説明

o―カルボキシピリジル―およびo―カルボキシキノリルイミダゾリノンの改良製造法

【発明の詳細な説明】
本発明は除草剤の製造法に関する。さらに詳細には本発明はある種のo−カルボキシピリジルイミダゾリノンおよびo−カルボキシキノリルイミダゾリノンを製造する改良方法に関する。
これを要約すれば本発明においては2−メチル−o−カルボキシレートピリジンおよびキノリン前駆体からo−カルボキシピリジル−およびo−カルボキシキノリルイミダゾリノンを製造する改良方法が提供される。
本発明のo−カルボキシピリジルイミダゾリノンおよびo−カルボキシキノリルイミダゾリノンは優れた除草剤であるから、その製造法に関しては現在新規にして改善された方法が探求されている。不幸にして当業界において現在公知の方法は過剰の原料(例えば2−キナルジンまたは2−ピコリン前駆体)を必要とするか、または有利な収率以下の収率でしか製造できないか、或いはその両方である。また所望の最終生成物を製造するためには、ある方法では多くの分離工程を必要とするか、または低い収率を避けるために間接的な方法または回りくどい方法を採らなければならない。
米国特許第4,474,962号には、置換基をもった2−ピコリンまたは2−キナルジンをアミノカルボキシアミドおよび硫黄と縮合させて、それぞれ置換基をもった2−イミダゾリニルピリジンまたは2−イミダゾリニルキノリンをつくる方法が記載されている。しかしこの方法においては、対応する2−イミダゾリニルピリジンまたはキノリンを好収率で得るためには、過剰の量の2−ピコリンまたは2−キナルジンを使用することが必要である。また2−ピコリンまたは2−キナルジン前駆体の3の位置の置換基が水素である場合、別の金属化/カルボキシル化工程を後で行って所望のo−カルボキシレート官能基を付加する必要がある。
工業的には(1)過剰の原料を使用すること、(2)余分の金属化/カルボキシル化工程、および(3)生成物の低収率を避けることが極めて有利であろう。
本発明の目的は不必要な余分の工程を含まず、式Iの化合物を著しく増加した収率で製造することができ、同時に過剰の原料使用量を減少させることができる単一工程によりo−カルボキシピリジルおよびo−カルボキシキノリンを製造する劇的に改善された方法を提供することである。
本発明は下記に示すような反応図式により硫黄および芳香族溶媒を存在させ、式IIの適当な置換基をもった2−メチルピリジンおよび2−メチルキノリンo−カルボキシレート前駆体を温度範囲約100〜200℃において式IIIのアミノアミドと単一工程で縮合させることにより式Iのo−カルボキシピリジルイミダゾリノンおよびo−カルボキシキノリルイミダゾリノンを製造する改良方法に関する。


ここでXはOR3またはNR4R5であり、 Yは水素、ハロゲン、または随時1個または2個のC1〜C4アルコキシ基が置換したC1〜C6アルキルであり、 Zは水素であって、YおよびZはそれが結合している炭素と一緒になってYZが−CH=CH−CH=CH−で表される環をつくることもでき、 R1およびR2はC1〜C4アルキルであるか、または一緒になって随時メチルが置換したC3〜C6シクロアルキルを表すこともでき、且つR1およびR2が同じでない時にはその光学的異性体であり、 R3は随時1個または2個のC1〜C6アルキル、C1〜C4アルコキシまたはハロゲンが置換したC1〜C6アルキル、C5〜C6シクロアルキルまたはベンジルであり、 R4およびR5はC1〜C4アルキルであるか、またはそれが結合している窒素と一緒となってピペリジニルまたはモルフォリニルを表すことができる。
本発明においては式Iの化合物を製造するための単一工程縮合反応はこれを芳香族溶媒および少なくとも2倍の過剰量の硫黄の存在下において温度範囲約100〜200℃において行うと著しく改善され、僅かに約1当量の化合物IIおよび約1当量の化合物IIIを必要とするに過ぎないことが見出だされた。
驚くべきことには本発明においてはトルエン、キシレン、ナフタレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン等のような芳香族溶媒を式IIの化合物に関し約50〜300重量%使用し、また約5.5〜9.0モル当量の硫黄を存在させ、温度約100〜200℃において反応を行うと、式Iの化合物を著しく高い収率で製造し得る効率の高い著しく改善された方法が得られることが見出だされた。
本発明は下記に示すような反応図式により5.5〜9.0モル当量、好ましくは約6.0モル当量の硫黄、および約50〜300重量%、好ましくは約75〜125重量%(式IIの化合物の重量に関し)の芳香族溶媒の存在下において、式IIの適当な置換基をもった2−メチルピリジンおよび2−メチルキノリンo−カルボキシレート前駆体1当量を温度範囲約100〜200℃、好ましくは約130〜170℃において式IIIのアミノアミド1当量と単一工程で縮合させることにより式Iの置換基をもったまたはもたないo−カルボキシピリジルイミダゾリノンおよびo−カルボキシキノリルイミダゾリノンを製造する改良方法に関する。


ここでXはOR3またはNR4R5であり、 Yは水素、ハロゲン、または随時1個または2個のC1〜C4アルコキシ基が置換したC1〜C6アルキルであり、 Zは水素であって、YおよびZはそれが結合している炭素と一緒になってYZが−CH=CH−CH=CH−で表される環をつくることもでき、 R1およびR2はC1〜C4アルキルであるか、または一緒になって随時メチルが置換したC3〜C6シクロアルキルを表すこともでき、且つR1およびR2が同じでない時にはその光学的異性体であり、 R3は随時1個または2個のC1〜C6アルキル、C1〜C4アルコキシまたはハロゲンが置換したC1〜C6アルキル、C5〜C6シクロアルキルまたはベンジルであり、 R4およびR5はC1〜C4アルキルであるか、またはそれが結合している窒素と一緒となってピペリジニルまたはモルフォリニルを表すことができる。
本発明に使用するのに適した芳香族炭化水素溶媒にはクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン、トルエン、キシレン、ナフタレン等が含まれる。好適な溶媒はクロロベンゼンである。
驚くべきことには芳香族溶媒、例えばクロロベンゼンが約50〜300重量%、好ましくは75〜125重量%(式IIの化合物の重量に関し)存在し、硫黄が約5.5〜9.0モル当量、好ましくは約6.0モル当量存在する場合、式Iの化合物を著しく増加した収率で得るために、温度約100〜200℃、好ましくは約130〜170℃において僅かに1当量の式IIの2−メチル−o−カルボキシピリジンおよびキノリン化合物、および1当量の式IIIのアミノアミドを必要とするに過ぎないことが見出だされた。
本発明方法においては、式IIの化合物1当量、式IIIの化合物1当量、硫黄約5.5〜9.0、好ましくは約6.0モル当量、および約50〜300重量%、好ましくは約75〜125重量%(式IIの化合物に関し)のクロロベンゼンの混合物を撹拌し、約100〜200℃、好ましくは約130〜170℃に約1〜72時間加熱する。室温に冷却した後、反応混合物を有機溶媒、例えば塩化メチレンまたはエーテル等で希釈し、濾過して未反応の硫黄を除去する。通常の分離法、例えばクロマトグラフ法で濾液を処理して式Iの生成物を優れた収率で得る。
本発明の理解をさらに容易にするために、主として詳細点を例示する目的で下記に実施例を示す。これらの実施例は本発明を限定するものではない。特記しない限りすべての割合は重量による。
実施例 15−エチル−2−メチルニコチン酸エチルの製造

酢酸4.5■中に2kgの酢酸アンモニウム(26モル)を含む懸濁液を、凝縮器を取り付けた12■の四ッ口フラスコ中で撹拌し、1kgの2−エチルアクロレイン(11.9モル)を一度に用いて処理し、次に2kgの2−クロロアセト酢酸エチル(12.1モル)で処理する。5分間に亙り発熱が起こり溶媒は沸点に達する。空気で冷却しながらこの状態を10分間保つ(コントロールしながら)。周囲温度で一晩撹拌した後、反応混合物を濾過し、濾液を真空中で濃縮し、残渣を2:1ヘキサン−酢酸エチルおよび水の間で分別する。有機相を水洗し、5%塩酸水溶液で十分に洗滌する。一緒にした抽出水性相を2:1ヘキサン−酢酸エチルで洗滌し、濃NH4OHで塩基性にし、2:1ヘキサン−酢酸エチルで抽出する。一緒にした有機相を乾燥し、真空中で濃縮して油状の残渣にし、これを真空蒸溜して標題生成物1.4kgを得た。沸点90℃/0.05mm。
代わりに適当な原料を用い同様な反応を行って下記第1表で示す化合物をつくった。


実施例 25−エチル−2−メチルニコチン酸の製造

250mlのメタノール中に260gの5−エチル−2−メチルニコチン酸エチル(1.34モル)を含む溶液を1■の水中に80gの水酸化ナトリウム(2モル)を含む溶液で一度に処理する。反応混合物を室温において2日間撹拌し、容積が約700mlになるまで真空で濃縮し、167mlの濃塩酸(2モル)で酸性にする。沈澱した固体を濾過し、冷水で洗滌し、75℃で真空乾燥して標題生成物184gを得た。融点218〜220℃。
代わりに適当な原料を用い同様な反応を行って下記第2表で示す化合物をつくった。


実施例 35−エチル−2−メチルニコチン酸モルフォリンアミドの製造

10滴のジメチルフォルムアミドを含む400mlの塩化メチレン中に25gの5−エチル−2−メチルニコチン酸(0.15モル)を含む懸濁液を50mlの塩化チオニルで一度に処理する。凝縮器中で反応混合物を室温において20分間撹拌し、次いで2時間還流温度に保つ。反応混合物を真空中で濃縮し、乾燥トルエンから再濃縮して酸塩化物塩酸塩中間体を固体として得た。
この中間体を300mlのトルエン中に含む懸濁液に43.5gのモルフォリン(0.50モル)を一度に加える。反応混合物を室温において1時間撹拌し、酢酸エチルと水とに分別する。水性相をさらに酢酸エチルで抽出する。一緒にした有機相を乾燥し、真空中で濃縮し、蒸溜して標題生成物23gを得た。沸点165℃/0.75mm。
代わりに適当な原料を用い同様な反応を行って下記第3表で示す化合物をつくった。


実施例 42−メチルキノリン−3−カルボン酸エチルの製造

氷浴中に入れた凝縮/洗滌器中において500mlの塩化メチレン中に140gのジメチルフォルムアミド(1.92モル)を含む溶液を撹拌し、40分間に亙り295gのPOCl3(1.92モル)を滴下する。さらに3時間反応混合物を撹拌する。この間浴温を室温まで温める。次いで反応混合物を2■の塩化メチレンで希釈し、氷浴中で冷却し、1時間に亙り394gのβ−アニリノニコチン酸エチル(1.92モル)で滴下処理する。室温で26時間撹拌した後、反応混合物を48時間還流温度に加熱し、氷浴中で冷却し、500mlの氷水で急冷し、濃NH4OHで滴下処理してpHを6にする。相分離を行い、有機相を真空中で濃縮して固体残渣にし、これを再び1.5■の酢酸エチルに溶解し、濾過し、濾液を塩酸ガスで飽和させる。得られた固体沈澱を濾別し、酢酸エチルで十分に洗滌し、水に溶解して濃NH4OHで塩基性にする。塩基性の水性混合物を1:1ヘキサン−酢酸エチルで抽出し、有機相を真空中で濃縮して標題生成物240gを得た。融点70〜72℃。
代わりに適当な原料を用い同様な反応を行って下記の化合物をつくった。


実施例 55−エチル−2−(4−イソプロピル−4−メチル−5−オキソ−2−イミダゾリン−2−イル)ニコチン酸sec−ブチルの製造

2.2gの5−エチル−2−メチルニコチン酸sec−ブチル(10ミリモル)、1.3gのα−メチルヴァリン酸アミド(10ミリモル)および2.0gの硫黄(62ミリモル)の混合物を2.5gのクロロベンゼン(114重量%)中に含む混合物を還流温度において24時間磁気撹拌機で撹拌する。反応混合物を冷却し、塩化メチレンで希釈し、濾過して未反応の硫黄を除去する。濾液を溶出液として2:1ヘキサン−酢酸エチルを使用してシリカ・ゲル上でクロマトグラフにかけ、標題生成物2.5gを固体として得た(収率72%)。エーテル−ヘキサンから再結晶して融点83〜87℃のものを得た。
代わりに適当な原料を用い実質的に同様な反応を行って下記第4表の化合物をつくった。


実施例 65−エチル−2−(4−イソプロピル−4−メチル−5−オキソ−2−イミダゾリン−2−イル)ニコチン酸イソプロピルの製造

4.2gの5−エチル−2−メチルニコチン酸イソプロピル(20ミリモル)、2.7gのα−メチルヴァリン酸アミド(20ミリモル)および2.0gの硫黄(62ミリモル)の混合物を8mlのジクロロベンゼン中に含む混合物を160℃において19時間加熱する。反応混合物を冷却し、塩化メチレンで希釈し、濾過する。濾液をヘキサンを使用し次いで2:1ヘキサン−酢酸エチルを使用してシリカ・ゲル上でクロマトグラフにかけ、5.0gの粗製物を得た。NMR分析法により純度は51%(収率38%)であると決定された。
本発明の主な特徴及び態様は次の通りである。
1.式I

但し式中XはOR3またはNR4R5であり、 Yは水素、ハロゲン、または随時1個または2個のC1〜C4アルコキシ基が置換したC1〜C6アルキルであり、 Zは水素であって、YおよびZはそれが結合している炭素と一緒になってYZが−CH=CH−CH=CH−で表される環をつくることもでき、 R1およびR2はC1〜C4アルキルであるか、または一緒になって随時メチルが置換したC3〜C6シクロアルキルを表すこともでき、且つR1およびR2が同じでない時にはその光学的異性体であり、 R3は随時1個または2個のC1〜C6アルキル、C1〜C4アルコキシまたはハロゲンが置換したC1〜C6アルキル、C5〜C6シクロアルキルまたはベンジルであり、 R4およびR5はC1〜C4アルキルであるか、またはそれが結合している窒素と一緒になってピペリジニルまたはモルフォリニルを表すことができる、のo−カルボキシピリジルおよびo−カルボキシキノリルイミダゾリノンの製造法において、式II

但し式中X、YおよびZは式Iにおける定義のとおりである、の化合物を、式III

但し式中X、YおよびZは式Iにおける定義のとおりである、の化合物1当量と、式IIの化合物に関し約50〜300重量%の芳香族溶媒および約5.5〜9.0モル当量の硫黄の存在下において、温度約100〜200℃において反応させる方法。
2.芳香族溶媒がクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン、トルエン、キシレンまたはナフタレンである上記第1項記載の方法。
3.溶媒は式IIの化合物の重量に関し約75〜125重量%の量で存在する上記第2項記載の方法。
4.溶媒がクロロベンゼンである上記第3項記載の方法。
5.硫黄は約6.0モル当量存在する上記第4項記載の方法。
6.温度範囲は約130〜170℃である上記第5項記載の方法。
7.YおよびZが水素である上記第1項記載の方法。
8.Yがメチルであり、Zが水素である上記第1項記載の方法。
9.Yがエチルであり、Zが水素である上記第1項記載の方法。
10.YおよびZが一緒になり−CH=CH−CH=CH−を表す上記第1項記載の方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】式I

但し式中XはOR3またはNR4R5であり、Yは水素、ハロゲン、または随時1個または2個のC1〜C4アルコキシ基が置換したC1〜C6アルキルであり、Zは水素であって、YおよびZはそれが結合している炭素と一緒になってYZが−CH=CH−CH=CH−で表される環をつくることもでき、R1およびR2はC1〜C4アルキルであるか、または一緒になって随時メチルが置換したC3〜C6シクロアルキルを表すこともでき、且つR1およびR2が同じでない時にはその光学的異性体であり、R3は随時1個または2個のC1〜C6アルキル、C1〜C4アルコキシまたはハロゲンが置換したC1〜C6アルキル、C5〜C6シクロアルキルまたはベンジルであり、R4およびR5はC1〜C4アルキルであるか、またはそれが結合している窒素と一緒になってピペリジニルまたはモルフォリニルを表すことができる、のo−カルボキシピリジルおよびo−カルボキシキノリルイミダゾリノンの製造法において、式II

但し式中X、YおよびZは式Iにおける定義のとおりである、の化合物を、式III

但し式中X、YおよびZは式Iにおける定義のとおりである、の化合物1当量と、式IIの化合物に関し50〜300重量%の芳香族溶媒および5.5〜9.0モル当量の硫黄の存在下において、温度100〜200℃において反応させることを特徴とする方法。

【特許番号】第2970923号
【登録日】平成11年(1999)8月27日
【発行日】平成11年(1999)11月2日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平2−62824
【出願日】平成2年(1990)3月15日
【公開番号】特開平2−289563
【公開日】平成2年(1990)11月29日
【審査請求日】平成9年(1997)3月11日
【出願人】(999999999)アメリカン・サイアナミド・カンパニー
【参考文献】
【文献】英国公開4474962(GB,A)