説明

α−メチレン−β−アルキル−γ−ブチロラクトン類の製造方法

【課題】α−メチレン−β−アルキル−γ−ブチロラクトン類を、安価且つ容易に製造する方法を提供する。
【解決手段】式(I)の2−メチレン−3−アルキル−4−ヒドロキシブチルアルデヒド類および/またはその互変異性体である式(I’)の2−ヒドロキシ−3−メチレン−4−アルキル−テトラヒドロフラン類を液相にて、分子状酸素および触媒の存在下で酸化させ、安価且つ安易に高収率で式(II)のα−メチレン−β−アルキル−γ−ブチロラクトン類を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α−メチレン−β−アルキル−γ−ブチロラクトン又はα−メチレン−β−アルキル−γ−アルキル−γ−ブチロラクトン(以下、これらを総称してα−メチレン−β−アルキル−γ−ブチロラクトン類という)の製造方法に関する。α−メチレン−β−アルキル−γ−ブチロラクトン類は、メタクリル酸エステル類やスチレンなどと共重合することによりガラス転移温度の高い成形材料を製造することができる。
【背景技術】
【0002】
α−メチレン−β−アルキル−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−γ−ブチロラクトン等のα−メチレン−γ−ブチロラクトン類の製造方法に関しては、これまで数々の報告がされている。例えば、非特許文献1や、非特許文献2、非特許文献3に総説が記載されているが、これらの製造方法を大きく分類すると、何らかの方法でγ−ブチロラクトン類を合成し、そのα位を活性化してメチレン基を導入する方法と、すでに存在するオレフィンを利用してα−メチレン−γ−ブチロラクトン類を製造する方法に分けられる。以降はこれら既報の製造方法について説明する。
【0003】
ラクトン環のα位の活性化にはカルボキシル基を導入する方法がある。非特許文献4にはラクトン環のα位に炭酸ガスでカルボキシル基を導入し、37%ホルムアルデヒド水溶液とジエチルアミンと酢酸/酢酸ナトリウムの存在下でメチレン基を導入する下記スキームで示される方法が記載されている。しかしながら、この方法は高価な試薬であるLDA(リチウムジイソプロピルアミド:LiN(iPr))を使用するので工業的な製造法とは言いがたい。
【0004】
【化1】

【0005】
また、ラクトン環のα位の活性化のためにアルキルオキサリル基を導入する方法が非特許文献5に記されている。ここでは金属ナトリウム、無水エタノールおよびシュウ酸ジエチルにより、ラクトン環のα位にエチルオキサリル化する。反応液中のオキサリル誘導体のナトリウム塩を中和後、オキサリル誘導体を抽出し、その濃縮残渣に水素化リチウムとガス状のホルムアルデヒドと反応させることによりα−メチレン−γ−ブチロラクトンを製造する方法が記載されている。
【0006】
【化2】

【0007】
また、同様に非特許文献6には、ワンポット反応でラクトン環のα位にエチルオキサリル化後、次いでホルムアルデヒドガスで処理することによりスピロ誘導体を生成させる。そして、この反応液の濃縮残渣をエーテルにより繰返し洗浄することによりスピロ誘導体を抽出し、次いで、この抽出液と炭酸水素ナトリウム水溶液と反応させることによりα−メチレン−γ−ブチロラクトンへ誘導後、再蒸留することによりα−メチレン−γ−ブチロラクトンを高純度化させる製造する方法が記載されている。
【0008】
【化3】

【0009】
しかし、これらの方法ではガス状のホルムアルデヒドを用いるので製造工程にホルムアルデヒドガス発生装置を設置したり、ホルムアルデヒドガスを発生している工場に隣接した場所で製造を行わなければならず、一般的な製造方法とは言い難い。また、オキサリル誘導体や中間体のスピロ誘導体は水にも溶けやすい中性化合物であるため、多量の溶媒により抽出して単離し、再度塩基性条件下での反応に付す必要があることから効率的な製造方法とは言い難い。さらには、置換基のないα−メチレン−γ−ブチロラクトンについてしか記載されておらず、その収率も満足できるものではない。
【0010】
一方、非特許文献7には、ワンポット反応でラクトン環のα位を活性化後、37%ホルムアルデヒド水溶液でメチレン化する下記スキームで示される方法が記載されているが、活性化する際に高価な水素化ナトリウムを使用しているため、実用的な製造法とは言い難い。また、RやRが芳香族基である場合は比較的収率が良好だが、芳香族基ではなくアルキル基や水素原子である化合物においては低収率であるという課題がある。
【0011】
【化4】

【0012】
非特許文献5〜7では原料であるγ−ブチロラクトン類に対して1〜1.1当量のシュウ酸エステルおよび塩基を使用して反応させているが、β置換基を有するγ−ブチロラクトン類ではアルキルオキサリル化されて生成する塩が反応の進行と共に析出するので原料を完全に消費することは困難であり、原料が残存していると高純度なα−メチレン−γ−ブチロラクトン類を製造することは困難であった。
【0013】
また、特許文献1では2−メチレン−3−メチル−4−ヒドロキシブチルアルデヒドおよび/または互変異性体の2−ヒドロキシ−3−メチレン−4−メチルテトラヒドロフランや、2−メチレン−3−メチル−4−アセトキシブチルアルデヒドを酸化剤の存在下に酸化し、引き続き環化することでα−メチレン−β−メチルブチロラクトンを製造している。
【0014】
【化5】

【0015】
しかし、記載された方法では主に均一系である過酢酸や硫酸などの酸化剤が使われており、酸化剤の繰り返し使用ができず、分離操作に手間がかかるなど効率的な製造法とは言い難い。また、酸化銀や酸化マンガンなど不均一系での液相酸化する方法も示されているが、分子状酸素を使用して酸化する方法ではない。
【0016】
以上のように従来からα−メチレン−β−アルキル−γ−ブチロラクトン等のα−メチレン−γ−ブチロラクトン類に関する製造方法は種々開発されていたが、使用する試薬が高価なものであったり、収率が不満足であったり、ホルムアルデヒドガスのように毒性も強く取り扱いにくい原料を使用する必要があった。したがって、何れも工業的には大きな問題点があり、低コストで容易に製造できる実用的な工業製法としては必ずしも満足できるものではなかった。
【特許文献1】特開平10−147581
【非特許文献1】Synthesis 1975, 67−82
【非特許文献2】Synthesis 1986, 157−183
【非特許文献3】Synth. Commun. 1975, 5, 245−268
【非特許文献4】Chem. Comm. 1973, 500−501
【非特許文献5】J. Org. Chem. 1977, 42, 1180−1185
【非特許文献6】Macromolecules 1979, 12, 546−551
【非特許文献7】Agric. Biol. Chem. 1978, 42, 1585−1588
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、本発明の課題はα−メチレン−β−アルキル−γ−ブチロラクトン類を、安価且つ容易に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者は前記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、2−メチレン−3−アルキル−4−ヒドロキシブチルアルデヒド類および/またはその互変異性体を液相中、分子状酸素および触媒の存在下において酸化させることで、安価且つ容易に高収率でα−メチレン−β−アルキル−γ−ブチロラクトン類を製造できる方法を見出して本発明に到達した。
【0019】
すなわち、本発明は、下記一般式(I)
【0020】
【化6】

【0021】
〔式(I)中、Rは直鎖または分岐状の炭素数1〜10のアルキル基を表し、Rは水素原子または直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜10のアルキル基を表す。〕
で表される2−メチレン−3−アルキル−4−ヒドロキシブチルアルデヒド類および/またはその互変異性体を液相にて、分子状酸素および触媒存在下で酸化させる工程を含む、下記一般式(II)
【0022】
【化7】

【0023】
〔式(II)中、R、Rは式(I)におけるR、Rと同義である。〕
で表されるα−メチレン−β−アルキル−γ−ブチロラクトン類の製造方法に関する。
【0024】
前記化合物(I)および/またはその互変異性体の酸化工程において、触媒として金属担持触媒を使用することを特徴とする。
【0025】
前記一般式(I)及び(II)におけるRとしては、式(II)のα−メチレン−β−アルキル−γ−ブチロラクトン類を原料として得られる重合体のガラス転移温度(耐熱性)を向上させる効果からは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などの低級アルキル基が好ましい。このようにβ位にアルキル基を有することで重合体のガラス転移温度は特異的に高くなる。また、前記式(I)及び(II)におけるRとしては水素原子が好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、α−メチレン−β−アルキル−γ−ブチロラクトン類を安価な原料から効率よく製造することが可能である。また、不均一系触媒(固体触媒)を使用することで、酸化工程後の触媒分離が容易であり、回収した触媒は再利用が可能なことから工業的に有利な方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、式(I)で表される化合物を化合物(I)と記す。他の式で表される化合物も同様に記す。
【0028】
前記化合物(I)は、前記特許文献1に記載されるように下記一般式(I’)で表される2−ヒドロキシ−3−メチレン−4−アルキルテトラヒドロフラン類を互変異性体として平衡関係で存在する。
【0029】
【化8】

【0030】
〔式(I’)中、R、Rは式(I)におけるR、Rと同一である。〕
【0031】
本発明における前記化合物(I)および/またはその互変異性体(I’)は、例えば、特許文献1に記載されているように、第8〜10族金属およびホスフィンリガンドまたはホスフィットリガンドからなる触媒系の存在下でのヒドロホルミル化反応から下記一般式(III)
【0032】
【化9】

【0033】
〔式(III)中、R、Rは式(I)におけるR、Rと同義である。〕
で表される2−ヒドロキシ−4−アルキル−テトラヒドロフラン類を得、続いてマンニッヒ反応を経由するなどの方法で製造することができる。
【0034】
以下、前記化合物(III)を原料として前記化合物(I)および/またはその互変異性体(I’)の製造例について説明する。
【0035】
【化10】

【0036】
触媒として、第二級アミンおよび無機または有機酸を用いた反応(欧州特許第58927号明細書(BASF社、1982年)および特開平11−322647号公報(クラレ社、1999年)が適している。
【0037】
前記化合物(III)を、有利には第二級アミンおよび酸の存在下でホルムアルデヒドと反応させ、前記化合物(I)および/またはその互変異性体(I’)を形成することができる。
【0038】
ホルムアルデヒド源としては、例えば、水性ホルマリン溶液やパラホルムアルデヒドを使用することができる。
【0039】
反応収率や選択率の観点から、反応に用いる二級アミンは以下のものが特に望ましい。具体的には、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジベンジルアミン、ピペリジン、モルホリン、ジエタノールアミン、2−メチルアミンエタノール、などを挙げることができる。
【0040】
反応に用いる酸としては、例えば、塩酸、硫酸、燐酸、硝酸などの鉱酸類、酢酸、酪酸、ギ酸、安息香酸、コハク酸、サリチル酸、テレフタル酸、トルイル酸、プロピオン酸、p−トルエンスルホン酸などの有機酸類を挙げる事ができる。
【0041】
使用することができる第二級アミンおよび酸は既に示された例に限定されるものではないと理解されるべきである。
【0042】
次に、触媒存在下、前記化合物(I)および/またはその互変異性体(I’)と分子状酸素を接触させて酸化し、一般式(II)のα−メチレン−β−アルキル−γ−ブチロラクトン類を得る工程(下記反応式参照)について詳細に説明を行う。
【0043】
【化11】

【0044】
前記化合物(I)および/またはその互変異性体(I’)、溶媒、触媒の接触順序は限定されず、例えば反応器にこれらの物質を一度に仕込んでも良い。
【0045】
使用する触媒としては、例えば、金属担持触媒、金属酸化物、金属塩などが挙げられるが、中でも、反応後に反応液と触媒とを、ろ過等の固液分離手段により容易に分離できることから、不均一系触媒(固体触媒)が好ましく、金属担持触媒がより好ましい。金属担持触媒の活性成分としては、例えば、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、白金、金、オスミウム、銀、鉛、水銀、ビスマス、およびタリウム等の金属元素からなる単体金属、これらの金属元素を複数含む合金、これらの金属元素と他の金属元素からなる合金、これらの金属元素を含む化合物などが挙げられる。中でも金属パラジウムが望ましい。
【0046】
金属担持触媒には、異種元素として、例えば、テルル、ニッケル、クロム、コバルト、インジウム、タンタル、銅、亜鉛、ジルコニウム、ハフニウム、タングステン、マンガン、レニウム、アンチモン、スズ、ビスマス、チタン、アルミニウム、硼素、珪素などを含んでいてもよい。
【0047】
前記金属担持触媒の担体としては、例えば、金属酸化物(シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、マグネシア等)、複合金属酸化物(シリカ−アルミナ、チタニア−シリカ、シリカ−マグネシア等)、ゼオライト(ZSM−5等)、メソポーラスシリケート(MCM−41等)などの無機酸化物;天然鉱物(粘土、珪藻土、軽石等);炭素材料(活性炭、黒鉛等)の各種担体を挙げることができる。
【0048】
前記金属担持触媒の構成比は任意に変更することができ、特に限定はないが、一般的には担体質量あたり、活性成分である金属は0.5〜30質量%、望ましくは1〜20質量%、さらに望ましくは1〜15質量%である。なお、原料に対する触媒の使用量に特に限定はないが、質量比で1/1000〜5倍が好ましい。ただし、本発明をこの範囲に限定するものではない。
【0049】
金属担持触媒は使用前に還元処理を行うことが望ましい。用いる還元剤は特に限定されないが、例えば、ヒドラジン、ホルマリン、水素化ホウ素ナトリウム、水素、蟻酸、蟻酸の塩、エチレン、プロピレンおよびイソブチレン等が挙げられる。還元時の系の温度および還元時間は、還元方法、用いる金属化合物、溶媒および還元剤等により異なるので一概に言えないが、液相還元法の場合、通常、還元温度は0〜100℃、還元時間は0.5〜24時間である。
【0050】
分子状酸素源は特に制限されず、例えば、分子状酸素とその他のガスとの混合ガスや純粋な酸素ガスなどの分子状酸素含有ガスなどを用いることができる。混合ガスとしては、例えば、不活性ガスと分子状酸素との混合ガスや空気が挙げられる。不活性ガスとしては、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素などが挙げられる。分子状酸素は系外から導入してもよく、また、系内で発生させてもよい。分子状酸素の使用量は、基質の種類によっても異なるが、基質1モルに対して0.5モル以上が好ましく、より好ましくは1モル以上、さらに好ましくは2以上、また100モル以下が好ましく、50モル以下がより好ましい。基質に対して過剰モルの分子状酸素を使用する場合が多い。
【0051】
また、反応液中に分子状酸素含有ガスをバブリングすることにより、酸化反応と同時に重合を防止することもできる。導入する空気などの分子状酸素含有ガスの量は、所望の反応進行および重合防止効果が得られるように適宜設定できる。例えば、分子状酸素含有ガスとして空気を用いる場合、使用する原料1モルに対して0.5ml/min以上でバブリングしながら基質を反応させることが好ましい。化合物(I)および/またはその互変異性体(I’)を含む反応液に重合防止剤を存在させ、併せて反応液中に空気などの分子状酸素含有ガスを導入しながら反応を行うことは重合防止効果の増幅という観点からも特に好ましい。
【0052】
本発明の酸化反応は無溶媒でも進行するが、反応収率を考慮すると溶媒を用いることが望ましい。このとき用いる溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、i−プロパノール、n−ブタノール、t−ブタノールなどのアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、トルエン、キシレンなどの芳香族化合物類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサンなどのアルカン類、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、水、アセトニトリル、プロピオニトリルなどの極性溶媒、クロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲン化物類などが挙げられる。これらの溶媒は単一で用いても混合して用いてもよい。
【0053】
溶媒量は、前記化合物(I)および/またはその互変異性体(I’)の質量に対して、0.01〜100倍が望ましく、コストを考慮すると1〜50倍が望ましく、1〜20倍がさらに望ましい。
【0054】
反応温度は特に限定されないが、0℃以上溶媒の沸点以下が望ましく、反応速度や反応収率を考慮すると20〜200℃が望ましく、50〜110℃がさらに望ましい。
【0055】
反応時間は特に限定されないが、0.1〜100時間が望ましく、反応収率を考慮すると0.5〜70時間が望ましく、1〜40時間がさらに望ましい。
【0056】
反応系の圧力は特に限定されないが、1〜100気圧が望ましく、反応装置に要するコストを考えると1〜70気圧がより望ましく、1〜50気圧がさらに望ましい。
【0057】
反応後に生成したα−メチレン−β−アルキル−γ−ブチロラクトン類を回収する方法としては、反応液をろ過し、得られたろ液を減圧下にて濃縮する方法が望ましい。
【0058】
その後、減圧蒸留、薄膜蒸留などの精製操作を行い、製品を取得することができる。その際、α−メチレン−β−アルキル−γ−ブチロラクトン類の重合防止のために、系内に重合防止剤を存在させることが好ましい。重合防止剤の種類は特に限定されないし、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0059】
重合防止剤は、例えば反応前の原料仕込み時に添加してもよいし、酸化工程の反応液に添加してもよいし、抽出液に添加してもよいし、蒸留前に入れてもよい。
【0060】
重合防止剤としては、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、tert−ブチル−カテコール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、ペンタエリスリトール、テトラキス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメイト)、2−sec−ブチル−4,6−ジニトロフェノールなどのフェノール系化合物、N,N’−ジイソプロピルパラフェニレンジアミン、N,N’−ジ−2−ナフチルパラフェニレンジアミン、N−フェニレン−N’−(1,3−ジメチルブチル)パラフェニレンジアミン、N,N’−ビス(1,4−ジメチルフェニル)−パラフェニレンジアミン、N−(1,4−ジメチルフェニル)−N’−フェニル−パラフェニレンジアミンなどのアミン系化合物、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケイトなどのN−オキシル系化合物、銅、塩化銅(II)、塩化鉄(III)などの金属化合物などが挙げられる。
【0061】
重合防止剤の使用量は、適宜決めればよいが、α−メチレン−β−アルキル−γ−ブチロラクトン類(II)に対して100ppm以上が好ましく、効果を十分発揮させるには500ppm以上がより好ましい。一方、コスト面から考慮すると重合防止剤の使用量は、10000ppm以下であることが好ましく、5000ppm以下であることがより好ましい。
【実施例】
【0062】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0063】
生成物の同定は核磁気共鳴装置(H−NMR)で行い、純度分析はガスクロマトグラフィー(GC)により実施した。
【0064】
<合成例>
実施例および比較例で使用した2−メチレン−3−メチル−4−ヒドロキシブチルアルデヒドおよびその互変異性体は、次のようにして合成した。すなわち、トルエン600gに、2−ヒドロキシ−4−メチル−テトラヒドロフラン122.6gとジエタノールアミン25.2g、酢酸14.4g、37%ホルムアルデヒド水溶液112.0gを加え、60℃で5時間加熱した。反応液をトルエン600gで3回抽出し、減圧下で溶媒を留去後、減圧蒸留を経て、互変異性体を含む2−メチレン−3−メチル−4−ヒドロキシブチルアルデヒドを105.5g得た。(収率77%)
<比較例1>
α−メチレン−β−メチル−γ−ブチロラクトンの合成
t−ブタノール114.14gに、互変異性体を含む2−メチレン−3−メチル−4−ヒドロキシブチルアルデヒド11.4gと4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル11.4mgを加え、常圧下で70℃に加熱して、空気を40ml/minの流量で反応器下部から導入した。5時間後でもα−メチレン−β−メチル−γ−ブチロラクトンの生成は見られなかった。
【0065】
<実施例1>
α−メチレン−β−メチル−γ−ブチロラクトンの合成
t−ブタノール114.1gに、互変異性体を含む2−メチレン−3−メチル−4−ヒドロキシブチルアルデヒド11.4gと4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル5.7mgを加え、次いで5%パラジウム/担体アルミナ0.57gを加えた。常圧下で反応温度70℃、反応器下部から空気を40ml/minの流量で導入した。15時間後に反応液をろ過し、ろ液の減圧濃縮、減圧蒸留を経て、α−メチレン−β−メチル−γ−ブチロラクトンを7.3g得た。(収率68%)
【0066】
<実施例2>
α−メチレン−β−メチル−γ−ブチロラクトンの合成
実施例1において、触媒を5%ルテニウム/担体チタニアに代えた以外は同様にして反応を行ったところ、α−メチレン−β−メチル−γ−ブチロラクトンを7.6g得た。(収率65%)
【0067】
<実施例3>
α−メチレン−β−メチル−γ−ブチロラクトンの合成
実施例1において、触媒を10%白金/担体シリカ−アルミナに代えた以外は同様にして反応を行ったところ、α−メチレン−β−メチル−γ−ブチロラクトンを7.1g得た。(収率63%)
【0068】
<実施例4>
α−メチレン−β−メチル−γ−ブチロラクトンの合成
ステンレス製気泡塔反応器(内容積150ml)に、t−ブタノール34.2gを入れ、互変異性体を含む2−メチレン−3−メチル−4−ヒドロキシブチルアルデヒド3.42g、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル3.4mg、5%パラジウム/担体アルミナ0.17gを加えた。反応温度90℃、反応圧力30気圧で、入り口酸素濃度を10容量%となるように酸素量を調整しながら反応を行った。2時間後に加圧を解除して、反応液をろ過した。ろ液の減圧濃縮、減圧蒸留を経て、α−メチレン−β−メチル−γ−ブチロラクトンを1.51g得た(収率45%)
【0069】
<実施例5>
α−メチレン−β−メチル−γ−ブチロラクトンの合成
実施例4において、触媒を5%ルテニウム/担体チタニアに代えた以外は同様にして反応を行ったところ、α−メチレン−β−メチル−γ−ブチロラクトンを1.74g得た。(収率52%)
【0070】
<実施例6>
α−メチレン−β−メチル−γ−ブチロラクトンの合成
テトラヒドロフラン57.1gに、互変異性体を含む2−メチレン−3−メチル−4−ヒドロキシブチルアルデヒド11.4gとp−メトキシフェノール5.7mgを加え、次いで5%パラジウム−3%ビスマス−1%亜鉛/担体アルミナ0.45gを加えた。常圧下で反応温度70℃、空気を40ml/minの流量で反応器下部から導入した。15時間後に反応液をろ過、ろ液の減圧濃縮、減圧蒸留を経て、α−メチレン−β−メチル−γ−ブチロラクトンを8.4g得た。(収率75%)
【0071】
<実施例7>
2−メチレン−3−エチル−4−メチル−4−ヒドロキシブチルアルデヒドおよびその互変異性体の合成
トルエン130gに、2−ヒドロキシ−4−エチル−5−メチル−テトラヒドロフラン26.0gと2−メチルアミンエタノール3.0g、酢酸2.4g、37%ホルムアルデヒド水溶液18.7gを加え、60℃で6時間加熱した。反応液をトルエン100gで3回抽出し、減圧下で溶媒を留去後、減圧蒸留を経て、互変異性体を含む2−メチレン−3−エチル−4−メチル−4−ヒドロキシブチルアルデヒドを20.5g得た。(収率72%)
【0072】
α−メチレン−β−エチル−γ−メチル−γ−ブチロラクトンの合成
トルエン142.2gに、得られた互変異性体を含む2−メチレン−3−エチル−4−メチル−4−ヒドロキシブチルアルデヒド14.2gとp−メトキシフェノール7.1mgを加え、次いで10%ロジウム/担体活性炭1.42gを加えた。常圧下で反応温度80℃、空気を20ml/minの流量で反応器下部から導入した。35時間後に反応液をろ過、ろ液の減圧濃縮、減圧蒸留を経て、α−メチレン−β−エチル−γ−メチル−γ−ブチロラクトンを9.9g得た。(収率71%)
【0073】
<実施例8>
2−メチレン−3−プロピル−4−ヒドロキシブチルアルデヒドおよびその互変異性体の合成
トルエン130gに、2−ヒドロキシ−4−プロピル−テトラヒドロフラン26.0gとジエタノールアミン4.2g、酢酸2.4g、37%ホルムアルデヒド水溶液18.7gを加え、60℃で5時間加熱した。反応液をトルエン100gで3回抽出し、減圧下で溶媒を留去後、減圧蒸留を経て、互変異性体を含む2−メチレン−3−プロピル−4−ヒドロキシブチルアルデヒドを21.0g得た。(収率74%)
【0074】
α−メチレン−β−プロピル−γ−ブチロラクトンの合成
トルエン142.2gに、得られた互変異性体を含む2−メチレン−3−プロピル−4−ヒドロキシブチルアルデヒド14.2gとp−メトキシフェノール14.2mgを加え、次いで5%パラジウム/担体アルミナ0.71gを加えた。常圧下で反応温度80℃、空気を20ml/minの流量で反応器下部から導入した。25時間後に反応液をろ過、ろ液の減圧濃縮、減圧蒸留を経て、α−メチレン−β−プロピル−γ−ブチロラクトンを10.1g得た。(収率72%)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)下記一般式(I)
【化1】

〔式(I)中、Rは直鎖または分岐状の炭素数1〜10のアルキル基を表し、Rは水素原子または直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜10のアルキル基を表す。〕
で表される2−メチレン−3−アルキル−4−ヒドロキシブチルアルデヒド類および/またはその互変異性体を液相にて、分子状酸素および触媒存在下で酸化させる工程を含む、下記一般式(II)
【化2】

〔式(II)中、R、Rは式(I)におけるR、Rと同義である。〕
で表されるα−メチレン−β−アルキル−γ−ブチロラクトン類の製造方法。
【請求項2】
前記式(I)および/またはその互変異性体の酸化工程において、触媒として金属担持触媒を使用することを特徴とする請求項1に記載のα−メチレン−β−アルキル−γ−ブチロラクトン類の製造方法。