説明

hTERT発現調節遺伝子

【課題】哺乳類の細胞内でテロメレース逆転写酵素遺伝子の発現を調節する新規な物質を提供する。
【解決手段】特定の塩基配列からなるhTERT発現調節遺伝子。hTERT発現調節遺伝子発現ベクター。hTERT発現調節RNA。hTERT発現調節遺伝子の発現を抑制する二本鎖のRNA。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、hTERT発現調節遺伝子に関する。
【背景技術】
【0002】
発癌のメカニズムにおいて極めて重要な役割を果たすと考えられる酵素テロメレースに関しては、テロメレース逆転写酵素遺伝子(hTERT)とRNAテープ(hTR)が主要なテロメレース酵素発現の調節因子であることが知られており、多くの研究がなされている。しかし、テロメレース発現と発癌とを結びつける直接的メカニズムは依然として明確ではない。ゲノム内の多くの因子が関与していると予想されるが、テロメレース活性化のメカニズムも複雑であり、さらなる未知の因子が存在することが想定されている。
【0003】
また、2000年以降、マイクロRNA(miRNA)と呼ばれる小さなRNAの役割が注目され、この役割解明がこれまでに類をみないぐらい激しい国際競争となった。注目すべきことにmiRNAがヒト細胞の運命を決定する重要な役割を担っているにもかかわらず、発癌(特にテロメレース)に関与するRNA遺伝子およびそのmiRNAがヒト細胞はまだ知られていない。
【0004】
また、RNA干渉(RNAi)は、特定の遺伝子の発現をブロックする効率的なテクノロジーとして注目されている。RNAiテクノロジーを用いることにより、研究者は研究したい遺伝子の発現を抑制することができる。これにより、その遺伝子の発現しない状態での細胞表現型を調べ、遺伝子機能を解析することができる。
【0005】
当初、DrosophilaやC.Elegansのような無脊椎動物に長い2本鎖DNA(dsDNA)を導入することにより、RNAiは特定の遺伝子の発現を低下させる強力な方法であることが明らかになった。現在では、改良されたRNAiノックダウン法を利用して哺乳類動物細胞を含む真核細胞を分析できる。
【0006】
従来のRNAiテクノロジーとしては、例えば、特表2002−516062号公報に記載されたものがある。このRNAiテクノロジーでは、ターゲットとなる遺伝子と相同配列のRNAおよびその相補鎖からなる二本鎖RNAによるターゲット遺伝子の不活性化を行う。なお、この文献には、用いるRNA配列は最低50塩基必要である旨記載されている。また、この文献に記載されている実験例は、線虫を用いたものである。
【0007】
また、従来のRNAiテクノロジーとしては、例えば、特表2003−529374号公報に記載されたものがある。このRNAiテクノロジーは、RNAiを誘導するためにsiRNAを用いる。この文献には、(1)siRNAの構造上の特徴、(2)RNAi活性があるショウジョウバエ胚細胞の抽出液中で(その中のDicer活性を用いて)約21〜23塩基のsiRNAを生成させる方法、(3)siRNAを化学合成すること、(4)siRNAを細胞または生物個体に導入して保持すること、が記載されている。
【0008】
また、従来のRNAiテクノロジーとしては、例えば、SAYDA M. ELBASHIR, JENS HARBORTH, WINFRIED LENDECKEL, ABDULLAH YALCIN, KLAUS WEBER & THOMAS TUSCHL, “Duplexes of 21-nucleotide RNAs mediate RNA interference in cultured mammalian cells”, Nature, 24 May 2001, VOL. 411, Pages 494 - 498に記載されたものがある。この文献には、Dicerによって短く切断されたsiRNAを直接哺乳類細胞に導入すれば、インターフェロン経路の活性化なしにRNAi経路を働かせることができる旨記載されている。
【0009】
また、従来のRNAiテクノロジーとしては、例えば、Jurgen Soutschek, Akin Akinc, Birgit Bramlage, Klaus Charisse, Rainer Constien, Mary Donoghue, Sayda Elbashir, Anke Geick, Philipp Hadwiger, Jens Harborth, Matthias John, Venkitasamy Kesavan, Gary Lavine, Rajendra K. Pandey, Timothy Racie, Kallanthottathi G. Rajeev, Ingo Ro¨ hl, Ivanka Toudjarska, Gang Wang, Silvio Wuschko, David Bumcrot, Victor Koteliansky, Stefan Limmer, Muthiah Manoharan & Hans-Peter Vornlocher, “Therapeutic silencing of an endogenous gene by systemic administration of modified siRNAs”, NATURE, 11 NOVEMBER 2004, VOL. 432, Pages 173 - 178に記載されたものがある。この文献には、コレステロールと結合したsiRNAsが持続的にapoBをコードする遺伝子の発現を抑制した旨が記載されている。
【0010】
また、従来のテロメレース活性を抑制する技術としては、例えば、特開2002−104995号公報に記載されたものがある。この文献には、1,25−ジヒドロキシビタミンD3等のビタミンDレセプターのアゴニストと9−cisレチノイン酸等のレチノイドXレセプター(RXR)のリガンドとの組合せからなる医薬が記載されている。また、この文献によれば、この医薬は、ヒトテロメレース逆転写酵素(hTERT)のプロモーター領域に直接的または間接的に作用してその発現量を低下させることができる物質で、テロメレース活性抑制剤および抗癌剤等として有用な医薬である旨記載されている。
【0011】
また、従来のテロメレース活性を抑制する技術としては、例えば、特開2004−350607号公報に記載されたものがある。この文献には、ヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子に対してRNA干渉効果を示す二重鎖ポリヌクレオチドが記載されている。この文献には、この二重鎖ポリヌクレオチドは、ヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子の配列に基づいて設計されており、テロメレース逆転写酵素遺伝子の発現を阻害する旨記載されている。
【0012】
また、従来のテロメレース活性を抑制する技術としては、例えば、米国特許出願公開第2003/0099616号明細書に記載されたものがある。この文献には、テロメレース・プロモーターによる二面特異性のある腫瘍細胞死ベクターが記載されている。また、この文献には、このテロメレース・プロモーターによって働く発現ベクターは、癌細胞を標的にでき、RNAi用にも使える旨記載されている。
【0013】
しかしながら、上記文献記載の従来技術は、以下の点で改善の余地を有していた。
第一に、上記特許文献3および特許文献4記載の従来技術では、テロメレース活性の抑制の面でさらなる改善の余地がある。とりわけテロメレースが約4.0kbの大きな分子であるため人為的制御が困難であるため、テロメレース活性の抑制の効率および安定性の面でさらなる改善の余地がある。
【0014】
第二に、上記特許文献1、特許文献2、特許文献5、非特許文献1および非特許文献2記載の従来技術では、抗癌抑制に役立つ薬剤候補物質の設計方法および投与方法に関する分野の開発が進展している反面、その投与する薬剤候補物質の設計元となる原試料の発見が遅れている。すなわち、テロメレースの活性化(特にテロメレース逆転写酵素遺伝子の発現の活性化)に関する新規な因子およびメカニズムの報告が乏しいため、薬剤候補物質の設計元となる原試料が不足し、テロメレースの活性を抑制する薬剤候補物質の設計の自由度の面でさらなる改善の余地がある。
【発明の開示】
【0015】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、哺乳類の細胞内でテロメレース逆転写酵素遺伝子の発現を調節する新規な物質を提供することを目的とする。
【0016】
本発明によれば、配列番号1で表される塩基配列からなるhTERT発現調節遺伝子が提供される。
【0017】
この配列番号1で表される塩基配列からなる遺伝子の発現を阻害すると、テロメレース逆転写酵素遺伝子の発現が抑制される。また、この配列番号1で表される塩基配列からなる遺伝子を過剰発現させると、テロメレース逆転写酵素遺伝子の発現が抑制される。よって、この構成によれば、テロメレース逆転写酵素遺伝子の発現を調節することができる。
【0018】
また、本発明によれば、配列番号3で表される塩基配列からなるhTERT発現調節RNAなどの生成物が提供される。
【0019】
この配列番号3で表される塩基配列からなるhTERT発現調節RNAの発現を抑制すると、テロメレース逆転写酵素遺伝子の発現が抑制される。また、この配列番号3で表される塩基配列からなるhTERT発現調節RNAを過剰発現させると、テロメレース逆転写酵素遺伝子の発現が抑制される。よって、この構成によれば、テロメレース逆転写酵素遺伝子の発現を調節することができる。
【0020】
なお、上述の説明は一見すると矛盾しているようにも思えるため、誤解を避けるための説明を以下に記載する。図27は、RGM376遺伝子(配列番号1)、RGM249遺伝子(配列番号3)、hTERT遺伝子の予想される互いの制御関係をまとめた概念図である。なお、図27において、+は促進、−は抑制を意味する。すなわち、後述する実施例1および実施例2の実験データを見るとわかるように、RGM376遺伝子(配列番号1)は、通常の発現量ではhTERT遺伝子の発現を促進するが、過剰発現させるとhTERT遺伝子の発現を抑制する。そのため、RGM376遺伝子(配列番号1)の発現を阻害しても、過剰発現させても、hTERT遺伝子の発現を抑制することになる。
【0021】
また、後述する実施例1および実施例2の実験データを見るとわかるように、RGM249遺伝子(配列番号3)は、通常の発現量ではhTERT遺伝子の発現を促進する。一方で、RGM249遺伝子(配列番号3)は、過剰発現させるとRGM376遺伝子(配列番号1)の発現を促進してRGM376遺伝子(配列番号1)を過剰発現させることが示唆されている(データ示さず)。そのため、RGM249遺伝子(配列番号3)を過剰発現させると、結果としてhTERT遺伝子の発現を抑制すると想定される。そのため、RGM249遺伝子(配列番号3)の発現を阻害しても、過剰発現させても、hTERT遺伝子の発現を抑制することになると想定される。
【0022】
また、本発明によれば、上記のhTERT発現調節RNAの一部に相当する15塩基以上30塩基以下の長さの第一の塩基配列と、この第一の塩基配列と相補的な15塩基以上30塩基以下の長さの第二の塩基配列と、を含む二本鎖のRNAが提供される。
【0023】
この二本鎖のRNAは、上記のhTERT発現調節RNAの発現を抑制する。また、上記のhTERT発現調節RNAの発現を抑制すると、テロメレース逆転写酵素遺伝子の発現が抑制される。よって、この構成によれば、テロメレース逆転写酵素遺伝子の発現を調節することができる。
【0024】
なお、第一の塩基配列は、18塩基以上25塩基以下の長さであってもよい。また、第二の塩基配列も、18塩基以上25塩基以下の長さであってもよい。これらの範囲の長さの塩基配列を含む二本鎖のRNAであれば、siRNAまたはmiRNAとしての機能が向上するからである。
【0025】
また、本発明によれば、上記のhTERT発現調節RNAの一部に相当する15塩基以上30塩基以下の長さの第一の塩基配列と、この第一の塩基配列と逆方向に配置されている、この第一の塩基配列と相補的な15塩基以上30塩基以下の長さの第二の塩基配列と、を含む一本鎖のRNAが提供される。
【0026】
この一本鎖のRNAは、上記のhTERT発現調節RNAの発現を抑制する。また、上記のhTERT発現調節RNAの発現を抑制すると、テロメレース逆転写酵素遺伝子の発現が抑制される。よって、この構成によれば、テロメレース逆転写酵素遺伝子の発現を調節することができる。
【0027】
なお、第一の塩基配列は、18塩基以上25塩基以下の長さであってもよい。また、第二の塩基配列も、18塩基以上25塩基以下の長さであってもよい。これらの範囲の長さの塩基配列を含む一本鎖のRNAであれば、shRNAとしての機能が向上するからである。
【0028】
また、本発明によれば、上記のhTERT発現調節RNAと、このhTERT発現調節RNAと相補的な塩基配列を含むRNAと、を含む二本鎖のRNAをマイクロRNA成熟酵素により切断してなる複数の種類の二本鎖のRNAを含有するRNAが提供される。なお、マイクロRNA成熟酵素としては、DroshaやDicerなどのマイクロRNAの成熟に関わる酵素が挙げられる。
【0029】
この複数の種類の二本鎖のRNAを含有するRNAは、上記のhTERT発現調節RNAの発現を抑制する。また、上記のhTERT発現調節RNAの発現を抑制すると、テロメレース逆転写酵素遺伝子の発現が抑制される。よって、この構成によれば、テロメレース逆転写酵素遺伝子の発現を調節することができる。
【0030】
また、本発明によれば、配列番号2で表される塩基配列からなるhTERT発現調節遺伝子が提供される。
【0031】
この配列番号2で表される塩基配列からなる遺伝子の発現を阻害すると、テロメレース逆転写酵素遺伝子の発現が抑制される。よって、この構成によれば、テロメレース逆転写酵素遺伝子の発現を調節することができる。
【0032】
また、本発明によれば、配列番号4で表される塩基配列からなるhTERT発現調節RNAが提供される。
【0033】
この配列番号4で表される塩基配列からなるhTERT発現調節RNAの発現を抑制すると、テロメレース逆転写酵素遺伝子の発現が抑制される。よって、この構成によれば、テロメレース逆転写酵素遺伝子の発現を調節することができる。
【0034】
また、本発明によれば、上記のhTERT発現調節RNAの一部に相当する15塩基以上30塩基以下の長さの第一の塩基配列と、この第一の塩基配列と相補的な15塩基以上30塩基以下の長さの第二の塩基配列と、を含む二本鎖のRNAが提供される。
【0035】
この二本鎖のRNAは、上記のhTERT発現調節RNAの発現を抑制する。また、上記のhTERT発現調節RNAの発現を抑制すると、テロメレース逆転写酵素遺伝子の発現が抑制される。よって、この構成によれば、テロメレース逆転写酵素遺伝子の発現を調節することができる。
【0036】
なお、第一の塩基配列は、18塩基以上25塩基以下の長さであってもよい。また、第二の塩基配列も、18塩基以上25塩基以下の長さであってもよい。これらの範囲の長さの塩基配列を含む二本鎖のRNAであれば、siRNAまたはmiRNAとして好適に機能するからである。
【0037】
また、本発明によれば、上記のhTERT発現調節RNAの一部に相当する15塩基以上30塩基以下の長さの第一の塩基配列と、この第一の塩基配列と逆方向に配置されている、この第一の塩基配列と相補的な15塩基以上30塩基以下の長さの第二の塩基配列と、を含む一本鎖のRNAが提供される。
【0038】
この一本鎖のRNAは、上記のhTERT発現調節RNAの発現を抑制する。また、上記のhTERT発現調節RNAの発現を抑制すると、テロメレース逆転写酵素遺伝子の発現が抑制される。よって、この構成によれば、テロメレース逆転写酵素遺伝子の発現を調節することができる。
【0039】
なお、第一の塩基配列は、18塩基以上25塩基以下の長さであってもよい。また、第二の塩基配列も、18塩基以上25塩基以下の長さであってもよい。これらの範囲の長さの塩基配列を含む一本鎖のRNAであれば、shRNAとしての機能が向上するからである。
【0040】
また、本発明によれば、上記のhTERT発現調節RNAと、このhTERT発現調節RNAと相補的な塩基配列を含むRNAと、を含む二本鎖のRNAをマイクロRNA成熟酵素により切断してなる複数の種類の二本鎖のRNAを含有するRNAが提供される。なお、マイクロRNA成熟酵素としては、Drosha、Dicer、Ago2、TRBPなどのマイクロRNAの成熟に関わる酵素が挙げられる。
【0041】
この複数の種類の二本鎖のRNAを含有するRNAは、上記のhTERT発現調節RNAの発現を抑制する。また、上記のhTERT発現調節RNAの発現を抑制すると、テロメレース逆転写酵素遺伝子の発現が抑制される。よって、この構成によれば、テロメレース逆転写酵素遺伝子の発現を調節することができる。
【0042】
なお、上記の現象は、いずれも哺乳類の細胞内での現象である。
【0043】
また、上記の遺伝子およびRNAは、上記の塩基配列に限定されず、これらの塩基配列の1若しくは数個の塩基が欠失・置換若しくは付加された塩基配列からなる遺伝子およびRNAも同様の作用効果を奏する。
【0044】
また、上記の遺伝子およびRNAは、上記の塩基配列に限定されず、これらの塩基配列からなるポリヌクレオチド分子に対して相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド分子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする哺乳動物由来のポリヌクレオチド分子の塩基配列からなる遺伝子およびRNAも同様の作用効果を奏する。
【0045】
また、上記の遺伝子およびRNAは本発明の一態様であり、本発明の遺伝子およびRNAは、以上の構成要素の任意の組合せであってもよい。また、本発明のベクター、複合体なども、同様の構成を有し、同様の作用効果を奏する。
【0046】
すなわち、本発明によれば、テロメレース逆転写酵素遺伝子の発現を調節する新規な2種類の遺伝子のいずれかまたはこれらの遺伝子に基づいて得られる物質を用いるため、哺乳類の細胞内でテロメレース逆転写酵素遺伝子の発現を調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】遺伝子1および遺伝子2のヒト10番染色体上の短腕上の15.1区画近傍における配置を示した物理地図である。
【図2】遺伝子1のクローニングの順序を説明するための概念図である。
【図3】遺伝子2のヒト10番染色体上の局在部位と構造を説明するための概念図である。
【図4】遺伝子1および遺伝子2の転写産物であるRNAの構造および互いの位置関係を説明するための概念図である。
【図5】遺伝子1および遺伝子2の配列を説明するための図である。
【図6】遺伝子1の変異体の配列を説明するための図である。
【図7】遺伝子1を元に設計するsiRNAの配列を説明するための図である。
【図8】遺伝子2を元に設計するsiRNAの配列を説明するための図である。
【図9】RNAの細胞内への導入法を説明するための図である。
【図10】RNAiの作用を示す模式図である。
【図11】ダイサーによる2種類のmRNAの切断について説明するための電気泳動図である。
【図12】肝癌細胞におけるRGM376の分化特異的な発現を示す電気泳動図である。
【図13】RGM376過剰発現によるテロメレース活性の抑制について説明するためのグラフおよび電気泳動図である。
【図14】形質転換細胞におけるhTERTおよびRGM376の発現を示す電気泳動図である。
【図15】RGM376siRNA導入細胞での遺伝子の発現を示す電気泳動図である。
【図16】RGM376siRNAによるhTERT抑制結果をまとめたグラフおよび電気泳動図である。
【図17】肝癌細胞におけるRGM249の分化特異的な発現を示す電気泳動図である。
【図18】RGM249dsRNAのHMc−Li7への導入による遺伝子の発現を示す電気泳動図である。
【図19】RPL22dsRNAのHMへの導入による遺伝子の発現を示す電気泳動図である。
【図20】RGM249特異的siRNAのHLFへの導入による遺伝子の発現を示す電気泳動図である。
【図21】RGM249特異的siRNA導入後の各遺伝子mRNA発現抑制率をまとめたグラフである。
【図22】RGM249siRNAの導入によるRGM376の発現およびRGM376siRNAの導入によるRGM249の発現を示す電気泳動図である。
【図23】Micro RNAsによるtranslational silensingの想定メカニズムを説明するための概念図である。
【図24】shRNAを生成するためのプラスミドからshRNAが生成され、標的遺伝子の発現を阻害するメカニズムを説明するための概念図である。
【図25】RGM249shRNA導入後の各遺伝子mRNAの発現を示す電気泳動図である。
【図26】RGM249shRNA導入後の各遺伝子mRNA発現抑制率をまとめたグラフである。
【図27】RGM376遺伝子(配列番号1)、RGM249遺伝子(配列番号3)、hTERT遺伝子の予想される互いの制御関係をまとめた概念図である。
【図28】遺伝子2を元に設計するRGM249shRNAの配列を説明するための図である。
【図29】遺伝子2を元に設計するRGM249変異shRNAの配列を説明するための図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0049】
<テロメレースの説明>
本実施の形態は、発癌のメカニズムにおいて極めて重要な役割を果たすと考えられる酵素テロメレースに関する。本実施の形態では、発癌すなわち癌抗原の第一候補であるテロメレース逆転写酵素(hTERT)の発現に密接に関与しながら、それを制御する2つのRNA遺伝子の機能解析を遂行する。
【0050】
テロメレース(telomerase)とは、染色体末端のテロメア配列の伸長、染色体の安定に必要な酵素であり、細胞老化からの逸脱、癌化の誘導に深く関与している。より詳細には、テロメレース(telomerase)とは、染色体末端のテロメアを修復する酵素である。
【0051】
テロメレース形成に必要な分子としては、hTERT(human telomerase reverse transcriptase:テロメレース逆転写酵素)、hTR(human telomerase RNA tape:RNA component)、TEP1(telomerase−associated protein 1)、Dyskerin(DKC1)、RPL22、Nola3、La−antigen、Staufen、H/ACAなどが挙げられ、これらの分子によりテロメレース酵素の活性や生成が制御されている。
【0052】
<2つの遺伝子の染色体上の位置および発見の経緯>
図1は、遺伝子1および遺伝子2のヒト10番染色体上の短腕上の15.1区画近傍における配置を示した物理地図である。
【0053】
本発明者がテロメレース制御遺伝子として、ヒト10番染色体短腕よりクローニングした両遺伝子は、ゲノム上約1.5kbの隣接した位置にマップされる。なお、図中、左側に示す染色体上において、上側はテロメア方向であり、下側はセントロメア方向である。
【0054】
Gene1は、本発明者がRGM376と名付けた遺伝子1の存在箇所を示す。また、Gene2は、本発明者がRGM249と名付けた遺伝子2の存在箇所を示す。なお、Gene1およびGene2の間には、さらにD10S1728およびD10S1649と名付けられているDNAマーカーが存在する。
【0055】
Gene1、D10S1728、D10S1649、Gene2は、いずれもAL355591.3、AL138774.5、J21、H11、M6と名付けられているゲノムライブラリーの1.5kbの長さの共通領域に存在している。
【0056】
図2は、遺伝子1のクローニングの順序を説明するための概念図である。
本発明者は、RGM376遺伝子(遺伝子1)をクローニングするために、まず、微小核融合法およびBACスクリーニングの後、Exon trappingを施行した。次いで、Exon trappingにより絞り込んだ領域について、強制発現によりテロメレース活性、hTERT mRNAの発現を抑制するExonの同定を行った。
【0057】
そして、同定したRGM376遺伝子のExonの塩基配列の検討、ORF解析、in vitro translationの結果、RGM376遺伝子(遺伝子1)は、蛋白質を合成しない、ncRNAであることが強く示唆された。
【0058】
なお、RGM249遺伝子(遺伝子2)は、RGM376遺伝子(遺伝子1)のクローニングの際に得られた複数のクローンに共通する約1.5kbの長さの領域中のExonとして同定された遺伝子である。
【0059】
このRGM249遺伝子(遺伝子2)も、テロメレースおよび癌関連制御遺伝子の存在が示唆されてきたヒト10番染色体短腕10p14−15領域のBACライブラリーを用いてExon trapping法で得た44個のExonの中から、癌細胞株で発現を有する遺伝子として選別され、cDNAを取得された遺伝子である。
【0060】
同定したRGM249遺伝子のExonの塩基配列の解析、ORF解析、蛋白質発現ベクターを用いたin vitro transcription & translationの結果、RGM249遺伝子(遺伝子2)は、蛋白質をコードしない、ncRNAであることが強く示唆された。
【0061】
<2つの遺伝子の構造および機能の説明>
図3は、遺伝子2のヒト10番染色体上の局在部位と構造を説明するための概念図である。RGM249遺伝子(遺伝子2)は、図3のように、ヒト10番染色体の短腕の15.3の位置に存在している。また、RGM249遺伝子の長さは249bpである。さらに、RGM249遺伝子は、2つのエキソンから構成されている。一方のエキソンは、長さ190bpであり、他方のエキソンは、長さ59bpである。
【0062】
RGM376遺伝子(遺伝子1)も、同様にヒト10番染色体の短腕の15.3の位置に存在している。また、RGM376遺伝子の長さは376bpである。
【0063】
図4は、遺伝子1および遺伝子2の転写産物であるRNAの構造および互いの位置関係を説明するための概念図である。図4(a)は、RGM376遺伝子の転写産物であるRNAの想定される2次元構造を示す。また、図4(b)は、RGM249遺伝子の転写産物であるRNAの想定される2次元構造を示す。
【0064】
図4(c)は、ヒト10番染色体短腕上におけるRGM376遺伝子およびRGM249遺伝子の互いの位置関係を示す。このように、RGM249遺伝子は、RGM376遺伝子の上流に位置していることから、これらの遺伝子を統合制御するメカニズムも想定され、発癌メカニズムにおける両遺伝子の関与が示唆される。
【0065】
このうち一つのRNA遺伝子であるRGM376遺伝子(遺伝子1)は、過剰発現によりhTERTを抑制性に機能し、他方のRNA遺伝子であるRGM249遺伝子(遺伝子2)は、hTERT発現と同期的に機能している。
【0066】
より詳細には、これらのRNA遺伝子は、後述するように、肝癌で発現しhTERTの発現と挙動を共にするもの(遺伝子2)と、肝細胞で発現し、癌細胞に対し抑制性に機能するもの(遺伝子1)と2つあり、互いに相反する機能を有している。また、後述するように、前者(遺伝子2)はdsRNAによりテロメレース遺伝子を抑制した後、癌細胞に細胞死をもたらし、後者(遺伝子1)は強制発現により肝癌、肺癌、乳癌などに対し抑制性に作用する。
【0067】
また、図4(a)および図4(b)より、これらのRNAからは、DroshaやDicerなどの酵素による切断により、miRNAが生体内で生成されている可能性がある。実際、後述するように、テロメレース制御遺伝子として、ヒト10番染色体短腕よりクローニングしたmiRNAクラスター遺伝子(遺伝子1および遺伝子2)は、DroshaやDicerなどの酵素により20merと60〜70merのmiRNAを産生する。このように、マイクロRNA(miRNA)を産生して、制御に関与することが実験データからも強く示唆される。そして、これらのmiRNAのような小さな機能RNAを設計・構築することで、特異性の高い抗癌遺伝子医薬への応用が期待できる。
【0068】
図5は、遺伝子1および遺伝子2の配列を説明するための図である。図5(a)は、RGM376遺伝子(遺伝子1)の塩基配列を示す。RGM376遺伝子は、376塩基の長さである。また、図5(b)は、RGM249遺伝子(遺伝子2)の塩基配列を示す。RGM249遺伝子は、249塩基の長さである。
【0069】
図5(c)は、RGM376遺伝子(遺伝子1)の転写産物であるRNAの塩基配列を示す。RGM376遺伝子の転写産物であるRNAは、376塩基の長さである。また、図5(d)は、RGM249遺伝子(遺伝子2)の転写産物であるRNAの塩基配列を示す。RGM249遺伝子の転写産物であるRNAは、249塩基の長さである。
【0070】
図6は、遺伝子1の変異体の配列を説明するための図である。mutazymeで変異を誘導したRGM376の変異体による導入効果は、5’末端側から280番目の塩基に相当する1塩基(A)が変異を有するクローン(muta376−3−1−2)が弱い増殖抑制とテロメレース発現抑制(mRNA発現の抑制およびテロメレース活性の抑制)を呈する。
【0071】
すなわち、RGM376遺伝子(遺伝子1)の塩基配列の1若しくは数個の塩基が欠失・置換若しくは付加された塩基配列からなる遺伝子も、遺伝子1と同様にテロメレース発現抑制(mRNA発現の抑制およびテロメレース活性の抑制)を呈する。
【0072】
また、RGM376遺伝子(遺伝子1)に対して相補的な塩基配列からなるDNA分子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする哺乳動物由来のDNA分子の塩基配列からなる遺伝子も、遺伝子1と同様にテロメレース発現抑制(mRNA発現の抑制およびテロメレース活性の抑制)を呈すると想定される。
【0073】
また、RGM249遺伝子(遺伝子2)についても、遺伝子2の塩基配列のうち1若しくは数個の塩基が欠失・置換若しくは付加された塩基配列からなる遺伝子も、遺伝子2と同様にhTERTの発現と同期するhTERT発現調節遺伝子としての機能を有すると想定される。
【0074】
さらに、遺伝子2に対して相補的な塩基配列からなるDNA分子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする哺乳動物由来のDNA分子の塩基配列からなる遺伝子も、遺伝子2と同様にhTERTの発現と同期するhTERT発現調節遺伝子としての機能を有すると想定される。
【0075】
また、これらの遺伝子1および遺伝子2の転写産物であるRNAについても、もとのRNAに対して1若しくは数個の塩基が欠失・置換若しくは付加された配列からなるRNAは、もとのRNAと同様の機能を有すると想定される。
【0076】
さらに、これらの遺伝子1および遺伝子2の転写産物であるRNAについても、もとのRNA分子に対して相補的な塩基配列からなるRNA分子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする哺乳動物由来のRNAは、もとのRNAと同様の機能を有すると想定される。
【0077】
図7は、遺伝子1を元に設計するsiRNAの配列を説明するための図である。図7(a)のAおよびBは、RGM376遺伝子(遺伝子1)を元に設計するsiRNAの一例の2本鎖(センス鎖およびアンチセンス鎖)をともに示す図である。これらのAおよびBにより示される2本鎖のsiRNAは、後述するように、ともにRGM376遺伝子(遺伝子1)のRNAの発現を抑制する。
【0078】
図7(b)は、RGM376遺伝子(遺伝子1)を元に、インビトロジェン株式会社製、invitrogen(登録商標) BLOCK−iT RNAi Designerにより設計したsiRNAのうちセンス鎖の複数の例を示す図である。これらのsiRNAのうちセンス鎖のうち、配列番号6のセンス鎖は、図7(a)のAに対応する。
【0079】
より詳細には、Stealth(登録商標) RNAi Designerを用いて、化学修飾したsiRNAの設計を行っている。図7(b)には、Stealth RNAi Designerによる機能予測の結果、siRNAとしての機能の予測値が高いものを列挙している。なお、Stealth RNAiの化学修飾の詳細は、企業秘密として公開されていないが、インビトロジェン株式会社に発注することにより、入手可能である。
【0080】
図7(b)に列挙された配列をセンス鎖とする2重鎖のsiRNAは、いずれも図7(a)のAおよびBのsiRNAと同様に、RGM376遺伝子(遺伝子1)のRNAの発現を抑制すると想定される。
【0081】
なお、2重鎖のsiRNAは、Stealth RNAiであってもよいが、特に限定されず、センス鎖およびアンチセンス鎖の3’末端側にそれぞれ2塩基長の突端部(オーバーハング)を有していてもよい。また、これらのRNAは、2本鎖のsiRNAではなく、センス配列(センス鎖に相当)およびアンチセンス配列(アンチセンス鎖)の間に4塩基以上の長さのヘアピンループ配列を挟む1本鎖のshRNAであってもよい。なお、このヘアピンループ配列の長さの上限は、特に限定しないが、例えば8塩基であってもよい。いずれも、RGM376遺伝子(遺伝子1)のRNAの発現を抑制すると想定されるためである。
【0082】
図7(c)は、RGM376遺伝子(遺伝子1)の全長配列のうち図7(a)のAおよびBのセンス鎖の配列に相当する箇所を示す図である。AおよびBの符号の付された下線部がAおよびBのセンス鎖の配列に相当する。
【0083】
図8は、遺伝子2を元に設計するsiRNAの配列を説明するための図である。
図8(a)の(1)(図中では丸付き文字で示す)および(2)(図中では丸付き文字で示す)は、RGM249遺伝子(遺伝子2)を元に設計するsiRNAの一例の2本鎖(センス鎖およびアンチセンス鎖)をともに示す図である。これらの(1)および(2)により示される2本鎖のsiRNAは、後述するように、ともにRGM249遺伝子(遺伝子2)のRNAの発現を抑制する。
【0084】
図8(b)は、RGM249遺伝子(遺伝子2)を元に、インビトロジェン株式会社製、invitrogen(登録商標) BLOCK−iT RNAi Designerにより設計したsiRNAのうちセンス鎖の複数の例を示す図である。これらのsiRNAのうちセンス鎖のうち、配列番号20のセンス鎖は、図7(a)の(1)(図中では丸付き文字で示す)に対応する。また、配列番号32のセンス鎖は、図7(a)の(2)(図中では丸付き文字で示す)をRGM249遺伝子(遺伝子2)の全塩基配列中で1塩基分だけ5’側にシフトさせた配列(2)’(図中では丸付き文字で示す)に相当する。
【0085】
図7の場合と同様に、図8でも、Stealth RNAi Designerを用いて、化学修飾したsiRNAの設計を行っている。つまり、図8(b)には、Stealth RNAi Designerによる機能予測の結果、siRNAとしての機能の予測値が高いものを列挙している。なお、Stealth RNAiの化学修飾の詳細は、企業秘密として公開されていないが、インビトロジェン株式会社に発注することにより、入手可能である。
【0086】
図8(b)に列挙された配列をセンス鎖とする2重鎖のsiRNAは、いずれも図8(a)の(1)および(2)のsiRNAと同様に、RGM249遺伝子(遺伝子2)のRNAの発現を抑制すると想定される。
【0087】
なお、2重鎖のsiRNAは、Stealth RNAiであってもよいが、特に限定されず、センス鎖およびアンチセンス鎖の3’末端側にそれぞれ2塩基長の突端部(オーバーハング)を有していてもよい。また、これらのRNAは、2本鎖のsiRNAではなく、センス配列(センス鎖に相当)およびアンチセンス配列(アンチセンス鎖)の間に4塩基以上の長さのヘアピンループ配列を挟む1本鎖のshRNAであってもよい。なお、このヘアピンループ配列の長さの上限は、特に限定しないが、例えば8塩基であってもよい。いずれも、RGM249遺伝子(遺伝子2)のRNAの発現を抑制すると想定されるためである。
【0088】
図8(c)は、RGM249遺伝子(遺伝子2)の全長配列のうち図8(a)の(1)および(2)のセンス鎖の配列に相当する箇所を示す図である。(1)および(2)の符号の付された下線部が(1)および(2)のセンス鎖の配列に相当する。
【0089】
図9は、RNAの細胞内への導入法を説明するための図である。
例えば、(1)RGM249遺伝子(遺伝子2)の2本鎖RNAや、(2)RPL22遺伝子の2本鎖RNAや、(3)上述のRGM249遺伝子(遺伝子2)に基づいて設計される特異的な2本鎖RNAを含むsiRNAなどを用いて、後述の実施例に示す実験を行うには、まず、これらのRNAを哺乳類動物細胞へトランスフェクションさせる。この際、トランスフェクション試薬としては、例えばインビトロジェン株式会社製のlipofectamin(登録商標)2000を用いることができる。
【0090】
次に、これらのRNAをそれぞれトランスフェクションした哺乳類動物細胞を所定の条件で培養した後に、これらの哺乳類動物細胞からそれぞれのRNAを抽出する。その後、抽出されたRNAを用いて、それぞれRT−PCRを行うことにより、これらのRNAをトランスフェクションすることによる各種RNAの発現の変化を検出できる。
【0091】
図10は、RNAiの作用を示す模式図である。siRNAは、相補的細胞mRNAをターゲットとするRNA−ヌクレアーゼ複合体(RNA−induced silencing complex; RISC)の一部となる。この際、センス鎖はアンチセンス鎖から離れて分解される。
【0092】
そして、siRNAのアンチセンス鎖を含むRNA−ヌクレアーゼ複合体は、アンチセンス鎖と相補的な標的mRNAを認識して切断することにより、細胞内での標的mRNAの発現を抑制する。
【0093】
なお、RNAiに用いるRNAは、センス鎖およびアンチセンス鎖の3’末端側にそれぞれ2塩基長の突端部(オーバーハング)を有しているsiRNAに限定されず、センス配列(センス鎖に相当)およびアンチセンス配列(アンチセンス鎖)の間に4塩基以上の長さのヘアピンループ配列を挟む1本鎖のshRNAであってもよい。なお、このヘアピンループ配列の長さの上限は、特に限定しないが、例えば8塩基であってもよい。このようなshRNAは、細胞内でヘアピンループ配列が切断されて、siRNAに変化するためである。
【0094】
以下、本実施の形態の2つのRNA遺伝子の用途について説明する。
本実施の形態の2つのRNA遺伝子は、ともにテロメレース逆転写酵素(hTERT)遺伝子の発現を調節する機能を有するため、哺乳類の細胞内でテロメレース逆転写酵素(hTERT)遺伝子の発現を調節することができる。
【0095】
より詳細には、本実施の形態の2つのRNA遺伝子は、発癌の分子的メカニズムを解明する鍵となり、テロメレース抑制による抗癌治療(分子標的治療)への展開に有用である。とりわけテロメレースが4.0kbの大きな分子であるため人為的制御が困難であるのに対し、当該遺伝子は400bp以下の分子であり、遺伝子発現の調節がより容易であると考えられる。近年多くの抗癌研究が試行されているが、その投与方法に関する分野の開発が進展している反面、その投与する原試料の発見が遅れている。癌に極めて直接的に関わる因子の報告が乏しい中で、この領域の解明とこの分子が癌撲滅というテーマに関われるということは画期的かつ刷新的と考えられる。
【0096】
特に、RGM376遺伝子(遺伝子1)については、転写産物であるRNAを過剰に発現させると、テロメレース逆転写酵素(hTERT)遺伝子の発現を抑制する。そのため、RGM376遺伝子(遺伝子1)の転写産物であるRNAを過剰発現させることにより、テロメレース活性を抑制し、その結果、発癌を抑制することができる。また、RGM376遺伝子(遺伝子1)については、発癌の分子的メカニズムを解明するためのリサーチツールとしても活用できる。
【0097】
また、RGM376遺伝子(遺伝子1)をベクターに連結して発現可能に構成されている発現ベクターは、細胞内に導入されると、テロメレース逆転写酵素(hTERT)遺伝子の発現を抑制する。よって、この発現ベクターは、テロメレース活性を抑制し、その結果、発癌を抑制することができる。
【0098】
このため、RGM376遺伝子(遺伝子1)の転写産物であるRNAまたは上記発現ベクターを含む医薬は、人体に投与されると、テロメレース逆転写酵素(hTERT)遺伝子の発現を抑制する。よって、この医薬は、テロメレース活性を抑制し、その結果、発癌を抑制することができる癌治療剤として好適に用いることができる。
【0099】
また、RGM376遺伝子(遺伝子1)に基づいて設計される、siRNAやshRNAなどの各種RNAは、RGM376遺伝子(遺伝子1)の発現を抑制することにより、テロメレース逆転写酵素(hTERT)遺伝子の発現を抑制する。また、RGM376(遺伝子1)の転写産物であるRNAと、このRNAと相補的な塩基配列を含むRNAと、を含む二本鎖のRNAをダイサーなどにより切断してなる複数の種類の二本鎖のRNAを含有するRNA(RNAカクテルまたはRNAプール)も、同様にRGM376遺伝子(遺伝子1)の発現を抑制することにより、テロメレース逆転写酵素(hTERT)遺伝子の発現を抑制する。よって、これらの各種RNAは、テロメレース活性を抑制し、その結果、発癌を抑制することができる。
【0100】
また、これらのsiRNAやshRNAなどの各種RNAと、コレステロールなどの脂質や細胞内への取り込み促進(誘導)物質と、を結合してなる複合体は、非特許文献2に示すように、人体をはじめとする哺乳類動物細胞内で長時間持続的に標的mRNA(RGM376遺伝子(遺伝子1))の発現を抑制する。このため、このRNA−コレステロール複合体などの各種複合体は、RGM376遺伝子(遺伝子1)の発現を長時間にわたり抑制することにより、テロメレース逆転写酵素(hTERT)遺伝子の発現を長時間にわたり抑制する。また、各種RNAに取り込み促進(誘導)物質を結合して得られる複合体であれば、細胞内への取り込み効率も向上する。よって、これらの各種RNAは、テロメレース活性を長時間にわたり抑制し、その結果、発癌を長期にわたり抑制することができる。
【0101】
このため、上記のsiRNAやshRNAなどの各種RNAまたは上記のRNA−コレステロール複合体を含む医薬は、人体に投与されると、テロメレース逆転写酵素(hTERT)遺伝子の発現を抑制する。よって、この医薬は、テロメレース活性を抑制し、その結果、発癌を抑制することができる癌治療剤として好適に用いることができる。特に、上記のRNA−コレステロール複合体を含む医薬は、上記の作用機序により、発癌を長期にわたり抑制するため、人体への投与間隔を長くできるという利点もある。
【0102】
一方、また、RGM249遺伝子(遺伝子2)については、転写産物であるRNAの発現およびhTERTの発現(細胞の癌化)が同期するため、発癌の分子的メカニズムを解明するためのリサーチツールとして活用できる。また、RGM249遺伝子(遺伝子2)をベクターに連結して発現可能に構成されている発現ベクターは、細胞内に導入されると、テロメレース逆転写酵素(hTERT)遺伝子の発現を促進し、テロメレース活性を促進して癌化を引き起こす。このため、この発現ベクターもリサーチツールとして活用できる。
【0103】
また、RGM249遺伝子(遺伝子2)に基づいて設計される、siRNAやshRNAなどの各種RNAは、RGM249遺伝子(遺伝子2)の発現を抑制することにより、テロメレース逆転写酵素(hTERT)遺伝子の発現を抑制する。また、RGM249遺伝子(遺伝子2)の転写産物であるRNAと、このRNAと相補的な塩基配列を含むRNAと、を含む二本鎖のRNAをダイサーにより切断してなる複数の種類の二本鎖のRNAを含有するRNA(RNAカクテルまたはRNAプール)も、同様にRGM249遺伝子(遺伝子2)の発現を抑制することにより、テロメレース逆転写酵素(hTERT)遺伝子の発現を抑制する。よって、これらの各種RNAは、テロメレース活性を抑制し、その結果、発癌を抑制することができる。
【0104】
また、これらのsiRNAやshRNAなどの各種RNAと、コレステロールなどの脂質や細胞内への取り込み促進(誘導)物質と、を結合してなる複合体は、非特許文献2に示すように、人体をはじめとする哺乳類動物細胞内で長時間持続的に標的mRNA(RGM249遺伝子(遺伝子2))の発現を抑制する。このため、このRNA−コレステロール複合体などの各種複合体は、RGM249遺伝子(遺伝子2)の発現を長時間にわたり抑制することにより、テロメレース逆転写酵素(hTERT)遺伝子の発現を長時間にわたり抑制する。また、各種RNAに取り込み促進(誘導)物質を結合して得られる複合体であれば、細胞内への取り込み効率も向上する。よって、これらの各種RNAは、テロメレース活性を長時間にわたり抑制し、その結果、発癌を長期にわたり抑制することができる。
【0105】
このため、上記のsiRNAやshRNAなどの各種RNAまたは上記のRNA−コレステロール複合体を含む医薬は、人体に投与されると、テロメレース逆転写酵素(hTERT)遺伝子の発現を抑制する。よって、この医薬は、テロメレース活性を抑制し、その結果、発癌を抑制することができる癌治療剤として好適に用いることができる。特に、上記のRNA−コレステロール複合体を含む医薬は、上記の作用機序により、発癌を長期にわたり抑制するため、人体への投与間隔を長くできるという利点もある。
【0106】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0107】
例えば、上記実施の形態ではRGM376遺伝子(遺伝子1)またはRGM249遺伝子(遺伝子2)の塩基配列の一部であって、BLOCK−iT RNAi Designerにより予想される配列をセンス鎖とするsiRNAを用いたが、他のRNAi設計ソフトウェアを用いてもよく、あるいはランダムにRNAを作成して実験によりRNAi作用を引き起こすsiRNAを選択してもよい。このようにしても、RGM376遺伝子(遺伝子1)またはRGM249遺伝子(遺伝子2)の発現を抑制するsiRNAが得られる。
【0108】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0109】
<miRNA生成についての検討>
図11は、ダイサーによる2種類のmRNAの切断について説明するための電気泳動図である。下記の実施例を行うに先立ち、RGM376遺伝子(遺伝子1)およびRGM249遺伝子(遺伝子2)からのmiRNAの生成についての検討を行った。
【0110】
このとき、実験方法は、以下のようにして行った。すなわち、遺伝子RGM249,376を、T7プロモーターを中に有する発現ベクターに組み込み、T7RNAポリメラーゼを用いたRNA大量調整法(T7 RiboMAX(登録商標) Express Large Scale RNA Production System:Promega)を用いて、RGM249(遺伝子1 mRNA)、RGM376(遺伝子2 mRNA)の各RNAを生成させ、RNase III群のDicer(Turbo Dicer:Genlantis)で、それぞれ切断した。その結果、Diced gene 1, Diced gene 2に相当するRNAが得られた。その後、反応生成物を30%アクリルアミドゲル内で泳動し可視化した。
【0111】
RGM376遺伝子(遺伝子1)およびRGM249遺伝子(遺伝子2)のmRNAをダイサーで切断したところ、いずれも25bp程度の大きさのバンドが生成された。これらの25bp程度の大きさのバンドの存在は、RGM376遺伝子(遺伝子1)およびRGM249遺伝子(遺伝子2)が細胞内でダイサーにより切断されることにより、miRNAが生成していることを示唆している。
【0112】
<実施例1>
本実施例では、テロメレース逆転写酵素遺伝子hTERT mRNAの発現を抑制する遺伝子(RGM376遺伝子(遺伝子1))の機能解析を行った。
【0113】
より詳細には、本実施例では、(1)遺伝子発現の検討として、肝癌細胞株および初代培養肝細胞株の比較、肝癌部および非癌部の組織の比較を行い、(2)強制発現ベクターによる遺伝子導入として、増殖曲線およびテロメレース活性の解析を行った。
【0114】
なお、上記の実験を行うにあたっては、PCRの過程で変異が発生していないことを保証するために、PCR産物はシークエンスの確認を行った。
【0115】
図12は、肝癌細胞におけるRGM376の分化特異的な発現を示す電気泳動図である。Alexander cells(未分化)、HepG2(高分化)、HLF(未分化)、HuH7(高分化)、HMc−Li7(高〜中分化)、初代培養肝細胞をサンプルとして、RT−PCRおよび電気泳動により、RGM376遺伝子、hTERT遺伝子、β−actin遺伝子のmRNAの細胞内での発現量を調べた。
【0116】
このとき、実験方法は、以下のようにして行った。すなわち、5種の肝がん細胞株におけるRGM249,hTERT,β−actinの遺伝子発現をRT−PCR法を用いて、30〜35サイクルで反応させて、電気泳動法で検出した。初代培養肝細胞(KIA)は、肝がん細胞株と同条件で反応させ、各遺伝子の発現を検出した。なお、検出法としては、1%アガロースゲル内で電気泳動した。
【0117】
電気泳動の結果、癌細胞では、hTERT遺伝子の発現が増加し、RGM376遺伝子の発現が減少していた。一方、正常細胞では、hTERT遺伝子の発現が減少し、RGM376遺伝子の発現が増加していた。すなわち、肝癌細胞株では、分化特異的な発現が認められた。図12で得られた肝癌部および非癌部の組織における分化特異的な発現結果および不図示の臨床結果をまとめると、以下のようになる。
【0118】
(1)非癌部の組織のうち84.4%(45サンプルのうち38サンプル、一部不図示)で、RGM376遺伝子の発現が認められた。
【0119】
(2)臨床パラメータとの比較(不図示)では、癌部でのRGM376遺伝子の発現の有無は、T検定により、腫瘍径(P=0.003)、腫瘍数(P=0.047)、分化度(P=0.021)、血管浸潤の有無(P<0.001)などで有意差が認められた。
【0120】
(3)再発予知因子での比較(不図示)では、被膜浸潤(P=0.001)との強い相関が認められた。
【0121】
これらの結果を総合して考えると、RGM376遺伝子の発現強度が低いと、癌細胞の分化度が高くなり、被膜浸潤が低くなるものと想定される。一方、RGM376遺伝子の発現強度が高いと、癌細胞の分化度は中程度となり、被膜浸潤が高くなるものと想定される。
【0122】
図13は、RGM376過剰発現によるテロメレース活性の抑制について説明するためのグラフおよび電気泳動図である。図13(a)は、横軸がセレクション後の培養日数を示し、縦軸が細胞数を示す。なお、HMは、HMc−Li7株(クロンテック社より購入)を示し、THMは、pLXIN−hTERTでテロメライズされたHMを示し、VHMは、pLXIN(広島大学医学部 田原先生のご厚意により入手)のみ導入されたHMを示す。HM+RGM376はHMc−Li7株にRGM376が導入された遺伝子導入株を示す。
【0123】
このとき、実験方法は、以下のようにして行った。すなわち、肝がん細胞株HMについては、HM株に加えて、HM株でhTERTが強制発現しているTHM株(広島大学田原久俊氏より供与)、ベクターのみが導入されているVHM株に対して、それぞれRGM376を導入したものを用いた。なお、RGM376は、発現ベクターpEGFP−C1(当時クロンテック社)に組み込まれて、導入された。また、こうしてRGM376等が導入された細胞におけるテロメレース活性を、それぞれTRAPeze detection kit:Oncor Inc.)を用いて検出した。なお、この検出の際には、Oncor社から供される試薬を用いて指定されたプロトコールに従って検出した。
【0124】
図13(a)のグラフに示すように、HMc−Li7株において、RGM376遺伝子を過剰に発現させると、当初は増殖期にあった細胞は、約25日後には増殖抑制期に入り、約50日後からは細胞数が減少し始める。一方、HMc−Li7株において、RGM376遺伝子を過剰に発現させない場合には、増殖期がそのまま続く。また、HMc−Li7株において、RGM376遺伝子およびhTERT遺伝子をともに過剰に発現させると、増殖期がそのまま続く。一方、復帰変異株(revertant)では、約25日後には増殖抑制期に入り、約50日後からは再び細胞数が増加し始める。
【0125】
図13(b)は、THM、THM+RGM376、HM、HM+RGM376、VHM、Revertantのそれぞれの細胞株について、RNase処理の有無の両方の場合に、RT−PCRおよび電気泳動をした結果を示す。なお、HM+RGM376およびRevertantの株については、図13(a)の黒丸の印の日にサンプルを採取した。
【0126】
図14は、形質転換細胞におけるhTERTおよびRGM376の発現を示す電気泳動図である。増殖期(in growth)、増殖抑制期(in suppression)、復帰変異株(in revertant)の細胞のそれぞれについて、RT−PCRおよび電気泳動により、hTERT遺伝子、RGM376遺伝子、β−actin遺伝子のmRNAの発現量を調べた。
【0127】
このとき、実験方法は、以下のようにして行った。すなわち、図13においてRGM376が遺伝子導入された細胞において、増殖期、増殖抑制期、導入遺伝子脱落開始による再増殖期で、DNaseにより処理されたRNAを用いて、RT−PCR法で各遺伝子発現を検討した。RNA精製は、プロメガ社のSV total RNA isolation systemを用いた。
【0128】
その結果、増殖期では、hTERT遺伝子の発現量が低く、RGM376遺伝子の発現量は高かった。また、増殖抑制期でも、hTERT遺伝子の発現量が低く、RGM376遺伝子の発現量は高かった。しかし、増殖抑制期では、増殖期に比べると、hTERT遺伝子の発現量が高く、RGM376遺伝子の発現量は低くなっていた。一方、復帰変異株では、hTERT遺伝子の発現量が高く、RGM376遺伝子の発現量は低かった。
【0129】
これらの結果から、遺伝子発現については、高分化型癌に比べて未分化型癌でRGM376遺伝子は高発現していることがわかる。また、RGM376遺伝子の発現量は、癌の悪性度に関する臨床パラメータ(腫瘍径、腫瘍数、分化度、血管浸潤)と強い相関があることがわかる。よって、RGM376遺伝子の発現は、腫瘍の分化度と関与している可能性が示唆される。すなわち、RGM376遺伝子には、細胞内のテロメレース活性を抑制し、細胞の癌化を抑制する機能があることが示唆される。
【0130】
また、RGM376遺伝子の過剰発現には、静止期を経た細胞の増殖を抑制し、細胞を老化させ、細胞死を促進する機能があることが示唆される。また、RGM376遺伝子の過剰発現には、テロメレース活性を低下させる機能があることが示唆される。さらに、RGM376遺伝子の過剰発現には、hTERT遺伝子のmRNA発現量を低下させる機能があることが示唆される。すなわち、RGM376遺伝子は、テロメレース(hTERT)を介した癌抑制作用を有する遺伝子であると想定される。
【0131】
図15は、RGM376siRNA導入細胞での遺伝子の発現を示す電気泳動図である。siRNAを導入しない細胞をコントロールとし、RGM376遺伝子に対するsiRNAとして、上記のAおよびBの配列からなるsiRNAを用いた。そして、それぞれのsiRNAが導入された細胞について、RGM376遺伝子、hTERT遺伝子、β−actin遺伝子について、RT−PCRおよび電気泳動を行った。また、AおよびBを混合して導入した場合についても調べた。
【0132】
このとき、実験方法は、以下のようにして行った。すなわち、RGM376siRNAは、Invitrogen社のBlock−it RNAi designer(homepage)を用いてデザインされ、同社で合成された2種類のsiRNAをAおよびBとし、lipofectamine 2000を用いて、肝がん細胞株HLFに導入濃度25nMで遺伝子導入した。なお、AおよびBは、各25nMを混合して導入した。さらに、各遺伝子発現については、図14と同じ方法で導入細胞からRNAを精製した後、RT−PCR法で検出した。
【0133】
図16は、RGM376siRNAによるhTERT抑制結果をまとめたグラフおよび電気泳動図である。また、図16では、この実験に用いたsiRNA(AおよびB)のセンス鎖の配列についても示している。
【0134】
このとき、実験方法は、以下のようにして行った。すなわち、図15で示されるsiRNAの導入を3回試み、RT−PCR法でRGM376の発現抑制度を検討し、それと同時に、電気泳動像をdensitometerでその発現強度を測定し、その測定値をno siRNAの測定値で標準化して棒グラフで示した。
【0135】
図16に示すように、RGM376siRNAにより、RGM376遺伝子の発現を抑制すると、hTERT遺伝子の発現も同様に抑制される。なお、RGM376siRNAのうち、Aを単独で用いた場合に最も抑制効果が優れている。また、RGM376siRNAのうち、Bを単独で用いた場合にも、優れた抑制効果が得られたが、Aよりは抑制効果が低かった。さらに、RGM376siRNAのうち、AおよびBをともに導入した場合にも、優れた抑制効果が得られたが、Aよりは抑制効果が低かった。
【0136】
よって、RGM376siRNAにより、RGM376遺伝子の発現を抑制すると、hTERT遺伝子の発現も同様に抑制される。このため、RGM376siRNAにより、テロメレース活性を抑制でき、その結果、細胞の癌化を抑制することができる。
【0137】
<実施例2>
本実施例では、テロメレース逆転写酵素遺伝子hTERT mRNAと同期的に発現する遺伝子(RGM249遺伝子(遺伝子2))の機能解析を行った。
【0138】
より詳細には、(1)肝癌細胞株での発現をRT−PCRで調べ、(2)肝組織での発現をRT−PCRで調べ、(3)テロメレース形成に関連する遺伝子との関連性について調べ、(4)関与が示唆された遺伝子由来のdsRNAの発現およびsiRNAによる遺伝子導入をして、RT−PCR、Cell proliferation assay、MTTアッセイ、形態変化の観察を行った。
【0139】
なお、上記の実験を行うにあたっては、PCRの過程で変異が発生していないことを保証するために、PCR産物はシークエンスの確認を行った。
【0140】
図17は、肝癌細胞におけるRGM249の分化特異的な発現を示す電気泳動図である。Alexander cells(未分化)、HepG2(高分化)、HLF(未分化)、HuH7(高分化)、HMc−Li7(T、N、C)、初代培養肝細胞をサンプルとして、RT−PCRおよび電気泳動により、RGM249遺伝子、hTERT遺伝子、RPL22遺伝子、β−actin遺伝子のmRNAの細胞内での発現量を調べた。
【0141】
このとき、実験方法は、以下のようにして行った。すなわち、図12と同様の方法により、RGM249,hTERT,RPL22,β−actinの発現を、RT−PCR法により検討した。なお、図17で、HMc‐Li7では、T:総RNA,N:核内より抽出したRNA、C:細胞質内のRNAを示す。
【0142】
電気泳動の結果、RGM249遺伝子は、hTERT遺伝子が発現している肝癌細胞株、初代培養肝細胞株での発現が認められた。また、癌細胞では、hTERT遺伝子の発現が増加し、RGM249遺伝子の発現が同期して増加していた。一方、正常細胞では、hTERT遺伝子の発現が減少していた。すなわち、肝癌細胞株では、分化特異的な発現が認められた。
【0143】
図18は、RGM249dsRNAのHMc−Li7への導入による遺伝子の発現を示す電気泳動図である。HMc−Li7細胞に、RGM249の発現を抑制するように設計したdsRNAを導入し、hTERT、hTR、TEP1、dyskerin、RPL22、Nola3、RGM249の各遺伝子について、RT−PCRおよび電気泳動を行った。
【0144】
このとき、実験方法は、以下のようにして行った。すなわち、RGM249dsRNAを、T7 promoterをdual directionに有するベクターLitmas28i(New England BioLab)の制限酵素部位に組み込み、T7RNAポリメレースで2本鎖RNAを生成させた。この2本鎖RNAを精製後、HMにLipofectamine Plusにより導入した形質転換細胞を用いて、テロメレース関連遺伝子(hTERT,hTR,TEP1,Dyskerin,RPL22,Nola3,RGM249)の発現強度をdensitometerで測定して、図18に示した結果を得た。
【0145】
その結果、RGM249遺伝子の発現が抑制されたHMc−Li7細胞では、hTERT遺伝子およびRPL22遺伝子の発現も同期して抑制された。よって、RGM249遺伝子は、hTERT遺伝子およびRPL22遺伝子の発現を促進する機能を有していることが示唆される。
【0146】
図19は、RPL22dsRNAのHMへの導入による遺伝子の発現を示す電気泳動図である。HMc−Li7細胞に、RPL22の発現を抑制するように設計したdsRNAを導入し、hTERT、TEP1、hTR、RGM249、dyskerin、Nola3、RPL22、GAPDHの各遺伝子について、RT−PCRおよび電気泳動を行った。
【0147】
このとき、実験方法は、以下のようにして行った。すなわち、RPL22cDNA(TOYOBO)を購入し、大腸菌株で培養後、plasmid DNAを精製し、RPL22 cDNAをLitamas 28iの制限酵素部位に組み込み、図18と同様にRPL22のdsRNAを得て、Lipofectamine Plus(Invitrogen)を用いてHMへ導入した。こうして得られた形質転換細胞において、上述のdsRNAは、導入濃度40、20、10、0μg/mlで導入された。その後、各遺伝子について、RT−PCRで発現を検討し、電気泳動した。
【0148】
その結果、RPL22遺伝子の発現が抑制されたHMc−Li7細胞では、(1)RGM249遺伝子、(2)hTERT遺伝子、(3)dyskerinの発現も同期して抑制された。よって、RPL22遺伝子は、RGM249遺伝子、hTERT遺伝子、dyskerin遺伝子の発現を促進する機能を有していることが示唆される。
【0149】
図20は、RGM249特異的siRNAのHLFへの導入による遺伝子の発現を示す電気泳動図である。HLF細胞に、RGM249の発現を抑制するように設計した特異的なsiRNA(上記の(1)(図中では丸付き文字で示す)および(2)(図中では丸付き文字で示す)のsiRNA)を導入し、RGM249、hTERT、RPL22、β−actinの各遺伝子について、RT−PCRおよび電気泳動を行った。その結果、RGM249遺伝子の発現がsiRNA(1)により抑制されたHLF細胞では、hTERT遺伝子、RPL22遺伝子の発現も同期して抑制された。
【0150】
このとき、実験方法は、以下のようにして行った。すなわち、図15と同様、Block−it RNAi designerでデザインされ、合成されたRGM249のsiRNA2種類丸1、丸2を、Lipofectamine 2000(Invitrogen)を用いて肝がん細胞株HLFに導入し、導入細胞から、RNAを抽出し、RT−PCR法を行い、発現強度を電気泳動で可視化し、検出した。
【0151】
図21は、RGM249特異的siRNA導入後の各遺伝子mRNA発現抑制率をまとめたグラフである。図21に示すように、RGM249特異的siRNA(1)(図中では丸付き文字で示す)により、RGM249遺伝子の発現を抑制すると、hTERT遺伝子およびRPL22遺伝子の発現も同様に抑制される。また、RGM249特異的siRNAのうち、(2)(図中では丸付き文字で示す)を単独で用いた場合、(1)および(2)をともに導入した場合には、(1)を単独で用いた場合よりはhTERT遺伝子およびRPL22遺伝子の発現抑制効果が低かった。
【0152】
よって、RGM249特異的siRNA(1)により、RGM249遺伝子の発現を抑制すると、hTERT遺伝子およびRPL22遺伝子の発現も同様に抑制される。このため、RGM249特異的siRNA(1)により、テロメレース活性を抑制でき、その結果、細胞の癌化を抑制することができる。
【0153】
このとき、実験方法は、以下のようにして行った。すなわち、図20で検討した導入実験を3回行い、電気泳動像をdensitometerでImage Scanし、測定値をno siRNAで標準化し、siRNAの遺伝子抑制程度を棒グラフで示した。
【0154】
これらのRGM249遺伝子についての実験結果から、肝癌細胞株、肝癌組織の80%程度でRGM249遺伝子が発現していることがわかった。また、RGM249特異的siRNAの遺伝子導入の実験により、RGM249由来のsiRNAは、hTERT遺伝子およびRPL22遺伝子の発現を抑制することがわかった。さらに、図示しないが、肝組織の検討では、各種臨床パラメータにおける相関で、T検定、多変量解析、Person相関検定において肝癌の腫瘍マーカーであるPIVKA−2とRGM249遺伝子の発現量とが有意な相関を示すことがわかった。
【0155】
よって、hTERT遺伝子が発現している肝癌細胞および初代培養肝細胞、肝癌組織、非肝癌組織でRGM249遺伝子は一様に発現していると想定される。また、RGM249遺伝子は、hTERT遺伝子およびRPL22遺伝子の発現に関与している可能性がある。さらに、RGM249遺伝子の発癌への関与が示唆される。
【0156】
<RGM376およびRGM249の関係>
図22は、RGM249siRNAの導入によるRGM376の発現およびRGM376siRNAの導入によるRGM249の発現を示す電気泳動図である。
【0157】
このとき、実験方法は、以下のようにして行った。すなわち、図21および図15で行われた導入実験で、(a)RGM249導入ではRGM376の発現を、(b)RGM376導入ではRGM249の発現を、導入された細胞からRNAを抽出し、RT−PCR法で、検出した。
【0158】
図22(a)は、RGM249siRNA((1)(図中では丸付き文字で示す)および(2)(図中では丸付き文字で示す))の導入によるRGM376の発現への影響を、RT−PCRおよび電気泳動により観察した結果である。RGM249特異的siRNA(1)により、RGM249遺伝子の発現を抑制すると、RGM376遺伝子の発現も同様に抑制される。また、RGM特異的249siRNAのうち、(2)を単独で用いた場合、(1)および(2)をともに導入した場合には、(1)を単独で用いた場合よりはRGM376遺伝子の発現抑制効果が低かった。
【0159】
図22(b)は、RGM376siRNA(AおよびB)の導入によるRGM249の発現への影響を、RT−PCRおよび電気泳動により観察した結果である。RGM376特異的siRNAにより、RGM376遺伝子の発現を抑制しても、RGM249遺伝子の発現は抑制されなかった。
【0160】
上述の結果から、RGM249遺伝子は、RGM376遺伝子の発現を制御していることがわかる。その際、RGM249遺伝子は、RGM376遺伝子の発現を促進する形で制御しているものと想定される。一方、RGM376遺伝子は、RGM249遺伝子の発現を制御していないことがわかる。
【0161】
図24は、shRNAを生成するためのプラスミドからshRNAが生成され、標的遺伝子の発現を阻害するメカニズムを説明するための概念図である。図24の左側に示すように、上述のRGM249siRNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖の間にCGAAからなるRNA配列を挟んだ領域に相補的なDNA配列を含むプラスミドベクターを構築した。なお、このDNA配列は、プラスミドベクターのプロモーターの下流に配置した。
【0162】
図28は、遺伝子2を元に設計するRGM249shRNAの配列を説明するための図である。この図に示すように、配列番号33に示すDNA配列からなる一本鎖DNAと、配列番号34に示すDNA配列からなる一本鎖DNAと、をアニーリングさせて、これらの2本の一本鎖DNAが相補的に結合してなる二本鎖DNAを得た。そして、この二本鎖DNAを、上述のようにプラスミドベクターに組み込んで、RGM249shRNAを発現するためのベクターを作製した。
【0163】
次いで、このプラスミドベクターのDNA配列から、上述のRGM249siRNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖の間にCGAAからなるRNA配列を挟んだRNA鎖が、CGAAの部分でループを形成し、センス鎖およびアンチセンス鎖の結合によりステムを形成してなるRGM249shRNAを生成させた。そして、このRGM249shRNAにより、RGM249遺伝子の発現を阻害させた。
【0164】
一方、図24の右側に示すように、上述のRGM249siRNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖の5’末端側から8番目のT残基の一つが欠失したアンチセンス変異鎖の間にCGAAからなるRNA配列を挟んだ領域に相補的なDNA配列を含むmtプラスミドベクターを構築した。なお、このDNA配列は、mtプラスミドベクターのプロモーターの下流に配置した。
【0165】
図29は、遺伝子2を元に設計するRGM249変異shRNAの配列を説明するための図である。この図に示すように、配列番号33に示すDNA配列からなる一本鎖DNAのアンチセンスターゲット配列の5’末端側から8番目のT残基の一つが欠失した、配列番号35に示すDNA配列からなる一本鎖DNAと、配列番号36に示すDNA配列からなる一本鎖DNAと、をアニーリングさせて、これらの2本の一本鎖DNAが相補的に結合してなる二本鎖DNAを得た。そして、この二本鎖DNAを、上述のようにプラスミドベクターに組み込んで、RGM249変異shRNAを発現するためのベクターを作製した。
【0166】
次いで、このmtプラスミドベクターのDNA配列から、上述のRGM249siRNAのセンス鎖およびアンチセンス変異鎖の間にCGAAからなるRNA配列を挟んだRNA鎖が、CGAAの部分でループを形成し、センス鎖およびアンチセンス変異鎖の結合によりステムを形成してなるRGM249変異shRNAを生成させた。そして、このRGM249変異shRNAにより、RGM249遺伝子の発現を阻害させた。
【0167】
図25は、RGM249shRNA導入後の各遺伝子mRNAの発現を示す電気泳動図である。HLF細胞に、上述のRGM249の発現を抑制するように設計した特異的なshRNAおよび変異shRNAを生成するプラスミドベクターおよびmtプラスミドベクターを導入し、RGM249、hTERT、RPL22、β−actinの各遺伝子について、RT−PCRおよび電気泳動を行った。その結果、RGM249遺伝子の発現がshRNAおよび変異shRNAにより抑制されたHLF細胞では、hTERT遺伝子、RPL22遺伝子の発現も同期して抑制された。
【0168】
このとき、実験方法は、以下のようにして行った。すなわち、図20と同様、Block−it RNAi designerでデザインされ、合成された、上述のRGM249の発現を抑制するように設計した特異的なshRNAおよび変異shRNAを生成するプラスミドベクターおよびmtプラスミドベクターを肝がん細胞株HLFに導入し、shRNAおよび変異shRNAを発現させた導入細胞からRNAを抽出し、RT−PCR法を行い、発現強度を電気泳動で可視化し、検出した。
【0169】
図26は、RGM249shRNA導入後の各遺伝子mRNA発現抑制率をまとめたグラフである。図26に示すように、上述のRGM249の発現を抑制するように設計した特異的なshRNAおよび変異shRNAを生成するプラスミドベクターおよびmtプラスミドベクターにより、RGM249遺伝子の発現を抑制すると、hTERT遺伝子およびRPL22遺伝子の発現も同様に抑制される。また、プラスミドベクターおよびmtプラスミドベクターのいずれを用いた場合でも、hTERT遺伝子およびRPL22遺伝子の発現抑制効果が同程度であった。
【0170】
よって、RGM249の発現を抑制するように設計した特異的なshRNAおよび変異shRNAにより、RGM249遺伝子の発現を抑制すると、hTERT遺伝子およびRPL22遺伝子の発現も同様に抑制される。このため、RGM249の発現を抑制するように設計した特異的なshRNAおよび変異shRNAにより、テロメレース活性を抑制でき、その結果、細胞の癌化を抑制することができる。
【0171】
このとき、実験方法は、以下のようにして行った。すなわち、図25で検討した導入実験を3回行い、電気泳動像をdensitometerでImage Scanし、測定値をno siRNAで標準化し、siRNAの遺伝子抑制程度を棒グラフで示した。
【0172】
これらのRGM249遺伝子についての実験結果から、RGM249の発現を抑制するように設計した特異的なshRNAおよび変異shRNAの遺伝子導入の実験により、RGM249由来のshRNAおよび変異shRNAは、hTERT遺伝子およびRPL22遺伝子の発現を抑制することがわかった。よって、RGM249遺伝子は、hTERT遺伝子およびRPL22遺伝子の発現に関与している可能性がある。
【0173】
以上、本発明を実施例に基づいて説明した。この実施例はあくまで例示であり、種々の変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0174】
たとえば、上記実施例では、siRNAとして、インビトロジェン株式会社のstealth(登録商標) RNAiを用いたたが、他のメーカーの構造の異なるsiRNAまたはshRNAなどを用いてもよい。この場合にも、標的mRNAの発現を抑制することができれば、同様の作用効果を得られるためである。
【0175】
たとえば、上記実施例では、siRNAまたはDicerで切断して得られるsiRNA(miRNA)について説明したが、特に限定するわけではない。たとえば、生体内では、precursor miRNA geneからDroshaで約70数bp以下のpri−miRNAが生成し、Dicerでpre−miRNAになるメカニズムも想定されている(図23のMicro RNAsによるtranslational silensingの想定メカニズムを説明するための概念図を参照すること)。このpri−miRNAおよびpre−miRNAを介して得られるmiRNAがmiRNPとなって細胞内での標的mRNAの翻訳などを抑制するメカニズムにより、上記の実施例と同様の作用効果が奏されてもよい。
【0176】
なお、上記実施例では、RNAについて説明したが、RNAはRNPとして機能してもよい。RNP(ribonucleoprotein)は、RNAがタンパク質と結合して機能する複合体である。これらの微小のRNAがRISCに取り込まれてRNPを形成することにより、標的を切断するメカニズムが想定されている。
【産業上の利用可能性】
【0177】
以上のように、本発明にかかるhTERT発現調節遺伝子は、哺乳類の細胞内でテロメレース逆転写酵素遺伝子の発現を調節するという効果を有するため、その遺伝子またはその遺伝子の発現を抑制する特異的なRNAは、リサーチツール、医薬(癌治療剤)の原材料等として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2で表される塩基配列からなるhTERT発現調節遺伝子。
【請求項2】
配列番号2で表される塩基配列の1若しくは数個の塩基が欠失・置換若しくは付加された塩基配列からなるhTERT発現調節遺伝子。
【請求項3】
配列番号2で表される塩基配列からなるDNA分子に対して相補的な塩基配列からなるDNA分子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする哺乳動物由来のDNA分子の塩基配列からなるhTERT発現調節遺伝子。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれかに記載のhTERT発現調節遺伝子をベクターに連結して発現可能に構成されているhTERT発現調節遺伝子発現ベクター。
【請求項5】
請求項1乃至3いずれかに記載のhTERT発現調節遺伝子の転写産物であるhTERT発現調節RNA。
【請求項6】
配列番号4で表される塩基配列からなるhTERT発現調節RNA。
【請求項7】
配列番号4で表される塩基配列の1若しくは数個の塩基が欠失・置換若しくは付加された塩基配列からなるhTERT発現調節RNA。
【請求項8】
配列番号4で表される塩基配列からなるRNAに対して相補的な塩基配列からなるRNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズする哺乳動物由来のRNAの塩基配列からなるhTERT発現調節RNA。
【請求項9】
請求項6乃至8いずれかに記載のhTERT発現調節RNAの一部に相当する15塩基以上30塩基以下の長さの第一の塩基配列と、
前記第一の塩基配列と相補的な15塩基以上30塩基以下の長さの第二の塩基配列と、
を含む、hTERT発現調節遺伝子の発現を抑制する二本鎖のRNA。
【請求項10】
請求項9に記載のRNAにおいて、
前記第一の塩基配列は、配列番号20、22、24乃至32いずれかに記載の塩基配列であるRNA。
【請求項11】
請求項9記載のRNAにおいて、
前記第一の塩基配列は、3’末端に2塩基の長さの突端部位を含み、
前記第二の塩基配列は、3’末端に2塩基の長さの突端部位を含むRNA。
【請求項12】
請求項6乃至8いずれかに記載のhTERT発現調節RNAの一部に相当する15塩基以上30塩基以下の長さの第一の塩基配列と、
前記第一の塩基配列と逆方向に配置されている、前記第一の塩基配列と相補的な15塩基以上30塩基以下の長さの第二の塩基配列と、
を含む、hTERT発現調節遺伝子の発現を抑制する一本鎖のRNAであって、
前記第一の塩基配列および前記第二の塩基配列の間に、4塩基以上のヘアピンループ配列を含むRNA。
【請求項13】
請求項12記載のRNAに対して相補的なDNA配列をベクターに連結して発現可能に構成されているhTERT発現調節遺伝子発現ベクター。
【請求項14】
請求項6乃至8いずれかに記載のhTERT発現調節RNAと、
前記hTERT発現調節RNAと相補的な塩基配列を含むRNAと、
を含む二本鎖のRNAをマイクロRNA成熟酵素により切断してなる、hTERT発現遺伝子の発現を抑制する二本鎖のRNAが含まれる複数の種類の二本鎖のRNAを含有するRNA。
【請求項15】
請求項9記載のRNAと、
細胞内への取込促進物質と、
を結合してなる複合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2012−85645(P2012−85645A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263124(P2011−263124)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【分割の表示】特願2007−521154(P2007−521154)の分割
【原出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(504150461)国立大学法人鳥取大学 (271)
【Fターム(参考)】