説明

ω−3高度不飽和脂肪酸を高濃度で含む微生物産物のヘテロトロピックな製造方法

【課題】トロウストチトリアレ目、トロウストチトリアレ目から抽出したω-3高度不飽和脂肪酸およびこれらの混合物の群から選択した微生物等を食品に配合することにより、動物用等の食用製品を調製する方法を提供すること。
【解決手段】トロウストチトリアレ目、トロウストチトリアレ目から抽出したω-3高度不飽和脂肪酸、およびこれらの混合物からなる群から選択される微生物または抽出したω-3高度不飽和脂肪酸を、食用物質に配合することによつて食用製品を調製する。食用物質の具体例には、動物用食品、人間用食品があり、この食用製品に抗酸化剤を配合することが好適である。なお、前記の群の具体例には、トロウストチトリウム、シゾチトリウム、トロウストチトリウムから抽出されるω−3HUFA等がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔発明の詳細な説明〕
関連出願との相互関係
この出願は、1989年11月17日に出願され、「ω-3高度不飽和脂肪酸を高濃度で含む微生物産物のヘテロトロピックな製造方法」との名称の、共に係属中のかつ共通の譲渡人の米国特許出願第07/439,093号の一部継続出願である。原出願は、その全体を本明細書中に参照として組み入れるものであり、また、先に明示的に放棄された1988年9月7日に出願され、「ω-3高度不飽和脂肪酸を高濃度で含む微生物産物のヘテロトロピックな製造方法」との名称の、米国特許出願第07/241,410号の一部継続出願である。
【0002】
〔発明の属する技術分野〕
本発明の分野は、ヘテロトロピック(従属栄養的)生物及び、食品添加物として人間や動物が消費するのに好適な、あるいは薬学的、工業的製品中で使用するのに好適なω-3高度不飽和脂肪酸(HUFA)を高濃度で含む脂質を製造するために該生物を培養する方法に関する。
【0003】
本発明の説明において、「ATCC番号」とは、アメリカ合衆国メリーランド州ロックビルの the American Type Culture Collection(ATCC)に寄託された株の受託番号を意味しており、文中、「ATCC番号XXXXX」は、特に説明されていない限り、ATCCに寄託された株のうちの受託番号XXXXXの株を指す。
【背景技術】
【0004】
〔従来の技術〕
ω-3高度不飽和脂肪酸は、動脈硬化症及び冠状動脈心疾患の予防、炎症状態の軽減、並びに腫瘍細胞の増殖抑制のための重要な食餌療法用化合物として近年認識されてきており、工業的に多大な興味をもたれている。これらの有益な効果は、ω-3高度不飽和脂肪酸がω-6脂肪酸から合成される化合物の競争的阻害を引きおこすこと及び、ω-3高度不飽和脂肪酸それ自体から直接合成される有益化合物の両者によりもたらされる(Simopoulos 他, 1986)。ω-6脂肪酸は植物及び動物中で見出される主な高度不飽和脂肪酸である。近年、ω-3高度不飽和脂肪酸の商業的な食用物として入手源は唯一ある種の魚油からであり、この魚油はこれらの脂肪酸を20〜30%まで含み得る。これらの脂肪酸の有益な効果は、週に数回魚を食べるか、あるいは濃縮魚油を毎日摂取することによって得ることができる。このため多量の魚油が毎年、食用補助剤として販売するために加工され、カプセル化されている。
【0005】
しかしながら、これらの魚油補助剤にはいくつかの重大な問題がある。第一に、これらには天然に魚油中に見いだされる脂溶性ビタミンが高濃度に含まれている。摂取すると、これらのビタミンは、尿中に排泄されるよりもむしろ、人間の脂肪中に蓄積され、代謝される。これらのビタミンを大量に与えると、腎臓障害や失明もたらす点で、安全性に問題があり、いくつかのアメリカの医学会が実際の魚よりもむしろカプセル補助剤を用いることに対して警告を発している。第二に、魚油は飽和脂肪酸及びω-6脂肪酸を80%まで含有しており、これら両方の脂肪酸は健康上、悪い影響をもたらし得る。そのうえ、魚油は強烈な魚の味と臭いを持っており、そのままでは食用製品の味に悪い影響を与えることなく、食品添加物として加工食品に添加することはできない。さらに、この混合物から純粋なω-3高度不飽和脂肪酸の単離は、高価なプロセスを含んでいるため、これらの脂肪酸の純品は高価格(200〜1000ドル/g)となっている(Sigma Chemical Co., 1988; CalBiochem Co., 1987)。
【0006】
魚油中のω-3高度不飽和脂肪酸の天然源は藻類である。これらの高度不飽和脂肪酸は光合成膜の重要な成分である。ω-3高度不飽和脂肪酸は食物連鎖中に蓄積され、最終的に魚油中に取り込まれる。バクテリヤや酵母はω-3高度不飽和脂肪酸を合成することはできず、二、三のカビが微量のω-3高度不飽和脂肪酸を産生し得ることが知られているのみである(Weete, 1980; Wassef, 1977; Erwin, 1973)。
【0007】
藻類は、バイオマスを含むω-3高度不飽和脂肪酸を含有する多種の産物を光合成栄養的に生産するため戸外培養池で生育されている。例えば、米国特許第4,341,038号(特許文献1)には藻類から油の光合成的な製造方法が記載されており、また米国特許第4,615,839号(特許文献2)には緑藻類クロレラの数種によって光合成的に製造されるエイコサペンタエン酸(ω-3高度不飽和脂肪酸の一種)の濃縮方法が記載されている。光合成栄養法は、光をエネルギー源として使用して、細胞が光合成プロセスにより二酸化炭素と水から有機化合物を構築するプロセスのことである。太陽光がこのタイプの産生系のドライビングホース(駆動力)であるので、藻類培養池が、経済的に成り立つためには、大表面積(広い土地)を必要とする。規模が大きいため、コストが高くつきまた技術的に問題があるので、これらの系を経済的にカバーすることは不可能である。さらに、たとえ透明なカバーであっても、太陽光のかなりの部分をブロックしやすいという問題もある。したがって、このような生産システムは無菌的ではなく、単一培養として維持するのは難しい。このことは、培養において所望の産物を生産するのに操作したり、ストレスをかけたり(例えば窒素量を制限する)することが必要な場合には、特に重大な問題となる。典型的には、不純物が培養系に容易に侵入するのは、細胞が産物のみを生産し、増殖しない、ストレス下にあるこのこの期間である。そこで、多くの場合、産生されたバイオマスは、脂質を回収するためにコストのかかる抽出プロセスを経ずには、人間が消費するための食品添加物としては望ましいものとはならない。そのうえ、戸外系での藻類の光合成的生産は非常にコストがかかる。これは、栽培系への入力光の減少を避けるために、低密度(1〜2g/l)に培養系を維持しなくてはならないからである。この結果、少量の藻類を回収するのに大量の水を処理する必要があり、また、藻類細胞は大変小さいので、コストのかかる採集プロセスを使用しなくてはならない。
【0008】
混合栄養法は生産の別法であり、この方法では藻類のある種の株が必要なエネルギー源として光を用いて光合成を行うが、付加的に系中に有機化合物を供給する。混合栄養法によってより高密度化を達成することができ、培養を無菌生産用の密閉反応器中で維持することができる。米国特許第3,444,647号(特許文献3)及び第3,316,674号(特許文献4)に、藻類の混合栄養的生産方法が記載されている。しかしながら、培養基に光を供給する必要があるため、このタイプの生産反応器は建造及び操作が極めて高価であり、しかも培養密度は依然として非常に制限されている。
【0009】
ω-3高度不飽和脂肪酸生産のための藻類の培養におけるもう一つの問題は、ω-3高度不飽和脂肪酸がある株の全脂肪酸の20〜40%を構成するとしても、これらの藻類の全脂肪酸含量は一般に極めて低く、灰分を除いた乾燥重量の5〜10%程度であることである。細胞の脂肪酸含量を増大させるために、脂質の産生を刺激する窒素量制限期間を設けなくてはならない。しかしながら、これまでに文献に記載されたすべての株のうち、本発明者が評価した60以上の株において、すべての株が窒素制限下において全脂肪酸中のパーセントとしてω-3高度不飽和脂肪酸の顕著な減少をもたらした(Erwin, 1973; Pohl & Zurheide, 1979)。
【0010】
経済性及びω-3高度不飽和脂肪酸の食品添加物としての使用の観点からは、これらの脂肪酸をヘトロトロピック培地中で生産することが望ましいであろう。ヘテロトロピー(従属栄養)とは、暗所での持続的かつ連続的な生育及び細胞分裂のための能力のことであり、細胞炭素は唯一有機化合物の代謝で得られる。光をヘテロトロピック培地に供給する必要はないので、密閉反応器中極めて高密度で培養物を生育することができる。ヘテロトロピック生物とは、エネルギー及び細胞炭素を有機基質から得る生物のことであり、暗所で増殖できる。ヘテロトロピック条件とは、光が存在するしないにかかわらず、ヘテロトロピック生物が生長できる条件のことである。しかしながら、藻類のほぼ大部分は、主として光合成栄養的であり、ほんの二、三のヘテロトロピック藻類が知られているにすぎない。米国特許第3,142,135号(特許文献5)及び第3,882,635号(特許文献6)に、クロレラ(Chlorella)、スポンジオコクム(Spongiococcum)、及びプロトセカ(Prototheca)のような藻類からのタンパク質及び色素のヘテロトロピックな生産方法が記載されている。しかしながら、従属栄養的に非常に良好に生長すると記されているこれらの属及び他のもの(例えば、セネデスムス(Scenedosmus))は、ω-3高度不飽和脂肪酸を産生しない(Erwin, 1973)。多少なりともω-3高度不飽和脂肪酸を産生することが知られている極めて少数のヘテロトロピック藻類(例えば、アポクロロティック珪藻又はアポクロロティック双鞭毛藻類)は、一般に生長が遅く、灰分を除いた乾燥重量の数%という少ない量のω-3高度不飽和脂肪酸を産生する(Harrington と Holfz, 1968; Tornabene 他、1974)。
【0011】
二、三の高級菌類がω-3高度不飽和脂肪酸を産生することが知られているが、これらは細胞中で全脂肪酸のほんの少ない部分を構成するにすぎない(Erwin, 1973; Wassef, 1977; Weete, 1980)。このように、それらはω-3高度不飽和脂肪酸の工業的生産の良い候補とは考えられない。例えば、ヤマダら(1987)は最近、ω-6脂肪酸、アラキドン酸の生産のために、いくつかの種の細菌、クサレケカビ(Morfierella)(土壌より単離)の培養について報告している。これらの細菌は、低温(5〜24℃)で生育すると、アラキドン酸と共に、ω-3エイコサペンタエン酸をも少量産生する。しかしながら、得られるエイコサペンタエン酸の含量は、細胞の乾燥重量のわずか2.6%にすぎず、これらの種の中でこの脂肪酸の産生を促進するのに必要な低い温度は、培養系の産生能(及び経済性)の大巾な減少をもたらす。
【0012】
トロウストチトリアレ目の単細胞類のいくつかも、ω-3高度不飽和脂肪酸を産生することが知られている(Ellenbogen, 1969; Wassef, 1977; Weete, 1980; Findlay 他、1986)が、これらは培養するのが難しいとされている。Sparrow (1960) はトロウストチトリアセ族(トロウストチトリアレ目)の葉状体 (thalli) の微小さと単純な性質が、増殖を極めて困難なものにしていると述べている。この困難さの他の理由が Emerson (1950) によって大まかに挙げられ、Schneider (1976) によってまとめられている: 「 1) これらの菌類はただ1個か数個の細胞の非常に小さな葉状体から成っており、一般に極めて生長が遅く、環境の変化に極めて敏感である; 2) それらは一般に極めて特殊な栄養上及び環境上の必要を有する腐生植物か寄生植物である; 3) 純粋な培地中で、それらは一般に、二、三世代で終わってしまう栄養増殖という、限られた増殖を示す。」(いくつかの先行文献はトロウストチトリドを菌類として分類しているが、最新の共通認識においては、藻類として分類すべきだとされている。以下の記載を参照のこと)。その結果、これらの微生物の数多くの目に対してほとんど注意が向けられていない。これまでになされた研究は、主として分類学的及び生態学的な観点からなされている。例えばトロウストチトリアレのいくつかの構成菌が単純な脂肪酸分布をもっていることが混合栄養的見地から報告されているけれども(Ellenbogen, 1969; Findlay 他、1986)、その全脂肪酸含量あるいは脂質含量の乾燥重量パーセントとしての報告はまったくない。全脂質含量についてのデータが手に入らない限り、任意のタイプの脂肪酸の生産への使用について、ある生物の能力を評価することはできない。例えば、いくつかの海洋性大藻類(海藻類)の脂質中のω-3高度不飽和脂肪酸含量は全脂肪酸の51%にも達して非常に高いと報告されている(Pohl とZurheide, 1979)。しかしながら、大藻類の脂質含量は一般に少なく、細胞の乾燥重量の1〜2%にすぎない(Ryther, 1983)。したがって、大藻類の脂肪酸中でのω-3高度不飽和脂肪酸の含量は高いと報告されているにもかかわらず、ω-3高度不飽和脂肪酸の生産のための候補となる生物としては、不適格と考えられる。本発明者による熱心な探索にもかかわらず、トロウストチトリアレの簡単なおよその分析(タンパク質、炭水化物、及び脂質の%)報告は見い出されず、その分類学、生理活性あるいは生態学についての実験室的な研究以外の目的でこれらの種を培養する試みは全く報告されていない。さらに、これらの微生物の多くの種は、簡単なポーレンバイティング(pollen baiting)法によって単離されている(例えば、Gaertner, 1968)。ポーレンバイティング法はトロウストチトリアレの構成員に極めて特異的ではあるが、微生物の大規模培養に望ましい任意の特徴について選択するものではない。
【0013】
このように、本発明に至まで、ω-3高度不飽和脂肪酸を実用的なレベルで産生する培養に適したヘテロトロピックな生物は知られておらず、このような生物は自然環境中には極めて希であると考えられていた。
【特許文献1】米国特許第4,341,038号
【特許文献2】米国特許第4,615,839号
【特許文献3】米国特許第3,444,647号
【特許文献4】米国特許第3,316,674号
【特許文献5】米国特許第3,142,135号
【特許文献6】米国特許第3,882,635号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、ヘテロトロピック(従属栄養的)生物及び、食品添加物として人間や動物が消費するのに好適な、あるいは薬学的、工業的製品中で使用するのに好適なω-3高度不飽和脂肪酸(HUFA)を高濃度で含む脂質を効果的に製造するための該生物並びにそれを培養する方法およびそれを用いた食用製品を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
〔1〕 有機性炭素源、同化しうる窒素、海水の塩分濃度よりも低い塩分濃度、および少なくとも約15℃の温度からなる培養基中で、トロウストチトリウム属およびシゾチトリウム属を除くトロウストチトリアレ目の微生物から選択され、ω-3高度不飽和脂肪酸を効率よく生産し得る微生物を培養することを含む、ω-3高度不飽和脂肪酸の製造方法。
〔2〕 さらに、ω-3高度不飽和脂肪酸もしくはトロウストチトリウム属およびシゾチトリウム属を除くトロウストチトリアレ目の微生物から選択され、ω-3高度不飽和脂肪酸を効率よく生産し得る微生物の収穫後の加工の間に、BHT,BHA,TBHQ,エトキシキュイン、β-カロテン、ビタミンEおよびビタミンCからなる群より選択される化合物を、ω-3高度不飽和脂肪酸もしくはトロウストチトリウム属およびシゾチトリウム属を除くトロウストチトリアレ目の微生物から選択され、ω-3高度不飽和脂肪酸を効率よく生産し得る微生物に添加することを含む、〔1〕に記載の方法。
〔3〕 さらに、トロウストチトリウム属およびシゾチトリウム属を除くトロウストチトリアレ目の微生物から選択され、ω-3高度不飽和脂肪酸を効率よく生産し得る微生物から脂質を抽出することを含む、〔1〕に記載のω-3高度不飽和脂肪酸の製造方法。
〔4〕 上記の抽出において、
a) 微生物細胞を破砕して破砕細胞を得、
b) 破砕細胞から脂質混合物を溶媒抽出し、
c) 脂質混合物を加水分解し、さらに、
d) 上記脂質混合物中で非高度不飽和脂肪酸を冷却結晶化する
ステップを含む、〔3〕に記載の方法。
〔5〕 ATCC番号20888のシゾチトリウム、ATCC番号20889のシゾチトリウム、ATCC番号20890のトロウストチトリウム、ATCC番号20891のトロウストチトリウム、ATCC番号20892のトロウストチトリウムのいずれかから誘導される、トロウストチトリウム属およびシゾチトリウム属を除くトロウストチトリアレ目に属する変異株たる微生物であって、ω-3高度不飽和脂肪酸を産出し得るもので、広範な温度範囲、特に約15℃〜48℃の間で生育でき、広範な塩分レベル、特に例えば5〜40mmho/cmの間の電導率をもたらす塩分レベルのような低い塩分レベルで生育でき、そして、フィラメント状ではない微生物からなる群から選択される単細胞微生物。
〔6〕
a) (i) ATCC番号20888のシゾチトリウムから誘導される、トロウストチトリウム属およびシゾチトリウム属を除くトロウストチトリアレ目に属する変異株たる微生物であって、ω-3高度不飽和脂肪酸を産出し得るもので、広範な温度範囲、特に約15℃〜48℃の間で生育でき、広範な塩分レベル、特に例えば5〜40mmho/cmの間の電導率をもたらす塩分レベルのような低い塩分レベルで生育でき、そして、フィラメント状ではない微生物;
(ii) ATCC番号20889のシゾチトリウムから誘導される、トロウストチトリウム属およびシゾチトリウム属を除くトロウストチトリアレ目に属する変異株たる微生物であって、ω-3高度不飽和脂肪酸を産出し得るもので、広範な温度範囲、特に約15℃〜48℃の間で生育でき、広範な塩分レベル、特に例えば5〜40mmho/cmの間の電導率をもたらす塩分レベルのような低い塩分レベルで生育でき、そして、フィラメント状ではない微生物;
(iii) ATCC番号20890のトロウストチトリウムから誘導される、トロウストチトリウム属およびシゾチトリウム属を除くトロウストチトリアレ目に属する変異株たる微生物であって、ω-3高度不飽和脂肪酸を産出し得るもので、広範な温度範囲、特に約15℃〜48℃の間で生育でき、広範な塩分レベル、特に例えば5〜40mmho/cmの間の電導率をもたらす塩分レベルのような低い塩分レベルで生育でき、そして、フィラメント状ではない微生物;
(iv) ATCC番号20891のトロウストチトリウムから誘導される、トロウストチトリウム属およびシゾチトリウム属を除くトロウストチトリアレ目に属する変異株たる微生物であって、ω-3高度不飽和脂肪酸を産出し得るもので、広範な温度範囲、特に約15℃〜48℃の間で生育でき、広範な塩分レベル、特に例えば5〜40mmho/cmの間の電導率をもたらす塩分レベルのような低い塩分レベルで生育でき、そして、フィラメント状ではない微生物;
(v) ATCC番号20892のトロウストチトリウムから誘導される、トロウストチトリウム属およびシゾチトリウム属を除くトロウストチトリアレ目に属する変異株たる微生物であって、ω-3高度不飽和脂肪酸を産出し得るもので、広範な温度範囲、特に約15℃〜48℃の間で生育でき、広範な塩分レベル、特に例えば5〜40mmho/cmの間の電導率をもたらす塩分レベルのような低い塩分レベルで生育でき、そして、フィラメント状ではない微生物;
からなる群から選択される微生物、またはこれらから抽出された脂質と、
b) 食用物質と
を含む、食用製品。
本発明は、その大部分がω-3高度不飽和脂肪酸である脂肪酸を高濃度で有する微生物を含むω-3高度不飽和脂肪酸(HUFA)を高濃度で含有する食用製品に関する。さらに、あるいは、別に、この食用製品は微生物から抽出したω-3HUFAを含み得る。特に、その微生物はトロウストチトリアレつまりトロウストチトリウム又はシゾチトリウムである。微生物又は抽出したω-3HUFAは添加用の食品材料(食用物質)に加えられる。この食品材料は動物用食品や人間用食品のどちらでもよい。本発明の食用製品は微生物の細胞を破壊することにより、その中に含まれるω-3HUFAの生物学的利用性を増大させてもよい。食用製品はまた、押出し加工してもよい。ω-3HUFAの劣化を防止するために、食用製品は非酸化性条件下に包装してもよく、あるいはさらに抗酸化剤をふくんでいてもよい。
【0016】
本発明の他の態様は、動物にトロウストチトリウム又はそれから抽出したω-3HUFAを食べさせることを含む動物の飼育方法に関する。本発明の方法で飼育する動物としては、家禽類、牛、豚及び魚、エビ、貝などの海洋生物が挙げられる。ω-3HUFAは、これらの動物の肉、卵及び他の製造中に取り込まれる。ω-3HUFAは、全細胞微生物製品、抽出ω-3HUFA製品、又はω-3HUFAを取り込んだ動物もしくは動物製品の形で消費される。本発明に従って生産されるω-3HUFAを人間がより多く摂取すると、心血管疾患、炎症、及び/又は免疫学的疾患、並びに癌の予防もしくは治療に効果的である。
【0017】
本発明のさらに他の態様は、培養基中で、有機性炭素源と同化しうる窒素源と共にトロウストチトリアレを培養することを含む、ω-3HUFAの生産方法である。好ましくは、有機性炭素源と同化しうる窒素源は粉砕穀物からなる。この方法はさらに、トロウストチトリウム、シゾチトリウム又はこれらの混合物からなるトロウストチトリアレを、栄養制限条件下もしくは窒素制限条件下に、効果的な時間のあいだ、好ましくは約6〜24時間培養し、ついでトロウストチトリアレを微生物中のω-3HUFAの濃度を高めるために窒素制限期間のあいだに、収穫することを含む。この方法はさらに、ω-3HUFAの劣化を防止するために、収穫後の加工中に、BHT,BHA,TBHQ、エトキシキュイン、β-カロチン、ビタミンE、及びビタミンCからなる群から選択される抗酸化剤を添加することを含む。この方法はさらに、培養中に低温として微生物にストレスをかけること、培養中に培地を高溶存酵素濃度に維持すること、並びに微生物の持続的な生長をもたらすために有効量のリン及び微生物生長因子(酵母エキスあるいはコーン浸漬液)を培地に加えることを含む。本方法はさらに、ATCC番号20888,20889,20890,20891,20892及びこれら由来の変異株と同様な特性を有する単細胞微生物を培養することを含む。これらの方法で生産されたω-3HUFAは次いで微生物から抽出された脂質から分別結晶法により単離し得る。この方法は、微生物細胞を破砕し、破砕細胞から脂質混合物を溶媒で抽出し、脂質混合物を加水分解し、不ケン化化合物を除去し、さらに脂質混合物中の非HUFAを冷時結晶化することを含む。
【0018】
本発明の別の態様は、ヘテロトロピックな増殖が可能であり、またω-3HUFAを産生し得る水中で生息する単細胞微生物を選択する方法である。この方法は、天然由来の浅い海水の生息地から収集した微生物の小集団から約1μm〜25μmの間のサイズの微生物を選択し、有機性炭素、同化しうる窒素、同化しうるリン、及び微生物生長因子を含む培養基中、ヘテロトロピック条件下で微生物を培養し、ついで、粗いあるいは織り目様の表面を有する、透明な、白色、オレンジ色もしくは赤色のフィラメント状ではないコロニーを選択することを包含する。
【0019】
〔発明の実施の形態〕
この出願全体を通しての定義として、本明細書中、脂肪酸とは脂肪族モノカルボン酸のことであると理解されたい。脂質とは、ホスファチド類、ステロイド類、アルコール類、炭化水素類、ケトン類、及び関連化合物を伴った脂肪酸のグリセリドエステルを包含する油脂類のことであると理解されたい。
【0020】
一般に使用されている略記システムを本明細書中でも脂肪酸の構造を表現するのに使用している(例えば、Weete, 1980)。このシステムでは、炭化水素鎖中の炭素数を示す数字を伴った文字「C」を用い、これにコロンと二重結合の数を示す数字が続く。つまり、C20:5はエイコサペンタエン酸を表す。脂肪酸はカルボニル炭素から番号づけを始める。二重結合の位置はギリシヤ文字デルタ(Δ)に二重結合の炭素数を付けて表す。すなわち、C20:5ω-3Δ5,8,11,14,17というふうに。「ω」表示は不飽和脂肪酸についての略記システムであり、カルボキシ末端炭素から番号づけが使用される。便宜上、特に本明細書中で数字略記命名法を用いる場合に、w3が「オメガ-3」を記号化するために使用される。ω-3高度不飽和脂肪酸は、最後のエチレン性結合が脂肪酸の末端メチル基を含んでそれから三炭素であるポリエチレン性脂肪酸であると理解される。従って、一つのω-3高度不飽和脂肪酸であるエイコサペンタエン酸の完全な命名は、C20:5w3Δ5,8,11,14,17 となる。簡単化のために、二重結合位置(Δ5,8,11,14,17)は省略されうる。そこでエイコサペンタエン酸はC20:5w3と表示され、ドコサペンタエン酸(C22:5w3Δ7,10,13,16,19)はC22:5w3であり、ドコサペンタエン酸(C22:6w3Δ4,7,10,13,16,19)はC22:6w3である。「高度不飽和脂肪酸」なる命名は、4個あるいはそれ以上の二重結合をもつ脂肪酸を意味する。「飽和脂肪酸」は1〜3個の二重結合をもつ脂肪酸を意味する。
【0021】
ω-3高度不飽和脂肪酸生産のために、経済的に望ましい以下の特性の組合せを有する多くの微生物株を容易に単離するために、本発明者は収集及びスクリーニング法を開発した: 1)ヘテロトロピックな生長(増殖)が可能; 2)ω-3高度不飽和脂肪酸が高含量; 3)単細胞; 3)好ましくは、飽和及びω-6高度不飽和脂肪酸が低含量; 5)好ましくは、色素をもたず、白色もしくは実質的に無色の細胞; 6)好ましくは、耐熱性であること(30℃以上の温度で生育できること);並びに 7)好ましくは、広塩性(広範囲の塩分濃度にわたって、特に低塩分濃度で生育できること)。
【0022】
多数の適したヘテロトロピック株の収集、単離及び選択には、以下の方法が伴い得る。適切な水試料と生物は、一般に、好ましくは、広範囲の温度及び塩分変動をうける浅い塩水生息地から収集できる。これらの生息地としては、海の潮だまり、河口(河潟)及び内陸部の塩水池、泉、プラヤ及び湖が挙げられる。これらの収集地の特定の例として、 1)コロラド州のグレンウッドスプリングスにあるコロラド川に沿った所、あるいはユタ州のスタンズバリイ山脈の西側の端に沿った所のような暖かい塩水泉; 2)ユタ州のゴシェンの近くにあるゴシェンプラヤのようなプラヤ; 3)カリフォルニア州のラ・ジョラのバードロックス地域にあるような海の潮だまり; 4)カリフォルニア州のサンジエゴ郡のチアジュアナ河口のような河口がある。水試料と共に、いくらかの生きた植物分と天然由来の岩屑(分解しつつある植物及び動物分)を含むようにとくに努力する。その後、試料は実験室に戻るまで冷蔵する。水試料を15〜30秒間振とうしたのち、フィルターユニットへ、例えば1〜10mlをピペットで取るか、一部を注ぐかすればサンプリング時の誤差が最小となる。フィルターユニットは2つのタイプのフィルターを含んでいる。すなわち 1)上部に、減菌したワットマン#4フィルター(商標、ワットマン社、クリフトン、N.J.);及び 2)ワットマンフィルターの下に、1.0μm孔径のポリカーボネートフィルターである。第一の(上部の)フィルターの目的は、約25μm以上の大きさのすべての粒子分を除去することであり、一般的には単細胞タイプの物質のみが1.0μmのポリカーボートフィルター上へ透過しうる。第一のフィルターは、他のコロニーの増殖する機会を増大させるより高い温度でのポリカーボネートフィルターの培養において引き続いて増殖するカビのコロニーの数を著しく減少させる。カビの胞子は海辺の塩水及び内陸の塩水中に非常に多数であり、カビのコロニーはスクリーニングで除かないと、寒天プレート上を急速に覆いつくしてしまう。1.0μmサイズのポリカーボネートフィルターは、バクテリヤの多くが通り抜けてろ液に行くようにと選択された。サンドイッチ型のフィルターデザインを使用した目的は、単細胞生物のうち大きさが直径で約1μmから約25μmの範囲の細胞の少なくとも一部を選択することである(大規模の生産用の発酵システムにおいて、潜在的に容易に増殖しうる生物)。これらの単細胞生物のさらなる増殖は、寒天プレート上でポリカーボネートフィルターを培養することによって促進することができる。フィルター上で増殖する生物間の競争は、単細胞微生物の競争的な強健な株を単離しやすくする。上述の方法によって選択される単細胞の水生微生物は、生育条件及び増殖サイクルの段階に応じてある範囲の細胞の大きさを示す。培養物中の大部分の細胞は、約1μm〜約25μmの範囲の直径を有している。ただし、培養物中の(葉状体及び胞子嚢)細胞は(株により異なるが)約60μmまでのより大きな直径をもつことが見出され得る。
【0023】
ろ過ののち、ポリカーボネートフィルターを塩水培養基を含む寒天プレート上に置く。この培養基は、グルコース、種々のでんぷん、糖蜜、粉砕コーン等の炭水化物のような有機性炭素源、硝酸塩、尿素、アンモニウム塩、アミノ酸のような同化性有機もしくは無機窒素源;酵素エキス、ビタミン及びコーン浸漬液の一種以上に含まれる微生物生育因子;有機もしくは無機の同化性リン源;並びに重炭酸塩のようなpH緩衝剤を含有している。微生物生長因子は、菌類や藻類を含む単細胞微生物のヘテロトロピックな生長を促進する未だ特定されていない化合物である。寒天プレートは暗所にて25〜35℃(30℃が好ましい)で培養することができ、2〜4日後に、多数のコロニーがフィルター上に出現する。目的の生物を1プレートあたり1〜5コロニー回収することは珍しくない。酵母のコロニーは色(しばしばピンク色である)またはその形態のいずれかによって区別し得る。酵母コロニーは滑らかであるが、目的の生物はざらざらしたあるいは織り目様の表面を有するコロニーを形成する。目的の生物は個々の細胞をコロニーの境界で微細顕微鏡を通して見ることができるが、酵母細胞は小さいために区別できない。カビ及びより高級な菌類のコロニーは、目的生物はフィラメント状ではないのに、それらはフィラメント状であるので、目的生物と区別し得る。透明なあるいは白色のコロニーをプレートからつまみとり、同様の培養基組成の新しいプレート上に再ストリークし得る。大部分の目的生物は透明あるいは白色であるが、いくつかは、キサントフィル色素の存在により橙色あるいは赤色であり、同様に選択と再ストリークに適している。新しいプレートは同様の条件下(好ましくは30℃)で培養することができ、2〜4日の培養期間で単一のコロニーをつまみとることができる。その後、単一コロニーをつまみとり、例えば寒天プレート中と同じ有機添加物(寒天をのぞいて)を含む液体培養基50ml中へいれることができる。これらの培養物は30℃で、空気を吹き込みながら、例えば回転振とうテーブル(100〜200rpm)上で2〜4日間培養し得る。培養物が最高密度にまで達したと思われるときに、20〜40mlの培養物を次いで遠心分離あるいは他の適切な方法で収穫し、例えば凍結させて保存することができる。次に、試料をガスクロストグラフィーを含む標準的で周知の方法により分析して、その株の脂肪酸含量を同定することができる。ω-3高度不飽和脂肪酸を含む株をこのようにして同定することができ、これらの株の培養物をさらなるスクリーニング用に維持し得る。
【0024】
有望な株を、50mlの培養基を含む250mlの振とうフラスコにその株を移植することにより、温度許容性についてスクリーニングし得る。次いで、これらの培養物を2日間、振とうテーブル上で、任意の所望の温度範囲、最も実用的には、27〜48℃の間で一つの培養物毎に3℃間隔としてインキュベートする。産生量を培養基1mlあたりの産生された脂肪酸の全量で定量しうる。全脂肪酸は上記のようにガスクロマトグラフィーで定量できる。同様の方法を、塩分許容性についてのスクリーニングに使用し得る。塩分許容性については、大部分の目的に対して、5〜40mmho/cmの導電率を与える塩分濃度範囲が適当である。種々の炭素源及び窒素源を使用する能力についてのスクリーニングも同様に上で概要を説明した方法を用いて行うことができる。ここで、炭素源及び窒素源の評価は5g/lの濃度で行った。評価した炭素源は、グルコース、コンスターチ、粉砕コーン、じゃがいもデンプン、小麦でんぷん及び糖蜜である。評価した窒素源は、硝酸塩、尿素、アンモニウム、アミノ酸、タンパク質加水分解物、コーン浸漬液(コーンスティープ液)、トリプトン、ペプトン、又はカゼインである。他の炭素源及び窒素源も使用することができ、ユーザーが重要とする基準に基づき、この技術分野の当業者が任意に選択しうる。
【0025】
予想外のことに、トロウストチトリウム(ヤブレツボカビ、Thrausochytrium)属からの種の株が粉砕した、加水分解されていない穀物を直接発酵してω-3HUFAを産生することが見出された。この方法は、そのような穀物は一般に安価な炭素源及び窒素源であるので、従来の発酵法に比べて有利である。さらに、この方法を実施しても、ω-3HUFAの量のような、藻類の有益な特性を損なうような影響を与えない。
【0026】
穀物の直接発酵を用いる本方法は、制限なく、トウモロコシ、モロコシ、米、オート麦、ライ麦、及びアワを含む任意の種類の穀物について有用である。しかしながら、少なくとも粗く粉砕した穀物を用いることが好ましく、さらには、小麦粉状のコンシステンシーをもつまでに粉砕した穀物がより好ましい。この方法は、さらに、安価な炭素/窒素源として、その他に、非加水分解コーンシロップ、もしくはスチラーゲ(stillage)のような農産上発酵上の副産物、トウモロコシをアルコールに発酵する際の不要産物を用いることをも包含する。
【0027】
もう一つの好ましい方法においては、ω-3HUFAは、加水分解された上述の穀物及び不要産物の発酵によって、トロウストチトリウムもしくはシゾチトリウムにより産生し得ることが見出された。そのような穀物及び不要産物は酸加水分解又は酵素加水分解のような当業者に公知の任意の方法により加水分解し得る。別の態様は混合加水分解処理である。この方法においては、粉砕穀物を当業者に公知の任意の温和な酸処理方法に従って、温和な酸条件下でまず部分的に加水分解する。続いて、部分的に加水分解した粉砕穀物をさらに、当業者に公知の任意の酵素法に従って、酵素プロセスにより加水分解する。この好ましい方法においては、アミラーゼ、アミログルコシダーゼ、α- もしくはβ-グルコシダーゼのような酵素又はこれらの酵素の混合物が用いられる。得られる加水分解生成物を、次いで、本発明において炭素源及び窒素源として使用する。
【0028】
上で概要を説明した収集法及びスクリーニング法を用いて、単細胞の菌類及び藻類の株のうち、ω-3高度不飽和脂肪酸含量を灰分を含まない全細胞の乾燥重量(afdw)の32%まで含有し、かつ、15〜48℃の温度範囲で増殖し、極めて低い塩分濃度の培養基中で成長するものを単離し得る。非常に高いω-3株の多くは増殖が大変遅い。上記の方法で単離され、速い増殖と、ω-3高度不飽和脂肪酸を良好に産生し、かつその含量の多い株は、ω-3高度不飽和脂肪酸含量が約15%afdw程度までである。本発明の方法による株の成長は、満足すべき成長が進行する任意の温度。例えば約15℃〜48℃、好ましくは25〜36℃で達成し得る。培養基は一般に、もし酸の添加やバッファーによってpHを調節しないならば、発酵の間によりアルカリ性となる。株は4.0〜11.0のpH範囲で増殖するが、好ましい範囲は約5.5〜8.5である。
【0029】
増殖を大容量の容器及びタンク中で行う場合には、凍結防止剤、ジメチルスルホキシド(DMSO)もしくはグリセリンを用いて−70℃で保存した培養物又は傾斜培養物からのアリコートをこのブロス培養物に移植することによって、栄養ブロス培地中に栄養移植物を調製することが好ましい。若い、活発な栄養移植物が確保されたときに、それを無菌的により大きい生産タンク又は発酵槽に移すことができる。栄養移植物が調製される培養基は、その株が良好に増殖する限り、細胞の大規模生産に用いるものと同じであっても、異なっていてもよい。
【0030】
本発明者は、上記の方法で単離され、スクリーニングされたトロウストチトリアレ目の単細胞株(ω-3脂肪酸を含有する)は、エマーソン(1950)とSchneide(1976)によって予見されたように、数世代後には栄養増殖を停止するという制限された増殖を一般に示すことを見出した。しかしながら、本発明者は、比較的高濃度の(例えば、KH2PO4>0.2g/l)に維持するか及び/又は酵母エキスもしくはコーン浸漬液(0.2g/l以上)のような栄養補助物(菌類成長因子の源)を加えることよって、連続的なこれらの単細胞菌類の培養増殖が維持できることを見出した。液体培地中で2〜3世代を越えて増殖を維持する能力を、本明細書中で持続増殖と表現する。群として、トロウストチトリド属の株は、シゾチトリウム属の株よりも、リン酸塩の添加に対してより好ましい形で応答するようであり、後者はリン酸塩の必要がより少ないと思われる。菌類成長因子を供給する栄養補助剤に関して、コーン浸漬液を、酵母エキスの代りとすることができ、ある種の株においては、培地中で株の高密度化を達成するのにより優れた効果を有する。コーン浸漬液及び酵母エキスは、細胞が成長するのに必要な一種以上の成長因子を含んでいる。成長因子は、現在のところ解明されていないが、それは酵母エキスおよびコーン浸漬液の成分であり、これらのよく知られた栄養補助物のどちらかで十分である。50%に近い炭素変換効率(培養基に添加した100gの有機性炭素当たりの生成した細胞乾燥重量のg数)が、この方法を用いて容易に達成できる。
【0031】
成長の指数増殖期に細胞を収穫することによって、高タンパク質で、高ω-3高度不飽和脂肪酸の微生物産物を得ることができる。有意により高い脂質とω-3高度不飽和脂肪酸の産物を望む場合には、栄養制限下で、好ましくは窒素制限下で適切な期間、好ましくは6〜24時間、培養を行い得る。培養物を窒素を含まない培養基に移すか、あるいは、好ましくは指数増殖期の後期に窒素が不足するように、生育培養基の最初の窒素含量を調節しうる。誘導期間を短く、通常は6〜24時間とする限り、窒素の制限は、ω-3高度不飽和脂肪酸を高レベルで維持しながら全脂質の産生を促進する。培養のこの段階、つまり培養物分布がその最高細胞密度に到達した段階は、定常期として知られている。誘導期間の長さは、使用した株に応じて、温度を上げるか下げることによって調整できる。さらに、細胞を高い炭素/窒素比の培養基中で、連続的な形で培養でき、高脂質含量(及び高ω-3含量)の細胞バイオマスを連続的に生産することが可能となる。上記したスクリーニング法により単離したヘテロトロピック微生物の単細胞株は、三種のω-3高度不飽和脂肪酸、すなわちC20:5w3、C22:5w3及びC22:6w3を高濃度で含有し、C20:4w6を極めて低い濃度で含む傾向にある。これらの脂肪酸の比率は、培養条件と使用した株によって変動しうる。C20:5w3とC22:6w3の比率は約1:1〜1:30の範囲をとりうる。C22:5w3とC22:6w3の比率は1:12から、ほんの痕跡量のC22:5w3までになりうる。C22:5w3を含まない株では、C20:5w3とC22:6w3の比率は約1:1から1:10をとり得る。付加的な高度不飽和脂肪酸、C22:5w6が先行技術の株のすべてを含むいくつかの株により産生される(C22:6w3脂肪酸と1:4の比率まで)。しかしながら、C22:5w6脂肪酸は、C20:4w6脂肪酸に逆変換されるため、食事療法用の脂肪酸としては望ましくないものと考えられている。本発明で説明したスクリーニング方法は、しかしながら、ω-6高度不飽和脂肪酸(C20:4w6もしくはC22:5w6)を全く(又は1%未満しか)含まないいくつかの株の単離を容易にする。
【0032】
本方法で生産されるもののような、微生物産物中のHUFAは、酸化条件に曝されると、より望ましくない不飽和脂肪酸または飽和脂肪酸に変換され得る。しかしながら、ω-3HUFAの飽和は、β-カロテン、ビタミンEおよびビタミンCのような合成抗酸化剤または天然由来の抗酸化剤を微生物産物に加えることによって減少または防止することができる。
【0033】
BHT,BHA,TBHQまたはエトキシキュインのような合成抗酸化剤またはトコフェロールのような天然の抗酸化剤を、収穫後細胞を加工している間に産物に加えることによって、食品または食餌製品に添加することができる。このように添加される抗酸化剤の量は、例えば、製品処方、包装法、および所望の棚寿命のようなその後の用途から要求される程度によって決められる。
【0034】
天然由来の抗酸化剤の濃度は、指数関数的増殖の間よりもむしろ定常段階で発酵物を収穫すること、低温で発酵にストレスをかけること、および/または培養基の溶存酸素濃度を高く維持することによって調整できる。さらに、天然由来の抗酸化剤の濃度は、温度、塩分濃度、および栄養分濃度のような培養条件を変化させることによって調節することができる。そのうえ、L-トリプトファンもしくはL-フェニルアラニンのようなビタミンEの生合成前駆体を、摂取とそれに引き続くビタミンEへの変換のために発酵培養基に添加できる。あるいは、抗酸化剤と共同して酸化を防止する化合物(例えば、アスコルビン酸、クエン酸、リン酸)を収穫の前に細胞によって取り込まれるために発酵物に加えることができる。さらに、痕跡量の金属、とくに二種以上の価数状態で存在し、適した酸化還元電位を持つもの(例えば、銅、鉄、マンガン、コバルト、ニッケル)の濃度は、加工細胞中でHUFAの自動酸化を生じさせるその可能性を最も小さくするように、最高の増殖のために必要な最小限に維持すべきである。
【0035】
収穫した細胞のバイオマスから抽出し得る他の産物としては、タンパク質、炭水化物、ステロイド、カロテノイド、キサントフィル、および酵素(例えば、プロテアーゼ)が挙げられる。ω-6脂肪酸を高レベルで産生する株も単離されている。そのような株は、ω-6脂肪酸を生産するのに有用であり、この脂肪酸はプロスタグランジンや他のエイコサノイドの化学的な合成に有用な原料である。全脂肪酸の25%以上をω-6脂肪酸として産生する株が本明細書に記載の方法によって単離されている。
【0036】
収穫したバイオマスは、(例えば、噴霧乾燥、トンネル乾燥、真空乾燥、もしくは類似の方法)で乾燥し、その肉あるいは産物が人間によって消費される任意の動物用の餌または食品補助物として使用できる。同様に、抽出したω-3高度不飽和脂肪酸は餌または食品補助物として使用できる。あるいは、収穫され、洗浄したバイオマスを直接(乾燥せずに)餌の補助物として使用できる。その棚寿命を延ばすために、湿ったバイオマスを酸性化(約pH=3.5〜4.5)し、および/または殺菌しあるいは瞬間的加熱して酵素を不活化し、その後、真空下または非酸化性雰囲気(例えば、窒素または二酸化炭素)下で缶詰、瓶詰あるいは包装できる。「動物」という用語は動物界に属する任意の生物を意味し、それから鳥肉、シーフード、牛肉、豚肉、羊肉が得られる任意のものを制限なく包含する。シーフードは、限定されないが、魚、海老、及び貝から得られる。「産物」という用語は、そのような動物から得られる肉以外の任意の産物を包含し、これらに制限されないが、卵や他の産物を含む。これらの動物に与えると、収穫したバイオマス中のω-3HUFAまたは抽出したω-3HUFAは、これらの動物の肉、卵、あるいはその他の産物に取り込まれ、それらのω-3HUFA含量が増大する。
【0037】
異なった動物では、所望のω-3HUFA含量を達成するのに様々な要件があることに注意すべきである。例えば、反芻動物では、動物がω-3HUFAを消化吸収する前に反芻胃の菌叢によって分解もしくは飽和されることからこの不飽和脂肪酸を保護するために、ω-3HUFA用にある種のカプセル化手法が必要となる。ω-3HUFAは、反芻胃中で消化できない(又は消化が遅い)タンパク質(例えばゼアイン)あるいは他の物質でオイルもしくは細胞をコーティングすることによって「保護」できる。これにより、脂肪酸は反芻動物の第一胃を損傷を受けることなく通過しうる。細胞もしくは油をコーティングする前に、タンパク質や他の「保護」物質を溶媒に溶解する。細胞は、保護剤でコーティングする前に、ペレット化しうる。高い食餌変換率(例えば、4:1〜6:1)を有する動物は、低い食餌変換率(2:1〜3:1)の動物と同等のω-3HUFAの取り込みを達成するのにより高い濃度のω-3HUFAを必要とするであろう。餌投与法は、収穫したバイオマスもしくは抽出したω-3HUFAを所望の結果をうるために与えなくてはならない動物の生活期間を考慮して、さらに最適化しうる。
【0038】
大部分の餌の投与において、収穫した細胞の油脂含量は約25〜50%afdwであり、他の成分はタンパク質及び炭水化物である。タンパク質は、評価した数種の株がすべて必須アミノ酸を持っているので、細胞の栄養物として有意に有益であり得、栄養的にバランスのとれたタンパク質と考えられる。
【0039】
好ましい方法では、ω-3HUFAを含有する新たに収穫され洗浄された細胞(ベルトろ過、回転ドラムろ過、遠心分離などで収穫)は、収穫した細胞ペーストの水含量を水分40%以下に減らすために、任意の乾燥粉砕穀物と混合することができる。例えば、トウモロコシを用いることができ、このような混合によって、細胞ペースト/トウモロコシ混合物を、通常の押出し方法を使用して、直接押出すことが可能となる。押出し温度と圧力は、押出し生成物における細胞破砕の程度(すべて完全細胞から100%破砕された細胞まで)を変えるために調節することができる。この方法での細胞の押出しは、穀物中の抗酸化剤のいくつかが脂肪酸を酸化から保護し、押出されたマトリックスもまた酸素が脂肪酸に容易に到達することからの保護に役立つので、ω-3HUFA含量を大きく減少させることはないと考えられる。合成のもしくは天然の抗酸化剤もまた、押出し前に細胞ペースト/穀物混合物に加えることができる。細胞ペースト/穀物混合物の直接押出しによって、乾燥時間とコストを大きく削減することができ、また、細胞破砕の程度によって、ω-3HUFAの生物学的利用度を調節できるようになる。望ましい細胞破砕の程度は、酸化の許容レベル(細胞破砕が進めば、酸化もおそらく増大する)及び押出し物質を消費する動物による生物学的利用度の要求される程度を含めた様々な因子に依存する。
【0040】
上述の方法によって単離される単細胞菌株はすぐに凝集し、沈澱する。このプロセスは、培地のpHを7.0以下に調整することによって促進しうる。この方法によって、簡単に1〜2分以内に細胞濃度を6倍にすることができる。従って、この方法は、収穫前に細胞を予備濃縮するため、あるいは窒素制限の前に極めて高密度にまで細胞を濃縮するために使用しうる。(脂質産生を高めるための)窒素制限は、従って、さらに小さい反応器中で行いうるし、あるいはいくつかの反応器からの細胞を一つの反応器に集約しうる。
【0041】
培養基から微生物細胞を回収するにあたって、多くの方法を使用しうる。好ましい回収プロセスでは、その方法で生産される細胞は、ろ過もしくは遠心分離のような従来法での分離によって培養基から回収される。その後、細胞を洗浄し;凍結、凍結乾燥、もしくは噴霧乾燥し;次いで加工食品または食餌製品に添加する前に(酸素が存在しないようにするために)二酸化炭素もしくは窒素のような非酸化性気体雰囲気下で貯蔵しうる。
【0042】
ω-3高度不飽和脂肪酸を含有する細胞脂質はまた、任意の適切な手段、例えば超臨界液体抽出あるいは、クロロホルム、ヘキサン、塩化メチレン、メタノール等の溶媒で抽出し、ついで抽出物を減圧下で蒸発して濃縮脂質材料を得ることによって、微生物細胞から抽出することもできる。この調製物中のω-3高度不飽和脂肪酸はさらに、脂質を加水分解し、ついで、尿素付加もしくは分別蒸留(Schlenk, 1954)、カラムクロマトグラフィー(Kates, 1986)のような伝統的な方法を用いて 、あるいは超臨界液体分別法(Hunter, 1987)によって高度不飽和分を濃縮し得る。また、細胞を破砕もしくは溶解し、脂質を植物油もしくは他の食用油で抽出することもできる(Borowitzka とBorowitzka, 1988)。抽出油は、植物油の精製に日常的に使用されている周知のプロセスで精製できる(例えば、化学的精製または物質的精製)。これらの精製プロセスにより、食用油として使用もしくは販売する前に、抽出油から不純物が除去される。精製プロセスは、抽出油のガム質除去、漂白、ろ過、脱臭及び磨きという一連のプロセスから成る。精製後、油は直接食餌もしくは食品添加物として使用して、ω-3HUFAに富む製品を製造することができる。あるいは、油を下記のようにさらに加工、精製し、ついで上述の用途や、薬学的用途に使用し得る。
【0043】
好ましいプロセス方法では、高純度ω-3HUFAまたは高純度HUFAの混合物を抽出油から容易に濃縮できる。収穫した細胞(新鮮なもしくは乾燥したもの)は、超音波処理法、液体せん断破砕法(例えば、マントン-ゴーリンホモジナイザーのフレンチプレス)、ビーズ磨砕、高圧下でのプレス法、凍結-解凍法、凍結プレス法、あるいは細胞壁の酵素的消化法のような周知の技術によって、破砕もしくは易浸透性にすることができる。破砕された細胞からの脂質は、ヘキサン、クロロホルム、エーテルまたはメタノールのような溶媒もしくは溶媒混合物を用いて抽出される。溶媒を除去し(例えば、溶媒を回収し再使用し得る真空ロータリーエバポレータによって)、ついで、塩基加水分解、酸加水分解もしくは酵素加水分解を含む、トリグリセリト類を遊離脂肪酸もしくは脂肪酸のエステルに変換する任意の周知の方法を用いて脂質を加水分解する。ω-3HUFAの分解を最少限とするために、加水分解はできる限り低温(例えば、室温から60℃)で、しかも窒素下で行わねばならない。加水分解が完了したのち、不ケン化物はエーテル、ヘキサンもしくはクロロホルムのような溶媒で抽出して除去する。その後、残りの溶液をHClのような酸の添加によって酸性化し、遊離脂肪酸をヘキサン、エーテルもしくはクロロホルムのような溶媒中へ抽出する。遊離脂肪酸を含む溶媒溶液を、その後、非HUFAが結晶化するのに充分低く、HUFAが結晶化する程は低すぎない温度に冷却する。典型的には、溶液を約−60〜約−74℃の範囲に冷却する。結晶化した脂肪酸(飽和脂肪酸、並びにモノ-、ジ-及びトリ-エン型脂肪酸)は、次いで、(溶液を冷却状態に保ちながら)ろ過、遠心分離あるいは沈積によって除去し得る。HUFAはろ液中(あるいは上清中)に溶解して残っている。ろ液(あるいは上清)中の溶媒を除去すると、ω-3HUFAまたは炭素鎖長が20以上のHUFAのいずれかの純度が90%以上の脂肪酸混合物が得られる。精製ω-3高度不飽和脂肪酸は、その後、食品添加物として、人間の栄養補助物に、あるいは薬学的用途に使用することができる。これらの用途のためには、精製脂肪酸をカプセル化したり、直接用いたりすることができる。その安定性を改善するために、抗酸化剤を脂肪酸に添加することができる。
【0044】
この方法の利点は、冷時結晶化の前に飽和脂肪酸とモノ不飽和脂肪酸を除去するために、尿素錯体法あるいは、超臨界二酸化炭素抽出や高速液体クロマトグラフィーのような他の高価な抽出法を行わずにすむことである。この利点は、魚油のような20にものぼる脂肪酸を含む複雑な油(飽和、モノ-、ジ-、トリ- 及びポリエン型脂肪酸が連続的にふくまれており、そのままでは一連の重なり合う結晶化温度を示す)よりもむしろ、トロウストチトリドが産生するような単純な脂肪酸組成からなる油(3〜4種の飽和もしくはモノ不飽和脂肪酸と3〜4種のHUFAで、脂肪酸の2つのグループはその結晶化温度がはっきりと分かれている)を原料として精製を行うことによりもたらされる。
【0045】
好ましい方法においては、ω-3HUFAに富んだ油はトロウストチトリウム属の株を培養して生産できる。任意のいくつかの周知の方法によって、細胞から油を抽出した後、主としてタンパク質と炭水化物から成る残りの抽出(脂質を除いた)バイオマスは殺菌して発酵槽に戻すことができる。その中で、トロウストチトリウムの株は栄養源(炭素と窒素源)として直接リサイクルできる。細胞のバイオマスを予備加水分解または予備消化することは必要ではない。最初に酸及び/または酵素処理により消化しておけば、トロウストチトリウム属の抽出バイオマスは同様の方法でリサイクルできる。
【0046】
上で詳しく述べたように、全細胞バイオマスを、人間の摂取あるいは動物の餌のために、ω-3高度不飽和脂肪酸含量及び加工食品の栄養価を高めるために、食品添加物として直接用いることができる。動物の餌として用いた場合には、ω-3HUFAは動物の肉あるいは他の産物中に取り込まれる。これらの脂肪酸を含む複合脂質はまた、溶媒で全細胞生成物から抽出でき、薬学的もしくは栄養の目的のために及び工業的用途に、より高濃度の形(例えば、カプセル化した形)で用いることができる。本発明の他の態様では、種々の病気の処置のために、上述のソースからのω-3HUFAを人間に投与することを包含する。
【0047】
本明細書中で、「処置」とは薬物を治療及び予防のために与えることの両方を意味する。ω-3HUFAの食餌療法上の価値は文献上広く認識されており、本発明にしたがって生産されたω-3HUFAの人間による摂取は、脳血管疾患、炎症及び/または免疫疾患並びに癌の処置に有効である。
【0048】
本発明を実施例によりさらにくわしく説明する。上記の選択基準に適合する種はこれまで先行技術において記載されていない。これらの選択基準を用いることによって、本発明者は、スクリーニングした約1000のサンプルから25以上の潜在的に期待のもてる株を単離した。American Type Culture Collection(ATCC)の約20,500株の中で、10株が本発明者が単離した株と同じ分類学上のグループに属することがあとになって同定された。そのCollection中で、まだ生きているそれらの株を入手し、かつ使用して上述の方法で単離し培養した株と比較した。この比較の結果を下記の実施例5及び6に示す。
【0049】
本願の原出願を出願してから、最近の進展によりトロウストチトリドの分類の改訂があった。最新の分類理論学者はそれらを藻類と一緒にしている。しかしながら、依然として残されている分類学上の不確かさのために、それらの株をトロウストチトリドとして考えることが本発明の目的において最良であろう(目;トロウストチトリアレ(Thraustochytriales),族;トロウストチトリアセ(Thraustochytriaceae), 属;トロウストチトリウム(Thraustochytrium)またはシゾチトリウム(Schizochytrium))。最新の分類学上の変更を以下に概括する。
【0050】
本明細書中に開示し、クレームした単細胞微生物のすべての株はトロウストチトリド目のメンバーである。トロウストチトリド(ヤブレツボカビ類)は数奇な分類上の歴史をもつ海の有核生物である。トロウストチトリドの分類学上の位置についての問題は、最近、Moss(1986)、とBahnweb とJackle(1986)、及びとChamberlain とMoss(1988)によって概括されている。便宜上、トロウストチトリドは最初、分類学者によって、藻菌類(藻類様菌類)の中の他の無色のべん毛菌類と共に位置づけられた。しかしながら、藻菌類の名は、結局は分類学上の地位から脱落し、トロウストチトリドは卵藻類の中にとどまった(二べん毛べん毛菌類)。卵藻類はヘテロコント藻類に関係づけられると最初仮定され、ついにはBarr(1983)によりまとめられた広汎な超微細構造また生化学的な研究からこの仮定が支持された。卵藻類は事実、Leedal(1974)と他の藻類学者によって、ヘテロコント藻類の一部であるとして受け入れられた。しかしながら、それらのヘテロトロピックな性質に起因して便宜的に、卵藻類とトロウストチトリドは、藻類学者(藻類を研究する学者)よりも、菌類学者(菌類を研究する学者)によって多く研究されてきた。
【0051】
他の分類学的な観点から、革新的な生物学者の間で、有核生物がどのようにして発生したかについて、考え方での二つの一般的な学派が生まれた。一つの理論では、一連の内部共生を通して膜結合性オルガネラの外因性の起源を提案している(Margulis(1970);例えば、ミトコンドリアはバクテリヤの内部共生に由来し、クロロプラストは卵藻類に、また、フラケラはスピロヘータに由来)。他の理論は、オートジーンプロセスを経て、原核生物の先祖の非膜結合性システムから膜結合性オルガネラが徐々に発生したことを示唆している(Cavalier-Smith 1975)。この両者の革新的生物学者のグループは、しかしながら、卵藻類とトロウストチトリドを菌類から除き、それらを褐色植物界の褐色藻類に(Calvalier-Smith 1981)、あるいはプロトクチスタ(Protoctista)界のすべての藻類の中に(Margulis とSagan 1985)位置づけている。
【0052】
電子顕微鏡の発達に伴い、トロウストチトリドの2つの属、トロウストチリウムとシゾチトリウムの遊走子の超構造についての研究(Perkins 1976;Kazama 1980;Barr 1981)は、トロウストチトリアセ(ヤブレツボカビ)は卵藻類とかなり離れた関係にあることの良い証拠を提供している。さらに、5SリボソームRNA配列の対応分析(多変量統計の形)を示すより最近の遺伝子データは、トロウストチトリアレは明らかに、有性生物中で特異なグループであって、菌類とは完全に分離され、紅藻類及び褐藻類並びに卵藻類の仲間と最も密接な関係にあることを示している(Mannella 他、1987)。しかしながら最近、大部分の分類学者は卵藻類からトロウストチトリドを除くことに同意している(Bartnicki-Garcia, 1988)。
【0053】
まとめると、Cavalier-Smith (1981, 1983) の分類システムを使用すれば、トロウストチトリドは4つの植物界の1つである、褐色植物界の中の褐色(chro-mophyta)藻類に分類される。これにより、それらは、Eufungi 界にすべてが位置する菌類とは完全に異なった界に位置づけられる。従って、トロウストチトリド類の分類学的な位置は以下のようにまとめられる。
界: 褐色植物(クロモフィタ)
門: ヘテロコンタ
目: トロウストチトリアレ
族: トロウストチトリアセ(ヤブレツボカビ)
属: トロウストチトリウムまたはシゾチトリウム
より上位の分類である界及び門の中での分類学的な位置づけは不明確であるにもかかわらず、トロウストチトリドは、そのメンバーを依然として、トロウストチトリアレ目の中に分類可能な区別しうる特徴的なグループとして存在している。
【0054】
ω-3高度不飽和脂肪酸は、人間及び動物の双方にとって、栄養として重要な脂肪酸である。現在、市販されている唯一のこれらの脂肪酸源は魚油からのものである。しかしながら、魚油を食品もしくは餌の添加物あるいは補助物として用いる場合には、いくつかの重大な問題が存在する。第一の、そして最も重大なものとして、魚油は強烈な魚臭及び魚味を有し、そのままでは食用製品にマイナスの影響を与えることなく加工食品に添加物として加えることはできない。このことは、動物の食品または餌の添加物としてのその多くの用途においても同様である。例えば、本発明者や他の人々による実験で、魚油を多く含む餌を数日以上与えると、産卵めんどりはその餌を直ちに嫌いになることが明らかとなっている。魚油は非常に不安定であり、すぐに腐敗臭がするようになり、これにより餌のおいしさ及び栄養価が減少してしまう。
【0055】
第二に、魚油は一般に20〜30%のω-3HUFAしか含んでいない。海の幼魚及び海老の餌中に望ましいω-3HUFA含量はその乾燥重量の5〜10%程度でありうる。5〜10%のω-3HUFAを含む好適な合成食料を構成するためには、15〜30%が魚油の食料を必要とする。このような合成食料は、これらの幼い生物にとって、おいしさ、消化性、あるいは安定性のいずれかの点で最適のものではない(Sargent 他、1989)。人間の栄養という観点では、魚油中の他の70〜80%の脂肪酸は飽和脂肪酸及びω-6脂肪酸であり、人間にとって健康に悪影響を及ぼしうる。魚油から純粋なω-3脂肪酸を単離するプロセスを含むとコストがかかり、得られる純粋な形の脂肪酸は極めて高価(200〜1000ドル/g)なものとなり、食品や餌の添加物として使用するにはあまりにも高価すぎる(Sigma Chemical, Co., 1988; CalBiochem Co., 1988)。
【0056】
第三に、農産物産業で現在使用されている大部分の餌は穀物をベースとする餌であり、そのままではω-3HUFA含量は比較的低い。最近の海産物の調査において、水産養殖場で製造された魚及び海老は、一般に、野性の捕獲された魚や海老のω-3HUFA含量の1/3〜1/2しか有していないことが明らかとなっている(Pigott, 1989)。水産養殖生物は、多くが、そのマイルドさ、魚臭がしないことのゆえに賞賛されているが、その食品の魚油含量を増加させることは、魚の味のする製品としてしまう点で、有効なことではない。
【0057】
上述した問題の結果として、ω-3HUFAの別の(魚由来でない)源を開発することが重要な課題として存在する。
【0058】
本発明の微生物産物は、食品あるいは餌の補助物として使用でき、従来の源に比べて優れた利点を有するω-3高度不飽和脂肪酸のより良い源を提供する。この微生物産物を添加した食料で養われた家禽は、ω-3高度不飽和脂肪酸を体組織や卵に取り込む。この卵は、全く魚臭がしないし、魚の味もしない。また、黄身の色にも変化は全くない。家禽は、魚油添加食餌のときのようには、その添加食餌を食べることを止めない。本発明の微生物産物を添加した餌は、通常の棚寿命をもち、数日間室温で放置しても腐敗臭を発しない。本発明にしたがって、飼育された家禽の卵及び肉は、ω-6脂肪酸含量は低く、魚臭は全くしないままで、ω-3高度不飽和脂肪酸源として、人間の栄養物に有用である。
【0059】
本発明の微生物産物は、また、水産養殖で生産された魚、海老、及び他の産物に対するω-3高度不飽和脂肪酸源としても価値がある。産物は餌に補助物として直接添加することができ、あるいは水産養殖産物によって消費するための塩水海老、又は他の生きた餌生物に食べさせることもできる。このような補助物を用いることによって、養殖によってもたらされる食味上の利点を保持し、一方ω-6脂肪酸含量が減少した付加的な健康上の利点を伴った野性の魚のような高いω-3高度不飽和脂肪酸含量を有する改良された製品を、魚や海老養殖業者が市場に出すことが可能となる。
【0060】
〔実施例1〕
収集とスクリーニング
浅い、内陸部の塩水池から150mlの水試料を収集し、滅菌したポリエチレン瓶に保存した。水試料とともに、いくらかの生きた植物材料と天然由来の破片(分解しつつある植物および動物分)が含まれるように特に努力した。実験室に戻るまで、試料を氷上においた。実験室で、水試料を15〜30秒振とうし、以下の2つのタイプのフィルターを有するフィルターユニットに、1〜10mlの試料をピペットでとり注入した。2つのフィルターは、 1)上部に、孔経約25μmで、直径47mmの滅菌したワットマン#4フィルター及び 2)ワットマンフィルターの下に、孔経約1.0μmで直径47mmのポリカーボネートフィルターである。フィルターの公称孔径をこのように少し変えることによって、ポリカーボネートフィルター上に集められた細胞の大きさが約1.0μm〜約25μmの範囲となる。
【0061】
ワットマンフィルターは取り出して捨てた。ポリカーボネートフィルターをペトリ皿中の個体F-1培養基上においた。この培養基は、1リットル当り以下のものを含んでいた:海水(人口海水を使用できる)600ml,蒸留水400ml,寒天10g,グルコース1g,タンパク質加水分解物1g,酵母エキス0.2g,0.1MKH2PO4 2ml,ビタミン溶液(A-vits),(100ml/lのチアミン、0.5mg/lのビオチン、及び0.5mg/lのシアノコバラミンを含む)1ml,微量金属混合物5ml(PII金属、1リットル当り、Na2EDTA 6.0g、FeCl3・6H2O 0.29g、H3BO3 6.84g、MnCl2・4H2O 0.86g、ZnCl2 0.06g、CoCl2・6H2O 0.29g、(NiSO4・H2O 0.052g、CuSO4・5H2O 0.002g、と Na2MoO4・2H2O 0.005g、並びに500mgづつのストレプトマイシン硫酸塩及びペニシリンG。寒天プレートは暗所、30℃でインキュペートした。2〜4日後、無数のコロニーがフィルター上に出現した。単細胞菌類(酵母を除く)のコロニーをプレートから取り出して、同様組成の新しい培養基プレート上に再ストリークした。無色または白色の細胞からなるすべてのコロニーを取り出すように特に注意を払った。新しいプレートを30℃でインキュベートし、2〜4日のインキュベート期間の後に、単一コロニーを取り出した。単一コロニーを取りだし、次いで寒天プレート中と同じ有機分増強物を含む50mlの液体培養基にいれた。この培養基を回転振とうテーブル(100〜200rpm)上、30℃で2〜4日間インキュベートした。培養物が最大密度に到達したと思われたときに、20〜40mlの培養物を収穫し、遠心にかけ、そして凍結した。その後、試料を標準的なよく知られたガスクロマトグラフィー法(例えば、Lepage とRey、1984)によって分析し、その株の脂肪酸含量を同定した。これにより、ω-3高度不飽和脂肪酸を含む株を同定し、これの株の培養物をさらにスクリーニングにかけた。
【0062】
上記した収集法及びスクリーニング法を用いて、150を越える単細胞菌類の株が単離された。これらの株は、灰分を除いた全細胞乾燥重量の32%までのω-3高度不飽和脂肪酸含量を有し、15〜48℃の範囲の温度で増殖する。1%未満の(全脂肪酸に対する%として)望ましくないC20:4w6及びC22:5w6高度不飽和脂肪酸を含む株も単離することができる。これらの菌類の株は、上記した方法を用いて、同じ場所から繰り返し単離できる。二、三の新たに単離された株は、大変よく似た脂肪酸プロフィールを有する。幾つかのものは同じ株の二重の単離物である可能性も現在のところ否定できない。塩分許容性あるいは種々の炭素源及び窒素源の使用能力のような他の望ましい特徴についてさらにスクリーニングすることも、同様の方法を用いてその後行うことができる。
【0063】
〔実施例2〕
非制限的細胞増殖の維持:リン
実施例1の方法で単離した株、トロウストチリウム sp.U42-2(ATCC番号20891)の細胞を固体F-培養基から取りだし、50mlの修飾FFM培養基(Fuller 他,1964)に接種した。この培養基は、海水 1000ml;グルコース 1.0g;ゼラチン加水分解物 1.0g;肝臓エキス 0.01g;酵母エキス 0.1g;PII金属類 5ml;1mlのB-ビタミン類溶液(Goldstein 他、1969);および1mlの抗生物質溶液(25g/lのストレプトマイシン硫酸塩とペニシリンG)を含む。1.0mlのビタミンミックス(pH7.2)は、チアミン塩酸塩 200μg;ビオチン 0.5μg;シアノコバラミン 0.05μg;ニコチン酸 100μg;パントテン酸カルシウム 100μg;リボフラビン 5.0μg;ピリドキシン塩酸塩 40.0μg;ピリドキサミン二塩酸塩 20.0μg;p-アミノ安息香酸 10μg;クロリン塩酸塩 500μg;イノシトール 1.0mg;チミン 0.8mg;オロチン酸 0.26mg;フォリニン酸 0.2μg、及び葉酸 2.5μg含む。この培養基 50mlの入った250mlの三角フラスコを27℃のオービタル振とう器(200rpm)上に2〜4日間置いた。この時点で培養物はその最高密度に達した。この培養物の1mlを、1リットル当り以下の処理剤の1つを余分に添加した修飾FFM培養基の入った新しいフラスコに移した: 1)1mlのB-ビタミンミックス; 2)1mlのA-ビタミン溶液; 3)5mlのPII金属類; 4)2mlの0.1MKH2PO2(〜28mg); 5)2、3、及び4の処理剤の組み合わせ;並びに 6)480mgのKH2PO4。培養物の1mlを、また、余分の添加剤を含まない修飾FFM培養基のフラスコに接種し、実験におけるコントロールとした。培養物を回転振とう器(200rpm)上、27℃で48時間インキュベートした。その後、細胞を遠心分離によって収穫し、脂肪酸をガスクロマタグラフィーで定量した。その結果を図1及び表1に示す。図1においては、収量をコントロールとの比としてプロットしてあり、従ってコントロールの相対的収量は1.0である。1〜6の処理は次の通り: 1)2×Bビタミン類の濃度; 2)2×Aビタミン類の濃度; 3)2×微量金属類の濃度; 4)2×(Bビタミン類+リン酸塩+微量金属類)の濃度; 5)2×リン塩酸の濃度;及び6)50ml当り24mgのリン酸塩(1リットル当り0.48g)。1リットル当り0.48gのKH24を添加する処理のみが、増殖の促進をもたらし、また有意に
増大した脂肪酸収量をもたらした。
【0064】
【表1】

【0065】
〔実施例3〕
非制限的生長の維持:PO4及び酵母エキス
シゾチトリウムアグレガタム(Schizuchytrium aggregatum)(ATCC番号28209)の細胞を固体F-1培養基から取り出して、50mlのFFM培養基に接種した。培養物を27℃の回転振とう器(200rpm)上に置いた。3〜4日後、この培養物の1mlをそれぞれ以下の処理剤 50mlに移した: 1)FFM培養基(コントロ-ルとして);及び 2)KH2PO4 250mg/l及び酵母エキス250mg/lを添加したFFM培養基。これらの培養物を27℃の回転振とう器(200rpm)上に48時間置いた。細胞を収穫し、細胞の収量を定量した。処理1において、灰分を除いた乾燥重量基準で、細胞の最終濃度は616mg/lであった。処理2では、細胞の最終濃度は1675mg/lであり、培養基中のPO4 及び酵母エキスの濃度の増大が促進効果を与えることを示している。
【0066】
〔実施例4〕
非制限的生長の維持:酵母エキスをコーン浸漬液に代替
シゾチトリウム sp.S31(ATCC番号20888)の細胞を固体F-1培養基から取りだし、50mlのM-5培養基にいれた。この培養基は、(1リットル当りに)、NaCl 25g;MgSO4・7H2O 5g;KCl 1g;CaCl2 200mg;グルコ-ス 5g;グルタメ-ト 5g;KH2PO4 1g;PII金属類 5ml;A-ビタミン溶液 1ml;及び抗生物質溶液1mlからなっている。溶液のpHを7.0に調整し、溶液をフィルタ-滅菌した。コーン浸漬液(4g/40ml;pH7.0)及び酵母エキス(1g/40ml;pH7.0)の滅菌溶液を調製した。M-5培養基フラスコ1セットに、次の量の酵母エキス溶液を加えた: 1)2ml; 2)1.5ml; 3)1ml; 4)0.5ml;及び 5)0.25ml。M-5培養基フラスコの他の1セットには、以下の量の酵母エキス及びコーン浸漬液を加えた: 1)2mlの酵母エキス; 2)1.5mlの酵母エキスと0.5mlのコーン浸漬液; 3)1.0mlの酵母エキスと1.0mlのコーン浸漬液; 4)0.5mlの酵母エキスと1.5mlのコーン浸漬液;及び 5)2mlのコーン浸漬液。F-1培養基中の培養物1mlを用いて各々のフラスコに接種した。それらを27℃の回転振とう器上に48時間置いた。細胞を遠心分離器によって収穫し、細胞の収量を(灰分を除いた乾燥重量として)定量した。結果を表2に示す。この結果は、培養器の0.8g/lまで酵母エキスを添加すると細胞収量が増加することを示している。しかしながら、コーン浸漬液の添加はさらに効果的であり、酵母エキスの添加処理での収量の2倍という結果が得られた。コーン浸漬液は酵母エキスに比べてより安価であるので、このことは、細胞の経済的な生産にとって極めて好都合である。
【0067】
【表2】

【0068】
〔実施例5〕
ATCC株(従来から知られていた株)に比べて、実施例1の方法で単離された株の高度不飽和脂肪酸含量が多いこと。
実施例1に記載された方法に従って選択された、151の新たに単離された株のバッテリーを指数増殖期の後期にサンプリングし、気液クロマトグラフィーにより、高度不飽和脂肪酸含量を定量的に分析した。すべての株は、細胞が最高の収量を与える、M1培養基あるいは液体FFM培養基のいずれかの中で増殖させた。さらに、五つの先に単離されていたトロウストチリウムまたはシゾチトリウム種を、American Type Culture Collection から得、この機関から生きた状態で得られるすべての株の代表とした。T.オウレウム(ATCC番号28210)、T.オウレウム(ATCC番号34304)、T.ロゼウム(ATCC番号28210)、T.ストライチューム(ATCC番号34473)と S.アグレガチューム(ATCC番号28209)。これらの株はすべて従来の培養基中で成長を示し、一般にM5培養基及びFFM培養基を含む本発明の培養基中でより向上した増殖を示す(実施例2)。既知の株のそれぞれの脂肪酸産生は、本発明の培養基中で株のより向上した成長に基づいて、上述のように、測定した。
【0069】
脂肪酸のピ-クは構造既知の純粋化合物を用いて同定した。全脂肪酸の重量%としての定量は、クロマトグラフのピークの積分によって行った。同定した化合物は、パルミチン酸(C16:0)、C20:4w6とC22:1(使用したシステムではピークが分離しなかった)、C20:5w3、C22:5w6、C22:5w3及びC22:6w3であった。通常低分子量脂肪酸である残余は、「他の脂肪酸」のカテゴリーの中に一括して含ませた。全ω-3脂肪酸は、20:5w3、22:5w3及び22:6w3の総和として計算した。全ω-6脂肪酸は、20:4/22:1ピークと22:5w6ピ-クの総和として計算した。
【0070】
結果を表3〜4に示し、また図2〜4に示した。表3から、多くの数の株が本発明の方法で単離することができ、また多くの数の株が幾つかの重要な基準において従来公知の株よりも優れている。例えば、102の株が全脂肪酸の少なくとも7.8重量%のC20:5w3を産生し、この脂肪酸の%は従来公知のどの株よりも高い。株23B(ATCC番号20892)及び12B(ATCC番号20890)がそのような株の例である。本発明の30の株が、従来公知のどの株よりも多い、全脂肪酸の少なくとも68重量%をω-3脂肪酸として産生した。株23B(ATCC番号20892)がそのような株の一例である。本発明の76の株が人間の食品成分として望ましくないと考えられるω-6脂肪酸として、全脂肪酸の10重量%未満を産生し、この量は従来公知のどの株よりも少ない。株23B(ATCC番号20892)及び12B(ATCC番号20890)がそのような株の例である。さらに、従来公知のどの株よりも多い、全脂肪酸の25重量%以上をω-6脂肪酸として産生する本発明の株が35ある。このような株は食品用途には役立たないが、ω-6脂肪酸を原料とするエイコサノイドの化学合成用に餌として有用である。
【0071】
さらに、デ-タから、本発明の多くの株が全ω-3脂肪酸のうち高比率をC22:6w3として産生することを示している。表4では、表2で示した48の株を、従来公知の株と比較して、C20:5w3、C22:5w3及びC22:6w3の それぞれを全ω-3含量の重量%で示している。15の株が、従来公知のどの株 よりも多い、全ω-3脂肪酸の少なくとも94%をC22:6w3として有していた。株S8(ATCC番号20889)がそのような株の一例であった。18の株が、従来公知のどの株よりも多い、全ω-3脂肪酸の少なくとも28重量%を C20:5w3として有していた。株12B(ATCC番号20890)がそのような株の一例であった。
【0072】
図2は、67%より多いω-3脂肪酸(全脂肪酸の%として)及び、10.6%未満のω-6脂肪酸(全脂肪酸の%として)を有する、実施例1の方法で単離した一連の株を示している。すべての従来公知の株は、67%未満のω-3脂肪酸(全脂肪酸の%として)及び10.6%より多いω-6(全脂肪酸の%として)を有していた。
【0073】
図3は、67%より多いω-3脂肪酸(全脂肪酸の%として)及び7.5%より多いC20:5w3(全脂肪酸の%として)を有する、実施例1の方法で単離した一連の株を示している。すべての従来公知の株は、67%未満のω-3脂肪酸(全脂肪酸の%として)及び7.8%未満のC20:5w3(全脂肪酸の%として)を有していた。
【0074】
【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【0075】
【表8】

【表9】

【表10】

【0076】
〔実施例6〕
ATCC株(従来公知の株)に比べて、実施例1の方法で単離した株が向上された成長速度を示すこと。
シゾチトリウム sp.S31(ATCC番号20888)、シゾチリウム sp.S8(ATCC番号20889)、トロウストチリウム sp.S42、トロウストチリウム sp.U42-2、トロウストチトリウム sp.S42とU30(すべて実施例1の方法で単離)及びトロウストチトリウム、オウレウム(ATCC番号28211)及びシゾチトリウム、アグレガタム(ATCC番号28209)(従来公知の株)を固体F-1培養基からとり、M-5培養基50mlに入れた。この培養基は(1リットル当りで)、酵母エキス 1g;NaCl 25g;MgSO4・7H2O5g;KCl 1g;CaCl2 200mg;グルコース 5g;グルタミン 5g;KH2PO4 1g;PII金属類 5ml;A-ビタミン溶液 1ml;抗生物質 1mlからなっていた。溶液のpHを7.0に調節し、溶液をろ過して滅菌した。オービタル振とう器(200rpm,27℃)上で3日間増殖した後、各々の培養物1〜2mlを他のフラスコのM-5培養基に移し、2日間振とう器上に置いた。次いで培養物(1〜2ml)をM-5培養基の入った他のフラスコの移し、振とう器上に1日置いた。この方法により、すべての培養物が増殖の指数期にあることを確実なものとした。これらの後期培養物を、次いで、各々の株についてM-5培養基のはいった2つの250mlフラスコに接種するのに用いた。その後、これらのフラスコを25℃と30℃で振とう器上に置き、それらの光学密度の変化をベックマンDB-G分光光度計(660nm,1cm光路長)でモニターした。光学密度の読取りは、0,6,10,14,17.25,20.25及び22.75の各時間に行った。次いで、指数増殖速度(倍化/日)を、Sorokin(1973)の方法によって、光学密度のデータから算出した。結果を表5に示し、また(25℃での株U30の増殖に対して正規化して)図5に示す。データから、実施例1の方法で単離した株は、従来公知のATCC株に比べて、持続的な増殖に必須の最適リン酸濃度においてすら、25℃及び30℃の両方で、はるかに大きい増殖速度を有していることが明かである。冷たい南極海の水から単離したトロウストチトリアレ目の株は、30℃では増殖しないことが判る。
【0077】
【表11】

【0078】
〔実施例7〕
ATCC株(従来技術の株)に比べて、実施例1の方法で単離した株がより良好な産生特性(増殖及び脂質誘起)を示すこと。
シゾチトリウム sp.S31(ATCC番号20888)、シゾチトリウム sp.S8(ATCC番号20889)(両方とも実施例1の方法で単離)、及びトロウストチトリウム オウレウム(ATCC番号28211)、シゾチトリウム アグレガタム(ATCC番号28209)(従来技術の株)の細胞を固体F-1培養基から取り、50mlのM-5培養基(実施例5参照)に入れた。容器のpHを7.0に調整し、溶液をろ過滅菌した。オ-ビタル振とう器(200rpm,27℃)上で3日間増殖させた後、各々の培養物の1〜2mlをM-5培養基の入った他のフラスコの移し、2日間振とう器上に置いた。次いで、これらの培養物それぞれの灰分を除いた乾燥重量を素早く測定し、3.29mgの各培養物を50mlのM-5培養基を含む2つの250ml三角フラスコにピペットで入れた。これらのフラスコを回転振とう器(200rpm,27℃)上に置いた。24時間後、各培 養物の20mlづつを遠心分離し、上清を捨て、グルタメート(窒素源)を含まない50mlのM-5培養基を含む250mlの三角フラスコに細胞を移した。フラスコを振とう器上に再び置き、さらに12時間経た後、サンプリングして、灰分を除いた乾燥重量を測定し、またLepage とRoy(1984)の方法により脂肪酸含量を定量した。結果を(従来公知の株、ATCC番号28211の収量を基に正規化して)図6に示す。この結果から、実施例1の方法で単離した株は、従来技術のATCC株よりも、指数増殖と窒素制限(脂質誘起のため)の組み合せの下、同じ時間の間に、灰分を除いた乾燥重量で2〜3倍多く産生することが認められる。さらに、本発明の株では、全脂肪酸及びω-3脂肪酸の収量が向上し、株S31(ATCC番号20888)では、従来技術のATCC株に比べてω-3脂肪酸を3〜4倍多く産生した。
【0079】
〔実施例8〕
実施例1の方法で単離した株による向上した塩分許容性と脂肪酸産生
シゾチトリウム sp.S31(ATCC番号20888)とトロウストチトリウム sp.U42-2(ATCC番号20891)(両方とも実施例1の方法で単離し、スクリーニングした)、及びS.アグレガタム(ATCC番号28209)とT.オウレウム(ATCC番号28210)(American type Culture Collectionより入手)の4種のトロウストチトリウムの株を固体F-1培養基から取り、回転振とう器(200rpm)上、27℃で3〜4日間インキュベートした。ある範囲の異なった塩分濃度の培養基を、M培養基塩類(NaCl,25g/l;MgSO4・7H2O,5g/l;KCl,1g/l;CaCl2,200mg/l)を以下のように希釈して調整した。 1)100%(w/v M培養基塩類; 2)80%(v/v)M培養基塩類、20%(v/v)蒸留水; 3)60%(v/v)M培養基塩類、40%(v/v)蒸留水; 4)40%(v/v)M培養基塩類、60%(v/v)蒸留水; 5)20%(v/v)M培養基塩類、80%(v/v)蒸留水; 6)15%(v/v)M培養基塩類、85%(v/v)蒸留水; 7)10%(v/v)M培養基塩類、90%(v/v)蒸留水; 8)7%(v/v)M培養基塩類、93%(v/v)蒸留水; 9)3%(v/v)M培養基塩類、97%(v/v)蒸留水; 10)1.5%(v/v)M培養基塩類、98.5%(v/v)蒸留水)。以下の栄養物を処理物に加えた(1リットル当り):グルコース 5g;グルタメート5g;酵母エキス 1g;(NH42SO4 200mg;NaHCO3 200mg;KH2PO4 1g/l;PII金属類 5ml;A-ビタミン溶液 1ml;及び抗生物質溶液 2ml。これらの処理物のそれぞれ50mlにF-1培養基中で増殖している細胞1mlを接種した。これらの培養物をオ-ビタル振とう器(200rpm)上に置き、27℃で48時間維持した。細胞を遠心分離器によって収穫し、脂肪酸をガスクロマトグラフィーで定量した。結果を図7に示す。実施例1の方法で単離したトロウストチトリウム sp.U42-2(ATCC番号20891)は、T.オウレウム(ATCC番号28210)の産生した脂肪酸のほぼ2倍、またS.アグレガタム(ATCC番号28209)の産生した脂肪細胞酸量の8倍以上を産生することができる。さらに、U42-2は、試験した塩分範囲の上限において、より広い塩分許容量を有すると思われる。やはり実施例1の方法で単離したシゾチトリウム sp.S31(ATCC番号20888)は、従来公知のATCC株に比べて、より多い脂肪酸収量(従来公知のATCC株の収量の2.5〜10倍)及び極めて広い範囲の塩分濃度許容性を示した。そのうえ、シゾチトリウム sp.S31(ATCC番号20888)は極めて低い塩分濃度で最も良く成長する。この性質は、塩水の金属製反応器への腐食作用及び、塩水の廃棄に伴う問題の両方の理由で、工場的生産を考えた場合に重要な経済的な利点をもたらす。
【0080】
〔実施例9〕
培養/低塩分濃度
250mlの三角フラスコ中のM/10-5培養基の50mlを、寒天傾斜培養物から取ったシゾチトリウム sp.S31(ATCC番号20888)のコロニーで接種した。このM/10-5培養基は、脱イオン水 1000ml,NaCl 2.5g,MgSO4・7H2O 0.5g,KCl 0.1g,CaCl2 0.02g,KH2PO4 1.0g,酵母エキス 1.0g,グルコ-ス 5.0g,グルタミン酸 5.0g,NaHCO3 0.2g,PII微量金属類 5ml,ビタミンミックス 2ml,及び抗生物質ミックス 2mlを含有している。培養物は30℃で回転振とう器(200rpm)上でインキュベートした。2日後、培養物は、中程度の密度であり、活発に増殖していた。この活発に増殖している培養物の20mlを、グルコ-スとグルタメートの濃度を40g/リットル(M/10-40培養基)とした以外は同じ培養基1700mlを含む2リットルの発酵槽に接種するのに使用した。発酵槽は30℃に保ち、1vol/vol/minでエアレーションし、300rpmで撹拌した。48時間後、発酵槽中の細胞濃度は21.7g/lとなった。細胞を遠心分離して収穫し、冷凍し、窒素下に保存した。
【0081】
全脂肪酸含量及びω-3脂肪酸含量はガスクロマトグラフィーにより測定した。最終生成物の全脂肪酸含量は、灰分を除いた乾燥重量で29.0%であった。微生物産物のω-3高度不飽和脂肪酸含量(C20:5w3,C22:5w3及びC 22:6w3)は灰分を除いた乾燥重量の15.6%であった。試料の灰分含量は7.0%であった。
【0082】
〔実施例10〕
実施例5に記した種々の株の増殖及び脂肪酸産生のガスクロマトグラフィーでの分析によって、脂肪酸分布の違いが明かとなった。本発明の株は、従来入手可能な株よりも、より少ない種類の脂肪酸を合成した。分離すべき不純物が少ないので、脂肪酸分散が小さなことは好都合である。食品補助物としての目的のためにも、望ましくない脂肪酸を摂取する可能性が減るので、脂肪酸の種類が少ないことは好都合である。表6は、ATCC記号で表示した従来公知の株及び種々の本発明の株について、全脂肪酸の1重量%を越える濃度で存在する高度不飽和脂肪酸の種類の数を示している。
【0083】
【表12】

【0084】
〔実施例11〕
回 収
250mlの三角フラスコ中のM5培養基50mlを、寒天傾斜培地から取ったシゾチトリウム sp.S31(ATTC番号20888)の1つのコロニーで接種した。M/5培養基は、脱イオン水 1000ml,NaCl 25.0g,MgSO4・7H2O 5.0g,KCl 1.0g,CaCl2 0.2g,KH2PO4 1.0g,酵母エキス 1.0g,グルコース 5.0g,グルタミン酸 5.0g,NaHCO3 0.2g,PII微量金属類 5ml,ビタミンミックス 2ml,及び抗生物質ミックス 2mlを含有する。培養物は30℃で回転振とう器(200rpm)上でインキュベートした。2日後、培養物は、中程度の密度となり、活発に増殖していた。この活発に増殖している培養物の20mlを、グルコ-スとグルタメートの濃度を40g/リットル(M/20培養基)に増加させたことを除いて同じ培養基1000mlを含む1リットルの発酵槽に接種するのに使用した。発酵槽は30℃でpH7.4に保ち、1vol/minでエアレーションし、また400rpmで撹拌した。48時間後、発酵槽中の細胞濃度は18.5g/lであった。発酵槽のエアレーション及び撹拌を止めた。2〜4分以内に、細胞は凝集し、発酵槽の底の250mlに沈澱する。この細胞の濃縮したゾーンは72g/lの細胞濃度を有していた。この細胞ゾーンを、発酵槽からサイフォンで取りだし、そして(1)窒素制限期間のあいだ他の反応器に移すか(例えば、幾つかの発酵槽の高度に濃縮された産生物を一緒にして)、あるいは(2)遠心分離またはろ過によって直接収穫することができる。このように細胞を予め濃縮することにより、60〜80%も少ない水を細胞の回収のために処理することになる。
【0085】
〔実施例12〕
種々の炭素源及び窒素源の利用
250mlの三角フラスコ中のM5培養基50mlを寒天傾斜培養物から取ったシゾチトリウム sp.S31(ATCC番号20888)またはトロウストチトリウム sp.U42-2(ATCC番号20891)の1つのコロニーで接種した。M5培養基は2mlのビタミンミックスと2mlの抗生物質ミックスを除いて実施例4に記載したものと同じである。培養物を回転振とう器上(200rpm)、30℃でインキュベートした。2日後、培養物は中程度の密度となり、活発に増殖していた。この培養物を、グルコースの代りに(5g/lで)次の1つのもの:デキストリン、ソルビトール、フルクトース、ラクトース、マルトース、スクロース、コーンスターチ、小麦デンプン、じゃがいもデンプン、粉砕コ-ン;あるいはグルタメートの代りに(5g/lで)次の1つのもの:ゲリゼート、ペプトン、トリプトン、カゼイン、コーン浸漬液、尿素、ナイトレート、アンモニウム、ホエーまたはコーングルテンミール、と置き換えたM5培養基の入ったフラスコに接種するのに用いた。培養物を回転振とう器(200rpm,27℃)上で48時間インキュベートした。種々の有機基質上での増殖を示す、相対的な培養物濃度を表7〜8に示す。
【0086】
【表13】

【0087】
【表14】

【0088】
〔実施例13〕
エビのω-3HUFA含量を増大させるためのトロウストチトリドベースの餌補助物の給餌
トロウストチトリウム sp.12B(ATCC番号20890)の細胞性バイオマスを、25℃でM-5培養基(実施例6参照)中、振とうフラスコ中で生産した。トロウストチトリウム sp.S31(ATCC番号20888)の細胞性バイオマスは27℃でM-5/10培養基(実施例9参照)中、振とうフラスコの中で生産した。各々の株の細胞を遠心分離により収穫した。ペレットを一回蒸留水で洗浄し、ついで再遠心して50%固形分ペーストを製造した。得られたペーストを海水に再懸濁し、その後、餌補助物としておとなの塩水エビ飼育物に与えた。この塩水エビは、それまでは農産廃棄物製品で飼育したものであり、その結果そのω-3HUFA含量は極めて低く、全脂肪酸のほんの1.3〜2.3%であった(自然界で捕らえた塩水エビは、平均して全脂肪酸の6〜8%のω-3HUFAを有している)。この塩水エビ(2〜3/ml)を海水で満たした1リットルのビーカー中に入れ、エアレーションと飼育物を混合するためにエアーストーンを用いた。餌補助物を加えたのち、塩水エビのサンプルを周期的に収穫し、洗浄し、そしてその脂肪酸含量をガスクロマトグラフィーによって測定した。結果を図8〜図9に示す。トロウストチトリドベースの餌補助物を仕上げ餌として与えると、塩水エビのω-3含量を、株12Bを与えたときは5時間以内に、また株S31を与えたときは11時間以内に野性の塩水エビの含量と同じにまで増加することができる。塩水エビのω-3HUFA含量は、これらの餌補助物を24時間までに与えると、野性のものの含量をはるかに越えさせることができる。さらに、これらの餌補助物は、自然界で捕らえた塩水エビ中では通常微量レベルにすぎないと報告されているDHA含量を著しく増大させる。
【0089】
〔実施例14〕
ω-3HUFAに富んだ卵を産卵めんどりに産ませるためのトロウストチトリドベースの餌補助物の給餌
トロウストチトリウム sp.S31(ATCC番号20888)の細胞性バイオマスを27℃でM-5/10培養基(実施例9参照)中、10リットルの発酵槽中で生産した。トロウストチトリウム sp.S31(ATCC番号20888)の細胞を遠心分離で収穫し、一旦蒸留水で洗浄し、再遠心分離して50%固形分ペーストを製造した。その後、この細胞ペーストを次の2つの方法の一つで処理した:1)冷凍すること;または 2)粉砕コーンと混合して70%固形分ペーストを製造し、次いで90〜120℃で押出し、風乾する。得られた乾燥生成物を次に粉砕し、ω-3HUFA含量を分析し、さらに産卵するめんどりに1日当り400mgのω-3HUFAとなるレベルで飼料に混合した(400mgのω-3HUFA/100gの飼料)。産まれた卵を約45日にわたってサンプリングレ、ガスクロマトグラフィーでω-3HUFAについて分析した。200〜425mg ω-3HUFA/卵の鶏卵がω-3補助物DE養わられためんどりによって産卵された(5000mg脂肪酸卵に正規化した濃度)。調理すると、これらの卵は全く魚臭を呈さなかった。コントロールのめんどりは約20mg ω-3HUFA/卵を含む卵を産卵した。コントロール群とω-3補助物を与えためんどりとによって産卵された卵の数に有意な差はなかった。餌補助物とコントロール食品とで得られた卵の黄味の色にも変りは全くなかった。
【0090】
〔実施例15〕
高純度品の製造(>90%純度のω-3HUFAあるいは>90%純度のHUFA脂肪酸混合物)
トロウストチトリウム sp.S31(ATCC番号20888)の細胞性バイオマスは10リットルの発酵槽中、27℃でM-5/10培養基(実施例9参照)中で生産した。この株の細胞を遠心分離によって収穫した。約5gの細胞ペーストを、0.5mmガラスビーズで1/2を満たしたビーズビータービーズミルの350mlのステンレススチール粉砕チャンバーに入れた。その容積の残りを試薬グレードのMeOHで満たし、細胞を2回、3分間均質化した。ビーズミル操作のあいだ、ステンレススチールチャンバーを付属の氷浴で冷却状態に保った。
【0091】
破砕した細胞の溶液をフラスコに注ぎ、その中へクロロホルムと2M NaCl水溶液を加えて最終溶液がおよそ1:1:0.9(クロロホルム:MeOH:水)となるようにした。その後、溶液を分液ロートに注ぎ、数回振り混ぜて脂質がクロロホルム層に移動するのを促進した。数分間で溶液が分離した後、クロロホルム層をフラスコに集め、新たなクロロホルムを分液ロートに加えて抽出を繰り返した。その後、このクロロホルム層を分液ロートから抜き出して2つのクロロホルム層を一緒にした。次いで、クロロホルムを、40℃で操作される回転真空蒸発装置を用いて除去(及び回収)した。残った脂質の一部(300mg)を取り出し、150mgテフロン(登録商標)張りのネジ蓋つき瓶中で、50mlのメタノール性NaOH(0.3N NaOH 10mlをメタノールで100mlに希釈したもの)で、60℃にて6時間加水分解した。その後、非加水分解性物質(ステロイド類、炭化水素類など)を、分液ロートで、50mlづつの石油エーテルで2回層分離し、エーテル層をその都度捨てることにより除去した。次いで、残った溶液を3mlの6NHClを加えて酸性とし、遊離脂肪酸を50mlの石油エーテルで2回抽出した。遊離脂肪酸を含むエーテル溶液の5mlを3つの13mm×100mm試験管に入れ、窒素気流下に溶液に吹き入れてエーテルを除去した。その後、2mlのエーテル、ヘキサンまたはアセトンを1つの管に加え、蓋をしてドライアイス-エタノール溶液中(−72〜−74℃)に置き、非HUFA脂肪酸を結晶化させた。結晶化が完結した考えられるときに、培養管を、細かい紛末状のドライアイスで満たした50mlのポリカーボネートの遠心管中に入れた。次いで、これらの管を−10℃に冷却した遠心装置に置き、10,000rpmに3〜5分間遠心した。その後、上清をパスツールピペットで各々の管からすばやく抜き取り、きれいな培養管に入れた。溶媒を窒素を吹き付けて上清から除去した。次いで、脂肪酸を、窒素下にテフロン(登録商標)張りのネジ蓋をした管の中で、メタノール性H2SO4(96mlのMeOH中、4mlのH2SO4)中100℃で1時間メチル化した。脂肪酸メチルエステルを次いでガスクロマトグラフィー(HP5890ガスクロマトグラフ、スペルコSP2330カラム;カラム温度=200℃;検出器及び注入部温度=250℃;キャリヤーガス=窒素)で定量した。得られた脂肪酸混合物の組成は、(エーテル)93.1% HUFA − 23.4% C22:5n-6 + 69.7% 22:6n-3;(ヘキサン)91.5% HUFA − 66.8% 22:6n-3 + 22.1% 22:5n-6 + 2.6% 20:5n-3;(アセトン)90.0% HUFA − 65.6% 22:6n-3 + 21.8n-6 + 2.6% 20:5n-3。
【0092】
>90%のω-3HUFAを含む脂肪酸混合物を、12B(ATCC番号20890)のようなトロウストチトリドの株の収穫したバイオマスについて上記の方法を行うことによって得ることができる。
【0093】
一般的な備考
本発明の方法に従って単離した以下の新規株を本明細書中で開示し、クレームした生物の例として、the American Type Culture Collection(ATCC)、メリーランド州ロックビルに寄託した。
株 ATCC番号 寄託日
シゾチトリウム S31 20888 8/8/88
シゾチトリウム S8 20889 8/8/88
シゾチトリウム 12B 20890 8/8/88
トロウストチトリウム U42-2 20891 8/8/88
シゾチトリウム 23B 20892 8/8/88
【0094】
本発明は、特定の微生物株について開示されているが、本明細書中に開示した教示に従って得られるまたは用いうるすべての方法及び株を包含するものであり、当業者に熟知のそのような置換、変形、最適化はすべて本発明に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】トロウストチトリウム sp.UT42-2(ATCC番号20891)を試験株として用いての、種々の培養基補足剤の脂肪酸収量への影響を示す棒グラフである。上記の株は本発明の選択方法に従って単離した。実験方法は実施例2に記載する。縦軸:補足剤なしのFFM培養基であるコントロールを基準とした脂肪酸収量。横軸: 1)2x「B」−ビタミンミックス、 2)2x「A」ビタミンミックス、 3)2xPI金属類、 4)28mg/l KH2PO4、 5) 2)と 3) と 4)の組合せ処理、及び 6)480mg/l KH2PO4、の特定的な添加。
【図2】高度不飽和脂肪酸産生量をグラフで示したものであり、□は本発明で新たに単離した株について示し、★は先に単離されていた株について示す。各点はある株を示し、各点の位置は、ω-3高度不飽和脂肪酸の全脂肪酸中の重量%(横軸)及びω-6脂肪酸である脂肪酸全ての重量%(縦軸)により決定される。本発明の株のみが、全脂肪酸の10.6%(w/w)未満がω-6であり、全脂肪酸の67%以上がω-3である点にプロットされた。表4からのデータ。
【図3】高度不飽和脂肪酸産生量をグラフで示したものであり、□は本発明で新たに単離した株について示し、★は先に単離されていた株について示す。各点はある株を示し、各点の位置は、ω-3高度不飽和脂肪酸の全脂肪酸中の重量%(横軸)及びエイコサペンタエン酸(EPA C20:5w3)(縦軸)である全脂肪酸の重量%より決定される。本発明の株のみが、全脂肪酸の67%(w/w)以上がω-3であり、全脂肪酸の7.8%(w/w)以上がC20:5w3である点にプロットされる。
【図4】ω-3高度不飽和脂肪酸組成をグラフで示したものであり、□は本発明で新たに単離した株について示し、★は先に単離されていた株について示す。各点は別々の株を示す。横軸上の値はC20:5w3である全ω-3高度不飽和脂肪酸の重量比率であり、縦軸上の値はC22:6w3である全ω-3高度不飽和脂肪 酸の重量比率である。本発明の株だけが、C20:5w3の重量比率28%以上か、あるいはC22:6ω3の重量比率93.6%以上のいずれかを示す点にプロットされた。
【図5】本発明の新たに単離された種々の株及びこれまでに単離されていた株の、25℃及び30℃での増殖を示すグラフである。増殖速度は25℃でのU-30株の成長速度を基準として規格化して示してある。先に単離されていた株は、そのATCCの受託番号で示している。1日あたりの細胞数倍化についての数値データを表5に示す。
【図6】窒素制限によって誘導した後の、細胞での全産生量のグラフである。灰分を除いた乾燥重量、全脂肪酸及びω-3高度不飽和脂肪酸のそれぞれを、図示したように、28211株の対応する値を基準にして規格してプロットした。すべての株はATCCの受託番号によって同定している。
【図7】横軸上に示した塩分濃度を含む培養基中で増殖後の、脂肪酸収量のグラフである。示した株は、新たに単離したS31株(ATCC番号20888)(■)とU42-2株(ATCC 20891)(+)、及びすべてに単離されていた株であるATCC番号28211(*)とATCC番号28209(□)である。脂肪酸収量は、試験した塩分濃度範囲においてS31株(ATCC番号20888)が示した平均増殖速度に基づいて、適当な値を1.00として規格化した相対収量でプロットしている。
【図8】実施例1の方法で単離したトロウストチトリド株(ATCC番号20890)で飼育した、塩水エビ、Artemia salina 中の全脂質のω-3高度不飽和脂肪酸含量の増加を示すグラフである。EPA=C20:5w3;DHA=C22:6w3。
【図9】実施例1の方法で単離したトロウストチトリド株(ATCC番号20888)で飼育した塩水エビ、Artemia salina 中の全脂質のω-3高度不飽和脂肪酸含量の増加を示すグラフである。EPA=C20:5w3;DHA=C2 2:6w3。文 献 Ainsworth, G.C. (1973) "Introduction and keys to the higher taxa."In: The Fungi. An Advanced Treatise. Vol. 4B, G.C. Ainsworth et al. (eds.), Academic Press, New York, pp. 107. Bahnweg, G. & Jackle, I. (1986) "A new approach to taxonomy of the Thraustochytriales and Lybrinthulales." In: The Biology of Marine Fungi, S.T. Moss (ed.), Cambridge University Press, London, pp. 131-140. Barr, J.S. (1981) "The phylogenetic and taxonomic implications of flagellar rootlet morphology among zoosporic fungi." BioSystems 14: 359-370. Barr, J.S. (1983) "The zoosporic grouping of plant pathogens." In: Zoosporic Plant Pathogens: a modern perspective, S.T. Buczacki (ed.), Academic Press, pp. 43-83. Bartnicki-Garcia, S. (1988) "THe cell wall: a crucial structure in fungal evolution." In: Evolutionary Biologyof the Fungi, A.D.M. Rayner et al. 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【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性炭素源、同化しうる窒素、海水の塩分濃度よりも低い塩分濃度、および少なくとも約15℃の温度からなる培養基中で、トロウストチトリウム属およびシゾチトリウム属を除くトロウストチトリアレ目の微生物から選択され、ω-3高度不飽和脂肪酸を効率よく生産し得る微生物を培養することを含む、ω-3高度不飽和脂肪酸の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−109944(P2008−109944A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−18408(P2008−18408)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【分割の表示】特願2006−42778(P2006−42778)の分割
【原出願日】平成2年11月5日(1990.11.5)
【出願人】(503166090)マーテック・バイオサイエンシズ・コーポレイション (16)
【Fターム(参考)】