説明

X線撮像装置

【課題】 X線照射部に付設した超音波センサを利用して被検者の体表面とX線管との距離を自動的に測定した場合においても、誤動作を生ずることなく正確に距離の測定を実行することができるX線撮像装置を提供する。
【解決手段】 X線撮像装置は、X線検出器11を有する撮影台1と、X線管21と超音波センサ24とを有するX線照射部2から構成される。X線照射部2と撮影台1との距離Dは、ポテンショメータ27により測定される。また、被検者の体表面を検出する超音波センサ24はX線照射部2に付設される。そして、超音波センサ24の受信部による受信信号のうち、X線照射部2と撮影台1との距離と最も近い距離に相当する受信信号が被検者で反射した超音波の信号と認識される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、X線管を有するX線照射部と、X線検出器を有する撮影台とを備え、被検者を通過したX線を検出することによりX線撮像を行うX線撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなX線撮像装置においては、適切なX線の線量でX線撮像を実行するために、被検者の体厚に応じてX線管の管電圧や管電流時間積等の撮像条件を変更する必要がある。ここで、X線管を有するX線照射部とX線検出器を有する撮影台との距離は、一般的に、ポテンショメータ等により測定される。一方、被検者の体表面とX線管との距離は、従来、X線照射部に取り付けられたメジャーを利用して測定している。そして、それらの距離から、被検者の体厚を計算し、計算された体厚に応じてX線管の管電圧や管電流時間積等の撮像条件を変更していた。
【0003】
しかしながら、X線照射部に取り付けられたメジャーを利用して被検者の体表面とX線管との距離を測定する場合には、操作者がメジャーを持ってX線照射部から被検者の位置まで移動しなければならず、作業が面倒である。
【0004】
このため、特許文献1に記載されたように、X線照射部に超音波センサを付設し、この超音波センサによる測定値に基づいて、被検者の体厚を測定するX線撮像装置も提案されている。さらに、超音波センサによる距離の測定誤差を防止するため、特許文献2に記載されたように、超音波センサにおける発信部と受信部のいずれか一方をX線管側に配置し、他方を被検者の体表面に配置することにより、被検者の体表面とX線管との距離を測定するX線装置も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−149426号公報
【特許文献2】特開平5−253219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたように、X線照射部に超音波センサを付設し、この超音波センサによる測定値に基づいて被検者の体厚を測定する場合には、被検者の体表面とX線管との距離の測定を自動化することができる。しかしながら、例えば、X線照射装置の付近に装置を操作する操作者がいた場合には、超音波センサは被検者とともに操作者をも検出することから、X線照射装置と操作者との距離を、誤って、X線照射装置と被検者との距離であると認識する可能性がある。また、被検者の付近に設置されたその他の部材を被検者と誤認する可能性もある。このような場合には、適正な撮像条件でX線撮像を実行することができないこととなる。
【0007】
なお、特許文献2に記載されたように、超音波センサにおける発信部と受信部のいずれか一方をX線管側に配置し、他方を被検者の体表面に配置した場合には、このような誤動作が生ずることはないが、この場合には、メジャーを利用して被検者の体表面とX線管との距離を測定する場合と同様、操作者が発信部または受信部を持ってX線照射部から被検者の位置まで移動しなければならず、作業が面倒であることにかわりはない。
【0008】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、X線照射部に付設した超音波センサを利用して被検者の体表面とX線管との距離を自動的に測定した場合においても、誤動作を生ずることなく正確に距離の測定を実行することができるX線撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、X線管を有するX線照射部と、X線検出器を有する撮影台とを備え、被検者を通過したX線を検出することによりX線撮像を行うX線撮像装置であって、超音波を発信する発信部と、前記発信部から発信され前記被検者で反射した超音波を受信する受信部とから構成され、前記X線照射部に付設された超音波センサと、前記X線照射部と前記撮影台との距離と、前記超音波センサの受信部による受信信号とから、前記被検者と前記X線照射部との距離を認識する制御部とを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記X線照射部と前記撮影台との距離を測定する距離測定手段を備え、前記制御部は、前記距離測定手段による距離の測定値と、前記超音波センサの受信部による受信信号とから、前記被検者と前記X線照射部との距離を認識する。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記制御部は、前記超音波センサの受信部による受信信号のうち、前記X線照射部と前記撮影台との距離と最も近い距離に相当する受信信号を、前記被検者で反射した超音波の信号と認識する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、X線照射部と撮影台との距離と超音波センサの受信部による受信信号とを利用して被検者とX線照射部との距離を認識することから、X線照射部に付設した超音波センサを利用して被検者の体表面とX線管との距離を自動的に測定した場合においても、操作者を被検者等と認識する等の誤動作を生ずることなく、被検者とX線照射部との距離の測定を正確に実行することが可能となる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、X線照射部と撮影台との距離を測定する距離測定手段による距離の測定値と、超音波センサの受信部による受信信号とを利用して被検者とX線照射部との距離を認識することから、X線照射部と撮影台との距離が変更された場合にも、被検者とX線照射部との距離の測定を正確に実行することが可能となる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、超音波センサの受信部による受信信号のうち、X線照射部と撮影台との距離と最も近い距離に相当する受信信号を被検者で反射した超音波の信号と認識することから、撮影台の最も近くに配置される被検者の体表面の位置を正確に認識することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明に係るX線撮像装置の概要図である。
【図2】超音波センサ24の検出動作を示す模式図である。
【図3】X線撮像装置の主要な電気的構成を示すブロック図である。
【図4】X線撮像時の様子を示す平面概要図である。
【図5】超音波センサ24における受信部26の受信信号を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、この発明に係るX線撮像装置の概要図である。
【0017】
このX線撮像装置は、撮影台1とX線照射部2とから構成される。この撮影台1は、被検者が立った状態で撮像を行う立位撮影台であり、基台12に、昇降機構13を介してX線検出器11を支持した構成を有する。X線検出器11としては、例えば、フラットパネルディテクタ(FPD)やイメージインテンシファイア(I.I.)等を使用することができる。このX線検出器11は、昇降機構13の駆動により、被検者の身長等に応じて昇降する。
【0018】
また、X線照射部2は、X線を放射するX線管21を備える。このX線管21は、移動機構23を介して支持部22に支持されている。このX線管21は、移動機構23により、図1において矢印で示すように、撮影台1におけるX線検出器11との距離Dが変更可能となっている。この撮影台1におけるX線検出器11とX線照射部2におけるX線管21との距離Dは、ポテンショメータ27により測定されている。また、X線管21には、超音波センサ24が付設されている。
【0019】
図2は、この超音波センサ24の検出動作を示す模式図である。
【0020】
この超音波センサ24は、超音波を発信する発信部25と、この発信部25から発信され被検出物(図2においてはX線検出部11)で反射した超音波を受信する受信部26とを備える。この超音波センサ24においては、発信部25から発信された超音波は、図2に示すように、空気中を放射状に伝播し、被検出物等の物体の表面で反射して受信部26に戻ってくる。このときの発信から受信までの時間と、空気中の超音波の伝播速度とから、被検出物と超音波センサとの距離を測定することが可能となる。
【0021】
図3は、上述したX線撮像装置の主要な電気的構成を示すブロック図である。
【0022】
このX線撮像装置は、装置の制御に必要な動作プログラムが格納されたROM31と、制御時にデータ等が一時的にストアされるRAM32と、論理演算を実行するCPU33とから成る制御部30を備える。この制御部30は、インターフェース34を介して、X線検出器11と接続されている。また、この制御部30は、インターフェース34を介して、X線管21を制御するためのX線管制御部28と接続されている。さらに、この制御部30は、インターフェース34を介して、ポテンショメータ27および超音波センサ24と接続されている。
【0023】
このようなX線撮像装置において撮像を行うときには、撮像台1におけるX線検出器11の前面に被検者が起立する。このとき、撮影台1におけるX線検出器11とX線照射部2におけるX線管21との距離Dは、ポテンショメータ27により測定されており、制御部30のRAM32に記憶されている。また、被検者とX線照射部2におけるX線管21との距離は、超音波センサ24により測定される。そして、制御部30は、X線検出器11とX線管21との距離Dと、被検者とX線管21との距離とから、被検者の体厚を計算する。
【0024】
被検者の体厚と、そのときのX線管21の管電圧や管電流時間積等の撮像条件との関係は、例えば、ROM31に記憶されている。制御部30は、被検者の体厚に応じて撮像条件を読み出し、これを制御信号としてX線制御部28に発信する。X線管制御部28は、受信した制御信号に基づいて、X線管21に指令を送り、X線管21から被検者に向けてX線を照射させる。
【0025】
図4はX線撮像時の様子を示す平面概要図であり、図5はそのときの超音波センサ24における受信部26の受信信号を示す概要図である。なお、図5においては、縦軸は超音波の受信信号の強度を、また、横軸は時間を示している。
【0026】
上述したX線撮像装置においてX線撮像を行う場合には、図4に示すように、撮影台1におけるX線検出器11の前面に被検者4が起立する。このときには、X線撮像装置を操作してX線撮像をおこなう操作者5も、例えば、X線照射部2付近で撮影準備を行っている。このため、図5に示すように、超音波センサ24における受信部26の受信信号Rには、操作者5の体表面で反射した反射波であるピーク信号R5と、被検者4の体表面で反射した反射波であるピーク信号R4とが生ずることになる。このように、受信信号Rに複数のピーク信号が生じた場合には、被検者4の体表面を認識することができない。
【0027】
このため、この発明に係るX線撮像装置においては、制御部30が、予め制御部30のRAM32に記憶された撮影台1におけるX線検出器11とX線撮像部2におけるX線管21との距離Dと、受信部26の反射波であるピーク信号により計算された被検出物と超音波センサ24との距離とを比較する。より具体的には、図5に示すように、超音波センサ24において発信部25が超音波を発信してから、受信部26が被検出物において反射した反射波によるピーク信号を受信するまでの時間と、超音波が予め記憶したX線検出器11とX線管21との距離Dの2倍の距離を伝播するのに要する時間とを比較する。そして、超音波が距離Dの2倍の距離を伝播するのに要する時間と最も近くなるピーク信号R4を、被検者4の体表面で反射した反射波の信号であると認識する。
【0028】
このような構成を採用することにより、操作者5の体表面で反射した反射波を被検者4の体表面で反射した反射波と誤認することを防止することが可能となる。従って、X線照射部2に付設した超音波センサ24を利用して被検者4の体表面とX線管21との距離を自動的に測定した場合においても、操作者5を被検者4と認識する誤動作を生ずることはなく、被検者4とX線照射部2との距離の測定を正確に実行することが可能となる。
【0029】
なお、上述した実施形態においては、一般的に撮影台1と被検者4とは最も近くに存在すると考えられることから、超音波センサ24の受信部26で受信した反射信号を示すピーク信号うち、X線照射部2におけるX線管21と撮影台1におけるX線検出器11との距離Dと最も近い距離に相当するピーク信号R4を、被検者4で反射した反射波であるピーク信号と認識している。しかしながら、この発明はこのような形態に限定されるものではない。
【0030】
例えば、被検者4は、撮影台1におけるX線検出器11の前面に起立するとともに、一定の体厚を有することから、被検出物と超音波センサ24との距離がX線管21とX線検出器11との距離Dよりも大きくなる場合を排除するとともに、検出物と超音波センサ24との距離が、X線管21とX線検出器11との距離Dから予め想定した被検者4の体厚相当距離を減算した距離に最も近いピーク信号を被検者4で反射した反射波であるピーク信号と認識するようにしてもよい。
【0031】
また、上述した実施形態においては、撮影台1におけるX線検出器11とX線撮像部2におけるX線管21との距離Dや、被検出物と超音波センサ24との距離を利用して、被検者4の体表面で反射した超音波を認識している。しかしながら、撮影台1側の距離の基準はX線検出器11でなくてもよく、X線撮像部2側の距離の基準はX線管21や超音波センサ24でなくてもよい。撮影台1のいずれかの部位と、X線撮像部2のいずれかの部位と、それらの間の位置関係とから、最終的にX線検出器11とX線管21と被検者4と体表面との位置関係が認識されれば、どのような部分を基準としてもよい。
【0032】
また、上述した実施形態においては、撮影台1とX線撮像部2との距離を変更可能とし、これらの距離Dをポテンショメータ27で測定しているが、撮影台1とX線撮像部2とが固定されていてもよい。
【0033】
さらに、上述した実施形態においては、撮影台1として立位撮影台を採用した場合について説明したが、臥位撮影台を利用したX線撮像装置にこの発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 撮影台
2 X線照射部
11 X線検出器
12 基台
13 昇降機構
21 X線管
22 支持部
23 移動機構
24 超音波センサ
25 発信部
26 受信部
27 ポテンショメータ
28 X線管制御部
30 制御部
31 ROM
32 RAM
33 CPU


【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線管を有するX線照射部と、X線検出器を有する撮影台とを備え、被検者を通過したX線を検出することによりX線撮像を行うX線撮像装置であって、
超音波を発信する発信部と、前記発信部から発信され前記被検者で反射した超音波を受信する受信部とから構成され、前記X線照射部に付設された超音波センサと、
前記X線照射部と前記撮影台との距離と、前記超音波センサの受信部による受信信号とから、前記被検者と前記X線照射部との距離を認識する制御部と、
を備えたことを特徴とするX線撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線撮像装置において、
前記X線照射部と前記撮影台との距離を測定する距離測定手段を備え、
前記制御部は、前記距離測定手段による距離の測定値と、前記超音波センサの受信部による受信信号とから、前記被検者と前記X線照射部との距離を認識するX線撮像装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のX線撮像装置において、
前記制御部は、前記超音波センサの受信部による受信信号のうち、前記X線照射部と前記撮影台との距離と最も近い距離に相当する受信信号を、前記被検者で反射した超音波の信号と認識するX線照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−240286(P2010−240286A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−94725(P2009−94725)
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】