説明

受電設備

【課題】第3高調波等のノイズの発生を抑制することが可能であり、軽量で省スペース型電源変圧器を使用することのできる三相受電設備を提供する。
【解決手段】少なくとも2次巻線をデルタ結線した三相変圧器13と、鉄心に巻回した第1の巻線および第2の巻線を有し、前記第1の巻線と第2の巻線とをそれらから発生する磁束の方向が一致するように直列接続してなる複数のバランサBL1,BL2,BL3を備え、前記バランサを前記三相変圧器の2次側の各相の出力端子間にそれぞれ接続すると共に前記三相変圧器の2次側の各相に接続される三相負荷、および前記バランサの第1の巻線および第2の巻線の少なくとも何れかの巻線に並列接続される単相負荷に電力を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は三相受電設備に係り、特に不平衡負荷であっても平衡した電圧を安定して負荷に供給することのできる三相受電設備に関する。
【背景技術】
【0002】
工場、大規模店舗、オフィスビル等、大電力を消費する需要家に対しては、6kV以上の高電圧の三相交流電圧が配電されている。一方、一般家庭、小規模店舗、小規模オフィスビル等の小電力を消費する需要家に対しては、単相三線式の低圧配電線路で配電されている。
【0003】
図4は、単相3線式配電方式における受電設備を説明する図である。受電設備は、高圧の三相交流電圧を受電し、受電した三相交流電圧を前記受電設備内に配設された受電変圧器により、単相200Vおよび単相100Vに変換して、単相200V負荷L3あるいは単相100V負荷L1,L2に供給している。
【0004】
単相三線式配電系統においては、接続されている負荷は全て単相であり、しかも、これら多数の単相負荷は単相三線式配電線の線間にランダムに接続されている。 更に、これらの単相負荷は需要家の都合で任意の時点でオン・オフされる。このため、前記単相三線式の線路に流れる電流は平衡するとは限らない。極端な場合、一方の線路と中性線に接続された負荷のみが稼働し、他方の線路と中性線に接続された負荷は休止状態となることもある。
【0005】
このため、現在、単相三線式配電系統の末端にバランサと呼ばれる変圧器を設置して、線路電流の平衡をとる方式が採用されている。
【0006】
バランサBLは、図4に示すように巻数比が1対1の変圧器であって、通常単相3線式の線路の配線の末端に設けられる。バランサを設けることにより、一方の線路(外線A)に流れる電流と他方の線路(外線B)に流れる電流が異なる場合(すなわち負荷L1とL2の容量が異なる場合)において、バランサは外線A及びBに補償電流ioを供給して、外線A,Bに流れる電流の不平衡をを解消する。
【0007】
例えば、外線Aに流れる電流が外線Bに流れる電流より大きい場合には、中性線Cからバランサに補償電流2ioが流入し、流入した電流の一部i0は巻線n1を通して負荷L1に供給される。また、前記流入した電流の残部i0は巻線n2を通して電源変圧器Tに流入する。
【0008】
このように、バランサを設けると、外線A,Bはバランサを通して誘導的に結合されるため、外線Aと中性線C、あるいは外線Bと中性線Cとの間に接続した負荷に不均衡があっても、また中性線Cが電源側で遮断されても、外線Aと中性線Cとの間の電圧と、外線Bと中性線Cの間の電圧は常にバランスするように作用する。
【0009】
このようにバランサは、単相3線式の配電路の両側の電圧(外線Aと中性線および外線Bと中性線との間の電圧)および外線の電源側にに流れる電流がバランスするように、補償電流を流す。
【0010】
図5は、三相交流変圧器と単相単巻き変圧器(バランサ)を備えた従来の受電設備を説明する図である。
【0011】
図において、51,52,53はそれぞれ三相変圧器の1次巻線であり、デルタ結線されている。51’、52’,53’は、それぞれ前記1次巻線と電磁結合する2次巻線でありスター結線されている。
【0012】
R,S,T,はそれぞれa相、b相、c相の配電線であり、この配電線を介して三相負荷Lに三相電力を供給する。
【0013】
BLは前記配電線R,S,Tの線間に設置したバランサである。バランサBLは、鉄心54に巻回した第1の巻線55および第2の巻線56を備え、前記第1の巻線55と第2の巻線56とはそれらから発生する磁束の方向が一致するように直列接続し、該直列接続点からは中点タップnが導出される。
【0014】
このようにして形成されたバランサBLは前記a相の配電線Rとb相の配電線S間に接続される。
【0015】
58,59,60は単相負荷であり、単相負荷58,59,60は配電線RあるいはSと中性線C間、あるいは配電線R,S間に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2005−197623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
前記従来技術によれば、高圧受電設備を構成する三相変圧器の出力端子a−b間、出力端子b−c間、出力端子c−a間にそれぞれバランサBLを接続し、バランサBLの両端子と中性点間に単相負荷を接続するとともに、前記三相変圧器の各出力端子間に三相負荷を接続することができる。また、前記三相変圧器の中性点は接地することができる。
【0018】
三相変圧器の中性点を接地すると、前記三相変圧器を小型化することが可能であり、軽量で省スペース型電源変圧器とすることが可能である。さらに対地電圧の上昇を抑制することができる。
【0019】
しかし、前記三相変圧器の1次巻線51,52,53はデルタ結線されていても、この1次巻線と電磁結合する2次巻線51’,52’,53’はスター結線されている。このため、三相変圧器の2次巻線には第3高調波が発生し、発生した第3高調波の影響は前記配電線R,S,Tに現れる。
【0020】
前記2次巻線の中性点を接地しない場合には中性点電位が変動する。中性点を接地する場合には、対地を帰路として第3高調波電流などがが前記配電線を流れ、電磁誘導障害が発生する。このため、これの対策が必要となる。
【0021】
本発明はこれらの問題点に鑑みてなされたもので、第3高調波等のノイズの発生を抑制することが可能であり、軽量で省スペース型の電源変圧器を使用することのできる三相受電設備を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は上記課題を解決するため、次のような手段を採用した。
【0023】
少なくとも2次巻線をデルタ結線した三相変圧器と、鉄心に巻回した第1の巻線および第2の巻線を有し、前記第1の巻線と第2の巻線とをそれらから発生する磁束の方向が一致するように直列接続してなる複数のバランサを備え、前記バランサを前記三相変圧器の2次側の各相の出力端子間にそれぞれ接続すると共に前記三相変圧器の2次側の各相に接続される三相負荷、および前記バランサの第1の巻線および第2の巻線の少なくとも何れかの巻線に並列接続される単相負荷に電力を供給する。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、以上の構成を備えるため、第3高調波などのノイズの発生を抑制することが可能であり、軽量で省スペース型の電源変圧器を使用して三相受電設備を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施形態にかかる受電設備を含む給電系統を説明する図である。
【図2】本実施形態にかかる受電設備を説明する図である
【図3】単相3線式配電方式を説明する図である。
【図4】バランサを示す図である。
【図5】従来の受電設備を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態にかかる受電設備を含む給電系統を説明する図である。
【0027】
図1において、1は三相交流発電機、2は送電用変圧器、3は受電用変圧器を含む受電設備、4は三相交流負荷である。
【0028】
三相交流発電機で発電された交流電力は、送電用変圧器によって昇圧した後、送配電網を介して受電用変圧器を含む受電設備に給電される。受電用変圧器を含む受電設備は受電した三相交流電圧を降圧した後、三相配電線を介して三相負荷14あるいは単相負荷に給電する。
【0029】
図2は、受電用変圧器を含む受電設備の詳細を説明する図である。
【0030】
これらの図において、11,12,13はそれぞれ三相変圧器(受電用変圧器)の1次巻線であり、スター結線されている。11’、12’,13’は、それぞれ前記1次巻線と電磁結合する2次巻線でありデルタ結線されている。
【0031】
R,S,T、はそれぞれa相、b相、c相の配電線であり、この配電線を介して三相負荷14に三相電力を供給する。
【0032】
BL1、BL2,BL3は、それぞれ前記配電線R,S,Tの線間に設置したバランサである。
【0033】
バランサBL1、BL2,BL3は、それぞれ鉄心21に巻回した第1の巻線22および第2の巻線23を備え、前記第1の巻線22と第2の巻線23とはそれらから発生する磁束の方向が一致するように直列接続し、該直列接続点からは中点タップnが導出される。
【0034】
25,26は、受電用変圧器の2次巻線11’を電源とする単相3線式配電線路の外線A、及び外線Bであり、前記中点タップnに接続した中性線Cとの間には、それぞれ単相負荷(100V負荷)27、28、及び単相負荷(200V負荷)29が接続される。
【0035】
図1に示すように、受電設備を構成する受電用変圧器の1次巻線11,12,13はスター結線され、また、スター結線された前記1次巻線と電磁結合する2次巻線11’,12’,13’はデルタ結線されている。このため、受電用変圧器を構成する鉄心の磁気飽和等に基づいて、受電用変圧器を構成する三相変圧器の2次巻線にそれぞれ第3高調波が発生しても、この高調波はデルタ結線された2次巻線11’,12’、13’内を循環する。このため、第3高調波による誘導障害の問題は殆ど無視することができる。
【0036】
図3は、バランサの他の例を説明する図である。図に示すように、ロ字型鉄心Fの一方の脚に巻回した第1の巻線n1および第2の巻線n2、並びにロ字型鉄心の他方の脚に巻回した第3の巻線n3および第4の巻線n4を備え、第3の巻線n3、第1の巻線n1、第2の巻線n2および第4の巻線n4をそれらから発生する磁束の方向が一致するように直列接続してなる。このようにして形成したバランサは前記三相変圧器のデルタ結線された2次巻線の各相の出力端子間にそれぞれ接続される。また、前記三相変圧器のデルタ結線された2次巻線の各出力端子、および前記バランサの第1の巻線と第2の巻線との接続端子を配電線の給電端とすることができる。
【0037】
バランサBL1、BL2,BL3は、それぞれ巻数比が1対1の変圧器であって、それぞれ前記2次巻線11’,12’,13’に並列に接続する。
【0038】
各相を構成する2次巻線と並列にバランサを設けることにより、単相負荷22と23が不平衡の場合であっても、単相負荷22,23に中性点24から補償電流ioを供給することにより外線A,Bに流れる電流の不平衡を解消することができる。
【0039】
例えば、負荷27に流れる電流が負荷28に流れる電流より大きい場合には、中性点nからバランサに補償電流ioが流入し、巻線22,23を介して流出する。このように、バランサを設けると、負荷27,28は巻線22,23を通して誘導的に結合されるから、外線Aと中性線Cあるいは外線Bと中性線Cとの間に接続した負荷に不均衡があっても、また、中性線Cを電源電源側(変圧器2次巻線11’の中点)に接続しなくとも、外線Aと中性線Cとの間の電圧と、外線Bと中性線Cの間の電圧は常にバランスするように作用する。同様に、バランサBL2,BL3の中性線Cを2次巻線12’、13’の中点に接続しなくとも、外線Aと中性線Cとの間の電圧と、外線Bと中性線Cの間の電圧は常にバランスするように作用する。
【0040】
このようにバランサを設けることにより、単相負荷27,28に印加される電圧を常にバランスさせることができる。
【0041】
ここで、バランサBL1,BL3を介して流れる電流をia、バランサBL1,BL2を介して流れる電流をib、バランサBL2,BL3を介して流れる電流をic、バランサの各巻線の自己インダクタンスをL、相互インダクタンスをMとすると、
2jωL*ia+zi(2ia−ib−ic)=jωM(ib+ic)・・・(1)
2jωL*ib+zi(2ib−ic−ia)=jωM(ic+ia)・・・(2)
2jωL*ic+zi(2ic−ia−ib)=jωM(ia+ib)・・・(3)
が成立する。ここでL≒Mであるから、
式(1)、(2)、(3)より、
(2ia−ib−ic)(jωL+zi)=0 ・・・(4)
(2ib−ic−ia)(jωL+zi)=0 ・・・(5)
(2ic−ia−ib)(jωL+zi)=0 ・・・(6)
が得られる。また、式(4)、(5)、(6)より、
ia=ib=ic・・・(7)が得られる。
【0042】
また、jωL+zi=0となるようにziを選定すると バランサの巻線を低インピーダンスで接地することが可能であり、ノイズを有効に抑制することができる。また、中性点の電位VNは
VN=(Eab+Ebc+Eca)/2=0であるから、中性点Nは接地することができる。
【0043】
すなわち各バランサの中性点nは、ぞれぞれ接地インピーダンスZiを介して接地することができる。このため、配電線等にノイズが侵入した場合においても、これを接地電位に逃がしてノイズを抑制することができる。
【0044】
このため、単相3線式配電線路に接続した機器を、外部から侵入するノイズに対して保護することができる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態によれば、少なくとも2次巻線をデルタ結線した三相変圧器と、鉄心に巻回した第1の巻線および第2の巻線を備え、前記第1の巻線と第2の巻線とをそれらから発生する磁束の方向が一致するように直列接続してなるバランサを備え、前記三相変圧器の2次側の各相の出力端子間にそれぞれ前記バランサを接続し、前記三相変圧器の2次側の各相に接続される三相負荷、および前記バランサの第1の巻線および第2の巻線の少なくとも何れかの巻線に並列接続される単相負荷に電力を供給する。
【0046】
このため、前記単相負荷に不平衡があっても、前記単相負荷に常にバランスした電源電圧を供給することができる。
【0047】
また、各バランサの中性点24は、ぞれぞれ接地インピーダンスZiを介して接地することができる。このため、配電線等に第3高調波等のノイズが侵入した場合においても、これを接地電位に逃がしてノイズを抑制することができる。
【符号の説明】
【0048】
R,S,T 配電線
4 三相負荷
11,12,13 1次巻線
11’、12’、13’ 2次巻線
BL1,BL2,BL3 バランサ
22 第1の巻線
23 第2の巻線
27,28 単相負荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2次巻線をデルタ結線した三相変圧器と、
鉄心に巻回した第1の巻線および第2の巻線を有し、前記第1の巻線と第2の巻線とをそれらから発生する磁束の方向が一致するように直列接続してなる複数のバランサを備え、
前記バランサを前記三相変圧器の2次側の各相の出力端子間にそれぞれ接続すると共に前記三相変圧器の2次側の各相に接続される三相負荷、および前記バランサの第1の巻線および第2の巻線の少なくとも何れかの巻線に並列接続される単相負荷に電力を供給することを特徴とする受電設備。
【請求項2】
少なくとも2次巻線をデルタ結線した三相変圧器と、
鉄心に巻回した第1の巻線および第2の巻線を有し、前記第1の巻線と第2の巻線とをそれらから発生する磁束の方向が一致するように直列接続してなる複数のバランサを備え、
前記バランサを前記三相変圧器の2次側の各相の出力端子間にそれぞれ接続し、前記それぞれのバランサの第1の巻線と第2の巻線の直列接続点をインピーダンスを介して接地すると共に前記三相変圧器の2次側の各相に接続される三相負荷、および前記バランサの第1の巻線および第2の巻線の少なくとも何れかの巻線に並列接続される単相負荷に電力を供給することを特徴とする受電設備。
【請求項3】
請求項2記載の受電設備において、
前記インピーダンスはバランサの一方のコイルの自己インダクタンスと共振する値であることを特徴とする受電設備。
【請求項4】
請求項2記載の受電設備において、
前記バランサは、
ロ字型鉄心の一方の脚に巻回した第1の巻線および第2の巻線、並びにロ字型鉄心の他方の脚に巻回した第3の巻線および第4の巻線を備え、第3の巻線、第1の巻線、第2の巻線および第4の巻線をそれらから発生する磁束の方向が一致するように直列接続してなり、
前記三相変圧器のデルタ結線された2次巻線の各相の出力端子間にそれぞれ前記バランサを接続し、前記三相変圧器のデルタ結線された2次巻線の各出力端子、および前記バランサの第1の巻線と第2の巻線との接続端子を配電線の給電端としたことを特徴とする受電設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−254686(P2011−254686A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128825(P2010−128825)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(510157395)株式会社ローレンツ (1)
【出願人】(510156974)
【Fターム(参考)】