有機造影剤;及び架橋剤を含んで構成された、X線を利用した流動情報測定用カプセルを提供する。前記カプセルは架橋剤によって架橋された生体適合高分子の内部が有機造影剤で満たされている。
【0011】
また、本発明の他の一実施形態によれば、生体適合高分子;脱イオン水;及び架橋剤を含んで構成されたX線を利用した流動情報測定用カプセルを提供する。前記カプセルは架橋剤によって、架橋された生体適合高分子の内部が空けられている。
【0012】
X線を利用した流動情報測定用カプセルの形態は当分野において用いられるいかなる形態のものであるかには関係がないが、図1に示すように、生体適合高分子が外壁物質11としてX線を利用した流動情報測定用カプセルの表面を完全に覆っている形態のものがより望ましい。このようなX線を利用した流動情報測定用カプセルの内壁物質12としては、架橋剤によって架橋された生体適合高分子が一部含まれることができ、有機造影剤または空虚な空間が存在することもできる。
【0013】
また、本発明の前記有機造影剤は当分野において使用する一般のものであり、その種類を特に限定しないが、より望ましくは、ヨード系有機造影剤、バリウム系有機造影剤及びこれらの混合物からなる群より選択されるものを用いることができる。
【0014】
特に、前記有機造影剤はメトリザミド(Metrizamide)、ジアトリゾエート(Diatrizoate)、イオキサグレート(Ioxaglate)、イオペントル(Iopentol)、イオパミドル(Iopamidol)、イオメプロール(Iomeprol)、イオトロールラン(Iotrolan)、イオヘキソル(Iohexol)、イオベルソル(Ioversol)、イオキシラン(Ioxilan)、イオプロマイド(Iopromide)、イオデクサノール(Iodixanol)、イオビトリドール(Iobitridol)及びこれらの混合物からなる群から選択されるヨード系有機造影剤を用いた方が良い。より望ましくは、イオパミドル、イオメプロール、イオデクサノール及びこれらの混合物からなる群より選択されるものを用いた方が良い。
【0015】
一方、本発明の一実施例によるX線を利用した流動情報測定用カプセルが架橋剤によって、架橋された生体適合高分子の内部が空になっている場合、つまり、気孔で満たされた場合には臨床用X線診断方法または放射光加速器X線を利用したX線微細映像方法でより望ましく適用することができる。特に、前記放射光加速器X線を利用したX線微細映像方法の場合、臨床用X線診断方法より高分解能で映像の獲得が可能である。
【0016】
内部が気孔で満たされた気孔カプセルをX線を利用した流動情報測定用カプセルに使用する場合には気孔に相当するガス(gas)層と生体適合高分子に相当する固体(solid)層の境界面に現れる屈折率(refractive index)の差が発生する。このような屈折率の差によって照射されるX線のビームが境界面に集中され、これによってカプセルの気孔に相当するガス層が明るく現れ、その境界の部分でのプロファイル(縁取り)が、なお鮮明(sharp)になる長所がある。
【0017】
前記生体適合高分子は当分野において使用する一般的な生体適合高分子であり、その種類は特に限定しないが、より望ましくは、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンビニルアルコールのようなポリアルキレンビニルアルコール、ポリ乳酸、ポリラクチドグリコリド、ポリエチレンオキサイドのようなポリアルキレンオキサイド、セルロースアセテート、ポリ(メト)アクリレート、ポリエチレン−ビニルアセテートのようなポリアルキレン−ビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシエチル(メト)アクリレートのようなポリヒドロキシアルキル(メト)アクリレート、コラーゲン、ゼラチン、ケラチン、アルギン酸塩(alginate)、アルギン酸(alginic acid)、キチン、キトサン及びこれらの混合物からなる群より選択されるものを用いた方が良い。さらに望ましくは、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリラクチドグリコリド(PLGA)及びこれらの混合物からなる群より選択されるものを用いた方が良い。前記"アルキレン"というのは、炭素数2乃至20のアルキレン、より望ましくは、炭素数2乃至10のアルキレンを意味して、"アルキル"というのは、炭素数1乃至20のアルキル、より望ましくは、炭素数1乃至10のアルキルを意味する。
【0018】
また、本発明の一実施例による、X線を利用した流動情報測定用カプセルは架橋剤を使用しており、前記架橋剤は当分野で使用する一般的な架橋剤であり、その種類を特に限定しないが、グルタールアルデヒド(glutaraldehyde)等の架橋剤を望ましく使用することができる。
【0019】
本発明の一実施例による、X線を利用した流動情報測定用カプセルの粒径は0.4乃至100μm範囲、より望ましくは、0.5乃至80μm範囲を有することができる。この時、前記X線を利用した流動情報測定用カプセルの粒径が非常に小さい場合には空間解像度の制約によって粒子映像の獲得が不可能であったりX線の吸収が不足して、周囲の組織との区分に困難が発生することができ、粒径が非常に大きい場合には嵩が大きくなり重さも重くなって、血液のような生体流体をうまく追跡できないという問題が発生することができるので、前記範囲の粒径を有する方が良い。
【0020】
下記反応式1は、本発明の一実施例による、X線を利用した流動情報測定用カプセルのカプセル化過程を示すものである。
[反応式1]
【0021】
【化1】

【0022】
このような本発明の一実施例によるX線を利用した流動情報測定用カプセルは、胃腸または心臓血管流動情報測定用カプセルとしても非常に有効に使用することができる。
【0023】
一方、X線を利用した流動情報測定用カプセルの製造方法は当分野で一般に使用される製法であって、特に限定しないが、図2に示したように、下記の製造方法によって良好なカプセルを製造することができる。
【0024】
まず、有機溶媒の中で脱イオン水、生体適合高分子及び有機造影剤を混合して、第1混合溶液を製造する段階(S11);有機溶媒に架橋剤を添加して、第2混合溶液を製造する段階(S12);及び前記第1混合溶液に第2混合溶液を滴下して架橋させ、これによって、X線を利用した流動情報測定用カプセルを製造する段階(S13)を含む、X線を利用した流動情報測定用カプセルの製造方法を提供することができる。
【0025】
また、有機溶媒内で脱イオン水及び生体適合高分子を混合して、第1混合溶液を製造する段階(S21);有機溶媒に架橋剤を添加して、第2混合溶液を製造する段階(S22);及び前記第1混合溶液に第2混合溶液を滴下して架橋させ、これによって、X線を利用した流動情報測定用カプセルを製造する段階(S23)を含んで構成されることを特徴とする、X線を利用した流動情報測定用カプセルの製造方法を提供することができる。
【0026】
前記X線を利用した流動情報測定用カプセルの製造方法で使用される各成分の種類、粒径、及び製造されたカプセルの形態などの特徴は前記X線を利用した流動情報測定用カプセルの説明の際、記載したものと同じである。
【0027】
前記X線を利用した流動情報測定用カプセルの製造方法をより具体的に説明すれば、下記の通りである。
【0028】
まず、有機溶媒内で脱イオン水、生体適合高分子及び有機造影剤を混合して、第1混合溶液を製造する段階(S11)において、前記脱イオン水、生体適合高分子及び有機造影剤が混合された混合溶液は有機溶媒100体積%に対して、10乃至30体積%を添加して、混合することができる。また、前記脱イオン水、生体適合高分子及び有機造影剤が混合された混合溶液はカプセル化の容易性及びX線の吸収程度を考慮して、1:10乃至1500:10乃至1500の重量比で混合した方が良い。
【0029】
一方、有機溶媒内で脱イオン水及び生体適合高分子を混合して、第1混合溶液を製造する段階(S21)において、前記脱イオン水、及び生体適合高分子が混合された混合溶液は有機溶媒100体積%に対して、10乃至30体積%を添加して混合することができる。
【0030】
また、脱イオン水、及び前記生体適合高分子が混合された混合溶液はカプセル化の容易性及びX線の吸収程度を考慮して、1:10乃至1500の重量比に混合した方が良い。
【0031】
前記有機溶媒としては当分野で一般に使用されるものであり、特に限定しないが、例えば、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ヘキサン、ブチルアルコール、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)、テトラブチルアセテート、n−ブチルアセテート、m−クレゾール、トルエン、エチレングリコール(EG)、γ−ブチロラクトン、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)等の有機溶媒を使用することができる。
【0032】
また、有機溶媒に架橋剤を添加して、第2混合溶液を製造する段階(S12、S22)において、前記架橋剤は有機溶媒100体積%に対して、1乃至10体積%を添加して、混合した方が良い。前記架橋剤の含有量が少なすぎるとカプセル形成が難しくなり、架橋剤の含有量が多すぎるとカプセルの壁が厚くなって造影剤を十分に含有できなくなったり、気孔とカプセルの壁の間の境界が曖昧になって、X線の吸収感度が低下するので、前記範囲の含有量で混合した方が良い。この時、架橋剤の添加時、混合溶液を攪拌(stirring)しながら添加すると有機溶媒に架橋剤を均等に混合することができるのでより望ましい。
【0033】
また、前記第1混合溶液に第2混合溶液を滴下して架橋させることによって、X線を利用した流動情報測定用カプセルを製造する段階(S13、S23)において、前記架橋は攪拌またはマイクロ流体(microfluidics)技術を利用して行うことができる。特に、前記攪拌条件は300乃至2000rpm、より望ましくは、400乃至800rpmの速度で行った方が良い。もし、攪拌速度が非常に遅い場合には粒子の大きさが大きすぎるという問題が発生することがあり、非常に速い場合には粒子の大きさが小さすぎるという問題が発生することがあるので、前記攪拌速度を維持することが望ましい。
【0034】
この時、前記攪拌は常温で行うことが望ましい。
【0035】
また、前記X線を利用した流動情報測定用カプセルの製造方法としてマイクロ流体技術を利用して製造することができる。
【0036】
前記マイクロ流体技術は薬品伝達システム(drug delivery system、DDS)において一般に利用されている技術であり、本発明のX線を利用した流動情報測定用カプセルの製造方法でも非常に有効に利用できる。例えば、図3に示すように、十字形態その他の多様な形態からなるいくつかのチャンネルから、矢印に沿って、一つのチャンネルに集合させられるマイクロチャンネルを有する。前記チャンネルで“水溶性溶液の流路”22はチャンネルの中央部左端から流入して右端に向かって流れ、“脂溶性溶液(例えば、脂溶性高分子または有機溶媒)の流路“21はチャンネルの左端側面部から流入し右端に向かって流れる。このような過程で脂溶性溶液の内部に水溶性溶液が入っている液滴(droplet)を形成できる例もある。この時、脂溶性溶液と水溶性溶液の注入流量を調節しながら液滴(droplet)の大きさを調節することができる。この後、生体適合高分子を架橋させ前記液滴をカプセル化することによって微細な“X線を利用した流動情報測定用カプセル”23を製作することができる。
【0037】
一方、前記チャンネルの中央流路22に流入する水溶性溶液と共に生体適合高分子を流入させて、直ちに“X線を利用した流動情報測定用カプセル”23を製造することもできる。例えば、カプセル形状を基礎データとして流体圧力、流速などを推測できる。
【0038】
本発明のまた他の一実施例によれば、前記“X線を利用した流動情報測定用カプセル”23を追跡粒子として使用する、X線を利用した流動情報測定方法を提供する。特に、前記X線を利用した流動情報測定方法は生体内流動情報を非常に有用に取得することができる。
【0039】
前記X線を利用した流動情報測定方法としては、当分野で一般に使用される方法であって特に限定しないが、より望ましくは、流動可視化方法、またはX線粒子映像速度法(Particle Image Velocimetry、PIV)を挙げられる。
【0040】
粒子映像速度法とは、流動流体の中の粒子群の変位情報を有している流動映像を画像処理して、定量的な速度場を求める測定方法を意味する。粒子映像速度法の基本原理は、図4に示すようである。デジタル画像処理を利用した粒子映像速度法の基本原理は一定の時間間隔(Δt)の間に取得した2枚の粒子映像から得られた粒子群の変位情報(Δx、Δy)を時間間隔Δtに分けて、瞬間速度場を求めることである。
【0041】
このような粒子映像速度法は定量的な瞬間流動情報を提供するだけでなく優れた空間分解能を有する定量的な流動情報まで抽出できる長所を有する。しかし可視光線を利用して、流動流体の中の粒子映像を入手しなければならないので、実験モデルと作動流体いずれも必ず透明にすべきであるという限界がある。
【0042】
粒子映像速度法が不透明な物体内部の流動や不透明な流体流動を測定するのが不可能であるという限界を克服した技術が、X線を利用したX線粒子映像速度法である。X線粒子映像速度法はX線の透過力を利用して、不透明な物体内部を可視化できるX線映像方法と粒子映像速度法とを結合したことであって、生体のような不透明な物体内部の流動と血液のような不透明な流体の流動いずれもを測定できる方法である。
【0043】
したがって、本発明の一実施例によるX線を利用した流動情報測定用カプセルは長い映像取得時間を有することができ、肉眼で見えない生体内部流動を数マイクロメーターの正確度で測定でき、血液流動の時間に応じた速度分布変化をリアルタイムで測定できる。これによって、循環器疾患の早期診断だけでなく医学分野における画期的な転換点をむかえるようになるという効果がある。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を以下の実施例によって、より詳しく説明する。本発明は下記の実施例によって限定されるのではない。
【0045】
[実施例1]
脱イオン水5mlにポリビニルアルコール0.5gを添加し、脱イオン水5mlにイオパミドルを0.5gを添加した。この後、n−ヘキサン100mlに前記製造された脱イオン水、ポリビニルアルコール、及びイオパミドルの混合溶液10mlを添加して、450rpmで30分間攪拌することによって第1混合溶液を製造した。
【0046】
一方、n−ヘキサン100mlにグルタールアルデヒド5mlを添加して、450rpmで30分間攪拌することによって第2混合溶液を製造した。
第1混合溶液に第2混合溶液を滴下して架橋することによって、約50μmの平均粒径を有するX線を利用した流動情報測定用カプセルを製造した。
前記製造されたX線を利用した流動情報測定用カプセルの走査電子顕微鏡(SEM)イメージを図5に示す。前記図5を参考にすれば、約50μmの平均粒径を有する球形のマイクロカプセルが形成されることがわかる。
【0047】
[実施例2]
脱イオン水5mlにポリビニルアルコール0.5gを添加した。この後、n−ヘキサン100mlに前記製造された脱イオン水、及びポリビニルアルコールの混合溶液10mlを添加して、450rpmで30分間攪拌することによって第1混合溶液を製造した。
一方、n−ヘキサン100mlにグルタールアルデヒド5mlを添加して、450rpmで30分間攪拌することによって第2混合溶液を製造した。
第1混合溶液に第2混合溶液を滴下して架橋することによって、約50μmの平均粒径を有するX線を利用した流動情報測定用カプセルを製造した。
【0048】
前記実施例1及び実施例2で製造されたX線を利用した流動情報測定用カプセルのEDS(energy dispersive spectroscopy)分析結果をそれぞれ図6及び図7に示す。前記図6及び図7を参考にすれば、イオパミドルを入れて製造したカプセルの図6ではヨード成分が検出されているが、イオパミドルを入れないで製造したカプセルの図7ではヨード成分が検出されていないので、これによってイオパミドルがカプセル化されたことを確認することができた。
【0049】
また、前記実施例1で製造された有機造影剤が含まれているカプセルのX線イメージ、及び実施例2で製造された有機造影剤が含まれていないカプセルのX線イメージをそれぞれ図8乃至図11に示す。前記図8乃至図11を参考にすれば、実施例1及び実施例2で製造されたX線を利用した流動情報測定用カプセルはX線によって優れたコントラストを現わすのを確認することができる。特に、有機造影剤が含まれている実施例1によるカプセルが有機造影剤が含まれていない造影剤に比べてX線をより多く吸収して、カプセル部分で光の強度が弱いのを確認することができる。これは明暗比がより優れて、生体内部の流動情報を正確に把握できることを意味する。
【0050】
発明の単純な変形または変更いずれもこの分野の通常の知識を有する者によって、容易に実施することができ、このような変形や変更いずれも本発明の領域に含まれるものであると見られる。
【符号の説明】
【0051】
1 X線を利用した流動情報測定用カプセル
2 マイクロ流体装置
11 外壁物質
12 内壁物質
21 脂溶性溶液の流路
22 水溶性溶液または水溶性溶液及び生体適合高分子混合物の流路
23 X線を利用した流動情報測定用カプセル群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体適合高分子;
有機造影剤;及び
架橋剤
を含んで構成されたX線を利用した流動情報測定用カプセル。
【請求項2】
前記X線を利用した流動情報測定用カプセルは、架橋剤によって架橋された生体適合高分子の内部が有機造影剤で満たされていることを特徴とする請求項1に記載のX線を利用した流動情報測定用カプセル。
【請求項3】
前記有機造影剤は、ヨード系有機造影剤、バリウム系有機造影剤及びこれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載のX線を利用した流動情報測定用カプセル。
【請求項4】
前記有機造影剤は、メトリザミド(Metrizamide)、ジアトリゾエート(Diatrizoate)、イオキサグレート(Ioxaglate)、イオペントル(Iopentol)、イオパミドル(Iopamidol)、イオメプロール(Iomeprol)、イオトロールラン(Iotrolan)、イオヘキソル(Iohexol)、イオベルソル(Ioversol)、イオキシラン(Ioxilan)、イオプロマイド(Iopromide)、イオデクサノール(Iodixanol)、イオビトリドール(Iobitridol)及びこれらの混合物からなる群より選択されるヨード系有機造影剤であることを特徴とする請求項1に記載のX線を利用した流動情報測定用カプセル。
【請求項5】
前記生体適合高分子は、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアルキレンビニルアルコール、ポリ乳酸、ポリラクチドグリコリド、ポリアルキレンオキサイド、セルロースアセテート、ポリ(メト)アクリレート、ポリアルキレン−ビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルキル(メト)アクリレート、コラーゲン、ゼラチン、ケラチン、アルギン酸塩、アルギン酸、キチン、キトサン及びこれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載のX線を利用した流動情報測定用カプセル。
【請求項6】
前記架橋剤は、グルタールアルデヒド(glutaraldehyde)であることを特徴とする請求項1に記載のX線を利用した流動情報測定用カプセル。
【請求項7】
前記X線を利用した流動情報測定用カプセルは、0.4乃至100μm範囲の粒径を有することを特徴とする請求項1に記載のX線を利用した流動情報測定用カプセル。
【請求項8】
生体適合高分子;
脱イオン水;及び
架橋剤
を含んで構成されたX線を利用した流動情報測定用カプセル。
【請求項9】
前記X線を利用した流動情報測定用カプセルは、架橋剤によって架橋された生体適合高分子の内部が空になっていることを特徴とする請求項8に記載のX線を利用した流動情報測定用カプセル。
【請求項10】
前記生体適合高分子は、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアルキレンビニルアルコール、ポリ乳酸、ポリラクチドグリコリド、ポリアルキレンオキサイド、セルロースアセテート、ポリ(メト)アクリレート、ポリアルキレン−ビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルキル(メト)アクリレート、コラーゲン、ゼラチン、ケラチン、アルギン酸塩、アルギン酸、キチン、キトサン及びこれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする請求項8に記載のX線を利用した流動情報測定用カプセル。
【請求項11】
前記架橋剤は、グルタールアルデヒド(glutaraldehyde)であることを特徴とする請求項8に記載のX線を利用した流動情報測定用カプセル。
【請求項12】
前記X線を利用した流動情報測定用カプセルは、0.4乃至100μm範囲の粒径を有することを特徴とする請求項8に記載のX線を利用した流動情報測定用カプセル。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12から選択されたいずれか一項のX線を利用した流動情報測定用カプセルを追跡粒子に用いることを特徴とするX線を利用した流動情報測定方法。
【請求項14】
前記X線を利用した流動情報測定方法は、流動可視化方法、またはX線粒子映像速度法(Particle Image Velocimetry、PIV)であることを特徴とする請求項13に記載のX線を利用した流動情報測定方法。
【請求項15】
前記X線を利用した流動情報測定方法は、生体内流動情報を取得することを特徴とする請求項13に記載のX線を利用した流動情報測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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