説明

ポリロタキサンの合成方法及び新規ポリロタキサン

【課題】ポリロタキサンの軸となる直鎖状分子の種類が限定されないポリロタキサンの新規な製造法の提供。
【解決手段】a)両末端に−COOH基を有する直鎖状分子を準備する工程;b)該−COOH基を、−OH基を有する第1の化合物と反応させ、−COO−(第1の化合物由来の基)で表される基を形成する工程;c)−COO−(第1の化合物由来の基)で表される基を両末端に有する直鎖状分子と第1の環状分子とを混合し、擬ポリロタキサンを調製する工程;及びd)第2の環状分子と擬ポリロタキサンとを酸触媒又は塩基触媒下で反応させ、−COO−(第1の化合物由来の基)で表される基を−COO−(第2の環状分子由来の基)で表される基へとエステル交換し、直鎖状分子の両端に−COO−(第2の環状分子由来の基)で表される基からなる封鎖基を配置してポリロタキサンを調製する工程;を有するポリロタキサンの調製法により、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリロタキサンの新規合成方法及び新規ポリロタキサンに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリロタキサン、特に架橋ポリロタキサンは、それが有する粘弾特性などから、種々の応用が期待され、研究・開発がなされている。例えば、特許文献1は、ポリロタキサン同士が該ポリロタキサンに含まれる環状分子を介して架橋してなる架橋ポリロタキサンを開示し、該架橋ポリロタキサンがある粘弾特性、高い伸縮率を有することを開示する。
また、特許文献1は、特許文献2を開示する。該特許文献2は、α−シクロデキストリン分子がポリエチレングリコール分子により串刺し状に包接されており、且つ該α−シクロデキストリンが該ポリエチレングリコール分子から脱離できないように該ポリエチレングリコールの両末端を封鎖基で封鎖されている化合物を開示する。
【0003】
さらに、特許文献3は、直鎖状分子の両末端をカルボキシル化し、該カルボキシル基と反応する基を有する封鎖基を用いて、ポリロタキサンを調製する方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3475252号公報。
【特許文献2】特開平6−25307号公報。
【特許文献3】特許第4461252号公報。
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Kihara N.; Hinoue K.; Takata T. Macromolecules 2005, 38, 223-226。
【非特許文献2】Zhang, X.; Zhu, X.; Tong, X.; Ye, Lin.; Zhang A.; Feng, Z. J. Polym. Sci. Polym. Chem. 2008, 46, 5283-5293。
【非特許文献3】Choi H. S.; Lee S. C.; Yamamoto K.; Yui N. Macromolecules 2005, 38, 9878-9881。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば特許文献1〜3に開示される、従来のポリロタキサンの製法は、ポリロタキサンの軸となる直鎖状分子又は主鎖高分子が限定される、という問題がある。直鎖状分子又は主鎖高分子として用いる種類が制限されると、該直鎖状分子又は主鎖高分子が有する特性も制限され、該直鎖状分子又は主鎖高分子が有する特性によりポリロタキサン又は架橋ポリロタキサンなどへの特性を変化させるという応用ができない、という問題へと発展する。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記問題を解決することにある。
具体的には、本発明の目的は、ポリロタキサンの軸となる直鎖状分子又は主鎖高分子の種類が限定されない、ポリロタキサンの新規な製造方法を提供することにある。
また、本発明の目的は、上記目的の他に、又は上記目的に加えて、ポリロタキサンの軸となる直鎖状分子又は主鎖高分子として、新規なものを用いた、新規なポリロタキサンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、次の発明を見出した。
<1> a)両末端に−COOH基を有する直鎖状分子を準備する工程;
b)両末端の−COOH基を、−OH基を有する第1の化合物と反応させて、“−COO−(第1の化合物由来の基)”で表される基を形成する工程;
c)“−COO−(第1の化合物由来の基)”で表される基を両末端に有する直鎖状分子と第1の環状分子とを混合し、第1の環状分子の開口部が直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる擬ポリロタキサンを調製する工程;
d)第1の環状分子と同じであっても異なってもよい第2の環状分子と、擬ポリロタキサンとを、酸触媒又は塩基触媒下で、反応させ、“−COO−(第1の化合物由来の基)”で表される基を−COO−(第2の環状分子由来の基)で表される基へとエステル交換し、第1の環状分子が脱離しないように、直鎖状分子の両端に“−COO−(第2の環状分子由来の基)”で表される基からなる封鎖基を配置して、ポリロタキサンを調製する工程;
を有する、ポリロタキサンの調製方法。
【0009】
<2> 上記<1>において、第1の化合物が、下記式I−1〜I−6からなる群から選ばれるのがよく、好ましくはI−1、I−2又はI−4であるのがよく、より好ましくはI−1であるのがよい。
【0010】
【化1】

【0011】
<3> 上記<1>又は<2>において、−COO−(第1の化合物由来の基)で表される基が、下記式II−1〜II−6からなる群から選ばれるのがよく、好ましくはII−1、II−2又はII−4であるのがよく、より好ましくはII−1であるのがよい。
【0012】
【化2】

【0013】
<4> 上記<1>〜<3>のいずれかにおいて、直鎖状分子が、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、セルロース系樹脂、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミン、ポリエチレンイミン、カゼイン、ゼラチン、でんぷん等及び/またはこれらの共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびその他オレフィン系単量体との共重合樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等;及びこれらの誘導体又は変性体、ポリイソブチレン、ポリテトラヒドロフラン、ポリアニリン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ナイロンなどのポリアミド類、ポリイミド類、ポリイソプレン、ポリブタジエンなどのポリジエン類、ポリジメチルシロキサンなどのポリシロキサン類、ポリスルホン類、ポリイミン類、ポリ無水酢酸類、ポリ尿素類、ポリスルフィド類、ポリフォスファゼン類、ポリケトン類、ポリフェニレン類、ポリハロオレフィン類、ポリアセチレン、ポリチオフェンなどの共役高分子類、ポリ乳酸、並びにこれらの誘導体からなる群から選ばれるのがよい。好ましくは、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレングリコール、ポリオレフィン系樹脂、ポリジエン類、及びポリシロキサン類からなる群から選ばれるのがよく、より好ましくは、ポリエチレングリコール、ポリブタジエン、又はポリジメチルシロキサンであるのがよい。
【0014】
<5> 上記<1>〜<4>のいずれかにおいて、直鎖状分子が、ポリエチレングリコール又はその誘導体であるのがよい。
<6> 上記<1>〜<4>のいずれかにおいて、直鎖状分子が、ポリジエン類からなる群から選ばれるのがよい。
<7> 上記<1>〜<4>のいずれかにおいて、直鎖状分子が、ポリシロキサン類からなる群から選ばれるのがよい。
<8> 上記<1>〜<7>のいずれかにおいて、第1及び/又は第2の環状分子が、置換されていてもよいシクロデキストリン分子であるのがよい。
【0015】
<9> 第1の環状分子、該第1の環状分子を串刺し状に包接する直鎖状分子、及び該直鎖状分子から環状分子が脱離しないように直鎖状分子の両端に配置される封鎖基を有するポリロタキサンであって、直鎖状分子がポリジエン類からなる群から選ばれる、ポリロタキサン。
<10> 上記<9>において、封鎖基が、第1の環状分子と同じであっても異なってもよい第2の環状分子であるのがよい。
【0016】
<11> 上記<9>又は<10>において、第1の環状分子及び/又は第2の環状分子が、シクロデキストリン分子又はその誘導体であるのがよい。
<12> 上記<9>〜<11>のいずれかにおいて、第1の環状分子及び/又は第2の環状分子が、γ−シクロデキストリン又はその誘導体であるのがよい。
【0017】
<13> 上記<1>〜<12>のいずれかにおいて、直鎖状分子は、その分子量が500以上、好ましくは1000以上、より好ましくは2000以上であるのがよい。
<14> 上記<1>〜<13>のいずれかにおいて、第1の環状分子が直鎖状分子により串刺し状に包接される際に第1の環状分子が最大限に包接される量を1とした場合、第1の環状分子が0.01〜0.99、好ましくは0.05〜0.8、より好ましくは0.1〜0.6の量で第1及び/又は第2の直鎖状分子に串刺し状に包接されるのがよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、ポリロタキサンの軸となる直鎖状分子又は主鎖高分子の種類が限定されない、ポリロタキサンの新規な製造方法を提供することができる。
また、本発明により、上記効果の他に、又は上記効果に加えて、ポリロタキサンの軸となる直鎖状分子又は主鎖高分子として、新規なものを用いた、新規なポリロタキサンを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
本願は、ポリロタキサンの新規な調製方法を提供する。
<ポリロタキサンの新規な調製方法>
本方法は、
a)両末端に−COOH基を有する直鎖状分子を準備する工程;
b)両末端の−COOH基を、−OH基を有する第1の化合物と反応させて、“−COO−(第1の化合物由来の基)”で表される基を形成する工程;
c)“−COO−(第1の化合物由来の基)”で表される基を両末端に有する直鎖状分子と第1の環状分子とを混合し、第1の環状分子の開口部が直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる擬ポリロタキサンを調製する工程;
d)第1の環状分子と同じであっても異なってもよい第2の環状分子と、擬ポリロタキサンとを、酸触媒又は塩基触媒下で、反応させ、“−COO−(第1の化合物由来の基)”で表される基を−COO−(第2の環状分子由来の基)で表される基へとエステル交換し、第1の環状分子が脱離しないように、直鎖状分子の両端に“−COO−(第2の環状分子由来の基)”で表される基からなる封鎖基を配置して、ポリロタキサンを調製する工程;
を有することにより、ポリロタキサンを調製する。
【0020】
a)工程は、両末端に−COOH基を有する直鎖状分子を準備する工程である。
この工程は、直鎖状分子が、元来、両末端に−COOH基を有する場合、該直鎖状分子を用いることができる。
また、直鎖状分子が両末端に−COOH基を有しない場合、例えば、特許文献3(該文献の内容はすべて本願に参照として含まれる)に記載されるように、直鎖状分子の両末端をカルボキシル化して、直鎖状分子が両末端に−COOH基を有するようにする工程が、上記a)工程に含まれる。さらに、直鎖状分子を準備して、他の手法により、直鎖状分子の両末端を−COOH基とする工程も、上記a)工程に含まれる。
【0021】
直鎖状分子は、その語にあるように、直鎖状であるのがよく、その分子量が500以上、好ましくは1000以上、より好ましくは2000以上であるのがよい。
【0022】
直鎖状分子は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、セルロース系樹脂、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミン、ポリエチレンイミン、カゼイン、ゼラチン、でんぷん等及び/またはこれらの共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびその他オレフィン系単量体との共重合樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等;及びこれらの誘導体又は変性体、ポリイソブチレン、ポリテトラヒドロフラン、ポリアニリン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ナイロンなどのポリアミド類、ポリイミド類、ポリイソプレン、ポリブタジエンなどのポリジエン類、ポリジメチルシロキサンなどのポリシロキサン類、ポリスルホン類、ポリイミン類、ポリ無水酢酸類、ポリ尿素類、ポリスルフィド類、ポリフォスファゼン類、ポリケトン類、ポリフェニレン類、ポリハロオレフィン類、ポリアセチレン、ポリチオフェンなどの共役高分子類、ポリ乳酸、並びにこれらの誘導体からなる群から選ばれるのがよい。好ましくは、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレングリコール、ポリオレフィン系樹脂、ポリジエン類、及びポリシロキサン類からなる群から選ばれるのがよく、より好ましくは、ポリエチレングリコール、ポリブタジエン、又はポリジメチルシロキサンであるのがよい。
【0023】
第1の態様として、直鎖状分子は、ポリエチレングリコール又はその誘導体であるのがよい。
また、第2の態様として、直鎖状分子は、ポリジエン類からなる群から選ばれるのがよい。
さらに、第3の態様として、直鎖状分子は、ポリシロキサン類からなる群から選ばれるのがよい。
【0024】
b)工程は、両末端の−COOH基を、−OH基を有する第1の化合物と反応させて、“−COO−(第1の化合物由来の基)”で表される基を形成する工程である。
−OH基を有する第1の化合物は、後述するc)工程において、第1の環状分子の開口部が直鎖状分子によって串刺し状に包接されることを阻害しない程度の嵩高さを有するのがよい。例えば、−OH基を有する第1の化合物は、その大きさが、第1の環状分子の開口部よりも小さいものであるのがよい。
【0025】
具体的には、−OH基を有する第1の化合物は、下記式I−1〜I−6からなる群から選ばれるのがよく、好ましくはI−1、I−2又はI−4であるのがよく、より好ましくはI−1であるのがよい。
【0026】
【化3】

【0027】
“−COO−(第1の化合物由来の基)”で表される基とは、両末端の−COOH基と、−OH基を有する第1の化合物の「−OH基」とが反応し、−CO−O−となり、且つそれに(第1の化合物由来の基)が結合していることを意味する。
具体的には、−COO−(第1の化合物由来の基)で表される基は、下記式II−1〜II−6からなる群から選ばれるのがよく、好ましくはII−1、II−2又はII−4であるのがよく、より好ましくはII−1であるのがよい。例えば、−OH基を有する第1の化合物が上記式I−1で表される化合物である場合、下記式II−1で表される基が“−COO−(第1の化合物由来の基)”で表される基に該当する。
【0028】
【化4】

【0029】
b)工程は、用いる第1の化合物、用いる直鎖状分子に依存するが、例えば、窒素やアルゴン等の不活性ガスの雰囲気下で、蒸留等により脱水処理した溶媒を使い、縮合剤存在下で行うのがよい。
ここで、溶媒は、非プロトン性でかつ酸や塩基と反応しないものが好ましく、具体的には、アセトニトリル、アセトン、2−ブタノン、1,4−ジオキサン、ベンゼン、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ピリジンなどで行うのがよく、より好ましくはアセトニトリル、アセトンで行うのがよい。
また、縮合剤は、カルボジイミド系縮合剤が好ましく、具体的には、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩などを用いるのがよい。
【0030】
c)工程は、いわゆる擬ポリロタキサンを調製する工程である。
ここで、擬ポリロタキサンとは、環状分子の開口部が直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる状態の化合物をいう。なお、ポリロタキサンとは、擬ポリロタキサンの両末端が封鎖基で封鎖され、環状分子が直鎖状分子から脱離しないような状態の化合物をいう。
第1の環状分子は、その開口部が直鎖状分子の直径よりも大であるのがよい。例えば、第1の環状分子は、置換されていてもよいシクロデキストリン分子であるのがよく、より具体的には、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリン、並びにこれらの誘導体からなる群から選ばれるのがよい。
【0031】
c)工程は、ある溶媒中において、“−COO−(第1の化合物由来の基)”で表される基を両末端に有する直鎖状分子と第1の環状分子とを混合する工程を有する。
ここで、用いる溶媒は、用いる直鎖状分子、用いる第1の化合物、及び用いる第1の環状分子に依存するが、水、あるいは水と相溶性のある溶媒と水の混合溶媒であるのがよく、その溶媒は具体的にはテトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、1,4−ジオキサン、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ピリジンなどであるのがよい。
また、c)工程は、用いる第1の化合物、用いる直鎖状分子、及び用いる第1の環状分子に依存するが、例えば、第1の環状分子の飽和水溶液に、水との相溶性がある溶媒に溶解した直鎖状分子を添加して、激しく攪拌された条件で行うのがよい。
【0032】
d)工程は、いわゆるポリロタキサンを調製する工程である。
ここで、c)工程で得られた擬ポリロタキサンと、第1の環状分子と同じであっても異なってもよい第2の環状分子とを、酸触媒又は塩基触媒下で、反応させ、いわゆるエステル交換反応を行う。
ここで用いる酸触媒又は塩基触媒は、用いる擬ポリロタキサン、用いる第2の環状分子に依存するが、例えば、エチルジイソプロピルアミン、トリエチルアミン、ジメチルアミノピリジン、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウム-t-ブトキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩酸、リン酸、硫酸などであるのがよい。
また、ここでの反応条件は、用いる擬ポリロタキサン、用いる第2の環状分子、酸触媒又は塩基触媒に依存するが、例えば、直鎖状分子に対しても環状分子に対しても貧溶媒である溶媒中で、第1の環状分子の0.5倍量かより好ましくは3倍量以上の第2の環状分子の存在下で、行うのがよい。ここで、貧溶媒として、例えば、アセトニトリル、アセトン、ヘキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、ベンゼン、トルエンなどを挙げることができる。
【0033】
d)工程は、上記エステル交換反応により、“−COO−(第1の化合物由来の基)”で表される基を“−COO−(第2の環状分子由来の基)”で表される基へとエステル交換される。これにより、第1の環状分子が脱離しないように、直鎖状分子の両端に“−COO−(第2の環状分子由来の基)”で表される基からなる封鎖基が配置される。
したがって、“−COO−(第2の環状分子由来の基)”で表される基が封鎖基として作用するため、(第2の環状分子由来の基)は、第1の環状分子が脱離しない程度の嵩高さを有するのがよい。
【0034】
ここで、第2の環状分子として、置換されていてもよいシクロデキストリン分子であるのがよく、より具体的には、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリン、並びにこれらの誘導体からなる群から選ばれるのがよい。
【0035】
得られるポリロタキサンにおいて、第1の環状分子が直鎖状分子により串刺し状に包接される際に第1の環状分子が最大限に包接される量を1とした場合、第1の環状分子が0.01〜0.99、好ましくは0.1〜0.9、より好ましくは0.2〜0.8の量で第1及び/又は第2の直鎖状分子に串刺し状に包接されるのがよい。
環状分子の包接量が最大値に近い状態であると、直鎖状分子上の環状分子の移動距離が制限される傾向が生じる。移動距離が制限されると、液晶性ポリロタキサンの伸縮の度合いが制限される傾向が生じる。
なお、環状分子の最大包接量は、直鎖状分子の長さと環状分子との厚さにより、決定することができる。例えば、直鎖状分子がポリエチレングリコールであり且つ環状分子がα−シクロデキストリン分子の場合、最大包接量は、実験的に求められている(Macromolecules 1993, 26, 5698-5703を参照のこと。なお、この文献の内容はすべて本明細書に参照として含まれる)。
【0036】
<新規ポリロタキサン>
本願は、特に、直鎖状分子がポリジエン類からなる群から選ばれる、ポリロタキサンを提供する。
具体的には、本願は、第1の環状分子、該第1の環状分子を串刺し状に包接する直鎖状分子、及び該直鎖状分子から環状分子が脱離しないように直鎖状分子の両端に配置される封鎖基を有するポリロタキサンであって、直鎖状分子がポリジエン類からなる群から選ばれる、ポリロタキサンを提供する。
従来、実現しているポリロタキサンは、直鎖状分子が、ポリエチレングリコール(特許文献1など)の場合、ポリジメチルシロキサン(WO2008/155953公報)の場合、ポリテトラヒドロフラン(非特許文献1など)の場合、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体(非特許文献2など)の場合、ポリエチレングリコールとポリエチレンイミンの共重合体(非特許文献3など)の場合などに限られており、それ以外の直鎖状分子を用いるポリロタキサンの実現化が求められていた。本願は、そのニーズに応えるものである。
【0037】
直鎖状分子がポリジエン類であること以外、従来のポリロタキサンとその構成要素は同じである。
具体的には、直鎖状分子は、ポリジエン類であり、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレンなどを挙げることができるが、これらに限定されない。
直鎖状分子は、その語にあるように、直鎖状であるのがよく、その分子量が500以上、好ましくは1000以上、より好ましくは2000以上であるのがよい。
【0038】
封鎖基は、第1の環状分子が直鎖状分子から脱離しない程度の嵩高さを有するものであれば、特に限定されない。
例えば、封鎖基として、ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類、ピレン類、置換ベンゼン類(置換基として、アルキル、アルキルオキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、スルホニル、カルボキシル、アミノ、フェニルなどを挙げることができるがこれらに限定されない。置換基は1つ又は複数存在してもよい。)、置換されていてもよい多核芳香族類(置換基として、上記と同じものを挙げることができるがこれらに限定されない。置換基は1つ又は複数存在してもよい。)、及びステロイド類からなる群から選ばれるのがよい。なお、ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類、及びピレン類からなる群から選ばれるのが好ましく、より好ましくはシクロデキストリン類であるのがよい。
【0039】
封鎖基は、ある面において、第1の環状分子と同じであっても異なってもよい第2の環状分子であるのがよい。
【0040】
第1の環状分子は、上述と同定義である。第1の環状分子は、シクロデキストリン分子又はその誘導体であるのがよく、例えば、第1の環状分子は、置換されていてもよいシクロデキストリン分子であるのがよく、より具体的には、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリン、並びにこれらの誘導体からなる群から選ばれるのがよい。
第2の環状分子も、第1の環状分子と同様に、シクロデキストリン分子又はその誘導体であるのがよく、例えば、第1の環状分子は、置換されていてもよいシクロデキストリン分子であるのがよく、より具体的には、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリン、並びにこれらの誘導体からなる群から選ばれるのがよい。
【0041】
なお、第1の環状分子の包接量は、上述したように、第1の環状分子が直鎖状分子により串刺し状に包接される際に第1の環状分子が最大限に包接される量を1とした場合、第1の環状分子が0.01〜0.99、好ましくは0.1〜0.9、より好ましくは0.2〜0.8の量で第1及び/又は第2の直鎖状分子に串刺し状に包接されるのがよい。
【0042】
特に、直鎖状分子がポリブタジエンであり、第1の環状分子がγ−シクロデキストリンであり、封鎖基がγ−シクロデキストリンであるのがよい。
【0043】
本願の、直鎖状分子がポリジエン類からなる群から選ばれる、ポリロタキサンは、直鎖状分子が不飽和炭化水素であり、様々な官能基を付加反応等で導入可能であることから、環状分子の運動性を制御した材料や、材料表面の改質処理が可能な材料などへの応用が考えられる。
以下、実施例に基づいて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0044】
<両末端ニトロフェニルエステル化ポリブタジエン2aの調製と同定>
100mlナスフラスコに両末端カルボン酸化ポリブタジエン1a 5.0gを取り、そこへp−ニトロフェノール1.91gとシシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)2.83gを脱水ジクロロメタン25mLに溶解したものを加え、アルゴン雰囲気下、室温で40時間攪拌した。その後、ろ過により沈殿物を取り除き、ろ液をメタノール300mLに滴下することによって、生成物を沈殿させた。得られた沈殿を、もう一度ジクロロメタン30mLに溶解し、メタノール300mLで再沈殿することにより、さらに精製を行った。このようにして得られた沈殿を真空乾燥することで、無色透明の粘稠な液体として両末端ニトロフェニルエステル化ポリブタジエン2a 5.0gを得た。
2aはIRスペクトル及びH-NMRより同定を行った。
IRスペクトルでは、p−ニトロフェニルエステルのカルボニル伸縮振動に由来する1770cm−1のシグナルが観測され、H−NMRスペクトル(重クロロホルム中)からは8.29ppmと7.28ppmのフェニル基由来のシグナルに加えて、カルボニルのαメチレンに由来する2.84ppmのシグナルが観測された。また、IRスペクトルでもH−NMRスペクトルでも、未反応のカルボン酸に由来するシグナルが見られなかったことから、ポリマーの両末端がほぼ定量的にニトロフェニルエステル化されていることがわかった。
【0045】
<擬ポリロタキサン3aの調製>
500mLナスフラスコにγ―CD 40gを取り、イオン交換水230mLを加えて溶解させた。別の100mLフラスコに上記で得られた両末端ニトロフェニルエステル化ポリブタジエン2aを1.93g量り取り、THF23mLに溶解させた。この溶液を上述のγ―CD水溶液に、超音波をかけながら加え、超音波をかけてさらに一時間攪拌し、続いて攪拌子を入れて4日間室温で攪拌し、白色懸濁液を得た。得られた懸濁液を液体窒素凍結させた後、2日間凍結乾燥を行い、擬ポリロタキサン3aを得た。
【0046】
<ポリロタキサン4aの調製と同定>
アルゴン雰囲気下で、300mlナスフラスコにエチルジイソプロピルアミン(以下、単に「EDIPA」と略記する)1mLを入れ、さらに脱水処理したアセトニトリル200mLを加え、EDIPAを溶解させた。この溶液を上述の擬ポリロタキサン3aの入ったナスフラスコに一気に加え、室温(25℃)で4日間攪拌した。なお、擬ポリロタキサンは、上記アセトニトリル溶媒には溶解せず、反応は不均一系で行われた。反応後、不均一系反応液を遠心分離することで上澄み液を取り除き、そこへDMSO200mLを加えほぼ透明な溶液を得た。この溶液を、高速回転させたジクロロメタン1500mLへ滴下し、淡黄色懸濁液を得た。この沈殿物を含む懸濁液を遠心分離によって固体を沈殿させ上澄みは廃棄した。得られた沈澱を再びジクロロメタン1000mlを加えて攪拌することによって懸濁液を得て、再び遠心分離によって沈殿を得た。沈殿は真空ポンプで減圧乾燥させた。乾燥させて得られた固体をDMSO150mLに溶解し、高速回転させた精製水1500mLへ滴下し、淡黄色懸濁液を得た。この沈殿物を含む懸濁液を遠心分離によって固体を沈殿させ上澄みは廃棄した。得られた沈澱を再び精製水1000mlを加えて攪拌することによって懸濁液を得て、再び遠心分離によって沈殿を得た。得られた沈澱(水を含んでいる)を液体窒素凍結させた後、2日間凍結乾燥を行い、最終生成物であるポリロタキサン4aを得た(収量:3.05g)。
ポリロタキサン4aは重DMSOに溶解し、H−NMRを測定したところ、ポリロタキサン4aを構成するγ−CDの充填率は0.2であることがわかった(最密充填時を1とした場合)。
【0047】
<ポリロタキサン4aのアセチル化と同定>
50mLナスフラスコに上述のポリロタキサン4aを100mg取り、DMF(8wt%の塩化リチウムを含ませてある)2mLに溶解させた。そこへさらにN,N−ジメチル−4−アミノピリジン(以下、単に「DMAP」と略記する)8mgを加えて溶解させた。続いて、ピリジン0.90mLを加え、さらに無水酢酸1.0mLを溶液に滴下し、室温で一晩攪拌した。得られた反応溶液を、高速回転させた精製水50mLへ滴下し、白色懸濁液を得た。この沈殿物を含む懸濁液を遠心分離によって固体を沈殿させ上澄みは廃棄した。得られた沈澱を再び精製水50mlを加えて攪拌することによって懸濁液を得て、再び遠心分離によって沈殿を得た。得られた沈澱(水を含んでいる)を液体窒素凍結させた後、2日間凍結乾燥を行い、最終生成物であるポリロタキサン4aのアセチル化物を得た(収量:90mg)。
ポリロタキサン4aはクロロホルムに溶解し、GPCを測定したところ、両末端カルボン酸化ポリブタジエン1aの三倍程度に高分子量化したことから、擬ポリロタキサンの直鎖状分子(ポリブタジエン)の両末端が封鎖された化合物が生成されたこと、を確認した。
【実施例2】
【0048】
<両末端ニトロフェニルエステル化ポリジメチルシロキサン2bの調製と同定>
100mlナスフラスコに両末端カルボン酸化ポリジメチルシロキサン1b 3.14gを取り、そこへp−ニトロフェノール400mgとDCC620mgを脱水ジクロロメタン12mLに溶解したものを加え、アルゴン雰囲気下で一晩攪拌した。その後、得られた反応液をメタノールに滴下することによって、生成物を沈殿させた。得られた沈殿はもう一度、ジクロロメタン15mLに溶解し、メタノール200mLで再沈殿することにより、さらに精製を行った。このようにして得られた沈殿を真空乾燥することで、無色透明の粘稠な液体として両末端ニトロフェニルエステル化ポリジメチルシロキサン2bを3.01g得た。
2bは、IRスペクトル及びH-NMRより同定を行った。IRスペクトルでは、p−ニトロフェニルエステルのカルボニル伸縮振動に由来する1774cm−1のシグナルが観測され、H−NMRスペクトル(重クロロホルム中)からは8.27ppmと7.27ppmのフェニル基由来のシグナルに加えて、カルボニルのαメチレンに由来する2.63ppmのシグナルが観測された。また、IRスペクトルでもH−NMRスペクトルでも、未反応のカルボン酸に由来するシグナルが見られなかったことから、ポリマーの両末端がほぼ定量的にニトロフェニルエステル化されていることがわかった。
【0049】
<擬ポリロタキサン3bの調製>
100mLナスフラスコにγ―CD4.3gを取り、イオン交換水25mLを加えて溶解させた。別の100mLフラスコに2bを500mg量り取り、THF2mLに溶解させた。この溶液を上述のγ―CD水溶液に、攪拌しながら加え、そのまま4日間室温で攪拌し、白色懸濁液を得た。得られた懸濁液を液体窒素凍結させた後、2日間凍結乾燥を行い、擬ポリロタキサン3bを得た。
【0050】
<ポリロタキサン4bの調製と同定>
アルゴン雰囲気下で、50mlナスフラスコにEDIPA0.02mLを入れ、さらに脱水処理したアセトニトリル2.5mLを加え、EDIPAを溶解させた。別の100mLナスフラスコに擬ポリロタキサン3bを1.00g量り取り、上述のEDIPA溶液を一気に加え、室温(25℃)で4日間攪拌した。なお、擬ポリロタキサンは、上記アセトニトリル溶媒には溶解せず、反応は不均一系で行われた。反応後、不均一系反応液を遠心分離することで上澄み液を取り除き、そこへDMF(8wt%の塩化リチウムを含ませてある)5mLを加えほぼ透明な溶液を得た。この溶液を、高速回転させたジクロロメタン50mLへ滴下し、淡黄色懸濁液を得た。この沈殿物を含む懸濁液を遠心分離によって固体を沈殿させ上澄みは廃棄した。得られた沈澱を再びジクロロメタン50mLを加えて攪拌することによって懸濁液を得て、再び遠心分離によって沈殿を得た。沈殿は真空ポンプで減圧乾燥させた。乾燥させて得られた固体をDMF12mLに溶解し、高速回転させた精製水100mLへ滴下し、白色懸濁液を得た。この沈殿物を含む懸濁液を遠心分離によって固体を沈殿させ上澄みは廃棄した。得られた沈澱を再び精製水100mlを加えて攪拌することによって懸濁液を得て、再び遠心分離によって沈殿を得た。得られた沈澱(水を含んでいる)を液体窒素凍結させた後、2日間凍結乾燥を行い、最終生成物であるポリロタキサン4bを得た(収量:156mg)。
ポリロタキサン4bは、重DMF(8wt%の塩化リチウムを含ませてある)に溶解し、H−NMRを測定したところ、ポリロタキサン4bを構成するγ−CDの充填率は0.1であることがわかった(最密充填時を1とした場合)。
【0051】
<ポリロタキサン4bのアセチル化と同定>
50mLナスフラスコに上述のポリロタキサン4bを40mg取り、DMF(8wt%の塩化リチウムを含ませてある)1mLに溶解させた。そこへさらにDMAP3mgを加えて溶解させた。続いて、ピリジン0.34mLを加え、さらに無水酢酸0.35mLを溶液に滴下し、室温で一晩攪拌した。得られた反応溶液を、高速回転させた精製水50mLへ滴下し、白色懸濁液を得た。この沈殿物を含む懸濁液を遠心分離によって固体を沈殿させ上澄みは廃棄した。得られた沈澱を再び精製水50mlを加えて攪拌することによって懸濁液を得て、再び遠心分離によって沈殿を得た。得られた沈澱(水を含んでいる)を液体窒素凍結させた後、2日間凍結乾燥を行い、最終生成物であるポリロタキサン4bのアセチル化物を得た(収量:27mg)。
ポリロタキサン4bは、クロロホルムに溶解し、GPCを測定したところ、両末端カルボン酸化ポリジメチルシロキサン1bの三倍程度に高分子量化したことから、擬ポリロタキサンの直鎖状分子(ポリジメチルシロキサン)の両末端が封鎖された化合物が生成されたこと、を確認した。
【実施例3】
【0052】
<擬ポリロタキサン3cの調製>
100mLナスフラスコにα―CD3.3gを取り、イオン交換水20mLを加えて溶解させた。別の100mLフラスコに2cを300mg量り取り、イオン交換水5mLに溶解させた。この水溶液を上述のα―CD水溶液に一気に加え、攪拌子を入れて一分間攪拌し、その後室温で48時間静置することで、白濁したゲルを得た。得られたゲルを液体窒素凍結させた後、2日間凍結乾燥を行い、擬ポリロタキサン3cを得た。
【0053】
<ポリロタキサン4cの調製と同定>
アルゴン雰囲気下で、100mlナスフラスコにエチルジイソプロピルアミン(以下、単に「EDIPA」と略記する)0.15mLを入れ、さらに脱水処理したアセトニトリル25mLを加え、EDIPAを溶解させた。この溶液を上述の擬ポリロタキサン3cの入ったナスフラスコに一気に加え、室温(25℃)で5日間攪拌した。なお、擬ポリロタキサンは、上記アセトニトリル溶媒には溶解せず、反応は不均一系で行われた。反応後、不均一系反応液を遠心分離することで上澄み液を取り除き、そこへDMSO25mLを加えほぼ透明な溶液を得た。この溶液を、高速回転させたジクロロメタン500mLへ滴下し、淡黄色懸濁液を得た。この沈殿物を含む懸濁液を遠心分離によって固体を沈殿させ上澄みは廃棄した。得られた沈澱を再びジクロロメタン500mlを加えて攪拌することによって懸濁液を得て、再び遠心分離によって沈殿を得た。沈殿は真空ポンプで減圧乾燥させた。乾燥させて得られた固体をDMSO25mLに溶解し、高速回転させた精製水500mLへ滴下し、淡黄色懸濁液を得た。この沈殿物を含む懸濁液を遠心分離によって固体を沈殿させ上澄みは廃棄した。得られた沈澱を再び精製水100mlを加えて攪拌することによって懸濁液を得て、再び遠心分離によって沈殿を得た。得られた沈澱(水を含んでいる)を液体窒素凍結させた後、2日間凍結乾燥を行い、最終生成物であるポリロタキサン4cを得た(収量:660mg)。
ポリロタキサン4cは、重DMSOに溶解し、H−NMRを測定したところ、ポリロタキサン4cを構成するα−CDの充填率は0.3であることがわかった(最密充填時を1とした場合)。また、ポリロタキサン4cはDMSOに溶解し、GPCを測定したところ、両末端ニトロフェニル化PEG2cの四倍程度に高分子量化したことから、擬ポリロタキサンの直鎖状分子(PEG)の両末端が封鎖された化合物が生成されたこと、を確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)両末端に−COOH基を有する直鎖状分子を準備する工程;
b)前記両末端の前記−COOH基を、−OH基を有する第1の化合物と反応させて、−COO−(第1の化合物由来の基)で表される基を形成する工程;
c)前記−COO−(第1の化合物由来の基)で表される基を両末端に有する直鎖状分子と第1の環状分子とを混合し、前記第1の環状分子の開口部が前記直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる擬ポリロタキサンを調製する工程;
d)前記第1の環状分子と同じであっても異なってもよい第2の環状分子と、前記擬ポリロタキサンとを、酸触媒又は塩基触媒下で、反応させ、前記−COO−(第1の化合物由来の基)で表される基を−COO−(第2の環状分子由来の基)で表される基へとエステル交換し、前記第1の環状分子が脱離しないように、前記直鎖状分子の両端に前記−COO−(第2の環状分子由来の基)で表される基からなる封鎖基を配置して、ポリロタキサンを調製する工程;
を有する、ポリロタキサンの調製方法。
【請求項2】
前記第1の化合物が、下記式I−1〜I−6からなる群から選ばれる請求項1記載の方法。
【化1】

【請求項3】
−COO−(第1の化合物由来の基)で表される基が、下記式II−1〜II−6からなる群から選ばれる請求項1又は2記載の方法。
【化2】

【請求項4】
前記直鎖状分子が、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、セルロース系樹脂、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミン、ポリエチレンイミン、カゼイン、ゼラチン、でんぷん等及び/またはこれらの共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびその他オレフィン系単量体との共重合樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等;及びこれらの誘導体又は変性体、ポリイソブチレン、ポリテトラヒドロフラン、ポリアニリン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ナイロンなどのポリアミド類、ポリイミド類、ポリイソプレン、ポリブタジエンなどのポリジエン類、ポリジメチルシロキサンなどのポリシロキサン類、ポリスルホン類、ポリイミン類、ポリ無水酢酸類、ポリ尿素類、ポリスルフィド類、ポリフォスファゼン類、ポリケトン類、ポリフェニレン類、ポリハロオレフィン類、ポリアセチレン、ポリチオフェンなどの共役高分子類、ポリ乳酸、並びにこれらの誘導体からなる群から選ばれる請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記直鎖状分子が、ポリエチレングリコール又はその誘導体である請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記直鎖状分子が、ポリジエン類からなる群から選ばれる請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記直鎖状分子が、ポリシロキサン類からなる群から選ばれる請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記第1及び/又は第2の環状分子が、置換されていてもよいシクロデキストリン分子である請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
第1の環状分子、該第1の環状分子を串刺し状に包接する直鎖状分子、及び該直鎖状分子から前記環状分子が脱離しないように直鎖状分子の両端に配置される封鎖基を有するポリロタキサンであって、前記直鎖状分子がポリジエン類からなる群から選ばれる、ポリロタキサン。
【請求項10】
前記封鎖基が、前記第1の環状分子と同じであっても異なってもよい第2の環状分子である請求項9記載のポリロタキサン。
【請求項11】
前記第1の環状分子及び/又は前記第2の環状分子が、シクロデキストリン分子又はその誘導体である請求項9又は10記載のポリロタキサン。
【請求項12】
前記第1の環状分子及び/又は前記第2の環状分子が、γ−シクロデキストリン又はその誘導体である請求項9〜11のいずれか1項記載のポリロタキサン。