説明

インナー手袋

【課題】 着脱が容易であり、手のサイズに関係なくフィット感が良好であり、また、着用時べたつきが少ないシームレス編のインナー手袋を提供する。
【解決手段】 シームレス編みのインナー手袋であって、タテ方向において、伸び率が150%以上、伸長回復率が90%以上であることを特徴とするインナー手袋。ヨコ方向において、伸び率が400%以上、伸長回復率が85%以上であることが好適である。ヨコ方向の伸び率/タテ方向の伸び率が2〜4であることが好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業用等のゴム手袋等の下に着用するインナー手袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種の作業を行う場合、例えば、クリーンルーム内での作業、食品を取り扱う場合に、ゴム手袋が着用されている。ゴム手袋は、細かい作業を行うために手先にもピッタリ密着するように次第に薄手のものが普及し、直接、手で取り扱ったときの触感に近づきつつある。しかし、ゴム手袋は、通気性がないので、着用中のムレを軽減したり、着用感を改善したりするためにインナー手袋が使用されるようになっている。また、ゴム手袋は、肌との滑り性が悪く、着脱時にスムーズな取扱いができず、破れてしまうことが多くある。
【0003】
インナー手袋としては、木綿の紡績糸を使用したもの、ポリエステルフィラメントを使用したもの及びセルロースフィラメントを使用したもの(特許文献1等参照)が知られている。
また、20℃、65%RHにおける吸湿率が8%以上である合成繊維マルチフィラメント糸条からなる手袋が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−170014号公報
【特許文献2】実開平6−61917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
木綿の紡績糸を使用したインナー手袋は、木綿のもつ吸水性により、ゴム手袋を着用中に発生する汗をよく吸収する。しかし、紡績糸で構成されているために、嵩が高くなり、微妙な操作を要求される作業には不適当である。さらに、リントが発生するために、クリーンルーム内で使用するには支障がある。
【0006】
ポリエステルフィラメントやセルロースフィラメントを用いたインナー手袋は、リントが発生しないので、クリーンルーム内での使用に適している。しかし、伸縮性に乏しいので、手へのフィット感が十分でなく、ゴム手袋の中でだぶついたり、ずれたりしてしまう。
【0007】
また、吸湿性を付与するにあたって、合成繊維マルチフィラメント糸をアルカリ金属で置換されたアクリル酸やメタクリル酸等の酸性不飽和化合物をグラフト重合した化合物は反応基の活性が非常に高いため、該グラフト重合されたマルチフィラメント糸は、作業時あるいはクリーン洗浄時に環境中の重金属(Na、K、Ca、Al、Mg、Fe、P、S、Si、Zn、Pb、Cr、Cd等)を吸着し易い。クリーンルーム、特に半導体製造工場などのクリーンルームで着用する手袋にこれらの重金属が吸着されていると、重金属が半導体に移行するため大きな問題となる。さらには着用する人体側にも重金属が触れることになり、肌荒れ等の問題が起こる可能性もある。
【0008】
本発明は、前記の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、着脱が容易であり、手のサイズに関係なくフィット感が良好であり、また、着用時べたつきが少ないシームレス編のインナー手袋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は、シームレス編みのインナー手袋であって、タテ方向において、伸び率が150%以上、伸長回復率が90%以上であることを特徴とするインナー手袋によって達成される。
【0010】
本発明においては、ヨコ方向において、伸び率が400%以上、伸長回復率が85%以上であることが好適である。
【0011】
また、本発明においては、ヨコ方向の伸び率/タテ方向の伸び率が2〜4であることが好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のインナー手袋は、着脱が容易であり、また、手のサイズに関係なくフィット感が良好であり、着用時にだぶつき、たるみがなく、着用感に優れる。また、ゴム手袋等着用時にムレを生じにくい。
また、本発明のインナー手袋を着用することで、ゴム手袋等の着脱が容易となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明のインナー手袋は、シームレス編みされてなるものであり、タテ方向において、伸び率が150%以上、伸長回復率が90%以上であることを特徴とする。伸び率が150%未満であると、手の大きな、または指の長い人が着用したときに、窮屈感が発生するなど、フリーサイズでの商品展開上、手の大きさに合わない場合がある。
また、伸長回復率が90%未満であると、繰り返し洗浄後再利用する際に合わない場合がある。また、手の小さな、または指の短い人が着用したときに、指先にたるみが発生することがある。
【0015】
また、本発明のインナー手袋は、ヨコ方向において、伸び率が400%以上、伸長回復率が85%以上であることが好ましい。伸び率が400%に未満であると、手の大きな、または指の長い人が着用したときに、窮屈感が発生するなど、フリーサイズでの商品展開上、手の大きさに合わない場合がある。
また、伸長回復率が85%未満であると、繰り返し洗浄後再利用する際に合わない場合がある。また、手の小さな、または指の短い人が着用したときに、指先にたるみが発生することがある。
【0016】
また、本発明のインナー手袋は、ヨコ方向の伸び率/タテ方向の伸び率が、2〜4であることが好適ある。
タテとヨコの伸び率比が上記範囲であると、製品のメッシュサイズが適度となり、フィット感と快適性に優れたものとなる。また、手のサイズ、指のサイズの大小に左右されず、着脱が容易で、且つ、着用直後にピッタリフィットするインナー手袋となる。
【0017】
本発明においては、インナー手袋に、十分な伸び率と伸長回復率を付与するため、ポリウレタン糸を芯糸とし、熱可塑性合成繊維を鞘糸としてなるカバリング糸を用いる。カバリング糸は、シングルカバリング糸でもダブルカバリング糸でもよい。
上記芯糸をカバリングするための鞘糸である熱可塑性合成繊維としては、6ナイロン等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル等が挙げられ、中でも、ポリアミドが好適に用いられる。
本発明で用いられるポリアミドは、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン610、あるいはこれらの2種以上の任意の共重合ナイロン等が挙げられる。
【0018】
上記芯糸としては、インナー手袋用としては、総繊度15〜35デシテックスのポリウレタン弾性糸を用いるのが好ましく、鞘糸としては10〜50デシテックスの熱可塑性合成繊維を用いるのが好ましい。上記範囲よりも細い芯糸は製造が困難であり、強度的に問題が生じる恐れがある。逆に太過ぎると編物としたときの肌ざわりや着用感が問題となることがある。また、鞘糸である熱可塑性合成繊維が上記範囲より細過ぎても太過ぎても肌ざわりや風合いが悪くなる傾向にある。
【0019】
また、芯糸は、モノフィラメントでも、マルチフィラメント(2〜10本)でもよい。 また、鞘糸は10〜50本のマルチフィラメントが好適である。風合いや吸水性の点から単糸繊度1デシテックス以下の極細繊維を用いてもよい。
【0020】
また、芯糸への鞘糸の巻きつけ回数は、700〜2000回/mとするのが好ましい。
【0021】
また、本発明のインナー手袋は、上記のようなカバリング糸を100%用いてもよいが、ポリアミド糸、ポリエステル糸等の熱可塑性合成繊維を組み合わせて用いてもよい。仲でも、ポリアミド糸が好適である。
用いる糸の総繊度は、30〜85デシテックスが好ましく、カバリング糸と同程度の総繊度の糸を用いることが好ましい。
他の繊維を併用する場合、カバリング糸は、インナー手袋中50質量%以上用いることが好適である。
【0022】
インナー手袋の形態は、5本指タイプのものであり、指を全部覆うタイプのものでも、指先が露出するタイプのものでもよい。
インナー手袋の編み組織は、メッシュ編みとすることで、通気性が良好となる。
また、手首部は、ゴム編みとすることが好ましい。
【0023】
また、指先が露出するタイプの手袋の場合には、指口部をゴム編みにすることにより、インナー手袋の上からゴム手袋を着用する際、インナー手袋がまくれてしまうことがなく、好適である。また、指口が指の第2関節の下となるように、長さを設定すると、インナー手袋のまくれをより防止することができる。
【0024】
本発明のインナー手袋は、シームレス編機を用いることにより製造される。
その製造方法は、例えば、5本指手袋は、先ず人差し指、中指、薬指を編成した後、これらに続いて三本胴の編成を行う。次に小指の指袋を編成して、小指をこの三本胴と接合して四本胴の編成を行う。続いて親指の指袋の編成を行った後、四本胴と親指の指袋とを接合し、手首まで延びる五本胴が筒状でシームレスの状態に編成する。
【0025】
本発明のインナー手袋は、隣接する給糸口毎にカバリング糸と通常の熱可塑性合成繊維とを交互に配して編み立てたもの等としてもよい。
【0026】
上記のようにして得られる本発明のインナー手袋は、伸縮性に優れており、着脱が容易であり、着用感に優れる。また、フリーサイズであり、表裏、左右なく使用できる。
また、本発明のインナー手袋は、洗濯耐久性に優れており、洗濯して何度も使用可能である。
【実施例】
【0027】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、本発明は以下に述べる実施例に限定されるものではない。
【0028】
尚、実施例において、伸び率及び伸長回復率は以下の方法により求めた。
1)伸び率
JIS L−1096B法に準じ、試料幅25mm、長さ80mm、印間の長さ40mmとして測定した。
2)伸長回復率
JIS L−1096B−1法に準じ、試料幅25mm、印間の長さ40mmとして測定した。
また、タテ方向は、荷重14.7N、ヨコ方向は、荷重4.9Nとした。
【0029】
[実施例1]
ポリウレタン糸(22デシテックス/1本、Yiwu Yuan社製)にナイロン6糸(33デシテックス/12本、Fujian Jiayi社製)をカバリングしたカバリング糸とナイロン6糸(56デシテックス/48本、Fujian Jiayi社製)とを用い、シームレス編機(ドイツ・マイヤー社製)にて2本ずつ給糸して編み立て(メッシュ編み、手首部と指口はゴム編み)、インナー手袋を得た。
得られたインナー手袋の伸び率及び伸長回復率を測定した。
その結果を、表1に示す。
【0030】
[比較例1]
ポリエチレンテレフタレート糸(56デシテックス/36本)を100%用い、経編機を用い、メッシュ編のインナー手袋を得た。
得られたインナー手袋の伸び率及び伸長回復率を測定した。
その結果を、表1に示す。
【0031】
[比較例2]
ナイロン6糸(167デシテックス/48本)を100%用い、手袋編機を用い、平編み(手首部はゴム編み)のインナー手袋を得た。
得られたインナー手袋の伸び率及び伸長回復率を測定した。
その結果を、表1に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
実施例のインナー手袋は、着脱が容易で、また、着用感も良好であった。一方、比較例1のインナー手袋は、伸びが少なく、フィット性に乏しく、だぶついたり、たるんだりして着用感が悪かった。比較例2のインナー手袋は、伸びはあったものの十分ではなく、着用感は悪かった 。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シームレス編みのインナー手袋であって、タテ方向において、伸び率が150%以上、伸長回復率が90%以上であることを特徴とするインナー手袋。
【請求項2】
ヨコ方向において、伸び率が400%以上、伸長回復率が85%以上であることを特徴とする請求項1記載のインナー手袋。
【請求項3】
ヨコ方向の伸び率/タテ方向の伸び率が2〜4であることを特徴とする請求項1または2記載のインナー手袋。

【公開番号】特開2012−162813(P2012−162813A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22238(P2011−22238)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(305037123)KBセーレン株式会社 (97)
【Fターム(参考)】