説明

光ケーブル接続箱

【課題】光ケーブル導入方向の自由度を高める。導入方向の変更を可能にする。光ケーブルの配列の変更を可能する。接続箱外のケーブル必要長の変化に対応できるようにする。
【解決手段】 下側ケース10と、この下側ケースにヒンジ結合されて積層された上側ケース12とを備える。下側ケース10には、周辺の複数箇所に異なる方向から光ケーブル14A、14Bを導入できるように複数組のケーブル把持部22を設け、導入された光ケーブルを外被を剥がずに同じ方向に周回させて収容するケーブル収容部28を設ける。上側ケース12は、下層トレイ12Aとこの下層トレイに積層された上層トレイ12Bとで構成する。下層トレイ12Aに、下側ケース10から上がってきた光ケーブルを引入れるケーブル引入れ部30を設ける。上層トレイ12Bに、下層トレイから上がってきた光ファイバ心線とその接続部を収容する心線収容部を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ心線数の少ない光ケーブルの接続に用いられる光ケーブル接続箱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
屋外から建物の内部又は外壁に引き込まれた比較的光ファイバ心線数の少ない(例えば2心、4心、8心程度の)光ケーブルと、屋内に個別に配線される光ケーブルとの接続に用いられる光ケーブル接続箱は、設置スペース、配線スペースの制約などから、できるだけ小型で、光ケーブルの導入方向の自由度が大きく、導入方向の変更も可能なものであることが望ましい。また光ケーブル接続箱が建物の外壁に取り付けられる場合は、外壁を伝って流下する雨水の影響を受けにくくすることが望ましい。
【0003】
従来の光ケーブル接続箱は、周辺に接続すべき光ケーブルの導入部を設け、この導入部から導入した光ケーブルの外被を剥いで光ファイバ心線を露出させ、露出させた光ファイバ心線とその接続部を収容する心線収容部を設けたものが一般的である(特許文献1、2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平11−202147号公報
【特許文献2】特開平9−105822号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし従来の光ケーブル接続箱は、箱内に導入した光ケーブルの、導入部から先の外被を剥ぎ取り、光ファイバ心線を裸の状態で収容する構造であるため、接続箱に少しでも雨水が入り込むと、光ファイバ心線が水と接触し、悪影響を受けやすい。またこの種の光ケーブル接続箱を完全な防水構造にすることはコスト高となり、実用的ではない。
【0006】
また従来の光ケーブル接続箱は、光ケーブルの導入方向が限られているため、光ケーブル接続箱の周囲のスペースが十分でない場合には、光ケーブルの導入が困難になることがある。また光ケーブル接続箱の周囲の状況が変化した場合に、光ケーブルの導入方向を変更することができない。また接続箱に導入した光ケーブルは、導入部から先の外被を剥いで光ファイバ心線を露出させてしまうため、光ケーブルの増設などの際に光ケーブルの配列などを変更することができず、不便である。さらに光ケーブル配線ルートの変更などにより接続箱外のケーブル必要長が変化した場合に、それに対応することができない。
【0007】
本発明の目的は、上記のような課題を解決した光ケーブル接続箱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る光ケーブル接続箱は、下側ケースと、この下側ケースにヒンジ結合されて積層された上側ケースと、前記下側ケース及び上側ケースに被せられる防水カバーとを備え、
前記下側ケースは、当該ケースの周辺の、外被内にテンションメンバーを有する光ケーブルを導入する部分に設けられたケーブル把持部と、導入された光ケーブルを外被を剥がずにそのまま周回させて収容するケーブル収容部とを有しており、
前記上側ケースは、当該ケースの周辺に設けられた、下側ケースから上がってきた光ケーブルを引き入れるケーブル引入れ部と、引き入れられた光ケーブルの外被を剥いで露出させた光ファイバ心線とその接続部を収容する心線収容部とを有している、
ことを特徴とするものである(請求項1)。
【0009】
本発明に係る光ケーブル接続箱は、下側ケースの周辺に、異なる方向から光ケーブルを導入できるようにケーブル把持部が複数箇所に設けられていることが好ましい(請求項2)。
【0010】
また本発明に係る光ケーブル接続箱は、
下側ケースのケーブル収容部が、導入された光ケーブルを全て同じ方向に周回させて収容するように形成されており、
上側ケースが、下側ケースにヒンジ結合されて積層された下層トレイと、この下層トレイにヒンジ結合されて積層された上層トレイとからなり、
前記下層トレイに、下側ケースから上がってきた光ケーブルを引入れるケーブル引入れ部と、引入れられた光ケーブルの外被を剥いで露出させた光ファイバ心線のうち互いに接続すべき一方の光ファイバ心線を他方の光ファイバ心線と周回方向が反対になるように案内する周回方向変換部とが設けられ、
前記上層トレイに、下層トレイから上がってきた光ファイバ心線とその接続部を収容する心線収容部が設けられている、
ことが好ましい(請求項3)。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、下側ケースに外被を剥がない光ケーブルを収容し、その光ケーブルを上側ケースに引き入れ、上側ケースに外被を剥いだ光ファイバ心線を収容するようになっているため、下側ケースに水が入り込むことがあっても、上側ケースに収容されている光ファイバ心線が水と接触するおそれは少ない。このため簡単な防水カバーを被せる程度で建物の外壁などに設置することができる。
【0012】
また、光ケーブルを外被を剥がずに下側ケースに収容するようになっているので、光ケーブルを増設するとき等に、すでに導入されている光ケーブルをいったん外に出して、光ケーブルの配列を整理し直したり、導入方向を変更したりすることができる。
【0013】
また、光ケーブルを外被を剥がずに適当な長さ周回させて下側ケースに収容するようになっているので、光ケーブル配線ルートの変更などにより、接続箱外のケーブル必要長が変化したときなどは、下側ケースに収容されている光ケーブルを引き出したり、余分な光ケーブルを下側ケースに収容したりすることで、対応することが可能となる。
【0014】
また、下側ケースに光ケーブルを外被を剥がずに周回させて収容するようになっているので、ケーブル把持部を下側ケースの周辺の任意の位置に設けることができ、ケーブル導入方向の自由度が増す。
【0015】
また請求項2の発明によれば、下側ケースの周辺に、異なる方向から光ケーブルを導入できるようにケーブル把持部を複数箇所に設けたので、周囲の状況に応じて光ケーブルの導入方向を選択することができる。したがって、光ケーブル導入方向の自由度が高く、設置スペースの狭い所でも使用可能である。
【0016】
また請求項3の発明によれば、上側ケースを下層トレイと上層トレイに分け、下層トレイで光ケーブルの外被を剥いで光ファイバ心線を露出させると共に、接続すべき光ファイバ心線の周回方向が反対になるように周回方向を変換し、上層トレイに下層トレイから上がってきた光ファイバ心線とその接続部を収容するようにしたので、光ファイバ心線の本数が多くなっても、光ファイバ心線を整然と収容することができ、接続された光ファイバ心線の収容作業あるいはその後の保守点検作業を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1ないし図5は本発明の一実施形態を示す。この光ケーブル接続箱は、図1に示すように、下側ケース10と、その上に積層された上側ケース12とから構成されている。下側ケース10は接続すべき光ケーブル14A、14Bを外被を剥がずにそのまま収容するケースであり、上側ケース12は光ケーブル14A、14Bの外被を剥いで露出させた光ファイバ心線16と、その接続部18を収容するケースである。この実施形態では、上側ケース12は、1枚の下層トレイ12Aと、その上に積層された複数枚(図示の例では4枚)の上層トレイ12Bとから構成されている。
【0018】
下側ケース10と、上側ケース12側の下層トレイ12Aとは、図4に示すように、一辺でヒンジ部20により結合されており、これにより上側ケース12全体が、図1及び図2のように、下側ケース10上で開閉可能となっている。同様に、下層トレイ12Aと最下層の上層トレイ12Bも上記と同じ辺でヒンジ結合され、これにより複数枚の上層トレイ12B全体が、図1及び図3のように、下層トレイ12A上で開閉可能となっている。さらに最下層以外の上層トレイ12Bは、その下の上層トレイ12Bと上記と同じ辺でヒンジ結合され、個別に開閉可能となっている。
【0019】
下側ケース10は四角形で、図2に示すように、ヒンジ部20が設けられた辺を除く3辺に、下側ケース10に導入される光ケーブル14A、14Bを把持するケーブル把持溝22が形成されている。したがって下側ケース10には3方向のうちの任意の方向から互いに接続すべき光ケーブル14A、14Bを導入することが可能である。ケーブル把持溝22は、光ケーブル14A、14Bを押し込むだけで通常の外力では引き抜けなくなる程度の把持力を発生するように、溝幅、蛇行幅などが設定されている。なお、光ケーブル14A、14Bは、光ファイバ心線の両側にテンションメンバーを配置し、一括被覆を施したもので、外被の形状は偏平である。
【0020】
また下側ケース10の底板の中央部にはケーブルガイド突起24が形成されており、このガイド突起24と周壁26の間がケーブル収容部28となっている。ケーブル把持溝22から下側ケース10に導入された光ケーブル14A、14Bは、ガイド突起24のまわりに外被を剥がずに一方向に周回するように収容される。各辺のケーブル把持溝22は、導入された光ケーブルが全て同じ方向に周回できるように、その位置及び方向が設定されている。
【0021】
なおケーブル把持溝22は、使用前は、外端が薄壁で塞がれており、光ケーブル14A、14Bを導入するときは、この薄壁を切除して導入するようになっている。上記のような薄壁を設けておくと、下側ケース10内に塵埃や水が入りにくくなる。
【0022】
次に、上側ケース12の下層トレイ12Aは、図3及び図5に示すように、周辺の1箇所(ヒンジ部20を設けた辺と反対側の辺)に、下側ケース10から上がってきた光ケーブル14A、14Bを引入れるケーブル引入れ部30が設けられている。ケーブル引入れ部30は多数の光ケーブル14A、14Bを整列させた状態で引入れられるように形成されている。またケーブル引入れ部30には弾性片などで光ケーブルを軽く把持する程度の把持力をもたせてある。
【0023】
下層トレイ12Aに引入れられた光ケーブル14A、14Bは、外被を剥いで光ファイバ心線16を露出させる。下層トレイ12Aには底板のほぼ中央部に二つの心線ガイド突起32が形成されている。この二つのガイド突起32は、外被を剥いで露出させた光ファイバ心線16のうち、互いに接続すべき一方の光ファイバ心線をS字状に案内して、他方の光ファイバ心線と周回方向が反対になるように(突き合わせ接続ができる状態に)するためのものである。
【0024】
なお図5の例は、下層トレイ12Aに、光ファイバ心線16の分割部34を収容したものである。例えば一方の光ケーブル14Aが4心のテープ心線16Aを有し、これと接続すべき他方の光ケーブル14Bが2心のテープ心線16Bを有するものである場合、4心のテープ心線16Aを分割部34で2心ずつに分割して、相手方の2心テープ心線16Bと接続できるようにしたものである。図5の例では4心のテープ心線16Aを8の字状に案内して、周回方向を変換している。
【0025】
下層トレイ12Aで周回方向を反対向きにされた互いに接続すべき光ファイバ心線16は、1心ずつ(又は扱いやすい複数少心ずつ)上層トレイ12Bに導入される。上層トレイ12Bは、図1に示すように、底板の中央部に心線ガイド突起36が設けられ、そのまわりが心線収容部38となっている。下層トレイ12Aから上層トレイ12Bに上がってきた光ファイバ心線16は適当な余長をもたせて相手方と接続され、その接続部18と心線余長は心線収容部38に収容される。
【0026】
なお、40は下側ケース10の上面に設けられた穴、42は下層トレイ12Aの下面に設けられた突起、44は下層トレイ12Aの上面に設けられたつまみである。下層トレイ12Aはつまみ44をつまんで開閉される。下層トレイ12Aを閉じると突起42と穴40がややきつめに嵌合して、つまみ44を引張らない限り下層トレイ12Aが開かないようになる。
【0027】
以上のように構成された光ケーブル接続箱は、屋内に設置するときは、例えば配電盤の空きスペースなどに、そのまま設置することができる。また建物の外壁などに設置する場合は、図6のように設置すればよい。すなわち、上記のように構成された光ケーブル接続箱50を建物の外壁52に取り付け、着脱可能な防水カバー54を被せればよい。このようにすれば、光ケーブル接続箱50に直接雨水が当たることはなく、また外壁52を伝わって流下する雨水が接続箱50に入り込むことがあっても、接続箱50内は下側ケース10と上側ケース12の二重床構造になっているため、水をきらう光ファイバ心線が収容された上側ケースには水が入りにくく、光ファイバ心線が悪影響を受けるおそれは少ない。なお、この場合は、光ケーブル14A、14Bは下側ケース10の下辺に設けられたケーブル把持部から導入することになる。
【0028】
以上の実施形態では、上側ケースが1枚の下層トレイと複数枚の上層トレイとからなる場合を説明したが、光ケーブルの本数が少ない場合には、上側ケースを、下層トレイと同様な構造で心線接続部を収容可能な1枚又は複数枚のトレイで構成することもできる。
【0029】
また以上の実施形態では、下側ケースに導入された光ケーブルを全て同じ方向に周回させる場合を示したが、下側ケースは接続すべき光ケーブルを互いに反対方向に周回させて収容する構造にしてもよい。このようにすると、上側ケースで光ファイバ心線をS字状に案内して周回方向を変換する必要がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る光ケーブル接続箱の一実施形態を示す斜視図。
【図2】図1の光ケーブル接続箱の、上側ケース全体を開いた状態を示す斜視図。
【図3】図1の光ケーブル接続箱の、上層トレイ全体を開いた状態を示す斜視図。
【図4】図1の光ケーブル接続箱の、下側ケースと上側ケースの結合状態を示す斜視図。
【図5】図1の光ケーブル接続箱の、下層トレイの一例を示す平面図。
【図6】本発明に係る光ケーブル接続箱を建物の外壁に取り付けた状態を示す説明図。
【符号の説明】
【0031】
10:下側ケース
12:上側ケース
12A:下層トレイ
12B:上層トレイ
14A、14B:光ケーブル
16:光ファイバ心線
18:心線接続部
20:ヒンジ部
22:ケーブル把持溝
28:ケーブル収容部
30:ケーブル引入れ部
38:心線収容部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下側ケース(10)と、この下側ケースにヒンジ結合されて積層された上側ケース(12)と、前記下側ケース(10)及び上側ケース(12)に被せられる防水カバー(54)とを備え、
前記下側ケース(10)は、当該ケースの周辺の、外被内にテンションメンバーを有する光ケーブル(14A、14B)を導入する部分に設けられたケーブル把持部(22)と、導入された光ケーブルを外被を剥がずにそのまま周回させて収容するケーブル収容部(28)とを有しており、
前記上側ケース(12)は、当該ケースの周辺に設けられた、下側ケース(10)から上がってきた光ケーブルを引き入れるケーブル引入れ部(30)と、引き入れられた光ケーブルの外被を剥いで露出させた光ファイバ心線(16)とその接続部(18)を収容する心線収容部(38)とを有している、
ことを特徴とする光ケーブル接続箱。
【請求項2】
請求項1記載の光ケーブル接続箱であって、下側ケース(10)の周辺に、異なる方向から光ケーブルを導入できるようにケーブル把持部(22)が複数箇所に設けられていることを特徴とする光ケーブル接続箱。
【請求項3】
請求項1又は2記載の光ケーブル接続箱であって、
下側ケース(10)のケーブル収容部が、導入された光ケーブル(14A、14B)を全て同じ方向に周回させて収容するように形成されており、
上側ケース(12)が、下側ケース(10)にヒンジ結合されて積層された下層トレイ(12A)と、この下層トレイにヒンジ結合されて積層された上層トレイ(12B)とからなり、
前記下層トレイ(12A)に、下側ケース(10)から上がってきた光ケーブルを引入れるケーブル引入れ部(30)と、引入れられた光ケーブルの外被を剥いで露出させた光ファイバ心線のうち互いに接続すべき一方の光ファイバ心線を他方の光ファイバ心線と周回方向が反対になるように案内する周回方向変換部(32)とが設けられ、
前記上層トレイ(12B)に、下層トレイ(12A)から上がってきた光ファイバ心線(16)とその接続部(18)を収容する心線収容部(38)が設けられている、
ことを特徴とする光ケーブル接続箱。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−195498(P2006−195498A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−117485(P2006−117485)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【分割の表示】特願2002−73393(P2002−73393)の分割
【原出願日】平成14年3月18日(2002.3.18)
【出願人】(591199590)株式会社正電社 (34)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】