説明

γ−ブチロラクトンの調製のための方法

本発明は、γ−ブチロラクトンの調製のための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、

【化1】

【0002】
(式中、R1は水素またはC1-10−アルキルであり、R2は、C1-19アルキル、アリールおよびアラルキルから成る群から選択される)

【化2】

【0003】
(式中、R1は上記した通りである)、および/または

【化3】

【0004】
(式中、R1およびR2は上記した通りである)
のγ−ブチロラクトンの調製のための方法に関する。
【0005】
3−アセチル−ジヒドロ−2(3H)−フラノン、またはα−アセチルブチロラクトン(ABL)は、ビタミンB1の製造において中間体として用いられる精製化学製品(M. Eggersdorfer, et al., Vitamins in Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, Ed. M. Bohnet et al., Wiley, New York, 2005, 71)、農芸薬品(WO-A-96/16048)、および他の精製化学製品、例えばシクロプロピルアミン(DE-A-3827846)である。ABLの世界的な使用は、合計で10000トンを超えるまでになる。
【0006】
ABLは、EP-A-792877 によれば、γ−ブチロラクトン(ジヒドロ−2(3H)−フラノン,GBL)のアセチル化によるか、またはアルキルアセトアセタートとエチレンオキシドの反応のいずれかにより調製される。後者の反応については複数の手法が記載されてきた。
【0007】
US-A-2443827 によれば、エチルアセトアセタートおよびエチレンオキシドを、NaOHと、H2O/EtOH混合物中で、48時間0℃で反応させる。塩基をAcOHを用いて中和する。ベンゼンによる抽出と分別蒸留は、60%のABLを与える。
【0008】
JP-A-2000355588 および JP-A-2002173489 によれば、メチルアセトアセタートおよび1.05当量のエチレンオキシドを、1.0当量のNaOHと共に、MeOH中、25℃で13時間反応させる。これは、メチルアセトアセタートの71%のコンバージョンと、82%の選択性を伴うABLの生成をもたらす。MeOHの除去、H2SO4を用いる中和、トルエン抽出、および蒸留後、消費されたメチルアセトアセタートに基づいて78%の収率でABLが単離される。
【0009】
US-A-5183908 および EP-A-0348549 によれば、置換されたα−アセチルブチロラクトンを、C1-20アルキルアセタートおよびエポキシドから、NaOHを用いてH2O中で15〜34℃において調製した。高度に分枝した鎖状アルキルアセトアセタートを用いることにより、反応の副生成物として生じたアルコールがH2Oと不混和性であるため、抽出処理のための溶媒を必要としなかった。
【0010】
EP 0702998 によれば、NaOMeを、電気透析によりABL生成の反応混合物から回収することができる。しかしながら、この後処理は長時間(20時間を超える)を必要とする。
【0011】
他の反応が、Ishido 等により、J. Chem. Soc., Perkin Trans. 1 1977, 521 に開示されており、ここで、エチルアセトアセタートをエチレンカルボナートと、触媒量のヨウ化ナトリウムの存在下、150〜155℃で4時間反応させて、17%の低収率でABLを与える。
【0012】
EP-A-0588224 は、3−(2’−アセトキシエチル)−ジヒドロ−2−(3H)−フラノン(72%単離)を与えるための、0.1当量のNaOMeの存在下でMeOH中60℃で24時間のエチルアセトアセタートと2.0当量のエチレンオキシドの反応、および副生成物としてのABLの生成(3%単離)を開示している。
【0013】
長い反応時間に加えて、上記した全ての手法は、化学量論量の無機塩基(アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属アルコキシド、またはアンモニウムハライド)の使用、従って、大量の塩の生成により特徴付けられる。このような無駄な塩の生成は、ABLの大規模な製造において明らかに望ましくない。従って、触媒量の塩基または再生利用可能な塩基のみを用いる方法が非常に望まれる。
【0014】
Packendorff 等は、Bull. Acad. Sci. USSR. 1940, 24, 579 において、0.02当量のピペリジンの存在下、RT、20日間のエチルアセトアセタートと2.17当量のエチレンオキシドの反応は、(2’−アセトキシエチル)−ジヒドロー2−(3H)フラノンを与えることを報告した。ABL自体については言及されてない。
【0015】
従って、改善されたABLの生成と塩の無駄の低減を提供する一般方法は有利であろう。特に、工業生産に適した反応時間において反応を行うための方法が求められている。
【0016】
本発明によれば、

【化4】

【0017】
(式中、R1は水素原子またはC1-10アルキルであって、任意に1つ以上のハロゲン原子により、またはC1-4アルキル、C1-4アルコキシおよびC1-4アシルオキシから成る群から選択されるさらなる置換基により置換されており、R2は、C1-19アルキル、アリールおよびアラルキルからなる群から選択され、ここでいずれものアルキル、アリールおよびアラルキル置換基は、任意に、1つ以上のハロゲン原子によりさらに置換されており、いずれものアリールまたはアラルキル残基は、C1-4−アルコキシ、C1-4−アシルオキシ、アミド、ヒドロキシ、フェニルおよびt−ブチルフェニルから成る群から選択される1つ以上の置換基により置換されている)

【化5】

【0018】
(式中、R1は上記した通りである)および/または

【化6】

【0019】
(式中、R1およびR2は上記した通りである)
の化合物の調製の反応のための方法であって、上記方法は、1〜4当量の式
【化7】

【0020】
(式中、R1は上記した通りである)
の化合物と、1当量の式
【化8】

【0021】
(式中、R2は上記した通りであり、およびR3は、C1-10−アルキル、アリールおよびアラルキルから成る群から選択され、ここで、いずれものアルキル、アリール、アラルキルは、任意に、1つ以上のハロゲン原子またはC1-4−アルキル若しくはC1-4−アルコキシから成る基により置換されている)
の化合物との反応を含むところ、前記反応は、式
NR456 IV
(式中、式IVの化合物は、
a)R4は水素であり、R5およびR6は、独立して、C1-12アルキルであって、任意に1つ以上のハロゲン原子および/またはヒドロキシル基によりさらに置換されているものからなる群から選択される、
b)R4は水素であり、R5およびR6は窒素原子と共に5〜7員環の非芳香族複素環を形成し、前記環は、さらに、1または2つの窒素環原子または1つの酸素環原子を含む、
c)R4は水素であり、R5およびR6は窒素原子と共に5〜7員環の非芳香族の第1の複素環を形成し、前記第1の環は、少なくとも1つの炭素環または複素環に環付加しており、任意に上記第1の環は、さらに、1または2つの窒素環原子または1つの酸素環原子をさらに含む、
d)R4は、C1-12アルキルであって、任意に1つ以上のハロゲン原子および/またはヒドロキシ基によりさらに置換されているものから成る群から選択され、R5およびR6は、窒素原子と共に5〜7員環の非芳香族複素環を形成し、上記環はさらに、C1-12アルキルにより置換されており、前記アルキル置換基は任意に、1つ以上のハロゲン原子および/またはヒドロキシ基によりさらに置換されており、任意に、前記環は、さらに、1または2つの窒素環原子または1つの酸素環原子を含む、
e)R4、R5およびR6は独立して、C1-12アルキルであって、任意に1つ以上のハロゲン原子および/またはヒドロキシ基によりさらに置換されているものから成る群から選択される、
f)R4はアリールまたはアラルキルであり、R5およびR6は独立して、C1-12アルキルであって、任意に1つ以上のハロゲン原子および/またはヒドロキシ基によりさらに置換されているものから成る群から選択される、および
g)式IVの化合物はピリジンまたはその誘導体である
から成る群から選択される)
の化合物の存在下で行なわれ、また、前記反応を、任意に、溶媒および/またはさらなる塩基の存在下で行うことを特徴とする方法を提供する。
【0022】
式IIおよびIIIの反応化合物は、異なる量で式Ia〜Icの化合物を与える。式IIおよびIIIの化合物のモル比、温度および溶媒により、ある種の主な生成物を得るための選択性は変化し得る。本出願の主な効果は、アセチルブチロラクトンの生成に関するが、即座の反応により得ることができるIa〜Icのいずれもの生成物を原料として、さらなる反応に用いてもよい。例えばアルコールフリーの溶媒を用いることにより式Icの化合物の式Ibの化合物へのアルコール分解を回避することにより、または適切な無水物と反応させることにより式Ibの化合物をアシル化することにより、式Icの化合物を得ることができる。後者の場合、式Icによる化合物が得られ、ここで式IIIの化合物の残基R2は上記アシル化反応のアシル残基には対応しない。1当量を超える式IIの化合物を用いることは、または式IIの化合物とアミンの付加体を形成する(より詳細に以下に記載)場合において3当量を用いることは、式Iaの化合物よりもより主に式Ibおよび/またはIcの化合物を生成する方向に反応を進める。
【0023】
本明細書中において「アルキル」という語は、直鎖のまたは分枝したアルキル基を示す。「C1-n−アルキル」の形態を用いることにより、アルキル基は、1〜n個の炭素原子を有するということを意味する。C1-6−アルキルは、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチルおよびヘキシルを示す。
【0024】
本明細書中において「アルコキシ」という語は、直鎖のまたは分枝したアルコキシ基を示す。「C1-n−アルコキシ」の形態を用いることにより、アルコキシ基は、1〜n個の炭素原子を有することを意味する。C1-6−アルコキシは、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシおよびヘキシルオキシを示す。
【0025】
本明細書中において、「アルケニルオキシド」という語は、末端エチレンオキシド基を有する直鎖のまたは分枝した基を示す。エテニルオキシド(EO)、1−プロペニルオキシド、および1−ブテニルオキシドが例である。
【0026】
本明細書中において、「アリール」という語は、芳香族基、好ましくはフェニルまたはナフチルを示す。
【0027】
本明細書中において、「アラルキル」という語は、アルキルおよびアリール部位から成る7個以上の炭素原子を有する芳香族基を示し、ここで、アラルキル残基のアルキル部位はC1-8アルキル基であり、アリール部位は、フェニル、ナフチル、フラニル、チエニル、ベンゾ[b]フラニル、ベンゾ[b]チエニルから成る群から選択される。
【0028】
式IIの化合物は、無置換のアルキレンオキシド、アルコキシエチレンオキシド、およびアルコキシプロピレンオキシドから成る群から選択される。特に好ましい式IIの化合物は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、メトキシエチレンオキシド、エトキシエチレンオキシド、メトキシプロピレンオキシド、およびエトキシプロピレンオキシドから成る群から選択される。
【0029】
好ましい実施形態において、式IIの化合物を、1〜4当量、より好ましくは1.0〜2.5当量の量で加える。
【0030】
好ましい実施形態において、式IIIの化合物は、アルキル、アリールおよびアラルキルアシルアセタート、好ましくはアルキルアセトアセタートから成る群から選択される。いずれの場合においても、式IIIの化合物におけるR3基の種類は重要ではない。というのは、−OR3基は反応における脱離基であるためである。アルコールが溶媒として用いられる場合には、好ましくは、アルコールのアルキル部位が、脱離基−OR3のアルキル部位に対応しており、望ましくない副反応を抑える。特に好ましいR3は、C1-6−アルキルまたはフェニルである。
【0031】
式中、R4、R5、およびR6が上記a)〜g)に基づいて定義された、すなわち第二級および/または第三級アミンであるところの式IVの化合物は、窒素原子が、水素、アルキルおよびアリールから選択される3つの置換基を含み、少なくとも1つの芳香族環系または非芳香族複素環系の一部であるアミンであり得る。
【0032】
上記a)によれば、R4が水素であり、R5およびR6が独立して、C1-12アルキルであって、任意に1つ以上のハロゲン原子および/またはヒドロキシル基によりさらに置換されているものから選択される場合には、式IVの化合物は、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルメチルアミン、およびブチルエチルアミンであり得る。上記b)によれば、R4が水素であり、R5およびR6が窒素原子と共に5〜7員環の非芳香族複素環を形成しており、上記環が1または2つの窒素環原子または1つの酸素環原子をさらに含む場合には、式IVの化合物は、例えば、モルホリンおよびイミダゾリジンであり得る。
【0033】
上記c)によれば、R4が水素で、R5およびR6が窒素原子と共に5〜7員環の非芳香族の第1の複素環を形成しており、上記第1の環は、少なくとも1つの炭素環または複素環に環付加しており、任意に上記第1の環は、1または2つの窒素環原子または1つの酸素環原子をさらに含んでいる場合に、式IVの化合物は、例えば、2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン、2,5−ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン、および5−メチル−2,5−ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタンであり得る。
【0034】
上記d)によれば、R4が、C1-12アルキルであって、任意に1つ以上のハロゲン原子および/またはヒドロキシ基によりさらに置換されているものから成る群から選択され、R5およびR6は窒素原子と共に、5〜7員環の非芳香族複素環を形成し、上記環が、C1-12アルキルによりさらに置換されており、上記アルキル置換基は任意に、1つ以上のハロゲン原子および/またはヒドロキシ基によりさらに置換されており、任意に上記環は1または2つの窒素環原子または1つの酸素環原子をさらに含む場合に、式IVの化合物は、例えば、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン、N−(2’−ヒドロキシエチル)ピペリジン、N−メチルイミダゾリジン、N−メチルイミダゾリジン、およびN−(2’−ヒドロキシエチル)イミダゾリジンであり得る。
【0035】
上記e)によれば、R4、R5、およびR6は独立して、C1-12アルキルであって、任意に1つ以上のハロゲン原子および/またはヒドロキシ基によりさらに置換されているものから成る群から選択される場合に、式IVの化合物は、例えば、ジデシルメチルアミン、ジオクチルメチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリメチルアミン、エチルジメチルアミン、またはメチルジ−tert−ブチルアミンであり得る。
【0036】
上記f)によれば、R4がアリールまたはアラルキルであり、R5およびR6は独立して、C1-12アルキルであって、任意に1つ以上のハロゲン原子および/またはヒドロキシ基によりさらに置換されているものから成る群から選択される場合に、式IVの化合物は、例えば、ジメチルアミノピリジン、ジエチルアミノピリジン、およびベンジルジエチルアミンであり得る。
【0037】
あるいは、上記g)によれば、式IVの化合物がピリジンまたはその誘導体であり、ここで上記誘導体は、ハロゲン原子、C1-10−アルキルおよびC1-10−アルコキシから成る群から独立して選択される1つ以上の置換基を有していてよく、いずれものアルキルまたはアルコキシは、任意に、1つ以上のハロゲン原子および/またはヒドロキシ基によりさらに置換されている場合に、式IVの化合物は、例えば、N−メチルピリジン、N−エチルピリジン、またはN−(2’−ヒドロキシエチル)ピリジンであり得る。
【0038】
好ましくは、第二級および第三級アミンは、2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)、2,5−ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン(DBH)、ジデシルメチルアミン(Dec2MeN)、ジオクチルメチルアミン(Oct2MeN)、エチルジイソプロピルアミン(DIPEA)、ジメチルアミノピリジン(DMAP)、N−メチルピペリジン(MePip)、N−メチルモルホリン(MeMorph)、N−メチルイミダゾール(MIm)、N−メチルイミダゾリジン、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(TMG)、トリエチルアミン(TEA)、およびトリメチルアミン(TMA)から成る群から選択される。
【0039】
有機アミンを用いることによる本方法は、従来技術による同様の方法における無機塩基の使用と比較していくつかの利点を有する。有機アミンは、即座の方法、例えば蒸留により、得られた反応混合物から非常により容易に分離することができる。このことは、廃液処理に関する労力を低減し、従って環境問題を少なくする。さらに、蒸留により除去された有機アミンを、さらなる処理をすることなくプロセスにおいて再利用することができる。
【0040】
上記第二級または第三級アミンは、全体的にまたは部分的に、上記アミンと式IIの化合物とのアルキレンオキシド付加体として存在することができる(式中、R1は上記した通りである)。このような付加体の生成は、例えば、US 2173069 or US 6117948 から知られているが、これらは式Iの化合物の調製のための方法においては全く使用されていなかった。
【0041】
アミンは、単独で、または互いの組み合わせで、および上記した付加体との混合物において用いることができる。ある場合において、式IIの化合物と式IIIの化合物の反応におけるこのような付加体を用いることは、アミンのみを加えた場合と比較して、向上した収率、および/または向上した選択性を引き起こす。殆どの場合において、式IIの化合物は反応中に上記付加体から放出される程度は少量ではなく、従って、消費される式IIの化合物の量は増加するが、このような付加体を用いることは、選択性および/または収率について有利な影響を有し得る。特にエチレンオキシドとTEAまたはTMAの付加体を式IIIの化合物と反応させると、式Ia〜Icのうちの1つの化合物についての選択性が、ある種の反応条件下で改善される。式IIの化合物とのこのような付加体を形成するアミンの傾向は、アミンの塩基度に依存する。TEAおよびTMAは容易にこのような付加体を形成するところ、TMGは、全く付加体を形成する傾向を有しない。
【0042】
好ましい実施形態において、アミンおよび/または付加体の式IIIの化合物に対する比は、0.01:1〜2:1モル当量、より好ましくは0.2:1〜1.0:1である。
【0043】
さらなる塩基は、固体形態でまたは溶媒中の溶液として、アルカリ金属アルコキシドまたは水酸化物から成る群から選択される。
【0044】
エチレンオキシドと付加体を形成するいくつかの第二級アミンおよび第三級アミンは、式IIIの化合物と完全には反応せず、反応条件下で安定である。いくつかの場合において、大量のアミンを加える必要があるが、消費されない付加体を分離し、再利用することができることが見出された。同じことが、生成物から容易に分離し、再利用することができるアミンにもあてはまる。
【0045】
本発明によれば、上記したアミンまたはこれらのいずれもの付加体をそのものとして加える。いずれの酸または酸性塩を加えて、反応混合物において対応するアンモニウム酸塩を得る必要がない。好ましい実施形態において、反応を、酸および/またはハロゲンアニオンの不存在下で行う。特に好ましくは、反応を、いずれものアンモニウムハライドの生成を防止する反応条件下で行う。さらに好ましい実施形態において、反応を、さらなる塩基の存在下で行う。このような塩基は、アルカリまたはアルカリ土類水酸化物、炭酸塩、およびアルコキシドから成る群から選択することができる。
【0046】
さらなる好ましい実施形態において、反応を進める添加剤として、三フッ化ホウ素エーテル(BF3OEt2)またはチタンテトラキスイソプロポキシド(Ti(OiPr)4)のような錯体形成化合物の存在下で行う。さらなる可能性のある錯体形成化合物は、例えばAlCl3のようなIII族金属ハライド、またはFeCl3のような遷移金属ハライドから成る群から選択される。
【0047】
反応を溶媒を用いて、または溶媒を用いずに行うことができる。溶媒が反応剤のうちの1種と反応しない場合には、いずれもの溶媒を用いることができる。好ましくは、溶媒は、水、アルコール、アセトン、アルキルアセタート、エーテル、芳香族化合物、ハロゲン化炭化水素、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0048】
存在する場合に、好ましくは、溶媒は、アシルアセタートの対応するアルコールである。殆どの場合、好ましいアルコールは、任意に水の存在下で、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、および高級アルキルアルコールから成る群から選択される。
【0049】
好ましくは、反応を0〜160℃、特に好ましくは20〜120℃、さらにより特に好ましくは40〜120℃で行う。
【0050】
さらに、反応を0〜150bar、好ましくは反応混合物の蒸気圧から生じる圧力、またはわずかにより高い圧力で行う。
【0051】
反応温度に依存して、反応時間は0.1〜70時間である。ABLの合成において高選択性を達成するためには、反応を、アルキルアセトアセタートが完全に消費される前に止める必要があろう。3−(2’−ヒドロキシエチル)−ジヒドロ−2−(3H)フラノンの合成においては、反応時間は好ましくは20時間よりも長い。
【0052】
式Iの特に好ましい化合物は、3−アセチル−ジヒドロ−2(3H)−フラノン(アセチルブチロラクトン=ABL)、または3−アセチル−5−メチル−ジヒドロ−2(3H)−フラノンである。
【0053】
反応をバッチプロセス、セミバッチプロセスまたは連続プロセスとして行うことができる。連続プロセスとしての反応を、マイクロリアクタにおいても行うことができる。
【0054】

例および表1において、「eq.」は、「当量」の略語として用いる。NMePipおよびNMeMorphを、それぞれ、N−メチルピペリジンおよびN−メチルモルホリンの略語として用いる。
【0055】
例1:
5℃で、メタノール(MeOH,144.0g)中のメチルアセトアセタート(MAA,46.7g,0.40モル)の溶液を、エチレンオキシド(EO,17.5g,1.0eq.)を用いて処理した後、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(TMG,46.1g,1.0eq.)を用いて処理した。反応混合物を0.5時間以内で40℃にまで加熱し、この温度に4.5時間保った。定量GC分析は、53.7%のMAAが、α−アセチルブチロラクトン(ABL)に、75.2%の選択性で変換されたことを示した。
【0056】
例2:
5℃で、MeOH(144.0g)中のMAA(46.9g,0.40モル)の溶液を、EO(25.0g,1.4eq.)を用いて処理した後、トリエチルアミン(TEA,40.7g,1.0eq.)を用いて処理した。反応混合物を0.5時間以内で60℃にまで加熱し、この温度に2.5時間保った。定量GC分析は、50.8%のMAAがABLに、72.9%の選択性で変換されたことを示した。
【0057】
例3:
5℃で、MeOH(144.0g)中のMAA(46.9g,0.40モル)の溶液を、EO(17.8g,1.0eq.)を用いて処理した後、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)(62.5g,1.0eq.)を用いて処理した。反応混合物を0.5時間以内で60℃にまで加熱し、この温度に2.5時間保った。定量GC分析は、59.3%のMAAがABLに、82.2%の選択性で変換されたことを示した。
【0058】
例4:
5℃で、MeOH(144g)中のMAA(47.0g,0.40モル)の溶液を、EO(35.3g,2.0eq.)を用いて処理した後、トリエチルアミン(TEA)(42.4g,1.0eq.)を用いて処理した。反応混合物を0.5時間以内で60℃にまで加熱し、この温度に4.5時間保った。定量GC分析は、67.7%のMAAがABLに、75.0%の選択性で変換されたことを示した。
【0059】
比較例1:
8℃で、MeOH(144.0g)中のNaOH(16.2g,0.40モル,1.0eq.)の溶液を、MAA(47.1g,0.40モル)およびEO(17.4g,0.39モル,0.97eq.)を用いて処理した。反応混合物を0.5時間以内で60℃にまで加熱し、この温度に1.5時間保った。定量GC分析は、59.5%のMAAがABLに、86.6%の選択性で変換されたことを示した。
【0060】
比較例2:
10℃で、MeOH(144.0g)中のNaOH(16.2g,0.40モル,1.0eq.)の溶液を、MAA(46.9g,0.40モル)およびEO(17.6g,0.99eq.)を用いて処理した。反応混合物を0.5時間以内で25℃にまで加熱し、この温度に22時間保った。GC分析は、73.7%のMAAがABLに、71.8%の選択性で変換されたことを示した。
【0061】
例5:
5℃で、MeOH(144.0g)中のMAA(46.6g,0.40モル)の溶液を、EO(37.0g,2.1eq.)およびTMG(9.4g,0.2eq.)を用いて処理した。反応混合物を0.5時間以内で60℃にまで加熱し、この温度に25時間保った。定量GC分析は、98%のMAAが3−(2’−ヒドロキシエチル)−ジヒドロ−2−(3H)フラノンに、>65%の選択性で変換されたことを示した。
【0062】
例6:
80℃において、EO(11.1g,1.0eq.)、およびエチルアセトアセタート(EAA)(32.9g,0.25モル)の、TEA(25.3g,1.0eq.)のEtOH(61.6g)との混合物を同時に20分以内で、オートクレーブ中のEtOH(32.4g)に加えた。反応混合物をさらに2時間80℃で撹拌した。定量GC分析は、50%のEAAが、ABLに>60%の選択性で変換されたことを示した。
【0063】
例7〜27:
EO量、任意に表1に記載した量における触媒、および表1に記載した量における添加剤、および表1に記載した反応時間を用いることによる例1の方法。ターンオーバーおよび選択性は表1に記載した通り。
【0064】
例28:
式IVの化合物としてTEAを用いた一連の反応の最良の形態の例:
37gのMeOHを250mLのオートクレーブ中に入れ、2〜3barの窒素ガスを用いて加圧し、加熱した。65℃に到達した後、メタノール(27g)中のMMA(39.9g,0.34モル,1eq.)およびTEA(34.4g,0.34モル,1eq.)、およびEO(30.1g,0.68モル,2eq.)を2つのポンプを用いて11分以内で同時に供給した。2時間のさらなる反応時間後、ABLが、77%の選択性で、加えたMMAに基づいて52.3%に対応して生成した(GC分析)。
【0065】
同じように行った一連のカバー範囲
温度:65〜95℃
添加時間;9〜13分
全体として加えた溶媒に基づく加えたMMA:1.3〜2.1モル/L
反応混合物に加えたTEA/MMAモル比:0.7〜1.3
反応混合物に加えたEO/MMAモル比:1.7〜2.2
一連の例28における結果
MMA変換率:65.6〜85.0%
ABL生成の選択性:47.5〜77.4%
MAAに基づくABL収率:40.4〜52.3%
【表1】

【0066】
0.40eq.のMMAを示した量のEOと反応させる例7〜26の全ての反応を、60℃で、溶媒として11eq.のMeOHを用いて行った。例27および28は、0.10eq.のMMA、1eq.のEOを用いて、60℃で、溶媒として11eq.のMeOHを用いて行った。
【0067】
例29
式IVの化合物としての、TMGとの一連の反応の最良の形態の例:
37gのMeOHを250mLのオートクレーブ中に入れ、2〜3barの窒素ガスを用いて加圧して、加熱した。45℃に到達したら、メタノール(27g)中のMMA(35.2g,0.30モル,1eq.)およびTMG(41.5g,0.36モル,1.2eq.)、およびEO(16.3g,0.37モル,1.2eq.)を2つのポンプを用いて10分以内で同時に供給した。6時間の添加反応時間後、ABLを60.4%の選択性で、加えたMMAに基づいて46.0%の総収率で生成した。
【0068】
同じように行った一連のカバー範囲
温度:45〜65℃
添加時間:9〜11分
全体的に加えた溶媒に基づく加えたMMA:1.5〜1.9モル/L
反応混合物に加えたTEA/MMAモル比:0.8〜1.2
反応混合物に加えたEO/MMAモル比:0.8〜1.2
一連の例29の結果
MMA変換率:39.5〜65.0%
ABL生成の選択性:63.8〜81.2%
MMAに基づくABL収率:30.8〜46.0%。
【0069】
例30
マイクロリアクタを用いる、式IVの化合物としてTMAを用いた一連の反応の最良の形態の例
MMA(44.6g,0.384モル,1.0eq.)、TMA(16.8g,0.284モル,0.74eq.)およびMeOH(81.3g)から成る溶液Aを調製した。
【0070】
30.6g/h EO(0.695モル/h,1.495eq.)、および溶液Aの172.8g/h(0.465モル/h MMA)を2つのポンプを用いて、90℃に調節されたマイクロリアクタに同時に供給し、上記マイクロリアクタは9.8mLの内部体積を融資、混合および反応領域として作用する。流れフロー下でのマイクロリアクタ中での反応混合物の滞留時間は約2.5分であった。マイクロリアクタを通過した後、反応混合物を、250mLのMeOHを含み、60℃で窒素ガス下で2〜3barのオートクレーブ中に集めた。オートクレーブ中での約1.3時間のさらなる反応時間後、ABLを、74.8%の選択性で、加えたMMAに基づいて34.8%の収率で、または加えたTMAに基づいて61.9%の収率で生成した(GC分析)。46.6%のMMAが、ABLに変換された。
【0071】
同じように行った一連のカバー範囲
マイクロリアクタの温度:73〜107℃
オートクレーブの温度:43〜77℃
溶液Aの投与速度:48.7〜172g/h
EOの投与速度:8.6〜30.6g/h
マイクロリアクタに注入した溶媒に基づく加えたMMA:1.9モル/L
反応混合物に加えたTEA/MMAモル比:0.75
反応混合物に加えたEO/MMAモル比:1.5
一連の例30の結果
MMA変換率:38.7〜66.3%
ABL生成の選択性:50.5〜78.3%
MAAに基づくABL収率:30.3〜39.7%

【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】

(式中、R1は水素、またはC1-10アルキルであって、任意に1つ以上のハロゲン原子により置換されているか、またはC1-4アルキル、C1-4アルコキシおよびC1-4アシルオキシから成る群から選択されるさらなる置換基により置換されており、R2は、C1-19アルキル、アリールおよびアラルキルから成る群から選択され、ここで、いずれものアルキル、アリールおよびアラルキル置換基は任意に、1つ以上のハロゲン原子により置換されており、またいずれものアリールまたはアラルキル残基は、C1-4−アルコキシ、C1-4−アシルオキシ、アミド、ヒドロキシ、フェニルおよびt−ブチルフェニルから成る群から選択される1つ以上の置換基により置換されている)、

【化2】

(式中、R1は上記した通りである)、および/または

【化3】

(式中、R1およびR2は上記した通りである)
の化合物の主に調製方法であって、前記方法は、1〜4当量の式
【化4】

(式中、R1は上記した通りである)
の化合物を、1当量の式
【化5】

(式中、R2は上記した通りであり、R3は、C1-10−アルキル、アリールおよびアラルキルから成る群から選択され、いずれものアルキル、アリールおよびアラルキル置換基は、任意に、1つ以上のハロゲン原子、またはC1-4−アルキルまたはC1-4−アルコキシから成る基により置換されている)
の化合物と反応させることを含むところ、
前記反応を、式
NR456 IV
(式中、式IVの化合物は、
a)R4は水素であり、R5およびR6は、独立して、C1-12アルキルであって、任意に1つ以上のハロゲン原子および/またはヒドロキシル基によりさらに置換されているものからなる群から選択される、
b)R4は水素であり、R5およびR6は窒素原子と共に5〜7員環の非芳香族複素環を形成し、前記環は、さらに、1または2つの窒素環原子または1つの酸素環原子を含む、
c)R4は水素であり、R5およびR6は窒素原子と共に5〜7員環の非芳香族の第1の複素環を形成し、前記第1の環は、少なくとも1つの炭素環または複素環に環付加しており、任意に上記第1の環は、さらに、1または2つの窒素環原子または1つの酸素環原子をさらに含む、
d)R4は、C1-12アルキルであって、任意に1つ以上のハロゲン原子および/またはヒドロキシ基によりさらに置換されているものから成る群から選択され、R5およびR6は、窒素原子と共に5〜7員環の非芳香族複素環を形成し、上記環は、C1-12アルキルによりさらに置換されており、前記アルキル置換基は任意に、1つ以上のハロゲン原子および/またはヒドロキシ基によりさらに置換されており、任意に、前記環は、さらに、1または2つの窒素環原子または1つの酸素環原子を含む、
e)R4、R5およびR6は独立して、C1-12アルキルであって、任意に1つ以上のハロゲン原子および/またはヒドロキシ基によりさらに置換されているものから成る群から選択される、
f)R4はアリールまたはアラルキルであり、R5およびR6は独立して、C1-12アルキルであって、任意に1つ以上のハロゲン原子および/またはヒドロキシ基によりさらに置換されているものから成る群から選択される、および
g)前記式IVの化合物はピリジンまたはその誘導体である
から成る群から選択される)
の化合物の存在下で行うことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記式IIの化合物が、無置換のアルキレンオキシド、アルコキシエチレンオキシド、およびアルコキシプロピレンオキシドから成る群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記式IIIの化合物が、アルキル、アリールおよびアラルキルアシルアセタートから成る群から選択され、好ましくはアルキルアセトアセタートである請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第二級および第三級アミンが、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、ジデシルメチルアミン、ジメチルアミノピリジン、ジオクチルメチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、N−メチルピペリジン、N−メチルモルホリン、N−メチルイミダゾール、N−メチルイミダゾリジン、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、トリエチルアミン、およびトリメチルアミンから成る群から選択される請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第二級および第三級アミンが、前記式IIの化合物との前記アミンのアルキレンオキシド付加体(式中、R1は請求項1に記載した通りである)として存在する請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記アミンおよび/または付加体の前記式IIIの化合物に対する比が、0.01:1〜2.0:1モル当量の範囲にある請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記反応を、酸および/またはハロゲンアニオンの不存在下で行う請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記反応を、0〜160℃の温度で行う請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記反応を、1〜150barの圧力で行う請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
反応時間が0.1〜70時間である請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2010−505780(P2010−505780A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530796(P2009−530796)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【国際出願番号】PCT/EP2007/008568
【国際公開番号】WO2008/040530
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(398075600)ロンザ ア−ゲ− (58)
【Fターム(参考)】